(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】時間基準、力センサまたはジャイロメータを製造するための高品質係数の屈曲振動共振子
(51)【国際特許分類】
G01L 1/10 20060101AFI20240228BHJP
G01C 19/5642 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
G01L1/10 A
G01C19/5642
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555321
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2022050381
(87)【国際公開番号】W WO2022189734
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ル トゥラオン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲラール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ,トマ
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB20
2F105CC02
(57)【要約】
共振子は、共振子の振動部によって伝達される支持部(Pf)への力を低減または抑制するのに適している。この目的のために、前記振動部は2つの延伸部(P1、P2)を備え、各延伸部の2つのセグメントが反対方向に配向されたそれぞれの速度成分を有するように、前記2つの延伸部は蛇行形状である。平衡状態であるこのような共振子は、ジャイロメータ又は力センサ内で有利に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦かつ平行な2つの対向する面を有するウエハの一部であって、共振子の使用中に屈曲振動するように意図され、振動部と呼ばれる前記ウエハの一部と、
前記振動部の外側にあり、足(Pd)と呼ばれる前記ウエハの中間セグメントによって該振動部に接続される支持部(Pf)と、を備え、
前記足は前記振動部と一体であり、前記支持部と前記振動部との間に堅固な接続を形成しており、
前記振動部は、前記ウエハの両面に平行であり、前記2つのウエハの面から等距離にある、中央平面(M)と呼ばれる第1の対称平面と、前記中央平面に垂直であり、前記支持部(Pf)と前記振動部との間の前記足によって形成される接続部を長手方向に貫通する、前記ウエハに直交する対称平面(P)と呼ばれる第2の対称平面とを有し、
前記中央平面(M)と、前記ウエハに直交する対称平面(P)との共通部分は、前記振動部の中心軸を構成し、
前記振動部は、各々が屈曲振動するように意図された2つの延伸部(P
1、P
2)を備え、前記2つの延伸部は前記ウエハに直交する対称平面(P)の両側で前記足(Pd)から対称的に延在し、
前記共振子の各延伸部(P
1、P
2)は、長手方向の溝(FL
1、FL
2)を備えており、当該長手方向の溝は、前記振動部を前記中央平面(M)に垂直な方向に貫通し、前記ウエハに直交する対称平面(P)から前記延伸部の遠位端に向かうが、該遠位端に到達していないため、各延伸部は蛇行形状であることを特徴とし、
前記2つの延伸部(P
1、P
2)のそれぞれの溝(FL
1、FL
2)は、前記ウエハに直交する対称平面(P)に対して対称であり、前記ウエハに直交する対称平面で交わる結果、前記振動部は、2つの一次セグメント(L
1ext、L
2ext)と、2つの二次セグメント(L
1int、L
2int)を含み、前記2つの一次セグメント(L
1ext、L
2ext)は、それぞれ、前記足(Pd)を前記延伸部の1つの前記遠位端に接続し、前記2つの二次セグメント(L
1int、L
2int)は、該二次セグメントのそれぞれの近位端によって前記ウエハに直交する対称平面で相互接続されているとともに、各二次セグメントが前記遠位端において前記一次セグメントの1つに接続するように、それぞれ前記延伸部の1つの前記遠位端に向けて延伸しており、
前記振動部の振動モードが、前記中央平面(M)に平行な動作のみを含み、前記ウエハに直交する対称平面(P)に対して対称である場合、前記2つの一次セグメント(L
1ext、L
2ext)は、振動中のそれぞれの瞬間において、前記中心軸に平行な瞬間速度成分を有し、当該2つの一次セグメントの瞬間速度成分の方向は、前記中心軸に平行な前記二次セグメント(L
1int、L
2int)の瞬間速度成分とは反対方向である、共振子。
【請求項2】
前記振動部は、前記中央平面(M)に平行な動作のみを含み、前記ウエハに直交する対称平面(P)に対して対称である前記振動モードが、前記中心軸に平行な前記足(Pd)の動作を引き起こさないような質量分布を有する、請求項1に記載の共振子。
【請求項3】
前記ウエハの材料は単結晶であり、三方晶クラスであり、圧電体であり、
前記振動部の前記中心軸は、前記材料の軸Xcに平行であり、
前記振動部の2つの一次セグメント(L
1ext、L
2ext)および2つの二次セグメント(L
1int、L
2int)は、前記材料の軸Ycに平行である、請求項1または2に記載の共振子。
【請求項4】
前記振動部の2つの延伸部(P
1、P
2)は、延伸部(P
1)と延伸部(P
2)との間に、60°または180°に等しい角度(α)を形成する、請求項3に記載の共振子。
【請求項5】
前記振動部の屈曲変形を発生させるように適合された励振手段と、前記共振子の使用中に前記励振手段によって生成される前記振動部の屈曲変形の振幅を測定するように適合された検出手段と、をさらに備え、
前記励振手段は、互いに電気的に絶縁された第1および第2電極を備え、
前記第1電極は、各一次セグメント(L
1ext、L
2ext)または二次セグメント(L
1int、L
2int)に対して、前記ウエハの各面上に、導電材料のストリップを含み、前記導電材料のストリップは、前記セグメントにおける幅方向の中央に、長手方向に配置され、
前記第2電極は、各一次セグメント(L
1ext、L
2ext)または二次セグメント(L
1int、L
2int)に対して、前記ウエハの各面上に、2つのストリップを備え、当該2つのストリップは前記第1電極のストリップの両側に配置され、
前記検出手段は、前記第1および第2電極に現れる電流を検出するための回路を備える、請求項3または4に記載の共振子。
【請求項6】
各延伸部(P
1、P
2)は、その遠位端において、前記中央平面(M)に平行な、前記延伸部の一次セグメント(L
1ext、L
2ext)および二次セグメント(L
1int、L
2int)の外側長手方向縁部に対する拡張部を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の共振子。
【請求項7】
セグメントの形態であり、ステム(Pc)と呼ばれる、前記ウエハの追加の部分をさらに備え、当該追加の部分は、前記第二次セグメント(L
1int、L
2int)の前記相互接続された近位端から、前記中心軸に平行、かつ前記足(Pd)から離れる方向に延在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の共振子。
【請求項8】
それぞれのステム(Pd)を備える、同じ前記ウエハで形成された2つの振動部を備え、前記2つの振動部は、前記ステムによって相互接続され、前記2つの振動部のそれぞれの中心軸が重なるように互いに反対に配向されている、請求項7に記載の共振子。
【請求項9】
同じ前記ウエハで形成された2つの振動部を備え、前記2つの振動部は、前記2つの振動部のそれぞれの足(Pd)によって相互接続され、前記2つの振動部のそれぞれの中心軸が重なるように互いに反対に配向されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の共振子。
【請求項10】
請求項8に記載の共振子を備え、前記2つの振動部のそれぞれの足(Pd)の間に加え、前記2つの振動部の中心軸に平行な張力を測定するように適合された力センサ。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの共振子を備える、ジャイロメータ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、平行な面を有するウエハに形成された振動部を有する共振子、並びに、このような共振子を備える力センサ及びジャイロメータに関する。
〔従来技術〕
屈曲振動共振子は、時間基準、ジャイロメータ、および力センサを作るために広く使用されている。最もよく知られている例は、例えば米国特許第3,683,213号に記載されているように、時間基準を提供するための水晶音叉である。また、例えば米国特許第4,215,570号に記載されているように、力センサを形成するための両頭音叉である。また、例えば米国特許第61,529,400号に記載されているように、回転速度を測定するための両頭音叉である。または、回転速度を測定するために、例えば米国特許第6,414,416号に記載されているように、分離構造を有する単頭音叉である。
【0002】
水晶製の圧電屈曲振動共振子の場合、共振子のビームの方位は一般に、結晶軸Ycに沿って選択され、共振子の平面構造は、結晶面Xc-Ycに平行である。一方では、これは平面Xc-Ycおよび平面Yc-Zcにおける屈曲振動を励振および検出するために、圧電結合から最適に利益を得ることを可能にする。他方では、通常はフッ化アンモニウム(NH4F)とフッ化水素酸(HF)との混合物を使用して、酸型の湿式のエッチングプロセスを使用して構造をエッチングするために、軸Zcに沿ってより速いエッチング速度から利益を得ることを可能にする。
【0003】
実際、三方晶クラスの結晶の圧電テンソルは、ビームの軸に沿った変形Syyと電場Exxとの最適な結合を提供する。このために、ビームの屈曲振動は、電場Exxを生成するために、またこれらの同じ電極上で間接圧電効果によって生成された電荷を介して変形Syyを検出するために、ビームに沿って位置している電極を使用して直接圧電効果によって励振される。
【0004】
電極については、複数の代替構成が可能である。例えば、[
図1a]に示されるように、Xc方向に平行な振動動作のために、共振子が形成されるウエハの両側に電極が配置される。または、[
図1b]に示されるように、Zc方向に平行な面外振動動作のために、共振子が形成されるウエハの両側に電極が配置される。[
図1a]および[
図1b]は、表される各電極構成について、ビームに屈曲を生じさせるために必要な電場成分Exxをさらに示している。
【0005】
ウエハの面上に電極を有するこのような構成は、実現することが容易である。しかし、他の電極構成も可能であり、例えば、ウエハの面に垂直なビームの側面に配置された電極を有する。このような他の構成は、例えば米国特許第4,524,619号に記載されているように、ビームの屈曲を生成するのにより効果的であるが、より実現することが困難である。
【0006】
これらの共振子が、平行な面を有するウエハの湿式化学エッチングによって製造される場合、エッチングされた平面の結晶方位に起因するエッチングファセットは、共振子の形態に非対称性を生成し、その後の動作を変える。実際、水晶のようなクラス32の結晶の三方晶の対称性の場合、NH4F-HFの混合物を使用して化学的にエッチングされた方位Ycのビームが、方向Xc-において完全に直交する側面を有し、方向Xc+-において直交する側面に2面角を有することが知られている。
【0007】
そして、水晶の三方晶の対称性のために、この形態は、[
図2a]に示すように120°(度)ごとに繰り返される。[
図2b]は、ウエハ面が平面Xc-Ycに平行であり、ビームが軸Ycに沿って長手方向に配向されている水晶音叉について、このようにして得られた典型的な結果を示す。音叉のビームの側面上のファセットfdは、ウエハの面に直交する平面Pに対する対称性を崩し、ビームの埋め込み端部におけるファセットfoは、共振子の中央平面Mに対する対称性を崩す。
【0008】
これらの対称性の崩れは、共振子の不十分な動的平衡を引き起こし、これは共振子の取り付けにおいて振動エネルギーの損失を発生させる。また、これは、結果として、共振子の品質係数および共振子の振動周波数の安定性を低下させる。これらの劣化は、精密な力センサまたは時間基準を製造するための共振子の使用にとって有害である。
【0009】
このような共振子が振動ジャイロメータを製造するために使用される場合、共振子の対称性の崩れは一般に、ジャイロメータの2つの有用な振動モード間の寄生的機械的結合を生成する。これは測定バイアスをもたらす。すなわち、回転がないとき、ジャイロメータからの出力信号もはや0ではない。このような0でない測定バイアスの存在は、ジャイロメータの測定の精度を大きく低下させる。
【0010】
次いで、補償の手段が一般に、ビームの端部に質量を加え、かつレーザアブレーションによって対称性を調整することによって適用される。これは、不均衡を低減し、および/もしくは米国特許第3,683,213号に記載されているような振動周波数を調整するために、または米国特許第61,529,400号に記載されている振動ジャイロメータの場合における直角位相結合を低減するためである。
【0011】
ジャイロメータにおける直角位相結合は、ジャイロメータ振動の2つの有用なモードを接続する機械的結合から生じる。ジャイロメータ振動の2つの有用なモードは、一般に音叉振動モードに対応する「パイロットモード」と呼ばれるモードと、共振子がビームの長手方向の周りに回転されるときにパイロットモードからのコリオリ加速度によって励振される「センシングモード」と呼ばれる振動の面外モードと、である。共振子の対称性の崩れ、主に中央平面Mに対する対称性の崩れ([
図2b]参照)が存在すると、パイロットモードとセンシングモードとの間に結合剛性が現れ、回転がないときにセンシングモードで共振子の寄生動作を発生させる。
【0012】
このような欠陥は、測定バイアスを導入することによってジャイロメータ性能を大きく制限する。しかしながら、ジャイロメータにおけるこのような対称性欠陥を直すために、製造された各共振子に対して局所的かつ個別に調整されたレーザアブレーションを実施することは、特に費用がかかり、しばしば不完全であるため、ジャイロメータの最終的な性能は制限されたままである。
【0013】
振動水晶ジャイロメータにおける直角位相結合を本質的に低減するための他の独創的な手段が例えば、本出願人によって出願された仏国特許2,944,102号のように実施されている。仏国特許2,944,102号では、振動ビームの方位が変更され、ビームの振動のねじれモードが使用される。その結果、振動の屈曲モードにコリオリ加速度によって結合される。これらの変化は、水晶を化学的にエッチングする低コストの工程を使用して共振子が依然として作られているにもかかわらず、振動構造の完全な対称性を得ることを可能にする。Guerardらが≪Quartz structures for Coriolis Vibrating Gyroscopes≫(DOI: 10.1109/ISISS.2014.6782534)と題する論文において報告したように、直角位相結合は3~4桁減少したが、ジャイロメータの固有の熱感度が損なわれ、水晶の固有の特性に起因して、ねじれモードの著しい熱依存性のためにジャイロメータの固有の熱感度が大きく低下した。
【0014】
特願2005-068690は、水晶ジャイロメータを振動させるための独自の構造を提案している。この構造では、感応軸が構造の平面に対して垂直であり、水晶の三方晶の対称性の利点を活かし、結晶軸Ycにより配向された3つのビームを使用する。このようにして、得られたジャイロメータは、パイロットモードとセンシングモードとの間の非常に良好な圧電結合から利益を得る。しかしながら、このような振動構造は、化学エッチングによってエッチングされるとき、ウエハの面に対して垂直な平面に対して対称ではない。関係する振動モードは、共振子の良好な動的平衡を得ることを可能にしない。そして、有用な振動モードの品質係数が低下する。
【0015】
力センサの場合、米国特許第4,215,570号に記載されている両頭音叉構造は、反対向きに同期して振動するように意図された2つのビームを分離する特に非常に薄い溝のために、興味深い妥協点を構成する。この構成はビームの埋め込み端部の変形を低減しながら、共振子間の良好な結合を保証する。このようにして、ビームが振動するときに発生し、エネルギーの損失を引き起こす寄生的な長手方向の動作が低減される。
【0016】
この長手方向の動作は、例えば、楽器をチューニングするのに非常に有用な可聴音を発するために、音叉の足を貫通して共振支持体にビームの振動を伝達する音楽音叉において利用される。音叉の足を通過して伝達される長手方向の動作を利用するこの例は、共振子から外部へ、その足を通過して生じるエネルギー漏れを明瞭に示す。一方、化学エッチングによって製造される場合、米国特許第4,215,570号の両頭音叉は、Xc+方向において直交する側面に二面角が存在するために、共振子の面に垂直な平面に対して対称ではない。
【0017】
この幾何学的非対称性はまた、2つのビームにおける長手方向の力の伝達において非対称性を生成し、音叉の2つのビームの周波数変動を不均等にする。これにより、音叉による効果が損なわれ、共振子が測定されるべき軸方向の張力を受けるときに効果的である品質係数の値を大幅に低減され得る。本出願人によって出願されたフランス特許第8,418,587号に記載されているもののような力センサを製造するために、両頭音叉の代替物が提案されている。実際、フランス特許第8,418,587号は、ビームの端部に設けられた慣性質量を介して、屈曲振動するように意図された単純な単一ビーム共振子を、支持体からこのビームの振動を切り離すためのシステムと関連付けることを提案している。
【0018】
この共振子は2つの利点を有する。一方では、音叉について2つのビームの代わりに単一のビーム(歯)が、共振子のスケールファクタを2倍にすることを可能にし、これは測定される軸方向の張力の機能としての周波数の変動を意味する。他方ではデカップリングの原理であり、これは存在し得るアライメント誤差に対して高い公差を提供する。
【0019】
しかしながら、このような共振子は嵩張ったままであり、センサ素子として使用される共振子、および測定される加速度を介して試験用の質量体によって生成される力に関連する周波数変動に基づく加速度計などの小型デバイスにおけるその使用を制限することがある。
【0020】
また、別の独創的な代替案が、出願人によって出願されたフランス特許第2,739,190号で提案されている。別の独創的な代替案は、モノリシック加速度計構造内に単純な屈曲振動共振子を組み込み、モノリシック加速度計構造で、振動を外部に対して分離するシステムを提供する。
【0021】
単純な屈曲振動共振子の最適化もまた、出願人によって再度出願されたフランス特許第2,805,344号において、性能指数F×Q/Sfの数値を改善することによって、提案されている。ここで、Fは共振子の周波数であり、Qは共振品質係数であり、Sfはm/s2当たりのヘルツで表されるスケール係数である。
【0022】
この改善は加速度計バイアスの安定性、すなわち、加速度がない場合の共振周波数の安定性を表す性能指数F×Q/Sfに対して1.2倍の利得を提供する非一定断面のビームを使用することによって得られる。
【0023】
しかしながら、これらの単純な共振子は、容易で信頼性のある力測定を可能にするために、共振子が元来分離され、かつその取り付け条件に感度がないことを必要とする可変周波数力センサの用途には満足のいくものではない。これに基づいて、本発明の一態様は、これらの固有のデカップリング要件を満たす新しい力センサを提案することにある。新しい力センサは、復元トルクとして作用し、したがって共振周波数を修正する軸方向の力によって生成される屈曲振動ビームの剛性の修正にもはや基づいていないが、共振子に加えられる力によって生成される変位によって生成される屈曲慣性を修正する、新しい力センサを提案することにある。
【0024】
屈曲慣性を修正することに基づくこの力センサ原理は、例えば、論文≪New resonant accelerometer based on rigidity change≫(Y.Omura、Y.Nonomura、O.Tabata、TRANSDUCERS 97、1997、International Conf. Solid-State Sensors and Actuators、 Chicago)においてすでに提案されている。非デカップリング共振子に基づくが、測定精度および分解能のために高品質係数の共振子が必要とされる要求の多い用途を満たすことができない。
【0025】
結晶振動装置を製造するための湿式化学エッチングは、結晶の固有の品質係数を維持しながら、マイクロ装置の集合的製造に特に適した安価な工程であることを、この段階で想起することが重要である。実際、化学エッチングは局所的な化学反応に基づくものであり、材料の結晶格子を変化させたり、劣化させたりすることなく、原子によって結晶原子を溶解させることを可能にする。
【0026】
これは、プローブ(ソノトロード)とエッチングされる表面との間に生成される超音波によって励振される微細な研磨粒子を使用する超音波加工のような局所摩耗に基づくエッチングの場合ではない。または、これは、イオンの運動エネルギーを使用するイオン衝撃に基づくエッチングの場合ではない。これらの最後の2つの技術は、共振子の固有の品質係数を低減するより高いエネルギーのエッチングのために数十ナノメートルから数マイクロメートルの特性距離にわたって、エッチングのエッジ(縁)における結晶格子を変化させる。装置の小型化が望まれるときにはなおさらである。
〔技術的課題〕
この状況に基づいて、本発明の1つの目的は、上述したように、従来の共振子の不利な点の少なくとも複数に関して改善された新しい共振子を提供することにある。
【0027】
特に、本発明の1つの目的は、品質係数の増加した値を提供するために、外部への振動エネルギーの損失が低減される共振子を提供することにある。
【0028】
本発明の副次的な目的は、共振子を構成するために使用される材料の異なる結晶方位間に存在するエッチング速度の差異から生じる、共振子の形状に影響を及ぼし得る対称欠陥を低減することにある。
〔発明の概要〕
これらまたは他の目的の少なくとも1つを実現するために、本発明の第1の態様は、平坦かつ平行な2つの対向する面を有するウエハの一部であって、共振子の使用中に屈曲振動するように意図され、振動部と呼ばれるウエハの一部と、前記振動部の外側にあり、足と呼ばれる前記ウエハの中間セグメントによって該振動部に接続される支持部と、を備え、前記足は前記振動部と一体であり、前記支持部と前記振動部との間に堅固な接続を形成している共振子を提案する。
【0029】
本発明のこの共振子では、前記振動部は、前記ウエハの両面に平行であり、これらの2つのウエハの面から等距離にある、中央平面と呼ばれる第1の対称平面と、前記中央平面に垂直であり、前記支持部と前記振動部との間の前記足によって形成される接続部を長手方向に貫通する、前記ウエハに直交する対称平面と呼ばれる第2の対称平面とを有する。前記中央平面と前記ウエハに直交する前記対称平面との共通部分は、前記振動部の中心軸を構成する。
【0030】
前記振動部は、各々が屈曲振動するように意図された2つの延伸部を備え、これらの2つの延伸部は、前記ウエハに直交する対称平面の両側で前記足から対称的に延在する。
【0031】
本発明の複数の特徴によれば、各延伸部は、前記ウエハに直交する前記対称平面からこの延伸部の遠位端に向かうが、その遠位端に達することのない、中央平面に垂直な振動部を貫通する長手方向の溝を備えており、その結果、各延伸部は蛇行形状である。
【0032】
前記2つの延伸部のそれぞれの溝は、前記ウエハに直交する前記第2の対称平面に対して対称であり、前記ウエハに直交する前記第2の対称平面で交わる。したがって、前記振動部は、前記足を前記延伸部の1つの前記遠位端にそれぞれ接続する2つの一次セグメントと、これらの二次セグメントのそれぞれの近位端によって前記ウエハに直交する対称平面で相互接続され、この遠位端において前記一次セグメントの1つに接続するように前記延伸部の1つの前記遠位端にそれぞれ延在する2つの二次セグメントとを備える。
【0033】
前記振動部のこのような構成のおかげで、前記振動部の振動モードが、前記中央平面に平行な動作のみを含み、前記ウエハに直交する前記対称平面に対して対称である場合、前記2つの一次セグメントは、振動中のそれぞれの瞬間において、前記中心軸に平行な瞬間速度成分を有し、当該2つの一次セグメントの瞬間速度成分の方向は、前記中心軸に平行な前記2つの二次セグメントの瞬間速度成分とは反対方向である。
【0034】
これらの反対の速度方向は、それらに関連する運動量成分の複数が少なくとも部分的に互いに補償することを可能にするため、前記振動部によって前記足に伝達される動作が低減される。その結果、共振子は、振動エネルギー損失が低く、その品質係数を高くすることができる。
【0035】
有利には、前記振動部は、前記中央平面に平行な動作のみを含み、前記ウエハに直交する前記対称平面に対して対称である振動モードが、前記中心軸に平行な前記足の動作を引き起こさないような質量分布を有し得る。
【0036】
換言すれば、前記共振子の中心軸に平行な前記振動部の運動量成分に対する補償は、正確であるか、またはほぼ正確であり得る。この場合、前記共振子の前記足を通過する振動エネルギー損失はゼロまたはほぼ0であり、品質係数は非常に高くなり得る。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、ウエハの材料が単結晶であってもよく、三方晶クラスおよび圧電性であってもよい。この場合、前記振動部の前記中心軸は、前記材料の軸Xcに平行であり、振動部の2つの一次セグメントおよび2つの二次セグメントは、前記材料の軸Ycに平行である。言い換えれば、前記振動部の前記2つの延伸部のうちの一方は、結晶軸Yc+に平行であり、前記振動部の2つの延伸部のうちの他方は結晶軸Yc-に平行であり得る。このような実施形態では、前記振動部の前記2つの延伸部がそれらの間に60°に等しい角度を形成し得る。
【0038】
特に、前記ウエハはα-水晶(α-SiO2)、またはオルトリン酸ガリウム(GaPO4)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、もしくはヒ酸ガリウム(GaAsO4)などの対称クラス32の三方晶系の任意の他の結晶、またはLGXファミリーの結晶から製造され得る。ここで、LGXファミリーの結晶は、ランガサイト(LGSまたはLa3Ga5SiO14)、ランガテイト(LGTまたはLa3Ga5,5TaO,5O14)、またはランガナイト(LGNまたはLa3Ga5,5NbO,5O14)である。
【0039】
あるいは、前記振動部の2つの延伸部がそれらの間に180°に等しい角度を形成し得る。本発明の共振子は前記ウエハの材料が単結晶であり、三方晶クラスであり、圧電性である場合、本発明の前記共振子は、励振手段と検出手段とをさらに備える。励振手段は、前記振動部の屈曲変形を発生させるように適合された励振手段であって、これらの励振手段は、互いに電気的に絶縁された第1および第2電極を備える。前記第1電極はウエハの各面上および各一次セグメントまたは二次セグメントに対して、導電材料のストリップを備え、前記導電材料のストリップは、前記セグメントにおける幅方向の中央に、長手方向に配置される。前記第2電極は、前記ウエハの各面上および各一次セグメントまたは二次セグメントに対して、2つのストリップを備え、当該2つのストリップは前記第1電極のストリップの両側に配置される。検出手段は、前記共振子の使用中に前記励振手段によって生成される振動部の屈曲変形の振幅を測定するように適合されたものであり、これらの検出手段は前記第1および前記第2電極に現れる電流を検出する回路を備える。
【0040】
一般に、本発明では、前記振動部の各延伸部は、その遠位端において、前記中央平面に平行な、この延伸部の前記一次セグメントおよび前記二次セグメントの外側長手方向縁部に対する拡張部を備え得る。このような拡張部は、前記中心軸に平行な前記振動部の前記運動量成分に対して補償を提供するために、追加の自由度を提供する。したがって、本発明による、高い品質係数を有する共振子の設計が容易になる。
【0041】
また、一般に、本発明では、前記共振子はセグメントの形態であり、ステムと呼ばれる前記ウエハの追加の部分をさらに備えることができ、当該追加の部分は、前記第二次セグメントの前記相互接続された近位端から、前記中心軸に平行、かつ前記足から離れる方向に延在する。このステムは、前記中心軸に平行な振動部の運動量成分に対して補償を得ることにも寄与し得る。
【0042】
共振子は、同じウエハ内に形成され、それぞれのステムが設けられた2つの振動部を備えることができる。そして、2つの振動部のそれぞれの中心軸が重なるように、2つの振動部は、それらのステムによって相互接続され、互いに反対に配向され得る。
【0043】
別の可能性によれば、前記共振子は2つの振動部を備えてもよい。2つの振動部は、同じウエハ内に形成され、これらの2つの振動部のそれぞれの足によって相互接続され、前記2つの振動部のそれぞれの中心軸が重なるように互いに反対に配向されている。
【0044】
本発明の第2の態様は、2つの振動部がそれぞれのステムによって相互接続された、本発明による共振子を備える力センサを提案する。このようなセンサは、2つの振動部のそれぞれの足の間に加えられ、前記2つの振動部の中心軸に平行な張力を測定するように適合される。
【0045】
最後に、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様による少なくとも1つの共振子を備えるジャイロメータに関する。このようなジャイロメータの動作は、前記中央平面に平行な動作を有する振動モードと、この中央平面に垂直な動作を有する振動モードとの間のコリオリ加速度によって生成される結合を使用する。
【0046】
好ましくは、ジャイロメータは、反対方向に配向されながら、それぞれの足によって相互接続される2つの振動部を有する共振子を備えてもよい。ジャイロメータのこのような構成では、2つの別個の使用が可能であり、それぞれが、選択されるパイロットモードに基づいて、単一の回転応答軸を有する。パイロットモードについて第1の可能な選択によると、このパイロットモードでは、2つの振動部が反対向きに同期して振動する。そして、2つの振動部の共通の中心軸に平行な軸周りの回転により発生するコリオリ加速度は、動的に平衡の面外振動モードを励振する。
【0047】
可能な別の選択肢によれば、今回はパイロットモードでは、2つの振動部が同相で振動し、2つの振動部の共通の中心軸に垂直であり、かつ前記中央平面に平行な軸周りの回転によって生成されるコリオリ加速度が、動的に平衡とされる別の面外振動モードを励振する。このような2つの振動部を有するジャイロメータの好ましい実施形態では、2つの振動部は、互いに反対に配向されながら、それぞれの足によって接続されている。前記ウエハは水晶で作られてもよく、前記2つの振動部の各々は、互いに対して60°に配置され、結晶軸Ycに平行な延伸部を有する。このような構成により、励振または検出される振動モードに最適な圧電結合を得ることができ、また、共振子が化学エッチングによって製造されるときに共振子の対称的な製造を得ることができる。
【0048】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、複数の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明からより明確になるのであろう。
【0049】
〔図面の簡単な説明〕
[
図1a]はすでに議論されているが、圧電性であり、α-水晶などの対称クラス32の三方晶系に属するビーム材料の場合、平面内のビームの屈曲振動の励振および検出に使用することができる、圧電結合に適した第1の可能な電極構成を想起させるものである。
【0050】
[
図1b]は、すでに議論されているが、面外振動の励振および検出に使用することができる第2の可能な電極構成の[
図1a]に対応する。
【0051】
[
図2a]は、すでに議論されているが、三方晶の対称性を想起させるものである。
【0052】
[
図2b]は、すでに議論されているが、従来技術から知られており、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸との混合物を用いて水晶を化学的にエッチングすることによって得られた音叉の形態で共振子を示している。[
図2b]の音叉は、音叉の2つのビーム(歯)がY軸に平行であるときに生じる対称性の崩れを伴う。
【0053】
[
図3a]は、従来技術から知られているように、平行なビームを有する音叉に関係する運動量を示す。
【0054】
[
図3b]は、非平行なビームを有する音叉の[
図3a]に対応する。
【0055】
[
図3c]は、各音叉内の不均衡な運動量を全体的に補償することを可能にする、非平行な歯を有する両端音叉の
図3bに対応する。
【0056】
[
図4a]は、本発明による、3方晶の圧電材料からなる第一の共振子の平面図である。
【0057】
[
図4b]は、[
図4a]に対応しており、第1の共振子の振動の有益なモード、および関連する運動量の変形を示す。
【0058】
[
図4c]は[
図4a]に対応し、水晶のような対称クラス32の3方晶の圧電結晶からなる共振子の場合に、有益なモードの振動を励振し検出することを可能にする電極を示す。
【0059】
[
図4d]は、[
図4c]に対応する第1の共振子の断面図である。
【0060】
[
図5a]は、本発明の2つの可能な改良が使用される場合の[
図4a]に対応する。
【0061】
[
図5b]は[
図5a]に対応しており、有用な振動モードの変形を示している。
【0062】
[
図6a]は、圧電材料からなる本発明による第2の共振子の平面図である。
【0063】
[
図6b]は[
図6a]に対応しており、第2の共振子の有用な振動モードの変形を示す。
【0064】
[
図6c]は、本発明の可能な改良が使用される場合の[
図6a]に対応する。
【0065】
[
図6d]は、[
図6c]の共振子の場合の[
図6b]に対応する。
【0066】
[
図7a]は本発明による第1のジャイロメータの斜視図であり、この第1のジャイロメータのパイロットモードに関連する変形を示す。
【0067】
[
図7b]は[
図7a]に対応するが、[
図7a]のパイロットモードから発生する変形を第1軸の周りの回転によって示す。
【0068】
[
図7c]は、第2の回転軸についての[
図7b]に対応する。
【0069】
[
図7d]は、第3の回転軸についての[
図7b]に対応する。
【0070】
[
図8a]は、第1のパイロットモードで生成される、本発明による第2のジャイロメータの変形を示す。
【0071】
[
図8b]は[
図8a]に対応し、第1のパイロットモードから開始して、第1の軸の周りの回転によって生成される第2のジャイロメータの第1のセンシングモードの変形を示す。
【0072】
[
図8c]は、第2のパイロットモードで生成される第2のジャイロメータの他の変形を示す。
【0073】
[
図8d]は[
図8b]に対応し、第2のパイロットモードから開始して、第2の軸の周りの回転によって生成される第2のジャイロメータの第2のセンシングモードの変形を示す。
【0074】
[
図9a]は第2のジャイロメータの斜視図であり、第2のジャイロメータの電極を示す。
【0075】
[
図9b]は、[
図9a]に対応する第2のジャイロメータの第1の断面図である。
【0076】
[
図9c]は、[
図9a]に対応する第2のジャイロメータの第2の断面図である。
【0077】
[
図10a]は、本発明による第1の力センサの平面図である。
【0078】
[
図10b]は[
図10a]に対応し、第1の力センサの振動の有用なモードに関連する変形を示す。
【0079】
[
図10c]は[
図10a]に対応し、軸方向の張力を受けたときの第一の力センサの静的変形を示す。
【0080】
[
図11a]は、本発明による第2の力センサの平面図である。
【0081】
[
図11b]は、[
図11a]に対応し、第2の力センサの振動の有用なモードに関連する変形を示す。
【0082】
[
図11c]は、[
図11a]に対応し、軸方向の張力を受けたときの第2の力センサの静的変形を示す。
〔発明の詳細な説明〕
明確にするために、これらの図に示される要素の寸法は、実際の寸法にも、実際の寸法比にも対応しない。特に、表される全ての共振子変形は、より良好な視認性のために誇張された程度まで拡大される。さらに、異なる図に示される同一の参照符号は、同一であるか、または同一の機能を有する要素または寸法を示す。
【0083】
ここで、本発明による第1の共振子を、
図4a~
図4dを参照して説明する。この第1の共振子は、参照符号Pfで示される支持部すなわち固定部と、振動部と、前記振動部を前記固定部Pfに接続する足Pdと、を備えている。好ましくは固定部Pf、振動部、および足Pdは、これら3つの共振子部分の材料が連続するように、平行な面を有するウエハに、化学エッチングによって同時に形成される。
【0084】
使用されるウエハは、ウエハの厚さがウエハの面に対して垂直に測定されるとき、数マイクロメートル~数ミリメートルの厚さを有し得る。[
図4a]~[
図4d]の共振子の振動部は、足Pdから延び、それらの間に0でない角度αを形成する2つの延伸部P
1およびP
2を備える。2つの延伸部P
1およびP
2は、足Pdの長手方向と一致する中心軸の両側に対して対称的に延在する。
【0085】
この中心軸は、ウエハの面に平行であり、その中間の厚さに位置する第1の対称平面と、ウエハの面に直交し、2つの延伸部P1およびP2が反射対称性を介して対応する第2の対称平面との共通部分に対応する。この明細書の残りの部分では、また米国特許第3,683,213号に記載されているような音叉共振子との類推によって、2つの延伸部P1およびP2は、ビームP1およびP2とも呼ばれる。本発明によれば、各ビームP1、P2に長手方向の溝が設けられ、それぞれ参照符号FL1、FL2によって示されている。これらの2つの長手方向の溝FL1およびFL2は、共振子の中心軸で交わる(合流する)。
【0086】
このようにして、添字iが1または2に等しい各ビームPiは、2つのブレードLiextおよびLiintから構成される。本明細書の全般的な部分において、ブレードL1extは、延伸部P1の一次セグメントと呼ばれ、ブレードL1intは延伸部P1の二次セグメントと呼ばれる。また、L2extは、延伸部P2の一次セグメントと呼ばれ、ブレードL2intは延伸部P2の二次セグメントと呼ばれる。したがって、2つのブレードL1extおよびL2extは、足Pdに接続され、延伸部P1およびP2のそれぞれの遠位端まで延在する。この遠位端において、ブレードL1extはL1intに接続され、L2extはL2intに接続される。したがって、各延伸部P1、P2は、中心軸とその遠位端との間で蛇行(曲がりくねった)形状(メアンダー(meander)形状)である。
【0087】
さらに、ブレードL
1intおよびL
2intは、これら2つのブレードL
1intおよびL
2intのそれぞれの近位端によって、中心軸で相互接続されている。ビームP
1の長手方向の溝FL
1と、ビームP
2の長手方向の溝FL
2もまた、2つのブレードL
1intおよびL
2intのそれぞれの近位端の接合部が、ブレードL
1extおよびL
2extから、ならびに足Pdから分離されるように、中心軸において交わっている(合流している)。[
図4b]に示すように、共振子の振動時に、ビームP
1及びP
2の遠位端が中心軸から反対方向に対称的に離れて動作すると、ブレードL
1ext及びL
2extはそれぞれ、共振子の足Pdと同じ側に向かって、斜めだが対称的に向く運動量(モーメント)MV
1及びMV
2を有し、ブレードL
1int及びL
2intの接合部(結合部、接続部)は、中心軸に平行であり、足Pdから離れる向きに運動量MV
12を有する。
【0088】
したがって、ブレードL1intおよびL2intはそれぞれ、共振子の足Pdと反対の側に向かって、斜めだが対称的に向く運動量を有する。そして、本発明により提案された最適化によれば、全てのブレードL1ext、L2ext、L1int、およびL2intの間の振動部における質量の分配は、これらの運動量に起因する足Pdの動作が0又はほぼ0になるように行われ得る。
【0089】
足Pdの動作のこのような欠如により、振動部から支持部Pfへの振動エネルギーの伝達が0または非常に低いため、共振子の品質係数は高くなり得る。振動部の4つのブレード間の質量の最適化された分配は、依然として中心軸に対して対称であり、2つのブレードL1extおよびL2extに対する共通の厚さeextを割り当てることによって得ることができる。ここで、共通の厚さeextは、eintで示される2つのブレードL1intおよびL2intの共通の厚さとは異なる。このような最適化が適用される場合、共振子は平衡状態にある(バランスが保たれている)と言われる。ブレードの厚さeextおよびeintは、ウエハの面に平行に測定される。
【0090】
図5aに共に示されているが、互いに独立して使用することができる本発明の2つの改良によれば、共振子の振動部は、第1の改良としての2つの慣性質量MI
1およびMI
2と、第2の改良としてのステムPcとを追加することができる。好ましくは、2つの慣性質量MI
1およびMI
2は、2つのビームP
1およびP
2の遠位端に位置し、同一である。2つの慣性質量MI
1およびMI
2はそれぞれ、その遠位端で対応するビームP
1、P
2を拡張することによって形成することができる。
【0091】
ステムPcはブレードL1intおよびL2intの近位端の結合部から、足Pdから離れる方向に、中心軸に平行に延び、結合部の上に重ね合わせた追加のブレードによって形成することができる。有利には、ステムPcもまた、中心軸に対して対称である。共振子の振動部に2つの慣性質量MI1およびMI2、ならびに/またはステムPcを追加することにより、さらなる自由度を備える共振子の平衡状態を得ることができる。
【0092】
[
図5b]は、共振子の振動中の同じ瞬間における慣性質量MI
1およびMI
2の動作とステムPcの動作とを示している。このとき、2つの慣性質量MI
1およびMI
2は、ステムPcの運動量成分とは反対の運動量成分を中心軸に沿って有する。慣性質量MI
1およびMI
2ならびにステムPcのこれらの運動量成分は、4つのブレードL
1ext、L
2ext、L
1intおよびL
2intの運動量成分と組み合わせて、本発明を適用することによって、ゼロまたは実質的にゼロである足Pdの動作をもたらす。
【0093】
このような共振子の平衡状態は、2つのビームP
1およびP
2が同一であるので、従来技術から知られており、[
図3a]に表されているように、平行なビームを有する音叉に対して自然に得られることに留意されたい。2つのビームP
1およびP
2の運動量は、再びそれぞれMV
1およびMV
2と示される。[
図3a]によるこのような共振子は、運動量MV
1およびMV
2がこの中心軸に対して垂直であるため、振動中に共振子の中心軸Xに平行に足Pdの動作を引き起こさない。
【0094】
さらに、2つのビームP1およびP2が反対向きに同期して動作する振動モードの場合、2つのビームの運動量MV1およびMV2は、ビームP1およびP2の2つが同一であれば補填される。このとき、音叉共振子は平衡状態である。したがって、ビームP1およびP2による足Pdへの振動エネルギーの伝達はないため、2つのビームP1およびP2の埋め込み端部におけるこの足の変形を無視する。この足の変形は、屈曲モーメントMf1およびMf2ならびにせん断力T1およびT2をもたらすものであり、2つのビームP1およびP2を分離する間隙が狭い場合には、なおさらである。
【0095】
しかしながら、上述のように、平行で対称なビームを有するこのような共振子は、三方晶クラス32の結晶性材料のウエハを化学的にエッチングするだけでは製造することができない。なぜなら、エッチングファセットが現れて、エッチングファセットが2つのビームP1とP2との間の形状の対称性を崩すためである。対称な形状を有する2つのビームを得るために、三方晶のクラス32の結晶性材料の軸Yc+およびYc-に平行である2つのビームP1およびP2と、結晶軸Xcに平行である共振子の中心軸とを有する共振子を製造することができる。
【0096】
しかしながら、そのとき音叉の2つのビームP
1およびP
2はもはや平行ではないため、共振子の平衡状態を実現することができなくなる。[
図4a]~[
図4d]の共振子において、本発明による長手方向の溝FL
1およびFL
2を使用することにより、共振子の平衡状態は、ビームP
1およびP
2が互いに平行ではないにもかかわらず、再度実現可能である。
【0097】
しかしながら、本発明者らは、平面Y-Zに対して対称に振動部を作成することにより、非平行なビームを有する
図3bの共振子の平衡状態を実現することが可能であることを指摘している。したがって、振動部は、三方晶のクラス32の結晶性材料の化学的エッチングから生じるような対称の形状を有することができる4つのビームP
1、P
2、P
3およびP
4を含む。そして、共振子の足Pdは、4つのビームが交差する場所に位置している。
【0098】
この場合、共振子は、2つの音叉が同調して(同相で)振動する振動モードに対して平衡状態である。しかしながら、[
図3c]に示されるように、このようにして得られる両頭音叉の共振子の構成は、より嵩張り、著しい小型化が必要とされる用途にはあまり適していない場合がある。このような用途では、[
図4a]~[
図4d]または[
図5a]~[
図5b]の共振子が好ましい場合がある。
【0099】
[
図4a]~[
図4d]または[
図5a]~[
図5b]の共振子の場合、2つのビームP
1とP
2との間の角度αは60°に等しい。このようにして、ビームP
1およびP
2を結晶軸Yc+およびYc-に平行に長手方向に配向させ、中心軸を結晶軸Xcに平行に配向し、ウエハの面を軸Zに対して垂直に配向することによって、三方晶のクラス32の結晶性物質からなる平行面を有するウエハを化学的にエッチングすることによって、対称的な実施品を得ることができる。
【0100】
例えば、ウエハの材料は、圧電性である単結晶のα-水晶とすることができる。この場合、共振子には[
図4c]および[
図4d]に示すように2つの電極を設けることができる。公知の方法では、これらの電極は、対称振動モードを励振するための手段として、およびこの同じモードで振動振幅を検出するための手段として、2つとも使用することができる。これらの2つの図における参照符号は、以下に列挙される意味を有する。
【0101】
グランドに接続可能な第1電極について:
PC1 共振子の支持部Pfによって支えられる第1電極のセグメント
el1-PC1 共振子の足Pdによって支えられる第1電極のセグメント
el1 ウエハの2つの面のうちの第1面上の、ブレードL1extの外縁に沿ってブレードL1extによって支えられる第1電極のセグメント
el3 ウエハの第1面上の、ブレードL1extの内縁に沿ってブレードL1extによって支えられる第1電極のセグメント
el4 ウエハの第1面上の、ブレードL1intの内縁に沿ってブレードL1intによって支えられる第1電極のセグメント
el6 ウエハの第1面上の、ブレードL1intの外縁に沿ってブレードL1intによって支えられる第1電極のセグメント
el7およびel9 ブレードL2intの場合、el6およびel4にそれぞれ対応する。
【0102】
el10およびel12 ブレードL2extの場合、el3およびel1にそれぞれ対応する。
【0103】
el1-6 ウエハの第1面上の、ビームP1の遠位端におけるセグメントel1とel6との間の電気的接続セグメント
el3-4 ウエハの第1面上の、ビームP1の遠位端におけるセグメントel3とel4との間の電気的接続セグメント
el7-9 ウエハの第1面上の、ビームP2の遠位端におけるセグメントel7とel9との間の電気的接続セグメント
el10-12 ビームP2の遠位端及びウエハの第1面上における、セグメントel10とel12との間の電気的接続セグメント
第1電極セグメントel6およびel7は、中心軸で相互接続され、セグメントel4およびel9も同様であり、セグメントel3およびel10も同様である。
【0104】
交流電圧Vの電源に接続可能な第2電極について:
PC2およびel2-PC2はそれぞれPC1およびel1-PC1に対応し、
また、第2電極の場合、
el2 ウエハの第1面上の、ブレードL1extによってその中央部に支えられる第2電極セグメント
el5、el8、およびel11は、それぞれブレードL1int、L2int、およびL2extについてのel2に対応している。
【0105】
el2-5 ウエハの第1面上の、ビームP1の遠位端におけるセグメントel2とel5との間の電気的接続セグメント
第2電極セグメントel5及びel8は中心軸で相互接続され、セグメントel2及びel11は中心軸で相互接続される。
【0106】
ウエハの第2面について、整数の添字nが1から12まで変化する、電極セグメントel10nは、セグメントelnにそれぞれ対応する。電極セグメントel10nは、ウエハの第1面について記載されたものと同様の電気的接続セグメントを備える。
最後に、ウエハの2つの面のそれぞれに位置する2つの電極の同じ電極のセグメントは、
共振子によって支えられる電気的接続によって、または外部の電気的接続によって、電気的に相互接続される。
【0107】
各電極セグメントは例えば、薄膜堆積技術を使用して堆積された、金(Au)などの導電材料のストリップから構成されてもよく、200μm(マイクロメートル)に等しい幅を有する。提供されたリストによれば、3つの平行なストリップが各ブレード面上に配置されており、これは、ウエハの面当たり全部で12の導電性ストリップ、すなわち、第1面上のel1~el12、および第2面上のel101~el112が配置されていることを意味している。
【0108】
[
図1a]を参照して既に説明したように、各ブレード面上の3つの導電性ストリップは、このブレードが結晶軸Yc+またはYc-に沿って長手方向に延在するとき、平面Xc-Ycに平行なブレードの屈曲振動に有効な励振および検出を可能にする。圧電結合の効率を高めるために、第1電極のストリップは比較的薄く、ストリップ幅はブレードL
1ext、L
2ext、L
1intおよびL
2intの厚さe
extまたはe
intの1/10~1/5であることが有利である。第2電極のストリップの場合、第2電極のストリップの幅は、第1電極のストリップの幅の2~5倍とすることができる。
【0109】
圧電効果による振動励振および検出のための電極の配置は、[
図4b]に示すように、2本のビームP
1およびP
2が反対向きに同期して動作する屈曲振動のモードに適している。しかしながら、他の電極構成も代替的に可能であり、例えば、ウエハの面に垂直なブレードの側面上に導電材料のストリップを堆積させることによって可能である。この場合、ストリップel
1およびel
101が、ブレードL
1extの側面上の単一のストリップによって置き換えられる。他のストリップL
1int、L
2intおよびL
2extによって別々に支えられる第1電極の複数のストリップ対についても同様である。その結果、各ブレードの側面は2つのストリップを支える。一方のストリップは、ブレードの側面の縁に近接し、他方のストリップは、一方のストリップが近接する縁とは反対の縁に近接する。2つのストリップの一方は第1電極に属し、他方のストリップは第2電極に属する。この他の電極構成は圧電結合のための[
図4c]~[
図4d]のものよりも効率的であるが、その製造におけるより大きな複雑さという犠牲を払っている。
【0110】
したがって、共振子は、共振子の支持部Pf上の第1電極のセグメントPC1の入力に接続された電子発振器ループと関連付けることができる。共振子は、共振子の支持部Pf上の第2電極のセグメントPC2の出力に接続された電子発振器ループと関連付けることができる。したがって、2つのビームP1およびP2が反対向きに同期して動作する振動モードは、2つの電極間の電子発振器ループによって印加される交流電圧Vによって励振される。この同じモードに対する共振子の振動振幅は、共振子の振動によって2つの電極において生成される電流によって検出される。この目的のために、電流検出回路を電子発振器ループに使用することができ、これは有利には高い入力インピーダンスを有する。
【0111】
ここで、本発明者らは、本発明によれば、[
図4a]~[
図4d]による共振子の、すなわち慣性質量MI
1、MI
2またはステムPcなしでの平衡化を可能にする複数の基準を提供する。2つのビームP
1及びP
2が反対向きに同期して対称的に動作する屈曲振動モードに対する共振子周波数Fは、以下の式(式1)を用いて近似することができる。
【0112】
【0113】
以下の意味に関して、複数の意味はすでに提供されている:
eint:ウエハ面に平行に測定され、メートルで表される、ブレードL1intおよびL2intの共通厚さ
eext:ウエハ面に平行に測定され、メートルで表される、ブレードL1extおよびL2extの共通厚さ
Lint:メートルで表される、ブレードL1intおよびL2intの共通長さ
Lext:メートルで表される、ブレードL1extおよびL2extの共通長さ
Fl:ウエハの面に平行に測定され、メートルで表される、延伸部P1およびP2の長手方向の溝FL1およびFL2の共通幅
E:単位平方メートルあたりのニュートン(N/m2)で表される、ウエハ材料のヤング率
ρ:単位立方メートルあたりのキログラム(kg/m3)で表される、ウエハ材料の密度
軸Xcに平行な運動量成分について足Pdでの補償を可能にするために、寸法eint、eext、Lint及びLextは、以下の条件(式2)を満たすことも必要である。
【0114】
【0115】
しかしながら、この条件は、ブレードL1ext、L2extの各々の縦横Lext/eextが、ブレードL1int、L2intの各々の縦横Lint/eintよりも大きいことを意味する。式2は、以下の形式(式3)で書くこともできる。
【0116】
【0117】
1-kの確実性は、商eext/eintのための第1の境界を与えることができる。この商は0.4よりも大きい。
【0118】
さらに、構成により、以下の式は、2つのビームP1とP2とを分離する角度αを介して、ブレードLextおよびLintの長さを結びつける(式4):
【0119】
【0120】
これらの最後の3つの式は、5つの未知数eext、eint、Lext、LintおよびFlを有しており、当業者が、意図される用途および技術的制約に従って、特に各用途において共振子に利用可能な空間に従って、共振子の寸法を選択することを可能にする。
【0121】
例えば、圧電性であるα-水晶のような対称クラス32の三方晶系の結晶ウエハを用いて、すでに説明したように化学エッチングによって得られる共振子の対称性を保証するために、2つのビームP1とP2との間の60°の角度αについて、ビームP1とP2のそれぞれが結晶軸Ycに平行に配向され、ビームP1とP2の一方はYc+に平行であり、他方はYc-に平行である。ブレードL1int及びL2intに共通し、3~10である縦横比Pint=Lint/eint、並びにブレードL1ext及びL2extに共通し、8~30である別の縦横比Pext=Lext/eext、並びに1~5である商eint/eextを有する平衡共振子の寸法を計算することができる。例えば、Lint~2.5mm(ミリメートル)、eint~0.24mm、Lext~3.3mm、eext~0.15mm、Fl~0.27mmは、32kH(キロヘルツ)に等しい共振子の振動数Fをもたらす。
【0122】
周波数Fが32kHzのこの同じ値は、Lint~4.95mm、eint~1.5mm、Lext~8.9mm、eext~1.7mm、およびFl~0.7mmでもまた得ることができる。これは本発明を使用するときに平衡状態の共振子を得るための寸法可能性の範囲を示す。
【0123】
屈曲振動を対象とする共振子の場合、共振子の固有品質係数は、C.Zenerによる論文「Internal friction in solids」≫(Physical Review 52、August 1937、pp.230-235)で理論化されているように、振動中に圧縮され伸張される各ブレードの繊維間の熱交換によって生成される熱弾性損失によって制限される。水晶の場合、および数キロヘルツから数百キロヘルツの間の周波数で屈曲振動を有する単純なビームの場合、熱弾性品質係数は、振動厚さの二乗によって乗じられた共振子の周波数Fに比例し、Qthermoelastic(水晶)∝F.e2.である。ケイ素の場合、および水晶の場合と同じ周波数間隔の場合、この熱弾性係数は、振動厚さeの二乗で割った共振子の周波数Fに比例し、Qthermoelastic(ケイ素)∝F/e2である。熱弾性品質係数は、これらの2つの結晶の間で、共振子に対して非常に異なった寸法の決定の原因となる。
【0124】
したがって、水晶の場合、及び共振子のために所望される周波数安定性能が望まれる場合、厚さeintおよびeextの有意な値に対応する寸法決定が好ましく、逆にケイ素の場合は好ましくない。
【0125】
[
図4a]による共振子構成と比べて、ステムPcを追加することは、振動によって軸Xcに沿って発生する運動量が修正され、ステムPcの運動量成分がブレードL
1intおよびL
2intの運動量成分に追加される。したがって、共振子の平衡状態をもたらす寸法決定に対する可能性を増大させることができる。特に、ステムPcの追加は、ステムを有しない[
図4a]の構成と比べて、ブレードL
1extおよびL
2extの厚さe
extを増加させることを可能にする。
【0126】
また、[
図4a]による共振子の構成と比べて、ビームP
1およびP
2の遠位端に慣性質量MI
1およびMI
2を加えることにより、振動部のすべての部分間の運動量の分布を修正することもできる。特に、慣性質量MI
1およびMI
2の追加は、ブレードL
1intおよびL
2intの厚さe
intを、それらの長さL
intの等しい値に対して増加させることを可能にする。
【0127】
[
図6a]または[
図6c]の共振子は、[
図5a]の共振子に対応するが、角度αは60°ではなく180°に等しく、[
図6a]についてはステムを有さず、[
図6c]についてはステムPcを有する。それから、ブレードL
extおよびL
intの長さは等しくなり、ステムPcを有さず、慣性質量MI
1およびMI
2を有さない共振子のために既に提供された共振子の平衡状態のための式3の条件は、もはや満たされ得ない。運動量を補償するために、慣性質量MI
1およびMI
2は、角度αが180°に等しいときに必須である。
【0128】
共振子がステムを持たない場合の[
図6b]、または共振子がステムPcを含む場合の[
図6d]に示される振動のモードは主として、上記の2つのブレードL
1intおよびL
2intの結合体であるブレードの継続的な屈曲振動に対応する。上記の2つのブレードL
1intおよびL
2intの結合体であるブレードは、2つのブレードL
1intおよびL
2intの長さの合計に等しい全長を有し、厚さe
intを有する。
【0129】
この振動のモードに対する共振子の周波数Fは、以下の式(式5)によって近似することができる:
【0130】
【0131】
ここで:
Lint:2つの慣性質量MI1とMI2の間で測定され、メートルで表される全体のブレード長さ
eint:足Pdに対向するブレードの幅であって、ウエハの面に平行に測定され、メートルで表される
Lc:ウエハの面に平行に測定され、メートルで表されるステムPcの長さ
ec:ウエハの面に平行に測定され、メートルで表されるステムPcの幅
E: 単位平方メートルあたりのニュートン(N/m2)で表される、ウエハ材料のヤング率
ρ: 単位立方メートルあたりのキログラム(kg/m3)で表される、ウエハ材料の密度
軸Xcに沿った運動量を補償することを可能にするために、寸法eint、eext、Lint、eMi、LMi、Lcおよびecが、以下の二重不等式(式6)を満たすことも必要である:
【0132】
【0133】
以下の追加的な意味を有する。
【0134】
eext:ウエハの面に平行に測定され、メートル単位で表される足Pdに接続されるブレードの幅
eMi:ブレードに平行に測定され、メートル単位で表される慣性質量MI1およびMI2の共通幅
LMi:軸Xcに平行に測定され、メートルで表される慣性質量MI1およびMI2の共通長さ
J: 慣性質量MI1およびMI2の単位表面積当たりの慣性運動量(式7)
【0135】
【0136】
式6の二重不等式は、[
図6a]~[
図6d]の共振子の寸法を決定することを可能にする。このため、[
図6a]~[
図6d]の共振子は、これらの共振子の所望の特性による最初に選択される特定の値に基づいて、平衡化される。
【0137】
上記で提供された基準を使用して、上記で示された共振子の各々についての寸法決定は、有限要素計算などの数値シミュレーションを使用して継続され、これらの共振子のより正確な平衡化を実現することが可能である。
【0138】
上述のような共振子を使用して、1つ以上の感応軸を有するジャイロメータを形成することができる。ジャイロメータの感応軸は、ジャイロメータがこの軸周りの回転速度を測定することを可能にする回転軸である。軸X、Y、およびZに沿ってそれぞれ回転速度成分を測定することを可能にする、3つの感応軸を有するジャイロメータを得るために、共振器の角度αは、0°でも180°でもないことが必要である。
【0139】
角度αが60°に等しいこのような共振子が好ましい。共振子の回転中、コリオリ加速度は、パイロットモードのこのブレードの変位に対して垂直である、共振子の各ブレードの追加の変位をもたらす。
【0140】
[
図7a]はαが60°に等しい本発明による共振子について、ビームP
1およびP
2、並びにステムPcの同時の変位を想起させるものである。また、このときの電極によって励振される振動のモード、すなわちパイロットモードは、2つのビームP
1およびP
2が、音叉のように、ウエハの面に対して平行に反対向きに同期して動作するモードである。
【0141】
MV
1、MV
2,およびMV
cは、ビームP
1及びP
2並びにステムPcのそれぞれの運動量を示している。[
図7b]は回転速度Ω
yを有するX軸周りでの回転よって発生するΓ
Cで表される、対応するコリオリ加速度を示している。[
図7c]は回転速度Ω
yを有するy軸周りでの回転よって発生するコリオリ加速度を示している。[
図7d]は回転速度Ω
zを有するz軸周りでの回転よって発生するコリオリ加速度を示している。
【0142】
これらのコリオリ加速度は軸XおよびY周りの回転のために、ウエハに対して垂直であり、円によって囲まれたドットのシンボルは読者に向けられたコリオリ加速度を表し、円によって囲まれている十字は、読者の視線の方向に配光されたコリオリ加速度を表す。
【0143】
しかしながら、これらのコリオリ加速度から生じる慣性力は、足Pdにおいて補償しないため、共振子の足Pdを通過して生じる振動エネルギーの損失を制限するために、追加の手段を提供することが好ましい。
【0144】
例えば、本出願人によって出願された米国特許第6,414,416号に記載されているようなデカップリング構造は、軸Xである単一の感応軸を有するジャイロメータに使用することができる([
図7b]参照)。なぜなら、このデカップリング構造は、その足Pdを介した共振子の取り付け部分へのねじりモーメントの伝達を低減または回避するのに有効であるからである。
【0145】
軸Y([
図7c]参照)である1つの感応軸のみを有するジャイロメータの場合、回転速度Ω
Yによって[
図7a]のパイロットモードに結合される振動のモードは、2つのビームP
1およびP
2が同相において面外屈曲を受け、ステムPcがビームP
1およびP
2とは反対の位相に面外屈曲を受けるモードである。しかしながら、結果として生じる力は共振子の足Pdでは補償されず、残留運動量は、その足Pdを介して共振子の取り付け部分に伝達される。[
図7a]のパイロットモードから軸Z([
図7d]参照)の周りに回転中に生成される力は、ウエハに対して平行であるが、補償しない。
【0146】
共振子の取り付け部分Pfに伝達される力および運動量の補償を実現するために、共通の足Pdを有し、互いに離れて面しており、それぞれが[
図7a]の振動部に類似する2つの振動部分を備える本発明によって新しいジャイロメータが提案される。2つの振動部は、同じウエハから製造されるため、それらの材料は足Pdを横断して連続している。[
図8a]-[
図8d]に示されている、このようなジャイロメータは、軸X周り、または軸Y周りの回転を測定するのに有効である。
【0147】
パイロットモードと同様、2つの振動の励振モードが実行可能である。2つの振動の励振モードの各々は、2重共振子構造によって与えられた平衡を維持する。反同期モード(位相対向モード):[
図8a]に示すように、振動部の一方の2つのビームP
1およびP
2は、他方の振動部のビームP
3およびP
4対して反対向きに同期して、互いに離れる方向および互いに向かう方向に動作する。同期モード(同相モード):[
図8c]に示すように、振動部の一方の2つのビームP
1およびP
2は、他方の振動部のビームP
3およびP
4と同期して(同じ位相で)、互いに離れる方向および互いに向かう方向に動作する。これらの2つの図において、各MV標示は、ビームまたは重ね合わされるステムの運動量を示す。
【0148】
[
図8b]は、パイロットモードとして使用される[
図8a]の振動の励振モードに対するコリオリ加速度Γ
Cから生じる慣性力の補償を示す。[
図8d]は、パイロットモードとして使用される[
図8c]の振動の励振モードに対するコリオリ加速度Γ
Cから生じる慣性力の補償を示す。これら2つの励振モードのうちの1つは、2つの振動部上の電極の構成を介してパイロットモードとして選択される。
【0149】
例えば、圧電水晶または同じ対称クラスの任意の他の圧電結晶の場合、ジャイロメータはヘッド・ツー・テール(頭から足)に位置する2つの振動部から構成することができる。これらのビームが結晶軸Yc+およびYc-に平行であるように、2つのビームを有する各振動部は、2つの振動部の間に60°の角度を形成する。[
図9a]-[
図9c]は、2つの振動部分のすべてのセグメントの面上に配置された導電材料のストリップの一式を示す。
【0150】
2つの振動部は、それぞれ文字AおよびBで示される。振動部Aについては[
図9b]の断面図に対応し、振動部Bについては[
図9c]の断面図に対応する。
【0151】
感応軸が結晶軸Xcに平行な軸Xであるジャイロメータの場合、パイロットモードは[
図8a]に示すように、2つの共振子が反対向きに同期して振動するものである。それからパイロットモードとセンシングモードとの間の静電結合を制限するために、本出願人によって出願された米国特許出願第2012/279303号の教示を適用することが可能である。
【0152】
これらの教示によれば、ストリップel3-A、el103-A、el4-A、el104-A、el9-A、el109-A、el10-A、el110-A、el3-B、el103-B、el4-B、el104-B、el9-B、el110-B、およびel110-Bは、交流電圧V源にそれらを電気的に接続することによってパイロットモードを励振することに使用される。パイロットモードの振幅を検出するために、el2-A、el102-A、el5-A、el105-A、el8-A、el108-A、el11-A、およびel111-Aが使用される。
【0153】
このように、ストリップel1-A、el101-A、el6-A、el106-A、el7-A、el107-A、el12-A、el112-A、el1-B、el101-B、el6-B、el106-B、el7-B、el107-B、el12-B、およびel112-Bは、X軸の周りの回転によって生成される運動を検出することに使用することができる。ただし、一方ではストリップel1-A、el6-A、el7-A、el12-A、el1-B、el6-B、el7-B、およびel12-Bを電流検出器の一部である差動増幅器の入力端子に接続し、他方ではストリップel101-A、el106-A、el107-A、el112-A、el101-B、el106-B、el107-B、およびel112-Bを電流検出器の一部である差動増幅器の入力端子に接続する。
【0154】
感応軸が、結晶の軸Xcに垂直であり、かつ軸Xc、Y
C+、およびY
C-の共通の面にあるY軸であるジャイロメータのパイロットモードは、
図8cに示されるような振動が同期する2つの共振子によるものである。そして、el
1-A、el
101-A、el
6-A、el
106-A、el
7-A、el
107-A、el
12-A、el
112-A、el
1-B、el
101-B、el
6-B、el
106-B、el
7-B、el
107-B、el
12-B、およびel
112-Bは、交流電圧V源に、それらを接続することによって、このパイロットモードを励振することを可能にする。また、ストリップel
2-A、el
102-A、el
5-A、el
105-A、el
8-A、el
108-A、el
11-A、el
111-A、el
2-B、el
102-B、el
5-B、el
105-B、el
8-B、el
108-B、el
11-B、およびel
111-Bは、このパイロットモードの振幅を検出することに使用される。
【0155】
この場合、ストリップel3-A、el103-A、el4-A、el104-A、el9-A、el109-A、el10-A、el110-A、el3-B、el103-B、el4-B、el104-B、el9-B、el109-B、el10-B、およびel110-Bは、Y軸の周りの回転によって生成される運動を検出することに使用することができる。ただし、一方ではストリップel3-A、el4-A、el9-A、el10-A、el103-B、el104-B、el10-B、およびel110-Bを電流検出器の一部である差動増幅器の入力端子に接続し、他方ではストリップel103-A、el104-A、el109-A、el110-A、el3-B、el4-B、el9-B、およびel10-Bを電流検出器の一部である差動増幅器の入力端子に接続する。
【0156】
本発明に基づく共振子の別の用途は、力センサとしての実施である。[
図10a]に示されるように、力センサは、2つの同一の振動部に基づいている。該2つの振動部は、同じウエハで製造されており、また、互いに反対に向けられているが、それらのステムPcによって接合されている。る2つの振動部のそれぞれは、個別に平衡が取れる大きさである。2つの振動部の一方のビームP
1及びP
2はそれらの間に60°の角度をなし、2つの振動部の他方の振動部のビームP
3及びP
4は、それらの間に60°の角度をなす。
【0157】
[
図10b]に示されるように、2つの振動部が反対向きに同期して振動する振動モードについて、この2つの振動部の結合により、個々の振動部のそれぞれの足によって形成される2つの端部が残留運動なしまたはほとんど残留運動なしである二重共振子を得ることが可能になる。このセンサが軸方向の張力を受けると、二重共振子に加えられる静的変形は、その屈曲慣性を修正する。[
図10c]は、軸方向の張力Tの静的変形を示している。
【0158】
このような力センサが水晶で構成されている場合、[
図10a]-[
図10c]に示すように60°に等しい角度α、または[
図11a]-[
図11c]に示すように180°に等しい角度αのいずれかに対応する2つの構成が可能である。
【0159】
したがって、[
図11a]は、2つの振動部を有する構成を示す。2つの振動部の一方ではビームP
1およびP
2がそれらの間に180°の角度を形成し、他方ではP
3およびP
4がそれらの間に180°の角度を形成する。[
図11b]は、2つの振動部が同相で振動する所定の振動モードについて、[
図11a]の二重共振子構造の瞬間的な変形を示している。[
図11c]は、軸方向の引力Tを受けたときに、同じ力センサの静的変形を示している。
【0160】
角度αが180°に等しい場合について、軸方向の張力Tによって引き起される、考慮される振動のモードの相対周波数Fの変動は、(式8)に比例する:
【0161】
【0162】
式8を使用して、当業者は、各用途、および用途に適した測定感度による、力センサの寸法を決定することができる。
【0163】
本発明は前述の利点の少なくとも複数を保持しながら、上記で詳細に説明された実施形態の二次的態様を修正することによって再現され得ることが理解される。特に、ウエハの材料は、必ずしも圧電単結晶材料である必要はない。例えば、ウエハは単結晶または多結晶シリコン製とすることができ、もしくはウエハは圧電セラミック、または金属と圧電セラミックとの組合せとすることができる。
【0164】
振動による励振および検出の手段は、各材料により適合しなければならない。例えば、静電力、磁力を用いて、または光熱効果などを実施することによって励振を実現することができる。また、移動している共振子の部分と静止している部分との間に形成されるコンデンサの静電容量の変動を測定することによって、もしくはピエゾ抵抗効果を使用することによって、または光干渉法などを用いて測定することによって、検出を実現することができる。最後に、前述した全ての数値は例示の目的のためにのみ提供されており、考慮される用途により変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【
図1a】すでに議論されているが、圧電性であり、α-水晶などの対称クラス32の三方晶系に属するビーム材料の場合、平面内のビームの屈曲振動の励振および検出に使用することができる、圧電結合に適した第1の可能な電極構成を想起させるものである。
【
図1b】すでに議論されているが、面外振動の励振および検出に使用することができる第2の可能な電極構成の
図1aに対応する。
【
図2a】すでに議論されているが、三方晶の対称性を想起させるものである。
【
図2b】すでに議論されているが、従来技術から知られており、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸との混合物を用いて水晶を化学的にエッチングすることによって得られた音叉の形態で共振子を示している。
図2bの音叉は、音叉の2つのビーム(歯)がY軸に平行であるときに生じる対称性の崩れを伴う。
【
図3a】従来技術から知られているように、平行なビームを有する音叉に関係する運動量を示す。
【
図3b】非平行なビームを有する音叉の
図3aに対応する。
【
図3c】各音叉内の不均衡な運動量を全体的に補償することを可能にする、非平行な歯を有する両端音叉の
図3bに対応する。
【
図4a】本発明による、3方晶の圧電材料からなる第一の共振子の平面図である。
【
図4b】
図4aに対応しており、第1の共振子の振動の有益なモード、および関連する運動量の変形を示す。
【
図4c】
図4aに対応し、水晶のような対称クラス32の3方晶の圧電結晶からなる共振子の場合に、有益なモードの振動を励振し検出することを可能にする電極を示す。
【
図4d】
図4cに対応する第1の共振子の断面図である。
【
図5a】本発明の2つの可能な改良が使用される場合の
図4aに対応する。
【
図5b】
図5aに対応しており、有用な振動モードの変形を示している。
【
図6a】圧電材料からなる本発明による第2の共振子の平面図である。
【
図6b】
図6aに対応しており、第2の共振子の有用な振動モードの変形を示す。
【
図6c】本発明の可能な改良が使用される場合の
図6aに対応する。
【
図7a】本発明による第1のジャイロメータの斜視図であり、この第1のジャイロメータのパイロットモードに関連する変形を示す。
【
図7b】
図7aに対応するが、
図7aのパイロットモードから発生する変形を第1の軸の周りの回転によって示す。
【
図7c】第2の回転軸についての
図7bに対応する。
【
図7d】第3の回転軸についての
図7bに対応する。
【
図8a】第1のパイロットモードで生成される、本発明による第2のジャイロメータの変形を示す。
【
図8b】
図8aに対応し、第1のパイロットモードから開始して、第1の軸の周りの回転によって生成される第2のジャイロメータの第1のセンシングモードの変形を示す。
【
図8c】第2のパイロットモードで生成される第2のジャイロメータの他の変形を示す。
【
図8d】
図8bに対応し、第2のパイロットモードから開始して、第2の軸の周りの回転によって生成される第2のジャイロメータの第2のセンシングモードの変形を示す。
【
図9a】第2のジャイロメータの斜視図であり、第2のジャイロメータの電極を示す。
【
図9b】
図9aに対応する第2のジャイロメータの第1の断面図である。
【
図9c】
図9aに対応する第2のジャイロメータの第2の断面図である。
【
図10a】本発明による第1の力センサの平面図である。
【
図10b】
図10aに対応し、第1の力センサの振動の有用なモードに関連する変形を示す。
【
図10c】
図10aに対応し、軸方向の張力を受けたときの第一の力センサの静的変形を示す。
【
図11a】本発明による第2の力センサの平面図である。
【
図11b】
図11aに対応し、第2の力センサの振動の有用なモードに関連する変形を示す。
【
図11c】
図11aに対応し、軸方向の張力を受けたときの第2の力センサの静的変形を示す。
【国際調査報告】