(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】流体の温度を制御するための装置
(51)【国際特許分類】
F16L 53/70 20180101AFI20240228BHJP
F16L 53/38 20180101ALI20240228BHJP
F16L 59/147 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16L53/70
F16L53/38
F16L59/147
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556837
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056154
(87)【国際公開番号】W WO2022194662
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヘヒラー
【テーマコード(参考)】
3H025
3H036
【Fターム(参考)】
3H025AA13
3H025AB03
3H036AA01
3H036AB13
3H036AB24
3H036AB25
3H036AC01
3H036AD09
3H036AE09
(57)【要約】
本発明は、壁(3)と、第1絶縁層(9)と、温度制御手段(13)と、第2絶縁層(11)とを備える、流体の温度を制御するための装置に関し、壁(3)は、一方の側で温度制御対象の流体と接触し、第1絶縁層(9)は、流体とは反対側の壁(3)の側に適用され、温度制御手段(13)は、第1絶縁層(9)と第2絶縁層(11)との間に配置される。本発明はさらに、装置(7)を用いてパイプライン(1)、任意の断面のダクト、または容器内の流体の温度を制御する方法に関し、温度制御手段(13)は、周囲温度(115)が流体の最低許容温度より低い場合にのみ加熱出力が適用され、及び/または周囲温度(115)が流体の最高許容温度より高い場合にのみ冷却出力が適用されるように作動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の温度を制御するための装置であって、壁(3)と、第1絶縁層(9)と、温度制御手段(13)と、第2絶縁層(11)とを備え、前記壁(3)が、一方の側で温度制御対象の前記流体と接触し、前記第1絶縁層(9)が、前記流体とは反対側の前記壁(3)の側に適用され、前記温度制御手段(13)が、前記第1絶縁層(9)と前記第2絶縁層(11)との間に配置される、装置。
【請求項2】
前記流体が、流動化した固体、液体、気体またはそれらの任意の混合物である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記壁(3)が、前記流体が流れるパイプライン(1)の壁、または前記流体が流れる任意の断面形状のダクト、または前記流体を含む容器の壁である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記温度制御手段(13)が、規定の加熱出力または冷却出力で動作することができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記温度制御手段(13)が電気ヒータを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1絶縁層(9)と前記第2絶縁層(11)との間には、0.2mm~1mmの範囲内の厚さを有する金属の中間層が収容されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記壁(3)が、ダクトまたはパイプライン(1)の壁であり、前記電気ヒータが、前記ダクト内または前記パイプライン内の前記流体の流れ方向に平行に延びるかまたは前記ダクトまたは前記パイプライン(1)の周りに巻き付けられた少なくとも1つの熱伝導体を備え、好ましくは偶数の熱伝導体を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記温度制御手段(13)が冷却装置を備え、前記冷却装置が、好ましくは、冷却媒体が流れる少なくとも1つの冷却導管を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1絶縁層(9)及び前記第2絶縁層(11)が同じ層厚を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1絶縁層(9)が、20mm~40mmの範囲内の層厚を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1絶縁層(9)及び前記第2絶縁層(11)が同じ耐熱性を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(7)を用いてパイプライン(1)、任意の断面のダクト、または容器内の流体の温度を制御する方法であって、前記温度制御手段(13)が、周囲温度(115)が前記流体の最低許容温度より低い場合にのみ加熱出力が適用され、及び/または前記周囲温度(115)が前記流体の最高許容温度より高い場合にのみ冷却出力が適用されるように作動する、方法。
【請求項13】
前記加熱出力が、前記温度制御手段(13)が温度制御対象の前記流体と同じ温度になるように調整される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記最高許容温度が、前記流体の成分の分解温度または重合開始温度より0.5K~5K低い、及び/または前記最低許容温度が、前記流体の凝固温度より0K~5K低い、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記流体が、ヒドロキノンモノメチルエーテルと溶解酸素またはフェノチアジンとによって安定化されたメタクリル酸またはアクリル酸である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の温度を制御するための、特にパイプライン、任意の断面のダクト、または容器内の流体の温度を制御するための装置に関する。本発明はさらに、装置を使用して流体の温度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、温度制御は、典型的には、温度制御媒体が流れる温度制御導管を使用して達成され、これらは、例えば、媒体を導くパイプラインまたはダクトと並置され、または特に、媒体の望ましくないまたは許容できない冷却をもたらす可能性がある環境への熱の損失を防止するために、電気ヒータも、安価で柔軟に設置可能であるため、場合によっては使用される。そのような温度制御装置は、パイプライン、ダクトもしくは容器の壁の外側に直接配置されるか、またはパイプライン、ダクトもしくは容器内に配置される。温度制御媒体が使用される場合、パイプライン、ダクトまたは容器の外壁を形成するジャケットを設けることも通例である。
【0003】
媒体の高温及び低すぎる温度の両方を回避しなければならない場合、特にこれらが安全に関連する条件である場合、非常に特別な要求が存在する。特に、熱に敏感な流体の温度が制御される場合、特に電気加熱の場合、局所過熱のリスクがあり、これは本質的にこれらの電気加熱装置の固有の問題であるが、これは、これらの電気加熱装置が常に全長または各熱伝導体の部分にわたって単位長さ当たり同じ熱出力でエネルギーを放出するためであるが、この加熱と媒体伝導パイプまたはダクトとの熱接触は実際の工業的実施において常にある程度の不均一性を有し、さらに、温度を制御または制限するために使用される温度測定点は特定の場所でのみ使用することができ、これは制御手段によって認識され排除されることなく局所過熱が比較的容易に発生するリスクがあることを意味する。
【0004】
既知の技術的手段によって過度に高い温度及び過度に低い温度の両方に対して普遍的かつ確実に保護することができる温度制御媒体の使用は、次に、流れ距離が増加するにつれて(例えば、化学品製造プラントにおいて、特に製造プラントをそれらのタンク場またはポートタンク場に接続するために、パイプラインを接続すること、またはこれらのタンク場自体または化学品が比較的大量に中間的に貯蔵されているポートタンク場内の接続パイプラインは、数百メートルまたはさらには数キロメートルの長さを容易に有することができる)、流体の加熱の場合に温度制御媒体の温度が低下するか、または冷却の場合に温度制御媒体の温度が上昇するという欠点を有し、これは季節的及びさらには日周的にかなり変化する可能性があり、その結果、特に長いパイプラインまたはダクトでは、困難を伴ってのみ、かつ非常に高いレベルの技術的、したがって(おそらく非経済的な)費用を伴ってのみ、パイプラインまたはダクトの全長にわたる十分な熱の供給または熱の除去を確実に保証することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来技術によれば、そのようなトレース加熱で適切に良好に機能し、安全な動作を達成するために、例えば定期的かつ頻繁な確認のために、追加の組織的複雑さが定期的に必要とされる。
【0006】
留意しなければならない重要な制約は、製品側の通常の流れ(製品媒体のかなりの熱含有量の流れの結果として、その温度に対する外部条件の影響が非常に限られており、したがって低い場合)における通常の動作条件が考慮されるだけでなく、基本的に規則的であり、同様に規則的な発生ではないにしても珍しくなく、熱供給及び熱除去の目的のためのより要求の厳しい条件であり、その下で製品媒体導管が充填されたままである動作条件も考慮されることである。これらは、例えば、製品媒体の流れの停滞または停止の結果として、貫通流の著しい減少または停止であり、これは、例えば移送作業の終了時の送達ポンプの正常な停止、またはシステム及びパイプライン周辺の機械的または電気的障害の結果としても起こり得るパイプラインバルブの自動閉鎖または切り替えの場合でも頻繁に発生する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の目的は、流体の温度を制御するための装置及び方法であって、局所的な過熱なしに、同時に長いパイプラインまたはダクト内でも温度制御対象の媒体の温度の均一な制御を比例したコストで可能にし、所望の許容可能な温度窓に適合するための十分な熱の供給または熱の除去を可能にし、局所的な環境条件及びパイプラインまたはダクトの全長にわたる動作条件を考慮し、有利には異なる気候帯の範囲も考慮して、環境からの望ましくないまたは許容できない入熱または熱除去を回避及び防止する装置及び方法を提供することである。
【0008】
この目的は、壁と、第1絶縁層と、温度制御手段と、第2絶縁層とを備える、流体の温度を制御するための装置によって達成され、壁は、一方の側で温度制御対象の流体と接触し、第1絶縁層は、流体とは反対側の壁の側に適用され、温度制御手段は、第1絶縁層と第2絶縁層との間に配置される。
【0009】
この目的は、パイプライン、任意の断面のダクト、または容器内の流体の温度を装置で制御する方法によってさらに達成され、温度制御手段は、周囲温度が流体の最低許容温度より低い場合にのみ加熱出力が適用され、及び/または周囲温度が流体の最高許容温度より高い場合にのみ冷却出力が適用されるように作動する。
【0010】
本発明の文脈における「温度制御」という用語は、流体の加熱または冷却だけでなく、特に熱が流体から環境に放出されるのを防ぐという点で流体の温度の維持も包含し、その効果は、流体が凍結する可能性があること、または特に高い外部温度及び高い日射下では、流体が許容できない温度まで加熱されることであり得る。後者は、阻害剤の反応性消費の増加の結果として阻害剤の有効性の喪失をもたらす可能性があり、前者は、例えば流体の少なくとも一部における阻害剤の溶解度の低下のための結晶化の結果としての阻害剤の有効性の喪失、または制御されていない反応、特に重合を促進することができるか、または流体を分解することができることを意味し得る。
【0011】
特に電気加熱を使用する場合に、第1絶縁層と第2絶縁層との間に温度制御手段を配置することは、第1絶縁層が熱が電気ヒータからパイプライン、ダクトまたは容器の一般に効率的な熱伝導壁を通って流体に直接伝達されないことを意味するため、局所的な過熱が発生しないことを保証する。
【0012】
第1絶縁層と第2絶縁層との間に温度制御手段を配置することは、壁とただ1つの絶縁層との間に温度制御手段を配置する場合よりも、温度制御のために媒体によって放出または吸収される熱のより少ない部分が流体の温度を制御するために使用されるという効果も有する。これは同様に、流体の起こり得る局所的な過熱または過冷却を防止する。したがって、特に、所望の許容可能な流体温度より低いまたは十分に低い周囲温度での流体の内部加熱を回避することが可能である。
【0013】
温度制御手段の取り付けを簡単にし、パイプラインまたはダクトの周囲にわたって供給または除去される熱のより均一な分布を得るために、0.2mm~1mmの範囲内の厚さ、特に0.3mm~0.6mmの範囲内の厚さを有する金属の中間層が、第1絶縁層と第2絶縁層との間に収容されることがさらに好ましい。中間層を製造する金属は、アルミニウムまたは銅、特にアルミニウムであることがより好ましい。簡単な方法で中間層を取り付けることを可能にするために、第1絶縁層の周りに取り付けられた2つのハーフシェルを有することも有利である。
【0014】
温度制御対象の流体は、任意の自由流動性流体、例えば、流動化した固体、特に流動化した粉末または顆粒、液体または気体、またはそれらの任意の混合物であってもよい。温度制御対象の流体は、より好ましくは液体であり、特に液体のアクリル酸またはメタクリル酸である。一般に、液体アクリル酸またはメタクリル酸は、重合を防止するために阻害剤を含む。使用される阻害剤は、例えば、溶解酸素、溶解酸素とヒドロキノンモノメチルエーテル、または溶解フェノチアジンである。使用される阻害剤がヒドロキノンモノメチルエーテルである場合、10ppm~300ppmの範囲内の濃度で使用されることが好ましい。アクリル酸またはメタクリル酸が長期間貯蔵されず、むしろ、例えば、製造から適切なパイプラインを介してさらなる処理に直接送られ、せいぜい中間的に緩衝される場合、ヒドロキノンモノメチルエーテルが30ppm~80ppmの範囲内の濃度で使用されることが十分である。これにより、当業者に公知の適切な方法によってアクリル酸またはメタクリル酸から阻害剤を最初に除去することなく、直接的なさらなる処理が可能になる。しかしながら、例えば、販売または出荷するために、例えば、船舶、鉄道またはトラックによる輸送のために、アクリル酸またはメタクリル酸を長期間貯蔵することが意図されている場合、ヒドロキノンモノメチルエーテルの割合は、好ましくは150ppm~250ppmの範囲内、例えば200ppmである。阻害剤としてのフェノチアジンは、典型的には、5ppm~300ppmの範囲内、一般に最大100ppmまでの濃度で使用される。
【0015】
流体の最低許容温度は、例えば凝固温度である。最低許容温度未満の流体の冷却は、例えば、流体が凝固し、したがって管路またはダクトを塞ぐという効果を有する。流体が容器内に存在する場合、流体の一部であっても凝固は、これが容器からの出口を塞ぐ可能性があり、流体をもはや引き出すことができない、または凝固部分が容器内に残り、したがってもはや得ることができないという効果を有する。最高許容温度は、例えば、流体の分解温度、または流体が特定の温度で重合する傾向がある場合である。特に、(メタ)アクリルモノマーを含む多数のエチレン性不飽和物質の場合だけでなく、例えばスチレン及びビニルホルムアミドの場合にも、存在する阻害剤(例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル及び流体に溶解した酸素)のレベルの低下及び/または有効性の喪失を効果的に防止するために、または化学反応(一般にフリーラジカル重合)の直接開始さえも効果的に防止するために超えてはならない既知の規定の温度閾値がある。
【0016】
オリゴマー形成、重合、またはさらには流体の分解であるかどうかにかかわらず、化学反応は、一般に防止されるべきであり、または防止されなければならない。これは、ガス形成の可能性を伴う制御されない入熱、圧力の増加、パイプラインまたはダクトの漏れまたは破裂の可能性をもたらす可能性があるためであり、温度を規定の閾値未満に保つ必要があり、その場合、最低許容温度の場合と最高許容温度の場合の両方で、加熱出力または冷却出力の制御に安全マージンを提供することが望ましい場合がある。したがって、最低許容温度は、凝固温度より0K~5K高い温度であることが好ましく、最高許容温度は、分解温度または重合開始温度より0.5K~5K低い温度である。重合開始温度は、ここでは、流体の少なくとも1つの成分が重合し始める温度を指し、重合開始温度はまた、阻害剤が存在するかどうかに依存し得る。本発明の文脈において、流体の第1の成分が、阻害剤を使用しない場合と比較して、阻害剤を使用する場合により高い温度でのみ重合を開始する場合、重合開始温度は、成分が根本的に重合を開始する温度ではなく、阻害剤の使用にもかかわらず成分が重合を開始する温度を意味すると理解される。これは、一般に、阻害剤を使用しない場合よりも高い。
【0017】
温度制御対象の流体と接触し、流体から遠い側に絶縁層が適用された壁は、好ましくは、流体が流れるパイプラインの壁、または流体が流れる任意の断面形状のダクトの壁、または流体を収容する容器の壁である。より好ましくは、装置は、パイプラインまたは任意の断面形状のダクト内の流体の温度を制御するために使用され、したがって壁は、特に、パイプラインまたは任意の断面形状のダクトの壁である。
【0018】
本発明の文脈において、パイプラインは、周囲断面を有する流体伝導パイプラインを意味すると理解され、パイプラインは剛性または可撓性であってもよい。任意の断面形状のダクトは、任意の完全に閉じたダクトであってもよい。ダクトの断面形状は、任意の所望の形状、例えば少なくとも3つの頂点を有する多角形の形状、例えば三角形、長方形もしくは正方形の形状、五角形、六角形もしくは八角形の形状、または楕円形の形状、または少なくとも1つの湾曲壁及び少なくとも1つの平坦壁、または異なる半径を有することができるか、または壁の接続部位で同じ半径及び角度を有することができる少なくとも2つの湾曲壁を有してもよい。最も好ましくは、壁は、楕円形または四角形の断面を有するパイプラインまたはダクトの壁である。
【0019】
流体の過熱または過冷却を防止するために、温度制御手段を規定の加熱出力または冷却出力で動作させることができることが好ましい。これにより、流体の温度を規定の範囲内に保つことができるような量の熱の供給または除去が可能になる。加熱出力または冷却出力を制御するために、流体の温度が加熱または冷却される装置からの少なくとも出口で測定される場合も有利である。供給または除去される熱のより正確な制御は、温度が複数の場所で測定され、流体の温度に応じて熱が供給または除去される場合に可能である。
【0020】
熱を供給または除去するために、温度制御手段は、いずれの場合も壁の一部のみの温度が温度制御手段によって制御され得るように構成されてもよい。これにより、特に対応する部分で必要な熱の供給または除去が可能になる。この場合、熱供給及び/または熱除去の制御はまた、ある区画内の入口及び出口における温度を検出し、その温度を使用して、加熱または冷却のために必要な量の熱を供給または除去する必要がある。
【0021】
温度が最高許容温度を超えないか、または最低許容温度を下回らないかに応じて、温度制御手段は、流体を冷却することができる冷却装置または流体を加熱することができるヒータを備える。温度が最低温度を下回らず、最高温度を超えない場合、温度制御手段は、好ましくはヒータと冷却装置の両方を備える。
【0022】
使用されるヒータは、当業者に知られている任意のヒータ、例えば、加熱媒体が流れる熱導管を有するヒータまたは電気ヒータであってもよい。これに対応して、冷却媒体が流れる冷却導管による冷却器、または例えばペルチェ素子を有する電気冷却器などの、当業者に知られている任意の冷却装置を使用することも可能である。加熱媒体や冷却媒体による温度制御の場合、規定の温度で加熱媒体や冷却媒体を供給できることが好ましい。次いで、加熱出力または冷却出力の調整は、加熱媒体または冷却媒体の流量によって調整することができる。流量の増加は、より多くの熱を供給することができ、またはそれに対応して冷却の場合には、より多くの熱を除去することができるという効果を有する。これに対応して、流量の減少は、供給される熱または除去される熱の減少をもたらす。流量の変化は、加熱媒体または冷却媒体の供給温度の変化に比べて、周囲条件またはパイプラインもしくはダクトを通って流れる流体の温度の変化に対するより速い反応を可能にする。
【0023】
加熱媒体または冷却媒体、例えば蒸気、油または任意の他の液体加熱媒体または液体冷却剤を用いた温度制御の場合、加熱媒体または冷却媒体が流れる加熱導管または冷却導管と壁との接続部における局所的なホットスポットであっても、加熱媒体の温度よりも高い温度または冷却媒体の温度よりも低い温度が発生することは不可能であるため、本発明の装置は、電気加熱を含む温度制御手段によって流体の温度を制御するのに特に適している。そのような電気加熱の利点は、規定の加熱出力を供給することが可能であることであり、加熱出力は、典型的にはまたは一般に、単位長さ当たりの電気加熱の全長にわたって等しい。電気加熱のさらなる利点は、加熱出力が、温度制御対象の領域全体にわたって一定であるのに対して、液体または気体の温度制御媒体の場合、温度は、温度制御媒体を用いて加熱が行われるときに温度制御媒体の流動長にわたって低下するか、または温度制御媒体を用いて冷却が行われるときに上昇することである。この効果は、温度制御媒体が最初に温度制御対象の流体に熱を伝達することができるか、または温度制御対象の流体から熱を吸収することができる位置で、最大量の熱を伝達することができることである。特に、非常に長いパイプラインまたはダクトの場合、これは、温度制御媒体によって伝達される熱がパイプラインの全長にわたって不十分であるか、またはドッキングされて、周囲温度に応じて温度が最高温度を超えたり最低温度を下回ったりすることを防止する効果を有することができる。この欠点は、媒体の副流が流れ方向に別々に案内され、さらに下流の位置で供給されるという点で、ある程度まで軽減される可能性が非常に高いが、これは改善が制限された段階的な特性をもたらす。
【0024】
したがって、特に感熱性流体の場合、温度制御手段が電気加熱を含むことが特に好ましい。流体の冷却が必要な場合、液体または気体の冷却媒体ではなく、例えばペルチェ素子を用いて電気的冷却を行うこともさらに有利である。熱伝導体の形態の電気ヒータが使用される場合、偶数の熱伝導体が設けられることがさらに好ましい。これは、熱伝導体の電気的接続を一端で行うことができるという利点を有し、その結果、熱伝導体の設置、特に電気的接続が簡単になる。一端での電気接続を可能にするために、直流または交流で動作することができるそれぞれの場合の2つの熱伝導体は、電気接続とは反対側の端部で互いに電気的に接続される。
【0025】
特に、流体の温度が一般に加熱によって制御されなければならず、例外的な場合、例えば非常に暑い夏の日にのみ冷却が行われる場合、例えば、冷却媒体が流れる電気ヒータ及び冷却導管を設け、冷却が必要なときにのみ冷却媒体を通過させることも可能である。あるいは、温度制御手段が冷却と加熱の両方を含む場合、電気的加熱と電気的冷却の両方を提供することも可能であることが理解されよう。
【0026】
温度制御のための装置が過熱され得ない流体のために使用されている場合、または流体の最高許容温度が従来の最高周囲温度を超える場合、追加の冷却を行う必要はない。この場合、温度制御手段は、加熱手段、特に電気ヒータのみを含む。
【0027】
しかしながら、本発明によれば、過熱してはならない流体(ここでは具体例としてアクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる)への関連する数の適用事例について、冷却装置のない断熱及び電気加熱の本発明の構成及び寸法設定によって、媒体の許容温度窓について所望に応じて持続的で有利かつ信頼性のあるコンプライアンスを達成することも可能である。
【0028】
特に壁がダクトまたはパイプラインの壁である場合、電気ヒータは、ダクトまたはパイプライン内の流体の流れ方向に平行に延びるか、またはダクトまたはパイプラインがその周りに巻き付けられる、少なくとも1つの熱伝導体を含むことが好ましい。熱伝導体の数は、供給される熱出力にも依存する。特に、流体の所望の温度を維持するために大きな熱出力を供給しなければならない場合、2つ以上の平行な熱伝導体を使用すると、この場合、全熱出力が個々の熱伝導体の間に分散されるため有利である。これはまた、同じ熱出力に対して、熱伝導体の数が増加するにつれて、個々の熱伝導体をより低い温度にすることができ、したがってより低い比熱出力のためのサイズにすることができるという効果を有する。
【0029】
特に流れ方向に平行に延びる熱伝導体の場合、最大量の熱の伝達は、熱伝導体と壁との間の最短距離にわたって起こる。この効果は、流体がパイプライン内で均一に加熱されないことであり得る。したがって、パイプラインまたはダクト内の流体温度を均一に制御するために、特に少数の熱伝導体のみを使用する場合、例えば3つ以下の熱伝導体を使用する場合、特に1つの熱伝導体のみを使用する場合、熱伝導体がパイプラインまたはダクトの周りに巻き付けられることが好ましい。この場合、熱は、パイプラインまたはダクトにすべての側から均一に供給される。あるいは、良好な熱伝導率の材料、特にアルミニウムまたは銅からなる中間層を使用することによって、均一な温度制御を達成することもできる。
【0030】
より好ましくは、電気加熱によって供給される熱出力は、温度制御手段が温度制御対象の流体と同じ温度を有するように調整することができる。このようにして、制御される流体の温度は一定に保たれ、冷却または加熱はなく、局所的な過熱または過冷却も防止することができる。温度制御手段の温度が温度制御対象の流体の温度と同じになるように温度制御手段を動作させることができるようにするために、温度制御手段の温度が測定されることも特に有利である。特に、温度制御手段が広い面積を含む場合、または長いパイプラインまたはダクトの温度を制御する場合、温度制御手段の温度が複数の場所で検出されることも有利である。
【0031】
加えて、温度制御に関連する環境温度条件、例えば、特に晴天の場合の放射による熱の除去、及び特に夜間の空間の方向への媒体導管の「眺め(sight)」も考慮に入れた代表的な局所温度、さらには日中の直接的な日射も設計に含まれる。これは、特に、日中に高い周囲温度と同時に高い日射があり、夜間に著しい冷却がある場合の材料である。
【0032】
流体の温度及び温度制御手段の温度を検出する手段は、当業者に知られている温度検出手段のいずれであってもよい。温度を検出する適切な手段は、例えば、温度計または温度センサ、例えば熱電対などの抵抗温度センサ、またはニッケルもしくは白金に基づく温度センサ、例えばPT100温度センサ、または赤外線温度センサである。
【0033】
第1絶縁層及び第2絶縁層に用いられる材料は、絶縁に適したいずれの材料であってもよい。第1絶縁層及び第2絶縁層に用いられる材料は、好ましくは発泡ガラスまたは繊維材料、例えばミネラルウールの形態の鉱物繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などである。流体漏れの場合のリスクの最小化を達成するために、化学的適合性だけでなく多孔性に関しても適切かつ承認されており、火災荷重を構成せず、さらに外部からの水分の侵入を防止する断熱材料を使用することが好ましい。そのため、第1絶縁層には、発泡ガラスを用いることがより好ましい。第1絶縁層及び第2絶縁層に用いられる材料は、異なる材料であってもよいし、同一の材料であってもよい。ここでは、第1絶縁層及び第2絶縁層に同じ材料、特に発泡ガラスを使用することが好ましく、これにより、例えば雨または空気湿度の凝縮による水の浸入による外殻の不浸透性の望ましくない欠如の場合に、全体的な絶縁品質の低下が防止される。同様に、第1絶縁層を発泡ガラスから構成し、第2絶縁層をミネラルウールから構成することが好ましく、これはコスト上の利点をもたらすが、電気的加熱による製品流体の許容できない加熱を防止すると同時に、低い外気温を介した許容できない冷却を防止するという一定の効果をもたらす。特定の欠点は、周囲温度が高く冷却装置がない場合に、濡れた第2絶縁層で加熱保護が減少する可能性があるが、これは時折の検査によって阻止され得る。
【0034】
本発明によれば、第1及び第2絶縁層の層厚の選択は、主に「経済的な」層厚の従来技術における慣習的な基準によってではなく、むしろ主に製品固有の要求によって導かれるべきである。第1絶縁層と第2絶縁層の層厚は同じでも異なっていてもよい。好ましい変形例では、純粋に幾何学的形状の結果として、長さに基づく第2絶縁層の外側表面積が第1絶縁層の外側表面積よりもはるかに大きいため、第1絶縁層及び第2絶縁層は同じ層厚を有し、したがって、電気加熱によって放出される熱出力は、好ましくは外部、すなわち冷却環境である場所に放出され、その結果、低流量の場合でも製品流体の過熱の可能性が実質的に排除される。加えて、断熱材の総厚がこのように小さく保たれ、これはパイプラインの敷設及び空間需要にとって有利である。
【0035】
50mm=2インチ、80mm=3インチ、100mm=4インチ及び150mm=6インチの公称幅を有するそのような用途における技術的に関連するパイプライン直径の例示的なモデル計算は、第1絶縁層に20mm~40mm、より好ましくは25mm~35mm、例えば30mmの厚さを与えることが特に好ましいことを示しており、これは、外部絶縁の厚さに関係なく、関連する期間(通常24時間であり、これより長いフロー停止は、チェックまたは排除されなければならない障害の場合、または計画されたアクションの場合にパイプラインを空にしなければならないためである)に製品流体の関連する加熱が実質的に生じ得ないためである。従来技術によるパイプに直接適用された外部絶縁のみによる電気加熱の場合、製品媒体の許容できない加熱は、問題の24時間以内に定期的に発生する。
【0036】
第1絶縁層によって流体の方向に伝達される熱流及び第2絶縁層によって環境の方向に伝達される熱流は、それぞれの絶縁層の材料及び厚さに依存し、さらに温度制御手段と、温度制御のための流体または媒体と、環境との間の温度差にも依存する。第1絶縁層及び第2絶縁層の厚さまたは材料は、流体または環境に伝達される熱流に応じて選択され得る。最大熱流が流体に伝達される場合、第1絶縁層を第2絶縁層よりも薄い層厚で作製すること、及び/または第2絶縁層の材料よりも良好な熱伝導率を有する第1絶縁層の材料を選択することが有利である。これに対応して、低い熱流のみが流体に伝達される場合、第2絶縁層よりも厚い層厚で第1絶縁層を実行すること、及び/または第1絶縁層の材料よりも良好な熱伝導率を有する第2絶縁層の材料を選択することが有利である。
【0037】
ただし、第1絶縁層と第2絶縁層とが同じ耐熱性を有することが特に好ましい。これは、第1及び第2絶縁層の熱伝導率及び層厚が同じであることを意味する。これは、特に、第1絶縁層及び第2絶縁層の材料が同じであることによって達成される。特にパイプラインの場合、熱伝達のための外側方向の回転対称円筒形状の表面積が増加するため、特に50mm=2インチ~100mm=4インチの最も関連する(公称)パイプライン直径では、外側への熱流が内側への熱流よりも常に顕著に好ましい。
【0038】
第2絶縁層を保護し、第2絶縁層が、特に風化の影響によって損傷したり、(雨)水が浸入したりすることを防止するために、第2絶縁層にカバーを適用することが可能であり、望ましい。そのようなカバーは、例えば、金属、特に亜鉛めっきもしくは塗装された板金もしくはアルミニウム製のシェル、またはステンレス鋼製のシェルである。材料の選択は、典型的には、それぞれの製品媒体の既知の推奨及び規定に従うが、特に設置のためのプラント安全性の所与の要件に従う。
【0039】
本発明の例示的な実施形態を図に示し、以下の説明において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】流体の温度を制御するための本発明の装置を有するパイプラインの断面図である。
【
図2】流体の温度より低い周囲温度で流体の温度を制御するための装置を通る温度プロファイルを示す図である。
【
図3】流体の温度より高い周囲温度で流体の温度を制御するための装置を通る温度プロファイルを示す図である。
【
図4】流体の温度より低い周囲温度で流体の温度を制御するための装置を通る温度プロファイルであり、加熱出力は、温度制御手段が流体と同じ温度になるように制御される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、流体の温度を制御するための本発明の装置を有するパイプラインの断面図を示す。
【0042】
パイプライン1は、流体が流れることができる内部5を囲む壁3を備える。壁3は、同時に、一方の側で流体と接触している、流体7の温度を制御するための装置の壁であり、第1絶縁層9は、流体から遠い側に適用されている。第1絶縁層9は、第2絶縁層11によって囲まれている。
【0043】
本発明によれば、温度制御手段13は、第1絶縁層9と第2絶縁層11との間に配置される。好ましくは、第1絶縁層9と第2絶縁層11との間の周辺部におけるより良好な熱流分布及び温度均一化に役立つ中間層14がさらに存在し、中間層14は好ましくは、その上に温度制御手段が固定される薄い金属層である。中間層14は、例えば、0.2mm~1mm、好ましくは0.3mm~0.5mmの厚さを有するアルミニウムから、有利な組み立てのために2つのシェル/半体で作製される。温度制御手段13は、ここに示すように、電気ヒータであってもよい。この場合、温度制御手段13は加熱の役割を果たし、パイプライン1を流れる流体に熱を供給することができる。温度制御手段13の位置決めにより、この場合、熱はまた同時に環境の外側に伝達され、またはかなりの可能性で優先的にまたはほぼ排他的に、パイプラインの壁3で局所的な過熱が発生することを防止し、製品媒体が大幅に加熱またはさらには過熱されることも防止する。
【0044】
ここに示す電気熱伝導体と同様に、温度制御手段13はまた、加熱媒体または冷却媒体が流れる任意の断面のパイプラインまたはダクトであってもよく、あるいは例えば第1絶縁層9に適用される二次元要素の形態の任意の他の形状の加熱要素または冷却要素であってもよい。加熱要素または冷却要素が任意の所望の形状である場合、特に電気加熱要素または冷却要素が使用される。
【0045】
電気熱伝導体またはパイプラインまたはダクトが温度制御手段13として使用される場合、これらはパイプライン1の中心軸に平行に延びてもよく、またはパイプライン1の周りに例えば螺旋の形態で延びてもよい。温度制御手段13を第1絶縁層9に蛇行させて適用することも可能である。これは、特に電気熱伝導体を使用する場合に可能であり、これは、これらが全長にわたって一定の熱出力を放出するためである。組立作業のためのアクセスしやすさの理由から、典型的で好ましい配置は、パイプラインの中心軸に平行な直線的な配置であり、1つの熱伝導体のみを使用する場合の熱伝導体は、好ましくは、下側の中央からいくらかオフセットして(5時~6時または6時~7時の位置に)配置され、2つの熱伝導体を使用する場合の熱伝導体は、好ましくは7時~8時及び4時~5時の位置に配置され、3つの熱伝導体を使用する場合、好ましくは8時、12時及び4時の位置に配置され、4つの熱伝導体の場合、好ましくは7時~8時、10時~11時、1時~2時及び4時~5時の位置に配置される。電気接続の有利な設計のために、直線的なシングルコート熱伝導体の電気接続の両端を共通の接続部位に局所的に配置することができるので、偶数の熱伝導体が特に好ましい。
【0046】
第2絶縁層11の材料を保護するために、特に耐候性の影響または他の環境の影響による第2絶縁層11の材料の経年劣化または損傷を防止するために、第2絶縁層がシェル15によって囲まれていることが特に好ましい。シェル15は、好ましくは、金属、例えばステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛、または亜鉛めっきもしくは塗装された鋼もしくはアルミニウムから製造される。シェル15に金属を使用する代わりに、ポリマー材料からシェル15を製造することも可能である。しかしながら、金属の使用が好ましい。
【0047】
流体の温度を制御するための装置、例えば
図1に断面図で示されているパイプラインから得られる温度プロファイルが、
図2~
図4に3つの異なる変形例について示されている。
【0048】
図2~
図4はそれぞれ、装置の内部から環境まで装置を通る推移rを横軸に示し、温度Tを縦軸に示す。3つの図すべてにおいて、第1絶縁層9の内部の位置を縦線101で示し、第2縦線103は第1絶縁層9に第2絶縁層11が隣接する位置を示し、第3縦線105は第2絶縁層11の外側を示す。パイプラインまたは容器及びシェル15の壁3は、
図2~
図4には含まれておらず、これは、壁3及びシェル15ならびに通常使用される良好な熱伝導率の材料の厚さが薄いために、壁3またはシェル15の内側と外側との間の温度差が、絶縁層9、11を通って形成される温度差と比較して、一般に無視できるほど小さいためである。また、熱輻射の影響は、熱伝導や対流と比較して効果が小さいため、考慮されていない。温度のプロットから読み取ることができる温度勾配には、同等に対応する熱流または熱伝達の抵抗を割り当てることができる。
【0049】
図2は、流体の温度より低い周囲温度で流体の温度を制御するための装置を通る温度プロファイルを示す。
【0050】
特に、よく混合された流体または乱流を有するパイプラインの場合、流体の温度を制御するための装置内の流体は、本質的に一定の流体温度107を有する。
【0051】
熱伝導及び対流のために、
図2に示すように、温度制御手段13の温度109が流体温度107よりも高い場合、パイプラインまたは容器の壁3の温度は上昇する。第1絶縁層9への熱の伝導により、温度は外側から内側に向かって、すなわち温度を制御する手段からパイプラインまたは容器の壁3の方向に低下し、その結果、温度プロファイル111は、
図2に示すように、第1絶縁層9内で温度制御手段13の方向に流体から直線的に上昇する。第2絶縁層11を介した熱伝達も存在するため、ここで温度は、図示の温度プロファイル113に従って温度制御手段13から外向きに低下する。第2絶縁層11またはシェル15(ここでは図示せず)の外側では、第2絶縁層11またはシェル15から一定の距離で周囲温度115が達成されるまで、熱伝導効果及び対流のために温度がさらに低下する。
【0052】
図2に示す温度プロファイルとは対照的に、
図3は、流体温度107が周囲温度115を下回っており、提供される温度制御手段13が冷却装置である場合に生じる温度プロファイルを示す。温度制御手段13が冷却可能であるためには、温度制御手段13の温度109が流体温度107よりも低いことが必要である。温度制御手段13の低い温度109により、熱伝導効果及び対流のために壁に近い流体の温度が低下し、温度制御装置の内部から温度制御手段13の方向に温度が低下するにつれて、第1絶縁層9に直線的な温度推移111が生じる。温度制御のための装置の外部のより高い周囲温度115のために、第2絶縁層内の温度は、内側から外側に環境に向かって直線的な温度推移113で上昇する。外壁では、周囲空気中の熱伝導及び対流のために、外壁の温度から周囲温度115への温度の非直線的な増加が再び存在する。
【0053】
理想的な温度推移を
図4に示す。
図2と同様に、ここでは周囲温度115が流体温度107よりも低い。しかしながら、
図2に示す推移とは対照的に、ここに示す推移では、温度制御手段13によって供給される熱量は、温度制御手段13の温度109が流体温度107に対応するように調整される。温度制御手段13と流体の温度が等しい結果として、壁3及び第1絶縁層9を通る流体の温度は温度制御手段13まで一定になり、温度制御手段はここでも第2絶縁層11の第1絶縁層9の間の線103によって特定される位置に配置されている。
【0054】
温度制御手段13の温度109と流体の温度が等しいため、例えばパイプラインまたは容器の流体の温度を制御するための装置の内部に放出される量はわずかである。さらなる部分が環境の外部に放出され、外壁の温度は周囲温度115よりも高くなる。次いで、熱は熱伝導及び対流を介して環境に放出され、その結果、ここでも第2絶縁層11またはシェル15の外側の温度から周囲温度115への非直線的な温度降下が生じる。
【0055】
ここで周囲温度115へ向かう流体温度107を下回る温度推移によれば、周囲温度が流体温度を上回り、温度制御手段が冷却装置も含む場合であっても、温度制御手段によって十分な量の熱を吸収できる場合、温度制御手段の温度が流体温度に等しいことが特に有利である。
【符号の説明】
【0056】
1 パイプライン、3 壁、5 内部、7 流体、9 第1絶縁層、11 第2絶縁層、13 温度制御手段、14 中間層、15 シェル、101 縦線、103 第2縦線、105 第3縦線、107 流体温度、109 温度、111 温度プロファイル、113 温度プロファイル、115 周囲温度
【国際調査報告】