(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電気モータのための波形最適化方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550025
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022020444
(87)【国際公開番号】W WO2022197742
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,アンドリュー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ユンキンズ,マシュー,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カーヴェル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】フェルスト,ジョン,エム.
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505EE07
5H505GG03
5H505GG04
5H505GG05
5H505HA07
5H505HB02
5H505JJ03
5H505KK06
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL23
5H505LL50
(57)【要約】
電気モータを制御する方法は、電気モータから標的トルクを送達するための電気モータのデューティサイクルを受け取るステップと、パルストレインを生成するステップと、電気モータを生成されたパルストレインでパルシングさせるステップと、を含む。パルストレインを生成するステップは、少なくとも一部、受け取ったデューティサイクルに基づく。生成されたパルストレインは、一定のパルス周波数と比較して、電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータを制御する方法において、
電気モータのための、前記電気モータから標的トルクを送達するためのデューティサイクルを受け取るステップと、
前記受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップと、
前記電気モータを前記生成されたパルストレインでパルシングさせるステップであって、前記生成されたパルストレインは、前記電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化されるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記パルストレインを生成するステップは、2~20の範囲のパルスを有するパルストレインを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パルストレインを生成するステップは、第一のパルス、第二のパルス、及び第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含み、第一の時間は、前記第一のパルスの停止時間から前記第二のパルスの開始時間までに画定され、第二の時間は、前記第二のパルスの停止時間から前記第三のパルスの開始時間までに画定され、前記第一の時間は前記第二の時間とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パルストレインを生成するステップは、前記第一の時間が前記第二の時間より長いパルストレインを生成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パルストレインを生成するステップは、第一のパルスと第二のパルスとを含むパルストレインを生成するステップを含み、前記第一のパルスは第一のトルクを有し、前記第二のパルスは、前記第一のトルクとは異なる第二のトルクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パルストレインを生成するステップは、前記第一のトルク及び前記第二のトルクとは異なる第三のトルクを有する第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パルストレインを生成するステップは、前記パルストレインの各パルスのパルストルクが前記パルストレインの平均トルクの10%以内であるパルストレインを生成するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パルストレインを生成するステップは、被駆動機の動作条件に少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パルストレインを生成するステップは、前記パルストレインの各パルスが前記標的トルクより大きいパルストルクを有するパルストレインを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生成されたパルストレインによる前記電気モータのパルシングが自動車を推進させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
電気モータを動作させて被駆動機を回転させるコントローラにおいて、
プロセッサと、
前記プロセッサに、
受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成させ、
前記生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせ、前記生成されたパルストレインは標的トルクを送達する電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される
プログラムを含むメモリと、
を含むコントローラ。
【請求項12】
前記プロセッサは、2~20の範囲のパルスを含むように前記パルストレインを生成する、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記メモリは、受け取ったデューティサイクルに応じて対応する複数の最適化されたパルストレインを含む、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項14】
駆動システムにおいて、
少なくとも1つの共振周波数を有する構造と、
被駆動コンポーネントと、
前記被駆動コンポーネントを回転させるための、前記構造に固定されたる電気モータと、
請求項11に記載のコントローラと、
を含む駆動システム。
【請求項15】
電気モータを制御する方法において、
自動車を推進させるように、前記電気モータのための要求されたトルクを受け取るステップと、
前記要求されたトルクを送達するように、前記要求されたトルクより大きいパルストルクで前記電気モータをパルシングさせるステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記電気モータのための前記要求されるトルクを受け取るステップは、前記電気モータを最適な効率点でパルシングさせることによって前記要求されたトルクを送達するための前記電気モータのデューティサイクルを受け取るか又は計算するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップをさらに含み、前記パルストルクで前記電気モータをパルシングさせるステップは、前記生成されたパルストレインで前記電気モータをパルシングさせるステップを含み、前記生成されたパルストレインは、前記電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パルストレインを生成するステップは、2~20の範囲のパルスを有するパルストレインを生成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パルストレインを生成するステップは、第一のパルス、第二のパルス、及び第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含み、第一の時間は前記第一のパルスの停止時間から前記第二のパルスの開始時間までに画定され、第二の時間は前記第二のパルスの停止時間から前記第三のパルスの開始時間までに画定され、前記第一の時間は前記第二の時間とは異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記パルストレインを生成するステップは、前記第一の時間が前記第二の時間より長いパルストレインを生成するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記パルストレインを生成するステップは、第一のパルスと第二のパルスとを含むパルストレインを生成するステップを含み、前記第一のパルスは第一のトルクを有し、前記第二のパルスは、前記第一のトルクとは異なる第二のトルクを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記パルストレインを生成するステップは、前記第一のトルク及び前記第二のトルクとは異なる第三のトルクを有する第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記パルストレインを生成するステップは、前記パルストレインの各パルスのトルクが前記パルストレインの平均トルクの10%以内であるパルストレインを生成するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記パルストレインを生成するステップは、被駆動機の動作条件に少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記パルストレインを生成するステップは、前記パルストレインの各パルスが前記要求されたトルクより大きいパルストルクを有するパルストレインを生成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
電気モータを動作させて被駆動機を回転させるコントローラにおいて、
プロセッサと、
前記プロセッサに、
被駆動コンポーネントが自動車を推進するように、前記電気モータをパルストルクでパルシングさせて前記被駆動コンポーネントを回転させるために、請求項15の前記方法を実行させる
プログラムを含むメモリと、
を含むコントローラ。
【請求項27】
前記プログラムはさらに、前記プロセッサに、
前記受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成させ、
前記生成されたパルストレインにより前記電気モータをパルシングさせ、前記生成されたパルストレインは標的トルクを送達するために前記電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される
請求項26に記載のコントローラ。
【請求項28】
駆動システムにおいて、
少なくとも1つの共振周波数を有する構造と、
被駆動コンポーネントと、
前記被駆動コンポーネントを回転させるための、前記構造に固定された電気モータと、
請求項26に記載のコントローラと、
を含む駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月8日に出願された米国仮特許出願第63/219,441号明細書及び2021年3月15日に出願された米国仮特許出願第63/161,405号明細書の利益とその優先権を主張するものである。これらの出願の各々の内容全体を参照によって本願に援用する。
【0002】
背景
1.技術分野
本開示は電気モータの波形を最適化する方法、より詳しくはパルス電気モータのノイズ、振動、及びハーシュネス特性を改善するために波形を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の考察
交通手段の電化は、化石燃料への依存を断ち切り、気候変動を緩和し、排気管からの排出ガスを排除する。電気自動車により消費されるエネルギーの量とコストがまもなく化石燃料自動車によるそれらと対等になる得ることを考えると、電気エネルギーの使用効率は従来のエネルギー源のそれと同程度に重要となり得る。
【0004】
バッテリ式電気自動車のパワートレインの効率を向上させることによって、電気自動車の有用性が高まり得る。希土類磁石を備える電気モータのピーク効率は90%を超えるものの、実際の運転サイクルとパワートレインのアーキテクチャはこのピーク効率での速さ/負荷範囲外で動作することが多い。例えば、電気自動車の最大トルクの10%で、効率は70~85%の範囲であり得る。それに加えて、多くの電気モータで使用される磁石はネオジム又はサマリウムの含有量が多く、これらはどちらも高価であり、その供給源は限られている。
【0005】
電気モータは、被駆動機に連続的なトルクを提供する効率が高いことで知られている。電気モータのトルク送達は典型的に、内燃機関にかかわるパルセーションが行われずに連続的である。一般に、電気モータは電気モータの最大トルクに関して中-低乃至中-高範囲内に最適効率点を有する。例えば、電気モータの最大効率は電気モータの最大トルクの30%~80%の範囲内であり得る。
【0006】
電気モータが電気モータの最大トルクの低範囲内の、例えば最大トルクの20%未満の連続トルクを提供する場合、この電気モータの効率は典型的に低い。最適効率点での電気モータのパルシングによって電気モータのデューティサイクルを減らすと、電気モータから連続トルクを提供する場合より高い効率で電気モータの低範囲の標的トルクを提供できることがわかった。最適効率点での電気モータのパルシングには、変調周波数のパルスを送達することが含まれる。
【0007】
変調周波数での電気モータのパルシングは、電気モータにより駆動される機器の振動を誘導する可能性がある。例えば、電気モータが自動車を駆動する場合、電気モータのパルシングにより自動車の構造における振動が生じる可能性がある。これらの振動は、変調周波数が自動車構造の固有周波数共振に近いと増幅され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は一般に、電気モータのパルストレインのパルスを最適化して、電気自動車のパルシングに起因する振動を軽減し、又は打ち消す方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある実施形態において、電気モータを制御する方法は、電気モータのデューティサイクルを受け取るステップと、受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップと、電気モータを生成されたパルストレインでパルシングさせるステップと、を含む。受け取ったデューティサイクルは、電気モータからの標的トルクを送達するように選択される。生成されたパルストレインは、電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネス特性のうちの少なくとも1つを改善するように最適化される。
【0010】
実施形態において、パルストレインを生成するステップは、2~20の範囲のパルスを有するパルストレインを含む。パルストレインを生成するステップは、第一のパルス、第二のパルス、及び第三のパルスを有するパルストレインを生成するステップを含み得る。第一の時間は、第一のパルスの停止時間から第二のパルスの開始時間までに画定され得る。第二の時間は、第二のパルスの停止時間から第三のパルスの開始時間までに画定され得る。第一の時間は第二の時間とは異なり得る。パルストレインを生成するステップは、第一の時間が第二の時間より長いパルストレインを生成するステップを含み得る。
【0011】
幾つかの実施形態において、パルストレインを生成するステップは、第一のパルスと第二のパルスとを含むパルストレインを生成するステップを含む。第一のパルスは第一のトルクを有し得て、第二のパルスは、第一のトルクとは異なる第二のトルクを有し得る。パルストレインを生成するステップは、第一のトルク及び第二のトルクとは異なる第三のトルクを有する第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含み得る。パルストレインを生成するステップは、パルストレインの各パルスのトルクがパルストレインのパルスの平均トルクの10%以内であるパルストレインを生成するステップを含み得る。
【0012】
特定の実施形態において、パルストレインを生成するステップは、被駆動機の動作条件に少なくとも一部基づく。パルストレインを生成するステップは、パルストレインの各パルスが標的トルクより大きいパルストルクを有するパルストレインを生成するステップを含み得る。生成されたパルストレインによる電気モータのパルシングは自動車を推進させ得る。
【0013】
本開示の他の実施形態において、コントローラにより実行されると、コントローラに、受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成させ、生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせる命令がその上に保存された非一時的コンピュータ可読媒体。生成されたパルストレインは、標的トルクを送達する電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される。
【0014】
実施形態において、コントローラは、2~20の範囲のパルスを含むパルストレインを生成する。コントローラは、第一のパルス、第二のパルス、及び第三のパルスを含むパルストレインを生成し得る。第一の時間は第一のパルスの停止時間から第二のパルスの開始時間までに画定され得て、第二の時間は第二のパルスの停止時間から第三のパルスの開始時間までに画定され得る。第一の時間は第二の時間とは異なり得る。コントローラは、第一の時間が第二の時間より長くなるようにパルストレインを生成し得る。
【0015】
幾つかの実施形態において、コントローラは、第一のパルスと第二のパルスとを含むようにパルストレインを生成する。第一のパルスは、第一のトルクと、第一のトルクとは異なる第二のトルクを有する第二のパルスを有し得る。コントローラは、被駆動機の動作条件に少なくとも一部基づくパルストレインを生成し得る。
【0016】
本開示の他の実施形態において、電気モータを作動させて被駆動コンポーネントを回転させるコントローラは、プロセッサと、プロセッサに、受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成させ、生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせるプログラムを含むメモリを含む。生成されたパルストレインは、標的トルクを送達するために電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化される。
【0017】
実施形態において、プロセッサは、2~20の範囲のパルスを含むパルストレインを生成する。メモリは、受け取ったパルストレインに応じて対応する最適化された複数のパルストレインを含み得る。
【0018】
本開示の他の実施形態において、駆動システムは、少なくとも1つの共振周波数を有する構造と、被駆動コンポーネントと、被駆動コンポーネントを回転させるための、構造に固定された電気モータと、本明細書で説明され、詳細が記載されるコントローラと、を含む。
【0019】
本開示の他の実施形態において、電気モータを制御する方法は、自動車を推進させるように、電気モータのための要求されるトルクを受け取るステップと、要求されたトルクを送達するように、要求されたトルクより大きいパルストルクで電気モータをパルシングさせるステップと、を含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、電気モータのための要求されるトルクを受け取るステップは、電気モータを最適な効率点でパルシングさせることによって要求されたトルクを送達するための電気モータのデューティサイクルを受け取るか又は計算するステップを含む。方法は、受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップをさらに含み得る。パルストルクで電気モータをパルシングさせるステップは、生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせるステップを含む。生成されたパルストレインは、電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化され得る。
【0021】
特定の実施形態において、パルストレインを生成するステップは、2~20の範囲のパルスを有するパルストレインを生成するステップを含む。パルストレインを生成するステップは、第一のパルス、第二のパルス、及び第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含み得る。第一の時間は第一のパルスの停止時間から第二のパルスの開始時間までに画定され、第二の時間は第二のパルスの停止時間から第三のハルスの開始時間までに画定される。第一の時間は第二の時間とは異なり得る。パルストレインを生成するステップは、第一の時間が第二の時間より長いパルストレインを生成するステップを含み得る。
【0022】
特定の実施形態において、パルストレインを生成するステップは、第一のパルスと第二のパルスとを含むパルストレインを生成するステップを含む。第一のパルスは第一のトルクと第二のパルスを有する。第一のパルスは第一のトルクを有し、第二のトルクは第一のトルクとは異なる第二のトルクを有する。パルストレインを生成するステップは、第一のトルク及び第二のトルクとは異なる第三のパルクを有する第三のパルスを含むパルストレインを生成するステップを含み得る。パルストレインを生成するステップは、パルストレインの各パルスのトルクがそのパルストレインの平均トルクの10%以内であるパルストレインを生成するステップを含み得る。
【0023】
実施形態において、パルストレインを生成するステップは、被駆動機の動作条件に少なくとも一部基づいてパルストレインを生成するステップを含む。パルストレインを生成するステップは、パルストレインの各パルスが要求されたトルクより大きいパルストルクを有するパルストレインを生成するステップを含み得る。
【0024】
本開示の他の実施形態において、電気モータを作動させて被駆動コンポーネントを回転させるコントローラは、プロセッサと、プロセッサに、自動車を推進させるように、電気モータのための要求されたトルクを受け取らせ、要求されたトルクを送達するように、要求されたトルクより大きいパルストルクで電気モータをパルシングさせて、被駆動コンポーネントが自動車を推進するように、電気モータをパルストルクでパルシングさせて前記被駆動コンポーネントを回転させるプログラムを含むメモリと、を含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、プログラムはさらに、プロセッサに、受け取ったデューティサイクルに少なくとも一部基づいてパルストレインを生成させ、生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせる。生成されたパルストレインは、標的トルクを送達するために電気モータのノイズ、振動、又はハーシュネスのうちの少なくとも1つを改善するように最適化され得る。
【0026】
本開示の他の実施形態において、駆動システムは、少なくとも1つの共振周波数を有する構造と、被駆動コンポーネントと、構造に固定された、被駆動コンポーネントを回転させる電気モータと、を含み、電気モータを作動させて被駆動コンポーネントを回転させるコントローラは、プロセッサと、プロセッサに、自動車を推進させるために要求される電気モータのトルクを受け取らせ、電気モータを、要求されたトルクを送達するために、要求されたトルクより大きいパルストルクで電気モータをパルシングさせて、被駆動コンポーネントを回転させて被駆動コンポーネントが自動車を推進させるように、電気モータがパルストルクでパルシングするようにさせるプログラムを含むメモリと、を含む。
【0027】
さらに、矛盾しないかぎり、本明細書に記載の実施形態又は態様の何れも、本明細書に記載の他の実施形態又は態様の何れか又は全部と共に使用し得る。
【0028】
本開示の様々な態様を、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する下記のような図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、電気モータのある範囲の負荷及び速度での例示的な電気モータの効率の図である。
【
図2A】
図2Aは、連続的なトルク送達による、例示的なトルク需要での、ある範囲の時間にわたる
図1の電気モータの効率の図である。
【
図2B】
図2Bは、パルストルク送達による、
図2Bの例示的なトルク需要での、ある範囲の時間の
図1の電気モータの効率の図である。
【
図3】
図3は、本開示により提供される例示的な制御システムの略図である。
【
図4】
図4は、本開示により提供されるパルストルク送達の例である。
【
図5】
図5は、電気モータのトルク送達の振動に対する応答をモデル化するために自動車の構造に取り付けられた電気モータの略図である。
【
図6】
図6は、
図1の自動車の構造の例示的な周波数応答を示す図表である。
【
図7】
図7は、ベースラインPWM及び本開示により提供される最適化されたPWMパルストレインの図表である。
【
図8】
図8は、ベースラインPWM及び最適化されたPWMパルストレインの入力トルクスペクトルの図表である。
【
図9】
図9は、ベースラインPWM及び最適化されたPWMパルストレインの軸方向ねじれ振動スペクトルの図表である。
【
図10】
図10は、ある周波数範囲での人間の振動及び音響感度の図表である。
【
図11】
図11は、例示的な自動車のシートトラックの周波数応答関数である。
【
図12】
図12は、例示的な自動車のハンドの周波数応答関数である。
【
図13】
図13は、本開示のある実施形態により提供される電気モータの制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで、本開示を、その例示的な実施形態に関して図面を参照しながら以下により詳しく説明するが、図中、同様の参照番号は複数の図面の各々の同じ又は対応する要素を示す。これらの例示的実施形態は、本開示が漏れのない完全なものとなるように記載されており、当業者に対して開示の範囲を十分に伝える。1つの実施形態又は態様の特徴は、他の何れかの実施形態又は態様の特徴と、何れの適当な組合せでも結び付けることができる。例えば、方法の態様又は実施形態の何れの個別又は集合的な特徴も、装置、製品、又はコンポーネントの態様又は実施形態に適用でき、その逆とすることもできる。本開示は、多くの様々な形態で実施され得て、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろこれらの実施形態は本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるかぎり、単数形の冠詞(a、an、the)等は、文脈上、明らかに他の解釈が必要な場合以外、複数形を含む。それに加えて、本明細書では定量的測定結果、数値、幾何学的関係、又はその他に言及されることがあるが、特に断りがないかぎり、これらのうち、全部ではないとしても何れの1つ又は複数も、絶対的であるか、又は例えば製造又は設計公差等によるもの等、発生し得る容認可能な変動を考慮して概数であり得る。
【0031】
電気モータの、その電気モータの低トルク範囲での効率を向上させるために、電気モータをパルシングさせて、電気モータのデューティサイクルを縮小し得て、それによって変調周波数で最適な効率点又はトルクにおいて電気モータをパルシングさせることにより、ある期間にわたり送達される平均トルクとして、標的トルク又は需要トルクを提供する。電気モータのこのパルシングは、トルク送達のためにパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)波形を有し得る。デューティサイクルは、最適な効率点で電気モータをパルシングさせながら、低い標的トルクを被駆動機に提供するように選択される。変調周波数は、ノイズ、振動、及びハーシュネス(NVH)要件を満たし、及び/又は電気モータのオフ状態とオン状態との間の遷移損失を軽減若しくは最小化するように選択され得る。特定の実施形態において、変調周波数は被駆動機のねじれ振動に基づいて選択される。例えば、電気モータは、20%のデューティサイクルで効率トルク200Nmによりパルシングして40Nmの標的平均トルクを被駆動機に提供し得る。被駆動機のNVH特性に応じて、200Nmパルスが30ヘルツ(Hz)の変調周波数で送達され得る。ある例示的な電気モータにおいて、特定の動作条件で、標的トルクを送達するために電気モータをパルシングさせてデューティサイクルを下げることは、連続的なトルク送達を通じて必要なトルクを提供する電気モータより9%効率が高いことが証明されている。
【0032】
電気モータの種類は、電気モータのパルシングからの効率向上に影響を与え得る。電気モータのパルシングにより、インバータ損失、銅損失、及び/又は鉄心損失を軽減し得る。インバータ損失は、波形の低トルク期間中にインバータをオフにすることにより軽減され得る。銅損失は電気モータの種類に応じて軽減され得る。例えば、銅損失の軽減は、トルクが生じる前に高レベルの電流を必要とする種類の電気モータにおいて見られ得る。例えば、同期リラクタンス型モータでは銅損失が軽減され得て、表面永久磁石モータでは銅損失が増大し得る。鉄心損失は、永久磁石への依存性のより低い電気モータにおいて磁束を周期的に切り替えることによって軽減され得る。
【0033】
図1を参照すると、連続動作中の例示的電気モータの効率が示されている。本明細書に詳述するように、ダイナミックモータドライブ、すなわちDMS(登録商標)は電気モータを間欠的にパルシングさせて、できるだけ高い電磁効率でのみ電気モータを動作させる方法である。電気モータの効率を向上させるために、要求されたトルクが電気モータの高効率ゾーンより低いときには、電気モータのコントローラが電気モータを高効率ゾーンで間欠的に動作させ得る。例えば、電気モータが最大トルクの34%で最適効率点を有し、要求されたトルクが最大トルクの19%であるとき、電気モータのコントローラは、時間の19/34又は56%、すなわち56%のデューティサイクルで最大トルクの34%により電気モータを動作させ得て、それによって最大トルクの19%を連続的トルク送達による場合より効率的に送達する。
【0034】
さらに
図2A及び2Bを参照すると、この、電気モータのコントローラによる電気モータの間欠的又はパルシングが、経時的に変化する要求トルクに合わせて示されている。
図2Aに示されるように、連続トルクが電気モータから送達される場合、電気モータの効率は高効率ゾーン、例えば約0.45秒~約0.95秒から低効率ゾーン、例えば約1.5秒~約1.75秒へと変化する。それに対して、
図2Bに示されるように、電気モータは、要求トルクが最適効率点又はそれ以下であるとき、例えば約2.25秒までは、変化するデューティサイクルでの最適効率点で間欠的に動作するように制御され、要求トルクが最適効率点より高いとき、例えば約2.3秒以降では連続モードで動作する。
【0035】
図3は、本開示のある実施形態により提供される電気モータ20の例示的な概略制御アセンブリ50である。制御アセンブリ50は、コントローラ60、トルク及び速度推定器70、トルク制御インバータ80、及びセンサ90を含む。コントローラ60は、平均トルク需要、すなわち要求されるトルクを受け取り、電気モータ20を連続モードとパルスモードの何れで動作させるかを特定する。コントローラ60が電気モータ20をパルスモードで動作させることを特定した場合、コントローラ60は電気モータのデューティサイクル、パルスの周波数、又は電気モータ20のパルス波形を特定し得る。
【0036】
図4は、例示的なトルク要求とコントローラ60に対するトルクコマンドを示す。トルク要求62は一定で、電気モータ20の最適効率点93より低い。トルク要求62に応答して、コントローラ60はトルクコマンド64を電気モータ20に送達する。図のように、トルクコマンド64は、最適効率で電気モータを動作させる最適効率点93とゼロトルクとの間で振動する方形波である。考え得る波形は、事前にプログラムされてコントローラ60に保存され得て、コントローラ60は要求されたトルク及び/又は電気モータ20の速度に基づいて、事前にプログラムされた波形の中から選択する。
【0037】
前述のように、電気モータは典型的に、実質的に連続的なトルクを提供する。その結果、電気モータは構造に直接取り付けられ得て、被駆動機に直接連結される。これは、典型的に振動がモータから構造に伝わるのを軽減するために1つ又は複数の防振マウントによって構造に取り付けられる内燃モータとは異なる。同様に、内燃モータは防振要素、例えばフライホイールを含み得て、それによって内燃モータからのトルク送達におけるパルセーションは被駆動機へと伝われないように隔離される。構造及び被駆動機に直接取り付けられることにより、電気モータを変調周波数でパルシングさせると、望ましくない振動が構造及び/又は被駆動機に伝わることになり得る。特に、電気モータのパルシングの結果であるねじれ振動は、構造及び/又は被駆動機内の望ましくない振動の原因となり得る。幾つかの実施形態において、電気モータは、一部の振動を電気モータから隔離するコンプライアントマウントで取り付けられ得る。
【0038】
図5を参照すると、パルス式電気モータ20により駆動される自動車10の簡略化モデルが示されている。
図7は、固有共振周波数32を含む周波数範囲にわたる自動車10の周波数応答の例示的モデルを示す。図のように、自動車10の構造は約16Hzの固有共振又は周波数応答ピーク32を有する。
【0039】
すでに詳述したように、変調周波数において最適効率点で電気モータ20をパルシングさせて電気モータ20のデューティサイクルを縮小することにより、最適効率点より低い標的トルクを、電気モータ20から標的トルクを連続的に提供する場合より高い効率で送達できる。低い標的トルクは、電気モータ20の最適効率点の0パーセント~60パーセントの範囲であり得る。幾つかの実施形態において、電気モータ20は、パルシングにより電気モータ20の最適効率点の0パーセント~100パーセントを提供し得る。電気モータ20により送達された標的トルクは、電気モータ20がパルシング又は励起される励起トルクのデューティサイクルを増減することにより制御できる。励起トルクは、電気モータ20にとっての最適効率点となるように選択され得て、電気モータ20の最大トルク又は定格トルクの30パーセント~80パーセントの範囲、例えば60パーセントであり得る。
【0040】
電気モータ20の最適効率点で選択されるパルストルクにより、電気モータ20によって送達されるトルクは、電気モータ20のデューティサイクルを調整することにより制御できる。例えば、デューティサイクルを大きくすると送達されるトルクが増大し、デューティサイクルを小さくすると送達されるトルクが減少して低くなる。電気モータ20の効率に関しては、より低い変調周波数又はより少ないパルス数は、より高い変調周波数又はより多いパルス数より効率的であり得る。例えば、電気モータ20の効率の改善は、電気モータ20がオフ状態とオン状態との間でパルシングされるときの電気モータ20の遷移損失によるものであり得る。
【0041】
次に
図7を参照すると、電気モータのパルシングはトルク送達のパルス幅変調(PWM)波形を有し得る。PWM波形のピークは、パルストルクが送達されることを表す。
図7に示されるように、ベースラインPWM10は一定の変調周波数と一定のパルストルクを有する。ベースラインPWM10はあるデューティサイクルを有し、これは時間のうちパルストルクが送達されるパーセンテージである。ベースラインPWM10により送達されるトルクは、ある時間にわたり送達されるトルクの平均であり、パルストルクとデューティサイクルの積により概算され得る。ベースラインPWM10は、オフ状態とオン状態との間及びオン状態とオフ状態の間の遷移ランプを有し得る。この遷移ランプは、電気モータ20のインバータの関数であり得る。図のように、ベースラインPWM10は理想的な遷移を有し、遷移ランプは垂直に示されている。
【0042】
さらに
図8及び9を参照すると、パルストルクと変調周波数が一定であるとき、入力PWMトルクスペクトルとねじれ振動スペクトルは変調周波数及びその倍数で有意なピークを有する。例えば、
図4に示されるように、電気モータ20が変調周波数32Hz、175Nmでパルシングされるとき、PWMトルクスペクトルは32Hzの変調周波数付近で初期ピーク応答を示すが、変調周波数の2倍及び3倍、例えば64Hz及び96Hzでスペクトル中の二次的なピークも示しており、周波数の増大と共に振幅は縮小する。パルストルクに対する応答は変化し得るが、この例で示されるように、32Hzでの第一のピークは約50Nmであり、64Hzでの第二のピークは約40Nmであり、96Hzでの第三のピークは20Nm強である。同様に、ねじれ振動スペクトルは32Hzの変調周波数での強いピークと、64Hz及び96Hzでそれぞれ、より小さいピークを有する。例えば、32Hzでの第一のねじれピークは3rpmを超え、64Hzでの第二のねじれピークは0.5rpm未満、及び96Hzでの第三のねじれピークは最小である。
【0043】
これらの強力なピークの結果として、ベースラインPWM10は電気モータ20内の被駆動機内に振動を誘導し得る。これらの振動は、例えば自動車等の被駆動機内で乗員が経験するような、不満足な、又は心地の悪いNVHを生じさせ得る。不満足な、又は心地の悪いNVHは、入力ピークが被駆動機の感応周波数と同じかそれに近いと強調され得る。例えば、自動車は特定の周波数に対する感受性を有し得る。これらの感受性は周波数応答関数(FRF)として表現できる。FRFの振幅が特定の周波数で高い場合、このような周波数は感応周波数と考えることができる。被駆動機が自動車であれば、FRFは、感応周波数を示す際に乗員によるNVHの認識を考慮し得る。例えば、乗員が特定の周波数の振動に気付いた場合、その周波数はFRFの中で高振幅を有するように示され得る。同様に、周波数の結果として耳に聞こえるノイズが発生した場合、このような周波数はFRFの中で高振幅を有し得る。幾つかの実施形態において、FRFは被駆動機の構造のものであり得、固有共振はFRFの中で高振幅を有し得る。例えば、
図2は被駆動機に関するFRFを示し得る。
【0044】
入力トルクスペクトル及びねじれ振動スペクトルの強いピークは、自動車10のコンポーネントの早期摩耗又は故障の原因となり得る。例えば、ドライブトレインのコンポーネントにおける望ましくない振動の結果、これらのコンポーネントが早期に摩耗及び/又は故障し得る。そのため、振幅を縮小するか、自動車10及び/又はドライブトレインの望ましくない振動を排除して、被駆動機の寿命を延ばすことが望ましい。
【0045】
図10は、振動に対する人間の感度の例である。図表の影付き部分は、人間が0.3Hz~30Hzの範囲の振動に対して敏感であり、7kHz~9kHzの範囲の音声又は音響に対して敏感であることを示している。そのため、これらの範囲の変調周波数により、自動車の人間の乗員にとって不満足な、又は心地の悪いNVHが生じ得る。
【0046】
図11及び12はそれぞれ、例示的な自動車のシートトラックFRF及びハンドルFRFの例である。人間が感受性を有する低い方の振動、例えば0.3Hz~30Hzは影付きとされて、この範囲が変調周波数にとって望ましくないことが示されている。それに加えて、より濃いFRFの応答線により示されているように、シートトラック及びハンドルを通じた振動の伝達のエリアは低い。図の振動伝達の低い範囲は、運転者及び/又は人間の乗員にとってのNVHを最小化するのに適した変調周波数であり得る。図のように、25Hz~40Hz及び48Hz~52Hz及び120Hz~185Hzの大きい範囲は全て、この例示的自動車にとって適当であるように見える。これらのFRFプロットは、変調周波数の適当な範囲が自動車のモデル又はタイプに特有のものになり得るよう、特定のモデル又はタイプの自動車に特有のものであり得る。特定の自動車のNVHを最適化するために、シートトラック及びハンドルFRFに加えて、その他のFRFが考慮され得る。例えば、自動車の特定のコンポーネントのFRFが特定されてよく、例えばこれはトライブトレインのコンポーネント又は被駆動機である。
【0047】
再び
図7を参照すると、本開示のある実施形態による変調された、又は最適化されたPWM波形が開示されており、概して変調PWM110で示されている。変調PWM110はベースラインPWM10に重ねられている。変調PWM110とベースラインPWM10はオフ状態とオン状態との間の理想的な、すなわち瞬時の遷移で示されているが、オフ状態とオン状態との間には遷移ランプがあり得ると想定される。図のように、変調PWM110とベースラインPWM10のデューティサイクルは同じであり、そのため変調PWM110とベースラインPWM10により送達される平均トルクは同じである。
【0048】
変調PWM110は、標的トルクを提供しながら、被駆動機及び/又は電気モータの関連構造のためのNVH評定を最大にするように最適化されたパルス数を含むパルストレインを創出することによって生成される。NVH評定は、PWM入力スペクトル及び/又はパルストレインのねじれ振動スペクトルを被駆動機のFRFと比較することによって解析され得る。例えば、
図8及び9のスペクトルを
図6及び10~12のFRFと比較すること。
【0049】
最適化されたパルストレインは、パルストレインの各パルスのタイミングを変調して、被駆動機及び/又は電気モータの関連構造の応答スペクトルを最小化する。図のように、変調PWMのパルストレイン120は8つのパルス121~128を含む。あるパルストレイン内のパルス数は2~20パルスの範囲、例えば8パルスであり得る。幾つかの実施形態において、そのパルストレイン内のパルス数は、20より多いパルスであり得る。パルストレイン120は、パルストレイン120の全長にわたりベースラインPWM10の一定のパルスと同じ数のパルスを有する。しかしながら、パルストレイン120のパルス121~128は、被駆動機及び/又は電気モータの関連構造の応答スペクトルが小さくなるようなタイミングとされる。このことは、PWM10とPWM110が、PWM10とPWM110が繰り返される前に約0.25秒にわたって8つのパルスを有することにより示されている。
【0050】
PWM10は32Hzの一定のパルスレート又は0.03125秒ごとに始まるパルスを示すが、パルストレイン120のパルス121~128は、相互に均等に離間されていないパルス121~128間に変化する間隔を有する。図のように、パルス121~128の長さ、すなわち持続時間は、相互に関して変化し得る。例えば、パルス124及び125の持続時間、すなわち長さは、他のパルス121、122、123、126、127、128の幾つかより短い。幾つかの実施形態において、各パルス121~128の持続時間又は長さは同じである。また、図のように、各パルス121~128のトルクは一定である。幾つかの実施形態において、各パルス121~128のトルクは相互に異なり得る。このような実施形態では、各パルス121~128のトルクは変化し得るが、各パルスの効率は実質的に相互に同じであり得る。パルス121~128の幾つかのトルクが変化すると、各パルス121~128のトルクは全パルス121~128のトルクの平均の10%以内であり得る。
【0051】
パルストレイン120は、電気モータ20のあるデューティサイクル、例えば20%のデューティサイクルに対する最適なパルストレインであり得る。異なる標的トルクが求められた場合、デューティサイクルは異なる標的トルクを送達するように変化し得る。デューティサイクルの変化により、新たなデューティサイクルに対する新たな最適パルストレインが生成され得る。デューティサイクルのこの変化は、パルストルクが電気モータ20の最適な効率点で実質的に一定であることの結果であり、それによってデューティサイクルの変更により、送達されるトルクが変更される。新たなデューティサイクルが選択されると、新たなデューティサイクル及びそれゆえ、被駆動機のNVH特性についても最適化された新たな標的トルクを送達するために新たなパルストレイン120が生成される。
【0052】
各デューティサイクルを送達するための固有のパルストレインに加えて、あるデューティサイクルは、天候、乗客及び/又は積荷の重量、傾斜、道路状態、音響設定(ラジオの音量)、温度、モータ速度(RPM)、自動車の速さ、速度、又は加速度を含むがこれらに限定されない様々な条件について固有のパルストレインを有し得る。例えば、車内で1人の乗員が感知されたときには20%のデューティサイクルの固有のパルストレイン及び、車内で2人の乗員、3人の乗員、4人の乗員が感知されるか、乗員が1人も感知されないときには20%のデューティサイクルの異なる固有のパルストレインがあり得る。幾つかの実施形態において、自動車が悪路を走行している場合、より高いNVH評定の場合よりも効率的な動作を提供するためには、電気モータのNVH評定はより悪く、道路状態によってマスクされ得る。
【0053】
各デューティサイクル又は条件に対する最適化により、関係する周波数範囲の場合のNVH評定、変調PWM110とベースラインPWM10との間の効率損失、及び電気モータと関連コンポーネントが変調PWM110を送達する能力を含む費用関数が最小となり得る。
【0054】
NVH評定は、関連する周波数のための周波数応答関数(FRF)、例えばRMS平均に鑑みた乗員認識レベルの合計であり得る。FRFは、電気モータ20のパルスに関する乗員によるNVHの認識の周波数依存性の改善の推定を含み得る。FRFは、高感受性の周波数範囲を含み得る。例えば、動力伝達系統のねじれ共振、車体の構造的共振、又は人間の乗員はどこでノイズ及び/又は振動に敏感かを含み得る周波数。FRFまた、低感受性の周波数範囲、例えば本来的に感受性が低いか、又は低感受性となるように調整された周波数も特定し得る。
【0055】
あるデューティサイクルについての最適化は、各デューティサイクルについて表に保存された最適化パルストレインを用いてモデル化され得る。表は、各デューティサイクルについての様々な条件に対する最適化パルストレインを含み得る。表に保存される最適化パルストレインは、そのパルストレイン内の各パルスの特性を含む。各パルスの特性には、開始時間、停止時間、パルスの長さ、又はトルクが含まれ得る。パルストレイン内の各パルスの特性を最適化することにより、励起エネルギーを高感受性のFRFの周波数、例えば高振幅のFRFの周波数から、より低感受性のFRFの周波数、例えば低振幅のFRFの周波数に向かってシフトさせることが可能となり得る。幾つかの実施形態において、励起エネルギーは、パルストレインの半分、3分の1、又は4分の1の長さを有するパルスのサブシーケンス又はフレーズの繰り返しに向かってシフトされ得る。これらのパルスのサブシーケンスの繰り返しの結果として、副高調波周波数のグループ全体の振幅がゼロになり得る。例えば、
図7に示されるように、パルストレイン120は、パルス121~124を含む第一のフェーズとパルス125~128を含む第二のフェーズを含み、第一のフェーズと第二のフェーズの各々は、パルストレイン120の長さの半分である。
【0056】
再び
図8及び9を参照すると、変調PWM110のトルクスペクトル及びねじれ振動スペクトルがベースラインPWM10のスペクトルに重ねて示されている。図のように、変調PWM110のスペクトルは同様の振幅の複数のピークを有する。それに加えて、ピークは、
図6に示されるように、自動車の感応周波数である16Hzからシフトしている。特に
図8を参照すると、複数のピークは約10Hzの振幅を有し、それによってこれらのピークはホワイトノイズとして機能し得て、それによってピークは自動車の乗員にとって認識不能であり得る。同様に、
図9に示されるねじれ振動スペクトルは、ピークの振幅が0.5~1RPMへと大きく減少していることを示しており、その範囲においてベースラインPWM10では3RPMを超えるピークとなる。トルクスペクトルと同様に、変調PWM110のねじれ振動スペクトルのピークはホワイトノイズとして機能し得て、それによってピークは自動車の乗員にとって認識不能であり得る。
【0057】
振動を打ち消す方法は電気モータ20のコントローラにおいて実行でき、振動緩和ハードウェア、例えば防振エンジンマウント又はフライホイールは不要である。この方法は、あるデューティサイクルのためのパルスの最適化されたパルストレインを生成して、電気モータのパルシングにより誘導される振動が軽減されるか完全に打ち消されるようにすることを含む。パルストレインは、モータの励起エネルギーを、感度の高い被駆動機のFRFの周波数からより感度の低い被駆動機のFRFの周波数へとシフトするように最適化され得る。励起エネルギーのこのシフトは、被駆動機のねじれ振動応答全体が定常フェーズのパルセーションと比較して最小化され、他方でインバータの限度内で動作し、電気モータ20のパルシングからの効率向上が保持されるような方法で行われ得る。電気モータ20を励起させるために、電気モータ20のコントローラは、電気モータ20に信号を提供するか、電流を提供することができる。振動を打ち消す方法200は、コントローラが電気モータをパルシングさせるときは常にアクティブとされても、又は電気モータ20を定常PWMでパルシングさせることによって被駆動機のNVHが容認不能となるような場合のみ、アクティブとされてもよい。
【0058】
各デューティサイクル及び/又は動作条件について最適化又は変調されたパルストレインは、生成されて表に保存されるか、リアルタイムで生成され得る。デューティサイクルについて最適化されたパルストレインを生成するために、ベースラインPWMの周波数は、広いデューティサイクル範囲にわたるオプションを提供するように選択され得る。例えば、40HzのベースラインPWM周波数が開始点として選択され得る。パルストレインは、様々なモータ速度に関して10%~90%までの複数のデューティサイクルについて5%、10%、又は20%刻みでモデル化され得る。各パルストレインモデルは、各パルスのための、費用関数を最小化するように最適化された開始時間、停止時間、及びパルストルクを有し得る。これらのパルストレインモデルは表に保存され得て、それによって、デューティサイクルが電気モータ20のコントローラから要求されたときに、コントローラはそのデューティサイクルのパルストレインモデルを参照できる。
【0059】
コントローラが要求されたデューティサイクルを受け取ると、コントローラは、要求されたデューティサイクルに基づいてパルストレインモデルを特定できる。幾つかの実施形態において、コントローラは、要求されたトルクと、モータ速度等の他の動作条件に基づいてパルストレインを特定できる。要求されたデューティサイクルがパルストレインモデルを有する場合、コントローラは、モデルの通りに電気モータ20が励起されるように指示する。要求されたデューティサイクルが2つのパルストレインモデル間にあるとき、コントローラは、要求されたデューティサイクルより高いデューティサイクルのためのパルストレインと要求されたデューティサイクルより低いデューティサイクルとの間を補間し得る。幾つかの実施形態において、コントローラは、そのためのパルストレインモデルがある要求されたデューティサイクルに最も近いデューティサイクルを特定することによってパルストレイン間を補間し、要求されたデューティサイクルを提供するためにパルストレインモデル内の各パルスの長さを増減し得る。
【0060】
特定の実施形態において、隣接するデューティサイクルは相互に異なるパルストレインモデルを有し得て、それにより、新たなデューティサイクルが要求されたとき、コントローラは、以前のパルストレインの終了点を特定するか、又はパルストレイン内に中止点を作り、新たに要求されたデューティサイクルのための新たなパルストレインに切り替え得る。以前のパルストレインと新たなパルストレインが相互に大きく異なる場合、例えば異なる境界を有する場合、コントローラは以前のパルストレインと新たなパルストレインを切り替えるためにブリッジパルストレインを生成し得る。コントローラは費用関数解析を行って、新たなパルストレインに切り替える場合より低コストで新たなデューティサイクルを提供するために、ブリッジパルストレインが必要か否か、又は以前のパルストレインを変調できるか、例えばパルス長を変調できるかを特定し得る。しかしながら、コントローラが、捕間された費用関数の、以前のパルストレインのままでいることの不利益は、捕間された費用関数の、新たなパルストレインに切り替えることの不利益を、所定のヒステリシス費用値だけ上回ると判断した場合、コントローラは新たなパルストレインに切り替える。
【0061】
図13を参照すると、本開示の実施形態による電気モータのパルシングによる振動を打ち消す方法が詳しく示され、概して方法200として示されている。方法200はコントローラ上で実行され、それが標的トルクを駆動コンポーネントに送達させる信号を電気モータに提供する。方法200は、
図5の電気モータ20及び自動車10のモデルにしたがって説明される。しかしながら、駆動コンポーネントは自動車の駆動軸又は車軸であっても、1つの機器を回転させるための駆動軸であってもよい。
【0062】
方法200は、電気モータ20のコントローラが電気モータ20から標的トルクを要求する入力信号を受け取ることを含み得る(ステップ210)。コントローラは、要求された標的トルクを解析して、その標的トルクが電気モータ20の連続動作範囲内にあるかを特定する(ステップ220)。連続動作範囲は、電気モータ20の最適効率点かそれより高いトルクの範囲であり得る。連続動作範囲は、電気モータ20の最適効率点より低いトルクの範囲を含み得る。例えば、電気モータ20の最適効率点が電気モータ20の最大トルクの60%である場合、連続動作範囲は電気モータ20の最大トルクの40%~100%であり得る。連続動作範囲は、電気モータ20の連続動作が、電気モータ20をパルシングさせてそのデューティサイクルを小さくすることによって要求されたトルクを提供する場合より高い効率を有するトルク範囲をカバーし得る。
【0063】
要求された標的トルクが連続動作範囲内にあるとき、コントローラは、電気モータ20を動作させて標的トルクを連続トルクとして送達する(ステップ230)。
【0064】
要求された標的トルクが連続動作範囲より低い場合、コントローラは、電気モータ20をパルシングさせるために最適な効率のトルク又は点を選択し、電気モータ20が標的トルクを送達するためのデューティサイクルを計算する(ステップ240)。デューティサイクルは、電気モータ20をパルシングさせる間に電気モータ20から送達されるトルクを標的トルクに設定するように調整される。例えば、電気モータ20から送達されるトルクを大きくするために、デューティサイクルは増大され、電気モータ20から送達されるトルクを小さくするために、デューティサイクルは縮小される。
【0065】
選択されたデューティサイクルで、コントローラは、デューティサイクル及び動作条件に鑑みて標的トルクを送達するためのパルスのパルストレインを生成する(ステップ250)。生成されるパルストレインは、標的トルクを送達しながら被駆動機内の応答を減少させるように最適化される。生成されるパルストレインは、パルス数及び/又は、パルストレイン内の各パルスの開始時間、停止時間、パルス長、又はトルク若しくは振幅を含み得る。生成されるパルストレインは、被駆動機のFRFについて、及び/又は動作条件について最適化され得る。パルストレインを生成するステップは、コントローラがデューティサイクル及び適用可能な動作条件を特定し、デューティサイクル及び動作条件を含む表から最適化されたパルストレインを参照することを含み得る。動作条件には、天候、乗客及び/若しくは積荷の重量、傾斜、道路状態、音響設定(ラジオの音量)、温度、モータ速度(RPM)、自動車の速さ、速度、又は加速度が含まれ得るがこれらに限定されない。幾つかの実施形態において、パルストレインを生成するステップは、計算されたデューティサイクルのみに基づいて決定される。
【0066】
特定の実施形態において、パルストレインを生成するステップは、コントローラがパルストレインのパルス数及び/又はパルストレイン内の各パルスの開始時間、停止時間、パルス長、トルク若しくは振幅をリアルタイムで特定することを含み得る。特定の実施形態において、パルストレインを生成するステップは、生成されたパルストレインを、振動センサ、加速度計、及び音響センサを含むがこれらに限定されない被駆動機のリアルタイムのセンサデータに基づいて最適化するステップを含み得る。
【0067】
パルストレインが生成されると、コントローラは生成されたパルストレインで電気モータをパルシングさせる(ステップ260)。コントローラは、コントローラが新たな標的トルクを受け取るまで、生成されたパルストレインで電気モータ20をパルシングさせ得る。
【0068】
これまでに詳述したコントローラはスタンドアロン型コントローラでも、他のコントローラの一部であってもよい。コントローラはプロセッサとメモリを含む。コントローラはまた、所望のトルク等の入力を受け取るための入力を含み得る。コントローラはモータ出力を含み、これは電気モータと信号通信して、標的トルクを提供するように電気モータを動作させる。これまでに詳述した方法は、コントローラのプロセッサ上で実行されると、コントローラに方法200を含む、これまでに詳述した方法を実行させる非一時的コンピュータ可読媒体としてコントローラのメモリに保存され得る。
【0069】
本開示の幾つかの実施形態が図面に示されているが、本開示はそれに限定されることは意図されておらず、これは、本開示が技術的に可能なかぎり広い範囲を有し、本明細書もそのように読み取られることが意図されているからである。上述の実施形態のあらゆる組合せが想定され、付属の特許請求項の範囲内に含まれる。したがって、上述の説明は限定的と解釈すべきではなく、単に特定の実施形態の事例として解釈すべきである。当業者であれば、本明細書に付属特許請求の範囲内での他の変更も着想するであろう。
【国際調査報告】