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特表2024-510113耐硫黄性の金属促進小細孔ゼオライト触媒
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  • 特表-耐硫黄性の金属促進小細孔ゼオライト触媒 図1
  • 特表-耐硫黄性の金属促進小細孔ゼオライト触媒 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】耐硫黄性の金属促進小細孔ゼオライト触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20240228BHJP
   B01J 38/04 20060101ALI20240228BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240228BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240228BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01J38/04 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 B
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550212
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 CN2022076833
(87)【国際公開番号】W WO2022174814
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/076917
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チアティー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ウェン-メイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シヤオファン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイヨン
(72)【発明者】
【氏名】バイラム,ブルク
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ユイフェン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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3G091AA18
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4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本発明は、-基材、及び-硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がX線粉末回折により決定して10Å未満であることを特徴とする結晶構造を有する、銅含有小細孔ゼオライト、を含み、硫化及び脱硫が本明細書に記載のプロセスによって行われるSCR触媒物品、及びこれを含む排気処理システムに関する。本発明はまた、金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法、及び金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR触媒物品であって、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がX線粉末回折により決定して10Å未満であることを特徴とする結晶構造を有する、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
前記硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、前記SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、前記SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、前記SCR触媒物品に通すことにより行われ、前記SCR触媒物品は前記硫化の前に水熱エージングされており、そして
前記脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、前記硫化に供した前記SCR触媒物品に通すことにより行われる、SCR触媒物品。
【請求項2】
前記小細孔ゼオライトが、9Å未満、又は8Å未満、又は7Å以下の硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少により特徴づけられる結晶構造を有する、請求項1に記載のSCR触媒物品。
【請求項3】
前記小細孔ゼオライトが、例えば骨格型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC及びWENを有する小細孔8環ゼオライトである、請求項1又は2に記載のSCR触媒物品。
【請求項4】
前記小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT及びSAVからなる群から選択される、具体的にはAEI、AFT、AFX及びCHAからなる群から選択される骨格型、好ましくはCHAを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項5】
前記小細孔ゼオライトが、特にシリカ対アルミナモル比を2~300、例えば5~250、5~200、5~100、又は5~60の範囲で有するアルミノシリケートゼオライトから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトが、CHA骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトから選択され、シリカ対アルミナ比を5~60、例えば10~60、11~50、11~40、又は12~35の範囲で有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項7】
前記小細孔ゼオライトが、走査型電子顕微鏡で測定して0.05~5ミクロン、0.05~1ミクロン、0.5~2ミクロン、又は0.8ミクロン~1.5ミクロンの範囲の平均結晶サイズを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項8】
前記銅含有小細孔ゼオライトが、CuOとして計算され、揮発分を含まない前記銅含有小細孔ゼオライトの総質量に対して、少なくとも約0.1質量%、例えば0.1質量%~20質量%、0.5質量%~17質量%、2質量%~15質量%、2質量%~10質量%、又は2質量%~7質量%の範囲のCu含有量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項9】
前記銅含有小細孔ゼオライトが、銅と骨格アルミニウムとのモル比を0.1~0.5、例えば0.25~0.5又は0.30~0.50の範囲で有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項10】
前記銅含有小細孔ゼオライトが、硫化及び脱硫時の原子S/Cu比を0.15未満、例えば0.1以下で有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項11】
前記基材がウォールフロー基材又はフロースルー基材である、請求項1から10のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項12】
前記銅含有小細孔ゼオライトが、前記基材上に直接又は間接的に、典型的にはウォッシュコートの形態で沈着される、請求項1から11のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項13】
硫化及び脱硫時の200℃でのNOx転化率の回復率が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は80%超でさえある、請求項1から12のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項14】
SCR触媒物品であって、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の200℃でのNOx転化率の回復率が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は80%超でさえある、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
前記硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、前記SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、前記SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、前記SCR触媒物品に通すことにより行われ、前記SCR触媒物品は前記硫化の前に水熱エージングされており、そして
前記脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、前記硫化に供した前記SCR触媒物品に通すことにより行われる、SCR触媒物品。
【請求項15】
- 内燃機関、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジン、及び
- エンジンの下流に位置し且つ流体連通している、請求項1から14のいずれか一項に記載のSCR触媒物品
を含む、排気処理システム。
【請求項16】
NOxを含む排気流を処理する方法であって、前記排気流と、請求項1から14のいずれか一項で定義されたSCR触媒物品又は請求項15で定義された排気処理システムとを接触させることを含む方法。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項で定義された銅含有小細孔ゼオライトをSCR触媒として使用する方法。
【請求項18】
金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法であって、
- SCR触媒物品を提供するための、前記金属促進小細孔ゼオライトを基材に適用することによる、調製する工程、
- 35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、前記SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、前記SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を硫化したSCR触媒物品に提供する期間、前記SCR触媒物品に通すことによるものであり、前記SCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされている、硫化する工程、
- 10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、前記硫化したSCR触媒物品に通すことによる、脱硫する工程、及び
- X線粉末回折により硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積を決定する工程、
を含み、
脱硫後の前記金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積が硫化前の前記金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積より小さく、差が10Å未満、好ましくは9Å未満、又は8Å未満、又は7Å以下である場合、前記金属促進小細孔ゼオライトは不可逆的な硫黄被毒に耐性がある、方法。
【請求項19】
金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法であって、
- 基材及びその上に対照金属促進小細孔ゼオライトを含み、硫化及び脱硫時に、例えば70%以上の最低限の適格なNOx転化率の回復率を有する、触媒物品を提供する工程:
【数1】
- 硫化前及び脱硫後の前記対照金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積変化を、X線粉末回折によって決定(単位セル体積変化の所定値という)する工程、
- 評価対象となる、基材及びその上に前記金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品を調製する工程、
- 硫化前及び脱硫後の前記金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を、対照金属促進小細孔ゼオライトを含む前記触媒物品と同じ条件下で、X線粉末回折によって決定する工程、
- 前記金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を前記所定値と比較する工程、
が含まれ、
前記金属促進小細孔ゼオライトは、その単位セル体積の変化が前記所定値以下である場合、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格であると評価される、方法。
【請求項20】
前記金属促進小細孔ゼオライトが、銅促進小細孔ゼオライト、例えば請求項1から9のいずれか一項で定義された銅含有小細孔ゼオライトから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
硫化及び脱硫時の最低限の適格なNOx転化率の回復率が75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%又は83%超えである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
最低限の適格なNOx転化率の回復率が200℃で決定される、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項19から22に記載の方法であって、
- 前記硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、前記SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、前記SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、前記触媒物品に通すことにより行われ、前記触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
- 脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供した前記SCR触媒物品に通すことにより行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐硫黄性の金属促進小細孔ゼオライト、これを含有する触媒物品、及び内燃機関の排気を処理するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒物品は、内燃機関からの排気を処理するために、現代の内燃機関にとって不可欠である。内燃機関からの排気ガスは、典型的には、粒子状物質(PM)、NO及び/又はNO等の窒素酸化物(NOx)、未燃炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)を含む。窒素酸化物(NOx)の排出制御は、生態系、動植物の生命に対する環境的な悪影響に起因して、常に自動車分野において最も重要な話題の1つである。
【0003】
内燃機関排気、特にディーゼルエンジン排気からNOxを除去するための効果的な技術の1つは、NHを用いたNOxの選択的触媒還元(SCR)である。SCRプロセスに有用な触媒は、例えば、すすフィルタ(粒子状物質の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である)の再生時に遭遇する高温水熱条件下で安定でなければならない。小細孔ゼオライト、特に金属促進小細孔ゼオライトは、広い温度範囲にわたる高いNOx還元活性及び所望の水熱安定性を有するSCR触媒として有望であることが見出されている。
【0004】
熱水老化による失活に加え、SCR触媒の性能に影響を与えるもう1つの重要な要因は、硫黄被毒等の化学被毒である。硫黄被毒は、燃料中の硫黄種及び燃料由来の硫黄含有汚染物質に触媒が累積的に曝露されることに起因する。ディーゼル燃料中の硫黄含有量は近年大幅に低減されており、例えば、北米では超低硫黄ディーゼル(ULSD)が導入され、硫黄含有量は15ppm未満であることさえある。しかし、大型ディーゼルエンジンの排気処理システムにおいて、触媒がその耐用年数にわたって累積的に曝露されるのは、キログラムに達する量の硫黄であり得る。一部のオフロード用途、又は高硫黄ディーゼル(硫黄350ppm超)が珍しくない或る特定の地域では、状況はさらに悪化さえする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SCR触媒は高温で再生されることがあり、これは普通、すすフィルタの再生中に達成される。硫黄被毒によって劣化したSCR触媒物品のNOx還元活性は、再生によって著しく回復する。しかし、NOx還元活性の損失の一部は再生によって改善することができず、その結果、SCR触媒活性に永久的な硫黄被毒の損傷が生じ、これは不可逆的な硫黄被毒としても知られている。
【0006】
優れたSCR性能を提供し且つ不可逆的な硫黄被毒に耐性がある、金属促進小細孔ゼオライトに対する必要性が存在する。金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを簡易に判定するのに有用な方法に対する別の必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明はSCR触媒物品を提供するものであり、その触媒物品は、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がX線粉末回折により決定して10Å未満であることを特徴とする結晶構造を有する、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、SCR触媒物品に通すことにより行われ、そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供したSCR触媒物品に通すことにより行われる。
【0008】
別の態様において、本発明は、
- 内燃機関、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジン、及び
- エンジンの下流に位置し且つ流体連通している本明細書に記載のSCR触媒物品
を含む、排気処理システムを提供する。
【0009】
さらなる別の態様において、本発明は、排気流と本明細書に記載のSCR触媒物品又は排気処理システムとを接触させることを含む、NOxを含む排気流を処理する方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の銅含有小細孔ゼオライトのSCR触媒としての使用方法を提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法を提供するものであり、この方法は、
- SCR触媒物品を提供するための、金属促進小細孔ゼオライトを基材に適用することによる、調製する工程、
- 35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を硫化したSCR触媒物品に提供する期間、SCR触媒物品に通すことによる、硫化する工程(そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされている)、
- 10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化したSCR触媒物品に通すことによる、脱硫する工程、及び
- X線粉末回折により硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積を決定する工程、
を含み、
脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積が硫化前の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積より10Å未満小さい場合、金属促進小細孔ゼオライトは、不可逆的な硫黄被毒に耐性がある。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法を提供するものであり、この方法には、
- 基材及びその上に対照金属促進小細孔ゼオライトを含み、硫化及び脱硫時に、例えば70%以上の最低限の適格なNOx転化率の回復率を有する、触媒物品を提供する工程:
【数1】
- 硫化前及び脱硫後の対照金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積変化を、X線粉末回折によって決定(単位セル体積変化の所定値という)する工程、
- 評価対象となる、基材及びその上に金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品を調製する工程、
- 硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を、対照金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品と同じ条件下で、X線粉末回折によって決定する工程、
- 金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を所定値と比較する工程、
が含まれ、
金属促進小細孔ゼオライトは、その単位セル体積の変化が所定値以下である場合、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格であると評価される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、硫化及び脱硫時の実施例2及び4による銅含有小細孔ゼオライトのS残留物の含有量と、それぞれの原子S/Cu比を示すグラフを示す。
図2図2は、実施例1~4によるCu/SSZ13を含む触媒物品について試験した、硫化前及び脱硫後のNOx転化率、及びNOx転化率の回復率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に記載する。本発明は、多くの異なる方法で具体化され得、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されないものであることを理解されたい。
【0015】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかにそうではない指示がない限り、複数の参照を含む。「含む」、「含んでいる」等の用語は、「含有する」、「含有」等と互換的に使用され、非限定的で開放的に解釈される。すなわち、例えば、さらなる成分又は要素が存在し得る。「からなる」又は「本質的に…からなる」又は同義語の表現は、「含む」又は同義語の中に包含され得る。
【0016】
「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、例えばアンモニア、尿素等の窒素還元剤を使用して、NOxをNに還元する触媒プロセスを指す。
【0017】
本発明の一態様によれば、SCR触媒物品が提供され、そのSCR触媒物品は、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がX線粉末回折により決定して10Å未満であることを特徴とする結晶構造を有する、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、SCR触媒物品に通すことにより行われ、そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供したSCR触媒物品に通すことにより行われる。
【0018】
本明細書で使用する銅含有小細孔ゼオライトという用語は、その中及び/又はその上にイオン交換又は含浸された銅を含む小細孔ゼオライトを指す。銅は、ゼオライト材料に含有される典型的な金属促進剤であり、SCR触媒としてのゼオライト材料の性能を高める。
【0019】
銅含有小細孔ゼオライトは、一般に、CuOとして計算され、揮発分を含まない銅含有小細孔ゼオライトの総質量に対して、少なくとも0.1質量%のCu含有量を有する。いくつかの実施形態において、Cu含有量は、0.1質量%~20質量%、例えば0.5質量%~17質量%、2質量%~15質量%、2質量%~10質量%、又は2質量%~7質量%の範囲であり、各場合ともCuOとして計算され、揮発分を含まない銅含有小細孔ゼオライトの総質量に対して求められる。いくつかの他の実施形態では、Cu含有量は、Cuと、銅含有小細孔ゼオライト内の骨格アルミニウムとの比として表される。例えば、銅含有小細孔ゼオライトは、銅と骨格アルミニウムとのモル比を0.1~0.5、例えば0.25~0.5又は0.30~0.50の範囲で有する。
【0020】
「小細孔ゼオライト」という用語は、約5オングストローム(Å)より小さい細孔開口部を有するゼオライトを指す。
【0021】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトは小細孔8環ゼオライトでよい。「8環ゼオライト」という用語は、8環の細孔開口部を有するゼオライトを指す。いくつかの8環ゼオライトは二重6環(d6r)の二次構築単位を有し、そこでは4環による二重6環構築単位の接続の結果としてケージ状の構造が形成される。例示的な小細孔8環ゼオライトには骨格型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC及びWENが含まれる。
【0022】
いくつかの具体的な実施形態では、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT及びSAVからなる群から選択される骨格型を有する。いくつかのさらなる実施形態では、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX及びCHAからなる群から選択される骨格型を有する。或る特定の実施形態では、小細孔ゼオライトはCHA骨格型を有する。
【0023】
より詳細には、小細孔ゼオライトは、CHA骨格型を有するゼオライトから選択され、例えば、アルミノシリケートゼオライト、ボロシリケートゼオライト、ガロシリケートゼオライト、SAPOゼオライト、ALPOゼオライト、MeAPSOゼオライト、又はMeAPOゼオライトであってよい。CHA骨格型を有する好適なゼオライトには、限定するものではないが、天然チャバザイト、SSZ-13、SSZ-62、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、CuSAPO-34、CuSAPO-44、CuSAPO-47及びZYT-6が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態において、小細孔ゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトから選択される。アルミノシリケートゼオライトは、広範囲にわたる様々なシリカ対アルミナ比を有してよい。いくつかの実施形態において、シリカ対アルミナモル比(SAR)は、2~300、例えば5~250、5~200、5~100、又は5~60の範囲であってよい。
【0025】
いくつかの具体的な実施形態では、小細孔ゼオライトは、CHA骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトから選択される。CHA骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトは、シリカ対アルミナ比を2~200、例えば5~150、5~100、5~100、又は5~80の範囲で有してよい。いくつかのさらなる実施形態では、シリカ対アルミナ比は、5~60、例えば10~60、11~50、11~40、又は12~35の範囲であってよい。
【0026】
小細孔ゼオライトは、天然又は合成のものであってよく、好ましくは合成ゼオライトである。CHA骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトの商業的に入手可能な合成形態の1つとして、本発明においてSSZ-13が特に言及され、これは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS4,544,538Aに記載の方法によって合成してもよい。
【0027】
一般に、本発明において有用な小細孔ゼオライトは、平均結晶サイズを広範囲にわたって様々に有し、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定して0.05~5ミクロン、0.05~1ミクロン、0.5~2ミクロン、又は0.8ミクロン~1.5ミクロンで有する。
【0028】
本発明において有用な銅含有小細孔ゼオライトは、好ましくは、X線粉末回折により決定して9Å未満、又は8Å未満、又は7Å以下の硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少により特徴づけられる結晶構造を有する。
【0029】
基材は一般に、セラミック又は金属ハニカム構造であり、構造の一端から他端まで延びる微細で平行なガス流通路を有する。
【0030】
基材を構成するのに有用な金属材料には、耐熱金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレス鋼、さらに鉄が実質的又は主要成分である他の合金が含まれる。このような合金は、1つ以上のニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有してよく、そしてこれらの金属の総量は、有利には、少なくとも15質量%の合金、例えば10~25質量%のクロム、3~8%のアルミニウム、及び20質量%以下のニッケルを含んでよい。合金は、少量又は微量の1つ以上の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタン等を含有してもよい。金属基材の表面を、高温、例えば1000℃以上で酸化して基材の表面に酸化物層を形成し、合金の耐食性を向上させ、そしてウォッシュコート層の金属表面への付着を容易にしてよい。
【0031】
基材を構成するのに有用なセラミック材料には、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージェライト、ムライト、コージェライト-アルミナ、シリコンニトリド、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ及びアルミノシリケートが含まれる。
【0032】
本発明の文脈内で、モノリシックフロースルー基材が好ましく、これは、基材の入口から出口に延びる複数の微細で平行なガス流通路を有し、通路が、そこを通る流体の流れに対して開かれている基材である。通路は、その流体入口からその流体出口まで本質的に直線的な経路であり、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように触媒材料がウォッシュコートとして適用された壁によって規定されている。モノリシック基材の流れ通路は薄壁のチャネルであり、任意の好適な断面形状及びサイズ、例えば台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形等とすることができる。このような構造は、断面の1平方インチ当たり60~900以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含有してよい。例えば、基材は、約400~900、より通例は600~750のセル/平方インチ(「cpsi」)を有してよい。フロースルー基材の壁厚は様々でよく、典型的な範囲は2ミル~0.1インチである。
【0033】
基材が、基材の入口から出口面に沿って延びる複数の微細で平行なガス流通路を有するウォールフロー基材であり、交互の通路が反対側の端部で塞がれていることも可能である。構成には、ガス流がウォールフロー基材の多孔質壁を通って出口面に到達することが必要とされる。ウォールフロー基材は、約700以下のセル/平方インチ(cpsi)、例えば100~700cpsi、典型的には200~300cpsiを含有してよい。セルの断面形状は、上述のように様々とすることができる。ウォールフロー基材の壁厚は様々でよく、典型的な範囲は2ミル~0.1インチである。
【0034】
銅含有小細孔ゼオライトは、基材上に直接又は間接的に(すなわち、中間沈着なしで又は中間沈着なしに)、典型的にはウォッシュコートの形態で沈着させてよい。
【0035】
ここで、「基材上」又は同様の表現への言及は、基材の表面、例えば基材のチャネル壁の表面だけでなく、場合によりチャネル壁の内部細孔も意味する。
【0036】
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野におけるその通例の意味を有し、基材に適用された触媒又は他の材料の薄い付着したコーティングを指す。ウォッシュコートは一般に、液体媒体中に或る一定の固形分(例えば、15~60質量%)の粒子を含有するスラリーを調製することにより形成され、これを次いで基材上に適用し、乾燥及びか焼してウォッシュコート層を提供する。
【0037】
一般に、ウォッシュコートは、バインダー、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア及びジルコニアからなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。存在する場合、バインダーは典型的には、ウォッシュコート総担持量の0.5~15.0質量%の量で含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明によるSCR触媒物品は、2つ以上の異なるウォッシュコートゾーンが担持された基材を含んでよい。これらの実施形態において、銅含有小細孔ゼオライトは、基材上の1つ以上のウォッシュコートゾーンに存在してもよい。
【0039】
本発明において有用な銅含有小細孔ゼオライトは、好ましくは、硫化及び脱硫時の原子S/Cu比を、ICP分析で測定して0.15未満、例えば0.1以下で有する。
【0040】
驚くべきことに、本発明によるSCR触媒物品は、硫化及び脱硫時の200℃でのNOx転化率の回復率が少なくとも70%、例えば少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は80%超でさえあることが見出された。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、
- 内燃機関、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジン、及び
- 基材と、その上に、エンジンの下流に位置し且つ流体連通している本明細書に記載の銅含有小細孔ゼオライトと、を含むSCR触媒物品
を含む、排気処理システムが提供される。
【0042】
いくつかの実施形態において、排気処理システムは、本発明によるSCR触媒物品の上流又は下流に、1つ以上の他の触媒物品を含んでよい。例えば、1つ以上の他の触媒物品は、触媒すすフィルタ(CSF)、ディーゼル酸化触媒(DOC)及び/又は別のSCR触媒物品であってもよい。
【0043】
本発明の別の態様によれば、NOxを含む排気流を処理する方法が提供され、この方法は、排気流と本明細書に記載のSCR触媒物品又は排気処理システムとを接触させることを含む。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法が提供され、この方法は、
- SCR触媒物品を提供するための、金属促進小細孔ゼオライトを基材に適用することによる、調製する工程、
- 35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を硫化したSCR触媒物品に提供する期間、SCR触媒物品に通すことによる、硫化する工程(そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされている)、
- 10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化したSCR触媒物品に通すことによる、脱硫する工程、及び
- X線粉末回折により硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積を決定する工程、
を含み、
脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積が硫化前の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積より10Å未満小さい場合、金属促進小細孔ゼオライトは、不可逆的な硫黄被毒に耐性がある。
【0045】
本発明のさらに別の態様によれば、金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法が提供され、この方法には、
- 基材及びその上に対照金属促進小細孔ゼオライトを含み、硫化及び脱硫時に、例えば70%以上の最低限の適格なNOx転化率の回復率を有する、触媒物品を提供する工程:
【数2】
- 硫化前及び脱硫後の対照金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積変化を、X線粉末回折によって決定(単位セル体積変化の所定値という)する工程、
- 評価対象となる、基材及びその上に金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品を調製する工程、
- 硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を、対照金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品と同じ条件下で、X線粉末回折によって決定する工程、
- 金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を所定値と比較する工程、
が含まれ、
金属促進小細孔ゼオライトは、その単位セル体積の変化が所定値以下である場合、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格であると評価される。
【0046】
ここで「硫化」という用語は、金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品を、SO又はSOとSOとの組み合わせ等の硫黄酸化物を含むガス流に曝露し、触媒物品中に硫黄種を蓄積させるプロセスを指す。よってここで「脱硫」という用語は、熱条件下で触媒物品から硫黄種を除去するプロセスを指す。ここで、除去される触媒品中の硫黄種は、硫黄(S2-)、元素状硫黄(S°)、亜硫酸塩(SO 2-)、及び硫酸塩(SO 2-)の形態であってよく、そして触媒物品から除去される硫黄種は、二酸化硫黄(SO)、三酸化硫黄(SO)、又は硫酸(HSO)の形態であってよい。
【0047】
金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法、及び金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法を、省略して不可逆的な硫黄被毒に対する耐性を判断する方法と称することもある。
不可逆的な硫黄被毒に対する耐性を判断する方法は、SCR触媒として有用な任意の金属促進小細孔ゼオライト、例えば銅促進小細孔ゼオライトに適用可能である。
【0048】
金属は、小細孔ゼオライトに意図的に添加されて、意図的に添加された金属を有しないゼオライトと比較して触媒活性を促進する。促進剤とも呼ばれる金属は、一般に、イオン交換プロセス又は初期湿潤プロセスを用いて小細孔ゼオライトに取り込まれる。従って、このようなイオン交換された小細孔ゼオライトは、しばしば「金属促進されている(metal-promoted)」と呼ばれる。
【0049】
不可逆的な硫黄被毒に対する耐性を判断する方法のための金属促進小細孔ゼオライトの好適な候補として、本発明の第1の一態様について本明細書に記載した銅含有小細孔ゼオライトを挙げることができる。不可逆的な硫黄被毒に対する耐性を判断する方法においては、銅含有小細孔ゼオライトについて記載した任意の記載及び選好が参照により適用される。
【0050】
硫化及び脱硫時の最低限の適格なNOx転化率の回復率は、不可逆的な硫黄被毒に対する金属促進小細孔ゼオライトの耐性の実際的な要求に応じて、任意の値、例えば70%以上、例えば75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%又は83%超に設定してよい。最低限の適格なNOx転化率の回復率は、排ガス中で遭遇し得る所定の温度、特に200℃で決定される。
【0051】
実施形態
様々な実施形態を以下に列挙する。以下に列挙する実施形態は、本発明の範囲内において、あらゆる態様及び他の実施形態と組み合わせてよいことが理解されよう。
【0052】
1. SCR触媒物品であって、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がX線粉末回折により決定して10Å未満であることを特徴とする結晶構造を有する、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、SCR触媒物品に通すことにより行われ、そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供したSCR触媒物品に通すことにより行われる、SCR触媒物品。
【0053】
2. 小細孔ゼオライトが、9Å未満、又は8Å未満、又は7Å以下の硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少により特徴づけられる結晶構造を有する、実施形態1に記載のSCR触媒物品。
【0054】
3. 小細孔ゼオライトが、例えば骨格型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC及びWENを有する小細孔8環ゼオライトである、実施形態1又は2に記載のSCR触媒物品。
【0055】
4. 小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT及びSAVからなる群から選択される、具体的にはAEI、AFT、AFX及びCHAからなる群から選択される骨格型、好ましくはCHAを有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0056】
5. 小細孔ゼオライトが、特にシリカ対アルミナモル比を2~300、例えば5~250、5~200、5~100、又は5~60の範囲で有するアルミノシリケートゼオライトから選択される、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0057】
6. 小細孔ゼオライトが、CHA骨格型を有するアルミノシリケートゼオライトから選択され、シリカ対アルミナ比を5~60、例えば10~60、11~50、11~40、又は12~35の範囲で有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0058】
7. 小細孔ゼオライトが、走査型電子顕微鏡で測定して0.05~5ミクロン、0.05~1ミクロン、0.5~2ミクロン、又は0.8ミクロン~1.5ミクロンの範囲の平均結晶サイズを有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0059】
8. 銅含有小細孔ゼオライトが、CuOとして計算され、揮発分を含まない銅含有小細孔ゼオライトの総質量に対して、少なくとも約0.1質量%、例えば0.1質量%~20質量%、0.5質量%~17質量%、2質量%~15質量%、2質量%~10質量%、又は2質量%~7質量%の範囲のCu含有量を有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0060】
9. 銅含有小細孔ゼオライトが、銅と骨格アルミニウムとのモル比を0.1~0.5、例えば0.25~0.5又は0.30~0.50の範囲で有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0061】
10. 銅含有小細孔ゼオライトが、硫化及び脱硫時の原子S/Cu比を0.15未満、例えば0.1以下で有する、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0062】
11. 基材がウォールフロー基材又はフロースルー基材である、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0063】
12. 銅含有小細孔ゼオライトが、基材上に直接又は間接的に、典型的にはウォッシュコートの形態で沈着される、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0064】
13. 硫化及び脱硫時の200℃でのNOx転化率の回復率が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は80%超でさえある、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品。
【0065】
14. SCR触媒物品であって、
- 基材、及びその上に
- 硫化及び脱硫時の200℃でのNOx転化率の回復率が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は80%超でさえある、銅含有小細孔ゼオライト
を含み、
硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、SCR触媒物品に通すことにより行われ、そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供したSCR触媒物品に通すことにより行われる、SCR触媒物品。
【0066】
15. - 内燃機関、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジン、及び
- エンジンの下流に位置し且つ流体連通している、先行する実施形態のいずれかに記載のSCR触媒物品
を含む、排気処理システム。
【0067】
16. NOxを含む排気流を処理する方法であって、その排気流と、先行する実施形態1から14のいずれかで定義されたSCR触媒物品又は実施形態15で定義された排気処理システムとを接触させることを含む方法。
【0068】
17. 先行する実施形態1から14のいずれかで定義された銅含有小細孔ゼオライトをSCR触媒として使用する方法。
【0069】
18. 金属促進小細孔ゼオライトが不可逆的な硫黄被毒に耐性があるかどうかを判定する方法であって、
- SCR触媒物品を提供するための、金属促進小細孔ゼオライトを基材に適用することによる、調製する工程、
- 35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を硫化したSCR触媒物品に提供する期間、SCR触媒物品に通すことによる、硫化する工程(そのSCR触媒物品は硫化の前に水熱エージングされている)、
- 10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化したSCR触媒物品に通すことによる、脱硫する工程、及び
- X線粉末回折により硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積を決定する工程、
を含み、
脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積が硫化前の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積より小さく、差が10Å未満、好ましくは9Å未満、又は8Å未満、又は7Å以下である場合、金属促進小細孔ゼオライトは、不可逆的な硫黄被毒に耐性がある、方法。
【0070】
19. 金属促進小細孔ゼオライトの不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格かどうかを評価する方法であって、
- 基材及びその上に対照金属促進小細孔ゼオライトを含み、硫化及び脱硫時に、例えば70%以上の最低限の適格なNOx転化率の回復率を有する、触媒物品を提供する工程:
【数3】
- 硫化前及び脱硫後の対照金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積変化を、X線粉末回折によって決定(単位セル体積変化の所定値という)する工程、
- 評価対象となる、基材及びその上に金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品を調製する工程、
- 硫化前及び脱硫後の金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を、対照金属促進小細孔ゼオライトを含む触媒物品と同じ条件下で、X線粉末回折によって決定する工程、
- 金属促進小細孔ゼオライトの単位セル体積の変化を所定値と比較する工程、
が含まれ、
金属促進小細孔ゼオライトは、その単位セル体積の変化が所定値以下である場合、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性が適格であると評価される、方法。
【0071】
20. 金属促進小細孔ゼオライトが、鉄促進小細孔ゼオライト及び銅促進小細孔ゼオライト、特に銅促進小細孔ゼオライト、例えば実施形態1から9のいずれかで定義された銅含有小細孔ゼオライトから選択される、実施形態19に記載の方法。
【0072】
21. 硫化及び脱硫時の最低限の適格なNOx転化率の回復率が75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%又は83%超である、実施形態19又は20に記載の方法。
【0073】
22. 最低限の適格なNOx転化率の回復率が200℃で決定される、実施形態19から21のいずれかに記載の方法。
【0074】
23. 実施形態19から22に記載の方法であって、
- 硫化は、35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、650℃の入口温度下でPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)に通し、SOを部分的に酸化してSO対SO比を30:70とし、次いで、400℃の出口温度下で、SCR触媒物品の体積に対して10,000hr-1の空間速度で、SCR触媒物品の体積に対して40g/LのS曝露を提供する期間、SCR触媒物品に通すことにより行われ、その触媒物品は硫化の前に水熱エージングされており、そして
- 脱硫は、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nを含有するガス流を、60,000h-1の空間速度で、550℃で30分間、硫化に供したSCR触媒物品に通すことにより行われる、方法。
【実施例
【0075】
本発明の態様を、以下の実施例によってより完全に記載するが、これらの実施例は、本発明の特定の態様を説明するために記載され、それを限定するものとして解釈されるものではない。
【0076】
I. 調製実施例
実施例1 Cu/SSZ-13粉末を含む触媒物品の調製(SAR=30、CuO%=3.25質量%)
トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)をテンプレートとして用い、そして水酸化ナトリウムをOHのさらなる源として用いて、SSZ-13を結晶化した。合成ゲルは、以下のモル比の組成を有していた:
SiO 36:Al 1.2: (TMAdaOH)2.6:NaOH 3.6:HO 379。
【0077】
170℃で40時間の水熱結晶化後、懸濁物をろ過、乾燥し、そして600℃でか焼した。か焼した材料のサンプルをXRDで調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが確認された。得られたSSZ-13のNa形態のICP分析から、この材料のSiO対Al比(SAR)が30であることが示された。
【0078】
攪拌タンクに脱イオン水(78kg)を加え、かき混ぜながら60℃に加熱し、次いで銅アセテート一水和物(1.56kg)を加えた。銅アセテート一水和物が完全に溶解したら、Na/SSZ-13(12kg)をタンクに加え、そして混合を60℃で2時間続けた。懸濁物をプレート及びフレームのフィルタープレスに移し、上澄みを除去した。固体のCu/SSZ-13を濾液の導電率が200マイクロシーメンス未満になるまで脱イオン水で洗浄し、それからフィルタープレス上で風乾した。ICPで測定した銅の担持量は、揮発分を含まないゼオライトの総質量に対して、CuOとして3.25質量%であった。
【0079】
95質量部の得られたCu/SSZ-13、及び5質量部のZrOとして計算されるジルコニウムアセテートを、95:5の質量比で脱イオン水中で混合し、スラリーを形成した。次いでこのスラリーを、Sympatec粒度分析器で測定して、7~10μmの粒度D90に粉砕した。粉砕したスラリーを、セル密度600cpsi及び壁厚3ミルを有するフロースルーコージェライトモノリス基材に被覆し、その後130℃で乾燥し、そして450℃でか焼した。ウォッシュコート担持量は2.0g/inであった。
【0080】
実施例2 Cu/SSZ-13粉末を含む触媒物品の調製(SAR=19、CuO%=5.0質量%)
トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)をテンプレートとして用いてSSZ-13を結晶化し、合成ゲルは以下のモル比の組成を有していた:
SiO 20:Al 1.0:TMAdaOH 1.42:NaOH 2.6:HO 220。
【0081】
170℃で30時間の水熱結晶化後、懸濁物をろ過、乾燥し、そして540℃で6時間か焼して、SSZ-13のNa形態を得た(XRDによる特徴付け)。得られたSSZ-13のNa形態のICP分析から、この材料のSiO対Al比(SAR)が19であることが示された。か焼後、SSZ-13のNa形態を、Na含有量がNaOとして500ppm未満であるNH 形態のSSZ-13に交換した。
【0082】
SSZ-13ゼオライトのNH 形態(12kg)を、室温で攪拌反応器中66kgの脱イオン水に添加した。反応器を30分で60℃に加熱した。銅アセテート一水和物(4.67kg、23.38モル)を酢酸(96g、1.6モル)と共に添加した。反応温度を60℃に保ちながら60分間混合を続けた。反応器の内容物をプレート及びフレームのフィルタープレスに移した。固体のCu/SSZ13を濾液の導電率が200マイクロシーメンス未満になるまで脱イオン水で洗浄し、それからフィルタープレス上で風乾した。ICPで測定した銅の担持量は、ゼオライトの総質量に対して、CuOとして5質量%であった。
【0083】
95質量部の得られたCu/SSZ-13、及び5質量部のZrOとして計算されるジルコニウムアセテートを、脱イオン水中で混合してスラリーを形成し、このスラリーを、Sympatec粒度分析器で測定して、7~10μmの粒度D90に粉砕した。粉砕したスラリーを、セル密度600cpsi及び壁厚3ミルを有するフロースルーコージェライトモノリス基材に被覆し、その後130℃で乾燥し、そして450℃でか焼した。ウォッシュコート担持量は2.75g/inであった。
【0084】
実施例3 Cu/SSZ-13粉末を含む触媒物品の調製(SAR=18、CuO%=5.6質量%)
トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)をテンプレートとして用いてSSZ-13を結晶化し、合成ゲルは以下のモル比の組成を有していた:
SiO 35:Al 1.0:TMAdaOH 3.15:Na 28.7:OH 17.5:HO 1120。
【0085】
140℃で42時間の水熱結晶化後、懸濁物をろ過、乾燥し、そして540℃で6時間か焼して、SSZ-13のNa形態を得た(XRDによる特徴付け)。得られたSSZ-13のNa形態のICP分析から、この材料のSiO対Al比(SAR)が18であることが示された。か焼後、SSZ-13のNa形態を、Na含有量がNaOとして500ppm未満であるNH 形態のSSZ-13に交換し、次いで450℃で6時間か焼してSSZ-13の水素形態を得た。
【0086】
85.4質量部のSSZ-13の水素形態、5.1質量部のCuO、及び4.8質量部のZrOとして計算されるジルコニウムアセテートを、脱イオン水中で混合してスラリーを形成した。このスラリーを、Sympatec粒度分析器で測定して、4~6μmの粒度D90に粉砕した。このスラリーを室温で24時間混合し、銅イオンをゼオライト骨格に交換した。非分散性ベーマイトアルミナを全スラリー固形分の4.8質量%の量でスラリー中に混合した。最終スラリーを、セル密度600cpsi及び壁厚3ミルを有するフロースルーコージェライトモノリス基材に被覆し、その後130℃で乾燥し、そして550℃でか焼した。ウォッシュコート担持量は2.9g/inであった。
【0087】
実施例4 Cu/SSZ-13粉末を含む触媒物品の調製(SAR=10、CuO%=6.8%)
トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)をテンプレートとして用いてSSZ-13を結晶化し、合成ゲルは以下のモル比の組成を有していた:
SiO 35:Al 1.0:TMAdaOH 1.03:Na 28.4:OH 24.2:HO 423.5。
【0088】
140℃で24時間の水熱結晶化後、懸濁物をろ過、乾燥し、そして540℃で6時間か焼して、SSZ-13のNa形態を得た(XRDによる特徴付け)。得られたSSZ-13のNa形態のICP分析から、この材料のSiO対Al比(SAR)が10であることが示された。か焼後、SSZ-13のNa形態を、Na含有量がNaOとして1000ppm未満のSSZ-13のNH 形態に交換し、次いで450℃で6時間か焼してSSZ-13の水素形態を得た。
【0089】
84.3質量部のSSZ-13の水素形態、6.2質量部のCuO、及び4.8質量部のZrOとして計算されるジルコニウムアセテートを、脱イオン水中で混合してスラリーを形成した。このスラリーを、Sympatec粒度分析器で測定して、7~10μmの粒度D90に粉砕した。このスラリーを室温で24時間混合し、銅イオンをゼオライト骨格に交換した。全スラリー固形分の2.4質量%の量の非分散性ベーマイトアルミナと、全スラリー固形分の2.4質量%の量の分散性ベーマイトアルミナをスラリー中に混合した。最終スラリーを、セル密度600cpsi及び壁厚3ミルを有するフロースルーコージェライトモノリス基材に被覆し、次いで130℃で乾燥し、550℃でか焼した。ウォッシュコート担持量は2.9g/inであった。
【0090】
実施例5 Pt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)の調製
ドープした5%のSiO-Al材料に希釈したテトラアミン白金(II)水酸化物錯体溶液を含浸させ、得られた材料を脱イオン(DI)水に添加してスラリー懸濁物を形成した。スラリー懸濁物のpHを希釈したHNOで4~5に調整した。このスラリーをD90=12~15umに粉砕し、アルミナバインダー材料を全スラリー固形分に対して2.5質量%の量で添加した。次いでこのスラリーを、セル密度400cpsi及び壁厚4ミルを有するフロースルーハニカム基材に固形分30~45%で被覆した。乾燥後、触媒を空気中590℃で1時間か焼した。ウォッシュコート担持量は1.037g/inであり、そしてPt担持量は10g/ftであった。
【0091】
II. 測定及び試験
II.1 硫化及び脱硫
硫化
実施例5で調製したPt含有ディーゼル酸化触媒(DOC)を、SCR触媒の上流に配置した。SCR触媒は、10体積%のHO、10体積%のO及び残部Nを含有する雰囲気中、流速20L/分で、650℃で100時間の水熱エージングを行ったものであった。35ppmvのSO、350ppmvのNO、10体積%のO、10体積%のHO、及び残部Nを含有するガス流を、SCR触媒の体積に対して10,000時間-1の空間速度でDOC及びSCR触媒に通した。DOC触媒の入口温度は650℃に維持され、SCR触媒の出口温度は400℃に維持された。ガス流に含有されるSOは、DOCを通過する際に、SO対SO比30:70でSOに酸化された。ガス流は、SCRの体積に対して40g/LのS曝露を生じさせる時間継続し、硫化SCR触媒を得た。
【0092】
脱硫
10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO及び残部Nを含有するガス流を、空間速度60,000h-1、550℃で30分間、硫化SCR触媒に通過させ、脱硫SCR触媒を得た。
【0093】
II.2 測定
単位セル体積(UCV)
単位セル体積はX線粉末回折(XRD)で測定した。各SCR触媒物品の基材から、タングステンニードルを用いてウォッシュコートを除去した。次いで、乳鉢と乳棒を用いて粉末を粉砕した。次いで粉砕した粉末を、分析用にSi低バックグラウンドウェハーにフロントパックした。θ-θ PANalytical X’Pert Pro MPD X線回折システムを使用して、ブラッグ-ブレンターノ幾何学でデータを収集した。光路は、X線管、0.04radのソーラースリット、1/8°の分岐スリット、15mmのビームマスク、1/4°の散乱防止スリット、サンプル上のビームナイフ、1/8°の散乱防止スリット、0.04radのソーラースリット、Niフィルタ、及びX’Celerator線形位置検出器(有効長2.122°)からなっていた。45kV、40mAの発電機設定でCu Kα放射を分析に用いた。X線回折データは、ステップサイズ0.017°、1ステップ当たりのカウント時間60秒で、3°~70°の2θから収集した。位相同定はJadeソフトウェアを用いて行い、定量はTopasソフトウェアを用いて行った。
【0094】
ゼオライト表面積(ZSA)
ゼオライト表面積(ZSA)は、ミクロ細孔表面積(直径2nm以下の細孔)の尺度であり、ウォッシュコート及び基材を含む触媒物品1gあたりのゼオライト表面積(m)を意味するm/gで表される。ZSAは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願62/517,243に詳細に記載されているように、BET N吸着により測定した。触媒物品は、基材からコーティングを除去することなく、そして分析前に触媒物品を破砕することなく測定した。
【0095】
S/Cu原子比
硫化及び脱硫時の銅含有小細孔ゼオライトの原子S/Cu比は、不可逆的な硫黄被毒の指標であり、粉砕した触媒品についてICP分析を介してS及びCuの含有量を測定し、その原子比を求めることによって決定される。
【0096】
硫化前(Pre)及び脱硫後(Post)の単位セル体積及びゼオライト表面積の測定結果及び原子S/Cu比を、以下の表1にまとめる。実施例2及び実施例4のCu/SSZ-13ゼオライトについて決定した原子S/Cu比を図1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
II.3 NOx転化試験
NOx転化率は、フロー反応器を用いて、温度200℃の擬似定常状態条件下、1000ppmvのNO、1050ppmvのNH、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部Nのガス流を用いて、空間速度60,000h-1で試験した。NOx転化率はモル%として報告し、NO及びNOとして測定される。
【0099】
硫化及び脱硫プロセスにおけるNOx転化率の回復率は、以下の式に従い計算した:
【数4】
【0100】
NOx転換率及びNOx転換回収率を、以下の表2にまとめる。
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示すように、実施例1~3の触媒物品は、硫化及び脱硫に際して、実施例4の触媒物品よりも著しく高いNOx転化率の回復率を示し、これは、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性がはるかに良好であることを示している。この結果を図2にグラフで示す。
【0103】
実施例4のSCR触媒について、脱硫を700℃で行った以外は、上記に記載したのと同様の硫化及び脱硫を行った際のNOx転化率の回復率をさらに試験した。より高い脱硫温度は、Cu-CHAゼオライトから硫黄種をより十分に除去するのに役立ち得る。しかしながら、NOx転化率の回復率は72%まで改善したものの、550℃で脱硫した実施例1~3よりもまだ低いことが判明した。
【0104】
特定の理論に拘束されるものではないが、不可逆的な硫黄被毒に対する耐性の改善は、実施例1~3のCu-CHAゼオライトの、硫化及び脱硫時の単位セル体積の減少がより少ないことに起因すると考えられる。
【0105】
本明細書中の本発明を、具体的な実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して多様な変更及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。よって本発明には、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある変更及び変形が含まれることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】