(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】動的流体加熱器および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47L 15/46 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A47L15/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023551791
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022017676
(87)【国際公開番号】W WO2022182855
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523191937
【氏名又は名称】オームアイキュー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】リヨン,グレゴリー,エス.
(72)【発明者】
【氏名】カラハン,ジェレマイア,エム.
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082DB01
3B082DC04
3B082DC05
(57)【要約】
対象流体を加熱するための加熱システム(10)を備える食器洗浄機は、媒介液を保持するための媒介液循環経路、および対象流体を搬送するための対象流体流路を含み得、対象流体流路および循環経路は、互いに別個であるが、熱交換器(14)を介して互いに熱的に連通している。媒介液は、加熱器(18)によって加熱され、ポンプ(51)によって媒介液循環経路内で循環させられ得る。媒介液循環経路の容積に対する加熱器(18)の最大熱出力の比は、少なくとも約5ワット/cmであり得る。媒介液の熱質量は、対象流体の熱質量の0.3倍以下であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)洗浄チャンバを画定するハウジングと、
(b)水流路、ならびに前記水流路および前記洗浄チャンバを通して水を循環させるように構成された水ポンプを画定する構造体であって、前記水流路が、熱交換部分を含む、構造体と、
(c)前記水流路とは別個の媒介液循環経路であって、前記媒介液循環経路が、前記水流路の前記熱交換部分と熱的に連通した熱交換部分を有する、媒介液循環経路、および前記媒介液循環経路を通して媒介液を循環させるための媒介液ポンプ、を画定する構造体と、
(d)前記媒介液が前記水を加熱するよう、前記媒介液を加熱するように構成された加熱器と
を備える、食器洗浄機。
【請求項2】
前記加熱器が、前記媒介液循環経路内に配置された複数の電極と、電流が前記媒介液を通過するよう、異なる電位を前記電極のうちの異なる電極に印加するように構成された電気回路とを含むオーム加熱器である、請求項1に記載の食器洗浄機。
【請求項3】
前記食器洗浄機が使用されていないときには、前記加熱器が動作不能であり、これにより、洗浄サイクルの開始前には前記媒介液が冷温始動条件において周囲温度にあり、前記加熱器および熱交換器が、前記洗浄サイクルの間に、1回分の水の温度を、周囲温度を上回る洗浄温度に上昇させるように動作可能である、請求項1または2に記載の食器洗浄機。
【請求項4】
少なくとも1.5℃/秒の無負荷媒介液加熱速度を有する、請求項3に記載の食器洗浄機。
【請求項5】
前記水流路および前記洗浄チャンバを通して空気を循環させ、その結果、前記空気が前記媒介液によって加熱され、これにより、前記加熱された空気が、前記洗浄チャンバ内に配置された食器を乾燥させるのを助けるようにするための手段をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項6】
空気を循環させるための前記手段が、前記水ポンプを含む、請求項5に記載の食器洗浄機。
【請求項7】
前記加熱器が、最大熱出力を有し、前記媒介液循環経路の容積に対する前記加熱器の前記最大熱出力の比が、少なくとも約5ワット/cm
3である、請求項1から6のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項8】
前記水流路の前記熱交換部分の容積が、前記媒介液循環経路の容積よりも小さい、請求項1から7のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項9】
前記熱交換部分が、シェルと、前記シェルを通って延びた1本または複数本のチューブとを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項10】
前記媒介液循環経路の前記熱交換部分が、前記シェルを含み、前記水流路の前記熱交換部分が、前記1本または複数本のチューブを含む、請求項9に記載の食器洗浄機。
【請求項11】
前記媒介液循環経路が、前記加熱器の電気回路の少なくとも1つの構成要素に結合されたヒートシンクと熱的に連通した枝路を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項12】
前記媒介液循環経路を画定する前記構造体が、前記媒介液の体積の膨張を可能にするための可撓膜を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項13】
ばねが、前記媒介液を加圧するための圧力を前記可撓膜に印加し、前記ばねが、前記印加される圧力が前記媒介液の飽和曲線に対応するように構成されている、請求項12に記載の食器洗浄機。
【請求項14】
前記食器洗浄機が、所定の体積を有する1回分の水を使用して洗浄サイクルを完了するように動作可能であり、前記1回分の熱質量に対する前記媒介液の熱質量の比が、0.3以下である、請求項1から13のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項15】
前記媒介液循環経路内に配置された前記媒介液をさらに備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項16】
前記媒介液循環経路が、密封されている、請求項15に記載の食器洗浄機。
【請求項17】
請求項15または16に記載の複数の食器洗浄機を作製する方法であって、
(i)前記媒介液を有しない複数の実質的に同一の食器洗浄機を作製するステップと、
(ii)前記食器洗浄機の第1のグループの前記媒介液循環経路に、第1の電気伝導率を有する第1の媒介液を充填するステップと、
(iii)前記食器洗浄機の第2のグループの前記媒介液循環経路に、前記第1の電気伝導率よりも低い第2の電気伝導率を有する第2の媒介液を充填するステップであって、これにより、前記第1および第2のグループの前記食器洗浄機が、異なる電気供給電圧を用いた使用のために構成される、ステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月24日に出願された米国仮特許出願第63/152,906号の出願日の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、流体加熱器、および流体加熱器を組み込んだ食器洗浄機などの洗浄装置に関する。
【0003】
食器洗浄機、特に、ポータブル食器洗浄機において使用するための加熱器は、著しく困難な問題を呈する。食器洗浄機は、通例、家庭用温水の温度を上回る温度の洗浄水を使用する。食器洗浄機は、望ましくは、使用されていない間は電力を消散しないため、加熱水のリザーバを所望の洗浄温度に維持することができず、その代わりに、洗浄サイクルの開始時に1回分の洗浄水を迅速に加熱しなければならない。加熱器は、望ましくは、電力が最初に加熱器に供給されたときに1回分の洗浄水を冷温始動から急速に加熱し、動作中に洗浄水を所望の高温に維持する能力を有する。例えば、1つのポータブル食器洗浄機の設計では、加熱器は、望ましくは、電力が印加された後に、1回分の1.5リットルの水を、5分以内、より望ましくは、3分以内に36℃だけ加熱する。洗浄水は、通例、飲用水として出発するが、洗浄サイクルが進行するのに従って、洗浄石けんおよび食物残渣からの電解質で汚染される。それゆえ、洗浄液の電気伝導率は非常に広い範囲にわたって変化する。さらに、サイクルが進行するのに従って、洗浄水は、加熱器を詰まらせ得る粒子状物質で、および、特に、過熱されたときに、加熱器の要素上に析出物を形成し得る物質で汚染され得る。また、ポータブル食器洗浄機のための加熱器は、望ましくは、コンパクトであり、比較的安価であり、耐久性がある。
【0004】
液体を加熱するための従来の電気抵抗加熱器は、加熱されるべき液体と接触した固体加熱要素を組み込んでいる。加熱要素は、通例、抵抗要素を液体から電気的に隔離された状態に保つための電気絶縁材料によって包囲された電気抵抗要素を含み、絶縁体の周りの保護ケーシングを含み得る。液体が抵抗加熱要素によって加熱され得る速度は、要素の表面において許容可能な最大温度によって制約される。高い表面温度は、加熱要素から液体への熱伝達速度を低減する、液体の局所的沸騰を助長し得る。高い表面温度はまた、液体内の望ましくない反応も助長し得る。例えば、水道水を加熱したとき、高い表面温度は、スケール付着、すなわち、加熱要素の表面上における汚染物質膜の析出を助長する。これらの欠点は、加熱要素の構造体の、および加熱要素の周りの液体の流れの不均一性に起因する加熱要素の表面温度の不均一性によって悪化させられる。さらに、電気抵抗加熱要素はかなりの質量および熱容量を有する。電力が最初に冷温の加熱要素に印加されたとき、その表面温度はゆっくりと上昇する。加熱要素が所望の表面温度に達するまでは、要素は、液体を加熱するとしても、ゆっくりと加熱する。
【0005】
これらの欠点にもかかわらず、抵抗加熱器は、例えば、加熱器が、水で満たされたタンクを一定の所望温度に維持する、タンク式温水器の場合のように、加熱器が、定常状態の、またはゆっくりと変化する条件下で動作する適用例においてはうまく適用され得る。CN2585119YおよびKR101812263B1では、タンク式温水器の一変形例は、媒介液中に浸された電気抵抗加熱器を用いて、媒介液で満たされた大型タンクを所望の温度に維持する。パイプのコイルがタンク内の媒介液中に浸され、加熱されるべき水がコイルを通して案内され、これにより、水は媒介液からの熱伝達によって加熱される。この構成は、抵抗加熱器をスケール付着から保護すると言われる。EP2177659B1は、媒介液を高温に維持するためにガスまたは電気抵抗加熱器を用いる。媒介液は、工業織物洗濯店のための給水タンク内に配置された回転熱交換チューブの内部で循環させられる。
【0006】
「オーム」加熱器は、対象液に晒される複数の電極を含む。電力源が、電極のうちの異なる電極の間に電圧を印加するように構成されており、電流が対象液を通過し、対象液を加熱する。熱は対象液中で生成されるため、電極は、典型的には、対象液の平均温度またはその付近にとどまり、これはスケール付着を軽減するか、または完全に解消する。さらに、オーム加熱器は対象液を急速に加熱することができる。しかし、オーム加熱器内で消散される電力は、対象液の電気伝導率と共に、ならびに通電電極間の対象液を通る電流経路の長さ、および電極の構成と共に変化する。所望の加熱速度をもたらすために、電気回路は、電極に印加される電圧を変更し得るか、電極の異なる組み合わせを通電電極として選択し得るか、または両方のアプローチを用い得る。開示が参照により組み込まれる、米国特許第7,817,906号明細書、および米国特許出願公開第20190271487号明細書は、典型的な家庭用飲用水供給において遭遇される伝導率の大きな変化にもかかわらず、ある範囲の加熱速度をうまくもたらすことができるオーム加熱器を教示している。しかし、食器洗浄機内の洗浄水の電気伝導率は、洗剤および食物残渣からの電解質による負荷のゆえに、はるかにより広い範囲の伝導率にわたって変化する。例えば、開示が本明細書において参照により組み込まれる、国際公開第2021/102141号パンフレットに記載されているように、この問題に対処する能力を有するオーム加熱器が開発されてはいるが、よりいっそうの改善が望まれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱システムの斜視図である。
【
図2】
図1における線2-2に沿った斜視部分断面図である。
【
図3】
図1における線3-3に沿った斜視部分断面図である。
【
図4】本発明のさらなる実施形態に係る食器洗浄機の概略図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態に係る加熱システムを示す概略断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る加熱システムの斜視図である。
【
図7】
図6の加熱システムの枝路の構成要素の分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態のうちの任意のものに係る電極に接触するための電線形状の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態に係る加熱システム10は、軸16を有する細長いチューブの形態の中空の熱交換器シェル14(
図2)を画定するケーシング12を含む構造体を有する。ケーシング12はまた、概ね長方形の加熱器チャンバ18を画定する。エンドプレート20および22の対がシェルの反対の端部においてシェル14内に装着されている。エンドプレートは、シェルの境界となるケーシング10の壁に密封接続されており、これにより、エンドプレートおよびケーシングはシェル内の密閉された円筒形内部空間を協働的に画定する。各エンドプレートは、シェルの軸16の周りに均等に離間された場所においてそれを貫いて延びた3つの孔24を有する。3本のチューブ26(
図2および
図3)がエンドプレート26内の孔24の間に延びている。チューブ26は、望ましくは、金属、または良好な熱伝導性を有する他の材料から形成される。各エンドプレートにおいて、各チューブの周囲はエンドプレートに対して密封されており、これにより、チューブ内の空間はシェル14の内部空間と連通していない。2つの管状端部継手28および30がエンドプレート20および22のすぐ外側でケーシングに装着されており、これにより、各継手の内部はチューブ26内の空間と連通している。それゆえ、端部継手28および30ならびにチューブ26は、対象流体が加熱システム10を通過するための連続した流路を画定する。
【0009】
出口ポート32が、エンドプレート32に隣接したシェル14の内部空間と連通している。
図3において最もうまく見られるように、構造体は、ポート34から加熱器チャンバ18の入口開口部38へ延びた通路36を画定する継手34をさらに含む。
図2において最もうまく見られるように、入口開口部38は、加熱器チャンバの1つの角部に隣接した加熱器チャンバ18の端部壁39内を通って延びている。出口開口部40(
図2)が、入口開口部38と対角線的に反対の角部において加熱器チャンバ18と連通している。4つの概ね平らなプレート状電極42、44、46および48が加熱器チャンバ18内に配置されている。電極は黒鉛などの電気伝導性材料から形成されており、電極の主面が電極間の空間を挟んで互いに対面するように構成されている。電極42および48は加熱チャンバの反対側に配置されており、電極42および44は電極42および48の間にある。電極および加熱チャンバは、液体を、まず、電極42および44の間の空間を通り、次に、端部壁39から遠く離れた電極44の端部を回り、次に、電極44および46の間の空間を通り、端部壁39に隣接した電極46の端部を回り、最後に、電極46および48の間の空間を通り、出口開口部40へ至るよう、蛇行経路に沿って入口開口部38から出口開口部40へ加熱器チャンバを通過するよう案内するように構成されている。
【0010】
構造体はまた、ポンプ51を含む。ポンプ51は中空のポンプハウジング50(
図2)を含む。ポンプハウジング50は、加熱器チャンバの出口開口部40と整列した入口開口部を有する。ポンプロータ52がポンプハウジング内に配置されており、電気モータ54に連結されている。ポンプハウジング50はその周囲に出口ポート(図示せず)を有する。出口ポートは、ポンプ出口パイプ56(
図1)と連通しており、ポンプ出口パイプ56は、今度は継手58を介して入口ポート60に接続されている。入口ポート60は、エンドプレート20および22の間の、ただし、エンドプレート20(
図2)に隣接した場所においてシェル14の内部容積と連通している。それゆえ、入口ポート60は、シェル14の、出口ポート32と反対の端部の近くにある。入口ポート62はまた、シェルの軸16の反対側に配置されている。それゆえ、入口ポート60から出口ポート32へシェル内を流れる液体はチューブ26の周りを流れることになる。
【0011】
それゆえ、構造体は、本明細書において「媒介」液と称される、液体の循環のための閉ループを画定する。このループは、(チューブ26の外部の)シェル14、通路36(
図3)、加熱器チャンバ18、ポンプハウジング50、および出口パイプ56内の空間を含む。媒介流体は、望ましくは、例えば、電解質の既知の濃度を有する水性液体としての、既知の電気伝導率特性を有する液体である。媒介液は、加熱システムが製造される際にループ内に提供され得るか、またはシステムが動作させられる直前に循環経路内に充填され得る。望ましくは、媒介液がループ内に配置されると、媒介液循環経路は密封される。好ましくは、構造体は、媒介液が導入された後の媒介液循環経路と外部との間の連通を可能にするベントまたは溢流開口部を含まない。構造体は、媒介液循環経路の容積が、予想動作範囲にわたる媒介液の熱膨張を補償するために十分に膨張することを可能にする可撓壁(図示せず)を含み得る。例えば、転動形ダイアフラムが、媒介液に圧力も印加しつつ、媒介液の膨張を可能にするために利用され得る。このような転動形ダイアフラムは、ピストンが、1つまたは複数のコイル圧縮ばねによって印加された力のゆえに圧力を伝える可撓膜を含み得る。有利に、ばねは、液体中のキャビテーションを最小限に抑えるために、媒介液の飽和曲線に従うように設計され得る。加えて、圧力を媒介液に印加することによって、転動形ダイアフラムは、媒介液(例えば、水)が沸騰点を超えて加熱されることを可能にし得る。これは、比較的高い温度が対象流体に印加されなければならない適用例において特に重要になり得る。例えば、温飲料(例えば、コーヒー)のための飲料分配デバイス内の加熱システムを利用することは、対象流体を92~94℃に加熱することを要し得るであろう。
【0012】
シェル14およびチューブ26で合わせて熱交換器を形成する。望ましくは、媒介液は加熱システムの恒久部分を形成する。すなわち、媒介液は、システムの修理の間に交換されることはあるが、システムの通常動作の間に消費または交換されない。チューブ26内の対象流体はシェル14内の媒介流体と熱的に連通している。別の言い方をすれば、シェル14は媒介流体ループの熱交換部分を構成し、それに対して、チューブ26は対象流体経路の熱交換部分を構成し、これらの熱交換部分は互いに熱的に連通している。
【0013】
電極42~48(
図2)はオーム加熱器の部分を形成する。オーム加熱器は電気回路64(
図1)をさらに含む。電気回路は、電極のうちの異なる電極に異なる電位を加えるために、個々の電極のうちの異なる電極を従来のAC商用電源(図示せず)などの電源の異なる極に接続するように構成された半導体スイッチなどの電力スイッチを含む。電位が印加されたとき、電流が電極間の空間内の媒介液を通過し、液体を加熱する。加熱速度は電流の2乗に比例して変化し、電流は極間の液体の電気抵抗に逆比例する。任意の2つの電極間の電気抵抗は、電源の極に接続された電極間の空間または空間群を通る電流経路の長さに比例し、また、電極のサイズおよび形状にも依存する。本実施形態では、電極は、等しいサイズの平らなプレートであるが、互いに不均等に離間されている。電極42および44の間の距離は電極44および46の間の距離よりも小さく、電極44および46の間の距離は、今度は電極46および48の間の距離よりも小さい。さらに、回路は、接続された電極の間に物理的に配置された1つまたは複数の電極が電源に接続されないままになるように、電極を電源に接続することができる。例えば、電極42を電源の一方の極に、および電極48を反対の極に接続し、その一方で、電極44および46を電源から切断されたままにすることによって、回路は、空間の全ての内部の液体を通って、ならびに切断された電極44および46を通って延びた単一の非常に長い電流経路を確立する。回路は、望ましくは、媒介液の温度などのシステムの条件を監視し、所望の加熱速度を提供する電流経路を選択するための1つまたは複数のセンサを含む。オーム加熱器によって供給される加熱速度を制御するための電極およびシステムの様々な構成が、上述された米国およびPCT文書に記載されており、これらの特徴はオーム加熱器において用いられ得る。
【0014】
所与の電流経路に沿って流れる電流は、電極間に配置された液体の電気伝導率に正比例して変化する。オーム加熱器は、通例、熱である液体の伝導率が劇的に変化したときにさえ、所望の加熱速度の選択を可能にするために必要な広範囲の電流経路を提供するための数多くの電極および数多くのスイッチを含む。しかし、
図1~
図3のシステムでは、媒介液は既知の組成のものである。その伝導率は温度に比例して変化することになるが、媒介液の伝導率の範囲は、電極間を流れる飲用水を直接加熱するように設計された加熱器において遭遇される伝導率の範囲と比べて小さく、食器洗浄機内の洗浄水を用いて遭遇される伝導率の範囲よりも何桁も小さい。これはオーム加熱器の設計を大幅に単純化し、このため、加熱器は少数の電極および空間のみを用いて満足に機能することができ、これは加熱器をコンパクトにし、加熱チャンバの容積を最小限に抑える。オーム加熱器、および媒介液循環経路の他の要素は対象流体と接触しないため、それらは汚染およびスケール付着から保護される。さらに、媒介液は加熱システムの恒久部分であるため、システムは、システムが異なる市場のために組み立てられる際に、単に、循環経路に異なる媒介液を充填することによって、例えば、北米において一般的に供給されているとおりの120ボルト、またはヨーロッパおよび中国において一般的に供給されているとおりの230ボルトとしての異なる商用電源電圧を使用して動作するように構成され得る。より低い商用供給電圧を使用する市場のためには、より高い伝導率の液体が使用される。回路機構、または電極の構成を変更する必要はない。
【0015】
循環経路に充填するために必要とされる媒介液の体積を抑制するために、媒介液循環経路全体は、望ましくは、コンパクトである。これは、結果として、媒介液の質量を抑制し、それゆえ、媒介液の熱質量および全体としての加熱システムの熱質量を抑制する。本開示において要素または要素の集合体を参照して使用されるとき、用語「熱質量」は、要素または集合体を1℃だけ加熱するために必要とされるエネルギー量である。媒介液などの、均一な組成の要素については、熱質量は、単に、要素を構成する材料の比熱に要素の質量を乗算した積である。全体としての加熱システムなどの要素の集合体については、熱質量は個々の要素の熱質量の和である。以下においてさらに説明されるように、加熱器の熱質量を抑制することは加熱器の動的応答を改善し、媒介液が対象液の所望の温度未満の温度にある、初期「冷温始動」条件から開始したときに、加熱器が、所望の温度における加熱された対象流体を作り出すために必要な時間を短縮する。典型的には、媒介液の熱質量は、媒介液と接触した全体としての加熱システムのそれらの部分の熱質量の相当の部分、最も典型的には、熱質量の大部分を構成する。
図1~
図3に示される加熱システムの一例では、媒介液循環経路の容積は130cm
3であり、媒介液(少量の電解質を有する水)の質量は0.13kgである。加熱システムの動的応答への熱質量の影響は、本明細書において加熱システムの「断熱的媒介液加熱速度」と称される、媒介液の熱質量に対する加熱器の最大加熱速度の比によって特徴付けられ得る。それは、媒介液から加熱システムの他の構成要素への、または対象流体への熱伝達が全く存在しない場合に、加熱器が媒介液を加熱し得るであろう速度である。望ましくは、この比は少なくとも約0.5℃/秒であり、より望ましくは、少なくとも1であり、さらにより望ましくは、少なくとも1.5である。上述された同じ例では、媒介液の熱質量は550ジュール/℃であり、それに対して、オーム加熱器の最大加熱速度は1500ワット、すなわち、1500ジュール/秒である。したがって、断熱的媒介液加熱速度は2.75℃/秒である。媒介液と接触した加熱システムの構成要素もまた、いくらかの熱質量を有し、これにより、たとえ、加熱システムが対象液を伴わずに動作させられたときでも、媒介液の実際の加熱速度は断熱的加熱速度より小さくなる。閉塞され、無視できるほどの熱質量を有する空気などの気体を充填された対象流体経路の熱交換部分を伴って測定された媒介液の実際の加熱速度は、本明細書において、加熱システムの「無負荷媒介液加熱速度」と称される。無負荷媒介液加熱速度は、望ましくは、少なくとも1.5℃/秒、より望ましくは、少なくとも2℃/秒である。別の意味のあるパラメータは、への媒介液循環経路の容積、すなわち、媒介液が導入されたときに媒介液によって占有された容積に対するオーム加熱器の最大加熱速度の比である。この比は、望ましくは、少なくとも5ワット/cm
3、より望ましくは、少なくとも7、およびさらにより望ましくは、少なくとも10である。
【0016】
オーム加熱器の使用は、密封された媒介液循環経路を有する構造体の設計を著しく単純化する。オーム加熱器は、熱を液体に伝達するのではなく、熱を媒介液内に生成するため、それは加熱器表面における媒介液の局所的沸騰を生じさせない。したがって、媒介液循環経路内の圧力は、媒介液の平均温度を監視し、制御することによって、安全に制御することができる。対照的に、固体抵抗加熱器は、たとえ、液体のバルク温度が液体の沸騰温度を十分に下回るときでも、加熱要素の表面における液体の局所的沸騰を生じさせ得、このため、典型的には、圧力逃がし弁が、抵抗加熱器によって加熱される導管内に組み込まれなければならない。
【0017】
対象液の急速な加熱を促進する別の因子は、対象流体経路の熱交換部分内の、すなわち、チューブ26(
図2および
図3)内の対象液の低い滞液量である。望ましくは、対象流体経路の熱交換部分の内部容積は媒介液循環経路の全容積以下であり、より好ましくは、対象流体経路の熱交換部分の内部容積は媒介液循環経路の全容積の2分の1未満である。
【0018】
ポンプ51は、望ましくは、チューブ26の周りの媒介液の乱流をもたらすために、シェル14を通して媒介液を急速度で推進するように構成されている。これは媒介液とチューブの外面との間の急速な熱伝達を助長する。さらに、流れる媒介液は絶えず混合され、これは、チューブ壁の局所的加熱を抑制する助けとなる。望ましくは、対象流体もまた、チューブ壁から対象流体への熱伝達を高め、チューブ壁の局所的加熱をさらに抑制するために、チューブ内の乱流を保証する速度で流れる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態に係る食器洗浄機100は、中空の洗浄チャンバ104、および他の構成要素のための空間106を画定するハウジング102を含む。ハウジングは、洗浄チャンバへのアクセスを可能にするための開放可能な扉(図示せず)または取り外し可能な部分(図示せず)を含み得る。洗浄されるべき食器Dを保持するためのラック108が洗浄チャンバ内に配置されている。ハウジング102は、洗浄チャンバの床を画定する壁110を有する。作動サンプ112および廃水ドレンサンプ114が洗浄チャンバに開口しており、洗浄チャンバの床から下向きに延びている。作動サンプは水ポンプ118の入口に接続されている。清水リザーバ120が清水制御弁122を介してポンプ118の入口および作動サンプに接続されている。廃水ドレンサンプは廃水制御弁127を介して廃水リザーバ124に接続されている。廃水リザーバはハウジング102内に着脱可能に装着されている。ポンプ118の出口は、複数の開口部を有する回転可能アームなどの噴射デバイス126に接続されている。噴射デバイスは、ラック108を通して洗浄チャンバ内へ水を上向きに噴射するように構成されており、これにより、噴射された水は食器Dに衝突する。上述の特徴は、開示が本明細書において参照により組み込まれる、国際公開第2020/142411号パンフレットに記載されているとおりのものであり得る。
【0020】
図4の食器洗浄機は、以上において
図1~
図3を参照して説明されたとおりの加熱システム10をさらに含む。加熱器の対象流体経路はポンプ118の出口と噴射デバイス126との間に接続されている。例えば、水ポンプ118の出口は継手30(
図2)に接続され得、それに対して、噴射デバイス126は継手28に接続され得る。本構成では、ポンプ118によって推進される水は、シェル14内の媒介液の流れと概ね逆流の、
図2において見られるとおりの概ね右方への方向にチューブ26を通過することになる。
【0021】
食器洗浄機はまた、例えば、標準的な商用電源コンセントに嵌合するように構成されたプラグ130通じて、商用電力系統から電力を引き出すように構成された電力および制御回路128を含む。回路128は、食器洗浄機の様々な要素を作動させるための電力を供給し、それらの動作を、後述される機能を行うよう制御するように構成されている。
【0022】
動作時、ユーザは、洗浄されるべき物品をラック108上に配置し、1回分の水を洗浄チャンバ内に注入する。この際、清水制御弁122は開放状態に保持され、廃水弁127は閉鎖状態に保持され、これにより、1回分の水はサンプ112を通して清水リザーバ内へ排出され、清水リザーバ120を充填する。洗剤が、ユーザによって、または洗剤ディスペンサ(図示せず)によって洗浄チャンバ内に投入され、洗浄チャンバは閉鎖される。次に、制御回路は、水1回分の所定の第1の部分がリザーバ120から引き出され、そうして清水弁122が閉鎖されるまで水ポンプ118を作動させ、清水リザーバ120から水を引き出し、水を、加熱システム10の対象流体経路を通り、噴射デバイス126を通り、洗浄チャンバ内へ至るよう推進する。水ポンプは動作を継続し、これにより、リザーバから引き出された水は洗浄チャンバから水ポンプおよび加熱システムを通って絶えず再循環する。
【0023】
制御回路は、媒介液が水を加熱するよう加熱システム10内の媒介液を加熱するために、加熱システム10内のオーム加熱器に加熱器の最大能力で熱を供給するように指令する。上述されたように、加熱システム10は対象流体を冷温始動から急速に加熱することができる。加熱システムの低い熱質量はこの能力に寄与する。加熱システムが水ポンプと同時に始動される場合にさえ、加熱システムの熱質量によって生じる加熱の任意の遅延は小さい。望ましくは、媒介液の熱質量は、加熱されるべき対象液の熱質量と比べて小さい。食器洗浄機では、対象液の熱質量は、食器洗浄機の単一の動作サイクルの間に使用される1回分の水の熱質量と見なすことができる。
図4のポータブル食器洗浄機では、1回分の水は、ユーザが水を食器洗浄機内に注入した際に、清水リザーバ120、水ポンプ118内、および加熱システム10の対象流体経路内に充填される水量から成る。望ましくは、1回分の熱質量に対する媒介液の熱質量の比は、0.3以下、望ましくは、0.2以下、より好ましくは、0.1以下である。別の言い方をすれば、媒介液の熱質量は、媒介液および1回分の水の複合熱質量のうちの比較的小さい部分を追加するのみである。食器洗浄機の動作中に加熱されるべき総熱質量はまた、1回分の水に加えて、洗浄チャンバ内に配置された食器、食器を保持するラック、および洗浄チャンバ自体の壁の熱質量も含むため、媒介液の熱質量は総熱質量のうちのなおいっそう小さい部分を構成する。
【0024】
洗浄水が所望の温度に接近すると、制御システムは加熱システムに、熱が媒介液に供給される速度を低減するように指令し得る。媒介液の熱質量は小さいため、媒介液の温度は、洗浄水への連続した熱伝達のゆえに、急速に低下することになる。制御システムは、熱を低い速度で洗浄水に供給し、周囲へ失われる熱を補償するために、媒介液を、洗浄水の所望の温度をほんの少し上回る温度に維持するよう加熱速度を必要に応じて調整し得る。代替的に、制御システムは、単に、加熱器、または全体としての加熱システムに、停止するように指令し得る。対象流体の所望の加熱速度の変化に迅速に反応する加熱器10の能力は大きな利点をもたらす。
【0025】
水ポンプ18は、食器Dを洗浄するために十分な時間にわたって、噴射デバイス26を通して、および洗浄チャンバを通して洗浄水を再循環させ続ける。次に、制御システムは、廃水弁127に開放するように指令し、これにより、洗浄水は廃水サンプ114を通って廃水リザーバ124内へ排出される。洗浄水ポンプ118は、作動サンプ112内へ排出された任意の洗浄水を洗浄チャンバ内へ戻すために動作し続け、洗浄チャンバにおいて、それは、廃水サンプ114内へ、および廃水リザーバ内へ排出されることになる。これは、望ましくは、作動サンプおよびポンプが洗浄水を実質的にパージされるまで継続する。次に、制御システムは、廃水弁127を閉鎖し、清水弁122を開放し、これにより、清水リザーバからの残りの水が、水ポンプ118を洗浄するためのすすぎ水として供給され、噴射デバイス126を通して、洗浄チャンバを通して、および作動サンプ112を通して再循環させられる。このステップの間に、制御システムは加熱システムに、循環するすすぎ水を加熱するように再び指令する。別の言い方をすれば、食器洗浄機内に最初に投入された1回分の水は、2つの部分、すなわち、洗浄水として加熱される第1の部分、およびすすぎ水として加熱される第2の部分において加熱される。食器がすすがれた後、制御システムは廃水弁を開放し、これにより、すすぎ水は廃水リザーバ124内へ排出される。
【0026】
任意選択的に、すすぎ水が排出された後、制御システムは、食器を乾燥させるために、加熱システム10および噴射デバイス126を通して、ならびに洗浄チャンバを通して洗浄チャンバ内の空気を再循環させるべく、水ポンプ118に動作状態のままとどまるように指令し得る。制御システムは、望ましくは、乾燥を助長するために、加熱システムに、媒介液を高温に維持し、かくして、循環する空気を加熱するように指令する。これに関して、流体が電気伝導性であるのか否かにかかわらず、本質的に任意の流体を加熱する加熱システムの能力は大きな利点をもたらす。食器洗浄機は、食器洗浄機内に空気を入れるための空気入口130、および食器洗浄機から湿り空気を放出するための湿り空気出口132を含み得る。これらの各々は、洗浄およびすすぎ動作の間は閉鎖されたまま維持され、その後、開放される弁を備え得る。図示のように、空気入口は、外気をポンプの入口に直接供給するように構成されている。さらなる変形例では、外気入口は、空気を、この空気がポンプ内へ吸い込まれることになるよう、望ましくは作動サンプの近くで洗浄チャンバに入れてもよい。本変形例では、外気は乾燥動作の間に絶えず供給され、加熱システム10によって加熱される。さらなる変形例では、加熱システムおよび洗浄チャンバを通して空気を循環させるために、水ポンプとは別個のファン(図示せず)が用いられ得る。
【0027】
さらなる変形例では、サイクルの開始時に洗浄水を加熱することに備えて、制御回路は、水ポンプを始動する前に媒介液を加熱し始めるために加熱システムを作動させ得る。食器を洗浄するために必要とされる動作サイクルにおいて費やされる時間を短縮するために、制御回路は、(i)商用電源コンセントへのプラグ130の差し込み、(ii)洗浄チャンバの開放もしくは閉鎖、(iii)リザーバに関連付けられた清水レベルセンサ(図示せず)によって検出された、清水リザーバ120の充填の開始、または(iv)ユーザが洗浄サイクルを開始するつもりであることを指示する、ユーザによって制御システムに入力される入力、のうちの1つまたは複数を含む、食器および洗剤を内部に入れた状態で、洗浄チャンバが閉鎖される前に行われることが予想されるアクションに応じて加熱システムを始動するように構成され得る。同様に、すすぎ水を加熱することに備えて、制御システムは、すすぎ水を分配するために清水弁を開放する前に、加熱システムを再始動するか、またはオーム加熱器の加熱速度を上昇させることができる。
【0028】
上述された特徴の数多くの変形および組み合わせが用いられ得る。例えば、上述された食器洗浄機は、建物または乗り物の配管および電力供給系への恒久的接続を有する、固定式食器洗浄機であり得る。
【0029】
上述された加熱システム10は変更され得る。例えば、媒介液を循環させるために用いられるポンプ51は、電気モータによるのではなく、対象流体の流れに晒されたタービンによって駆動され得る。また、上述された実施形態におけるポンプは遠心ポンプであるが、単語「ポンプ」は、本明細書で使用されるとき、媒介液流路に沿った媒介液の運動を推進することができる任意のデバイスを包含すると理解されるべきである。また、ポンプは、流路の他の構成要素とは別個のポンプチャンバを組み込まなくてもよい。
【0030】
加熱システムの構成は変更され得る。例えば、媒介液流路の容積をさらに低減するために、加熱器チャンバ18(
図2)は、シェル14の周りに巻かれたトロイダル導管として形成され得る。実際には、シェルと別個の加熱器チャンバを設けることは必須でない。オーム加熱器の電極はシェル内に配置されてもよい。ポンプインペラは、媒介液をシェル内で循環させるために、シェル内に配置されてもよい。このような実施形態では、媒介液流路の熱交換部分はシェルの容積の全てまたはほぼ全てを含むであろう。例えば、
図5に概略的に示されるように、本発明のさらなる実施形態に係る加熱システム200は、内部に配置されたチューブ204を有する円筒形シェル202を含む。オーム加熱器の電極206もシェル内に配置されている。本実施形態では、電極は棒状要素であり、チューブと共に散在している。インペラ208もまた、シェル内に装着されている。本実施形態では、媒介液循環経路全体がシェル内に包含されている。インペラは媒介液を、シェルの軸210の周りを循環するよう駆動する。さらなる実施形態では、オーム加熱器の電極のうちの1つまたは複数は流路の部分の役割を果たし得る。例えば、チューブ206はオーム加熱器の電極の一部または全ての役割を果たし得る。
【0031】
以上において
図1~
図3を参照して説明された実施形態では、流路の熱交換部分はシェルおよびチューブ熱交換器を形成し、媒介液はシェル内にあり、対象液はチューブ内にある。これを、対象液がシェルを通して案内され、媒介液がチューブを通して案内されるように、逆にすることができる。この場合には、オーム加熱器の電極はチューブ内に配置され得る。チューブの数は変更され得る。さらに他の実施形態では、例えば、チャンバが熱伝導性のプレートによって分離された、プレート型熱交換器、または対象流体流路の部分を形成するチューブは、媒介液流路の部分を形成するチューブの内部に配置されている、チューブ-チューブ熱交換としての、他の種類の熱交換器を用いることもできる。
【0032】
加熱システムの他の実施形態では、
図6に示されるように、電気回路364の部分の冷却が提供され得る。例えば、枝路370が媒介液のための閉ループに追加され得る。このような枝路は電気回路364の1つまたは複数の構成要素の近傍を通過し得、そこには、熱を電気構成要素から枝路370内の液体に伝達するためのヒートシンク372が配置され得る。冷却されるべきこのような電気構成要素は、動作中に非常に高温になり得る(例えば、最大150℃)、トライアック374を含み得る。媒介液も非常に高温になり得るが、それは、たとえ、温飲料分配デバイス内の加熱システムを使用しているときでも、約105℃を超え得ない。したがって、媒介液が絶えず流れているという事実に加えて、媒介液は、トライアック374よりも低い温度、および周囲空気よりも高い熱伝導率を有するため、枝路370は、トライアック374が過度に高温になるのを十分に防ぎ得る。
【0033】
図7の分解図に示されるように、ヒートシンク372は、媒介流体を通すためのそれを貫いて長手方向に延びた複数のチャネル376(例えば、19本のチャネル)を有する実質的に平らなプレート状構成要素であり得る。ヒートシンク372の各端部には、流体の流れをヒートシンク372の平らな形状と円筒形の接続部382との間で移行させるためのアダプタ378、380がある。上流のアダプタ378の接続部382は、ポンプ351の高圧出口と連通した出口384に接続されたチューブ(図示せず)に接続され得る。例えば、出口384は、
図1に示されるポンプ出口パイプ56と連通し得る。下流のアダプタ380の接続部382は、ポンプ351の低圧入口端部と連通した入口(図示せず)へ延びたチューブ(図示せず)に接続され得る。トライアック374とヒートシンク372との間の熱接触の効率を増大させるために、各トライアック374とヒートシンク372との間の境界面に放熱グリースが位置付けられ得る。加えて、可撓性クリップ386が、トライアック374およびヒートシンク372を密着した状態に保つための圧縮力を印加し得る。
【0034】
加熱システムの実施形態のうちのいずれにおいても、製造を単純化し、生産コストを下げ、構成要素の密封を単純化するために、
図8に示されるもののような電線形状が用いられ得る。具体的には、平らなプレート状電極42、44、46、および48のうちのそれぞれのものへの電気接続を提供する各電線388は、間に間隙392を画定する電線の2つの対向した部分を有することによってクリップ390の形状に曲げられた端部を有し得る。この間隙392は、プレート状電極のうちの1つの縁部がクリップ390内に滑り込ませられ得、電線388と電極との間の接触が2つの構成要素の間の電気接続を生み出すようにサイズ設定されている。有利に、このような設計は加熱システムの製造を容易にし得る。なぜなら、それは、電極が後からシステム内に取り付けられることを可能にし、そこで、それらはそれぞれの電線388に容易に電気接続され得るからである。クリップ390を有する端部の反対の電線388の末端部394はケーシング312内の開口部を貫いて延びており、この開口部はoリング(図示せず)によって密封されている。電線388がケーシング312内に位置付けられた後、電線388が延びたケーシング312内の空洞(図示せず)はまた、密封材で充填されてもよい。
図7に示されるように、電線388の末端部394はケーシング312から外へ突出し得、そこで、それらは、プリント回路板であり得るか、またはそれを含み得る、電気回路364に結合されたポークホームコネクタ(図示せず)に容易に接続され得る。
【0035】
本明細書において説明されるとおりの加熱システムは、食器洗浄機以外のデバイスにおいて用いることができる。例えば、加熱器は衣類洗濯機などの他の洗浄適用例において用いることができる。いずれの洗浄装置においても、加熱システムの対象流体流路に空気を通すことができ、これにより、媒介液は空気を加熱し、洗浄チャンバ内の物品の乾燥を促進する。加熱システムは、電池(例えば、電気自動車内の電池)のための温度制御システムなどの、水が対象流体である他の適用例において用いることができる。電気自動車の電池はそれほど多くの電力を供給せず、また、(北方の気候における冬季気温などの)低温にあるときには充電が困難であるため、加熱システムは、熱を電池に供給するために利用され得る。それゆえ、この適用例では、加熱システムの対象流体は、自動車の電池と熱的に連通した熱交換流体であり得る。例えば、このような熱交換流体は水およびエチレングリコールの混合物であり得る。本明細書において開示される加熱システムの別の適用は、プール、温泉、またはホットタブのための温水器としてのものである。上述されたように、加熱システムは、対象流体が電気伝導性であるのかどうかにかかわらず、および対象流体が液体であるのか、気体であるのか、それともスラリーなどの多相流体であるのかにかかわらず、任意の対象流体を加熱することができる。
【0036】
上述されたように、本開示の加熱システムは、飲料分配デバイスにおいて水を加熱するために用いられ得る。その文脈における使用の一例では、媒介液循環経路の容積は約250cm3であり得、それゆえ、媒介液の質量は約0.25kgであり得る。その例では、媒介液の熱質量は1050ジュール/℃になるであろう。したがって、1500ワット(すなわち、1500ジュール/秒)の最大加熱速度を有するオーム加熱器を利用すると、断熱的媒介液加熱速度は約1.4℃/秒になり、媒介液循環経路の容積に対するオーム加熱器の最大加熱速度の比は約6ワット/cm3になるであろう。上述されたように、媒介液の熱質量は、加熱されるべき対象液の熱質量と比べて小さいことが一般的には望ましいが、飲料分配適用例などの適用例における比は、例えば、1杯のコーヒーに分配される水の体積が非常に小さくなり得るため(例えば、150cm3)、上述された食器洗浄機適用例におけるものと同じくらい小さくなくてもよい。それゆえ、媒介液循環経路の容積が約250cm3であれば、対象流体の熱質量に対する媒介液の熱質量の比は約1.7になり得る。しかし、複数の小体積の液体が比較的素早く連続的に分配されることが必要になり得る、この飲料の文脈では、対象流体の熱質量に対する媒介液の熱質量のより大きな比は、それらの連続注入のための加熱時間を短縮する助けになり得る。
【0037】
上述されたように、オーム加熱器の使用は本発明における重要な利点をもたらす。しかし、状況によっては、他の種類の加熱器が、本発明の有益性のうちの少なくとも一部を保持しつつ、媒介液を加熱するために用いられ得る。例えば、電気抵抗加熱器が、媒介液を加熱するために用いられ得る。媒介液は加熱器の動作の間に消費されないため、媒介液は、上述された抵抗加熱器の欠点を最小限に抑えるように選択することができる。例えば、媒介液は、局所的沸騰を伴うことなく抵抗加熱器の表面における高い局所温度を可能にするために、使用中に予想される媒介液の最大バルク温度をはるかに上回る沸騰温度を有する液体であり得る。
【0038】
以下の番号付きの段落は、以上においてさらに説明されたとおりの本発明の様々な実施形態に係る特徴を記載する。
1.対象流体を加熱するための加熱システムであって、
(a)媒介液を保持するための媒介液循環経路、および対象流体を搬送するための対象流体流路を画定する構造体であって、対象流体流路が、循環経路とは別個であり、循環経路が、熱交換部分を含み、対象流体流路が、熱交換部分を含み、熱交換部分が、互いに熱的に連通しており、熱交換器を協働的に構成する、構造体と、
(b)媒介液を循環経路内で循環させるための媒介液循環経路内のポンプと、
(c)媒介液を加熱するように構成された加熱器であって、加熱器が、最大熱出力を有し、媒介液循環経路の容積に対する加熱器の最大熱出力の比が、少なくとも約5ワット/cm3である、加熱器と
を備える、加熱システム。
2.加熱器が、媒介液循環経路内に配置された複数の電極と、電流が媒介液を通過するよう、異なる電位を電極のうちの異なる電極に印加するように構成された電気回路とを含むオーム加熱器である、段落1の加熱システム。
3.対象流体経路の交換部分の容積が、媒介液循環経路の容積よりも小さい、段落1または2の加熱システム。
4.媒介液循環経路内に配置された媒介液をさらに備える、段落1から3のいずれか1つに記載の加熱システム。
5.媒介液循環経路が密封されている、段落4の加熱システム。
6.段落4または5の複数の加熱システムを作製する方法であって、
(i)媒介液を有しない複数の実質的に同一の加熱システムを作製するステップと、
(ii)加熱システムの第1のグループの媒介液循環経路に、第1の電気伝導率を有する第1の媒介液を充填するステップと、
(iii)加熱システムの第2のグループの媒介液循環経路に、第1の電気伝導率よりも低い第2の電気伝導率を有する第2の媒介液を充填するステップであって、これにより、加熱システムの第1および第2のグループが、異なる電気供給電圧を用いた使用のために構成される、ステップと
を含む、方法。
7.熱交換部分が、シェルと、シェルを通って延びた1本または複数本のチューブとを含む、段落1から5のいずれか1つに記載の加熱システム。
8.媒介液循環経路の熱交換部分が、シェルを含み、対象流体流路の熱交換部分が、1本または複数本のチューブを含む、段落7の加熱システム。
9.媒介液循環経路が、加熱システムの電気回路の少なくとも1つの構成要素に結合されたヒートシンクと熱的に連通した枝路を含む、段落1から5、7および8のいずれか1つに記載の加熱システム。
10.媒介液循環経路を画定する構造体が、媒介液の体積の膨張を可能にするための可撓膜を含む、段落1から5および7から9のいずれか1つに記載の加熱システム。
11.ばねが、媒介液を加圧するための圧力を可撓膜に印加し、ばねが、印加される圧力が媒介液の飽和曲線に対応するように構成されている、段落10の加熱システム。
12.洗浄装置であって、
(a)洗浄チャンバを画定するハウジングと、
(b)洗浄チャンバを通して水を循環させるための水ポンプと、
(d)水ポンプおよび洗浄チャンバに接続された段落4の加熱システムと
を備え、
上記装置が、所定の体積を有する1回分の水を使用して洗浄サイクルを完了するように動作可能であり、1回分の熱質量に対する媒介液の熱質量の比が、0.3以下である、洗浄装置。
13.加熱器が、媒介液循環経路内に配置された複数の電極と、電流が媒介液を通過するよう、異なる電位を電極のうちの異なる電極に印加するように構成された電気回路とを含むオーム加熱器である、段落12の洗浄装置。
14.1回分の対象流体を所望の対象流体温度に加熱する方法であって、
(a)媒介液を、所望の対象流体温度を下回る開始温度から、所望の対象流体温度以上の媒介液温度に加熱することと、
(b)加熱ステップの間に、媒介液が対象流体を加熱するよう、熱交換器を通して媒介液および対象流体を循環させることと
を含み、
媒介液の熱質量が、対象流体の熱質量の0.3倍以下である、方法。
上述された特徴のこれらおよび他の変形および組み合わせは、本発明から逸脱することなく用いられ得るため、上述の説明は、本発明を限定するものではなく、例示するものと解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器洗浄機であって、
(a)洗浄チャンバを画定するハウジングと、
(b)水流路、ならびに前記水流路および前記洗浄チャンバを通して水を循環させるように構成された水ポンプを画定する構造体であって、前記水流路が、熱交換部分を含む、構造体と、
(c)前記水流路とは別個の媒介液循環経路であって、前記媒介液循環経路が、前記水流路の前記熱交換部分と熱的に連通した熱交換部分を有する、媒介液循環経路、および前記媒介液循環経路を通して媒介液を循環させるための媒介液ポンプ、を画定する構造体と、
(d)前記媒介液が前記水を加熱するよう、前記媒介液を加熱するように構成された
加熱器であって、前記加熱器が、前記媒介液循環経路内に配置された複数の電極、および電流が前記媒介液を通過するよう、異なる電位を前記電極のうちの異なる電極に印加するように構成された電気回路を含むオーム加熱器である、加熱器と、
を備
え、
前記媒介液が、前記媒介液循環経路内に配置されており、前記媒介液循環経路が、密封されている、食器洗浄機。
【請求項2】
前記食器洗浄機が使用されていないときには、前記加熱器が動作不能であり、これにより、洗浄サイクルの開始前には前記媒介液が冷温始動条件において周囲温度にあり、前記加熱器および熱交換器が、前記洗浄サイクルの間に、1回分の水の温度を、周囲温度を上回る洗浄温度に上昇させるように動作可能である、
請求項1に記載の食器洗浄機。
【請求項3】
少なくとも1.5℃/秒の無負荷媒介液加熱速度を有する、
請求項2に記載の食器洗浄機。
【請求項4】
前記水流路および前記洗浄チャンバを通して空気を循環させ、その結果、前記空気が前記媒介液によって加熱され、これにより、前記加熱された空気が、前記洗浄チャンバ内に配置された食器を乾燥させるのを助けるようにするための手段をさらに備える、請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項5】
空気を循環させるための前記手段が、前記水ポンプを含む、
請求項4に記載の食器洗浄機。
【請求項6】
前記加熱器が、最大熱出力を有し、前記媒介液循環経路の容積に対する前記加熱器の前記最大熱出力の比が、少なくとも約5ワット/cm
3である、請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項7】
前記水流路の前記熱交換部分の容積が、前記媒介液循環経路の容積よりも小さい、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項8】
前記熱交換部分が、シェルと、前記シェルを通って延びた1本または複数本のチューブとを含む、請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項9】
前記媒介液循環経路の前記熱交換部分が、前記シェルを含み、前記水流路の前記熱交換部分が、前記1本または複数本のチューブを含む、
請求項8に記載の食器洗浄機。
【請求項10】
前記媒介液循環経路が、前記加熱器の電気回路の少なくとも1つの構成要素に結合されたヒートシンクと熱的に連通した枝路を含む、請求項1から
請求項9のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項11】
前記媒介液循環経路を画定する前記構造体が、前記媒介液の体積の膨張を可能にするための可撓膜を含む、請求項1から
請求項10のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項12】
ばねが、前記媒介液を加圧するための圧力を前記可撓膜に印加し、前記ばねが、前記印加される圧力が前記媒介液の飽和曲線に対応するように構成されている、
請求項11に記載の食器洗浄機。
【請求項13】
前記食器洗浄機が、所定の体積を有する1回分の水を使用して洗浄サイクルを完了するように動作可能であり、前記1回分の熱質量に対する前記媒介液の熱質量の比が、0.3以下である、請求項1から
請求項12のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項14】
請求項1から
請求項13のいずれか一項に記載の複数の食器洗浄機を作製する方法であって、
(i)前記媒介液を有しない複数の実質的に同一の食器洗浄機を作製するステップと、
(ii)前記食器洗浄機の第1のグループの前記媒介液循環経路に、第1の電気伝導率を有する第1の媒介液を充填
し、その後、前記食器洗浄機の前記第1のグループの前記媒介液循環経路を密封するステップと、
(iii)前記食器洗浄機の第2のグループの前記媒介液循環経路に、前記第1の電気伝導率よりも低い第2の電気伝導率を有する第2の媒介液を充填
し、その後、前記食器洗浄機の前記第2のグループの前記媒介液循環経路を密封するステップであって、これにより、前記第1および第2のグループの前記食器洗浄機が、異なる電気供給電圧を用いた使用のために構成される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
対象流体を加熱するための加熱システムであって、
(a)媒介液を保持するための媒介液循環経路、および前記対象流体を搬送するための対象流体流路を画定する構造体であって、前記対象流体流路が、前記循環経路とは別個であり、前記循環経路が、熱交換部分を含み、前記対象流体流路が、熱交換部分を含み、前記熱交換部分が、互いに熱的に連通しており、熱交換器を協働的に構成する、構造体と、
(b)媒介液を前記循環経路内で循環させるための前記媒介液循環経路内のポンプと、
(c)前記媒介液を加熱するように構成された加熱器であって、前記加熱器が、最大熱出力を有し、前記媒介液循環経路の容積に対する前記加熱器の前記最大熱出力の比が、少なくとも約5ワット/cm
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である、加熱器と
を備える、加熱システム。
【国際調査報告】