(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体光電子素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/32 20060101AFI20240228BHJP
H01L 33/04 20100101ALI20240228BHJP
【FI】
H01S5/32
H01L33/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553981
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022055527
(87)【国際公開番号】W WO2022184886
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336491
【氏名又は名称】3エスペ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マウロ ベッティアーティ
【テーマコード(参考)】
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AF25
5F173AF30
5F173AH03
5F173AP02
5F173AP04
5F173AP05
5F173AR23
5F173AR93
5F241AA03
5F241AA43
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA35
5F241CA63
5F241CA65
5F241CA66
(57)【要約】
本発明は、半導体光電子素子(10)であって、Nドープ領域、中間領域及びPドープ領域を画定する層の積層からなり、Nドープ領域及び/又はPドープ領域及び/又は中間領域の少なくとも1つのいわゆる調節層が、副層の複数の積層で形成されていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の材料の特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収を、参照素子と呼ばれる参照半導体光電子素子と比較して減少させるように選択されていて、その唯一の相違点が、それぞれの調節層が、別個の特徴を除いては同一の特徴を有する同じ厚さの非調節層によって置換されていることである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光電子素子(10)であって、光を発するか、又は吸収するのに適した接合(12)を備え、接合(12)が、積層の方向(Z)に沿った、Nドープ領域、中間領域(I)及びPドープ領域を画定する層の積層で形成されていて、
Nドープ領域及び/又はPドープ領域及び/又は中間領域(I)の少なくとも1つの調節層と呼ばれる層が、積層の方向(Z)に沿って互いに重なった副層の複数の積層で形成されていて、
副層のそれぞれの積層が少なくとも2つの副層を含み、それぞれの副層が、積層の方向(Z)に沿ってある厚さを有していて、かつ少なくとも1つの材料で作られていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、
調節層のそれぞれの積層が、先述の重なった積層と同一であるか、又は2つの積層の2つの対応する副層の少なくとも1つの材料の組成において最大で有界変動分だけ先述の重なった積層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性を変更することによって、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収を、参照半導体光電子素子と呼ばれる素子と比較して減少させるように選択されていて、その唯一の相違点が、それぞれの調節層が非調節層によって置換されていることであり、非調節層が調節層と同じ厚さを有していて、かつ非調節層の厚さにわたって均一であるか、又は徐々に変化する少なくとも1つの別個の特徴を除いては同一の特徴を有している、半導体光電子素子(10)。
【請求項2】
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、接合(12)がPIN接合であり、中間領域(I)が真性領域である、請求項1に記載の素子(10)。
【請求項3】
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれがコア及びクラッドを含み、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも大きく、調節層が対応するドープ領域のコア又はクラッドの層であり、有利には、対象のドープ領域のコア及びクラッドのそれぞれが調節層を含む、請求項1又は2に記載の素子(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料のドープのレベルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項5】
それぞれの副層のドープのレベルが、同じ積層の他の副層のドープのレベルと少なくとも1パーセント異なる、請求項4に記載の素子(10)。
【請求項6】
調節層のドープの平均レベルが、対応する非調節層のドープのレベル以下である、請求項4又は5に記載の素子(10)。
【請求項7】
それぞれの積層の副層のうち1つのドープのレベルが、その1つの副層を作る少なくとも1つの材料のドープの残留物レベルである、請求項4~6のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項8】
積層の別の副層のドープのレベルよりも大きいドープのレベルを有する積層のそれぞれの副層が、その別の副層の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項4~7のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料の組成である、請求項1~8のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項10】
それぞれの副層の少なくとも1つの材料が、周期表の第III族及びV族又はII族及びVI属又はIV族に属する化学元素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項11】
副層のそれぞれの積層の厚さが、1ナノメートル~100ナノメートル、好ましくは5ナノメートル以上、有利には10ナノメートル以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項12】
副層のそれぞれの積層の厚さが、参照光電子素子と比較して、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収が減少するように選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項13】
伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、光電子素子(10)中を循環する光子の異なる分極の間で異なるように、フリーキャリアによる光子の吸収の発端におけるスプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配するために適していて、特にバンド内遷移の振動子強度のほとんどをレーザー発光の分極に対して直行する分極に移行する、請求項1~12のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項14】
伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、伝導帯及び価電子帯に離散的なサブバンドを生成する略二次元の調節層の形成によって起こる、請求項1~13のいずれか1項に記載の素子(10)。
【請求項15】
それぞれの積層のそれぞれの副層が、窒化ガリウムを含有しない、請求項1~14のいずれか1項に記載の素子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザー等の半導体光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力半導体レーザーは、遠距離通信等の多くの用途において使用されている。
【0003】
半導体レーザーの出力は、1990年代から徐々に増加してきた。本文脈において、用語「出力」は、レーザーの信頼性出力、すなわちレーザーの使用寿命(通常は10~15年間)にわたってレーザーが提供することができる出力を意味する。したがって、このような信頼性出力は、一般には最大出力とは異なる。現在、このようなレーザーは、シングルモードにおいて、1ワット超の出力を有し、一方で1990年代は150mWであった。
【0004】
異なる用途の要求にこたえるために、さらにより出力の高い半導体レーザーを開発することに関心が集まっている。
【0005】
このようなレーザーの出力を上昇させることは、レーザーキャビティにおける内部損失を減少させることを含む。実際には、投入電流のユニット当たりの出力として定義されるレーザーの効率は、2つのパラメータ、すなわち活性領域へのキャリアの投入及び内部損失、に依存する。活性領域に投入されるキャリアに関連するパラメータは既に最適化されているため、効率の増加は、レーザーキャビティにおける内部損失を減少させる能力に依存する。
【0006】
全体的な難点は、高い効率を維持するために内部損失を減少させ、それによってレーザーのためにより長いキャビティを使用することである。実際には、キャビティがより長いとき、投入されたものはキャビティの長さにわたって分配されるため、レーザーはより小さい電流密度で動作する。より大きいキャビティは熱抵抗の減少をもたらすため、活性領域の温度もまた、より低くなる。さらに、レーザーの変換効率、すなわち生成された光学出力と投入された電気出力との比もまた改善される。
【0007】
したがって、レーザーキャビティの長さは、1990年から、増加し続けていて、1990年代の1.2~1.5ミリメートルから現在では4~5ミリメートルに増加している。
【0008】
内部損失は、半導体層のドープのレベルに依存するため、損失を減少させるための技術は、ドープのレベルを低下させて、光場を可能な限り最低の吸収の、よって最低の損失の領域にすることである。しかしながら、このような技術は、材料のドープの残留レベルを超えては材料のドープのレベルを低下させることができないために、制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、半導体光電子デバイス、例えば半導体レーザーにおける内部損失を減少させて、そのようなデバイスの効率及び信頼性を向上させ続けるための代替策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本明細書の主題は、半導体光電子素子であって、光を発するか、又は吸収するのに適した接合を備え、接合が、積層の方向に沿った、Nドープ領域、中間領域及びPドープ領域を画定する層の積層で形成されていて、
Nドープ領域及び/又はPドープ領域及び/又は中間領域の少なくとも1つのいわゆる調節層が、積層の方向に沿って互いに重なった副層の複数の積層で形成されていて、
副層のそれぞれの積層が少なくとも2つの副層を含み、それぞれの副層が、積層の方向に沿って厚さを有していて、かつ少なくとも1つの材料で作られていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、
調節層のそれぞれの積層が、先述の重なった積層と同一であるか、又は2つの積層の2つの対応する副層の少なくとも1つの材料の組成において最大で有界変動分だけ先述の重なった積層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性を変更することによって、対応する領域におけるフリーキャリア(正孔、電子)による光子の吸収を、いわゆる参照半導体光電子素子と比較して減少させるように選択されていて、唯一の相違点が、それぞれの調節層が非調節層によって置換されていることであり、非調節層が調節層と同じ厚さを有していて、かつ非調節層の厚さにわたって均一であるか、又は徐々に変化する少なくとも1つの別個の特徴を除いては同一の特徴を有している、
半導体光電子素子である。
【0011】
特定の実施態様によれば、素子は、個別に、又は全ての技術的に可能な組み合わせで、以下の特徴のうち1つ又は複数を含む。
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、接合がPIN接合であり、中間領域が真性領域である。
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれがコア及びクラッドを含み、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも大きく、調節層が対応するドープ領域のコア又はクラッドの層であり、有利には、対象のドープ領域のコア及びクラッドのそれぞれが調節層を含む。
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料のドープのレベルである。
それぞれの副層のドープのレベルが、同じ積層の他の副層のドープのレベルと少なくとも1パーセント異なる。
調節層のドープの平均レベルが、対応する非調節層のドープのレベル以下である。
それぞれの積層の副層のうち1つのドープのレベルが、副層を作る少なくとも1つの材料のドープの残留物レベルである。
積層のそれぞれの副層は、先述の他の副層の厚さよりも小さい厚さを有する積層の別の副層のドープのレベルよりも大きいドープのレベルを有する。
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料の組成である。
それぞれの副層の少なくとも1つの材料が、周期表の第III族及びV族又はII族及びVI属又はIV族に属する化学元素を含有する。
副層のそれぞれの積層の厚さが、1ナノメートル~100ナノメートル、好ましくは5ナノメートル以上、有利には10ナノメートル以上である。
副層のそれぞれの積層の厚さが、参照電子素子と比較して、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収が減少するように選択される。
伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、光電子素子中を循環する光子の異なる分極の間で異なるように、フリーキャリアによる光子吸収の原因におけるスプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配するために適していて、特にバンド内遷移の振動子力のほとんどをレーザー発光の分極に対して直行する分極に移行する。
伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、伝導帯及び価電子帯に離散的なサブバンドを生成する略二次元の調節層の製造によって起こる。
それぞれの積層のそれぞれの副層が、窒化ガリウムを含有しない。
【0012】
さらに、本発明は、半導体光電子素子であって、光を発するか、又は吸収するのに適したPIN接合を備え、PIN接合が、積層の方向に沿った、Nドープ領域、真性領域及びPドープ領域を画定する層の積層で形成されていて、
Nドープ領域及びPドープ領域のうち1つの少なくとも1つの層(調節層としても知られる)が、積層の方向に沿って互いに重なった、副層の複数の積層で形成されていて、
副層のそれぞれの積層が少なくとも2副層を含み、それぞれの副層が、積層の方向に沿って厚さを有していて、かつ少なくとも1つの材料で作られていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、
調節層のそれぞれの積層が、先述の重なった積層と同一であるか、又は2つの積層の2つの対応する副層の少なくとも1つの材料の組成において最大で有界変動分だけ先述の重なった積層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、対応するドープ領域における講師の吸収を、いわゆる参照半導体光電子素子と比較して減少させるように選択されていて、唯一の相違点が、それぞれの調節層が非調節層によって置換されていることであり、非調節層が調節層と同じ厚さを有していて、かつ非調節層の厚さにわたって均一であるか、又は徐々に変化する少なくとも1つの別個の特徴を除いては同一の特徴を有している、
半導体光電子素子に関する。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、例としてのみ与えられている、添付の図面を参照してされる以下の本発明の実施態様の説明を読むことで明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施態様の第一の例による半導体レーザーの例の模式的な断面図である。
【
図2】実施態様の第二の例による半導体レーザーの例の模式的な断面図である。
【
図3】実施態様の第三の例による半導体レーザーの例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における縦方向を以下で規定する。積層の方向及び横方向も規定される。積層の方向は、縦方向に対して垂直であり、縦方向に対して横方向の平面に包含される。積層の方向は、光の伝播の縦方向とも呼ばれる方向に対して垂直である。横方向は、縦方向及び積層の方向に対して垂直である。
図1~3において、縦方向、積層の方向及び横方向は、それぞれ軸Y、軸Z及び軸Xの記号で表されている。
【0016】
以下で、光を発するか、又は吸収するのに適したPIN接合12を備える半導体レーザー10を検討する。好ましくは、レーザーは高出力レーザーであり、すなわち500ミリワット(mW)超の出力を有するレーザービームを発するか、又は吸収するのに適したレーザーである。好ましくは、レーザーキャビティは、3ミリメートル(mm)かつ10mm未満の長さを有する。
【0017】
このようなレーザーは、例えば遠距離通信の分野において、例えばエルビウムドープ繊維増幅器において使用するために適している。例として、レーザーは、980nmで放射するGaAs(ヒ化ガリウム)レーザーである。
【0018】
PIN接合12は、積層の方向Zに沿った積層からなる。
【0019】
積層のそれぞれの層は平らな層であり、すなわち層は2つの平らかつ平行な面の間に延在している。
【0020】
さらに、それぞれの層は、積層の方向Zに沿って厚さを有する。層の厚さは、積層の方向Zに沿った層の2つの面の間の距離として規定される。
【0021】
積層の層は、Nドープ領域、真性領域及びPドープ領域を画定する。用語「Nドープ領域」は、余剰電子をもたらすように不純物が導入された領域を意味する。用語「真性領域」は、不純物が意図的には添加されていない領域を意味し、真性領域はPIN接合12の活性領域である。真性領域Iは、電子と正孔との再結合によって光が生成される領域である。用語「Pドープ領域」は、余剰の正孔をもたらすように不純物が添加された領域を意味する。
【0022】
Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれはコア及びクラッドを備え、コアの屈折率はクラッドの屈折率より大きく、導波路の形成をもたらす。それぞれのドープ領域のコア及びそれぞれのドープ領域のクラッドは、積層の別個の層の1つ又は複数に対応する。
【0023】
図1~3は、PIN接合12を形成する層の積層を示す例である。これらの例において、積層を形成する層は、積層の方向Zに沿って基材14に載せられている。これらの図において、Nドープ領域はZ
Nで表されていて、真性領域はZ
Iで表されていて、Pドープ領域はZ
Pで表されている。Nドープ領域のコアはC
Nによって表されていて、Pドープ領域のコアはC
Pで表されていて、Nドープ領域のクラッドはG
Nで表されていて、Pドープ領域のクラッドはG
Pで表されている。
【0024】
例えば、レーザー10がGaAsレーザーであるとき、基材14はGaAsで作られている。
【0025】
調節層(modulated layer)と呼ばれる、Nドープ領域及びPドープ領域のうちの1つのうちの少なくとも1つの層は、積層の方向Zに沿った複数の副層の積層からなる。言い換えれば、少なくとも1つの調節層は、Nドープ領域及びPドープ領域の層のうちの1つである。
【0026】
それぞれの副層の積層は、積層の方向Zに沿って重ねられた少なくとも2つの副層を備える。それぞれの副層の積層は、副層の積層の数と同じ回数だけ繰り返されたパターンとみなすことができる。
【0027】
調節層は、対象のドープ領域のコア又はクラッドの層である。有利には、対象のドープ領域は、コアに属する少なくとも1つの調節層及びクラッドに属する1つの調節層を含む。
【0028】
図1は、Nドープ領域のみが調節層、すなわちPドープ領域のコアを形成する調節層及びクラッドを形成する調節層を含む例を示している。
図2は、Pドープ領域のみが調節層、すなわちPドープ領域のコアを形成する調節層及びクラッドを形成する調節層を含む例を示している。
図3は、Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれが調節層(調節層はPドープ領域及びNドープ領域のコアとクラッドとの間にある)を含む例を示している。
【0029】
副層の積層は、全ての副層の積層の厚さ(積層を形成する副層の厚さの合計)が調節層の厚さに等しくなるように、積層の方向Zに沿って互いに対して重なっている。
【0030】
好ましくは、調節層を形成する副層の積層の数は10以上である。したがって、典型的には、副層のそれぞれの積層の厚さが1ナノメートル~100ナノメートルであるとき、典型的には、調節層の合計の厚さは10nm~10μmである。
【0031】
それぞれの副層は平らな副層であり、すなわち副層は2つの平らかつ平行な面の間に延在している。
【0032】
それぞれの副層は、積層の方向Zに沿って厚さを有する。下層の厚さは、積層の軸Zに沿った下層の2つの面の間の距離として画定される。それぞれの副層の厚さは、対応する調節層の厚さよりも厳密に小さい。好ましくは、それぞれの副層の厚さは、1ナノメートル(nm)より大きく100nmより小さい。
【0033】
好ましくは、それぞれの副層の積層の厚さは、1ナノメートル~100ナノメートルである。
【0034】
それぞれの副層は、少なくとも1つの材料で作られる。
【0035】
有利には、それぞれの副層の少なくとも1つの材料は、複数の化学元素からなる。化学元素は、メンデレーエフ周期表の元素である。好ましくは、元素は、周期表の第III族及びV族又はII族及びVI属又はIV族に属する。例えば、材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)又はリン化インジウム(InP)又はそれらの合金InGaAsP若しくはInGaAlAsである。
【0036】
1つの実施態様において、それぞれの副層は1つの材料で作られる。1つの変形において、少なくとも1つの副層は複数の材料で作られ、材料は、同じ化学元素で形成されるが、化学元素の組成(割合)は異なる。
【0037】
それぞれの副層は、特有の特徴といわれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって、同じ積層の他の副層とは異なる。
【0038】
好ましくは、特有の特徴は、それぞれの副層の材料のドープのレベル及び副層の材料の組成のうちの少なくとも1つである。ドープのレベルは、1立方センチメートルの結晶格子中の不純物ドープの」数として規定される。ドープのレベルは、体積で表される。組成は、材料を形成する化学元素の割合として規定される。
【0039】
そうでなければ、このような実施態様において、同じスタックの2つの別個の副層の2つの材料ついて、3つの場合:
2つの材料が同じ組成を有するが、異なるドープのレベルを有する、
2つの材料が同じドープのレベルを有するが、異なる組成を有する、
2つの材料が異なるドープのレベル及び異なる組成を有する、
があり得る。
【0040】
1つの実施態様において、調節層を形成する積層は同一である。したがって、調節層のそれぞれの積層は、先に重ねられた積層と同一である。先の積層は、対象の積層が重ねられる積層である。
【0041】
実施態様の1つの変形において、少なくとも1つの積層は、他の積層とは異なる。
【0042】
この変形において、好ましくは、それぞれの積層のそれぞれの副層の少なくとも1つの材料の組成は、先に重ねられた積層の対応する副層の少なくとも1つの材料の組成と比較して、最大で有界変動分だけ先に重ねられた積層とは異なる(2つの積層の対応する副層の前記又は少なくとも1つの材料は異なる組成を有する)。言い換えれば、1つの積層から1つの別の積層にかけて、副層の数、副層の厚さ、副層材料の化学元素、及びドープのレベルは同じである。しかしながら、積層の副層の材料の組成は、先の積層の対応する副層の組成と比較して、(有界変動内の所与の値だけ)増加しているか、又は減少しているかのいずれかである。
【0043】
用語「最大で」は、組成の変動が唯一の違いであり、対象の積層が同一である場合には、その変動は0であってもよいことを意味する。
【0044】
用語「対応する副層」は、対象の積層の副層と同じ位置を他の積層中で有する他の積層の副層をいう。したがって、例えば、第一の積層のベースに最も近い第一の積層の副層は、第二の積層のベースに最も近い第二の積層の副層と比較され、他の副層についても同様である。
【0045】
用語「有界変動(bounded variation)」は、対象の2つの積層の2つの副層の材料の組成が、所定の範囲の値内の割合だけ互いに異なることを意味する。例えば、組成の変動は0~2パーセントである。
【0046】
このような変形において、好ましくは、変動は調節層の厚さにわたって緩やかになっており、すなわち調節層の厚さにわたって全体の組成の増加又は減少をもたらす。
【0047】
例えば、このような変形の例示として、調節層は、3つの重なった積層であって、それぞれが2つの副層で形成された3つの重なった積層を含む。別個の特徴は、副層の材料の組成である。第一の積層及び第二の積層は同一であり、
第一、10nm厚さ、5×1016cm-3の(Si原子)ドープレベルを有するAl0.28Ga0.72Asの副層と、
第二、20nm厚さ、5×1016cm-3の(Si原子)ドープレベルを有するAl0.32Ga0.68Asの副層と
を含む。
【0048】
第三の積層は、
第一、10nm厚さ、5×1016cm-3の(Si原子)ドープレベルを有するAl0.29Ga0.71Asの副層と、
第二、20nm厚さ、5×1016cm-3の(Si原子)ドープレベルを有するAl0.33Ga0.67Asの副層と
を含む。
【0049】
したがって、この例の第三の積層は、第一及び第二の積層の対応する積層と比較した副層の材料の組成において、(0.01)の変動量を有する。
【0050】
副層の厚さ及び別個の特徴は、参照半導体レーザーと呼ばれるものに対する対応するドープ領域における光子の吸収を減少させるように選択される。このような光子の吸収は、ドープ領域のフリーキャリア(正孔又は電子)による活性領域からの光子の吸収に起因するスプリアスな現象である。このような現象は、「フリーキャリア吸収」とも呼ばれる。
【0051】
参照レーザーは、それぞれの調節層が非調節層によって置換されている点においてのみ、対象のレーザーとは異なる。非調節層は、対応する調節層と同じ厚さを有していて、別個の特徴以外は同一である特徴を有していて、その特徴は(使用される技術の制限内で)均一であるか、又は非調節層の厚さにわたって徐々に変化する。
【0052】
用語「均一な」は、別個の特徴の値が、非調節層の厚さにわたって同じであることを意味する。したがって、別個の特徴が副層の材料のドープのレベルであるとき、非調節層の材料のドープのレベルは、非調節層の厚さにわたって同じレベルを有する。別個の特徴が副層材料の組成であるとき、非調節層の材料の組成は、非調節層の厚さにわたって同じである。
【0053】
用語「徐々に変化」は、別個の特徴の値が、非調節層の厚さにわたって次第に増加するか、又は減少することを意味する。
【0054】
1つの例において、対象のドープ領域における光子の吸収は、キャビティ長さ自体の関数として、異なる長さのレーザーの外部効率の回帰を行うことによって定量化される。このような回帰は、例えばColdren,Lらの「Diode Lasers and Photonic Integrated Circuits」という題目の文献(1995)の第2章に記載されている。
【0055】
好ましくは、対象の領域における光子吸収は、参照レーザーと比較して少なくとも0.1cm-1減少している。
【0056】
好ましくは、PIN接合12は、もっぱら基材14からエピタキシーによって得られる。エピタキシーは、結晶を別の結晶上で成長させるための技術として理解され、それぞれの決勝は、その他の結晶と共通の対称要素の数を有する結晶格子を含む。使用されるエピタキシー技術は、例えば分子ビームエピタキシー、液相エピタキシー及び有機金属気相エピタキシーである。
【0057】
したがって、均一な層又は徐々に変化する層の代わりに、特定の副層を交互に繰り返すことからなる調節層の製造は、ドープ領域のフリーキャリアによる光子の吸収を変更し、それによって内部損失を減少させることができる。言い換えれば、調節層の構造は、調節層がNドープ領域に属するときに伝導帯の電気的-光学的特性を調節することを可能とし、調節層がPドープ領域に属するときに価電子帯における電気的-光学的特性を調節することを可能とする。このような変更は、対象のドープ領域のフリーキャリアによる光子の吸収を抑制するのに貢献する因子の1つである。
【0058】
以降では、別個の特徴が副層の材料のドープのレベルである場合の調節層の構造の有利な特徴を説明する。典型的には、超格子(SR)は、N層についてはn-i-n-i型であり、P層についてはp-i-p-i型である。
【0059】
好ましくは、それぞれの副層のドープのレベルは、同じ積層の他の副層のドープのレベルとは少なくとも1パーセント異なる。
【0060】
好ましくは、(その厚さを考慮した副層のドープのレベルから得られた)調節層のドープのレベルの平均は、(参照レーザーの)対応する非調節層のドープのレベル以下である。したがって、副層の繰り返しの積層の構造は、その厚さにわたって同じドープのレベルを有する層に対するドープの平均レベルを減少させることを可能とする。
【0061】
好ましくは、それぞれの積層の副層の1つのドープのレベルは、副層を作る材料のドープの残留物レベルである。ドープの残留物レベルは、不純物が材料に意図的には添加されなかった場合に得られるドープのレベルである。したがって、それぞれの積層が2つの層のみを含む場合、調節層は、調節層の厚さにわたって繰り返された互層、ドープされた副層及び固有のドープ副層からなる。
【0062】
好ましくは、積層のそれぞれの副層であって、同じ積層の別の副層のドープのレベルよりも高いドープのレベルを有するそれぞれの副層は、その別の副層の厚さよりも小さい厚さを有する。
【0063】
以降では、実験的な実施態様から得られた特定の例を説明する。
【0064】
このような例において、980nmGaAsレーザー構造は、2つの変形に従って製造した。
参照レーザーを形成する標準レーザー構造。構造を、M.Bettiatiらの「Reaching 1 watt reliable output power on single-mode 980nm pump lasers」という題目の、Proc. SPIE 7198,High-Power Diode Laser Technology and Applications VII,71981D(23 2月 2009)という文献において説明される構造の原理に基づいて製造した。この文献において、Nドープ領域は、
5×1016cm-3で一定の(Si原子)ドープのレベル及びAlGaAs材料のマトリックスを有する3μm厚さのクラッドを形成する第一の非調節層と、
5×1016cm-3で一定の(Si原子)ドープのレベル及びAlGaAs材料のマトリックスを有する900nm厚さのコアを形成する第二の非調節層と
を含む。
相当するレーザー構造であって、それぞれ第一及び第二の非調節層が、それぞれ同じ厚さの第一及び第二の調節層であって、複数の同一の重なった副層の積層で形成された第一及び第二の調節層によって置換されたという違いを有するレーザー構造。それぞれの副層の積層は、2つの副層を有する。それぞれの積層の第一の副層は、10nmの厚さ及び6×1016cm-3で一定の(Si原子)ドープのレベルを有し、それぞれの積層の第二の層は、20nmの厚さ及び2.5×1016cm-3で一定の(Si原子)ドープのレベル(材料中の残留物ドープレベル)を有する。したがって、第一の調節層(クラッド)は100の積層(積層ごとに3μm厚さ及び30nm厚さ)からなり、第二の調節層(コア)は30の積層からなる。
【0065】
したがって、このような手法は、Nドープ領域におけるドープ(デジタルドープとも呼ばれる)のレベルにおける周期性を有する交互の副層の原理を組み込んだ構造を、標準構造であって、その構造の性能が公知である標準構造と比較することを可能とする。この手法において、比較は、パワーレーザーのキーパラメータ、効率と呼ばれ、構成要素のレーザー発光効率を定量化するパラメータに基づいて行った。ときには、それはSE(スロープ効率)と言われ、ワット毎アンペア(W/A)で測定される。このパラメータの技術的な表現は、例えばColdren,Lらの「Diode Lasers and Photonic Integrated circuits」(1995)という文献のChap.(2において規定されている。
【数1】
式中、
η
iは内部量子効率であり、活性領域に注入されるキャリアの割合として規定され、
hはプランク定数であり、
vはレーザー発光の頻度であり、
eは電子の電荷であり、
α
iは内部損失であり、かつ
α
mはミラー損失(同じ反射率Rを有する多面レーザーについてα
m=(1/L)ln(1/R)であり、Lはレーザーの長さである)である。
【0066】
表現SEは、内部損失αiを明確に示す。したがって、内部損失αiの減少は、効率SEの増加をもたらす。
【0067】
3.9mmのキャビティ長さを有するレーザーについて、短いパルス注入条件(<1μs)で測定した場合に得られる効率は、標準構造で0.460W/Aであり、変更構造(副層)で0.494W/Aである。0.494/0.460=1.074であるので、レーザー効率の増加は、約7%である。したがって、効率SEの増加は、副層構造が減少した内部損失をもたらすことを示す。しかしながら、このような第一の達成は、3.9mmのキャビティ長さを有するレーザーによってなされるものであることに注意せよ。効率の増加は、より長い、合理的には8~10mmの最大長さのキャビティを有するレーザーについてより高い値であることが予期される。このようなキャビティについて、効率の増加は、10~11%ほどの高さであることができると推測される。より大きい表面積(100μmの活性領域の幅)を有するレーザーについて、10.2mmのキャビティ長さで、例として、SEは0.36から0.40W/Aとなったので、10~11%の上昇がみられた。
【0068】
Pドープ領域の層を変更することによっても、内部損失をさらに減少させて、したがってレーザーの効率をさらに上昇させることを可能とするに注意されたい。
【0069】
1つの別の例において、調節層は以下の副層の同一の積層を含み、
6×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する10nm厚さのAsGaAsの第一の副層と、
5×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する25nm厚さのAlGaAsの第二の副層と
をそれぞれ含む。
【0070】
1つのさらに別の例において、調節層は以下の副層の同一の積層を含み、
6×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する15nm厚さのInPの第一の副層と、
3×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する30nm厚さのInPの第二の副層と
をそれぞれ含む。
【0071】
1つのさらに別の例において、調節層は以下の副層の同一の積層を含み、
5×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する10nm厚さのAl0.28Ga0.72Asの第一の副層と、
5×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する20nm厚さのAl0.32Ga0.68Asの第二の副層と
をそれぞれ含む。
【0072】
1つのさらに別の例において、調節層は以下の副層の同一の積層を含み、
6×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する10nm厚さのAl0.28Ga0.72Asの第一の副層と、
2.5×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する20nm厚さのAl0.32Ga0.68Asの第二の副層と
をそれぞれ含む。
【0073】
1つのさらに別の例において、調節層は以下の副層の同一の積層を含み、
6×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する10nm厚さのAl0.28Ga0.72Asの第一の副層と、
2.5×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する20nm厚さのAl0.32Ga0.68Asの第二の副層と、
4×1016cm-3の(Si原子)ドープのレベルを有する10nm厚さのAl0.3Ga0.7Asの第三の副層と
をそれぞれ含む。
【0074】
したがって、説明されたレーザー構造は、異なる特徴(ドープ及び/又は組成)を有する副層の周期的な互層によって、PIN接合のドープ領域のフリーキャリアによる光子の吸収に起因する内部損失を減少させることを可能とする。したがって、レーザーの効率及び信頼性は向上する。さらに、内部損失の有意な減少は、レーザーの純粋に光学的な効率に加えて、構成成分の合計の変換効率を上昇させることができ、変換効率は、レーザーに導入された合計の電気出力に対する正規化されたPoptレーザーによって発される合計の光学出力の比として表され、積I×V(レーザーに導入される電流とそれを導入するのに必要とされる電圧との積)に等しい。
【0075】
当業者は、上記の実施態様が技術的に両立可能である場合には、上記の実施態様を組み合わせて新たな実施態様を形成することができること、及び本明細書において説明される発明は具体的に説明された実施態様に限定されないこと、及び任意の他の同等の実施態様が本発明に含まれるべきであることを理解するだろう。より具体的には、本発明は、半導体レーザーの場合において説明されたが、本発明は、全ての半導体光電子素子に適合し、特に光検出器又は太陽光発電セルに適合する。このような場合、明細書において、用語レーザーは、用語半導体光電子素子に置き換えられるべきである。
【0076】
さらに、伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更は、(光電子素子のレーザーキャビティ中を循環する)光子の異なる分極の間で異なるように(フリーキャリアによる光子吸収の原因における)スプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配することを可能とし、特にバンド内遷移の振動子強度のほとんど(又はさらに全て)を、レーザー発光の分極に対して直交する分極に移行することを可能とすることに注意されたい。このようにして、フリーキャリアによる吸収の原因である遷移からレーザー発光をほとんど完全に分離することを可能とする。
【0077】
より具体的には、調節層がNドープ領域又はPドープ領域のいずれかにあるが、同時に両方はないとき、調節層は、Nドープ領域における調節層についての伝導帯又はPドープ領域における調節層についての価電子帯において、フリーキャリアによる光子吸収の減少に対して有利な効果を与えないことに注意されたい。一方で、一般に、伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性は、材料が準に宇次元特徴を有するため、両方の場合において調節層によって変更される。
【0078】
加えて、伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性の変更は、準2D調節層の製造(超格子及び/又は合成超格子のドープ)によって起こり、準2D調節層は本質的に二次元であり、伝導帯及び価電子帯中に離散的なサブバンドを生成する。さらに、調節層において、有利には、異なる分極についてのバンド内遷移の振動子強度の選択律及び分配は、このような特定の構造を有しない等方性の三次元材料とは異なる(材料が等方性であることは、振動子強度が三方向全てに沿って同じであることを意味する)。
【0079】
副層の厚さ及び別個の特徴に加えて、好ましくは、副層のそれぞれの積層の厚さも、参照電子素子に対する対応するドープ領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収を減少させるように選択されることに注意されたい。
【0080】
好ましくは、副層のそれぞれの積層の厚さは、5mm以上、好ましくは10nm以上である。
【0081】
それぞれの調節層は、短周期超格子(SPSL)とは異なることに注意されたい。
【0082】
特定の(補足又は変形の)実施態様において、それぞれの積層のそれぞれの副層は窒化ガリウム(GaN)を含有しないことに注意されたい。
【0083】
特定の(補足又は変形の)実施態様において、調節層は対応するドープ領域のコアの少なくとも1つの層であることに注意されたい。
【0084】
当業者は、より具体的には、説明された光電子素子が、「ダイアモンド」結晶構造又は閃亜鉛鉱型構造と呼ばれるIII~V族半導体のために適していることを理解するだろう。
【0085】
さらに、代替の実施態様において、上記の調節層は、積層の方向に沿った、Nドープ領域、(Nドープ領域とPドープ領域との間の)中間領域及びPドープ領域を画定する層の積層によって形成される接合を備える半導体光電子素子にも適用可能である。このような場合において、調節層は、中間層に属する、例えばより正確には活性領域(荷電キャリアの再結合が行われる領域)に属する層である。より具体的には、調節層は、例えば、複数の周期の別個の特徴の調節を組み込むために十分な厚さを有するダブルヘテロ構造(DH)レーザーの活性(異方性)領域の層である。対象の厚さは、例えば100nm以上である。
【0086】
したがって、このような代替の実施態様において、本明細書中の上記の実施態様の全ての特徴を適用可能であり、相違点は、必ずしもPIN接合ではない接合と、必ずしも真性ではない中間領域と、中間領域への調節層の組み込みである。先述の実施態様において、真性領域は中間領域に対応することに注意されたい。
【0087】
より具体的には、このような代替の実施態様において、別個の特徴が材料の組成である場合、中間領域は真性領域であってよい。一方で、別個の特徴がドープのレベルであるとき、(調節層を介してドープされるため)中間領域は真性領域とは異なる。中間領域がドープされるとき、ドープはNドープ及び/又はPドープである。
【0088】
このような代替の実施態様は、Nドープ領域及び/又はPドープ領域への他の調節層の組み込みと両立することもできる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
このような代替の実施態様は、Nドープ領域及び/又はPドープ領域への他の調節層の組み込みと両立することもできる。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
半導体光電子素子(10)であって、光を発するか、又は吸収するのに適した接合(12)を備え、接合(12)が、積層の方向(Z)に沿った、Nドープ領域、中間領域(I)及びPドープ領域を画定する層の積層で形成されていて、
Nドープ領域及び/又はPドープ領域及び/又は中間領域(I)の少なくとも1つの調節層と呼ばれる層が、積層の方向(Z)に沿って互いに重なった副層の複数の積層で形成されていて、
副層のそれぞれの積層が少なくとも2つの副層を含み、それぞれの副層が、積層の方向(Z)に沿ってある厚さを有していて、かつ少なくとも1つの材料で作られていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、
調節層のそれぞれの積層が、先述の重なった積層と同一であるか、又は2つの積層の2つの対応する副層の少なくとも1つの材料の組成において最大で有界変動分だけ先述の重なった積層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性を変更することによって、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収を、参照半導体光電子素子と呼ばれる素子と比較して減少させるように選択されていて、その唯一の相違点が、それぞれの調節層が非調節層によって置換されていることであり、非調節層が調節層と同じ厚さを有していて、かつ非調節層の厚さにわたって均一であるか、又は徐々に変化する少なくとも1つの別個の特徴を除いては同一の特徴を有している、半導体光電子素子(10)。
(付記2)
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、接合(12)がPIN接合であり、中間領域(I)が真性領域である、付記1に記載の素子(10)。
(付記3)
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれがコア及びクラッドを含み、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも大きく、調節層が対応するドープ領域のコア又はクラッドの層であり、有利には、対象のドープ領域のコア及びクラッドのそれぞれが調節層を含む、付記1又は2に記載の素子(10)。
(付記4)
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料のドープのレベルである、付記1~3のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記5)
それぞれの副層のドープのレベルが、同じ積層の他の副層のドープのレベルと少なくとも1パーセント異なる、付記4に記載の素子(10)。
(付記6)
調節層のドープの平均レベルが、対応する非調節層のドープのレベル以下である、付記4又は5に記載の素子(10)。
(付記7)
それぞれの積層の副層のうち1つのドープのレベルが、その1つの副層を作る少なくとも1つの材料のドープの残留物レベルである、付記4~6のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記8)
積層の別の副層のドープのレベルよりも大きいドープのレベルを有する積層のそれぞれの副層が、その別の副層の厚さよりも小さい厚さを有する、付記4~7のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記9)
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料の組成である、付記1~8のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記10)
それぞれの副層の少なくとも1つの材料が、周期表の第III族及びV族又はII族及びVI属又はIV族に属する化学元素を含む、付記1~9のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記11)
副層のそれぞれの積層の厚さが、1ナノメートル~100ナノメートル、好ましくは5ナノメートル以上、有利には10ナノメートル以上である、付記1~10のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記12)
副層のそれぞれの積層の厚さが、参照光電子素子と比較して、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収が減少するように選択される、付記1~11のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記13)
伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、光電子素子(10)中を循環する光子の異なる分極の間で異なるように、フリーキャリアによる光子の吸収の発端におけるスプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配するために適していて、特にバンド内遷移の振動子強度のほとんどをレーザー発光の分極に対して直行する分極に移行する、付記1~12のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記14)
伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、伝導帯及び価電子帯に離散的なサブバンドを生成する略二次元の調節層の形成によって起こる、付記1~13のいずれか1項に記載の素子(10)。
(付記15)
それぞれの積層のそれぞれの副層が、窒化ガリウムを含有しない、付記1~14のいずれか1項に記載の素子(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光電子素子(10)であって、光を発するか、又は吸収するのに適した接合(12)を備え、接合(12)が、積層の方向(Z)に沿った、Nドープ領域、中間領域(I)及びPドープ領域を画定する層の積層で形成されていて、
Nドープ領域及び/又はPドープ領域及び/又は中間領域(I)の少なくとも1つの調節層と呼ばれる層が、積層の方向(Z)に沿って互いに重なった副層の複数の積層で形成されていて、
副層のそれぞれの積層が少なくとも2つの副層を含み、それぞれの副層が、積層の方向(Z)に沿ってある厚さを有していて、かつ少なくとも1つの材料で作られていて、それぞれの副層が、別個の特徴と呼ばれる副層の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの特徴によって同じ積層の他の副層とは異なっていて、
調節層のそれぞれの積層が、先述の重なった積層と同一であるか、又は2つの積層の2つの対応する副層の少なくとも1つの材料の組成において最大で有界変動分だけ先述の重なった積層とは異なっていて、副層の厚さ及び別個の特徴が、伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性を変更することによって、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収を、参照半導体光電子素子と呼ばれる素子と比較して減少させるように選択されていて、その唯一の相違点が、それぞれの調節層が非調節層によって置換されていることであり、非調節層が調節層と同じ厚さを有していて、かつ非調節層の厚さにわたって均一であるか、又は徐々に変化する少なくとも1つの別個の特徴を除いては同一の特徴を有している、半導体光電子素子(10)。
【請求項2】
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、接合(12)がPIN接合であり、中間領域(I)が真性領域である、請求項1に記載の素子(10)。
【請求項3】
調節層がNドープ領域又はPドープ領域の層であり、Nドープ領域及びPドープ領域のそれぞれがコア及びクラッドを含み、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも大きく、調節層が対応するドープ領域のコア又はクラッドの層であ
る、請求項1又は2に記載の素子(10)。
【請求項4】
対象のドープ領域のコア及びクラッドのそれぞれが調節層を含む、請求項3に記載の素子(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料のドープのレベルである、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項6】
それぞれの副層のドープのレベルが、同じ積層の他の副層のドープのレベルと少なくとも1パーセント異なる、請求項
5に記載の素子(10)。
【請求項7】
調節層のドープの平均レベルが、対応する非調節層のドープのレベル以下である、請求
項5に記載の素子(10)。
【請求項8】
それぞれの積層の副層のうち1つのドープのレベルが、その1つの副層を作る少なくとも1つの材料のドープの残留物レベルである、請求項
5に記載の素子(10)。
【請求項9】
積層の別の副層のドープのレベルよりも大きいドープのレベルを有する積層のそれぞれの副層が、その別の副層の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項
5に記載の素子(10)。
【請求項10】
少なくとも1つの別個の特徴が、副層の少なくとも1つの材料の組成である、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項11】
それぞれの副層の少なくとも1つの材料が、周期表の第III族及びV族又はII族及びVI属又はIV族に属する化学元素を含む、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項12】
副層のそれぞれの積層の厚さが、1ナノメートル~100ナノメート
ルである、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項13】
副層のそれぞれの積層の厚さが、5ナノメートル以上である、請求項1又は2に記載の素子(10)。
【請求項14】
副層のそれぞれの積層の厚さが、10ナノメートル以上である、請求項1又は2に記載の素子(10)。
【請求項15】
副層のそれぞれの積層の厚さが、参照光電子素子と比較して、対応する領域におけるフリーキャリアによる光子の吸収が減少するように選択される、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項16】
伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、光電子素子(10)中を循環する光子の異なる分極の間で異なるように、フリーキャリアによる光子の吸収の発端におけるスプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配するために適して
いる、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項17】
伝導帯及び/又は価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、スプリアスバンド内遷移の振動子強度を再分配するために適していて、バンド内遷移の振動子強度のほとんどをレーザー発光の分極に対して直行する分極に移行する、請求項16に記載の素子(10)。
【請求項18】
伝導帯及び価電子帯の電気的-光学的特性の変更が、伝導帯及び価電子帯に離散的なサブバンドを生成する略二次元の調節層の形成によって起こる、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【請求項19】
それぞれの積層のそれぞれの副層が、窒化ガリウムを含有しない、請求項1
又は2に記載の素子(10)。
【国際調査報告】