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特表2024-510129基礎対ボーラスが不釣合いであるユーザに対する自動インスリン送達(AID)の適応
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】基礎対ボーラスが不釣合いであるユーザに対する自動インスリン送達(AID)の適応
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61M5/172
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553056
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022018453
(87)【国際公開番号】W WO2022187315
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,555
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【弁理士】
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ボク リー
(72)【発明者】
【氏名】イーピン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066LL30
(57)【要約】
好ましい実施形態は、血糖(BG)濃度レベルをより充分に調節するために、よりカスタマイズされた基礎インスリン量をユーザに提供する。好ましい実施形態は、各ユーザの1日の基礎量がTDIの50%であることを静的に想定していない。その代わり、実際のTDIデータは、各ユーザについて収集されてもよく、そのユーザのTDI値を更新値に調整するために使用され得る。加えて、TDIに対する基礎の比は、ユーザについて、1日又は複数日にわたって収集されたデータから決定される実際の比に基づいて調整され得る。結果として、より充分なBG濃度レベル制御が実現され得る。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン送達デバイスであって、
インスリンをユーザに注入するポンプと、
前記ポンプを介して、前記ユーザに対する基礎インスリンの送達を制御するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
最大1日の時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量を、前記ユーザの推定される1日総インスリン量(TDI)の一部として定めることと、
複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIを決定することであって、前記複数日の期間における各日の前記実際のTDIは、前記日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である、ということと、
前記時間周期にわたって前記ユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、前記最初の現在の基礎量から、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIに基づく新しい基礎量に更新することと、を行うように構成されている、インスリン送達デバイス。
【請求項2】
前記時間周期は1日であって、前記時間周期にわたって前記ユーザに送達される前記最初の現在の基礎量は、前記ユーザの前記推定されるTDIの半分として定められる、請求項1に記載のインスリン送達デバイス。
【請求項3】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記現在の基礎量の前記更新は、前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの分数との差を減少させるように、前記時間周期ごとに送達されるインスリンの前記現在の基礎量を更新することを含む、請求項1に記載のインスリン送達デバイス。
【請求項4】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの前記分数との前記差がどのくらい減少するかは、前記複数日の期間における日数に依存する、請求項3に記載のインスリン送達デバイス。
【請求項5】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの前記分数との前記差がどのくらい減少するかは、重み付け係数に依存する、請求項3に記載のインスリン送達システム。
【請求項6】
前記プロセッサは更に、
前記複数日の期間を追加の日によって延ばすことと、
前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIを決定することと、
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記現在の基礎量を、前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの分数値としての更新量に更新することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のインスリン送達システム。
【請求項7】
前記時間周期は1時間であって、前記時間周期にわたって前記ユーザに送達される前記現在の基礎量の、新しい基礎量への前記更新は、前記新しい基礎量bupdated
updated=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
として計算することを含み、
daysは、前記複数日の期間における日数であって、TDIoldは、前記ユーザの前記推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIであって、Xは、0から1までの範囲であり得る適応性因子である、請求項6に記載のインスリン送達システム。
【請求項8】
Sは、定数である、請求項7に記載のインスリン送達システム。
【請求項9】
Sは、前記ユーザのTDIに対する1日に送達される基礎量の履歴の比に基づく値を有する変数である、請求項7に記載のインスリン送達システム。
【請求項10】
前記現在の基礎量は、1時間ごとの量であって、前記ユーザに送達される前記現在の基礎量の、新しい基礎量への前記更新は、前記新しい基礎量bnew
new=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
として計算することを含み、
daysは、前記複数日の期間における日数であって、TDIoldは、前記ユーザの前記推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIである、請求項1に記載のインスリン送達システム。
【請求項11】
Sは、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndaysbasal/Itotal
として決定されるSnewの値を有し、
newは、Sの新しく計算される値であって、Soldは、Sの最新値であって、Ibasalは、前記複数日の期間にわたって送達される基礎インスリンの量であって、Itotalは、前記複数日の期間にわたって前記ユーザに送達されるインスリンの総量である、請求項10に記載のインスリン送達システム。
【請求項12】
電子デバイスのプロセッサにより、最大1日の時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量を、前記ユーザの推定される1日総インスリン量(TDI)の一部として定めることと、
前記電子デバイスの前記プロセッサにより、複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIを決定することであって、前記複数日の期間における各日の前記平均の実際のTDIは、前記日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である、ということと、
前記電子デバイスの前記プロセッサにより、前記時間周期にわたって前記ユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、前記最初の現在の基礎量から、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIに基づく新しい基礎量に更新することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記電子デバイスは、インスリン送達デバイスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記時間周期は1日であって、前記時間周期にわたって前記ユーザに送達される前記最初の現在の基礎量は、前記ユーザの前記推定されるTDIの半分として定められる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記現在の基礎量の前記更新は、前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの分数との差を減少させるように、前記時間周期ごとに送達されるインスリンの前記現在の基礎量を更新することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの前記分数との前記差がどのくらい減少するかは、前記複数日の期間における日数に依存する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記最初の現在の基礎量と、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの前記分数との前記差がどのくらい減少するかは、重み付け係数に依存する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記複数日の期間を追加の日によって延ばすことと、
前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIを決定することと、
前記時間周期ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの前記現在の基礎量を、前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIの分数値としての更新量に更新することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記時間周期は1時間であって、前記時間周期にわたって前記ユーザに送達される前記現在の基礎量の、新しい基礎量への前記更新は、
updated=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
となるように前記新しい基礎量bupdatedを計算することを含み、
daysは、前記複数日の期間における日数であって、TDIoldは、前記ユーザの前記推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、前記延ばされた複数日の期間にわたる前記ユーザの前記平均の実際のTDIである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インスリン送達デバイスであって、
インスリンをユーザに注入するポンプと、
前記ポンプを介して、前記ユーザに対する基礎インスリンの送達を制御するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
1時間ごとに前記ユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を定めることと、
複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIを決定することであって、前記複数日の期間における各日の前記平均の実際のTDIは、前記日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である、ということと、
newとして指定される、1日総インスリン量の1時間分に対する1時間ごとの基礎インスリンの所望の比の新しい値を、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndays・(Ibasal/Itotal+0.5)/2
として決定することであって、
daysは、前記複数日の期間における日数であって、Soldは、1日総インスリン量の1時間分に対する1時間ごとの基礎インスリンの所望の比の最新値であって、Ibasalは、前記複数日の期間にわたって送達される基礎インスリンの量であって、Itotalは、前記複数日の期間にわたって前記ユーザに送達されるインスリンの総量である、ということと、
時間周期にわたって前記ユーザに送達されるインスリンの前記現在の基礎量を、最初の現在の基礎量から、
new=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
としての新しい基礎量bnewに更新することであって、
TDInewは、前記複数日の期間にわたる前記ユーザの平均の実際のTDIであって、TDIoldは、前記ユーザの最新の推定又は実際のTDI値である、ということと、を行うように構成されている、インスリン送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本開示は、2021年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/155,555号の利益を主張し、その内容全体を参照により完全に本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来の自動インスリン送達(AID)システムは、基礎インスリンがユーザの1日総インスリン量(TDI)要求の50%を構成しているという想定で機能する。これは、多くのユーザに対して充分に機能しているが、同様に、多くの他のユーザに対して機能していない。例えば、一部のユーザは、当該ユーザの1日のインスリン要求に対してインスリンボーラスに大きく依存し得るため、当該ユーザがAIDシステムから受け取る基礎インスリン量は、TDIの50%未満にすべきである。他のユーザは、低炭水化物食を食べている場合があって、したがって、多くのインスリンボーラスを用いない場合がある。このようなユーザに対して、基礎インスリンは、TDIの50%よりも大きいレベルに設定すべきである。
【0003】
加えて、従来のシステムは、TDIを1日あたりのインスリンの(ユーザの体重を4で割った)単位とした設定などの標準的な式に従ってユーザのTDIを決定する。この標準的な式は、多くのユーザのTDIの正確な推定値を提供していない。このようなユーザについて、当該ユーザの実際のTDIは、標準的な式に従って計算されるTDIとは実質的に異なっている。
【発明の概要】
【0004】
発明の態様によると、インスリン送達デバイスは、インスリンをユーザに注入するポンプと、ポンプを介して、ユーザに対する基礎インスリンの送達を制御するプロセッサと、を含む。プロセッサは、以下のこと、すなわち、最大1日の時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量を、ユーザの推定される1日総インスリン量(TDI)の一部として定めることと、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIを決定することであって、複数日の期間における各日の平均の実際のTDIは、日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である、ということと、時間周期にわたってユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、最初の現在の基礎量から、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIに基づく新しい基礎量に更新することと、を行うように構成されている。
【0005】
時間周期は1日であってもよく、時間周期にわたってユーザに送達される最初の現在の基礎量は、ユーザの推定されるTDIの半分として定められ得る。時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量の更新は、時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量と、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数との差を減少させるように、時間周期ごとに送達されるインスリンの現在の基礎量を更新することを含み得る。時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量と、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数との差がどのくらい減少するかは、複数日の期間における日数又は重み付け係数に依存し得る。
【0006】
プロセッサは更に、複数日の期間を追加の日によって延ばすことと、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIを決定することと、時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数値としての更新量に更新することと、を行うように構成され得る。
【0007】
時間周期は1時間であってもよく、時間周期にわたってユーザに送達される現在の基礎量の、新しい基礎量への更新は、
updated=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
となるように新しい基礎量bupdatedを計算することを含んでもよく、Ndaysは、複数日の期間における日数であって、TDIoldは、ユーザの推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIである。Sは、定数であり得る。Sは、ユーザのTDIに対する1日に送達される基礎量の履歴の比に基づく値を有する変数であり得る。Xは、新しいインスリン送達履歴の重み付けが前のTDI設定に対して適用されることを定めたパラメータであって、0(適応性無し)から1(最新のインスリン履歴を完全に信頼する)までの範囲であり得る。これは通常、1週間にわたる新しいインスリン履歴の80%に対する適切な適応について0.2に設定され得る。
【0008】
現在の基礎量は、1時間ごとの量であってもよく、ユーザに送達される現在の基礎量の、新しい基礎量への更新は、
new=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
となるように新しい基礎量bnewを計算することを含んでもよく、Ndaysは、複数日の期間における日数であって、TDIoldは、ユーザの推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIである。Sは、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndaysbasal/Itotal
として決定されるSnewの値を有してもよく、Snewは、Sの新しく計算される値であって、Soldは、Sの最新値であって、Ibasalは、複数日の期間にわたって送達される基礎インスリンの量であって、Itotalは、複数日の期間にわたってユーザに送達されるインスリンの総量である。
【0009】
別の発明の態様によると、方法は、電子デバイスのプロセッサにより、最大1日の時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量を、ユーザの推定される1日総インスリン量(TDI)の一部として定めることを含む。複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIは、電子デバイスのプロセッサにより決定される。複数日の期間における各日の平均の実際のTDIは、日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である。時間周期にわたってユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量は、プロセッサにより、最初の現在の基礎量から、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIに基づく新しい基礎量に更新される。
【0010】
電子デバイスは、インスリン送達デバイスであり得る。時間周期は1日であってもよく、時間周期にわたってユーザに送達される最初の現在の基礎量は、ユーザの推定されるTDIの半分として定められ得る。時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量の更新は、時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量と、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数との差を減少させるように、時間周期ごとに送達されるインスリンの現在の基礎量を更新することを含み得る。時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの最初の現在の基礎量と、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数との差がどのくらい減少するかは、複数日の期間における日数及び/又は重み付け係数に依存し得る。
【0011】
方法は、複数日の期間を追加の日によって延ばすことと、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIを決定することと、時間周期ごとにユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIの分数値としての更新量に更新することと、を更に含み得る。
【0012】
時間周期は1時間であってもよく、時間周期にわたってユーザに送達される現在の基礎量の、新しい基礎量への更新は、
updated=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
となるように新しい基礎量bupdatedを計算することを含んでもよく、Ndaysは、複数日の期間における日数であって、TDIoldは、ユーザの推定されるTDIであって、Sは、比であって、TDInewは、延ばされた複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIである。
【0013】
追加の発明の態様によると、インスリン送達デバイスは、インスリンをユーザに注入するポンプと、ポンプを介して、ユーザに対する基礎インスリンの送達を制御するプロセッサと、を含む。プロセッサは、以下のこと、すなわち、1時間ごとにユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を定めることと、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIを決定することであって、複数日の期間における各日の平均の実際のTDIは、日に送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である、ということと、Snewとして指定される、1日総インスリン量の1時間分に対する1時間ごとの基礎インスリンの所望の比の新しい値を、以下のように、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndays・(Ibasal/Itotal+0.5)/2
と決定することであって、Ndaysは、複数日の期間における日数であって、Soldは、1日総インスリン量の1時間分に対する1時間ごとの基礎インスリンの所望の比の最新値であって、Ibasalは、複数日の期間にわたって送達される基礎インスリンの量であって、Itotalは、複数日の期間にわたってユーザに送達されるインスリンの総量である、ということと、時間周期にわたってユーザに送達されるインスリンの現在の基礎量を、最初の現在の基礎量から、
updated=Snew・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
としての新しい基礎量bnewに更新することであって、TDInewは、複数日の期間にわたるユーザの平均の実際のTDIであって、TDIoldは、ユーザの最新の推定又は実際のTDI値である、ということと、を行うように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】好ましい実施形態に好適である例示的な薬剤送達システムを描写する。
図2】好ましい実施形態の例示的な計算デバイスのブロック図を描写する。
図3】ユーザの基礎量を調整するために好ましい実施形態によって行われ得る例示的なステップのフローチャートを描写する。
図4】好ましい実施形態における、TDInewを計算するために行われ得る例示的なステップのフローチャートを描写する。
図5】好ましい実施形態における、比を選択するために行われ得る例示的なステップのフローチャートを描写する。
図6】好ましい実施形態における、bnewを計算するために行われ得る例示的なステップのフローチャートを描写する。
図7】好ましい実施形態における、ベンチマークに対してSnewの適応を制限する例示的なステップのフローチャートを描写する。
図8A】好ましい実施形態における、継続的に1日ごとにbnew値を更新するために行われ得る例示的なステップのフローチャートを描写する。
図8B】好ましい実施形態における、継続的に1日ごとにbnew値を更新するスライディングデータウィンドウの例を示す。
図8C】好ましい実施形態における、継続的に1日ごとにbnew値を更新するスライディングデータウィンドウの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態は、血糖(BG)濃度レベルをより充分に調節するために、よりカスタマイズされた基礎インスリン量をユーザに提供し得る。好ましい実施形態は、各ユーザの1日の基礎量がTDIの50%であることを静的に想定していない。その代わり、実際のTDIデータは、各ユーザについて収集されてもよく、そのユーザのTDI値を更新値に調整するために使用され得る。加えて、TDIに対する基礎の比は、ユーザについて、1日又は複数日にわたって収集されたデータから決定される実際の比に基づいて調整され得る。結果として、より充分なBG濃度レベル制御が実現され得る。
【0016】
1日ごと又は1時間ごとのような時間周期ごとの基礎インスリン量の適応性の程度は、どれくらい多くの履歴データが利用可能であるかに基づき得る。より広範囲の履歴データが利用可能であることは、TDIのより優れた適応性、TDIに対する基礎インスリン量の比のより優れた適応性、最終的には、基礎量のより優れた適応性をもたらし得る。一部の好ましい実施形態では、適応性の程度はまた、TDIに対する理想的な50%量に対する最大量に制限され得る。これは、適応がユーザに不適当な比をもたらさないことを保証するのに役立つ。
【0017】
図1は、好ましい実施形態における、インスリンをユーザ(108)に送達するのに好適である例示的な薬剤送達システム(100)を描写する。薬剤送達システム(100)は、薬剤送達デバイス(102)を含む。薬剤送達デバイスは、インスリン、グルカゴン、GLP-1、疼痛管理薬、治療薬、化学療法薬、ホルモン薬、それらの組合せ、及び同種のものを含む様々な異なる薬剤を送達し得る。しかしながら以下に記載される方法は、インスリンの送達に焦点を当てているが、他の薬剤、又はインスリンとGLP-1などの別の薬剤との組合せにも同様に適用され得る。薬剤送達デバイス(102)は、ユーザ(108)の身体に装着されるウェアラブルデバイスであり得る。薬剤送達デバイス(102)は、ユーザに直接的に接続され得る(例えば、接着剤又は同種のものを介してユーザ(108)の身体部分及び/又は肌に直接的に取り付けられ得る)。一例では、薬剤送達デバイス(102)の面は、ユーザ(108)に対する取付けを容易にするための接着剤を含み得る。
【0018】
薬剤送達デバイス(102)は、コントローラ(110)を含み得る。コントローラ(110)は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組合せで実装され得る。コントローラ(110)は、例えば、マイクロプロセッサ、論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はメモリに接続されたマイクロプロセッサであり得る。コントローラ(110)は、日付及び時間並びに他の機能(例えば、計算又は同種のもの)を維持し得る。コントローラ(110)は、ストレージ(114)に記憶された制御アプリケーション(116)を実行するように動作可能であってもよく、制御アプリケーション(116)は、コントローラ(110)が薬剤送達デバイス(102)の動作を命令することを可能にする。ストレージ(114)は、自動インスリン送達の履歴、ボーラスインスリン送達の履歴、食事事象履歴、運動事象履歴、及び同種のものなどのユーザの履歴(113)を保持し得る。加えて、コントローラ(110)は、データ又は情報を受信するように動作可能であり得る。ストレージ(114)は、1次メモリと2次メモリとの両方を含み得る。ストレージは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光ストレージ、磁気ストレージ、リムーバブルストレージメディア、ソリッドステートストレージ、又は同種のものを含み得る。
【0019】
薬剤送達デバイス(102)は、保証として、ユーザ(108)に送達するインスリンなどの1つ以上の薬剤を蓄える貯蔵部(112)を含み得る。ユーザ(108)への流体経路が提供されてもよく、薬剤送達デバイス(102)は、貯蔵部(112)から薬剤を放出して、流体経路を介して薬剤をユーザ(108)に送達し得る。流体経路は、例えば、薬剤送達デバイス(102)をユーザ(108)に接続するチューブ(例えば、カニューレを貯蔵部(112)に接続するチューブ)を含み得る。
【0020】
例えば、ユーザの管理デバイス(104)及び/又はユーザの介護者及び/又はBGレベル濃度などの分析対象を検知するセンサ(106)を含む、薬剤送達デバイス(102)から物理的に分離された1つ以上のデバイスとの1つ以上の通信リンクが存在し得る。通信リンクは、任意の既知の通信プロトコル又は規格、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、近距離通信規格、セルラ規格、又は任意の他の無線プロトコルに従って動作する任意の有線又は無線通信リンクを含み得る。薬剤送達デバイス(102)はまた、情報をユーザ(108)に表示し、一部の実施形態では、情報をユーザ(108)から受信する組込ディスプレイデバイスなどのユーザインターフェース(117)を含み得る。ユーザインターフェース(117)は、タッチスクリーン及び/又は1つ以上の入力デバイス、例えば、ボタン、ノブ、若しくはキーボードを含み得る。
【0021】
薬剤送達デバイス(102)は、ネットワーク(122)にインターフェース接続し得る。ネットワーク(122)は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、又はそれらの組合せを含み得る。計算デバイス(126)は、ネットワークにインターフェース接続されてもよく、計算デバイスは、薬剤送達デバイス(102)と通信し得る。
【0022】
センサ(106)は、例えば、接着剤又は同種のものによってユーザ(108)に接続されてもよく、ユーザ(108)の1つ以上の医療状態及び/又は身体特性に関する情報又はデータを提供し得る。一部の好ましい実施形態では、センサ(106)は、定期的なBG濃度測定値を提供してもよく、持続グルコースモニタ(CGM)、又はBG測定値を提供する別のタイプのデバイス若しくはセンサであり得る。センサ(106)は、薬剤送達デバイス(102)から物理的に分離されていてもよく、又は薬剤送達デバイス(102)の組込構成要素であってもよい。センサ(106)は、ユーザ(108)の測定又は検出されたBGレベルを示すデータをコントローラ(110)に提供し得る。センサ(106)によって提供される情報又はデータは、薬剤送達デバイス(102)の薬剤送達動作を調整するために使用され得る。
【0023】
薬剤送達システム(100)はまた、管理デバイス(104)を含み得る。一部の実施形態では、管理デバイス(104)は必要ではなく、むしろ、薬剤送達デバイス(102)は、管理デバイス(104)によって提供される機能を含んで、その結果、薬剤送達デバイス(102)は、リモート管理デバイス(104)からの入力なしで薬剤送達デバイス(102)及び/又はセンサ(104)の動作をプログラム又は調整し得る。管理デバイス(104)は、専用のパーソナル糖尿病管理(PDM)デバイスなどの専用デバイスであり得る。管理デバイス(104)は、例えば、プロセッサなどの専用コントローラ、マイクロコントローラ、又は同種のものを含む任意のポータブル電子デバイスなどのプログラムされた汎用デバイスであり得る。管理デバイス(104)は、薬剤送達デバイス(102)及び/又はセンサ(104)の動作をプログラム又は調整するために使用され得る。管理デバイス(104)は、例えば、専用デバイス、スマートフォン、スマートウォッチ、又はタブレットを含む任意のポータブル電子デバイスであり得る。描写された例では、管理デバイス(104)は、プロセッサ(119)及びストレージ(118)を含み得る。プロセッサ(119)は、ユーザのBGレベルを管理するためのプロセス、及びユーザ(108)に対する薬剤又は治療薬の送達を制御するためのプロセスを実行し得る。プロセッサ(119)はまた、ストレージ(118)に記憶されたプログラミングコードを実行するように動作可能であり得る。例えば、ストレージは、プロセッサ(119)が実行する1つ以上の制御アプリケーション(120)を記憶するように動作可能であり得る。ストレージ(118)は、制御アプリケーション(120)、薬剤送達デバイス(102)について上述したもののような履歴(121)、並びに他のデータ及び/又はプログラムを記憶し得る。
【0024】
管理デバイス(104)は、ユーザ(108)と通信するユーザインターフェース(123)を含み得る。ユーザインターフェースは、情報を表示する、タッチスクリーンなどのディスプレイを含み得る。ユーザインターフェースがタッチスクリーンである場合、タッチスクリーンはまた、入力を受信するために使用され得る。ユーザインターフェース(UI)(123)はまた、キーボード、ボタン、ノブ、又は同種のものなどの入力要素を含み得る。
【0025】
管理デバイス(104)は、LAN若しくはWAN又はこのようなネットワークの組合せなどのネットワーク(124)にインターフェース接続し得る。管理デバイス(104)は、1つ以上のサーバ又はクラウドサービス(128)とネットワーク(124)上で通信し得る。1つ以上のサーバ又はクラウドサービス(128)が好ましい実施形態において果たし得る役割は、以下でより詳細に記載される。
【0026】
図2は、以下でより詳細に記載される方法を行うのに好適であるデバイス(200)のブロック図を描写する。様々な好ましい実施形態では、デバイス(200)は、薬剤送達デバイス(102)、管理デバイス(104)、計算デバイス(126)、又は1つ以上のサーバ(128)であり得る。デバイスが計算デバイス(126)又は1つ以上のサービス(128)である場合、デバイス(200)は、方法を行うように管理デバイス(104)及び薬剤送達デバイス(102)と協働して機能し得る。デバイス(200)は、プログラミング命令を実行するプロセッサ(202)を含む。プロセッサ(202)は、ストレージ(204)へのアクセスを有する。ストレージ(204)は、方法を行うアプリケーション(206)を記憶し得る。このアプリケーション(206)は、プロセッサ(202)によって実行され得る。ストレージ(204)は、ユーザのインスリン送達履歴(208)を記憶し得る。インスリン送達履歴(208)は、送達されたインスリンの量並びに送達の日付及び時間に関するデータを含み得る。インスリン送達履歴(208)はまた、各送達が基礎送達であるか又はボーラス送達であるかを識別し得る。ストレージ(204)は、BG履歴(210)を記憶し得る。BG履歴(210)は、BG濃度読取値並びに当該読取値の日付及び時間を含み得る。これらの値は、センサ(106)によって取得され得る。ストレージ(204)は更に、食事事象及び運動事象のような事象(212)に関する情報を記憶し得る。ストレージは、ファジィ集合(213)の関連のメンバ関数を含む、ファジィ集合(213)に関する情報を保持し得る。
【0027】
デバイス(200)は、ネットワーク(122及び124)のようなネットワークにインターフェース接続するネットワークアダプタ(214)を含み得る。デバイス(200)は、ビデオ情報を表示するディスプレイデバイス(216)を有し得る。ディスプレイデバイス(216)は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)デバイス、発光ダイオード(LED)デバイスなどであり得る。デバイス(200)は、入力の受信を可能にする1つ以上の入力デバイス(218)を含み得る。入力デバイスの例には、キーボード、マウス、サムパッド、タッチスクリーン、マイク、及び同種のものが含まれる。
【0028】
好ましい実施形態では、薬剤送達デバイス(102)のコントローラ(110)、又は制御アプリケーション(120)を実行する管理デバイス(104)のプロセッサ(119)は、時間周期ごと(例えば、1日ごと、1時間ごと、5分ごと)のインスリンの基礎量を設定する役割を持ち得る。上述したように、好ましい実施形態は、履歴TDIデータに基づいて基礎インスリン量を適応させ得る。加えて、好ましい実施形態は、ユーザのTDIに対する基礎インスリンの比の履歴データに基づいて基礎インスリン量を適応させ得る。
【0029】
図3は、ユーザの基礎量を調整するために好ましい実施形態によって行われ得る例示的なステップのフローチャート(300)を描写する。基礎量は、1時間、1日、更には15分の期間についてのものであり得る。本明細書における例示的な目的に対して、説明は、基礎量が、1時間についてのものであって、AIDシステムの制御下で薬剤送達デバイス(102)によって1時間にわたってユーザに送達される基礎インスリンの量を表す例に関する。ユーザの実際のTDIデータは、複数日の期間にわたって収集される。TDIは、1日(すなわち、24時間の期間)にわたってユーザに送達される基礎インスリン及びボーラスインスリンの合計である。収集されたデータに基づいて、TDInewとして指定される新しいTDI値が決定される。
【0030】
図4は、TDInewを計算するために行われ得る例示的なステップのフローチャート(400)を描写する。上述したように、実際のTDIデータは、ユーザについて複数日の期間にわたって収集される(402)。このデータを収集する目的は、ユーザの実際のTDIをより正確に反映するようにTDI値を調整して、基礎量を決定する際に実際のTDIを使用することである。複数日の期間は、例えば、1日から3日までの、好ましくは最新日の範囲であり得る。平均のTDIは、収集された実際のTDIデータから決定される(404)。平均は、複数日の期間にわたるTDI値を合計して、次いで複数日の期間における日数で合計を割ることによって計算され得る。代替的に、一部の好ましい実施形態ではTDIの中央値が使用され得る。平均のTDIは、TDInewとして指定され得る(406)。
【0031】
図3に示されるように、TDIに対する1日の基礎量の比が定められる(304)。従来、この比は、1/2に固定されており、その結果、1日においてユーザに送達されるインスリンの基礎量は、TDIの50%である。好ましい実施形態は、50%のような一定の値の選択に対応するか、又は経時的に変化し得る可変の値に対応する。一部の好ましい実施形態では、ユーザの実際の履歴データは、履歴データを用いて認識される比を選択するために使用される。目的は、履歴的である比に基づいてユーザについて比をより正確に選択することである。
【0032】
図5は、好ましい実施形態における、比を選択するために行われ得る例示的なステップのフローチャート(500)を描写する。決定は、可変の比を有するかどうかに関して行われる(502)。この決定は、可変でない比がユーザに対して充分に機能するかどうかの評価に基づき得る。可変の比が望まれる場合、データは、1日~3日などの複数日の期間にわたって収集される。複数日の期間にわたって送達される総基礎インスリン及び総インスリンが決定され、複数日の期間にわたる総基礎インスリン対総インスリンの比が決定される(504)。この比は、複数日の期間にわたるユーザの実際の比を構成する。概略的に、目標は、古い比から実際の比に直ぐに比を切り換えないことである。その代わり、比をよりゆっくりと適応させることがより望ましい。実際の比の信頼性は、より多くの日にわたるデータを用いるとより高くなる。したがって、実際の比は、日数及び適応性係数の積によって重み付けされる(506)。したがって、3日のデータに基づく比は、1日のデータに基づく比よりも大きく重み付けされる。Soldとして指定される古い比は、1-(適応性係数*複数日の期間における日数)によって重み付けされる(508)。新しい比Snewは、重み付けされた古い比Sold及び重み付けされた実際の比の合計として定められる。
【0033】
newのこの定式化は、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndaysbasal/Itotal
として表現され得る。ここで、Ndaysは、複数日の期間における日数であって、Ibasalは、複数日の期間にわたって送達される総基礎インスリンであって、Itotalは、複数日の期間にわたって送達される総基礎インスリンである。Xは、適応性が前の設定に対して最新のインスリン送達履歴をどのくらい大きく重み付けするかを制御する適応性係数であって、0(適応性無し)から1(最新の履歴を完全に信頼する)までの範囲であり得る。このパラメータの公称値は、0.2である。
【0034】
図3に示されるように、TDIに対する基礎の比が決定されると、基礎量は、データの日数、TDIに対する基礎の比、及び前のTDI値TDIoldに基づいて新しい値に調整され得る(306)。次いで、新しい基礎量は、インスリン送達デバイスによって基礎インスリンをユーザに送達する際に使用される。
【0035】
(bnewとして指定される)新しい基礎量のある定式化は、
new=S・TDInew/24
TDInew=(1-X・Ndays)TDIold+X・Ndaystotal
である。
【0036】
図6は、bnewを計算するために行われ得る例示的なステップのフローチャート(600)を描写する。TDInew及び複数日の期間にける日数の第1の積(すなわち、NdaysTDInew)が計算される(602)。第1の積には、重み付けされた第1の積を生成するために重みが掛けられ得る(604)。重みは、日数Ndays及び適応性係数Xの積であり得る。したがって、TDInewは、依存するデータの日数が多くなるとbnewに対してより大きい影響を有する。適応性係数は、bnewに対するTDInewのより漸進的な影響が存在することを保証するのに役立つ。TDIoldの重みは、1-適応性係数(0.2)及びNdaysの積に基づく。したがって、X・Ndaysの積が計算され(606)、その積は、差を生成するために1から引かれる(608)。次いで、TDIoldには、第3の積を生成するために当該差が掛けられる(610)。第3の積には、重み付けされたTDInew値が足される(612)。結果として生じる合計は、1日の値ではなく1時間の値にするために24で割られる(614)。そして、1時間の値には、比Snewが掛けられる(616)。
【0037】
この定式化は、例示であることを意図したものであり、限定することを意図したものではない。様々な比値及び様々な適応性係数を用いたものなどの他の定式化が使用され得る。当該代替的な定式化は、ユーザの実際の履歴データに依存して、ユーザの基礎量を適応させるために履歴データを使用し得る。
【0038】
TDIに対する基礎の比Sについて許容される適応性の程度を制限することが望ましい場合がある。より理想的である比の50%から遠く離れて比が実行されるのは望ましくない場合がある。ユーザは、Sの許容範囲内に比Sを維持することによって、より充分に適合され得る。例えば、場合により、ユーザはボーラスに依存しすぎている場合があり、ボーラスにあまり依存しすぎないことがユーザにとってより健康的であろう。より概略的には、インスリン送達のユーザのパターンは、あまり理想的でない場合があり、適応性に対する制限は、当該パターンを規制するのに役立つ。
【0039】
図7は、Sについて適応性の程度を制限するために行われ得る例示的なステップのフローチャート(700)を示す。フローチャートは、以下の定式化、すなわち、
new=(1-X・Ndays)Sold+X・Ndays・(Ibasal/Itotal+0.5)/2
に従って当該制限を有するSnewを計算するために行われ得るステップを記載する。
【0040】
古い比Soldは、1と、複数日の期間における日数(Ndays)と適応性係数(X)との積と、の差によって重み付けされる。この重み付けは、前に記載されたSnewの定式化と同じである(702)。定式化が異なっている場所は、定式化においてIbasal及びItotalの収集されたデータがどのように用いられるかである。単に、Ibasal/Itotalの比を使用してその比を重み付けするのではなく、新しい定式化は、比Ibasal/Itotalを0.5に足し、次いで2で割る(704)。この実用的な効果は、Ibasal/Itotal及び0.5を平均することである。結果として生じる値は、適応性係数(X)及びNdaysの積によって重み付けされる(706)。結果として生じる重み付けされた値は、Snewの値を得るために、Soldの重み付けされた値に合計される(708)。
【0041】
定式化の変更の実用的な効果は、重み付けされる値を制限することである。Ibasal/Itotalのみが使用される場合、可能性のある値の範囲は0から1までに及ぶが一方、(Ibasal/Itotal+0.5)/2が使用される場合、可能性のある値の範囲は0.25から0.75までに及ぶ。したがって、インスリンに関する実際のデータの寄与はより一層、0.5により近い範囲に制約される。
【0042】
基礎量bnewは、継続的に、例えば、1日ごとに更新され得る。図8Aは、更新を実現するために行われ得る例示的なステップのフローチャート(800)を描写する。新しいデータのインスリンデータが取得される(802)。これは、1日の基礎インスリン及び1日の総インスリン(例えば、TDI又はItotal)を含み得る。複数日の期間は、新しい日を含むように1日先にシフトされる(804)。これは、スライディングウィンドウを1日分先にシフトさせることとして考えられ得る。図8Bは、日1、日2、及び日3のインスリンデータ(基礎及びトータル)を示す。複数日の期間は、スライディングウィンドウ820によって示されるように日1、日2、及び日3を含む。日4のデータが取得された後、複数日の期間のスライディングウィンドウ820は、図8Cに示されるように1日先にシフトされ得る。比Snewは、上記に記載された定式化のうちの1つを使用して、(比が固定されない場合)複数日の期間内の新しいデータに基づいて更新され得る(806)。次いで、bnewの新しい値は、複数日の期間の更新データを使用して、例えば、上記に記載された定式化を使用して決定され得る(808)。
【0043】
好ましい実施形態が本明細書に記載されているが、好ましい実施形態に対する形態及び詳細の様々な変更は、添付の特許請求の範囲において定められるような意図された発明の範囲から逸脱しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】