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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】耐摩耗性を有する光学窓
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20240228BHJP
   G01J 1/04 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
G02B1/115
G01J1/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555549
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022018638
(87)【国際公開番号】W WO2022192060
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】17/199,602
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】フレイジャー,ゲーリー エイ.
【テーマコード(参考)】
2G065
2K009
【Fターム(参考)】
2G065BA01
2G065BA37
2G065BB25
2K009AA09
2K009BB04
2K009CC03
2K009DD03
2K009DD04
(57)【要約】
極超音速ビークル用の光学窓が、窓基板と窓基板上の光学コーティングとを含み、コーティングは、異なる材料の複数の交互層を含む。コーティングは、たとえば、5つ以上の交互二重層を有する多くの層を有していてもよく、極超音速流への暴露を介した層の一部のアブレーションなどにより、層の一部が除去された状態でもなおその光学機能を行うように構成してもよい。異なる層の異なる材料は、異なる特性を有していてもよく、たとえば、材料のうちの1つは、層の他よりもアブレーション及び/または化学反応に対する耐性が高い。反射防止用のコーティングが、一連の二重層と基板との間に段階的な光学指数の領域をさらに含む。極超音速ビークルは、光学窓を通して光を受け取ることによって動作する光学センサーを含んでいてもよい。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学窓であって、
異なる材料の複数の交互層を含み、
当該光学窓は、前記異なる材料の各々の層の少なくとも1つを含む、前記複数の交互層の全部ではなく一部が除去された際に、波長範囲にわたって反射防止及び/または帯域阻止の光学特性を維持する、光学窓。
【請求項2】
窓基板をさらに含み、
前記複数の交互層は、前記窓基板の主表面に反射防止コーティングを構成する、請求項1に記載の光学窓。
【請求項3】
前記反射防止コーティングは、前記層の一部が除去されたときに反射防止として動作するように構成されている、請求項2に記載の光学窓。
【請求項4】
窓基板をさらに含み、
前記複数の交互層は、前記窓基板の主表面に波長阻止コーティングを構成する、請求項1に記載の光学窓。
【請求項5】
前記層はすべて、前記動作波長範囲の中心において、光学的厚さが4分の1波長である、請求項1または請求項1~4のいずれかに記載の光学窓。
【請求項6】
前記層は、前記動作波長範囲の前記中心において、光学的厚さの4分の1波長と光学波長の2分の1との間で交互に繰り返す、請求項1または請求項1~4のいずれかに記載の光学窓。
【請求項7】
前記層の一部は、光学的厚さが前記層の他とは異なる、請求項1に記載の光学窓。
【請求項8】
前記複数の交互層は、前記異なる材料の少なくとも5層を含む、請求項1に記載の光学窓。
【請求項9】
前記層の前記材料は、MgO、ZrO、Y、Dy、ダイヤモンド、Al、MgF2、YF3、YbF3、ならびにランタニド酸化物及びフッ化物からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の光学窓。
【請求項10】
前記材料のうちの1つは、前記材料の他よりもアブレーション耐性が高い、請求項1に記載の光学窓。
【請求項11】
前記材料のうちの1つは、前記材料の他よりもイオン反応性が低い、請求項1に記載の光学窓。
【請求項12】
前記材料のうちの1つは、前記材料の他よりも光吸収が低い、請求項1に記載の光学窓。
【請求項13】
前記窓は、前記層の一部が除去された状態で動作するように構成されている、請求項1に記載の光学窓。
【請求項14】
前記層は真空蒸着層である、請求項1に記載の光学窓。
【請求項15】
傾斜した光学屈折率の領域をさらに含み、
前記複数の交互層は、前記傾斜した光学屈折率の領域の上に重なる、請求項1に記載の光学窓。
【請求項16】
基板をさらに含み、
前記傾斜した光学屈折率の領域は、前記基板と前記複数の交互層との間にある、請求項15に記載の光学窓。
【請求項17】
前記極超音速ビークルは、前記光学窓を通して視認するセンサーを含む、請求項16に記載の光学窓。
【請求項18】
極超音速ビークルから光学検知する方法であって、
前記極超音速ビークルの光学窓を通して、前記極超音速ビークルのセンサーにおいて光を受け取ることを含み、
前記光学窓は、異なる材料の繰り返し交互層を含み、
前記信号を受け取る間、前記窓を過ぎる極超音速流が前記窓の前記層の一部を除去するが、前記窓の前記層以外は同じ場所に残される、方法。
【請求項19】
前記窓は、前記極超音速ビークルのシュラウドなしスループット飛行である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記窓の前記層の前記一部が除去された後、前記極超音速ビークルの別の飛行において、前記窓を再利用することをさらに含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極超音速ビークル用などのセンサー用の窓の分野である。
【背景技術】
【0002】
極超音速流は過酷な環境であり、光学窓及び光学窓に付与されたコーティングに損傷を与える可能性があるものである。損傷は、侵食またはアブレーションなどの機械的、窓を含む極超音速ビークルを過ぎた流れのイオン化によるプラズマエッチングなどの化学的、及び/または摩擦によるガラス転移温度までの加熱などの熱的である可能性がある。
【0003】
光学窓は通常、窓表面のそれぞれから反射されるかまたはそこを透過する入射光の量を変更するためのさらなる材料によってコーティングされる。これらの追加された材料は通常、薄膜の形で堆積され、反射防止または遮断コーティングとして知られている。反射防止コーティングが、1つ以上の波長において光反射を最小限に抑えるために付与され、遮断コーティングが、1つ以上の波長において窓の反射率を最大にするために付与される。反射率を下げると必要な光のセンサーまでの透過率が高まる場合があり、反射率を上げると不要な光がセンサーに到達するのが妨げられる場合がある。
【0004】
窓の光学特性を変更することに加えて、コーティングは、大気環境による損傷に対する窓システムの耐久性を高める場合がある。広く使用されている窓材料の多くは、比較的柔らかく、雨または砂の衝撃にさらされると容易に摩耗する。他の窓材料は、プラズマエッチングまたは大気中の水及び/または酸素との反応によって容易に除去される。コーティング材料は通常、光学的な利点を提供し、アブレーション、化学反応、及び侵食に対する窓システムの耐性を高めるように選択される。しかし、場合によっては、窓システムの環境は非常に過酷であるため、経時的な窓のアブレーションは避けられず、反射防止または遮断に使用される標準コーティングは時間とともに最終的に侵食される。例は、窓が超高温の酸素環境に浸されたときに生じる酸化(バーンオフ)である。コーティングは焼け落ち始める場合がある。コーティングの侵食は、窓を装備したビークルの1回の飛行中に起こる場合もあるし、複数の連続的な飛行の後に起こる場合もある。コーティング及び窓に対する損傷は最終的に非常に大きくなるため、窓の交換が必要となり、通常は多大なコスト及びダウンタイムがかかる。
【0005】
既存のコーティングデザインのアブレーションは、窓の光学性能に著しい変化を引き起こす傾向がある。材料の1マイクロメートルを除去しても、標準コーティングの反射率及び透過率に劇的な変化を引き起こす可能性がある。したがって、アブレーション及び他の侵食メカニズムの下でそれらの光学性能を適切に劣化させる反射防止及び/または遮断コーティングを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
極超音速ビークル用などの光学窓は、基板と、基板上の異なる材料の複数の交互層とを有する。
【0007】
光学窓は、異なる材料の複数の交互層を含み、その一部は極超音速飛行中に除去され得るが、窓を通して光を受け取るセンサーとともに使用する場合など、許容可能な光学性能を依然として可能にする。
【0008】
本発明の態様によれば、光学窓は、異なる材料の複数の交互層を含み、光学窓は、異なる材料のそれぞれの層のうちの少なくとも1つを含む複数の層の全部ではなく一部が除去されたときに、所定の光学特性を維持する。
【0009】
本発明の態様によれば、光学窓は、異なる材料の複数の交互層と、段階的な光学屈折率の領域とを含み、光学窓は、異なる材料のそれぞれの層のうちの少なくとも1つを含む複数の層の全部ではなく一部が除去されたときに、所定の光学特性を維持する。
【0010】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、窓は、コーティングが付与される窓基板をさらに含む。
【0011】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、複数の交互層は、窓基板の主表面上の反射防止コーティングを構成する。
【0012】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、反射防止コーティングは、層の一部が除去されたときに、反射防止として動作するように構成されている。
【0013】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、反射防止コーティングは、層の一部がアブレートされたときに、反射防止として動作するように構成されている。
【0014】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、帯域阻止(遮断)コーティングが、層の一部がアブレートされたときに、波長帯域内の光を実質的に反射するように動作するように構成されている。
【0015】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、複数の交互層は、異なる材料の少なくとも5層を含む。
【0016】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、反射防止コーティング内の段階的屈折率の領域は、反射防止帯域内の最長波長の自由空間波長と少なくとも同じ厚さである。
【0017】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、複数の交互層を構成する材料は、同じ材料に対して同じ厚さを有する。
【0018】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、層の一部は、厚さが層の他とは異なる。
【0019】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、複数の交互層を構成する材料はそれぞれ、光学的厚さが動作自由空間波長の4分の1または2分の1の程度である。
【0020】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、層に対する材料は、MgO、ZrO、Y、Dy、MgF、ZrO2:Y複合材料、ランタニド系酸化物、フッ化物、ならびに酸フッ化物、ダイヤモンド、サファイア、及びナノ複合材料を含む群から選択される材料を含む。
【0021】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、材料のうちの1つは材料の他よりもアブレーション耐性が高くてもよい。
【0022】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、材料のうちの1つは、材料の他よりもイオン反応性が低くてもよい。
【0023】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、材料のうちの1つは、材料の他よりも、対象とする波長帯域における光吸収が低くてもよい。
【0024】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、窓は、層の一部が除去された状態で動作するように構成されている。
【0025】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、窓は多目的窓である。
【0026】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、層は真空蒸着層である。
【0027】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、層はエピタキシャル成長によって堆積させてもよい。
【0028】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、層は化学気相成長法によって堆積させてもよい。
【0029】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、窓は極超音速ビークルの一部である。
【0030】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、極超音速ビークルは、光学窓を通して視認するセンサーを含む。
【0031】
本発明の別の態様によれば、極超音速ビークルから光学検知する方法は、極超音速ビークルの光学窓を通して、極超音速ビークルのセンサーにおいて光を受け取ることを含み、光学窓は、異なる材料の繰り返し交互層を少なくとも含み、信号を受け取る間、窓を過ぎる極超音速流が窓の層の一部を除去するが、窓の層の他は同じ場所に残す。
【0032】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、窓は、極超音速ビークルのシュラウドなしスループット飛行である。
【0033】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、本方法は、窓の層の一部が除去された後で、極超音速ビークルの他の飛行において窓を再利用することをさらに含む。
【0034】
前述の及び関連する目的を達成するために、本発明は、以下で十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘される特徴を含む。以下の説明及び添付図面において、本発明の特定の例示的な実施形態について詳細に述べる。しかし、これらの実施形態は、本発明の原理を使用し得る様々な方法のうちのほんの少しを示すものである。本発明の他の目的、利点、及び新規特徴は、本発明の以下の詳細な説明を図面とともに考慮すると明らかになる。
【0035】
添付図面は、必ずしも一定の比率ではないが、種々の本発明の態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態による光学窓を含む極超音速ビークルの斜視図である。
図2図1の光学窓の斜視図である。
図3A図2の光学窓の第1の実施形態の一部の拡大側面図である。
図3B図2の光学窓の第2の実施形態の一部の拡大側面図である。
図3C図2の光学窓の第3の実施形態の一部の拡大側面図である。
図3D図2の光学窓の第4の実施形態の一部の拡大側面図である。
図4A】未コーティングのゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフである。
図4B】本発明の実施形態による30対のMgO-Dy二重層でコーティングされたゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフである。
図4C】本発明の実施形態による20対のMgO-Dy二重層でコーティングされたゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフである。
図5A】本発明の実施形態による10対のMgO-Dy二重層でコーティングされたゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフ。
図5B】本発明の実施形態による5対のMgO-Dy二重層でコーティングされたゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフである。
図5C】MgO-Dy二重層の対でコーティングされたゲルマニウム窓基板の光反射率のグラフであり、二重層と基板との間の段階的屈折率の除去の効果を示す図である。
図6】別の本発明の実施形態による光学窓の一部の拡大側面図である。
図7A】本発明の実施形態によるMgO-Dy二重層の対を含む窓の光反射率のグラフである。
図7B】層の一部が除去された状態の図7Aの窓の光反射率のグラフである。
図8】本発明の実施形態による光学窓を使用する方法の高レベルのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
極超音速ビークル用の光学窓が、窓基板と窓基板上の光学コーティングとを含み、コーティングは、異なる材料の複数の交互層を含む。コーティングは、たとえば、5つ以上の交互二重層を有する多くの層を有していてもよく、極超音速流への暴露を介した層の一部のアブレーションなどにより、層の一部が除去された状態でもなおその光学機能を行うように構成してもよい。異なる層の異なる材料は、異なる特性を有していてもよく、たとえば、材料のうちの1つは、層の他よりもアブレーション及び/または化学反応に対する耐性が高い。反射防止用のコーティングが、一連の二重層と基板との間に段階的な光学指数の領域をさらに含む。極超音速ビークルは、光学窓を通して光を受け取ることによって動作する光学センサーを含んでいてもよい。複数の層を有する光学コーティングを使用することで、センサーが、極超音速ビークルの飛行中におけるより早い時点で、及び/または極超音速ビークルの飛行中のより長い時間にわたって動作できる場合がある。また多層光学コーティングによって、極超音速ビークルの複数の飛行において光学窓を再利用できる場合がある。多層光学コーティングを使用することで、層の一部のアブレーションは避けられないことを受け入れるが、残りの層が依然として許容可能な光学性能を提供することによって、本来は極超音速コーティングでの使用が受け入れられない望ましい光学的及び熱的特性を有するMgO及びZrOなどのイオン反応性材料のコーティングにおいて使用することができる。
【0038】
図1に、センサー12を含む極超音速ビークル10を示す。センサー12は、極超音速ビークル10の飛行中に光学窓20を通して情報(光)を送信及び/または受信する。センサー12は、種々の光学センサー(たとえば、受動的凝視画像化装置、ジンバル画像化装置、ならびにレーザー放射赤外線探索及び追跡システムなどのアクティブセンサー)のうちのいずれかであってもよい。用語「光学センサー」は、本明細書で使用する場合、可視光、赤外線、及び紫外線の両方を含む広範囲の周波数のうちのいずれかにおける光及び/または信号に対して動作するセンサーを広範囲にカバーすることが意図されている。
【0039】
ここで、さらに図2及び3A~3Dを参照して、光学窓20は、窓基板22と、窓基板22の主表面26上の光学コーティング24とを含む。表面26は、飛行中に可能性として有害な環境効果に潜在的にさらされる。窓基板22は、好適な光学特性を備えた種々の既知の材料、たとえば、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、サファイア、溶融シリカ、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコン、種々の光学ナノ複合材料のうちの1つ、及びダイヤモンドのいずれかであってもよい。光学コーティング24は、異なる材料の一連の繰り返し層、たとえば第1の材料(第1の材料層32)及び第2の材料(第2の材料層34)の交互層、ならびに段階的な光学屈折率を有する材料36(図3B~3D)を含む。図3A~3Dに示すものなどの二重層は、地上の光バンドパス、ローパス、及びハイパスフィルターにおいて共通のオプションである。2つの材料が真空システム内に含まれ、基板及び事前のコーティング上に交互に蒸着またはスパッタリングされて、2つの材料のバイナリ構造が形成される。その厚さは、センサーシステム全体の所望の動作波長(複数可)によって決定される。たとえば、MgO及びDyなどの2つの材料からなる2層の単位セルを繰り返すことを用いて、コーティング全体によって高度に反射される波長の組と、コーティング全体によって効率的に透過される異なる波長の組とを同時に提供してもよい。コーティングなどに対する並びの例は、ゲルマニウム基板上のMgO及びDyの交互層(MgOの層を最外層として)であってもよい。
【0040】
しかし、2つの異なる材料のみを繰り返し堆積させることは必須ではなく、3つ、4つ、またはそれ以上の層からなる単位セルの繰り返し構造を使用して、所望の光学的応答を生成することができる。たとえば、ZrO、MgF、及びMgOの3つの材料の堆積を繰り返すことを用いて、長波赤外帯域(波長8.0~12.0マイクロメートル)における帯域阻止特性を形成してもよい。これは、ZrO及びMgOのより単純な二重層よりも反射特性が優れている。このようなコーティング構造に対する並びの例は、ZnS基板でのZrO、MgF、及びMgOの積層体の連続的な繰り返し層(ZrOの層を最外層として)であってもよい。
【0041】
光学コーティング24はいくつかの目的を果たす(または果たす場合がある)。最初に、コーティング24は、その下に設けられた窓基板22を、砂及び雨の侵食などの環境からの損傷から保護する。加えて、光学コーティング24は、光学窓20に所望の光学特性を提供し、たとえば、所望の波長範囲の入射放射線の透過を可能にする(及び反射を防止する)。たとえば、センサー12(図1)は、特定の波長範囲における放射線を検出するように構成してもよく、コーティング24は、その波長範囲における放射線を優先的に透過させてもよい。全般的に、対象とする典型的な波長範囲は、短波赤外線(SWIR:1~3μm)、中波赤外線(MWIR:3~5μm)、及び長波長赤外(LWIR:8~12μm)である。しかし、紫外帯域(<0.3μm)及びテラヘルツ(THz)帯域(30μm~1000μm)を含む新しい波長帯が、将来、対象になり得る。
【0042】
場合によっては、高強度レーザーなどからの放射線が窓を通過してセンサー検出器を照射することを防ぐことが望ましい。光学コーティング24は、光学窓20に異なる所望の光学特性を提供してもよく、たとえば、所望の波長範囲の入射放射線の反射を高める(及び透過を防止する)。
【0043】
光学コーティング24は、極超音速ビークル10(図1)を過ぎる極超音速流への暴露など、環境への暴露によって層の一部が摩耗除去されても、その透過及び反射特性を維持するように構成されている。極超音速流は、窓20の外面を高温のイオン化ガスにさらすことによって、特定のアブレーション問題を引き起こす場合がある。反射防止コーティング24において複数の繰り返し層を使用することによって、層の一部がまだ存在する限り、下部層がコーティング24の同じ(または実質的に同じ、または類似の)光学特性を維持することができる。ある意味では、コーティング24の上部(最外)層は、このような層は通常の動作中に除去される(摩耗除去される)ことが予想されるという点で、「犠牲である」と考えてもよい。しかし、別の観点からすると、コーティング24の層と基板22との集合体が常に反射及び透過に関する光学効果を決定し得るという点で、コーティング24の層はすべて光学的に機能を果たしている(または潜在的に機能を果たしている)。層が高温のイオン化ガスの化学作用によって徐々に除去されると、全体の光学的有効性を実質的に(または許容できる程度に)変えることなく、コーティング24の異なる最初は内層が最外層になる。
【0044】
層32及び34に対する異なる材料は、異なる特性を有していてもよく、それらが全体として反射防止コーティング24に望ましい特性を提供してもよい。たとえば、材料の一方が他方よりも光学特性が優れていてもよく、及び/または材料の一方が他方よりも、高温のイオン化ガスからのアブレーション/侵食に対する耐性が優れていてもよい。異なる特性を有する材料の組み合わせによって、コーティング24の全体的な性能が向上する場合がある。たとえば、第1の材料は、MgOなど、MWIRにおいて光学特性が優れているが、熱水蒸気によるアブレーションに対する耐性が不十分な材料であってもよく、第2の材料は、ジルコニア、イットリア、またはジスプロシウムなど、光学特性が(比較的)不十分であるが、水蒸気に対するアブレーションに対する耐性が優れていてもよい。2つのこのような材料の交互層を一緒に組み合わせることで、極超音速流からの高温のイオン化された大気ガスに由来するアブレーション/侵食に対する優れた耐性を依然として有しながら、優れた反射防止または帯域阻止特性の両方を有するコーティングを生み出し得る。
【0045】
最高の実用的な環境耐久性を提供するように組み合わされた材料を選択することだけが要求されるわけではない。詳細には、光学性能は優れているが環境耐久性の方は不十分な材料を組にすること、及びその逆は必須ではない。光学コーティング内での単位セルの繰り返しによって、最上層の摩耗が可能になり、光学性能がゆっくりと低下するため、極超音速流下で摩耗することが知られている材料を選択してもよい。
【0046】
種々の材料及び材料の組み合わせのいずれかを、コーティング24の層32及び34に対して使用してもよい。好適な材料の例としては、MgO、ZrO、Y、ダイヤモンド、MgF、YF、Al、及びDyが挙げられる。材料の好適な組み合わせの例としては、MgO及びDy、ならびにAl及びMgFが挙げられる。ランタニド系を含む多くの金属の酸化物、フッ化物、及び酸フッ化物を、赤外線での透明性を必要とするコーティングに対して使用してもよい。金属フッ化物は通常、赤外線コーティングに対しても使用される。フッ化物は、赤外線において屈折率が比較的低い(1.3~1.6の範囲)傾向があるが、酸化物は、屈折率が比較的より高い(1.6~1.9の範囲)傾向がある。酸化物及びフッ化物の交互層を使用して、層32及び34の対からなる単位セルを得てもよい。多くの酸化物は多くのフッ化物よりも機械的に硬いが、多くのフッ化物の方が、極超音速流の酸素プラズマ特性によるエッチングに起因する侵食の影響を受けにくい。
【0047】
層32及び34は、種々の好適な厚さのいずれかを有していてもよい。たとえば、層32及び34はそれぞれ、赤外線反射防止コーティングとして使用するために光学波長の4分の1から2分の1の程度であってもよい。各材料32または34の具体的な厚さは、好適なコンピューターシミュレーションによって決定してもよい。光遮断多層の一例では、材料内でそれぞれが光学波長の4分の1である異なる材料の交互層を使用する。材料の光学的厚さは、屈折率と幾何学的厚さの積として与えられる。
optical=ntgeometric (1)
ここで、nは屈折率、tgeometricは幾何学的厚さである。光学的に波長の1/4の厚さである材料の幾何学的厚さは、以下のとおりである。
geometric=toptical/4n (2)
例として、波長8.0μmにおける屈折率が1.475で、厚さが1.356μmのMgOの薄膜層は、この波長では光学的に1/4波長の厚さとなる。波長8.0μmにおける屈折率が1.751であるDyの層は、その物理的(幾何学的)厚さが2.284μmだったら、この波長では光学的厚さは2分の1波長である。
【0048】
好ましい実施形態では、高反射率を有する帯域阻止(遮断)コーティングは、阻止すべきスペクトル帯域の中心において光学的厚さがそれぞれ波長の4分の1である2つの異なる材料の一連の繰り返し層からなる。このような材料の対が単位セルを構成する。単位セルは、単位セルの積層体の全厚さが使用中のコーティングのアブレーションの最大の予想深さを超えるまで、真空蒸着などの連続的な構築によって繰り返される。図3Aに、このような実施形態を示す。コーティング24は、基板22上の材料32及び34の交互層からなる。
【0049】
第2の好ましい実施形態では、帯域内反射率が低いバンドパス反射防止コーティングが、2つの異なる材料の一連の繰り返し層からなり、第1は、光学的厚さがスペクトル通過帯域の中心において波長の4分の1であり、第2は、光学的厚さがスペクトル通過帯域の中心において2分の1波長である。このような材料の対が単位セルを構成する。単位セルは、単位セルの積層体の厚さが使用中にコーティングのアブレーションの最大の予想深さを超えるまで、真空蒸着などの連続的な構築によって繰り返される。段階的屈折率の領域は、屈折率を第1または第2の単位セル材料から基板の屈折率まで段階的に変化させる材料を使用する。屈折率が段階的に変化する距離(厚さ)は好ましくは、窓システムが通過しなければならない最長波長以上である。
【0050】
図3B~3Dに、段階的屈折率の領域36を含む実施形態の詳細を示す。図3に、領域36を、材料層32及び34の下として、層32及び34と基板22との間のコーティング24の一部として示す。図3Cに、段階的屈折率の領域36を、一連の層38、40、42、44、46、及び48からなるとして、屈折率を材料層32または34及び基板22から段階的に変化させる一連の層の一部として、示す。段階的屈折率の領域36の組成の変化を、図3Dに例示する。
【0051】
図4A~4Cに、8.0μmレーザー放射を阻止するように最適化された帯域阻止窓システムに対する構成例を例示する。この例は、図3Aに記載されたコーティング構造に対応する。図4Aは、未コーティングのゲルマニウム窓基板の光反射率を示す。7.5~8.5μm帯域での垂直入射における平均反射率は35.6%である。
【0052】
図4Bは、30対のMgO-Dy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板を示す。MgO層は厚さが1.356μmであり、Dy層は厚さが1.135μmである。このコーティングの7.9~8.1μm帯域における平均反射率は99.98%である。
【0053】
図4Cは、20対のMgO及びDy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板を示す。この場合も、MgO層は厚さが1.356μmであり、Dy層は厚さが1.135μmである。このコーティングの7.9~8.1μm帯域における平均反射率は99.4%である。図4B及び4Cから分かるように、10のMgO/Dy二重層の除去(アブレーション)は、コーティングの帯域阻止特性に最小限の効果をもたらす。この例では、10の単位セルは、10*(1.356+1.1135)μm、すなわち24.9μmのアブレーションに相当する。
【0054】
図5A~5Cに、8.0μmの放射線を通すように最適化されたバンドパス光学特性を提供する反射防止コーティングに対するデザイン例を示す。この例は、図3Bに記載されたコーティング構造に対応する。図4Aから、7.5~8.5μm帯域での未コーティングのゲルマニウム窓基板の垂直入射における光反射率が、35.6%で一様であることを思い出されたい。図5Aに、段階的屈折率の領域の上に、10対のMgO及びDy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板を示す。MgO層は、8.0μmにおいて4分の1光学波長の厚さ、たとえば1.356μmの厚さである。Dy層は、8.0μmにおいて2分の1光学波長の厚さ、たとえば2.27μmの厚さである。MgO-Dy二重層の下の段階的屈折率の領域は、厚さ8μmにわたって段階的屈折率がn=1.356からn=3.96であってもよい。ゲルマニウム基板は屈折率n=3.96である。このコーティングの7.5~8.5μm帯域における平均反射率は3.8%である。
【0055】
図5Bに、5対のMgO及びDy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板を示す。厚さは図5aに関して前述したのと同じであり、段階的屈折率はゲルマニウム基板とMgO-Dy二重層との間と同じである。このコーティングの7.5~8.5μm帯域における平均反射率は3.6%である。したがって、MgO/Dyの5つの二重層の除去は、このコーティングの平均の帯域内反射防止特性に最小限の効果をもたらすことが分かる。この例では、5つの単位セルは、5*(1.356+2.27)μm、すなわち18.1μmのアブレーションに相当する。
【0056】
図5Cに、前述した構成から段階的屈折率の領域を除去した効果を示す。MgO/Dy二重層の積層体とゲルマニウム基板との間の光学的不連続性により、コーティングの反射防止特性が低下する。段階的材料が除去されたこのデザインの平均反射率は、7.5~8.5μm帯域において25.6%である。これは、効率的な反射防止特性が、二重層の積層体と基板との間の屈折率を段階的に変化させることによって利益を得ることを示す。したがって、一連の多層と基板との間に段階的屈折率の領域を含むことは有利である。
【0057】
全般的に、層32及び34は、異なる屈折率を有する材料からなり、これらの層の光学的厚さは、選択された波長の4分の1または2分の1のいずれかであるため、同じ厚さとはならない。これらの厚さは、窓システムを通る反射率または透過率が最適である好ましい実施形態に対応する。場合によっては、特定の光学的要件に対して最適な組の光学的厚さが必要とされない場合があり、組み立ての便宜上で厚さが選択される場合がある。
【0058】
層32及び34はすべて同じ厚さであってもよいし、第1の材料層32の厚さは第2の材料層34の厚さと異なっていてもよい。第1の材料層32のすべてが同じ厚さであってもよいし、第1の材料層32の異なるものに対して異なる厚さ、たとえば反射防止コーティング24内の高さに基づいて異なる厚さであってもよい。同様に、すべての第2の材料層34は同じ厚さであってもよいし、第2の材料層34の異なるものに対して異なる厚さであってもよい。
【0059】
材料層32及び34に対する材料に対する特性としては、光学特性(対象とする周波数に対する反射及び透過特性を含む)、ならびに、機械的摩耗/侵食に対する耐性、化学反応/侵食に対する耐性、及び/または熱的効果に由来する劣化に対する耐性を挙げてもよい。機械的摩耗/侵食に対する耐性は、ヌープ硬度の観点から定量化してもよい。機械的侵食に対して優れた耐性を示す材料の例としては、ダイヤモンド、Al、ZrO、Dy、及びナノ複合材料または共蒸着合金の形態でのこのような材料の組み合わせが挙げられる。極超音速流に由来する化学的侵食に対して優れた耐性を示す材料の例としては、ダイヤモンド、及び金属フッ化物、たとえば、MgF、YF、YbF、及びPrFが挙げられる。上述の材料のすべては、少なくともいくつかの関連するセンサーに対して優れた光学特性を示す材料の例である。
【0060】
コーティング24は、本来は、極超音速の空気流にさらされるコーティングでの使用に適しているとは考えられないMgO及びZrOなどの、優れた光学的及び熱特性を有するイオン反応性材料を使用する能力を優位なことに提供し得る。その多くの層32及び34を有するコーティング24は、層の一部が除去された後であっても、その望ましい反射防止特性を維持することができ、このような材料の特性イオン反応性はそれほど不利ではなく、より優れた光学特性を使用してコーティング24の光学性能を改善し得る。
【0061】
層32及び34は、種々の好適なプロセスのうちのいずれかを使用して堆積させてもよい。たとえば、蒸着プロセスを使用して層32及び34を順次に堆積させ、窓基板22から先にコーティング24を構築してもよい。段階的な屈折率は、一方の材料対他方の材料の質量分率が堆積時間の経過とともに変化する2つの材料の共堆積を使用して設けることができる。半導体基板上での屈折率の段階的変化は、堆積中に化学量論が変化する合金のエピタキシャル成長によって設けてもよい。たとえば、屈折率勾配は、アルミニウムガリウムヒ素(AlGa1-XAs)を成長させることによってガリウムヒ素基板上に形成してもよい。ここで、Xは、成長動作中に最初はX=0(GaAs)からX=1(AlAs)まで変化する。
【0062】
多層コーティングによって、飛行ビークル10の飛行中にセンサー12(図1)をより早い時点で及び/またはより長期間使用することができ得る。いくつかの現在のシステムでは、センサー用の光学窓は、侵食の脅威が軽減されたとき、またはセンサーを使用する必要性がその最大限に達したときなど、飛行の特定の段階までシュラウドによって保護されており、光学特性が望ましくないほど低下する程度まで窓が侵食される前にセンサーを使用できるのは短時間のみである。コーティング24は、層32及び34の一部が除去されたときであっても光学的に良好に機能する能力を備えているため、センサー使用のための期間を拡張し、より厚い大気が存在する場合など、飛行中のより早い時点で一時的なセンサー使用期間を延長し得る。
【0063】
コーティング24は、複数の飛行、そうでなければ極超音速流への複数の暴露において窓20の再利用を可能にするのに十分な数の層を有していてもよい。これは、複数の飛行での利用を目的とした再利用可能な飛行ビークルにおいて有用であり得る。すなわち、このような多目的の飛行ビークルでは、窓20を新しい飛行ごとに変える必要がない。
【0064】
窓20は、幅広い極超音速飛行体のいずれかにおいて使用してもよい。このような飛行ビークルとしては、航空機及び/または宇宙船(または大気中及び宇宙の両方において動作するように構成されたビークル)を挙げてもよい。このようなビークルの非限定的な例としては、極超音速飛行機、スペースプレーン、無人ビークル、ミサイル、及び衛星が挙げられる。
【0065】
図6に、窓全体が、コーティングされた材料で構成されている代替窓50を示す。窓50は、第1の材料層52と第2の材料54とを、異なる材料の交互層の積層体内に有している。この一連の交互材料層は、段階的屈折率の領域の上に組み立てられており、段階的な変化は、交互材料積層体の最後のメンバーの屈折率から窓の下側にある媒体の屈折率までである。通常、この屈折率は、乾燥空気のそれと等しいかまたは類似している。窓50は、窓基板22(図2)がないという点で、窓20(図2)とは異なっている。材料の並びは、基板22がアセンブリに含まれないことを除いて、図3Aに示すものと同じである。実際には、窓50は完全に、反射防止「コーティング」56で構成される。
【0066】
図7A及び7Bに、8.0μm放射線を通すために最適化されたバンドパス光学特性をもたらす反射防止コーティングに対する構成例の性能を示す。この例は、図3Bに記載されたコーティング構造から基板22が除去された状態に対応する。図5aから、7.0~9.0μm帯域における未コーティングのゲルマニウム窓基板の光反射率が35.6%で一様であることを思い出されたい。図7aは、段階的屈折率の領域の上に、20対のMgO-Dy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板の反射率を示す。MgO層は、8.0μmにおいて4分の1光学波長の厚さ、たとえば1.356μm厚さである。Dy層は、8.0μmにおいて2分の1光学波長の厚さ、たとえば2.27μm厚さである。段階的屈折率は、厚さ8μmにわたってn=1.356からn=1.0である。このコーティングの7.0~9.0μm帯域における平均反射率は、3.68%である。
【0067】
図7Bは、段階的屈折率上に、10対のMgO及びDy二重層の外側領域によってコーティングされたゲルマニウム基板の反射率を示す。個別のコーティング二重層の構成及び段階的屈折率の領域は、図7Aに関して前述したものと同じである。このコーティングの7.0~9.0μm帯域における平均反射率は、3.70%である。MgO/Dyの10の二重層の除去は、このコーティングの平均の帯域内反射防止特性に最小限の効果をもたらすことが分かる。この例では、10の単位セルは、10*(1.356+2.27)μm、すなわち36.3μmのアブレーションに相当する。
【0068】
コーティングが帯域阻止特性のみをもたらす必要がある場合、基板の屈折率によってコーティング積層体に対する仕様は変わらない。したがって、同じ波長帯域にわたって帯域阻止特性用にデザインされた窓50は、交互多層単位セルに対して窓システム20と同じ仕様を使用してもよい。
【0069】
層52及び54用の材料、厚さ、及び他の変形は、層32及び34(図3)に関して前述したものと同様であってもよい。窓50に対する所望の機械的特性を達成するために、組成及び/または厚さにいくつかの変化を加えてもよい。
【0070】
図8に、極超音速ビークル10(図1)などの極超音速ビークルから光学検知する方法100のステップを示す。ステップ102では、センサー12(図1)などのセンサーが、極超音速ビークルの窓を通して光信号、データ、及び/または情報を受け取る。窓は、その下に窓基板があるかどうかにかかわらず、広くコーティングと考えられ得る、異なる材料の複数の交互層を有する、窓20(図2)または窓50(図6)などの説明した窓であってもよい。
【0071】
ステップ104では、本方法は、極超音速流が窓を過ぎて移動するときの窓の摩耗を含む。摩耗(または侵食)により、窓(またはコーティング)の層の一部が除去されるが、他の層は同じ場所に残され、窓の光学特性が維持される。
【0072】
ステップ106では、窓の摩耗限界に達したか否かを判定してもよい。
【0073】
その結果、飛行中にアブレーションが続くときに、センサーは性能の大きな変化を伴うことなく動作し得る。
【0074】
説明を明確にするために、本発明を平面(平坦)窓基材に付与されるコーティングに関して説明したが、本発明は、凹面、凸面、または二重湾曲の湾曲窓表面にも同様に適用してもよい。
【0075】
本発明を特定の実施形態または実施形態(複数)に関して図示し説明してきたが、本明細書及び添付図面を読んで理解すれば、同等の変更及び修正が当業者に思い浮かぶことは明らかである。特に、上記の要素(コンポーネント、アセンブリ、デバイス、組成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、特に指示しない限り、本明細書に例示した本発明の例示的な実施形態または実施形態(複数)において機能を実行する開示された構造と構造的に同等でなくても、説明した要素の特定の機能を実行する(すなわち、機能的に等価な)任意の要素に対応することが意図される。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの例示的実施形態のうちの1つ以上に関してのみ上記で説明している場合があるが、そのような特徴は、任意の所与の用途または特定の用途に対して望ましいかまたは有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】