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特表2024-510144ワイドバンドギャップを有する半導体材料で作られた層のスタックを含むキャパシタ
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  • 特表-ワイドバンドギャップを有する半導体材料で作られた層のスタックを含むキャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ワイドバンドギャップを有する半導体材料で作られた層のスタックを含むキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240228BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20240228BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01G4/12 720
H01G4/30 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553959
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 FR2022050383
(87)【国際公開番号】W WO2022185014
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2102170
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336217
【氏名又は名称】ディアムファブ
(71)【出願人】
【識別番号】505045610
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
(71)【出願人】
【識別番号】506079836
【氏名又は名称】アンスティテュー ポリテクニーク ドゥ グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】511148237
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴーチエ スィコ
(72)【発明者】
【氏名】カリード ドリシェ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エオン
(72)【発明者】
【氏名】エチエンヌ ゲラエール
(72)【発明者】
【氏名】セドリック マサント
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ペルノ
【テーマコード(参考)】
5E001
5F038
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5F038AC03
5F038AC05
5F038AC12
5F038AC15
5F038EZ01
5F038EZ02
(57)【要約】
本発明は、2.3eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料で作られた層のスタック(1)を含むキャパシタ(10)に関し、層のスタック(1)は、10kΩ・cmより大きい抵抗率を有し、半導体材料の伝導帯又は価電子帯から0.4eVより大きいエネルギー準位を生成するn型又はp型のディープドーパントを含む電気絶縁性を有する中間層(3)と、10kΩ・cm以下の抵抗率を有し、中間層(3)のディープドーパントのタイプと反対のタイプのドーパントを含む2つのコンタクト層(2a、2b)と、を含み、2つのコンタクト層(2a、2b)は、2つの接合pnを形成するために中間層(3)の両側に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.3eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料の層のスタック(1)を含むキャパシタ(10)であって、前記層のスタック(1)が、
10kΩ・cmより大きい抵抗率を有し、前記半導体材料の伝導帯又は価電子帯から0.4eVを超えて位置するエネルギー準位を生成するn型又はp型のディープドーパントを含む電気絶縁性の中間層(3)と、
10kΩ・cm未満の抵抗率を有し、前記中間層(3)の前記ディープドーパントのタイプとは反対のタイプのドーパントを含む2つのコンタクト層(2a、2b)であって、前記2つのコンタクト層(2a、2b)は、互いに電気的に絶縁されており、前記中間層(3)の両側に配置されて2つのpn接合を形成している、前記2つのコンタクト層(2a、2b)と、
を備えるキャパシタ(10)。
【請求項2】
前記2つのコンタクト層(2a、2b)は、1mΩ・cmより大きい抵抗率を有し、前記キャパシタ(10)が、集積された抵抗を有するキャパシタンスを規定してRCダンパを形成している、請求項1に記載のキャパシタ(10)。
【請求項3】
前記2つのコンタクト層(2a、2b)は、1mΩ・cm以下の抵抗率を有し、前記キャパシタ(10)に純粋な容量性を付与している、請求項1に記載のキャパシタ(10)。
【請求項4】
前記ディープドーパントが、1×1014/cm~1×1021/cmに含まれる濃度で前記中間層(3)内に存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキャパシタ(10)。
【請求項5】
前記中間層(3)は、10nm~2mm、好ましくは500nm~50ミクロンの厚さを有し、
各コンタクト層(2a、2b)は、5nm~50ミクロン、好ましくは50nm~1ミクロンの厚さを有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャパシタ(10)。
【請求項6】
前記層のスタック(1)の前記半導体材料が、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化物をベースとする三元又は四元合金、窒化ホウ素(BN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、及びダイヤモンドから選択さる、請求項1から5のいずれか一項に記載のキャパシタ(10)。
【請求項7】
前記層のスタック(1)が配置されている支持基板(5)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャパシタ(10)。
【請求項8】
前記層のスタック(1)を形成している前記半導体材料が、ダイヤモンドであり、
前記中間層(3)の前記ディープドーパントが、n型であり、
前記コンタクト層(2a、2b)の前記ドーパントが、p型であり、かつホウ素原子(B)である、請求項1から7のいずれか一項に記載のキャパシタ(10)。
【請求項9】
前記ディープドーパントが、窒素原子(N)である、請求項8に記載のキャパシタ(10)。
【請求項10】
前記層のスタックを形成している前記半導体材料が、炭化ケイ素(SiC)であり、
前記中間層(3)の前記ディープドーパントが、p型であり、かつバナジウム原子(V)であり、
前記コンタクト層(2a、2b)の前記ドーパントが、n型であり、かつ窒素原子(N)である、請求項1から7のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイスの分野に関する。特に、本発明は、ワイドバンドギャップ半導体材料で作られた層のスタックを含むキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素、窒化ガリウム又はダイヤモンドなどのワイドバンドギャップを有する半導体への関心は、これらの材料をベースとするパワーデバイス及び集積電源システムが、従来のシリコン同族体と比較してはるかに高いパワー密度を管理することができ、より小さいアクティブエリア寸法を有することから、近年、非常に増大している。これらは、特にハイブリッド又は電気自動車などの高まるエレクトロニクス分野のニーズを満たすために、高電圧及び高周波数で動作するデバイスの製造において、ますます広く利用されている。
【0003】
アクティブパワーデバイスだけでなく、マイクロエレクトロニクス回路はまた、閉回路と開回路との間のスイッチング中の電圧過渡現象を排除することができるRCダンパを形成するため、非常に高い電圧(例えば、1000V以上、又は更に3000V以上)に対応するキャパシタなどのパッシブ部品を必要とする。これは、アクティブデバイスへの過負荷による損傷を回避する。
【0004】
セラミック絶縁体キャパシタは、非常に高い電圧にも耐えることが知られている。しかしながら、それらはいくつかの欠点を有する。第1に、それらの大きなサイズは、それらがアクティブデバイスに可能な限り近くに集積されることを妨げる。アクティブデバイスとパッシブデバイスとの間の大きな距離は寄生インダクタンスを生じ、これはスイッチング周波数が増加するにつれてますます顕著になる。加えて、これらのキャパシタは、クリーンルームにおけるアクティブデバイスのマイクロエレクトロニクス製造中の集積化と適合しない。最後に、これらは限られた温度範囲、典型的には室温と125℃との間で動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の欠点の全て又はいくつかを改善することを目的とする。本発明は、非常に高い電圧に耐えることができ、信頼性があり、キャパシタンス値が印加電圧にかかわらず一定であり、低減された寸法を有し、典型的には最大300℃までの広範囲の温度で動作することができる、ワイドバンドギャップ半導体で作られた層のスタックを含む固定キャパシタンスを有するキャパシタを提案する。本発明によるキャパシタはまた、マイクロエレクトロニクス製造方法と適合し、そのため、アクティブパワーデバイスの近傍にモノリシックに共集積することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2.3eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料の層のスタックを含むキャパシタに関し、当該層のスタックは、
- 10kΩ・cmより大きい抵抗率を有し、半導体材料の伝導帯又は価電子帯から0.4eVを超えて位置するエネルギー準位を生成するn型又はp型のディープドーパントを含む電気絶縁性の中間層と、
- 10kΩ・cm未満の抵抗率を有し、中間層のディープドーパントのタイプとは反対のタイプのドーパントを含む2つのコンタクト層であって、2つのコンタクト層は、互いに電気的に絶縁されており、中間層の両側に配置されて2つのpn接合を形成している、2つのコンタクト層と、を含む。
【0007】
本発明の他の有利な、かつ非限定的な特徴によれば、単独で、又は任意の技術的に実現可能な組合せにおいて、
2つのコンタクト層は、1mΩ・cmより大きい抵抗率を有し、キャパシタは、集積された抵抗を有するキャパシタンスを規定してRCダンパを形成しており、
2つのコンタクト層は、1mΩ・cm以下の抵抗率を有して、キャパシタに純粋な容量性を付与しており、
キャパシタは、2つのコンタクト層にそれぞれ電気的に接続された2つの金属電極を含み、
ディープドーパントは、1×1014/cm~1×1021/cmに含まれる濃度で中間層内に存在し、
中間層は、1nm~2mm、好ましくは500nm~50μmの厚さを有し、
各コンタクト層は、5nm~50μm、好ましくは50nm~1μmの厚さを有し、
層のスタックの半導体材料は、炭化ケイ素(silicon carbide、SiC)、窒化ガリウム(gallium nitride、GaN)、窒化アルミニウム(aluminum nitride、AlN)、窒化物をベースとする三元又は四元合金、窒化ホウ素(boron nitride、BN)、酸化ガリウム(gallium oxide、Ga2O3)及びダイヤモンドから選択されており、
キャパシタは、層のスタックが配置される支持基板を含み、
支持基板は、層のスタックの半導体材料と同じ種類の半導体材料から構成されており、
層のスタックを形成している半導体材料は、ダイヤモンドであり、中間層のディープドーパントは、n型であり、コンタクト層のドーパントは、p型であり、かつホウ素原子であり、
中間層のディープドーパントは、窒素原子であり、
層のスタックを形成している半導体材料は、炭化ケイ素であり、中間層のディープドーパントは、p型であり、かつバナジウム原子であり、コンタクト層のドーパント(シャロードーパント)は、n型であり、かつ窒素原子である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図を参照した本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
図1】本発明によるキャパシタの第1の実施形態を示す図である。
図2】本発明によるキャパシタの第2の実施形態を示す図である。
【0010】
図中の同じ符号は、同じタイプの要素に対して使用され得る。図は、概略図であり、読みやすさのために縮尺通りではない。特に、z軸に沿った層の厚さは、x軸及びy軸に沿った横方向寸法に対して正確な縮尺ではなく、それらの間の層の相対的な厚さは、必ずしも図において尊重されていない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ワイドバンドギャップ材料と呼ばれる、すなわち、価電子帯と伝導帯との間に、2.3eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料から形成された層のスタック1を含むキャパシタ10に関する。半導体材料は、特に、
- バンドギャップエネルギーが3.26eVである炭化ケイ素(SiC)、例えば4H-SiC、
- バンドギャップエネルギーが3.4eVである窒化ガリウム(GaN)、
- 6.2eVのバンドギャップエネルギーを有する窒化アルミニウム(AlN)、
- バンドギャップエネルギーが約5.9eVである窒化ホウ素(BN)、
- 窒化物をベースとする三元又は四元合金、例えば、AlGaN、InGaN等、
- 4.8eVのバンドギャップエネルギーを有する酸化ガリウム(Ga)、及び
- バンドギャップエネルギーが5.45eVであるダイヤモンド
から選択され得る。
【0012】
キャパシタ10の層のスタック1は、ワイドバンドギャップ半導体材料で形成された3つの層2a、2b、3、すなわち2つのコンタクト層2a、2bの間に配置された中間層3を含む(図1及び図2)。
【0013】
コンタクト層2a、2bは、10kΩ・cm未満の抵抗率を有する。本発明の様々な態様に応じて、これらは、10Ω・cm以下、1Ω・cm以下、10mΩ・cm以下、又は1mΩ・cm以下の抵抗率を有し得る。コンタクト層2a、2bは、予期される抵抗率を調整するために、半導体材料の導電率を増加させることが可能なn型(ドナー)又はp型(アクセプタ)ドーパントがドープされる。これらは、キャパシタ10の2つの金属アーマチュアを(全体的に又は部分的に)形成することを意図しているため、互いに電気的に絶縁されている。
【0014】
それ自体はよく知られているように、ドナー及びアクセプタは、意図的に又は意図的でなく、半導体に導入された不純物(原子)であり、ドナー(n型)は、伝導帯又はバンドギャップ内の他の準位に電子を与えることができ、アクセプタ(p型)は、価電子帯の又はバンドギャップの他の準位からの電子を取込むことができる。
【0015】
一般に、シャロードナーは、半導体の伝導帯に電子を容易に与えることができるものとして定義される。これは、バンドギャップ内のエネルギー準位が伝導帯からわずかに離れているという事実に関連している。したがって、シャロードナーを有する高濃度にドープされた半導体は、ドナーによって伝導帯に移動される自由電子に起因して、室温で導電体特性を有する。同様に、シャローアクセプタは、バンドギャップ内のエネルギー準位が価電子帯からわずかに遠いため、半導体の価電子帯電子を容易に取込むことができるものと定義される。したがって、シャローアクセプタで高濃度にドープされた半導体は、アクセプタによって価電子帯に生成される自由正孔に起因して、室温で導電体特性を有する。
【0016】
コンタクト層2a、2bの予期される抵抗率範囲、10kΩ・cmから1mΩ・cm未満を達成するために、当該層2a、2bに導入されるドーパントは、一般に、シャロードーパントとして説明される。しかしながら、通常はシャローとは見なされない特定のドーパントを使用して上述の抵抗率を達成することがある。例えば、ダイヤモンドでは、ホウ素ドーパントのイオン化エネルギーは、低いドーパント濃度に対して0.38eVであり、5×1020/cmのドーピングに対して絶縁体-金属遷移に達するまで濃度が増加すると0eVになる傾向がある。この場合、ホウ素で高濃度にドープされたダイヤモンドにおいて5mΩ・cm未満の抵抗率を達成することが可能である。
【0017】
ホッピングによる伝導はまた、例えば、ダイヤモンド中のホウ素(アクセプタ)又はリン(ドナー)などのドーパントを使用して低い抵抗率を達成することを可能にする。この現象を利用するためには、ホウ素濃度は1×1019/cm~5×1020/cmでなければならず、リン濃度は1×1019/cmより大きい。
【0018】
コンタクト層2a、2bの半導体材料は、漏洩(寄生)を低減し、それ自体が単結晶である場合に中間層3とのより良好な界面を提供するために、多結晶構造、又は好ましくは単結晶構造を有し得る。
【0019】
中間層3は、電気的に絶縁性を有する、つまり、10kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。
【0020】
有利には、中間層3の抵抗率は可能な限り高く、例えば1000kΩ・cmより大きい。それは、ここでは半導体材料の伝導帯又は価電子帯の0.4eVを超えて位置するエネルギー準位を生成するものとして定義される、ディープドーパントを含む。中間層3のディープドーパントは、半導体材料の性質に特有のディープドナー(n型)又はディープアクセプタ(p型)であり得る。
【0021】
ディープドーパントは、それぞれ電子及び正孔に対してより高い束縛エネルギーを有するドナー又はアクセプタであり、したがって室温では実質的にイオン化されない。シャロードナー及びアクセプタと比較して、ディープドナー及びアクセプタのエネルギー準位は、バンドギャップにおいてより深く、つまり、それぞれ伝導帯及び価電子帯からより遠くに位置する。したがって、中間層3の絶縁特性は、これらのディープドーパントの存在下で完全に維持することができる。
【0022】
好ましくは、150℃を超えるキャパシタ10の動作のために、価電子帯(アクセプタ)又は伝導帯(ドナー)から1eVを超えて位置するエネルギー準位を生成するディープドーパントが選択される。例えば、ダイヤモンドの場合、1×1016/cm程度のディープドーパント濃度に対して、150℃又は250℃での動作に対してそれぞれ1000kΩ・cm以上の中間層3の抵抗率を保証するために、ディープドーパントのイオン化エネルギーが1eVより大きい、又は1.3eVまでであることが望ましい。
【0023】
一般に、ディープドーパントは、1×1014/cm~1×1021/cmの濃度で中間層3に存在する。しかしながら、この濃度範囲は、ディープドーパントのある特定の場合において、より制限される可能性があり、典型的には1×1014/cm~1×1018/cmであることに留意されたく、実際、特定の濃度を超えると、特定のディープドーパント(すでに上述したダイヤモンド中のリンなど)がホッピングによる伝導現象によって電気伝導に関与することができ、これは中間層3では望ましくない。
【0024】
中間層3の半導体材料は、多結晶構造を有してもよく、又は好ましくは、粒界の存在によって促進され得る漏洩電流及び早期の破壊を回避することによって良好な電気絶縁を保証するために単結晶であり得る。
【0025】
本発明によるキャパシタ10の層のスタック1において、コンタクト層2a、2bのドーパントは、中間層3のディープドーパントのタイプとは反対のタイプである。2つのコンタクト層2a、2bが中間層3の両側に配置されているので、層のスタック1は、したがって、上部のコンタクト層2aと中間層3との間、及び下部のコンタクト層2bと中間層3との間にそれぞれ2つのpn接合を形成している。
【0026】
こうして、キャパシタ10は、上部のコンタクト層2a、pn接合、絶縁的な中間層3、pn接合、及び下部のコンタクト層2bを順に含む。pn接合は、キャパシタ10に高電圧が印加されたときに、コンタクト層2a、2bを介してコンタクト層2a、2bから中間層3へのキャリアの注入を防止する。このような注入は、中間層3の絶縁特性を著しく劣化させる。コンタクト層2a、2bと中間層3との間に確立されるpn接合は、本発明によるキャパシタ10に大きな安定性及び優れた信頼性を与える。キャパシタ効果は、中間層3のドーパントが動作温度で電気絶縁を保証するのに十分な深さである場合、中間層3の非空乏ゾーンによって、及び2つのpn接合の2つの空間電荷ゾーンによって提供される。高い動作温度(典型的には150℃超)では、2つのpn接合の2つの空間電荷ゾーンの重なり合いが使用されて、中間層3の電気絶縁を強化することができる。
【0027】
本発明によるキャパシタ10は、一方では、当該中間層3の絶縁特性(ディープ不純物の特性)を保証するために、他方では、固定されたキャパシタンス値を提供し、キャパシタ10に電気絶縁、安定性及び信頼性を与える2つのpn接合(ドーパントとして使用されるディープ不純物)を確立するために、コンタクト層2a、2bのシャロードーパントとは反対のタイプの、中間層3におけるディープドーパントの存在を利用する。
【0028】
中間層3は、10nm~2mm、好ましくは500nm~50μmの厚さ(図中のz軸に沿った)を有し得る。各コンタクト層2a、2bは、5nm~50μm、好ましくは50nm~1μmの厚さを有し得る。
【0029】
本発明によるキャパシタ10の第1の例によれば、層のスタック1を形成している半導体材料はダイヤモンドである。中間層3のディープドーパントは、n型(ドナー)である。これらは、リン原子(P)又は好ましくは窒素原子(N)であり得る。ダイヤモンドにおいて、リン及び窒素は、それぞれ伝導帯の下に0.57eV及び1.7eVで、バンドギャップ内にディープ準位を生成する。
【0030】
例として、ディープ窒素ドナーの濃度は3×1019/cm程度であり、中間層3は1000kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。代替的に、ディープリンドナーの濃度は1×1015/cm程度であり、中間層3の抵抗率は100kΩ・cmより大きい。
【0031】
コンタクト層2a、2bのドーパントは、ホウ素(B)、p型(アクセプタ)原子である。ダイヤモンドにおいて、ホウ素は、価電子帯の上に0.38eVで、バンドギャップ内に準位を生成する。しかしながら、上述したように、ホウ素のイオン化エネルギーは、ドーパント濃度が増加すると減少する。
【0032】
例として、5×1020/cm程度のアクセプタ濃度では、コンタクト層2a、2bは、5mΩ・cm未満の抵抗率を有する。更なる例として、5×1014/cm程度のアクセプタ濃度では、コンタクト層2a、2bは、1kΩ・cm程度の抵抗率を有する。
【0033】
この第1の例では、3つの層2a、3、2bのスタック1は、p/n/p型スタックを画定する。
【0034】
本発明によるキャパシタ10の第2の例によれば、層のスタックを形成している半導体材料は炭化ケイ素(SiC)である。中間層3のディープドーパントは、バナジウム(V)原子、p型である。SiCにおいて、バナジウムは、伝導帯の下に0.8eVで、バンドギャップ内にディープ準位を生成する。
【0035】
例として、ディープアクセプタの濃度は1×1015/cm程度であり、中間層3は100kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。
【0036】
コンタクト層2a、2bのシャロードーパントは、窒素原子、n型である。SiCでは、窒素は、伝導帯の下に0.08eVで、バンドギャップ内にシャロー準位を生成する。例として、1×1019/cm程度のドナー濃度では、コンタクト層3は、20mΩ・cm未満の抵抗率を有する。
【0037】
この第2の例では、3つの層2a、3、2bのスタック1は、n/p/n型のスタックを画定する。
【0038】
もちろん、これら2つの例は網羅的なものではなく、他のワイドバンドギャップ半導体材料が本発明のキャパシタ10に実装されることができる。p/n/p型又はn/p/n型のスタックは、半導体材料の性質に応じて、特に、当該材料のディープドーパント及びシャロードーパントのタイプの機能として、使用される。回路又は別のマイクロエレクトロニクス部品に接続するために、キャパシタ10は、有利には、2つのコンタクト層2a、2bにそれぞれ電気的に接続された2つの金属電極4a、4bを含む。これらの電極4a、4bは、当該層2a、2bとオーミック接触しており、キャパシタ10の外部への電気的接続を可能にする。したがって、各電極4a、4bは、コンタクト層2a、2b上に形成された1つ又は複数の金属層で構成されることができる。もちろん、2つのコンタクト層2a、2bと外部との間の接続は、代替的に、当該層2a、2bを電気的に接続することを可能にする任意の他の既知の手段によって実行されてもよい。
【0039】
本発明によるキャパシタ10は、固定キャパシタンス非分極キャパシタのカテゴリの一部である。ここで、キャパシタンスは、これらのアーマチュア(コンタクト層2a、2b又は電極4a、4b)に印加される電圧が何であれ、一定のままであり(すなわち、10%未満の変動、又は更に1%未満の変動を有し)、当該電圧は、数kVより大きく、1000Vより大きく、2000Vより大きく、又は更に大きいことが理解される。2つのコンタクト層2a、2b(潜在的にそれらの電極4a、4bを有する)は、絶縁材料(中間層3)によって分離された、キャパシタ10の2つの金属アーマチュアを形成している。2つのアーマチュア間に電圧が印加されると、絶縁材料(中間層3)内に電界が形成される。
【0040】
キャパシタ10は、ファラッド(F)で表されるそのキャパシタンスCによって、下式の通り、定義される。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、εは真空の誘電率、εは比誘電率(中間層3)、Sは金属アーマチュアの表面積、dは中間層3の厚さである。
【0043】
したがって、キャパシタンスCの値は
- S、Sが大きいほど、Cは大きくなる、
- d、dが小さいほど、Cは大きくなる、
- ε、εが大きいほど、Cは大きくなる、
といった依存性を有する。
【0044】
限定されるわけではないが、金属アーマチュアの表面積Sを定義するキャパシタ10の横方向寸法は、10μm~10mmであり得る。
【0045】
これらのパラメータに加えて、キャパシタ10は、中間層3が耐えることができる最大電界によって制限される。ワイドバンドギャップ半導体は、非常に高い最大電界を有することが知られている。例えば、SiCの場合、この電界は約3MV/cmであり、ダイヤモンドの場合、10MV/cmである。中間層3のこの固有特性は、現在利用可能なキャパシタの限界を押し戻すことを可能にする。
【0046】
本発明の第1の態様によれば、2つのコンタクト層2a、2bは、1mΩ・cm以下の抵抗率を有し、この場合、キャパシタ10の直列抵抗は無視できる(当該キャパシタ10が組み込まれる回路の他の抵抗と比較して)。この場合、キャパシタ10は、純粋に容量性の挙動を示す。
【0047】
本発明の第2の態様によれば、2つのコンタクト層2a、2bは、1mΩ・cmより大きい(かつ、10kΩ・cm未満であることを想起されたい)抵抗率を有する。キャパシタ10の直列抵抗は、(当該キャパシタ10が組み込まれる回路の他の抵抗と比較して)重要になり、RCダンパを生成するように調整することができる。次に、キャパシタ10は、集積された抵抗を有するキャパシタンスを規定し、RCダンピングデバイスを形成している。
【0048】
以下の実施形態は、本発明の前述の態様の一方又は他方に適用することができる。
【0049】
図1に示されるキャパシタ10の第1の実施形態では、各電極4a、4bは、層のスタック1の主面((x,y)平面における)上に配置されている。
【0050】
図2に示される第2の実施形態によれば、層のスタック1は、キャパシタ10に含まれる支持基板5上に配置されており、支持基板5は、通常、スタック1の層の成長のための支持体を形成している。支持基板5は、層のスタック1の半導体材料と同じ種類の半導体材料から構成されていてもよいが、又はスタック1の層の成長を可能にする異なる種類の半導体材料から構成されていてもよい。
【0051】
この支持基板5の存在は、電極4a、4bの配置を変更する。電極4aは、上部のコンタクト層2aの自由主面に配置されている。下部のコンタクト層4bは、平面(x,y)において、スタック1の他の層(すなわち中間層3及び上部のコンタクト層4a)の同じ平面における表面よりも大きい表面を有する。したがって、他方の電極4bは、スタック1(図2)の他の層から自由な、その周面で下部のコンタクト層2bと接触されることが可能となる。
【0052】
ここで、第1及び第2の実施形態の製造方法の例について説明する。ここでは、半導体材料としてダイヤモンドが選択されている。
【0053】
(第1の実施形態)
出発点は、高圧高温(high-pressure high-temperature、HPHT)手法又は化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)によって得られる、窒素(N)が豊富なタイプIbのダイヤモンドウェーハである。このウェハは、1×1019/cmのディープドナーNの濃度を有し、予期される絶縁特性(10kΩ・cmより大きい抵抗率)を有する。
【0054】
このウェハは、例えば研磨又はレーザー切断によって所望の厚さに調整され、中間層3を形成する。
【0055】
中間層3の厚さの選択、例えば50μmは、キャパシタンスの値を決定する。
【0056】
次に、中間層3は、グラファイト、金属、有機及び無機材料などの汚染物質を除去するために、従来の洗浄酸浴内で処理される。(p++型の)非常に導電性の単結晶ダイヤモンド層の成膜(成長)が、中間層3の両側で実行されて、2つのコンタクト層2a、2bを形成する。成膜は、例えば、熱フィラメント(hot filament、HF)によって、又はマイクロ波プラズマ(microwave plasma、MP)CVDによって実行することができる。ホウ素原子Bの濃度は、5×1020atm/cmである。厚さは、例えば、200nmである。
【0057】
次のステップは、コンタクト層2a、2bの表面のメタライゼーションで構成される。このために、金属、チタン(Ti)続いて金(Au)、の成膜が、例えば、2つの層2a、2bの自由表面上で行われ、70nm(30nmのTi及び40nmのAu)の総厚さを有する。もちろん、オーミック接触を形成する他の金属が使用されてもよい。次に、構造のアニーリングが実行され、炭化物の形成を促進し、接触部にオーミック性を付与する。アニーリングは、急速かつ制御された温度上昇のために、単一の炉又はRTAシステムを使用して、例えば、アルゴンタイプの不活性ガス流を用いた真空の下において、450℃で1時間実行されることができる。
【0058】
次いで、本発明の第1の実施形態によるキャパシタ構造10が得られ(図1)、これは、典型的には最大数kVまでの非常に高い電圧と、1pF/mm程度のキャパシタンスとに適合する。ここで、コンタクト層2a、2bは、1mΩ・cm未満の抵抗率を有し、キャパシタ10に純粋に容量性の性質を与える(本発明の第1の態様)。
【0059】
(第2の実施形態)
単結晶ダイヤモンドで作製された、任意の既知のタイプの出発となる支持基板5が、高圧高温(HPHT)手法又は化学蒸着(CVD)によって得られる。汚染物質を除去するために、従来の酸浴洗浄が支持基板5に適用される。
【0060】
(p++型の)非常に導電性の単結晶ダイヤモンド層の成長が、支持基板5上で実行され、スタック1の下部のコンタクト層2bを形成する。成膜は、例えば、熱フィラメント(HF)によって、又はマイクロ波プラズマ(MP)CVDによって実行されることができる。ホウ素原子Bの濃度は、5×1020atm/cmである。厚さは、200nmである。次に、電気絶縁性であり、n型(ディープ窒素ドーパント)の、単結晶ダイヤモンド層の成膜(成長)が、中間層3を形成するために実行される。ディープドナーの濃度は、1×1019atm/cmであり、中間層3の厚さは、約1μmである。最後に、(p++型の)非常に導電性の単結晶ダイヤモンド層の新たな成長が、中間層3上で実行されて、下部のコンタクト層2bと同一のスタック1の上部のコンタクト層2aを形成する。
【0061】
次に、例えばアルミニウム製のマスクが上部のコンタクト層2a上に成膜され、下部のコンタクト層2bの所望の表面よりも小さい表面の境界を定める。次に、下部のコンタクト層2bに達するまで、上部のコンタクト層2a及び中間層3のマスクされていない部分をエッチングすることが可能である。
【0062】
マスクを除去した後、コンタクト層2a、2bの自由表面のメタライゼーションを、例えば2つの連続するステップにおいて、マスクを使用して、及び/又はリソグラフィ手法を実施することによって実行することが可能である。各コンタクト層2a、2bとその電極4a、4bとの間にオーミック接触を形成するために、チタン(Ti)及び金(Au)の形成膜、又は他の金属が生成され得る。各電極4a、4bは、70nmの厚さを有する。次に、例えば第1の実施形態で説明したような、構造のアニーリングが実行され、炭化物の形成を促進し、接触部にオーミック性を付与する。
【0063】
第2の実施形態の変形によれば、下部のコンタクト層2bの成長の後、金属マスクが、スタック1の他の層が存在しないようにしなければならない当該層2bの表面上に成膜される。次に、中間層3及び上部のコンタクト層2aが、選択的成長によって、定義された表面(図2の中央面)上にのみ生成される。次に、マスクの除去及びメタライゼーションを上述したように行うことができる。
【0064】
使用される変形が何であれ、本発明の第2の実施形態によるキャパシタ構造10が次いで得られ、その端子に印加される電圧にかかわらず、典型的には最大1000Vまでの非常に高い電圧に適合し、0.05nF/mm程度の固定キャパシタンスを有する。ここで、コンタクト層2a、2bは、1mΩ・cm未満の抵抗率を有し、キャパシタ10に純粋に容量性の性質を与える(本発明の第1の態様)。
【0065】
キャパシタ10がRCダンピングデバイスを形成する本発明の第2の態様によれば、コンタクト層2a、2bは、約1μmの厚さ及び1kΩ・cmの抵抗率(典型的には、5×1014/cm程度のホウ素ドーパント濃度に対応する)で作製される。したがって、0.05nF/mm程度の上述と同じキャパシタンスを有して、1nsのRCダンピング回路の時定数を得ることが可能である。
【0066】
第2の実施形態は、中間層3(絶縁体)の厚さが第1の実施形態よりも容易に製造及び調整されることができるため、キャパシタンスに関してより大きな柔軟性を提供することに留意されたい。
【0067】
本発明によるキャパシタ10は、高エネルギー、典型的には1000Vより大きい、3000Vより大きい、又は更に5000Vより大きい電圧を蓄積することができる。それは、-30℃~300℃に拡張された温度範囲において、温度に対するキャパシタンス値の大きな安定性を提供する。温度によって発生する漏洩電流は、無視できる。
【0068】
キャパシタ10は、マイクロエレクトロニクス方法によって製造され、したがって、同じチップ上にアクティブ部品とモノリシックに共集積することが容易である。
【0069】
本発明によるキャパシタは、例えば、ハイブリッド及び/又は電気自動車、航空学、エネルギー管理、等に使用される全てのパワー変換器に統合することができるパッシブ部品を構成する。バスバー及びダンピングRCネットワークに統合すると、閉回路と開回路との間のスイッチング中に生成される典型的には2000Vを超える電圧スパイクによる部品の故障から電気回路を保護することが可能になる。
【0070】
一般に、本発明によるキャパシタは、高電圧電気回路を電圧過渡現象に対して保護するために使用されることができる。
【0071】
当然ながら、本発明は、説明された実施形態及び実施例に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、実装形態の変形が適用され得る。
図1
図2
【国際調査報告】