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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】造血幹細胞を貯蔵するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20240228BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240228BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240228BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20240228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/28
A61P7/00
C12N5/0789
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555195
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022019140
(87)【国際公開番号】W WO2022192136
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,267
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507318956
【氏名又は名称】ヘマネクスト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ソウェミモ-コーカー サミュエル オー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BD12
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA60
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB63
4C087DA14
4C087DA16
4C087MA66
4C087NA03
4C087ZA51
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示は、幹細胞の改善された貯蔵及び増殖のためのデバイス及び方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞を必要とする患者への移植のための幹細胞を調製するための方法であって、
幹細胞を含有する血液製剤を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアと酸素吸着剤とを含む低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することと、
前記血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、前記血液製剤を混合することと、
前記血液製剤をフィルタに適用することを含む、前記血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することであって、前記幹細胞及び白血球が、前記フィルタ上に保持され、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製する、分離することと、
等張性培地を用いて、前記フィルタから前記幹細胞を溶出させることと、
前記幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移し、前記細胞を貯蔵して、低酸素貯蔵された幹細胞を調製することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記低酸素貯蔵容器に移す前又は後に、前記幹細胞を低酸素幹細胞増殖容器に移すことと、前記幹細胞を増殖させて、増殖した幹細胞集団を形成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増殖した幹細胞を、それを必要とする患者に移植することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合すること、分離すること、溶出させること、及び移すことが、各々、400~2000PaのpO2下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合することが、最大3時間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合することが、前記血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が、少なくとも50%減少するまでである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記等張性培地が、少なくとも5333PaのpO2を含む脱酸素等張性培地である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移すことが、前記低酸素貯蔵容器内に直接溶出させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶出させることが、50~200mLの前記等張性培地を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記等張性培地を、空気中の酸素と平衡化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、折りたたみ可能な内側血液容器と、前記外側レセプタクルと前記折りたたみ可能な内側血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、前記外側レセプタクルを通り抜け、前記折りたたみ可能な容器と低酸素流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含み、前記低酸素貯蔵容器が、1,400Pa未満のpO2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記血液製剤が、末梢血、ヒト臍帯血(HUCB)、及び骨髄からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
輸血のための幹細胞を調製するための方法であって、
幹細胞を含む血液製剤を収集することと、
前記血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、
前記幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、
前記幹細胞を、3500Pa未満の酸素の分圧で、37℃未満の温度で所定時間、低酸素環境で貯蔵することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、折りたたみ可能な内側血液容器と、前記外側レセプタクルと前記折りたたみ可能な内側血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、前記外側レセプタクルを通り抜け、前記折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含み、その組み合わせが、1,400Pa未満のpO2を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
移植のための幹細胞を調製するための方法であって、
ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、
前記HUCBを白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタに適用することによって、前記HUCBから白血球及び幹細胞を分離することと、
等張性培地を用いて、前記幹細胞保持フィルタから前記幹細胞を溶出させることと、
前記幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む、方法。
【請求項16】
移植のための幹細胞を処理するためのキットであって、
低酸素収集容器と、
白血球及び幹細胞の回復フィルタと、
濾過された上清を収集するための第1の付属低酸素貯蔵容器と、
幹細胞維持培地を含む第2の付属低酸素貯蔵容器と、を含み、
前記第2の付属低酸素貯蔵容器が、前記白血球及び幹細胞の回復フィルタと流体連通しており、
前記キットが、1,400パスカル(Pa)未満の酸素の分圧(pO2)を含む、キット。
【請求項17】
移植のための幹細胞を調製する方法であって、
凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵容器を37℃にさらすことと、
凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む前記低酸素貯蔵バッグを、前記凍結した幹細胞を解凍して、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を生成するために、42℃未満の水浴に浸漬することと、
前記解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を、2.5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する等体積の低酸素溶液で希釈して、希釈した低酸素貯蔵された幹細胞を形成することと、を含む、方法。
【請求項18】
移植のための幹細胞を調製する方法であって、
凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを少なくとも25℃にさらして、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を形成することと、
前記解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を遠心分離し、上清を除去することと、
前記低酸素貯蔵された幹細胞を、3%のデキストラン40を含む溶液に再懸濁させることと、を含み、前記低酸素貯蔵バッグが、3500Pa未満の低酸素環境を含む、方法。
【請求項19】
幹細胞を必要とする対象において移植のための幹細胞を調製するための方法であって、
低酸素貯蔵された幹細胞を解凍することと、
低酸素幹細胞増殖システムで前記低酸素貯蔵された幹細胞を増殖させ、低酸素増殖した幹細胞を調製することと、
前記低酸素増殖した幹細胞を、それを必要とする前記対象に移植することと、を含み、前記低酸素貯蔵バッグが、3500Pa未満の低酸素環境を含む、方法。
【請求項20】
移植のための細胞を調製するための方法であって、
幹細胞を含有する血液製剤を、低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することであって、前記低酸素収集容器が、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素のO2透過性を特徴とする酸素(O2)バリアと、酸素吸着剤と、を含む、収集することと、
前記血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、前記血液製剤を混合することと、
前記血液製剤を幹細胞結合フィルタに適用して、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製することを含む、前記血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、
等張性培地を用いて、前記フィルタから前記幹細胞を溶出させることと、
前記幹細胞を、25バーラーより大きな酸素(O2)透過性を有し、低酸素貯蔵された幹細胞を形成する材料を含む内側細胞適合性バッグを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、を含み、
前記幹細胞が、前記収集することと前記移すこととの間に1時間を超えて正常酸素圧条件にさらされず、前記正常酸素圧条件が、少なくとも約21,000パスカルの酸素の分圧を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月8日に出願された米国仮特許出願第63/158,267号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、幹細胞の低酸素貯蔵のための方法に関する。本開示はまた、幹細胞の事前調整のための方法に関する。本開示は更に、低酸素デバイスにおいて幹細胞を貯蔵するための方法に関する。本開示は更に、ヒト臍帯血由来の幹細胞の低酸素性の成長及び増殖のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
幹細胞は、人体の全ての部分の基礎である。幹細胞から組織、臓器、及び血液細胞の発達へのこのプロセスは複雑であり、かつ予測不可能である。この複雑なプロセスに関与する要因の1つは酸素である。
【0004】
研究によると、幹細胞は、異なる濃度の酸素にさらされる微小環境に存在し、その酸素は、その酸素は、その生物学、維持、分化、及び異なるストレスシグナルに対する応答において重要な役割を果たすことが示されている。Abdollahi H,et al.,“The role of hypoxia in stem cell differentiation and therapeutics”J Surg Res,165(1):112-117(2011)、及びDrela K,Sarnowska A,et al.,Low oxygen atmosphere facilitates proliferation and maintains undifferentiated state of umbilical cord mesenchymal stem cells in an hypoxia inducible factor-dependent manner.Cytotherapy,16:881-892(2014)を参照されたい。
【0005】
通常の生理学的条件下では、HSCは、比較的低い増殖、静止状態に維持され、活性酸素種(ROS)の蓄積及びDNA損傷などのストレスから保護され、過剰増殖に起因するそれらの枯渇を防止すると考えられる。Mas-Bargues C,et al.“Relevance of Oxygen Concentration in Stem Cell Culture for Regenerative Medicine”Int.J.Mol.Sci.,20(1195):1-27(2019)、Simon,M.C.and Keith,B.“The role of oxygen availability in embryonic development and stem cell function”Nat.Rev.Mol.Cell Biol.9,285-296(2008)、Bigarella C L,and Liang R,Ghaffari S.“Stem cells and the impact of ROS signaling”Development,141:4206-4218(2014)、Lee J,et al.,“Pharmacological regulation of oxidative stress in stem cells”Oxidative Medicine and Cellular Longevity.1-13(2018)を参照されたい。現在、酸素は、インビトロ及びインビボの両方で、細胞の代謝基質及びシグナル伝達分子の両方として機能するというコンセンサスが存在する。Mohyeldin A,et al.“Oxygen in stem cell”Cell Stem Cell.7:150-161(2010)を参照されたい。
【0006】
特定の種類の成体幹細胞では、インビトロでの低い酸素濃度は、多能性状態の増殖及び維持を促進する。Grayson WL,et al.“Hypoxia enhances proliferation and tissue formation of human mesenchymal stem cells”Biochem Biophys Res Comm.358:948-953(2007)、及びCsete M.“Oxygen in the cultivation of stem cells”Ann NY Acad Sci.1049:1-8(2005)。これとは逆に、他の研究者は、低酸素が特定の細胞株への分化のための強力な刺激であることを実証している。Koay EJ,et al.,“Hypoxic chondrogenic differentiation of human embryonic stem cells enhances cartilage protein synthesis and biomechanical functionality”Osteoarthritis and Cartilege.10:1-7(2008)、及びKhan WS,et al.,“Hypoxic conditions increase hypoxia-inducible transcription factor 2α and enhance chondrogenesis in stem cells from the infrapatellar fat pad of osteoarthritis patients”Arthritis Research Ther.9:1-9(2007)。あるいは、低酸素は、サイトカイン産生を刺激することができ、それによって、治療用血管新生において役割を果たす可能性がある。Thangarajah H,et al.“IFATS Series:Adipose stromal cells adopt a proangiogenic phenotype under the influence of hypoxia”Stem Cells.27:266-274(2009)、Sadat S,et al.“The cardioprotective effect of mesenchymal stem cells is mediated by IGF-1 and VEGF”Bioch Biophys Res Comm.363:674-679(2007)、及びRehman J,et al.“Secretion of angiogenic and anti-apoptotic factors by human adipose stromal cells”Circulation.109:1292-1298(2004)を参照されたい。幹細胞による血管新生への関与は、血管新生に関与する細胞の分化を介して直接的に、又は低酸素によって刺激されるサイトカイン産生を介して間接的に生じ得る。Cao Y,et al.“Human adipose tissue-derived stem cells differentiate into endothelial cells in vitro and improve postnatal neovascularization in vivo”Biochem Biophys Res Comm.332:370-379(2005)、及びNakagami H,et al.“Adipose tissue-derived stromal cells as a novel option for regenerative cell therapy”J Atheroslcer Thromb.13:77-81(2006)を参照されたい。幹細胞を、ニッチな微小環境によって提供されるものと同じではない酸素レベルで培養する場合、細胞は、酸化ストレス、代謝ターンオーバー、増殖及び自己再生の減少、運動性の阻害、分化電位の変化、及び幹細胞性電位損失などの一連の変化を受ける。幹細胞が、その生理的酸素レベルで培養される場合、これらの結果は全て回避することができる。
【0007】
本明細書では、幹細胞の貯蔵及び増殖中に幹細胞を低酸素状態に保つためのデバイス及び方法を実証する。この低酸素状態は、患者への移植のための幹細胞の改善された品質を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、幹細胞を必要とする患者内で移植のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素O2透過性を特徴とする酸素(O2)バリアと酸素吸着剤とを含む低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することと、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合することと、血液製剤をフィルタに適用することを含む、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することであって、幹細胞及び白血球が、フィルタ上に保持され、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製する、分離することと、等張性培地を用いて、フィルタから幹細胞を溶出させることと、幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移し、低酸素貯蔵された幹細胞を調製することと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0009】
本開示はまた、輸血のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含む血液製剤を収集することと、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、幹細胞を、3500Pa未満の低酸素環境で、37℃未満の温度で所定時間貯蔵することと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0010】
本開示はまた、移植のための幹細胞を調製するための方法であって、ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、HUCBを白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタに適用することによって、HUCBから白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、幹細胞保持フィルタから幹細胞を溶出させることと、幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0011】
本開示はまた、移植のための幹細胞を処理するためのキットであって、低酸素収集容器と、白血球及び幹細胞の回復フィルタと、濾過された上清を収集するための第1の付属低酸素貯蔵容器と、幹細胞維持培地を含む第2の付属低酸素貯蔵容器と、を含み、第2の付属低酸素貯蔵容器が、白血球及び幹細胞の回復フィルタと流体連通しており、流体連通が、1,400パスカル(Pa)未満の酸素の分圧(pO2)を含む、キットを提供し、かつそれを含む。
【0012】
本開示はまた、移植のための幹細胞を調製する方法であって、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵容器を37℃にさらすことと、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを、凍結した幹細胞を解凍して、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を生成するために、42℃未満の水浴に浸漬することと、解凍した幹細胞を、2.5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する等体積の低酸素溶液で希釈して、希釈した幹細胞を形成することと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0013】
本開示はまた、移植のための幹細胞を調製する方法であって、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを少なくとも25℃にさらして、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を形成することと、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を遠心分離し、上清を除去することと、低酸素貯蔵された幹細胞を、3%のデキストラン40を含む溶液に再懸濁させることと、を含み、低酸素貯蔵バッグが、3500Pa未満の低酸素環境を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0014】
本開示はまた、幹細胞を必要とする対象において移植のための幹細胞を調製するための方法であって、低酸素調製された幹細胞を解凍することと、低酸素幹細胞増殖システムで、幹細胞を増殖させることと、を含み、増殖した幹細胞を、それを必要とする対象に移植することを含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0015】
本開示は更に、移植のための細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することであって、低酸素収集容器が、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素のO2透過性を特徴とする酸素(O2)バリアと酸素吸着剤とを含む、収集することと、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合することと、血液製剤を幹細胞結合フィルタに適用して、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製することを含む、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、フィルタから幹細胞を溶出させることと、幹細胞を、25バーラーより大きな酸素(O2)透過性を有し、低酸素貯蔵された幹細胞を形成する材料を含む内側細胞適合性バッグを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、を含み、幹細胞が、収集することと移すこととの間に1時間を超えて正常酸素圧条件にさらされず、正常酸素圧条件が、少なくとも約21,000パスカルの酸素の分圧を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0016】
本開示のいくつかの態様は、単なる例として、添付の図面を参照して本明細書において説明される。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例としてであり、本開示の実施形態の例示的な考察の目的のためであることが強調される。この点に関して、図面とともに解釈される説明は、本開示の態様がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書の態様による、濾過技術を使用して、幹細胞を収集し、濃縮することの概略図である。概略図は、(A)抗凝固ヒト臍帯血を含有する低酸素貯蔵バッグ、(B)濾過後のヒト臍帯血を含有する低酸素貯蔵バッグ、及び(C)回収された幹細胞を収集するための低酸素貯蔵バッグを示す。
図2】本明細書のある態様で提供されるような、低酸素幹細胞増殖容器の概略図である。
【0018】
本明細書において記載される実施例は、本発明のいくつかの実施形態を例示するが、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者は、本開示の実施において使用可能な多くの方法を認識するであろう。実際、本開示は、説明される方法及び材料に決して限定されない。本明細書で引用される任意の参照文献は、参照によってその全体が組み込まれる。本開示の目的のために、以下の用語は、以下で定義される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0021】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」、及びそれらの同根語は、「含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0022】
「からなる(consisting of)」という用語は、「を含み、これに限定する」ことを意味する。
【0023】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部品が、特許請求される組成物、方法、又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にのみ、追加の成分、工程、及び/又は部品を含み得ることを意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別途示さない限り、複数の参照を含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0025】
本出願を通じて、本開示の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の値を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。本明細書で使用される場合、「~」は、その範囲が、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を含むが、外部値を含まないことを意味する。例えば、「1~7」は、値1又は7を含まず、「0~7」は、値0又は7を含まない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、及び医学分野の実践者によって既知の様式、手段、技術、及び手順から既知であるか、又はそれらから容易に開発される様式、手段、技術、及び手順を含むが、これらに限定されない、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術、及び手順を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「バッグ」という用語は、可撓性材料から調製される折り畳み可能な容器を指し、ポーチ、チューブ、及びマチ袋を含む。特定の態様では、バッグは、非折り畳み可能な容器を指す。本明細書で使用され、本開示において含まれる場合、バッグという用語は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のひだを有し、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の側面上で封止されるか又は結合される、折り畳まれたバッグを含む。バッグは、1つ以上の材料のシートの結合を含む、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して調製される。バッグを形成するための材料を結合する方法は、当該技術分野において既知である。国際公開第WO2016/145210号を参照されたい。本開示には、射出及びブロー成形によって調製される容器も含まれ、かつ提供される。ブロー成形容器及び射出成形容器を調製する方法は、当該技術分野において既知である。米国特許第4,280,859号、及び同第9,096,010号を参照されたい。好ましいタイプのブロー成形又は射出成形容器は、酸素の低減に関して血液又は血液成分を収容するために拡張することが可能でありながら、効率的な包装及び出荷のためにサイズを低減させることができる可撓性容器である。それらはまた、完全に拡張するまで、血液の体積に適合するように設計され得る。本開示を通して使用される場合、バッグは、折り畳み可能な容器の形態であり、2つの用語は、本開示を通して互換的に使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「正常酸素圧」又は「正常酸素圧条件」という用語は、枯渇していないレベルの酸素を有する血液製剤又は環境を指す。ある態様では、正常酸素圧又は正常酸素圧条件は、少なくとも21,000Paの酸素の分圧を指す。本明細書で使用される場合、「中間酸素圧」又は「中酸素圧条件」という用語は、非枯渇レベルの酸素及び最小限の酸素の侵入を有する血液製剤又は環境を指す。複数の態様では、中間酸素圧又は中間酸素圧条件は、少なくとも13,000Paの酸素の分圧を指す。別の態様では、中間酸素圧又は中間酸素圧条件は、13,000Pa~20,000Paの酸素の分圧を指す。本明細書で使用される場合、「低酸素」又は「低酸素状態」という用語は、枯渇したレベルの酸素を有する血液製剤又は環境を指す。ある態様では、低酸素又は低酸素状態は、12,000Pa未満の酸素の分圧を指す。別の態様では、低酸素又は低酸素状態は、400~12,000Paを指す。更に別の態様では、低酸素又は低酸素状態は、2,000~10,000Pa、3,000~10,000Pa、4,000~10,000Pa、2,000~12,000Pa、3,000~12,000Pa、又は4,000~12,000Paを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「血液」及び「血液製剤」という用語は、幹細胞を含有する末梢血、ヒト臍帯血(HUCB)、及び骨髄を指す。血液の温度は、採取プロセスの段階とともに変化し、採取時及び採取地点において通常の体温37℃で開始するが、患者の身体から一旦除去されると、急速に約30℃まで低下する。1単位の収集した血液を、未処理の場合、約6時間で室温まで冷却する。実際には、輸血のための血液は、24時間以内に処理され、約2℃~6℃、通常は4℃で冷蔵される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「血液幹細胞」又は「幹細胞」という用語は、赤血球、白血球、及び血小板を含む全ての型の血球へと発達することができる未成熟細胞を指す。血液幹細胞は、造血幹細胞としても知られている。血液幹細胞は、ドナーの臍帯血、骨髄及び末梢血中に見出され、それらから抽出される。
【0031】
幹細胞は、様々な種類の細胞に分化し、無期限に分裂して同じものを産生する能力を有する、未分化又は部分分化細胞である。これらの娘細胞は、新しい幹細胞になるか(自己再生)、又は血液細胞、脳細胞、心筋細胞、若しくは骨細胞などのより特異的な機能を有する特化した細胞になる(分化)。Morrison SJ,et al.,Regulatory mechanisms in stem cell biology,Cell,88:287-298(1997)(Morrison1997)、及びReubinoff BE,et al.,Embryonic stem cell lines from human blastocysts:somatic differentiation in vitro,Nat.Biotechnol,18:399-404(2000)(Reubinoff 2000)(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0032】
理論に限定されるものではないが、最近の証拠は、幹細胞を用いて、全てではないにしても多くの組織を再集団化し、生理学的機能及び解剖学的機能を回復させることができることを実証する。したがって、幹細胞は、神経系外傷、悪性腫瘍、遺伝性疾患、ヘモグロビン異常症、及び免疫不全を含む多種多様な疾患及び傷害の治療に使用される可能性を有する。一般的に、幹細胞は、胚性幹(ES)細胞及び成体幹(AS)細胞の2つの種類に分けられる。胚性幹細胞は、3~5日齢の胚から調製される。この段階で、胚は、胚盤胞と呼ばれ、約150個の細胞を有する。Morrison1997及びReubinoff2000を参照されたい。ES細胞は、全能性であると理解される。
【0033】
成体幹細胞は、自然の細胞死サイクル、損傷、又は疾患を通して失われた細胞型を迅速に補充することができる。成体幹細胞は、いくつかの細胞型(多能性(pluripotent)又は多能性(multipotent))に分化することができ、あるいは1つの細胞型に限定することができる(単能性)。
【0034】
多能性幹細胞の1つの種類は、血液及び免疫細胞を補充することに関与する造血幹細胞(HSC)である。造血幹細胞(HSC)は、骨髄系(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、及び樹状細胞)並びにリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての種類の血液細胞を生じさせることができる多能性幹細胞である。成体幹細胞は、子孫細胞及びそれらが分化する最終分化細胞によって大幅に数が上回っている。McKee C,et al.,Advances and challenges in stem cell culture.Colloids and Surf B:Biointerfaces,159:62-77(2017)及びBieniasz M,et al.Stem cell general characteristics and sources.MEDtube Science,2:8-14(2014)(参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0035】
成体幹細胞は、胚性幹細胞の全能性の多くを有するように変更することができ、人工多能性細胞(iPSC)と呼ばれる。成体幹細胞の3つの主なドナー源は、骨髄、脂肪組織、及び末梢血である。ヒト臍帯血(HUCB)はまた、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、及び他の前駆細胞を含む成体幹細胞の豊富な供給源である。造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)、並びにいくつかの成熟細胞は、それらの表面上にCD34と呼ばれる抗原を発現し、CD34は、造血幹細胞の1つの識別子として広く使用され、幹細胞移植のプロトコルにおける用量要件として使用されてきた。
【0036】
本開示は、ポリコーム群RINGフィンガータンパク質4(BMI-1)、分化クラスター21(CD21)、分化クラスター22(CD22)、分化クラスター34(CD34)、分化クラスター38(CD38)、分化クラスター41(CD41)、分化クラスター44(CD44)、分化クラスター45(CD45)、分化クラスター48(CD48)、分化クラスター90(CD90、Thy1)、分化クラスター105(CD105)、分化クラスター106(CD106)、分化クラスター117(CD117、c-kit)、分化クラスター127(CD127)、分化クラスター150(CD150)、c-myc、内皮細胞プロテインc受容体(EPCR)、リンパ球抗原-6(Ly6A/E、sca-1)、MYB、誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質(Mcl-1)、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、Skp、キュリン、F-box(SCF、kitリガンド)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5a(STAT5a)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5b(STAT5b)、及び血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)からなる群から選択される1つ以上の造血幹細胞マーカーを含む造血幹細胞を提供し、かつそれを含む。別の態様では、造血幹細胞は、ポリコーム群RINGフィンガータンパク質4(Bmi-1)、分化クラスター21(CD21)、分化クラスター22(CD22)、分化クラスター34(CD34)、分化クラスター38(CD38)、分化クラスター41(CD41)、分化クラスター44(CD44)、分化クラスター45(CD45)、分化クラスター48(CD48)、分化クラスター90(CD90、Thy1)、分化クラスター105(CD105)、分化クラスター106(CD106)、分化クラスター117(CD117、c-kit)、分化クラスター127(CD127)、分化クラスター150(CD150)、c-myc、内皮細胞プロテインc受容体(EPCR)、リンパ球抗原-6(Ly6A/E、sca-1)、MYB、誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質(Mcl-1)、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、Skp、キュリン、F-box(SCF、kitリガンド)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5a(STAT5a)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5b(STAT5b)、及び血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)からなる群から選択される2つ以上の造血幹細胞マーカーを含む。
【0037】
ある態様では、本開示は、CD44、CD90、CD105、CD106、CD166、及びStro-1からなる群から選択される1つ以上の間葉系幹細胞マーカーを含む間葉系幹細胞(MSC)である幹細胞を提供し、かつそれを含む。別の態様では、本開示は、CD44、CD90、CD105、CD106、CD166、及びStro-1からなる群から選択される2つ以上の間葉系幹細胞マーカーを含む間葉系幹細胞(MSC)を提供する。更に別の態様では、CD44、CD90、CD105、CD106、CD166、及びStro-1からなる群から選択される3つ以上の間葉系幹細胞マーカーを含む間葉系幹細胞(MSC)。別の態様では、造血幹細胞は、Bmi1、Mel18、Rae28、Cbx2、Cbx8、Ring1B、Ezh1、Ezh2、Eed、及びSuz12からなるポリコーム群タンパク質の群から選択される群から選択される1つ以上の造血幹細胞マーカーを含む。Takamatsu-Ichihara,E.and Kitabayashi,I.,“The roles of Polycomb group proteins in hematopoetic stem cells and hematological malignancies”Intern Jour.Of Hematology.103,634-642(2016)を参照されたい。
【0038】
本開示は、幹細胞の品質及び増殖能を改善するために、収集及び濃縮の間に低酸素条件下で幹細胞を調製するための方法を提供し、かつそれを含む。より具体的には、本開示の方法は、収集段階及び増殖段階の間に酸素を除外することを提供する。
【0039】
ある態様では、本開示は、幹細胞を必要とする患者への移植のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、低い酸素の分圧を有する酸素吸収環境内に収集することと、血液製剤を混合して酸素を減少させることと、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む方法を提供する。ある態様では、幹細胞は、室温で最大3日間貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、室温で少なくとも1日間貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、凍結して貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、幹細胞移植を必要とする患者に移植される。室温は、20~22℃である。室温は、19~25℃である。室温は、少なくとも20℃である。室温は、22℃未満である。室温は、20~23℃である。室温は、19~22℃である。本開示の別の態様では、幹細胞は、室温で7日間未満貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、室温で1~7日間貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、室温で少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、及び少なくとも7日間貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、4℃で1~7日間、1~3日間、1~5日間、1~14日間、2~7日間、2~8日間、4~7日間、5~10日間、又は3~14日間貯蔵される。別の態様では、幹細胞は、4℃で14日未満、10日未満、7日未満、5日未満、及び3日未満貯蔵される。更に別の態様では、幹細胞は、4℃で少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、及び少なくとも10日間貯蔵される。
【0040】
本開示は、幹細胞を必要とする患者への移植のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素のO2透過性を特徴とするO2バリアと酸素吸着剤とを含む低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することと、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合することと、血液製剤を幹細胞及び白血球結合フィルタに適用することによって、上述の血液製剤から白血球及び幹細胞を分離して、低い酸素の分圧で、幹細胞が枯渇した血液製剤及び幹細胞が結合したフィルタを生成することと、を含む方法を提供し、かつそれを含む。幹細胞を、等張性培地を用いてフィルタから溶出させ、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移し、低酸素幹細胞を調製する。幹細胞を、低酸素条件下、37℃未満の温度で貯蔵して、貯蔵された低酸素幹細胞を調製することができる。
【0041】
本開示は、輸血のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含む血液製剤を収集することと、上述の血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、上述の幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素のO2透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、上述の幹細胞を、未満の低酸素環境で、37℃以下の温度で所定時間貯蔵することと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0042】
本開示は、移植のための幹細胞を調製するための方法であって、ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、UCBを白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタに適用することによって、上述のHUCBから白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、上述の幹細胞保持フィルタから上述の幹細胞を溶出させることと、上述の幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0043】
本開示は、移植のための幹細胞を調製するための方法であって、ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、UCBを白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタに適用することによって、上述のHUCBから白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、上述の幹細胞保持フィルタから上述の幹細胞を溶出させることと、上述の幹細胞を中間酸素圧貯蔵容器に移すことと、を含み、中間酸素圧貯蔵容器が、酸素の侵入を防ぐ、方法を提供し、かつそれを含む。
【0044】
本開示のある態様では、幹細胞移植を必要とする患者への移植のための幹細胞を調製するための方法が提供される。別の態様では、それを必要とする患者は、がん又は免疫系疾患を有する人である。別の態様では、それを必要とし、幹細胞移植を必要とする患者は、血液又は骨髄の悪性腫瘍又は非悪性腫瘍を有する患者である。更に別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、再生不良性貧血及び発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、精巣がん、血液産生の先天性障害(例えば、鎌状赤血球貧血、サラセミア)、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)、先天性角化不全症候群、又は自己免疫障害を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、急性骨髄性白血病(AML)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、再生不良性貧血を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、慢性リンパ球性白血病(CLL)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、慢性骨髄性白血病(CML)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、ホジキンリンパ腫を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、非ホジキンリンパ腫を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、多発性骨髄腫を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、骨髄異形成症候群を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、精巣がんを有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、血液産生の先天性障害(例えば、鎌状赤血球貧血、サラセミア)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、先天性角化不全症候群を有する人である。別の態様では、幹細胞移植を必要とする人は、自己免疫障害を有する人である。ある態様では、本開示は、幹細胞を必要とする患者への移植に適した体積の幹細胞を提供し、かつそれを含む。別の態様では、移植に適した体積は、10~50ミリリットル/キログラム(mL/kg)である。別の態様では、移植に適した体積は、20~40mL/kgである。別の態様では、移植に適した体積は、少なくとも10mL/kgである。別の態様では、移植に適した体積は、少なくとも20mL/kgである。更なる態様では、適切な体積は、30mL/kgである。
【0045】
本開示は、幹細胞を含有する血液製剤を低酸素収集バッグに収集するための方法を提供し、かつそれを含む。本明細書に提供される態様では、低酸素収集バッグは、血液の凝固又は幹細胞の凝集を防止するための抗凝固剤を含有する。ある態様では、抗凝固剤は、クエン酸-リン酸デキストロース(CPD)、クエン酸-リン酸-デキストロース-アデニン1(CPDA-1)、酸性クエン酸デキストロース(ACD)及びヘパリンからなる群から選択される。別の態様では、抗凝固剤は、クエン酸-リン酸デキストロース(CPD)である。別の態様では、抗凝固剤は、クエン酸-リン酸-デキストロース-アデニン1(CPDA-1)である。別の態様では、抗凝固剤は、酸性クエン酸デキストロース(ACD)である。更に別の態様では、抗凝固剤は、ヘパリンである。
【0046】
複数の態様では、低酸素収集バッグに収集された幹細胞を含有する血液製剤を混合して、血液製剤からの酸素枯渇を増加させる。本明細書に提供される態様では、低酸素収集バッグに収集された幹細胞を含有する血液製剤の酸素の分圧をできるだけ早く減少させることが重要である。ある態様では、混合の1~3時間後、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を酸素吸収環境で混合する。別の態様では、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が、3時間以内に70~95%、60~95%、50~95%、40~95%、30~95%、30~70%、30~80%減少するまで、血液製剤を酸素吸収環境で混合する。更に別の態様では、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が、混合の3時間以内に少なくとも30、40、50、60、70、80、90、又は95%減少するまで、血液製剤を酸素吸収環境で混合する。更に別の態様では、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、又は95%減少するまで、血液製剤を3時間未満、酸素吸収環境で混合する。
【0047】
別の態様では、pO2が、3500パスカル(Pa、26mmHgに相当する)未満、3000Pa未満、2500Pa未満、2000Pa未満、1500Pa未満、又は1000Pa未満になるまで、幹細胞を含有する血液製剤を混合する。複数の態様では、幹細胞を含有する血液製剤のpO2は、収集から3時間以内に減少する。別の態様では、血液製剤を、pO2が、990~3500Pa、990~3000Pa、990~2500Pa、990~2000Pa、990~1500Pa、又は1000~3000Paになるまで混合する。本開示のある態様では、血液製剤を、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2下で混合する。別の態様では、血液製剤を、900~3500Pa又は2000~3500PaのpO2下で混合する。
【0048】
本開示のある態様では、血液製剤を、900~3500Paの酸素の分圧(pO2)下で最大3時間混合する。別の態様では、血液製剤を、1時間以下、かつ血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、混合する。別の態様では、血液製剤を、2時間以下、かつ血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、混合する。別の態様では、血液製剤を、最大3時間、かつ血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、混合する。更に別の態様では、血液製剤を、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が70~95%減少するまで、1~3時間混合する。
【0049】
本開示は、低酸素条件下で幹細胞を血液製剤から分離するための様々な方法を提供する。本開示のある態様では、幹細胞を、幹細胞保持フィルタを用いた親和性クロマトグラフィーによって、血液製剤(すなわち、末梢血、ヒト臍帯血、又は骨髄)から分離する。別の態様では、幹細胞又は幹細胞及び白血球は、白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタによる濾過によって、血液製剤から分離される。様々な白血球減少フィルタは、Haemonetics(登録商標)白血球減少フィルタ(BPF4白血球除去フィルタ、Haemonetics(登録商標)、Braintree,MA)を含め、当該技術分野において一般的に既知である。更に別の態様では、白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタを、単一のフィルタに組み合わせる。別の態様では、幹細胞保持フィルタは、幹細胞特異的モノクローナル抗体を含む。別の態様では、幹細胞保持フィルタは、CD34に対する抗体を含む。別の態様では、幹細胞保持フィルタは、CD45、CD90、CD3e、CD34、CD49f(インテグリンa6)cKit/CD117、Ly6A/E(Sca-1)、CD13、CD29、CD36、CD44、CD73、CD105、及びCD146からなる群から選択される1つ以上の抗体を含む。別の態様では、幹細胞保持フィルタは、CD45、CD90、CD3e、CD34、CD49f(インテグリンa6)cKit/CD117、Ly6A/E(Sca-1)、CD13、CD29、CD36、CD44、CD73、CD105、及びCD146からなる群から選択される2つ以上の抗体を含む。更なる態様では、幹細胞保持フィルタは、CD45、CD90、CD3e、CD34、CD49f(インテグリンa6)cKit/CD117、Ly6A/E(Sca-1)、CD13、CD29、CD36、CD44、CD73、CD105、及びCD146からなる群から選択される3つ以上の抗体を含む。更なる態様では、幹細胞保持フィルタは、CD45、CD90、CD3e、CD34、CD49f(インテグリンa6)cKit/CD117、Ly6A/E(Sca-1)、CD13、CD29、CD36、CD44、CD73、CD105、及びCD146からなる群から選択される4つ以上の抗体を含む。幹細胞は、結合によってフィルタ上に濃縮され、等張性培地を使用してフィルタから溶出される。複数の態様では、等張性培地は、3500Pa以下のpO2を有する酸素減少培地である。
【0050】
別の態様では、幹細胞は、骨髄穿刺液、臍帯血、末梢血、リポアスピレート、又はそれらの混合物の遠心分離によって血液製剤から分離される。上清を除去し、幹細胞を幹細胞維持溶液に再懸濁させる。幹細胞維持溶液の一例は、3重量/体積%のデキストランを有するリン酸緩衝化生理食塩水である。幹細胞維持溶液の別の例は、5%ヒトアルブミンで緩衝化されたリン酸塩である。ある態様では、幹細胞は、低酸素血液製剤から分離される。別の態様では、幹細胞は、正常酸素圧血液製剤から分離される。別の態様では、血液製剤は、遠心分離の前に、密度勾配により混合される。
【0051】
本開示のある態様では、血液製剤を、pO2が400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000Paに維持される酸素減少条件下で濾過又は遠心分離によって分離する。別の態様では、血液製剤を、900~3500Pa又は2000~3500PaのpO2下で分離する。
【0052】
ある態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、20%未満の酸素飽和度を有するように処理された赤血球を含む。複数の態様では、幹細胞を有する赤血球含有血液製剤は、末梢血(例えば、全血)から、又は臍帯血及び骨髄から得ることができる。別の態様では、幹細胞(例えば、全血)を有する赤血球含有血液製剤は、幹細胞の抽出前に、20%未満の酸素飽和度を有するように処理される。別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に15%未満の酸素飽和度を有する赤血球を含む。別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に10%未満の酸素飽和度を有する赤血球を含む。別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に5%未満の酸素飽和度を有する赤血球を含む。更に別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に4~25%の酸素飽和度を有する赤血球を含む。別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に4~20%の酸素飽和度を有する赤血球を含む。別の態様では、フィルタを通り抜ける血液製剤は、脱酸素処理後に10~20%の酸素飽和度を有する赤血球を含む。末梢血からの酸素を効率的に減少させる方法は、2016年9月15日に公開された米国国際公開第2016/145210号及び2016年10月27日に公開された国際公開第2016/029069号に提供される。
【0053】
本開示のある態様では、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の回収フィルタ、並びに溶液は、3000Pa未満のpO2の酸素の分圧を含む低酸素条件下で維持される。複数の態様では、細胞、デバイス、及び溶液は、2500Pa未満のpO2、2000Pa未満のpO2、1400Pa未満のpO2、又は900Pa未満のpO2の酸素の分圧で維持される。別の態様では、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の回収フィルタは、900~3000PaのpO2、900~2500PaのpO2、900~2000PaのpO2、1400~2500PaのpO2、又は1300~2500PaのpO2を含む低酸素条件下で維持される。別の態様では、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の回収フィルタは、3000Pa未満のpO2の酸素の分圧及び6000Pa未満の二酸化炭素の分圧を含む低酸素条件下で維持される。更に別の態様では、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の回収フィルタは、この段落で提供されるような酸素の分圧及び6000Pa未満の二酸化炭素の分圧を含む低酸素条件下で維持される。
【0054】
本開示は、幹細胞回収フィルタ上に濃縮された幹細胞を溶出させるための方法を提供し、かつそれを含む。ある態様では、濃縮された幹細胞は、低酸素条件下、等張性培地中で溶出される。特定の態様では、等張性培地は、等張性培地である。他の態様では、等張性培地は、幹細胞の組織培養と適合性である。いくつかの態様では、等張性培地は、等張性培地を調製するための追加の成分と組み合わせることができる。別の態様では、本開示は、濃縮された幹細胞を等張性培地で溶出させることを提供する。別の態様では、溶出させることは、50~200mLの等張性培地を用いて、濃縮された幹細胞を処理することを含む。別の態様では、溶出させることは、少なくとも50mLの等張性培地を用いて、濃縮された幹細胞を処理することを含む。別の態様では、溶出させることは、少なくとも100mLの等張性培地を用いて、濃縮された幹細胞を処理することを含む。別の態様では、溶出させることは、少なくとも150mLの等張性培地を用いて、濃縮された幹細胞を処理することを含む。別の態様では、溶出させることは、100mLの等張性培地を用いて、濃縮された幹細胞を処理することを含む。
【0055】
本開示は、酸素の分圧を特徴とする等張性培地を提供し、かつそれを含む。複数の態様では、等張性培地は、正常酸素圧である(例えば、周囲圧力で酸素と平衡化される)。他の態様では、等張性培地は、減少した酸素分圧を有する。複数の態様では、等張性培地及び成分は、3500Pa未満の酸素の分圧を有する。別の態様では、等張性培地は、3000Pa未満、2500Pa未満、2000Pa未満、1500Pa未満、又は1000Pa未満のpO2を含む脱酸素等張性培地である。別の態様では、等張性培地は、990~6000Pa、990~3500Pa、990~3000Pa、990~2500Pa、990~2000Pa、990~1500Pa、又は1000~3000PaのpO2を含む脱酸素等張性培地である。本開示のある態様では、等張性培地は、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2を含む脱酸素等張性培地である。別の態様では、等張性培地は、900~3000Pa又は2000~3000PaのpO2を含む脱酸素等張性培地である。別の態様では、濃縮された幹細胞は、容器へと溶出される。更に別の態様では、濃縮された幹細胞を、低酸素貯蔵容器へと直接溶出させる。
【0056】
本開示のある態様では、幹細胞を、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2下で溶出させる。別の態様では、幹細胞を、900~4000Pa又は2000~4000PaのpO2下で溶出させる。
【0057】
本開示のある態様では、幹細胞を血液製剤から分離し、低酸素条件下で貯蔵する。ある態様では、分離された幹細胞を、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2下で低酸素貯蔵容器へと移す。別の態様では、幹細胞を、900~3500Pa又は2000~3500PaのpO2下で低酸素貯蔵容器へと移す。
【0058】
ある態様では、幹細胞懸濁液(幹細胞維持溶液を有する幹細胞)を、室温で最大3日間、低酸素貯蔵バッグで貯蔵する。別の態様では、幹細胞懸濁液を凍結保護剤で希釈し、-80℃で、又は液体窒素(およそ-195℃)中で貯蔵する。ある態様では、幹細胞懸濁液を凍結させるための凍結保護剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、グリセロール、ポリビニルピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ホルムアミド、グリセロール-3ホスフェート、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、幹細胞懸濁液を、トレハロース及びデキストランを含む溶液中で凍結させる。
【0059】
本開示は、血液製剤を収集し、幹細胞を分離し、低酸素条件下で3~4日間にわたって培養し、幹細胞を3~14倍に増殖させることによって、幹細胞を更に増殖させることを提供し、かつそれを含む。例えば、本開示は、幹細胞を含有する血液製剤を、酸素吸収環境内に収集し、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合し、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離し、幹細胞を増殖させ、幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことを提供する。
【0060】
本開示のある態様では、幹細胞を低酸素貯蔵容器に移す前に、分離された幹細胞を、低酸素幹細胞増殖容器に移す。別の態様では、幹細胞を低酸素幹細胞増殖容器に移す前に、分離された幹細胞を、低酸素貯蔵容器に移す。別の態様では、分離された幹細胞を低酸素増殖容器に移し、次いで、それを必要とする患者に移植する。
【0061】
本開示のある態様では、単離された幹細胞を低酸素幹細胞増殖容器に入れることによって、幹細胞を増殖させる。別の態様では、図2に提供されるように、低酸素幹細胞増殖容器は、シェーカ(線形又はオービタル)上に置かれ、供給培養培地を含む低酸素バッグ及び灌流廃棄物のための低酸素バッグに接続される。別の態様では、シェーカを一定期間、70~80rpmに設定して、混合、並びに酸素及び二酸化炭素の枯渇を増加させる。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、閉じたシステムで酸素及び二酸化炭素の吸着剤に結合される。他の態様では、酸素及び二酸化炭素は、酸素を窒素などの不活性ガスに置き換えることによって、制御された雰囲気内での増殖の間に制御され、維持される。
【0062】
本開示のある態様では、単離された幹細胞(すなわち、幹細胞回収フィルタから溶出された幹細胞)を、幹細胞増殖培地を用いて低酸素幹細胞増殖容器に入れ、低酸素幹細胞増殖容器をシェーカ(線形又はオービタル)上に置き、幹細胞を混合して、酸素及び二酸化炭素の枯渇を増加させることによって、幹細胞を増殖させる。典型的には、混合は、70~80rpmの速度で所定期間行われるが、好適な混合方法及び速度の選択は、当業者に知られている。ある態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、3,000パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、2,500パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、2,000パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、1,600パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、1,400パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の上述の増殖培養期間の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、1,200パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される。
【0063】
別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の培養期間にわたって、3,000Pa未満である酸素の分圧で維持され、細胞が3~14倍まで増殖するように培養する。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の培養期間にわたって、2,000Pa未満である酸素の分圧で維持され、細胞が3~14倍まで増殖するように培養する。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の培養期間にわたって、1,600Pa未満である酸素の分圧で維持され、細胞が3~14倍まで増殖するように培養する。更に別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の培養期間にわたって、1,400Pa未満である酸素の分圧で維持され、細胞が3~14倍まで増殖するように培養する。更なる態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、1~5日間の培養期間にわたって、1,200Pa未満である酸素の分圧で維持され、細胞が3~14倍まで増殖するように培養する。
【0064】
更なる態様では、幹細胞を低酸素増殖条件下で所定期間培養し、幹細胞を3~14倍に増殖させる。ある態様では、幹細胞を低酸素増殖条件下で所定期間培養し、幹細胞を3~16倍に増殖させ、少なくとも104個の細胞を含む集団を調製する。別の態様では、増殖した幹細胞集団を培養して、1~5日後に、CD34+細胞の数を少なくとも2倍増加させる。ある態様では、幹細胞を低酸素増殖条件下で所定期間培養し、1~5日後に、CD34+細胞の数を少なくとも3倍に増殖させる。別の態様では、幹細胞を低酸素増殖条件下で所定期間培養し、幹細胞を、5~10%のCD34+細胞を含む集団へと増殖させる。別の態様では、幹細胞を低酸素増殖条件下で所定期間培養し、幹細胞を、2、1、0.5、0.05%未満、次いで0.005%のCD44+細胞を含む集団へと増殖させる。別の態様では、幹細胞を3~14倍まで増殖させ、10%を超えるCD34+及び2%未満のCD44+細胞を含有する。別の態様では、幹細胞を、低酸素増殖条件下で、幹細胞を1%未満のCD90+細胞を含む集団へと増殖させるのに十分な所定期間培養する。ある態様では、増殖した幹細胞は、少なくとも5%のCD34+細胞、2%未満のCD44+細胞、及び1%未満のCD90+細胞の集団を含む。ある態様では、低酸素増殖条件下で1~5日間培養された幹細胞は、細胞染色技術(すなわち、トリパンブルー及び7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)によって測定される場合、98%を超える生存率を維持する。
【0065】
本開示は、0.155~0.7平方メートル(m2)の総表面積を含む、低酸素幹細胞増殖容器を提供する。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、0.155~0.31m2の総表面積を含む。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.155m2の総表面積を含む。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.2m2の総表面積を含む。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.3m2の総表面積を含む。更に別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.4m2の総表面積を含む。別の態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.5m2の総表面積を含む。更なる態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、少なくとも0.6m2の総表面積を含む。更なる態様では、低酸素幹細胞増殖容器は、0.7m2未満の総表面積を含む。
【0066】
別の態様では、本開示は、マイクロキャリアビーズを含む低酸素幹細胞増殖容器を提供する。別の態様では、本開示は、マイクロキャリアビーズ及び幹細胞増殖培地を含む低酸素幹細胞増殖容器を提供する。
【0067】
一般に、本開示の低酸素方法を使用した幹細胞増殖に好適な培地は、当該技術分野において既知である。典型的には、細胞培養培地は、6.6~7.8のpHを有する緩衝化培地であり、エネルギー源(典型的には、グルコース/デキストロース)、及び血清タンパク質(例えば、アルブミン)を含む。本開示の態様では、幹細胞増殖培地には、幹細胞増殖を強化するために、添加剤又は増殖因子が補充される。一般的な幹細胞増殖培地の例は、StemSpan(商標)(Stem Cell Technologies、Cambridge,MA)、及びStemline(Sigma-Aldrich)である。ある態様では、幹細胞増殖培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、アクチビンA、アクチビンB、TGF-ベータ、VEGF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される1つ以上の増殖因子を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、アクチビンA、アクチビンB、TGF-ベータ、VEGF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、又は6つ以上の増殖因子を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、アクチビンAを含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、アクチビンBを含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、TGF-ベータを含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、VEGFを含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、幹細胞因子(SCF)を含む。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上の増殖因子を含み、6.6~7.8のpHを含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、少なくとも6.6のpHを含む。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、少なくとも7のpHを含む。更なる態様では、幹細胞増殖培地は、7.5のpHを含む。
【0068】
別の態様では、本開示は、レチノイン酸、アスコルビン酸、ホルモン、細胞内cAMP上昇剤、Flt-3リガンド、異なるサイトカイン及び増殖因子の組み合わせ(例えば、SCF、Flt3、TPO、IL-3、及びIL-6)からなる群から選択される1つ以上の添加剤を更に含む幹細胞増殖培地を提供する。別の態様では、レチノイン酸、アスコルビン酸、ホルモン、細胞内cAMP上昇剤、Flt-3リガンド、異なるサイトカイン及び増殖因子の組み合わせからなる群から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上の添加剤を更に含む、幹細胞増殖培地。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、レチノイン酸を含む。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、アスコルビン酸を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、ホルモンを含む。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、細胞内cAMP上昇剤を含む。別の態様では、幹細胞増殖培地は、Flt-3リガンドを含む。更に別の態様では、幹細胞増殖培地は、SCF、Flt3、TPO、IL-3、及びIL-6からなる群から選択される1つ以上の増殖因子を含む。本開示のある態様では、幹細胞増殖培地は、1つ以上の増殖因子、1つ以上の添加剤、及び6.6~7.8のpHを含む。
【0069】
本開示は、幹細胞を含有する血液製剤を、酸素吸収環境内に収集することを提供し、かつそれを含む。ある態様では、酸素吸収環境は、酸素バリア層を含む低酸素収集容器である。別の態様では、酸素吸収環境は、酸素透過性層を囲む酸素バリア層を含む低酸素収集容器である。別の態様では、酸素吸収環境は、一方の側で血液製剤層と、他方の側で酸素吸着剤と接触する酸素透過性層と、酸素吸着剤及び酸素透過性層の両方を囲む酸素バリア層と、を含む、低酸素収集容器である。更に別の態様では、酸素吸収環境は、酸素透過性層と、1つ以上の酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、酸素バリア層と、を含む、低酸素収集容器である。
【0070】
本開示はまた、幹細胞又は赤血球を貯蔵するための低酸素貯蔵容器を提供し、かつそれを含む。ある態様では、低酸素貯蔵容器は、酸素バリア層を含む。別の態様では、低酸素貯蔵容器は、酸素透過性層を囲む酸素バリア層を含む。別の態様では、低酸素貯蔵容器は、一方の側で血液製剤層と、他方の側で酸素吸着剤と接触する酸素透過性層と、酸素吸着剤及び酸素透過性層の両方を囲む酸素バリア層と、を含む。更に別の態様では、低酸素貯蔵容器は、酸素透過性層と、1つ以上の酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、酸素バリア層と、を含む。
【0071】
本開示はまた、酸素又は酸素及び二酸化炭素に対して実質的に不透過性である酸素バリア層を提供し、かつそれを含む。ある態様では、酸素バリアバッグは、可撓性フィルム材料から調製される。別の態様では、酸素バリア層は、剛性、又は非可撓性のフィルム材料から調製される。本明細書で提供される場合、酸素バリアという用語は、42日間以上にわたって二酸化炭素の分圧の著しい増加を防ぐのに十分な、バリアの一方の側から他方の側への酸素の通過に対するバリアを提供する材料及び組成物を指す。
【0072】
別途指示がない限り、酸素バリアとは、酸素に対して実質的に不透過性である膜を指す。本明細書で使用される場合、実質的に酸素に対して不透過性であるとは、1日当たり約1.0cc/平方メートル未満の酸素の酸素に対する透過性である。別の態様では、実質的に酸素に対して不透過性であるとは、1日当たり約0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素に対する透過性である。特定の態様では、酸素バリア層の調製における使用に好適な膜は、約0.140バーラー未満のバーラー値によって特徴付けられる材料である。本明細書で使用される場合、酸素バリア層はまた、二酸化炭素に対して実質的に不透過性である。二酸化炭素に対して実質的に不透過性な酸素バリア層とは、3ヶ月の期間にわたってレセプタクルの内側に10cc以下の二酸化炭素、より好ましくは、6ヶ月の期間にわたって5cc以下の二酸化炭素を可能にする層を意味する。
【0073】
ガス不透過性バリアバッグを調製するための材料及び方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Gawryl et al.に発行された米国特許第7,041,800号、及びGustafsson et al.に発行された米国特許第6,007,529号、及びMcDormanによる米国特許出願公開第3013/0327677号を参照されたい。その各々は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。酸素吸収環境並びに低酸素収集及び貯蔵容器を調製するための材料及び方法はまた、当該技術分野において既知である。Yoshida et al.に発行された米国特許第9,801,784号、Yoshida et al.に対する米国特許第10,849,824号、及びWolf et al.に対する米国特許第10,058,091号を参照されたい。その各々は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。不透過性材料は、当該技術分野において規定通りに使用され、任意の好適な材料が、使用され得る。成形ポリマーの場合、酸素及び二酸化炭素のバリア特性を強化するために、添加剤が規定通りに添加される。例えば、Sato et al.に発行された米国特許第4,837,047号を参照されたい。例えば、Smith et al.に発行された米国特許第7,431,995号は、酸素及び二酸化炭素の侵入に対して不透過性である、エチレンビニルアルコールコポリマー及び変性エチレンビニルアセテートコポリマーの層から構成される酸素及び二酸化炭素に対する不透過性受容体を記載する。別の態様では、ガス不透過性バリアバッグは、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性である。
【0074】
特定の態様では、二酸化炭素、酸素、又は二酸化炭素及び酸素の両方に対して実質的に不透過性であるフィルムは、積層フィルムである。ある態様では、二酸化炭素、酸素、又は二酸化炭素及び酸素の両方に対して実質的に不透過性である積層フィルムは、積層箔フィルムである。フィルム材料は、箔及びポリマーの組み合わせである、ポリマー又は多層構造であり得る。ある態様では、積層フィルムは、アルミニウムで積層されたポリエステル膜である。酸素に対して実質的に不透過性である、積層箔としても既知である、好適なアルミニウム積層フィルムの例は、当該技術分野において既知である。例えば、Sugisawaの米国特許第4,798,728号は、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、及び塩化ビニリデンのアルミニウム積層箔を開示する。他の積層フィルムは、当該技術分野において既知である。例えば、Chow et al.の米国特許第7,713,614号は、酸素に対して実質的に不透過性であるエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)樹脂を含む、多層容器を開示する。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグは、ヒートシールによって3つ又は4つの側面をシールすることによって構築されたバリアバッグである。バッグは、二酸化炭素及び酸素バリア特性の強化を提供する材料を含む、多層構造で構成される。バッグは、二酸化炭素及び酸素バリア特性の強化を提供する材料を含む、多層構造で構成される。かかる材料としては、0.01cc/100in2/24時間の酸素透過率を有するRollprint Clearfoil(登録商標)V2フィルム、0.004cc/100in2/24時間の酸素透過率を有するRollprint Clearfoil(登録商標)Xフィルム、及び0.0008cc/100in2/24時間の酸素透過率を有するClearfoil(登録商標)Zフィルム(Rollprint Packaging Products、Addison,IL)が挙げられる。他の製造業者は、Renolit Solmed Wrapflex(登録商標)フィルム(American Renolit Corp.、City of Commerce,CA)など、同様の酸素透過率を有する同様の製品を作製する。酸素に対して実質的に不透過性である、積層箔としても既知である、好適なアルミニウム積層フィルムの例は、Protective Packaging Corp.(Carrollton,TX)から取得可能である。
【0075】
本開示のある態様では、低酸素収集容器は、1350Pa未満の酸素の分圧(pO2)を含む。別の態様では、低酸素収集容器は、400Pa未満の二酸化炭素の分圧(pCO2)を含む。別の態様では、低酸素収集容器は、990~3000Pa、990~2500Pa、990~2000Pa、990~1500Pa、又は1000~3000Paの分圧pO2を含む。本開示の別の態様では、低酸素収集容器は、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2を含む。
【0076】
別の態様では、低酸素貯蔵容器は、1350Pa未満の酸素の分圧(pO2)を含む。別の態様では、低酸素貯蔵容器は、400Pa未満の二酸化炭素の分圧(pCO2)を含む。別の態様では、低酸素貯蔵容器は、990~3000Pa、990~2500Pa、990~2000Pa、990~1500Pa、又は1000~3000Paの分圧pO2を含む。本開示の別の態様では、低酸素貯蔵容器は、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2を含む。
【0077】
本開示は、血液製剤の低酸素収集及び幹細胞の単離のための方法を提供し、かつそれを含む。複数の態様では、血液製剤を低酸素収集容器に収集し、濾過して、幹細胞を単離し、濃縮する。幹細胞を、幹細胞又は幹細胞及び白血球フィルタを使用して単離する。図1に示す等張性培地を使用して、幹細胞を、フィルタから低酸素貯蔵バッグ又は低酸素幹細胞増殖容器へと溶出させる。ある態様では、等張性培地は、0.5mMの塩化カルシウム、250~500mMのトレハロース、3%のデキストラン40、又は3%のデキストラン70のいずれかを含有する1mMの硫酸マグネシウムを含む10~30mMのリン酸緩衝化生理食塩水を含み、280~300mOsmol/水kgの張度を有する。ある態様では、等張性培地は、市販の培地であるPlasma-Lyte(Baxter、Deerfield,IL)、HypoThermosol(BioLife Solutions Inc.、Bothell,WA)である。別の態様では、等張性培地は、1mMのN-アセチルシステイン、1mMのトロロックス水溶性ビタミンE、1mMのビタミンC、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の抗酸化剤を更に含む。別の態様では、等張性幹細胞培養培地は、1mMのN-アセチルシステイン、1mMのトロロックス水溶性ビタミンE、1mMのビタミンC、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される2つ以上の抗酸化剤を更に含む。
【0078】
別の態様では、本開示は、幹細胞溶出前に等張性培地を酸素と平衡化させることを提供する。
【0079】
本開示は、貯蔵又は移植のための幹細胞を処理するためのキットであって、低酸素収集容器と、白血球及び幹細胞の回収フィルタと、濾過された幹細胞が枯渇した血液製剤を収集するための第1の付属低酸素貯蔵容器と、幹細胞維持培地を含む第2の付属低酸素貯蔵容器と、を含むキットを提供し、且つそれを含む。本開示のある態様では、第2の付属低酸素貯蔵容器は、上述の白血球及び幹細胞の回復フィルタと流体連通している。別の態様では、キットは、1,400Pa未満の酸素の分圧(pO2)を含む。別の態様では、白血球及び幹細胞のフィルタは、単一の組み合わせフィルタである。別の態様では、第1の付属低酸素貯蔵容器は、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、ガス透過性の内側の折りたたみ可能な容器と、外側レセプタクルと内側の折りたたみ可能な容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、外側レセプタクルを通り抜け、折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含む。別の態様では、キットは、1,400Pa未満のpO2を含む。別の態様では、第2の付属低酸素貯蔵容器は、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、ガス透過性の内側の折りたたみ可能な容器と、外側レセプタクルと内側の折りたたみ可能な容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、外側レセプタクルを通り抜け、折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含む。別の態様では、低酸素収集及び貯蔵容器は、Hemanext Incに対する国際公開第WO2016/172645号及び第WO2016/145210号において知られており、記載されるものが含まれ、これらの両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本開示は、移植のための幹細胞を調製する方法であって、凍結した幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを少なくとも25℃の温度にさらして、解凍した幹細胞を形成することと、解凍した幹細胞を遠心分離し、上清を除去することと、幹細胞を、3%のデキストラン40を含む溶液に再懸濁させることと、を含む方法を提供し、かつそれを含む。別の態様では、本開示は、幹細胞を必要とする対象において移植のための幹細胞を調製するための方法であって、低酸素調製された幹細胞を解凍することと、上述の低酸素幹細胞増殖システムで、幹細胞を増殖させることと、を含み、増殖した幹細胞を、それを必要とする対象に移植することを含む、方法を提供し、かつそれを含む。別の態様では、合計で少なくとも104個のHSCが、それを必要とする対象に移植される。更に別の態様では、合計で少なくとも105、106、107、108、又は109個のHSCが、それを必要とする対象に移植される。
【0081】
別の態様では、幹細胞増殖システムは、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、内側の折りたたみ可能な容器と、外側レセプタクルと内側の折りたたみ可能な血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、外側レセプタクルを通り抜け、折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含む。別の態様では、幹細胞増殖システムは、1,400Pa未満のpO2を含む制御された環境における幹細胞の3D培養を含む。更に別の態様では、システムは、1,400Pa未満のpO2を含む制御された環境における幹細胞の2D培養を含む。
【0082】
本開示は、移植のための幹細胞を調製するための方法であって、ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタを用いて、白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、幹細胞保持フィルタから幹細胞を溶出させることと、幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。
【0083】
別の態様では、本開示は、移植のための幹細胞を調製するための方法であって、凍結した低酸素幹細胞を含む低酸素貯蔵容器を37℃にさらすことと、凍結した低酸素幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを、上述の凍結した幹細胞を解凍して、解凍した幹細胞を生成するために、42℃未満の水浴に浸漬することと、解凍した幹細胞を、2.5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する等体積の低酸素溶液で希釈して、希釈した幹細胞を形成することと、を含む、方法を提供し、かつそれを含む。別の態様では、本開示は、解凍した幹細胞を、1~5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する等体積の低酸素溶液で希釈して、希釈した幹細胞を形成することを提供する。別の態様では、低酸素溶液は、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、及び5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する。別の態様では、低酸素溶液は、1~2%、1~3%、1~4%、1~5%、2~3%、2~5%、2~4%を含有する。更に別の態様では、低酸素溶液は、5%未満、4.5%未満、4%未満、3.5%未満、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、及び1.5%未満を含有する。更に別の態様では、低酸素溶液は、5%未満、4.5%未満、4%未満、3.5%未満、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、及び1.5%未満を含有する。
【0084】
別の態様では、低酸素溶液は、5%のデキストラン40を更に含む。別の態様では、幹細胞は、37℃に15~30分間さらされる。別の態様では、凍結した幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグは、少なくとも32℃の水浴に入れられる。更に別の態様では、幹細胞を調製するための方法は、希釈した幹細胞を遠心分離することと、上清を除去することと、を更に含む。別の態様では、本開示は、上述の解凍した幹細胞を、移植に適した体積になるまで、アルブミンデキストラン溶液で再懸濁させることを更に含む、移植のための幹細胞を調製するための方法を提供する。
【0085】
本開示のある態様では、低酸素収集容器、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、及び低酸素貯蔵容器は、1400Pa(10mmHg)未満のpO2を含むシステムの一部である。より具体的には、フィルタ、デバイス、溶液、及び他の成分は、低酸素状態に維持されるシステムの一部である。別の態様では、低酸素収集容器、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、及び低酸素貯蔵容器は、1350Pa(10mmHg)未満のpO2を含むシステムの一部である。別の態様では、低酸素収集容器、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、及び低酸素貯蔵容器は、990~3000Pa、990~2500Pa、990~2000Pa、990~1500Pa、又は1000~3000PaのpO2を含むシステム中にある。本開示の別の態様では、低酸素収集容器、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、及び低酸素貯蔵容器は、400~2000Pa、500~2000Pa、600~2000Pa、700~2000Pa、800~2000Pa、900~2000Pa、900~2000Pa、1000~2000Pa、1200~2000Pa、1400~2000Pa、1600~2000Pa、1800~2000PaのpO2を含むシステム中にある。
【0086】
ある態様では、本開示は、閉じた低酸素システム中の2つの付属低酸素貯蔵バッグに接続される低酸素収集バッグを提供する。ある態様では、本開示は、閉じたシステムにおいて遠心分離される相互接続されたバッグを提供する。別の態様では、相互接続されたバッグは、遠心分離され、上清は、取り付けられたバッグのうちの1つに現れる。
【0087】
本開示は、輸血のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含む血液製剤を収集することと、血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、幹細胞を、3000Pa未満のO2の低酸素環境で、ある温度で所定時間貯蔵することと、を含む、方法を提供する。本開示のある態様では、貯蔵期間は、少なくとも2、4、7、10、14、21、又は28日間である。別の態様では、白血球及び幹細胞は、本開示に記載されるように、白血球フィルタ、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の組み合わせ回収フィルタを使用して、血液製剤から分離する。別の態様では、幹細胞を、低酸素環境で貯蔵される前に、等張性培地を用いて、幹細胞回収フィルタ、又は白血球及び幹細胞の回収フィルタから溶出させる。別の態様では、低酸素環境は、本開示に提供されるような低酸素貯蔵容器である。別の態様では、血液製剤を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアと酸素吸着剤とを含む低酸素収集容器に収集する。別の態様では、低酸素収集容器は、25バーラー未満の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む。低酸素収集容器中の血液製剤を、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が20~60%減少するまで、混合する。別の態様では、pO2は、80~95%減少する。別の態様では、pO2は、50~95%減少する。別の態様では、pO2は、70~95%減少する。別の態様では、pO2は、50~95%減少する。更なる態様では、幹細胞は、混合する前に血液製剤から分離される。
【0088】
本開示はまた、幹細胞が、低酸素貯蔵容器又は低酸素幹細胞増殖容器に収集する工程と集める工程との間に1時間を超えて正常酸素圧条件にさらされない方法を提供する。ある態様では、正常酸素圧条件は、少なくとも約157mmHg(又は21,000Pa)の酸素の分圧を含む。
【0089】
本開示全体で提供される全ての参照文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
本開示は、以下の実施形態も提供する。
【0091】
実施形態1.幹細胞を必要とする患者への移植のための幹細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアと酸素吸着剤とを含む低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することと、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合することと、上述の血液製剤をフィルタに適用することを含む、上述の血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することであって、幹細胞及び白血球が、上述のフィルタ上に保持され、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製する、分離することと、等張性培地を用いて、上述のフィルタから上述の幹細胞を溶出させることと、
【0092】
上述の幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移し、上述の細胞を貯蔵して、低酸素貯蔵された幹細胞を調製することと、を含む、方法。
【0093】
実施形態2.上述の低酸素貯蔵容器に移す前又は後に、上述の幹細胞を低酸素幹細胞増殖容器に移すことと、上述の幹細胞を増殖させて、増殖した幹細胞集団を形成することと、を更に含む、実施形態1の方法。
【0094】
実施形態3.上述の増殖した幹細胞を、それを必要とする患者に移植することを更に含む、実施形態2の方法。
【0095】
実施形態4.上述の混合すること、分離すること、溶出させること、及び移すことが、各々、400~2000PaのpO2下で行われる、実施形態1の方法。
【0096】
実施形態5.上述の混合することが、最大3時間にわたる、実施形態1の方法。
【0097】
実施形態6.上述の混合することが、上述の血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が、少なくとも50%減少するまでである、実施形態1の方法。
【0098】
実施形態7.上述の等張性培地が、少なくとも5333PaのpO2を含む脱酸素等張性培地である、実施形態1の方法。
【0099】
実施形態8.上述の移すことが、上述の低酸素貯蔵容器内に直接溶出させることを含む、実施形態1の方法。
【0100】
実施形態9.上述の溶出させることが、50~200mLの上述の等張性培地を含む、実施形態1の方法。
【0101】
実施形態10.上述の等張性培地を、空気中の酸素と平衡化することを更に含む、実施形態1の方法。
【0102】
実施形態11.上述の低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、折りたたみ可能な内側血液容器と、上述の外側レセプタクルと上述の折りたたみ可能な内側血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、上述の外側レセプタクルを通り抜け、上述の折りたたみ可能な容器と低酸素流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含み、上述の低酸素貯蔵容器が、1,400Pa未満のpO2を含む、実施形態1の方法。
【0103】
実施形態12.上述の血液製剤が、末梢血、ヒト臍帯血(HUCB)、及び骨髄からなる群から選択される、実施形態1の方法。
【0104】
実施形態13.上述の幹細胞が、血液細胞由来の人工多能性幹細胞(iPSC)である、実施形態1の方法。
【0105】
実施形態14.上述の低酸素収集容器が、抗凝固剤を含む、実施形態1の方法。
【0106】
実施形態15.上述のフィルタが、白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタを含む、実施形態1の方法。
【0107】
実施形態16.上述の血液製剤に含まれる赤血球が、上述のフィルタ上で上述の分離する間に、20%、15%、10%、5%、1%又は0.01%未満のO2の赤血球酸素飽和度(sO2)を含む、実施形態1の方法。
【0108】
実施形態17.上述の低酸素収集容器、上述のフィルタ、及び上述の低酸素貯蔵容器が、1350Pa未満のpO2を含むシステム中にある、実施形態1の方法。
【0109】
実施形態18.上述のフィルタが、6000Pa未満の酸素の分圧(pO2)を含む低酸素条件下で維持される、実施形態1の方法。
【0110】
実施形態19.上述の低酸素収集容器又は上述の低酸素貯蔵容器が、1350Pa未満の酸素の分圧(pO2)を含む、実施形態1の方法。
【0111】
実施形態20.上述の低酸素収集容器、上述の低酸素貯蔵容器、又は上述の低酸素容器及び上述の低酸素貯蔵容器の両方が、6000Pa未満の二酸化炭素の分圧(pCO2)を含む、実施形態1の方法。
【0112】
実施形態21.上述の白血球減少フィルタ及び上述の幹細胞保持フィルタが、白血球及び幹細胞の組み合わせフィルタである、実施形態1の方法。
【0113】
実施形態22.上述の抗凝固剤が、クエン酸-リン酸デキストロース(CPD)、クエン酸-リン酸-デキストロース-アデニン1(CPDA-1)、酸性クエン酸デキストロース(ACD)、又はヘパリンである、実施形態14の方法。
【0114】
実施形態23.上述の低酸素収集容器が、上述のフィルタと流体連通し、上述のフィルタが、上述の低酸素貯蔵容器と流体連通し、上述の組み合わせが、1,400Pa未満のpO2を含む、実施形態1の方法。
【0115】
実施形態24.上述のフィルタが、幹細胞特異的モノクローナル抗体を含む、実施形態15の方法。
【0116】
実施形態25.上述の低酸素貯蔵された幹細胞が、1400パスカル未満である酸素の分圧で維持される、実施形態1の方法。
【0117】
実施形態26.上述の血液製剤中、上述の溶出された幹細胞中、上述の低酸素貯蔵された幹細胞中、又はそれらの組み合わせにおいて、有核細胞の総数を決定することを更に含む、実施形態1の方法。
【0118】
実施形態27.上述の細胞の数を決定することが、上述の収集の後である、実施形態26の方法。
【0119】
実施形態28.上述の細胞の数を決定することが、上述の濾過の後である、実施形態26又は27の方法。
【0120】
実施形態29.上述の溶出された幹細胞中の有核細胞の総数が、上述の血液製剤中の有核細胞の総数の少なくとも50%を含む、実施形態28の方法。
【0121】
実施形態30.上述の幹細胞が、造血幹細胞(HSC)である、実施形態1の方法。
【0122】
実施形態31.上述の造血幹細胞が、ポリコーム群RINGフィンガータンパク質4(BMI-1)、分化クラスター21(CD21)、分化クラスター22(CD22)、分化クラスター34(CD34)、分化クラスター38(CD38)、分化クラスター41(CD41)、分化クラスター44(CD44)、分化クラスター45(CD45)、分化クラスター48(CD48)、分化クラスター90(CD90、Thy1)、分化クラスター105(CD105)、分化クラスター106(CD106)、分化クラスター117(CD117、c-kit)、分化クラスター127(CD127)、分化クラスター150(CD150)、c-myc、内皮細胞プロテインc受容体(EPCR)、リンパ球抗原-6(Ly6A/E、sca-1)、MYB、誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質(Mcl-1)、ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、Skp、キュリン、F-box(SCF、kitリガンド)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5a(STAT5a)、転写の単一トランスデューサー及びアクチベーター5b(STAT5b)、及び血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)からなる群から選択される1つ以上の造血幹細胞マーカーを含む、実施形態30の方法。
【0123】
実施形態32.少なくとも104個の低酸素貯蔵された幹細胞を、それを必要とする上述の患者に移植することを更に含む、実施形態30の方法。
【0124】
実施形態33.上述の低酸素幹細胞増殖容器が、0.155~0.7平方メートル(m2)の総表面積を含む、実施形態2の方法。
【0125】
実施形態34.上述の低酸素幹細胞増殖容器が、0.155~0.31m2の総表面積を含む、実施形態33の方法。
【0126】
実施形態35.上述の低酸素幹細胞増殖容器が、マイクロキャリアビーズ及び幹細胞増殖培地を含む、実施形態33の方法。
【0127】
実施形態36.上述の幹細胞増殖培地が、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、アクチビンA、アクチビンB及びTGF-ベータ、VEGF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、並びに幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される増殖因子を含む、実施形態35の方法。
【0128】
実施形態37.上述の幹細胞増殖容器が、6.6~7.8のpHを含む、実施形態35の方法。
【0129】
実施形態38.上述の幹細胞増殖培地が、レチノイン酸、アスコルビン酸、ホルモン、又は細胞内cAMP上昇剤、Flt-3リガンド、異なるサイトカイン及び増殖因子の組み合わせ(例えば、SCF、Flt3、TPO、IL-3、及びIL-6)からなる群から選択される添加剤を含む、実施形態35の方法。
【0130】
実施形態39.上述の低酸素幹細胞増殖容器が、上述の増殖の間、標準的な温度及び圧力(STP)下で、3,000パスカル(Pa)未満である酸素の分圧で維持される、実施形態33の方法。
【0131】
実施形態40.上述の低酸素幹細胞増殖の間の上述のpO2が、STP下で1,400パスカル未満である酸素の分圧で維持される、実施形態39の方法。
【0132】
実施形態41.上述の幹細胞を増殖させることが、STP下で1,400パスカル未満のpO2を含む低酸素条件下で3~4日間の培養期間培養して、増殖した幹細胞集団を調製することを含む、実施形態33の方法。
【0133】
実施形態42.上述の低酸素幹細胞を増殖させることが、上述の幹細胞を3~14倍に増加させる期間培養することを含む、実施形態41の方法。
【0134】
実施形態43.上述の増殖させることが、上述の低酸素幹細胞を増殖させて、少なくとも104個の細胞を含む集団を調製するのに十分な期間培養することを含む、実施形態41の方法。
【0135】
実施形態44.上述の増殖した幹細胞集団が、上述の増殖の後に、CD34+細胞の少なくとも2倍の増加を含む、実施形態41の方法。
【0136】
実施形態45.上述の増殖した幹細胞集団が、上述の増殖の後に、CD34+細胞の少なくとも3倍の増加を含む、実施形態44の方法。
【0137】
実施形態46.上述の増殖した幹細胞集団が、5~10%のCD34+細胞を含む、実施形態45の方法。
【0138】
実施形態47.上述の増殖した幹細胞集団が、2、1、又は0.005%未満のCD44+細胞を含む、実施形態41の方法。
【0139】
実施形態48.上述の増殖した幹細胞集団1%未満のCD90+細胞、実施形態41の方法。
【0140】
実施形態49.上述の貯蔵された幹細胞が、CD44、CD90、CD105、CD106、CD166、及びStro-1からなる群から選択される1つ以上のマーカーを含む間葉系幹細胞(MSC)である、実施形態33の方法。
【0141】
実施形態50.上述の増殖した幹細胞集団が、98%を超える生存率を含む、実施形態41の方法。
【0142】
実施形態51.上述の生存率が、トリパンブルー除外アッセイによって測定される、実施形態50の方法。
【0143】
実施形態52.上述の生存率が、7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)の細胞除外によって測定される、実施形態50の方法。
【0144】
実施形態53.上述の低酸素貯蔵された幹細胞が、正常酸素圧条件下で収集され、貯蔵され、培養された幹細胞よりも大きな生存率を維持し、上述の正常酸素圧条件が、少なくとも約21,000パスカルの酸素の分圧を含む、実施形態1の方法。
【0145】
実施形態54.輸血のための幹細胞を調製するための方法であって、
【0146】
幹細胞を含む血液製剤を収集することと、上述の血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、上述の幹細胞を、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素の酸素(O2)透過性を特徴とするO2バリアを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、上述の幹細胞を、3500Pa未満の酸素の分圧で、37℃未満の温度で所定時間、低酸素環境で貯蔵することと、を含む、方法。
【0147】
実施形態55.上述の低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、折りたたみ可能な内側血液容器と、上述の外側レセプタクルと上述の折りたたみ可能な内側血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、上述の外側レセプタクルを通り抜け、上述の折りたたみ可能な容器と低酸素流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含み、上述の組み合わせが、1,400Pa未満のpO2を含む、実施形態54の方法。
【0148】
実施形態56.上述の血液製剤を収集することが、3000Pa未満である酸素の分圧を有する低酸素環境を含む、実施形態54の方法。
【0149】
実施形態57.上述の血液製剤が、末梢血、ヒト臍帯血(HUCB)、及び骨髄からなる群から選択される、実施形態54の方法。
【0150】
実施形態58.上述の幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)である、実施形態54の方法。
【0151】
実施形態59.上述の分離することが、濃縮された幹細胞を調製するための遠心分離を含む、実施形態54の方法。
【0152】
実施形態60.上述の遠心分離の前又は後に、白血球を減少させることを更に含む、実施形態59の方法。
【0153】
実施形態61.上述の濃縮された幹細胞から上清を除去することと、上述の濃縮された幹細胞を低酸素幹細胞懸濁培地に再懸濁させることを更に含む、実施形態59の方法。
【0154】
実施形態62.上述の幹細胞懸濁培地を、トレハロース、マンニトール、スクロース、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、グルコース、グリセロール、ポリビニルピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ホルムアミド、グリセロール-3ホスフェート、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される凍結保護剤で希釈する、実施形態61の方法。
【0155】
実施形態63.上述の貯蔵することが、-80℃で、又はおよそ-195.79℃での液体窒素中である、実施形態62の方法。
【0156】
実施形態64.上述の少なくとも1つの入口/出口が、第1のチューブ、結合、及び第2のチューブを含む、酸素に対して実質的に不透過性である単一チューブを更に含み、上述の単一チューブが、少なくとも1つの酸素バリア層、及び少なくとも1つの血液適合性層を有するバリア横断チューブである、実施形態54の方法。
【0157】
実施形態65.移植のための幹細胞を調製するための方法であって、ヒト臍帯血(HUCB)を収集することと、HUCBを白血球減少フィルタ及び幹細胞保持フィルタに適用することによって、HUCBから白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、上述の幹細胞保持フィルタから上述の幹細胞を溶出させることと、上述の幹細胞を低酸素貯蔵容器に移すことと、を含む、方法。
【0158】
実施形態66.上述の等張性培地が、0.5mMの塩化カルシウム、250~500mMのトレハロース、3%のデキストラン40、又は3%のデキストラン70のいずれかを含有する1mMの硫酸マグネシウムを含む10~30mMのリン酸緩衝化生理食塩水を含み、280~300mOsmol/水kgの張度を有する、実施形態65の方法。
【0159】
実施形態67.上述の等張性培地が、1mMのN-アセチルシステイン、1mMのトロロックス水溶性ビタミンE、1mMのビタミンC、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される抗酸化剤を更に含む、実施形態66の方法。
【0160】
実施形態68.上述の白血球減少フィルタ及び上述の幹細胞保持フィルタが、同じフィルタである、実施形態65の方法。
【0161】
実施形態69.上述の方法が、3500Pa未満の酸素の分圧で行われる、実施形態65の方法。
【0162】
実施形態70.移植のための幹細胞を処理するためのキットであって、低酸素収集容器と、白血球及び幹細胞の回復フィルタと、濾過された上清を収集するための第1の付属低酸素貯蔵容器と、幹細胞維持培地を含む第2の付属低酸素貯蔵容器と、を含み、上述の第2の付属低酸素貯蔵容器が、上述の白血球及び幹細胞の回復フィルタと流体連通しており、上述のキットが、1,400パスカル(Pa)未満の酸素の分圧(pO2)を含む、キット。
【0163】
実施形態71.上述の白血球及び幹細胞のフィルタが、単一のフィルタである、実施形態70のキット。
【0164】
実施形態72.上述の第1の付属低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、内側の折りたたみ可能な血液容器と、上述の外側レセプタクルと上述の内側の折りたたみ可能な血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、上述の外側レセプタクルを通り抜け、上述の折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含み、上述の流体連通が、1,400Pa未満のpO2を含む、実施形態70のキット。
【0165】
実施形態73.上述の第2の付属低酸素貯蔵容器が、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、内側の折りたたみ可能な血液容器と、上述の外側レセプタクルと上述の内側の折りたたみ可能な血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、上述の外側レセプタクルを通り抜け、上述の折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含む、実施形態70の方法。
【0166】
実施形態74.上述の第1及び第2の付属低酸素貯蔵容器が、メッシュ、成形マット、織布マット、不織布マット、オープンセルフォーム、ストランドベール、及びストランドマットからなる群から選択されるスペーサを更に含む、実施形態70の方法。
【0167】
実施形態75.移植のための幹細胞を調製する方法であって、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵容器を37℃にさらすことと、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む上述の低酸素貯蔵バッグを、上述の凍結した幹細胞を解凍して、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を生成するために、42℃未満の水浴に浸漬することと、上述の解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を、2.5%(重量/体積)のヒトアルブミンを含有する等体積の低酸素溶液で希釈して、希釈した低酸素貯蔵された幹細胞を形成することと、を含む、方法。
【0168】
実施形態76.上述の溶液が、5%のデキストラン40を更に含む、実施形態75の方法。
【0169】
実施形態77.上述の水浴が、少なくとも32℃である、実施形態75の方法。
【0170】
実施形態78.上述のさらすことが、15~30日間にわたる、実施形態75の方法。
【0171】
実施形態79.上述の希釈した幹細胞を遠心分離することと、上清を除去することと、を更に含む、実施形態75の方法。
【0172】
実施形態80.上述の解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を、移植に適した体積になるまで、アルブミンデキストラン溶液で再懸濁させることを更に含む、実施形態75の方法。
【0173】
実施形態81.上述の移植に適した体積が、10~50ミリリットル/キログラム(mL/kg)である、実施形態80の方法。
【0174】
実施形態82.移植のための幹細胞を調製する方法であって、凍結した低酸素貯蔵された幹細胞を含む低酸素貯蔵バッグを少なくとも25℃にさらして、解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を形成することと、
【0175】
上述の解凍した低酸素貯蔵された幹細胞を遠心分離し、上清を除去することと、上述の低酸素貯蔵された幹細胞を、3%のデキストラン40を含む溶液に再懸濁させることと、を含み、低酸素貯蔵バッグが、3500Pa未満の低酸素環境を含む、方法。
【0176】
実施形態83.幹細胞を必要とする対象において移植のための幹細胞を調製するための方法であって、低酸素貯蔵された幹細胞を解凍することと、低酸素幹細胞増殖システムで上述の低酸素貯蔵された幹細胞を増殖させ、低酸素増殖した幹細胞を調製することと、
【0177】
上述の低酸素増殖した幹細胞を、それを必要とする上述の対象に移植することと、を含み、低酸素貯蔵バッグが、3500Pa未満の低酸素環境を含む、方法。
【0178】
実施形態84.上述の低酸素幹細胞増殖システムが、酸素に対して実質的に不透過性の外側レセプタクルと、内側の折りたたみ可能な血液容器と、上述の外側レセプタクルと上述の内側の折りたたみ可能な血液容器との間に位置する酸素又は酸素及び二酸化炭素の吸着剤と、実質的に不透過性であり、上述の外側レセプタクルを通り抜け、上述の折りたたみ可能な容器と流体連通する少なくとも1つの入口/出口と、を含む、実施形態83の方法。
【0179】
実施形態85.上述の幹細胞増殖システムが、単回使用バイオリアクターバッグを含む、実施形態83の方法。
【0180】
実施形態86.上述の幹細胞増殖システムが、1,400Pa未満のpO2を含む制御された環境における幹細胞の3D培養を含む、実施形態83の方法。
【0181】
実施形態87.上述のシステムが、1,400Pa未満のpO2を含む制御された環境における幹細胞の2D培養を含む、実施形態83の方法。
【0182】
実施形態88.移植のための細胞を調製するための方法であって、幹細胞を含有する血液製剤を、低酸素収集容器を含む酸素吸収環境内に収集することであって、上述の低酸素収集容器が、1日当たり0.5cc/平方メートル未満の酸素のO2透過性を特徴とする酸素(O2)バリアと酸素吸着剤とを含む、収集することと、血液製剤の酸素の初期分圧(pO2)が80~95%減少するまで、血液製剤を混合することと、上述の血液製剤を幹細胞結合フィルタに適用して、白血球及び幹細胞が枯渇した血液製剤を調製することを含む、上述の血液製剤から白血球及び幹細胞を分離することと、等張性培地を用いて、上述のフィルタから上述の幹細胞を溶出させることと、上述の幹細胞を、25バーラーより大きな酸素(O2)透過性を有し、低酸素貯蔵された幹細胞を形成する材料を含む内側細胞適合性バッグを含む低酸素貯蔵容器に移すことと、を含み、上述の幹細胞が、上述の収集することと上述の移すこととの間に1時間を超えて正常酸素圧条件にさらされず、上述の正常酸素圧条件が、少なくとも約21,000パスカルの酸素の分圧を含む、方法。
【0183】
実施形態89.上述の分離することが、上述の混合することの前に行われる、実施形態88の方法。
【実施例
【0184】
実施例1:ヒト臍帯血の収集及び分析
約150mLのHUCBを、New York Blood Center,New York(USA)のプロトコルに従って、クエン酸-リン酸-デキストロース-アデニン1(CPDA-1、150mLのHUCB当たり21mLの抗凝固剤)を含有する滅菌血液収集バッグに収集する。50ミリリットル(50mL)のアリコートを、A、B、及びCとラベル付けされたバッグに移す。バッグA、B、及びCを線形血小板撹拌機に3時間置き、赤血球のヘモグロビン中の酸素飽和率を異なるレベルまで減少させる。バッグA中のHUCBは、80~90%の飽和酸素を有する、好気性貯蔵対照血液である。バッグB中のHUCBは、10~20%のSO2を有する、低酸素貯蔵試料である。バッグC中のHUCBは、1~5%のSO2を有する、低酸素貯蔵試料である。HUCBの細胞成分(白血球、血小板及び赤血球)の濃度を、Sysmex hematology analyzer(Sysmex America、Chicago,IL)、赤血球のヘモグロビンの酸素飽和率(%SO2)を使用して測定する。酸素の分圧(mmHg単位でのPO2)及び二酸化炭素の分圧(PCO2)を、ABL 90ガスアナライザ(Radiometer、Brea,CA)を用いて測定する。
【0185】
バッグは、収集及び処理後の76時間、室温で貯蔵される。臍帯血中のHSCの品質、生存率、及び分化の分析のために、24時間、36時間、及び72時間の貯蔵後に、バッグA、B、及びCからアリコート(各15mL)を除去する。
【0186】
実施例2:ヒト臍帯血中のCD34+細胞のフローサイトメトリー分析
濾過前HUCB及び回収された細胞懸濁液中のCD34+細胞の濃度を、Becton Dickinson ProCountチューブ(Becton Dickinson)を用いた3色の直接免疫蛍光システムを備えたフローサイトメータ(FacsCalibur、Becton Dickinson、San Jose,CA,USA)を使用して測定する。Becton Dickinson Pro-Count Progenitor Cell Enumerationキットは、CD34+試薬(バイアル「A」)、対照試薬(バイアル「B」)及びTruCountチューブを含む。CD34試薬は、以下の試薬の混合物を含有する。白血球及び有核赤血球を含む全ての有核細胞の検出を可能にする核酸染料、未成熟造血前駆細胞及びHUCB中の全ての造血コロニー形成細胞上に存在するヒトHSPCを認識するフィコエリスリン(PE)標識されたマウスモノクローナルCD34抗体、非特異的染色又は事象を評価するためのアイソタイプ対照であるIgG1PE、並びに全ての白血球に存在し、造血細胞上に弱く発現するか、又は発現しないヒト白血球抗原を認識するペリジニンクロフィルタンパク質(PerCP)標識されたマウスモノクローナル抗体CD45。ProCountキットのバイアル「B」は、対照試薬であり、核酸染料、PE標識されたIgG1、ヒト細胞上に発現されないキーホールリムペットヘモシアニン抗原のみを認識するための非特異的染色又は事象を評価するためのアイソタイプ対照、及びCD45-PerCPの混合物を含有する。
【0187】
各HUCB試料について、2つのTrueCount(商標)チューブは、CD34+については「A」(以下「Aチューブ」)、対照についてはB(以下「Bチューブ」)とラベル付けされる。20μlのCD34+試薬AをAチューブに移し、20μlの対照試薬BをBチューブに移す。50μlの十分に混合されたHUCB試料(濾過前又はフィルタから回収のいずれか)が、Aチューブ及びBチューブの両方に添加される。チューブを穏やかにボルテックス撹拌し、試料を混合する。全ての試料を、暗所で室温(22℃)で15分間インキュベートする。試験試料は、カウントされた試料体積が外挿される内部標準として役立つ所定の数の蛍光性ビーズと組み合わされる。15分後、450μlのFACS(商標)溶解溶液をAチューブ及びBチューブの両方に添加する。チューブを、暗所で室温で30分間インキュベートする。試料を、488nmの励起波長、15mWで動作するアルゴンレーザを備えたFACSCalibur(商標)(Becton Dickinson)フローサイトメータ、及び自動データ取得及び分析のためのBD ProCountソフトウェア2.0を使用して、製造元のLyse/no洗浄法に従って分析される。この機器は、FACSComp(商標)(Becton-Dickinson)ソフトウェアを使用して、標識されたビーズ(Calibrite(商標)、Becton-Dickinson)を用いて毎日較正される。
【0188】
CD34+細胞の回収率は、以下の式を使用して計算される。
【数1】
【0189】
実施例3:造血クローン原性アッセイ及び細胞生存率
濾過前HUCB、及びHUCB細胞の濾過後に回収された細胞を、1皿当たり3×104個及び1×105個の細胞の細胞濃度で、三重にコロニー形成細胞(CFC)アッセイに配置する。細胞を、MethoCult(商標)半固体マトリックス中で培養する。培養物を、正常酸素圧(21%酸素)又は低酸素条件(5%酸素)のいずれかで14日間、37℃、5%CO2でインキュベートする。コロニーを、形態に基づいて採点する。このアッセイでは、前駆細胞集団が増殖し、認識可能な成熟細胞のコロニーを形成する。コロニーを生じさせるそれらの細胞は、CFC又はCFUと呼ばれ、CFU-赤血球系(CFU-E)、破裂形成単位-赤血球系、CFU-顆粒球-マクロファージ、CFU-顆粒球-赤血球-マクロファージ-巨核球として特定される。データは、各前駆細胞株についてカウントされた3×105個の細胞当たりのコロニー数として提示される。濾過前のHUCB及び濾過後の回収された細胞懸濁液中の細胞の生存率は、トリパンブルー染料除外(StemCell Technologies)を使用して評価される。合計100個の細胞をカウントし、結果を、生細胞の数(染色されていない)を、カウントされた細胞の総数(染色された細胞及び染色されていない細胞)で割った生存率で表す。
【0190】
実施例4:幹細胞の低酸素調製及び貯蔵
New York Blood Center-National Cord Blood Program(NYBC-NCBP)の標準的なプロトコルに従って、約60~90ミリリットル(mL)のヒト臍帯血(HUCB)をドナーから収集し、クエン酸-リン酸-デキストロース-アデニン1(CPDA-1)を含有する滅菌血液収集バッグに収集する。HUCBは、収集から24時間以内に、NCBP施設で受領される。HUCBの細胞成分(白血球、血小板、及び赤血球)の濃度を、Sysmex haematology analyzer(Sysmex America、Chicago,IL)を使用して測定する。赤血球のヘモグロビンの酸素飽和率(%SO2)、酸素の分圧(mmHg単位でのPO2)、及び二酸化炭素の分圧(PCO2)を、ABL90ガスアナライザ(Radiometer、Brea,CA)を用いて測定する。
【0191】
HUCBの約20~30mLのアリコートを、A(受領時に30~90%のSO2での対照好気性貯蔵)、B(低酸素貯蔵、10~20%のSO2)、及びC(低酸素貯蔵、0~10%のSO2)とラベル付けされた滅菌バッグに移す。バッグB及びC内のHUCB中に存在する赤血球は、それぞれ、10~20%のSO2及び0~10%のSO2になるまで脱酸素化される。適切なレベルの%SO2になるまでの脱酸化から24時間後及び48時間後、各試料を、造血クローン原性アッセイ(CFU)、生存率アッセイについて試験する。CD45+及びCD34+細胞の生存率をフローサイトメトリー及び7-AAD除外により評価する)
【0192】
実施例5:幹細胞の低酸素調製及び貯蔵
データの平均及び標準偏差を、統計プログラムPrism(Intuitive Software for Sciences、GraphPad,San Diego,CA,USA)を使用して計算する。測定されたパラメータの差は、対応ありデータ及び対応なしデータについての両側スチューデントt検定によって分析され、0.05未満の確率レベルが有意であると考えられる。0日目(3時間処理の直前及び直後)、及び処理の24、36及び76時間後に、各貯蔵条件について合計20個のHUCBを試験する(N=20)。
【0193】
実施例6:濾過技術を用いた幹細胞の低酸素収集及び濃縮
ヒト臍帯血(HUCB)を、患者から収集し、血液の凝固又は幹細胞の凝集を防止するために、クエン酸-リン酸デキストロース抗凝固剤を含む低酸素収集バッグ(A)に直接収集する。低酸素収集バッグは、濾過された流体を収集するための二次バッグに取り付けられた幹細胞保持フィルタに取り付けられる。HUCBは、酸素を枯渇させ、図1によって提供されるように、白血球及び幹細胞を捕捉するための白血球減少フィルタで濾過される。流出物は、低酸素貯蔵バッグ(B)内に収集される。濃縮された幹細胞は、幹細胞を含有するフィルタを100mLの等張性幹細胞培養培地で流すことによって回収される。幹細胞は、逆行位置で、フィルタの上流の幹細胞維持培地を含有する低酸素貯蔵バッグ(C)へと洗い流される(図1)。
【0194】
実施例7:遠心分離を使用した幹細胞の低酸素収集及び濃縮
ヒト臍帯血(HUCB)、末梢血、骨髄穿刺液、又はリポアスピレートを、低酸素システム内の2つの付属低酸素貯蔵バッグに接続される低酸素収集バッグに収集する。低酸素収集バッグ内の血液製剤を遠心分離して幹細胞を濃縮する。上清を除去し、幹細胞を幹細胞維持培地に再懸濁させる。幹細胞を、低酸素貯蔵バッグに最長3日間貯蔵し、依然として嫌気性貯蔵バッグ内にある間に、移植のために適切な用量に調整し、次いで、患者に直接移植する。あるいは、幹細胞を凍結保護剤で希釈し、-80℃で液体窒素中に貯蔵する。
【0195】
実施例8:単離された前駆細胞の低酸素増殖
幹細胞を、まず、適切な体積の抗凝固剤を含有する低酸素貯蔵バッグに収集する。実施例6又は7に記載されるように、幹細胞を単離し、濃縮する。次いで、HSCを、低酸素貯蔵条件下でHSCを増殖させるために、嫌気性貯蔵バッグから市販の増殖バッグ(例えば、GE Healthcare WAVEバイオリアクタ、Terumo Quantum Cell Expansion System)に移す。増殖倍率は、3~4日間にわたって3~14倍の範囲であり、細胞生存率は、98%を超えている。
【0196】
増殖した幹細胞の懸濁液を遠心分離によって濃縮する。上清を除去し、幹細胞を幹細胞維持溶液に再懸濁させる。幹細胞懸濁液は、依然として嫌気性貯蔵バッグ内にある間に、移植のために適切な用量に調整される。あるいは、幹細胞懸濁液を適切な凍結保護剤で希釈し、次いで-80℃で液体窒素(LN)中に貯蔵する。
【0197】
実施例9:単離された前駆細胞の低酸素増殖
実施例6又は7に記載されるように、幹細胞を収集し、単離し、濃縮する。単離された幹細胞を、低酸素貯蔵バッグから、マイクロキャリアビーズ/足場及び幹細胞増殖培地を含む一体的に取り付けられた低酸素バッグに移す。幹細胞を3~4日間にわたって増殖させる。次いで、幹細胞の懸濁液を遠心分離によって濃縮する。上清を除去し、幹細胞を幹細胞維持溶液に再懸濁させる。幹細胞懸濁液は、依然として嫌気性貯蔵バッグ内にある間に、移植のために適切な用量に調整されるか、又は適切な凍結保護剤で希釈し、-80℃で、又は液体窒素中に貯蔵する。
【0198】
実施例10:凍結した幹細胞懸濁液の解凍及び低酸素事前調整
実施例8又は9に従って調製された凍結したHSCを、冷凍庫から取り出し、約15分間気相にさらす。次いで、HSCを周囲の空気に5分間さらして、低酸素貯蔵バッグに、ある程度の弾力性を取り戻させる。低酸素貯蔵バッグを、急速解凍のために37℃の水浴に浸漬する。解凍後、幹細胞を、等張性溶液中の2.5%(重量/体積)のヒトアルブミン及び5%のデキストラン40を含有する等体積の溶液で希釈する。上清を遠心分離によって除去し、沈降した幹細胞をアルブミン/デキストラン溶液にゆっくりと再懸濁させ、移植のために適切な体積及び用量にする。
図1
図2
【国際調査報告】