(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、これを用いて製造された粘着シート、光学部材および表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20240228BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240228BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240228BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240228BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J11/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556517
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2022003047
(87)【国際公開番号】W WO2022196987
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0033897
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キョン-ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グァン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ファン,イン-オ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA17
4J004AA18
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD01
4J004CD08
4J004CD09
4J004CE01
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4J004DB02
4J004FA01
4J004FA05
4J040DF001
4J040DF041
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4J040EF282
4J040HA116
4J040HA156
4J040HA196
4J040HA316
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA42
(57)【要約】
本発明は、屈折率が1.55~1.70のアクリル系共重合体を含む、粘着剤組成物、これを用いて製造された粘着シート、光学部材および表示装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.55~1.70のアクリル系共重合体を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体は、同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体に由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、2-(ナフタレン-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ナフタレン-2-イルチオ)エチル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレートおよび1-ピレンメチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含む、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、前記アクリル系共重合体の総重量に対して10~70重量%含まれる、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体は、炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体に由来する繰り返し単位、および架橋可能な官能基を有する重合性単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも1つ以上をさらに含む、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキシド4モル変性)アクリレートおよび6-(1-ナフチルオキシ)-1-ヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上を含む、請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、ビニルエステル単量体、芳香族ビニル単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、イミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体およびエーテル基含有単量体からなる群より選択される1種以上を含む、請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着剤組成物は、光開始剤、熱硬化剤およびナノ粒子の少なくとも1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記熱硬化剤は、イソシアネート系架橋剤を含む、請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、ジルコニウムチタン酸塩、ケイ酸ジルコニウム、ストロンチウムチタン酸塩、アルミニウムチタン酸塩、シリコンフェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、炭酸バリウム、炭化ケイ素、炭化イットリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛および硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)が-10℃以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記粘着剤組成物により製造された粘着剤層の屈折率が1.58以上である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記粘着剤組成物により製造された粘着剤層のヘイズが2%未満である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を用いて製造された、粘着シート。
【請求項15】
前記粘着シートの屈折率が1.58以上である、請求項14に記載の粘着シート。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含む、光学部材。
【請求項17】
請求項16に記載の光学部材を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、これを用いて製造された粘着シート、光学部材および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置には、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)、有機発光表示装置(Organic Electro Luminescence Display;OLED)などがある。平板表示装置は、ディスプレイパネルと、光学フィルムとを含む。前記光学フィルムには、偏光フィルム、位相差フィルム、防眩フィルム、広視野角補償フィルム、輝度向上フィルムなどが用いられている。このような光学フィルムを互いに積層したり、光学フィルムをディスプレイパネルに付着する場合、光学透明粘着剤(Optically Clear Adhesive;OCA)乃至感圧粘着剤(Pressure Sensitive Adhesive;PSA)が使用されている。
【0003】
前記光学用粘着剤は、高い透過率と低いヘイズが要求され、多様な基材との密着性、耐熱性および耐湿性などの耐久性のような物性を満足させなければならない。また、ディスプレイパネルまたは光学フィルムの表面に欠陥が発生した場合、円滑な取替のためにリワーク性も必要である。
【0004】
一方、最近は、技術水準の発達により、光学用表示素子であるタッチスクリーンパネル(以下、「タッチパネル」という)が上述した平板表示装置などの表示面側に形成され、表示装置と座標軸をその場で認識して入力を実施するデバイスの組み合わせが開発された。これによって、表示装置およびソフトウェアと組み合わせて多様な操作性を実現できるようになった。
【0005】
タッチパネルには、抵抗膜方式、静電容量方式などの多様な駆動方式が存在する。2つの導電性ITO(Indium Tin Oxide)層から構成された静電容量方式は、上下電極間の物理的接触ではない電磁気的変化により信号を検出する方式で、抵抗膜方式のタッチパネルに比べて反応速度が速く、優れた操作感によって、最近は静電容量方式が広く用いられている。
【0006】
前記光学用粘着剤は、タッチパネルと光学部材との間に備えられて、2つの素子を接着させるためにも使用可能である。
【0007】
しかし、静電容量方式のタッチパネルを実現するためのITO(Indium Tin Oxide)層は、パターニングによって段差が発生して、屈折率の差による視認性の問題があった。
【0008】
このような問題を解決するために、従来は、電極パターンと光学部材との間に屈折率を補正することにより、視認性を改善するための別の高屈折パターン層を備えた。
【0009】
しかし、別の高屈折パターン層を備える場合、前記高屈折パターン層の上面上に他の部材を付着させるための粘着層を別途にコーティングしなければならないなど、工程経済性の面で不利な面が存在していた。
【0010】
このような問題を解決するために、大韓民国公開特許第10-2016-0045199号は、粘着フィルムに高屈折のナノ粒子を含むことにより、一般的な粘着剤の屈折率である1.48より高くかつ、各種基材間の優れた接着性を有する粘着フィルムを開示している。しかし、粘着フィルムがナノ粒子を含む場合、ヘイズ(Haze)特性が不良になり、100nm以下のナノ粒子を使用する場合、調液の粘度が上昇する問題点がある。そこで、このような問題点が改善された粘着組成物に対する必要性が浮上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2016-0045199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、屈折率が向上した粘着剤組成物を提供することを発明の目的とする。
また、本発明は、段差吸収性が向上した粘着剤組成物を提供することを発明の目的とする。
【0013】
また、本発明は、ヘイズ(Haze)特性が改善された粘着剤組成物を提供することを発明の目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて製造された粘着シートを提供することを発明の目的とする。
【0015】
また、本発明は、前記粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含む光学部材を提供することを発明の目的とする。
【0016】
また、本発明は、前記光学部材を含む表示装置を提供することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、屈折率が1.55~1.70のアクリル系共重合体を含む、粘着剤組成物に関する。
【0018】
本発明は、その第1の観点において、前記アクリル系共重合体は、同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体に由来する繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0019】
本発明は、その第2の観点において、前記同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、2-(ナフタレン-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ナフタレン-2-イルチオ)エチル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレートおよび1-ピレンメチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0020】
本発明は、その第3の観点において、前記同種重合体の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、前記アクリル系共重合体の総重量に対して10~70重量%含まれるものであってもよい。
【0021】
本発明は、その第4の観点において、前記アクリル系共重合体は、炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体に由来する繰り返し単位、および架橋可能な官能基を有する重合性単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも1つ以上をさらに含むものであってもよい。
【0022】
本発明は、その第5の観点において、前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキシド4モル変性)アクリレートおよび6-(1-ナフチルオキシ)-1-ヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0023】
本発明は、その第6の観点において、前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、ビニルエステル単量体、芳香族ビニル単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、イミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体およびエーテル基含有単量体からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0024】
本発明は、その第7の観点において、前記粘着剤組成物は、光開始剤、熱硬化剤およびナノ粒子の少なくとも1つ以上をさらに含むものであってもよい。
【0025】
本発明は、その第8の観点において、前記熱硬化剤は、イソシアネート系架橋剤を含むものであってもよい。
【0026】
本発明は、その第9の観点において、前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、ジルコニウムチタン酸塩、ケイ酸ジルコニウム、ストロンチウムチタン酸塩、アルミニウムチタン酸塩、シリコンフェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、炭酸バリウム、炭化ケイ素、炭化イットリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛および硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0027】
本発明は、その第10の観点において、前記粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であってもよい。
【0028】
本発明は、その第11の観点において、前記粘着剤組成物により製造された粘着剤層の屈折率が1.58以上であってもよい。
【0029】
本発明は、その第12の観点において、前記粘着剤組成物により製造された粘着剤層のヘイズが2%未満であってもよい。
【0030】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて製造された、粘着シートに関する。
本発明は、その第13の観点において、前記粘着シートの屈折率が1.58以上であってもよい。
【0031】
また、本発明は、前記粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含む、光学部材に関する。
さらに、本発明は、前記光学部材を含む、表示装置に関する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による粘着剤組成物によれば、従来の粘着剤組成物に比べて屈折率が向上して、別の高屈折パターン層を含まなくても視認性が改善できる。
【0033】
また、本発明による粘着剤組成物によれば、従来の粘着剤組成物に比べて段差吸収性が向上して、広い温度範囲に対しても優れた信頼性を示すことができる。
【0034】
また、本発明による粘着剤組成物によれば、従来の粘着剤組成物に比べてヘイズ(Haze)特性が向上して、光学用粘着剤としての使用に特に適合することができる。
【0035】
さらに、本発明による粘着剤組成物によれば、従来の粘着剤組成物に比べて調液の粘度上昇を防止可能で、工程性がさらに向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、屈折率が1.55~1.70のアクリル系共重合体を含むことを特徴とする粘着剤組成物、これを用いて製造された粘着シート、光学部材および表示装置を提供する。
【0037】
本発明の粘着剤組成物は、屈折率が1.55~1.70のアクリル系共重合体を含むことにより、粘着剤層の屈折率、ヘイズ(Haze)特性および信頼性を向上させることができる。
【0038】
本発明に記載された「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む概念で定義される。
【0039】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体を含む。また、必要に応じて、光開始剤、熱硬化剤およびナノ粒子の少なくとも1つ以上をさらに含むものであってもよい。
【0040】
本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であることが好ましい。この場合、前記粘着剤組成物によって形成された粘着剤層が良好な粘着特性を示すことができる。
【0041】
本発明の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、屈折率が1.58以上であってもよいし、さらに好ましくは、1.58~1.70であってもよく、最も好ましくは、1.60~1.70であってもよい。この場合、タッチパネルを含む表示装置において別の高屈折パターン層を含まなくても視認性が改善できる。特に、前記本発明の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、過剰のナノ粒子を含まなくても高屈折率を示すことが可能で、光学特性の面で利点がある。
【0042】
また、本発明の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、ヘイズ(Haze)が2%未満であってもよい。この場合、光透過性が向上して、表示装置などの光学用粘着剤としての使用に特に適合することができる。
【0043】
アクリル系共重合体
本発明による粘着剤組成物は、粘着物性と耐久性発現のためにアクリル系共重合体を含む。
【0044】
前記アクリル系共重合体は、屈折率が1.55~1.70であることが好ましい。アクリル系共重合体の屈折率が1.55~1.70の場合、粘着剤層乃至粘着シートの目標屈折率と近接する。したがって、別のナノ粒子を含まなくても粘着剤層の高屈折率を実現可能で、工程性および光透過性の面で利点があり、弾性率が向上して耐久性の低下を防止することができる。また、必要に応じて、高屈折のナノ粒子をさらに含むことにより、従来の粘着剤組成物に比べてさらに向上した屈折率を示すことができる。
【0045】
前記アクリル系共重合体は、屈折率が1.55~1.70であれば、その構造は特に限定されないが、同種重合体(Homopolymer)の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体に由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0046】
前記同種重合体(Homopolymer)の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、例えば、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート(Pentabromophenyl(meth)acrylate)、2-(ナフタレン-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート(2-(Naphthalen-2-yloxy)ethyl(meth)acrylate)、2-(ナフタレン-2-イルチオ)エチル(メタ)アクリレート(2-(Naphthalen-2-ylthio)ethyl(meth)acrylate)、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート(Biphenyl methyl(meth)acrylate)および1-ピレンメチル(メタ)アクリレート(1-Pyrene methyl(meth)acrylate)からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよいが、これに限定されないことは前述した通りである。
【0047】
前記同種重合体(Homopolymer)の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体は、マトリックスの屈折率および弾性率を向上させることができるものであれば、その含有量は特に限定されないが、アクリル系共重合体の総重量に対して10~70重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、15~60重量%であってもよい。同種重合体(Homopolymer)の屈折率が1.58以上の高屈折アクリル単量体の含有量が10重量%未満の場合、屈折率および弾性率向上の効果がわずかであり、70重量%を超える場合、粘着剤組成物自体の粘着物性と耐久性が低下しうる。
【0048】
本発明の一実施例において、前記アクリル系共重合体は、炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体に由来する繰り返し単位、および架橋可能な官能基を有する重合性単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも1つ以上をさらに含むものであってもよい。
【0049】
前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基を含むものであってもよい。前記炭化水素基に含まれる水素原子は、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基などで置換されていてもよいし、前記炭化水素基に含まれる-CH2-は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子または-(CH2CH2O)m-で置換されていてもよい。この場合、前記mは、1~4であってもよい。
【0051】
前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、粘着剤組成物に粘着特性乃至凝集力を付与するものであれば、特に限定されない。
【0052】
一つまたは複数の実施形態において、前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキシド4モル変性)アクリレートおよび6-(1-ナフチルオキシ)-1-ヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよいし、入手の容易性の面で、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0053】
前記アクリル系共重合体が炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体に由来する繰り返し単位を有する場合、前記炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体は、アクリル系共重合体の総重量に対して30~90重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、30~60重量%であってもよい。炭素数1~20の炭化水素基を有するアクリル単量体の含有量が30重量%未満の場合、粘着力がやや低下し、90重量%を超える場合、凝集力がやや低下することがある。
【0054】
前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、架橋剤と反応して高い温度または湿度条件下で粘着剤の凝集力破壊が起こらないように化学結合による凝集力または粘着強度を付与するものであれば特に限定されない。
【0055】
一つまたは複数の実施形態において、前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、ビニルエステル単量体、芳香族ビニル単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、イミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体およびエーテル基含有単量体からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0056】
前記スルホン酸基含有単量体は、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0057】
前記リン酸基含有単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられ、前記シアノ基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0058】
前記ビニルエステル単量体は、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられ、前記芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換されたスチレンなどが挙げられる。
【0059】
前記カルボキシル基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどの一価の酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの二価の酸、およびこれらのモノアルキルエステル;アルキル基の炭素数が2~3の2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキレン基の炭素数が2~4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキル基の炭素数が2~3の2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加体に無水コハク酸を開環付加させた化合物などが挙げられ、これらのうち、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0060】
前記酸無水物含有単量体は、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、およびこれらの酸無水物体などが挙げられ、前記ヒドロキシ基含有単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレートなどが挙げられる。
【0061】
前記アミド基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-3級ブチルアクリルアミド、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0062】
前記アミノ基含有単量体は、例えば、N,N-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、前記イミド基含有単量体は、例えば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどが挙げられる。
【0063】
前記エポキシ基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどが挙げられ、前記エーテル基含有単量体は、例えば、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、オキシエチレンの付加モル数が1~15の範囲のメトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
前記アクリル系共重合体が架橋可能な官能基を有する重合性単量体に由来する繰り返し単位を有する場合、前記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、アクリル系共重合体の総重量に対して0.05~10重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、1~10重量%であってもよい。架橋可能な官能基を有する重合性単量体の含有量が0.05重量%未満の場合、粘着剤組成物の凝集力が減少するにつれて耐久性が低下し、10重量%を超える場合、粘着力および耐久性がやや低下することがある。
【0065】
前記アクリル系共重合体は、前記単量体以外にも、粘着力を低下させない範囲内で、本発明の属する技術分野にて通常用いられる他の単量体をさらに含むものであってもよいし、例えば、アクリル系共重合体の総重量に対して10重量%以下さらに含まれてもよい。
【0066】
前記アクリル系共重合体は、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によって測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算;Mw)が50万~200万であってもよいし、さらに好ましくは、70万~170万であってもよい。アクリル系共重合体の重量平均分子量が50万未満の場合、紫外線重合および硬化後の粘着フィルムの構造内に鎖構造が単純で、長さが短くなるため、気泡が発生するなど信頼性の面で不利であり、変色などによる耐久性の低下が発生し、200万を超える場合、粘着フィルムの製造時、粘着樹脂組成物の粘度が過度に高くて、製造に必要な適正粘度を合わせるために多量の単量体の希釈が必要であり、これによって、紫外線重合および硬化時に高いエネルギーを必要としたり、反応しない単量体が残留することがある。
【0067】
前記アクリル系共重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の属する技術分野にて通常用いられる、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、UV重合などの方法が使用可能であり、好ましくは、溶液重合またはUV重合が使用可能である。
【0068】
光開始剤
本発明の粘着剤組成物は、UV帯域の光、例えば、400nm以下の波長でも光硬化反応を効率的に誘導するために光開始剤をさらに含むことができる。
【0069】
前記光開始剤は、活性光線が照射されることにより光硬化反応を開始できる成分であれば特に限定されず、従来または後に開発される光開始剤を使用することができる。
【0070】
本発明の光開始剤は、一つまたは複数の実施形態において、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、チオキサントン系、オキシム系、ベンゾイン系、およびビイミダゾール系化合物からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0071】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0072】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2,2’-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0073】
前記トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0074】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0075】
前記オキシム系化合物としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-ヘプタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[4-(ベンゾイル)フェニル]-オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-[9-エチル-6-(3-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル)-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)ベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0076】
前記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0077】
前記ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールなどが挙げられる。
【0078】
前記光開始剤は、前記アクリル系共重合体の総重量に対して、0.3~3重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.5~2重量%であってもよい。この場合、粘着剤組成物の特定の波長領域、照度および光量の紫外線処理時、単量体の重合乃至架橋反応を効果的に開始することができ、耐久性が発現しながら可変性に優れることができる。
【0079】
熱硬化剤
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤の凝集力を強化するために熱硬化剤をさらに含むことができる。
【0080】
前記熱硬化剤は、前記アクリル系共重合体を適宜架橋することにより、粘着剤の凝集力を強化できる成分であれば特に限定されないが、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0081】
前記イソシアネート系架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート付加型三量体などの付加型三量体またはイソシアヌレート三量体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記熱硬化剤は、前記アクリル系共重合体の総重量に対して、0.1~1重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~0.5重量%であってもよい。熱硬化剤の含有量が0.1重量%未満の場合、粘着剤組成物の粘着力または凝集力がやや低下し、1重量%を超える場合、相溶性がやや低下して表面移行が起こることがあり、架橋反応が過度に進行して粘着力がやや低下することがある。
【0083】
ナノ粒子
本発明の粘着剤組成物は、上述したアクリル系共重合体を含むことにより、ナノ粒子を含まなくても屈折率を向上させることができるが、屈折率をさらに向上させるための目的など、必要に応じてナノ粒子をさらに含むことを制限しない。
【0084】
前記ナノ粒子は、高屈折率の特性を示すことができるものであれば特に限定されず、従来または後に開発されるナノ粒子を使用することができる。
【0085】
本発明のナノ粒子は、一つまたは複数の実施形態において、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、ジルコニウムチタン酸塩、ケイ酸ジルコニウム、ストロンチウムチタン酸塩、アルミニウムチタン酸塩、シリコンフェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、炭酸バリウム、炭化ケイ素、炭化イットリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛および硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0086】
前記ナノ粒子の平均粒径は、高屈折率の特性を実現するために、1~100nmであることが好ましく、さらに好ましくは、50~100nmであってもよい。ナノ粒子の平均粒径が1nm未満の場合、粘着剤組成物中に分散が難しくて光透過率を阻害し、平均粒径が100nmを超える場合、粒径の大きさによって可視光線の光透過率を阻害することがある。
【0087】
前記ナノ粒子は、前記アクリル系共重合体の総重量に対して、0.1~30重量%含まれることが好ましい。ナノ粒子の含有量が0.1重量%未満の場合、屈折率の変化率がわずかで屈折率が改善できず、30重量%を超える場合、調液の粘度が上昇し、粘着物性が低下して信頼性が不良になりうる。
【0088】
本発明による粘着剤組成物は、上述した構成要素以外にも、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、紫外線(UV)遮断剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、充填剤、帯電防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0089】
<粘着シート、光学部材および表示装置>
本発明の一実施形態は、前述した粘着剤組成物の硬化物を含む粘着シートに関する。
【0090】
前記粘着シートは、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一面上に積層された粘着剤層とを含むことができる。例えば、基材フィルム上に、本発明による粘着剤組成物から粘着剤層が形成されたものであるか、2枚の基材フィルムの間に、本発明による粘着剤組成物から形成された粘着剤層が介在したものであってもよい。
【0091】
前記基材フィルムは、当業界にて用いられる基材であれば特別な制限なく使用可能であり、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れたフィルムが好ましい。一つまたは複数の実施形態において、前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;イミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂などのような熱可塑性樹脂から構成されたフィルムが挙げられ、前記熱可塑性樹脂のブレンド物から構成されたフィルムも使用可能である。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂からなるフィルムを用いてもよいし、本発明の実施形態によれば、繰り返しの曲げに対する耐久性に優れて、フレキシブルな画像表示装置への適用がより容易となるようにポリイミド系樹脂を使用することができる。
【0092】
一部の実施形態において、前記粘着シートは、基材フィルムの一面に粘着剤層が積層され、前記粘着剤層が積層されない基材フィルムの他面にハードコート層が形成される。必要に応じて、前記粘着剤層の一面にはセパレータが形成される。
【0093】
前記粘着シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述した粘着剤組成物を40℃付近の温度で基材フィルムの片面または両面に塗布して粘着剤層を形成し、前記粘着剤層を光硬化により硬化させて製造することができる。一実施形態において、前記粘着剤組成物をシリコンやフッ素などで表面離型処理を施した基材フィルムの表面に塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成してもよい。
【0094】
必要に応じて、粘着剤層に対する密着性を向上させるために、前記基材フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理などを施してもよい。
【0095】
前記塗布は、一般的に、ナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーターなどによって行うことができる。また、塗布厚さや前記粘着剤組成物の粘度によってはグラビアコーター、ロッドコーターなどによって行うこともできる。前記粘着剤層の厚さは、例えば、5~80μmに形成することができる。前記粘着剤層の厚さが前記範囲であれば粘着力に優れ、光透過性、信頼性および段差吸収性などの面で利点がある。
【0096】
前記粘着シートは、屈折率が1.58以上であってもよいし、さらに好ましくは、1.58~1.70であってもよく、最も好ましくは、1.60~1.70であってもよい。この場合、タッチパネルを含む表示装置において別の高屈折パターン層を含まなくても視認性が改善できる。特に、前記本発明による粘着シートの場合、過剰のナノ粒子を含まなくても高屈折率を示すことが可能で、光学特性の面で利点がある。
【0097】
本発明の一実施形態は、前述した粘着シート乃至粘着剤層を含む光学部材に関する。具体的には、前記粘着シート乃至粘着剤層は、光学用粘着フィルム(OCA)であってもよい。
【0098】
前記光学部材は、例えば、タッチパネル、ウィンドウ、偏光板、カラーフィルタ、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、プラスチックLCD基板、ITO(indium tin oxide)、FTO(fluorinated tin oxide)、AZO(aluminum dopped zinc oxide)、CNT(carbon nanotube)、Agナノワイヤ(nanowire)、グラフェン(graphene)などの透明電極フィルムなどが挙げられる。
【0099】
前記光学部材の製造方法は、本発明の属する分野における通常の知識を有する者によって容易に製造できる。
【0100】
本発明の一実施形態は、前述した光学部材を含む表示装置に関する。前記表示装置は、前述した粘着シート乃至粘着剤層を含む光学部材を含むものであればこれに限定されず、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、電界発光(Electro Luminescent;EL)表示装置、プラズマ表示装置(Plasma Display Panel;PDP)、電界放出表示装置(Field Emission Display;FED)、有機発光素子(Organic Light Emitting Diode;OLED)表示装置などがあり得る。
【0101】
前記表示装置は、前述した光学部材を含むことを除けば、当該技術分野にて通常知られた構成を含むものであってもよい。
【0102】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、下記に開示される本発明の実施形態はあくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は特許請求の範囲に示され、なおかつ特許請求の範囲の記録と均等な意味および範囲内でのすべての変更を含んでいる。また、以下の実施例、比較例において含有量を示す「%」および「部」は、特に言及しない限り、質量基準である。
【実施例】
【0103】
<実施例および比較例>
実施例1
窒素ガスが還流し温度調節が容易となるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、ペンタブロモフェニルアクリレート40重量部、2-エチルヘキシルアクリレート15重量部、ノニルフェノール(エチレンオキシド4モル変性)アクリレート40重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてメチルエチルケトン300重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを1時間投入して置換させた後、温度を70℃に維持した。単量体混合物を均一に撹拌した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入し、8時間反応させて、重量平均分子量が153万のアクリル系共重合体を製造し、さらに、イソシアネート系架橋剤(AK75)を0.5重量部追加して粘着剤組成物を製造した。前記粘着剤組成物を厚さ75μmのコーティング液離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いてコーティングした。以後、100℃で1分間乾燥後、常温で7日間養生して、粘着剤層の厚さが25μmの粘着シートを製造した。
【0104】
実施例2
下記表1に示したような成分および含有量で、実施例1と同様に実施例2の粘着剤組成物を用いた粘着シートを製造した。
【0105】
実施例3
2-(ナフタレン-2-イルチオ)エチルアクリレート60重量部、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート35重量部、2-アクリロイルオキシエチル2-ヒドロキシエチルフタレート5重量部および(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン(Irgacure(登録商標)-184)0.5重量部を含む粘着剤組成物を用意し、前記粘着剤組成物のガラス転移温度を測定した結果、-13℃であった(測定機器:DSC8000、PerkinElmer Inc.)。前記粘着剤組成物を厚さ75μmのコーティング液離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いてコーティングした。以後、UVランプを用いて紫外線を10分間照射して硬化させることにより、粘着剤層の厚さが25μmの粘着シートを製造した。
【0106】
実施例4、5および比較例1~4
下記表1に示したような成分および含有量で、実施例3と同様に実施例4、5および比較例1~4の粘着剤組成物を用いた粘着シートを製造した。
【0107】
【0108】
<実験例>
(1)透明性評価
前記実施例および比較例による粘着剤層を、離型フィルムから剥離し、スライドガラス(松波硝子工業製、モデルナンバー:S1111)に接合して、25℃の雰囲気下、(株)村上色彩技術研究所社製の「反射・透過率計HR-100型」を用いて、JISK-7136に準じてヘイズ値(%)を測定した。当該値からスライドガラスのヘイズ値(0.2%)を引いた値を、粘着剤層のヘイズ値として評価して、当該評価結果を下記表2に示した。
【0109】
<透明性評価基準>
○:ヘイズ値が2%未満
X:ヘイズ値が2%以上
(2)屈折率評価
前記実施例および比較例による粘着剤層に対して、25℃の雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、Abe屈折率計(ATAGO社製、DMM4)で屈折率を測定して、当該測定結果を下記表2に示した。
【0110】
<屈折率評価基準>
◎:屈折率1.60以上
○:屈折率1.58以上1.60未満
X:屈折率1.58未満
【0111】
【0112】
前記表2の内容を参照すれば、実施例1~5の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、優れた透明性と1.58以上の高屈折率を示す。
【0113】
一方、比較例1~3の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、屈折率が実施例に比べて不良であり、比較例4の粘着剤組成物により製造された粘着剤層は、透明性が実施例に比べて不良であることが分かる。
【0114】
したがって、本発明による粘着剤組成物は、優れた光学特性と信頼性を示しながらも、タッチパネルを含む表示装置において別の高屈折パターン層を含まなくても視認性を改善させることができる粘着剤層の製造に特に適合したものであることが分かる。
【国際調査報告】