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▶ シントマー スンディリアン ブルハドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ポリマーラテックス組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
C08C19/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556902
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 MY2022050015
(87)【国際公開番号】W WO2022197175
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】PI2021001494
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517156791
【氏名又は名称】シントマー スンディリアン ブルハド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ チェンリ
(72)【発明者】
【氏名】ゴー イーファン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チー フーン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AJ02R
4J100AM02Q
4J100AS02P
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA61
4J100HC77
4J100HE05
4J100HG31
4J100JA51
(57)【要約】
本発明は、ポリマーラテックス組成物、そのようなポリマーラテックス組成物の調製方法、エラストマー物品の製造のための上記ポリマーラテックス組成物の使用、上記ポリマーラテックス組成物を含む調合ラテックス組成物、浸漬成形品の製造方法、エラストマー物品の製造方法、および上記ポリマーラテックス組成物を使用して製造された物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のものを含む、エラストマーフィルムの調製用ポリマーラテックス組成物:
(I) エチレン性不飽和モノマーを含む組成物のフリーラジカル乳化重合によって得られるラテックスポリマーの粒子であって、官能基(I-a)を含むラテックスポリマーの粒子;および
(II) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物;または
(III) 1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物。
【請求項2】
熱可逆性結合(II-b)または(III-c)が、200℃以下の温度で分断しおよび再配置することができ;および/または
熱可逆性結合(II-b)または(III-c)が、ジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートからなる群から選択され;および/または
ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)が、炭素-炭素二重結合、カルボン酸、ヒドロキシ、エポキシ、アセトアセチル、第一級または第二級アミノ、アセトキシ、イソシアナト、アルコキシ、ジオキソラノン、ハロゲン化物官能基、チオール、ヒドロキシルアミン、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項3】
シラン化合物(II)が下記式の構造を有する、請求項1または2に記載のポリマーラテックス組成物:
【化1】
式中、
Xは熱可逆性結合(II-b)であり、好ましくはジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートからなる群から選択され;
Rは独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビル、シランまたはそれらの組み合わせから選択され;
は独立して、直鎖または分枝のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイル、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;および/または
シラン化合物(II)は、[3-(トリアルコキシシリルプロピル)]ジスルフィド、ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]テトラスルフィドビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カーボネート、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]ウレア、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]チオウレア、2-ヒドロキシ-3-[3-(トリアルコキシシリル)プロポキシ]プロピル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、2-ヒドロキシ-7-(トリアルコキシシリル)ヘプチル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、9,9-ジアルコキシ-1,1,1-トリヒドロキシ-10-オキサ-5-チア-1,9-ジシラドデカン-4-オン、N-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3-(トリヒドロキシシリル)プロペンアミド、(トリアルコキシシリル)メチルN-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カルバメート、(7E)-4,4,12,12-テトラアルコキシ-3,13-ジオキサ-8-アザ-4,12-ジシラペンタデカ-7-エン、4,4,11,11-テトラアルコキシ-3,6,12-トリオキサ-4,11-ジシラテトラデカン-7-オール、4,4,10,10-テトラアルコキシ-7-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3,6,8,11-テトラオキサ-4,10-ジシラトリデカン、オリゴマーシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;および/または
シラン化合物(II)は、1つの末端シラン官能基(IV-a)と、第2のシラン化合物(IV)の追加の官能基(IV-b)と熱可逆性結合(IV-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)とを含む第1のシラン化合物(IV)からその場で形成される。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物:
ここで、シラン化合物の少なくとも1つの追加の官能基(III-b)、または第1のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)および/または第2のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)は保護されており、および/または
シラン化合物(III)またはシラン化合物(IV)は下記式の構造を有する、
【化2】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され、
は、直鎖または分枝のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイル、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Yは官能基(III-b)または(IV-b)であり、好ましくはエポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;および/または
シラン化合物(III)またはシラン化合物(IV)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【請求項5】
シラン化合物(II)を含み、好ましくはシラン化合物(V)をさらに含み、シラン化合物(V)が、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)に反応する少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含み、官能基(I-a)と官能基(V-b)との反応によって形成される結合は、好ましくは熱可逆性であり、および/または、
シラン化合物(II)対シラン化合物(V)の質量比は、好ましくは100:1~1:100、特に好ましくは80:1~1:80、より好ましくは50:1~1:50、さらにより好ましくは20:1~1:20、最も好ましくは10:1~1:10である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項6】
シラン化合物(V)の官能基(V-b)が、炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載のポリマーラテックス組成物:
ここで、シラン化合物(V)は下記式の構造を有する、
【化3】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され、
は、直鎖または分枝のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイルであり;
Zは、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性の官能基(V-b)であり、ここで、官能基(V-b)は、好ましくは炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;および/または
シラン化合物(V)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【請求項7】
ラテックスポリマー(I)の粒子を得るためのモノマー組成物が、下記のものを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物:
(i) 15~99重量%の共役ジエン;
(ii) 1~80重量%の、エチレン性不飽和ニトリル化合物から選択されるモノマー;
(iii) 0~10重量%の、官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物;
(iv) 0~80重量%のビニル芳香族モノマー;および
(v) 0~65重量%のエチレン性不飽和酸のアルキルエステル;
重量パーセントは、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づく。
【請求項8】
請求項7に記載のポリマーラテックス組成物:ここで、
(i) 共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびそれらの組み合わせから選択される;
(ii) エチレン性不飽和ニトリル化合物は、(メタ)アクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリルおよびそれらの組み合わせから選択される;
(iii) 官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物は、下記のものから選択される、
(iii1) 少なくとも2つの異なるエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物、好ましくはアリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせから選択される;
(iii2) エチレン性不飽和酸およびそれらの塩、好ましくは(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和リン含有酸およびそれらの塩、ポリカルボン酸無水物、ポリカルボン酸部分エステルモノマー、エチレン性不飽和酸のカルボキシアルキルエステル、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii3) ヒドロキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルアルコール、ビニルアルコール、N-メチロールアクリルアミド、1-ペンテン-3-オール、エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii4) オキシラン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-プロピル)グリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-ブチル)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3’,4’エポキシヘプチル)-2-エチル(メタ)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)(メタ)アクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド、2-メチル-2-ビニルオキシラン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキセン、グリシジルプロパルギルエーテル、およびそれらの組み合わせ;
(iii5) アセトアセチル官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシ(メチル)エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトアミドエチル(メタ)アクリレート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2-ジメチルプロピル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4,4-テトラメチルシクロブチル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンチル3-オキソブタノエート、l-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンタン-3-イル3-オキソブタノエート、(4-(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキシル)メチル3-オキソブタノエート、またはそれらの組み合わせ;
(iii6) 第一級または第二級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物、好ましくは(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル](メタ)アクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、アルキルアクリルアミド、メタクリルアミドポリ(エチレングリコール)アミン塩酸塩、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii7) アセトキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは1-アセトキシ-1,3-ブタジエン、ジアセトンアクリルアミド、またはそれらの組み合わせ;
(iii8) イソシアナト官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、アリルイソシアネート、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、またはそれらの組み合わせ;
(iii9) アルコキシシリル官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-ブテニルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、5-ヘキセニルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、11-アリルオキシウンデシルトリメトキシシラン、アリルフェニルプロピルトリエトキシシラン、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシラン、(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)トリエトキシシラン、n-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラシクロペンタンノルボルネニルトリエトキシシラン、[2-(3-シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、またはそれらの組み合わせ;
(iii10) アルコキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メチル-3-メトキシ(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせ;
(iii11) ジオキソラノン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはグリセロールカーボネート(メタ)アクリレート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、またはそれらの組み合わせ;
(iii12) ハロゲン化物官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル、塩化アリル、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-クロロエチルアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチル2-(クロロメチル)(メタ)アクリレート、2,3-ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせ;
(iii13) チオール官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルメルカプタン、N-アクリロイル-システアミン、またはそれらの組み合わせ;
(iii14) ヒドロキシルアミン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアクリロヒドロキサム酸;
(iii15) オキサゾリノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはオキサゾリン置換アクリル酸エステル;
(iii16) アジリジノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-(アジリジン-1-イル)エチルアクリレート;
(iii17) イミノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル(3E)-3-(アルキルイミノ)ブタノエート;
(iii18) カルボジイミノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはN-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-ブチルカルボジイミド、またはそれらの組み合わせ;
(iii19) グリコール官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリグリコール部分エステルモノマー、またはそれらの組み合わせ;
(iii20) ヒドラジド官能基エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-プロペン酸ヒドラジドまたは(メタ)アクリロイルヒドラジド、またはそれらの組み合わせ;
(iii21) アルデヒド官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは(メタ)アクロレイン、2-エチルアクロレイン、3-メチル-2-ブテナール、チグリンアルデヒド、クロトンアルデヒド、3-メチルクロトンアルデヒド、2-ペンテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-ペンテナール、2,2-ジメチル-4-ペンテナール、2,4-ヘプタジエナール、またはそれらの組み合わせ;
(iii22) ケトン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは1-ペンテン-3-オン、3-ブテン-2-オン、4-メトキシ-3-ブテン-2-オン、3-ペンテン-2-オン、2-シクロペンテン-1-オン、2-シクロヘキセン-1-オン、またはそれらの組み合わせ;
ならびにこれらの組み合わせ;
(iv) ビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレンおよびそれらの組み合わせから選択される;
(v) エチレン性不飽和酸のアルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される;
ならびにこれらの組み合わせ;
ラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーの混合物は、下記のものから選択されるエチレン性不飽和モノマーを任意に含む、
(vi) カルボン酸ビニル、好ましくは酢酸ビニル;
(vii) 少なくとも2つの同一のエチレン性不飽和基を有するモノマー、好ましくはジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される;
ならびにそれらの組み合わせ。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物:ここで、
- 官能基(I-a)は、炭素-炭素二重結合を有する基から選択され、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合を有する基およびチオールから選択される;または
- 官能基(I-a)は、カルボン酸官能基から選択され、官能基(V-b)は、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール基、エステル基、およびアセトキシから選択される;または
- 官能基(I-a)は、ヒドロキシから選択され、官能基(V-b)は、アルコキシシリル、カルボン酸官能基、イソシアナト、第一級または第二級アミノ、アルデヒド、ボロン酸およびエステル基から選択される;または
- 官能基(I-a)は、エポキシから選択され、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、ヒドロキシ基およびエステル基から選択される;または
- 官能基(I-a)はアセトアセチルから選択され、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合を有する基、イソシアナト、アルデヒド、ヒドラジン、ヒドラジドおよび第一級または第二級アミノから選択される;または
- 官能基(I-a)は、第一級または第二級アミノから選択され、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、エポキシ基、エステル基およびジオキソラノン基から選択される;または
- 官能基(I-a)はアセトキシから選択され、官能基(V-b)はヒドラジドおよび第一級または第二級アミノから選択される;または
- 官能基(I-a)はイソシアナトから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸官能基、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノおよびチオールから選択される;または
- 官能基(I-a)は、アルコキシシリルから選択され、官能基(V-b)は、ヒドロキシおよびアルコキシシリルから選択される;または
- 官能基(I-a)はアルコキシから選択され、官能基(V-b)はエステル基から選択される;または
- 官能基(I-a)はエステル基から選択され、官能基(V-b)はヒドロキシ基、カルボン酸基およびエステル基から選択される;
- 官能基(I-a)はジオキソラノン基から選択され、官能基(V-b)は、第一級または第二級アミノから選択される;
- 官能基(I-a)はハロゲン化物官能基から選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はチオール官能基から選択され、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合、カルボン酸官能基、およびイソシアナトから選択される;
- 官能基(I-a)はヒドロキシルアミンから選択され、官能基(V-b)はアルデヒドから選択される;
- 官能基(I-a)はオキサゾリノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はアジリジノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸およびヒドロキシから選択される;
- 官能基(I-a)はイミノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はカルボジイミノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はグリコール基から選択され、官能基(V-b)はカルボン酸官能基から選択される;
- 官能基(I-a)はヒドラジドから選択され、官能基(V-b)はアルデヒドから選択される;
- 官能基(I-a)はアルデヒドから選択され、官能基(V-b)は、ヒドロキシ、アセトアセチル、ヒドロキシルアミン、およびヒドラジドから選択される;
- 官能基(I-a)はケトンから選択され、官能基(V-b)は、ヒドロキシから選択される。
【請求項10】
下記ステップを含む、ポリマーラテックス組成物の調製方法:
(A) 乳化重合プロセスにおいて、重合後に官能基(I-a)を与える少なくとも1種のモノマーを含むラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーを含む組成物を重合させて、官能基(I-a)を含むラテックスポリマー(I)の粒子を含むラテックスを得ること;および
(B1) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物(II)を添加すること;または
(B2) 1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物(III)を添加すること、好ましくは
(B1) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含む化合物(II)を添加すること;ならびに
(C) 任意に、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性である少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含む化合物(V)を添加すること、
ここで、ラテックスポリマー(I)の粒子、および/または化合物(II)、および/またはシラン化合物(III)、および/または化合物(V)および/またはそれらの相対量は、好ましくは請求項1~9のいずれか1項に規定されたものである。
【請求項11】
エラストマー物品の製造、または基材のコーティングもしくは含浸のための、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物の使用。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物を含み、かつ硫黄加硫剤、加硫促進剤、フリーラジカル開始剤、顔料およびそれらの組み合わせから選択される補助剤を任意に含み、好ましくは硫黄加硫剤および加硫促進剤を含まず、多価カチオンおよび/またはシリカ系充填剤を任意に含む、浸漬成形品の製造に適した調合ポリマーラテックス組成物。
【請求項13】
下記ステップによる浸漬成形品の製造方法:
(a) 請求項12に記載の調合ラテックス組成物を提供すること;
(b) 最終物品の所望の形状を有する型を、金属塩の溶液を含む凝固剤浴中に浸漬すること;
(c) 凝固剤浴から型を取り出し、任意に型を乾燥させること;
(d) ステップ(b)および(c)で処理した型を、ステップ(a)の調合ラテックス組成物中に浸漬すること;
(e) 型の表面上にラテックスフィルムを凝固させること;
(f) ラテックスコーティング型を調合ラテックス組成物から取り出し、かつ任意にラテックスコーティング型を水浴中に浸漬すること;
(g) 任意に、ラテックスコーティング型を乾燥させること;
(h) ステップ(e)または(f)から得られたラテックスコーティング型を40℃~180℃の温度で熱処理すること、および/またはステップ(e)または(f)から得られたラテックスコーティング型をUV放射線に曝露すること;
(i) 型からラテックス物品を取り出すこと。
【請求項14】
下記ステップを含む、エラストマー物品の製造方法:
(a) 請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物から連続エラストマーフィルムを得ること;
(b) 任意に、連続エラストマーフィルムを熱処理すること、および/または連続エラストマーフィルムをUV放射線に曝露すること;
(c) 2つの別個の連続エラストマーフィルムを重ね並べること;
(d) 重ね並べられた連続エラストマーフィルムを予め選択された形状に切断してまたは打ち抜いて、予め選択された形状のエラストマーフィルムを重ね合わせた2つの層を得ること;
(e) 重ね合わされた層を、周囲の少なくとも予め選択された部分で一緒に接合してエラストマー物品を形成すること;
ここで、一緒に接合することは、好ましくはヒートシールおよび溶着から選択される熱的手段を使用することによって、もしくは接着によって、または熱的手段および接着の組み合わせによって行われる。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーラテックス組成物または請求項12に記載の調合ラテックス組成物を用いて製造された物品であって、好ましくは、外科用手袋、検査用手袋、コンドーム、カテーテル、工業用手袋、布支持手袋、家庭用手袋、バルーン、チューブ、歯科用ダム、エプロン、および予め形成されたガスケットから選択される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーラテックス組成物、そのようなポリマーラテックス組成物の調製方法、エラストマー物品の製造のための上記ポリマーラテックス組成物の使用、上記ポリマーラテックス組成物を含む調合ラテックス組成物、浸漬成形品の製造方法、エラストマー物品の製造方法、および上記ポリマーラテックス組成物を使用して製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーラテックスをベースとする物品を製造する技術分野では、一般に、高い引張強度を達成し、同時に、物品を形成するフィルムの高い伸びを達成して、物品に高い機械的強度および所望の柔軟性を提供することが望ましい。これは、外科用手袋などの手袋にとって特に重要である。さらに、近年、ラテックスベースの物品、例えば、タンパク質、脂質および微量元素などの非ゴム成分を最大5%含む浸漬成形製品などのラテックス製品の製造において過去に一般的に使用されてきた天然ゴムラテックスに対して、アレルギー反応を示す人が増えていることが発見された。天然ゴムラテックス製品の使用者は、天然ゴム製品中に残存する溶出可能なラテックスタンパク質によって引き起こされるI型過敏症を発症している。
【0003】
天然および人工的に製造されたポリマーラテックスは一般に、硫黄および硫黄含有促進剤を含む硫黄加硫システムを使用して架橋される。ゴム手袋製造におけるこれらの硫黄加硫システムの使用は、アレルギー性接触皮膚炎などのIV型過敏症の停滞を引き起こす可能性がある。
【0004】
その結果、硫黄加硫システムを回避することが望ましく、特に、最終製品の所望の機械的性質を得るために、以前に使用された硫黄含有促進剤を含む標準的な硫黄加硫システムを必要としない浸漬成形品の製造に使用することができるポリマーラテックスを提供することが望ましい。
【0005】
さらに、本発明の目的は、良好な引張特性などのポリマーラテックスの有利な特性を維持しながら、より柔らかいフィルムをもたらすポリマーラテックス組成物を提供することである。
【0006】
別の目的は、ポリマーラテックスの有利な特性を維持して、物品を形成するフィルムの高い引張強度および高い伸びを同時に達成しながら、増加したポットライフを有するポリマーラテックス組成物を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の目的は、ポリマーラテックスの良好な耐久性を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
以下の節は、本発明のいくつかの態様を要約する。
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、エラストマーフィルムの調製のためのポリマーラテックス組成物に関し、これは下記成分を含む:
(I) エチレン性不飽和モノマーを含む組成物のフリーラジカル乳化重合によって得られるラテックスポリマーの粒子であって、官能基(I-a)を含むラテックスポリマーの粒子;および
(II) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物;または
(III) 1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物。
【0010】
ポリマーラテックス組成物は、200℃以下の温度で分断しおよび再配置することができる熱可逆性結合(II-b)または(III-c)を有することができる。
【0011】
熱可逆性結合(II-b)または(III-c)は、ジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートからなる群から選択され得る。
【0012】
好ましくは、シラン化合物(II)は下記式の構造を有する:
【化1】
式中、
Xは熱可逆性結合(II-b)であり、好ましくはジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートを含む群から選択され;
Rは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビル、シランまたはそれらの組み合わせから選択され;
は独立して、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイルであり、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルである。
【0013】
さらに、シラン化合物(II)は、1つの末端シラン官能基(IV-a)と、第2のシラン化合物(IV)の追加の官能基(IV-b)と熱可逆性結合(IV-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)とを含む第1のシラン化合物(IV)からその場で形成されてもよい。
【0014】
シラン化合物(III)の少なくとも1つの追加の官能基(III-b)または第1のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)および/または第2のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)は保護されてもよい。
【0015】
シラン化合物(II)は、好ましくはビス[3-(トリアルコキシシリルプロピル)]ジスルフィド、ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]テトラスルフィドビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カーボネート、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]ウレア、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]チオウレア、2-ヒドロキシ-3-[3-(トリアルコキシシリル)プロポキシ]プロピル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、2-ヒドロキシ-7-(トリアルコキシシリル)ヘプチル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、9,9-ジアルコキシ-1,1,1-トリヒドロキシ-10-オキサ-5-チア-1,9-ジシラドデカン-4-オン、N-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3-(トリヒドロキシシリル)プロペンアミド、(トリアルコキシシリル)メチルN-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カルバメート、(7E)-4,4,12,12-テトラアルコキシ-3,13-ジオキサ-8-アザ-4,12-ジシラペンタデカ-7-エン、4,4,11,11-テトラアルコキシ-3,6,12-トリオキサ-4,11-ジシラテトラデカン-7-オール、4,4,10,10-テトラアルコキシ-7-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3,6,8,11-テトラオキサ-4,10-ジシラトリデカン、オリゴマーシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0016】
シラン化合物(III)またはシラン化合物(IV)は下記式の構造を有することができる:
【化2】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され;
は、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイルであり、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Yは、官能基(III-b)または(IV-b)であり、好ましくはエポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
シラン化合物(III)またはシラン化合物(IV)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0018】
好ましくはラテックスポリマー(I)の粒子は、80~99.9重量%、好ましくは85~99.9重量%、より好ましくは90~99.9重量%、さらにより好ましくは92~99.8重量%、最も好ましくは95~99.8重量%の量で存在することができ、シラン化合物(II)は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%の量で存在することができ、
または、シラン化合物(III)は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~18重量%、より好ましくは0.1~15重量%、さらにより好ましくは0.1~12重量%、最も好ましくは0.1~10重量%の量で存在することができ、
これらは、ラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物(II)またはシラン化合物(III)の総重量に基づく。
【0019】
ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)は、炭素-炭素二重結合、カルボン酸、ヒドロキシ、エポキシ、アセトアセチル、第一級または第二級アミノ、アセトキシ、イソシアナト、アルコキシ、ジオキソラノン、ハロゲン化物官能基、チオール、ヒドロキシルアミン、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0020】
シラン化合物(II)を含むポリマーラテックス組成物は、シラン化合物(V)をさらに含んでもよく、シラン化合物(V)は、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と反応性の少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含む。
【0021】
シラン化合物(V)の官能基(V-b)は、好ましくは炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0022】
シラン化合物(V)は下記式の構造を有することができる:
【化3】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され;
は、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイルであり、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Zは、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性の官能基(V-b)であり、ここで、官能基(V-b)は、好ましくは炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0023】
好ましくは、シラン化合物(V)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0024】
ラテックスポリマー(I)の粒子は、80~99.8重量%、好ましくは85~99.8重量%、より好ましくは90~99.5重量%、さらにより好ましくは92~99.5重量%、最も好ましくは95~99.2重量%の量で存在することができ、シラン化合物(II)は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%の量で存在することができ、シラン化合物(V)は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%の量で存在することができ、これらはラテックスポリマー(I)の粒子、シラン化合物(II)およびシラン化合物(V)の総重量に基づく。
【0025】
好ましくは、シラン化合物(II)対シラン化合物(V)の質量比は、100:1~1:100、好ましくは80:1~1:80、より好ましくは50:1~1:50、さらにより好ましくは20:1~1:20、最も好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0026】
ラテックスポリマー(I)の粒子を得るためのモノマー組成物は下記成分を含む:
(i) 15~99重量%の共役ジエン;
(ii) 1~80重量%の、エチレン性不飽和ニトリル化合物から選択されるモノマー;
(iii) 0~10重量%の、官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物;
(iv) 0~80重量%のビニル芳香族モノマー;および
(v) 0~65重量%のエチレン性不飽和酸のアルキルエステル;
重量パーセントは、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づく。
【0027】
次のことが想定される:
(i) ポリマーラテックス組成物の共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびそれらの組み合わせから選択され得る;
(ii) ポリマーラテックス組成物のエチレン性不飽和ニトリル化合物は、(メタ)アクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリルおよびそれらの組み合わせから選択され得る;
(iii) ポリマーラテックス組成物の官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物は下記のものから選択され得る;
(iii1) 少なくとも2つの異なるエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物、好ましくはアリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせから選択される;
(iii2) エチレン性不飽和酸およびそれらの塩、好ましくは(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和リン含有酸およびそれらの塩、ポリカルボン酸無水物、ポリカルボン酸部分エステルモノマー、エチレン性不飽和酸のカルボキシアルキルエステル、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii3) ヒドロキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルアルコール、ビニルアルコール、N-メチロールアクリルアミド、1-ペンテン-3-オール、エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii4) オキシラン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-プロピル)グリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-ブチル)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3’,4’エポキシヘプチル)-2-エチル(メタ)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)(メタ)アクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド、2-メチル-2-ビニルオキシラン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキセン、グリシジルプロパルギルエーテル、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii5) アセトアセチル官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシ(メチル)エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトアミドエチル(メタ)アクリレート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2-ジメチルプロピル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4,4-テトラメチルシクロブチル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンチル3-オキソブタノエート、l-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンタン-3-イル3-オキソブタノエート、(4-(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキシル)メチル3-オキソブタノエート、またはそれらの組み合わせ;
(iii6) 第一級または第二級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物、好ましくは(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル](メタ)アクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、アルキルアクリルアミド、メタクリルアミドポリ(エチレングリコール)アミン塩酸塩、およびそれらの組み合わせから選択される;
(iii7) アセトキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは1-アセトキシ-1,3-ブタジエン、ジアセトンアクリルアミド、またはそれらの組み合わせ;
(iii8) イソシアナト官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、アリルイソシアネート、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、またはそれらの組み合わせ;
(iii9) アルコキシシリル官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-ブテニルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、5-ヘキセニルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、11-アリルオキシウンデシルトリメトキシシラン、アリルフェニルプロピルトリエトキシシラン、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシラン、(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)トリエトキシシラン、n-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラシクロペンタンノルボルネニルトリエトキシシラン、[2-(3-シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、またはそれらの組み合わせ;
(iii10) アルコキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メチル-3-メトキシ(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせ;
(iii11) ジオキソラノン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはグリセロールカーボネートメタクリレート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、またはそれらの組み合わせ;
(iii12) ハロゲン化物官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル、塩化アリル、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-クロロエチルアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチル2-(クロロメチル)(メタ)アクリレート、2,3-ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせ;
(iii13) チオール官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアリルメルカプタン、N-アクリロイル-システアミン、またはそれらの組み合わせ;
(iii14) ヒドロキシルアミン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはアクリロヒドロキサム酸;
(iii15) オキサゾリノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはオキサゾリン置換アクリル酸エステル;
(iii16) アジリジノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-(アジリジン-1-イル)エチルアクリレート;
(iii17) イミノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル(3E)-3-(アルキルイミノ)ブタノエート;
(iii18) カルボジイミノ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはN-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-ブチルカルボジイミド、またはそれらの組み合わせ;
(iii19) グリコール官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくはエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリグリコール部分エステルモノマー、またはそれらの組み合わせ;
(iii20) ヒドラジド官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは2-プロペン酸ヒドラジド、メタクリロイルヒドラジド、またはそれらの組み合わせ;
(iii21) アルデヒド官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは(メタ)アクロレイン、2-エチルアクロレイン、3-メチル-2-ブテナール、チグリンアルデヒド、クロトンアルデヒド、3-メチルクロトンアルデヒド、2-ペンテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-ペンテナール、2,2-ジメチル-4-ペンテナール、2,4-ヘプタジエナール、またはそれらの組み合わせ;
(iii22) ケトン官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは1-ペンテン-3-オン、3-ブテン-2-オン、4-メトキシ-3-ブテン-2-オン、3-ペンテン-2-オン、2-シクロペント-1-オン、2-シクロヘキセン-1-オン、またはそれらの組み合わせ;
ならびにそれらの組み合わせ;
(iv) ポリマーラテックス組成物のビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレンおよびそれらの組み合わせから選択することができる;
(v) ポリマーラテックス組成物のエチレン性不飽和酸のアルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択することができる;
ならびにそれらの組み合わせ;
ラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーの混合物は、任意に下記のものから選択されるエチレン性不飽和モノマーを含み得る;
(vi) カルボン酸ビニル、好ましくは酢酸ビニル;
(vii) 少なくとも2つの同一のエチレン性不飽和基を有するモノマー、好ましくはジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される;
ならびにそれらの組み合わせ。
【0028】
以下のことが想定される:
- 官能基(I-a)は、炭素-炭素二重結合を有する基から選択することができ、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合を有する基およびチオールから選択することができる;または
- 官能基(I-a)は、カルボン酸官能基から選択することができ、官能基(V-b)は、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール基、エステル基、およびアセトキシから選択することができる;または
- 官能基(I-a)は、ヒドロキシから選択することができ、官能基(V-b)は、アルコキシシリル、カルボン酸官能基;イソシアナト、第一級または第二級アミノ、アルデヒド、ボロン酸およびエステル基から選択することができる;または
- 官能基(I-a)は、エポキシから選択することができ、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、ヒドロキシ基およびエステル基から選択することができる;または
- 官能基(I-a)はアセトアセチルから選択することができ、官能基(V-b)は炭素-炭素二重結合を有する基、イソシアナト、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドラジンおよび第一級または第二級アミノから選択することができる;または
- 官能基(I-a)は、第一級または第二級アミノから選択することができ、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、エポキシ基、エステル基およびジオキソラノン基から選択することができる;または
- 官能基(I-a)はアセトキシから選択することができ、官能基(V-b)はヒドラジドおよび第一級または第二級アミノから選択することができる;または
- 官能基(I-a)はイソシアナトから選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸官能基、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノおよびチオールから選択することができる;または
- 官能基(I-a)は、アルコキシシリルから選択することができ、官能基(V-b)は、ヒドロキシおよびアルコキシシリルから選択することができる;または
- 官能基(I-a)はアルコキシから選択することができ、官能基(V-b)はエステル基から選択することができる;または
- 官能基(I-a)はエステル基から選択することができ、官能基(V-b)はヒドロキシ基、カルボン酸基およびエステル基から選択することができる;
- 官能基(I-a)はジオキソラノン基から選択することができ、官能基(V-b)は、第一級または第二級アミノから選択することができる;
- 官能基(I-a)はハロゲン化物官能基から選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸から選択することができる;
- 官能基(I-a)はチオール官能基から選択することができ、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合、カルボン酸官能基、およびイソシアナトから選択することができる;
- 官能基(I-a)はヒドロキシルアミンから選択することができ、官能基(V-b)はアルデヒドから選択することができる;
- 官能基(I-a)はオキサゾリノから選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸から選択することができる;
- 官能基(I-a)はアジリジノから選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸およびヒドロキシから選択することができる;
- 官能基(I-a)はイミノから選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸から選択することができる;
- 官能基(I-a)はカルボジイミノから選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸から選択することができる;
- 官能基(I-a)はグリコール基から選択することができ、官能基(V-b)はカルボン酸官能基から選択することができる;
- 官能基(I-a)はヒドラジドから選択することができ、官能基(V-b)はアルデヒドから選択することができる;
- 官能基(I-a)はアルデヒドから選択することができ、官能基(V-b)は、ヒドロキシ、アセトアセチル、ヒドロキシルアミン、およびヒドラジドから選択することができる;
- 官能基(I-a)はケトンから選択することができ、官能基(V-b)は、ヒドロキシから選択することができる。
【0029】
好ましくは、官能基(I-a)と官能基(V-b)との反応によって形成される結合は、熱可逆性である。
【0030】
本発明のさらなる態様は、ポリマーラテックス組成物の調製方法に関し、この方法は下記ステップを含む:
(A) 乳化重合プロセスにおいて、重合後に官能基(I-a)を与える少なくとも1種のモノマーを含むラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーを含む組成物を重合させて、官能基(I-a)を含むラテックスポリマー(I)の粒子を含むラテックスを得ること;および
(B1) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物(II)を添加すること;または
(B2) 1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物(III)を添加すること。
【0031】
好ましくは、ポリマーラテックス組成物の調製方法は下記ステップを含む:
(B1) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含む化合物(II)を添加すること;ならびに
(C) 任意に、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性である少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含む化合物(V)を添加すること。
【0032】
さらに、本発明の別の態様は、エラストマー物品の製造のための、または基材をコーティングもしくは含浸するためのポリマーラテックス組成物の使用に関する。
【0033】
さらに、さらなる態様によれば、本発明は、上述のポリマーラテックス組成物を含みかつ硫黄加硫剤、加硫促進剤、フリーラジカル開始剤、顔料およびそれらの組み合わせから選択される補助剤を任意に含む、浸漬成形品の製造に適した調合ポリマーラテックス組成物に関する。
【0034】
好ましくは、調合ラテックス組成物が硫黄加硫のための硫黄加硫剤および促進剤を含まなくてもよく、任意に多価カチオンおよび/またはシリカ系充填剤を含んでもよい。
【0035】
調合ラテックス組成物は、ラテックスポリマー(I)の粒子、シラン化合物(II)またはシラン化合物(III)および任意のシラン化合物(V)の総重量に基づいて、最大20重量%の量で存在する多価カチオンを含んでもよい。
【0036】
本発明の別の態様は、下記ステップによる浸漬成形品の製造方法に関する:
(a) 上述の調合ラテックス組成物を提供すること;
(b) 最終物品の所望の形状を有する型を、金属塩の溶液を含む凝固剤浴中に浸漬すること;
(c) 凝固剤浴から型を取り出し、任意に型を乾燥させること;
(d) ステップ(b)および(c)で処理した型を、ステップ(a)の調合ラテックス組成物中に浸漬すること;
(e) 型の表面上にラテックスフィルムを凝固させること;
(f) ラテックスコーティング型を調合ラテックス組成物から取り出し、かつ任意にラテックスコーティング型を水浴中に浸漬すること;
(g) 任意に、ラテックスコーティング型を乾燥させること;
(h) ステップ(e)または(f)から得られたラテックスコーティング型を40℃~180℃の温度で熱処理すること、および/またはステップ(e)または(f)から得られたラテックスコーティング型をUV放射線に曝露すること;
(i) 型からラテックス物品を取り出すこと。
【0037】
さらに、別の態様によれば、本発明はエラストマー物品の製造方法に関し、この方法は下記ステップを含む:
(a) 上述のポリマーラテックス組成物から連続エラストマーフィルムを得ること;
(b) 任意に、連続エラストマーフィルムを熱処理すること、および/または連続エラストマーフィルムをUV放射線に曝露すること;
(c) 2つの別個の連続エラストマーフィルムを重ね並べること;
(d) 重ね並べられた連続エラストマーフィルムを予め選択された形状に切断してまたは打ち抜いて、予め選択された形状のエラストマーフィルムを重ね合わせた2つの層を得ること;
(e) 重ね合わされた層を、周辺部の少なくとも予め選択された部分において一緒に接合して、エラストマー物品を形成すること。
【0038】
一緒に接合することは、好ましくは、ヒートシールおよび溶着から選択される熱的手段を使用することによって、もしくは接着によって、または熱的手段および接着の組み合わせによって行うことができる。
【0039】
本発明の別の態様は、上述のポリマーラテックス組成物を使用することによって製造される物品に関する。
【0040】
物品は、外科用手袋、検査用手袋、コンドーム、カテーテル、工業用手袋、布支持手袋、家庭用手袋、バルーン、チューブ、歯科用ダム、エプロン、および予め形成されたガスケットから選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明:
本発明は、ポリマーラテックス組成物に関し、下記のものを含む:
(I) エチレン性不飽和モノマーを含む組成物のフリーラジカル乳化重合によって得られるラテックスポリマーの粒子であって、官能基(I-a)を含むラテックスポリマーの粒子;および
(II) 少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物;または
(III) 1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物。
【0042】
ポリマーラテックス組成物は、エラストマーフィルムの調製に適している。本明細書で使用するとき、用語「熱可逆性結合」は、温度依存性の平衡に基づく化学反応によって生じる2つの官能基間の化学結合を指し、化学結合は低温で形成されるが、温度が上昇するにつれて可逆的に分断および再配置に誘導される。本発明によれば、熱可逆性結合は、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下の温度で形成され得る。典型的には、熱可逆性結合は、25~200℃の温度範囲で形成され得る。本発明によれば、熱可逆性結合は、200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下の温度で分断され、再配置して熱可逆性結合を形成することができる。典型的には、熱可逆性結合は、25~200℃の温度範囲で分断され、再配置することができる。
【0043】
官能基(I-a)を含むラテックスポリマー(I)
本発明に従って使用されるラテックスポリマー(I)は、当技術分野で公知の任意の好適なフリーラジカル乳化重合プロセスによって調製することができる。適切なプロセスパラメータは、以下に説明するものである。
【0044】
モノマー混合物が、ラテックスポリマー(I)上に官能基(I-a)を提供する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む限り、ラテックスポリマー(I)の調製に使用される不飽和モノマーおよびそれらの相対量は特に重要ではない。共役ジエンおよびエチレン性不飽和ニトリル化合物を含むモノマー組成物は、例えば浸漬成形用途に特に有用である。
【0045】
ラテックスポリマー(I)の粒子の適切な官能基(I-a)は、炭素-炭素二重結合、カルボン酸、ヒドロキシ、エポキシ、アセトアセチル、第一級または第二級アミノ、アセトキシ、イソシアナト、アルコキシ、ジオキソラノン、ハロゲン化物官能基、チオール、ヒドロキシルアミン、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、ヒドラジド、アルデヒド、ケトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0046】
本発明によれば、ラテックスポリマー(I)の粒子を得るためのモノマー組成物は下記のものを含む:
(i) 15~99重量%の共役ジエン;
(ii) 1~80重量%の、エチレン性不飽和ニトリル化合物から選択されるモノマー;
(iii) 0~10重量%の、官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物;
(iv) 0~80重量%のビニル芳香族モノマー;および
(v) 0~65重量%のエチレン性不飽和酸のアルキルエステル;
重量パーセントは、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づく。
【0047】
本発明によるラテックスポリマー(I)の調製に適した共役ジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、およびそれらの組み合わせから選択される共役ジエンモノマーが挙げられ、好ましくは1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、およびそれらの組み合わせである。1,3-ブタジエン、イソプレンおよびそれらの組み合わせは、より好ましい共役ジエンである。1,3-ブタジエンは最も好ましいジエンである。典型的には共役ジエンモノマーの量は、モノマーの総重量に基づいて、15~99重量%、好ましくは20~95重量%、より好ましくは30~75重量%、最も好ましくは40~70重量%の範囲である。したがって、共役ジエンは、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも22重量%、少なくとも24重量%、少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%、少なくとも34重量%、少なくとも36重量%、少なくとも38重量%、または少なくとも40重量%の量で存在し得る。したがって、共役ジエンモノマーは、99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、74重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、64重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、58重量%以下、または56重量%以下の量で使用することができる。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するであろう。
【0048】
本発明において使用することができる不飽和ニトリルモノマーとしては、アセチル基または追加のニトリル基のいずれかによって置換されていてもよい、直鎖または分枝鎖配置で2~4個の炭素原子を含有する重合性不飽和脂肪族ニトリルモノマーが挙げられ得る。本発明によるラテックスポリマー(I)の調製のためのエチレン性不飽和ニトリル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリルおよびそれらの組み合わせから選択することができ、アクリロニトリルが最も好ましい。これらのニトリルモノマーは、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、1~80重量%、好ましくは10~70重量%または1~60重量%、より好ましくは15~50重量%、さらにより好ましくは20~50重量%、最も好ましくは23~43重量%の量で含まれ得る。
【0049】
したがって、不飽和ニトリルは、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも14重量%、少なくとも16重量%、少なくとも18重量%、少なくとも20重量%、少なくとも22重量%、少なくとも24重量%、少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%、少なくとも34重量%、少なくとも36重量%、少なくとも38重量%、または少なくとも40重量%の量で存在し得る。したがって、不飽和ニトリルモノマーは、80重量%以下、75重量%以下、73重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、64重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、58重量%以下、56重量%以下、54重量%以下、52重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、または44重量%以下の量で使用することができる。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するであろう。
【0050】
本発明によるラテックスポリマー(I)の調製に適した官能基(a)を含む(i)および(ii)とは異なるエチレン性不飽和化合物は下記のものから選択され得る:
(iii1) 少なくとも2つの異なるエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物;
(iii2) エチレン性不飽和酸およびその塩;
(iii3) ヒドロキシ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii4) オキシラン官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii5) アセトアセチル官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii6) 第一級または第二級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物;
(iii7) アセトキシ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii8) イソシアナト官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii9) アルコキシシリル官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii10) アルコキシ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii11) ジオキソラノン官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii12) ハロゲン化物官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii13) チオール官能基エチレン性不飽和化合物;
(iii14) ヒドロキシルアミン官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii15) オキサゾリノ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii16) アジリジノ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii17) イミノ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii18) カルボジイミノ官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii19) グリコール官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii20) ヒドラジド官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii21) アルデヒド官能性エチレン性不飽和化合物;
(iii22) ケトン官能性エチレン性不飽和化合物;
およびそれらの組み合わせ。
【0051】
少なくとも2つの異なるエチレン性不飽和基を有する適切なエチレン性不飽和化合物(iii1)は、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0052】
適切なエチレン性不飽和酸およびその塩(iii2)は、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、エチレン性不飽和スルホン酸モノマー、エチレン性不飽和リン含有酸モノマーから選択され得る。本発明での使用に適したエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、モノカルボン酸モノマーおよびジカルボン酸モノマー、ジカルボン酸のモノエステル、ならびに2-カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和酸のカルボキシアルキルエステルが挙げられる。本発明を実施するには、3~5個の炭素原子を含有する、エチレン性不飽和脂肪族モノもしくはジカルボン酸または無水物を使用することが好ましい。モノカルボン酸モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸が挙げられ、ジカルボン酸モノマーの例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸が挙げられる。他の適切なエチレン性不飽和酸の例としては、酢酸ビニル、乳酸ビニル、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和リン含有酸およびそれらの塩、ポリカルボン酸無水物、ポリカルボン酸部分エステルモノマー、エチレン性不飽和酸のカルボキシアルキルエステル、およびそれらの組み合わせが特に好ましい。
【0053】
エチレン性不飽和スルホン酸モノマーの例としては、ビニルスルホン酸、フェニルビニルスルホネート、ナトリウム4-ビニルベンゼンスルホネート、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、4-スチレンスルホン酸、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0054】
エチレン性不飽和リン含有酸モノマーの例としては、ビニルホスホン酸、ジメチルビニルホスホネート、ジエチルビニルホスホネート、ジエチルアリルホスホネート、アリルホスホン酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0055】
好適なヒドロキシ官能性エチレン性不飽和化合物(iii3)は、アリルアルコール、ビニルアルコール、N-メチロールアクリルアミド、1-ペンテン-3-オール、エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステルおよびそれらの組み合わせから選択され得る。エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルマレエート、およびグリセロールウンデセノエートが挙げられる。
【0056】
好適なオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマー(iii4)は、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-プロピル)グリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-ブチル)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチル(メタ)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)(メタ)アクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド、2-メチル-2-ビニルオキシラン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキセン、グリシジルプロパルギルエーテル、およびそれらの組み合わせから選択され得る。グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0057】
好適なアセトアセチル官能性エチレン性不飽和化合物(iii5)は、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシ(メチル)エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトアミド-エチル(メチル)アクリレート、(2-アセトアセトアミド-2-メチルプロピル)(メタ)アクリレート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2-ジメチルプロピル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4,4-テトラメチルシクロブチル3-オキソブタノエート、3-(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンチル3-オキソブタノエート、I-((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンタン-3-イル3-オキソブタノエート、(4-((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキシル)メチル3-オキソブタノエート、およびそれらの組合せから選択され得る。
【0058】
本発明によるラテックスポリマー(I)の調製に適した、第一級または第二級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物(iii6)は、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN-エチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、エチレン性不飽和酸のアミノアルキルエステル、例えば2-アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、N-(3-アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド塩酸塩、2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、(2-(N-tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、およびN-3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミドから選択され得る。第一級または第二級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物(iii6)は、好ましくは(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル](メタ)アクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、アルキルアクリルアミド、メタクリルアミドポリ(エチレングリコール)アミン塩酸塩、およびそれらの組み合わせから選択され得る。好適なアセトキシ官能性エチレン性不飽和化合物(iii7)は、1-アセトキシ-1,3-ブタジエン、ジアセトンアクリルアミド、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0059】
好適なイソシアナト官能性エチレン性不飽和化合物(iii8)は、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、アリルイソシアネート、ビニルイソシアネート、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0060】
好適なアルコキシシリル官能性エチレン性不飽和化合物(iii9)は、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-ブテニルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、5-ヘキセニルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、11-アリルオキシウンデシルトリメトキシシラン、アリルフェニルプロピルトリエトキシシラン、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシラン、(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)トリエトキシシラン、n-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラシクロペンタン、ノルボルネニルトリエトキシシラン、[2-(3-シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0061】
好適なアルコキシ官能性エチレン性不飽和化合物(iii10)は、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、メチルー3-メトキシ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。好ましいアルコキシ官能性エチレン性不飽和化合物は、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メチル-3-メトキシ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせである。
【0062】
好適なジオキソラノン官能性エチレン性不飽和化合物(iii11)は、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0063】
好適なハロゲン化物官能性エチレン性不飽和化合物(iii12)は、塩化ビニル、塩化アリル、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-クロロエチルアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチル2-(クロロメチル)(メタ)アクリレート、2,3-ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0064】
好適なチオール官能性エチレン性不飽和化合物(iii13)は、アリルメルカプタン、N-アクリロイル-システアミン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0065】
好適なヒドロキシルアミン官能性エチレン性不飽和化合物(iii14)は、アクリロヒドロキサム酸から選択され得る。
【0066】
好適なオキサゾリノ官能性エチレン性不飽和化合物(iii15)は、オキサゾリン置換アクリル酸エステルから選択することができる。好適なオキサゾリン置換アクリル酸エステルおよびその合成は、US6,063,885に記載されている。
【0067】
好適なアジリジノ官能性エチレン性不飽和化合物(iii16)は、2-(アジリジン-1-イル)エチルアクリレートから選択され得る。
【0068】
好適なイミノ官能性エチレン性不飽和化合物(iii17)は、2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル(3E)-3-(アルキルイミノ)ブタノエートから選択され得る。イミノ官能性エチレン性不飽和化合物(iii17)は、Esser,R.J.、Devona,J.E.、Setzke,D.E.およびWagemans L.、Prog.Org.Coat.、1999、36(1-2)45-52およびYu,Z.、Alesso,S.、Pears,D.、Worthington,P.A.、Luke,R.W.A.、Bradley,M.、Tetrahedron Lett、2000、41(46)8963-8967に記載されているように、第一級または第二級アミンとアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートとの反応によって調製することができる。
【0069】
好適なカルボジイミノ官能性エチレン性不飽和化合物(iii18)は、N-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N-α,α’-ジメチルイソプロペニルベンジル-N’-ブチルカルボジイミド、およびそれらの組み合わせから選択され得る。上記カルボジイミノ官能性エチレン性不飽和化合物の合成は、Pham,H.H.およびWinnik,M.A.、J Polym Sci A Polym Chem、2000、38、855-869に記載されている。
【0070】
好適なグリコール官能性エチレン性不飽和化合物(iii19)は、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリグリコール部分エステルモノマー、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0071】
好適なヒドラジド官能性エチレン性不飽和化合物(iii20)は、2-プロペン酸ヒドラジド、メタクリロイルヒドラジド、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0072】
好適なアルデヒド官能性エチレン性不飽和化合物(iii21)は、(メタ)アクロレイン、2-エチルアクロレイン、3-メチル-2-ブテナール、チグリンアルデヒド、クロトンアルデヒド、3-メチルクロトンアルデヒド、2-ペンテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-ペンテナール、2,2-ジメチル-4-ペンテナール、2,4-ヘプタジエナール、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0073】
好適なケトン官能性エチレン性不飽和化合物(iii22)は、1-ペンテン-3-オン、3-ブテン-2-オン、4-メトキシ-3-ブテン-2-オン、3-ペンテン-2-オン、2-シクロペンテン-1-オン、2-シクロヘキセン-1-オン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0074】
モノマー(iii)は、本発明によるシラン化合物(III)の官能基(III-b)またはシラン化合物(V)の官能基(V-b)と反応性である官能基(I-a)を提供する。さらに、それらの極性のために、それらは、ポリマー分散液の特性に影響を及ぼし得る。これにより、これらのモノマーの種類および量が決定される。典型的には、そのような量は、ラテックスポリマー(I)用のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0.05~10重量%、特に0.1~10重量%、または0.5~7重量%、好ましくは0.1~9重量%、より好ましくは0.1~8重量%、さらにより好ましくは1~7重量%、最も好ましくは2~7重量%である。したがって、エチレン性不飽和化合物(iii)は、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.4重量%、少なくとも1.6重量%、少なくとも1.8重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、または少なくとも3重量%の量で存在し得る。同様に、エチレン性不飽和化合物(iii)は、ラテックスポリマー(I)用のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、10重量%以下、9.5重量%以下、9重量%以下、8.5重量%以下、8重量%以下、7.5重量%以下、7重量%以下、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、または5重量%以下の量で存在し得る。当業者は、明示的に開示された下限および明示的に開示された上限によって規定される任意の範囲が本明細書で開示されることを理解するであろう。
【0075】
ビニル芳香族モノマーの代表的なものとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-tert-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエテン、が挙げられる。1種以上のビニル芳香族化合物(vi)の混合物も使用することができる。好ましくは、ビニル芳香族モノマー(iv)は、スチレン、α-メチルスチレン、およびそれらの組み合わせから選択される。ビニル芳香族化合物(vi)は、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0~80重量%、0~70重量%、0~50重量%、好ましくは0~40重量%、より好ましくは0~25重量%、さらにより好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲で使用することができる。したがって、ビニル芳香族化合物(iv)は、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、80重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。ビニル芳香族化合物(iv)はまた、完全に存在しなくてもよい。
【0076】
好適なエチレン性不飽和酸のアルキルエステル(v)は、アルキル基が1~20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のn-アルキルエステル、イソアルキルエステルまたはtert-アルキルエステル、およびメタクリル酸とネオ酸(バーサチック酸、ネオデカン酸またはピバル酸など)のグリシジルエステルとの反応生成物から選択され得る。
【0077】
概して、(メタ)アクリル酸の好ましいアルキルエステルは、C-C10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC-C-アルキル(メタ)アクリレートから選択され得る。このような(メタ)アクリレートモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、第二ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびセチルメタクリレートが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせが好ましい。
【0078】
典型的には、エチレン性不飽和酸のアルキルエステル(v)は、ラテックスポリマー(I)のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0079】
さらに、本発明によるラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーの混合物は、上記規定のモノマーとは異なる追加のエチレン性不飽和モノマーを含むことができる。これらのモノマーは、カルボン酸ビニル(vi)および/または2つの同一のエチレン性不飽和基を有するモノマー(vii)から選択することができる。
【0080】
本発明に従って使用することができるカルボン酸ビニルモノマー(vi)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニル-2-エチルヘキサノエート、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルが挙げられる。本発明で使用するのに最も好ましいビニルエステルモノマーは酢酸ビニルである。典型的には、ビニルエステルモノマーは、ラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0081】
さらに、少なくとも2つの同一のエチレン性不飽和基を有するモノマー(vii)は、ラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0~6.0重量%、好ましくは0.1~3.5重量%の量で、本発明のポリマーラテックスの調製のためのモノマー混合物中に存在することができる。典型的には、これらのモノマーは、ラテックスポリマー(I)用のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下の量で存在することができる。ポリマー(本明細書において多官能性モノマーとして知られる)中で内部架橋および分岐を提供することができる適切な二官能性モノマー(vii)は、ジビニルベンゼン、ジアクリレートおよびジ(メタ)アクリレートから選択され得る。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマー(vii)は、好ましくはジビニルベンゼン、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0082】
本発明によれば、ラテックスポリマー(I)の調製のための上記のモノマーの量は、合計で100重量%になり得る。
【0083】
本発明のポリマーラテックスの調製方法:
本発明によるラテックスポリマー(I)は、本明細書に規定されるモノマー混合物が使用されることを条件として、当業者に公知の任意の乳化重合プロセスによって作製することができる。欧州特許出願公開第792891号明細書に記載されているプロセスが特に好適である。
【0084】
本発明のラテックスポリマー(I)を調製するための乳化重合においては、シードラテックスを採用してもよい。当業者に公知の任意のシード粒子を使用することができる。
【0085】
シードラテックス粒子は、好ましくはポリマー中に使用される総エチレン性不飽和モノマー100重量部に対して、0.01~10重量部、好ましくは1~5重量部の量で存在する。したがって、シードラテックス粒子の量の下限は、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または2.5重量部とすることができる。上記量の上限は、10、9、8、7、6、5.5、5、4.5、4、3.8、3.6、3.4、3.3、3.2、3.1または3重量部とすることができる。当業者は、明示的に開示された下限および上限のいずれかによって形成される任意の範囲が本明細書に明示的に包含されることを理解するであろう。
【0086】
上記のポリマーラテックスの調製方法は、0~130℃、好ましくは0~100℃、特に好ましくは5~70℃、極めて特に好ましくは5~60℃の温度で、1種以上の乳化剤の存在下または不存在下で、1種以上のコロイドの存在下または不存在下で、かつ1種以上の開始剤の存在下で行うことができる。温度は、それらの間の全ての値および下位値を含み、特に5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120および125℃を含む。
【0087】
本発明を実施する際に使用することができる開始剤には、重合の目的に有効な水溶性および/または油溶性の開始剤が含まれる。代表的な開始剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、アゾ化合物(例えば、AIBN、AMBNおよびシアノ吉草酸など)、無機ペルオキシ化合物(例えば、過酸化水素、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウムおよびペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシカーボネートならびにペルオキシボレート)、有機ペルオキシ化合物(例えば、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アシルヒドロペルオキシドおよびジアシルペルオキシド)、エステル(例えば、過安息香酸第三ブチル)、ならびに無機開始剤および有機開始剤の組み合わせが挙げられる。
【0088】
開始剤は、所望の速度で重合反応を開始するのに十分な量で使用される。一般に、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%の開始剤の量が十分である。開始剤の量は、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、最も好ましくは0.01~2重量%である。開始剤の量は、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、特に0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4および4.5重量%を含む、その間のすべての値およびサブ値を含む。
【0089】
上記の無機ペルオキシ化合物および有機ペルオキシ化合物はまた、当技術分野で周知のように、単独で、または1種以上の適切な還元剤と組み合わせて使用され得る。このような還元剤の例としては、二酸化硫黄、アルカリ金属ジサルファイト、アルカリ金属およびアンモニウムのヒドロゲンサルファイト、チオサルフェート、ジチオナイトおよびホルムアルデヒドスルホキシレート、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドラジンサルフェート、硫酸鉄(II)、銅ナフテネート、グルコース、メタンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸化合物、ジメチルアニリンのようなアミン化合物、ならびにアスコルビン酸が挙げられる。還元剤の量は、重合開始剤の重量部当たり0.03~10重量部であることが好ましい。
【0090】
ラテックス粒子を安定化するのに適した界面活性剤または乳化剤には、重合プロセスのための従来の界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、水相および/またはモノマー相に添加することができる。シード法における界面活性剤の有効量は、粒子のコロイドとしての安定化、粒子間の接触の最小化および凝集の防止をサポートするために選択された量である。非シード法では、界面活性剤の有効量は、粒径に影響を及ぼすために選択された量である。
【0091】
代表的な界面活性剤としては、例えば、飽和およびエチレン性不飽和のスルホン酸またはそれらの塩が挙げられ、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸などの不飽和炭化水素スルホン酸およびそれらの塩;p-スチレンスルホン酸、イソプロペニルベンゼンスルホン酸、ビニルオキシベンゼンスルホン酸などの芳香族炭化水素酸およびそれらの塩;アクリル酸およびメタクリル酸のスルホアルキルエステル、例えば、スルホエチルメタクリレートおよびスルホプロピルメタクリレートおよびそれらの塩、ならびに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびその塩;アルキル化ジフェニルオキシドジスルホネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホンネート、ナトリウムスルホスクシネートのジヘキシルエステル、スルホン酸のナトリウムアルキルエステル、エトキシル化アルキルフェノール、およびエトキシル化アルコール;ならびに脂肪アルコール(ポリ)エーテルスルフェートである。
【0092】
界面活性剤の種類および量は、典型的には粒子の数、それらのサイズおよびそれらの組成によって決まる。典型的には、界面活性剤は、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%の量で使用される。界面活性剤の量は、モノマー組成物中のモノマーの総重量に基づいて、特に0、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18および19重量%を含む、その間のすべての値およびサブ値を含む。重合は、界面活性剤を用いずに行うことができる。
【0093】
上記の界面活性剤の代わりに、またはそれに加えて、様々な保護コロイドを使用することもできる。好適なコロイドとしては、部分アセチル化ポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、多糖類および分解多糖類、ポリエチレングリコールならびにアラビアゴムなどのポリヒドロキシ化合物が挙げられる。好ましい保護コロイドは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースである。一般に、これらの保護コロイドは、モノマーの総重量に基づいて、0~10重量部、好ましくは0~5重量部、より好ましくは0~2重量部の含有量で使用される。保護コロイドの量は、それらの間の全ての値および下位値を含み、モノマーの総重量に基づいて、特に1、2、3、4、5、6、7、8および9重量%を含む。
【0094】
当業者は、極性官能基を有するモノマー、界面活性剤および保護コロイドの種類および量が、本発明によるポリマーラテックスを浸漬成形用途に適したものにするように選択されることを理解するであろう。したがって、本発明のポリマーラテックス組成物は、30mmol/l未満、好ましくは25mmol/l未満、より好ましくは20mmol/l未満、最も好ましくは10mmol/l未満のCaClでの臨界凝集濃度として決定される一定の最高電解質安定性(pH10および23℃で0.1%の組成物の全固形分について測定)を有することが好ましい。
【0095】
電解質の安定性が高すぎると、浸漬成形プロセスでポリマーラテックスを凝集させることが困難になり、その結果、浸漬型上にポリマーラテックスの連続フィルムが形成されないか、または得られる製品の厚さが不均一になる。
【0096】
ポリマーラテックスの電解質安定性を適切に調整することは、当業者のルーチンの範囲内である。電解質安定性は、一定の異なる要因、例えば、ポリマーラテックスを製造するために使用されるモノマー(特に極性官能基を含有するモノマー)の量および選択、ならびに安定化系(例えば、ポリマーラテックスを製造するための乳化重合プロセス)の選択および量に依存する。安定化系は、界面活性剤および/または保護コロイドを含有することができる。
【0097】
当業者は、本発明のポリマーラテックスを製造するための選択されたモノマーおよびそれらの相対量に応じて、本発明による電解質安定性を達成するために安定化系を調整することができる。
【0098】
乳化重合は、さらに緩衝物質およびキレート剤の存在下で実施することがしばしば推奨される。適切な物質は例えば、アルカリ金属のリン酸塩およびピロリン酸塩(緩衝物質)、ならびにキレート化剤としてのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはヒドロキシ-2-エチレンジアミン三酢酸(HEEDTA)のアルカリ金属塩である。緩衝物質およびキレート剤の量は、通常、モノマーの総量に基づいて0.001~1.0重量%である。
【0099】
さらに、乳化重合において連鎖移動剤(調節剤)を使用することが有利であり得る。典型的な試薬は、例えば、チオエステル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸およびC-C12アルキルメルカプタンなどの有機硫黄化合物であり、n-ドデシルメルカプタンおよびt-ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の量は、存在する場合、使用されるモノマーの総重量に基づいて、通常0.05~3.0重量%、好ましくは0.2~2.0重量%である。
【0100】
さらに、重合プロセスに部分的中和を導入することが有益であり得る。当業者は、このパラメータの適切な選択によって、必要な制御が達成され得ることを理解する。
【0101】
本発明のラテックス組成物を調製するために、種々の他の添加剤および成分を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、分散剤、蛍光増白剤、架橋剤、促進剤、酸化防止剤、殺生物剤および金属キレート剤が挙げられる。公知の消泡剤には、シリコーンオイルおよびアセチレングリコールが含まれる。通常知られている湿潤剤には、アルキルフェノールエトキシレート、アルカリ金属ジアルキルスルホスクシネート、アセチレングリコールおよびアルカリ金属アルキルスルフェートが含まれる。典型的な増粘剤には、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、変性セルロースまたは粒状増粘剤(例えばシリカおよび粘土)が含まれる。典型的な可塑剤には、鉱油、液体ポリブテン、液体ポリアクリレートおよびラノリンが含まれる。酸化亜鉛は好適な架橋剤である。二酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウムおよび粘土は、典型的に使用される充填剤である。公知の促進剤および二次促進剤としては、ジチオカルバメート(例えば、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD))、キサンテート、チウラム(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(DPTT))、およびアミン(例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、o-トリルビグアニジン(OTBG))が挙げられる。
【0102】
少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物(II):
本発明によれば、少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含む任意のシラン化合物(II)を使用することができる。シラン化合物(II)は、硫黄加硫が使用されなくても、最終浸漬成形品のエラストマーフィルムが所望の機械的性質を示すことを確保し得る。
【0103】
熱可逆性結合(II-b)は、ジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートからなる群から選択され得る。
【0104】
本発明によれば、シラン化合物(II)は下記式の構造を有し得る:
【化4】
式中、
Xは熱可逆性結合(II-b)であり、好ましくはジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートを含む群から選択される;
Rは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビル、シランまたはそれらの組み合わせから選択され;
は独立して、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイルであり、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルである。
【0105】
好適なシラン化合物(II)は、ビス[3-(トリアルコキシシリルプロピル)]ジスルフィド、ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]テトラスルフィドビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カーボネート、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]ウレア、N,N’-ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]チオウレア、2-ヒドロキシ-3-[3-(トリアルコキシシリル)プロポキシ]プロピル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、2-ヒドロキシ-7-(トリアルコキシシリル)ヘプチル-3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、9,9-ジアルコキシ-1,1,1-トリヒドロキシ-10-オキサ-5-チア-1,9-ジシラドデカン-4-オン、N-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3-(トリヒドロキシシリル)プロペンアミド、(トリアルコキシシリル)メチルN-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]カルバメート、(7E)-4,4,12,12-テトラアルコキシ-3,13-ジオキサ-8-アザ-4,12-ジシラペンタデカ-7-エン、4,4,11,11-テトラアルコキシ-3,6,12-トリオキサ-4,11-ジシラテトラデカン-7-オール、4,4,10,10-テトラアルコキシ-7-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-3,6,8,11-テトラオキサ-4,10-ジシラトリデカン、オリゴマーシロキサン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基およびエトキシ基から選択され、より好ましくはエトキシ基から選択される。本明細書で使用するとき、用語「オリゴマーシロキサン」は、US8,728,345B2に記載されているように、標準としてポリスチレンを使用してGPCに従って決定される、200~2,000Daの範囲の重量平均分子量(Mw)を有するシロキサンを指す。オリゴマーシロキサンの好適な例としては、CoatOSil MP-200、CoatOSil T-CureおよびSilquest VX-225(全てモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(米国)から市販されている)が挙げられる。
【0106】
好ましくは、シラン化合物(II)は、ビス[3-(トリエトキシシリルプロピル)]ジスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]カーボネート、N,N’-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、N,N’-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]チオウレア、2-ヒドロキシ-3-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]プロピル3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、2-ヒドロキシ-7-(トリエトキシシリル)ヘプチル3-(トリヒドロキシシリル)プロパノエート、9,9-ジエトキシ-1,1,1-トリヒドロキシ-10-オキサ-5-チア-1,9-ジシラドデカン-4-オン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-3-(トリヒドロキシシリル)プロペンアミド、(トリエトキシシリル)メチルN-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]カルバメート、(7E)-4,4,12,12-テトラエトキシ-3,13-ジオキサ-8-アザ-4,12-ジシラペンタデカ-7-エン、4,4,11,11-テトラエトキシ-3,6,12-トリオキサ-4,11-ジシラテトラデカン-7-オール、4,4,10,10-テトラエトキシ-7-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-3,6,8,11-テトラオキサ-4,10-ジシラトリデカン、オリゴマーシロキサン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0107】
あるいは、本発明のシラン化合物(II)は、1つの末端シラン官能基(IV-a)と、第2のシラン化合物(IV)の追加の官能基(IV-b)と熱可逆性結合(IV-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)とを含む第1のシラン化合物(IV)からその場で形成することができる。本発明によれば、第1のシラン化合物は第2のシラン化合物と同じであってもよく、または第1のシラン化合物は第2のシラン化合物と異なっていてもよい。当業者は、第1のシラン化合物の追加の官能基(IV-b)が第2のシラン化合物の追加の官能基と熱可逆性結合(IV-c)を形成可能である必要があることを理解するであろう。
【0108】
第1のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)および/または第2のシラン化合物(IV)の少なくとも1つの追加の官能基(IV-b)は、保護されてもよい。本明細書で使用するとき、用語「保護される」とは、化合物の官能基と保護剤との反応から誘導される付加を指し、それによって、付加物は熱的に不安定であり、40℃を超える温度などの高温で解離する(保護解除する)。適切な保護剤の例としては、ポリマーラテックス組成物の熱処理中に、例えば、40~120℃、60~120℃の範囲の温度で保護解除する材料が挙げられる。当業者は、適切な保護がそれぞれの官能基に依存することを理解するであろう。例えば、アミノ官能基およびヒドロキシ官能性は、tert-ブチルカルボニルで保護され得る。チオール官能基は、(CからC)アルキルカルボン酸で保護され得る。イソシアナト官能基は、1~6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、メタノールおよびn-ブタノール、脂環式アルコール、例えば、シクロヘキサノール、およびフェノール化合物、例えば、フェノールで保護され得る。適切な保護シラン化合物としては、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのS-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0109】
本発明によれば、シラン化合物(IV)は下記式の構造を有し得る:
【化5】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され;
は、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイル、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Yは官能基(IV-b)である。
【0110】
官能基(IV-b)は、好ましくはエポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0111】
好適なシラン化合物(IV)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基およびエトキシ基から選択され、より好ましくはエトキシ基から選択される。
【0112】
好ましくは、シラン化合物(IV)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)フラン、ノルボネニルトリエトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリエトキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0113】
本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80~99.9重量%、好ましくは85~99.9重量%、より好ましくは90~99.9重量%、さらにより好ましくは92~99.8重量%、最も好ましくは95~99.8重量%のラテックスポリマー(I)を含み得る。したがって、ラテックスポリマー(I)の粒子の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80重量%、82重量%、85重量%、86重量%、88重量%、90重量%、92重量%、94重量%、または95重量%であり得る。ラテックスポリマー(I)の粒子の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、99.9重量%、99.8重量%、99.5重量%、99.2重量%、99重量%、98重量%、97重量%、または96重量%であり得る。本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1~20重量%,、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%のシラン化合物(II)を含み得る。シラン化合物(II)の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、または3重量%であり得る。シラン化合物(II)の量の上限は、本明細書に記載の本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、20重量%、18重量%、15重量%、14重量%、12重量%、10重量%、9重量%、8重量%または5重量%であり得る。当業者は、明示的に開示される下限および上限のいずれかによって形成される任意の範囲が本明細書において明示的に開示されることを理解するであろう。
【0114】
シラン化合物(II)を含む本発明のポリマーラテックス組成物は、シラン化合物(V)をさらに含んでもよく、シラン化合物(V)は、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と反応性の少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含む。シラン化合物(II)とシラン化合物(V)との組み合わせは、驚くべきことに、最終浸漬成形品の破断伸び(EB)を改善する。
【0115】
ラテックスポリマー(I)上の官能基(I-a)の種類に応じて、シラン化合物(V)の官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0116】
本発明によれば、シラン化合物(V)は下記式の構造を有する:
【化6】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルまたはそれらの組み合わせから選択され;
は、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイル、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Zは、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性の官能基(V-b)である。好ましくは、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合、ハロゲン化物官能基、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせから選択され得る。シラン化合物(V)の官能基(V-b)は、上述のように保護されていてもよい。
【0117】
好適なシラン化合物(V)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基およびエトキシ基から選択され、より好ましくはエトキシ基から選択される。
【0118】
好ましくは、シラン化合物(V)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)フラン、ノルボネニルトリエトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリエトキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0119】
本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載の本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80~99.8重量%、好ましくは85~99.8重量%、より好ましくは90~99.5重量%、さらにより好ましくは92~99.5重量%、最も好ましくは95~99.2重量%のラテックスポリマー(I)を含み得る。したがって、ラテックスポリマー(I)の粒子の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80重量%、82重量%、85重量%、86重量%、88重量%、90重量%、または92重量%であり得る。ラテックスポリマー(I)の粒子の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、99.8重量%、99.5重量%、99.2重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%、95重量%、94重量%、または93重量%であり得る。本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載の本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%のシラン化合物(II)を含み得る。シラン化合物(II)の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、または3重量%であり得る。シラン化合物(II)の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、20重量%、18重量%、15重量%、14重量%、12重量%、10重量%、9重量%、8重量%、または5重量%であり得る。本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1~20重量%,、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.2~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%のシラン化合物(V)を含み得る。シラン化合物(V)の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、または3重量%であり得る。シラン化合物(V)の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、20重量%、18重量%、15重量%、14重量%、12重量%、10重量%、9重量%、8重量%、または5重量%であり得る。当業者は、明示的に開示される下限および上限のいずれかによって形成される任意の範囲が本明細書において明示的に開示されることを理解するであろう。
【0120】
シラン化合物(II)対シラン化合物(V)の質量比は、100:1~1:100、好ましくは80:1~1:80、より好ましくは50:1~1:50、さらにより好ましくは20:1~1:20、最も好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0121】
ラテックスポリマー(I)上の官能基(I-a)およびシラン化合物(V)の官能基(V-b)は、以下の組み合わせを提供するように選択することができる:
- 官能基(I-a)は炭素-炭素二重結合を有する基から選択され、官能基(V-b)は炭素-炭素二重結合を有する基およびチオールから選択される;
- 官能基(I-a)はカルボン酸官能基から選択され、官能基(V-b)は、エポキシ、チオール、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール基、エステル基、およびアセトキシから選択される;
- 官能基(I-a)はヒドロキシから選択され、官能基(V-b)は、アルコキシシリル、カルボン酸官能基、イソシアナト、第一級または第二級アミノ、アルデヒド、ホウ素酸およびエステル基から選択される;
- 官能基(I-a)はエポキシから選択され、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、ヒドロキシおよびエステル基から選択される;
- 官能基(I-a)はアセトアセチルから選択され、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合を有する基、イソシアナト、アルデヒド、ヒドラジン、ヒドラジドおよび第一級または第二級アミノから選択される;
- 官能基(I-a)は第一級または第二級アミノから選択され、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、エポキシ、エステル基およびジオキソラノン基から選択される;
- 官能基(I-a)はアセトキシから選択され、官能基(V-b)はヒドラジドおよび第一級または第二級アミノから選択される;
- 官能基(I-a)はイソシアナトから選択され、官能基(V-b)は、カルボン酸官能基、ヒドロキシ、第一級または第二級アミノおよびチオールから選択される;
- 官能基(I-a)はアルコキシシリルから選択され、官能基(V-b)はヒドロキシおよびアルコキシシリルから選択される;
- 官能基(I-a)はアルコキシから選択され、官能基(V-b)はエステル基から選択される;
- 官能基(I-a)はエステル基から選択され、官能基(V-b)は、ヒドロキシ、カルボン酸基およびエステル基から選択される;
- 官能基(I-a)はジオキソラノン基から選択され、官能基(V-b)は第一級または第二級アミノから選択される;
- 官能基(I-a)はハロゲン化物官能基から選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はチオール官能基から選択され、官能基(V-b)は、炭素-炭素二重結合、カルボン酸官能基およびイソシアナトから選択される;
- 官能基(I-a)はヒドロキシルアミンから選択され、官能基(V-b)はアルデヒドから選択される;
- 官能基(I-a)はオキサゾリノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はアジリジノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸およびヒドロキシから選択される;
- 官能基(I-a)はイミノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はカルボジイミノから選択され、官能基(V-b)はカルボン酸から選択される;
- 官能基(I-a)はグリコール基から選択され、官能基(V-b)はカルボン酸官能基から選択される;
- 官能基(I-a)はヒドラジドから選択され、官能基(V-b)はアルデヒドから選択される;
- 官能基(I-a)はアルデヒドから選択され、官能基(V-b)は、ヒドロキシ、アセトアセチル、ヒドロキシルアミンおよびヒドラジドから選択される;
- 官能基(I-a)はケトンから選択され、官能基(V-b)はヒドロキシから選択される。
【0122】
好ましくは、ラテックスポリマー(I)上の官能基(i-a)とシラン化合物(V)の官能基(V-b)との反応によって形成される結合は、熱可逆性である。
【0123】
1つの末端シラン官能基(III-a)および少なくとも1つの追加の官能基(III-b)を含むシラン化合物(III):
本発明によれば、1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含む任意のシラン化合物(III)を使用することができる。シラン化合物(III)は、硫黄加硫が使用されなくても、最終浸漬成形品のエラストマーフィルムが所望の機械的性質を示すことを確保し得る。
【0124】
熱可逆性結合(III-c)は、ジスルフィド、テトラスルフィド、カーボネート、ウレア、チオウレア、エステル、β-ヒドロキシエステル、チオエステル、β-ヒドロキシアミン、β-ヒドロキシチオエーテル、アミド、ウレタン、エナミン、イミン、ヘミアセタール、アセタール、ヘミケタール、ケタール、ボロネートエステル、シロキサン、オキシム、アシルヒドラゾン、アルドール、チウラムジスルフィドおよびトリチオカーボネートからなる群から選択され得る。
【0125】
本発明によれば、シラン化合物(III)は下記式の構造を有し得る:
【化7】
式中、
は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ヒドロカルビルおよびそれらの組み合わせから選択され;
は、直鎖または分岐のC-C20アルカンジイル、環状C-C20のアルキルもしくはアルケニル、またはアリーレンジイル、好ましくは直鎖のC-C20アルカンジイルであり;
Yは官能基(III-b)である。
【0126】
官能基(III-b)は、好ましくはエポキシ、チオール、ヒドロキシ、ヒドロキシルアミン、第一級または第二級アミノ、イソシアナト、オキサゾリノ、アジリジノ、イミノ、カルボジイミド、グリコール、エステル、アセトキシ、カルボン酸、ジオキソラノン、ヒドラジド、アルデヒド、ケトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。シラン化合物(III)の官能基(III-b)は、上述のように保護されてもよい。
【0127】
好適なシラン化合物(III)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン)、ジアルコキシ(3-グリシジルオキシプロピル)アルキルシラン、3-グリシドキシプロピルジアルキルアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ヒドロキシメチルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)フラン、ノルボネニルトリアルコキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリアルコキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シアノメチル[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリアルコキシシランおよびそれらの組み合わせから選択することができる。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基およびエトキシ基から選択され、より好ましくはエトキシ基から選択される。
【0128】
好ましくは、シラン化合物(III)は、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)フラン、ノルボネニルトリエトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリエトキシシリルブチルアルデヒド、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0129】
本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載の本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80~99.9重量%、好ましくは85~99.9重量%、より好ましくは90~99.9重量%、さらにより好ましくは92~99.8重量%、最も好ましくは95~99.8重量%のラテックスポリマー(I)を含み得る。したがって、ラテックスポリマー(I)の粒子の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、80重量%、82重量%、85重量%、86重量%、88重量%、90重量%、92重量%、94重量%、または95重量%であり得る。ラテックスポリマー(I)の粒子の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、99.9重量%、99.8重量%、99.5重量%、99.2重量%、99重量%、98重量%、97重量%、または96重量%であり得る。本発明のポリマーラテックス組成物は、本明細書に記載の本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、好ましくは0.1~18重量%、より好ましくは0.1~15重量%、さらにより好ましくは0.1~12重量%、最も好ましくは0.1~10重量%のシラン化合物(III)を含み得る。シラン化合物(III)の量の下限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、または3重量%であり得る。シラン化合物(III)の量の上限は、本明細書に記載される本発明のラテックスポリマー(I)の粒子およびシラン化合物の総重量に基づいて、20重量%、18重量%、15重量%、14重量%、12重量%、10重量%、9重量%、8重量%、または5重量%であり得る。当業者は、明示的に開示される下限および上限のいずれかによって形成される任意の範囲が本明細書において明示的に開示されることを理解するであろう。
【0130】
本発明によれば、ラテックスポリマー(I)は、上述のような水性乳化重合によって調製される。シラン化合物(II)またはシラン化合物(III)は、例えば本発明のポリマーラテックスからエラストマーフィルムを含む物品を形成する前の任意の適切な段階で、ラテックスポリマー(I)の粒子を含む得られたポリマーラテックスに添加される。例えば、シラン化合物(II)またはシラン化合物(III)は、浸漬成形組成物に調合する前または後に、ラテックスポリマー(I)を含むポリマーラテックスに添加することができる。シラン化合物(V)についても同様である。シラン化合物(V)は、例えば、本発明のポリマーラテックスからエラストマーフィルムを含む物品を形成する前、ならびにシラン化合物(II)を添加する前または添加した後の任意の適切な段階で、ラテックスポリマーの粒子を含む得られたポリマーラテックスに添加することができる。
【0131】
ラテックスポリマー(I)上の官能基(I-a)およびシラン化合物(III)の官能基(III-b)は、ラテックスポリマー(I)上の官能基(I-a)およびシラン化合物(V)の官能基(V-b)の組み合わせについて上述した組み合わせを提供するように選択することができる。
【0132】
本発明のポリマーラテックス組成物は、多価カチオンをさらに含んでもよい。好適な多価カチオンは、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは酸化鉄などの金属酸化物であってもよい。
【0133】
ラテックス組成物の調製
本発明はさらに、本発明のポリマーラテックス組成物の調製方法に関する。本方法は、乳化重合プロセスにおいて、重合後に官能基(I-a)を与える少なくとも1種のモノマーを含むラテックスポリマー(I)のためのエチレン性不飽和モノマーを含む組成物を重合させて、官能基(I-a)を含むラテックスポリマー(I)の粒子を含むラテックスを得ること;および、少なくとも2つの末端シラン官能基(II-a)および熱可逆性結合(II-b)を含むシラン化合物(II)を添加すること、または、1つの末端シラン官能基(III-a)と、ラテックスポリマー(I)の官能基(I-a)と熱可逆性結合(III-c)を形成することができる少なくとも1つの追加の官能基(III-b)とを含むシラン化合物(III)を添加すること;を含む。
【0134】
任意に、1つの末端シラン官能基(V-a)と、ラテックスポリマー(I)の粒子の官能基(I-a)と反応性である少なくとも1つの追加の官能基(V-b)とを含む化合物(V)を、シラン化合物(II)の添加前、添加中または添加後に添加することができる。ラテックスポリマー(I)、シラン化合物(II)、シラン化合物(III)、シラン化合物(IV)、シラン化合物(V)および上述のそれらの相対量に関する全ての変更を使用することができる。
【0135】
浸漬成形品の製造のための調合ラテックス組成物:
本発明のポリマーラテックス組成物は、浸漬成形プロセスに特に適している。したがって、本発明の一態様によれば、ポリマーラテックス組成物は、浸漬成形プロセスで直接使用することができる硬化性ポリマーラテックス調合組成物を製造するために調合される。再現可能な良好な物理的フィルム特性を得るためには、薄い使い捨て手袋を製造するための浸漬のために、pH調整剤によって調合ポリマーラテックス組成物のpHをpH7~11、好ましくは8~10、より好ましくは9~10の範囲に調整することが望ましい。サポートされていないおよび/またはサポートされた再使用可能な手袋を製造するためには、pH調整剤によって調合ポリマーラテックス組成物のpHをpH8~10、好ましくは8.5~9.5の範囲に調整することが望ましい。調合ポリマーラテックス組成物は、本発明のポリマーラテックス組成物を含み、任意に、pH調整剤、好ましくはアンモニアまたはアルカリ水酸化物を含み、さらに任意に、酸化防止剤、顔料、TiO、シリカ系充填剤などの充填剤および分散剤から選択されるこれらの組成物に使用される通常の添加剤を含む。好適なシリカ系充填剤としては、ヒュームドシリカおよび沈降シリカが挙げられる。
【0136】
あるいは、本発明のポリマーラテックス組成物を調合するのに替えて、上記で規定したようなラテックスポリマー(I)を含むポリマーラテックスを、上記で規定したような調合工程の間または後に、上記で規定したように同じ手順で調合することができ、上記で規定したようなシラン化合物(II)および上記で規定したようなシラン化合物(III)を添加して、本発明の調合ラテックス組成物を提供することができる。さらに、上記で規定したようなシラン化合物(V)は、ポリマーラテックス(I)およびシラン化合物(II)を含むラテックスポリマー組成物の調合中または調合後に添加することができる。もちろん、ラテックスポリマー(I)、シラン化合物(II)、シラン化合物(III)、シラン化合物(IV)、シラン化合物(V)および上記のそれらの相対量に関する全ての変更を使用することができる。
【0137】
本発明による調合ポリマーラテックス組成物に従来の加硫システムを添加して、浸漬成形プロセスで使用することができ、例えば、チウラムおよびカルバメートおよび酸化亜鉛などの促進剤と組み合わせて硫黄を添加して硬化性にすることができる。あるいは、またはそれに加えて、化学的架橋を達成するために、ラテックス粒子上の官能基と反応するのに適した、例えば多価カチオンまたは他の多官能性有機化合物などの架橋剤成分を添加してもよい。好ましくは、多価カチオンおよび/またはシリカ系充填剤を本発明によるラテックス組成物に添加することができる。好適な多価カチオンとしては、金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄が挙げられる。
【0138】
しかしながら、本発明の調合ラテックス組成物は硫黄加硫剤および硫黄加硫促進剤を含まないことができ、本発明のポリマーラテックス化合物は依然として硬化可能であり、必要とされる引張特性を有する浸漬成形品を提供することが、本発明の特定の利点である。追加の架橋剤成分として多価カチオン、例えばZnOを使用して、特に0.1mm以下、好ましくは0.01~0.1mm、より好ましくは0.03~0.08mmのフィルム厚さを有する非常に薄いエラストマーフィルムの機械的性質を適切に調整することが好ましい。
【0139】
適切には、多価カチオンは、ラテックスポリマー(I)の粒子、シラン化合物(II)またはシラン化合物(III)および存在する場合にはシラン化合物(V)の総重量に基づいて、最大20重量%の量で存在し得る。
【0140】
工業用手袋のような一定の重荷重用途では、本発明のポリマーラテックスの自己架橋特性に加えて、浸漬成形品の機械的強度をさらに増加させるために、上記のような従来の硫黄加硫システムを使用することが有利であり得る。
【0141】
浸漬成形品の製造方法:
浸漬成形ラテックス物品を製造するための適切な方法では、まず、最終物品の所望の形状を有する型を、金属塩の溶液を含む凝固剤浴中に浸漬する。凝固剤は、通常、水、アルコールまたはそれらの混合物中の溶液として使用される。凝固剤の具体的な例として、金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛および塩化アルミニウムのような金属ハロゲン化物;硝酸カルシウム、硝酸バリウムおよび硝酸亜鉛のような金属硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウムのような金属硫酸塩;ならびに酢酸カルシウム、酢酸バリウムおよび酢酸亜鉛のような酢酸塩であり得る。最も好ましいのは、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムである。凝固剤溶液は、型の湿潤挙動を改善するために添加剤を含有する可能性もある。
【0142】
その後、型を浴から取り出し、任意に乾燥させる。次いで、このような処理された型は、本発明による調合ラテックス組成物に浸漬される。これにより、ラテックスの薄膜が型表面に凝固する。あるいは、複数の浸漬工程、特に2つの浸漬工程を順次行うことによってラテックスフィルムを得ることも可能である。
【0143】
その後、型は、ラテックス組成物から取り出され、組成物から例えば極性成分を抽出しかつ凝固ラテックスフィルムを洗浄するために、任意に水浴に浸漬される。
【0144】
その後、ラテックスコーティングされた型は、任意に、好ましくは80℃未満の温度で乾燥される。
【0145】
最後に、ラテックスコーティングされた型を、40~180℃の温度、例えば40~160℃、40~150℃、または40~130℃の温度で熱処理し、および/またはUV放射線に曝露して、最終的なフィルム製品のための所望の機械的性質を得る。次に、最終ラテックスフィルムを型から取り出す。熱処理の所要時間は温度に依存し、典型的には1~60分である。温度が高いほど、必要な処理時間は短くなる。
【0146】
代替として、切断およびシールプロセスが使用されてもよい。第1のステップにおいて、ポリマーラテックスの連続エラストマーフィルムは例えば、キャスティングプロセス、ならびに加熱および/またはUV硬化による任意の硬化によって製造される。次の段階では、2つの別個の連続エラストマーフィルムを重ね並べ、次いで、重ね並べられた連続エラストマーフィルムを予め選択された形状に切断してまたは打ち抜いて、予め選択された形状のエラストマーフィルムを重ね合わせた2つの層を得る。エラストマーフィルムの重ね合わされた層は、重ね合わされた層の周囲の少なくとも予め選択された部分において互いに接合されて、エラストマー物品は形成される。一緒に接合することは、好ましくはヒートシールおよび溶接から選択される熱的手段を使用することによって、もしくは接着によって、または加熱および接着の組み合わせによって行うことができる。
【0147】
本発明は、本発明のポリマーラテックス組成物または本発明の調合ラテックス組成物を用いて製造される物品に関する。
【0148】
本発明は、外科用手袋、検査用手袋、コンドーム、カテーテル、バルーン、チューブ、歯科用ダムおよびエプロンなどのヘルスケアデバイス、またはすべての異なる種類の工業用および家庭用手袋から選択されるラテックス物品に特に適用可能である。
【0149】
さらに、本発明のポリマーラテックスは、基材、好ましくは布基材のコーティングおよび含浸にも使用することができる。それによって得られる適切な製品は、布支持手袋および予備成形ガスケットである。
【0150】
本発明を、下記の実施例を参照してさらに説明する。
【実施例
【0151】
実施例では、下記略語を使用する。
MAA = メタクリル酸
Bd = ブタジエン
ACN = アクリロニトリル
GMA = グリシジルメタクリレート
tDDM = tert-ドデシルメルカプタン
NaEDTA = エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩
ZnO = 酸化亜鉛
TiO = 二酸化チタン
TS = 引張強さ
EB = 破断点伸び
FAB = 破断時の力
【0152】
以下において、全ての部およびパーセンテージは特に明記しない限り、重量に基づく。
【0153】
実施例1:ラテックスAの調製
窒素パージしたオートクレーブに、オキシランを含まないシードラテックス(平均粒径36nm)2重量部(モノマー固形分に基づく)および水80重量部(シードラテックスを含むモノマー100重量部に基づく)を加え、30℃に加熱した。その後、水2重量部に溶解した0.01重量部のNaEDTAおよび0.005重量部のBruggolite FF6を加え、続いて水2重量部に溶解した0.08重量部の過硫酸ナトリウムを加えた。次いで、モノマー(ACN35重量部、Bd58重量部、MAA5重量部)を、tDDM0.6重量部と共に4時間かけて添加した。10時間かけて、2.2重量部のドデシルベンゼンスルホネートナトリウム、0.2重量部のピロリン酸四ナトリウムおよび22重量部の水を添加した。8重量部の水中の0.13重量部のBruggolite FF6の共活性化剤供給物を9時間かけて添加した。温度を95%の転化率まで30℃に維持し、全固形分を45%にした。ジエチルヒドロキシルアミンの5%水溶液0.08重量部の添加によって重合を短時間停止させた。水酸化カリウム(5%水溶液)を用いてpHをpH7.0に調整し、残留モノマーを60℃で真空蒸留により除去した。0.5重量部のウィングステーL型酸化防止剤(水中60%分散液)を原料ラテックスに追加し、水酸化カリウムの5%水溶液の追加によりpHを8.0に調整した。
【0154】
実施例2:ラテックスBの調製
窒素パージしたオートクレーブに、100重量部のモノマーに対して185重量部の水に溶解した2.0重量部のジフェニルオキシドジスルホネートを入れ、70℃の温度に加熱した。0.1重量部のtDDMおよび0.05重量部のNaEDTAを、0.7重量部のペルオキソ二硫酸アンモニウム(12%水溶液)と共に、アリコート添加で最初の装入物に添加した。次に、45.4重量部のBd、14.6重量部のACN、および50重量部の水に溶解した5.0重量部のジフェニルオキシドジスルホネートの溶液を、6.5時間かけて添加した。40重量部のGMAの添加を1時間後に開始し、6.5時間かけて添加した。モノマーの添加後、温度を70℃に維持した。重合を99%の転化率まで維持した。反応混合物を室温に冷却し、フィルタースクリーン(90μm)を通してふるい分けした。
【0155】
浸漬ラテックス例の調製
ラテックスの調合と成熟
シントマー社(マレーシア)から市販されているXNBRグレードのラテックスを、浸漬例を通して使用した。連続的に撹拌しながら、ゴム100部当たりの部数(phr)で、表1および2に従ってそのラテックスに追加することによってラテックス配合物を調合した。使用された促進剤は、ジエチルジチオカルバメート亜鉛である。添加剤A1は(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランであり、添加剤A2はビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィドであり、添加剤A3はビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドである。次いで、撹拌下の調合ラテックスを、5%水酸化カリウム水溶液を添加することによってpH10.0に調整し、18%の全固形分に希釈し、25℃で少なくとも16時間連続撹拌下で熟成させた。
【0156】
スペード浸漬
スペード浸漬は、手動または自動浸漬機を用いて行った。浸漬プレート型を70℃の空気循環オーブン中で調整し、18~20重量%の硝酸カルシウム水溶液と2~3重量%の炭酸カルシウムを含む凝固剤溶液に60℃で1秒間浸漬した。次いで、浸漬プレート型を、75~85℃に設定されたオーブン内に一定時間置いた後、60~65℃の温度の各ラテックスに浸漬プレート型を一定時間浸漬し、ラテックス浸漬されたプレート型を得た。次いで、ラテックス浸漬されたプレート型を、100℃で1分間オーブン中でゲル化し、50~60℃で1分間脱イオン水浸出タンク中に浸出し、続いて120℃で20分間オーブン中で硬化させた。最後に、硬化したラテックスをプレート型から手作業で剥離した。硬化ラテックスを、他の物理的試験の前に、23℃(±2)、相対湿度50%(±5)で、少なくとも16時間、気候室内で調整した。
【0157】
フォーマー浸漬
浸漬は、手動または自動浸漬機を用いて行った。ライナー手袋をフォーマーに装着し、フォーマーを70℃の空気循環オーブン中で調整し、18~20重量%の硝酸カルシウム水溶液と2~3重量%の炭酸カルシウムを含む凝固剤溶液中に60℃で1秒間浸漬した。次に、フォーマーを75~85℃に設定したオーブン中に一定時間置き、60~65℃の温度の各ラテックスにフォーマーを一定時間浸漬し、引き抜き、回転させたままにして、液滴が形成されないようにしてラテックス浸漬されたフォーマーを得た。次いで、ラテックス浸漬されたフォーマーを、100℃で1分間オーブン中でゲル化し、フィルムビーズ化し、50~60℃で1分間脱イオン水浸出タンク中に浸出し、続いて、120℃で20分間オーブン中で硬化させた。最後に、硬化したラテックス手袋を手作業でフォーマーから剥離した。手袋を、他の物理的試験の前に、23℃(±2)、相対湿度50%(±5)で、少なくとも16時間、気候室内で調整した。
【0158】
引張特性の測定(ASTM D6319およびEN 455)
最終の手袋またはフィルムの引張特性を、ASTM D6319およびEN455試験方法に従って試験した。各ラテックス化合物から調製した手袋の掌領域またはフィルムからダンベル試験片を切り出した。非エージングおよびエージング試験片(「エージング」は、引張特性を試験する前に100℃で22時間オーブンに入れた試験片を指す)を、伸縮計での試験の前に23±2℃および50±5%相対湿度で24時間調整した。フィルム厚(mm)は、0.060と0.070mmの間の典型的なフィルム厚値で測定した。報告された引張強度(TS)は、試験片を破断まで延伸する際の測定された最大引張応力に対応する。破断伸び(EB)は、破断が生じる伸びに対応する。破断時の力(FAB)は、破断が生じる力に対応する。一方、弾性率100、300および500は、100、300および500%の伸びで試験片を延伸する際に測定された引張応力に対応する。
【0159】
応力緩和時間
応力緩和時間実験は、DMA Q800装置を用いた引張モードにより、特定の温度(115℃、135℃および155℃)での歪み制御下で行った。約20mm×6mm×0.06mmの測定フィルム試料を、0.01N未満の静的力で引張クランプ上に取り付けた。その後、軸方向の力を0Nに調整し、器具のチャンバを3分以内に目標温度の少なくとも95%まで加熱し、目標温度で約5分間平衡化させた。次いで、各試料を瞬間的な2%の歪みに供した。応力減衰は、一定の歪みを維持しながら、少なくとも20分間監視した。応力減衰が初期値の1/eに達するのに要する期間は、応力緩和時間である。
【0160】
耐久性の測定
試験されるフォーマーの浸漬された手袋は、人差し指と中指との間の股から親指の下のカフス線まで直線ではさみを用いて切断された。親指および指の試料カットは、親指の先端の点まで外側縁部に沿って維持された。試料を開き、人差し指の先端を自動応力緩和装置のトップジョーに取り付け、クランプを閉じた。試料の下側領域を下側クランプのジョー間に取り付け、クランプを閉じた。試料の自由な「翼」を、マスキングテープを用いて試験装置のサイドバーに取り付けた。試験装置を、pH4のクエン酸水溶液を含有するビーカー中に配置し、親指と人差し指との間の股部を酸水溶液中に完全に浸漬した。試験装置をゼロ(0)に設定し、試験を開始した。試験は25℃で行った。測定は試料が破断したときに自動的に停止し、破断点に達するのに必要なサイクル数を記録した。試験を5回繰り返して平均を計算し、新たなクエン酸水溶液を各試験に使用した。報告された耐久性(分単位)は、平均サイクル数(試料破損を引き起こすのに必要な平均サイクル数)を267(1時間あたりの総サイクル数)で割って60を掛けたものに対応する。試験は、300分後または破断したときに停止した。疲労耐久性は、60分以上であることが好ましい。性能レベルは、60分未満の場合は「失敗」、60~120分の場合は「低」、120~240分の場合は「中」、240分を超える場合は「良」に分類できる。
【0161】
表1(実施例1~9および比較例CE1)に、ラテックス調合配合物およびスペード浸漬のための熟成を示す。
【0162】
表1:ラテックス調合配合物およびスペード浸漬のための熟成
【表1】
【0163】
表2(実施例10~15および比較例2)に、ラテックス調合配合物およびフォーマー浸漬のための熟成を示す。
【0164】
表2:ラテックス調合配合物およびフォーマー浸漬のための熟成
【表2】
【0165】
上記の調製されたままのフィルムの引張データを測定し、表3~6にまとめた。
【0166】
表3:例1~9および比較例1の非エージング結果
【表3】
【0167】
表4:例1~9および比較例1のエージング結果
【表4】
【0168】
比較例(比較例1)は、従来の硫黄および促進剤を用いた硬化ラテックスである。表3(非エージング試料)に示されるように、シランを含有する全ての試料(例1~9)の引張特性は、比較例1に匹敵する。表4に示されるエージング試料について、シラン(例1~9)を含有するすべての試料は比較例1と比較して、より軟らかく、すなわち、より低い弾性率500(M500)であり、より高い引張強度(TS)およびより高い破断伸び(EB)を有する。
【0169】
例1および8は添加剤A1単独を使用した例を示し、一方、例2および7は、添加剤A2単独を使用した例を示した。両方のシランを、含有量(phr)を増加させて使用した場合、比較例1に匹敵する引張特性を示した。
【0170】
例3および9に示されるように、添加剤1を添加剤2または添加剤3と1:1の比で組み合わせて使用した場合、両方の例は同等のTSを示し、EBおよびより低いM500に関して改善を示した。
【0171】
表5:例10~15および比較例2の非エージング結果
【表5】
【0172】
表6:例10~14および比較例2のエージング結果
【表6】
【0173】
比較例2は、促進剤を含まないラテックス配合物を使用する。表5(非エージング試料)に示されるように、シランを含有する全ての試料(例10~15)の引張特性は、比較例2に匹敵する。表6に示されるように、エージング試料について同様の挙動が観察され、シランを含有する全ての試料(実施例10~15)は、より柔らかく、より高いEBを有する。実施例11に示される化合物(II)単独の使用は同等の引張強度を有するが、最も高いEBおよび最も軟らかい特徴を与えた。
【0174】
上記の調製されたままのフィルムの緩和時間(τ)を測定し、表7にまとめた。
【0175】
表7:スペード浸漬からの試料の応力緩和時間
【表7】
【0176】
応力緩和時間(τ)は、ラテックスポリマーが所与の温度で一定の歪み下でその応力を緩和するのに必要な時間である。より速い(またはより短い)τは、架橋および絡み合いのポリマーネットワークの安定性がより低いことを示す。表7に示すように、例1~4および例7~9の応力緩和時間は、いずれも比較例1に比べて応力緩和時間が速い。同時に、例1~4および例7~9の引張性能が維持される。添加剤A2または添加剤A3と組み合わせて添加剤A1を含む試料は、最も速い応力緩和時間を示す。
【0177】
上記の調製されたままのフィルムの耐久性結果を測定し、表8にまとめた。
【0178】
表8:例10~15および比較例2の耐久性結果
【表8】
【0179】
表8に示す耐久性の結果から、例10、13および14について、0.7phrの添加剤A1の添加は良好な耐久性を与えた。添加剤A2の使用は、耐久性能を低下させない。添加剤A1を単独でまたは添加剤A2と組み合わせて使用する場合、促進剤を含まないラテックス配合物(比較例2)と同様の性能が達成される。驚くべきことに、単独で使用される場合の添加剤A2の使用(例11)は、中程度レベルの耐久性能を有する。添加剤A3単独の使用は低いが、好ましい60分の耐久時間よりも長い。
【国際調査報告】