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特表2024-510150抗ウイルス療法を強化するための組成物及び方法
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  • 特表-抗ウイルス療法を強化するための組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】抗ウイルス療法を強化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240228BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240228BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P29/00
A61P31/04
A61K45/06
A61P31/16
A61K38/21
A61K47/22
A61K47/18
A61P3/00
A61P7/02
A61P11/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P25/00
A61P1/18
A61P43/00 121
A61P19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553986
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 IB2022000219
(87)【国際公開番号】W WO2022185124
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,032
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336653
【氏名又は名称】エックスオーアールティーエックス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XORTX THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ダビドフ,アレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD51
4C076DD51P
4C076DD51S
4C076DD59Q
4C076DD59S
4C084AA02
4C084AA19
4C084AA20
4C084BA44
4C084DA21
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA01
4C084ZA36
4C084ZA54
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC21
4C084ZC31
4C084ZC75
(57)【要約】
この発明は、呼吸器ウイルス感染による抗ウイルス療法を強化するための組成物及び方法から構成され、それにより該組成物及び方法は、尿酸降下剤(UALA)の処方及び血清尿酸又は組織尿酸を減少させるように設計されたインターフェロン療法(IT)を提供し、及び/又はキサンチンオキシダーゼを阻害し、それによりインターフェロン療法の有効性を増加させる。例えば、肥満、糖尿病前症、慢性腎臓疾患、又は糖尿病に関連する様々な既往症を有する個体は、一般集団よりも重篤なコロナウイルス(COVID-19)感染のリスクがより高く、尿酸を減少させることが可能な治療上有効な量の薬剤を投与することにより、ITの有効性が、そのような処置を必要とする患者において増加する。この発明は、循環骨髄細胞の変化した機能状態をもたらし、炎症に寄与し、そして先天性免疫記憶を誘導し、それによってインターフェロン応答性を抑制することができる、尿酸誘導性転写及びエピジェネティック再プログラミングを逆転させる組成物及び方法からさらに構成される。さらに、この発明は、より重篤なウイルス及び/又はコロナウイルス及び/又はCOVID-19感染症に罹る可能性のある患者集団におけるインターフェロン応答性を増加させ、それによって、減少した急性臓器損傷の広がり、多数の急性臓器損傷及び死亡を含む急性臓器損傷の重症度を含むCOVID-19感染の健康への重大な結果を減少させる組成物及び方法から構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染を有する被験体におけるインターフェロンの有効性の向上に使用するための、尿酸降下剤(UALA)又はUALA類を含む組成物。
【請求項2】
組成物が静脈内送達用に処方される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、経口、静脈内及び/又は筋肉内送達、又は組み合わせ経路用に処方される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンC、N-アセチルシステインなどの酸素ラジカル捕捉剤を含む、請求項1、2又は3記載の組成物。
【請求項5】
有機塩基、及び/又はアルギニンやリジンなどの有機アミノ酸を含む、請求項1、2、3又は4記載の組成物。
【請求項6】
ウイルス感染が呼吸器ウイルス感染である、請求項1~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
呼吸器ウイルス感染がコロナウイルスによるものである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
コロナウイルスがSARS-Cov-2である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
被験体がインターフェロン投与を受けている、組請求項1~8のいずれか1項記載の成物。
【請求項10】
インターフェロンをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
コロナウイルス/COVID-19感染を有する関連する患者における、全身性炎症の減少に使用するための、1つ以上の尿酸降下剤、又はインターフェロン、又は抗炎症剤の組成物。
【請求項12】
ウイルス性又は細菌性敗血症を治療又は予防するのに使用するための、尿酸降下剤、及び抗炎症剤の組成物。
【請求項13】
細菌性敗血症が、ウイルス感染に続いての二次感染である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
COVID-19感染の重症度を増加させる、高尿酸血症の健康への影響を処置するのに使用するための、請求項1~8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
ウイルス感染中のインターフェロン療法の抗ウイルス効果を強化する方法であって、治療上有効な量のUALAを投与することを含む方法。
【請求項16】
治療的上有効な量のインターフェロンを同時投与することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
UALA及びインターフェロンが同じ組成物で共投与される、請求項15及び16記載の方法。
【請求項18】
組成物が静脈内投与又は筋肉内投与用に処方される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
異化亢進状態、凝固亢進、急性呼吸窮迫症候群又は過炎症/炎症カスケードの抑制に使用するための、非経口投与用に処方され、ウリカーゼ及び/又はキサンチンオキシダーゼ阻害剤を含む、尿酸降下剤を含む組成物。
【請求項20】
ウイルス感染中のインターフェロン療法の有効性のために、及び急性腎障害、急性心損傷、急性神経損傷、又は急性膵臓損傷若しくは急性臓器損傷の減少に使用するための、1つ以上の尿酸降下剤を含む組成物。
【請求項21】
ウイルス感染に続発する細菌性敗血症に対する感受性を減少させる方法であって、薬学的に有効な量のUALAを投与することを含む方法。
【請求項22】
溶解性ウイルスに感染した被験体を処置する方法であって、溶解性ウイルスへの感染中、又は感染後1、7、14、30日又はそれ以上の間、治療的に有効な量のUALAを投与することを含む方法。
【請求項23】
溶解性ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、COVID-19、MERS、SARS及び呼吸器ウイルスからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
溶解性ウイルスへの感染中、又は感染後30日間、UALA及びインターフェロンを共投与することを含む方法。
【請求項25】
溶解性ウイルスが、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、COVID-19、MERS、SARSからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
炎症のIL-1Ra拮抗を改善する方法であって、治療上有効な量の尿酸降下剤を投与することを含む方法。
【請求項27】
インターフェロン耐性状態にある被験体を処置する方法であって、治療上有効な量のUALAを投与することを含む方法。
【請求項28】
インターフェロンを共投与することをさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
酸化防止剤を投与することをさらに含む、請求項21~28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
酸化防止剤がビタミンC又はNACを含む、請求項29記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物及びヒトにおいて、インターフェロン療法の否定的な阻害を減少させる手段として、ウイルス感染の状況において、血清又は組織の尿酸濃度を減少させ、及び/又はキサンチンオキシダーゼ活性による尿酸産生又は腎臓による尿酸再取り込みを阻害するための方法、尿酸降下剤(UALA)の組成及びその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】高尿酸血症は、COVID-19に感染した入院患者において早期に増加される。
図2】急性腎障害の重症度は、血清尿酸濃度と用量依存的に関連する。
図3】尿酸は、用量依存的に、炎症状態及び細菌感染/敗血症のマーカーである、プロカルシトニンの濃度の上昇に関連する。
【0003】
詳細な説明
概要
呼吸器のウイルス感染は、主に呼吸器系の感染として開始される。呼吸器系に感染するウイルスの例は、ライノウイルス、インフルエンザウイルス(毎年冬に流行する)、パラインフルエンザウイルス、呼吸器シンシチアルウイルス(Respiratory syncytial virus)(RSV)、エンテロウイルス、コロナウイルスであり、そしてアデノウイルスの特定の株は、ウイルス性呼吸器感染の主な原因である。
【0004】
コロナウイルス、特にCOVID-19は、ヒトに影響を及ぼす、新たに出現したウイルスを示し、様々な種に影響を及ぼすウイルスのファミリーの中のウイルスの1種である。ヒトにおけるコロナウイルス感染症は、急性又は慢性の病態をもたらす可能性がある多様な生理学的及び解剖学的異常により特徴づけられ、例えば、その異常は、変化したグルコースの処理(disposition)、高血圧、網膜症、異常な腎機能、異常な中枢神経系機能、異常な心機能、異常な肝機能、異常な血小板活性、大血管、中血管及び小血管を含む異常な膵臓機能異常、慢性疲労、横紋筋融解症、並びにその他の合併症及び死亡を含む。
【0005】
コロナウイルス感染、特にCOVID-19感染は、呼吸器系において開始され、そして副鼻腔、気管、気管支及び肺機能に関与し、肺損傷、低酸素症、息切れ、肺塞栓症をもたらすと説明されている。順次に又は同時にのいずれかで、血管機能、内皮細胞感染、腎臓、消化管、神経系、心血管系、膵臓、損傷、骨格筋損傷及び細菌感染に対する感受性が説明されている。さらに、コロナウイルス感染、そして特にCOVID-19に関連して、横紋筋融解症、及び/又は多動性異化症候群、及び/又は急性呼吸窮迫症候群及び異常なサイトカイン発現が説明されている。増加したサイトカイン発現、炎症状態、酸化ストレス及び凝固促進状態が説明されている。
【0006】
シグナル伝達タンパク質の一種であるインターフェロンは、ウイルス感染の拡大、重症度を制限し、そして隣接組織の細胞に対して、潜在的なウイルス感染に対して防御の準備をするように警告するための抗ウイルス防御として用いられる。高尿酸血症は、インターフェロンの効力を抑制し得る因子であることが報告されている。肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、前糖尿病、糖尿病及び慢性腎臓病を有する個体は、高尿酸血症及び内皮機能障害のより高い発生率を有する。
【0007】
早期ウイルス学的応答(EVR)の達成は、持続的ウイルス応答(SVR)の高い可能性を意味する[10,12,13]。さらに、多様なウイルス又は宿主因子が、従来の処置に対する応答に影響することが報告されている[10,14-16]。処置応答のための新たな予測因子を見出すために、多くの研究が行なわれている。メタボリックシンドロームについての主な病態生理であるインスリン抵抗性は、慢性HCVを有する患者においてSVRの達成を減少させることが報告された[3,17,18]。プリン分解の最終段階で合成される尿酸は、肝臓において代謝され、そして血清レベルは肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病及び慢性腎臓病を有する患者において上昇する傾向がある[19]。実際、尿酸濃度は、持続的ウイルス学的応答(SVR)の測定を用いて、インターフェロン治療効果の予測因子として特定されている(Soo K_ et al_ Clinical implication of serum uric acid in pegylated interferon and ribavirin combination therapy for chronic hepatitis C infection_ Korean J Intern Med_ 32_1010_2017_kjim-2016-405)。
【0008】
ウイルス感染-ウイルス感染は、2種類の免疫応答(1つはタンパク質ホルモン-サイトカイン-の合成に関与するウイルスに対する自然免疫応答、そしてもう1つは「ナチュラルキラー」リンパ球の刺激)を誘導することができる。自然免疫応答が、感染を抑制又は予防するのに不十分であり、且つ感染が最初の数回の感染よりも進行する場合、「適応免疫応答」が開始される。適応応答は、2つの基本的な要素((1)Bリンパ球によるウイルス特異的抗体の合成を含む体液性応答、及び(2)感染した細胞を殺す特異的細胞傷害性Tリンパ球の生成を含む細胞媒介性応答)を有する。適応免疫応答のこれらの成分は、同じ又は関連するウイルスによるその後の感染に対してより迅速な応答(免疫)を可能にする長寿命の「記憶細胞」の産生をもたらす。
【0009】
溶解性(lytic)サイクルは、ウイルス増殖の2つのサイクルのうちの1つであり、もう1つは溶原性(lysogenic)サイクルである。溶解性サイクルは、感染細胞及びその膜の破壊をもたらす。
【0010】
溶解性サイクル:細胞膜への侵入、核酸合成、及び宿主細胞の溶解を含むウイルス増殖の通常のプロセスである。
【0011】
溶原性サイクル:得られたプロファージの増殖に先立つ、バクテリオファージの核酸と宿主の核酸との融合を含むウイルス増殖の形態である。
【0012】
溶解性ウイルス→cfDNA
溶解性ウイルスは、ウイルス粒子及びセルフリー(cell free)DNA(cfDNA)を含む細胞の内容物を血液循環中に放出する。cfDNAが存在すると、cfDNAは、分泌するために速やかに尿酸に分解され、そして十分に濃縮されると、血清を飽和し、尿酸一ナトリウム結晶の形成を促進する事ができる。
【0013】
ウイルス、真菌及び細菌感染の間の関係についての研究は、ウイルス感染の結果としての血清DNA(DNA血症(DNAemia))が、増加した真菌及び細菌感染を予測することを示す。(Walton AH_Reactivation of Multiple Viruses in Patients with Sepsis_PlosOne_Vol9_Issue6_98819_2014)。この知見は、溶解性ウイルス及び感染中のウイルス負荷が、DNA血症を増加させるのに寄与し、次いで血清尿酸及び免疫抑制状態を増加させ得ることを示唆する。Murrayら(2021)による最近の研究は、プロベネシドのような尿酸降下剤が、コロナウイルスによるウイルス負荷を減少させ得ることを示す(Murray J_ et al_ Probenecid Inhibits SARS-CoV-2 replication in vivo and invitro_Nature_Sept 2021_s41598-021-97658-w)。減少したウイルス負荷は、DNA血症を減少させる傾向があり、したがってより低い血清尿酸濃度が期待される。レベルについて。この研究の結果は、プロベネシドのような尿酸排泄薬を用いて尿酸の取り込みを減少させることが、同時に、高い血清尿酸レベルに起因する免疫抑制状態を減少させ得ることを示唆する。実際、尿酸のアラントインへのウリカーゼ消化剤、あるいは尿酸の産生を阻害するキサンチンオキシダーゼ産生の阻害剤又はキサンチンオキシダーゼの発現を阻害するsGPLT2阻害剤のようなその薬物は、概念的には、高尿酸血症による免疫抑制を軽減することができる。
【0014】
敗血症は、大規模な微生物感染によって引き起こされる全身性の炎症症候群であり、そして世界中での主要な死因である。敗血症は、「感染に対して調節不全の宿主によって引き起こされる、器官の機能障害」と定義される一方、敗血症性ショックは、「基礎となる循環、細胞及び代謝の異常によって引き起こされる、より高い死亡リスクと関連している(1、2)。圧倒的な炎症誘発性応答を伴う幾人かの敗血症患者の生存率は集中治療室(ICU)において大幅に改善されるが、ほとんどの患者は、厳しく抑制された免疫応答を伴う遅発性の敗血症を発症し、二次感染のために死亡する(3、4)。
【0015】
血清尿酸(SUA)は、COVID-19感染においてCRP、IL-1、IL-6、TNF-a及びプロカルシトニンと関連する。増加するプロカルシトニンは、SUAの増加と関連し、尿酸が、二次細菌感染及びその後の敗血症に対する増加した感受性を媒介し得ることを示唆する。
【0016】
コロナウイルス、特にCOVID-19のようなウイルスは、宿主細胞受容体を用いて宿主細胞に付着することにより個体に感染する。COVID-19の場合、この呼吸器ウイルスは一次組織、次いで二次組織に感染するので、ACE2を発現する組織が、最も感染に対して影響を受けやすい。例えば、肺組織感染は、血管、腎臓、心臓、脳、膵臓及び他の組織の二次感染をもたらす。
【0017】
肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、糖尿病及び腎臓疾患などの既往症を有する個体は、COVID-19のより重篤なウイルス感染の増加したリスク、健康への重大な結果を有すると報告されている。男性もまた、より重大なウイルス感染に対するリスク因子であると報告されている。肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、糖尿病、及び腎臓疾患を有する個体は、しばしば併発した高尿酸血症及び内皮機能障害を有する。
【0018】
ウイルスのライフサイクルの一部として、宿主細胞内での新たなウイルス粒子の産生及び宿主細胞の溶解は、ウイルス粒子の放出及び未使用の細胞成分の間質への放出、及び/又は感染した宿主細胞への位置に依存する循環をもたらす。ウイルスにより放出される細胞内容物は、炎症応答、特にセルフリーDNA(cfDNA)を活性化及び強化することができる。尿酸は、主に動物性タンパク質に由来する外因性のプリンのプールの最終産物として、主に肝臓、腸及び筋肉、腎臓、血管内皮などの他の組織において合成される。さらに、生きている細胞及び瀕死状態の細胞は、それらの核酸、アデニン及びグアニンを尿酸に分解する。
【0019】
高尿酸血症は、内皮機能障害を増加させ、そしてより悪化させることが報告されている。尿酸降下剤は、内皮機能障害を減少させ、又は回復させることが報告されている。しばしば、高尿酸血症、内皮機能障害、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、糖尿病及び腎臓疾患は、罹患組織内のACE2受容体の増加した発現と関連している。実際、高尿酸血症は、全身性及び組織特異的炎症、血管損傷、並びに腎臓損傷を増加させることが示唆されている。
【0020】
最近の発表は、インターロイキン(IL)応答が、IL-1B発現により増加され、そしてIL-1RAにより相殺され且つ抑制されることを示唆している。高尿酸血症は、IL-1RA阻害の抑制効果を減少させることが示されており、それにより、この阻害及び過剰なサイトカイン媒介性炎症の不在下で、過剰なIL-1a及びIL-1bシグナル伝達が増強することを可能にする。
【0021】
溶解性ウイルス又はコロナウイルス若しくはCOVID-19感染に帰すことができるようなウイルス感染中に、治療的に尿酸レベルを減少させ、且つ抑制することは、暴走性のインターロイキンシグナル伝達及び炎症の制御及び抑制を回復させる可能性がある。本発明は、制御されていないサイトカインシグナル伝達及びその結果として生じる炎症、高異化状態、及び高凝固状態を抑制し、ウイルス、コロナウイルス又はCOVID-19に感染中の被験体におけるウイルス感染の健康への重大な結果を軽減する手段として、尿酸を減少(UALA)させる組成物及び方法を記載する。
【0022】
本発明の別の実施態様では、高尿酸血症状態、すなわち血清尿酸値が5.5mg/dLを超える状態は、ILシグナル伝達のIL-1RAの逆の阻害を阻害することによって、過剰な炎症応答を許容することが可能な環境を示す。このシナリオにおける本発明は、ウイルス性及び細菌性敗血症、並びにウイルス感染に二次的な細菌性敗血症に対する影響及び感受性を有する。ILシグナル伝達のIL-1Ra阻害及びインターフェロンの治療効果を回復するための治療法として、尿酸値を低下させる有用性を有する。
【0023】
高尿酸血症は、IL-1、IL-6、PGE2、TNF-a、c-反応性タンパク質(CRP)などのサイトカインの増加した発現と関連している。これらの結果は、尿酸が、ヒトにおける全身性炎症に寄与し、尿酸が無菌性炎症を誘発することを示す実験データと一致することを示唆する(Lyngdoh T, et al, Elevated Serum Uric Acid is Associated with High Circulating Inflammatory Cytokines in the Population-Based Colaus Study, PLoS Ine 6(5)e19901, 2011)。無菌性炎症は、機械的外傷、虚血、ストレス又は紫外線照射などの環境条件によって引き起こされる病原体のない炎症の一形態である。これらの損傷に関連した刺激は、危険関連分子パターン(DAMPs)と総称される分子エージェント(molecular agents)の分泌を誘導する。
【0024】
ウイルス感染に対して、哺乳類動物の細胞は、増加したインターフェロン発現で応答する。健康な状態では、インターフェロンは、様々なウイルスの存在に応答して宿主細胞によって合成され、且つ放出されるシグナル伝達タンパク質の一種である。ウイルスに感染した宿主細胞は、このシグナル伝達インターフェロン分子の放出を利用して、他の細胞の抗ウイルス防御を増加させることができる。インターフェロン(IFN)は、サイトカインとして知られるタンパク質の一種であり、細胞間の情報伝達のために使用され、病原体の根絶を助ける免疫系の防御を引き起こす分子である(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。
【0025】
炎症応答は、感染中に効果的な免疫応答を開始するよう細胞に警告するだけでなく、創傷修復及び治癒プログラムを開始するためにも、極めて重要である。対照的に、過度の未解決な炎症は、組織損傷及び疾患をもたらす可能性がある。それぞれの型の炎症応答は、炎症を初期化する分子事象、脂質メディエーター、サイトカイン及び特殊化された細胞型のセットで構成されており、炎症の解消を確実にするために同様に調整された一連のステップで構成される。先天性サイトカインであるインターロイキン-1(IL-1)及び1型インターフェロン(IFN-1)は、相互に拮抗することができる2つの主要な型の炎症応答の基礎であり、高尿酸血症の状況においては、強化された急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、制御されていないサイトカイン発現-「サイトカインストーム」を可能にし、そして敗血症の確立及び促進を提供し得る。
【0026】
IL-1は、炎症誘発性サイトカイン及び発熱物質であり、2つのサイトカイン種であるIL-1a及びIL-1Bを介して高い炎症応答を媒介する。両種は、ほとんどの細胞型によって個別に発現でき、そして多くの身体系で生物学的応答を生成する。IL-1の過剰な産生は、非常に有害であり、多くの疾患に寄与する。したがって、IL-1は、広範囲に調節されており、IL-1に対する臨床的利益及び望ましくない病原性効果の余地は非常に狭いと説明されている(Mayer-Barber et al, Interleukin-1 and type 1 IFN, Cellular and Molecular Biology, (14) 22, 2107)。
【0027】
IL-1受容体(IL-1R1)、及び受容体IL-1Raのために第3のリガンドを介したIL-1a及びIL-1Bシグナルは、天然に存在する特異的なIL-1R1受容体アンタゴニストであり、そしてIL-1a及びIL-1Bを媒介したシグナル伝達を防止する。第2のIL-1R鎖であるIL-1RIIは、IL-1駆動応答を制限するようにも作用するおとり受容体である。
【0028】
いくつかの他の研究は、痛風の文脈におけるIL-1Raのダウンレギュレーションを記載する。GM-CSF処理した好中球は、IL-1α、IL-1β及びIL-1Raを産生する。MSU結晶は、全体のIL-1に対するIL-1Raの比率について劇的な減少を引き起こし、炎症誘発性不均衡をもたらす(Roberge CJ et al, 1994)。可溶性尿酸はまた、刺激の下で、ヒト単球におけるIL-1Raの減少をもたらす[16]。これらの研究は、IL-1Raが、高尿酸血症において誘導される炎症誘発性サイトカインについて十分に補償しないことを示唆する。これらの研究を総合的に解釈すると、高尿酸血症は、ARDS,高異化状態、サイトカインストーム、又は敗血症において観察されるようなウイルス及び細菌感染に対する制御されない高炎症性応答を可能にし得ることを示唆する(C.J. Roberge, R. de Medicis, J.M. Dayer, et al. Crystal-induced neutrophil activation. V. Differential production of biologically active IL-1 and IL-1 receptor antagonist J Immunol, 152 (1994), pp. 5485-5494; T.O. Crisan, M.C.P. Cleophas, B. Novakovic, et al. Uric acid priming in human monocytes is driven by the AKT-PRAS40 autophagy pathway Proc Natl Acad Sci U S A, 114 (2017), pp. 5485-5490)。
【0029】
それに続き、高尿酸血症を尿酸降下剤又は尿酸降下剤類を用いて処置することは、炎症のIL-1Ra拮抗作用を回復させ得る。
【0030】
IL-1は、最も広く研究されており、黄色ブドウ球菌などの急性細菌感染に対する宿主抵抗性に関与しており、ここで迅速な炎症応答及びIL-1誘導性ケモカインは、最適な好中球依存性制御に必要である。IL-1により媒介される宿主の抵抗性は、細菌感染において最も一般的であるが、IL-1シグナル伝達はまた、インフルエンザを含むウイルス感染に対しても保護することができる。ヒト肺微小血管内皮細胞を用いた最近の研究は、内皮細胞により分泌されるIL-1Bが、インフルエンザ誘導性炎症に寄与することを示した。IL-1Ra応答性が低下している高尿酸血症では、ウイルス/コロナウイルス/COVID-19に対する過剰な炎症応答は、いくつかの個体を、より悪い感染及びその感染の健康への重大な結果に対してより影響を受けやすくする。
【0031】
最も一般的に、IL-1は、細菌感染に対して保護するが、1型インターフェロン(1型IFN)は、ウイルス感染に対して高く保護することに特化したサイトカインのファミリーに属する。ほとんどの細胞型は、ウイルスRNA又はDNAの認識時にサイトゾル受容体を介して1型IFNを発現する。
【0032】
I型IFNは、ウイルス遺伝子の転写及び翻訳を直接中断できる感染した細胞内の数百のISGの特定のセットの急性誘導により、成功裏にウイルス複製を制限するため、ウイルス感染の制御に関連する典型的なサイトカインである。これらの遺伝子は先天的なウイルス認識インターロイキン-1及びI型IFNに応答してI型IFNにより誘導され、そしてまた、ウイルス拡散を制限する隣接する細胞において、抗ウイルス状態も促進する。
【0033】
高い血清尿酸濃度は、炎症誘発性シグナ伝達の増加したプロスタグランジンE2(PGE2)及びIL-1、及び同様にIL-Raの減少した抗炎症性発現と関連している。IL-1は、IFN-B産生を阻害し、それによってI型インターフェロンの抗炎症効果を抑制するように作用する(潜在的な「インターフェロン耐性」状態)ことが報告されている。PGE2は、マウスにおいてそしてインフルエンザ感染時に、1型IFNの産生を抑制することが示されている。したがって、動物における研究は、IL-1が、PGE2の誘導を介してIFN-Bの転写及び翻訳の両方を直接調節することにより、1型IFN応答を拮抗させる可能性があることを示した。
【0034】
I型IFNはまた、IL-1のレベルを阻害し、IL-1Raレベルを増加させる(抗炎症作用)ことができる。重要なことに、IFNa-α及びIFN-B-βの両方は、様々な細胞型におけるIL-1a及びIL-1Bの転写及び翻訳を抑制することができる。しかし、IFNのこの抗炎症作用は、細菌感染に対する感受性が増加されることが報告されているように、代償を有する。IFNの作用は、IL-1シグナル伝達効果を阻害するIL-1Ra及びIL-10を増加させることにより、抗炎症作用を誘導する可能性があると考えられているが、これは逆にIL-1のシグナル伝達の効果を阻害する可能性がある。このIL-1の拮抗作用は、I型IFNに限定されないようであるが、II型IFN、IFNγについて、そして最近では同様にIII型IFNについても報告されている。
【0035】
本開示で提供される実施態様は、高尿酸血症(血清尿酸値>5.5mg/dL)の状態にあるヒトを含む動物が、増加したIL-1活性、増加した炎症状態及び「インターフェロン耐性」状態を有するという発見に基づいている。このインターフェロン耐性状態は、IFN媒介性抗ウイルス免疫応答を抑制し、且つより重篤なウイルス感染に対する感受性を増加させることができる。したがって、特定の実施態様は、動物において、内皮機能障害を逆転させ、「インターフェロン耐性」状態を逆転させ、そして、循環する尿酸を減少させるUALAの公知の作用を介して、I型、II型、又はIII型のインターフェロンの投与を伴う、増加した抗ウイルス応答性を可能にする尿酸降下剤の使用に関する。
【0036】
別の実施態様では、血清又は組織尿酸レベルを減少させることは、IL-1及びPGE2の発現を減少させ、そしてIL-1Ra発現の発現を増加させ、それによって宿主が抗細菌応答を実施することを可能にする。一次ウイルス性敗血症及び二次細菌性敗血症は、高尿酸血症が抗細菌性IL-1シグナル伝達性サイトカインを抑制し、それが逆にIFN抗ウイルス応答を抑制している場合により可能性が高くなる。ウイルス感染を有する被験体における尿酸濃度を減少させる及び/又は尿酸の産生を防止することは、両系に対するこの負のフィードバックを逆転させ、そしてウイルス性及び細菌性敗血症及びウイルス感染の健康への重大な結果を治療的に処置し且つ予防する。
【0037】
定義
症状の「軽減」は、症状の重症度又は頻度の減少、又は症状の除去を意味する。
【0038】
当技術分野で公知の任意の方法によって被験体に薬物又は治療用医薬組成物を「投与すること」又は「その投与」は、自己投与(経口投与又は静脈内、皮下、筋肉内若しくは腹腔内注射、座薬による直腸投与を含む)又は標的とされる細胞又は組織に治療上有効な量の薬物又は組成物を送達する任意の経路又は方法による投与(例えば肺投与)を含む、両方の直接投与を含む。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「共投与される」、「共投与する」又は「同時投与」は、例えば、他の活性剤を伴う活性剤の投与、又は活性剤の投与を伴う結合剤の投与に対して使用される場合、活性剤及び他の活性剤及び/又は結合剤の両方が、同時に生理学的効果を達成することができるような投与を意味する。しかしながら、2つの薬剤は、一緒に投与される必要はない。特定の実施態様では、一方の薬剤の投与は他方の薬剤の投与に先行することができるが、そのような共投与は、典型的には、両方の薬剤が被検者の体内(例えば血漿中)に同時に存在する結果となる。共投与することは、共製剤(co-formulation)(この中で、剤(複数)は、経口、皮下又は非経口投与に適した単一の投与形態に組み合わされるか又は配合される)を提供することを含む。
【0040】
「疾患を予防すること」は、疾患(又は障害)に罹る可能性はあるが、まだ疾患を有するとは診断されていない被験体における発症から疾患を予防すること;疾患を抑制すること、例えば、疾患の発症を阻止すること;及び/又は疾患の発症を遅らせることを含むが、これに限定されない。一例としては、COVIDに罹患するリスクがあり、5.5mg/dLの上昇した尿中濃度を有する被験体におけるインターフェロンの有効性を増加させることである。
【0041】
尿酸低下薬(UALA)、インターフェロン、又はそのような薬剤を含む他の薬剤又は医薬組成物の「治療上有効な量」は、意図された治療効果、例えば、被験体における疾患又は病態の一つ以上の兆候の緩和、改善、緩和若しくは除去を達成する量である。完全な治療効果は、必ずしも1回の用量の投与によって生じる必要はなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。したがって、治療上有効な量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0042】
薬物の「予防上有効な量」は、被験体に投与されたときに、意図された予防効果、例えば、疾患又は症状の発症(又は再発)を予防又は遅延させる、又は疾患又は症状の発症(又は再発)の可能性を減少させる薬物の量である。完全な予防効果は、必ずしも1回の用量によって起こるわけではなく、そして一連の用量の投与の後にのみ起こり得る。したがって、予防上有効な量は、1回以上の投与で投与され得る。糖尿病については、治療上有効な量はまた、インスリンの分泌を増加させ、インスリンの感受性を増加させ、耐糖能を増加させ、又は体重増加、体重減少、若しくは脂肪量を減少させる量であることができる。
【0043】
薬剤の「有効量」は、所望の効果をもたらす量である。
【0044】
「薬学的に許容され得る」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と両立する必要があり、且つ受容者に有害であってはならないことを意味する。
【0045】
患者における疾患、障害又は病態を「処置すること」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための工程を用いることを指す。本発明の目的において、有益又は所望の臨床結果は、疾患の1つ以上の症状の軽減、緩和又は改善、疾患の程度を減少させること;病気の進行を遅らせる又は遅くすること;疾患の状態又は症状及びその合併症の改善、緩和又は安定化を含むが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用されるとき、特に記載されていないか又は文脈から明らかでない限り、用語「約」は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差内として理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%内として理解され得る。文脈から明確でない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、用語「約」によって修正される。
【0047】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の省略形であると理解される。たとえば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22,23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又はサブ範囲を含むと理解される。
【0048】
本明細書で提供される任意の化合物、組成物、又は方法は、本明細書で提供される任意の1つ以上の他の組成物及び方法と組み合わせることができる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別のことを指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「バイオマーカー」への言及は、1つ以上のバイオマーカーへの言及を含む。
【0050】
本明細書で使用されるとき、特に記載されていないか、文脈から明らかでない限り、用語「又は」は包含的であると理解される。
【0051】
本明細書では、用語「包含」は、語句「含むがそれに限定されない」を意味するために使用され、且つ互換的に使用される。
【0052】
抗炎症剤は、ステロイド、例えば、ブデソニド、非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アミノサリチラート(例えば、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン及びバルサラジド)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(ロフェコキシブ、セレコキシブなどのCOX-2阻害薬)、バリシチニブ、ジクロフェナク、エトドラク、ファモチジン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、イブプロフェン、インドメタシン、メクロフェナマート、メフェナム酸、メロキシカム、ナムブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチンを含むが、これらに限定されない。
【0053】
用語「インターフェロン」は、抗ウイルス化合物に関するその一般的に理解される意味を有する。健康において、インターフェロンは、様々なウイルスの存在に応答して宿主細胞によって合成され、且つ放出されるシグナル伝達タンパク質の一種である。ウイルスに感染した宿主細胞は、このシグナル伝達インターフェロン分子の放出を利用して、他の細胞の抗ウイルス防御力を増加させることができる。インターフェロン(IFNs)は、サイトカインとして知られるタンパク質の一種であり、細胞間の情報伝達に使用され、病原体の根絶を助ける免疫系の保護的防御を引き起こす(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。インターフェロンはまた、抗原提示及び主要組織適合複合体(MHC)抗原の発現を増加させることにより、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びマクロファージ(M0)などの免疫細胞を活性化することができる。
【0054】
ヒトを含む動物において、20個以上の別個のIFN遺伝子及びタンパク質が特定されている。典型的には、それらは、3つのクラス:I型IFN、II型IFN、及びIII型IFNに分類される。3種類すべてに属するIFN類は、ウイルス感染との闘い及び免疫系の調節にとって重要である。
【0055】
ヒトインターフェロンは、それらを通してシグナル伝達する受容体の型にもとづくと、3つの主要な型に分類されている。
【0056】
・ インターフェロンI型:
すべてのI型IFNは、IFNAR1及びIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として知られる特定の細胞表面受容体複合体複合体に結合する(de Weerd NA, Samarajiwa SA, Hertzog PJ (July 2007). "Type I interferon receptors: biochemistry and biological functions". The Journal of Biological Chemistry. 282 (28): 20053-7 )。ヒト中に存在するI型インターフェロンは、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ及びIFN-ωである(Liu YJ (2005). "IPC: professional type 1 interferon-producing cells and plasmacytoid dendritic cell precursors". Annual Review of Immunology. 23: 275-306])。一般に、I型インターフェロンは、身体が、そこに侵入したウイルスを認識するときに産生される。I型インターフェロンは、線維芽細胞及び単球によって産生される。しかし、I型IFN-αの産物は、インターロイキン-10として知られる別のサイトカインによって阻害される。一旦I型インターフェロンが放出されると、I型インターフェロンは、標的細胞上の特定の受容体に結合し、これはウイルスがRNA及びDNAを産生し且つ複製するのを防止するタンパク質の発現をもたらす(Levy DE, Marie IJ, Durbin JE (December 2011). "Induction and function of type I and III interferon in response to viral infection". Current Opinion in Virology. 1 (6): 476-86)。全体として、IFN-αは、B型肝炎及びC型肝炎を処置するために使用できる一方、IFN-βは、多発性硬化症を処置するために使用できる(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。
【0057】
・ インターフェロンII型(ヒトにおいてはIFN-γ):
:これは、免疫インターフェロンとしても知られており、インターロイキン-12によって活性化される(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。II型インターフェロンはまた、細胞傷害性T細胞及び1型ヘルパーT細胞からも放出される。しかし、それらは、2型ヘルパーT細胞の増殖を遮断する。前者は、T2免疫応答の阻害及びT1免疫応答のさらなる誘導をもたらす(Kidd, P (2003). "Th1/Th2 Balance: the hypothesis, its limitations, and implications for health and disease". Alternative Medicine Review. 8 (3): 223-46)。II型IFNは、IFNGR1及びIFNGR2鎖からなるIFNGRに結合する(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。
【0058】
・ インターフェロンIII型:
IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)及びIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を介したシグナルである。I型及びII型のIFNよりもより最近発見された(Kalliolias GD, Ivashkiv LB (2010). "Overview of the biology of type I interferons". Arthritis Research & Therapy. 12 Suppl 1 (Suppl 1)):S1の最近の情報は、いくつかの型のウイルス又は真菌感染症におけるIII型IFNの重要性を実証している(Vilcek, Novel interferons, Nature Immunol. 4, 8-9. 2003; Hermant P, Michiels T (2014). "Interferon-λ in the context of viral infections: production, response and therapeutic implications". Journal of Innate Immunity. 6 (5): 563-74; Espinosa V, Dutta O, McElrath C, Du P, Chang YJ, Cicciarelli B, Pitler A, Whitehead I, Obar JJ, Durbin JE, Kotenko SV, Rivera A (October 2017). "Type III interferon is a critical regulator of innate antifungal immunity". Science Immunology. 2 (16)))。一般的に、I型及びII型のインターフェロンは、免疫応答を調節し且つ活性化するのに関与している(Parkin J, Cohen B (June 2001). "An overview of the immune system". Lancet. 357 (9270): 1777-89)。
【0059】
I型及びIII型のIFNの発現は、細胞質及びエンドソーム受容体によって、ウイルス成分、特に核酸を認識すると、ほぼすべての細胞型で誘導されるが、II型インターフェロンは、IL-12などのサイトカインによって誘導され、そしてその発現は、T細胞及びNK細胞のような免疫細胞に限定される。
【0060】
投与に適したインターフェロン剤の例としては、市販され認証されているものとして、以下のものがあるが、これらに限定されるものではない:
・ インターフェロンアルファ-2a(ロフェロン-A)
・ インターフェロンアルファ-2b(イントロン-A)
・ インターフェロンアルファ-n3(アルフェロン-N)
・ ペグインターフェロンアルファ-2b(ペグイントロン、シラトロン)
・ インターフェロンベータ-1a(アボネックス)
・ インターフェロンベータ-1a(レビフ)
・ インターフェロンベータ-1b(ベタセロン)
・ インターフェロンベータ-1b(エクスタビア)
・ インターフェロンガンマ-1b(アクチムネ)
・ ペグインターフェロンアルファ-2a(ペガシス プロクリック)
・ ペグインターフェロンアルファ-2a及びリバビリン(ペグインターフェロン)
・ ペグインターフェロンアルファ-2b及びリバビリン(ペグイントロン/レベトールコンボパック)
・ ペグインターフェロンベータ-1a(プレグリディ)
・ インターフェロンアルファコン-1(インファゲン、は米国では中止されている)。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「含む」、「含んでいる」、「含有する」、「有する」等は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有することができ、「含む」、「含んでいる」等を意味することができる。「本質的に~からなる」又は「本質的にから成る」も同様に、米国特許法において帰属される意味を有し、そして前記用語は、制限がなく(open-ended)、記載されるものの基本的又は新規な特徴が、記載されるもの以上の存在によって変化しない限り、言及されるもの以上のものの存在を許容するが、先行技術の実施態様を除外する。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「尿酸降下剤」又は「UALA」は、化合物の投与により被験体中の尿酸を減少させる化合物を指す。UALAの例としては、ウリカーゼ(例えば、ペグロチカーゼ又はラスブリカーゼ)、尿酸排泄促進剤(例えば、ロサルタン、プロベネシド、ベンズブロマロン、アトルバスタチン、フェンフィブラート、レシヌラド、ベヌリナド、スルフィンピラゾン、又はピラジナミド)、キサンチンオキシド-レダクターゼ阻害剤(アロプリノール、フェブキソスタット、TMX-049、オキシプリノール、NC-2500、NC-2700、NMDA等)、又はSGLT2阻害剤(カナグリフロジン、ダパグリフロジン又はエンパグリフロジン)のようなキサンチンオキシダーゼの発現を阻害する薬剤、又はXOのXDHに対する比率を加減する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。実際、尿酸及びオキシプリノールは、核酸の構成要素である可能性があるため、オキシプリノールの抗ウイルス作用がコロナウイルス感染症において有益であることを証明し得る(Perez-Mazliah D et al, Allupurinol reduced antigen-specific and polyclonal activation of human T-cells, Frontiers in Immunology, Sept 2012)。
【0063】
インターロイキン(IL)、細胞間の情報伝達を媒介する天然に存在するタンパク質の任意の1群である。インターロイキンは、細胞の増殖、分化、及び運動を調節する。インターロイキンは、炎症などの免疫反応を刺激することにおいて特に重要である。
【0064】
ヒトゲノムは、50以上のインターロイキン及び関連するタンパク質をコードする(Brocker C, Thompson D, Matsumoto A, Nebert DW, Vasiliou V (Oct 2010). "Evolutionary divergence and functions of the human interleukin (IL) gene family". Human Genomics. 5 (1): 30-55)。
【0065】
免疫系の機能は、大部分がインターロイキンに依存しており、そして多くのインターロイキンのまれな欠損が報告されており、いずれも自己免疫疾患又は免疫不全を特徴とする。大多数のインターロイキンは、単球、マクロファージ、及び内皮細胞を介して合成されると同様に、ヘルパーCD4Tリンパ球によっても合成される。インターロイキンは、Tリンパ球及びBリンパ球、及び造血細胞の発生及び分化を促進する。
【0066】
この開示は、記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、もちろん、そのようなものは、変わり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、具体的な実施態様を説明することのみを目的としており、また本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定されることを意図していないことも理解されたい。
【0067】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、十分の一単位までの各中間値(文脈が明確に別のことを指示しない限り)、及び記載された範囲内の任意の別に記載された値又は中間値は、本開示の範囲内に包含されるものと理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、より小さな範囲に独立して含まれ得、そしてまた、記載された範囲内の任意の特に除外された制限に従うことを条件として、本開示内に包含される。記載された範囲が前記制限の一方又は両方を含む場合には、これらの含まれる制限の一方又は両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0068】
この明細書に引用されるすべての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により組み込まれるように具体的且つ個別に示されるかのように、本明細書に参照により組み込まれ、そして刊行物が引用されているものに関連する方法及び/又は材料を開示且つ記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、その出願日の前の開示のためのものであり、そして事前の開示によるそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行物の日付と異なることができる。
【0069】
別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセス等に限定されず、そのようなものは変化することが出来る。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであり、そして限定することを意図しないことも理解されたい。また、本開示において、工程は、これが論理的に可能な場合、異なる順序で実行されることが可能である。
【0070】
医薬製剤及び投与
本開示はまた、ウイルス又は細菌感染を処置し、及び/又はインターフェロンの抗ウイルス活性を増強することに合わせて使用するためのUALA剤の医薬組成物及び医薬製剤も含む。典型的な実施態様では、医薬組成物は、被験体における尿酸を低下させるための治療上有効な量のUALAを含む。本方法で使用するための医薬組成物は、全身投与のために処方された、被験体において本明細書に記載される疾患を予防又は治療するのに十分な量の1つ以上のUALAの治療上有効な量を含む。任意選択的な実施態様では、UALAは、少なくとも1つの他の活性剤と共に共投与され得る。被験体は、好ましくはヒトであるが、同様に非ヒトあることもできる。適切な被験体は、ウイルス及び/又は細菌感染を有する疑いがあるか、ウイルス及び/又は細菌感染を有すると診断されているか、又はウイルス及び/又は細菌感染を発症するリスクがある個体であることができる。
【0071】
UALAを含む組成物はまた、薬学的に許容され得る担体も含むことができる。そのような組成物は、例えば、結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、及び例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の賦形剤のような通常用いられる添加物を含み得る。典型的には、これらの組成物は、1%~95%の活性成分、好ましくは2%~70%の活性成分を含有する。
【0072】
UALAはまた、投与の経路及び標準的な薬学的慣行に従って選択された、互換性があり、生理学的に耐容性のある希釈剤又は賦形剤と混合することができる。適切な希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、及びそれらの組み合わせである。さらに、所望であれば、組成物は、湿潤剤又は乳化剤、安定化剤又はpH緩衝剤のような少量の補助物質を含み得る。
【0073】
製剤はまた、処置される特定の効能のために必要な1つ以上の活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。このような分子は、意図された目的に有効である量の組み合わせで適切に存在する。
【0074】
UALAは、任意の適切な手段によって投与のために処方され得る。インビボ投与のために、医薬組成物は、好ましくは、経口的又は非経口的、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内に投与される。特定の実施態様では、医薬組成物は、ボーラス注射によって静脈内又は腹腔内に投与される(Stadler, et al., U.S. Pat. No. 5,286,634)。
【0075】
疾患の予防又は治療のために、適切な適用量は、疾患の重症度、予防又は治療の目的で投与されるかどうかに依存し、過去の治療、患者の病歴及び薬剤に対する応答、並びに主治医の判断に依存する。
【0076】
結果として得られた調製物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。その後、水溶液は、使用のために包装されるか、又は無菌条件下で濾過され、そして凍結乾燥され、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌した水溶液と組み合わされる。組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等のpH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤等のような、生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容され得る補助物質を含有し得る。さらに、脂質懸濁液は、貯蔵上のフリーラジカル及び脂質過酸化損傷に対して脂質を保護する脂質保護剤を含み得る。α-トコフェロールのような親油性フリーラジカルクエンチャー及びフェリオキサミンのような水溶性鉄特異的キレート剤が適している。
【0077】
この開示の医薬組成物は、様々な形態であり得、形態は、投与の好ましい方法に従って選択され得る。形態は、例えば、錠剤、トローチ、丸薬、粉末、液体溶液又は懸濁液、座薬、及び注射及び注入可能な溶液のような固体、半固体(semi-solid)及び液体の投与形態を含む。好ましい形態は、意図された投与の方法及び治療用途に依存する。経口投与について、UALAは、分散性錠剤、口腔内崩壊錠、発泡錠、チュアブル錠、スプリンクル顆粒、乾燥懸濁液又は再構成用の乾燥シロップ、急速溶解ウエハー、トローチ、又はチューインガムとして処方され得る。
【0078】
本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、取り込み又は安定性を刺激する補因子を用いるか又は用いずに、滅菌された等張性製剤に入れることができる。好ましくは、製剤は、液体であるか、又は凍結乾燥粉末で有り得る。この溶液は、凍結乾燥し、冷蔵で保存し、そして投与前に滅菌した注射用水(USP)で再構成することができる。
【0079】
非経口投与のための製剤は、水性及び非水性の滅菌注射溶液を含み、これらは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得、そして水性及び非水性の滅菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。製剤は、例えば密封されたアンプル及びバイアルなどの、単回用量又は複数回用量の容器中で提供され、使用直前まで、例えば生理食塩水又は注射用水のような滅菌液体担体の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注入溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0080】
本開示の方法及び使用は、尿酸レベルが上昇する前に、ウイルス及び/又は細菌感染症に罹患した被験体の治療におけると同様に(より適切に)、予防的に用いられ得ることが理解されるであろう。
【0081】
本開示は、特定の実施態様に対する参照を有する。しかしながら、本開示のより広い精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更がここになされ得ることは明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。本明細書における本開示は、上述の実験及び以下の実施例によって本明細書に例示されており、これらは限定的であると解釈されるべきではない。この出願を通じて引用されたすべての参照、係属中の特許出願及び公開された特許の内容は、本明細書によって参照により明示的に組み込まれる。特定の用語が用いられているが、別段の指示がない限り、それらは当技術分野と同様に使用される。UALAの処方及び投与することに関するその他の情報は、米国特許公開公報第20160038595号及び国際公開公報第2007/018687号で提供されており、その教示は、本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】