(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】連結装置を備えたトランスミッションシステム
(51)【国際特許分類】
F16H 48/08 20060101AFI20240228BHJP
B60K 23/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16H48/08
B60K23/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556864
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2022056438
(87)【国際公開番号】W WO2022194729
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ロエル、ベルオー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル、エヌベル
【テーマコード(参考)】
3D036
3J027
【Fターム(参考)】
3D036GF03
3D036GF10
3D036GH05
3D036GH06
3D036GJ01
3J027FA19
3J027FA36
3J027GE01
3J027GE05
3J027HC17
(57)【要約】
発明は、動力車両のためのトランスミッションシステム(1)に関し、当該トランスミッションシステム(1)は:- 軸Xを中心として互いに対して回転移動可能な第1要素(4)及び第2要素(5)と;- 連結装置(6)と、を備え、当該連結装置(6)は: - 第1要素(4)により回転するようにロックされ且つ連結位置と分離位置との間で第1要素(4)に対して移動可能である第1連結部分(18)と;- 第1連結部分(18)に軸方向に固定される固定領域を含むディスクであって、第1連結部分(18)を分離位置に弾性的に戻すように構成される少なくとも1つの弾性リターン部(41)とを備えるディスク(36)と;-ディスク(36)の環状部に面して配置されるセンサ(35)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両のためのトランスミッションシステム(1)であって、
- 軸Xを中心として互いに対して回転するように移動可能な第1要素(4)及び第2要素(5)であって、第1要素及び第2要素(4、5)の一方はモータによって駆動されるようになっており、第1要素及び第2要素(4、5)の他方は前記動力車両の少なくとも1つのホイールシャフト(2、3)を駆動するようになっている、第1要素(4)及び第2要素(5)と、
- 連結装置(6)と、を備え、当該連結装置(6)は:
- 前記第1要素(4)により回転するようにロックされる第1連結部分(18)、及び、前記第2要素(5)により回転するようにロックされる第2連結部分(19)であって、第1連結部分(18)は連結位置と分離位置との間で前記第1要素(4)に対して移動可能であり、前記連結位置において、前記第1要素(4)と前記第2要素(5)との間でトルクを伝達するように第1連結部分(18)が第2連結部分(19)に連結され、前記分離位置において、第1連結部分(18)及び第2連結部分(19)が互いから分離される、第1連結部分(18)及び第2連結部分(19)と、
- 前記第1連結部分(18)に軸方向に固定される固定領域を含むディスク(36)であって、ターゲット(34)を形成する環状部(37)と、前記分離位置から前記連結位置への前記第1連結部分(18)の移動の間に弾性的に変形するように且つ前記第1連結部分(18)を前記分離位置に弾性的に戻すことが可能なリターン力を発揮するように構成される少なくとも1つの弾性リターン部(41)とを備えるディスク(36)と、を有する、
トランスミッションシステム(1)。
【請求項2】
前記ディスク(36)の前記環状部に面して配置されるセンサ(35)であって、ターゲット(34)を形成する前記環状部と前記センサ(35)との間の距離を表す信号を送出するように構成されるセンサ(35)を備える、請求項1に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項3】
前記ディスク(36)は、前記トランスミッションシステム(1)のベアリング領域に対してもたれることが可能な弾性ブレード(41)を各々が有する複数の弾性リターン部を備え、前記ベアリング領域は、前記第2連結部分(5)に対して軸方向に固定される、請求項1又は2に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項4】
前記第1要素(4)は、前記第2連結部分(19)が内側に収容されるハウジング(8)を備え、前記第1連結部分(18)は、前記ハウジング(8)の内側に収容される内側部(20)と、前記ハウジング(8)の外側に位置づけられる外側部(21)と、前記第1連結部分(18)の前記外側部(21)及び前記内側部(20)を軸方向に接続する複数の接続部(22)とを備え、前記接続部(22)の各々は、前記ハウジング(8)に形成される対応の貫通開口(23)を通る、請求項1~3のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項5】
前記ディスク(36)は、前記ハウジング(8)の外側に配置され且つ前記第1連結部分(18)の前記外側部(21)に固定され、各ベアリング領域が前記ハウジング(8)に位置づけられる、請求項3と組み合わせられる請求項4に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項6】
前記ハウジング(8)は、前記ディスク(36)の方向において前記ハウジング(8)の外側に向かって軸方向に突出するスタッド(44)を備え、各スタッド(44)が前記ベアリング領域の1つを形成する一端部を有する、請求項5に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項7】
前記第2要素(5)は、前記ハウジング(8)の内側で軸Xを中心に回転するように案内されるキャリアリング(13)と、前記軸Xに直交する軸Zを中心に前記キャリアリング(13)で回転するように取り付けられる2つの遊星ギア(14、15)と、前記軸Xを中心に回転するように移動可能であり、前記2つの遊星ギア(14,15)と各々係合し、且つ各々がホイールシャフト(2、3)により回転するようにロックされるようにされた2つの太陽ギア(16,17)と、を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項8】
前記連結装置(6)の前記第2連結部分(19)は、前記軸Xに対して前記キャリアリング(13)により回転するようにロックされる、請求項7に記載のトランスミッションシステム。
【請求項9】
前記ディスク(36)は、前記第1連結部分(18)に固定される複数の固定タブ(38)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項10】
前記連結装置(6)は、前記車両の前記シャーシに固定されることが意図されるケーシング(25)と、後退位置と配備位置との間で前記ケーシング(25)に対して軸方向に移動可能なピストン(28)とを含むアクチュエータ(24)を更に備え、前記後退位置から前記配備位置への前記ピストン(28)の移動が、前記連結装置(6)の前記第1連結部分(18)の前記分離位置から前記連結位置への移動をもたらすように、前記ピストン(28)は前記ディスク(36)の作動領域に対してもたれており、前記ディスク(36)は、前記後退位置から前記配備位置への前記アクチュエータ(24)の前記ピストン(28)の移動の間に、前記ディスク(36)の前記固定領域と前記作動領域との間で弾性的に変形することが可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項11】
前記ディスク(36)の前記作動領域は、軸方向クリアランス(49)だけ前記第1連結部分(18)の接触領域から分離され、当該軸方向クリアランス(49)は、前記連結装置(6)の軸方向製造公差を補償するために前記後退位置から前記配備位置へ前記アクチュエータ(24)の前記ピストン(28)が移動する間に前記ディスク(36)が変形し、前記連結装置(6)の前記軸方向製造公差が補償されている場合に前記ディスク(36)の前記作動領域が前記第1連結部分(18)の前記接触領域に対して接触するようになるように、寸法決めされる、請求項10に記載のトランスミッションシステム。
【請求項12】
前記ディスク(36)は、前記第1連結部分(18)に向かう前記ピストン(28)の軸方向接近と対向する50~500N/mmの剛性を生み出すように、寸法決めされる、請求項10又は11に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項13】
前記ディスク(36)の前記作動領域は内側環状部(45)である、請求項10~12のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項14】
前記内側環状部(45)はオイル通路溝(47)を含む、請求項13に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項15】
前記連結装置(6)はドグクラッチ装置であり、前記第1連結部分及び前記第2連結部分(18、19)の一方が歯を備え、他方が、前記第1連結部分(18)が前記連結位置にある場合に前記歯が係合する対応の溝を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項16】
前記連結装置は、前記第1要素と前記第2要素との間のトルクの伝達を選択的に遮断することが可能な遮断装置である、請求項1~15のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)。
【請求項17】
電気機械と、請求項1~16のいずれか一項に記載のトランスミッションシステム(1)とを備える動力車両であって、前記トランスミッションシステムの前記第1要素は前記電気機械によって駆動される動力車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、車両ドライブトレインの分野に関する。
【0002】
それは、より詳細には、モータによって駆動されることが意図された第1要素と、車両の少なくとも1つのホイールシャフトを駆動することが意図された第2要素と、第1要素を第2要素に選択的に連結することが可能な連結装置とを備えるトランスミッションシステムに関する。
【0003】
発明は、特に、モータからのトルクを車両の軸の2つのホイールシャフトに伝達及び分配するためのディファレンシャル式トランスミッションシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
文献US2015114786は、ディファレンシャル式トランスミッションシステムを開示する。そのトランスミッションシステムはディファレンシャルハウジングを備え、当該ディファレンシャルハウジングは、軸Aを中心に回転移動可能であり、車両のモータによって駆動されるギアが装備される。ハウジング内には、ハウジングにおいて回転案内されるキャリアリングと、軸Aに直交する軸Bを中心にキャリアリングにおいて回転するように取り付けられた2つのプラネットギアと、各々が2つのプラネットギアと噛み合う2つの太陽ギアであって、各々がホイールシャフトにより回転するようにロックされた2つの太陽ギアとが収容されている。さらに、トランスミッションシステムは連結装置を含み、当該連結装置は、エンジンから軸の2つのホイールシャフトへのトルクの伝達及び分配を可能にするようにトランスミッションシステムのハウジングをキャリアリングに連結したり、モータとホイールシャフトとの間の伝達トルクを遮断するためにそれらを切り離したりすることを可能にする。
【0005】
連結装置はドグクラッチ装置である。それは、ハウジングの外側に配置された環状部と、環状部から延び且つハウジングに形成されたオリフィスを通過する突出要素とを有する第1連結部分を備え、それは第1連結部分及びハウジングを回転固定することを可能にする。突出要素は、キャリアリングに形成された相補的な溝と協働することが意図された歯を備える。第1連結部分は、分離位置と、第1連結部分の歯がキャリアリングの溝と係合する連結位置との間で、ハウジングに対して軸方向に移動可能である。
【0006】
電磁アクチュエータは、第1連結部分に、それを分離位置から連結位置に移動させるように軸方向の力を作用させることができる。さらに、トランスミッションシステムは、第1連結部分の環状部に軸方向に固定される環状ターゲットを備える。環状ターゲットは、ホール効果センサなどのセンサと軸方向に対向して配置され、当該センサは、センサと環状ターゲットとの間の軸方向距離を表す信号を送る。
【0007】
トランスミッションシステムは、環状ターゲットとハウジングとの間に軸方向に配置される弾性ワッシャを更に備える。この弾性ワッシャの機能は、特に、電磁アクチュエータがもはや第一連結部に力を及ぼさなくない場合にそれをその分離位置に戻すように、第一連結部にリターン力を及ぼすことである。
【0008】
そのようなトランスミッションシステムは十分には満足できるものではない。
【0009】
特に、トランスミッションシステムの連結装置は、特に連結装置のターゲット機能及びリターン機能をその分離位置で確保するために、多くの異なる部分を有し、それはその複雑さ、そのコスト及び/又はそのバルクを増大させる。
【発明の概要】
【0010】
発明の根底にある考えは、連結装置、連結装置の状態を表す信号を送出することができるセンサ及びターゲットが装備されたトランスミッションシステムを提案することであり;このトランスミッションシステムはよりシンプルであり及び/又は嵩張りがより小さい。
【0011】
一実施形態によれば、発明は、以下を備える動力車両のためのトランスミッションシステムを提供する:
- 軸Xを中心として互いに対して回転するように移動可能な第1要素及び第2要素であって、第1要素及び第2要素のうちの一方は、モータによって駆動されることが意図されており、第1要素及び第2要素のうちの他方は、動力車両の少なくとも1つのホイールシャフトを駆動することが意図されている;
- 以下を含む連結装置:
- 第1要素に回転するようにロックされた第1連結部分と、第2要素により回転するようにロックされた第2連結部であって、第1連結部分は、第1要素と第2要素との間でトルクを伝達するために第1連結部分が第2連結部に連結される連結位置と、第1連結部分と第2連結部とが互いから分離される分離位置との間で、第1要素に対して移動可能である、第1連結部分と第2連結部、
- 前記第1連結部分に軸方向に固定される固定領域を含むディスクであって、ターゲットを形成する環状部と、分離位置から連結位置への第1連結部分の移動の間に弾性的に変形し、第1連結部分を分離位置に弾性的に戻すことが可能なリターン力を発揮するように構成された少なくとも1つの弾性リターン部とを備えるディスク。
【0012】
したがってディスクは二重機能を有し、すなわち一方では、連結装置の第1部分の位置を示す信号を送出するようにセンサによってその位置を検出することができるターゲットを形成し、他方では、第1連結部分がその分離位置に戻されることを確実にする。これは、そのようなトランスミッションシステムのコスト、複雑さ、バルクを減らすことを可能にする。
【0013】
様々な実施形態によれば、そのようなトランスミッションシステムは、以下の特徴のうちの1つ以上を有しうる。
【0014】
一実施形態によれば、トランスミッションシステムは、ディスクの環状部に面して配置されるセンサであって、ターゲットを形成する環状部とセンサとの間の距離を表す信号を送出するように構成されたセンサを備える。
【0015】
一実施形態によれば、センサはディスクの環状部に軸方向に面して配置されている。
【0016】
一実施形態によれば、分離位置から連結位置への第1連結部分の移動の間、弾性リターン部は、トランスミッションシステムのベアリング領域と固定領域との間で弾性的に圧力が加えられる。好ましくは、前記ベアリング領域は、第2連結部に対して軸方向に固定される。
【0017】
一実施形態によれば、ディスクはXC70鋼などのばね鋼で作られ、有利にはプリハードン(prehardened)されている。一実施形態によれば、ディスクは0.4~1.2mmの厚さ、例えば0.8mmのオーダー(order)の厚さ、を有する。一実施形態によれば、ディスクは非磁性金属であるステンレス鋼で作られ、当該ステンレス鋼は磁束の望ましくない漏れも制限する。
【0018】
一実施形態によれば、ディスクは複数の弾性リターン部を備え、当該複数の弾性リターン部は各々、トランスミッションシステムのベアリング領域に対してベアリング可能な弾性ブレードを備える。従って、弾性ブレードは、分離位置から連結位置への第1連結部分の移動の間に、増大する曲げ力を受ける。
【0019】
一実施形態によれば、ベアリング領域は、第2連結部に対して軸方向に固定される。
【0020】
一実施形態によれば、弾性ブレードの各々は自由端を備える。好ましくは、前記弾性ブレードは、弾性ブレードの端部を介してトランスミッションシステムのベアリング領域に対してもたれる。
【0021】
一実施形態によれば、各弾性ブレードは、ディスクに形成されたウィンドウに形成される。
【0022】
一実施形態によれば、弾性ブレードは、アンバランスを発生させないように、軸Xの周りに規則的に分布される。
【0023】
一実施形態によれば、連結装置は、少なくとも2つの弾性ブレードが、好ましくは4つの弾性ブレードが、軸Xの周りに規則的に分布され、軸Xに関してペアで対称である。
【0024】
一実施形態によれば、弾性ブレードは、ターゲットを形成する環状部の半径方向内側に位置し、それはディスクの半径方向のバルクを制限することを可能にする。
【0025】
一実施形態によれば、各弾性ブレードは、軸Xを中心とする周方向成分を有する方向に延びる。これによって、与えられた半径方向のバルクに関し、より大きな長さの弾性ブレードを得ることが可能となり、その結果、より低い剛性の弾性ブレードを得ることが可能となる。
【0026】
一実施形態によれば、ディスク及び弾性ブレードは、分離位置から連結位置への第1連結部分の軸方向移動に対抗する剛性K1を生み出すように寸法決めされ、それは5~50N/mmである。
【0027】
一実施形態によれば、第1要素は、内側に第2連結部が収容されるハウジング備え、第1連結部分は、ハウジングの内側に収容される内側部と、ハウジングの外側に配置される外側部と、第1連結部分の内側部及び外側部を軸方向に接続する複数の接続部とを備え、各接続部は、ハウジングに形成された対応の貫通開口を通過する。
【0028】
一実施形態によれば、第1連結部分の内側部及び外側部の一方は環状であり、他方は接続部に連続部において軸方向に延びるラグを備える。
【0029】
一実施形態によれば、ディスクはハウジングの外側に配置されて、第1連結部分の外側部に固定され、各ベアリング領域はハウジングに位置する。
【0030】
一実施形態によれば、ハウジングは、ディスクの方向にハウジングの外側に向かって軸方向に突出するスタッドを備え、各スタッドは、ベアリング領域のうちの1つを形成する一端を有する。これにより、ディスクの製造の間に弾性ブレードを折り曲げることを避けることが可能となる。
【0031】
一実施形態によれば、第1連結部分が分離位置にある場合、弾性ブレードは、ターゲット形成ディスクの環状部の平面に実質的に延在する。
【0032】
一実施形態によれば、スタッドは、連結位置と分離位置との間の第1連結部分の移動量以上の軸方向寸法を有する。
【0033】
一実施形態によれば、第1要素はディファレンシャルハウジングである。
【0034】
一実施形態によれば、第2要素は、ハウジングの内側で軸Xを中心に回転するように案内されるキャリアリングと、軸Xに垂直な軸Zを中心にキャリアリング上で回転するように取り付けられる2つの遊星ギアと、軸Xを中心に回転するように移動可能である2つの太陽ギアであって、2つの遊星ギアと各々係合して、各々ホイールシャフトにより回転するようにロックされるように意図される2つの太陽ギアとを備える。したがって、トランスミッションシステムは、ホイールシャフトが異なる速度で回転することを可能にするディファレンシャル部を形成する。
【0035】
一実施形態によれば、2つの遊星ギアは各々、2つの太陽ギアの相補的なベベルギアの歯と噛み合うベベルギアの歯を備える。
【0036】
一実施形態によれば、連結装置の第2連結部分は、軸Xに関してキャリアリングにより回転するようにロックされる。したがって、連結装置が連結位置にある場合、トランスミッションシステムはエンジンから来るトルクを2つのホイールシャフトに向かって分配する。逆に、連結装置の分離位置においてハウジングとキャリアリングとの間でトルクの伝達が中断される。
【0037】
一実施形態によれば、連結装置の第2連結部分は、キャリアリングと一体的に形成される。
【0038】
別の実施形態によれば、第2連結部分は、太陽ギアの1つにより回転するようにロックされる。そのような実施形態において、後者が連結位置にある場合、トルクはギアを介して第1要素と第2要素との間で伝達されるが、ディファレンシャル機能は連結装置によって阻止され、それはホイールシャフトが異なる速度で回転するのを防ぐ。
【0039】
一実施形態によれば、ディスクは、第1連結部分に固定される複数の固定タブを備える。
【0040】
一実施形態によれば、固定タブの各々は、ターゲットを形成する環状部に接続される近位端と、第1連結部分に固定される自由端とを備える。
【0041】
一実施形態によれば、各固定タブは、ディスクに形成されたウィンドウに形成される。
【0042】
一実施形態によれば、固定タブは半径方向に延びる。好ましくは、固定タブはウィンドウの半径方向外側エッジから半径方向内側に延びる。
【0043】
一実施形態によれば、固定タブは、アンバランスを発生させないように、軸Xの周りに規則的に分布される。
【0044】
一実施形態によれば、連結装置は、軸Xの周りに規則的に分布され且つ軸Xに関してペアで対称的である少なくとも2つの固定タブ、好ましくは4つの固定タブ、を備える。
【0045】
一実施形態によれば、固定タブは、ターゲットを形成する環状部の半径方向内側に位置し、それはディスクの半径方向のバルクを制限することを可能にする。
【0046】
一実施形態によれば、固定タブは第1連結部分の外側部に、特にそのラグに、固定される。
【0047】
一実施形態によれば、第1連結部分の外側部は、接続部の連続部において軸方向に延びるラグであって、固定タブが延びるウィンドウを貫通するラグを備える。
【0048】
好ましくは、各固定タブは、2つの弾性ブレード間に周方向に位置する。好ましくは、すべての弾性ブレードとすべての固定タブを横切る軸Xを中心としたサークルがある。
【0049】
一実施形態によれば、各固定タブの自由端は、第1連結部分に、特にそのラグに、形成された溝にはめ込まれる。溝は放射状に空洞化されてもよい。
【0050】
別の実施形態によれば、各固定タブの自由端は、ねじなどの固定部材によって、第1連結部分に、特にそのラグの1つに、固定される。
【0051】
一実施形態によれば、連結装置は、車両のシャーシに固定されるように意図されたケーシングと、後退位置と配備位置との間でケーシングに対して軸方向に移動可能なピストンとを含むアクチュエータを更に備え、後退位置から配備位置へのピストンの移動が、連結装置の第1連結部分の分離位置から連結位置への移動を引き起こすように、ピストンはディスクの作動領域に対して接触する。従って、ディスクは、アクチュエータと第1連結部分との間で作動力を伝達することも可能にし、それはトランスミッションシステムのコスト、複雑さ、バルクを更に低減することを可能にする。
【0052】
一実施形態によれば、アクチュエータは、ハウジングを画定する電磁石を備え、当該ハウジングの内側でピストンが後退位置と配備位置との間で軸方向に移動可能であり、ピストンは強磁性物質から作られる環状体を備える。そのような電磁アクチュエータは、それが優れた反応性を示す点で特に有利である。
【0053】
一実施形態によれば、アクチュエータは常磁性エンドピースを備え、当該常磁性エンドピースは、ピストンの本体に固定され且つディスクの作動領域と協働する。これは磁束の不要な漏れを防ぐ。
【0054】
一実施形態によれば、アクチュエータは磁気キャップを含み、当該磁気キャップに対し、ピストンが配備位置にある場合にピストンの本体が接触する。したがって磁気キャップがピストンを配備位置において保持し、それは電磁石のスイッチをオフにすることを可能にする。
【0055】
一実施形態によれば、磁気キャップはショルダー部を含み、当該ショルダー部に対し、ピストンが配備位置にある場合にピストンの本体のショルダー部が接触する。
【0056】
一実施形態によれば、ディスクは、後退位置から配備位置へのアクチュエータのピストンの移動の間に、ディスクの固定領域と作動領域との間で弾性的に変形することが可能である。従って、ディスクは連結装置の製造公差を補償することも可能にする。
【0057】
一実施形態によれば、ディスクの作動領域は、軸方向クリアランスによって第1連結部分の接触領域から分離され、当該軸方向クリアランスは、連結装置の軸方向製造公差を補償するための後退位置から配備位置へのアクチュエータのピストンの移動の間にディスクが変形し、連結装置の前記軸方向製造公差が補償されている場合にディスクの作動領域が第1連結部分の接触領域に対して接触するようになるように、寸法決めされる。
【0058】
一実施形態によれば、軸方向クリアランスは0.2~1.5mmである。
【0059】
一実施形態によれば、ディスクは、第1連結部分へ向かうピストンの軸方向接近に対抗する50~500N/mmの剛性K2を生成するように寸法決めされる。
【0060】
剛性K2は剛性K1よりも大きい。有利には、剛性K2は4*K1~20*K1であり、例えば10*K1である。
【0061】
一実施形態によれば、ディスクの作動領域は内側環状部である。これにより、連結装置の半径方向のバルクを制限することが可能になる。
【0062】
一実施形態によれば、内側環状部はオイル通路溝を備える。オイルの存在は、ピストンとディスクとの間に発生しうる摩擦を抑えることができる。
【0063】
一実施形態によれば、連結装置はドグクラッチ装置であり、第1連結部分及び第2連結部分の一方は歯を備え、他方は、第1連結部分が連結位置にある場合に前記歯が係合する対応の溝を備える。
【0064】
一実施形態によれば、連結装置は、第1要素と第2要素との間のトルクの伝達を選択的に遮断することができる遮断装置である。
【0065】
一実施形態によれば、発明はまた、上述の動力車両及びトランスミッションシステムに関する。
【0066】
一実施形態によれば、動力車両は電気機械を備え、トランスミッションシステムの第1要素は電気機械によって駆動可能である。
【0067】
電気機械及びトランスミッションシステムは、電気軸内に統合されてもよい。
【0068】
第2態様によれば、発明はまた、以下を備える動力車両のためのトランスミッションシステムを提供する:
- 軸Xを中心として互いに対して回転するように移動可能な第1要素及び第2要素であって、第1要素及び第2要素の一方は、モータによって駆動されることが意図されており、第1要素及び第2要素の他方は、動力車両の少なくとも1つのホイールシャフトを駆動するように意図されている、第1要素及び第2要素;及び
- 以下を備える連結装置:
- 第1要素により回転するようにロックされる第1連結部分と、第2要素により回転するようにロックされる第2連結部分であって、第1連結部分は連結位置と分離位置との間で第1要素に対して移動可能であり、連結位置において、第1要素と第2要素との間でトルクを伝達するように第1連結部分が第2連結部分に連結され、分離位置において、第1連結部分及び第2連結部分が互いから分離される、第1連結部分及び第2連結部分、
- 第1連結部分に軸方向に固定される固定領域を備える伝達部材、
- 車両のシャーシに固定されるように意図されたケーシングと、後退位置と配備位置との間でケーシングに対して軸方向に移動可能なピストンとを備えるアクチュエータであって、ピストンが、後退位置から配備位置へのピストンの移動が、連結装置の第1連結部分の分離位置から連結位置への移動をもたらすように、伝達部材の作動領域に対して接触し、伝達部材は、後退位置から配備位置へのアクチュエータのピストンの移動の間に、伝達部材の固定領域と作動領域との間で弾性的に変形することが可能である、アクチュエータ。
【0069】
したがって、伝達部材は、連結装置の製造公差を補償することを可能にする。
【0070】
好ましくは、伝達部材はディスクである。外側部はセンサターゲットを形成してもよい。
【0071】
発明のこの第2態様は、発明の第1態様の関連で言及された特徴のうちの1つ以上を含みうる。
【0072】
第3態様によれば、発明はまた、以下を備える動力車両のためのトランスミッションシステムを提供する:
- 軸Xを中心として互いに対して回転するように移動可能な第1要素及び第2要素であって、第1要素及び第2要素の一方は、モータによって駆動されることが意図されており、第1要素及び第2要素の他方は、動力車両の少なくとも1つのホイールシャフトを駆動することが意図されている、第1要素及び第2要素;及び
- 以下を備える連結装置:
- 第1要素により回転するようにロックされる第1連結部分と、第2要素により回転するようにロックされる第2連結部分であって、第1連結部分は連結位置と分離位置との間で第1要素に対して移動可能であり、連結位置において、第1要素と第2要素との間でトルクを伝達するように第1連結部分が第2連結部分に連結され、分離位置において、第1連結部分及び第2連結部分が互いから分離される、第1連結部分及び第2連結部分、
- 第1連結部分に軸方向に固定される固定領域と、ターゲットを形成する環状部とを備えるディスク、
- 車両のシャーシに固定されるように意図されたケーシングと、後退位置と配備位置との間でケーシングに対して軸方向に移動可能なピストンとを備えるアクチュエータであって、ピストンが、後退位置から配備位置へのピストンの移動が、連結装置の第1連結部分の分離位置から連結位置への移動をもたらすように、ピストンはディスクの作動領域に対して接触する、アクチュエータ。
【0073】
したがってディスクは二重機能を有し、すなわち一方では、連結装置の第1部分の位置を示す信号を送出するようにセンサによってその位置が検出されるターゲットを形成し、他方では、アクチュエータのピストンと第1連結部分との間で作動力を伝達し、それは、トランスミッションシステムのコスト、複雑さ、及びバルクを低減することを可能にする。
【0074】
発明のこの第3態様は、発明の第1態様の関連で言及された特徴のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0075】
特に、ディスクは、アクチュエータのピストンの後退位置から配備位置への移動の間に、ディスクの固定領域と作動領域との間で弾性的に変形することが可能である。
【0076】
第4態様によれば、発明はまた、以下を備える動力車両のためのトランスミッションシステムを提供する:
- 軸Xを中心として互いに対して回転するように移動可能な第1要素及び第2要素であって、第1要素及び第2要素の一方は、モータによって駆動されることが意図されており、第1要素及び第2要素の他方は、動力車両の少なくとも1つのホイールシャフトを駆動することが意図されている、第1要素及び第2要素;及び
- 以下を備える連結装置:
- 第1要素により回転するようにロックされる第1連結部分と、第2要素により回転するようにロックされる第2連結部分であって、第1連結部分は連結位置と分離位置との間で第1要素に対して移動可能であり、連結位置において、第1要素と第2要素との間でトルクを伝達するように第1連結部分が第2連結部分に連結され、分離位置において、第1連結部分及び第2連結部分が互いから分離される、第1連結部分及び第2連結部分、
- 前記第1連結部分に軸方向に固定される固定領域を含む伝達部材であって、伝達部材は弾性リターン部を備え、当該弾性リターン部は、分離位置から連結位置への第1連結部分の移動の間に弾性的に変形し且つ第1連結部分を分離位置に弾性的に戻すことが可能なリターン力を発揮するように構成される、伝達部材、
- 車両のシャーシに固定されるように意図されたケーシングと、後退位置と配備位置との間でケーシングに対して軸方向に移動可能なピストンとを備えるアクチュエータであって、ピストンが、後退位置から配備位置へのピストンの移動が、連結装置の第1連結部分の分離位置から連結位置への移動をもたらすように、ピストンは伝達部材の作動領域に対して接触する、アクチュエータ。
【0077】
したがって伝達部材は二重機能を有し、すなわち一方では、第1連結部分のその分離位置へのリターンを保証し、他方では、アクチュエータのピストンと第1連結部分との間で作動力を伝達し、それはトランスミッションのコスト、複雑さ及びバルクを低減することを可能にする。
【0078】
発明のこの第4態様は、発明の第1態様の関連で言及された特徴のうちの1つ以上を含みうる。
【0079】
特に、伝達部材は、アクチュエータのピストンの後退位置から配備位置への移動の間に、ディスクの固定領域と作動領域との間で弾性的に変形することが可能である。したがって2つの異なる弾性剛性が、一方では第1連結部分の弾性リターンを確保し、他方では寸法チェーンの公差の補償を確保する。
【0080】
好ましくは、伝達部材はディスクである。ディスクの外側部はセンサターゲットを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
発明は、添付の図面を参照した発明の複数の特定の実施形態の以下の記述から、より良く理解され、その更なる目的、詳細、特徴及び利点がより明確になり、それらは非限定的な説明としてのみ与えられる。
【
図1】
図1は、第1実施形態による連結装置が装備されたトランスミッションシステムの断面の全体図である。
【
図2】
図2は、連結装置が分離位置にある場合における
図1のトランスミッションシステムの交差面を有する破断断面図である。
【
図3】
図3は、連結装置が連結位置にある場合の
図2のものと同様の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3の連結装置の部分側面図であり、連結装置の第1連結部分及びディスクを示す。
【
図5】
図5は、
図4の断面V-Vに沿った交差面を有する破断断面図であり、特に連結装置の第1連結部分、ディスク及びハウジングを示す。
【
図6】
図6は、連結装置の第1連結部分、ハウジング及びディスクを示す変形実施形態による連結装置の部分側面図である。
【
図7】
図7は、
図6の断面VII-VIIに沿った、交差する平面を有する破断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
明細書及び特許請求の範囲において、「外側」及び「内側」という用語及び「軸方向」及び「半径方向」という用語は、本明細書で与えられる定めに従って、トランスミッションシステムの要素を指定するために使用される。慣例により、「半径方向」の向きは、「軸方向」の向きを決めるトランスミッションシステムの回転軸Xに直交するように方向付けられ、前記軸から離れる内側から外側に向かって、「周方向」の向きは、軸Xに直交し、半径方向に直交するように方向付けられる。
【0083】
図1~
図5は、第1実施形態によるトランスミッションシステム1を示す。トランスミッションシステムは、ここでは、車両のドライブトレインにおいて、図示しないモータからのトルクを動力車両の軸の2つのホイールシャフト2、3に伝達及び分配するために使用されるディファレンシャルである。そのようなトランスミッションシステムは、例えば、電気モータなどの車両の二次モータから車両の後車軸又は前車軸にトルクを伝達することができる二次ドライブトレインの一部を形成してもよい一方で、一次ドライブトレインは、例えば内燃機関などの主モータから車両の別の軸のホイールシャフトにトルクを伝達することができる。示されない他の実施形態によれば、トランスミッションシステムは、ディファレンシャルのもの以外の形態をとってもよい。
【0084】
トランスミッションシステムは、軸Xを中心として回転するように移動可能であり且つ電動モータ(図示せず)などのモータによって駆動されることが意図された第1要素4と、また軸Xを中心として回転するように移動可能であり且つホイールシャフト2、3を駆動することを意図された第2要素5と、第1要素4及び第2要素5を選択的に連結又は分離することが可能な連結装置6とを備える。
【0085】
第1要素4は、図示しない減速ギアトレインを介してモータによって駆動されることが意図された歯付きホイール7を備える。この第1要素4はまた、歯付きホイール7に回転するように固定されたハウジング8を備える。ハウジング8は、互いに固定された2つの部分9、10を含む。この目的のために、図示の実施形態において、2つの部分9、10の各々は外側フランジ11、12を含み、外側フランジ11、12によって2つの部分9、10が歯付きホイール7に対して且つ互いに対して固定される。
【0086】
第2要素5は、ハウジング8の内側で軸Xを中心に回転するように案内される環状形状のキャリアリング13を備える。この目的のために、ハウジング8は、キャリアリング13の円筒状外周面と協働する内側円筒状部を備え、それをハウジング8に対して回転するように案内する。第2要素5は、
図1に見える2つの遊星ギア14、15を更に備えており、当該遊星ギア14、15は、軸Xに垂直な軸Zを中心にキャリアリング13に回転するように取り付けられている。2つの遊星ギア14、15は各々、2つの太陽ギア16、17の相補的なベベルギアの歯と噛み合うベベルギアの歯を備える。2つの太陽ギア16、17は、軸Xを中心に回転するように移動可能であり、各々2つのホイールシャフト2、3のうちの1つと回転するようにロックされる。キャリアリング13、遊星ギア14、15及び太陽ギア16、17は、2つのホイールシャフト2、3が異なる速度で回転することを可能にするディファレンシャルを形成する。
【0087】
更に、トランスミッションシステム1は連結装置6を備え、当該連結装置6は、連結位置において、第2要素5の要素のうちの1つ、このケースではキャリアリング13、と第1要素4との間でトルクを伝達することを可能にする。従って、トランスミッションシステムは、連結装置6が連結位置にある場合に、ホイールシャフト2、3の回転の様々な速度を可能にするディファレンシャルの機能を発揮することによって、モータからホイールシャフト2、3にトルクを伝達することを可能にする。しかし、別の実施形態(図示せず)において、連結装置は、第1要素4を2つの太陽ギア16、17のうちの1つに連結するように構成される。太陽ギア16、17は、好ましくは軸方向に背中合わせに、2組の歯を持つ。一方は遊星ピニオンと協働し、他方は第1連結部分と協働する。そのような実施形態において、キャリアリング13はハウジング8により回転するようにロックされ、連結装置は2つのホイールシャフト2、3が異なる速度で回転するのを防ぐことを目的としている。
【0088】
示される実施形態に戻ると、連結装置6が、ハウジング8に対して軸Xに沿って軸方向に移動可能でありつつ、ハウジング8により回転するようにロックされる第1連結部分18を含むことが分かる。第1連結部分18は、
図2に示される分離位置と、
図3に示される連結位置との間で、移動可能である。分離位置において、第1連結部分18は、ハウジング8とキャリアリング13との間でトルク伝達が遮断されるように、キャリアリング13により回転するようにロックされた第2連結部分19から連結解除される。他方、連結位置において、第1連結部分18は第2連結部分19に連結され、それはハウジング8とキャリアリング13との間のトルクの伝達を可能とする。
【0089】
図示の実施形態において、連結装置6はドグクラッチ装置である。従って、第1連結部分18及び第2連結部分19の一方は歯を備えつつ、他方は、第1連結部分18が連結位置にある場合に前記歯が係合する対応の溝を備える。示される実施形態において、第2連結部分19はキャリアリング13と一体的に形成される。言い換えれば、第1連結部分18に面するキャリアリング13の側面には、歯又は溝が形成される。しかしながら、発明はドグクラッチ連結装置と関連して説明されているが、それはそれに限定されるものではなく、連結装置は他のタイプであってもよく、特に摩擦連結装置であってもよい。
【0090】
図5に示すように、第1連結部分18は、ハウジング8の内側に収容される内側部20と、ハウジング8の外側に配置される外側部21と、軸Xの周りに規則的に分布され且つ各々がハウジング8に形成された対応の貫通開口23を通過する接続部22とを備え、それは、第1連結部分18とハウジング8との間の相対的な軸方向の移動を許容しつつ、第1連結部分18をハウジング8に対して回転可能に固定することを可能にする。示される実施形態において、内側部20は環状である一方で、外側部21は、接続部22の連続部において軸方向に延びるラグを含む。しかし、別の変形実施形態によれば、その構造は反転しており、外側部21は環状である一方で、内側部20は、接続部22の連続部において延びる複数の軸方向に方向付けられるラグを含む。
【0091】
更に、連結装置6は、
図1~
図3に示されるアクチュエータ24を備え、第1連結部分18を軸方向に移動させることを可能にする。アクチュエータ24はケーシング25を含み、当該ケーシング25は、車両のシャーシ、後者に関して回転するように固定された車両のシャーシ、に、固定部材(図示せず)によって、搭載される。ケーシング25は、ハウジング8の部分9の部位の周囲に装着されるインナースカート26を備える。インナースカート26は、ハウジング8の対応する円筒形部分と協働する円筒形ガイド部を備え、それによってハウジング8がアクチュエータ24の固定ケーシング25に対して回転することを可能にする。
【0092】
アクチュエータ24は電磁アクチュエータである。それは、内側ハウジングを定める電磁石27と、
図2に示される後退位置と
図3に示される配備位置との間で内側ハウジングの内側で軸方向に移動可能なピストン28とを備える。アクチュエータ24は更に磁気キャップ29を備え、当該磁気キャップ29は、内側ハウジングを閉鎖し、ピストン28の配備位置を定めるショルダー部などのストップ部30を備える。ピストン28は、例えば鉄又は鋼のような強磁性物質で作られた環状形状の本体31を備える。ピストン28は更に、同じく環状形状の、常磁性エンドピース32を備え、当該常磁性エンドピース32はピストン28の本体31に固定され、当該常磁性エンドピースによって作動力が第1連結部分18に伝達される。従って、ピストン28の常磁性エンドピース32は、連結装置6の他の構成要素に向かう磁束の望ましくない漏れを回避することを可能にする。更に、ピストン28の本体31は、ピストン28が配備位置にある場合に、磁気キャップ29のショルダー部30に対して当接することが意図されたショルダー部33を備える。
【0093】
電磁石27が閾値電流より大きな電流によって通電されると、それはピストン28を
図2に図示した後退位置から
図3に図示した配備位置に移動させることを可能にする。ピストン28が配備位置にある場合、磁気キャップ29はピストン28の本体31に引力を及ぼし、それはそれを配備位置に保持することを可能にする。その後、電磁石27に供給される電流は、それが前記閾値電流より大きいままである限り、低減させられてもよい。電磁石27が非通電の場合又はそれが閾値電流より低い電流が供給される場合、第1連結部分18を分離位置に戻す後述の弾性リターン手段は、磁気キャップ29とピストン28の本体31との間の吸引力に打ち勝つことを可能にし、ピストン28を配備位置から後退位置に戻すことを可能にする。
【0094】
連結装置6はまた、第1連結部分18に軸方向に固定されたターゲット34が装備される。更に、連結装置6は、
図1に示す非接触センサ35を備えており、当該非接触センサ35は、ターゲット34に軸方向に面して配置され、ターゲット34とセンサ35との間の軸方向距離を表す信号を送出するように構成される。従って、センサ35は、第1連結部分18の位置を表す信号を送出することが可能であり、そのような信号は、連結装置6の制御の信頼性を確保するのに、特に連結装置6が実際に分離位置にあるか又は連結位置にあるかを確認するのに、使用される。センサ35は、例えばホール効果センサである。
【0095】
更に、連結装置6は、
図4において全体が見えるディスク36を備え、当該ディスク36は、単一体で形成され、第1連結部分18に軸方向に固定される。ディスク36は、以下に説明する数多くの機能を提供し、それによって連結装置6のコスト、複雑さ、バルクを抑えることを可能にする。
【0096】
まず、ディスク36がターゲット34の機能を果たす。この目的のために、ディスクは、ディスク36の半径方向外周に形成された環状部37を備える。この環状部37はセンサ35と軸方向に対向して配置され、したがってターゲット34を形成する。
【0097】
第2に、ディスク36は、アクチュエータ24のピストン28が後退位置に戻る場合に、第1連結部分18を分離位置に戻すことを可能にする弾性リターン手段の機能を果たす。
【0098】
この目的のために、ディスク36は弾性ブレード41を、示される実施形態では4つの弾性ブレード41を、含む。弾性ブレード41は各々、ハウジング8のベアリング領域にもたれる自由端42と、ディスク36の残りの部分に接続された近位端とを有する。弾性ブレード41は各々、環状部37の半径方向内側に配置されたウィンドウ43に形成される。弾性ブレード41は、軸Xを中心に周方向に延びており、それは、所定の半径方向のバルクに関して、より大きな長さの弾性ブレード41を、その結果より小さな剛性の弾性ブレード41を得ることを可能にする。
図2、
図3及び
図5に示すように、弾性ブレード41の自由端42は、ハウジング8からディスク36に向かって軸方向に突出するスタッド44の端部にもたれる。スタッド44は、分離位置と連結位置との間の第1連結部分18の移動量よりも大きな軸方向寸法だけ突出する。有利には、
図3に示すように、スタッド44の軸方向寸法は、連結装置6が分離位置にある場合に、弾性ブレード41がターゲット34を形成する環状部37の平面において実質的に延びるようになっている。
【0099】
従って、弾性ブレード41は各々、弾性リターン部を形成し、当該弾性リターン部は、第1連結部分18の分離位置から連結位置への移動の間に、弾性的に曲がるように構成される。これに対し、弾性ブレード41は、前記第1連結部分18を分離位置に戻すことが可能なリターン力を発揮する。
【0100】
更に、ディスク36は、
図4に見える複数の固定タブ38を、示される実施形態では4つの数の固定タブ38を、備える。固定タブ38は、軸Xの周りに周方向に分布され、各々が、第1連結部分18の外側部21に固定される固定領域を画定する自由端39を備える。固定タブ37は、ターゲット34を形成する環状部37の半径方向内側に配置されたディスク36の部分に形成されたウィンドウ40に形成される。したがって、タブに関連する各ウィンドウ40は、弾性ブレードに関連する2つのウィンドウ43間に周方向に配置される。固定タブ38は、前記ウィンドウ40の半径方向外側エッジから半径方向内側に突出する。更に、外側部21のラグは前記ウィンドウ40を通る。更に、
図2、
図3及び
図4に示すように、外側部21のラグは各々、固定タブ38のうちの1つの自由端39がはめ込まれる溝を含み、それは、単純に、いかなる追加の固定部材を用いることなく、ディスク36を第1連結部分18に固定することを可能にする。
【0101】
例として、一実施形態によれば、ディスク36、より詳細には固定タブ38及び弾性ブレード41は、連結位置に向かう第1連結部分18の軸方向移動に対抗する5~50N/mmの剛性K1を生み出すように、寸法設定される。
【0102】
第3に、ディスク36は、アクチュエータ24のピストン28と第1連結部分18との間で作動力を伝達することも可能にする。この目的のために、アクチュエータ24のピストン28は、作動領域を定めるディスク36の内側環状部45に対して接触する。更に、ディスク36は、アクチュエータ24のピストン28が後退位置から配備位置へ動かされる場合に、前記作動領域と固定タブ38の自由端39との間で弾性的に変形することが可能である。これにより、ピストン28及び第1連結部分18が、配備位置及び連結位置へのそれらのそれぞれの移動の間にそれらの移動全体にわたって動くことを保証することによって、連結装置6の寸法チェーンの公差を補償することが可能になる。換言すれば、これにより、ピストン28が、配備位置において、アクチュエータ24の磁気キャップ29に対して隣接すること、及び、第1連結部分18が、連結位置において、第2連結部分19に対して軸方向に隣接すること、の両方を保証することが可能となる。
図5に示すように、ディスク36の内側環状部45は、連結装置6の軸方向製造公差よりも大きい軸方向クリアランス49によって、第1連結部分18の接触領域から分離されている。軸方向のクリアランス49は、例えば0.2~1.5mmである。従って、後退位置から配備位置へのアクチュエータ24のピストン28の移動の間、ディスク36及び特にその内側環状部45は、連結装置の軸方向製造公差を補償するために変形し、その後、ディスク36の内側環状部45は、連結装置6の前記軸方向製造公差が補償された場合に、第1連結部分18の接触領域に対して接触する。
【0103】
有利な実施形態によれば、ディスク36は、特に
図4に示すように、作動領域を画定するディスク36の内側環状部45とウィンドウ43との間で半径方向に位置する領域において周方向に延びる切り欠き46を有する。そのような切り欠き46は、それらがディスク36の可撓性を更に高めるという点で有利である。
【0104】
例として、一実施形態によれば、ディスク36は、アクチュエータ24のピストン28の第1連結部分18に向かう軸方向接近に対抗する50~500N/mmの剛性K2を生成するように、寸法決めされる。その 剛性K2は剛性K1より大きい。有利には、剛性K2は4*K1~20*K1である。
【0105】
第4に、ディスク36は、その一部が回転するように固定されるピストン28に対して、軸Xを中心として回転して移動可能であるディスク36の相対的な回転によって引き起こされる摩擦力を制限するスライディング境界面を提案する。有利な変形例によれば、ピストン28とディスク36との間に発生しやすい摩擦を更に制限するために、ディスク36の環状部45は、ピストン28に向いたその面において、
図4に示すオイル通路溝47を備える。
【0106】
ディスク36は、例えば、XC70鋼などのばね鋼で作られ、有利にはプリハードンされている。例として、ディスク36は0.4~1.2mmの厚みを有し、例えば0.8mmのオーダーの厚みを有する。或いは、ディスク36はステンレス鋼で作られる。
【0107】
図6及び
図7は、別の実施形態による連結装置6を示す。この連結装置6は、ディスク36が第1連結部分18に固定されるやり方においてのみ、
図1から
図5に関連して上述したものと異なる。この実施形態において、各固定タブ38の自由端39は、ねじなどの固定部材48によって、第1連結部分18の外側部21に固定されており、それは、第1連結部分18に対するディスク36の固定のより大きな剛性を確保することを可能にする。
【0108】
発明がいくつかの特定の実施形態に関連して説明されたが、それが決してそれらに限定されるものではないこと、及び、それが、記載された手段のすべての技術的同等物及びそれらの組み合わせを、これらが特許請求の範囲によって定められるような発明の範囲内にあるのであれば、含むことは、極めて明白である。
【0109】
特許請求の範囲において、括弧間のあらゆる参照符号は、請求項を限定するものとしては解釈されるべきではない。
【国際調査報告】