(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】乳房再建インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61F2/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555235
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022019228
(87)【国際公開番号】W WO2022192168
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512315555
【氏名又は名称】テファ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リメム,スカンダー
(72)【発明者】
【氏名】サリブラーモグル,ケマル
(72)【発明者】
【氏名】バトラー,ティモシー,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ホール ロペス,ゲルマン,オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,サイモン,エフ.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA19
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097DD02
4C097DD05
4C097DD15
4C097EE08
4C097FF05
(57)【要約】
吸収性インプラントを使用して、再生された組織を有する患者の乳房に体積及び形状を与えることができる。インプラントは、平行なフィラメントの層から形成された足場を備える。フィラメントの層を合わせて積み重ねて接着して、フィラメントの多孔質交差配置を有する足場を形成することができる。インプラントの足場は、自家脂肪移植片を含む細胞及び組織でコーティング又は充填することができ、及び/又は血管茎をインプラントに挿入することができる。本インプラントは、例えば、乳房切除に続いてか又は乳房固定術において、乳房組織を再生するか又は増大させるために、形成外科処置において使用されるのに特に好適であり、これらの処置において永久乳房インプラントの使用に代わるものを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質3次元足場を備える乳房インプラントであって、前記インプラントが、患者の胸壁に配置される後部エリアと、前記後部エリアと反対側の前部エリアとを備え、前記前部エリアが、乳房の下極に配置される前底部と、前記乳房の上極に配置される前頂部と、前記患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含み、前記インプラントが、0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率を有し、前記足場が、互いに接着されたフィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面を含み、各平面の前記フィラメントが同じ方向に延在している、乳房インプラント。
【請求項2】
前記インプラントの前記前底部が凸状外面を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
フィラメントの前記平行平面がポリマーで形成され、前記ポリマーが、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記インプラントが0.3~100kPaの損失弾性率を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記凸状外面が、乳房の下極の解剖学的特徴に近似している、請求項2に記載のインプラント。
【請求項6】
前記インプラントが、前記インプラント内に組織を挿入するための開口部をさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記開口部が前記インプラントの前記後部エリアに位置している、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
フィラメントの少なくとも2つの平行平面が、隣接する平面又は隣接しない平面において同じ配向を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記足場を通して交差したフィラメントの多孔質足場が形成されるように、フィラメントの第1平行平面が第1幾何学的配向で編成され、フィラメントの第2平行平面が第2幾何学的配向で配置されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記足場が、フィラメントの第3平行平面をさらに含み、前記第1、第2及び第3平行平面における前記フィラメントが、三角形の形状を有する細孔を形成している、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記平行平面における前記フィラメント間の角度が、1~120度、又は18、20、30、36、45若しくは60度のうちの1つから選択されている、請求項1、9及び10のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
前記乳房インプラントが、100~500ミクロンの平均直径又は平均幅を有する細孔を備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記足場が、複数の中空チャネル又は中空直線状チャネルをさらに備える、請求項1及び9~11のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記チャネルが100ミクロンを超える直径を有する、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記フィラメントが、10μm~5mmの平均直径又は平均幅、0.1~200Nの破断荷重、10~1,000%又は25~500%の破断伸び、及び0.05~1,000MPa又は0.1~200MPaの弾性率のうちの1つ又は複数の特性を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項16】
フィラメントの前記少なくとも2つの平行平面が、前記フィラメントを3D印刷することによって合わせて接着されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記足場におけるフィラメントのインフィル密度が、1%~60%又は5%~25%のうちの一方から選択されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
前記インプラントが、フィラメントの前記平行平面を少なくとも部分的に包囲するシェル又はコーティングをさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
前記シェルが、前記シェルの内部容積を包囲する外面及び内面を有する、請求項18に記載のインプラント。
【請求項20】
前記シェルが同心のフィラメントの積層体を含む、請求項18に記載のインプラント。
【請求項21】
前記インプラントが、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤及び診断デバイスのうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項22】
前記インプラントが、前記乳房に前記インプラントを固定するための1つ又は複数のアンカ、ファスナ又はタブをさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項23】
前記インプラントがドーム状の形状を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項24】
前記インプラント又は足場が吸収性ポリマーを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項25】
前記吸収性ポリマーが、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノアート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシオクタノアート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸及びアジピン酸の群から選択された1種又は複数種のモノマーを含むか又はそれらから調製され、又は、前記吸収性ポリマーが、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む、請求項24に記載のインプラント。
【請求項26】
前記インプラントが、(i)フィラメントの前記平行平面を3D印刷することにより前記足場を形成することと、(ii)溶融押出堆積印刷により前記足場を形成することとからなる群から選択された1つのプロセスにより製造されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項27】
前記インプラントが吸収性である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項28】
前記インプラントが、前記圧縮弾性率が前記乳房への埋込み後の時間によって変化するように適合されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項29】
前記圧縮弾性率が、埋め込まれてから2年以内に200kPa以下まで減少する、請求項28に記載のインプラント。
【請求項30】
前記インプラントが、圧縮力が加わりその後取り除かれたときに、その元の体積の少なくとも50%、70%又は90%を回復するように構成されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項31】
前記インプラントが1~80%の圧縮レジリエンスを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項32】
多孔質3次元足場を備える乳房インプラントを製造する方法であって、前記インプラントが、患者の胸壁に配置される後部エリアと、前記後部エリアと反対側の前部エリアとを備え、前記前部エリアが、乳房の下極に配置される前底部と、前記乳房の上極に配置される前頂部と、前記患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含み、前記インプラントが、0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率を有し、前記足場が、互いに接着されたフィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面を含み、各平面の前記フィラメントが同じ方向に延在し、(i)前記フィラメントの3D印刷によりポリマー組成物からフィラメントの少なくとも2つの平行平面を形成することと、(ii)溶融押出堆積印刷によりポリマー組成物からフィラメントの少なくとも2つの平行平面を形成することとのうちの一方により、足場を形成することを含む、方法。
【請求項33】
前記インプラントの前記前底部が凸状外面を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー組成物が、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノアート、3-ヒドロキシオクタノアート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸及びアジピン酸のうちの1種又は複数種のモノマーを含むか又はそれらから調製され、又は、前記ポリマー組成物が、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記フィラメントがポリマーで形成され、前記ポリマーが、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記フィラメントが、(i)10μm~5mmの平均直径又は平均幅、(ii)0.1~200N、1~100N又は2~50Nの破断荷重、(iii)10~1,000%若しくは25~500%、又は100%若しくは200%を超える破断伸び、及び(iii)0.05~1,000MPa又は0.1~200MPaの弾性率のうちの1つ又は複数の特性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記インプラントが、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン、組換えコラーゲン、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤及び診断デバイスのうちの1つ又は複数を前記インプラントに組み込むプロセスにおいて形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記足場が、3D印刷を含むプロセスによって形成され、0.1kPa~5MPaの損失弾性率を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
圧縮力で前記インプラントを圧縮することと、
前記インプラントから前記圧縮力を取り除くことであって、前記インプラントが、前記圧縮力が取り除かれた後、その元の体積の少なくとも50%、70%又は90%を回復するように構成される、取り除くことと、
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記インプラントが1~80%の圧縮レジリエンスを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
請求項1に記載のインプラントを乳房に埋め込む方法であって、(i)患者の乳房組織へのアクセスを得るために少なくとも1つの切開を行うことと、(ii)前記乳房の乳房マウンドから皮膚及び皮下筋膜を分離することと、(iii)前記インプラントを乳腺下、胸筋下又は筋膜下に位置決めすることと、(iv)前記インプラントを近くの組織に固定することと、(v)前記乳房の切開を閉じることとを含む、方法。
【請求項42】
前記インプラントを前記患者に埋め込む前か又は前記インプラントを前記患者に埋め込んだ後のいずれかに、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン、組換えコラーゲン、抗菌剤、抗生剤及び生物活性剤のうちの1つ又は複数を前記インプラントに1回又は複数回コーティング又は注入することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
血管茎又は他の組織塊を前記インプラント内に挿入することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
本明細書に記載のフィラメントの複数の層を備える乳房インプラント。
【請求項45】
本明細書に記載の特性範囲のうちの1つ又は複数を有するように適合又は構成された乳房インプラント。
【請求項46】
本明細書に記載のフィラメントの複数の層を備える乳房インプラントを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2021年3月11日に出願された米国仮特許出願第63/159,914号の利益を主張するものであり、その出願は、参照により全体が本明細書に援用される。
【0002】
分野
[0002] 本明細書で提供する態様は、概して、乳房組織に取って代わるのに好適な圧縮弾性率を有する3次元多孔質インプラントに関する。より詳細には、インプラントは吸収性であり、適切な圧縮弾性率を有する足場(scaffold)を提供するためにフィラメントの平行平面を互いに接着することによって形成される。このインプラントは、乳房に埋め込まれたときに、軟組織の体積に取って代わるか又は体積を増加させるように設計されている。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 乳房切除後の乳房再建は、乳がん治療の不可欠で重要な部分になっており、手術により患者に審美的利益及び心理社会的利益の両方をもたらすものである。米国では現在、乳房再建術の65%近くが、手術の第1段階で永久的な乳房インプラント用のポケットを生成するために組織拡張器を使用している。一部の患者では、組織拡張器を使用せずに乳房インプラント用のポケットを形成することができる。ポケットが生成されると、組織拡張器は取り除かれ、第2段階で永久乳房インプラントに置換される。
【0004】
[0004] 乳房インプラントは、乳房のサイズを増大させるために乳房増大術又は乳房固定術でも使用することができる。後者の手術では、乳房挙上が乳房増大と組み合わされる。最も概しては、乳房インプラントは乳房組織の下のポケットに配置されるが、場合によっては胸壁の下に埋め込まれる。
【0005】
[0005] 乳房インプラントは、寸法、形状及び表面の質感が異なる。多種多様な異なる寸法が利用可能であり、外科医及び患者は、さまざまな突出、高さ、幅及び全体的な体積から選択することができる。形状に関しては、丸みを帯びたインプラントと解剖学的に形作られたインプラントとがあり、インプラントの表面は、滑らか、マイクロテクスチャ又はマクロテクスチャであり得る。一般に、丸みを帯びたインプラントは滑らかな表面を有し、解剖学的に形作られたインプラントは、くぼみのあるマイクロテクスチャ又はマクロテクスチャの表面を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
[0006] いくつかの態様では、インプラントが提供される。いくつかの実施形態では、乳房インプラントは、多孔質3次元足場を含むことができ、インプラントは、患者の胸壁に配置される後部エリアと、後部エリアと反対側の前部エリアとを含み、前部エリアは、乳房の下極に配置される前底部と、乳房の上極に配置される前頂部と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含み、インプラントは、0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率を有し、足場は、互いに接着されたフィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面を含み、各平面のフィラメントは同じ方向に延在している。
【0007】
[0007] いくつかの態様では、製造方法が提供される。いくつかの実施形態では、乳房インプラントを製造する方法が提供され、乳房インプラントは多孔質3次元足場を含み、インプラントは、患者の胸壁に配置される後部エリアと、後部エリアと反対側の前部エリアとを含み、前部エリアは、乳房の下極に配置される前底部と、乳房の上極に配置される前頂部と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含み、インプラントは、0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率を有し、足場は、互いに接着されたフィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面を含み、各平面のフィラメントが同じ方向に延在し、本方法は、(i)フィラメントの3D印刷によりポリマー組成物からフィラメントの少なくとも2つの平行平面を形成することと、(ii)溶融押出堆積印刷によりポリマー組成物からフィラメントの少なくとも2つの平行平面を形成することとのうちの一方により、足場を形成することを含む。
【0008】
[0008] 上述した概念、及び後述する追加の概念は、本開示はこの点で限定されないため、任意の好適な組合せで配置することができることが理解されるべきである。さらに、添付の図と併せて考慮した場合に、さまざまな非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から、本開示の他の利点及び新規の特徴が明らかとなろう。
【0009】
[0009] 本明細書と参照により援用される文献とが、矛盾し及び/又は一貫しない開示を含む場合、本明細書が優先されるものとする。参照により援用される2つ以上の文献が、互いに関して矛盾し及び/又は一貫しない開示を含む場合、発効日が後の文献が優先されるものとする。
【0010】
図面の簡単な説明
[0010] 添付図面は、正確な縮尺で描かれるように意図されていない。図面において、さまざまな図に示す各同一の又は略同一の構成要素は、同じ数字で表されている可能性がある。明確にするために、すべての図面においてすべての構成要素に符号を付けているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】[0011]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント足場1の等角図である。乳房インプラント足場1は、患者の胸壁に配置される後部エリア2と、後部エリアと反対側の前部エリア3と、乳房の下極に配置される前底部4と、乳房の上極に配置される前頂部5と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域6と、組織塊が挿入される後部エリアと前部エリアとの間の開口部7と、第2組織塊が挿入される、開口部7に垂直な開口部8とを備えるように示されている。
【
図1B】[0012]後部エリア11及び前部エリア12を含む、
図1Aに示す乳房インプラント足場10の第2等角図である。
【
図1C】[0013]組織塊が挿入される第2内側(medial)-外側(lateral)開口部21を含む、
図1Aに示す乳房インプラント足場20の上面図である。
【
図1D】[0014]前部エリア31及び後部エリア32を含む、
図1Aに示す乳房インプラント足場30の側面図である。
【
図2A】[0015]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント40の中央平面に沿った断面の上面図である。平行フィラメントの積重ね層を有し、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と60度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成している、乳房インプラント足場40が示されている。4つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図2B】[0016]平行フィラメントの層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と60度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、
図2Aに示す乳房インプラント50の中央平面に沿った断面の部分等角図である。4つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図3A】[0017]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント60の中央平面に沿った断面の上面図である。平行フィラメントの積重ね層を有し、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と45度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成している、乳房インプラント足場60が示されている。5つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図3B】[0018]平行フィラメントの層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と45度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、
図3Aに示す乳房インプラント70の中央平面に沿った断面の部分等角図である。5つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図4A】[0019]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント80の中央平面に沿った断面の上面図である。平行フィラメントの積重ね層を有し、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と36度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成している、乳房インプラント足場80が示されている。6つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図4B】[0020]平行フィラメントの層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と36度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、
図4Aに示す乳房インプラント90の中央平面に沿った断面の部分等角図である。6つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図5A】[0021]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント100の中央平面に沿った断面の上面図である。平行フィラメントの積重ね層を有し、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と30度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成している、乳房インプラント足場100が示されている。7つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図5B】[0022]平行フィラメントの層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と30度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、
図5Aに示す乳房インプラント110の中央平面に沿った断面の部分等角図である。7つおきのフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図6A】[0023]本発明の1つの実施形態による乳房インプラント120の中央平面に沿った断面の上面図である。平行フィラメントの積重ね層を有し、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と18度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成している、乳房インプラント足場120が示されている。11の層おきにフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図6B】[0024]平行フィラメントの層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と18度の角度で交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、
図6Aに示す乳房インプラント130の中央平面に沿った断面の部分等角図である。11の層おきにフィラメントの層が同じ方向に配向されている。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一のフィラメントを同心の積層体から調製された、外側シェルを有する。
【
図7】[0025]本発明の実施形態による、上から見た乳房インプラント足場140の拡大部分であり、交差したフィラメントI
1、I
2及びI
3の層を有する三角形の開孔構造141を示す。
【
図8】[0026]足場の各フィラメント層を、フィラメント層の印刷角度又はフィラメントの配向を変更する前に繰り返して、縦方向空隙率(V)に対して横方向空隙率(L)を増加させる役割を果たすことにより調製された、本発明の一実施形態による
図7に示す乳房インプラント足場150の線A-Aに沿った断面図である。
【
図9】[0027]平行フィラメント161の層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることによって調製された、乳房インプラント160の中央平面に沿った断面の上面図である。このインプラントは、インプラントの周縁部に、平行フィラメントの積み重ねられた層を取り囲む単一フィラメントの同心の積層体から調製された、外側シェル162を有する。インプラントは、組織塊を挿入するための2つの開口部を有する。インプラントの後部エリアと前部エリアとの間の1つの開口部163と、インプラントを内側から外側方向に貫通する第2の開口部164。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
[0028] 乳房の再建及び増大を検討している患者は増加しているが、永久的な乳房インプラントを自身の乳房に配置することには消極的である。これは特に乳房切除を受けて現在乳房再建を検討している女性に言えることである。これらの患者の中には、自身の乳房に永久的な異物を配置したくない者もおり、そうした患者は、永久的な乳房インプラントで発生する可能性のある合併症のリスクを冒したくないと考える。合併症には、再手術を必要とする被膜収縮、インプラントの破裂又は収縮、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)の発症、感染、及び乳房の非対称性を引き起こすインプラントの移動といったリスクが含まれる。
【0013】
[0029] Hutmacherの国際公開第2016/038083号は、予備的に血管網を形成させた結合組織の生成のための空隙系を細胞及び/又は組織埋込みのための空所とともに含む足場構造体を備えた組織再建用インプラントを開示している。Hutmacherの要約を参照されたい。
【0014】
[0030] Rehnkeの米国特許出願公開第2018/0206978号は、乳房増大患者に使用することができるプリーツ付き足場から調製された内部ブラジャーデバイスを開示している。
【0015】
[0031] Danzeの国際公開第2018/078489号は、軟組織の体積に取って代わり及び/又は体積を増加させるインプラントを形成するために被験者の体内に埋め込まれるデバイスを開示しており、このデバイスは、内部に内部空間を画定する3次元フレームを含むタイプのものである。このフレームは、典型的には生体吸収性であり、血管茎を挿入するための横断通路を形成する2つの側部開口部を含み、このデバイスは、前記フレームの内部空間において互いに積み重ねることができる少なくとも2つの生体吸収性織物シートをさらに含む。Danzeの要約を参照されたい。
【0016】
[0032] Limemの米国特許出願公開第2020/0375726号は、乳房再建に使用するのに好適な単位セルから形成されたインプラントを開示している。
【0017】
[0033] Toro Estrellaの国際公開第2019/217335号は、複数の連結された単位セルを含む生体足場構造を開示しており、各単位セルは、内部容積に連結された少なくとも1つの開口部を含む。
【0018】
[0034] 上記にも関わらず、本発明者らは、埋め込まれたとき、所定の望ましい外観を有する新たな乳房組織を生成することができる、改良された乳房インプラントの必要性を認識した。
【0019】
[0035] 本明細書に記載する乳房インプラントは、特に乳房切除後の乳房の再建、乳房の外観の改善、乳房のサイズの増大、喪失又は欠損した乳房組織の再建、乳房の組織構造の増大、乳房の軟組織の体積の増加、乳房の軟組織の自然な感触の回復、並びに乳房の組織の再生、修復及び再建に役立つ生物学的材料及び合成材料の送達において外科医を支援する。
【0020】
[0036] 実施形態では、乳房インプラントは、多孔質であって、組織の内部成長のための足場を提供し、細胞、コラーゲン、組換えコラーゲン(例えば、I型コラーゲン及び/又はrhコラーゲン)、自家脂肪、吸引脂肪組織、又は注入可能な脂肪をさらに含むことができる。埋込み後、インプラントは、結合組織及び血管によって侵入され、乳房に十分に一体化するように設計されている。実施形態では、インプラントは脂肪組織工学的足場であり得る。
【0021】
[0037] 実施形態では、乳房インプラントは、互いに接着されたフィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面から形成された多孔質の3次元足場を備える。各層のフィラメントは同じ方向に延在し、概して互いに平行である。いくつかの実施形態では、足場は3D印刷することができる。実施形態では、フィラメントの少なくとも2つの平行平面は、足場内の隣接する平面又は隣接しない平面において同じ配向を有する。実施形態では、フィラメントの第1平行平面は第1幾何学的配向で編成され、フィラメントの第2平行平面は第2幾何学的配向で配置されて、交差したフィラメントを有する多孔質足場を形成する。実施形態では、異なる平行平面のフィラメント間の角度は0~179度である。実施形態では、足場は、フィラメントの第10層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から18度オフセットして形成される。実施形態では、足場は、フィラメントの第9層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から20度オフセットして形成される。実施形態では、足場は、フィラメントの第6層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から30度オフセットして形成される。実施形態では、足場は、フィラメントの第5層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から36度オフセットして形成される。実施形態では、足場は、フィラメントの第4層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から45度オフセットして形成される。実施形態では、足場は、フィラメントの第3層がフィラメントの第1層と同じ配向を有するように、フィラメントの各後続する平行平面がフィラメントの先行する平面から60度オフセットして形成される。後者の場合、異なる平面のフィラメント間の角度は、0、60及び120度であり、フィラメントは、足場内で三角形状の細孔を形成するように配向される。
【0022】
[0038] 実施形態では、インプラントは、乳房増大術、乳房再建術及び乳房切除術を含む乳房外科処置で使用するのに好適な形状及びサイズを有する。
【0023】
[0039] 実施形態では、インプラント又は足場は、平均直径又は平均幅が100~500ミクロンの細孔を含む。
【0024】
[0040] 実施形態では、乳房インプラントの足場に存在するフィラメントの平面は、ポリマー組成物から形成される。ポリマー組成物は、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有することができる。
【0025】
[0041] 実施形態では、フィラメントは50μm~5mmの平均直径又は平均幅を有する。
【0026】
[0042] 実施形態では、フィラメントは、(i)0.1~200Nの破断荷重、(ii)10~1,000%及び/又は25~500%の破断伸び、並びに(iii)0.05~1,000MPa又は0.1~200MPaの弾性率のうちの1つ又は複数の特性を有する。
【0027】
[0043] 実施形態では、インプラントのフィラメントは、表面粗さ(Ra)を有するように形成される。表面粗さは、インプラント上の細胞の付着及び組織の形成を促進する。表面粗さはまた、隣接する組織へのインプラントの付着を促進し、組織の内部成長を促し、埋込み後のデバイスの動きを防止するのに役立つ。実施形態では、インプラントは、0.02~75ミクロン、0.1~50ミクロン、又は0.5~30ミクロン、及び/又は5~30ミクロンの表面粗さを有するフィラメントを含む。実施形態では、インプラントのフィラメントは、これらの表面粗さ値で3D印刷される。
【0028】
[0044] 実施形態では、足場中のフィラメントのインフィル密度は、1%~60%、及び/又は5%~25%である。
【0029】
[0045] 実施形態では、乳房インプラントは、0.1kPa~10MPa、0.3kPa~1MPa、及び/又は3kPa~200kPaの圧縮弾性率を有する。圧縮弾性率により、インプラントは、圧縮力が加えられると圧縮されるが、圧縮力が取り除かれると圧縮から回復することができる。乳房インプラントは、乳房が自然の乳房に似た柔らかい感触を感じるように設計することができる。実施形態では、乳房インプラントにより、外科医は、乳房の触感を維持するか又は回復させながら、乳房の質量を回復するか又は増加させることができる。
【0030】
[0046] 実施形態では、乳房インプラントは、0.1kPa~5MPa、0.3kPa~1MPa、及び/又は0.3kPa~100kPaの損失弾性率を有する。
【0031】
[0047] 実施形態では、乳房インプラントは1~80%の圧縮レジリエンスを有することができる。いくつかの実施形態では、乳房インプラントは、少なくとも50%、70%、75%、80%、90%、及び/又は他の任意の好適な割合の圧縮レジリエンスを有することができる。
【0032】
[0048] 実施形態では、乳房インプラントは、圧縮力が加わりその後取り除かれたときに、その元の体積の少なくとも50%、70%、75%、90%、及び/又は他の任意の好適な割合以上を回復するように構成することができる。いくつかの実施形態では、乳房インプラントは、圧縮力が加わりその後取り除かれたときに、その元の体積の少なくとも50%、70%、75%、90%、及び/又は他の任意の好適な割合を回復することができる。
【0033】
[0049] 実施形態では、インプラントは、インプラントが異なる方向で異なる特性を有することを意味する異方性特性を有する。インプラントは、1つの方向では第1圧縮弾性率を有し、第2方向では第2の異なる圧縮弾性率を有してもよい。
【0034】
[0050] 実施形態では、乳房インプラントは、患者の胸壁に配置される後部エリアと、後部エリアと反対側の前部エリアとを備え、前部エリアは、乳房の下極に配置される前底部と、乳房の上極に配置される前頂部と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含む。
【0035】
[0051] 実施形態では、乳房インプラントは、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間の軸によって画定される長手方向軸を有する。
【0036】
[0052] 実施形態では、乳房インプラントの前底部エリアは、凸状外面を含む。凸状外面は、乳房の下極の輪郭を強調するようなサイズ及び形状であり、いくつかの実施形態では、乳房の下極の解剖学的特徴に近似している。
【0037】
[0053] 実施形態では、乳房インプラントは、インプラント内に組織を挿入するための開口部をさらに備える。実施形態では、開口部はインプラントの後部エリアに位置する。実施形態では、開口部は、インプラントの後部エリアに位置し、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間に長手方向軸を有する。実施形態では、インプラントは、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間の長手方向軸を画定する中空コアである開口部を有することができる。
【0038】
[0054] 実施形態では、インプラントは、複数の血管茎、又は他の組織の塊をインプラントに挿入することができるようにする、2つ以上の開口部を備えることができる。
【0039】
[0055] 実施形態では、足場は複数の中空チャネルをさらに備える。実施形態では、中空チャネルは直線状である。実施形態では、中空チャネルは、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間に存在する。実施形態では、中空チャネルは100μmを超える平均直径を有する。
【0040】
[0056] 実施形態では、インプラントは、インプラントを乳房に固定するための1つ又は複数のアンカ、ファスナ又はタブをさらに備える。
【0041】
[0057] 実施形態では、インプラントは、フィラメントの平行平面を少なくとも部分的に包囲する外側シェル又はコーティングをさらに備える。実施形態では、シェルは、前記シェルの内部容積を包囲する外面及び内面を有する。実施形態では、シェル又はコーティングは、発泡体、連続気泡発泡体、コラーゲンコーティング、又はポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、若しくはポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含むコーティングを含む。
【0042】
[0058] シェルは細孔を有することができ、30~100%の範囲のインフィル密度を有することができる。実施形態では、インプラントの後部にはシェルがなく、前部はシェルを有する。
【0043】
[0059] 実施形態では、インプラントにはシェルがなく、任意選択的に、例えば、棘を除去し、全体的に滑らかにするために、外周縁部が処理される。縁部は、例えばトリミング又は熱処理により、処理することができる。
【0044】
[0060] 実施形態では、インプラントは、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン(例えば、I型及び/又はrhコラーゲン)、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤及び診断デバイスのうちの1つ又は複数をさらに備える。
【0045】
[0061] 実施形態では、インプラントは、任意の形状、例えば、乳房の所定の望ましい外観を与える形状に、容易に設計することができる。実施形態では、インプラントは、乳房に望ましい解剖学的形状を与えるように設計された形状を有する。実施形態では、インプラントはドーム状の形状を有する。
【0046】
[0062] 実施形態では、インプラントは、埋め込むために一時的に変形させることができる。実施形態では、インプラントは、低侵襲的な方法で乳房に送達することができる。
【0047】
[0063] 実施形態では、インプラント又は足場は、吸収性ポリマーを含む。実施形態では、吸収性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸及びアジピン酸からなる群から選択される1種又は複数種のモノマーを含むか、又はそれらから調製される。
【0048】
[0064] 実施形態では、インプラント又は足場は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)及びそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)及びそのコポリマーを含む。実施形態では、P4HB及びPBSポリマー並びにそれらのコポリマーは、架橋されていない。実施形態では、PBSポリマー及びコポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤及び反応性配合剤のうちの1つ又は複数をさらに含んでもよい。PBS及びP4HBポリマー及びコポリマーは、同位体濃縮してもよい。
【0049】
[0065] 実施形態では、インプラントを調製するために使用するポリマーは、GPCによって決定されるポリスチレンに対して50~1,000kDa、90~600kDa、及び/又は200~450kDaの重量平均分子量を有する。
【0050】
[0066] 実施形態では、足場は、脂肪吸引された脂肪の微小球を適所に保持し、壊死につながる可能性がある脂肪の貯留を防止することができる材料から調製される。
【0051】
[0067] 実施形態では、足場は、例えば脂肪吸引によって患者から採取された脂肪を含む脂肪のより良好な吸着を可能にするために、親油性ポリマーを含む。
【0052】
[0068] 実施形態では、足場は、脂肪のより良好な吸着を可能にするために疎水性ポリマーを含み、疎水性ポリマーは90度よりも大きい水接触角を有する。
【0053】
[0069] 実施形態では、乳房インプラントは吸収性である。インプラントは、生体内での予測可能な分解速度及び予測可能な強度保持性を有するポリマー材料から形成することができる。インプラントが吸収性である場合、インプラントの分解により、組織、血管又はそれらの組合せによるインプラントのさらなる侵入を可能にすることができ、このプロセスは、インプラントが完全に吸収されるまで継続することができる。
【0054】
[0070] 実施形態では、インプラントは、インプラント部位における乳房の形状がインプラントから新たな組織に移行するのを可能にするのに十分長い間、強度を保持する。インプラントは、患者の組織の再構築を指示するために、その形状を長期間維持する必要がある。いくつかの実施形態では、支持がインプラントから新たな組織に移行するまで、インプラントは乳房の支持を提供することができる。いくつかの実施形態では、この移行期間中、乳房の形状に対する支持の損失は最小限である。乳房インプラントの形状は、組織の内部成長をインプラント内に向け、所望の乳房形状を生成するために、長期間維持される。
【0055】
[0071] 実施形態では、インプラントは、足場のフィラメントの平行平面が3D印刷によって形成されるプロセスを使用して形成される。実施形態では、足場のフィラメントの平行平面は、溶融押出堆積(melt extrusion deposition)印刷によって形成される。
【0056】
[0072] 実施形態では、0.1kPa~10MPa、0.3kPa~1MPa及び/又は3kPa~200kPaの圧縮弾性率を有する多孔質3次元足場と、フィラメントの少なくとも2つの平行平面と、患者の胸壁に配置される後部エリアと、後部エリアと反対側の前部エリアとを備え、前部エリアが、乳房の下極に配置される前底部と、乳房の上極に配置される前頂部と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域とを含み、前底部エリアが凸状面を含む、インプラントを製造する方法が提供され、本方法は、フィラメントの3D印刷によって、及び/又は溶融押出堆積によって、ポリマー組成物から少なくともフィラメントの平行平面を形成することを含む。実施形態では、インプラントを製造する方法は、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸及びアジピン酸のうちの1種又は複数種のモノマーを含むか、又はそれらから調製されるポリマー又はコポリマーから選択されるポリマー組成物から、3D印刷によって、フィラメントの平行平面を形成することを含み、又はポリマー組成物は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む。実施形態では、インプラントを製造する方法は、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有するポリマーから、足場のフィラメントを形成することを含む。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、3D印刷によって、P4HB、PBS、P4HBコポリマー又はPBSコポリマーから調製される。実施形態では、インプラントを製造する方法は、3D印刷によって、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有する足場のフィラメントを形成することを含む。実施形態では、インプラントを製造する方法は、足場を3D印刷することと、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン(例えば、I型及び/又はrhコラーゲン)、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤及び診断デバイスのうちの1つ又は複数の成分又は構成要素を追加することとを含む。実施形態では、これらの成分は、コーティング、噴霧、浸漬又は注入によって足場に追加される。
【0057】
[0073] 実施形態では、インプラントは、皮膚と乳房の乳房マウンド又は胸壁との間の皮下に埋め込むことができる予め決められた3次元形状を有する。乳房インプラントは、乳腺下、胸筋下又は筋膜下の位置に埋め込むことができる。このインプラントの設計により、外科医は、乳房の上下極の体積比、胸壁からの乳房の突出の程度、及び乳房の上下極の曲率を容易に制御することができる。
【0058】
[0074] 実施形態では、インプラントは、細胞、幹細胞、分化細胞、脂肪細胞、筋細胞、血小板、組織、茎、血管茎、組織塊、脂肪吸引細胞、細胞外脂肪基質タンパク質、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン(例えば、I型及び/又はrhコラーゲン)、生物活性剤、薬物、抗生剤及び他の材料をインプラント部位に送達する手段を外科医に提供する役割を果たす。いくつかの実施形態では、インプラントによって送達されるか、又はインプラントにコーティング若しくは注入される細胞及び組織は、自家由来である。インプラントは自家脂肪埋込みに使用してもよい。インプラントは、成長因子、細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、サイトカイン等の細胞シグナル伝達分子、並びに細胞遊走、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外基質沈着を促進する分子を含む、細胞の内部成長を刺激する生物活性剤を含んでもよい。
【0059】
[0075] 実施形態では、インプラントは、軟組織の体積又は組織塊に取って代わり及び/又はそれを増加させるために埋め込むことができる。実施形態では、インプラントは、細胞及び組織のための成長チャンバをさらに含んでもよい。
【0060】
[0076] 実施形態では、インプラントは、インプラントあたり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有する。
【0061】
[0077] 実施形態では、インプラントは滅菌されたインプラントである。インプラントは、限定なしにエチレンオキシド、電子ビーム又はガンマ線照射を含むさまざまな技法によって滅菌することができる。
【0062】
[0078] 実施形態では、患者の乳房にインプラントを埋め込む方法が提供される。実施形態では、インプラントの埋込み方法は、(i)患者の乳房組織へのアクセスを得るために少なくとも1つの切開を行うことと、(ii)乳房の乳房マウンドから皮膚及び皮下筋膜を分離することと、(iii)インプラントを乳腺下、胸筋下又は筋膜下に位置決めすることと、(iv)インプラントを近くの組織に固定することと、(v)乳房の切開を閉じることとを含む。実施形態では、インプラントを乳房に埋め込む方法は、インプラントを乳房に埋め込む前か又はインプラントを乳房に埋め込んだ後のいずれかに、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン、組換えコラーゲン、抗菌剤、抗生剤及び生物活性剤のうちの1つ又は複数の成分をインプラントに1回又は複数回コーティングすること、又は追加することをさらに含む。実施形態では、これらの成分は、注入、噴霧、浸漬若しくはコーティング、及び/又はインプラントの足場の上若しくは中への成分の注入によってインプラントに追加される。実施形態では、インプラントは、埋込み前、埋込み中若しくは埋込み後、又はそれらの任意の組合せにおいて、患者からの自家組織でコーティングされる。実施形態では、埋込み方法は、組織をインプラントに挿入するためのサイズである開口部を有するインプラントを埋め込むことと、インプラントの埋込み中に、血管茎、血管茎穿通枝、及び/又は穿通枝を有する小胸筋からの茎等の組織又は茎をインプラントの開口部に挿入することとを含む。実施形態では、埋込み方法は、穿通枝を有する患者の小胸筋から茎を剥離することと、茎を受け入れるようなサイズであるインプラントの開口部に茎を挿入することとを含む。実施形態では、外科医は、患者へのインプラントの埋込み前、又は埋込み後に、インプラント内に茎又は他の組織塊を挿入することができる。乳房インプラントは、(i)乳房切除を受けた患者、(ii)乳房挙上を受け、乳房増大の必要性がある患者、(iii)乳房縮小を受け、縮小した乳房の支持及び挙上が必要な患者、(iv)以前にシリコーン又は生理食塩水乳房インプラント乳房手術を受け、シリコーン又は生理食塩水インプラントを除去すること、及び、その後、若々しい外見であるがより豊かな乳房及びより大きいサイズをもたらす乳房の再建を行うことを望む患者に、使用することができる。インプラントはまた、乳房組織を除去した後、乳房に自然な乳房組織の感触を取り戻したい患者に使用してもよい。インプラントは、胸部からの乳房の突出を増大させるために、また乳房に体積を加えるために脂肪注入と組み合わせて使用することができる。
【0063】
[0079] これらの利点と本発明の他の目的及び利点とは、添付図面とともに、以下の説明から明らかとなろう。
【0064】
[0080] 本発明を詳細に説明する前に、本発明は、記載する発明にさまざまな変形又は変更を行うことができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく均等物に置き換えることができるため、本明細書に記載する特定の変形例に限定されないことが理解されるべきである。本開示を読む当業者には明らかとなるように、本明細書に記載し図示する個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちの任意のものの特徴から容易に分離し又はそうした特徴と組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為又はステップを、本発明の目的、趣旨又は範囲に適合させるように、多くの変更を行うことができる。こうしたすべての変更は、本明細書に記載する請求項の範囲内にあるように意図されている。
【0065】
[0081] 本明細書に記載する方法は、論理的に可能な記載されている事象の任意の順序、並びに事象の記載されている順序で実行することができる。さらに、値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限との間の介在するすべての値と、その述べられている範囲内の他の任意の述べられている又は介在する値は、本発明に包含されることが理解される。また、記載する本発明の変形例の任意の任意選択的な特徴は、独立して、又は本明細書に記載する特徴のうちの任意の1つ又は複数と組み合わせて、記載及び請求することができることが企図されている。
【0066】
[0082] 本明細書に言及するすべての既存の主題(例えば、刊行物、特許、特許出願及びハードウェア)は、主題が本発明の主題と矛盾する可能性がある場合(その場合、本明細書に存在するものが優先するものとする)を除いて、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0067】
[0083] 単一の項目への参照には、同じ項目が複数存在する可能性が含まれる。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合の、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記」及び「その(the)」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、任意の任意選択的な要素を排除するように作成している場合があることがさらに留意される。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載に関連して「単独で」、「のみ」等の排他的な用語を使用するか、又は「否定的な」限定を使用するための先行詞としの役割を果たすことが意図される。
【0068】
[0084] さらに理解を容易にするために、以下に定義を記載する。しかしながら、本明細書に記載するように別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することも理解されるべきである。
【0069】
I.定義
[0085] 本明細書で概して使用する「吸収性」は、材料が体内で分解され、分解産物が体内から除去又は排泄されることを意味する。「吸収性」、「再吸収性」、「分解性」及び「侵食性」という用語は、「生体」という接頭辞の有無に関係なく、分解が主に加水分解によるものであるか、代謝プロセスによって媒介されるものであるかにかかわらず、分解されて、徐々に身体によって吸収、排泄又は排出される材料を説明するために、本明細書では同義に使用することができる。
【0070】
[0086] 本明細書で概して使用する「生物活性剤」は、治療剤、予防剤又は診断剤、宿主組織の治癒及び再生を促進する薬剤、並びに感染を予防、阻害又は排除する治療剤を指す。「薬剤」は、こうした薬剤を単一で含み、複数で含むことも意図されている。
【0071】
[0087] 本明細書で概して使用する「生体適合性」は、材料又は装置に対する生物学的反応が生体内でのデバイスの意図された用途に適していることを意味する。これらの材料の任意の代謝物も生体適合性であるべきである。
【0072】
[0088] 本明細書で概して使用する「ブレンド」は、2つ以上の異なるモノマーから形成されるコポリマーとは対照的に、異なるポリマーの物理的組合せを意味する。
【0073】
[0089] 本明細書で概して使用する「圧縮弾性率」は、機械テストベンチ(QTestTM/1L、MTS、米国)を用いてクロスヘッド速度20mm min-1で測定する。サンプルは、負荷がかかるように予荷重(初期圧縮荷重の10%)がかけられ、それらの元の高さの1mm(20%)まで圧縮される。臨床的に適切な繰返し荷重が10回繰り返され、弛みの巻上げ及び試料の位置合せ又は着座によって生じるアーチファクトによる二次繰返し荷重に基づいて、圧縮弾性率が計算される。圧縮弾性率は、ASTM規格ASTM D1621-16又はASTM D695-15を用いて測定してもよい。
【0074】
[0090] 本明細書で使用する「圧縮レジリエンス」は、圧縮回復中に行われる仕事量を圧縮中に行われる仕事量で割ったものに100を掛けたものとして計算される。
【0075】
[0091] 本明細書で概して使用する「ポリ-4-ヒドロキシブチレートのコポリマー」は、1つ又は複数の異なるヒドロキシ酸単位を有する4-ヒドロキシブチレートを含有する任意のポリマーを意味する。コポリマーは同位体濃縮していてもよい。
【0076】
[0092] 本明細書で概して使用する「ポリ(ブチレンサクシネート)のコポリマー」は、1,4-ブタンジオール及びコハク酸単位、並びに1種又は複数種の異なるジオール又は二酸単位を含有する任意のポリマーを意味する。コポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤及び反応性配合剤のうちの1つ又は複数を含んでもよい。コポリマーは同位体濃縮してもよい。
【0077】
[0093] 本明細書で概して使用する「エンドトキシン含有量」は、インプラント又はサンプル中に存在するエンドトキシンの量を指し、カブトガニ血球抽出物(LAL)アッセイによって決定される。
【0078】
[0094] 本明細書で使用する「インフィル密度」は、インプラント足場内の3D印刷された材料が占める体積を3D印刷された足場の総体積で割った割合を百分率で表したものである。
【0079】
[0095] 本明細書で概して使用する「分子量」は、別段の指定がない限り、数平均分子量(Mn)ではなく、重量平均分子量(Mw)を指し、ポリスチレンに対するGPCによって測定される。
【0080】
[0096] 「ポリ(ブチレンサクシネート)」は、1,4-ブタンジオール単位及びコハク酸単位を含有するポリマーを意味する。ポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤及び反応性配合剤のうちの1つ又は複数を含んでもよい。ポリマーは同位体濃縮してもよい。
【0081】
[0097] 「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」は、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ又は複数で調製されたポリマー及びコポリマーを含む。
【0082】
[0098] 本明細書で概して使用する「ポリ-4-ヒドロキシブチレート」は、4-ヒドロキシブチレート単位を含有するホモポリマーを意味する。本明細書では、P4HB又はTephaFLEX(登録商標)生体材料(Tepha,Inc., Lexington, MA製)と称する場合がある。ポリマーは同位体濃縮してもよい。
【0083】
[0099] 本明細書で使用する「筋膜下」は、胸筋の結合組織鞘(外筋膜)の下方で、胸筋の上方を意味する。
【0084】
[00100] 本明細書で使用する「軟組織」は、硬化又は石灰化されていない体組織を意味する。軟組織には、骨及び歯のエナメル質等の硬組織は含まれない。
【0085】
[00101] 「強度保持」は、材料がヒト又は動物への埋込み後に特定の機械的特性を維持する時間の長さを指す。例えば、再吸収性の繊維又はストラットの引張強度が、動物に埋め込まれたときに3ヶ月で半分に低減した場合、3ヶ月での繊維又はストラットの強度保持は50%である。
【0086】
[00102] 本明細書で使用する「乳腺下」は、乳房組織の下方及び胸筋の上方を意味する。
【0087】
[00103] 本明細書で使用する「胸筋下」は、少なくとも部分的に胸筋の下方を意味する。
【0088】
[00104] 本明細書で使用する「表面粗さ」(Ra)は、評価長さ内に記録された、平均線からのプロファイル高さ偏差の絶対値の算術平均である。
【0089】
II.インプラントを調製するための材料
[00105] 実施形態では、本インプラントを使用して、乳房の形を整え、乳房の空隙を充填し、乳房を挙上し、乳房を増大させることができる。本インプラントは軟組織インプラントであり、軟組織の再生、増大、修復、補強及び再建に使用することができることを意味する。インプラントは、乳房切除術、乳房再建術及び乳房増大術の間に永久乳房インプラントを使用する必要性をなくすことができる。インプラントは生体適合性があり、インプラントが劣化すると患者の組織によって生体内で置換することができる。インプラントは、乳房、特に乳房の軟組織の増強に特に好適である。インプラントは、インプラントが圧縮力を受けて一時的に変形し、力が取り除かれると圧縮からそれらの形状を回復し、乳房組織に似た感触を有することを可能にする圧縮弾性率を有することができる。任意選択的に、インプラントは、埋込み前、埋込み中、又は埋込み後に、自家組織、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞でコーティング又は充填することができる。インプラントは、インプラント内の血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にするために、1つ又は複数の横断通路を含む1つ又は複数の開口部又は通路をさらに含むことができる。
【0090】
A.インプラントを調製するためのポリマー
[00106] 実施形態では、インプラントは、合わせて接着されたフィラメントの少なくとも2つの平行な層から形成される足場を含む。実施形態では、第1層のフィラメントは第1配向を有し、第2層のフィラメントは第1配向とは異なる第2配向を有する。実施形態では、足場の第1層及び第2層のフィラメントは交差している。実施形態では、足場は、フィラメントの第1及び第2配向とは異なる配向を有するフィラメントの追加の層を含むことができる。実施形態では、フィラメントの隣接する層は、それらが交差する複数の点で互いに接着される。実施形態では、足場のフィラメント間に細孔が形成される。細孔の寸法は、足場中のフィラメントの数及び方向、フィラメントの間隔、並びにフィラメントのサイズ及び形状によって決まる。足場は、限定されないが20、30、40、50又はそれ以上のフィラメントの層を含む、合わせて接着されたフィラメントの2つ以上の平行な層を含んでもよい。足場は、任意選択的に、1つ又は複数の横断通路を含む1つ又は複数の開口部又は通路等の他の特徴を含んでもよい。
【0091】
[00107] インプラントの足場は、非分解性熱可塑性ポリマー等の永久材料を含んでもよく、これにはエチレン及びプロピレンのポリマー及びコポリマーが含まれ、これらには超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(エチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン及びポリ(エチレンオキシド)が含まれる。しかしながら、インプラントの足場は、吸収性材料、熱可塑性又は高分子吸収性材料を含んでもよく、及び/又は、インプラント及びインプラントの足場は、完全に吸収性材料から作製してもよい。
【0092】
[00108] いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、1つ又は複数の吸収性ポリマー、吸収性熱可塑性ポリマー及びコポリマー、及び/又は吸収性熱可塑性ポリエステルから作製することができる。インプラントの足場は、例えば、限定されないが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、VICRYL(登録商標)、MAXON(登録商標)及びMONOCRYL(登録商標)ポリマー等、グリコール酸及び乳酸のコポリマーを含み、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリヒドロキシアルカノエート、合成的又は生物学的に調製されたポリエステル、ポリカーボネート、チロシンポリカーボネート、ポリアミド(合成及び天然ポリアミド、ポリペプチド及びポリ(アミノ酸)を含む)、ポリエステルアミド、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエーテル(ポリエチレングリコール(PEG)及びポリエチレンオキシド(PEO)等)、ポリビニルピロリドンすなわちPVP、ポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリアセタール、ポリケタール、ポリリン酸塩、(リン含有)ポリマー、ポリホスホエステル、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンサクシネート、ポリ(マレイン酸)、シルク(組換えシルク並びにシルク誘導体及びシルク類似体を含む)、キチン、キトサン、修飾キトサン、生体適合性多糖類、他の生体適合性又は生分解性ポリマーのブロックを有するポリエチレングリコール(PEG)若しくはポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性又は水溶性ポリマー、例えばポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコリド)又はポリカプロラクトン、並びにランダムコポリマー及びブロックコポリマーを含むそれらのコポリマーを含む、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノアート、3-ヒドロキシオクタノアート、ε-カプロラクトンを含むポリマーを含むポリマーから調製することができる。
【0093】
[00109] いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、埋込み後、1~24ヶ月の時間枠及び/又は3~18ヶ月の時間枠内で実質的に再吸収され、少なくとも2週間~6ヶ月間、ある程度の残留強度を保持する、吸収性ポリマー又はコポリマーから調製される。
【0094】
[00110] インプラントの足場を調製するために、ポリマー及びコポリマー、吸収性ポリマーのブレンドも使用することができる。吸収性ポリマーのブレンドは、限定されないが、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸を含むポリマー、又はそれらのコポリマーを含む、吸収性ポリマーから調製することができる。
【0095】
[00111] いくつかの実施形態では、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(TephaのP4HBTMポリマー、Lexington,MA)又はそのコポリマーを使用して、インプラントの足場が作製される。コポリマーは、3-ヒドロキシブチレート等の別のヒドロキシ酸を有するP4HB、及びグリコール酸又は乳酸モノマーを有するP4HBを含む。ポリ-4-ヒドロキシブチレートは、生体適合性及び再吸収性がある、強力で柔軟性のある熱可塑性ポリエステルである(Williams, et al. Poly-4-hydroxybutyrate (P4HB): a new generation of resorbable medical devices for tissue repair and regeneration, Biomed. Tech. 58(5):439-452 (2013))。埋め込まれたとき、P4HBはそのモノマーに加水分解し、モノマーはクレブス回路を介して二酸化炭素及び水に代謝される。いくつかの実施形態では、P4HBホモポリマー及びそのコポリマーは、(ポリスチレンに対するGPCにより)50kDa~1,200kDaの範囲内、100kDa~600kDa、及び/又は200kDa~450kDaの重量平均分子量Mwを有する。加工及び機械的特性のために、50kDa以上のポリマーの重量平均分子量を採用することができる。
【0096】
[00112] いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、少なくともジオール及び二酸を含むポリマーから調製することができる。いくつかの実施形態では、足場を調製するために使用されるポリマーは、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)であり、ここで、ジオールは1,4-ブタンジオールであり、二酸はコハク酸である。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマーは、他のジオール、他の二酸又はそれらの組合せとのコポリマーであってもよい。例えば、ポリマーは、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、マロン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸及びシュウ酸のうちの1つ又は複数をさらに含むポリ(ブチレンサクシネート)コポリマーであり得る。コポリマーの非限定的な例としては、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンジメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-エチレンサクシネート)及びポリ(ブチレンサクシネート-コ-プロピレンサクシネート)を挙げることができる。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はコポリマーはまた、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ又は複数をさらに含んでもよい。例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーは、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリメシン酸、クエン酸、グリセロールプロポキシレート及び酒石酸のうちの1つ又は複数の薬剤を添加することによって、分岐又は架橋することができる。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はそのコポリマーを分岐又は架橋するための薬剤は、ヒドロキシカルボン酸単位である。ヒドロキシカルボン酸単位は、2つのカルボン酸基及び1つのヒドロキシル基、2つのヒドロキシル基及び1つのカルボキシル基、3つのカルボキシル基及び1つのヒドロキシル基、又は2つのヒドロキシル基及び2つのカルボキシル基を有することができる。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、分岐剤又は架橋剤としてリンゴ酸を含むポリ(ブチレンサクシネート)から調製することができる。このポリマーは、リンゴ酸で架橋されたポリ(ブチレンサクシネート)、コハク酸-1,4-ブタンジオール-リンゴ酸コポリエステル、又はリンゴ酸で架橋されたポリ(1,4-ブチレングリコール-コ-コハク酸)と称することができる。リンゴ酸並びに他の架橋剤、カップリング剤、分岐剤及び鎖延長剤への言及は、これらの薬剤を用いて調製されたポリマーを含み、その薬剤は処理中にさらなる反応を受けていることが理解されるべきである。例えば、薬剤は、重合中に脱水を受ける場合がある。したがって、ポリ(ブチレンサクシネート)-リンゴ酸コポリマーは、コハク酸、1,4-ブタンジオール及びリンゴ酸から調製されるコポリマーを指す。いくつかの実施形態では、リンゴ酸は、ポリ(ブチレンサクシネート)とアジペートとのコポリマーを調製するために分岐剤又は架橋剤として使用することができ、これは、リンゴ酸で架橋されたポリ[(ブチレンサクシネート)-コ-アジペート]と称することができる。本明細書で使用する場合、「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」には、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ又は複数を用いて調製されたポリマー及びコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリ(ブチレンサクシネート)及びそのコポリマーは、少なくとも70重量%、80重量%及び/又は90重量%のコハク酸及び1,4-ブタンジオール単位を含有する。ポリ(ブチレンサクシネート)及びそのコポリマー並びに本明細書に記載する他のものを含む二酸及びジオールを含むポリマーは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づいて、10,000~400,000、50,000~300,000及び/又は100,000~200,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー及びコポリマーは、50,000~300,000及び/又は75,000~300,000の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、足場を作製するために使用されるポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーは、1.23~1.26g/cm3の密度、-31℃~-35℃のガラス転移温度、113℃~117℃の融点、190℃/2.16kgfで2~10g/10分のメルトフローレート(MFR)、及び30~60MPaの引張強度のうちの1つ又は複数の特性、又はすべての特性を有する。
【0097】
[00113] 別の実施形態では、P4HB及びそのコポリマー、並びにPBS及びそのコポリマーを含む、インプラントの足場を調製するために使用される、本明細書に記載するポリマー及びコポリマーには、水素、炭素及び/又は酸素の既知の同位体が濃縮されているポリマー及びコポリマーが含まれる。水素には、1H(軽水素)、2H(重水素)、3H(三重水素)を含む3つの天然同位体があり、その中で最も一般的なのは1H同位体である。ポリマー又はコポリマーの同位体含有量は、例えば、ポリマー又はコポリマーが所定の同位体又は複数の同位体を天然比よりも高い比率で含有するように濃縮することができる。ポリマー又はコポリマーの炭素及び酸素含有量もまた、限定されないが13C、14C、17O又は18Oを含む炭素及び酸素の同位体の天然比よりも高い比率を含有するように濃縮することができる。炭素、水素及び酸素の他の同位体は、当業者には既知である。P4HB若しくはそのコポリマー、又はPBS若しくはそのコポリマーに濃縮された例示的な非限定的な水素同位体は、重水素、すなわち重水素化P4HB若しくはそのコポリマー、又は重水素化PBS若しくはそのコポリマーである。重水素化率は、最大で少なくとも1%、最大5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80若しくは85%、又はそれ以上であり得る。
【0098】
[00114] いくつかの実施形態では、P4HB及びそのコポリマー、並びにPBS及びそのコポリマーを含む、足場を調製するために使用されるポリマー及びコポリマーは、低い含水量を有する。これにより、高い引張強度、長期間の強度保持、及び良好な貯蔵寿命を有するインプラントを生成することができることを確実にすることができる。いくつかの実施形態では、インプラントを調製するために使用されるポリマー及びコポリマーは、1,000ppm(0.1重量%)未満、500ppm(0.05重量%)未満、300ppm(0.03重量%)未満、100ppm(0.01重量%)未満及び/又は50ppm(0.005重量%)未満の含水量を有する。
【0099】
[00115] インプラントを調製するために使用する組成物は、望ましくは、低いエンドトキシン含有量を有する。いくつかの実施形態では、エンドトキシン含有量は十分低くてもよく、そのため、ポリマー組成物から生成されたインプラントは、カブトガニ血球抽出物(LAL)アッセイによって決定されるように、デバイスあたり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有する。1つの実施形態では、インプラントの足場を調製するために使用されるポリマー組成物は、ポリマー又はコポリマーの、2.5EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する。例えば、P4HBポリマー若しくはコポリマー、又はコポリマーのPBSポリマーは、ポリマー又はコポリマーの2.5EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する。
【0100】
B.添加剤
[00116] いくつかの実施形態では、インプラントに、例えば足場を作製するために使用されるポリマー組成物に、いくつかの添加剤を組み込むことができる。1つの実施形態では、これらの添加剤は、配合プロセス中に本明細書に記載するポリマー又はコポリマーとともに組み込まれて、後に処理されて足場を生成することができるペレットを生成する。例えば、足場のフィラメントを形成するように、ペレットを押出成形又は印刷してもよい。別の実施形態では、ペレットを粉砕して、例えば3D印刷によるさらなる処理に好適な粉末を生成してもよい。又は、いくつかの実施形態では、例えば3D印刷によるさらなる処理に好適な粉末を、添加剤とポリマー又はコポリマーとをブレンドすることによって直接形成してもよい。必要に応じて、処理に使用される粉末を篩分けして、最適な粒径範囲を選択してもよい。別の実施形態では、添加剤を、溶液ベースのプロセスを使用してインプラントの足場を調製するために使用されるポリマー組成物に組み込んでもよい。
【0101】
[00117] いくつかの実施形態では、添加剤は生体適合性であってもよく、及び/又は添加剤は生体適合性及び吸収性の両方である。
【0102】
[00118] 1つの実施形態では、添加剤は、核剤及び/又は可塑剤であってもよい。これらの添加剤を、所望の結果をもたらすのに十分な量で、インプラントの足場を調製するために使用されるポリマー組成物に添加することができる。概して、これらの添加剤は、1重量%~20重量%の量で添加することができる。ポリマー、コポリマー又はブレンドの結晶化速度を上昇させるために、核剤を組み込むことができる。こうした薬剤は、例えば、足場の製造を容易にするために、及び足場の機械的特性を改善するために使用することができる。例示的な非限定的な核剤としては、限定されないが、クエン酸カルシウム等の有機酸の塩、PHAポリマー及びコポリマーのポリマー又はオリゴマー、PGA等の高融点ポリマー、タルク、微粉化雲母、炭酸カルシウム、塩化アンモニウム、並びにチロシン及びフェニルアラニン等の芳香族アミノ酸が挙げられる。
【0103】
[00119] インプラントの足場を調製するためにポリマー組成物に組み込むことができる可塑剤としては、限定されないが、マレイン酸ジ-n-ブチル、ラウレイン酸メチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジ(2-エチルヘキシル)(ジオクチル)、パラフィン、ドデカノール、オリーブ油、大豆油、ポリテトラメチレングリコール、オレイン酸メチル、オレイン酸n-プロピル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、エポキシ化アマニ油、2-エチルヘキシルエポキシタレート、グリセリントリアセテート、リノール酸メチル、フマル酸ジブチル、アセチルリシノール酸メチル、クエン酸アセチルトリ(n-ブチル)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ(n-ブチル)、クエン酸トリエチル、ダイマー酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、リシノール酸ブチル、グリセリルトリ-(アセチルリシノール酸)、リシノール酸メチル、リシノール酸n-ブチルアセチル、リシノール酸プロピレングリコール、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジ(n-ヘキシル)、リン酸トリブチル及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、可塑剤は、クエン酸エステルであり得る。
【0104】
C.生物活性剤、細胞及び組織
[00120] インプラントは、装填、充填、塗布又は他の方法で生物活性剤を組み込むことができる。生物活性剤は、さまざまな理由でインプラントに含めることができる。例えば、生物活性剤は、インプラントへの組織の内部成長を改善し、組織の成熟を改善し、活性剤の送達を提供し、インプラントの湿潤性を改善し、感染を防止し、及び細胞付着を改善するために含めることができる。生物活性剤はまた、インプラントの足場構造に組み込んでもよい。
【0105】
[00121] インプラントは、成長因子、細胞接着ポリペプチドを含む細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、サイトカイン等の細胞シグナル伝達分子、並びに細胞遊走、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外基質沈着を促進する分子を含む、細胞の内部成長を刺激するように設計された活性剤を含有することができる。こうした活性剤としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン-1-B(IL-1B)、インターロイキン-8(IL-8)及び神経成長因子(NGF)、並びにそれらの組合せが挙げられる。本明細書で使用する場合の「細胞接着ポリペプチド」という用語は、細胞表面分子を介して細胞を結合することができる、1分子あたり少なくとも2つのアミノ酸を有する化合物を指す。細胞接着ポリペプチドには、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリノゲン、I型、II型及びV型コラーゲン、並びに同様の細胞接着特性を有する合成ペプチドを含む、細胞接着において役割を果たすことが知られている任意の細胞外基質のタンパク質のうちの任意のものが含まれる。細胞接着ポリペプチドには、結合ドメインを含有する断片又は配列を含む、上述したタンパク質のうちの任意のものに由来するペプチドも含まれる。
【0106】
[00122] インプラントは、足場構造の表面の湿潤性を改善して、流体がインプラント表面に容易に吸着されるのを可能にするように、並びに、細胞付着を促進し、及び/又はインプラント表面の水接触角を変更するように設計された湿潤剤を組み込むことができる。湿潤剤の例にとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのポリマー、又はPLURONICS(登録商標)等のこれらのコポリマーが挙げられる。他の好適な湿潤剤としては、界面活性剤、乳化剤、及びゼラチン等のタンパク質が挙げられる。
【0107】
[00123] インプラントは、湿潤特性をさらに改善し、インプラントの足場構造全体で細胞増殖を促進するために、ゲル、ヒドロゲル、又は生きたヒドロゲルハイブリッドを含有することができる。ヒドロゲルハイブリッドは、生体適合性ヒドロゲル、例えば、ゼラチン、メタクリル化ゼラチン(GelMa)、シルクゲル及びヒアルロン酸(HA)ゲルにカプセル化された生きた細胞からなる。
【0108】
[00124] インプラントに組み込むことができる他の生物活性剤としては、抗菌剤、特に抗生物質、消毒剤、腫瘍学的薬剤、抗瘢痕剤、抗炎症剤、麻酔剤、低分子薬、癒着防止剤、細胞増殖阻害剤、抗血管新生因子及び血管新生促進因子、免疫調節剤及び血液凝固剤が挙げられる。生物活性剤は、コラーゲン(組換えコラーゲンを含む)及び抗体等のタンパク質、ペプチド、キトサン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体等の多糖類、核酸分子、ステロイド等の低分子化合物、ヒドロキシアパタイト及びセラミック等の無機材料、又は多血小板血漿等の複合混合物であり得る。好適な抗菌剤としては、バシトラシン、ビグアニド、トリクロサン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、リファンピン、バンコマイシン、セファロスポリン、銅、亜鉛、銀及び金が挙げられる。核酸分子としは、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンチセンス又はアプタマーを挙げることができる。
【0109】
[00125] インプラントはまた、無細胞真皮基質材料及び小腸粘膜下組織(SIS)を含む同種移植片材料及び異種移植片材料を含んでもよい。
【0110】
[00126] 実施形態では、インプラントは、血管茎、血管茎穿通枝又は他の組織塊を含んでもよい。血管茎、血管茎穿通枝又は他の組織塊は、自家組織、同種移植組織又は異種移植組織であり得る。
【0111】
[00127] 別の実施形態では、インプラントは、治療薬又は予防薬の制御放出のシステムを組み込むことができる。
【0112】
[00128] 一実施形態では、インプラントは、埋込み前、埋込み中、若しくは埋込み後、又はそれらの任意の組合せにおいて、自家移植、同種移植又は異種移植の組織及び細胞でコーティングされる。いくつかの実施形態では、インプラントは、埋込み前、埋込み中、若しくは埋込み後、又はそれらの任意の組合せにおいて、患者からの自家組織及び細胞でコーティングされる。自家組織及び細胞は、自家脂肪、吸引脂肪組織、脂肪組織(fat tissue)、注入可能な脂肪、脂肪組織(adipose tissue)、脂肪細胞、線維芽細胞、並びに、前脂肪細胞又は脂肪組織由来前駆細胞としても知られるヒト脂肪組織由来幹細胞、及び線維芽細胞様幹細胞を含む幹細胞のうちの1つ又は複数であり得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、本明細書に記載するような自家組織及び細胞でコーティングしてもよく、また、血管茎、血管茎穿通枝又は他の組織塊をさらに含んでもよい。本明細書で明らかとなるように、インプラントの足場構造は、乳房インプラントの形状だけでなく、組織の内部成長を促進するために自家組織及び細胞を保持することができる大きい表面積をもたらすようにも設計されている。
【0113】
III.フィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面が互いに接着されているインプラントを調製する方法
[00129] インプラントを製造するために、さまざまな方法を使用することができる。
【0114】
[00130] 実施形態では、インプラントは、(i)構造的支持体と、(ii)組織の内部成長のための足場と、(iii)脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、組換えコラーゲン、ヒアルロン酸及び生物活性剤を送達するための足場と、(iv)機械的間隔を提供することができる構造体と、(v)血管茎又は他の組織塊等の移植片の足場構造への組込みを可能にすることができる構造体と、(vi)脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、組換えコラーゲン、ヒアルロン酸及び生物活性剤でコーティングすることができる構造体と、(vii)乳房の軟組織と同様の(特性地の±50%以内を意味する)又は同じ特性を有する構造体と、(viii)乳房組織の圧縮弾性率の±50%以内、及び/又は±25%以内の圧縮弾性率を有する構造体と、(viii)体積密度に比して高い強度を有する構造体と、(ix)圧縮設計及び/又はばね設計(足場が力によって変形し、力が取り除かれると元の形状に回復する可能性があることを意味する)を有する構造体と、(x)異方性の機械的特性を有する構造体とのうちの1つ又は複数を提供できるように調製される。
【0115】
A.インプラントの形状
[00131] 一実施形態では、インプラントは、製造されたときに3次元になるように設計されている。実施形態では、インプラントは、シリコーン及び生理食塩水の乳房インプラント等の永久乳房インプラントの代わりに使用されるように設計されている。
【0116】
[00132] インプラントの形状により、外科医は、組織体積を増加させ、喪失又は欠損した組織又は組織構造を再建し、組織の輪郭を整え、組織を増大させ、組織機能を回復させ、損傷した組織構造を修復し、既存の組織構造を強化し、軟組織の体積を増加させ、乳房の突出を変化させ、上極の膨らみを大きくし、乳房の形を整えることができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、乳房の形を整えるか又は乳房を修復し、乳房を増大させ、乳房切除後に乳房を修復するために使用される。一実施形態では、インプラントにより、永久インプラントを使用することなく、軟組織構造の形状を変更し又は変化させることができる。
【0117】
[00133] 図を参照して、所定の非限定的な実施形態についてさらに詳細に説明する。本開示は、本明細書に記載する所定の実施形態のみに限定されないため、これらの実施形態に関連して記載するさまざまなシステム、構成要素、特徴及び方法は、個々に、及び/又は任意の所望の組合せのいずれかで使用することができることが理解されるべきである。
【0118】
[00134] 実施形態では、
図1Aを参照すると、乳房インプラント足場1は、患者の胸壁に配置される後部エリア2と、後部エリアと反対側の前部エリア3とを備え、前部エリアは、
図1Aに示すように、乳房の下極に配置される前底部4と、乳房の上極に配置される前頂部5と、患者の皮膚の下に配置される前中間領域6とを含む。
図1Bは、後部エリア11及び前部エリア12を含む乳房インプラント足場10の第2等角図を示す。
図1Dは、前部エリア31及び後部エリア32を含む乳房インプラント足場30の側面図である。
【0119】
[00135] 乳房インプラントの前部エリアは、乳房に突出を与えるような形状である。本明細書で使用するインプラントの突出は、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間の最大距離である。
【0120】
[00136] 実施形態では、インプラントの前底部エリアは凸状の外面を含む。インプラントの凸状の外面形状は、乳房の下極に好ましい解剖学的形状を与える。
【0121】
[00137] 本明細書に記載する範囲内において、インプラントの複数の形状及び寸法があり、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、インプラントの3次元形状及び寸法に関して限定されないことが理解されるべきである。インプラントは、インプラントとして使用されるのに好適な任意のサイズ及び形状を有するように組み立てるか又は印刷することができる。例えば、球、半球、円柱、円錐、ドーム、立方体、四面体、三角柱又は四角柱、十二面体、トーラス及び楕円体等の3次元形状を有するインプラントを容易に調製することができ、コンピュータ支援設計を用いてカスタム形状を任意選択的に生成することができる。例えば、乳房の再建用のドーム型インプラントを製作することができる。
【0122】
[00138] インプラントは、その前底部エリアと前頂部エリアとで異なる形状を有していてもよい。インプラントの寸法は、乳房組織の体積を増加させ、以前の乳房組織の体積の代わりとなり、乳房組織の体積分布を変更し、乳房組織の外観を変更し、又は既存の乳房組織の体積をより小さい体積と置換するようなサイズであり得る。インプラントは、乳房に側面高さの低い、中程度の、又は高い形状を与えるようなサイズ又は形状であってもよく、インプラントの輪郭によって乳房の突出が決まる。側面高さの高い形状のインプラントを使用して、乳房側壁の高さを増加させ、患者により上極の膨らみ又は谷間を与えることができる。側面高さの低いか又は中程度の形状を有するインプラントを使用して、乳房側壁の高さのより小さい増加を得ることができる。インプラントは、乳房切除及び乳房再建での使用を可能にするのに十分に大きいサイズで、乳房で使用されるように設計することができる。実施形態では、乳房インプラントは100~1200cc(立方センチメートル)の体積、及び/又は120~850ccの間の体積を有する。実施形態では、インプラントは、乳房の幅にわたるのに十分な幅がある。実施形態では、インプラントの後部エリアの幅は、6~20cm及び/又は8~18cmである。本明細書で使用するインプラントの突出は、インプラントの後部エリアと前部エリアとの間の最大距離である。実施形態では、インプラントの突出は、2~15cm、3~10cm及び/又は4~7cmである。
【0123】
[00139] いくつかの実施形態では、インプラントは、シリコーン乳房インプラント等の永久乳房インプラントを使用することなく、乳房の軟組織体積を変更するために使用することができる形状で提供される。実施形態では、インプラントは、乳房のサイズを増大させ、乳房切除術後に乳房の組織体積及び形状に取って代わり、乳房の欠陥を除去するように、及び乳房の所定の外観をもたらすように使用される、形状及びサイズで調製することができる。例えば、インプラントは、乳房に埋め込まれたときに、上極体積(UPV)対下極体積(LPV)の所定の比率を有する乳房を生成するように調製することができる。実施形態では、インプラントは、インプラントの埋込みにより、UPVが乳房総体積の25~35%、LPVが乳房総体積の65~75%である乳房が得られるような体積寸法を有する、乳房インプラントである。上極及び下極の組織の所定の体積比を有するように乳房の形を変えることに加えて、インプラントの寸法及び形状もまた、下極、上極、及び胸壁からの乳房の突出の程度の非常に望ましい形状を与えるように選択することができる。実施形態では、インプラントは、(a)乳房の下極が非常に魅力的な下極の曲率、具体的には魅力的な凸形状を有し、(b)乳房の上極が直線状又はわずかに凹状の曲率を有し、(c)乳房が胸壁から突出する距離が規定されるように設計される。したがって、本発明のインプラントを使用して、(i)UPV対LPVの比を規定し、(ii)上極及び下極の曲率を規定し、(iii)胸壁からの乳房の突出の程度を規定し、(iv)乳房上の乳頭の角度を規定する、所定の形状を有することにより、非常に魅力的な再建された乳房を生成することができることが明らとなろう。
【0124】
[00140] インプラントの形状は変更してもよい。形状の非限定的な例としては、丸い形状、涙形の形状、解剖学的に乳房の形状、又は解剖学的に乳房の輪郭が付けられた形状がある。
【0125】
[00141] インプラントの追加の形状は、2019年1月30日に出願され、「FULL CONTOUR BREAST IMPLANT」と題し、参照により全体が本明細書に援用される、米国特許出願第16/262,018号に記載されている。
【0126】
[00142] 実施形態では、インプラントは、1つ又は複数の組織塊を挿入するための1つ又は複数の開口部を備える。いくつかの実施形態では、インプラントは、インプラントの後部エリアに1つ又は複数の開口部を備える。インプラントの後部エリアの1つ又は複数の開口部により、外科医は、インプラントの後部エリアが胸壁に埋め込まれたときに、1つ又は複数の茎をインプラントに挿入することができる。インプラントの1つ又は複数の開口部は、インプラント内にチャンバを生成してもよく、又はインプラントを貫通する通路を生成してもよい。例えば、開口部7は、
図1Aに示すように、インプラントの後部エリアからインプラントの前部エリアまで延在してもよい。実施形態では、インプラントは、組織塊を挿入するために、
図1Cに示すように、内側から外側方向に延在する開口部21を備えていてもよい。実施形態では、インプラントは、インプラントの前部エリア、前底部、前頂部、又は前中間領域にある1つ又は複数の開口部を備えることができる。1つ又は複数の開口部の寸法は、組織塊を受けるようなサイズである。
【0127】
B.インプラントの構造
[00143] インプラントは足場を備え、足場はフィラメントを備える。
【0128】
[00144] 実施形態では、足場のフィラメントは、別個の又は個々の層(例えば、互いの上に一度に1つの層、すなわち、積み重ねられた層)で適用又は印刷される。フィラメントの第1層の上に、第2方向又は角度に配向されたフィラメントを有するフィラメントの第2層が適用され、フィラメントの第1層は第1方向又は角度に配向される。フィラメントのさらなる層を追加して、フィラメントの層を備える多孔質構造を構築することができる。異なる配向を有するフィラメントの層をこのように適用することにより、例えば
図2~
図6に示すように、インプラントの足場の頂部又は底部から見たときに、十字形、三角形、正方形、四辺形、平行四辺形、又は他の多角形のような開孔構造が生成される。
【0129】
[00145] (インプラントが3D印刷されるとき)異なる配向又はプリンタ角度を有する層の数は、さまざまであり得る。実施形態では、2~3の異なるタイプの層配向が適用される。しかしながら、他の実施形態では、3~5、又はそれ以上の異なるタイプ又は印刷角度又は層配向が提供される。
【0130】
[00146] フィラメントの単一層内では、各フィラメントは同じ配向又は方向を有することができる。例えば、
図2A及び
図2Bに示すように、各層のフィラメントは、同じ方向に延在し、互いに概して平行である。
【0131】
[00147] 実施形態では、平行フィラメントの連続する層の間の角度は、0~179度、0~90度及び/又は0~60度の範囲であり得る。異なる圧縮弾性率の値を有するインプラントは、平行フィラメントの連続する層の間の角度を変化させることによって構築することができる。例えば、角度を変化させて、10kPa~100MPa及び/又は20kPa~1MPaの範囲の圧縮弾性率の値を有するインプラントを形成することができる。実施形態では、角度は、圧縮することができるとともに、圧縮から回復することができるインプラントを提供するように選択される。実施形態では、角度は、乳房内のインプラントが硬く感じられないように選択される。
【0132】
[00148] 実施形態では、インプラントは平行フィラメントの層を備え、平行フィラメントの少なくとも1つの層は平行フィラメントの別の層から1~60度の角度をなしている。実施形態では、インプラントは、第1層の平行フィラメントがフィラメントの隣接する層から角度(α)をなしているフィラメントの層を備え、αは0~60度の2、3又は5の倍数である。実施形態では、角度αは、平行フィラメントの別の隣接する層から、18、20、24、30、36、45又は60度である。
【0133】
[00149] 実施形態では、層内のフィラメント間の距離は等しい。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、単一の層内のフィラメント間の距離は等しくなく、層内で変化してもよく、層ごとに変化してもよい。
【0134】
[00150] 実施形態では、インプラントの足場は、互いに接着された少なくとも2つの層のフィラメントを備える。他の実施形態では、足場内のフィラメントのすべての層は、少なくとも1つの他のフィラメントの層に接着されている。
【0135】
[00151] 実施形態では、フィラメントの少なくとも2つの隣接する平行平面が互いに接着されているインプラント足場は、隣接する平面又は隣接しない平面のフィラメントが互いに同じ配向を有するか、又は互いに異なる配向を有するように調製することができる。互いに同じ配向を有する隣接する層のフィラメントを備える足場の形成を使用して、インプラントの空隙率を増加させ、又はインプラントの圧縮弾性率を変化させることができる。
【0136】
[00152] 実施形態では、インプラントの3次元アーキテクチャは、平行なフィラメントの層間にオフセット又は角度がない、平行なフィラメントの2つ以上の隣接する層を備えることができる。これらの実施形態では、隣接する層内のフィラメントは、それらの間に角度がないように、且つ十字形構造を形成しないように、互いの上に配置される。各層内のフィラメントが同じ配向を有する隣接する層のセクションの組込みを使用して、より大きい細孔径を有するインプラントを製造することができる。例えば、平行なフィラメントの連続する層に、最初に先行する層から60度の角度が付けられ、その後、隣接する層に角度を付けられていないセクションが続き、その後、先行する層に対して再び60度の角度が付けられた連続する層が続くインプラントを形成することができる。
【0137】
[00153] インプラントの足場を調製するために使用されるアーキテクチャは、足場の所望の特性に基づいて選択することができる。例えば、各層内のフィラメントは、
図2A及び
図2Bに示すように、三角形の開孔構造を形成するように、互いに0、60及び120度の角度で印刷することができる。
図7に、例示的な三角形状の細孔構造140の拡大部分を示す。三角形の開孔構造141は、概して、フィラメント(例えば、I
1、I
2、I
3)が交差するようにフィラメントの層を積み重ねることによって画定される。
図7では、フィラメントI
1に対応する水平面から0度で配置されたフィラメントを有する第1層と、フィラメントI
3に対応する水平面から60度で配向されたフィラメントを有する第2タイプの層と、フィラメントI
2に対応する水平面から120度で配置されたフィラメントを有する第3タイプの層とを含む、3つのタイプの層がある。まとめて、異なる角度で配向されたフィラメントを有する層の配置により、乳房インプラント足場への組織内部成長を促進する役割を果たす、
図7に示す三角形の開孔構造141がもたらされる。
【0138】
[00154]
図8は、(
図2Aに示すような)開孔構造を有する、
図7に示す乳房インプラント足場150の線A-Aに沿った断面図を示すが、ここでは、(インプラントが3D印刷されるときに)フィラメントの配向又は印刷角度を変更する前に、各フィラメント層(例えば、I
1、I
1)の印刷を1回繰り返すことにより、横方向空隙率(L)が拡大されている。フィラメントの層を同じ配向で繰り返すことにより、高さが2倍になる「有効な層」がもたらされ(例えば、有効な第1層はI
1、I
1を含む)、インプラントの足場の横方向空隙率(L)が増加する。実施形態では、横方向空隙率(L)は縦方向空隙率(V)とは異なる。横方向空隙率は、縦方向空隙率(V)よりも小さい場合もあれば大きい場合もある。実施形態では、横方向空隙率は、同じ配向を有するフィラメントの繰り返される層の数を増減させることにより、縦方向空隙率に対して調整される。
【0139】
[00155] 印刷角度を変更する前の層の繰返し印刷を使用して、インプラントの足場の圧縮弾性率を変化させることもできる。
図8に示す例では、2つのフィラメント層が、0度の角度で印刷され、次いで印刷角度が変更され、2つのフィラメント層が60度の角度で印刷された後、例えば120度の角度等、別の角度で、2つのフィラメント層が印刷される。そして、このプロセスが繰り返されて、多孔質構造が所望の寸法に構築される。さらに大きい細孔径をもたらすために、印刷角度が変更される前に、複数の層(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)を同じ角度で印刷する(すなわち、繰り返す)ことができる。本発明に従って、印刷角度が変更される前に、2つ以上のフィラメント層が同じ角度で印刷されている異なる形状の開孔構造を形成するために、これらの角度を変化させることができることが理解されるべきである。
【0140】
[00156] 実施形態では、インプラントの足場は、100μm~1mm、及び/又は250μm~750μmの幅又は直径を有する細孔を有する。実施形態では、インプラントの足場の細孔径は同じである。実施形態では、インプラントの足場は細孔径の混合を含む。
【0141】
[00157] いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、足場が細胞によってコロニー形成され、組織、血管又はそれらの組合せによって侵入されるのに好適な、より大きい表面積及び大きい空隙容積を提供するアーキテクチャを有することができる。
【0142】
[00158] 実施形態では、フィラメントの平均直径は50~800μm、100~600μm、及び/又は150~550μmである。実施形態では、インプラントのフィラメント間の距離は、50μm~1mm、100μm~1mm、及び/又は200μm~1mmである。フィラメントの平均直径及びフィラメント間の距離は、圧縮弾性率と、空隙率と、百分率として表される、インプラント足場内のフィラメント材料が占める体積を足場の総体積で割った割合として定義される、インフィル密度とを含む、所望のインプラント足場の特性に従って選択することができる。実施形態では、インプラントの足場のインフィル密度は1~60及び/又は5~25%である。
【0143】
[00159] インプラントの足場のアーキテクチャは、足場の内側を、限定されないが、自家脂肪、吸引脂肪組織、脂肪充填物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む、同種移植又は異種移植組織及び細胞、自家組織及び細胞でコーティングするのを可能にするのに十分な多孔性を提供することができる。インプラントの足場のアーキテクチャは、足場の内面がコラーゲン(組換えコラーゲンを含む)及び/又はヒアルロン酸若しくはその誘導体でコーティングされるのを可能にするように設計することができる。
【0144】
[00160] 実施形態では、インプラントの足場の細孔の寸法は、注射によって生物活性剤、細胞、脂肪及び他の組成物を送達するために、足場の細孔に針が挿入されるのを可能にするように十分に大きい。実施形態では、足場のアーキテクチャは、12~21のゲージの針が足場に挿入されるのを可能にするように設計されている。この特性により、シリンジを用いて、足場を著しく損傷することなく、脂肪を含む細胞、組織、コラーゲン、生物活性剤及び添加剤を足場に装填することができる。いくつかの実施形態では、足場は、0.5~3mmの外径を有する針の足場への挿入を可能にすることができる。
【0145】
[00161]
図2Aは、平行フィラメント41の層を、平行フィラメントの各連続する層がフィラメントの先行する層から60度だけオフセットし又は角度をなしている状態で合わせて積み重ねることにより形成された、乳房インプラント40の上面図を示す。これにより、フィラメントの層がフィラメントの第1層に対して0、60及び120度の角度で積み重ねられている、三角形状の細孔42を備えた、内部インプラントアーキテクチャが得られる。平行フィラメントの積み重ねられた層は、インプラントの足場の周縁部で同心フィラメントの積層体から調製され、平行フィラメントの連続する層を囲む、シェル43によって包囲されている。
図2Bに、
図2Aに示すものと同じインプラントの代替等角図を、乳房インプラント50として示す。この等角図は、乳房インプラント50の足場構造を形成する平行フィラメント51の積み重ねられた層を明確に示す。フィラメント51は、異なる層で示されているが、同じ方向に配向されており、多孔質足場を形成するために60及び120度に角度をなすフィラメントが散在している。
【0146】
[00162] インプラントの足場の空隙率及び細孔の形状は、各層内のフィラメント間のオフセット又は角度を変化させることによって調整することができる。
【0147】
[00163]
図3Aは、平行フィラメントの層を、平行フィラメントの各連続する層がフィラメントの先行する層から60度ではなく45度だけオフセットし又は角度をなしている状態で合わせて積み重ねることにより形成された、乳房インプラント60の上面図を示す。この例では、
図2Aのインプラント40の場合のように4つおきのフィラメントの層ではなく、5つおきのフィラメントの層が同じ配列を有する。
図3Aを見ることで、こうしたフィラメントの配置により、
図2Aに示す規則的な三角形の細孔形状が、異なるサイズの細孔を含む異なる細孔形状の混合に変化することが明らかとなろう。
図3Bに、
図3Aに示すものと同じインプラントの代替等角図を、乳房インプラント70として示す。
図3Bは、平行フィラメントの積み重ねられた層を明確に示す。
【0148】
[00164]
図4Aは、平行フィラメントの層を、平行フィラメントの各連続する層がフィラメントの先行する層から36度だけオフセットし又は角度をなしている状態で合わせて積み重ねることにより形成された、乳房インプラント80の上面図を示す。この例では、6つおきのフィラメントの層が同じ配列を有し、層のパターンにより、さまざまな形状の小さい細孔径及び大きい細孔径の混合が生成される。
図4Bに、
図4Aに示すものと同じインプラントの代替等角図を、乳房インプラント90として示す。
図4Bは、平行フィラメントの積み重ねられた層を明確に示す。
【0149】
[00165]
図5Aは、平行フィラメントの層を、平行フィラメントの各連続する層がフィラメントの先行する層から30度だけオフセットし又は角度をなしている状態で合わせて積み重ねることにより形成された、乳房インプラント100の上面図を示す。この例では、7つおきのフィラメントの層が同じ配列を有する。
図5Bに、
図5Aに示すものと同じインプラントの代替等角図を、乳房インプラント110として示す。
図5Bは、平行フィラメントの積み重ねられた層を明確に示す。
【0150】
[00166]
図6Aは、平行フィラメントの層を、平行フィラメントの各連続する層がフィラメントの先行する層から18度だけオフセットし又は角度をなしている状態で合わせて積み重ねることにより形成された、乳房インプラント120の上面図を示す。この例では、11つおきのフィラメントの層が同じ配列を有する。
図6Bに、
図6Aに示すものと同じインプラントの代替等角図を、乳房インプラント130として示す。
図6Bは、平行フィラメントの積み重ねられた層を明確に示す。
【0151】
[00167]
図2A~
図6A及び
図2B~
図6Bの乳房インプラントは、平行フィラメントの連続した層を取り囲むインプラントの足場の周縁部に、同心のフィラメントの積層体から調製されたシェルがあるように形成されている。
【0152】
[00168] インプラントは、組織塊を挿入するための1つ又は複数の開口部をさらに備えることができる。組織塊は血管茎であり得る。いくつかの実施形態では、インプラントの後部エリアに、組織塊を挿入するための開口部があり得る。開口部は部分的にインプラント内に延在していてもよく、又は、
図1Aに開口部7によって示すように、インプラントの後部エリアから前部エリアまで延在していてもよい。インプラントは、インプラントの前底部4、前頂部5又は前中間領域6に開口部を備えていてもよい。これらの開口部は、インプラント内に部分的に延在してもよく、インプラントの全体を通して延在していてもよい。
図1Aの開口部8は、血管移植片等の組織塊が挿入されるように設計されているインプラントの内側から外側への開口部の一例である。
【0153】
[00169]
図1Cに、組織塊を挿入するための内側から外側への開口部21の代替上面図を示す。
【0154】
[00170]
図9は、平行なフィラメント161の層を、フィラメントの各後続する層がフィラメントの先行する層と交差して多孔質インフィルパターンを形成するように積み重ねることにより調製された、乳房インプラント160のさらなる例を示し、そこでは、インプラントは、組織塊を挿入するための2つの開口部163及び164をさらに備える。開口部163は、インプラント足場の後部と前部との間のインプラントの中央に形成されている。開口部164は、インプラント足場を貫通して内側から外側方向に形成されている。インプラント160は、平行フィラメントの積み重ねられた層を包囲するインプラントの周縁部において、単一フィラメントの同心の積層体から調製された外側シェル162をさらに備える。
【0155】
[00171] 実施形態では、インプラントは、茎又は他の組織塊を挿入するための1つ又は複数の開口部に加えて、1つ又は複数のチャネルを備えることができる。実施形態では、チャネルは直線状である。実施形態では、チャネルは100μmを超える直径を有する。足場を貫通するチャネルは、インプラントの血管新生及び組織の内部成長を促進するのに役立つ。
【0156】
[00172] 実施形態では、インプラントの足場は、外側シェル又はコーティングをさらに備えることができる。実施形態では、シェルは、前記シェルの内部容積を包囲する外面及び内面を有する。シェル又はコーティングは、インプラントの足場のフィラメントを部分的に又は完全に覆うことができる。実施形態では、シェル又はコーティングの厚さは10μm~5mm及び/又は100μm~1mmである。実施形態では、シェルは、平行フィラメントの積み重ねられた層の周縁部におけるフィラメントの同心の積層体から形成される。実施形態では、シェルの厚さは、並列する2、3、4、5又はそれ以上のフィラメントを含む。
【0157】
[00173] 実施形態では、シェル又はコーティングは針を通すことができる。
【0158】
[00174] 実施形態では、シェルは、相互に連結した細孔を有する発泡体を含む。実施形態では、シェルは、連続気泡発泡体、及び/又はポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、若しくはポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む連続気泡発泡体である。
【0159】
[00175] 実施形態では、シェルは、コラーゲン及び/又はI型コラーゲンを含む。実施形態では、シェルはコラーゲンを含み、0.1~5mm及び/又は0.5~3mmの厚さである。
【0160】
[00176] 実施形態では、インプラントは平行フィラメントの層を備え、平行フィラメントの少なくとも1つの層は平行フィラメントの別の層から1~60度の角度をなしており、インプラントは、平行フィラメントの層を包囲する外側シェルをさらに備える。実施形態では、インプラントは、平行フィラメントの各層が平行フィラメントの別の隣接する層から1~60度、及び/又は18、20、30、36、45若しくは60度の角度をなす平行フィラメントの層を備え、インプラントは、平行フィラメントの層を包囲する外側シェルをさらに備える。
【0161】
[00177] 実施形態では、インプラントはシェルを備え、シェルは、シェルの外面の粗さを最小化するように熱処理されている。
【0162】
[00178] 実施形態では、インプラントはシェルを備え、シェルは、吸収性ポリマー及び水溶性ポリマー又は固体ポロゲンから形成されたコーティングを含む。実施形態では、シェルは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマー、及び水溶性ポリマー又は固体ポロゲンを含む。
【0163】
[00179] 1つの実施形態では、インプラントは、インプラントの足場を構築するために3D印刷を使用して調製される。足場の3D印刷は、インプラントの足場の形状の正確な制御を可能にするため、非常に望ましい。3D印刷に好適な方法としては、溶融フィラメント製造、溶融ペレット堆積、溶融押出堆積、選択的レーザ溶融、凝固浴を使用するスラリー及び溶液の印刷、並びに結合溶液及び粉末顆粒を使用する印刷が挙げられる。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は溶融押出堆積によって調製することができる。
【0164】
[00180]
図2~
図6に示す乳房インプラントは、溶融押出堆積によって製造することができる。これらのインプラントは、異なる充填密度で、フィラメント間の異なる角度で印刷することができる。上述したように、実施形態では、インプラントの足場のインフィル密度は、1~60%及び/又は5~25%であり、フィラメントの平均直径は、50~800μm、100~600μm及び/又は150~550μmであり、インプラントのフィラメント間の距離は、50μm~1mm、100μm~1mm及び/又は200μm~1mmであり、隣接する層のフィラメント間の角度は、0~179度、0~90度及び/又は0~60度の範囲であり得る。これらのパラメータは、圧縮弾性率及び空隙率を含む、足場又はインプラントに望まれる特性に従って選択することができる。例えば、フィラメントのサイズ、フィラメント間の間隔及び印刷パターンが一定に維持されている場合、インフィル密度を減少させることにより、足場の空隙率を減少させることができる。インフィル密度が減少すると、フィラメントサイズ、フィラメント間の間隔及び印刷パターンが一定に維持されている場合、圧縮弾性率も減少する。インプラント本体の例示的なインフィル範囲は、1~50及び/又は5~20%である。インプラントのシェルの例示的なインフィル範囲は、50~100及び/又は80~100%である。
【0165】
[00181] 典型的な手順では、インプラントは、吸収性ポリマー又はそのブレンドを含む組成物の溶融押出堆積によって調製される。
【0166】
[00182] 吸収性ポリマー又はブレンドは、固有粘度の実質的な損失を回避するために、印刷前に乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー又はブレンドは、印刷される組成物の含水率が、重量測定法で測定して0.5重量%以下、及び/又は0.05重量%以下になるように乾燥させることができる。ポリマー又はブレンドは、真空中で乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー又はブレンドは、少なくとも10mbar及び/又は少なくとも0.8mbarの真空下、真空チャンバ内で、0.03重量%未満の含水率まで乾燥させることができる。乾燥プロセスにおいて、ポリマーの融点未満の高温も使用することができる。別法として、ポリマーを溶媒に抽出し、再沈殿させるか、又は乾燥剤を使用することにより、乾燥させてもよい。ポリマー又はブレンドの含水率は、Arizona InstrumentsのVaporPro Moisture Analyzer又は同様の機器を使用して測定することができる。
【0167】
[00183] 一実施形態では、インプラントは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)の溶融押出堆積によって形成することができる。P4HBポリマー(分子量100~600kDa)を、溶融押出堆積の前にペレット化し、上述したように乾燥させる。インプラントの足場を印刷するのに好適な3Dプリンタは、Arburg Freeformer 3Dプリンタである。例えば、表1に示す印刷パラメータとArburg Freeformer 3Dプリンタ、及びインプラントの足場用の3D CAM(コンピュータ支援設計モデル)を使用して、(
図2~
図6の例に示すように)乳房インプラントの足場を形成するように、P4HBペレットを3D印刷することができる。P4HBポリマーから印刷される3Dフィラメントの平均直径は、インプラントの圧縮弾性率、及び空隙率又はインフィル密度(すなわち、3D印刷されたデバイスの輪郭間の1mmあたりの3D印刷されたフィラメントの数)を含む、所望のインプラントの特性に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、平均フィラメント直径又は幅は、50~800μm、100~600μm及び/又は150~550μmであり得る。
【0168】
【0169】
[00185] 別の実施形態では、ポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーを含む組成物を使用してインプラントを3D印刷するために、表2に示すパラメータを使用することができる。
【0170】
【0171】
C.インプラントの特性
[00187] 一実施形態では、インプラントの機械的特性が乳房組織の機械的特性に近似するように、足場の機械的特性が設計されている。
【0172】
[00188] 1つの実施形態では、インプラントの圧縮弾性率は、0.1kPa~10MPa、0.3kPa~1MPa及び/又は3kPa~200kPaである。実施形態では、インプラントの圧縮弾性率により、インプラントは、圧縮力が加えられると圧縮されるが、圧縮力が取り除かれると圧縮から回復することができる。
【0173】
[00189] 別の実施形態では、インプラントは、乳房組織の圧縮弾性率の±50%の圧縮弾性率を有する。他の実施形態では、インプラントは、乳腺組織、脂肪組織、皮膚、胸筋膜又は乳房組織の圧縮弾性率の±50%及び/又は±25%の圧縮弾性率を有する。
【0174】
[00190] 実施形態では、乳房インプラントの足場に存在するフィラメントの平面は、ポリマー組成物から形成される。ポリマー組成物は、(i)100%を超える破断伸び、(ii)200%を超える破断伸び、(iii)60℃以上の溶融温度、(iv)100℃を超える溶融温度、(v)0℃未満のガラス転移温度、(vi)-55℃~0℃のガラス転移温度、(vii)300MPa未満の引張弾性率、及び(viii)25MPaを超える引張強度のうちの1つ又は複数の特性を有することができる。
【0175】
[00191] 実施形態では、乳房インプラントの足場内に存在するフィラメントの平面は、(i)0.1~200N、1~100N又は2~50Nの破断荷重、(ii)10%~1,000%、25%~500%、及び/又は100%若しくは200%を超える破断伸び、並びに(iii)0.05~1,000MPa及び/又は0.1~200MPaの弾性率のうちの1つ又は複数の特性を有する。
【0176】
[00192] 実施形態では、インプラントの足場は異方性特性を有することができる。すなわち、足場は、異なる方向で異なる特性を有することができる。例えば、足場は、1つの方向では第1圧縮弾性率を有し、第2方向では第2の異なる圧縮弾性率を有していてもよい。実施形態では、乳房インプラントの足場は、乳房に埋め込まれたときに外側から内側方向に測定されるインプラントの特性に対して、インプラントの前頂部から前底部の方向に異なる特性を有していてもよい。
【0177】
[00193] インプラントの足場への組織の内部成長を可能にするために、足場は、細胞及び血管がインプラントの足場に侵入して増殖するのを可能にするのに十分な長さの強度保持性を有するべきである。実施形態では、インプラントの足場は、2週間で少なくとも25%、2週間で少なくとも50%、及び/又は4週間で少なくとも50%の強度保持性を有する。他の実施形態では、インプラントの足場は、インプラントに作用する機械的な力を支持し、足場から再生された宿主組織への機械的な力の安定した移行を可能にするように設計されている。特に、インプラントの足場は、インプラントに作用する機械的な力を支持し、足場から新たな宿主組織への機械的な力の安定した移行を可能にするように設計されている。
【0178】
D.インプラントの他の特徴
[00194] インプラント又はインプラントの足場は、所望のインプラント又は足場の形状を提供するために、はさみ、刃、他の鋭利な切断器具、又はサーマルナイフを用いてトリミング又は切断することができる。インプラント又は足場は、レーザ切断技法を使用して所望の形状に切断することもできる。この技法は汎用性があり、重要なことに、鋭利な縁部のない成形インプラント及び足場を提供することができるため、フィラメントベースのインプラントを成形するのに特に有利であり得る。
【0179】
[00195] 実施形態では、インプラントは、インプラントを補強するため、又は埋込みを容易にするための支柱をさらに備えることができる。支柱は、例えば、埋込み後にインプラントを再成形するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、支柱は、インプラントを補強するか又はインプラントの埋込みを容易にするために、足場構造に組み込むことができる。支柱は、融合、成型、織り、編み又は印刷を含む任意の好適な方法によってインプラントに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、支柱は、吸収性ポリマー繊維又はストラットをインプラントの足場に融合することによって組み込まれる。実施形態では、支柱は、0.1~5mm及び/又は0.5~3mmの範囲の直径又は幅を有することができる。吸収性ポリマー繊維又はストラットは、配向又は無配向、無配向及び/又は無配向のポリ-4-ヒドロキシブチレート繊維若しくはストラット、又は無配向のポリ(ブチレンサクシネート)繊維若しくはストラットであってもよい。別の実施形態では、可撓性支柱は、インプラントの足場に直接印刷してもよく、足場の印刷中に足場に組み込んでもよい。
【0180】
[00196] インプラントは、棘又は鋲等のリテーナを含むことができ、それにより、縫合糸を使用せずにインプラントを体内に固定することができる。インプラントは、インプラントの外側の境界又はインプラントの足場構造にリテーナを備えることができる。実施形態では、インプラントが胸壁に固定されるのを可能にするように、リテーナをインプラント上に位置付けることができる。
【0181】
[00197] インプラントは、例えば縫合糸及び/又はステープルを使用してインプラントを体内に固定することができるように、縫合糸タブを備えることができる。タブの数はさまざまであり得る。1つの実施形態では、タブの数は、インプラントにかかる荷重によって決まる。インプラントが重いか又はその体積が大きいほど、多くのタブ数が望ましい可能性がある。実施形態では、インプラントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のタブを備える。実施形態では、インプラントは、乳房インプラントを胸壁に固定するために、4~12個のタブ等、4つ以上のタブを含むことができる。タブの寸法は、0.5cm×0.5cm~5cm×4cm及び/又は2cm×2.5cmであり得る。インプラントに取り付けられたタブは、機械的負荷に抵抗するために、及び埋込み後のインプラントのその後の移動を防止するためにインプラント内への組織の十分な内部成長を可能にするために、生体内で十分な強度保持性を有していなければならない。いくつかの実施形態では、インプラントに取り付けられたタブの縫合糸引き抜き強度は、10Nよりも大きく、及び/又は20Nよりも大きい。
【0182】
[00198] さまざまなタイプの支柱、タブ及び棘の例は、参照により全体が本明細書に援用される、2019年1月30日に出願され、「FULL CONTOUR BREAST IMPLANT」と題する米国特許出願公開第20190247180号に示され、記載されている。
【0183】
E.インプラントのコーティング及び充填物
[00199] インプラントの足場は網状組織を備え、そこでは、足場構造への組織の内部成長を促進し可能にする、足場を貫通する連続的な経路がある。連続的な経路により、足場構造全体が、生物活性剤、コラーゲン、組換えコラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、添加剤、脂肪及び脂肪細胞を含む細胞及び組織のうちの1つ又は複数でコーティングされることも可能になる。
【0184】
[00200] 低いインフィル密度、例えば、60%未満又は5~25%を有する足場は、例えば、脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む細胞、組織、コラーゲン及び生物活性剤が占有することができる、十分な空隙空間を提供することができる。1つの実施形態では、インプラントの足場の空隙の25%~100%及び/又は75%~100%が、脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む細胞、組織、コラーゲン及び生理活性剤のうちの1つ又は複数で充填される。
【0185】
[00201] 細胞、並びに、コラーゲン、組換えコラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、及び他の生物活性剤等の他の組成物は、埋込み前、埋込み後、又は埋込み前及び埋込み後の両方で足場上にコーティングすることができる。
【0186】
[00202] 実施形態では、インプラントはコーティングを含むように製造され、及び/又は足場の一部又はすべてが担体として使用される。例えば、足場は、足場の空隙空間の一部又はすべてを、自家移植片、同種移植又は異種移植組織及び細胞、並びに血管新生茎を含む細胞及び組織のうちの1つ又は複数で埋めることによって、製造することができる。インプラントの足場の空隙空間に挿入することができ、足場の表面にコーティングされる細胞の例としては、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞等が挙げられる。いくつかの実施形態では、自家脂肪、吸引脂肪組織又は注入可能な脂肪が、インプラントの足場上にコーティングされ、及び/又はインプラントの足場の空隙空間に挿入される。いくつかの実施形態では、血管新生茎をインプラントの足場の空隙空間に挿入してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、1種又は複数種の生物活性剤でコーティングするか、又は部分的に若しくは完全に充填してもよい。インプラントの足場にコーティングするか、又はインプラントの足場を部分的に若しくは完全に充填するために使用することができる生物活性剤としては、コラーゲン(組換えコラーゲンを含む)及びヒアルロン酸又はその誘導体が挙げられる。他の実施形態では、インプラントの足場を、1種又は複数種の抗生剤でコーティングしてもよい。
【0187】
[00203] インプラントの足場をコーティングし、その空隙空間を細胞、組織、生物活性剤及び他の添加剤で充填するために、任意の適切な方法を使用することができる。実施形態では、インプラントの足場は、注入、噴霧又はディップコーティングにより細胞、組織、生物活性剤及び他の添加剤で充填又はコーティングされる。コラーゲンは、コーティング及び凍結乾燥によってインプラントの足場に適用することができる。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、足場を著しく損傷することなくインプラントの足場に挿入することができる針を使用する注射により、細胞、組織、生物活性剤及び/又は他の添加剤でコーティングするか又は部分的に若しくは完全に充填してもよい。1つの実施形態では、細胞、組織、脂肪、吸引脂肪組織、生物活性剤、コラーゲン、組換えコラーゲン、ヒアルロン酸又はその誘導体、及び他の添加剤の注射に使用される針は、0.5mm~5mmの外径を有する。
【0188】
IV.インプラントを埋め込む方法
[00204] 実施形態では、インプラントは体内に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、インプラントは、再建、再構築、修復及び/又は再生の部位に埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、インプラントは患者の乳房に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、埋込み後、結合組織及び/又は血管系がインプラントの足場に侵入する。いくつかの実施形態では、インプラントは吸収性材料を含み、結合組織及び/又は血管系は、吸収性材料が分解した空間にも侵入する。埋込み前又は埋込み後に、細胞によって足場の細孔がコロニー形成される可能性があり、組織、血管又はそれらの組合せがインプラントの足場の細孔に侵入する可能性がある。
【0189】
[00205] 埋込み前又は埋込み後に、インプラントの足場は、移植細胞、幹細胞、線維芽細胞、脂肪細胞及び/又は組織でコーティング又は充填することができる。実施形態では、インプラントの足場は、埋込み前又は埋込み後に、分化細胞でコーティング又は充填される。分化細胞は、所定の形態及び機能を有する。一例は脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、インプラントの足場は、埋込み前又は埋込み後に、注入により、及び/又はインプラントの足場を損傷しない針を使用して、細胞で埋めてもよい。インプラントの足場はまた、埋込み前に、血小板、細胞外脂肪基質タンパク質、ゲル、ヒドロゲル及び生物活性剤でコーティング又は充填してもよい。一実施形態では、インプラントの足場は、例えば、インプラントを抗生剤の溶液に浸漬することにより、埋込み前に抗生剤でコーティングしてもよい。
【0190】
[00206] インプラントを使用して、患者の乳房に自家細胞及び組織を送達することができる。自家組織は、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞のうちの1つ又は複数であり得る。
【0191】
[00207] インプラントを使用して、脂肪組織を患者に送達することができる。いくつかの実施形態では、自家脂肪組織は、インプラントの埋込み前又は埋込み後に調製され、インプラントの埋込み前又は埋込み後に、インプラントの足場に注入されるか、又は他の方法で挿入若しくはコーティングされる。自家脂肪組織は、患者の身体のドナーサイトにおける脂肪吸引によって調製することができる。遠心分離後、脂肪細胞を含む脂質相は、血液成分から分離され、埋込み前にインプラントの足場と組み合わされるか、又は埋込み後にインプラントの足場に注入若しくは他の方法で挿入される。一実施形態では、インプラントの足場は、足場の総体積の1%~50%及び/又は1%~20%に相当する体積の吸引脂肪組織が注入されるか、又は充そうした吸引脂肪組織で充填される。
【0192】
[00208] 別の実施形態では、患者から採取した脂肪吸引脂肪組織を、インプラントの足場に追加する前に、非常に小さい繊維又は粒子等の生物学的質又は合成基質と混合してもよい。この実施形態では、追加された基質は、脂肪の微小球を保持又は結合し、それらをインプラントの足場内に分散させて保持する役割を果たす。いくつかの実施形態では、追加された基質の使用は、壊死につながる可能性のある脂肪の貯留を防止するのに役立ち、及び/又はインプラントの血管新生を促進するのに役立つことができる。
【0193】
[00209] 別の実施形態では、血管茎又は他の組織塊が患者から採取され、インプラントに挿入される。インプラントの埋込み前に、茎又は他の組織塊をインプラントに挿入し、次いで、茎又は他の組織塊を有するインプラントを患者に埋め込んでもよく、又は、インプラントが患者に埋め込まれた後に、茎又は他の組織塊をインプラントに挿入してもよい。
【0194】
[00210] 一実施形態では、インプラントは、両方の乳房に埋め込まれ固定される。実施形態では、インプラントは、修正術を含む乳房再建術及び増大術の間に患者に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、インプラントは、(i)乳房切除を受けた患者、(ii)乳房挙上を受け、乳房増大の必要性がある患者、(iii)乳房縮小を受け、縮小した乳房の支持、挙上又は再構築が必要である患者、又は(iv)以前のシリコーン又は生理食塩水乳房インプラント手術を受け、シリコーン又は生理食塩水インプラントを除去すること、及び、その後の乳房の再建でより豊かな又は大きいサイズの乳房が得られることを望む患者に、埋め込まれる。インプラントは、胸部からの乳房の突出を増大させるために乳房手術患者に埋め込まれる場合もあり、任意選択的に、突出を増大させるために、埋込み後にインプラントに追加の脂肪移植片体積が追加される場合もある。追加の脂肪移植片体積は、インプラントの埋込み直後にインプラントに追加される場合もあるが、再診時に追加される場合もある。例えば、追加の脂肪移植片体積は、インプラントの埋込みの数日後、数週間後、又は数ヶ月後である1つ又は複数の機会にインプラントに追加してもよい。本明細書に記載された処置は、乳房組織の除去、乳房組織の切除及び再分配を伴って実施することもできる。
【0195】
[00211] 一実施形態では、乳房へのインプラントの埋込み方法は、少なくとも、(i)患者の乳房組織へのアクセスを得るために少なくとも1つの切開を行うステップと、(ii)乳房の乳房マウンドから皮膚及び皮下筋膜を分離するステップと、(iii)インプラントを乳房の乳房マウンドに位置決めするステップと、(iv)乳棒の乳房マウンドを包囲する組織にインプラントを固定するステップと、(v)乳房の切開を閉じるステップとを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、(a)吸引脂肪組織のサンプルを調製し、インプラントの埋込み前にサンプルでインプラントをコーティング又は充填するステップと、(b)吸引脂肪組織のサンプルを調製し、インプラントの埋込み後に、(例えば、サンプルをインプラントに注入することにより)インプラントをサンプルでコーティング又は充填するステップと、(c)インプラントの埋込みの前又は後に、血管茎をインプラントに挿入するステップと、(d)インプラントを適所に縫合又はステープル留めするステップとのうちの1つ又は複数をさらに含む。いくつかの実施形態では、インプラントは、乳腺下、胸筋下、又は胸筋前の位置に埋め込まれる。実施形態では、インプラントは、乳房マウンドを包囲する組織に、及び/又は乳房マウンドの下にある胸筋を包囲する筋膜に、縫合することができる。別の実施形態では、インプラントはタブを備え、タブは乳房マウンドを包囲する組織に縫合される。
【0196】
[00212] インプラントの足場はまた、埋込み前又は埋込み後に、脂肪移植片以外の細胞及び組織、並びにサイトカイン、血小板及び細胞外脂肪基質タンパク質でコーティング又は充填してもよい。例えば、インプラントの足場は、軟骨又は真皮移植片でコーティング又は充填してもよい。インプラントの足場はまた、患者の病気の治療のための遺伝子を含むように遺伝子操作された幹細胞等、他の組織細胞でコーティング又は充填してもよい。
【0197】
[00213] 一実施形態では、インプラントは、小切開部を通して低侵襲的手段によって送達されるのを可能にする特性を有する。インプラントは、例えば、小切開部を通して送達することができるように、ロール状に巻き、折り畳み、又は圧縮することができるように設計してもよい。こうした低侵襲的アプローチは、患者の罹患率、瘢痕及び感染の可能性を低減させることができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、3次元形状及び形状記憶特性を有し、これにより、インプラントは、切開部を通して適切なサイズの切開された組織面に送達された後、補助なしで元の3次元形状に戻ることができる。例えば、インプラントを小径の円筒形に丸めることによって一時的に変形させ、インサータを使用して送達し、その後、生体内で補助なしに元の3次元形状に戻すことができる。
【実施例】
【0198】
[00214] 本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、さらに理解されよう。
【0199】
[00215]実施例1:同心のフィラメントのシェルによって包囲された平行フィラメントの積み重ねられた層の多孔質足場を有する乳房インプラント足場
[00216] 本明細書に記載したように、
図2A、
図2Bに示す乳房インプラント足場を調製した。P4HB(Tepha, Inc.、分子量480kDa)のペレットを、垂直プランジャを備えた垂直押出機に供給する水平押出機と可動ステージとを備えた溶融押出堆積(MED)ベースの3Dプリンタのホッパに装填した。溶融押出を使用してインプラントの調製においてオンデマンドで一連の液滴を射出する例示的なプロセスは、参照により全体が本明細書に援用される、2019年6月11日に出願され、「METHODS FOR 3D PRINTING OF POLY-4 HYDROXYBUTYRATE AND COPOLYMERS」と題する米国特許出願公開第2019/0375149号に記載されている。
【0200】
[00217] ペレットは、3.5mm平均直径、100ppm未満の含水率を有し、シリカベッドを通して乾燥させた空気のパージを使用して、ホッパ内でペレットを乾燥状態で維持した。水平押出機の温度プロファイルを、ビルドチャンバ内で30℃、第1遷移ゾーンで100℃、第2遷移ゾーンで130℃、押出ゾーンで230℃に設定した。MED水平押出機内でのポリマーの滞留時間は、22分/cm3であった。背圧は50バール(5MPa)に設定した。垂直押出機のノズルオリフィスの直径は0.2mmであり、液滴印刷頻度は、印刷された構築物(シェル)の縁部で50滴/秒、インフィルでは240滴/秒であった。
【0201】
[00218] 3DプリンタにSTLファイルをロードし、
図2A、
図2Bに示すインプラントの開孔足場構造を印刷した。
【0202】
[00219] 結果として得られた構造は、ベース直径が12cm、突出(ベースから頂点までの高さ)が5.5cmのドーム状を有していた。インプラントのシェル内部の構造は、開孔を有する完全に相互連結した多孔質アーキテクチャで形成されていた。
【0203】
[00220] 本教示について、さまざまな実施形態及び実施例と共に説明したが、本教示がこうした実施形態又は実施例に限定されることは意図されていない。反対に、本教示は、当業者に理解されるように、さまざまな代替形態、変更形態及び均等物を包含する。したがって、前述の説明及び図面は、単に例示である。
【0204】
[00221] 本明細書では、本発明のいくつかの実施形態について説明及び図示したが、当業者であれば、本明細書に記載する機能を実行し、及び/又は結果及び/又は利点のうちの1つ又は複数を得るための種々の他の手段及び/又は構造を容易に構想し、そうした変形及び/又は変更の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より全体的には、当業者であれば、本明細書に記載するすべてのパラメータ、寸法、材料及び構成は例示的であるように意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される所定の1つ又は複数の適用によって決まることを容易に理解するであろう。当業者であれば、日常的な実験以上のことを行わずに、本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例として提示されており、添付の請求項及びその均等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載され特許請求されている以外の方法で実施することができることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に関する。加えて、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組合せは、そうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組合せが相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】