(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】アニーリングされていないポリプロピレンコポリマーフィルムの連続的な冷延伸及び熱延伸によるポリオレフィンベースの微孔性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20240228BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
C08J5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555778
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 US2021023042
(87)【国際公開番号】W WO2022197301
(87)【国際公開日】2022-09-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ウェンイー ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム リップミースター
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
【Fターム(参考)】
4F071AA19
4F071AA20
4F071AF08Y
4F071AF15
4F071AF16
4F071AF20Y
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4F074DA08
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA34
4F074DA53
(57)【要約】
微孔性ポリマーフィルム及びそれを製造する方法が開示される。微孔性ポリマーフィルムは:(a)(i)50~95重量パーセントのポリプロピレンコポリマーであって、50~82重量%の総量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント、及び(ii)18~50重量%の総量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み;前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部が、少なくとも45重量%の量のエチレンの重合単位を含むポリプロピレンコポリマー;及び(b)5~50重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーを含み;エチレン-プロピレンエラストマー中の重合した単位の少なくとも45重量パーセントはエチレン単位である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔性ポリマーフィルムであって、
(a)前記フィルムの総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマー
を含み;前記微孔性ポリマーフィルムが、
(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、エチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又は前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量で、エチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)前記フィルムの総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、
を含み;
前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、微孔性ポリマーフィルム。
【請求項2】
(b)において、前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーが、前記フィルム中の(a)及び(b)の合計に基づいて、5~30重量パーセントである、請求項1に記載の微孔性フィルム。
【請求項3】
(b)において、前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーが、前記フィルム中の(a)及び(b)の合計に基づいて、5~20重量パーセントである、請求項2に記載の微孔性フィルム。
【請求項4】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントがエチレン単位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項5】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレン単位である、請求項4に記載の微孔性フィルム。
【請求項6】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はそのいくつかの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項7】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、10~40Muのムーニー粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項8】
(a)及び(b)からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項9】
(a)及び(b)を含む微孔性ポリマーフィルムの引張弾性率が、(a)のみで作製されたフィルムの引張弾性率よりも小さい、請求項1~8のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項9】
(a)及び(b)を含む微孔性ポリマーフィルムの水蒸気透過度が、(a)のみで作製されたフィルムの水蒸気透過度よりも小さい、請求項1~9のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項10】
(a)において、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントが、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項11】
(a)において、前記エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントが、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロックを含むエチレン-プロピレンジブロックコポリマー鎖セグメントであるか、又はポリプロピレンブロック及びエチレン-プロピレンコポリマーブロックを含むジブロックコポリマー鎖セグメントである、請求項10に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項12】
4V/A、UOP法578-11による少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径を有し、両方の特徴が、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項13】
前記無孔ポリマーフィルムが、(a)のドメインと(b)のドメインとを有し、(a)の前記ドメインが、ポリプロピレンの多数ポリマー相、前記多数ポリマー相内のエチレン含有コポリマーの複数の少数ポリマードメイン、及び前記少数ポリマードメイン内の主要ポリプロピレン相の包含相を特徴とする形態を更に有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項14】
ルーフ膜であるか、又はその構成要素である、請求項1~13のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項15】
少なくとも100μm~2.5mmの厚さを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルムを含む、医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項17】
前記微孔性ポリマーフィルムが、10%未満の、ASTM F2638-18によって定義される最大侵入、算出%Pmaxと同等である、微生物に対するバリアを有する、請求項16に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項18】
前記微孔性ポリマーフィルムが、1~35,000秒/100cm
3のガーレーゲージ通気度を有し、前記パッケージ中への又は前記パッケージからの、空気又は1つ以上の気体の流入又は流出を制御する、請求項16に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項19】
前記微孔性ポリマーフィルムが、熱成形及び熱融着可能である、請求項16に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項20】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法であって、前記方法ステップが:
A)混合物を提供することであって、前記混合物が、
(a)前記混合物の総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって:
(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又は前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量で、エチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)前記混合物の総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、の混合物であり、
前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、混合物を提供すること;
B)前記混合物から無孔フィルムを形成すること;並びに
C)前記無孔フィルムを、
(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び
(ii)50℃~140℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップ
を含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、
それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することを含む、方法。
【請求項21】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントがエチレン単位である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレン単位である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はそのいくつかの混合物である、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、10~40Muのムーニー粘度を有する、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が(a)及び(b)からなる、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(a)において、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントが、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマー(b)との混合物を形成するより前に、(a)の前記ポリプロピレンコポリマーを(a)の前記エチレン含有コポリマーとブレンドしてポリマーのブレンドを形成する、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの冷延伸ステップが、前記フィルムを少なくとも1つの方向において少なくとも10%延伸し、前記少なくとも1つの熱延伸ステップが、前記フィルムを少なくとも1つの方向において少なくとも20%延伸する、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記微孔性ポリマーフィルムが、4V/A、UOP法578-11による少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径を有し、両方の特徴が、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記微孔性ポリマーフィルムが、ASTM E96/E96M-16による、10~150permの範囲の透過度を有する、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、微孔性フィルムと、ハウスラップ、ルーフ膜、アクティブ及び医療用パッケージング並びに衛生及び医療用物品などの様々な最終用途における微孔性フィルムの応用とに関する。
【0002】
本発明は、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む特定のポリプロピレン(PP)コポリマーから誘導される微孔性ポリマーフィルムを提供する。本明細書で開示されるPPコポリマー微孔性フィルムは、多孔性を達成するための従来の手段を用いずに、すなわちホモポリマーポリオレフィンに関して実行される良好な結晶質のモルフォロジーを生じさせるための、空洞化を生じる無機フィラー、穿孔又は広範な予備アニーリングの使用なしで製造される。代わりに、フィルム多孔性は、無孔フィルムを製造するための特定の種類のPPコポリマーの使用、それに続く、本明細書に開示されるポリオレフィンベースのフィルム中において、ミクロ相分離によって誘導された細孔形成をもたらす、連続的な冷/熱延伸プロセスによって達成される。本明細書で開示される方法の1つの有利な特徴は、無孔フィルムが、冷/熱延伸プロセス前にアニーリングステップを必要とせず、且つ冷/熱延伸プロセス後にも熱硬化又はアニーリングステップを必要としないことである。
【0003】
本明細書には、PPコポリマーの組成物並びにその微孔性フィルムを製造及び使用するためのプロセスステップ及び方法が記載される。特に、液体の水に対して有効なバリアを維持しながら、水蒸気透過性を提供するようにこれらの微孔性フィルムを製造することができ、これらの透過性は、調整可能である。本明細書で開示される微孔性フィルムの特性バランスは、例えば、ハウスラップ、ルーフ膜並びに衛生及び医療用物品、パッケージング(アクティブパッケージング及び医療用パッケージングを含む)及び濾過などの応用において、これらのフィルムが用途を見出し得ることを示唆する。
【背景技術】
【0004】
微孔性フィルム、それを製造する方法及びその使用が本明細書に記載される。本発明は、押出成形フィルムキャスティング/ブロー成形及び乾式延伸プロセスによってポリオレフィンベースのフィルム中に微孔性構造を生じさせる、費用効果が高く且つ環境的に穏やかな様式を提供する。これらの微孔性フィルムの孔径及び多孔性は、様々な最終用途の応用において、最適化された性能を達成するために調整可能である(例えば、ハウスラップでの応用に関して、フィルムは、DuPont de Nemours,Inc.,Wilmington,DE,USAのTyvek(登録商標)ハウスラップなどの市販の製品と同等の多孔性及び透過性特性を有するように製造され得る)。代わりに、より小さい孔径により、壁を通して移動する空気に対するバリアを提供することができる。米エネルギー省によると、建物を暖めるか又は冷却するために消費されるエネルギーの40%までが失われ、空気漏洩する。
【0005】
様々な最終用途の応用は、通気性フィルムの使用を必要とするか又は少なくともそれから利益を得る。通気性フィルムは、水蒸気に対して比較的浸透性であり、液体に対して比較的不浸透性であるフィルムとして記載され得る。
【0006】
ハウスラップは、耐候性バリアとして機能し、水蒸気を外部に通過させることを可能にしながら、壁アセンブリに雨が入ることを防ぐ。従って、ハウスラップは、有効であるために、撥水性であり、且つ高い水蒸気透過度(浸透性)を有さなければならない。現在、ハウスラップを2つの区分:織物及び穿孔並びに不織物及び非穿孔に分類することができる。一般により安価な穿孔されたラップは、浸透性にするために顕微鏡で穿孔されたポリエチレン又はポリプロピレンから製造されるが、非穿孔ラップは、その不織繊維メッシュを水蒸気が通過することを可能にするポリオレフィン層からなる。現行の技術は、製造プロセスのための複数のステップを一般に含む。
【0007】
加えて、本発明は、ルーフ膜応用のためのポリオレフィンベースの微孔性フィルムを提供する。通気性ルーフ膜に関する大きい市場ニーズが存在する。ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)又は重合エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)から製造される現行の非浸透性ルーフ膜は、このニーズを満たすことができず、及びポリオレフィンベースの微孔性フィルムは、そのような現行のものと比較して、高い水蒸気透過性を有する低コストの代替を提供する機会を提供する。現行のルーフ膜の低い/小さい水蒸気透過性は、ルーフ膜の下で水分の堆積を導き、経時的にルーフ(例えば、軽量コンクリート構造)からのルーフ膜の層間剥離、次にルーフ構造の破損を引き起こす。厚いポリオレフィンベースの微孔性フィルムのより高い水蒸気透過度は、ルーフ膜の重要な必要条件、例えば高い水分蒸気透過度(浸透性)、例えば10perm以上;及び良好な撥水性(耐候性バリア)を満たす。ポリオレフィンベースの微孔性フィルムの耐候性は、抗UV剤を適用することによって更に強化することができる。
【0008】
ポリエチレンフィルムは、おむつバックシートなどの衛生吸収製品で広範に使用されている。おむつバックシートは、通気性又は非通気性として分類され得る。通気性バックシートは、典型的には、50重量%より高いCaCO3(又は他の無機フィラー)を充填され、且つ/又はミクロ空洞化されたフィルムを使用する。しかしながら、衛生吸収製品市場での活発な競争のため、フィルム製造業者は、好ましくは、更なるダウンゲージ(より薄いフィルム)などからコストを減少することも可能にしながら、改善された機械的特性性能などの製品性能の強化を可能にする差別化技術を追求することを求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、多数の最終用途市場では、液体である水の漏洩を防ぎながら、且つ良好な加工性及び機械的特性を確実にしながら、非常に薄いゲージを有し、高い水蒸気透過度を可能にする高い多孔性を有する、改善された通気性フィルムに対するニーズが存在する。本明細書で開示される微孔性フィルムの相互連結していない微小孔は、空気、水、細菌及び血液に対するより良好なバリア性能を提供し、このようなバリア性能は、ハウスラップ、ルーフィング膜、空気濾過、医療用パッケージング及び医療用バックテーブルカバーの応用のために必須である。PPコポリマーの比較的高い溶解温度のため、医療用パッケージングに関連する蒸気殺菌でのその応用が可能である。また、広範囲の調整可能な通気度は、これらの微孔性フィルムがアクティブパッケージング(サッシェ)の応用に関しても可能であることを示唆する。
【0010】
更に、フィルムの引張弾性率はフィルムの可撓性に関連し、更にそのようなより低い引張弾性率のフィルムは、改善された靭性、熱風溶接による設置、及び低温耐久性の可能性を有するので、より低い引張弾性率を有するPPコポリマーを含む微孔性フィルムがいくつかの用途に特に望ましいと考えられる。
【0011】
従って、本明細書に記載されるポリプロピレンコポリマー組成物を含有する組成物、それから製造される微孔性フィルム、それらを調製する方法及びそれらを使用する方法に対するニーズが存在する。本明細書で開示される本発明は、これら及び他の重要な目的を対象とし、これらの市場ニーズに対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特定の実施形態において、本明細書に記載される本発明は、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む1つ以上のポリプロピレンコポリマーを含むか、それからなるか、又はそれから実質的になり、微孔性ポリマーフィルムは、(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、微孔性ポリマーフィルムの重量に基づいて50~82重量%、又は微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、微孔性ポリマーフィルムの重量に基づいて18~50重量%、又は微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、エチレン含有コポリマー鎖セグメントとを含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又はエチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む。
【0013】
一実施形態において、微孔性ポリマーフィルムを形成する方法であって、前記方法ステップが、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって、(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%、又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%、又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントとを含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーを提供することと、(b)ポリプロピレンコポリマーから無孔フィルムを形成することと、(c)無孔フィルムを、(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び(ii)50℃~150℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップを含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することと
を含むか、それからなるか、又は実質的にそれからなる方法が開示される。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は、微孔性ポリマーフィルムを製造するための連続的プロセスである。特に、いくつかの実施形態において、本方法は、無孔フィルムの形成後にいかなるアニーリングステップもなしに進行し、且つ微孔性ポリマーフィルムの形成後にいかなるアニーリング又は熱硬化ステップもなしに進行し、及び微孔性ポリマーフィルムを製造するための連続的プロセスである。
【0015】
別の一実施形態では、本発明は、微孔性ポリマーフィルムに関し、これは:
(a)フィルムの総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマーを含み;微孔性ポリマーフィルムは、
(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)フィルムの総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、を含み;(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合した単位の少なくとも45重量パーセントがエチレンの単位である。
【0016】
更に別の代替実施形態では、本発明は更に、微孔性ポリマーフィルムを形成する方法に関し、前記方法ステップは、
A)混合物を提供することであって、混合物が、
(a)混合物の総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって:
(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分が、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)混合物の総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、の混合物であり、
エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、混合物を提供すること;
B)混合物から無孔フィルムを形成すること;並びに
C)無孔フィルムを、
(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び
(ii)50℃~140℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップ
を含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、
それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することを含む。
【0017】
本発明の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、記述と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】Tyvek(登録商標)ハウスラップの水銀圧入ポロシメトリーデータを示す。
【
図1B】熱延伸条件の範囲の変更後のPP C7054-07NA微孔性フィルムの水銀圧入ポロシメトリーデータを示す。
【
図2A】20ミクロンスケールバーによって示される、未延伸PP C7054-07NAフィルムのフィルム断面のSEM像を示す。
【
図2B】20ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での50%熱延伸(100℃)後の延伸されたPP C7054-07NAフィルムのフィルム断面のSEM像を示す。
【
図2C】5ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での50%熱延伸(100℃)後の延伸されたPP C7054-07NAフィルムのフィルム断面のSEM像を示す。
【
図3A】20ミクロンスケールバーによって示される、未延伸PP C7054-07NAフィルムのフィルム表面のSEM像を示す。
【
図3B】10ミクロンスケールバーによって示される、未延伸PP C7054-07NAフィルムのフィルム表面のSEM像を示す。
【
図3C】20ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での50%熱延伸(100℃)後の延伸されたPP C7054-07NAフィルムのフィルム表面のSEM像を示す。
【
図3D】10ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での50%熱延伸(100℃)後の延伸されたPP C7054-07NAフィルムのフィルム表面のSEM像を示す。
【
図4A】1ミクロンスケールバーによって示される、延伸前のPP C7054-07NAフィルムのTEM像を示す。
【
図4B】1ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後のPP C7054-07NAフィルムのTEM像を示す。
【
図4C】0.2ミクロンスケールバーによって示される、延伸前のPP INSPIRE(登録商標)114フィルムのTEM像を示す。
【
図4D】0.2ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後のPP INSPIRE(登録商標)114フィルムのTEM像を示す。
【
図5A】延伸前のPP C7054-07NAフィルムの広角X線分散(WAXS)データを示す。
【
図5B】100mm/秒での25%冷延伸(室温)、それに続く5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後のPP C7054-07NA微孔性フィルムの広角X線分散(WAXS)データを示す。
【
図5C】延伸前のPP TI4020Nフィルムの広角X線分散(WAXS)データを示す。
【
図5D】100mm/秒での25%冷延伸(室温)、それに続く5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後のPP TI4020N微孔性フィルムの広角X線分散(WAXS)データを示す。
【
図6A】1ミクロンスケールバーによって示される、延伸前のホモポリマーPP H314(20%)とPP C7054-07NA(80%)との20/80ブレンドからのフィルムのTEM像を示す。
【
図6B】0.5ミクロンスケールバーによって示される、100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後のホモポリマーPP H314(20%)とPP C7054-07NA(80%)との20/80ブレンドからのフィルムのTEM像を示す。
【
図7A】100mm/秒での25%冷延伸(室温)及び5mm/秒での100%熱延伸(100℃)後の厚さ762μm(30ミル)のPP C7054-07NAのフィルムの水銀圧入ポロシメトリーデータを示す。
【
図7B】100mm/秒での25%冷延伸(室温)、それに続く5mm/秒での150%熱延伸(100℃)後の厚さ762μm(30ミル)のPP C7054-07NAのフィルムの水銀圧入ポロシメトリーデータを示す。
【
図8】ロールを使用するフィルムの冷又は熱縦方向配向(MDO)のいずれかのための1つの適切な多段階延伸プロセスを示す。
【
図9】オーブンを使用するフィルムの横方向配向(TDO)のための1つの適切な多段階延伸プロセスを示す。
【
図10】ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマーから作製された任意の延伸前のキャストフィルムのTEM画像である。
【
図11】(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む90重量パーセントのポリプロピレンコポリマーと、(b)10重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーとから作製された、任意の延伸前のキャストフィルムのTEM画像である。
【
図12】(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む70重量パーセントのポリプロピレンコポリマーと、(b)30重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーとから作製された、任意の延伸前のキャストフィルムのTEM画像である。
【
図13】(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む70重量パーセントのポリプロピレンコポリマーと、(b)30重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーから作製された微孔性フィルムの2つの溶接サンプルの外観の写真であり;具体的には、R30-20ミルフィルム試料である。
【
図14】(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマーから作製された微孔性フィルムの2つの溶接サンプルの外観の写真であり;具体的には、PP-22ミルフィルム試料である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、以下の詳細な説明、例、図面及び特許請求の範囲並びにそれらの前述及び後述の説明を参照することによってより容易に理解することができる。しかしながら、本発明は、特に明記しない限り、開示される具体的な組成物、物品、デバイス、システム及び/又は方法に限定されず、従って当然ながら変動し得ることが理解されるべきである。本発明の態様は、組成物法定分類など、特定の法定分類で説明及び特許請求され得るが、これは、便宜上のものに過ぎず、当業者は、本発明の各態様が任意の法定分類において説明及び特許請求され得ることを理解するであろう。
【0020】
以下の本発明の詳細な説明は、本発明の現在知られている最良の態様を可能にする教示としても提供される。この目的を達成するために、本明細書に記載の様々な本発明の態様に対する変更形態及び改変形態がなされ得る一方、依然として本発明の有益な結果が得られることを当業者は認識及び理解するであろう。本発明の特徴の一部を選択することにより、他の特徴を用いることなく、本発明の利益の一部を得ることができることも理解されるであろう。従って、本発明に対する多くの改変形態及び適合形態が可能であることと、ある状況下では、このような多くの改変形態及び適合形態が更に望ましいことがあり得、そのため、このような多くの改変形態及び適合形態は、本発明の一部でもあることとを当業者は認識するであろう。
【0021】
本発明は、様々な形態で具体化することができるが、いくつかの実施形態の以下の説明は、本開示が本発明の例示と見なされるものとし、また本発明を、例示された特定の実施形態に限定することを意図されていないという理解をもってなされる。見出しは、便宜上与えられているに過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の任意の見出し又は任意の部分で例示される実施形態は、本開示の同じ又は任意の他の見出し又は他の部分で例示される実施形態と組み合わされ得る。
【0022】
その全ての可能な変形形態において本明細書に記載される要素の任意の組み合わせは、本明細書で特に指示がない限り又は文脈で特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0023】
特に明らかに明記しない限り、本明細書で説明される任意の方法又は態様は、その工程が特定の順序で行われることを要求すると解釈されることを決して意図されない。従って、方法の請求項が、特許請求の範囲又は説明において、工程が特定の順序に限定されることを具体的に述べていない場合、いかなる意味でも順序が推論されることを決して意図しない。これは、工程の配置若しくは動作フローに関する論理的事項、文法構成若しくは句読点から導出される単純な意味又は本明細書に記載される実施形態の数若しくはタイプを含む、解釈のためのあらゆる可能な非表現ベースに当てはまる。前述の概要及び以下の詳細な説明は、両方とも例示的及び説明的であるに過ぎず、限定的ではないことが理解されるべきである。
【0024】
本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物に引用されるものと関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に援用される。
【0025】
本明細書で用いられる専門用語は、単に特定の態様を説明するためのものであり、限定的であることを意図しないことが理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において及び後に続く特許請求の範囲において、本明細書で定義される多くの用語が言及されるであろう。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈がそうでないことが明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び又は代替として」を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、後述する事象、条件、成分又は状況が生じても又は生じなくてもよいこと及びその説明が、前記事象、条件、成分又は状況が生じる事例及び生じない事例を含むことを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む」又は「含んでいる」という用語を使用するいずれの開示も類似の開示を含み、代わりに、「含む」又は「含んでいる」は、「からなる」若しくは「からなっている」によって置き換えられるか、又は代わりに「から本質的になる」若しくは「から本質的になっている」によって置き換えられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「十分な」という句(例えば、「~するのに十分な条件」)は、十分な値又は条件が発現されるための機能又は特性を果たすことができるそのような値又は条件を意味する。下記で指摘されるように、必要とされる正確な値又は特定の条件は、用いられる材料及び/又は加工条件など、広く認められた変数に応じて実施形態ごとに変わり得る。
【0031】
「重量による」という用語は、そうでないと明記しない限り、成分と組み合わせて用いられる場合、その成分が含まれる配合物又は組成物の総重量に基づく。例えば、組成物又は物品中の特定の要素又は成分が8重量%(8wt.%とも記載される)の量で存在すると言われる場合、この百分率は、100%の全体組成百分率に関することが理解される。組成物中の成分Aの重量%は、組成物の全重量の百分率として表される成分Aの重量であり、従来、「組成物の全重量に基づくAの重量%」として記載される。いくつかの例では、成分の重量パーセントは、水なし(例えば、組成物の総重量を基準として約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満又は約0重量%の水)組成物の重量を示す、「乾量基準」の組成物の総重量を基準とする。
【0032】
本明細書において、数値、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10などの数値を開示する場合、以下の文は、典型的には、このような数値に従う。「前述の数字は、それぞれ「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」という用語と共に用いることができ、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を述べるために単独で、又は限定的な範囲の説明と組み合わせて用いることができる」。この文は、前述の数字のそれぞれが、単独で用いることができ(例えば、4)、語「約」に先行され得(例えば、約8)、句「少なくとも約」で前置され得(例えば、少なくとも約2)、句「約~未満」で前置され得る(例えば、約7未満)か、又は範囲を画定するための前置の語若しくは句のいずれかと任意に組み合わせて若しくは組み合わせなしで(例えば2~9、約1~4、8~約9、約1~約10等)で使用できることを意味する。更に、範囲が「約X以下」と記載されている場合、この句は、代わりに、「約X」と「約X未満」との組み合わせである範囲と同じものである。例えば、「約10以下」は、「約10又は約10未満」と同じものである。このような取り替え可能な範囲の記載が本明細書で意図される。他の範囲形式が本明細書で開示されるが、形式上の相違は、物質に相違があることを暗示すると解釈されるべきではない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「連続的」とは、その期間が連続的であるか、又はプロセスの期間と比較して瞬間的にのみ中断、中止若しくは停止されるプロセスを示す。出発材料又は反応物が中断なし若しくは実質的に中断なしに装置に供給される場合又は前記出発材料若しくは反応物の加工がバッチプロセスで実行されない場合、プロセスは、「連続的である」。
【0034】
本明細書で用いるところでは、用語「実質的に含まない」は、組成物の総重量を基準として、約1重量%未満、例えば、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、又は約0.01重量%未満の表示物質を有する組成物を意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、組成物について用いられた場合、組成物の総重量に基づいて少なくとも約60重量%、例えば少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約91重量%、少なくとも約92重量%、少なくとも約93重量%、少なくとも約94重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%又は約100重量%の特定の特徴又は成分を意味する。
【0036】
本明細書に開示される全ての分子量及び分子量に関連する他の値(例えば、多分散性指数など)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「モル質量分布」、「MMD」及び「分子量分布」という用語は、交換可能に使用され、それぞれのポリマー種のモル数又はポリマー鎖の数(Ni)及びその種のモル質量(Mi)又はポリマー鎖間の関係を説明する。ポリマーのモル質量分布は、ポリマー画分によって変更される場合がある。適用される統計的方法に応じて、異なる平均値が規定され得、本明細書に記載される。
【0038】
本明細書で使用する「数平均分子量」(M
n、又は
【数1】
)という用語は、試料中の全高分子鎖の統計的平均分子量を意味し、下記式によって定義され:
【数2】
式中、M
iは、鎖の分子量であり、N
iは、その分子量の鎖の数である。M
nは、分子量標準、例えばポリスチレン標準、好ましくは認定された又は追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法によってポリマーについて決定することができる。
【0039】
本明細書において使用される「重量平均分子量」(Mw、又は
【数3】
)という用語は下記式によって定義され:
【数4】
式中、M
iは、鎖の分子量であり、N
iは、その分子量の鎖の数である。M
nと比較して、M
wは、分子量平均に対する寄与を決定するために所定の鎖の分子量を考慮する。従って、所定の鎖の分子量が大きくなるほど、鎖のM
wへの寄与が大きくなる。M
wは、分子量標準、例えばポリスチレン標準、好ましくは認定された又は追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法によってポリマーについて決定することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、溶液中の分子がそれらのサイズによって分離されるクロマトグラフィー分離法を指す。分離は、分離カラムとして知られる多孔質粒子の層を試料分子が通過する際のその試料分子の差分排除によって達成される。GPCは、ポリマー分子の実質的に正確なモル質量分布を決定するために使用することができる。例えば、カラムを通過した液体画分(溶離液)を一定の量で回収する。ポリマーは、カラムを通して溶離するため、大きすぎてカラムの孔を通れない分子は、充填細孔体積から排除され、早めの保持時間で溶出する一方、より小さい分子は、カラムの孔に入り込み、より遅い時間で溶出する。溶出したポリマーの濃度は、例えば、屈折率(RI)及び紫外線(UV)などの分光技術によって測定することができる。溶離液の流れをRI、低角レーザ光散乱(LALLS)、多角度レーザ散乱(MALLS)、UV及び/又は粘度測定により連続的に分析することもできる。
【0041】
本出願に明記される様々な定量値における数値の使用は、特に明示的に指示しない限り、規定範囲内の最小値及び最大値が両方とも語「約」に先行されるかのように近似値として記述される。このように、表示値からのわずかな差異は、表示値と実質的に同じ結果を達成するために用いられ得る。また、範囲の開示は、列挙された最小値及び最大値間の全ての値並びにこのような値によって形成され得る任意の範囲を含む連続的な範囲を意図している。また、列挙された数値を、任意の他の列挙された数値に分割することによって形成され得る任意の及び全ての比(並びに任意のこのような比の範囲)も本明細書で開示される。従って、当業者は、多くのこのような比、範囲及び比の範囲が、本明細書で提示される数値に明確に由来するものであり得、全ての例において、このような比、範囲及び比の範囲が本発明の様々な実施形態を表すことを理解するであろう。
【0042】
本明細書では、「平均孔径」は、当業者に既知であるか又は水銀圧入ポロシメトリーの分野で既知である水銀圧入ポロシメトリー(以下に記載されるUOP法578-11による4V/A)によって測定される「平均細孔径」を指す。UOP法は、ASTM International,West Conshohocken,PA,USAから(又はwww.astm.orgによって)入手可能である。平均は、中央値平均であるため、この用語は、本明細書では、「中央値細孔径」と記載され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ポリプロピレンコポリマー」という用語は、ポリプロピレンのポリマー主鎖、側鎖又は鎖セグメントを含むコポリマーを意味し、特に、そのような主鎖、側鎖又は鎖セグメントは、15以上のプロピレンの連続的な重合単位を含む。本明細書で開示される場合、好ましいPPコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント(例えば、アイソタクチックPP)及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む。いくつかの実施形態において、エチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントであり、そのようなポリプロピレンコポリマーは、PP-EPコポリマーとして本明細書に記載されることもある。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上のポリプロピレンコポリマー(PPコポリマー)を含む微孔性ポリマーフィルムに関する。PPコポリマーは、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、PPコポリマーは、PPコポリマーの全重量に基づいて少なくとも約50重量%の量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み、及びポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの最大量は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、PPコポリマーは、PPコポリマーの全重量に基づいて約95重量%までの量でポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み、及びポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの最小量は、特に制限されない。例えば、PPコポリマーは、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、65、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、95%の(PPコポリマーの重量に基づく重量%での)量でポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの量は、PPコポリマーの全重量に基づく重量により、少なくとも約50重量%、約50重量%~約82重量%又は約60重量%~約82%であり得る。モル%の観点から、PPコポリマーは、40、42、43、44、45、46、47、48、49、50、52、54、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、79、80、82又は85%の(PPコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づくモル%での)量でポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの量は、PPコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも約43モル%、約43モル%~約79モル%又は約50モル%~約79モル%であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、PPコポリマーは、PPコポリマーの全重量に基づいて少なくとも約5重量%の量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントの最大量は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、PPコポリマーは、PPコポリマーの全重量に基づいて約50重量%までの量でエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントの最小量は、特に制限されない。例えば、PPコポリマーは、5、10、15、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54又は55%の(PPコポリマーの重量に基づく重量%での)量でエチレン含有コポリマー鎖セグメントに含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントの量は、PPコポリマーの全重量に基づく重量により、少なくとも約10重量%、約18重量%~約50重量%又は約25重量%~約40重量%であり得る。好ましくは、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントである。モル%の観点から、PPコポリマーは、10、15、17、18、19、20、21、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、55%、57又は60%の(PPコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのエチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づくモル%での)量でエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントの量は、PPコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて少なくとも約15モル%、約21モル%~約57モル%又は約21モル%~約45モル%であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの全重量に基づいて少なくとも45重量%のエチレンの重合単位を含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントのエチレンの最大量は、特に制限されない。例えば、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量は、40、42、44、45、46、47、48、49、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、75又は80%の(エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づく重量%での)量であり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位の量は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの全重量に基づいて少なくとも約45重量%、約45重量%~約80重量%又は約45重量%~約60重量%であり得る。モル%の観点から、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量は、50、52、54、55、56、57、58、59、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、85又は90%の(エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づくモル%での)量であり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位の量は、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも約55モル%、約55モル%~約80モル%又は約55モル%~約69モル%であり得る。好ましくは、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントであり、その場合、上記百分率は、EPコポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量%(上記の通り、重量%又はモル%のいずれか)を指す。
【0048】
PPコポリマー中の重合形態の全エチレン含有量は、PPコポリマーの重量に基づいて例えば10~30重量%若しくは更に15~25重量%などの少なくとも10重量%であるか、又はPPコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、PPコポリマー中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて例えば14~39モル%若しくは15~25モル%などの少なくとも14モル%である。
【0049】
微孔性ポリマーフィルムは、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む1つ以上のポリプロピレンコポリマー(PPコポリマー)から本質的になり得る。従って、少なくともいくつかの実施形態において、PPコポリマー中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントに関して上記で概説されたものと同一の量及び範囲は、微孔性ポリマーフィルム中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントの量及び範囲に関しても適切である。
【0050】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて少なくとも約50重量%の量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み、及びポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの最大量は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて約95重量%までの量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み、及びポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの最小量は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、95%の(微孔性ポリマーフィルムの重量に基づく重量%での)量でポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの量は、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて少なくとも約50重量%、約50重量%~約82重量%又は約60重量%~約82重量%であり得る。モル%の観点から、微孔性ポリマーフィルムは、40、42、43、44、45、46、47、48、49、50、52、54、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、79、80、82又は85%の(微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づくモル%での)量でポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの量は、微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも約43モル%、約43モル%~約79モル%又は約50モル%~約80モル%であり得る。
【0051】
微孔性ポリマーフィルム中に存在するポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントは、単にPPコポリマー成分のみから誘導され得るか、又はPPコポリマー成分と、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含む1つ以上の他のポリマー成分(ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントを含むPPホモポリマー若しくは別のコポリマー)とから誘導されるポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントの組み合わせであり得る。好ましくは、微孔性ポリマーフィルム中に存在するポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントは、PPコポリマー成分のみから誘導される。
【0052】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて少なくとも約5重量%の量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントの最大量は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて約60重量%までの量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントの最小量は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、5、10、15、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、55、56、58又は60%の(微孔性ポリマーフィルムの重量に基づく重量%での)量でエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントの量は、微孔性ポリマーフィルムの全重量に基づいて少なくとも約10重量%、約18重量%~約50重量%又は約25重量%~約40重量%であり得る。モル%の観点から、微孔性ポリマーフィルムは、10、15、17、18、19、20、21、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、55、57又は60%の(微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのエチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づくモル%での)量でエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含み得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントの量は、微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて少なくとも約15モル%、約21モル%~約57モル%又は約20モル%~約45モル%であり得る。
【0053】
微孔性ポリマーフィルム中に存在するエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、PPコポリマー成分のみから誘導され得るか、又はPPコポリマー成分と、エチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む1つ以上の他のポリマー成分(例えば、EPコポリマー)とから誘導されるエチレン含有コポリマー鎖セグメントの組み合わせであり得る。好ましくは、微孔性ポリマーフィルム中に存在するエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、PPコポリマー成分のみから誘導される。好ましくは、エチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントである。
【0054】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの全重量に基づいて少なくとも45重量%のエチレンの重合単位を含み、及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントのエチレンの最大量は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量は、40、42、44、45、46、47、48、49、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、75又は80%の(エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づく重量%での)量であり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位の量は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの全重量に基づいて少なくとも約45重量%、約45重量%~約80重量%又は約45重量%~約60重量%であり得る。モル%の観点から、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量は、50、52、54、55、56、57、58、59、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、85又は90%の(エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率としてのエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づくモル%での)量であり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルム中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン単位の量は、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも約55モル%、約55モル%~約80モル%又は約55モル%~約69モル%であり得る。好ましくは、PPコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントであり、その場合、上記百分率は、EPコポリマー鎖セグメント中のエチレン単位含有量%(上記の通り、重量%又はモル%のいずれか)を指す。
【0055】
微孔性ポリマーフィルム中の重合形態の全エチレン含有量は、微孔性ポリマーフィルムの重量に基づいて例えば10~30重量%若しくは更に15~25重量%などの少なくとも10重量%であるか、又は微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、微孔性ポリマーフィルム中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて例えば14~39モル%、若しくは15~25モル%、若しくは21~33モル%などの少なくとも14モル%である。
【0056】
特定の実施形態において、これらのPPコポリマーは、反応器で1つ以上の成分のPPホモポリマー及び1つ以上の成分のエチレン含有コポリマーから製造され得る。好ましくは、エチレン含有コポリマーは、エチレン-プロピレン(EP)コポリマーである。従って、本発明は、ポリプロピレンホモポリマー及びエチレン-プロピレンコポリマーの反応生成物から製造されるポリプロピレンコポリマーを含む微孔性ポリマーフィルムを提供する。
【0057】
エチレン含有コポリマーがエチレン-プロピレン(EP)コポリマーである特定の実施形態において、微孔性フィルムは、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントを含むPP-EPコポリマーから本質的になり得る。特定のそのような実施形態において、PP成分対EP成分の重量比は、50:50、55:45、60:40、65:35、67:33、70:30、72:28、74:26、76:24、78:22、79:21、80:20、81:19、82:18、84:16、86:14、88:12、90:10又は95:5であり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、重量比率は、少なくとも約60:40、約65:35~約85:15又は約90:10未満であり得る。
【0058】
エチレン含有コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー又はブロックコポリマーであり得、及びエチレン-プロピレンコポリマーは、ランダムEPコポリマー、交互EPコポリマー又はEPブロックコポリマーであり得る。例えば、EPコポリマー主鎖又は鎖セグメントを含むPPコポリマーは、ランダムEPコポリマー主鎖若しくは鎖セグメント、交互EPコポリマー主鎖若しくは鎖セグメント又はジブロックコポリマー主鎖若しくは鎖セグメントを含み得る。例えば、ジブロックコポリマーは、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロック、又はポリプロピレンブロック及びEPコポリマーブロック、又はポリエチレンブロック及びEPコポリマーブロックを含み得る。他のエチレン含有コポリマーも使用され得る。
【0059】
フィルムは、当技術分野で既知のいずれかの方法により、最も好都合には融解形態のPPコポリマー(又はそのブレンド)を得るために十分な温度まで加熱し、続いて押出形成若しくはインフレーション成形により、PPコポリマー又はそのポリマーブレンドから製造され得る。いくつかの実施形態において、フィルムは、多層膜であり得る。多層膜は、同時押出成形され得、それにより第1の層が第2の層と同時押出成形される。
【0060】
延伸前に、無孔ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム中における多数ポリプロピレン相(又はマトリックス)、エチレン-プロピレンコポリマー領域などのエチレン含有コポリマーの少数ポリマー領域及び少数ポリマー領域中の主要ポリプロピレン相の包含相を特徴とするモルフォロジーを有し得る。これにより、主要相から少数領域までの延伸力の有効な伝達が可能となり、少数領域が分割され、次いで延伸によって微小孔が開始し、発達する。従って、本明細書で開示される無孔フィルムは、微孔性フィルムを製造するために(本明細書で記載される)延伸プロセスを受け得る。
【0061】
一実施形態において、本明細書で記載される微孔性フィルムは、機械方向で配向される。微孔性フィルムは、機械方向での冷延伸及び冷延伸後の機械方向での熱延伸によって配向され得る。代わりに又は加えて、例えば、(機械方向を横切る)横方向などのいずれかの他の方向において、1つ以上の冷延伸及び/又は1つ以上の熱延伸のいずれかが実行され得る。冷延伸百分率は、25%~150%であり得、式I:
【数5】
を使用して決定される。冷延伸は、10℃~50℃の範囲の温度において実行され得るが、典型的には室温で実行される。それとは反対であることが明示されない限り、冷延伸は、室温で実行される。本明細書では、「室温」とは、15℃~25℃(及びより典型的には20~23℃)の温度であると考えられる。熱延伸百分率は、50%~500%であり得、式II:
【数6】
を使用して決定される。熱延伸は、90℃~140℃の範囲の温度で実行され得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、微孔性フィルムを製造する方法は、本明細書に記載される微孔性フィルムを提供することと、-20℃~50℃、好ましくは10℃~50℃の範囲の温度において、25%~200%の冷延伸百分率まで、機械方向でフィルムを冷延伸することとを含む。冷延伸百分率は、上記の式Iを使用して決定される。冷延伸後、50℃~150℃、好ましくは90℃~140℃又は100℃~140℃の範囲の温度において、50%~500%の熱延伸比までの機械方向での熱延伸にフィルムに供する。熱延伸百分率は、上記の式IIを使用して決定される。
【0063】
一実施形態において、延伸プロセスは、任意選択的に1つ以上の熱硬化ステップを伴う、1つ又は2つ以上の冷延伸ステップ、それに続く1つ又は2つ以上の熱延伸ステップを含む。プロセスは、任意選択的に、ポストアニーリングステップを含み得る。フィルム均一性は、重要であり、従って150℃未満で温度を保持することが好ましい。
【0064】
一実施形態において、延伸プロセスは、一連のローラーを含み得る製造ラインに沿ってフィルムが移動するときに実施され得る。機械方向の延伸度は、異なる速度ローラーを用いることにより又はローラーの異なる径(直径)により制御され得る。任意選択的に、横方向の延伸度が実行され得、これは、ウェブの端部を把持し、調節可能な分岐レールの対を下方向に横断する一連のクリップ間で横(横断)方向にフィルムを延伸することによって制御され得る。製造ラインのフロントエンドのポリマーフィルムは、(延伸前に)無色透明に見え得るが、それは、延伸プロセスが実行される領域に沿ってなど、製造ラインに沿って移動すると、不透明度が増加するように変化するように見え得、白色の曇りが発達し、次いで、フィルムは、細孔の形成(及び空隙空間からの関連する光散乱効果)のため、白色に変化する。
【0065】
微孔性フィルムを製造するために無孔フィルムを延伸するプロセスは、以前に報告されている(例えば、Druinらへの米国特許第3,801,404号明細書及びBierenbaumらへの米国特許第3,426,754号明細書を参照されたい)が、ポリエチレン又はポリプロピレンフィルムを使用するこれらの報告されたプロセスは、延伸プロセス前に(又は別々のフィルム延伸段階間の中間点において)、ときに延伸プロセス後の別々の熱硬化ステップと共にアニーリングステップを必要とする。しかしながら、アニーリング時間の延長は、微孔性フィルムを製造するための連続製造ラインを実行するための所望の目的の観点から問題となる。理想的には、アニーリングステップ延長に関する保持期間を必要とすることのない、1つの連続製造ラインでの連続押出成形及び細孔形成プロセスが好ましい。有利には、本明細書に記載されるPPコポリマー(及びそのブレンド)から製造されるフィルムは、延伸プロセスから微孔性フィルムを製造するために、いかなるアニーリングステップ又は熱硬化ステップも必要としない(この場合、以前に報告されたポリエチレン及びポリプロピレンフィルムのものと細孔形成の機構が異なる)。従って、本明細書に記載されるPPコポリマーは、微孔性フィルムを製造するための連続製造ラインにおいて延伸され得る無孔フィルムを形成するために加熱及び押出成形され得る。
【0066】
特定の実施形態において、本明細書に記載される本発明は、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む1つ以上のポリプロピレンコポリマーを含み、微孔性ポリマーフィルムは、(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、微孔性ポリマーフィルムの重量に基づいて50~82重量%又は微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、微孔性ポリマーフィルムの重量に基づいて18~50重量%又は微孔性ポリマーフィルム中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントとを含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む。
【0067】
一実施形態において、微孔性ポリマーフィルムを形成する方法であって、前記方法ステップは、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって:(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントとを含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーを提供することと、(b)ポリプロピレンコポリマーから無孔フィルムを形成することと、(c)無孔フィルムを、(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び(ii)50℃~150℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップを含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することとを含む方法が開示される。
【0068】
いくつかの実施形態において、本方法は、微孔性ポリマーフィルムを製造するための連続的プロセスである。特に、いくつかの実施形態において、本方法は、無孔フィルムの形成後にいかなるアニーリングステップもなしに進行し、且つ微孔性ポリマーフィルムの形成後にいかなるアニーリング又は熱硬化ステップもなしに進行し、及び微孔性ポリマーフィルムを製造するための連続的プロセスである。
【0069】
本発明は、本明細書に記載される方法によって製造される微孔性フィルムに関し、且つ本明細書に記載される微孔性フィルムから製造される物品にも更に関する。
【0070】
微孔性フィルムの全厚さは、特に制限されず、いくつかの実施形態において2.54mm(100ミル)未満であり得る。異なる最終用途によって異なるフィルム厚さが必要とされ得るか、又は逆に言えば、いくつかの最終用途に関して異なるフィルム厚さがより適切となり得る。例えば、ハウスラップとしての使用に適切な微孔性フィルムは、51~254μm(2~10ミル)、好ましくは102~178μm(4~7ミル)の厚さを有し得る。ヨーロッパでルーフ膜としての使用に適切な微孔性フィルムは、102~508μm(4~20ミル)、好ましくは127~254μm(5~10ミル)の厚さを有し得るか、又は北アメリカでルーフ膜としての使用に適切な微孔性フィルムは、508~2032μm(20~80ミル)、好ましくは1016~1524μm(40~60ミル)の厚さを有し得る。また、外科用パックのためのパッケージングラップなどの医療用途に適切な微孔性フィルムは、51~508μm(2~20ミル)、例えば127~254μm(5~10ミル)の厚さの範囲の厚さを有し得る。
【0071】
フィルムの厚さは、本明細書で論じられる微孔性フィルムの最終用途次第であり得、その全ての厚さ及び厚さの範囲の全てが本発明の微孔性フィルムに関して適切であると考えられる。従って、2540μm(100ミル)未満の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、本明細書に開示される。例えば、いくつかの実施形態において、(μmでの)微孔性フィルムの全厚さは、2540、2032、1524、1270、1016、762、508、381、254、203、178、152、127、102、51、38、25、13又は2.5μmであり得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。更なる実施形態において、微孔性フィルムの全厚さは、2.5~152.4μm(0.1~6ミル)、2.5~102μm(0.1~4ミル)、2.5~50.8μm(0.1~2ミル)であり得る。更なる実施形態において、フィルムの全厚さは、2.5~38.1μm(0.1~1.5ミル)であり得る。
【0072】
本明細書に記載されるフィルムは、選択された最終用途に関して望ましい有用なバリア特性を制御するために変更され得る、特定の孔径及び多孔性を有する微孔性である。ハウスラップフィルム及びルーフ膜に関して、例えば、水蒸気透過率(WVTR)及び透過度などの同一種類のバリア特性が重要である。水蒸気透過率は、フィルム厚さに依存する。透過度は、実質的に(異なるフィルム試料を比較するとき、フィルム全体で一定の圧力差を仮定して)、正規化された水蒸気透過率であり、フィルム厚さが調整されたWVTRを記録し、全ての「perm」は、本明細書では、US permである。1 US perm=5.72×10-8g/Pa・s・m2。建築ラップ用途に関して、適切な平均細孔径(nm)は、30~300nmであり得、及び10~100permの水蒸気透過度を達成するために適切なフィルム多孔性は、25~55%であり得る(及びWVTRは、70~700グラム/24h・m2の範囲であり得る)。また、ルーフ膜に関して、適切な中央値平均細孔径(nm)は、30~250nmであり得、及び10~70permの透過を達成するために適切なフィルム多孔性は、25~45%であり得る(及びWVTRは、70~500グラム/24h・m2の範囲であり得る)。医療用パッケージング分野では、同一バリア特性が重要であるが、透過性に関する焦点は、通常、ガーレー(Gurley)通気度として測定される空気(又は気体滅菌剤)透過性及び(代用微生物バリアとしての多孔性パッケージングに関する)ASTM F2638試験において最大侵入(算出%Pmax)によって測定される、細菌/微生物に対するバリアを対象とする。医療用パッケージングに関して、適切な平均細孔径(nm)は、300~1,000nmであり得、及び1~100秒/100cm3の有用な範囲のガーレー通気度及び10未満の算出%Pmax値を達成するために適切なフィルム多孔性は、55~75%であり得る(Pmaxについては、小さいほど良好である)。
【0073】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約20%の多孔性を有し、及び最大多孔性は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、約75%までの多孔性を有し、及び最小多孔性は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80%の多孔性(%)を有し得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約20%、約20%~約75%又は約25%~約70%の多孔性を有し得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約20nmの中央値平均細孔径(体積による)を有し、及び最大中央値細孔径は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、約2000nmまでの中央値細孔径を有し、及び最小中央値細孔径は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000nmの中央値細孔径(nm)を有し得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約20nm、約20nm~約1000nm又は約25nm~約1000nmの中央値細孔径を有し得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約1permの透過を有し、及び最大透過は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、約150permまでの透過を有し、及び最小透過は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140又は150permの透過(perm)を有し得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約10perm、約10perm~約100perm又は約20perm~約100permの透過を有し得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約1秒/100cm3のガーレー・ヒル多孔性(本明細書では「ガーレー通気度」と称する)を有し、及び最大ガーレー通気度は、特に制限されない。同一又は他の実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、約35000秒/100cm3までのガーレー通気度を有し、及び最小ガーレー通気度は、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000秒/100cm3のガーレー通気度(秒/100cm3)を有し得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも約1秒/100cm3、約1秒/100cm3~約10000秒/100cm3、又は約10秒/100cm3~約5000秒/100cm3、又は約10秒/100cm3~約1000秒/100cm3、又は約10秒/100cm3~約100秒/100cm3のガーレー通気度を有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、微孔性ポリマーフィルムは、約10未満の、ASTM F2638-18試験で算出%最大侵入(%Pmax)によって測定される、微生物に対するバリアを有し、及び最小算出%Pmaxは、特に制限されない。例えば、微孔性ポリマーフィルムは、10、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.03、0.02、0.015、0.010、0.005未満の算出%Pmaxを有し得る。前述の数字のそれぞれは、語「約」、「少なくとも約」又は「約~未満」に先行され得、前述の数字のいずれも、非限定的な範囲を記載するために単独で、又は限定的な範囲を記載するために組み合わせて用いることができる。例えば、限定されないが、微孔性ポリマーフィルムは、約10未満、約0~約10又は約0~約1の算出%Pmaxを有し得る。理想的には、算出%Pmax値は、ゼロであるが、検出に対する限界がゼロである可能性はない。算出%Pmaxは、約0.005以下~約10、又は約0.005以下~約5、又は約0.005以下~約1であり得る。
【0078】
本明細書に記載のフィルムは、高水蒸気透過度の水蒸気通気性フィルムを製造するために炭酸カルシウム、CaCO3などの充填剤の添加を使用しない。従って、本明細書に記載されるフィルムは、フィルム中に存在するポリマーの全重量に基づいて5重量%未満の充填剤を含む。例示的な充填剤としては、限定されないが、CaCO3、粘土、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、多孔性ガラスビーズ、多孔性ポリマービーズ、セラミックビーズ、三水酸化アルミニウム、三水酸化マグネシウム、ウォラストナイトウィスカー、木材粉、リグニン、澱粉、粘土、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボン繊維、カーボンナノ繊維又はその組み合わせが含まれ得る。更なる実施形態において、本明細書に記載されるフィルムは、フィルム中に存在するポリマーの全重量に基づいて3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満又は0.5重量%未満の充填剤を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるフィルムは、充填剤を含有しない(0重量%)。多くの製薬用途において、そのようなフィルム微粒子状汚染の可能性及びフィルムの粒子分断を最小化するため、0重量%の充填剤が好ましい。
【0079】
本明細書に記載されるフィルムは、特に意図された使用が屋外での応用を含み得る場合、UV安定剤を組み込み得る。代表的なUV安定剤添加剤としては、紫外線光吸収剤、例えばTinuvin(登録商標)329(BASF,Ludwigshafen,Germany)及びヒンダードアミン光安定剤、例えばTinuvin(登録商標)770又はChimassorb(登録商標)2020(両方ともBASF)が含まれる。例えば、ポリプロピレンコポリマーPP C7054-07NAの微孔性フィルムのための有効なUV安定剤パッケージは、0.75重量%のChimassorb(登録商標)2020、0.25重量%のTinuvin(登録商標)770、0.25重量%のTinuvin(登録商標)329及び0.15重量%のIrganox(登録商標)B215(酸化防止剤、BASF)の組み合わせを含み得る。UV添加剤を含まないPP C7054-07NA微孔性フィルムは、50℃での8週間のUV老化試験後、粉末に変化した。対照的に、上記のUV添加剤パッケージを有するPP C7054-07NA微孔性フィルムは、50℃での8週間のUV老化試験後、亀裂、黄変又は変形などのいずれの視覚的な欠陥も示さなかった。
【0080】
本明細書に記載されるフィルムは、他の添加剤、例えば酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール樹脂、例えばIRGANOX(登録商標)1010又はIRGANOX(登録商標)1076(Ciba Geigyによって供給される))、リン酸塩(例えば、IRGAFOS(登録商標)168(Ciba Geigyによって供給される))、加工助剤、UV光安定剤、熱安定剤、顔料、着色剤、静電気防止添加剤、難燃剤、スリップ剤、抗ブロック添加剤、殺生物剤、抗生物質剤及び浄化剤/核形成促進剤(例えば、HYPERFORM(登録商標)HPN-20E、MILLAD(登録商標)3988、MILLAD(登録商標)NX 8000(Milliken Chemicalから入手可能))を組み込み得る。他の添加剤は、それらの所望の目的を達成するために、当技術分野において典型的に使用される濃度でフィルムに含まれ得る。いくつかの例において、1つ以上の添加剤は、フィルムの全ポリマー重量に基づいて0~10重量%又はフィルムの全ポリマー重量に基づいて0~5重量%、0.001~5重量%、0.001~3重量%、0.05~3重量%若しくは0.05~2重量%の範囲の量で含まれる。充填剤が着色剤又は顔料などの他の用途を有する本明細書の実施形態において、それらは、5重量%未満の総量で存在する。
【0081】
本明細書には、ラミネートも記載される。ラミネートは、本明細書で上記された微孔性フィルムと、フィルムに少なくとも部分的に接着した不織基材とを含む。本明細書で使用される場合、「不織基材」は、規則的又は反復する様式以外で、その中に繊維又は糸が差し込まれる不織ウェブ、不織布及びいずれかの不織構造を含む。本明細書に記載される不織基材は、例えば、エアレイプロセス、メルトブロープロセス、スパンボンドプロセス及びボンデッドカーデッドウェブプロセスを含むカーディングプロセスなどの様々なプロセスによって形成され得る。不織ウェブとしては、スパンボンドウェブ、カードデッドウェブ、エアレイドウェブ、スパンレースドウェブ又はメルトブローウェブなどの単一ウェブが含まれ得る。しかしながら、不織布を製造するために使用される種々のプロセス及び材料に関連する相対的な強度及び弱さのため、特性のより良好なバランスを達成するために2層以上の複合構造が使用され得る。そのような構造は、多くの場合、種々の層を示す文字によって識別され、例えばスパンボンド層及びメルトブロー層からなる2層構造に対するSM、3層構造に対するSMS又はより一般的にSがスパンボンド層であり、及びXが独立してスパンボンド層、カーデッド層、エアレイド層、スパンレースド層又はメルトブロー層であり得、及びnがいずれの数でもり得るが、実際上、一般に5未満であるSXnS構造である。そのような複合構造の構造完全性を維持するために、層は、一緒に結合されなければならない。一般的な結合方法としては、熱カレンダー点結合、接着ラミネーション、超音波結合及び当業者に既知の他の方法が含まれる。これらの構造の全てが本発明で使用され得、特にラミネートの形態で微孔性フィルムと組み込まれる。
【0082】
本明細書に記載される微孔性フィルムは、例えば、ハウスラップ及びルーフィング膜などの建築外被のためのバリア層として、ハウジング及び建設における用途が見出されるべきである。
【0083】
本明細書には、物品も記載される。物品は、本明細書に上記されたフィルム又はラミネートを含む。いくつかの実施形態において、通気性バックシートは、本明細に上記された微孔性フィルムを含む。他の実施形態において、通気性バックシートは、ラミネートを含む。物品は、様々な衛生及び医療用途で使用され得る。いくつかの実施形態において、物品としては、おむつ、トレーニングパンツ及び成人失禁物品又は他の類似の吸収性衣服物品が含まれ得る。他の実施形態において、物品は、エアマスク、医療用ドレープ、ガウン、手術着及び保護衣類又は他の布(編物若しくは不織物)物品を含み得る。
【0084】
本実施形態は、上記のものと類似の問題の影響を受けやすい他の技術に適用可能である。例えば、フィルムは、布様バックシート及び手術室の医療用バックテーブル(又はエンドテーブル)カバー並びに医療用パッケージング(例えば、医療用殺菌ポーチ及び殺菌された外科装置を含有するための殺菌ポーチ)及びアクティブパッケージング(例えば、製薬タブレットボトル中の乾燥剤を含有するためのサッシェ)を製造するために使用され得る。これらは、全て本実施形態の範囲内にある。本明細書に記載される微孔性ポリマーフィルムの細孔間の間質空間は、(典型的にはそれらが遭遇する接触点の熱的結合により)結合されていても又はされていなくてもよい繊維を間質空間が含む、他の通気性繊維製品の候補と異なり、PPホモポリマー又はPPホモポリマー及びE/Pコポリマーの薄い固体セグメントを含む。本発明の微孔性ポリマーフィルムの利点は、本発明の延伸プロセスにより、孔径及び孔径分布のより良好な制御が可能となり、その結果、重なり合った繊維によって細孔が形成され、且つ孔径及び分布が数密度(繊維/cm3の数)及び繊維直径の分布に依存する他の(繊維状)多孔性構造よりも狭い細孔径分布がもたらされることである。更に、本発明の微孔性ポリマーフィルムは、数マイクロメートルの範囲の非常により大きい孔径を有する繊維様材料と比較して、ナノメートル範囲の直径を有するより小さい細孔を有する。類似の疎水性材料から繊維構造が製造され得るが、PP-コポリマー微孔性ポリマーフィルムのより小さい孔径により、血液及び体液に対するより高い抵抗を提供することができ、それにより、それらを手術室エンドテーブルの通気性カバーとして使用することが可能である。繊維様通気性フィルムと比較して、本明細書に記載される微孔性ポリマーフィルムの別の利点は、微孔性ポリマーフィルムの取扱い、切断、変換及び使用によって生じる破片の可能性が繊維構造に関する場合よりも非常に少ないことである。これにより、微孔性ポリマーフィルムは、電子プロセッシング、濾過並びに医療及び製薬の無菌環境などにおけるウルトラクリーン空間での使用に適切となる。
【0085】
微孔性フィルムは、規則的パッケージング(外被、フルーツパッケージング、粉末パッケージング、センシティブな電子部品のためのパッケージングなど)における及び(気体又は液体の分離のための)濾過媒体としての用途も見出され得る。フィルムは、単層フィルム又は多層膜であり得る。本明細書で使用される場合、「多層膜」は、少なくとも部分的に隣接して、好ましくは、しかし任意選択的に同一の広がりを有する2層以上の層を有するフィルムを指す。
【0086】
エチレン-プロピレンエラストマーを更に含むPPコポリマーフィルム
更に、PPコポリマー及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを18~50重量%の総量で含む、より低い引張弾性率を有する微孔性フィルムは、いくつかの用途に特に望ましいと考えられる。フィルムの引張弾性率は、フィルムの可撓性に関連し;更に、引張弾性率の低いフィルムは、靭性の改善、熱風溶接による設置、及び低温耐久性の可能性を有する。
【0087】
しかしながら、PPコポリマーがエチレン含有コポリマー鎖セグメントを有する場合であっても、ポリプロピレン通気性膜は依然として比較的剛性であり得ることが見出された。更に、エチレン-プロピレンゴムの添加により微孔性フィルムを更に改変し、その引張弾性率を低下させることができることが分かった。
【0088】
従って、いくつかの実施形態では、本発明は、微孔性ポリマーフィルムに関し、これは:
(a)フィルムの総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマーを含み;微孔性ポリマーフィルムは、
(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)フィルムの総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、を含み;(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合した単位の少なくとも45重量パーセントがエチレンの単位である。
【0089】
(a)のみを含有するか、又は(a)を含む、すなわち、(b)を除外した(i)及び(ii)の組み合わせについて記載されている発明について本明細書で前述した詳細、選択肢、変形、製造の詳細及びプロセス、並びに用途は全て、本明細書で特に明記しない限り、(a)及び(b)を含むか、又はそれからなる全ての発明に等しく適用されるか又は適していることを意図しているは理解される。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマーは、ポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン含有量と非常に類似又は同一のエチレン含有量を有する。そうすることで、PP通気性膜へのエチレン-プロピレンゴムの更なる組込みは、PPコポリマーの細孔形成能力に影響を及ぼさない。結果として、エチレン-プロピレンゴムは、改善された靭性等の更なる特性を有するPP通気性膜の可能性を提供すると考えられている。他の潜在的に改善された特性としては、極寒の天気の冬の間の屋根葺き用途におけるそのような膜の設置で経験され得るような、より低温でのより良好な可撓性が含まれる。PP通気性膜の多孔性及び通気性の増加の可能性と共に、熱溶接の改善及び/又は引裂強度の改善等の他の特性改善も可能であると考えられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマー(b)は、フィルム中の(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー及び(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーの合計に基づいて、5~30重量パーセントの量でフィルム中に存在する。いくつかの他の実施形態では、1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマー(b)は、フィルム中の(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー及び(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーの合計に基づいて、5~20重量パーセントの量でフィルム中に存在する。
【0092】
(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーにおいて、重合された単位の少なくとも45重量パーセントは、エチレンの単位である。いくつかの実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントは、エチレンの単位である。いくつかの他の実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントは、エチレンの単位である。
【0093】
エチレン-プロピレンエラストマーとは、エチレン-プロピレンセグメントを有する任意のエラストマー又はゴムを意味する。エラストマーは、粘弾性(すなわち、粘度と弾性の両方)を有するポリマーであり、一般的に伸張性及び弾性を有するポリマーによって証明されるように、他の材料と比較して一般的に低いヤング率及び高い破壊歪みと共に弱い分子間力を有する。
【0094】
好ましくは、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、単一の種類のエチレン-プロピレンエラストマーである。(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーがエチレン-プロピレンエラストマーの混合物である場合、好ましくは、これらのエラストマーの全てがそれぞれ上述の量の重合エチレン単位を有する;すなわち、(b)エチレン-プロピレンエラストマーにおいて、全てのエラストマーは、エチレンの単位である重合単位の少なくとも45重量パーセントを有するか;又はいくつかの実施形態では、全てが、エチレンの単位である、(b)エチレン-プロピレンエラストマーの重合単位の45~80重量パーセントを有するか;又はいくつかの他の実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレンの単位である。
【0095】
多くの実施形態において、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、好ましくは、エチレン-プロピレンゴムを含むが;しかしながら、いくつかの実施形態では、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムが望ましい場合がある。これらのゴムの混合物も可能である。好ましくは、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、エチレンプロピレン-ゴムのみ又はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムのみである。他の適切なエチレンプロピレンエラストマーとしては、ExxonMobil Chemical CompanyのVistalon(商標)、LanxessのBuna(登録商標)、及びMitsui ChemicalsのMitsui EPT(商標)を挙げることができる。前述の量の重合エチレン単位を有する任意のエチレン-プロピレンエラストマーが、(b)において好適であろう。
【0096】
(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、ASTM D1646-07で測定して、10~40Muのムーニー粘度を有することが好ましい。エラストマーの混合物を使用する場合、各エラストマーは、ASTM D1646-07の下で測定して10~40Muのムーニー粘度を有する。
【0097】
微孔性ポリマーフィルムは、前述のように(a)及び(b)を含む。いくつかの実施形態では、微孔性ポリマーフィルムは、前述のように(a)及び(b)からなる。いくつかの実施形態では、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、(a)のみで作製されたフィルムの引張弾性率よりも小さい引張弾性率を有する。いくつかの他の実施形態では、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、(a)のみで作製されたフィルムの水蒸気透過度よりも低い水蒸気透過度を有する。
【0098】
微孔性フィルムにおいて、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマーにおいて、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて45重量%~80重量%の量、又はエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて55モル%~86モル%の量でエチレンの重合単位を含む。
【0099】
(a)及び(b)を含む、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムのいくつかの実施形態では、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである。
【0100】
(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムのいくつかの実施形態において、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントを含み、(a)中のエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントの少なくとも一部は、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の総モル含有量に対する百分率として、エチレン-プロピレン共重合体鎖セグメントの重量に基づいて45重量%~80重量%の量のエチレンの重合単位を含むか、又はエチレン-プロピレン共重合体鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて55モル%~86モル%を含む。
【0101】
いくつかの更なる実施形態において、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のこれらのエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントは、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロックを含むエチレン-プロピレンジブロックコポリマー鎖セグメントであるか、又はポリプロピレンブロック及びエチレン-プロピレンコポリマーブロックを含むジブロックコポリマー鎖セグメントである。
【0102】
いくつかの実施形態において、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径(4V/A、UOP法578-11による)を有し、両方の特徴は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される。
【0103】
いくつかの実施形態では、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、(a)のドメイン及び(b)のドメインを有する無孔ポリマーフィルムであり、(a)のドメインは、ポリプロピレンの多数ポリマー相、多数ポリマー相内のエチレン含有コポリマーの複数の少数ポリマードメイン、及び少数ポリマードメイン内の主要ポリプロピレン相の包含相を特徴とする形態を更に有する。
【0104】
(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムには複数の用途があることが分かっている。多くの用途では、少なくとも100μm~2.5mmの厚さを有する無孔微孔性ポリマーフィルムが特に適している。
【0105】
例えば、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、ルーフ膜又はルーフ膜の構成要素としての使用に適している。PVC、TPO又はEPDMで作製された現行のルーフ膜の低い/小さい透過性は、ルーフ膜の下(例えば、金属ルーフ、及び/又は軽量コンクリート構造上)で水分の堆積を導き、経時的なルーフからのルーフ膜の層間剥離、次にルーフ構造の破損を引き起こす。(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、高い水蒸気透過性を有する液体水密製品を提供する機会を提供する。
【0106】
(a)及び(b)を含む、又はこれらからなる微孔性フィルムはまた、医療用パッケージング又はアクティブパッケージング物品、又はバックテーブルカバーを含む医療用カバーにおけるような使用にも適している。医療用パッケージング又はアクティブパッケージング物品、又は医療用バックテーブルカバーに使用される場合、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、ASTM F2638-18によって定義されるように、10%未満の算出された最大浸透%Pmaxに相当する微生物に対するバリアを有することが好ましい。同様に、医療用パッケージング又はアクティブパッケージング物品、又は医療用バックテーブルカバーに使用される場合、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、1~35,000秒/100cm3のガーレー通気度を有することが好ましく、これは、包装内外への空気又は1つ以上のガスの流入又は流出を制御する。(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる微孔性ポリマーフィルムは、熱成形及び熱融着可能であり、医療用パッケージング又はアクティブパッケージング物品、又は医療用バックテーブルカバー、及び他の多くの異なる用途に特に有用である。
【0107】
エチレン-プロピレンエラストマーを更に含むPPコポリマーフィルムの形成方法
更に別の代替実施形態では、本発明は更に、微孔性ポリマーフィルムを形成する方法に関し、前記方法ステップは、
A)混合物を提供することであって、混合物が、
(a)混合物の総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって:
(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%又はポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分が、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%又はエチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量でエチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)混合物の総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、の混合物であり、
エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、混合物を提供すること;
B)混合物から無孔フィルムを形成すること;並びに
C)無孔フィルムを、
(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び
(ii)50℃~140℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップ
を含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、
それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することを含む。
【0108】
(a)のみを含有するか、又は(a)を含む、すなわち、(b)を除外した(i)及び(ii)の組み合わせについて記載されている発明について本明細書で前述した、設備を含む、詳細、選択肢、変形、製造の詳細及びプロセス、並びに用途は全て、本明細書で特に明記しない限り、(a)及び(b)を含むか、又はそれからなる全ての発明に等しく適用されるか又は適していることを意図しているは理解される。具体的には、本明細書で前述したフィルムの機械方向及び横方向の延伸に関する前述の詳細及び設備は全て、他の具体的な違いが示されない限り、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなるフィルムを処理するのに適している。(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物を提供することは、限定されないが、スクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機で成分を配合することによって達成することができる。無孔フィルムの形成は、限定されないが、混合後に押出機から直接フィルムをキャストすることによって達成することができる。キャストフィルムを冷及び熱延伸工程に供することは、本明細書で論じられ、例示された方法によって達成することができる。
【0109】
微孔性ポリマーフィルムを形成するいくつかの好ましい実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマーは、ポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレン含有量と非常に類似又は同一のエチレン含有量を有する。そうすることで、PP通気性膜へのエチレン-プロピレンゴムの更なる組込みは、PPコポリマーの細孔形成能力に影響を及ぼさない。結果として、エチレン-プロピレンゴムは、改善された靭性等の更なる特性を有するPP通気性膜の可能性を提供すると考えられている。他の潜在的に改善された特性としては、極寒の天気の冬の間の屋根葺き用途におけるそのような膜の設置で経験され得るような、より低温でのより良好な可撓性が含まれる。PP通気性膜の多孔性及び通気性の増加の可能性と共に、熱溶接の改善及び/又は引裂強度の改善等の他の特性改善も可能であると考えられる。
【0110】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、混合物中の(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー及び(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーの総重量に基づいて、5~30重量パーセントの量で混合物中に存在する。いくつかの他の実施形態では、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、混合物中の(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー及び(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーの総重量に基づいて、5~20重量パーセントの量で混合物中に存在する。(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーにおいて、重合された単位の少なくとも45重量パーセントは、エチレンの単位である。いくつかの実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントは、エチレンの単位である。いくつかの他の実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントは、エチレンの単位である。好ましくは、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、単一の種類のエチレン-プロピレンエラストマーである。(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーがエチレン-プロピレンエラストマーの混合物である場合、好ましくは、これらのエラストマーの全てがそれぞれ上述の量の重合エチレン単位を有する;すなわち、(b)エチレン-プロピレンエラストマーにおいて、全てのエラストマーは、エチレンの単位である重合単位の少なくとも45重量パーセントを有するか;又はいくつかの実施形態では、全てが、エチレンの単位である、(b)エチレン-プロピレンエラストマーの重合単位の45~80重量パーセントを有するか;又はいくつかの他の実施形態では、(b)エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレンの単位である。
【0111】
微孔性ポリマーフィルムを形成するいくつかの実施形態において、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、好ましくは、エチレン-プロピレンゴムを含むが;しかしながら、いくつかの実施形態では、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムが望ましい場合がある。これらのゴムの混合物も可能である。好ましくは、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、エチレンプロピレン-ゴムのみ又はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムのみである。他の適切なエチレンプロピレンエラストマーとしては、ExxonMobil Chemical CompanyのVistalon(商標)、LanxessのBuna(登録商標)、及びMitsui ChemicalsのMitsui EPT(商標)を挙げることができる。前述の量の重合エチレン単位を有する任意のエチレン-プロピレンエラストマーが、(b)において好適であろう。
【0112】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態において、(b)1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーは、ASTM D1646-07で測定して、10~40Muのムーニー粘度を有することが好ましい。エラストマーの混合物を使用する場合、各エラストマーは、ASTM D1646-07の下で測定して10~40Muのムーニー粘度を有する。
【0113】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、微孔性ポリマーフィルムを作製するために使用される混合物は、前述のように(a)及び(b)を含む。微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、微孔性ポリマーフィルムを作製するために使用される混合物は、前述のように(a)及び(b)からなる。微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムは、(a)のみで作製されたフィルムの引張弾性率よりも小さい引張弾性率を有する。微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムは、(a)のみで作製されたフィルムの水蒸気透過度よりも小さい水蒸気透過度を有する。
【0114】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態において、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマーにおいて、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて45重量%~80重量%の量、又はエチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて55モル%~86モル%の量でエチレンの重合単位を含む。
【0115】
(a)及び(b)を含む、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである。
【0116】
(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態において、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のエチレン含有コポリマー鎖セグメントは、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントを含み、(a)中のエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントの少なくとも一部は、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位の総モル含有量に対する百分率として、エチレン-プロピレン共重合体鎖セグメントの重量に基づいて45重量%~80重量%の量のエチレンの重合単位を含むか、又はエチレン-プロピレン共重合体鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて55モル%~86モル%を含む。
【0117】
いくつかの更なる実施形態において、(a)1つ以上のポリプロピレンコポリマー中のこれらのエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントは、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロックを含むエチレン-プロピレンジブロックコポリマー鎖セグメントであるか、又はポリプロピレンブロック及びエチレン-プロピレンコポリマーブロックを含むジブロックコポリマー鎖セグメントである。
【0118】
(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態において、得られるフィルムは、少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径(4V/A、UOP法578-11による)を有し、両方の特徴は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される。
【0119】
(a)及び(b)を含むか、又はこれらからなる混合物から作製される微孔性ポリマーフィルムを形成する方法のいくつかの実施形態では、フィルムは(a)のドメイン及び(b)のドメインを有する無孔ポリマーフィルムであり、(a)のドメインは、ポリプロピレンの多数ポリマー相、多数ポリマー相内のエチレン含有コポリマーの複数の少数ポリマードメイン、及び少数ポリマードメイン内の主要ポリプロピレン相の包含相を特徴とする形態を更に有する。
【0120】
本発明は、以下の実施例で更に明らかにされ、ここで、部及びパーセントは全て、別に明記されない限り、重量による。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方、単に例示として示され、且つ決して限定的なものと解釈されるべきでないことが理解されるべきである。前述の考察及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の必須の特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲を逸脱することなく、種々の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更形態及び改変形態をなし得る。
【実施例】
【0121】
材料
ホモポリマーポリエチレンは、本明細書では、PEと記載される。本明細書で使用されるホモポリマー-PEは、Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能な樹脂、HDPE 6400である。
【0122】
ホモポリマーポリプロピレンは、本明細書では、PPと記載される。本明細書で使用されるホモポリマー-PPは、Braskem,USA(Philadelphia,PA,USA)から入手可能な樹脂、PP H314である。
【0123】
エチレン-プロピレンコポリマーは、本明細書では、EPと記載される。多数のEP及びPP-EPコポリマー並びにEP又はPP-EPコポリマーとのホモポリマー-PPのブレンドは、例えば、実施例2及び実施例6で詳述されるように本明細書に記載される。
【0124】
本研究で使用されるポリプロピレンコポリマー樹脂は、Braskem USAから購入されたPP C7054-07NA、すなわちPP鎖セグメント及びエチレン-プロピレンランダムコポリマー鎖セグメントを含むPP-EPコポリマーである。PP C7054-07NA樹脂は、32.9重量%のエチレン-プロピレンコポリマー(及び100-32.9=67.1%のPP)を含有するが、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメント中のエチレン含有量は、49.7重量%である。それは、0.9g/cm3の密度と、230℃及び2.16kgにおける7g/10分のメルトインデックスとを有する。表2に他のPPコポリマー樹脂が記載される。
【0125】
「Tyvek(登録商標)」という用語は、それ自体、Tyvek(登録商標)ハウスラップ(約32%の多孔性;37nmの平均細孔径)を意味し、「Tyvek(登録商標)1073B」という用語は、医療用パッケージング層として使用されるTyvek(登録商標)不織布の特別グレード(約65%の多孔性;2500nmの平均細孔径)を意味する。
【0126】
キャストフィルム
PP C7054-07NA樹脂キャストフィルムは、1.25インチのKillion一軸押出機及び約762μm(30ミル)のダイ間隔の幅30インチのキャストダイからなるフィルムキャストライン上で製造された。本明細書に記載される(コ)ポリマーキャストフィルムを製造するために使用される76.2cm(30インチ)のダイを使用するパイロット規模押出成形ラインの(押出機領域1~8に関する)典型的な温度プロファイルは、以下の通りであり得る(例えば、PPコポリマーフィルムに関する):180、200、210、210、210、210、210、210℃。
【0127】
岩本製二軸ストレッチャー上でのフィルムの一軸及び二軸延伸
一軸延伸(機械方向配向、MDO)手順: フィルムを、予め定められた寸法で切断した。接着テープを(横方向で)フィルムの両端部に取り付け、それを専用設計の試料ホルダーに適合させた。試料ホルダープレートを5本のボルトで一緒に固定した。次いで、試料ホルダーの脚部を岩本製二軸ストレッチャー(BIX-703、岩本製作所)のグリップの背部上に取り付けた。フィルムに機械方向で一軸冷延伸を行った。その後、試料チャンバーのドアを閉鎖し、試料チャンバーを100℃まで加熱し、それに続いて1分間、この温度に保持した。その後、フィルムに機械方向で一軸熱延伸を行った。冷延伸度は、
【数7】
によって定義され、及び熱延伸度は、
【数8】
によって定義される。
【0128】
延伸後、微孔性構造の形成のため、フィルムは、白色に変化した。
【0129】
二軸延伸に関して、PPベースのフィルムを、予め定められた寸法(70mm×70mm)に切断し、次いで岩本製二軸ストレッチャーのグリップ上に装填した。フィルムに室温において両方向で同時二軸延伸を行い、次いで100℃まで加熱した。1分間、100℃に保持した後、フィルムに高温において両方向で同時二軸延伸を行った。二軸延伸に関する延伸度は、単軸延伸に関するものと同様に定義される。
【0130】
示差走査熱量測定法(DSC)
試料の一部分の重量を測定し、アルミ製の密封DSCパン(P/N 900793.901のパン及び900794.901のふた)中に入れ、密閉した。試料重量は、それぞれの試料に関して約1~4mgであった。自動サンプラー、50ml/分の窒素パージ及び機械式冷却アクセサリーを備えたTA Instruments Q2000 DSC(示差走査熱量計)(P/N 970001.901)(s/N 2000.0877)中で試料をスキャンした。加熱-冷却加熱サイクルに関する実行パラメーターは、10℃/分において-20℃~200℃であり、0.1秒/ptのサンプリング間隔であった。Universal Analysis V4.7A TA Instrumentsソフトウェアを使用してスキャンを分析した。DSC走査から得られる融点は、機器ソフトウェアのアウトプットとして示され、熱フローにおけるピーク温度対第2の加熱サイクルでの温度プロットに対応する。
【0131】
水銀圧入ポロシメトリー
水銀圧入ポロシメトリー分析は、ASTM D4404-10に従ってMicromeritics Autopore IV 9520上で実行された。水銀分析前に、真空下、室温で試料を機械的に脱気し、試料の表面からいずれの物理吸着した種(すなわち水分)も除去した。
【0132】
試験条件は、Hg充填圧力0.50psia、Hg接触角130°、Hg表面張力485ダイン/cm、Hg密度13.53g/mL、30分の排気時間、5cm3バルブを有する小口径硬度計(ソリッドタイプ:0.392ステム体積)、30秒の平衡時間、92点圧力テーブル(75圧入プラス17押出成形圧力点)及び機械排気<50μm Hgを含む。低-高圧力交差点を約46psia(3.8μm)で収集した。使用される圧力テーブルは、0.5~60,000psiaのログスケールでの圧力の増分分布を可能にするように作成され、直径0.003~400μmから孔径(細孔径)を検出するために使用される。圧力が真空からほぼ60,000psiaの最大まで段階的に増加すると、水銀は、より小さい細孔中に押し込まれる。UOP法578-11により、平均細孔径(4V/A)は、全細孔が長さ(l)及び直径(d)を有する直円柱であるという仮定に基づいて算出される。全細孔体積(V=πd2l/4)が全細孔面積(=πdl)によって分割されるとき、平均細孔径(d)は、4V/Aである。
【0133】
機器が適切に機能していたことを確認するために、シリカ-アルミナ参照材料、ロットA-501-46を分析した。参照試料の報告された(体積による)中央値細孔径は、0.0072±0.0005μmである。Autoporeは、(体積による)中央値細孔径が0.0072μmであると報告した。
【0134】
走査電子顕微鏡検査法(SEM)
試料を凍結割断し、カーボンテープによってSEMスタブに取り付け、次いで帯電を緩和するために30nmの金でコーティングした。二次電子(TLD)画像処理モードで、FEI Nova NanoSEMモデル600を利用して、各試料の上部表面及び割断表面を特定の位置及び5000倍~10,000倍の範囲の様々な倍率で画像化した。試料へのビーム損傷を防止するために、約5mmの作業距離(像に焦点が合っているときのレンズの最終極片から試料までの距離)において、3~4のスポット径(スポット径ノブの規模)で加速電圧を3~5kV内に設定した。
【0135】
透過電子顕微鏡検査法(TEM)
部分が収集可能であるように、PPコポリマーフィルムを小さい台形に切り取った。Leica EM UC7ミクロトーム上において、ダイヤモンドナイフを使用して、周囲温度で厚さ約100ナノメートルの部分を収集し、観察のために400メッシュバージンTEMグリッド上に配置させた。ミクロトームされたフィルムを周囲温度で3~5分間、0.5M(モル/L)の四酸化オスミウム水溶液の気相によって染色した。Gatan MultiScan CCDカメラを使用して、120kVの加速電圧で運転されるFEI Tecnai 12上でTEM像を収集した。
【0136】
X線回折技術
小角X線散乱(SAXS)及び広角X線回折(WAXD)研究は、DND-CAT(5-ID-Dビームライン)を使用して、Advanced Photon Source(アルゴンヌ国立研究所)において実行された。X線源として、17keV(λ=0.7923Å)のX線エネルギー設定で標準APS Undulator Aが使用された。全ての試料は、通常のビーム透過モードで行われた。検出器の校正は、ベヘン酸銀及び六ホウ化ランタン標準参照材料を使用して実行された。二次元分散パターンは、二次元像の放射集積化によって分散ベクトルに対する分散強度の一次元データセットに減少された。一次元パターンの減少及び分析は、市販のソフトウェアパッケージJADEを使用して実行された。
【0137】
水蒸気透過率(WVTR)測定(ASTM F1249)
本研究に関してWVTRを評価するために、Mocon 3/33モデルMGモジュールが使用された。試験条件は、ASTM法F1249による37.8℃/100% RHであった。20.3cm2(直径約2インチ)まで試験面積を集中させるために、76.2μm(3ミル)アルミ箔/アクリル系接着剤マスクを用いてフィルム試料を調製した。フィルム試料によって試験セルを2つの半分部分に分割した。外側の空気がセル中に漏出することを防ぐために、試験セルの端部を確実に密閉した。これは、セル(キャリアガス側)へのフィルムの封着を補助するためのシリコーングリースを用いて達成され、ゴムOリングを使用し、外側のセルカバー又は水蒸気側面を密閉した。標準試料面積は、50cm2であった。典型的な試験中、水蒸気(試験気体)は、試験セルの外側半分に連続的に入った。この気体は、100%相対湿度(湿潤スポンジ)であるか、又は30~90%の相対湿度で機器によって発生させることが可能であった。水蒸気は、フィルム試料を透過し、次いでキャリア気体(乾燥窒素)に乗ってIRセンサーまで運送され、そこで、フィルムを通過する水蒸気の量に正比例する電流が発生した。コンピュータによってIRセンサーからのデータが収集され、試験材料の水蒸気透過率を説明する最終値が算出された。WVTRデータは、グラム/24h・m2の単位で報告される。正規化されたWVTRは、フィルム厚さを考慮し、g・cm/24h・m2として報告される。
【0138】
水蒸気透過度(ASTM E96/E96M-16)
水蒸気透過度は、ASTM E96/E96M-16、材料の水蒸気透過に関する標準試験法、乾燥剤法に従って決定された。試験片を、90.3mmの直径を有する円形ディスクに切断した。皿のポケットに試験片の6.4mm(1/4インチ)以内まで塩化カルシウムを充填した。次いで、金属プレートが環境に暴露される試験片の直径76.1mmを出た状態で試験片をポケットのすぐ上の皿の上に適合した。製品の外側表面が乾燥剤に向かっている状態で試験片が調製された。次いで、それぞれ23±2℃及び50±5%のRHの温度及び相対湿度(RH)で運転する制御チャンバー中にアセンブリを配置した。次いで、アセンブリの重量を定期的に測定した。水蒸気透過度データは、「perm」の単位で報告され、グラム/24h・m2の単位での水蒸気透過に透過を変換することが可能である。本明細書では、「perm」という単位のいずれの使用もUS permを意味する。1 US perm=5.72×10-8g/(Pa・s・m2)。
【0139】
ガーレー・ヒル多孔性(ガーレー通気度)
微孔性フィルムのガーレーフロー値を測定するために、Genuine Gurley Instruments Densometer及びLorentzen & Wettre L&W Model 121D Densometerを使用した。デンソメーターにより、気体(例えば、この試験では従来から使用されている100cm3の空気)の所与の体積がフィルムの直径1インチの面積を(且つ特定の圧力勾配、従来通り、約4.9インチの水で)通り抜けるために必要とされる時間が記録される。試験手順は、TAPPI T-460 OM-11法に合致した。試験前に、ガーレー通気度(19.2秒)の既知の値を有する校正プレートを使用することによって確認試験が実行された。較正プレートは、100cm3の空気を19.2秒以内に通過させた。検証が完了すると、微孔性フィルム試料を試験した。透過性が試験試料の面積及び圧力に依存しているとしても、これらの値は、機器に関して標準化されるため、結果は、従来通りにs/100cm3で報告されるか、又はときに(空気の100cm3の試料も標準化されるため)単に秒、sとして報告される。本明細書では、ガーレー・ヒル多孔性は、ガーレー通気度として記載され、当技術分野で一般的であるように秒/100cm3で報告される。
【0140】
Grab引張試験
Grab引張試験は、Instron Tester上で実施された。試験手順は、ASTM D 5034-09(2013)試験法に従った。グラブ試験片は、等しく把持されていない上部及び下部部分を確実にするために、試験片幅の中央で把持された。クロスヘッド速度は、全ての実験に関して12インチ/分であった。Instronにより、ピーク負荷における引張強さ(単位幅あたりのニュートン)及び伸長(%)が記録される。
【0141】
核磁気共鳴(NMR)分光法
約0.25gの試料を小片に切断し、10mmのNMR管に挿入した。10mMの緩和剤を含有する2.6mlのテトラクロロエタン-d2(TCEd2)を添加した。次いで、試料を115℃で加熱した。以下のパラメーターを使用して、10mmの極低温プローブを備えたBruker 600MHz分光計上で13C NMR及び拡散測定(並進拡散)(ホモポリマー又はブレンドであることを確認するため)を実行した。
繰り返し時間:15秒
スキャンの数:1536
90°パルス:12ms
スペクトル幅:240ppm
温度:115℃
スペクトル中心:90ppm
【0142】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
200ppmのブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中、160℃において2時間、振とうすることにより、試料を1mg/mlの濃度でキャリアあ液体中に溶解した。GPCモードで運転されたPolymerChar高温LCシステム上でGPCを実行した。注入体積は、300μlであった。フロー速度は、1ml/分であった。溶離剤は、200ppmのBHTを含有するTCBであった。2本の7.5×300mmのPL-Gel混合Bカラム(Agilent)上で分離を実行した。PolymerChar HTLC(高温液体クロマトグラフィー)中で集積化IR5検出器を検出のために使用した。分子量校正のために16のポリスチレン(PS)狭分子量分布標準のシリーズ(Agilent Corporation)を使用した。校正範囲は、0.58~3750kg/モルであり、及び校正曲線は、三次の多項式への最小二乗適合であった。従って、報告された分子量は、PS等価分子量値である。検証が完了すると、微孔性フィルム試料を試験した。
【0143】
微生物バリア試験(ASTM F2638-18)
微生物バリア試験(ASTM F2638-18)は、代用微生物バリアとしての多孔性パッケージング材料の性能を測定するためにエアゾール濾過を使用し、末端殺菌医療のためのデバイスを包装するために使用される多孔性材料に適用可能である。1.0μm粒子の定義済みのエアゾールを生じさせ、単一又は二重粒子カウンターを使用して材料の濾過効率を評価することにより、多孔性パッケージング材料のエアゾール濾過性能を測定する。試験結果は、算出%Pmax、すなわち試験片が圧力差又は気流速度の範囲上で試験されるときの濾液エアゾール中の粒子(試験片の通過後にエアロゾル化されたままである粒子)の最高パーセント濃度として記録される。Pmax値が低いほど、粒子状物質又は微生物に対するバリアが良好であることを意味する。
【0144】
ムーニー粘度
ムーニー粘度(125℃でML 1+4)は、ASTM D1646-07標準法に従って、Alpha MV 2000ムーニー粘度計で実施した。ここで、Lは大型(すなわち、標準)ロータの使用を示し、1は分単位の予熱時間、4は分単位の読み取り時間であり、125℃は試験温度である。ムーニー粘度は、一般的に、生ゴム/エラストマーの粘度を測定し、天然ゴム及び合成ゴムの両方の品質の特性決定のために使用される。ムーニー粘度計は、密閉された加圧空洞内に収容されたゴム試験片に埋め込まれた鋸歯状ロータを回転させることからなる。その一定速度から、ロータは、N-mのトルクとして記録される回転に対する所与の抵抗を受ける。ASTM D1646には、このトルクをムーニー単位(MU)に変換するために使用されるアルゴリズムが記載されている。ムーニー粘度は、ゴム/エラストマーの調製方法及び試験前の貯蔵条件によって影響を受ける。試験片は、粘度計の空洞を完全に満たすのに十分な直径50mm及び厚さ約6mmのエラストマーの2つのディスクからなる。試料は、空気を含まず、ロータ及びダイ表面に空気を捕捉することができるポケットを含まないべきである。ロータステムを挿入するために、1つのディスクの中心に穴が貫通される。試験片は、試験前に標準実験室温度で少なくとも30分間静置し、均質化後24時間以内に試験する。ムーニー粘度試験では、ムーニー粘度が機器のトルク容量を超えない限り、大きいロータを使用すべきである。所定位置のロータを有する閉鎖ダイを試験温度に調整する。2つのダイの温度は互いに0.5℃以内であるべきである。粘度計が所定位置のロータをロードせずに作動している間に、トルクインジケータをゼロ読み取り値に調整する。そして、ディスクの回転を停止させる。この調整は、ロータ放出ばねを有する機械用にダイを開いた状態で行われるべきである。適切に調整された空洞のために高温ロータを取り外し、試験片の1つの中心を通してステムを素早く挿入し、粘度計のロータを交換する。第2の試験片をロータの中心に置き、ダイを直ちに閉じ、タイマーを作動させる。閉じたムーニー粘度計試験空洞内で試料を正確に1分間加温し、次いでロータを駆動するモータを始動させる。粘度読取り値は、連続的に記録されるべきである。運転時間は、決して2分未満であるべきではない。
【0145】
実施例1
本実施例は、ホモポリマーPPフィルムに関する延伸前のアニーリングの影響を調査する。表1は、(延伸前に)アニーリングを実行した場合と、実行しなかった場合との両方の延伸後のホモポリマーポリプロピレン、PP H314の延伸条件並びに対応する多孔性及び孔径(中央値細孔径)を示す。CSXX-HSYYという表記は、フィルムがXX%の冷延伸、それに続くYY%の熱延伸に供されたことを意味する。
【0146】
【0147】
表1は、所望の孔径及び多孔性を達成するために、長期間のPPの融点付近の温度でのアニーリングが必要とされることを示す。アニーリングを実行しないPP H314試料は、延伸後に白色に変化せず、それに対応して、表1に示すように、フィルムは、非常に低い多孔性(2~4%)を示した。対照的に、150℃で24時間のアニーリングを実行した場合、同一延伸条件後、フィルムは、直ちに白色に変化し、20~24%の多孔性が得られた。ホモポリマーPE(HDPE 6400)のフィルムに関しても類似の結果が得られた。
【0148】
更に、フィルムに事前のアニーリングを実行しない場合、ポリマー不相溶性が細孔形成を補助するかどうかを確認するために、ホモポリマーPE(HDPE 6400)及びホモポリマーPP(PP H314)のブレンドを調査した。ホモポリマーポリプロピレン及びホモポリマーポリエチレンのブレンドを二軸押出機中で調製し、フィルムに押出成形した。アニーリングステップを実行せずに、100:0、90:10、80:20、70:30、50:50、30:70、20:80、10:90及び0:100のブレンド比(ホモポリマーポリエチレン対ホモポリマーポリプロピレン)の押出成形されたフィルムを上記の通り調製し、次いで連続冷(CS)及び熱(HS)一軸延伸(室温、100mm/秒での25%冷延伸、それに続く100℃、5mm/秒での100%熱延伸)に供した。再び、アニーリングが実行されない場合、これらのPP/PEホモポリマーブレンドのフィルムに関して、細孔形成は、観察されなかった。
【0149】
長期のアニーリング時間は、連続製造ラインを実行して、微孔性フィルムを製造するための所望の目的の観点から問題を含む。理想的には、アニーリングステップ延長に関する保持期間を必要とすることのない、1つの連続製造ラインでの連続押出成形及び細孔形成プロセスが好ましい。
【0150】
実施例2
本発明の目的の1つは、フィルム延伸前又は後にいかなる熱アニーリングステップも必要とすることなく、フィルム延伸時に細孔形成が可能であるフィルムを製造することである。従来技術プロセスのアニーリングステップを排除することにより、連続製造プロセスが可能となる。本実施例において、必要とされるアニーリング時間を減少させるか、又は好ましくはポリエチレン若しくはポリプロピレンホモポリマーの類似の製造プロセスからアニーリングステップを完全に排除するために、ミクロ相分離によって誘導されるホモポリマーポリプロピレン中の細孔形成を調査した。この理由から、ホモポリマーポリプロピレン(PP)鎖セグメント及びエチレン-プロピレン(EP)コポリマー鎖セグメントから構成されるPPコポリマーを調製し、フィルムに押出成形した。
【0151】
本発明の効果的なパラメーター及び範囲を定義するために、4つの異なる反応器グレードのPPコポリマーを評価した。種々のPPコポリマーの特徴を表2に示す(メルトフローレート、EPコポリマー含有量(アイソタクチックPP含有量は100-EP含有量である)並びにEPコポリマー鎖セグメント中のエチレン及びプロピレン含有量))。
【0152】
【0153】
これらのPPコポリマーのフィルムを上記の通り調製し、次いで連続冷(CS)及び熱(HS)一軸延伸(100mm/秒での25%CS、それに続く100℃及び5mm/秒での100%HS)に供した。フィルム特徴(平均孔径、多孔性及びWVTR)を表3に示す。
【0154】
【0155】
比較例のPP TI4020N及びPP INSPIREのフィルム(登録商標)114は、非常に低い平均細孔径(8~12nm)及び非常に低いフィルム多孔性(7~10%)を有し、及びこれらのフィルム特徴は、非常に低い水蒸気透過率及び非常に低い水蒸気透過度に相当することが見出された。両方の試料は、通気性フィルムとして意図された目的に関して不適切である。他方、本発明の実施例のPP C700-35N及びPP C7054-07NAのフィルムは、市販のTyvek(登録商標)と類似の標的範囲の平均細孔径及びフィルム多孔性と、これらの両方の試料が通気性フィルムとして適切であることを示唆する水蒸気透過率及び水蒸気透過度などのフィルム特徴とを有した。
【0156】
実施例3
PP C7054-07NA樹脂、ホモポリマーポリプロピレン鎖セグメント及びエチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントを含むPPコポリマーは、このアプローチによって利用可能な微孔性フィルムの特徴の範囲を調査するために、延伸条件を最適化するための更なる研究のために選択された。延伸前のPP C7054-07NA樹脂フィルムの初期の厚さは、203μmであった。
【0157】
上記の通り、PP C7054-07NAからフィルムを調製し、表4に記載の種々のプロセス条件において連続的な冷及び熱一軸延伸に供した。次いで、実際的なプロセスパラメーターを確認するためにフィルム特徴(孔径及び多孔性)を評価した。
【0158】
【0159】
【0160】
表4は、所望の多孔性及び平均細孔径を調節するために、延伸条件を最適化できることを示す。(第3の変数を変更しながら、3つの変数の2つを一定になるように制御することによって)特定の延伸変数(冷延伸度(%)、熱延伸度(%)及び熱い延伸温度(℃))に関する多数の比較を実行することができる。例えば、1つのそのようなシリーズは、室温冷延伸の範囲及び熱延伸の範囲が一定(それぞれ25%及び50%)に保持されるときの熱延伸温度(℃)の影響を示す、試料1~4によって例証される。60~120℃の温度範囲において熱延伸温度が増加すると、多孔性及び孔径(中央値細孔径)が増加する。別のそのようなシリーズは、25%室温冷延伸後の100℃における熱延伸度の影響を示す、試料11~16によって例証される。再び、25~100%の熱延伸範囲において熱延伸度が増加すると、多孔性及び孔径(中央値細孔径)が増加するが、より高い熱延伸度(200又は300%)では傾向が後退する。
【0161】
実施例4
本実施例は、PPコポリマー一軸延伸微孔性フィルムの性能を調査する。実施例3は、(多孔性(%)及び平均細孔径(nm)に関する)細孔形成に対するフィルム延伸条件の影響を実証した。上記の表4では、熱延伸度は、多孔性及び平均孔径に対する有意な影響を明らかに有するため、物理的特性及び性能データを含む更なる研究のためにこのシリーズ(試料11~14)が選択された。
【0162】
PP C7054-07NA樹脂微孔性フィルムを25℃において同一冷延伸度(25%)に供したが、100℃における熱延伸度の範囲は、25%~100%であった。延伸前のPP C7054-07NA樹脂フィルムの初期の厚さは、203μmであり、種々の延伸条件での延伸終了後の最終フィルム厚さを表5に列挙する。
【0163】
このシリーズの延伸されたPP C7054-07NAフィルムの平均細孔径及び多孔性を測定するために水銀ポロシメトリーを使用し、結果を表4及び5にまとめる。このシリーズに関するPP C7054-07NA微孔性フィルムの細孔分布を
図1Bに例示し、
図1AのTyvek(登録商標)のものと比較する。y軸スケールは、
図1Bに示されたものと比較して、
図1Aにおいて異なることに留意されたい。
【0164】
【0165】
表5並びに
図1A及び1Bは、適切な延伸条件下において、PP C7054-07NA微孔性フィルムがTyvek(登録商標)ハウスラップよりも大きい孔径及び多孔性を示し得ることを示す。
【0166】
【0167】
上記(表4、例3)に示した通り、25~100%の熱延伸範囲において熱延伸範囲が増加すると、多孔性及び孔径(平均細孔径)が両方とも増加する。また、多孔性及び平均細孔径の両方が増加することにより、水蒸気透過度(「perm」)の増加が導かれることが予想される(表6)。表6に示されるように、PP C7054-07NA微孔性フィルムの細孔径を調整することにより、水蒸気透過度は、14perm~82permで変動可能である(ASTM E96)。類似の厚さを有するTyvek(登録商標)ハウスラップに関する水蒸気透過度は、約60permであることに留意されたい。表6は、PP C7054-07NA微孔性フィルムのガーレー通気度も示し、これは、C7054-07NA微孔性フィルムが空気流に対してより良好なバリアを有し得ることを示しており、従って、それらは、例えば、Tyvek(登録商標)よりも、家のエネルギー効率を改善するために良好な選択肢であり得る。
【0168】
実施例5
本実施例は、PPコポリマーフィルムのモルフォロジーを考慮する。ホモポリマーポリプロピレンと少数成分のホモポリマーポリエチレンとの従来技術ブレンドにより、ポリプロピレンマトリックス内でのポリエチレンの不相溶性領域をもたらすミクロ相分離を有するフィルム(PP/PE)が製造される。本明細書に開示されるポリプロピレンコポリマーは、フィルムとしてキャストされ、ポリマーフィルム内の不相溶性EP領域内のミクロ相分離を生じることを目的として調査された。そのようなミクロ相分離は、不相溶性領域内に包含相を生じる。延伸前及び後のこれらのフィルムのモルフォロジーをSEM及びTEMによって調査した。
【0169】
図2は、フィルム断面のSEM像を示す。
図2Aは、(20ミクロンスケールバーで示される)未延伸PP C7054- 07NAフィルムの断面を示し、
図2B及び2Cは、25%冷延伸及び50%熱延伸(100℃)による延伸されたPP C7054-07NAフィルムを示す。
図2Cの5ミクロンスケールバーと比較して、
図2Bでは20ミクロンスケールバーによって示される。
図2AのPP C7054-07NAの未延伸フィルムでは、数百ナノメートル~約3ミクロンの範囲の領域径で、ミクロ相分離及び関連する領域形成を確認することができる。
図2B及び2Cにおいて、PP C7054-07NAフィルムは、アニーリングが実行されておらず、100mm/秒の延伸速度での冷延伸(25%)、それに続く5mm/秒の延伸速度及び100℃の温度での熱延伸に直接供した。
図2B及び2C中のフィルム断面のSEM像から見られるように、25%冷延伸及び50%熱延伸によって多くの細孔が形成される。
【0170】
図3は、フィルム表面のSEM像を示す。
図3A及び3Bは、未延伸PP C7054-07NAフィルムを示し、
図3Aは、
図3Bの10ミクロンスケールバーと比較して、20ミクロンスケールバーによって示される。
図3C及び3Dは、100mm/秒の延伸速度での25%冷延伸、それに続く5mm/秒の延伸速度での50%熱延伸(100℃)によって延伸されたPP C7054-07NAフィルムを示し、
図3Dの10ミクロンスケールバーと比較して、
図3Cでは20ミクロンスケールバーによって示される。延伸前、フィルム表面は、非常に平滑である(
図3A及び3B)。対照的に、延伸されたPP C7054-07NAフィルム(
図3C及び3D)の表面では、細孔を明らかに観察することができる。
【0171】
図4は、延伸前及び後のフィルムのTEM像を示す。
図4A及び4Bは、それぞれ延伸前及び後のPP C7054-07NAフィルムを示し(上記の通り、25%CS;50%HS)、
図4A及び4Bは、両方とも1ミクロンスケールバーによって示される。
図4C及び4Dは、それぞれ延伸前及び後のPP INSPIRE(登録商標)114フィルムを示し(上記の通り、25%CS;50%HS)、
図4C及び4Dは、0.2ミクロンスケールバーによって示される。
【0172】
図4AのPP C7054-07NAの未延伸フィルムでは、数百ナノメートル~約3ミクロンの範囲の領域径で、ミクロ相分離及び関連する領域形成を容易に確認することができる。
図4A及び4B中のTEM像は、PP C7054-07NAフィルムに関してエチレン-プロピレン(EP)領域中での空洞化プロセスが核化されることを示唆する。理論に拘束されることを望まないが、PPマトリックス内のEP領域中のPPミクロ相の包含モルフォロジーにより、延伸力をミクロ相領域に有効に移動することが可能となり、それにより、ミクロ相領域は、小断片に分割されて、細孔形成及び成長を開始すると考えられる。対照的に、PP INSPIRE(登録商標)114フィルムの延伸後、PP INSPIRE(登録商標)114フィルムのEP領域は、延伸方向に沿って伸長を示すのみであった(
図4E及び4F)。細孔形成はなかった。
【0173】
PP TI4020N又はPP INSPIRE(登録商標)114と比較して、PP C7054-07NA又はPP C700-35Nのフィルム間での延伸に対する異なる応答の更なる証拠は、広角X線分散(WAXS)研究において観察された。WAXSパターンをポリプロピレン結晶質格子によるX線のブラッグ回折と関連させ、結晶の組成、結晶の配向及び結晶化度の相対量に関する情報を提供する。
【0174】
図5は、2種の異なるPPコポリマー、PP C7054-07NA及びPP TI4020NのフィルムのWAXSパターンを示す。それぞれのコポリマーに関する試料には、未延伸フィルム並びに室温での25%冷延伸及び100℃での100%熱延伸によって延伸された試料が含まれた。フィルムの延伸前及延伸後間において、PP C7054-07NA樹脂フィルムに関して、有意な結晶構造の変化は、観察されなかった(それぞれ
図5A及び5B)。PP C700-35N樹脂フィルムに対しても同一の観察を行った(図示せず)。
図5C及び5Dに示すように、PP TI4020N樹脂フィルムに関して、(110)、(040)、(130)及び(131)平面における強い回折強度の放出により、結晶構造が回転し、原繊維構造に再編成したため、有意な配向が観察された。PP INSPIREの(登録商標)114樹脂フィルムに対しても類似の観察を行った(図示せず)。上記のWAXSの結果から、延伸力は、PP TI4020N樹脂フィルム及びPP INSPIRE(登録商標)114樹脂フィルムの結晶質ポリプロピレン構造に適用されたが、PP C7054-07NA樹脂及びPP C700-35N樹脂フィルムの延伸プロセス中、細孔を開始及び成長させるために延伸力がEP相に移動したことが推測された。このような不一致により、PP C7054-07NA樹脂及びPP C700-35N樹脂微孔性フィルムの両方に関して高い多孔性がもたらされるが、PP TI4020N樹脂フィルム及びPP INSPIRE(登録商標)114樹脂微孔性フィルムの両方について低い多孔性がもたらされる。
【0175】
実施例6
アニーリングされていないフィルムの延伸を経た細孔形成は、PPコポリマー(上記のPP C7054-07NA微孔性フィルムを参照されたい)を用いて以前に実証された(上記実施例2~4)。主成分としてのこのPPコポリマーをホモポリマー-PP、PP H314(マイナー成分として)と更にブレンドすることも調査した(表7)。フィルムは、上記の通りに調製され、延伸条件:100mm/秒の延伸速度での25%冷延伸(室温)、それに続く5mm/秒の延伸速度での100%熱延伸(100℃)において延伸された。
【0176】
【0177】
ホモポリマー-PPの量を増加させて、PP C7054-07NAコポリマーとのブレンドを行い、続いて冷及び熱延伸プロセスを行うことにより、40%の追加のホモポリマー-PPによって細孔形成が得られなくなるまで、延伸微孔性フィルムの進行的により低い多孔性及びより低い平均細孔径が得られた。
【0178】
同様に、アニーリングされていないフィルムの延伸を経た細孔形成は、別のPPコポリマー(PP C700-35N微孔性フィルムを参照されたい、表3)を用いて以前に実証された(実施例2)。主成分としてのこのPPコポリマーをホモポリマー-PP、PP H314(マイナー成分として)と更にブレンドすることも調査した(表8)。
【0179】
【0180】
二軸押出機を使用して、20重量%のホモポリマーPP H314をPP C7054-07NAと配合し、続いてフィルム製造を行うことによっても包含モルフォロジーが減少した。その結果として、延伸時、大部分のミクロ相領域は、延伸方向に沿ってのみ延長した(例えば、
図6A及び6BのTEMを参照されたい)。
【0181】
ホモポリマー-PPとのPP C700-35Nのブレンドからのフィルムに関する結果は、ホモポリマー-PPとのPP C7054-07NAのブレンドからのフィルムに関するものと類似していた。
【0182】
上記の通り、アニーリングされていないフィルムの延伸を経た細孔形成は、PPコポリマー(上記のPPC7054-07NA微孔性フィルムを参照されたい)に関して実証された。アニーリングされていないフィルムの延伸を経て細孔を形成するために、主成分としてのこのコポリマーをPPコポリマー、PP TI4020N(マイナー成分として)と更にブレンドすることも実証された(表9)。
【0183】
【0184】
PP C700-35NとPP TI4020Nとのブレンドにより、(事前アニーリングを実行せずに)延伸を受けさせて、微孔性フィルムを製造することができるフィルムを形成することもできる。
【0185】
他のポリマーブレンドは、以下の通りに評価された:
VERSIFY(登録商標)2000樹脂(230℃、2.16kgでのメルトフローレート=2g/10分)は、組成94%のP/6%のE(プロピレンリッチ)を有するエチレン-プロピレンランダムコポリマーである。VERSIFY(登録商標)2400樹脂(230℃、2.16kgでのメルトフローレート=2g/10分)は、組成86重量%のP/14重量%のE(プロピレンリッチ)を有するエチレン-プロピレンランダムコポリマーでもある。それぞれの場合、ホモポリマーPP(PP H314)との2つのブレンド比(85:15及び70:30)が調製された。PP H314は、全ブレンド中の主成分であった。これらのブレンドのアニーリングされていないフィルムをCS25-HS100延伸条件(上記)に供した。これらのPP/EPブレンドのいずれも、延伸プロセス後、細孔を形成しなかった。これは、VERSIFY(登録商標)2000及びVERSIFY(登録商標)2400樹脂中のプロピレンセグメントの高い含有量に起因し得る。プロピレンセグメントは、PPマトリックスとの良好な相溶性を有し、従ってPP H314樹脂中で十分な相分離を誘導することができない。
【0186】
13C04R21実験樹脂(230℃、2.16kgでのメルトフローレート=18g/10分)は、コポリマー中50:50の比率のPP:EP成分を有するアイソタクチックPPジブロックブロックコポリマーであり、EPコポリマーブロックは、14重量%のE及び86重量%のPを含有する(樹脂の全エチレン含有量は、7重量%である)。ホモポリマーPP(PP H314)と、このジブロックコポリマーとのブレンドは、85:15、80:20、70:30及び60:40(主要PP)の比率で調製され、アニーリングされていないフィルムをCS25-HS100延伸条件(上記)に供した。これらのPP/EPブレンドのいずれも、延伸プロセス後、細孔を形成しなかった。この実験グレード樹脂中のEPブロックは、14重量%のみのエチレンを含有し、PPリッチなEPブロックが製造される。その結果として、EPブロック及びiPPブロックは、ホモポリマーPP樹脂との良好な適合性を有し、従って、EPブロックは、フィルム中で十分な相分離を開始することができないと考えられる。
【0187】
INTUNE(登録商標)D5545.00(230℃、2.16kgでのメルトフローレート=9.5g/10分)は、50:50の比率のPP:EPコポリマーを有する別のアイソタクチックPPジブロックブロックコポリマーであるが、EPコポリマーブロックがエチレンリッチであり、92重量%のE及び8重量%のPを含有する(樹脂の全エチレン含有量は、46重量%である)。アニーリングされていないフィルム(上記の実施例6のCS25-HS100延伸条件)を延伸することにより、最小の細孔形成のみが達成される:13.6%の多孔性及び14.1nmの平均細孔径。ジブロックコポリマーのフィルムは、ハウスラップ材料としての所望の目的のために適切でない。ホモポリマーPP(PP H314)と、このジブロックコポリマーとのブレンドは、85:15、80:20、70:30及び60:40(主要PP)の比率で調製され、アニーリングされていないフィルムを実施例6のCS25-HS100延伸条件(上記)に供した。これらのPP/EPコポリマーブレンドのいずれも、延伸プロセス後、細孔を形成しなかった。
【0188】
NORDEL(登録商標)3722Pは、28.5重量%のプロピレン、71重量%のエチレン及び0.5重量%のENB(エチリデンノルボルネン)の組成を有するEPDM(エチレン-プロピレンジエンモノマー)コポリマーである。90:10、80:20及び70:30(ポリプロピレンリッチ)のブレンド比、PP-H314:NORDEL(登録商標)3722PのNORDEL(登録商標)3722Pとの主要ホモポリマーPPのブレンドが調査された。アニーリングされていないフィルムをCS25-HS100延伸条件(上記)に供した。これらのPP/EPコポリマーブレンドのいずれも、延伸プロセス後、細孔を形成しなかった。
【0189】
加えて、エチレンアクリル酸(PRIMACOR(登録商標)1410樹脂:90.3重量%のE、9.7重量%のアクリル酸)を評価した(230℃、2.16kgでのメルトフローレート=1.5g/10分)。ブレンドは、85重量%のPP H314樹脂及び15重量%のPRIMACOR(登録商標)1410樹脂であった。同一延伸条件下において、このブレンドは、細孔形成を示すことができなかった。PRIMACOR(登録商標)1410樹脂は、PP H314樹脂と不相溶性であり、従って2つの相間で完全に分離した界面を形成した。
【0190】
実施例7
本実施例は、熱硬化されていない微孔性フィルムの老化性能を考察する。多くの従来技術の微孔性フィルムでは、熱老化後に特性の劣化を被ることが観察されている(例えば、65℃において1~281時間のポリプロピレン微孔性フィルムの窒素フラックスの進歩的な損失を示す米国特許第3,801,404号明細書の表1;及び90℃において1時間後にポリプロピレン微孔性フィルムの空気流量損失率を示す米国特許第3,843,761号明細書の表2を参照されたい)。熱硬化(ポリオレフィンフィルムの延伸後の高温でのアニーリング)は、(例えば、65℃での)老化中、水蒸気透過性能の損失を防止するために、従来技術(例えば米国特許第3,679,538号明細書)において多くの場合に使用されてきた。熱硬化されていないPP C7054-07NA MDO微孔性フィルム(一軸延伸、機械配向)を1時間~168時間の範囲の様々な時間で65℃において老化させた(表10)。
【0191】
【0192】
表10に示されるように、水蒸気透過度データは、長期間にわたってあまり変化しなかった。本発明において、延伸前及び延伸後(
図5A及び5B)の一軸延伸(MDO)PP C7054-07NA微孔性フィルムの広角X線(WAXS)データのわずかな変化によって示されるように、延伸力は、ミクロ相ゴム様(エチレン-プロピレンコポリマー)領域に移動し、微孔性構造を生じさせるために消費された。対照的に、比較フィルム、例えばPP TI4020N樹脂フィルムに関して、結晶構造が回転して、原繊維構造に再編成し、(110)、(040)、(130)及び(131)平面で強い回折強度の放出により、延伸後のWAXSデータで有意な配向が観察された(延伸前の
図5Cに対して、延伸後の
図5D)。本明細書に開示される通気性フィルムのこの老化性能は、熱硬化が常に必要とされる、従来技術で報告された他のホモポリマーポリオレフィン微孔性フィルムから識別される。
【0193】
通気度の観点以外から、米国特許第3,843,761号明細書では、熱硬化ステップ後の性能劣化の同一現象が調査された。米国特許第3,843,761号明細書において、熱硬化ステップから得られるフィルムを、熱硬化ステップを行わなかった対照フィルムと比較した。この参照文献は、熱硬化ステップによる流速損失は、従来技術の冷延伸/単一熱延伸プロセスに関して44~88%の損失の範囲であり、及び熱硬化ステップによる流速損失は、それらの新規冷延伸/複数の連続熱延伸プロセスに関して24~37%の損失の範囲であると結論付けた。
【0194】
米国特許第3,843,761号明細書に開示される熱硬化結果と比較するために、米国特許第3,843,761号明細書(表11を参照されたい)に開示されるものと同じ延伸度を有するPP C7054-07NA微孔性フィルムを製造した。特に、第1の試料、PP C7054-07NA-CS20-HS95は、100mm/秒での20%冷延伸、それに続く5mm/秒及び100℃での95%熱延伸によって延伸された。第2の試料、PP C7054-07NA-CS40-HS75は、100mm/秒での40%冷延伸、それに続く5mm/秒及び100℃での75%熱延伸によって延伸された。
【0195】
【0196】
次いで、これらの微孔性フィルムを参照特許と同一の熱硬化ステップ(1時間90℃)に供した。相対通気性は、以下の式によって算出される。
【数9】
【0197】
表12は、90℃で1時間の熱硬化前及び後のガーレー通気度を比較する微孔性フィルムの(上記で定義される)相対通気度を示す(各フィルムの種類に関して、各試料に関して4つの位置による4つの試料、表の各相対通気度の記入は、熱硬化前及び後の4つの位置での4つの測定から決定される4つの比率の平均である)。
【0198】
【0199】
表12から、平均相対通気度は、両方の延伸フィルムに関して約1.5であることが見られ、本発明のフィルムに関して、米国特許第3,843,761号明細書に開示される24~88%の流量損失と異なって、熱硬化後に(通常の)通気度が約50%増加することを示す。本発明に開示されるポリオレフィンベースの微孔性フィルムの多孔性構造は、熱硬化プロセスに耐えることができる。
【0200】
本発明の通気性フィルムは、微孔性フィルムを製造するために、延伸前にアニーリングステップを行わずに調製することができ、且つ更に細孔形成後もいずれの熱硬化ステップも必要としない。更に、熱硬化ステップがいずれかの理由で望ましい場合、本発明のフィルムは、熱硬化ステップを行わないフィルムと比較して、透過性のいずれの損失も被らない。
【0201】
実施例8
本実施例は、PPコポリマー二軸延伸微孔性フィルムの性能を示す。
【0202】
PP C7054-07NAコポリマーフィルムを同時二軸延伸、特に室温での100mm/秒の速度での25%冷延伸と、100℃での5mm/秒の50%熱延伸に供した。表13に示すように、PP C7054-07NA二軸延伸微孔性フィルムは、34.7%の多孔性及び44nmの平均細孔径を有する。対応して、この微孔性フィルムのための水蒸気透過度は、約42perm(表14)であり、168時間の65℃での老化後、水蒸気透過度は、60perm(表14)に増加する。
【0203】
【0204】
【0205】
本実施例は、微孔性フィルムを製造するために二軸延伸も利用可能であることを示す。
【0206】
実施例9
ルーフ膜の概念実証研究を実施するために、762μm(30ミル)の厚さのPP C7054-07NAフィルムを室温において100mm/秒での25%冷延伸(CS)と、次いで100℃において5mm/秒での100%(第2のフィルムについて150%)熱延伸(HS)とに供した。数十ナノメートル~数ミクロンの範囲の細孔分布データを
図7に示す。表15から、約660μm(25.5ミル)の厚さのPP C7054-07NA-CS25-HS100は、42.5%の多孔性を有し、58permの水蒸気透過度をもたらし、約533μm(20.6ミル)の厚さのPP C7054-07NA-CS25-HS150は55%のより高い多孔性を有し、62permの水蒸気透過度をもたらすことがわかる。
【0207】
【0208】
有用な多孔性(例えば、25%超)及び透過値(例えば、10perm超)は、より厚い762μm(30ミル)のフィルムからも得られ、これは、本発明のフィルムでは通気性ルーフ膜における有用性が見出されることを示唆する。
【0209】
実施例10
それぞれの最終用途について、空気若しくは水蒸気透過性又は微生物に対するバリアの種々の組み合わせ又は程度が必要とされ得る、医療用パッケージングフィルム及びアクティブパッケージングに関して、延伸微孔性PPコポリマーフィルムを評価した。表16は、様々な延伸条件から得られる微孔性フィルムに関するフィルムの厚さ、坪量、多孔性及び孔径(平均細孔径)を示す。
【0210】
【0211】
同一シリーズのフィルムを、医療用パッケージとして使用される場合の透過性特性(表17)、物理特性(表18)及び気体充填/空き速度(表19)に関して更に調査された。
【0212】
表17は、表16に示されるものと同一の微孔性フィルムに関して得られる重要なバリア特性(ガーレー通気度、水蒸気透過度及び微生物に対するF2638バリア)を示す。
【0213】
【0214】
表17は、一軸延伸PPコポリマーフィルムに関するデータを示し、延伸条件を変更することによって透過性特性を変更及び制御可能であることを実証する。種々の特性の標的範囲は、これらの用途のための既存の市販製品(例えば、Tyvek(登録商標)1073B又は医療グレード紙)との比較によって推定され得るが、様々な特性バランスのフィルムに関する種々の最終用途が存在するため、これらは、厳密な標的でない(また、市販製品の特性のいずれか1つ又は2つ以上は、その特性に関して必要とされる最小標的範囲を有意に上回り得る)。最適化された延伸条件において又は二軸延伸フィルムを使用することにより、(F2638 Pmax値によって示されるような)微生物に対するバリアは、すでに商業的に実行可能な標的範囲にあり、ガーレー通気度に関する標的(おそらくいくつかの用途に関して約10~100秒)も利用可能でなければならない。いくつかの用途は、特定のハイドロヘッド値(水の圧力に対する抵抗)を必要とし得る。表16に示すように、フィルム4~9に関して多孔性及び平均細孔径が測定され、多孔性は、それほど変動せず(43%~53%)、及び細孔径は、70nm~108nmの範囲であった。表に示されないが、フィルム1~9は、Tyvek(登録商標)1073Bのハイドロヘッド値を容易に上回る、500cmwc(水カラムのcm)より高いハイドロヘッド値を有した(Tyvek(登録商標)1073Bのハイドロヘッド値、約150cmwc)。
【0215】
透過性特性に加えて、医療用フィルム及びアクティブパッケージングのための通気性フィルムは、引張強さ、引裂強さ及び伸び率%などのフィルム強度に関する適切な物理特性も必要とする。表18は、通気性PPコポリマー微孔性フィルムの同一シリーズに関するそのような特性をまとめる。
【0216】
【0217】
フィルムの厚さ/坪量並びに他の物理特性(例えば引張強さ、断裂強さ及び伸び率)を制御するために、延伸プロセス条件を変更することが可能である。物理特性は、輸送、殺菌及び貯蔵中にパッケージの完全性を維持し、且つパッケージが剥離開封されるときにパッケージング構造が確実に裂けないようにするために重要である。
【0218】
現在の技術と比較して、少なくとも、これらのフィルムの引張強さは、ほとんどの医療用及びアクティブパッケージング用途に関して十分であるように見える。
【0219】
医療用パッケージは、現在、(医療用デバイス又は機器などの)パッケージ含有物を殺菌するために(蒸気又はエチレンオキシドなどの)殺菌剤ガスで充填され得る容器パッケージとしての用途が見出されている。パッケージが殺菌剤で充填され、次いで、含有物は、殺菌プロセスのためのレジデント時間にわたり、殺菌剤ガスと一緒に残留し、次いでガスを排気し、内部に殺菌された装置がある状態でパッケージが密閉される。パッケージ材料は、そのような装置の使用の準備ができるまで、殺菌後のパッケージ内の医療用デバイスの殺菌性を維持するように、細菌、微生物及び微粒子状物質に対するバリアを提供する。
【0220】
表19は、延伸プロセス条件がPPコポリマーフィルムの充填/空き時間にどのように影響を与え得るかを調査する。
【0221】
【0222】
上記の表19では、比較フィルム(冷延伸直後)及び本発明のフィルム間のガーレー通気度の改善は、45,200~860秒の範囲であり、これは、すでにガスによる医療用パッケージの充填(又は空にする)時間の20%の改善を示す。ガーレー通気度の比較的適度の改善がTyvek(登録商標)1073Bのガーレー通気度に適合しない場合でも、ガスによる医療用パッケージの充填(又は空にする)時間の有意な%改善に対応し、そのような医療用パッケージが医療用機器及びデバイスの殺菌のために使用される場合、有意なコスト節減に変換され得ることを示すために、表19は、それぞれ300秒及び100秒のガーレー通気度を有する仮定的フィルムである通気性フィルム(1)及び通気性フィルム(2)も含む。
【0223】
本明細書で記載されるPPコポリマー微孔性フィルムは、医療用パッケージングとして十分に適切である。現行のポリエチレン技術と比較して、殺菌プロセスは、ポリエチレンフィルムと比較してPPコポリマーフィルムの高い融解温度のため、より高い温度で実行可能である(例えば、高密度ポリエチレンの典型的な溶解温度は、DSCによると約125~130℃であるのに対して、本明細書で開示される本発明のPP-EPコポリマーの典型的な融解温度は、DSCによると約168℃である)。更に、PPコポリマーフィルムは、容易に熱成形されて(様々な医療用デバイス及び機器に対して容易にカスタマイズ可能なパッケージングを可能にする)、(殺菌されたパックを容易に融着するために)熱融着が可能である。
【0224】
温度範囲及び圧力範囲などの物理特性又はモノマー又はコポリマー含有量などの化学特性に関して、本明細書で範囲が使用される場合、全ての組み合わせ及び範囲の部分的組み合わせ並びにその中の特定の実施形態が含まれるように意図される。
【0225】
本明細書で引用又は記載される各特許、特許出願及び刊行物の開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0226】
当業者は、本発明の好ましい実施形態への多くの変更形態及び修正形態がなされ得ることと、このような変更形態及び修正形態が本発明の趣旨から逸脱することなくなされ得ることとを理解するであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に入るような全てのこのような均等な変形形態を網羅することが意図される。
【0227】
参照例
種々の厚さを有する多数のPPコポリマーフィルムは、Davis-Standard,LLCによって製造される2.5インチの一軸押出機及び24インチ幅のキャストダイを使用して、80℃の温度に設定されたチルロール上に押出成形キャストされ、平滑表面を有するフィルムが製造された。ベース樹脂は、Braskem American,Inc.から入手可能なポリプロピレンコポリマーであるPP C7054-07NAである(製品コードC7054-07NA)。押出機は、460°F(238℃)の一定温度プロファイルに維持し、加熱オイルによってチルロール温度を加熱した。得られたフィルムの厚さを表20にまとめる。
【0228】
【0229】
実施例11
次いで、
図8に示されるような多段階冷延伸プロセスを使用して、表20の個々のフィルムの試料を機械方向(MDO-機械方向配向)で延伸させ、表20からのPPコポリマーフィルムのそれぞれの試料は、巻出機部分20に取り付けられ、前延伸部分23、延伸部分24及びアニーリング部分25を含む11個の延伸ローラー(1~11)によって導かれ、巻付機部分21上に巻き戻された。次いで、フィルム上に圧力を適用して、延伸中のずれを防止するために、ニップローラーを閉鎖した。ローラー3~7のローラー速度をゆっくり増加させ、25℃でフィルムを50%又は100%延伸した。延伸プロセス中、フィルムは、半透明の色から白色に変化し、これは、初期の細孔形成を示す。次いで、アニーリング部分25において、冷延伸フィルムをローラー9~11において140℃で加熱し、冷延伸ステップによって誘導された細孔構造を固定する。次いで、フィルムを冷却し、巻付機上に巻き戻した。測定された最終フィルムの特性を表21にまとめる。冷延伸度は、(全ローラー速度比-1)×100%として定義され、及び全ロール速度比は、(ローラー2/ローラー1からローラー8/ローラー7までの)全てのローラー速度比を一緒に掛け合わせた結果である。
【0230】
【0231】
次いで、
図8に示されるものと同一の多段階プロセスを使用して、MDO冷延伸フィルムを機械方向(MDO)で更に熱延伸したが、しかしながら、熱延伸に関して、プロセスは、前熱延伸部分23、熱延伸部分24及びアニーリング部分25を含んだ。MDO冷延伸フィルムのそれぞれは、巻出機部分に取り付けられ、11個の延伸ローラーによって導かれ、他の巻付機部分21上に巻き戻された。このプロセスでは、最初の8個のローラーを135℃の熱延伸温度に設定した。フィルム上に圧力を適用して、延伸中のずれを防止するために、ニップローラーを閉鎖し、次いでローラー5~8のローラー速度をゆっくり増加させ、135℃でフィルムを50%又は100%延伸した。熱延伸ステップの完了後、フィルム収縮を低下させるために、フィルムに140℃のローラー9~11上でアニーリングを実行した。次いで、フィルムを巻付機器部分22で冷却し、ロール状態に巻き戻した。熱延伸度は、(全ローラー速度比-1)×100%として定義され、及び全ロール速度比は、(ローラー5/ローラー4からローラー8/ローラー7までの)全てのローラー速度比を一緒に掛け合わせた結果である。MDO熱延伸の完了時、PPフィルムの多孔性及び平均細孔径が増加したことは、表22から見ることができる。それにより、より高い水蒸気透過度及びより低いガーレー通気度が生じる。
【0232】
【0233】
実施例12
熱延伸が細孔形成並びに空気及び水蒸気透過性に対して悪影響を有する可能性があることを説明するために、上記の冷及び熱延伸プロセスを、25℃において機械方向で122%冷延伸され、続いて機械方向で103%~405%熱延伸されたフィルム1の試料に適用した。表23で示すように、フィルムの多孔性及び透過性は、より高い温度での延伸によって悪化した。その結果として、多孔性及び孔径を更に増加させるために二軸延伸が提案され、それにより、より高い水蒸気透過性及びより低いガーレー通気度が得られた。
【0234】
【0235】
実施例13
次いで、実施例11のMDO冷及び熱延伸フィルムの選択を、巻出部分41、予熱部分43を有するマルチゾーンオーブン50、TDO(横方向配向)延伸部分44、アニーリング部分45及び冷却領域46を含む、
図9に示されるようなプロセスを使用して、横方向で更に熱延伸した。TDOラインは、横方向でフィルムを延伸するために、クリップ間で127mm~1,016mmの範囲の供給幅及びクリップ間で203mm~2,184mmの出口幅範囲を有する。TDOクリップは、25μm~2.54mmのフィルム厚さ範囲を有する広範囲の材料を保持することができた。加熱された領域(43、44及び45)に続いて、循環外気を備えた長さ1.5mの冷却領域46があった。TDOオーブンが標的温度(135℃)まで予熱された後、MDO延伸フィルムは、巻出機に取り付けられ、TDOラインの供給部分を通して導かれた。フィルムを徐々にクリップで把持し、同一幅で予熱領域中を引っ張った。次いで、TDO標的延伸度に達するまで、フィルムを横方向で延伸した。延伸の完了時、フィルムを140℃のアニーリング部分45に通して、続いて冷却領域46中で循環外気によってクエンチを行った。その後、延伸フィルムは、ロールの積み重ねを通して導かれて、巻付機部分42上に巻き戻された。試験を単純化するために、ライン速度を2m/分に固定した。TDO延伸度は、50%~400%で変動した。表24は、MDO冷延伸、MDO熱延伸及びTDO熱延伸によって調製された二軸延伸PP通気性フィルムの延伸条件及び特性を示す。全ての試料は、300より高いハイドロヘッドを有した。これらの実験は、二軸延伸がフィルム中の細孔の追加的な開口部で非常に有効であることを示した。二軸延伸フィルムの多くは、70%に近い多孔性及び200nmより大きい平均細孔径を有することが表24から見ることができる。対応して、ほとんどの試料は、100秒/100cc未満のガーレー通気度を有し、いくつかの試料は、20~30秒/100ccの範囲であるが、多くの試料は、100permより高い水蒸気透過度を有する。同時に、表に示されていないが、全てのフィルムの全ては、300cmより高いハイドロヘッドを有し、良好な耐水性を示す。更に、F2638によって測定される微生物バリア(%Pmax)は、(十分に標的の範囲内である)非常に良好な結果を示す。
【0236】
【0237】
実施例14
表25は、MDO冷延伸、それに続くTDO熱延伸によって調製された二軸延伸PP通気性フィルムの延伸条件及び特性を示す。MDO熱延伸がない場合でも、非常に高い多孔性を達成することができる。また、多孔性及び平均細孔径は、TDO延伸度が増加すると増加し続けた。対応して、これらのPP通気性フィルムは、同等の水蒸気透過度、ガーレー通気度及び微生物バリアを示す。
【0238】
【0239】
実施例15
防水及び通気性のルーフ膜のための重要な特性は、それが少なくとも30分間、30メートルの水に抵抗するハイドロヘッド試験に合格しなければならないことである。ルーフ膜として使用するための延伸フィルムの選択が行われ、試験された。表26からわかるように、全ての試料は、冷及び熱延伸によって製造されて、ハイドロヘッド試験に合格した。これらのMDO試料は、0.19mm~0.53mmの範囲のフィルムの厚さを有し、29.1perm~76.7permの範囲の水蒸気透過率(WVTR)を示す。冷MDO延伸、それに続く熱TDO延伸によって製造される二軸延伸試料は、二軸延伸プロセスによって生じるより多くの相互連結した細孔のため、ハイドロヘッド試験に合格しなかった。
【0240】
【0241】
実施例16
冷及び熱MDO延伸によってポリプロピレン(PP)フィルム試料を製造し、ルーフ下敷としての使用に関して試験した。表27に示される全ての試料は、耐水性(W1)、老化後の耐久性(EN 1297&EN 1296)、低温での可撓性(≦-20℃)及び横降り試験(TU Berlin)に合格した。しかしながら、表27から、試料16a及び16bは、延伸後の低いフィルム厚さのため、低いネイル引裂強さ特性を有したことがわかる。試料16c及び16dは、フィルム厚さを増加させることにより、許容可能なネイル引裂強さを達成できることを示す。試料16e、16f及び16gは、グリッド又は不織フィルムによってより薄いフィルムを積層するという他の可能な解決策を示す。16eは、D&Lグリッドに積層され、16fは、Thermanet(登録商標)との積層体であり、及び16gは、スパンボンドPP不織物に積層され、これらの積層体の特性データを表27に示す。これらの積層フィルムは、ネイル引裂強さの有意な改善を実証した。
【0242】
【0243】
実施例17
TSI-8130自動化フィルター試験機による追加的な微粒子状バリア試験と共に、ASTM F2638に従い、実施例13及び14からのフィルムの選択において微生物バリア試験を収集した。得られたデータを表28に示す。二軸延伸により、多孔性及び平均細孔径の増加が可能となり、従って100秒/100cm3未満までのより低いガーレー通気度が導かれた。全ての二軸延伸試料は、標的の範囲内の非常に良好な微生物バリア(<0.25%Pmax)を示した。更に、ハイドロヘッド試験によって測定される破裂圧は、全ての二軸延伸PP通気性フィルムに関して5メートルより高かった。
【0244】
【0245】
実施例18
これは、エチレン-プロピレンエラストマーを更に含むPPコポリマーフィルムの調製の一例である。
【0246】
使用した(a)ポリプロピレンコポリマーは、C7054-07 NAポリプロピレン(PP C7054-07 NA)として知られる、Braskemから購入した反応器グレードのPPコポリマーであった。32.9重量%のエチレン-プロピレンコポリマーを含み、エチレン-プロピレンコポリマー中のエチレン含有量は49.7重量%である。それは、0.9g/cm3の密度と、230℃及び2.16kgの荷重でおける7g/10分のメルトインデックスとを有する。PP C7054-07NAの数平均分子量(Mn)は58,000、重量平均分子量(Mw)は295,000である。
【0247】
使用した(b)エチレン-プロピレンエラストマーは、ExxonMobil Chemicalから得られたエチレン-プロピレンコポリマーゴム(EPR)であるVistalon(商標)785であった。これは、低いムーニー粘度、低いエチレン含有量、狭い分子量分布を有するエチレンとプロピレンとの非晶質コポリマーである。これは、49重量%のエチレン含有量(ASTM D3900Aによる)を含み、30MUのムーニー粘度(ASTM D1646による)を有する。PPコポリマーをEPエラストマーと配合して、連続的な冷及び熱延伸によるその後の加工のための改変配合混合物を作製した。
【0248】
PPコポリマー及びEPRを、43mmの共回転二軸スクリュー押出機を使用して共に配合した。PPコポリマーを250rpmで動作する押出機の第1のバレルに供給し、EPRと接触する前に共回転スクリューによって予備溶融した。加工を補助し、EPRの計量を可能にするために、4インチ(101.6mm)のBonnot押出機を使用してEPRを粉砕し、予熱した後、ギアポンプを介して二軸押出機に計量してバレル3でPP溶融物に接合した。EPRは、ギアポンプの直前に112℃と測定された。次いで、このPP/EPRの混合物を、バレル温度が200℃に維持された状態で一連の混合要素に通して搬送した。実際の溶融温度を操作中に監視し、バレル5の170℃から、バレル10の245℃直下のピーク温度まで上昇させた。バレル12を通ってダイに圧送する前に、バレル11で水リング真空を-27inHg適用して揮発性物質を除去した。得られた生成物を、220℃に加熱したダイで450~550psigで実行する水中パレタイゼーションシステムから収集した。組成、配合条件、EPRゴム濃度、及びDSCの結果を表29に要約する。
【0249】
【0250】
次いで、Davis-Standard製の1インチ単軸押出機と幅6インチのキャストダイとからなるフィルムキャストライン上でPPコポリマーフィルムを製造した。キャストフィルムは、単軸スクリューの速度、従ってスループットを制御し、1~10ft/分の範囲の全体的なライン速度に対してローラ速度を調整することによって、厚さの範囲で上記材料(表1参照)から製造された。150/200/150メッシュスクリーンの積層を有する溶融フィルターパックをインラインで使用して、ダイで200℃に冷却する前に溶融ストリームからゲルを除去した。ダイからのフィルムを、巻き取りステーションで3インチコアに巻き取る前に良好なフィルム品質を確保するために50℃に温度制御された冷却ロール上にキャストした。10ミルのフィルムをR10からキャストし、20ミルのフィルムをR30からキャストした。
【0251】
TEMを使用してフィルムの形態を調査した。
図10は、(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマーから作製され、(b)エチレン-プロピレンエラストマーを有さない、任意の延伸前のキャストフィルムのTEM画像である。この図は、マトリックスPP材料がEPマイクロ相ドメインの内側に含まれる封入形態を示す。この特有の形態は、延伸力の伝達を可能にしてマイクロ相ドメインを破壊し、従って延伸中に細孔形成を開始及び成長させる。
図11は、(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む90重量パーセントのポリプロピレンコポリマー及び(b)10重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーから作製された、任意の延伸前のR10キャストフィルムのTEM画像である。封入形態はインタクトのままであり、ドメインサイズはわずかに増加した。
図12は、(a)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及びエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含む70重量パーセントのポリプロピレンコポリマーと、(b)30重量パーセントのエチレン-プロピレンエラストマーとから作製された、任意の延伸前のR30キャストフィルムのTEM画像である。このフィルムについてEPR含有量を更に増加させると、ドメインサイズは大幅に増加したが、封入形態は依然として持続した。
【0252】
次いで、キャストフィルム試料を、多段冷延伸プロセスを使用して機械方向(MDO-機械方向配向)に延伸した。PP/EPRフィルムのそれぞれの試料を巻き出し機に取り付け、前延伸部、延伸部及びアニーリング部を備えた11の延伸ローラー(1~11)に通してガイドした後、巻き取り部に巻き戻した。次いで、フィルム上に圧力を適用して、延伸中のずれを防止するために、ニップローラーを閉鎖した。ローラー3~7のローラー速度をゆっくり増加させ、25℃でフィルムを50%延伸した。延伸プロセス中、フィルムは、半透明の色から白色に変化し、これは、初期の細孔形成を示す。次いで、アニーリング部分25において、冷延伸フィルムをローラー9~11において135℃で加熱し、冷延伸ステップによって誘導された細孔構造を固定する。次いで、フィルムを冷却し、巻付機上に巻き戻した。冷延伸度は、(全ローラー速度比-1)×100%として定義され、及び全ロール速度比は、(ローラー2/ローラー1からローラー8/ローラー7までの)全てのローラー速度比を一緒に掛け合わせた結果である。
【0253】
次いで、同一の多段階プロセスを使用して、MDO冷延伸フィルムを機械方向(MDO)で更に熱延伸したが、しかしながら、熱延伸に関して、プロセスは、前熱延伸部分、熱延伸部分及びアニーリング部分を含んだ。MDO冷延伸フィルムのそれぞれは、巻出機部分に取り付けられ、11個の延伸ローラーによって導かれ、他の巻付機部分上に巻き戻された。このプロセスでは、最初の8個のローラーを130℃の熱延伸温度に設定した。フィルム上に圧力を適用して、延伸中のずれを防止するために、ニップローラーを閉鎖し、次いでローラー5~8のローラー速度をゆっくり増加させ、130℃でフィルムを50%延伸した。熱延伸ステップの完了後、フィルム収縮を低下させるために、フィルムに135℃のローラー9~11上でアニーリングを実行した。次いで、フィルムを巻付機器部分で冷却し、ロール状態に巻き戻した。熱延伸度は、(全ローラー速度比-1)×100%として定義され、及び全ロール速度比は、(ローラー5/ローラー4からローラー8/ローラー7までの)全てのローラー速度比を一緒に掛け合わせた結果である。
【0254】
表30に、PPフィルムと比較したPP/EPRフィルムの延伸条件、水蒸気透過度、通気度、空孔率及び平均細孔径を示す。これらのフィルムは全て、同程度の冷延伸(50%)及び同程度の熱延伸(50%)を有する。PP-22ミルのフィルムの水蒸気透過度は52ppmであり、R10-10ミル及びR30-20ミルのフィルムの水蒸気透過度は、それぞれ48.2ppm及び27.5ppmである。これにより、PPフィルムにEPRゴムを含有させた後も、良好な水蒸気透過度を維持できることが確認された。R10-10ミルのガーレー通気度は、PP-22ミルのガーレー通気度よりも低く、これは、R10-10ミルがより薄い厚さを有するという事実に起因し得る。R30-20ミルフィルム中の高濃度のEPRは、非常に高いガーレー通気度を与える。
【0255】
【0256】
表31は、PPフィルムと比較したPP/EPRフィルムのハイドロヘッド、引張強度、破断伸び、弾性率、及び台形引裂データをまとめたものである。EPRをPPに添加することによって作製されたR10-10ミル及びR30-20ミルのフィルムは両方とも、PP-20ミルのフィルムよりも低い弾性率を有した。PPフィルムへのEPRの添加はまた、フィルムの引裂強度を改善した。R30-20ミルフィルムの台形引裂(最大荷重)は、PP-22ミルフィルムの2倍超であった。
【0257】
EPRの添加はまた、引張強度等の他のフィルム特性に有意に悪影響を及ぼさなかった。R30-20ミルの破断伸びは、PP-20ミルのフィルムの2倍であり、R10-10ミルの破断伸びは、PP-20ミルのフィルムの破断伸びよりわずかに低く、これは、R10-10ミルのより小さいフィルム厚さに関連している可能性がある(より大きなデータのばらつき)。これらのフィルムは全て、優れた保水性も示した(ハイドロヘッドは300cm超)。
【0258】
言い換えれば、EPRをPPフィルムに組み込むことにより、水蒸気透過性及び水の保持を維持しながら、PP通気性フィルムの靭性及び引裂強度を著しく改善することができる。
【0259】
【0260】
実施例19
接着剤を塗布していない実施例18の微孔性フィルムの熱溶接能を調べた。R30-20ミルの微孔性フィルムの2つの試料の縁部を重ね合わせ、熱風(溶接温度250℃)の適用によって溶接した。同様に、PP-22ミルの微孔性フィルムの2つの試料の縁部を重ね合わせ、同様に熱風の適用によって溶接した。2つの溶接された試料の全体的な外観は、
図13に示すR30-20ミルのフィルム試料が、
図14のPP-22ミルのフィルム試料よりも優れた視覚的密封性能を示したことを示した。EPRゴムを含まないPPフィルムは、溶接後に脆弱で亀裂が生じた一方、EPRゴムをPP通気性フィルム(R30-20ミルフィルム)に組み込むことにより、EPRゴムを含まないPP微孔性フィルムと比較して、溶接が容易になり、溶接領域がより強靭であった。
【0261】
実施例20
次いで、実施例18の機械方向(MDO)の冷延伸及びその後の熱延伸フィルムを、実施例13に記載し、
図9に示すものと同様の、巻き出し部分41;予熱部分43、TDO(横方向配向)延伸部分44、アニーリング部分45、及び冷却領域46を有するマルチゾーンオーブン50;及び巻取り部42を含む処理及び設備を使用して、更に熱延伸したが;TDOオーブンを130℃に予熱し、アニーリング部分45を135℃に設定した。
【0262】
二軸延伸フィルムの一般特性(他孔性の増加を含む)、及び機械方向のみ(MDO)のフィルムと二軸延伸によって作製されるフィルムとの特性差の程度は、実施例13~15及び実施例17と同様である。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔性ポリマーフィルムであって、
(a)前記フィルムの総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント及び1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントを含むポリプロピレンコポリマー
を含み;前記微孔性ポリマーフィルムが、
(i)ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)エチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、エチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又は前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量で、エチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)前記フィルムの総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、
を含み;
前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、微孔性ポリマーフィルム。
【請求項2】
(b)において、前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーが、前記フィルム中の(a)及び(b)の合計に基づいて、5~30重量パーセントである、請求項1に記載の微孔性フィルム。
【請求項3】
(b)において、前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーが、前記フィルム中の(a)及び(b)の合計に基づいて、5~20重量パーセントである、請求項2に記載の微孔性フィルム。
【請求項4】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントがエチレン単位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項5】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレン単位である、請求項4に記載の微孔性フィルム。
【請求項6】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はそのいくつかの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項7】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、10~40Muのムーニー粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項8】
(a)及び(b)からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項9】
(a)及び(b)を含む微孔性ポリマーフィルムの引張弾性率が、(a)のみで作製されたフィルムの引張弾性率よりも小さい、請求項1~8のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項10】
(a)及び(b)を含む微孔性ポリマーフィルムの水蒸気透過度が、(a)のみで作製されたフィルムの水蒸気透過度よりも小さい、請求項1~9のいずれか一項に記載の微孔性フィルム。
【請求項11】
(a)において、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントが、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである、請求項1~10のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項12】
(a)において、前記エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントが、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロックを含むエチレン-プロピレンジブロックコポリマー鎖セグメントであるか、又はポリプロピレンブロック及びエチレン-プロピレンコポリマーブロックを含むジブロックコポリマー鎖セグメントである、請求項11に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項13】
4V/A、UOP法578-11による少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径を有し、両方の特徴が、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項14】
前記無孔ポリマーフィルムが、(a)のドメインと(b)のドメインとを有し、(a)の前記ドメインが、ポリプロピレンの多数ポリマー相、前記多数ポリマー相内のエチレン含有コポリマーの複数の少数ポリマードメイン、及び前記少数ポリマードメイン内の主要ポリプロピレン相の包含相を特徴とする形態を更に有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項15】
ルーフ膜であるか、又はその構成要素である、請求項1~14のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項16】
少なくとも100μm~2.5mmの厚さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の微孔性ポリマーフィルムを含む、医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項18】
前記微孔性ポリマーフィルムが、10%未満の、ASTM F2638-18によって定義される最大侵入、算出%Pmaxと同等である、微生物に対するバリアを有する、請求項17に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項19】
前記微孔性ポリマーフィルムが、1~35,000秒/100cm3のガーレーゲージ通気度を有し、前記パッケージ中への又は前記パッケージからの、空気又は1つ以上の気体の流入又は流出を制御する、請求項17に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項20】
前記微孔性ポリマーフィルムが、熱成形及び熱融着可能である、請求項17に記載の医療用パッケージング若しくはアクティブパッケージング物品又は医療用バックテーブルカバー。
【請求項21】
微孔性ポリマーフィルムを形成する方法であって、前記方法ステップが:
A)混合物を提供することであって、前記混合物が、
(a)前記混合物の総重量に基づいて50~95重量パーセントの1つ以上のポリプロピレンコポリマーであって:
(i)1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて50~82重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記ポリプロピレンホモポリマー鎖セグメント中のプロピレンの重合単位のモル含有量に基づいて43~79モル%の総量の、1つ以上のポリプロピレンホモポリマー鎖セグメントと、
(ii)1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントであって、ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて18~50重量%、又は前記ポリプロピレンコポリマー中の重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中の重合モノマー単位のモル含有量に基づいて21~57モル%の総量の、1つ以上のエチレン含有コポリマー鎖セグメントと
を含み、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分は、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重量に基づいて少なくとも45重量%、又は前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントの重合モノマー単位の全モル含有量の百分率として、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメント中のエチレンの重合単位のモル含有量に基づいて少なくとも55モル%の量で、エチレンの重合単位を含む、1つ以上のポリプロピレンコポリマーと、
(b)前記混合物の総重量に基づいて5~50重量パーセントの1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマーと、の混合物であり、
前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の少なくとも45重量パーセントがエチレン単位である、混合物を提供すること;
B)前記混合物から無孔フィルムを形成すること;並びに
C)前記無孔フィルムを、
(i)-20℃~50℃の範囲の温度での少なくとも1回の冷延伸ステップ、及び
(ii)50℃~140℃の範囲の温度での少なくとも1回の熱延伸ステップ
を含む連続的な冷延伸及び熱延伸ステップに供し、
それにより微孔性ポリマーフィルムを製造することを含む、方法。
【請求項22】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~80重量パーセントがエチレン単位である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマー中の重合単位の45~60重量パーセントがエチレン単位である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はそのいくつかの混合物である、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(b)において、前記エチレン-プロピレンエラストマーが、10~40Muのムーニー粘度を有する、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が(a)及び(b)からなる、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
(a)において、前記エチレン含有コポリマー鎖セグメントが、エチレン-プロピレンコポリマー鎖セグメントである、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上のエチレン-プロピレンエラストマー(b)との混合物を形成するより前に、(a)の前記ポリプロピレンコポリマーを(a)の前記エチレン含有コポリマーとブレンドしてポリマーのブレンドを形成する、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの冷延伸ステップが、前記フィルムを少なくとも1つの方向において少なくとも10%延伸し、前記少なくとも1つの熱延伸ステップが、前記フィルムを少なくとも1つの方向において少なくとも20%延伸する、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記微孔性ポリマーフィルムが、4V/A、UOP法578-11による少なくとも25%の多孔性及び少なくとも25nmの中央値細孔径を有し、両方の特徴が、水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、請求項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記微孔性ポリマーフィルムが、ASTM E96/E96M-16による、10~150permの範囲の透過度を有する、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】