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特表2024-510147フローダイバーター装置および関連する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】フローダイバーター装置および関連する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20240228BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20240228BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/82
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553966
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018790
(87)【国際公開番号】W WO2022187550
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,345
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336402
【氏名又は名称】ビーティ、ナーリン
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ビーティ、ナーリン
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD65
4C160MM36
4C267AA44
4C267AA56
4C267BB01
4C267CC08
4C267DD08
4C267FF05
(57)【要約】
【要約】
血管分岐部で動脈瘤への血流を制限するためのフローダイバータ装置が開示され説明される。フローダイバーター装置は、高密度遠位キャップが血管分岐部から動脈瘤に流入する血流を抑制するように血管分岐部の血管側の動脈瘤口に係合するように構造的に構成された外側凸形状を有する高密度遠位キャップを含む線状装置本体と、血流が血管分岐部を通るのを可能にする高密度遠位キャップに隣接する低密度部分と、低密度部分に隣接し、血管分岐部の内腔で線形装置本体を安定させるように構造的に構成されるステント部分と、ステント部分の側縁における近位ワイヤ取付部であって、ステント部分が近位ワイヤ取付部の遠位端で末端結合する、近位ワイヤ取付部とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローダイバーター装置であって、
非展開構成および展開構成を有する線形装置本体であって、前記展開構成にあるとき、前記線形装置本体はさらに、
外側凸形状を有する高密度遠位キャップであって、この高密度遠位キャップが血管分岐部から動脈瘤への血流を制限するように、前記血管分岐部の血管側の動脈瘤口に係合するように構造的に構成されている、高密度遠位キャップと、
血流が前記血管分岐部を流れることを可能にする前記高密度遠位キャップに隣接した低密度部分と、
前記低密度部分に隣接し、前記血管分岐部の内腔内で前記線状装置本体を安定させるように構造的に構成されているステント部分と、
前記ステント部分の側縁にある近位ワイヤ取付部であって、前記ステント部分は前記近位ワイヤ取付部の遠位端に末端的に結合する、近位ワイヤ取付部と、
を有するフローダイバーター装置。
【請求項2】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、前記低密度部分は、複数の横方向の開口部を含むものである、フローダイバーター装置。
【請求項3】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、前記高密度遠位キャップは、前記ステント部分と比較して低い空隙率を有し、前記低密度部分は、前記ステント部分と比較して高い空隙率を有するものである、フローダイバーター装置。
【請求項4】
請求項3記載のフローダイバーター装置において、
前記高密度遠位キャップは、前記動脈瘤への十分な血流を可能にして、前記高密度遠位キャップの動脈瘤側に血栓が形成されるのを抑制し、且つ前記動脈瘤への十分な血流を制限して前記高密度遠位キャップでの内皮化を促進する、空隙率を有するものである、フローダイバーター装置。
【請求項5】
請求項3記載のフローダイバーター装置において、
前記高密度遠位キャップは、約15%~約55%の空隙率を有するものである、フローダイバーター装置。
【請求項6】
請求項3記載のフローダイバーター装置において、
前記高密度遠位キャップは、約30%~約40%の空隙率を有するものである、フローダイバーター装置。
【請求項7】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、
前記高密度遠位キャップおよび前記低密度部分は、編組ワイヤから構成され、前記ステント支持体は、レーザー切断されたステント支持体である、フローダイバーター装置。
【請求項8】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、
前記高密度遠位キャップ、前記低密度部分、および前記ステント部分が編組ワイヤから構成されるものである、フローダイバーター装置。
【請求項9】
請求項8記載のフローダイバーター装置において、
前記近位ワイヤ取付部は、前記展開構成にあるとき、前記線形装置本体の中心軸の側方に位置し、前記ステント部分からの前記編組ワイヤは、前記近位ワイヤ取付部において収束するものである、フローダイバーター装置。
【請求項10】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、
前記編組ワイヤの遠位端に結合され、前記非展開構成にあるときに前記線形装置本体の中心軸に沿って位置決めされる遠位ワイヤ取付部をさらに有するものである、フローダイバーター装置。
【請求項11】
請求項10記載のフローダイバーター装置において、
前記遠位ワイヤ取付部は、放射線不透過性遠位マーカーとして放射線不透過性材料を含むものである、フローダイバーター装置。
【請求項12】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、
前記近位ワイヤ取付部は、近位マーカーとして放射線不透過性材料を含むものである、フローダイバーター装置。
【請求項13】
請求項1記載のフローダイバーター装置において、
前記編組ワイヤは、形状記憶編組ワイヤである、フローダイバーター装置。
【請求項14】
請求項10記載のフローダイバーター装置において、
前記形状記憶編組ワイヤがニッケル合金を含むものである、フローダイバーター装置。
【請求項15】
請求項13記載のフローダイバーター装置において、
前記編組ワイヤがDFT(drawn filled tubing)ワイヤである、フローダイバーター装置。
【請求項16】
請求項8記載のフローダイバーター装置において、
前記編組ワイヤが、それぞれが前記近位ワイヤ取付部から前記遠位ワイヤ取付部まで延びる複数の編組ワイヤ部分を備えるものである、フローダイバーター装置。
【請求項17】
請求項16記載のフローダイバーター装置において、
前記複数の編組ワイヤ部分の各編組ワイヤ部分は同じ長さである、フローダイバーター装置。
【請求項18】
請求項16記載のフローダイバーター装置において、
前記編組ワイヤは、前記高密度遠位キャップの周囲から前記遠位ワイヤ取付部まで密度が増加するものである、フローダイバーター装置。
【請求項19】
請求項16記載のフローダイバーター装置において、
前記遠位ワイヤ取付部は、前記非展開構成にあるとき、前記線形装置本体の中心軸に沿って位置決めされるものである、フローダイバーター装置。
【請求項20】
請求項16記載のフローダイバーター装置において、
前記遠位ワイヤ取付部は、前記非展開構成にあるとき、前記線形装置本体の中心軸からオフセットされているものである、フローダイバーター装置。
【請求項21】
血管分岐部を通して血流を動脈瘤からそらすための方法であって、
請求項1に記載のフローダイバーター装置を含む送達カテーテルを前記血管分岐部の動脈瘤に配置する工程と、
前記フローダイバーター装置の高密度遠位キャップが前記動脈瘤の口に対して配置され、血流が前記動脈瘤から前記血管分岐部の二次血管にそれるように、前記フローダイバーター装置から前記カテーテルを取り外して、前記フローダイバーター装置を非展開構成から展開構成に移行させる工程と、
を有する方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記フローダイバーター装置は、前記非展開構成から前記展開構成への移行中、または前記非展開構成から前記展開構成の移行後、または前記フローダイバーター装置が送達カテーテルに少なくとも部分的に後退した後のいずれかで、前記高密度遠位キャップを前記動脈瘤口と位置合わせするように再配置されるものである、方法。
【請求項23】
血流を動脈瘤から血管分岐部の二次血管にそらせるためのシステムであって、
血管系を通って血管分岐部まで移動するように構成された送達装置と、
前記送達装置の内腔内に配置された、請求項1に記載のフローダイバータ装置と、
前記フローダイバーター装置の前記近位ワイヤ取付部にリリース可能に結合され、前記送達装置の内腔内に配置されたガイドワイヤであって、前記送達装置が前記フローダイバーター装置から取り外されるときに前記フローダイバーター装置の位置を維持するように構成されているガイドワイヤと、
を有する、システム。
【請求項24】
請求項21記載のシステムにおいて、前記送達装置が送達カテーテルである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/156,345号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤は、脳の動脈にできる、膨らんで血液で満たされた弱い部分または薄い部分である。このような動脈瘤は、神経組織への圧迫や破裂による血液の周囲組織への流出など、多くの健康上の問題やリスクを引き起こす可能性がある。動脈瘤が破裂すると、出血性脳卒中、脳損傷、昏睡などの深刻な健康上の問題を引き起こし、さらには死に至る可能性がある。
【0003】
脳動脈瘤、特に非常に小さい脳動脈瘤は、出血したりその他の健康上の問題を引き起こしたりすることはないが、血管壁の膨らみや弱体化を抑えるための措置を講じないと、多くの場合、出血する可能性がある。これらのタイプの動脈瘤は、神経系の問題やその他の病状が疑われる場合の画像検査中に検出されることがよくある。脳動脈瘤は脳内のどこにでも発生する可能性があるが、多くは頭蓋底に沿った主要動脈に発生する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、血管の分岐部における動脈瘤を示す図である。
図2A図2Aは、例示的な実施形態による、動脈瘤口の血管側または動脈瘤口の血管側に配置される高密度遠位キャップを備えた、動脈瘤口において血管の分岐部内に配置されたフローダイバーター装置を示す。
図2B図2Bは、例示的な実施形態による、動脈瘤口または動脈瘤口内に配置される高密度遠位キャップを備えた、動脈瘤口において血管の分岐部内に配置された分流装置を示す。
図3A図3Aは、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図、正面図、および背面図を示す。
図3B図3Bは、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図、上面図、底面図、トップダウン等角図、及びボトムアップ等角図を示す。
図4図4は、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図である。
図5図5は、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図を示す。
図6B図6Bは例示的な実施形態によるフローダイバーター装置の側面図である。
図7A図7Aは、例示的な実施形態による、送達装置内の展開されていないフローダイバーター装置の側面図を示す。
図7B図7B例示的な実施形態による、送達装置に取り付けられた展開されたフローダイバーター装置の側面図を示す。
図8A図8Aは、例示的な実施形態による、動脈瘤の分岐血管内に配置された送達装置内の展開されていないフローダイバーター装置の図を示す。
図8B図8Bは、例示的な実施形態による、動脈瘤の分岐血管内に配置された送達装置に取り付けられた展開されたフローダイバーター装置の図を示す。
図9A図9Aは、例示的な実施形態によるフローダイバーター装置用のクレードル結合の図を示す。
図9B図9Bは、例示的な実施形態による、クレードル結合からリリースされたフローダイバーター装置の図を示す。
図10A図10Aは、例示的な実施形態によるクレードル結合の上面図を示す。
図10B図10Bは、例示的な実施形態によるクレードル結合の等角図を示す。
図11A図11Aは、例示的な実施形態による、プッシャからの近位ワイヤ取付部のリリースを示す。
図11B図11Bは、例示的な実施形態による、プッシャからの近位ワイヤ取付部のリリースを示す。
図11C図11Cは、例示的な実施形態による、プッシャからの近位ワイヤ取付部のリリースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明は、例示の目的で多くの詳細を含むが、当業者であれば、以下の詳細に対して多くの変形および変更が可能であり、それらが本明細書に含まれるものとみなされることを理解するであろう。したがって、以下の実施形態は、記載されたいずれの請求項に対する一般性を失うことなく、また、記載された特許請求の範囲に限定を課すことなく記載されている。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、異なる図面に現れる同じ参照番号は同じ要素を表す。フローチャートおよびプロセスで提供されている番号は、工程と操作をわかりやすくするために提供されており、必ずしも特定の順序や順序を示すものではない。
【0006】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、様々な実施形態の完全な理解を提供するために、レイアウト、距離、ネットワークの例などの例など、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者であれば、そのような詳細な実施形態は、本明細書で明示される全体的な概念を限定するものではなく、単にその概念を代表するものであることを認識するであろう。関連分野の当業者であれば、この技術は、1つ以上の特定の詳細なしに、または他の方法、コンポーネント、レイアウトなどを用いて実施できることも認識するであろう。他の場合には、本開示の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、または動作については、詳細に図示または説明しない場合がある。
【0007】
本出願では、「comprises」、「containing」、「having」などは、米国特許法でそれらに与えられる意味を有することができ、また、「includes」、「including」などを意味することもできる。一般に、オープンエンドの用語であると解釈される。「consisting of」または「consists of」という用語はクローズエンドの用語であり、米国特許法に準拠するものだけでなく、そのような用語に関連して特に列挙されているコンポーネント、構造、工程などのみを含む。「Consisting essentially of」または「consists essentially of」は、米国特許法によって一般に与えられる意味を持つ。特に、そのような用語は、関連して使用される項目の基本的かつ新規な特性または機能に実質的に影響を及ぼさない追加の項目、材料、コンポーネント、ステップ、または要素を含めることを許可する場合を除いて、一般的にクローズエンドの用語である。例えば、組成物中に存在するが、組成物の性質や特性に影響を及ぼさない微量元素は、「consisting essentially of」という用語の後に記載される場合、たとえそのような用語に続く項目のリストに明示的に記載されていなくても許容される。本明細書の説明で「comprising」または「including」などのオープンエンドの用語を使用する場合、明示的に記載されているかのように「consisting essentially of」という言葉だけでなく、「consisting of」という言葉にも直接サポートが与えられるべきであること、またその逆が理解される。
【0008】
本明細書で使用される場合、「substantially」という用語は、動作、特性、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な範囲または程度を指す。例えば、「substantially実質的に」に囲まれた物体は、その物体が完全に囲まれているか、ほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容範囲は、場合によっては特定の状況に依存する場合がある。しかし、一般的に言えば、完成に近いということは、あたかも完成かつ完全な完成が得られたかのように、同じ全体的な結果が得られるようになる。「substantially実質的に」の使用は、動作、特性、特性、状態、構造、項目、または結果が完全またはほぼ完全に欠如していることを指す否定的な意味合いで使用される場合にも同様に適用される。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子が完全に欠如しているか、粒子がほぼ完全に欠如しているため、その効果は粒子が完全に欠如しているのと同じである。換言すれば、ある成分または要素を「実質的に含まない」組成物であっても、その測定可能な効果がない限り、実際には依然としてそのような物質を含んでいる可能性がある。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、所与の用語、測定基準、値、範囲の終了点などに柔軟性を与えるために使用される。特定の変数に対する柔軟性の程度は、当業者であれば容易に決定することができる。しかしながら、別段の表現がない限り、「約」という用語は、一般に1%未満、場合によっては0.01%未満の柔軟性を提供する。本明細書において「約」という用語が特定の数値に関連して使用される場合でも、「約」という用語とは別に列挙される正確な数値のサポートも提供されることを理解されたい。
【0010】
本明細書で使用される場合、複数の品目、構造要素、構成要素、および/または材料が、便宜上、共通のリストで提示される場合がある。ただし、これらのリストは、リストの各メンバーが別個の一意のメンバーとして個別に識別されるかのように解釈される必要がある。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、その反対が明示されない限り、共通のグループ内での提示のみに基づいて、同じリストの他のメンバーと事実上同等であると解釈されるべきではない。
【0011】
濃度、量、および他の数値データは、本明細書では範囲形式で表現または提示され得る。このような範囲形式は単に便宜と簡潔さのために使用されているため、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、すべての個々の数値やサブの数値も含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。実例として、「約1~約5」という数値範囲は、明示的に列挙された約1~約5の値だけでなく、示された範囲内の個々の値および部分範囲も含むものと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3、4 などの個別の値と、1、1.5、1.5、1.5 だけでなく、1~3、2~4、3~5 などのサブ範囲も含まれ、また 2、2.3、3、3.8、4、4.6、5、5.1等も個別に含まれるものである。
これと同じ原理が、最小値または最大値としての1つの数値のみを記載する範囲にも当てはまる。さらに、そのような解釈は、説明されている範囲や特性の広さに関係なく適用されるべきである。
【0012】
本明細書全体を通じて「例」への言及は、その例に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所で「例」または「実施形態」を含む語句が出現するが、必ずしもすべてが同じ例または実施形態を指すわけではない。
【0013】
明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、類似する要素を区別するために使用され、必ずしも特定の連続的または時系列的な順序を説明するために使用されるわけではない。このように使用される用語は、本明細書に記載の実施形態が、例えば、本明細書に図示または記載されたもの以外の順序で動作できるように、適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。同様に、方法が一連の工程を含むものとして本明細書に記載されている場合、本明細書に提示されている工程の順序は、必ずしもそのような工程が実行される唯一の順序ではなく、記載された工程の一部が省略されたり、および/またはここに記載されていない他の工程が方法に追加される可能性もある。
【0014】
明細書および特許請求の範囲において、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、「底」、「上方」、「下」などの用語が使用される。これは説明を目的としたものであり、必ずしも永続的な相対位置を説明するためのものではない。このように使用される用語は、本明細書に記載の実施形態が、例えば、本明細書に図示または記載されたもの以外の向きで動作できるように、適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「増加した」、「減少した」、「より良い」、「より悪い」、「より高い」、「より低い」、「強化された」などの比較用語は、装置、コンポーネント、周囲または隣接するエリアの他の装置、コンポーネント、またはアクティビティと明らかに異なるアクティビティ、単一の装置または複数の同等の装置、グループまたはクラス、複数のグループまたはクラス、または先行技術と比較した他の装置、コンポーネント、またはアクティビティと測定可能に異なるアクティビティまたはその類似物の特性を示す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「内腔」という用語は、対象体内の管、導管、血管などの内部空間を指すために使用される。「内腔」という用語は、カテーテル、マイクロカテーテル、装置内の同様物などの管状空間を指すこともできる。
【0017】
本明細書で使用される「近位」という用語は、装置の中心軸に沿って測定した場合に、操作者に最も近い装置上の位置または点を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「遠位」という用語は、装置の中心軸に沿って測定した場合に、操作者から最も遠い装置上の位置または点を指す。
【0019】
実施形態の最初の概要を以下に示し、その後、特定の実施形態をさらに詳細に説明する。この最初の概要は、読者が本開示をより迅速に理解できるようにすることを目的としており、重要なまたは必須の技術的特徴を特定することを意図したものではない。また、特許請求される請求の範囲を制限することを意図したものでもない。
【0020】
脳動脈瘤は、拡大し、最終的には破裂する可能性があるため、患者にとって深刻な脅威となる可能性がある。このような破裂は脳卒中、脳損傷を引き起こし、場合によっては死に至る可能性がある。動脈瘤のサイズ、位置、種類は、罹患した患者の健康リスクの重症度の重要な要素となり得る。
効果的に治療することが困難なタイプの動脈瘤の1つは、血管の分岐部で発生する。図1は、血管106の分岐点104におけるそのような動脈瘤102を示す。一次血管106の内腔110を通る血液の流れ108は、この例では、2つの二次血管114を通る流れ112に分かれる。しかしながら、血流は分岐部104の動脈瘤口118を通って動脈瘤102に流入する。血流108のこの部分116は内圧を上昇させる可能性があり、動脈瘤102の周りを循環する(120)傾向がある。
【0021】
分岐血管の動脈瘤を治療するためにさまざまな技術が存在する。侵襲的技術の一例には、動脈瘤への血液の流入を抑制するために動脈瘤の首部にクリップを配置することを伴う外科的処置が含まれる。低侵襲技術の一例には、動脈瘤内にマイクロカテーテルを配置し、その中にコイルを配置して動脈瘤内に血栓を形成させて血流を遮断することが含まれる。しかし、この技術では、動脈瘤壁を突き破り、動脈瘤が破裂する可能性がある。さらに、コイルの一部が動脈瘤から血管内に移動し、他の血管や神経組織に損傷を与える可能性がある。低侵襲技術の別の例には、動脈瘤に流入する血液を制限するために一次および二次血管にステントを配置することが含まれる。このような技術は達成が困難な場合があり、血管の分岐部を通る血流を大幅に制限する可能性がある。
本開示は、前述の問題のすべてではないにしても多くに対処するフローダイバーター装置を使用した低侵襲技術を提供する。しかしながら、以下の開示は分岐血管における動脈瘤を対象としているが、そのような使用は限定されないことが理解されるべきであることに留意されたい。したがって、本発明の範囲は、例えば、心臓、末梢、腎臓、肝臓などの任意の生理学的血管、導管などを含む、本明細書で教示される装置が使用され得る任意の用途を含むことを意図する。
例えば、図2Aに示されるように、フローダイバーター装置202は、動脈瘤102における血管106の分岐部104内に配置される。フローダイバーター装置202は、動脈瘤口118の血管側に、または動脈瘤口118の血管側に接して配置される高密度遠位キャップ204を含む。図2Bに示されるように、フローダイバーター装置202の高密度遠位キャップ204は、動脈瘤口118における血管の内腔側に対して動脈瘤102にまたは動脈瘤102内に挿入することができる。いくつかの例では、高密度遠位キャップ204を血管の内腔側に対して動脈瘤内に挿入することにより、親血管が確実に開いているようにすることができる。位置に関係なく、高密度遠位キャップ204は、動脈瘤102に入る血流を減少させ、二次血管114を通る流れ112にそらされる。さらに、高密度遠位キャップ204は、ある程度の血流を可能にするのに十分な多孔性である。これにより、高密度遠位キャップ204全体にわたる内皮化が促進され、血流が動脈瘤102に入るのをさらに阻止することになる。この技術により、動脈瘤破裂やその他の有害な脳事象の可能性を大幅に減らすことができる。図1、2A、および2Bにおける動脈瘤および分岐血管の描写は、単に単純化された例であり、限定的なものとみなされるべきではない。
したがって、本開示のフローダイバーター装置は、一般に、分岐部の血管側から動脈瘤に流入する血流を減少させ、動脈瘤に入る血液の流れを二次血管にそらせる。装置が動脈瘤の内腔に物理的に挿入されることなくそのような血流を減らすと、動脈瘤壁破裂のリスクが大幅に軽減され、その結果、患者の予後が大幅に改善される。
【0022】
図3Aは、本開示のフローダイバータ装置の非限定的な一例を示す。フローダイバーター装置300は、ステント部分302、高密度遠位キャップ304、および複数の横方向開口部318を含む低密度部分306を含む。図3Aに示すように、本明細書で概説したような結果を達成できる任意の有用な材料で作ることができる。例えば、分流器は、レーザーカット材料、ポリマー材料、ワイヤ材料、カーボンナノチューブなど、およびそれらの組み合わせから作製することができる。一例では、フローダイバーター装置300は、編組ワイヤ308から作製され、これにより、血管内に展開および配置されるときに、フローダイバーター装置300の異なる部分が異なる物理的特性および機能を有するように設計および製造する柔軟性が可能になる。この例では、編組ワイヤ308は、それらの近位端で収束し(310)、単一の近位ワイヤ取付部312に結合し、これによりフローダイバーター装置300の展開を簡素化することができる。編組ワイヤは、任意の数の近位ワイヤ取付部で終端することができるため、図示の構成は限定的なものとみなされるべきではない。一例では、編組ワイヤ308は、ステント部分302の縁部314で横方向の単一の近位ワイヤ取付部312に結合される。
【0023】
編組ワイヤ308は、展開可能であり、低密度部分306および高密度遠位キャップ304を動脈瘤口の所定の位置に保持するのに十分な剛性を有する任意の有用なパターンで編組することができる。ステント部分302が低密度部分306へと遠位方向に移行すると、編組ワイヤ308は編組ワイヤの束、すなわち編組ワイヤ束316、322にまとめられ、ステント部分302と比較して低密度部分306の密度を効果的に減少させる拡大された開口部を形成する。編組ワイヤ束316、322は、当業者に知られている任意の技術によって固定するか、結合するか、一緒に保持することができる。装置内のすべての編組ワイヤ束は、同じ機構または異なる機構で固定できる。図3Aの例は、異なる固定機構を有する編組ワイヤ束316、322を示す。特定の編組ワイヤ束316は、各編組ワイヤ束316を互いにしっかりと固定するワイヤクリップ320によって一緒に固定される。他の編組ワイヤ束322にはワイヤクリップなしにそのような編組ワイヤ束を一緒に固定できる任意の技術によって一緒に固定することができる。一例では、各編組ワイヤ束の編組ワイヤを一緒に撚ったり、編み込んだりすることができる。別の例では、編組ワイヤ束は、熱処理によって一緒に固定され得る。さらに別の例では、編組ワイヤ束を結合材料で一緒に固定することができる。図3Aはまた、編組ワイヤ束316、322が分離し、遠位方向に延びて遠位編組ワイヤ309となり、これらが一緒に編み込まれて高密度遠位キャップ304を形成する例も示している。高密度遠位キャップ304は終端し、遠位ワイヤ取付部324に結合される。
【0024】
図3AのA-A図は、フローダイバーター装置300を遠位端から近位方向に見た図を示す。この図は、編組ワイヤ308が収束して遠位ワイヤ取付部324に結合する際の、高密度遠位キャップ304の遠位側からの編組ワイヤ308の織りパターンの非限定的な一例を示す。図A-Aは、編組ワイヤ束316、320をさらに示す。ワイヤクリップ320は編組ワイヤ束316で圧着される。図3AのB-B図は、フローダイバーター装置300を近位端から遠位方向に見た図を示す。この図は、編組ワイヤ308が収束して遠位ワイヤ取付部324に結合するときの、高密度遠位キャップ304の近位側からの編組ワイヤ308の織りパターンの非限定的な一例を示す。図B-Bはさらに、編組ワイヤ束316、320、および編組ワイヤ束316に圧着されたワイヤクリップ320を示す。ステント部分302および近位ワイヤ取付部312もこの観点から示される。
図3Bは、ステント部分302、高密度遠位キャップ304、低密度部分306、遠位ワイヤ取付部324、および近位ワイヤ取付部312を含むフローダイバーター装置300の様々な図を示す。追加の参照番号は、明瞭にするために示されていない。図3BのA-A図は、フローダイバーター装置300の上面図を示しており、ステント部分302および低密度部分306を通る編組ワイヤの織りパターンのさらなる詳細を見ることができる。図3BのB-B図は、フローダイバーター装置300の底面図を示しており、ステント部分302および低密度部分306を通る編組ワイヤの織りパターンのさらなる詳細を見ることができる。さらに、トップダウン等角図およびボトムアップ等角図は、ステント部分302および高密度遠位キャップ304を通る編組ワイヤの織りパターンを示す。
別の例では、図4に示すように、編組ワイヤは、展開されて主血管の中心(またはその中の任意の場所)に留まる単一の近位ワイヤ取付部に結合され、単一の近位ワイヤ取付部によりフローダイバーター装置の展開も簡素化される。図5は、本開示のフローダイバータ装置の別の非限定的な例を示す。図5のフローダイバータ500の詳細は、図3と同様の参照番号を有し、関連説明を参照する。この例では、編組ワイヤ508は、2つの異なる点310、510で結合され、2つの異なる近位ワイヤ取付部312、512に結合される。
【0025】
図6Aおよび6Bは、本開示のフローダイバーター装置のさらに別の非限定的な例を示す。フローダイバーター装置600、650は、ステント部分602、高密度遠位キャップ604、および低密度部分606を含む。図6Aおよび6Bに示されるフローダイバーター装置は、本明細書で概説した結果を達成できる任意の有用な材料で作ることができる。一例では、フローダイバーター装置600、650は編組ワイヤ608から作られており、これにより、フローダイバーター装置600、650の異なる部分が異なる密度を有することができ、したがって血液内に展開されて配置されたときに異なる特性および機能を有することができる。この例では、編組ワイヤ608は、収束し(610)、近位ワイヤ取付部612に結合される。編組ワイヤは、任意の数の近位ワイヤ取付部で終端することができ、従って、図示の構成は限定的なものとみなされるべきではない。しかしながら、編組ワイヤ608をステント部分602の縁部614で横方向に単一の近位ワイヤ取付部612に結合することによって、フローダイバーター装置600、650の展開が簡素化される。
【0026】
編組ワイヤ608は、展開可能で、低密度部分606および高密度遠位キャップ604を動脈瘤口の所定の位置に保持するのに十分な剛性を有する任意の有用なパターンで編組することができる。ステント部分602が遠位方向に移行して低密度部分606に入るにつれて、編組ワイヤ608は編組ワイヤの束、すなわち編組ワイヤ束616、622にまとめられ、低密度部分606の密度を効果的に減少させる拡大された開口部618を形成する。編組ワイヤ束616は、当業者に知られている任意の技術によって固定するか、結合または保持することができる。装置内のすべての編組ワイヤ束は、同じ機構または異なる機構で固定できる。図6Aおよび6Bの例は、異なる固定機構を有する編組ワイヤ束616、622を示す。特定の編組ワイヤ束616は、各編組ワイヤ束616を互いにしっかりと圧着するワイヤクリップ620によって一緒に固定される。他の編組ワイヤ束622にはワイヤクリップがなく、そのような編組ワイヤ束を一緒に固定できる任意の技術によって一緒に固定することができる。一例では、各編組ワイヤ束の編組ワイヤを一緒に撚ったり、織り込んだりすることができる。別の例では、編組ワイヤ束は、熱処理によって一緒に固定され得る。さらに別の例では、編組ワイヤ束を結合材料で一緒に固定することができる。図6Aおよび6Bはまた、編組ワイヤ束616、622が分離し、編組ワイヤ608へと遠位方向に延び、編組ワイヤ608が一緒に編み込まれて高密度遠位キャップ604を形成する例も示している。一例では、遠位キャップ604は終端し、遠位ワイヤ取付部624に結合される。編組ワイヤ608の遠位ワイヤ取付部624および周囲の織りは、フローダイバーター装置600、650の中心軸680からオフセットされるか、または別の方法で回転して離れるように配置される。図6のフローダイバーター装置600の編組ワイヤ608の遠位ワイヤ取付部624および周囲の編み目は、近位ワイヤ取付部312に向かって上方向に回転する。この場合、高密度遠位キャップ604の高密度部分の中心は、フローダイバーター装置600の中心軸680に対して異なる向きに配置される。図6におけるフローダイバーター装置650の編組ワイヤ608の遠位ワイヤ取付部624および周囲の編み目は、近位ワイヤ取付部312から離れて下向きに回転する。この場合、高密度遠位キャップ604の高密度部分の中心は、フローダイバーター装置650の中心軸680に対して異なる向きに配置される。図6Aおよび図6Bに示すように、一次血管内に配置されたときにフローダイバーター装置の中心軸からオフセットして動脈瘤の口に高密度遠位キャップを配置することができる。図6Aおよび6Bのフローダイバーター装置は、近位ワイヤ取付部に向かう、および近位ワイヤ取付部から遠ざかるこの回転を示すが、これに限定されるものではなく、回転は、一次血管の中心軸に対する動脈瘤口の位置に適応するために任意の方向であり得る。
本開示の別の例では、フローダイバーター装置は、混合材料、言い換えれば、レーザーカット材料、ポリマー材料、ワイヤ材料、編組ワイヤ材料などの2つ以上の組み合わせから作成でき、当業者に知られている他の材料であって、ここで開示される装置において有利に使用することができるものを含む。一例では、編組ワイヤの高密度遠位キャップは、低密度部分またはステント部分の少なくとも一方がレーザーカット材料で作られた低密度部分およびステント部分に結合することができる。別の例では、編組ワイヤの高密度遠位キャップを、レーザーカット材料で作られたステント部分に結合された編組ワイヤの束の低密度部分に結合することができる。
【0027】
上で説明したように、一例では、高密度遠位キャップの空隙率の程度によって、長期間にわたって動脈瘤からの血流を首尾よく迂回させる役割を果たすことができる。高密度遠位キャップの空隙率が十分に低いため、高密度遠位キャップの動脈瘤側で血栓形成が促進される程度に血流が遮断されると、成長する血栓が動脈瘤の口の周囲及びフローダイバーター装置の構造全体にわたって広がることができる。このような血栓は、場合によっては生命を脅かす可能性のあるさらなる合併症を患者に引き起こす可能性がある。血流を二次血管にそらせながらも、高密度の遠位キャップおよび動脈瘤口全体にわたる線維化、内皮形成、または遅発性血栓形成を促進するために十分な血流を二次血管に流す空隙率が高いと、合併症を大幅に抑えたフローダイバーター装置の設置を成功させることができる。フローダイバーター装置に関して言えば、空隙率は高密度遠位キャップのワイヤ密度の逆数にすぎない。これは、フローダイバーター装置を設置した小孔の空隙率の逆数を指す場合、被覆率とも表現できる(すなわち、金属ワイヤの場合は金属被覆、ポリマーワイヤの場合はポリマー被覆など)。当業者は、本開示を理解すれば、そのような結果を達成するための高密度遠位キャップの適切な空隙率/密度を容易に確認することができる。しかしながら、一例では、高密度遠位キャップの密度は、約40%~約85%、または約50%~約70%であり得る。いくつかの例では、高密度遠位キャップの空隙率は、約15%~約55%、または約25%~約45%であり得る。さらに、いくつかの例では、高密度遠位キャップ内の編組ワイヤの密度は、中心から周縁まで変化し得る。例えば、密度は、編組ワイヤが遠位ワイヤ取付部に結合する高密度遠位キャップの中心で最も高く、低密度部分に隣接する周縁部では低くなり得る。一例では、これに限定されるものではないが、高密度遠位キャップの中心におけるより高い密度から、高密度遠位キャップの周縁部におけるより低い密度への変化は、均一な移行であり得る。別の例では、これに限定されるものではないが、高密度遠位キャップの中心のより高い密度から、高密度遠位キャップの周縁部のより低い密度への変化は、不均一な遷移であり得る。
高密度遠位キャップの密度は、装置で使用されるワイヤの数、直径、および/または織りパターンによって決定できる。したがって、ワイヤの数およびワイヤ束内のワイヤの数は、装置の設計および所望の特性に応じて変化し得る。例えば、フローダイバーター装置内のワイヤの数は、結果として得られる高密度遠位キャップの適切な密度が本明細書で概説するように機能できるという条件で、3、4、5、6、7、8などの倍数とすることができる。しかしながら、ある特定の場合において、ワイヤの数は6の倍数、例えば24本のワイヤ、36本のワイヤ、または48本のワイヤであるが、これらに限定されない。したがって、フローダイバーター装置は、それぞれ、4 本のワイヤの6束、または6本のワイヤの4束、6本のワイヤの6束、または 8本のワイヤの6束、または6本のワイヤの8束を有することになる。したがって、使用されるワイヤおよびワイヤ束の数を考慮して、本願で記載されているような均一または不均一な密度と、当業者に理解される所望の密度/空隙率を有する高密度遠位キャップに織り込むことができる任意の織りパターンを使用することができる。さらに、一例では、すべてのワイヤが同じ長さであってもよい。別の例では、ワイヤの少なくとも一部は異なる長さを有することができる。
【0028】
さらに、ワイヤ束を作成するために使用されるワイヤは、本開示によるフローダイバーター装置を形成することができる生理学的に適合性のある任意の形状記憶合金とすることができる。形状記憶合金の非限定的な例としては、Ag-Cd、Au-Cd、Co-Ni-Al、Co-Ni-Ga、Cu-Al-Be-X(XはZr、B、Cr、またはGdである)、Cu-Al-Ni、Cu-Al-Ni-Hf、Cu-Sn、Cu-Zn、Cu-Zn-X(XはSi、Al、またはSn)、Fe-Mn-Si、Fe-Pt、Mn- Cu、Ni-Fe-Ga、Ni-Ti、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Pd、Ni-Mn-Ga、Ti-Cr、または Ti-Nb、およびそれらの組み合わせを含む。別の例では、ワイヤは、DFT(drawn filled tubing)ワイヤを含むことができる。有用なワイヤ材料の任意の組み合わせが考えられるが、一例では、外側チューブはニッケル/チタン合金で作製することができ、内側コア材料は放射線不透過性材料が可能である。
【0029】
1つの特定の非限定的な例では、編組ワイヤを作成するために使用されるワイヤとして、ニッケルとチタンの金属合金(ニチノール(登録商標))を使用することができる。ニチノール合金は、合金中のニッケルの重量パーセントに従って名前が付けられる。たとえば、ニチノール50、ニチノール55、およびニチノール60 には、合金中のニッケルが重量パーセントでそれぞれ50%、55%、および60%含まれている。本開示によるフローダイバーター装置を作製するために使用できるワイヤ束には、ニチノールの任意の合金を使用することができる。さらに、ニチノールワイヤ(または任意の他の形状記憶合金ワイヤ)の直径は、一例では直径約0.008インチから約0.0005インチ、別の例では直径約0.005インチから約0.0009インチ、および直径0.002インチから約0.0015インチであるが、これに限定されない。
【0030】
ステント部分は、高密度遠位キャップを動脈瘤口の所定の位置に保持するのに十分な長手方向の強度/剛性と、高密度遠位キャップが内側の動脈瘤口に接触して保持する十分な半径方向の力とを有するものであれば、ワイヤ束の任意の織りパターンを有することができる。さらに、ワイヤ束が他のワイヤ束と交差する場合、一例では、それらをオーバー/アンダーパターンで織ることができる。他の例では、ワイヤ束は、2上1下などの他のパターンで織ることができる。さらに、一例では、ワイヤ束内のワイヤを互いにねじることができる。別の例では、ワイヤをほとんどまたはまったくねじることなく並べて配置できる。別の例では、ワイヤは、ステント部分に沿った特定の位置ではほとんどまたは全くねじることなく並べて配置され、他の部分では互いにねじれ合うことができる。同じねじりの例が、低密度部分と高密度遠位キャップに適用できる。
【0031】
ニチノールワイヤステントの場合、ワイヤ束は、フローダイバーター装置が動脈瘤口に展開されると所望の構成を達成するように、すなわち、フローダイバーター装置が完全に拡張した展開状態に戻るように熱処理することができる。さらに、このような熱処理により、フローダイバーター装置を、一次血管に対する動脈瘤口の特定のタイプまたは位置に適合する展開位置に配置することができる。
【0032】
遠位ワイヤ取付部および近位ワイヤ取付部は、編組ワイヤ束のワイヤに結合できる任意の有用な生理学的適合性材料から作製することができる。いくつかの例では、遠位ワイヤ取付部および/または近位ワイヤ取付部は、使用時のフローダイバーター装置の視覚化を高めるために、放射線不透過性材料で作製することができる。さらに、フローダイバーター装置のフローダイバーター部分の視覚化を高めるために、編組ワイヤ束の一部を一緒に圧着するワイヤクリップをさらに放射線不透過性材料で作ることができる。
近位ワイヤ取付部、遠位ワイヤ取付部、および/またはワイヤクリップに使用される放射線不透過性材料は、本開示によるワイヤまたはワイヤ束に結合できる任意の生理学的適合性材料であり得る。放射線不透過性材料の非限定的な例としては、タンタル、タングステン、ビスマス、金、チタン、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、スズ、およびそれらの混合物、ブレンド、複合物、および合金が挙げられる。別の例では、近位ワイヤ取付部、遠位ワイヤ取付部、および/またはワイヤクリップは、非放射線不透過性材料で作ることができる。このような場合、配置中の視覚化を可能にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカーをフローダイバーター装置に結合することができる。
さらに別の例では、近位ワイヤ取付部は、フローダイバーター装置用の回収装置としてさらに利用することができる。ワイヤ束のワイヤが近位ワイヤ取付部に結合されると、近位ワイヤ取付部を送達カテーテルに向かって引き戻すことによって、ワイヤ束を送達カテーテル内に折り返すことができ、フローダイバーター装置を回収または部分的に回収することができる。例えば、フローダイバーター装置は、動脈瘤口に再配置するために回収または部分的に回収することができる。
【0033】
別の例では、本開示は、図7Aに示されるように、フローダイバーター装置を送達するためのシステムを提供する。このようなシステムは、送達カテーテル702、未展開のフローダイバーター装置704、および送達装置706を含むことができる。図7Bに示されるように、フローダイバーター装置704が送達カテーテル702から出ると、フローダイバーター装置は、展開されたフローダイバーター装置708として展開される。展開に続いて、展開されたフローダイバーター装置708は、送達装置706(図示せず)によって放される。フローダイバーター装置のリリースは、生理学的に適合する方法での送達、展開、およびリリースを可能にする任意のリリース機構によって行うことができる。1つの特定の例において、リリースは、電解的手段によって達成され得る。フローダイバーター装置が展開されて所定の位置に配置されると、取付機構の電気分解が電気的に引き起こされ、フローダイバーター装置と送達装置との間の電解結合が破壊される。
【0034】
図8Aおよび8Bは、送達カテーテル820による、分岐血管806の動脈瘤804における未展開のフローダイバーター装置704の配置および送達を示す。図8Aに示すように、送達カテーテル820は血管814の内腔を通過し、送達カテーテル820の遠位端810は動脈瘤口812またはその近くに配置される。図8Bに示されるように、フローダイバーター装置704は、送達カテーテル820を出て、展開されたフローダイバーター装置708として展開される。フローダイバーター装置の送達カテーテルからの出口は、分流器を近位方向に移動させること、フローダイバーター装置を遠位側に押すこと、またはその両方を含むことができることに留意されたい。所定の位置に配置されると、送達カテーテル820は、展開されたフローダイバーター装置708を放すことができる。
【0035】
フローダイバーター装置のリリースは、生理学的に適合する方法での送達、展開、およびリリースを可能にする任意のリリース機構によって行うことができる。1つの特定の例において、リリースは、電解的手段によって達成され得る。フローダイバーター装置が展開されて所定の位置に配置されると、取り付け機構の電気分解が電気的に引き起こされ、フローダイバーター装置と送達装置との間の電解結合が破壊される。
図9Aは、フローダイバーター装置900のリリース連結の例を示す。フローダイバーター装置900は、それに結合された近位ワイヤ取付部902およびプッシャ906を含む。クレードル結合904は、近位ワイヤ取付部902をプッシャ906に連結する。図9Bは、連結スペーサ910によって近位ワイヤ取付部902に結合されたボールカプラ908を示す。図9Bはさらに、プッシャ906の遠位端に結合されたボールクレードル912を示す。したがって、ボールカプラ908はボールクレードル912内に配置されてクレードル結合904を形成する。
【0036】
図10Aは上面図を示し、図10Bは、図10Aの視点から見た等角図を示す。ボールカプラ908は、ボールクレードル912と係合して、クレードル連結904を形成する。したがって、ボールカプラ908は、プッシャ906の中心軸に沿った方向の移動に対して固定される。ボールカプラ908は、プッシャ906の中心軸から離れる方向へのボールクレードル912の開放部分を通る移動を通して、ボールクレードル912からリリースされる。
【0037】
図11A、11B、および11Cは、プッシャ906からの近位ワイヤ取付部902のリリースを示す一連の図を提供する。図11Aは、ボールクレードル912の遠位部分によってプッシャ906の中心軸に沿った移動に対して固定されたボールクレードル912内のボールカプラ908を示す。ボールカプラ908は、ボールカプラー908の上に配置されたシース1102によってボールクレードル912からリリースされるのをさらに防止される。
【0038】
図11Bは、シース1102がボールカプラ908およびボールクレードル912から引き抜かれ、ボールカプラ908がリリースされボールクレードル912の開口部を通って移動することを示し、これにより、図11に図示のように、プッシャ906からの近位ワイヤ取付部902のリリースに影響を与える。シース1102がボールクレードル912からボールカプラ908がリリースされるのを阻止する位置にある間、近位ワイヤ取付部902および関連するフローダイバーター装置900はプッシャによって送達カテーテル内に引き戻されることができることに留意されたい。
【実施例
【0039】
本開示は、一例において、非展開構成および展開構成を有する線形装置本体を含むフローダイバーター装置が提供され、線形装置本体は、非展開構成で血管内を移動するのに十分な可撓性を有する。展開構成にあるとき、線形装置本体は、血管分岐部の動脈瘤の口に隣接して、またはわずかに内に配置されるように構造的に構成された外側凸形状を有する高密度の遠位キャップであって、これにより、高密度遠位キャップは血流が動脈瘤へ流入するのをそらし、代わりに血管分岐部に血流の方向を変更する、高密度遠位キャップと、高密度遠位キャップに隣接する低密度部分であって、血管分岐部を通る血流を可能にするように構造的に構成された低密度部分と、血管分岐部に隣接するステント部分であって、血管分岐部の内腔内で線形装置本体を安定させるように構造的に構成されている、ステント部分とを有し、高密度遠位キャップは、ステント部分と比較して編組ワイヤの密度が高く、低密度部分は、ステント部分と比較して編組ワイヤの密度が低い。線形装置本体は、ステント部分に隣接する近位ワイヤ取付部をさらに含むことができ、高密度遠位キャップ、低密度部分、およびステント部分は、近位端で近位ワイヤ取付部に末端結合された編組ワイヤで実質的に構成される。
【0040】
別の例では、フローダイバーター装置は、編組ワイヤの遠位端に結合された遠位ワイヤ取付部を含むことができる。
【0041】
別の例では、遠位ワイヤ取付部は、未展開の構成にあるとき、線形装置本体の中心軸に沿って整列される。
【0042】
別の例では、遠位ワイヤ取付部は、高密度遠位キャップの内側領域から高密度遠位キャップの外側領域へのワイヤの通過を可能にするように構成された開口部を有する。
【0043】
別の例では、遠位ワイヤ取付部は、放射線不透過性の遠位線形装置本体マーカーである。
【0044】
別の例では、近位ワイヤ取付部は、放射線不透過性の近位線形装置本体マーカーである。
【0045】
別の例では、近位ワイヤ取付部は、展開構成にあるときに線形装置本体の中心軸の側方に配置され、ステント部分からの編組ワイヤが近位ワイヤ取付部に収束する。
【0046】
別の例では、フローダイバーター装置は、編組ワイヤの束を一緒に圧着して密度の低い編組ワイヤを作る複数のワイヤクリップを含むことができる。
【0047】
別の例では、ワイヤクリップは放射線不透過性のワイヤクリップマーカーである。
【0048】
別の例では、編組ワイヤは形状記憶編組ワイヤである。
【0049】
別の例では、形状記憶編組ワイヤはニッケルチタン合金である。
【0050】
別の例では、編組ワイヤは、DFT(drawn filled tubing)ワイヤである。
【0051】
別の例では、編組ワイヤは、それぞれが近位ワイヤ取付部から遠位ワイヤ取付部まで延びる複数の編組ワイヤセグメントを備える。
【0052】
別の例では、複数の編組ワイヤセグメントのそれぞれは、同じ長さのワイヤを含む。
【0053】
別の例では、遠位ワイヤ取付部は、展開構成にあるとき、線形装置本体の中心軸に沿って整列される。
【0054】
別の例では、遠位ワイヤ取付部は、展開構成にあるとき、線形装置本体の中心軸からオフセットされる。
【0055】
本開示は、一例において、血管分岐部を通る血流を動脈瘤から迂回させるための方法を提供する。このような例には、フローダイバーター装置を含む送達カテーテルを血管分岐部の動脈瘤に配置する工程と、フローダイバーター装置の高密度遠位キャップは、動脈瘤に入る血流をそらすために動脈瘤口に配置されるように、フローダイバーター装置から送達カテーテルを取り外してフローダイバーター装置を非展開構成から展開構成に移行させる工程とが含まれる。
【0056】
別の例では、フローダイバーター装置は、非展開構成から展開構成への移行中、非展開構成から展開構成への移行後、または、フローダイバーター装置をカテーテル内に少なくとも部分的に後退させた後のいずれかで、高密度遠位キャップを動脈瘤口と位置合わせするために再配置される。
【0057】
本開示は、一例において、血管分岐部から動脈瘤に入る血流をそらせるための送達システムを提供し、この送達システムは、その中にフローダイバーター装置を含む送達カテーテルを備え、送達システムは、血管系を通って動脈瘤を有する血管分岐部に移動するように構成され、送達装置の内腔内に位置決めされたフローダイバーター装置にリリース可能に結合された送達装置であって、送達装置がフローダイバーター装置から近位方向に取り外されるときにフローダイバーター装置の位置を維持するように構成される送達装置とを含む。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
【国際調査報告】