(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】アクティブノイズキャンセルオーディオ装置、アクティブノイズキャンセル方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555845
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 CN2022075569
(87)【国際公開番号】W WO2023150919
(87)【国際公開日】2023-08-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521104171
【氏名又は名称】シェンチェン ショックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チェンチアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン ジンボ
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】
本明細書の実施例は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置、アクティブノイズキャンセル方法及び記憶媒体に関する。前記装置は、スピーカー、マイクロフォン、アナログフィルタ及び処理回路を含む。スピーカーは、ノイズキャンセル音声を発生させ、マイクロフォンは、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成する。アナログフィルタは、第1のアナログ信号にゲインを与え、スピーカーが前記ノイズキャンセル音声を発生させるように駆動する第2のアナログ信号を生成する。処理回路は、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、アナログフィルタに制御命令を送信する。本明細書は、アナログフィルタを用いてアナログ信号の振幅及び位相を調整し、これによりノイズキャンセル音声を発生させて、信号変換段階及びデジタルフィルタ処理による遅延を減少させることができ、それによりオーディオ装置は、タイムリーにノイズキャンセル応答を行い、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズキャンセル音声を発生させるスピーカーと、
環境ノイズ及び前記ノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するマイクロフォンと、
前記第1のアナログ信号にゲインを与え、前記スピーカーが前記ノイズキャンセル音声を発生させるように駆動する第2のアナログ信号を生成するアナログフィルタと、
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信する処理回路と、
を含む、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項2】
前記処理回路が前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整することは、
特定の時間範囲において、前記第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、前記処理回路が前記アナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整することを含む、請求項1に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項3】
前記処理回路は、第1のアナログデジタル変換器及び第2のアナログデジタル変換器を含み、
前記第1のアナログデジタル変換器は、前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、前記第2のアナログデジタル変換器は、前記第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することを含む、請求項1に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項4】
前記アナログフィルタは、スイッチゲート回路及び応答レギュレータを含み、前記スイッチゲート回路は、前記アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、前記制御命令に基づいて、前記応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整する、請求項3に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項5】
前記応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含み、
前記スイッチゲート回路が前記制御命令に基づいて、前記応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整することは、
前記スイッチゲート回路が前記制御命令に基づいて、前記可変抵抗の抵抗値又は前記可変コンデンサの容量値を調整することを含む、請求項4に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項6】
第1のアナログ加算器、第1のアナログデジタル変換器及び第3のアナログデジタル変換器をさらに含み、
前記第1のアナログ加算器は、前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、前記2次応答は、前記スピーカーから前記マイクロフォンまでの応答であり、
前記第1のアナログデジタル変換器は、前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、
前記第3のアナログデジタル変換器は、前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第1のデジタル信号及び前記第3のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することを含む、請求項1に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項7】
固定構造をさらに含み、前記固定構造は、前記スピーカーと前記マイクロフォンを、ユーザの耳の付近におけるユーザの耳道を塞がない位置にそれぞれ固定する、請求項1に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項8】
第1のアナログ加算器、第3のアナログデジタル変換器及び第4のアナログデジタル変換器をさらに含み、
前記第1のアナログ加算器は、前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、前記2次応答は、前記スピーカーから前記マイクロフォンまでの応答であり、
前記第3のアナログデジタル変換器は、前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、
前記第4のアナログデジタル変換器は、前記2次応答が追加された前記第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第3のデジタル信号と、ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定することと、
前記処理回路が前記第4のデジタル信号及び前記第5のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することと、を含む、請求項7に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項9】
前記ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものである、請求項8に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項10】
前記処理回路は、前記アナログフィルタに制御命令を周期的に送信する、請求項1~9のいずれか一項に記載のアクティブノイズキャンセルオーディオ装置。
【請求項11】
ノイズキャンセル音声を発生させるステップと、
環境ノイズ及び前記ノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するステップと、
アナログフィルタを用いて、前記第1のアナログ信号にゲインを与え、前記ノイズキャンセル音声を発生させる第2のアナログ信号を生成するステップと、
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信するステップと、
を含む、ことを特徴とするアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項12】
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するステップは、
特定の時間範囲において、前記第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、前記アナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整するステップを含むことを特徴とする、請求項11に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項13】
前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成するステップと、
前記第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成するステップと、
制御命令を送信するステップであって、
前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項14】
前記アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、前記制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項15】
前記応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含み、
前記制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップは、
前記制御命令に基づいて、前記可変抵抗の抵抗値又は前記可変コンデンサの容量値を調整するステップを含むことを特徴とする、請求項14に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項16】
前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップであって、前記2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である、ステップと、
前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成するステップと、
前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成するステップと、
制御命令を送信するステップであって、
前記第1のデジタル信号及び前記第3のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項17】
前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップであって、前記2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である、ステップと
前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成するステップと、
前記2次応答が追加された前記第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成するステップと、
制御命令を送信するステップであって、
前記第3のデジタル信号と、ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定するステップ、
及び、前記第4のデジタル信号及び前記第5のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項18】
前記ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものであることを特徴とする、請求項17に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項19】
制御命令を周期的に送信するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11~18のいずれか一項に記載のアクティブノイズキャンセル方法。
【請求項20】
コンピュータ命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータは、記憶媒体におけるコンピュータ命令を読み取ると、
ノイズキャンセル音声を発生させるステップと、
環境ノイズ及び前記ノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するステップと、
アナログフィルタを用いて、前記第1のアナログ信号にゲインを与え、前記ノイズキャンセル音声を発生させる第2のアナログ信号を生成するステップと、
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信するステップと、
を含む方法を実行する、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、オーディオノイズキャンセルの分野に関し、特にアクティブノイズキャンセルオーディオ装置、アクティブノイズキャンセル方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置において、アクティブノイズキャンセル技術により環境ノイズを低減することが多い。例えば、オーディオ装置は、マイクロフォンによって外部環境ノイズを収集して分析し、外部環境ノイズの位相と逆であるノイズキャンセル音声を発生させ、それによりオーディオ装置から発せられた音声が人の耳に入る時、外部環境ノイズとノイズキャンセル音声とが互いに相殺され、ノイズ除去の効果を達成することができる。
【0003】
オーディオ装置では、通常、デジタルフィルタバンクを用いて信号のゲイン及び位相を調整するが、デジタルフィルタバンクは、信号を処理する際に大きな遅延を発生させるため、外部環境ノイズをタイムリーに処理することができず、ノイズキャンセルの応答が遅すぎ、オーディオ装置のノイズキャンセル効果に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高速応答が可能なアクティブノイズキャンセルオーディオ装置を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の一実施例は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置を提供する。該装置は、スピーカー、マイクロフォン、アナログフィルタ及び処理回路を含む。スピーカーは、ノイズキャンセル音声を発生させ、マイクロフォンは、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成する。アナログフィルタは、第1のアナログ信号にゲインを与え、スピーカーがノイズキャンセル音声を発生させるように駆動する第2のアナログ信号を生成する。処理回路は、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、アナログフィルタに制御命令を送信する。
【0006】
本明細書の実施例は、アナログフィルタを用いてアナログ信号の振幅及び位相を調整し、これによりノイズキャンセル音声を発生させて、信号変換(例えば、デジタルアナログ変換など)段階及びデジタルフィルタ処理による遅延を減少させることができ、それによりオーディオ装置は、タイムリーにノイズキャンセル応答を行い、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0007】
また、本明細書の実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、処理回路をさらに備え、処理回路により、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成し、ノイズキャンセル効果をさらに向上させることができる。
【0008】
いくつかの実施例において、処理回路がアナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整することは、特定の時間範囲において、第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、処理回路がアナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整することを含む。
【0009】
いくつかの好ましい実施例において、処理回路は、第1のアナログデジタル変換器及び第2のアナログデジタル変換器を含む。第1のアナログデジタル変換器は、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第2のアナログデジタル変換器は、第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成する。処理回路がアナログフィルタに制御命令を送信することは、処理回路が第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタに制御命令を送信することを含む。
【0010】
いくつかの実施例において、アナログフィルタは、スイッチゲート回路及び応答レギュレータを含み、スイッチゲート回路は、アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、制御命令に基づいて、応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整する。
【0011】
いくつかの実施例において、応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含む。スイッチゲート回路が、制御命令に基づいて、応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整することは、スイッチゲート回路が制御命令に基づいて、可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を調整することを含む。
【0012】
いくつかの好ましい実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、第1のアナログ加算器、第1のアナログデジタル変換器及び第3のアナログデジタル変換器をさらに含む。第1のアナログ加算器は、第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である。第1のアナログデジタル変換器は、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第3のアナログデジタル変換器は、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成する。処理回路がアナログフィルタに制御命令を送信することは、処理回路が第1のデジタル信号及び第3のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタに制御命令を送信することを含む。
【0013】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、固定構造をさらに含み、固定構造は、スピーカーとマイクロフォンを、ユーザの耳の付近におけるユーザの耳道を塞がない位置にそれぞれ固定する。
【0014】
いくつかの好ましい実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、第1のアナログ加算器、第3のアナログデジタル変換器及び第4のアナログデジタル変換器をさらに含む。第1のアナログ加算器は、第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である。第3のアナログデジタル変換器は、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、第4のアナログデジタル変換器は、2次応答が追加された第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成する。処理回路がアナログフィルタに制御命令を送信することは、処理回路が第3のデジタル信号と、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定することと、第4のデジタル信号及び前記第5のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタに制御命令を送信することと、を含む。
【0015】
いくつかの実施例において、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものである。
【0016】
いくつかの実施例において、処理回路は、アナログフィルタに制御命令を周期的に送信する。
【0017】
本明細書の一実施例は、アクティブノイズキャンセル方法を提供する。該方法は、ノイズキャンセル音声を発生させるステップと、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するステップと、アナログフィルタを用いて、第1のアナログ信号にゲインを与え、ノイズキャンセル音声を発生させる第2のアナログ信号を生成するステップと、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信するステップと、を含む。
【0018】
いくつかの実施例において、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するステップは、特定の時間範囲において、第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、アナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整するステップを含む。
【0019】
いくつかの実施例において、該方法は、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成するステップと、第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成するステップと、制御命令を送信するステップであって、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施例において、該方法は、アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施例において、応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含む。制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップは、制御命令に基づいて、可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を調整するステップを含む。
【0022】
いくつかの実施例において、該方法は、第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップであって、2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である、ステップと、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成するステップと、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成するステップと、制御命令を送信するステップであって、第1のデジタル信号及び第3のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施例において、該方法は、第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップであって、2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である、ステップと、前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成するステップと、2次応答が追加された前記第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成するステップと、制御命令を送信するステップであって、前記第3のデジタル信号と、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定するステップ、及び、第4のデジタル信号及び第5のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含む、ステップと、をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施例において、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものである。
【0025】
いくつかの実施例において、該方法は、制御命令を周期的に送信するステップをさらに含む。
【0026】
本明細書の一実施例は、コンピュータ命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータは、記憶媒体におけるコンピュータ命令を読み取ると、ノイズキャンセル音声を発生させるステップと、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するステップと、アナログフィルタを用いて、第1のアナログ信号にゲインを与え、ノイズキャンセル音声を発生させる第2のアナログ信号を生成するステップと、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信するステップと、を含む方法を実行するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0027】
例示的な実施例によって本明細書をさらに説明し、これらの例示的な実施例を、図面を参照して詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではなく、これらの実施例において、同じ符号は、同じ構造を表す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の構造ブロック図である。
【
図2】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の概略構成図である。
【
図3A】本明細書のいくつかの実施例に係る位相変調ユニットの概略構成図である。
【
図3B】本明細書のいくつかの実施例に係る位相変調ユニットの概略構成図である。
【
図4】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の概略構成図である。
【
図5】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の概略構成図である。
【
図6】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の概略構成図である。
【
図7】本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセル方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本明細書の例又は実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本明細書を他の類似するシナリオに適用することができる。文脈から明らかではない限り又は明記しない限り、図面において、同じ符号は、同じ構造又は操作を表す。
【0030】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」、及び/又は「モジュール」が、レベルの異なる様々なコンポーネント、素子、部材、部分又は組立体を区別する方法であることが理解されよう。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲に示すように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を指すものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は機器は、他のステップ又は要素を含む可能性がある。
【0032】
本明細書では、フローチャートを用いて本明細書の実施例に係るシステムが実行する操作を説明する。先行及び後続の操作が必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことが理解されよう。その代わりに、各ステップを逆の順序で、又は同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらのプロセスに追加してもよく、これらのプロセスから1つ以上の操作を除去してもよい。
【0033】
本明細書の1つ以上の実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、環境ノイズに応じてノイズキャンセル音声を提供して、環境ノイズの干渉を回避する必要がある様々なシーンに適用することができ、例えば、オーディオ出力装置(例えば、オーディオ、イヤホンなど)にノイズキャンセル音声を提供して、オーディオ出力の品質を向上させることができ、また、オーディオ入力装置(例えば、ピックアップ、マイクロホンなど)にノイズキャンセル音声を提供して、オーディオ収集の品質を向上させることができる。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、環境ノイズの大きさに応じて、出力するノイズキャンセル音声の大きさをリアルタイムに調整して、環境ノイズに対して最適な応答を容易に行い、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0034】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、フィードバック型アクティブノイズキャンセルオーディオ装置又はフィードフォワード型アクティブノイズキャンセルオーディオ装置であってもよい。フィードフォワード型アクティブノイズキャンセルオーディオ装置におけるマイクロフォンは、主に環境ノイズを受信し、さらにスピーカーにより、対応するノイズキャンセル音声を発生させてノイズキャンセルを行う。フィードバック型アクティブノイズキャンセルオーディオ装置におけるマイクロフォンは、環境ノイズとスピーカーにより発生させたノイズキャンセル音声とを同時に収集することができ、さらに処理回路は、環境ノイズとノイズキャンセル音声との重畳効果に基づいて、スピーカーがノイズキャンセル音声を調整するように駆動するフィードバック信号を生成し、それによりノイズキャンセル効果を達成する。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、フィードフォワード及びフィードバック結合型のアクティブノイズキャンセルなどの他のノイズキャンセル方式を用いてもよい。
【0035】
現在、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、デジタルフィルタバンク、アナログデジタル変換器及びデジタルアナログ変換器を含んでもよい。アナログデジタル変換器は、マイクロフォンによって受信された音声(環境ノイズ、又は環境ノイズ及びノイズキャンセル音声が重畳された音声)をデジタル信号に変換し、デジタルフィルタバンクは、デジタル信号を処理し、対応するノイズキャンセルデジタル信号を生成し、さらにデジタルアナログ変換器によってノイズキャンセルデジタル信号をアナログ信号に変換してスピーカーを介して出力して、環境ノイズと相殺することができる。しかしながら、デジタルフィルタバンクを用いて信号処理を行う方式は、大きな遅延を発生させ、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置がタイムリーに外部環境ノイズを処理できなくなり、ノイズキャンセルの応答が遅すぎて、オーディオ装置のリアルタイムなノイズキャンセル効果に影響を与える。
【0036】
本明細書の実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、アナログフィルタを用いてノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号に対して直接的に処理(例えば、ゲイン又は位相シフト)を行うことにより、信号変換(例えば、デジタルアナログ変換など)段階及びデジタルフィルタ処理による遅延を減少させることができ、それによりオーディオ装置は、タイムリーにノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0037】
また、本明細書の実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、処理回路をさらに備え、処理回路により、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成し、ノイズキャンセル効果をさらに向上させることができる。
【0038】
図1は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の構造ブロック図である。いくつかの実施例において、
図1に示すように、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、スピーカー110、マイクロフォン120、アナログフィルタ130及び処理回路140を含んでもよい。
【0039】
スピーカー110は、電気信号を音声信号に変換するトランスデューサである。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、開放型イヤホンであり、スピーカー110は、ユーザの耳の付近におけるユーザの耳を塞がない位置にあってもよい。例えば、開放型イヤホンの支持構造は、スピーカー(又はスピーカーを収容するハウジング)をユーザの耳介の周側(例えば、耳珠の前側)又は耳介の輪郭内部(例えば、三角窩の付近)に吊り下げるか又は挟持するように固定することができる。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、非開放型イヤホン(例えば、カナル型イヤホン又はヘッドホン)であり、非開放型イヤホンの支持構造は、スピーカー110をユーザの耳道内に設置してもよく、ハウジング構造がユーザの耳を囲むことによって形成された閉鎖空間内に設置してもよい。いくつかの実施例において、支持構造は、耳掛け型ブラケット、ヘッド掛け型ステントなどの固定部材であってもよい。例示的に、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、拡声型イヤホン、スピーカー、骨伝導イヤホン、空気伝導イヤホン、AR装置、VR装置、頭部装着型オーディオ装置、車載オーディオ装置、補聴器などであってもよく、或いは、選択的に、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、車載オーディオシステム又は室内オーディオシステムの一部として、空間内の特定の位置に対してアクティブノイズキャンセルを行ってもよい。
【0040】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、アクティブノイズキャンセルシステムに置き換えられてもよい。アクティブノイズキャンセルシステムは、1つ以上のスピーカー、マイクロフォン、アナログフィルタ及び処理回路を含んでもよく、それによりアクティブノイズキャンセルオーディオ装置100におけるスピーカー110、マイクロフォン120、アナログフィルタ130及び処理回路140と同じ機能をそれぞれ実現することができる。もちろん、アクティブノイズキャンセルシステムにおけるスピーカー、マイクロフォン、アナログフィルタ及び処理回路のうちの1つ以上は、空間における特定の位置に対してアクティブノイズキャンセルを行うように、同一の装置に統合して設置されてもよく、それぞれ独立したデバイスとしてそれぞれ存在してもよい。例示的に、アクティブノイズキャンセルシステムは、車載ノイズキャンセルシステムを含んでもよく、そのうちのスピーカーとマイクロフォンは、それぞれ異なるデバイスに独立して設置され、アナログフィルタ及び処理回路は、同一の処理モジュールに統合して設置されてもよい。
【0041】
いくつかの実施例において、スピーカー110は、ノイズキャンセル音声が環境ノイズと相殺可能であるように、環境ノイズの位相と逆の位相を有するノイズキャンセル音声を出力してもよい。さらに、ノイズキャンセル音声と環境ノイズとのユーザの耳道における位相差は、180度であってもよい。いくつかの実施例において、スピーカー110は、例えば、リマインダ音声、ユーザのニーズに応じて再生されるオーディオなどの他のオーディオを出力してもよい。
【0042】
マイクロフォン120は、音声信号を電気信号に変換するトランスデューサである。いくつかの実施例において、マイクロフォン120は、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を同時に収集し、収集した音声をアナログフィルタ130又は処理回路140に伝達して処理し、ノイズキャンセル音声の大きさ及び位相をフィードバックして、マイクロフォン120により収集された音声をできるだけ小さくし、この場合、マイクロフォンは、フィードバックマイクロフォンと呼ばれてもよい。フィードバックマイクロフォンは、受信された音声がユーザの耳により実際に受信された音声にできるだけ似ているように、ユーザの耳道に近い位置に設置されてもよい。いくつかの実施例において、マイクロフォン120は、主に環境ノイズを収集し、スピーカー110により発生したノイズキャンセル音声をできるだけ少なく収集し、この場合、マイクロフォンは、フィードフォワードマイクロフォンと呼ばれてもよい。スピーカー110のフィードフォワードマイクロフォンに対する影響を低減するために、フィードフォワードマイクロフォンとスピーカー110との間には、音声の伝達を遮断する物理的構造が設置されてもよく、又は、フィードフォワードマイクロフォンは、スピーカー110から離れた位置に設置されてもよく、スピーカー110の音響零点の付近に位置してもよい。
【0043】
いくつかの実施例において、マイクロフォンは、フィードバックマイクロフォンである場合、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を同時に収集し、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声に対応する第1のアナログ信号を生成してもよい。第1のアナログ信号の振幅は、環境ノイズとノイズキャンセル音声が互いに相殺される程度を反映することができる。理想的なノイズキャンセル効果を達成するために、第1のアナログ信号の振幅をできるだけ小さくすべきであり、さらに0まで低下させるべきである。
【0044】
なお、密閉型又は半開放型オーディオ装置に比べて、開放型オーディオ装置では、マイクロフォンがユーザの耳道に設置されていないため、ユーザの耳道により受信された音声とマイクロフォンにより受信された音声とが一致しなくなる。いくつかの実施例において、ユーザの耳道により受信された音声信号とマイクロフォンにより受信された音声信号との対応関係を示す、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を構築してもよい。開放型オーディオ装置の具体的な実現方式について、下記
図6における関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0045】
スピーカー110とマイクロフォン120との関係をよりよく説明するために、
図2は、スピーカー及びマイクロフォンの具体的な実現方式を例示的な方式で説明する。
【0046】
図2は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置の概略構成図である。
【0047】
図2に示すように、y(t)は、スピーカー110により受信されたノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号を表し、第2のアナログ信号とも呼ばれ、これに基づいて、スピーカー110は、ノイズキャンセル音声を発生させることができ、p(t)は、環境ノイズがマイクロフォン120により受信された時に対応するアナログ信号を表し、e(t)は、マイクロフォン120が同時に受信された環境ノイズ及びノイズキャンセル音声に基づいて生成した第1のアナログ信号である。これにより、上記3種類の信号の関係は、以下のように表すことができる。
【0048】
e(t)=p(t)+y(t) (1)
【0049】
いくつかの実施例において、発生したノイズキャンセル音声を環境ノイズと相殺するために、第1のアナログ信号e(t)は、一定の処理(例えば、移相器による位相シフト及び増幅器による増幅などの処理)が行われた後、第2のアナログ信号y(t)を生成することがある。理想的には、第2のアナログ信号y(t)と環境ノイズに対応するアナログ信号p(t)とが互いに相殺されることにより、第1のアナログ信号e(t)の振幅を0に低減することを実現する。なお、ここでの第1のアナログ信号e(t)の処理についての説明は、説明のためのものに過ぎず、当業者が原理を理解した上で行う対応する改良に限定されるものではない。例えば、第1のアナログ信号e(t)に対して、それぞれ増幅器及び移相器などの異なる電子デバイスにより位相シフト又は増幅の処理を行ってもよく、同一の電子デバイス(例えば、アナログフィルタ)により第1のアナログ信号e(t)に対する位相シフト及び増幅を同時に実現してもよい。
【0050】
アナログフィルタ130は、アナログ信号又は連続時間信号をフィルタリングする回路デバイスである。いくつかの実施例において、アナログフィルタ130は、アナログ信号に対して信号処理を行ってもよい。例示的に、アナログフィルタ130は、アナログ信号の位相及び振幅を調整するために、アナログ信号に対して位相シフト及び増幅を同時に行うことができる。
【0051】
いくつかの実施例において、アナログフィルタ130は、第1のアナログ信号にゲインを与え、スピーカー110がノイズキャンセル音声を発生させるように駆動する第2のアナログ信号を生成してもよい。例示的に、さらに、上記
図2に示すように、アナログフィルタ130のゲインは、時間領域においてh(t)と表されてもよく、周波数領域においてH(s)と表されてもよく、アナログフィルタ130は、第1のアナログ信号e(t)にゲインh(t)を与え、第2のアナログ信号y(t)を生成してもよい。これにより、上記3種類の信号の関係は、時間領域において以下のように表すことができる。
【0052】
y(t)=e(t)*h(t) (2)
【0053】
ここで、*は、畳み込み演算である。いくつかの実施例において、上記式(1)及び式(2)に基づいて、第1のアナログ信号e(t)とアナログフィルタ130のゲインh(t)との時間領域及び周波数領域におけるそれぞれの対応関係は、以下のように表すことができる。
【0054】
【0055】
ここで、E(s)は、第1のアナログ信号の周波数領域における表現であり、P(s)は、環境ノイズに対応するアナログ信号の周波数領域における表現であり、H(S)は、アナログフィルタ130の周波数領域におけるゲインである。
【0056】
式(3)に示すように、アナログフィルタ130のゲインH(S)が大きいほど、第1のアナログ信号E(s)の値が0に近くなり、アクティブノイズキャンセルの理想状態に近くなる(すなわち、第2のアナログ信号y(t)と環境ノイズに対応するアナログ信号p(t)とが互いに相殺され得る)。これにより、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、ノイズキャンセル効果を向上させるように、大きなゲインH(S)を有するアナログフィルタ130が設置されてもよい。
【0057】
いくつかの実施例において、アナログフィルタ130は、ゲインが大きすぎたり小さすぎたりすることによりアクティブノイズキャンセルオーディオ装置100のノイズキャンセル効果が不安定になることを回避するように、処理回路140からの制御命令に基づいて、自体のゲイン及び位相シフトを調整してもよい。例示的に、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が初期状態にある場合、第1のアナログ信号の値は、主に環境ノイズの寄与に由来し(すなわち、初期状態の第2のアナログ信号が小さいか又はほぼ0である)、この場合、アナログフィルタ130は、小さいゲインを有するように設定されてもよく、これにより、第1のアナログ信号が過度に増幅され、次の時刻に振幅が大きすぎる第2のアナログ信号を発生させて、スピーカーが大きすぎるノイズキャンセル音声を発してデバイスの破損を引き起こすことを回避する。特定の時間範囲において、第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、処理回路140は、アナログフィルタ130を制御してそのゲインを動的に調整することができる。例えば、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が初期状態にある時からの一定時間内に、第1のアナログ信号の振幅の減少に伴い、アナログフィルタ130のゲインが連続的に向上することができ、それによりゲインが小さすぎて第2のアナログ信号が環境ノイズに対応するアナログ信号と相殺できないことを回避する。アナログフィルタ130の具体的な調整方式について、下記処理回路の関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の動作過程において、環境ノイズが変動した場合、アナログフィルタ130は、処理回路140の制御下でアナログフィルタ130のゲインを動的に調整することにより、環境ノイズの変化に適応することができる。例えば、ある時刻において、環境ノイズが大きくなると、それに応じて第1のアナログ信号の振幅が大きくなり、処理回路140は、アナログフィルタ130を制御してそのゲインを小さくし、第1のアナログ信号が過度に増幅されてスピーカーが破損することを回避することができる。
【0058】
いくつかの実施例において、アナログフィルタ130は、スイッチゲート回路及び応答レギュレータを含んでもよく、スイッチゲート回路は、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、制御命令に基づいて、応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整することにより、第1のアナログ信号に対する位相シフト処理及び/又は増幅処理が実現される。
【0059】
いくつかの実施例において、スイッチゲート回路は、アナログスイッチにより応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整してもよい。さらに、応答レギュレータの異なるチャネルに対応する抵抗値又は容量値が異なり、アナログスイッチは、位置変換により応答レギュレータのチャネルを変更し、応答レギュレータの抵抗値又は容量値の調整を実現することができる。例示的に、応答レギュレータは、ポテンショメータを含み、アナログスイッチの位置を変化させて、ポテンショメータの回路に接続されたチャネルを変更することにより、応答レギュレータの抵抗値が変更することができる。
【0060】
いくつかの実施例において、スイッチゲート回路は、制御命令に基づいて、スイッチ自体の状態を調整してもよい。例示的に、制御命令がパルス信号である場合、スイッチゲート回路は、パルス信号の周波数に基づいて、アナログスイッチの位置を調整することができる。いくつかの実施例において、スイッチゲート回路は、処理回路140からの制御命令を周期的に受信してもよく、制御命令の具体的な実現の詳細について、下記処理回路における関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0061】
応答レギュレータは、信号を処理する回路デバイスであってもよい。例示的に、応答レギュレータは、入力された第1のアナログ信号に対して信号処理(例えば、位相シフト処理及び増幅処理など)を行い、第2のアナログ信号を取得することができる。いくつかの実施例において、応答レギュレータの抵抗値又は容量値は、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答に影響を与え、それにより信号処理の効果に影響を与えてもよい。例示的に、第1のアナログ信号が変化せず、応答レギュレータの抵抗値又は容量値が変化した場合、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答が変化することを引き起こし、それに伴って、アナログフィルタ130により出力された第2のアナログ信号の振幅及び位相が変化する。以下は、位相変調ユニットを例として、応答レギュレータの具体的な実現方式を詳細に説明する。
【0062】
いくつかの実施例において、応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含んでもよい。それに対応して、スイッチゲート回路は、制御命令に基づいて、可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を調整してもよい。
【0063】
位相変調ユニットは、パラメータ調整可能な複数のデバイスの回路セットであってもよい。いくつかの実施例において、応答レギュレータは、位相変調ユニットにおける可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を変更することにより、応答レギュレータの抵抗値又は容量値を変更してもよい。可変抵抗は、スライド抵抗器、ポテンショメータ、抵抗器などであってもよく、可変抵抗の具体的なタイプは、スイッチゲート回路のタイプに応じて選択されてもよい。可変コンデンサは、パッチ可変コンデンサ、プラグイン可変コンデンサなどであってもよく、可変コンデンサの具体的なタイプは、スイッチゲート回路のタイプに応じて選択されてもよい。
図3A及び
図3Bは、位相変調ユニットの具体的な実現方式を例示的な方式で説明する。
【0064】
図3Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る位相変調ユニットの概略構成図である。
【0065】
図3Aに示すように、位相変調ユニット310は、コンデンサC1、抵抗R1及びボルテージフォロワQ1を含んでもよい。コンデンサC1と抵抗R1とは、直列接続され、コンデンサC1の一端は、接地され、コンデンサC1と抵抗R1との接続点は、ボルテージフォロワQ1の正相入力端に接続され、ボルテージフォロワQ1の逆相入力端は、出力端に接続され、位相変調ユニット310は、信号U
i1に対して信号処理を行って信号U
o1を取得することができる。本願の実施例において、ボルテージフォロワQ1は、位相変調ユニット310が後段回路による影響を受けることを回避し、位相変調ユニット310の安定動作を維持することができる。
【0066】
図3Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る位相変調ユニットの概略構成図である。
【0067】
図3Bに示すように、複数の位相変調ユニット320は、直列接続され、1つの位相変調ユニット320は、直列接続された1つのコンデンサ(例えば、コンデンサC2)及び1つの抵抗(例えば、抵抗R2)を含んでもよく、該位相変調ユニット320における抵抗(例えば、抵抗R2)は、他の位相変調ユニット320の抵抗(例えば、抵抗R3、R4)に直列接続され、該位相変調ユニット320におけるコンデンサ(例えば、コンデンサC2)は、他の位相変調ユニット320のコンデンサ(例えば、コンデンサC3、C4)に並列接続される。複数の位相変調ユニット320は、信号U
i2に対して信号処理を行って信号U
o2を取得することができる。
【0068】
いくつかの実施例において、直列接続された位相変調ユニット320の数を調整することにより、応答レギュレータの位相周波数応答の範囲を調整してもよい。例示的に、直列接続された位相変調ユニット320の数が多いほど、応答レギュレータの位相周波数応答の範囲が大きくなる。
【0069】
これにより、位相変調ユニット(例えば、上記位相変調ユニット310、位相変調ユニット320)の伝達関数は、以下のように表すことができる。
【0070】
【0071】
ここで、Rは、位相変調ユニットにおける抵抗の抵抗値であり、Cは、位相変調ユニットにおけるコンデンサの容量値であり、それに対応して、1つの位相変調ユニットの位相周波数応答は、-arctan(wRC)として表されてもよく、位相周波数応答の範囲は、[-90°,0°]であってもよい。
【0072】
いくつかの実施例において、コンデンサC1~C4は、可変コンデンサであってもよく、或いは抵抗R1~R4は、可変抵抗である。なお、
図3A~
図3Bは、抵抗R1~R4が可変抵抗であることのみを示す。可変コンデンサ(例えば、コンデンサC1~C4)の容量値又は可変抵抗(例えば、抵抗R1~R4)の抵抗値を調整することにより、位相変調ユニットの位相周波数応答が[-90°,0°]内で変化することができる。それに対応して、スイッチゲート回路は、制御命令に基づいて、可変デバイスに対応するアナログスイッチを用いて、回路に接続された通路を調整し、コンデンサC1~C4の容量値又は抵抗R1~R4の抵抗値への調整を実現することができる。
【0073】
本願の実施例において、スイッチゲート回路と応答レギュレータとの協働により、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を調整することができ、アナログフィルタ130が特定の時刻に与えるゲインが大きすぎたり小さすぎたりすることを回避して、アナログフィルタ130の環境ノイズに対する最適な応答を達成することにより、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100のノイズキャンセル効果が向上する。
【0074】
処理回路140は、データ処理制御機能を有する回路ユニットであってもよい。いくつかの実施例において、処理回路140は、特定用途向け集積回路ASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)、複合プログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable logic device、CPLD)、マイクロコントローラユニット(Microcontroller Unit、MCU)、中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Process、DSP)又はグラフィックスプロセッシングユニット(graphics processing unit、GPU)などの回路モジュールを含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施例において、特定の時間範囲において、第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、処理回路140は、アナログフィルタ130を制御してそのゲインを動的に調整してもよい。例示的に、特定の時間範囲は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が動作を開始した後の時間帯であってもよく、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が動作を開始するにつれて、処理回路140は、第1のアナログ信号の振幅が小さくなるにつれて制御命令を送信し、アナログフィルタ130のゲインを徐々に高めることにより、第2のアナログ信号の振幅を環境ノイズに対応するアナログ信号の振幅に近づけるように維持し、装置のノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0076】
なお、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が初期状態(すなわち、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が動作を開始する状態)にある場合、外部環境ノイズの大部分が相殺されていないため、第1のアナログ信号の振幅が大きくなり、この場合、処理回路140は、制御命令を送信し、アナログフィルタ130のゲインを小さく制御し、第2のアナログ信号の振幅が大きすぎることを回避し、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が初期状態で安定して動作できることを確保する。
【0077】
いくつかの実施例において、処理回路140は、アナログフィルタ130のゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、上記アナログフィルタ130に制御命令を送信してもよい。
【0078】
第1のアナログ信号は、環境ノイズとノイズキャンセル音声とが互いに相殺される程度を反映し、第2のアナログ信号は、ノイズキャンセル音声の大きさを反映することができる。いくつかの実施例において、制御命令は、ハイレベル信号又はパルス信号などであってもよく、制御命令の具体的なタイプは、処理回路140のタイプに応じて選択されてもよい。
【0079】
いくつかの実施例において、処理回路140は、制御命令の周波数を調整することにより、アナログフィルタ130のゲイン及び位相シフトを調整してもよい。
図4は、処理回路140の具体的な実現方式を例示的な方式で詳細に説明する。
【0080】
図4は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の概略構成図である。
【0081】
図4に示すように、y(t)は、第2のアナログ信号を表し、e(t)は、第1のアナログ信号を表し、処理回路140は、第1のアナログ信号e(t)及び第2のアナログ信号y(t)に基づいて、必要なアナログフィルタ130の係数(例えば、ゲイン及び位相シフト)を計算し、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を計算し、振幅周波数応答及び位相周波数応答に対応する制御命令を生成し、アナログフィルタ130に送信することができる。アナログフィルタ130は、アナログフィルタ130の実際のゲイン及び位相シフトを計算されたゲイン及び位相シフトに近づけるように、該制御命令に基づいて、自体のゲイン及び位相シフトを調整することができる。アナログフィルタ130を調整する具体的な実現方式について、上記
図3A~
図3Bの関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0082】
本願の実施例において、処理回路140は、アナログフィルタ130のゲイン及び位相シフトを調整するように、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、制御命令を生成し、それによりアナログフィルタ130の環境ノイズに対する最適な応答が達成され、ノイズキャンセル効果がさらに向上する。
【0083】
いくつかの実施例において、処理回路140は、第1のアナログデジタル変換器及び第2のアナログデジタル変換器を含んでもよく、第1のアナログデジタル変換器は、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第2のアナログデジタル変換器は、第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成する。それに対応して、処理回路140は、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタ130に制御命令を送信することができる。
【0084】
いくつかの実施例において、アナログデジタル変換器(例えば、第1のアナログデジタル変換器、第2のアナログデジタル変換器)は、所定のサンプリングレートに基づいて、アナログ信号(例えば、第1のアナログ信号、第2のアナログ信号)をサンプリングして、離散的なデジタル信号(例えば、第1のデジタル信号、第2のデジタル信号)を生成してもよい。それに対応して、処理回路140は、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、制御命令を生成することができる。例示的に、
図4に示すように、第1のアナログデジタル変換器141は、第1のアナログ信号e(t)をサンプリングして第1のデジタル信号e(n)を生成し、第2のアナログデジタル変換器142は、第2のアナログ信号y(t)をサンプリングして第2のデジタル信号y(n)を生成する。
【0085】
いくつかの実施例において、処理回路140は、適応フィルタリングアルゴリズム(Least Mean Square、LMS)、フィルタリングx最小平均二乗アルゴリズム(filtered-x least mean square、FXLMS)などのノイズキャンセルアルゴリズムにより、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタ130の係数(例えば、ゲイン及び位相シフト)を計算して、係数に対応する制御命令を生成してもよい。
【0086】
本願の実施例において、アナログデジタル変換器によりアナログ信号をデジタル信号に変換すると、アナログ領域において信号処理を行うアナログフィルタ130とデジタル領域に信号処理を行う処理回路140とを両立し、アナログとデジタルの組み合わせを実現して、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の応用シーンを広げることができる。
【0087】
アナログデジタル変換及び信号処理に時間を要するため、いくつかの実施例において、処理回路140は、上記アナログフィルタ130に制御命令を周期的に送信することができる。それに対応して、スイッチゲート回路は、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を調整及び制御するように、各周期において、応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整してもよい。
【0088】
いくつかの実施例において、処理回路140は、アナログデジタル変換器130のサンプリングレート及び信号変換の時間、スイッチゲート回路の更新時間、並びに処理回路140による信号の処理時間などの1種以上の遅延影響要素に基づいて、制御命令を送信する周期を決定してもよい。例示的に、アナログデジタル変換器のサンプリングレートが16kHzであり、スイッチゲート回路がポイントごとに更新するのに約0.06msを要し、アナログフィルタ130による信号の処理に1msを要し、アナログデジタル変換及びスイッチゲート回路の遅延などに約5msの遅延を要する場合、制御命令を送信する周期が1sであってもよいと決定する。上記で提供された具体的な時間パラメータは、単なる例として参照され、本願は、これを特に限定しない。
【0089】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の動作が安定する場合、処理回路140は、アナログフィルタ130への制御命令の送信を停止して、アナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答の調整及び制御を停止してもよい。さらに、第1のアナログ信号の振幅が所定の振幅範囲にある場合、処理回路140は、アナログフィルタ130への制御命令の送信を停止してもよい。第1のアナログ信号の振幅が所定の振幅範囲にある時、第1のアナログ信号が0に近いことを反映し、つまり、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100がアクティブノイズキャンセルの理想状態にあり、動作が安定することを反映することができる。
【0090】
いくつかの実施例において、
図4に示すように、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、アナログフィルタ130と結合して、第1のアナログ信号e(t)に対して増幅処理を行う増幅器150をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、増幅器150が設置されず、アナログフィルタ130のみにより、第1のアナログ信号e(t)に対して増幅処理を行ってもよい。
【0091】
いくつかの実施例において、オーディオ装置に2次チャネルの応答が存在すると、ノイズキャンセル効果に影響を与えるため、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、2次応答を補償してもよい。2次応答は、オーディオ装置における2次チャネルの応答であり、スピーカーからマイクロフォンまでの音声伝達経路の音声信号に対する影響を反映することができる。
図5は、2次応答への補償の具体的な実現方式を例示的な方式で詳細に説明する。
【0092】
図5は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の概略構成図である。
【0093】
図5に示すように、y(t)は、第2のアナログ信号を表し、
【数3】
は、2次応答、すなわち、スピーカーからマイクロフォンまでの伝達関数を表し、
【数4】
は、2次応答信号を表し、2次応答
【数5】
が追加された第2のアナログ信号y(t)として理解されてもよい。
【0094】
アナログ加算器は、複数のアナログ信号を演算する電子デバイスである。いくつかの実施例において、アナログ加算器は、演算増幅器に基づく加算回路、例えば、反転加算器回路、非反転加算器回路などであってもよい。いくつかの実施例において、第1のアナログ加算器は、第1のアナログ信号及び逆相の2次応答信号に対して加算演算を行い、第3のアナログ信号を生成して、2次応答を補償してもよい。第3のアナログ信号は、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声が相殺された音波と、2次チャネルを通過した後の逆相のノイズキャンセル音声との重畳音波、すなわち、2次応答補償が行われた環境ノイズを反映することができる。
【0095】
例示的に、さらに、上記
図5に示すように、
【数6】
は、2次応答補償が行われた環境ノイズに対応するアナログ信号、すなわち、アナログ加算器160から出力された第3のアナログ信号を表す。いくつかの実施例において、2次応答と、第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と第3のアナログ信号との間の関係は、以下のように表すことができる。
【0096】
【0097】
ここで、
【数8】
は、第3のアナログ信号であり、
【数9】
は、2次応答信号、すなわち、スピーカーからマイクロフォンまでの応答
【数10】
が追加された第2のアナログ信号y(t)であり、e(t)は、第1のアナログ信号である。
【0098】
それに対応して、いくつかの実施例において、第1のアナログデジタル変換器は、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第3のアナログデジタル変換器は、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成する。処理回路140は、2次応答を補償する場合にアナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を調整するように、第1のデジタル信号及び第3のデジタル信号に基づいて、上記アナログフィルタ130に制御命令を送信することができる。
【0099】
例示的に、さらに、上記
図5に示すように、第1のアナログデジタル変換器141は、第1のアナログ信号e(t)をサンプリングして第1のデジタル信号e(n)を生成し、第3のアナログデジタル変換器143は、第3のアナログ信号
【数11】
をサンプリングして第3のデジタル信号
【数12】
を生成する。処理回路140は、第1のデジタル信号e(n)及び第3のデジタル信号
【数13】
に基づいて、アナログフィルタ130の係数を決定することができる。2次応答を補償する場合、アナログフィルタ130の係数を更新することは、以下のように表すことができる。
【0100】
【0101】
ここで、w(n+1)は、アナログフィルタ130の現在更新する必要がある係数であり、w(n)は、アナログフィルタ130の最後に更新された係数であり、
【数15】
は、第3のデジタル信号であり、e(n)は、第1のデジタル信号であり、
【数16】
は、アナログフィルタ130の調整値であり、ノイズキャンセルアルゴリズム(例えば、LMSアルゴリズム、FXLMSアルゴリズム)により第1のデジタル信号及び第3のデジタル信号に対して信号処理を行って取得されるものである。
【0102】
いくつかの実施例において、処理回路140は、2次応答を補償する場合、アナログフィルタ130の係数を決定した後、アナログフィルタ130の実際のゲインと位相シフトを計算された更新係数に近づけるように、アナログフィルタ130に制御命令を送信することにより、アナログフィルタ130は、環境ノイズに対する最適な応答に近づくことができる。アナログフィルタ130を調整する具体的な実現方式について、上記
図3A~
図3Bの関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0103】
本願の実施例において、アナログ加算器を用いて2次応答を補償することにより、アナログ領域において信号補償を行うことを実現し、デジタル領域において信号が処理されることによる遅延を回避することができ、それによりアナログフィルタ130が外部環境ノイズをタイムリーに処理できることを確保するとともに、ノイズキャンセルの正確性を向上させ、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100のノイズキャンセル効果をさらに向上させる。
【0104】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100が開放型オーディオ装置(すなわち、スピーカーが耳に近づくが塞がない)である場合、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間のチャネルの応答がノイズキャンセル効果に影響を与えるため、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、補償、すなわち、開放型応答補償を行うように、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を構築してもよい。
【0105】
ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数は、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の音声の伝達が受ける影響を表すことができる。いくつかの実施例において、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものであってもよい。
【0106】
例示的に、テスト(例えば、人工ヘッドテストなど)によりスピーカーからマイクロフォンまでの応答H
1、及びスピーカーからユーザの耳道における応答H
2を取得し、さらに応答H
1と応答H
2との間の関係式
【数17】
に基づいて、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数
【数18】
を取得することができる。或いは、スピーカーからマイクロフォンまでの応答H
1に基づいて、統計モデル(例えば、混合ガウスモデルなど)又はニューラルネットワークモデルを実行して、モデルから出力された伝達関数
【数19】
を取得することができる。
【0107】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、第1のアナログ加算器、第3のアナログデジタル変換器及び第4のアナログデジタル変換器を含んでもよい。第4のアナログデジタル変換器は、処理回路140が信号処理を行うために、2次応答信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成してもよい。アナログ加算器及びアナログデジタル変換器の具体的な実現方式について、上記
図4~
図5の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。処理回路140は、2次応答及び開放型応答を補償する場合にアナログフィルタ130の振幅周波数応答及び位相周波数応答を調整するように、第3のデジタル信号及びユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数に基づいて、第5のデジタル信号を決定し、第4のデジタル信号及び第5のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタ130に制御命令を送信してもよい。さらに、いくつかの実施例において、処理回路140は、第4のデジタル信号及び第5のデジタル信号に対して加算演算を行い、第6のデジタル信号を取得して、第3のデジタル信号及び第6のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタ130に制御命令を送信してもよい。
【0108】
第3のデジタル信号は、2次応答補償が行われた環境ノイズを反映し、第4のデジタル信号は、2次応答が追加されたノイズキャンセル音声を反映し、第5のデジタル信号は、開放型応答の影響下でノイズキャンセル音声に対して2次応答補償を行って取得された音波を反映することができる。第6のデジタル信号は、ノイズキャンセル音声に対して2次応答補償及び開放型応答補償を行って取得された音波を反映することができる。
図6は、開放型応答補償の具体的な実現方式を例示的な方式で詳細に説明する。
【0109】
図6は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ装置100の概略構成図である。
【0110】
図6に示すように、
【数20】
は、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を表し、第4のアナログデジタル変換器144は、2次応答信号
【数21】
をサンプリングして第4のデジタル信号
【数22】
を生成することができ、
【数23】
は、開放型応答の影響下での第5のデジタル信号を表し、
【数24】
は、2次応答補償及び開放型応答補償が行われた第6のデジタル信号を表す。これにより、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数に基づいて、第5のデジタル信号、第4のデジタル信号及び第3のデジタル信号の間の関係は、以下のように表すことができる。
【0111】
【0112】
ここで、
【数26】
は、第6のデジタル信号であり、
【数27】
は、第5のデジタル信号であり、
【数28】
は、第4のデジタル信号、かつ
【数29】
であり、*は、畳み込み演算を表し、
【数30】
は、2次応答に対応する伝達関数である。つまり、処理回路140は、第4のデジタル信号
【数31】
及び第5のデジタル信号
【数32】
に対して加算演算を行って、第6のデジタル信号
【数33】
を取得することができる。処理回路140は、さらに、第3のデジタル信号及び第6のデジタル信号に基づいて、アナログフィルタ130の係数を決定することができる。2次応答及び開放型応答を補償する場合、アナログフィルタ130の係数を更新することは、以下のように表すことができる。
【0113】
【0114】
ここで、w’(n+1)は、アナログフィルタ130の今回更新する必要がある係数であり、w’(n)は、アナログフィルタ130の最後に更新された係数であり、
【数35】
は、第3のデジタル信号であり、
【数36】
は、第6のデジタル信号であり、
【数37】
は、アナログフィルタ130の調整値であり、ノイズキャンセルアルゴリズム(例えば、LMSアルゴリズム、FXLMSアルゴリズム)により第3のデジタル信号及び第6のデジタル信号に対して信号処理を行って取得されるものである。
【0115】
いくつかの実施例において、処理回路140は、2次応答及び開放型応答を補償する場合、アナログフィルタ130の係数を決定した後、アナログフィルタ130の実際のゲインと位相シフトを計算された更新係数に近づけるように、アナログフィルタ130に制御命令を送信し、アナログフィルタ130は、環境ノイズに対する最適な応答に近づくことができる。アナログフィルタ130を調整する具体的な実現方式について、上記
図3A~
図3Bの関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0116】
本願の実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100は、開放型オーディオ装置である場合、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を補償し、ノイズキャンセルの正確性を向上させ、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100のノイズキャンセル効果を確保することができる。
【0117】
図7は、本明細書のいくつかの実施例に係るアクティブノイズキャンセル方法のフローチャートである。いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置100により実行されてもよい。
【0118】
いくつかの実施例において、フロー700は、ステップ710~ステップ740を含んでもよい。
【0119】
ステップ710において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、ノイズキャンセル音声を発生させる。いくつかの実施例において、ノイズキャンセル音声は、ノイズキャンセル効果を達成するように、環境ノイズを相殺してもよい。ステップ710は、上記スピーカー110により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図1~
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0120】
ステップ720において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、環境ノイズ及びノイズキャンセル音声を収集し、第1のアナログ信号を生成する。いくつかの実施例において、第1のアナログ信号は、環境ノイズとノイズキャンセル音声が互いに相殺される程度を反映してもよい。ステップ720は、上記マイクロフォン120により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図1~
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0121】
ステップ730において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、アナログフィルタを用いて、第1のアナログ信号にゲインを与え、ノイズキャンセル音声を発生させる第2のアナログ信号を生成する。いくつかの実施例において、第2のアナログ信号は、スピーカーがノイズキャンセル音声を発生させるように駆動してもよい。ステップ730は、上記アナログフィルタ130により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図1~
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0122】
ステップ740において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信する。いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、アナログフィルタに制御命令を送信して、アナログフィルタがゲイン及び位相シフトを調整するように駆動してもよい。ステップ740は、上記アナログフィルタ130により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図1~
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0123】
本明細書の実施例において、アナログフィルタを用いてアナログ信号の振幅及び位相を調整し、これによりノイズキャンセル音声を発生させて、信号変換(例えば、デジタルアナログ変換など)段階及びデジタルフィルタ処理による遅延を減少させ、タイムリーにノイズキャンセル応答を行うことができ、それによりノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0124】
また、本明細書の実施例に係るアクティブノイズキャンセルオーディオ方法は、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成し、ノイズキャンセル効果をさらに向上させることができる。
【0125】
いくつかの実施例において、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するステップは、特定の時間範囲において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、アナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整するステップを含んでもよい。このように、アナログフィルタが特定の時刻に与えるゲインが大きすぎたり小さすぎたりすることを回避して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成することを実現することにより、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置のノイズキャンセル効果が向上することができる。
【0126】
いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成するステップをさらに含んでもよい。上記ステップ740は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含んでもよい。サンプリングのステップは、それぞれ上記第1のアナログデジタル変換器と第2のアナログデジタル変換器により実行されてもよく、具体的な実現方式について、
図1~
図6の関連内容を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0127】
本明細書の実施例において、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、制御命令を生成する方式により、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成し、ノイズキャンセル効果をさらに向上させる。
【0128】
いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が、アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップをさらに含んでもよい。該ステップは、アナログフィルタにおけるスイッチゲート回路により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図3A~
図3Bの関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0129】
いくつかの実施例において、応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含んでもよい。それに対応して、制御命令に基づいて、アナログフィルタにおける応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整するステップは、制御命令に基づいて、可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を調整するステップを含んでもよい。該ステップは、アナログフィルタにおけるスイッチゲート回路により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図3A~
図3Bの関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0130】
本明細書の実施例において、可変抵抗の抵抗値又は可変コンデンサの容量値を調整することにより、アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を制御し、アナログフィルタが特定の時刻に与えるゲインが大きすぎたり小さすぎたりすることを回避して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成することにより、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置のノイズキャンセル効果を向上させることができる。
【0131】
いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップをさらに含んでもよく、2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である。アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、さらに、第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成することができる。上記ステップ740は、第1のデジタル信号及び第3のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信するステップを含んでもよい。
【0132】
いくつかの実施例において、第3のアナログ信号を生成するステップは、アナログ加算器により実行されてもよく、第3のアナログ信号をサンプリングするステップは、第3のアナログデジタル変換器により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図5~
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0133】
本明細書の実施例において、アナログ領域において2次応答を補償することにより、デジタル領域において信号が処理されることによる遅延を回避することができ、それによりアクティブノイズキャンセルオーディオ装置が外部環境ノイズをタイムリーに処理できることを確保するとともに、ノイズキャンセルの正確性を向上させ、ノイズキャンセル効果をさらに向上させる。
【0134】
いくつかの実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、開放型オーディオ装置である場合、補償、すなわち、開放型応答補償を行うように、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を構築してもよい。
【0135】
いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第1のアナログ信号と、第2のアナログ信号と、第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成するステップをさらに含んでもよい。2次応答がスピーカーからマイクロフォンまでの応答である。アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、2次応答が追加された第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成することができる。上記ステップ740は、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置が第3のデジタル信号と、ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定するステップを含んでもよい。アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、第4のデジタル信号及び第5のデジタル信号に基づいて、制御命令を送信することができる。
【0136】
いくつかの実施例において、2次応答が追加された第2のアナログ信号をサンプリングするステップは、第4のアナログデジタル変換器により実行されてもよく、第5のデジタル信号を決定するステップは、処理回路により実行されてもよく、具体的な実現方式は、
図6の関連説明を参照することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0137】
いくつかの実施例において、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものである。いくつかの実施例において、フロー700は、アクティブノイズキャンセル装置が制御命令を周期的に送信するステップをさらに含んでもよい。
【0138】
本明細書の実施例において、アクティブノイズキャンセルオーディオ装置は、開放型オーディオ装置である場合、ユーザの耳道とマイクロフォンとの間の伝達関数を補償し、ノイズキャンセルの正確性を向上させ、ノイズキャンセル効果を確保することができる。
【0139】
本明細書の実施例の可能な有益な効果は、(1)~(2)を含むが、これらに限定されない。(1)アナログフィルタを用いてノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号に対して直接的に処理(例えば、ゲイン又は位相シフト)を行うことにより、信号変換(例えば、デジタルアナログ変換など)段階及びデジタルフィルタ処理による遅延を減少させることができ、それによりオーディオ装置は、タイムリーにノイズキャンセル応答を行い、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。(2)処理回路は、環境ノイズとノイズキャンセル音声に対応するアナログ信号とに基づいて、アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整して、アナログフィルタの環境ノイズに対する最適な応答を達成し、ノイズキャンセル効果をさらに向上させる。
【0140】
以上、基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記詳細な開示は、単なる例として提示されているものに過ぎず、本明細書を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本明細書に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本明細書によって示唆されることが意図されているため、本明細書の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【0141】
さらに、本明細書の実施例を説明するために、本明細書において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本明細書の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本明細書の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
【0142】
また、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本明細書に記載の処理素子又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本明細書の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単に説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、逆に、本明細書の実施例の趣旨及び範囲内にあるすべての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることを理解されたい。例えば、上述したシステムアセンブリは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存のサーバ又はモバイルデバイスに説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
【0143】
同様に、本明細書の実施例の前述の説明では、本明細書を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈すべきではない。実際に、実施例の特徴は、上記開示された単一の実施例のすべての特徴よりも少ない場合がある。
【0144】
いくつかの実施例において、成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例において修飾語「約」、「ほぼ」又は「概ね」によって修飾されるものであることを理解されたい。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「概ね」は、上記数字が±20%の変動が許容されることを示す。よって、いくつかの実施例において、明細書及び特許請求の範囲において使用されている数値パラメータは、いずれも個別の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例において、数値パラメータについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用するべきである。本明細書のいくつかの実施例において、その範囲を決定するための数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において、このような数値は、できるだけ正確に設定される。
【0145】
本明細書において参照されているすべての特許、特許出願、公開特許公報、及び、論文、書籍、仕様書、刊行物、文書などの他の資料は、本明細書の内容と一致しないか又は矛盾する出願経過文書、及び(現在又は後に本明細書に関連する)本明細書の請求項の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る文書を除いて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。なお、本明細書の添付資料における説明、定義、及び/又は用語の使用が本明細書に記載の内容と一致しないか又は矛盾する場合、本明細書における説明、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
【0146】
最後に、本明細書に記載の実施例は、単に本明細書の実施例の原理を説明するものであることを理解されたい。他の変形例も本明細書の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本明細書の実施例の代替構成は、本明細書の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本明細書の実施例は、本明細書において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0147】
100 アクティブノイズキャンセルオーディオ装置
110 スピーカー
120 マイクロフォン
130 アナログフィルタ
140 処理回路
141 第1のアナログデジタル変換器
142 第2のアナログデジタル変換器
143 第3のアナログデジタル変換器
144 第4のアナログデジタル変換器
150 増幅器
160 アナログ加算器
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ低減音声を発生させるスピーカーと、
環境ノイズ及び前記ノイズ低減音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するマイクロフォンと、
前記第1のアナログ信号にゲインを与え、前記スピーカーが前記ノイズ低減音声を発生させるように駆動する第2のアナログ信号を生成するアナログフィルタと、
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信する処理回路と、
を含む、アクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項2】
前記処理回路が前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整することは、
特定の時間範囲において、前記第1のアナログ信号の振幅の変化に伴い、前記処理回路が前記アナログフィルタを制御してそのゲインを動的に調整することを含む、請求項1に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項3】
前記処理回路は、第1のアナログデジタル変換器及び第2のアナログデジタル変換器を含み、
前記第1のアナログデジタル変換器は、前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、前記第2のアナログデジタル変換器は、前記第2のアナログ信号をサンプリングして第2のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することを含む、請求項1又は2に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項4】
前記アナログフィルタは、スイッチゲート回路及び応答レギュレータを含み、前記スイッチゲート回路は、前記アナログフィルタの振幅周波数応答及び位相周波数応答を変更するように、前記制御命令に基づいて、前記応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整する、請求項3に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項5】
前記応答レギュレータは、1つ以上の位相変調ユニットを含み、各位相変調ユニットは、少なくとも1つの可変抵抗又は少なくとも1つの可変コンデンサを含み、
前記スイッチゲート回路が前記制御命令に基づいて、前記応答レギュレータの抵抗値又は容量値を調整することは、
前記スイッチゲート回路が前記制御命令に基づいて、前記可変抵抗の抵抗値又は前記可変コンデンサの容量値を調整することを含む、請求項4に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項6】
第1のアナログ加算器、第1のアナログデジタル変換器及び第3のアナログデジタル変換器をさらに含み、
前記第1のアナログ加算器は、前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、前記2次応答が前記スピーカーから前記マイクロフォンまでの応答であり、
前記第1のアナログデジタル変換器は、前記第1のアナログ信号をサンプリングして第1のデジタル信号を生成し、
前記第3のアナログデジタル変換器は、前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第1のデジタル信号及び前記第3のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項7】
固定構造をさらに含み、前記固定構造は、前記スピーカーと前記マイクロフォンを、ユーザの耳の付近におけるユーザの耳道を塞がない位置にそれぞれ固定する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項8】
第1のアナログ加算器、第3のアナログデジタル変換器及び第4のアナログデジタル変換器をさらに含み、
前記第1のアナログ加算器は、前記第1のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号と、前記第2のアナログ信号に対応する2次応答とに基づいて、第3のアナログ信号を生成し、前記2次応答が前記スピーカーから前記マイクロフォンまでの応答であり、
前記第3のアナログデジタル変換器は、前記第3のアナログ信号をサンプリングして第3のデジタル信号を生成し、
前記第4のアナログデジタル変換器は、前記2次応答が追加された前記第2のアナログ信号をサンプリングして第4のデジタル信号を生成し、
前記処理回路が前記アナログフィルタに制御命令を送信することは、
前記処理回路が前記第3のデジタル信号と、ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数とに基づいて、第5のデジタル信号を決定することと、
前記処理回路が前記第4のデジタル信号及び前記第5のデジタル信号に基づいて、前記アナログフィルタに制御命令を送信することと、を含む、請求項7に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項9】
前記ユーザの耳道と前記マイクロフォンとの間の伝達関数は、実験テストにより取得され、又は統計モデル若しくはニューラルネットワークモデルに基づいて取得されるものである、請求項8に記載のアクティブノイズ低減オーディオ装置。
【請求項10】
ノイズ低減音声を発生させるステップと、
環境ノイズ及び前記ノイズ低減音声を収集し、第1のアナログ信号を生成するステップと、
アナログフィルタを用いて、前記第1のアナログ信号にゲインを与え、前記ノイズ低減音声を発生させる第2のアナログ信号を生成するステップと、
前記アナログフィルタのゲイン及び位相シフトを調整するように、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に基づいて、制御命令を送信するステップと、
を含むことを特徴とする、アクティブノイズ低減方法。
【国際調査報告】