IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-510115有機顔料とアリール変性分岐反応生成物とを含む顔料ペーストを含むコーティング組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】有機顔料とアリール変性分岐反応生成物とを含む顔料ペーストを含むコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240228BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D17/00
C09D133/00
C09D167/00
C09D175/04
C09D5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550216
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022052327
(87)【国際公開番号】W WO2022175076
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21158450.3
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コリヤー,エマーソン キース
(72)【発明者】
【氏名】パテル,チンタンクマール ジャヤンティラル
(72)【発明者】
【氏名】ヤハヴ,アブヒジット
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037CC16
4J037CC24
4J037CC26
4J037EE02
4J037EE28
4J037FF03
4J038CG141
4J038DD001
4J038DG001
4J038DG132
4J038DG262
4J038GA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA17
4J038MA07
4J038MA09
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本願は顔料ペーストを含むコーティング組成物に関し、顔料ペーストは、有機顔料とアリール変性分岐反応生成物(P)とを含み、その反応生成物(P)は、反応した形態で、ポリヒドロキシ官能性コア部分(a)、及びポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位を含むシェル部分(b)を含み、ポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位は、ヒドロキシ基と反応性である官能基を含む単位を介してコア部分に共有結合している。本願はまた、前記コーティング組成物を用いて基材上に硬化したコーティングを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料ペーストを含むコーティング組成物であって、前記顔料ペーストが有機顔料とアリール変性分岐反応生成物(P)とを含み、その反応生成物(P)が、反応した形態で、
(a) ポリヒドロキシ官能性コア部分、及び
(b) ポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位を含むシェル部分
を含み、前記ポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位は、ヒドロキシ基と反応性である官能基を含む単位を介して前記コア部分に共有結合している、コーティング組成物。
【請求項2】
前記シェル部分が、ヒドロキシ基と反応性である官能基を含む単位を介して前記コア部分に共有結合している酸基をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基と反応性である官能基が、カルボキシル基、環状カルボン酸無水物基及びイソシアネート基から選択される、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記芳香族単位が、前記コア部分のヒドロキシル基と少なくとも1つの芳香族又は芳香脂肪族カルボン酸との反応を介して付加される、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシド単位が、前記コア部分のヒドロキシル基と、ポリアルキレンオキシド単位及びイソシアネート基を有する少なくとも1つの成分(e)との反応を介して付加される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレンオキシド単位が、ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシド及びそれらの混合コポリマー、好ましくはポリエチレンオキシドである、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
反応生成物(P)の酸価が10~60mgKOH/gである、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記顔料ペースト中の反応生成物(P)と前記有機顔料の質量比が少なくとも0.55である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記顔料ペーストが、1~20質量%の反応生成物(P)、2~40質量%の有機顔料、40~90質量%の水及び2~20質量%の有機溶媒を含み、質量%は各場合とも組成物の総質量に対するものである、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
顔料(又は顔料固形分)/前記コーティング組成物の全固形分の比が0.05~0.2である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物が、ヒドロキシル官能性アクリル系ポリマー、ヒドロキシル官能性ポリエステル、及び/又はヒドロキシル官能性ポリウレタンを含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記コーティング組成物が水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
基材上に硬化したコーティングを製造する方法であって、以下の工程、
(i) 請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティング組成物を基材上に適用する工程、
(ii) 適用した前記コーティング組成物からフィルムを形成する工程、及び
(iii) 工程(ii)に従って適用したフィルムを硬化させる工程
を含む方法。
【請求項14】
- 工程(ii)及び(iii)の間に、クリアコート組成物を工程(ii)によるフィルムに適用する、及び
- 工程(iii)が、適用した前記クリアコート組成物の硬化も含む、つまりベースコート及びクリアコートの両方のフィルムを一緒に硬化させて多層コーティングが得られる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13及び14に記載の方法で製造されたコーティング又は多層コーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の顔料ペースト、すなわち、有機顔料と特定のアリール変性分岐反応生成物とを含む顔料ペーストを含むコーティング組成物に関する。本発明はまた、前述のコーティング組成物、特に水性コーティング組成物の製造方法に関する。本発明はまた、前述の組成物から製造されたコーティング(コーティング層)に関する。本発明は、コーティング組成物及び顔料ペーストそれぞれを提供し、有機顔料を最適な、それ故小さな粒径で微細に分布且つ安定に統合させ、これによってコーティング層の最適な色彩特性、例えば特に多層コーティングの高い透明性(低い散乱)及び優れた色深度を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本発明を理解するために役立つ情報を提供するが、それは必ずしも先行技術ではない。以下に述べるあらゆる参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
コーティング組成物では、コーティングが最適な色特性を示すために、色の提供に使用される顔料を低減し、且つ最適な粒径(顔料によって異なる)で安定化させなければならない。或る特定の有機顔料を使用して最適な色特性を得るためには、典型的な無機顔料よりもはるかに顔料の粒径を低減する必要がある。有機顔料の吸着特性も異なるので、色特性に影響がもたらされる。典型的には、顔料粒子の機械的な低減及びその後の安定化を促進するために、樹脂が使用される。有機顔料の物理的/化学的性質が無機顔料とは異なり、そして有機顔料の最適な粒径がはるかに小さいことから、無機顔料の分散に使用される樹脂は、最適な有機顔料分散液を作るには効果的ではない。さらに、有機顔料の分散に特化した樹脂は高価である。上記の困難及び課題は、水性コーティング組成物、すなわち、その分散媒体として、専ら又は主として有機溶媒(溶媒とも呼ばれる)ではなく、代わりに、その分散媒体としてかなりの割合の水を含む組成物の場合に、さらにより深刻である。
【0004】
US2019/0106592A1では、アリール変性高分岐ポリオールが第一の変形例において水系(すなわち水性)組成物で、又は第二の変形例において溶媒系組成物で適用されることが記載されている。水系組成物では、クロム化合物を使用しなくても水感性顔料を含む系で貯蔵安定性及び低VOCが達成されるが、この公報は、少量の有機顔料を含み、製造されたコーティング層の最適な色特性をもたらす溶媒系組成物について言及している。
【0005】
US2016/0017175A1は、(a)少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールを、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体と反応させ、ヒドロキシル官能性のコアを形成する工程、(b)コアを、環状カルボン酸無水物と反応させ、カルボン酸官能性の第一の中間生成物を形成する工程、及び(c)第一の中間生成物を、1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物と反応させ、高分岐ポリオールを形成する工程によって調製される可撓性高分岐ポリオールを含む、コーティング組成物を記載している。コーティング組成物は、優れた可撓性を有するコーティング層に硬化され得る。
【0006】
米国特許第6,646,049号において、主要樹脂ポリオールと、反応性中間体としての高分岐ポリオール及び少なくとも1つの架橋剤とを組み合わせて含むコーティング組成物用のバインダーについて開示している。主要樹脂ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリアクリレートのうちの少なくとも1種である。高分岐ポリエステルポリオールは、コーティング系のレオロジーの制御に役立たせるために、イソシアネート、イソシアヌレート、エポキシド、無水物、又はそれらの対応するポリ酸及び/又はアミノプラストと架橋して特定の性質を有するバインダーを形成する反応性希釈剤として使用され得る。高分岐ポリオール、主要樹脂ポリオール、又はこれら両方は、任意に、カルバメート官能基を含む。コーティング組成物は、これらのバインダーを追加の成分と共に使用して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2019/0106592A1
【特許文献2】米国特許第6,646,049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機顔料を含有するコーティング組成物において、顔料の最適な粒径及び分散安定性を含む分散挙動に関して改良を加えて、最適な色特性を呈するコーティング層に導くことが依然として望ましい。また、コーティング組成物は、有機顔料の分散に特化させた特殊樹脂を含む組成物の経済的に実行可能な代替物であり、その一方で、微細な有機顔料粒子を安定化する能力が、従来の分散樹脂よりも優れていることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記で特定された課題は、顔料ペーストを含むコーティング組成物によって解決できることが見出され、その顔料ペーストは、有機顔料とアリール変性分岐反応生成物(P)とを含み、その反応生成物(P)は、反応した形態で、
(a) ポリヒドロキシ官能性コア部分、及び
(b) ポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位を含むシェル部分
を含み、そのポリアルキレンオキシド単位及び芳香族単位は、ヒドロキシ基と反応性である官能基を含む単位を介してコア部分に共有結合している。
【0010】
新規コーティング組成物は、以下で本発明の組成物とも称される。本発明の好ましい実施形態は、以下に続く記載及び従属請求項から明らかである。
【0011】
同様に本発明によって提供されるのは、前述の顔料ペーストの製造方法、及び前述のコーティング組成物、特に水性コーティング組成物の製造方法である。
【0012】
本発明はまた、前述の組成物から製造されたコーティング層、特に、1つの層が本発明の組成物によって製造されたマルチコート塗装系を提供する。
【0013】
本発明のコーティング組成物を使用することにより、コーティング層及びそれぞれのマルチコート塗装系の傑出した性能特性が、それぞれ達成可能であることが明らかになった。言及に値するのは最適な色特性であり、それは、コーティング組成物、特に水性コーティング組成物における、分散安定性を含む顔料の優れた粒径及び分散挙動が理由である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義に用いるパラメータ又は類似の特性については、それぞれの測定方法を明細書に明記し、及び/又は実験のセクションに明示する。
【0015】
「1つ」という表現(又は単数を表す同等の表現)は、他に明示的に定義されていない場合、「少なくとも1つ」と理解される。このような表現の定義は、例えば、「1つのみ(only one)」又は「単官能(monofunctional)」とすることができ、それ故、この表現によって「1つ」のみが対象となり、「複数(more than one)」は対象ではないことが明確にされる。
【0016】
本発明のコーティング組成物は、顔料ペーストを含む。当業者に既知であるように、顔料ペーストは中間生成物であり、顔料及びそれぞれの粒子を、組成物中に適切に統合させるコーティング組成物に適用される。コーティング産業における顔料ペーストは、顔料の分散、ひいては組成物への顔料の統合及び安定化という技術的に複雑なプロセスを著しく容易にする。ペースト中の顔料は最適に湿潤し、そして非常によく分散するので、コーティング組成物でも改善された分布状態が得られる。この結果、コーティング材料及びそこから製造される塗装系の性能特性、例えば塗装系における特に均質な色又は色分布が改善されることは言うまでもない。しかし、これらペーストの製造においては、最適に調整されたペーストを得るために、正確に合致したペーストバインダー成分を使用しなければならない。ペーストバインダーの個々の合致及び正確な選択がなければ、通常は、特定の顔料を最適に分散させることができず、最終的に得られる塗装系の性能特性も最適ではなくなる。言い換えれば、ペースト製造時、すなわち、顔料及びペーストバインダー、及び溶媒及び/又は水、そして必要な場合はさらなる慣用の添加剤を混合し、粉砕/溶解して、顔料の粒径を低減し、微細に分布させ、安定して分散させる場合、ペーストバインダーは大きな役割を果たす。これは特に、導入部分で概説したように、粒径の低減及び安定化/分散化の両方に関して、有機顔料の課題である。驚くべきことに、アリール変性分岐反応生成物(P)は、このようなペーストバインダーとして完璧に好適であり、これは上記の技術的利点が達成されることを意味する。
【0017】
上記から、本発明の文脈では、「顔料ペーストを含むコーティング組成物」という表現は、顔料ペーストがそのものとして、すなわち予め調製されてコーティング組成物に含まれる、すなわち、中間生成物がそれ自体の製造後に組成物のさらなる成分と混合されることを意味すると理解される。従って、このように顔料ペーストがその完成時に含むべき化合物及び溶媒は、本発明によるコーティング組成物の調製の一部として、ペーストそのものが添加される前に、この顔料ペーストに混合/分散される。それ故顔料ペーストは、明らかに、ある時点でコーティング組成物の製造に適用される前に、個別に保存及び輸送することができる組成物そのものである。
【0018】
顔料ペーストの第一の構成要素は、特定の反応生成物(P)である。
【0019】
反応生成物(P)は、コア部分及びシェル部分を含む。コア部分及びシェル部分という用語は、反応生成物(P)の2つの必須部分、すなわち、得られる分子の中央に一次的に位置する第一の部分(すなわち、コア部分)と、コア部分に共有結合し、それ故得られる分子の外側領域に一次的に位置する第二の部分をより明確にし且つ区別するために適用される。ここで「一次(primary)」という用語は、少なくとも技術的合成に関連する理由から、理論的に理想化された定量的変換が理論的期待と完全に一致するとは限らないという事実を指す。むしろ、当業者に既知であるように、例えば副反応が予測される。また、「部分」という語句は、同じ部分に属するため、必ずしも単独で相互に直接共有結合する必要のない化学基及び単位を表すものとして理解される。例えば、シェル部分は、コア部分の異なるヒドロキシル基と反応するように直接共有結合していない個々の単位を含む。
【0020】
反応生成物(P)は、反応した形態で、ポリヒドロキシ官能性コア部分、すなわち、コアを構成する分子のヒドロキシ基が後述のように反応した部分を含む。
【0021】
コアを構成する分子(又は化合物)は化合物(c)と命名され、ポリヒドロキシ官能性である、すなわち、平均して少なくとも3つのヒドロキシ基を含む。これは、反応生成物(P)が分岐しているという事実とも一致する、すなわち、3つの分岐が外向きになるために少なくとも3つの反応側鎖を許容する少なくとも1つの分岐側鎖が存在する。「平均して」という用語は、(cI)モノマーポリヒドロキシ官能性及び/又は(cII)反応生成物/オリゴマー/ポリマー(プレポリマーとも称する)化合物の両方を、コアを構成する分子として適用できることを考慮している。当業者に既知であるように、クラス(cII)は、例えば平均分子量又は平均ヒドロキシ官能価のような平均化されたパラメータによってのみ記述され得るオリゴマー又はポリマー化合物のような化合物を含む。
【0022】
化合物(c)は、トリオール、トリオールのダイマー、テトロール、テトロールのダイマー、及び糖アルコールのようなモノマーポリオール(cI)から選択される。3個以上のヒドロキシル基を有する好適なポリオールの非限定的な例には、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,3-トリメチロールブタン-1,4-ジオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール又はグリセロールの高級縮合物、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)ペンタエリスリトールエトキシレート、ペンタエリスリトールプロポキシレート、トリスヒドロキシメチルイソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、イノシトール、又は糖、例えばグルコース、フラクトース又はスクロース、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、マンニトール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルト、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドと反応した官能価3のアルコールに基づく官能価3以上のポリエーテルオールが含まれる。
【0023】
或る特定の好ましい実施形態において、ポリオール(cI)は、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセロール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールエトキシレート、及びペンタエリスリトールプロポキシレートの少なくとも1つである。
【0024】
また、上記で概説したように、ポリオール(c)は、反応生成物/オリゴマー/ポリマー(プレポリマー)化合物である化合物(cII)から選択してよい。モノマーポリオールと、2つ以上のポリオールを一緒に連結することができる少なくとも二官能性の化合物との反応によって調製可能な化合物が好ましい。好適且つ好ましいモノマーポリオールは、上記に述べたポリオール(cI)である。ポリオールとの反応に好適且つ好ましい化合物は、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸又はそのような脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体である。好ましい化合物(cII)の別のクラスは、モノマーポリオールと、少なくとも2つのヒドロキシ基を有するモノカルボン酸、例えばジメチロールプロピオン酸との反応により調製可能である。
【0025】
上記の6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体は、直鎖、分岐、又は環状であってよく、好ましくは、環状ジカルボン酸は、少なくとも6個の炭素原子(カルボン酸基の炭素原子を含む)の非環状セグメントを含む。好適なジカルボン酸の例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸(ブラシル酸)、ドデカン二酸、トラウマチン酸、ヘキサデカン二酸(タプシン酸)、オクタデカン二酸、テトラデカン二酸、及び36個の炭素原子を有するダイマー脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない。種々の実施形態において、36個の炭素原子を有するα,ω-ジカルボン酸及びダイマー脂肪酸が好ましい。36個の炭素原子を有するダイマー脂肪酸は、複数の異性体を有し得ることが既知である。ダイマー脂肪酸は、例えば、商品名EMPOL(登録商標)でBASFから、商品名UNIDYME(商標)でArizona Chemicalから、商品名Pripol(商標)でCroda International Plcから、及びEMERY(登録商標)Dimer AcidとしてEmery Oleochemicalsから市販されている。6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸のエステル化可能な誘導体として、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのそれらのモノ-又はジエステル、好ましくはメチル及びエチルエステル、及び無水物が含まれる。非常に好ましいカルボン酸は、アジピン酸である。
【0026】
そのような好ましい化合物(cII)の調製には、モノマーポリオールのモルの、ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体のモルに対する比は、好ましくは、ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体1モル当たり、ポリオール2.0~2.5、好ましくは2.0~2.2、及びより好ましくは2.0~2.07モルである。
【0027】
好ましくはモノマーポリオールと、好ましい脂肪族ジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体との反応、すなわちエステル化反応は、既知の標準的な方法によって実施してよい。温度、触媒、溶媒、及び反応プロセスのような反応条件は、個別に適合させることができる。完全性のため、US2016/0017175A1の[0024]~[0029]、及びUS2019/0106592A1の[0089]~[0094]及びそこに記載された工程(a0)が参照され、これらは参照により明示的且つ完全に本明細書に組み込まれる。
【0028】
クラス(cII)の化合物の調製は、明らかに、1分子当たりのヒドロキシ官能基の(平均)数を増加させ、それ故コア部分の分岐側鎖の数を増加させ、そしてそれ故反応生成物(P)の分岐特性を増加させることを意味する。
【0029】
明示的には、一次コア部分を構成する化合物のヒドロキシル基の(平均)数は3~20であり、より好ましくは6~16である。
【0030】
ヒドロキシ基の平均数が適用される化合物の場合、この数は、数平均分子量及びヒドロキシル含量の分析により決定される。
【0031】
コア化合物(c)が化合物(cII)、特にポリオール(cI)と6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体の反応生成物である、或る特定の実施形態では、以下に記載の芳香族カルボン酸との反応を化合物(cII)の調製と同時に行うことが有利であり、すなわち、コア化合物(cII)は、反応生成物(P)のシェル部分の芳香族単位を付加する工程と同時に調製される。
【0032】
反応生成物は、第一の必須部分として、芳香族単位を含むシェル部分を反応した形態で含む。芳香族単位は、ヒドロキシル基と反応性である官能基を含む単位を介してコア部分に共有結合している。つまり、芳香族単位は、それぞれの官能基とコアのヒドロキシ基との反応によってコア部分に共有結合している。よって、芳香族単位及びヒドロキシル基と反応性である少なくとも1つの官能基を含む単位を含む化合物を介して、芳香族単位が導入される。このような化合物は化合物(d)とも命名される。また、芳香族単位は、二段階の手順、すなわち、コア部分及びそのヒドロキシル基の一部それぞれを、ヒドロキシル基と反応性である第一の官能基を有し、且つ第二の化合物(d2)と反応性である第二の官能基を有する第一の化合物(d1)との第一の反応によって導入してよく、それによって、この第二の化合物(d2)は、芳香族基及び化合物(d1)の第二の官能基と反応性である官能基とを含む。
【0033】
化合物(d)は上記の基準を満たす限り、広範囲の化合物から選択し且つ変化させてよい。ヒドロキシル基と反応性である潜在的な官能基は、例えば、カルボキシ基、イソシアネート基又は無水物基である。当業者にはどの化合物が一般的に適用可能であるかが既知であり、また、例えばそれぞれの芳香族単位の付加を実現するためのそれぞれの反応条件を選択することもできる。
【0034】
好ましい実施形態では、芳香族単位は、コア化合物のヒドロキシ基と、芳香族又は芳香脂肪族(芳香族及び脂肪族の両方)カルボン酸との反応、すなわちカルボン酸基とヒドロキシ基のエステル化反応により付加される。ここでも、このようなエステル化は、既知の標準的な方法によって実施してよい。完全性のため、US2019/0106592A1の[0089]~[0094]及びそこに記載された工程(a)が参照される。これらの段落は参照により明示的且つ完全に本明細書に組み込まれる。
【0035】
よって好ましい化合物(d)は、芳香族又は芳香脂肪族(芳香族と脂肪族の両方)カルボン酸から選択される。特に好ましいのは、式(I):
【化1】
のカルボン酸であり、
式中、Arは、単環式又は縮合多環式芳香族炭化水素基である任意に置換されたアリール基であり、mは0又は1であり、そしてnは0又は1~8の整数である。
【0036】
或る特定の実施形態において、Arは任意に置換された単環芳香族炭化水素基であり、1~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル、1~6個の炭素原子のアルコキシ、アルキル部分が1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、ハロ、フェニル、及びヒドロキシからなる群から選択される1~3個の置換基を任意に有するフェニル基が好ましい。或る特定の実施形態では、Arは任意に置換された縮合多環芳香族炭化水素基、好ましくは、1~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル、1~6個の炭素原子のアルコキシ、アルキル部分が1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、ハロ、フェニル、及びヒドロキシからなる群から選択される1~3個の置換基を任意に有するナフチル基、アントラニル基、又はフェナントリル基を表す。
【0037】
或る特定の実施形態において、カルボン酸(d)は、式(II)又は(III):
【化2】
で表され、
式(II)及び(III)において、nは0又は1~8の整数、好ましくは0又は1~4の整数、特に0又は1であり、oは0又は1~3の整数であり、そして各Rは、存在する場合、1~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル、1~6個の炭素原子のアルコキシ、アルキル部分が1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、ハロ、フェニル、及びヒドロキシからなる群から独立して選択される。式(II)及び(III)による化合物の例を、以下に例示する:
【0038】
【化3】
【0039】
或る特定の実施形態において、工程(a)の芳香族カルボン酸は、式(IV)又は(IV):
【化4】
で表されるアリールオキシ芳香族カルボン酸であり、
式(IV)及び(V)において、nは0又は1~8の整数、好ましくは0又は1~4の整数、特に0又は1であり、oは0又は1~3の整数であり、そして各Rは、存在する場合、1~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル、1~6個の炭素原子のアルコキシ、アルキル部分が1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、ハロ、フェニル、及びヒドロキシからなる群から独立して選択される。式(IV)及び(V)による化合物の例を以下に例示する:
【化5】
【0040】
様々な実施形態において、コア化合物のヒドロキシル基と芳香族又は芳香脂肪族カルボン酸のカルボン酸基との当量比は、カルボン酸基当たりヒドロキシル基1.5~3.5当量である。上記のようなコア化合物の同時形成、すなわち、例えばポリオール(cI)と6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体との反応の場合、コア化合物のヒドロキシル基の量は、極めて明白に、ポリオール(cI)のヒドロキシル基の量からジカルボン酸のカルボン酸基の量を減じることによって求められる。
【0041】
反応生成物は、第二の必須部分として、ポリアルキレンオキシド単位をシェル部分に反応した形態で含む。これらの単位は、ヒドロキシル基と反応性である官能基を含む単位を介してコア部分に共有結合している。つまり、ポリアルキレンオキシド単位は、それぞれの官能基とコアのヒドロキシ基との反応によってコア部分に共有結合している。よって、ポリアルキレンオキシド単位及びヒドロキシル基と反応性である官能基を含む単位を含む化合物を介して、ポリアルキレンオキシド単位が導入される。このような化合物は化合物(e)とも命名される。また、ポリアルキレンオキシド単位は、二段階の手順、すなわち、コア部分及びそのヒドロキシル基の一部それぞれを、ヒドロキシル基と反応性である第一の官能基を有し、且つ第二の化合物(e2)と反応性である第二の官能基を有する第一の化合物(e1)との第一の反応によって導入してよく、それによって、この第二の化合物(e2)は、ポリアルキレンオキシド基及び化合物(e1)の第二の官能基と反応性である官能基とを含む。
【0042】
化合物(e)は、上記の基準を満たす限り、広範囲の化合物から選択し且つ変化させてよい。ヒドロキシル基と反応性である潜在的な官能基は、例えば、カルボキシ基、イソシアネート基及び(環状)カルボン酸無水物基である。当業者にはどの化合物が一般的に適用可能であるかが既知であり、また、例えばそれぞれのポリアルキレンオキシド単位の付加を実現するためのそれぞれの反応条件を選択することもできる。化合物(e)は、ヒドロキシル基と反応性である官能基に関して単官能性であることが好ましい。その理由は、この手段により、複雑な反応過程を経ることなく、化合物(e)が1つのみのコア部分に付加され、その後化合物(e)によって相互連結/架橋される2つのコア部分ではないことが保証されるからである。
【0043】
好ましい実施形態では、ポリアルキレンオキシド単位は、コア化合物のヒドロキシ基と、ポリアルキレンオキシド単位及びイソシアネート基、カルボン酸基及び環状カルボン酸無水物基から選択される官能基を有する化合物との反応により付加される。さらにより好ましくは、官能基はイソシアネート基から選択される。上述したように、化合物(e)は、官能基がヒドロキシル基と反応性である点で、単官能性であることが好ましい。しかし、環状カルボン酸無水物基の場合、この基は形式的に2つのカルボキシル基を含む基とみなしてもよく、つまり2つのコア部分の橋渡しが原理的に可能であることは、言及に値する。しかし、当業者に既知であるように、環状カルボン酸無水物は、環の張力の理由から単独で、遊離カルボキシ基よりもヒドロキシル基とより反応性があり、つまり反応条件、例えば温度及び/又は触媒の制御によって、環状無水物のみの又は少なくとも主に環状無水物の反応を確実とすることができ、最終的に遊離カルボン酸基を有する反応生成物につながる。よって前述の化合物(e)の好ましい単官能特性の観点から、環状カルボン酸無水物の場合、無水物はヒドロキシル基と反応性である基とみなされるが、得られる遊離カルボキシ基はそのような基とはみなさない。なぜなら反応前には存在せず、また一般的な所与の反応性が上記の反応条件により抑制され得るからである。
【0044】
それでも、モノイソシアネート化合物(e)との反応は、得られる反応生成物の多分散性に関して有利であることが経験上示され、このことは同様にイソシアネートが官能基として好ましい理由である。
【0045】
反応生成物(e)のポリアルキレンオキシド単位は、例えば、-((CH-CHR-O)-であってよく、式中Rは水素(H)及び/又は1~3個の炭素原子を有するアルキル残基、好ましくは水素及び/又はメチルを意味し、それによって残基Rは同一又は異なっていてよく、nは1~3を意味し、そしてmは10~100、好ましくは20~50を意味する。このような単位の例は、ポリテトラメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、又は前述のポリアルキレンオキシドの異なるものを含有するブロックコポリマーとしての混合コポリマーである。ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシド、及びそれらの混合コポリマーが好ましく、ポリエチレンオキシドが特に好ましい。
【0046】
上記は、化合物(e)が第一の好ましい実施形態において、ポリオキシアルキレン単位及び1つのみのイソシアネート基を有する一方で、ヒドロキシ基と反応性である如何なるさらなる官能基も有しない化合物から選択されることを意味する。無論、ポリオキシアルキレン単位に関する上記で定義された選好は、これらの化合物(e)の文脈でも適用される。
【0047】
このように、これらの化合物(e)は、標準的なポリ(アルキレングリコール)アルキルエーテル(すなわち、アルキル基でエーテル化した1つのヒドロキシル基を有するポリアルキレングリコール)とジイソシアネート化合物とを反応させて、1つのイソシアネート基を有する化合物を得ることにより製造することができる。
【0048】
ジイソシアネート化合物としては、周知の脂肪族、脂環式、脂肪族-脂環式、芳香族、脂肪族-芳香族及び/又は脂環式-芳香族ジイソシアネートが、当業者によって採用される。例として、以下のジイソシアネートが挙げられる:1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-又は1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルエーテル、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3-ジメチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-又は1,3-又は1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4-又は2,6-ジイソシアナト-1-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナトメチル-5-イソシアナト-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、2,3-ビス(8-イソシアナトオクチル)-4-オクチル-5-ヘキシルシクロヘキセン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、例えばm-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、又はこれらのジイソシアネートの混合物。
【0049】
ヒドロキシル及びイソシアネートの反応条件は絶対的な標準であり且つ周知であるので、ここで述べる場合には、ポリ(アルキレングリコール)アルキルエーテルと1つのみのイソシアネート基との反応を確実にする条件を選ぶことが重要である。少なくともこの理由から、1つの特に好ましいイソシアネートはイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。理由は、この確立された入手可能なジイソシアネートの2つのイソシアネート基が反応性の点で同等ではないためであり、つまり例えば温度及び触媒の選択のような反応条件のスマートコントロールによって、イソシアネートの片側反応のみを確実とすることができる(それによって、無論副作用は事実上避けられず、受け入れられなければならないことを認めている)。
【0050】
第二の好ましい実施形態(ただし、特定の化合物(e)を用いた上述の第一の好ましい実施形態よりは好ましくない)では、2つの上述の化合物(e1)及び(e2)が適用される。
【0051】
化合物(e1)及び(e2)は、上記の基準を満たす限り、広範囲の化合物から選択し且つ変化させてよい。当業者にはどの化合物が一般的に適用可能であるかが既知であり、また、例えばそれぞれのポリアルキレンオキシド単位の付加を実現するためのそれぞれの反応条件を選択することもできる。
【0052】
好ましい化合物(e1)は、環状カルボン酸無水物成分、例えば、無水マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸、無水コハク酸、トリメリット酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、アジピン酸無水物、グルタル酸無水物、マロン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチル-5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、イサト酸無水物、ジフェン酸無水物、特に低級アルキル置換酸無水物を含む置換無水物、例えばブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、ブチルグルタル酸無水物、ヘキシルグルタル酸無水物、ヘプチルグルタル酸無水物、オクチルグルタル酸無水物、アルキルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、及びアルキルフタル酸無水物、例えば4-n-ブチルフタル酸無水物、ヘキシルフタル酸無水物、及びオクチルフタル酸無水物から選択される。特に好ましいのは無水コハク酸である。
【0053】
化合物(e1)は、定義上、反応のための2つの官能基(上記参照)を含むので、当業者は、好ましい環状カルボン酸無水物に関して、また、これらの無水物が形式上2つのカルボキシル基を有する化合物とみなすことができるという事実(これにより、第一のものが環状無水物の一部の形態で反応した後に第二のものが生じる)に関して、そのような環状カルボン酸無水物に関しては、定義により、化合物(e1)の両方の官能基がカルボン酸基であることを直接理解する。よって前述の化合物(e1)の好ましい二官能特性の観点から、環状カルボン酸無水物の場合、無水物は2つの官能基、すなわち2つのカルボン酸基を有するものとみなされる。
【0054】
よってこの好ましい実施形態では、第二の化合物(e2)は、ポリアルキレン基と、カルボキシ基と反応性である官能基とを含む。ヒドロキシル基が好ましく、これは反応がエステル化として進行することを意味する。よって好ましい化合物(e2)は、上述のポリ(アルキレングリコール)アルキルエーテルである。無論、ポリオキシアルキレン単位に関する上記で定義された選好は、これらの化合物(e2)の文脈でも適用される。
【0055】
この第二の明示的な実施形態によって、適切な反応生成物(P)が形成され得るとしても、これらの生成物は、比較的高い多分散性に起因して、化合物(e)、特に1つのイソシアネート基を有する化合物(e)を介して調製される生成物ほど良好ではない。
【0056】
化合物(e)又は(e1)のヒドロキシル基と反応性である官能基に対するコア化合物のヒドロキシル基の当量比は、ヒドロキシル基と反応性である官能基1個当たり2~14当量である。
【0057】
上記のように、コア化合物のヒドロキシル基と芳香族又は芳香脂肪族カルボン酸(d)のカルボン酸基との当量比は、カルボン酸基1個当たりヒドロキシル基1.5~3.5当量である。
【0058】
上記の両方の当量比において、元の非反応コア化合物のヒドロキシル基の量が参照される。よって、化合物(c)のカルボン酸基及び化合物(e)又は(e1)の反応性基の量は、好ましくはコア化合物のヒドロキシル基の量を超えないことが明らかである(これは、非反応化合物(d)及び/又は(e)及び/又は(e1)が反応混合物中に存在することになるため)。
【0059】
一般に、コア化合物(c)と化合物(e)又は(e1)及び(e2)とを、化合物(d)の前に又は同時に反応させることが可能であるが、(i)最初に化合物(c)及び(d)を反応させ、その後(ii)工程(i)から得られた中間体を化合物(e)又は(e1)及び(e2)と反応させることが好ましい。
【0060】
上述したプロセスの結果、反応生成物(P)が得られる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、反応生成物は、シェル部位部分において、ヒドロキシ基と反応性である官能基を含む単位を介してコア部分に共有結合しているカルボン酸基も含む。これらの基は、水性媒体中でのアニオン性安定化に役立つ。
【0062】
よってカルボン酸基は、カルボン酸基及びヒドロキシル基と反応性である基、例えば(さらに)カルボン酸基を含む化合物を介して導入される。このような化合物は、化合物(f)とも命名される。環状カルボン酸無水物はこのような化合物(f)として役立ち、このことから、これらの無水物は既に概説した上記の理由により形式的には2つのカルボン酸基を有する化合物とみなされることになる。実際、このような環状カルボン酸無水物は、特に好ましい化合物(f)である。その理由は、原理的には既に述べた通り、形式的に2つのカルボン酸基の非等価な反応性に起因して、生成される遊離カルボン酸基の反応を全く起こさず、又は少なくとも無視できる程度にしか起こさないで、容易にコア部分への開環付加を介して無水物を付加できる反応条件を選択することができるからである(つまり、2つのコア分子の架橋は起こらないか、又は少なくとも無視できる程度にしか起こらないが、遊離カルボン酸基はアニオン安定化のために残っている)。このような環状カルボン酸無水物の例及び好ましいバージョンは、既に上述したとおりである。
【0063】
上述のように、反応生成物の製造中に、好ましくは環状カルボン酸無水物である化合物(e1)を適用してよい。この場合は、化合物(e1)及び(f)は好ましくは同じであり、ここで述べるカルボン酸基の付加は、好ましくは化合物(e1)を付加する工程内で行われることを意味する。その結果、この場合に化合物(e1)及び(e2)の量は、如何なる場合でも(e1)の量が(e2)よりも多いのと同じ多さに揃えられ、これは残留遊離カルボキシル基が残っていることを意味する。
【0064】
化合物(e)を介して生成した反応生成物の場合、カルボン酸基の付加は明らかに別の工程で行われる、すなわちコアのヒドロキシル基と化合物(f)との反応によって行われる。化合物(f)との反応が、一般に、上記の他の反応と異なる段階で及び/又は同時に行うことができるとしても、この反応をコア又はそれぞれの中間体と化合物(d)及び(e)との上記の反応後に行うのが有利であることが判明した。
【0065】
反応生成物(P)の酸価は、好ましくは10~60mgKOH/g(反応生成物(P)そのもの、すなわち反応生成物(P)を分散又は溶解させるための潜在的溶媒を除いたものに対するものであり、その分散物又は溶液中の反応生成物(P)の量は不揮発分含量を介して決定される)である。
【0066】
反応生成物(P)の量は、好ましくは、顔料ペーストの総質量に対して各場合に1~20質量%、好ましくは2.5~12.5質量%である(ここでも、反応生成物(P)そのものに対するものであり、この原則は、明確に異なる記載のない場合、量又は特性に関する任意の及びすべてのさらなる特定について本願内で適用される)。
【0067】
顔料ペーストの第二の必須構成要素は、有機顔料である。この顔料は、当業者によって知られているような広範囲の顔料、例えば、アゾ顔料(例えば、モノアゾ、ジスアゾ、β-ナフトール、ベンズイミダゾロン、縮合、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン)、及び多環式顔料(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン(インダンスロン、アントラピリミジン、フラバンスロン、ピランスロン、アンサンスロン(anthanthrone)、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン))の中から選択且つ変化させることができる。色に関しては、金属化及び非金属化アゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリーリド及びジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ等の顔料が挙げられる。
【0068】
一般に既知であり、また既に上記で概説したように、顔料ペーストは、キャリア材料(ペースト樹脂又はペーストバインダーとも呼ばれる)、すなわち顔料がその中に分散し、後の使用におけるよりも高い濃度で存在している有機樹脂材料における顔料の配合物である。後の使用は、一般に、コーティング組成物の製造におけるものである。より詳細には、そのような顔料ペーストにおいて、顔料のポリマーに対する質量比は、ペーストが使用されるコーティング組成物よりも一般に大きい。キャリア材料(異なるポリマー、ペーストバインダーとも呼ばれる)と同様に、水及び/又は有機溶媒も一般に存在する。湿潤剤のような異なる添加剤も使用可能である。
【0069】
既に述べたように、コーティング産業における顔料ペーストの使用は、顔料分散の技術的に複雑なプロセスを著しく容易にする。例えば、コーティング材料の配合時に、顔料のダストフリー処理が保証される。さらに、ペースト中の顔料は最適に湿潤し、そして非常によく分散するので、コーティング材料でも改善された分布状態が得られる。この結果、コーティング材料及びそこから製造される塗装系の性能特性、例えば塗装系における特に均質な色又は色分布が改善されることは言うまでもない。本発明の意味において、反応生成物(P)は、極めて明らかなことに、微細に分布し、且つ安定に分散した有機顔料を提供するためのキャリア材料(ペーストバインダー)として役立つ。
【0070】
よって顔料ペーストの製造には、反応生成物(P)と有機顔料とを、顔料を分散させる、すなわち顔料粒子の表面を分散樹脂(P)で濡らすのに十分な高剪断下で接触させることが必要である。これにより、一般に既知であるように、この粉砕プロセスによって導入される剪断は、顔料凝集体をより小さな粒径に、そして最終的には一次顔料粒子まで破壊する。凝集体の破壊及び一次顔料粒子の湿潤は、顔料の安定性及び発色にとって重要である。顔料は、顔料ペーストの総質量に対して各場合に、典型的には、例えば2~40質量%、好ましくは5~15質量%以下の量で利用してよい。使用される顔料の量は、顔料の性質、色の深度及び/又は意図される効果の強さ、及び顔料の分散性に依存する。
【0071】
顔料ペースト中の分散剤対顔料比(反応生成物(P)対顔料の比ともいう)は、好ましくは少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.55(各場合とも、質量に対する)である。好ましい範囲は、0.2~1.5、より好ましくは0.5~0.8、及びさらにより好ましくは0.55~0.75である。
【0072】
本発明はまた、反応生成物(P)と有機顔料とを含む顔料ペーストの製造方法を提供する。
【0073】
上記の概要に従って、顔料ペーストの製造方法は、(1)反応生成物(P)を、好ましくは、水、有機溶媒及び場合により湿潤剤のような添加剤の存在下で有機顔料と接触させてそれぞれの混合物を得る工程、(2)工程(1)による混合物を剪断力に曝す工程を含む。適用可能な有機溶媒は、例えば、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、Dowanol PnB、エチレングリコールn-ブチルエーテル及び/又はブチルセロソルブである。
【0074】
具体的には、顔料ペーストの製造の工程(1)は、好ましくは、(1a)反応生成物(P)、水、有機溶媒及び場合により添加剤を含む分散液を調製する工程、(1b)工程(1a)の分散液を有機顔料と混合する工程によって行われる。
【0075】
工程(2)、すなわち、工程(1)の混合物を剪断力に晒して効果的に分散させ、顔料の粒径を低減する工程は、好ましくは、粉砕により行われる。高エネルギーミルのようなそれぞれの粉砕装置及びそれぞれの手順は周知であり、個々のケースに応じて選択することができる。粉砕プロセスは、好ましくは、例えば1~20時間の間、粉砕ビーズ(これは周知である)を適用することにより行われる。このようなビーズは一般に、例えば約0.1~10mm(直径)の粒径を有する。また、粉砕プロセスは、例えばビーズサイズ、混合物とビーズとの質量比、及び/又は粉砕持続時間が異なる、異なる粉砕工程で行ってよい。粉砕後、調製された分散液は、特に濾過によって粉砕ビーズから分離され、本発明による顔料ペーストとなる。
【0076】
顔料ペーストのそれぞれの構成要素の質量比は、顔料ペーストの総質量に対して各場合とも、例えば反応生成物(P)1~20質量%、有機顔料2~40質量%、水40~90質量%、及び有機溶媒2~20質量%である。
【0077】
本発明による方法によって調製された顔料ペーストは、傑出した顔料粒径特性(すなわち、比較的小さな粒径)及び顔料の微細な分布、ひいては良好な分散挙動及び安定性によって特徴付けられる。これらの特性は、例えば、以下の実施例のセクションに示すように、硬化したコーティング層の明度を介して決定される低散乱によって確認される。
【0078】
本発明のコーティング組成物中の顔料ペーストの量は、個々の必要性及び要求に応じて選択され、0.1質量%という低値(例えば着色クリアコーティング組成物において)、又は25質量%という高値で選択してよい。よって好ましい範囲は、コーティング組成物の総質量に対して0.1~25質量%である。さらにより好ましくは、範囲は各場合ともコーティング組成物の総質量に対して2.5~15質量%、好ましくは3.5~10質量%である。
【0079】
本発明によるコーティング組成物は、コーティング組成物において既知且つ常用される構成要素をさらに含んでもよい。
【0080】
コーティング組成物には、他の樹脂又はポリマーが含まれてもよい。樹脂又はポリマーの例には、(メタ)アクリレートポリマー(アクリル系ポリマー又は樹脂としても知られる)、ポリエステル、ポリエーテル及び/又はポリウレタンが含まれる。他の樹脂又はポリマーが、他の樹脂又はポリマーのためのコーティング組成物に含有され得る架橋剤と反応する官能価を有してもよい。或る特定の好ましい実施例において、コーティング組成物には、ヒドロキシル基、カルバメート基、又はそのような基の組合せを有するさらなる樹脂又はポリマーが含まれる。種々の実施形態において、コーティング組成物は、ヒドロキシル官能性アクリル系ポリマー、ヒドロキシル官能性ポリエステル、及び/又はヒドロキシル官能性ポリウレタンを含有する。ポリシロキサンポリオールが含まれていてもよい。これらのポリマーは当業者に周知であり、コーティング組成物のバインダーポリマーとして広く使用されている。それでも、以下の段落では、このような成分についてさらに詳しく記載する(適切な場合には、より詳細に、ひいては逸脱した命名で)。
【0081】
ポリビニルポリオール、例えばアクリル系(ポリアクリレート)ポリオールポリマーは、ヒドロキシ官能性材料として使用してもよい。アクリル系ポリマー又はポリアクリレートポリマーは、アクリル系及びメタクリル系モノマーの両方と他の共重合性ビニルモノマーとのコポリマーであってもよい。用語「(メタ)アクリレート」は、便宜上、アクリレート及びメタクリレートのいずれか又は両方を表すために使用され、そして用語「(メタ)アクリル系」は、便宜上、アクリル系及びメタクリル系のいずれか又は両方を表すために使用される。
【0082】
ポリエステルポリオールは、(a)ポリカルボン酸又はそれらのエステル化可能な誘導体を、所望であればモノカルボン酸と、(b)ポリオールを、所望であれば単官能性アルコールと、及び(c)所望であれば他の改質成分と、反応させることにより調製してよい。ポリカルボン酸及びそれらのエステル化可能な誘導体の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロフタル酸、例えばテトラクロロ-又はテトラブロモフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサン-ジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、及びシクロブタンテトラカルボン酸が含まれるが、これらに限定されない。脂環式ポリカルボン酸は、そのシス又はそのトランス形態で、又は2つの形態の混合物としてのいずれかで使用することができる。これらポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体には、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール又は4個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルコールとのそれらの単一の又は複数のエステル、好ましくはメチルエステル及びエチルエステル、及び存在する場合には、これらのポリカルボン酸の無水物が含まれる。ポリカルボン酸と一緒に使用することができる好適なモノカルボン酸の例として、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、ラウリン酸、イソノナン酸及び天然に存在する油の脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない。好適なポリオールの例には、上で既に言及した任意のもの、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオールジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び天然油由来のポリオールが含まれるが、これらに限定されない。ポリオールと一緒に使用してよいモノアルコールの例には、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、及びエトキシル化された及びプロポキシル化されたフェノールが含まれるが、これらに限定されない。好適な変性成分の例には、ポリエステルの官能基に対して反応性の基を含有する化合物が含まれ、ポリイソシアネート及び/又はジエポキシド化合物、及び所望であれば、モノイソシアネート及び/又はモノエポキシド化合物も含まれるが、これらに限定されない。ポリエステル重合は、既知の標準的方法により実施してよい。この反応は、従来180℃~280℃の間の温度で、所望であれば好適なエステル化触媒の存在下で実施されている。エステル化重合のための典型的な触媒は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、又は(環状)脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンなどの共留剤(entraining agent)として少量の好適な溶媒を用いる還流下におけるプロトン酸、ルイス酸、チタンアルコキシド、及びジアルキルスズオキシド、例えばリチウムオクタノエート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、パラ-トルエンスルホン酸である。
【0083】
ヒドロキシル官能基を有するポリウレタンも、アリール変性高分岐ポリオールと共に、コーティング組成物に使用してよい。好適なポリウレタンポリオールの例には、ポリカプロラクトンポリエステル又はポリカーボネートジオールを含む、ポリマージオール反応体のポリエーテル及びポリエステルを使用して重合されたポリウレタンを含むがこれらに限定されないポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、及びポリカーボネート-ポリウレタンが含まれる。これらのポリマージオールに基づくポリウレタンは、ポリマージオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラヒドロフランジオール、又はポリカーボネートジオール)、1種又は複数のポリイソシアネート、及び、任意に、1種又は複数の鎖延長化合物の反応により製造される。用語として使用される鎖延長化合物は、イソシアネート基と反応性の2個以上の官能基、好ましくは2個の官能基を有する化合物、例えば、ジオール、アミノアルコール、及びジアミンなどである。好ましくは、ポリマージオールに基づくポリウレタンは、実質的に直鎖状である(すなわち、実質的にあらゆる反応体が二官能性である)。
【0084】
ポリシロキサンポリオールは、水素化ケイ素を含有するポリシロキサンを、2個又は3個の末端第一級ヒドロキシル基を含有するアルケニルポリオキシアルキレンアルコール、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル及びペンタエリスリトールモノアリルエーテルなどのアリルポリオキシアルキレンアルコールでヒドロシリル化することにより製造することができる。
【0085】
上記ポリオール樹脂及びポリマーの任意は、既知の方法に従って、例えば、「トランスカルバメート化」又は「トランスカルバモイル化」と称される反応による、ヒドロキシル官能性材料とアルキルカルバメート、例えばメチルカルバメート又はブチルカルバメートとの反応によって、カルバメート基を有するように誘導体化できる。コーティング組成物において使用するためのカルバメート官能性樹脂及びポリマーを形成する他の方法においては、樹脂及びポリマーは、カルバメート官能性モノマーを用いて重合できる。
【0086】
本発明のコーティング組成物は、ヒドロキシル基と反応性である少なくとも1種の架橋剤又は硬化剤、例えば活性メチロール、メチルアルコキシ、又はブチルアルコキシ基を有するアミノプラスト架橋剤;ブロック又は非ブロックイソシアネート基を有し得るポリイソシアネート架橋剤;ポリ無水物;及びヒドロキシル及びアリール変性高分岐ポリオールのカルボン酸基と反応性であり得るポリエポキシド官能性架橋剤又は硬化剤を含んでもよい。アミノプラスト架橋剤が好ましい。
【0087】
コーティング組成物は、溶媒、さらなる顔料、充填剤、又は慣用の添加剤をさらに含んでよい。しかしながら、上述した顔料ペーストに含まれるもの以外に如何なる顔料も含有しないコーティング組成物が好ましい。
【0088】
顔料(又は顔料固形分)/コーティング組成物の全固形分の比は、個々の必要性に応じて変えてよく、また、顔料の性質、色の深度及び/又は生成しようとする効果の強度、及び顔料の分散性にも依存する。しかし、この比の好ましい範囲は、0.05~0.35、より好ましくは0.05~0.2、さらにより好ましくは0.075~0.15(各場合とも質量比)である。
【0089】
本発明のコーティング組成物の潜在的な適用分野は、透明顔料トップコート(又は着色クリアコート)、すなわち、多層アセンブリの上層を表すことを意味し、ひいてはそのように配置される組成物である。しかしながら、好ましい実施形態において、本発明のコーティング組成物は、ベースコート組成物、好ましくは水性ベースコート組成物、すなわち、例えば自動車仕上げ及び一般工業塗装において使用される色付与中間コーティング材料を表すことを意味し、ひいてはそのように配置される組成物である。ベースコート材料は一般に、プライマー-サーフェサー及び/又は本発明のベースコートの下に位置するさらなるベースコートで前処理された基材に適用される。使用される基材には既存の塗装系も含まれることがあり、この場合も任意に前処理が必要となることがある(例えば研磨によるもの)。ベースコートフィルムを特に環境影響から保護するために、一般に少なくとも1つの追加のクリアコートフィルムがその上に適用される。これは一般にウェット・オン・ウェットプロセスで行われ、つまりベースコートフィルムが硬化していない状態でクリアコート材が適用される。その後、最終的にクリアコートと一緒に硬化させる。
【0090】
本発明は、本発明のコーティング組成物を基材に適用し、適用したコーティング組成物からフィルムを形成し、そして適用したコーティング組成物を硬化させて硬化コーティング層を得ることにより、基材上にコーティング層を製造する方法に関するものである。
【0091】
コーティング組成物は、当技術分野において周知の多くの技術の任意によってコーティングすることができる。これらの技法には、例えば、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、塗り、注ぎ、浸漬、含浸、したたらせ又はローリング等が含まれる。自動車車体のパネルにはスプレーコーティングが典型的に使用される。スプレー適用法、例えば圧搾空気スプレー、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー適用を単独で又は熱風スプレーなどの熱スプレー適用と併用して使用することが好ましい。
【0092】
本明細書に記載のコーティング組成物は、技術的及び審美的に特に要求の厳しい自動車OEM仕上げ、さらに自動車再仕上げの分野で特に使用される。コーティング組成物は、単段階及び多段階の両方のコーティング方法で使用することができる。よって本発明は、本発明のコーティング組成物に基づく少なくとも1層の顔料ベースコートフィルムを含み、そしてその上に配置された少なくとも1つのクリアコートを有してもよいマルチコートコーティング系も提供する。
【0093】
適用されたコーティング組成物は、通常は、或る特定の静止時間又は「フラッシュ」期間の後、硬化される。静止時間は例えば、コーティングフィルムの平準化及び揮発分の除去に、又は溶媒などの揮発性構成要素の蒸発に役立つ。静止時間は、上昇した温度の適用により、又は低下させた湿度により、これがコーティングフィルムに、例えば未完成の架橋など如何なる損傷又は変質も残さなければ、支援され又は短縮され得る。コーティング組成物の熱硬化は、方法に関して変わったところはないが、その代わりに、強制通風炉中の加熱又はIRランプによる照射などの典型的な既知の方法により行われる。熱硬化は複数の段階で行うこともできる。別の好ましい硬化方法は、近赤外(NIR)照射による硬化方法である。硬化の種々の方法が使用され得るが、熱硬化が好ましい。一般的に熱硬化は、コーティングされた物品を、主として照射の熱源により提供される上昇した温度に曝露することにより実施される。適用後、適用されたコーティング層は、30~200℃、又は40~190℃、又は50~180℃の温度の熱で、1分~10時間まで、より好ましくは2分~5時間まで、及び特に3分~3時間の時間で硬化されるが、自動車再仕上げのために使用される、好ましくは30~90℃の間の温度の場合には、より長い硬化時間を使用することができる。本発明のコーティング組成物は、再仕上げコーティング用、及びより高温で硬化される元の仕上げコーティング用の両方で使用することができる。再仕上げコーティング組成物を適用するための典型的な方法は、適用と、室温又は30~90℃の間の上昇した温度での硬化を伴う乾燥とを含む。OEMコーティングは、典型的には、より高い温度、例えば約110~約135℃で硬化される。硬化時間は、使用される特定の成分及び層の厚さなどの物理的パラメータに応じて変更されるであろうが、典型的な硬化時間は約15~約60分、及び好ましくは、ブロックされた酸触媒系については約15~25分、及びブロックされていない酸触媒系については約10~20分である。本発明のコーティング組成物に基づく少なくとも1つの顔料ベースコートフィルムと、その上に配置された少なくとも1つのクリアコートを含むマルチコートコーティング系の場合、好ましくは硬化が一緒に行われる、すなわち、ベースコート及びクリアコートはウェット・オン・ウェットで適用された後、1つの最終硬化工程で硬化される。
【0094】
形成された硬化ベースコート層は、所望の色及びその色を提供する連続した層を形成させるために必要な厚さに主として依存して、約5~約75μmの厚さを有することができる。形成された硬化クリアコート層は、典型的には約30~約65マイクロメートルの厚さを有する。
【0095】
コーティング組成物は、被覆のない鋼、リン酸化された鋼、亜鉛めっきされた鋼、又はアルミニウムなどの金属基材、及びプラスチック及び複合体などの非メタリックの基材を含む、多くの異なったタイプの基材に適用することができる。基材は、硬化した又は未硬化の電着プライマー、プライマーサーフェーサー、及び/又はベースコートの層などの別のコーティングの層をその上に既に有するこれらの材料の任意のものであってもよい。
【0096】
基材は、電着(エレクトロコート)プライマーで最初に下塗りされてもよい。電着組成物は、自動車車両のコーティング作業で使用される任意の電着組成物とすることができる。エレクトロコート組成物の例には、BASFより販売されているエレクトロコーティング組成物が含まれるが、これに限定されない。電着コーティング浴は、通常、水又は水の混合物及び有機共溶媒中でイオン性安定化(例えば、塩形成アミン基)を有する主フィルムを形成するエポキシ樹脂を含む水性分散液又はエマルションを含む。熱の適用などの好適な条件下で主樹脂の官能基と反応し得る架橋剤は、主フィルムを形成する樹脂と共に乳化されて、その結果、コーティングを硬化する。架橋剤の好適な例には、ブロックポリイソシアネートが含まれるが、これらに限定されない。電着コーティング組成物は、通常、1種又は複数の顔料、触媒、可塑剤、融着助剤、消泡剤、流動制御剤、浸潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、抗酸化剤、及び他の添加剤を含む。
【0097】
電着コーティング組成物は、好ましくは、10~35μmの厚さの乾燥フィルムに適用される。適用後、コーティングされた車両本体は、浴から取り出されて脱イオン水ですすがれる。コーティングは好適な条件下で、例えば、約135℃~約190℃で約15~約60分の間焼付けることにより硬化させてよい。
【0098】
最後に、本発明は、本発明のコーティング組成物がベースコート組成物として適用される、前述の方法に従って調製された硬化コーティング層、好ましくは硬化多層コーティング系に関するものである。この硬化コーティング層、好ましくは硬化多層コーティング系内では、ベースコート組成物は、特に高い透明性(低い散乱)及び優れた色深度のような最適な色彩特性を可能とする。
【実施例
【0099】
測定方法:
1. 不揮発性画分の決定
全固形分含量を含む固形分含量(不揮発分、不揮発分含量、固形画分等)の量は、DIN EN ISO3251:2019-09を介して、110℃、60分間で決定した。
【0100】
2. 色値(L、a、b)の測定
色空間又はL色モデル(すなわちCIELAB色モデル)は、当業者には既知である。L色モデルは、例えば、DIN EN ISO/CIE 11664-4:2020-03で標準化されている。L色空間における各認識可能な色は、3次元座標系における座標{L、a、b}を有する特定の色位置によって記述される。a軸は色の緑色又は赤色の部分を表し、負の値は緑色、正の値は赤色を表す。b軸は色の青色又は黄色の部分を表し、負の値は青色、正の値は黄色を表す。従って、数が低いほど青みがかった色であることを示す。L軸はこの平面に垂直な軸で、明るさ(明度)を表す。L軸は端点黒(L=0)と白(L=100)を有している。従って、値が低いほど暗色を示す。(硬化後の)コーティング基材の色値L、a及びbは、ASTM E 284-81aに従って、硬化を含む調製後に決定される。値は、BYK-mac i(BYK-Gardner)を利用して測定される。硬化したサンプルの分析は、装置BYK-mac i分光光度計標準操作手順で、色、輝き、粒状性の測定に従って行われる。完全に硬化した分析対象のサンプルは、マイクロファイバークロスで拭き取られる。次に、BYK-mac i装置を基材表面に置き、D65光源を使用して-15°、15°、25°、45°、75°及び110°の角度で測定を行い、CIELab設定を使用して各角度についてデータを記録する。この測定は異なる位置で個々のパネルで行われ、値は試行の平均で報告される。以下実験部で報告される色値L、a、bは、110°の角度に関するものである。
【0101】
この適用内では、顔料凝集体の粒径が大きいほどより多くの散乱光が得られ、これは硬化コーティングフィルムの明度測定値を増加させるので、この方法を使用した。110°の角度はフィルム経路長が最も長いため、散乱の増加を検出するのに最も感受性が高い。従って、110°の角度におけるL値(明度)を評価に使用し、より低い値を生じる分散液は、より透明で良好である。
【0102】
原則として、L110°の値が3.5を超えると、許容できない顔料分布に相当する明度を反映し、それ故許容できない透明性を反映する。3.0未満の値は良好と評価され、一方で2.5未満は顔料分布/分散性に優れ、それ故透明であると評価される。
【0103】
1. 反応生成物(P)の合成
以下の節1.1.~1.2は、本発明によって使用される2つのタイプ反応生成物(P)の詳細な合成プロトコルである。これらのタイプの反応生成物(P)の合成プロトコルは、表1に示す反応生成物(P)の例である。すなわち、反応の全体的且つ基礎的な反応条件は、対応して適用される場合、必要又は適切であれば、抽出物(educt)及びモル量に関する特定を適合した。さらに、実際に選択された抽出物及びモル量の詳細を表1に示す。
【0104】
1.1 タイプ1の反応生成物(P)
トリペンタエリスリトール(化合物(cI))、2-ナフトキシ酢酸(化合物(d))、DBTO(触媒、0.1質量%)及びキシレン(3.5質量%)を反応器に投入し、230℃まで加熱した後、200℃超で2時間反応させて、生成された水を連続的に除去した。この反応時間の後、残留水及びキシレンを除去し、混合物を140℃に冷却し、そして3-エトキシプロピオネートエチル(EEP)(26.4質量%)及びn-ブチルアセテート(10.8質量%)を添加した。
【0105】
別個の反応工程で、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)を当モル量で反応させ、化合物(e)を得た。これにより、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG2000)を反応器に投入し、そして110℃(-200mmHG真空)まで加熱して溶融して、同伴水を除去した(60~90分)。その後、反応器を60℃に冷却し、真空を中止した。次に、第一段階として、イソホロンジイソシアネートをできるだけ素早く直接投入し、その後ジブチルジラウレート(0.1質量%)を添加し、それによって温度を70℃未満に維持した。65℃で2~3時間の反応時間後、反応混合物を冷却して、モノイソシアネート官能性化合物(e)を単離した。
【0106】
第三の反応工程では、化合物(e)及び化合物(cI)と(d)との反応生成物を0.06質量%のジブチルスズジラウレートと共に75℃に加熱し、すべてのNCOが反応するまで1~3時間処理した。その後、反応器を120℃に加熱し、無水コハク酸(化合物(f))及びEEP(1.3質量%)の装填量を添加した。145℃で2~5時間の処理時間後、混合物を60℃に冷却した。次に、0.768質量%のEEP及び0.3質量%のn-ブチルアセテートの装填量を添加した。最後に、2-ブトキシエタノールによって不揮発分含量を調整し、これによりほとんどの場合において約60%の含有量を適切とした。
【0107】
1.2 タイプ2の反応生成物(P)
ここでも、トリペンタエリスリトール(化合物(cI))、2-ナフトキシ酢酸(化合物(d))、DBTO(触媒、0.1質量%)及びキシレン(3.5質量%)を反応器に投入し、230℃まで加熱した後、200℃超で2時間反応させて、生成された水を連続的に除去した。この反応時間の後、残留水及びキシレンを除去し、混合物を140℃に冷却し、そして3-エトキシプロピオネートエチル(EEP)(26.4質量%)及びn-ブチルアセテート(10.8質量%)を添加した。
【0108】
第二の反応工程では、化合物(cI)及び(d)の反応生成物を反応器に装入し、無水コハク酸(化合物(e1))及びEEP(1.1質量%)を添加した。反応混合物を145℃で2~5時間処理し、中間体を得た。
【0109】
最後に、前述の中間体及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MPEG2000、化合物(e2))を、0.11質量%のDBTO及び3.5質量%のキシレンと共に反応器で230℃の温度に加熱した。次に、混合物を200℃超で6~7時間処理して、生成された水を連続的に除去した。この反応時間の後、残留水及びキシレンを除去し、混合物を140℃に冷却し、そしてEEP(1.0質量%)及びn-ブチルアセテート(0.4質量%)を添加した。最後に、適切であれば、2-ブトキシエタノールを添加することによって不揮発分含量を調整した。
【0110】
1.3 注記:
次の表1は、上記の化合物(cI)及び(d)の生成物を使用する代わりに、まずジペンタエリスリトール及びアジピン酸を2:1のモル比で標準エステル化反応により反応させて化合物(cII)を得ることによって調製した生成物を使用し、製造した反応物(P)を示す。この化合物(cII)は、形式的に且つ1分子当たり平均10個のヒドロキシル基を含有しており、この化合物は、さらなる反応プロセス内で対応して適用された。
【0111】
1.4 製造した反応生成物(P)
表1に反応生成物の一覧を示す。
【0112】
これにより、設定モル比w/x/y/zは、タイプ1の反応生成物について、設定比「コア部分(化合物(cI)又は(cII))のヒドロキシル基(w)/化合物(d)のカルボキシ官能基(x)/化合物(e)のNCO官能基(y)/無水化合物(f)の反応性カルボキシル側鎖(z)」を表す。
【0113】
タイプ2の反応生成物については、設定比q/r/s/tは、「コア部分(化合物(cI)又は(cII))のヒドロキシル基(q)/化合物(d)のカルボキシ官能基(r)/コアのヒドロキシル基と反応する無水化合物(e1)のカルボキシル側鎖(s)/開環無水化合物(e1)のカルボキシル側鎖と反応する化合物(e2)のヒドロキシル基(t)」を表す。
【0114】
比較反応生成物(CP)として、ポリアルキレンオキシド単位(反応したMPEG2000の形態)を含む既知の顔料分散剤添加剤を適用した。適用された分散剤は、樹脂固形分(不揮発性)35.5質量%及び溶媒64.5質量%で構成されていた。分散剤の溶媒含有量は以下の通りであった:プロピレングリコールn-プロピルエーテル28.4質量%、メチルイソアミルケトン(MIAK)6.1質量%、脱イオン水28.5質量%及びミネラルスピリット1.5質量%。分散剤中に存在する樹脂は、米国特許第5,270,399号の実施例5に開示されているように調製した。
【0115】
【表1】
【0116】
2 顔料ペーストの調製及びコーティング組成物の調製
2.1 顔料ペースト
顔料ペーストは、以下の一般的な手順で製造した:所定の顔料を瓶に秤量する。次いで、分散剤としての所定の反応生成物(P)を別個の容器に加え、顔料上の所定の分散剤レベルに到達させる。その後、反応生成物を撹拌しながらゆっくりと水中で希釈する。完全に溶解したら、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol PnB)を撹拌しながら滴下し、濁りのなくなった溶液を得る。その後、反応生成物の分散液を撹拌しながら顔料と混合し、一貫したプレペースト製剤/懸濁液を作成する。その後、必要に応じて、破砕(粉砕(milling))の工程を実施した。如何なる場合も、微破砕(粉砕)を行った。
【0117】
青色顔料ペースト:青色顔料ペーストには、Palomar Blue248-4806、Blue15:1(Sun Chemical社)を適用した。10質量部の顔料を、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol PnB)及び水を含有する分散剤としての特定反応生成物の撹拌混合物に添加した。得られた懸濁液は、Cowlesブレードを用いて5分間撹拌した。pHは、20%のDMEOA水溶液を用いて、Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation,Parsippany,New Jersey、米国)で測定して8.0に調整した。顔料懸濁液を8オンスの混合ジャー(Qorpak)及び0.3~0.4mmのYTZ粉砕媒体(Fox Industries)2:1の比に移し、LAUシェーカー(LAU disperser DAS200-LAU GmbH社)を使用して10時間撹拌した。得られたペーストは、0.3~0.4mmのYTZメディアから重力ろ過で分離し、コーティング組成物にさらなる変更を加えることなく使用した。
【0118】
黒色顔料ペースト:黒色顔料ペーストには、Paliogen Black L0086を適用した。ここでも10質量部の顔料を、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol PnB)又はDowanol PnP及び水を含有する分散剤としての特定反応生成物の撹拌混合物に添加した。得られた懸濁液は、Cowlesブレードを用いて5分間撹拌した。pHは、20%のDMEOA水溶液を用いて、Starter 300 pH Portable pH meter(Ohaus Corporation,Parsippany,New Jersey、米国)で測定して8.1に調整した。顔料懸濁液を8オンスの混合ジャー(Qorpak)及び0.9~1.1mmのYTZ粉砕媒体(Fox Industries)に移し、LAUシェーカー(LAU Disperser DAS200-LAU GmbH社)を使用して破砕の工程の間4時間撹拌した。0.9~1.1mmのYTZ媒体は、重力濾過で分離した。このように回収したペーストを8オンスの混合ジャー(Qorpak)に移し、0.3~0.4mmのYTZ粉砕媒体で2:1のビーズ対ペースト比で注入し、LAUシェーカー(LAU disperser DAS200-LAU GmbH社)を使用して12時間撹拌し、微粉砕した。得られた最終ペースト生成物は、濾過して0.3~0.4mmの溶媒を除去し、さらなる変更を加えることなくコーティング組成物に使用した。
【0119】
表2、表3に顔料ペーストの詳細を示す。すべての量は質量を指す。分散液/溶液として利用可能であり、それ故溶媒を含む成分の場合、量は適用された(すなわち、溶媒を含む)成分を指し、分散剤対顔料の比は分散剤(溶媒を除く有効量)及び顔料のみを指す。
【0120】
2.2. コーティング組成物
組成物は、非着色の1液型組成物中間体に上記の顔料ペーストを添加し、その後、ポリウレタン樹脂成分を用いて固形分含量を調整し、N.N-ジメチルエタノールアミン(水中20%)を用いてpHを8.1に調整し、水を加えて目標顔料濃度に調整することによって製造した。非着色中間体は水性タイプのものであり、さらなる成分のうちにレオロジー調整剤としてLaponite(Fa.BYK)、そしてバインダー成分としてポリウレタン、アクリル樹脂及びポリエステルを含有した。さらに、架橋剤成分としてメラミン樹脂(Cymel 327、Fa Allnex)が含まれていた。
【0121】
この結果、本発明のコーティング組成物、この場合は透明な青色ベースコート組成物又は黒色ベースコート組成物を製造することができた。
【0122】
表2及び表3に、コーティング組成物のさらなる詳細を示す。すべての量は質量を指す。分散液/溶液として利用可能であり、それ故溶媒を含む成分の場合、量は適用された(すなわち、溶媒を含む)成分を指し、分散剤対顔料の比は分散剤(溶媒を除く有効量)及び顔料のみを指す。
【0123】
3. 硬化コーティングの調製及び評価
3.1 青色顔料を含む透明ベースコート組成物の適用
組成物を、メリネックスドローダウンシート(Puetz GmbH+C0.Folien KG,Taunusstein、ドイツ)上に、Bykドローダウンバー上の100マイクロメートルのギャップを用いて薄膜として適用した。湿った透明ベースコートフィルムを、周囲条件下で15分間フラッシュし、次いで130℃で25分間焼付けた。
【0124】
その後、メリネックス基材上の硬化したコーティングをByk Mac i分光光度計で分析した。サンプルは鏡上に配置し、コーティングは鏡面に、メリネックス面はByk Mac i装置に向けた。サンプルはCIELab設定を用いて、スペキュラーから110度外れてd65ライトを照射した。得られたコーティングのサンプリングは、コーティングフィルムの異なる領域で少なくとも5回行った。
【0125】
3.2 黒色顔料を含むストレートシェードベースコート組成物の適用
組成物を、Bykドローダウンバー上の200マイクロメートルのギャップを用いて、スチールパネル(T12M黒白パネル、Leneta)に適用した。パネル及びそのコーティングを40℃で10分間フラッシュした。次に、市販のクリアコート組成物(BASF Corporation社、Coatings Division、米国のProGloss(登録商標)2K4)をパネルにスプレーコーティングし、130℃で25分間焼付けた。
【0126】
その後、スチール基材上の硬化したコーティングをByk Mac i分光光度計で分析した。サンプルは鏡上に配置し、コーティングは鏡面に、メリネックス面はByk Mac i装置に向けた。サンプルはCIELab設定を用いて、スペキュラーから110度外れてd65ライトを照射した。得られたコーティングのサンプリングは、コーティングフィルムの異なる領域で少なくとも5回行った。
【0127】
表2及び表3に、本発明のコーティング組成物及び比較例のコーティング組成物をベースとするそれぞれ製造された硬化コーティング及び多層コーティングの結果を示す。
【0128】
表2は、本発明のコーティングが、少なくとも許容できる、しかし多くは良好な又は優れた透明性、ひいては顔料分布を示すことを明確に示している。他方で、この点における比較例の系は許容できない。黒色組成物及びコーティングについて、本発明の系は、硬化コーティングのL(110°)値が比較例の系と比較すると著しく減少したことを示す。
【0129】
全体として、本発明で使用する反応生成物/分散剤の分散能力は、比較例の分散剤(CP)よりも著しく優れていることが、データから示される。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【国際調査報告】