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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】テクスチャー加工中間層
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240228BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555493
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022019235
(87)【国際公開番号】W WO2022192175
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/200,525
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ヤコボン,ビンセント・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジュン
【テーマコード(参考)】
4F209
4G061
【Fターム(参考)】
4F209AA19
4F209AC03
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG03
4F209AG05
4F209AH17
4F209AH46
4F209PA03
4F209PB02
4F209PC03
4F209PC06
4F209PG12
4F209PJ09
4F209PN04
4F209PN06
4F209PW43
4G061AA03
4G061AA13
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、ある特定の実施形態において、相対的に低いプロファイルと、負のピーク(谷)よりも有意により多い表面ピークの総数を有し、エンボス加工PVB中間層で一般に見出されるよりも、わずかにより離れたピーク間隔を有する、制御された、崩壊可能な表面粗さプロファイル(熱への暴露で)とを有することを特徴とする表面トポグラフィーを、少なくとも1つの表面に有するPVB中間層シートを提供する。したがって、本発明のPVB中間層シートは、他の表面設計と比較される場合、ガラス表面への、極めて良好な最初の接触およびPVBの接着をもたらし、その一方で、従来のガラス積層法で第1のニップの後に残留する空気をほぼ残さない。本発明のPVB中間層シートはまた、温度および方法の変化により耐えることができる、広い脱気ウィンドウも示す。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの、外側のテクスチャー加工表面を有するポリ(ビニルアセタール)ポリマーシートであって、前記テクスチャー加工表面が:
a.ISO13565-2によって求められるMr2/Mr1比約3~約10;
b.表面粗さRz約20μm~約60μm;
c.ISO25178によって求められるSdr値約0.05以上、および約0.414未満;
d.Rsm値約230μm~約600μm;ならびに
e.100℃での表面保持率の値(Rz2/Rz1)85%未満
を特徴とする、ポリ(ビニルアセタール)ポリマーシート。
【請求項2】
前記表面粗さRzが約25μm~約50μmである、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記Mr2/Mr1比が約4~約10である、請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
前記Mr2/Mr1比が約4~約9である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
前記Mr2/Mr1比が約5~約9である、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記シートが、0よりも大きく、約0.9未満であるStr値をさらに特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
前記Str値が、約0.15よりも大きく、約0.9未満である、請求項6に記載のシート。
【請求項8】
前記Str値が、約0.4よりも大きく、約0.7未満である、請求項6に記載のシート。
【請求項9】
ISO25178によって求められる前記Sdr値が、約0.05よりも大きいが、約0.25未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載のシート。
【請求項10】
ISO25178によって求められる前記Sdr値が、約0.1~約0.2である、請求項9に記載のシート。
【請求項11】
前記Rsm値が、約350μm~約450μmである、請求項1から10のいずれか一項に記載のシート。
【請求項12】
前記ポリマーシートが、ポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項13】
前記ポリマーシートが、多層ポリマーシートである、請求項1から12のいずれか一項に記載のシート。
【請求項14】
2枚のガラスパネルおよび前記パネル間に配置された、請求項1から13のいずれか一項に記載のテクスチャー加工ポリマーシートを脱気し、積層する方法であって、
a.前記テクスチャー加工ポリマーシートをガラスのシートに取り付け、第2のガラス片をその上に取り付けて、ガラス/ポリマーシート/ガラス構造を形成するステップであり、前記ガラスまたは前記構造を温度約40℃~80℃に加熱して、合わせ構造をもたらす、ステップ;続いて
b.ニップローラーを通して前記合わせ構造を加工処理するステップであり、最初の圧縮を、前記合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラーによって実施し、それによって、約80%よりも高い光透過率の値をもたらす、ステップ;
c.続いて、ピークオートクレーブ処理温度125℃~155℃、ピーク圧力275kPa(40psi)~1378kPa(200psi)、およびピーク保持時間20分~60分を使用して前記積層体をオートクレーブ処理するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
2枚のガラスパネルおよび請求項1から13のいずれか一項に記載のテクスチャー加工ポリマーシートを脱気し、積層する方法であって、前記テクスチャー加工ポリマーシートが、前記ガラスパネル間に配置され、前記方法が、
a.前記テクスチャー加工ポリマーシートをガラスのシートに取り付け、第2のガラス片をその上に取り付けて、ガラス/ポリマーシート/ガラス構造を形成するステップであり、前記ガラスまたは前記構造を温度約30℃~70℃に加熱して、合わせ構造をもたらす、ステップ;続いて
b.ニップローラーを通して前記合わせ構造を加工処理するステップであり、最初の圧縮を、前記合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラー圧によって実施する、ステップ;
c.続いて、前記積層体を温度約90℃~約110℃に加熱するステップ;
d.続いて、ニップローラーを通して前記合わせ構造を再度加工処理するステップであり、最初の圧縮を、前記合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラー圧によって実施し、それによって、約80%よりも高い光透過率の値を有する積層構造をもたらす、ステップ
を含む、方法。
【請求項16】
前記光透過率の値が、85%よりも高い、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、安全ガラス用途において有用なポリマー中間層の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリ(ビニルブチラール)(PVB)は、光透過性積層体、例えば、安全ガラスまたは建築用ガラスまたはポリマー積層体において中間層として使用され得るポリマーシートの製造で、一般的に使用されるポリ(ビニルアセタール)である。安全ガラスは、典型的には、2枚の板ガラスの間に配置されたポリ(ビニルブチラール)シートを含む透明積層体を指す。しばしば、安全ガラスを使用して建築用開口部および自動車開口部における透明バリアを提供する。その主な機能は、例えば、物体からの衝撃によって引き起こされるエネルギーを、開口部を通って貫通することなく吸収することである。
【0003】
[0003]安全ガラスは、ガラスの2層およびポリ(ビニルブチラール)などのプラスチック中間層を組み立ててプリプレスとし、接着してプレ積層体とし、光学的に透明な積層体へと仕上げる方法によって形成され得る。組み立て段階は、ガラス片を置くこと、ポリ(ビニルブチラール)シートをそのガラスに重ね合わせること、第2のガラス片をポリ(ビニルブチラール)シートに置くこと、余分なポリ(ビニルブチラール)をガラス層の周縁まで切り取ることを含むことができる。
【0004】
[0004]当分野で既知の技術を使用して、PVB中間層をガラスの間に積層することができる。典型的なガラス積層法は、以下のステップ:(1)2つの基材(例えば、ガラス)および中間層を組み立てるステップ;(2)短期間の赤外(IR)放射または対流手段によって組立品を加熱するステップ;(3)第1の脱気中に、組立品を圧力ニップロール中に通すステップ;(4)組立品を、約50℃~約120℃まで2回目の加熱をして、中間層の周縁を封止するのに十分な、一時的な接着を組立品に与えるステップ;(5)中間層の周縁をさらに封止し、さらに扱い易くさせるために、組立品を第2の圧力ニップロール中に通すステップ;ならびに(6)約30~90分の間、135℃から150℃までの間の温度、および1034kPag(150psig)から1378kPag(200psig)までの間の圧力で組立品をオートクレーブ処理するステップを含む。当分野で既知の、かつ商業的に実施される、中間層-ガラス界面の脱気(ステップ2~5)において使用される他の手段には、空気を取り除くために真空が利用される、真空バッグ法および真空リング法が挙げられる。代替的な積層法には、初めに組立品を脱気し、続いて、十分に高い温度および真空で積層体を仕上げる、真空ラミネーターの使用が含まれる。
【0005】
[0005]真空を用いず、相対的に短いニップ(またはスクイズ)ロール法のみを利用する積層システムは、場合により、最終積層ガラス製品で視認される、有意な欠陥をもたらすことがある。高温で核を成し、拡大する「アイスフラワー」と称される、これらの望ましくない欠陥のうちの1つは、閉じ込められた空気によって形成される。したがって、こうした短縮された方法において、閉じ込められた空気を減らし、または排除し、したがって、こうした欠陥の発生を減らし、または排除する、改善された材料および方法の必要性が存在する。
【0006】
[0006]アイスフラワー欠陥は、滅多に生じないものであるが、風防ガラスが、かなりより価値のある構造の一部である場合、車両に装着された後まで通常見つからないゆえに、ラミネーターおよび自動車のOEMに対して費用のかかる欠陥である。アイスフラワー欠陥は、多層(共押出成形または積層)PVBシートにおいて認められる。それは、不良な脱気ゆえに生じると考えられ、整合した2枚の風防安全ガラスの不整合な曲げギャップの応力によって増大されるものの、他の原因または因子もまたその形成に寄与し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本発明は、ある特定の実施形態において、相対的に低いプロファイルと、負のピーク(谷)よりも有意により多い表面ピークの総数を有し、エンボス加工PVB中間層で一般に見出されるよりも、わずかにより離れたピーク間隔を有する、制御された、崩壊可能な表面粗さプロファイル(熱への暴露で)とを有することを特徴とする表面トポグラフィーを、少なくとも1つの表面に有するPVB中間層シートを提供する。したがって、本発明のPVB中間層シートは、他の表面設計と比較される場合、ガラス表面への、極めて良好な最初の接触およびPVBの接着をもたらし、その一方で、従来のガラス積層法で第1のニップの後に残留する空気をほぼ残さない。本発明のPVB中間層シートは、積層ガラスで使用される場合、温度および方法の変化により耐えることができる、広い脱気ウィンドウも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】[0008]装着された風防ガラスに形成される「アイスフラワー」として既知の欠陥の描写を示す図である。
図2】[0009]テクスチャー加工表面を有する、本発明のポリ(ビニルアセタール)シートについて、ISO13565-2によるアボット・ファイアストン曲線分析の、材料の曲線出力を示す図である。
図3】[0010]押出成形工程中のダイリップに存在するポリマーメルトのメルトフラクチャーによって形成される、ランダムな粗い表面を有するポリ(ビニルアセタール)シートについて、ISO13565-2によるアボット・ファイアストン曲線分析の比較材料の曲線出力を示す図である。
図4】[0011]図2の曲線の最良適合線の描写を示す図である。
図5】[0012]図3の曲線の最良適合線の描写を示す図である。
図6】[0013]図2のシートの粗さプロファイルの描写を示す図である。
図7】[0014]図3のシートの粗さプロファイルの描写を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0015]テクスチャー加工表面の様々な特徴を説明することができる、多様な表面計測パラメータがある。生プロファイルを、表面について接触手段または非接触手段によって生じることができる。次いで、プロファイルは、通常フィルターをかけられて、ノイズを取り除き、さらなる分析のために粗さ領域および波形領域を画定する。次いで、これらのプロファイルは、比較用に特性決定するために、表面粗さ、コア粗さ、波形、またはモチーフの種類のパラメータが定められた、より小さなサブグループに分析され、グループ化される。
【0010】
[0016]一部の重要な表面粗さパラメータには、とりわけ、粗さ高さ(Rz)および粗さ平均間隔(Rsm)が挙げられる。他は、アボット-ファイアストン曲線またはベアリングエリア曲線(Bearing Area Curve)または材料比率曲線(material ratio curve)として既知であるコア粗さパラメータであり、それらから、テクスチャー加工平面表面の二次元形状または三次元形状を説明する、多くのこうしたパラメータが誘導され得る(例えば、こうした形状およびパラメータを詳細に説明するDIN EN ISO13565-1およびDIN EN ISO13565-2:1998参照)。
【0011】
[0017]Rパラメータ(Rz、Rsm、Mr1、Mr2)表面測定に使用される主要な装置は、Mahr Perthometer S3P v2.5(「S3P」)である。それは、標準パラメータの評価を可能にする針接触型機器である。測定装置は、駆動装置(PGK)、プローブ(RFHTB)、およびLED出力画面を備える。S3P装置パラメータの評価は、一般にDIN4776標準によって行われる。プロファイルの二次元画像は、表面構造にわたる針先の動きを介して生成される。この動きは、デジタル値に変換され、軌跡長にわたって均一に分布した約8000個の値を含有するD-プロファイルに初めに保管される。これらの測定について、2.5mmカットオフ長を含む17.5mmの軌跡長を使用した(DIN4776に従って)。
【0012】
[0018]三次元パラメータであるSパラメータは、1/4’’×1/4’’スポットサイズのキーエンスバイオレットレーザー光顕微鏡によって、ISO25178によって求められた。これらのパラメータは、S3P表面形状測定装置によって測定されない。
【0013】
[0019]第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのテクスチャー加工表面を有するポリ(ビニルアセタール)シートであって、上記表面が:
a.ISO13565-2によって求められるMr2/Mr1比約3~約10;
b.表面粗さRz約20μm~約60μm;
c.ISO25178によって求められるSdr値約0.1以上、および約0.414未満;
d.Rsm値約230μm~約600μm;ならびに
e.100℃での表面保持率の値(Rz2/Rz1)85%未満
を特徴とする、ポリ(ビニルアセタール)シートを提供する。
【0014】
[0020]一実施形態において、表面粗さRzは、Mahr Perthometer S3P v2.5機器によって測定される。Rzは、3つの異なる測定値を平均することによって求められる。一実施形態において、表面粗さRzは約25μm~約50μmである。
【0015】
[0021]一実施形態において、ISO13565-2に従って測定されるように、Mr2/Mr1比は約4~約10であり、別の実施形態において、約4~約9または約5~9である。
【0016】
[0022]別の実施形態において、テクスチャー加工ポリ(ビニルアセタール)シートは、ISO25178によって求められる、ゼロよりも大きいが、約0.9未満(単位なし)、約0.15~約0.9、または約0.4~約0.7であるStr値を有することをさらに特徴とし得る。
【0017】
[0023]一実施形態において、ポリ(ビニルアセタール)はポリ(ビニルブチラール)である。
【0018】
[0024]図に戻ると、図1は、ガラス-中間層積層体の形成中の不完全な脱気に起因する、装着された風防ガラスにおいて形成される「アイスフラワー」として既知の欠陥の描写である。アイスフラワーをシミュレートする方法の説明は、以下に記載され、提供される。
【0019】
[0025]図2は、テクスチャー加工表面を有する、本発明のポリ(ビニルアセタール)シートについて、ISO13565-2によるアボット・ファイアストン曲線分析の材料の曲線出力である。x軸は、パーセントとしてプロットされ、y軸は、交点からの、ミクロン(μm)単位の距離としてプロットされる。
【0020】
[0026]図3は、押出成形工程中のダイリップに存在するポリマーメルトのメルトフラクチャーによって形成される、ランダムな粗い表面を有するポリ(ビニルアセタール)シートについて、ISO13565-2によるアボット・ファイアストン曲線分析の比較材料の曲線出力である。x軸はパーセントとしてプロットされ、y軸は、交点からの、ミクロン(μm)単位の距離としてプロットされる。図3のシートは、特許請求の範囲外である。
【0021】
[0027]図4は、図2の曲線の最良適合線の描写である。x軸はパーセントとしてプロットされ、y軸は、交点からの、ミクロン(μm)単位の距離としてプロットされる。図4は、コア粗さプロファイルの最小材料比であるMr1、およびコア粗さプロファイルの最大材料比であるMr2を示す。A1は、測定長のミリメートル当たり、コア粗さプロファイルから(上に)突き出るピークの断面積である、材料の塗りつぶしたプロファイル面積ピークである。A2は、測定長のミリメートル当たり、コア粗さプロファイルから(下に)突き出るピークの断面積である、材料の塗りつぶしたプロファイル谷面積である。図4において認められるように、A1は、(面積で)A2よりも大きい。図4に示されたシートについて、Mr1は18%であり、Mr2は93%であり、Mr2/Mr1比は5.2である。Mr2/Mr1比についてのこの値は、請求項1の範囲内である。
【0022】
[0028]図5は、図3の曲線の最良適合線の描写である。x軸はパーセントとしてプロットされ、y軸は、交点からの、ミクロン(μm)単位の距離としてプロットされる。図4と同様に、図5は、A1、A2、Mr1、およびMr2を示す。図5に示すように、A1は、(面積で)A2よりも大きく、Mr1は8%であり、Mr2は91%であり、Mr2/Mr1比は11.7であり、それらは請求項1の範囲外である。
【0023】
[0029]図6は、上記の図2のシートの粗さプロファイル、すなわち、二次元描写であり、コア線(下方の線)およびその線の上に立ち上がるピーク、ならびにコア線の下に垂れ下がる限定的な谷を示す。x軸は、ミクロン単位(グリッド線当たり250ミクロン)であり;y軸もまたミクロン単位(グリッド線当たり25ミクロン)である。
【0024】
[0030]図7は、上記の図3の比較例のシートの粗さプロファイル、すなわち、二次元描写であり、コア線(下方の線)およびその線の上に立ち上がるピーク、ならびにコア線の下に垂れ下がる有意な谷を示す。x軸は、ミクロン単位(グリッド線当たり250ミクロン)であり;y軸もまたミクロン単位(グリッド線当たり25ミクロン)である。
【0025】
[0031]こうしたシートの、この新規のテクスチャー加工表面は、以下により完全に説明されるように、安全ガラス産業の一部において利用される、相対的に短いニップロール工程中に、より優れた脱気性能および欠陥の排除をもたらす。
【0026】
[0032]テクスチャー加工表面は、ポリマー表面を貫通して、テクスチャー加工表面を作り出す、刻印装置、レーザー光装置、または破砕切断型装置によって、ポリ(ビニルアセタール)シートに施すことができる。一実施形態において、破砕切断型装置は、様々な等級の、ランダムなサイズの硬い材料の運動エネルギーによって、「ブラスト処理」され、または表面改質されたローラーであり、ゆえに、テクスチャー加工された表面を有する、所望のポリ(ビニルアセタール)シートのネガ(negative)を有するランダムテクスチャーを備えるローラーをもたらす。一実施形態において、ローラーは炭素鋼で構成される。ブラスト法によれば、粒子状投射材は、高速でロールの表面に対して吹付けられ得る。投射材は、例えば、アランダム(人工溶融アルミナ)、破砕スチールショットによって得られるエメリー製グリッドおよびスチール製グリッドであってもよい。一実施形態において、投射材は、グリッドサイズ約20~24を有する炭化ケイ素(すなわち、20グリッドサイズおよび24グリッドサイズの混合物)である。
【0027】
[0033]ロールがこの手法でブラスト処理されたら、ロールは、例えば、元の表面粗さRz約85~100μmから最終値Rz約70μmまたは60μmまたは50μmまたは40μmまで、例えば、表面を磨き、または「研磨」して研削されるはずである。ピークを研削することによって、これは、最終のポリ(ビニルアセタール)シートのMr2/Mr1比も減らす。ロールが、ポリマーシートに現れるテクスチャーの「ネガ」であり、研削するステップが、大きさを減らすことにおいて、およびネガのピーク(シートの谷である)を「平坦化」するためにも有効であるゆえに、ロールを研削することにより、値を有効に減らしていることを示す図6を参照されたい。粗さがメルトフラクチャーによって形成され、ローラーの研削するステップがない図7と比較されたい。図7に示すように、シートにおいて多くのピークおよび谷があり、Mr2/Mr1比は、有意により高くなる。
【0028】
[0034]本発明のポリ(ビニルアセタール)シートで最終的に得られるテクスチャー加工表面は、以下のパラメータを用いて説明され得る。
【0029】
[0035]初めに、表面粗さ(Rz)を説明する。所与の表面パターンについて、平坦化ポリ(ビニルアセタール)中間層シートの仮想面からの粗面の表面粗さまたは特定のピークの高さは、表面のRz値である。本明細書において記載される場合、ポリマー中間層シートの表面の二次元表面粗さまたはRzは、国際標準化機構(ISO)のDIN EN ISO-4287およびアメリカ機械学会(ASME)のASME B46.1に従って、10点平均粗さで測定されるように、ミクロン単位(μm)で表される(DIN EN ISO-428は、実施例において粗さ(Rz)を測定するのに使用されたS3P装置によって参照される標準であるDIN4776に取って代わることに留意されたい。粗さ材料比値(すなわち、Mr1およびMr2)を定めるISO13565-2、DIN EN ISO-4287参照)。
【0030】
[0036]一般に、これらのスケールで、Rzは、以下の式で示されるように、連続的なサンプリング長さ(または表面の軌跡)の1つの粗さ深さRzi(すなわち、サンプリング長さ内の最高ピークと最深の谷との間の垂直距離)の算術平均値として計算される。
【0031】
Rz=1/N×(Rz+Rz+...Rz
[0037]一般に、Rzは、ポリマー中間層シートのテクスチャー加工表面の測定に限定されない。Rzを利用して、テクスチャー加工ポリマー中間層シートおよび非テクスチャー加工ポリマー中間層シート(非テクスチャー加工ポリマー中間層シートは、ランダム粗面シートとしても称される)の両方の表面タイポグラフィーを測定することができる。Rzは、ポリマー中間層シートの表面を説明するために従来利用される、多くの値または測定値のうちの1つであるが、Rz値は、単独では、表面の完全なプロファイルを特徴づけないことに留意されたい。Rz値は、ポリマー中間層シートの表面を説明するために使用される二次元測定値として考えられる。多層構造物の場合、押出成形または共押出成形のいずれかから形成される、最終の中間層は、ある特定の実施形態において、上記のようにブラスト処理され、かつ研削されたロールの利用によって可能になるランダムな粗い表面トポグラフィーを有する。表面テクスチャーは、ポリマー中間層の表面の、ある種の微小隆起部分および微小凹み部分を可能にし、それらは、脱気法を向上させ、最終安全ガラス構造における気泡の発生および最終的なアイスフラワー欠陥を減らすことは有効であることが明らかになった。これに関して、本発明のシートは、100℃で5分間加熱した後、表面粗さ保持率(すなわち、Rz2/Rz1)(%)85%未満を有するテクスチャー加工中間層を有する。本発明の他の実施形態において、100℃で5分間加熱した後の表面粗さ保持率(%)の範囲は、80%未満または75%未満である。実施形態において、100℃で5分間加熱した後の表面粗さ保持率(%)の範囲は、30%よりも高い。
【0032】
[0038]第2に、表面テクスチャー比(Str)を説明する。Strは、三次元表面を説明するために使用されるだけの三次元空間パラメータである。Strは、ポリマー中間層シートの表面のテクスチャーアスペクト比の測定値である。ポリマー中間層シートの表面のテクスチャーアスペクト比は、表面等方性の指標であるゆえに重要である。Strパラメータ値は、単位なしで0から1までの範囲である。0または0に近いStr値は、強力な異方性の表面を表し、極めて規則的なパターンを反映し、1または1に近いStr値は、等方性表面を表し、極めてランダムなパターンを反映する。表面は、測定方向に関わらず、同じ特徴を表す場合等方性である。ランダム表面のテクスチャーまたはパターンについて、テクスチャーまたはパターンは目立たない。逆に、異方性表面は、規則的な表面パターンとして説明され得る、パターンまたは配向表面を有する。三次元パラメータについての追加の情報について、例えば、その全体の開示が本明細書に組み込まれた「New 3D Parameters and Filtration Techniques for Surface Metrology」、Francois Blateyron、2006を参照されたい。
【0033】
[0039]ある特定の実施形態において、表面テクスチャーは、約0よりも大きく、約0.9未満であり、または0.15よりも大きいが、約0.9未満であり、または約0.4よりも大きく、約0.7未満である、様々なStr(「テクスチャーアスペクト比」)によって説明されるように、高度なランダム性を有する。言い換えれば、ISO25178において記載されるように、Strは、表面テクスチャーの均質性の測定値である。
【0034】
[0040]本発明のこの態様において、表面テクスチャーは、S3Pによって求められるように(DIN4776およびDIN4762:01:89(DIN4762)に従って)、表面ピークから谷の分布を有する。これに関して、Mr1は、ピークとコアプロファイルとの間の分離(すなわち、ピーク-コアプロファイル)として定められる。Mr2は、コアプロファイルと谷との間の分離(すなわち、コアプロファイル-谷)として定められる。上記で定められた材料比(Mr2/Mr1)は、一実施形態において約3~約10である。一実施形態において、Mr1値(ピーク-コアプロファイル)は、約10を超えることがある。実施形態において、Mr1値は、約20未満であり得る。
【0035】
[0041]第3に、様々なSdr(「展開面積比」)によって、説明され、または反映される低表面積プロファイルは、一実施形態において、約0.414未満であるが、約0.01よりも大きく、または約0.05よりも大きく、約0.25未満であり、または約0.1~0.2である。ISO25178によって、Sdr変数は、平坦な面からの偏差レベルを画定する。このパラメータは、平坦な画定領域と比較して、テクスチャーによって寄与される、画定領域の追加の表面積のパーセントとして表される。ある特定の実施形態において、ニップローラー法での相対的に短い圧縮時間ゆえに、この値は意図的により低くなる。
【0036】
[0042]表面を説明するために使用される、第4のパラメータは、粗さ間隔(Rsm)である。実施形態において、シートの表面は、230μmよりも大きく、約600μmまでの、または約350μm~約450μmのRsm値を有する(S3Pを使用して、かつDIN4776に従って測定される)。
【0037】
[0043]一実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアセタール)から選択されるポリマーを含む。何故ならば、それらのポリマー、例えば、Eastman Chemical Companyより利用可能なButvar(登録商標)PVB樹脂は、安全ガラス産業または建築用ガラス産業において中間層として利用されることが知られているからである。一実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)で構成される。
【0038】
[0044]一実施形態において、ポリマーシートは単層中間層である。一実施形態において、ポリマーシートは多層中間層である。一実施形態において、ポリマーシートは、スキン層およびコア層が異なる組成を有する、2つのスキン層およびコア層を含む3層中間層、例えば、参照によって本明細書に組み込まれた米国特許第5340654号、米国特許第5190826号、および米国特許第7510771号に開示されたものである。一実施形態において、ポリマーシートは、くさび形の中間層、例えば、参照によって本明細書に組み込まれた、米国特許第7846532号、米国特許第8574706号、米国特許第7886871号、米国特許第8033360号、および米国特許第8695756号に開示されたもの、およびそれらに記載されたものである。
【0039】
[0045]本明細書において、用語「多層」および「多数の層」は、2つ以上の層を有する中間層を意味し、多層および多数の層は、区別なく使用することができる。多数の層の中間層は、典型的には、少なくとも1つの軟質層および少なくとも1つの硬質層を含有する。2つ以上の剛性または硬質の「スキン」層の間に挟まれた1つの軟質「コア」層を有する中間層は、ガラスパネル用の遮音特性を考慮して設計された。逆の構成、すなわち、2つ以上の軟質層の間に挟まれた1つの硬質層を有する中間層は、ガラスパネルの衝撃性能を改善することが分かり、また遮音性のためにも設計され得る。多層中間層の例には、少なくとも1種の「透明な」層または無着色層および少なくとも1種の着色層または少なくとも1種の従来の層、例えば、非音響性層、および少なくとも1種の音響性層を含む中間層も挙げられる。多層中間層の他の例には、美的魅力のために様々な色を有する、少なくとも2つの層を含む中間層が挙げられる。着色層は、典型的には、顔料もしくは染料、または顔料および染料の、ある組み合わせを含有する。中間層の各層は、一般に、ポリマー樹脂、例えば、ポリ(ビニルブチラール)を1種または複数の可塑剤と混合し、任意の適用可能な方法またはそれに限定されないが、押出成形などの当業者に既知の方法によって、その混合物をシートへ溶融処理することによって製造され、層は、共押出成形および積層などの方法によって組み合わされる。他の追加の成分は、場合により、多様な他の目的のために添加され得る。中間層シートは、形成された後、典型的には、以下に説明されるように、多層ガラスパネルにおける輸送および保管、ならびに後の使用のために、集められ、巻かれる。
【0040】
[0046]多層中間層、例えば、軟質コア層および2つのより硬質なスキン層を有する3層中間層が市販されている。硬質スキン層は、中間層の扱い易さ、加工処理性、および機械的強度をもたらす;軟質コア層は、音響減衰特性をもたらす。実施形態において、軟質コア層のポリビニルアセタール樹脂における残留酢酸ビニル基および/または残留ヒドロキシル基は、硬質スキン層のポリビニルアセタール樹脂における残留酢酸ビニル基および/または残留ヒドロキシル基よりも、少なくとも2wt.%より少ない。実施形態において、軟質コア層の可塑剤含有量は、硬質スキン層の可塑剤含有量よりも少なくとも8phr(樹脂100重量部当たりの重量部)より高い。実施形態において、軟質コア層のガラス転移温度は、約20℃よりも低い。単層または多層構造物で構成されようとされまいと、本発明のポリマーシートは、本明細書に記載されたように、少なくとも1つの、テクスチャー加工された表面を有する。
【0041】
[0047]上記のように、テクスチャー加工表面は、ある特定の実施形態において、概して、ピークおよび谷の外観を有して、ある程度ランダムであり、ピークの相対的な数は、谷の数を超え、本文脈における谷は、全体的なメジアン表面の下に伸びる「反転ピーク」であり(図7比較例参照)、谷は、有意により平坦である(図6参照)と理解される。このように、ガラス/中間層/ガラス構造の崩壊および仕上げで、その中に空気が閉じ込められ、核を成し、例えば、アイスフラワー欠陥を生じる谷は最終的にはかなり少ない。
【0042】
[0048]一般的には、本発明の方法は、以下のステップに従って、2個のオーブン/2個のニップの脱気法を使用して実施することができる:
a.本明細書で上記に示された表面特徴を有するPVB中間層を、ガラス片などのパネルに取り付け、別のガラス片をそこに取り付けるステップであって、1個のオーブンにおいて、ガラスを約30℃~70℃の範囲の温度に加熱する(または合わせガラスおよび中間層構造をこの範囲まで加熱する)、ステップ;
b.次いで、合わせ構造をニップローラーに通すステップであって、最初の圧縮を、所定のギャップ、概して、全構造厚さの約60~85%、および約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラー圧によって実施する、ステップ;
c.合わせ構造を、短期間(製品形状および利用可能な客先設備によって変わることがある)、温度約75℃~約125℃の第2のオーブンに設置するステップ;
d.合わせ構造を、ステップbのものと同じギャップ距離およびニップローラー圧の第2のニップロールに通すステップ;続いて
e.最終仕上げのためにオートクレーブに設置するステップであって、ピークオートクレーブ処理の温度および圧力がそれぞれ、125℃~155℃および275kPa(40psi)~1378kPa(200psi)であり、ピーク保持時間が、20分~60分である、ステップ。
【0043】
[0049]上記で示された特異な表面テクスチャーは、ステップ(a)およびステップ(b)の間ではあまり変化しないことが分かるが、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)シートの成形、ガラス積層体のPVBの脱気、複数種の欠陥形成に重要な温度範囲であることが明らかな、温度約90℃~110℃での短いオーブンサイクルの間に崩壊し始めることが明らかになった。温度が、第2のオーブン/ニップステップにあるように、脱気するステップ中に再度上昇するので、PVBの表面の構造的特徴は、一実施形態において、その元の値の60%未満まで、要望通り崩壊し続ける。したがって、ポリマーシートの特異な表面テクスチャーに依拠する、本発明の改善された方法は、有利なことに、既存のニップローラー製造装置を利用して積層PVB/ガラス構造の適切な構築および材料のより速いスループットを提供することを可能にする。これに関して、方法は、単一のオーブン/ニップ法、続いて、オーブン温度が約40℃~約80℃であるオートクレーブであってもよい。したがって、別の態様において、本発明は、ガラス積層体を作製する方法であって、その方法が、2枚のガラスパネルおよび上記パネル間に配置されたテクスチャー加工ポリマーシートを脱気し、積層する方法を含み、その方法が、
a.テクスチャー加工ポリマーシートをガラスのシートに取り付け、第2のガラス片をその上に取り付けて、ガラス/ポリマーシート/ガラス構造を形成するステップであり、ガラスまたは構造を温度約40℃~80℃に加熱して、合わせ構造をもたらす、ステップ;続いて
b.ニップローラーを通して合わせ構造を加工処理するステップであり、最初の圧縮を、合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラーによって実施し、それによって、約80%よりも高い光透過率の値をもたらす、ステップ;
c.続いて、ピークオートクレーブ処理温度125℃~155℃、ピーク圧力344kPa(50psi)~1378kPa(200psi)、およびピーク保持時間20分~60分を使用して上記積層体をオートクレーブ処理するステップ;
を含み、
テクスチャー加工ポリマーシートが本明細書で上記に示されたものである、ガラス積層体を作製する方法を提供する。
【0044】
[0050]この方法の実施において、ステップ(c)は、必要に応じて、1回または複数回繰り返してもよい。一態様において、本発明は、第1のニップについて全体的により低い温度で、第2のニップについてより高い温度で、2つの連続した「ニップ」ステップのみを利用することができる方法を提供する。したがって、別の態様において、本発明は、2枚のガラスパネルおよび上記パネル間に配置されたテクスチャー加工ポリマーシートを脱気し、積層する方法であって、その方法が:
a.テクスチャー加工ポリマーシートをガラスのシートに取り付け、第2のガラス片をその上に取り付けて、ガラス/ポリマーシート/ガラス構造を形成するステップであり、ガラスまたは構造を温度約30℃~70℃に加熱して、合わせ構造をもたらす、ステップ;続いて
b.ニップローラーを通して合わせ構造を加工処理するステップであり、最初の圧縮を、合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラー圧によって実施する、ステップ;
c.続いて、上記積層体を温度約90℃~約110℃に加熱するステップ;
d.続いて、ニップローラーを通して合わせ構造を再度加工処理するステップであり、最初の圧縮を、合わせ構造の厚さの約60~約85%である所定のギャップおよび約275kPa(40psi)~758kPa(110psi)のニップローラー圧によって実施し、それによって約80%よりも高い光透過率の値を有する積層構造をもたらす、ステップ;
を含み、
テクスチャー加工ポリマーシートが、本明細書で上記に示したものである、方法を提供する。
【0045】
[0051]本発明のテクスチャー加工ポリマーシートは、本明細書で記載されたように、単層構造または多層構造であってもよい。したがって、別の実施形態において、本発明は、上記の2つの態様を提供し、テクスチャー加工ポリマーシートは多層中間層である。
【0046】
[0052]上記のように、ポリマーシートは、本発明のテクスチャー加工シートであり、それは、表面の性能によって、改善された脱気を可能にし、その「ピーク」は、上記で示したように所望の温度範囲で崩壊する傾向がある。
【0047】
[0053]図1を参照すると、これは、ガラス-中間層積層体の形成中の不完全な脱気の結果、装着された風防ガラスにおいて形成される「アイスフラワー」として既知である欠陥の描写である。脱気が不完全である場合、風防ガラスの使用中に経験する高温(例えば、50℃~100℃)での気泡の開始および拡張、曲げギャップまたはガラスの不適合からの応力により、コア層内(例えば、3層中間層内)のランダムな半径方向において、最小抵抗の経路で気泡の拡張が引き起こされる傾向がある。欠陥が半径方向の拡張を続けるので、分枝状および樹枝状の特徴を形成し、望ましくない光学的外観であるアイスフラワーを与える。この欠陥はまた、典型的には、層間の分離をもたらし、それによって、パネルの構造的一体性を減らす。
【0048】
[0054]本発明によって提供される表面テクスチャーは、以下の実験データおよび表1に示されるように、欠陥の低減および相当な加工柔軟性をもたらす。これに関して、発明者らにより、ニップローラーシステムが、典型的には連続の2個のニップローラーを使用するが、本発明のシートの熱的性能および脱気性能は、ただ1個のこうしたニップローラーの使用に適応し、ゆえにこうしたポリ(ビニルアセタール)シートを使用したラミネーターの加工柔軟性を大きく拡張することが見出された。この性能は、光度計によって測定される第1のニップ後の積層体の透明性、および積層体をオートクレーブ処理しかつ場合により、積層体を焼成温度、例えば、100℃以上に供した後の気泡から判断される閉じ込められた空気によって、測定することができる。以下の実験に見られるように、気泡は観測されず、第1のニップローラーの作動のみの後に高い透明性があり、それは上記の比較例よりも優れていた。
【実施例
【0049】
実施例1
[0055]3個の(3)ローラーを、炭化ケイ素グリットブラスト法で、Rz85μm+/-5μmおよびRsm約300μmの粗さ目標まで表面処理した。次いで、ローラーを、当分野で既知の標準方法によって、開始レベルから、粗さ(Rz)の、0%(ローラー1)、20%(ローラー2)、および40%(ローラー3)の低減のレベルで研削した。研削後の最終ローラーレベルは、およそRz85μm(ローラー1)、Rz70μm(ローラー2)、およびRz50μm(ローラー3)であった。これより、PVBシートを、それぞれのローラーによって、目標Rz40μm+/-5μmまで別々にテクスチャー加工した。次いで、これらのテクスチャー加工シートを、ガラスの2シートの間に置き、2個のオーブン/2個のニップ法によって処理し、以下にさらに説明されるアイスフラワー(欠陥)試験手順によって評価した。結果を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
[0056]表1の結果は、欠陥比がMr2/Mr1比と十分に相関することを示唆する。比が増大するとき、欠陥のレベル(または数)が増す。ローラーを研削することにより、シートのテクスチャー加工表面の「反転ピーク」または谷の平坦さを増大させ、それによって、Mr2/Mr1比を減少させた。
【0052】
実施例2
[0057]第4のローラー(ローラー4)を、前述された炭化ケイ素グリットブラスト法を用いて、追加の研削なしで、目標Rz50μmまで表面処理した。ローラー4を使用して、PVBシートを、目標の表面粗さRz40μm+/-5μmまでエンボス加工し、以下のアイスフラワー試験に従って、ガラス間に積層した。結果を以下の表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
[0058]表2のデータは、ローラー(複数可)をテクスチャー加工すること(またはローラーテクスチャーもしくは表面粗さ)およびシート粗さ(Rz)レベルが単独で、本発明のシートのより優れた性能に部分的にのみ影響することを示唆する。研削された(40%)ローラー3から製造されたシートのより平坦な谷は、より低いMr2/Mr1比をもたらし、それは、シートのより優れた性能として主に考慮される。
【0055】
実施例3
[0059]様々な試料を試験して、それらがどのように十分に機能を果たすか求めた。様々な特性について試験された試料には:
[0060]開示された試料1(D1) - 本明細書で記載されたように準備されたローラーを使用して形成されたランダムテクスチャー加工表面を有する本発明のPVB3層試料
[0061]比較試料1(C1) - Eastman Chemical Companyから市販されている、試料D1と同様のエンボス加工表面パターンおよび表面粗さレベル(Rz)を有するPVB3層試料。C1のパターンは、米国特許第7883761号において開示されたようなものである。
【0056】
[0062]比較試料2(C2) - 試料D1と同様のエンボス加工表面および表面粗さレベル(Rz)を有する、市販の3層(Eastman Chemical Company以外の供給元から)のPVB3層試料
[0063]比較試料3(C3) - Eastman Chemical Companyから市販されている、押出成形工程中のダイリップに存在するポリマーメルトのメルトフラクチャーによって形成される、ランダムな粗い表面を有するPVBモノリシックシート試料
[0064]脱気効率は、3つの異なる中間層の試料(上記のD1、C1、およびC2)を作製し、1個のニップロールにそれらを通すことによって測定された。表3は、3つの異なる温度(40℃、55℃、および75℃)で、1つのニップの後、およびオートクレーブ処理仕上げの前の積層体の透明性(プリプレス透過性(prepress transmission)とも称される)を示す。積層体における気泡欠陥の数は、オートクレーブ処理サイクルの完了後すぐに観測される。結果を以下の表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
[0065]表3のデータに示すように、市販の中間層と比較して、本発明の中間層は、脱気温度それぞれで、1つのニップロール脱気後の高い光透過性によって示されるように、優れた透明性を有する。本発明の中間層はまた、オートクレーブ処理後気泡を示さず、本発明の表面パターンがより良好な脱気を可能にすることを示唆する。
【0059】
[0066]試料を試験して、様々な温度で加熱した後の粗さレベルの変化も求めた。表面保持率(%)の量はまた、試料を100℃に加熱する前後の粗さ(Rz)を測定することによって求めた。表面保持率は、パーセントで示される。また、試料を試験して、Sdr、Str、およびMr2/Mr1比を含める様々な表面特性を求め、かつ光透過性(透明性)、アイスフラワー性能、および気泡性能を定量的に測定した。アイスフラワー性能および気泡性能は、2個のオーブン/2個のニップ脱気法を使用して試料を積層し、続いてオートクレーブ処理サイクルを完了した後、かつ積層体が、模擬アイスフラワー試験を施され、それぞれ、16時間、焼成温度100℃の状態にした後で観測される。データは、以下の表4および表5に示される。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
[0067]表4および表5のデータによって示されるように、本発明の試料は、100℃でより良好な熱挙動を有し、100℃は、従来のニップロール加工処理操作における重要なガラス温度と考えられる。100℃を超えて、中間層がガラスの間を流れ、ガラスに接着するとき、個々の成分は、積層体を形成し始める。データはまた、Mr2/Mr1比5.2、Str0.6、Sdr0.1、および100℃での表面保持率76%を有する試料D1が、優れた、透明性、アイスフラワー性能、および気泡性能を有することを示し、それは、比較試料C1、C2、およびC3よりも良好である。Mr2/Mr1比8.6を有する試料C2は、より高い表面保持率を有し、許容できる、透明性、アイスフラワー性能、および気泡性能を有する。共により高いMr2/Mr1比を有する、試料C1および試料C3は、不良な透明性および不良な、または許容できる気泡性能を有する。試料C1はまた、許容できる/不良なアイスフラワー性能を有する。試料C3は、モノリシックまたは単層の中間層であるので、アイスフラワー性能について試験されなかった。アイスフラワーの相対的発生率(以下にさらに示されるように、アイスフラワー欠陥シミュレーションによって「優良」、「可」、および「不良」とランク付けされるアイスフラワー性能)は、アイスフラワー欠陥を発現した積層体のパーセント(または言い換えれば、試験積層体の総数において欠陥を発現した積層体の数)によってランク付けされる。「優良」なアイスフラワー性能は、欠陥パーセントが、20%未満または0から20%未満であることを意味し;「可」のアイスフラワー性能は、欠陥パーセントが、20%よりも高く、または20%~40%であることを意味し;「不良」なアイスフラワー性能は、欠陥パーセントが、40%よりも高いことを意味する。気泡性能と同様に、「優良」は気泡がないことを意味し、「不良」は、多くの気泡を有し、「可」は、いくつかの気泡を意味する。表4および表5から分かるように、表面粗さ(Rz)がおおよそ同じ場合、気泡性能およびアイスフラワー性能は、中間層のMr2/Mr1比および100℃での表面保持率によって主に決定される。
【0063】
試験技法/試験手順:
表面保持率手順:
[0068]表面保持率は、加熱後に保持された表面粗さの量の測定値である。これは、加熱前(Rz1)および加熱後(Rz2)の中間層の表面粗さを測定することによって計算される。表面保持率を決定するために、押出成形(機械)方向または表面パターンデザインを取得するのに最も代表的な方向において、元の粗さ(Rz1)を測定し、記録する。測定される部分(第1の粗さ測定、Rz1領域を含有する)周辺のPVBおよそ6’’×6’’の四角い片を切り出す。先に作られた、支持用の6’’×6’’金属フレーム(2片)を使用して、以下のように試料をフレーム中に設置し、「サンドイッチ」(側面図)を形成する:
【0064】
【表6】
【0065】
[0069]組立品は、フレーム周辺にクランプ(例えば、鰐口クランプ)を取り付けることによって固定される。目的は、加熱中の中間層の、任意の線形収縮または線形拡張を防ぐことである。フレーム組立品を100℃に加熱されたオーブンに立て、オーブンの空気流に対して平行にフレームを向ける(試料は前方に向く)。オーブンを閉じ、オーブンにおいて5+/-0.5分の保持時間を可能にする。5分後、フレームに温かい試料が残った状態で、オーブンからフレームを取り出し、組み立てた試料を室温まで冷却させる(約15分間)。表面を再度測定する前に、試料を(100℃で5分加熱後)室温まで冷却されたことを確かめることが重要である。試料が、まだ温かいうちにフレームから取り出される場合、縮みが生じることになり、再測定の表面読み取りに影響を及ぼす。試料が冷却されると、最初の測定(Rz1)の同じ方向および同じ位置の、試料の表面粗さ(これはRz2になる)を再度測定する。表面保持率は、表面保持率(%)=Rz2/Rz1として計算される。
【0066】
[0070]例えば、表面保持率を測定し、計算するために、中間層試料は、測定され、開始時の粗さRz40μm(Rz1)を有する。次いで、試料を100℃で5分間加熱し、続いて、前述された試験を行う。加熱後、試料を再度測定し、加熱後の表面粗さは32μm(Rz2)である。表面保持率を計算するために、以下の式を使用する:表面保持率=Rz2/Rz1。実施例について、表面保持率Rz2/Rz1=32/40=80%。
【0067】
アイスフラワー欠陥シミュレーション手順
[0071]3層音響PVB積層体におけるアイスフラワーの形成は、大きな曲げギャップおよび不良な脱気の組み合わせが、当分野でアイスフラワー発現の根本原因のうちの1つであると知られている、風防ガラスおよび他のガラスの現実世界状況をシミュレートすることによって試験され得る。第1に、中心に設置された、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜リング(内径7.5cm;外径14cm;および厚さ0.10mm~0.18mm)を含む30cm×30cmの3層中間層を2つの30cm×30cmのガラス片の間に挟んで、構造物を形成する。次いで、構造物は、概して、2個のオーブン/2個のニップ法を使用して、脱気のために予備積層され、オートクレーブ処理される。得られる積層体は、室温で48時間調整することができ、従来のオーブン(80℃)で48時間焼成され、次いで冷却される。次いで、積層体を視覚的に調べて、積層体におけるアイスフラワー形成率(例えば、アイスフラワー欠陥を発現した積層体のパーセント)およびアイスフラワー欠陥を有する、PETリング内の領域のパーセントを求める。追加で、積層体を視覚的に調べて、全積層体(PET膜領域の内側と外側の両方を含める)内のアイスフラワー形成のパーセントを求める。
【0068】
ガラス透過率レベル測定
[0072]光透過率(%)の値を(スペクトルの可視領域において)接着光度計(adhesion photometer)(Tokyo Denshoku#S-904356)を使用して求めた。ここで試験されたそれぞれの試料で、4回(4)の測定を行った。ガラス積層体を光度計に挿入し、値が記録された。次いで、試料を取り出し、1回(1)の測定を12’’×12’’ガラス積層体のそれぞれの角で行う。各結果を平均して光透過率%を与える。測定をガラス温度範囲約23℃~27℃で行った。これらの測定は、JIS K7361またはISO13468-1のいずれかに記載の、任意の装置および任意の方法を使用して行われて、特化されたCIE標準光源および光検出器を備えるシングルビーム光度計を使用して、平面の透明な、実質的に無色のプラスチックの、スペクトルの可視領域における全視感透過率を求めることができる。
【0069】
[0073]本発明は、とりわけ、本発明の、ある特定の実施形態に関して詳細に記載されてきたが、変更および改変を、本発明の趣旨および範囲内で実施することができると理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】