(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】蒸気療法のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/04 20060101AFI20240228BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240228BHJP
A61B 1/307 20060101ALI20240228BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20240228BHJP
A61B 8/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61B18/04
A61B1/00 623
A61B1/307
A61B1/00 530
A61B8/12
A61B8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556934
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 US2022020635
(87)【国際公開番号】W WO2022197860
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522260562
【氏名又は名称】フランシス メディカル, インク.
【氏名又は名称原語表記】FRANCIS MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ホエイ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘースティングズ,ロジャー,ノエル
(72)【発明者】
【氏名】フレンチ,アンソニー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュロム,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャーク,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アスケガード,グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ネーゲリ,チャド
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
4C601
【Fターム(参考)】
4C160KL10
4C160MM53
4C160MM54
4C161AA15
4C161CC06
4C161GG15
4C161HH56
4C161LL01
4C601FE01
4C601FE07
4C601FF11
4C601GA20
4C601GA25
(57)【要約】
幾つかの特徴のいずれかを含んでよい蒸気送達システムを提供する。この蒸気送達システムの一特徴は、凝縮性蒸気エネルギを組織(例えば、前立腺)に印加して、前立腺を縮ませる、損傷する、又は変性させることが可能なことである。幾つかの実施形態では、蒸気送達システムは、前立腺被膜の検出、針の追跡、及び治療の追跡を含む安全機能を含んでよい。前立腺組織の安全且つ効果的な治療の方法を紹介する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の前立腺のリアルタイム画像を提供するように構成された画像化システムと、
前記患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針であって、前記画像化システムからの前記リアルタイム画像における前記蒸気送達針の可視性を高めるために振動するように構成されている前記蒸気送達針と、
前記療法針と結合されて、前記蒸気送達針を前記導入シャフトから尿道前立腺部に通して前記患者の前立腺内まで前進させるように構成された前進機構と、
を含む前立腺治療システム。
【請求項2】
前記蒸気送達針と結合された磁石を更に含み、前記前進機構は、前記磁石を動かして前記蒸気送達針を前進及び後退させるように構成されたプッシュプルソレノイドドライバを含む、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項3】
前記ソレノイドドライバは、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項2に記載の前立腺治療システム。
【請求項4】
前記導入シャフト上又は前記導入シャフト内に配置された圧電クリスタルを更に含み、前記圧電クリスタルは、信号発生器と電気的に結合されて、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項5】
前記蒸気送達針上又は前記蒸気送達針内に配置された圧電クリスタルを更に含み、前記圧電クリスタルは、信号発生器と電気的に結合されて、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項6】
前記導入シャフト上又は前記導入シャフト内に配置されたバルーンを更に含み、前記バルーンは供給管腔と作用的に結合されており、前記バルーンが急速に膨れたりしぼんだりすることが、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項7】
前記蒸気送達針上又は前記蒸気送達針内に配置されたバルーンを更に含み、前記バルーンは供給管腔と作用的に結合されており、前記バルーンが急速に膨れたりしぼんだりすることが、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項8】
前記導入シャフト上又は前記導入シャフト内に配置された形状記憶フォイルを更に含み、前記形状記憶フォイルは、信号発生器と電気的に結合されて、前記信号発生器からの電流が前記形状記憶フォイルを通ったときに振動することにより、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項9】
前記蒸気送達針上又は前記蒸気送達針内に配置された形状記憶フォイルを更に含み、前記形状記憶フォイルは、信号発生器と電気的に結合されて、前記信号発生器からの電流が前記形状記憶フォイルを通ったときに振動することにより、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項10】
前記導入シャフト上又は前記導入シャフト内に配置されたソレノイドコイルを更に含み、前記ソレノイドコイルは、前記導入シャフト又は前記蒸気送達針を打つことにより、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項11】
前記蒸気送達針上又は前記蒸気送達針内に配置されたソレノイドコイルを更に含み、前記ソレノイドコイルは、前記導入シャフト又は前記蒸気送達針を打つことにより、蒸気送達中に前記蒸気送達針を振動させるように構成されている、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項12】
前記画像化システムはドップラー超音波画像化システムを含む、請求項1に記載の前立腺治療システム。
【請求項13】
患者の前立腺を治療する方法であって、
前記患者内に療法装置のシャフトを経尿道的に挿入するステップと、
療法針を、前記シャフトから前記患者の尿道前立腺部に通して前記患者の前記前立腺内まで前進させるステップと、
前記療法針から前記前立腺内に療法を送達するステップと、
前記療法針を振動させるステップと、
前記振動している療法針をリアルタイム画像化下で可視化するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記振動している療法針を可視化する前記ステップは更に、前記振動している療法針のリアルタイムドップラー超音波画像を提供することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
療法を送達する前記ステップは更に、前記療法針から前記前立腺内に蒸気療法を送達することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記シャフトから前記療法針を前進させる前記ステップは更に、前記療法針に磁気結合されたソレノイド針ドライバをアクチュエートすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記療法針を前記ソレノイド針ドライバで振動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記シャフト上又は前記シャフト内に配置された圧電クリスタルを信号発生器で振動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記療法針上又は前記療法針内に配置された圧電クリスタルを信号発生器で振動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記シャフト上又は前記シャフト内に配置されたバルーンを信号発生器で急速に膨らませたり、しぼませたりすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記療法針上又は前記療法針内に配置されたバルーンを信号発生器で急速に膨らませたり、しぼませたりすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記シャフト上又は前記シャフト内に配置された形状記憶フォイルを信号発生器で振動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記療法針を振動させる前記ステップは更に、前記療法針上又は前記療法針内に配置された形状記憶フォイルを信号発生器で振動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前立腺治療装置であって、
前記患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、
前記蒸気送達針上に配置された1つ以上の電極と、
前記1つ以上の電極に電気的に接続されて、前記蒸気送達針の長さに沿って延びるように構成された1つ以上のリード線と、
前記療法針と結合されて、前記蒸気送達針を前記導入シャフトから尿道前立腺部に通して前記患者の前立腺内まで前進させるように構成された前進機構と、
前記前進機構の近位側に配置されたPCBであって、前記1つ以上のリード線のための出口穴と、前記1つ以上のリード線を、前記前進機構から近位方向に延びるフレキシブルワイヤリード線に電気的に結合するように構成されたPCT相互接続と、を含む前記PCBと、
を含む前立腺治療装置。
【請求項25】
前記1つ以上のリード線は、前記1つ以上のリード線が前記出口穴から延びる場所と、前記1つ以上のリード線が前記PCT相互接続に接続される場所と、の間にたるみを含む、請求項24に記載の前立腺治療装置。
【請求項26】
前記たるみは、蒸気送達中の前記1つ以上のワイヤリード線と前記蒸気送達針との熱膨張の差に対応するために前記1つ以上のワイヤリード線に与えられている、請求項25に記載の前立腺治療装置。
【請求項27】
前立腺治療装置であって、
前記患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、
前記導入シャフト及び前記蒸気送達針と結合された装置ボディと、
前記前立腺治療装置を操作するための1つ以上のコントローラを含むハンドルであって、前記装置ボディから取り外し可能であって、前記ハンドルが前記装置ボディに取り付けられているときにも、前記装置ボディから取り外されているときにも、前記前立腺治療装置の動作を制御するように構成されている前記ハンドルと、
を含む前立腺治療装置。
【請求項28】
前記ハンドルは蒸気の送達を制御するように構成されている、請求項27に記載の前立腺治療装置。
【請求項29】
前記ハンドルは生理食塩水の送達を制御するように構成されている、請求項27に記載の前立腺治療装置。
【請求項30】
前記ハンドルは、蒸気送達針の前進及び後退を制御するように構成されている、請求項27に記載の前立腺治療装置。
【請求項31】
患者台と、
水平方向調節レールと、
前記水平方向調節レールと結合された第1のスタビライザアームであって、前記第1のスタビライザアームは、前記第1のスタビライザアームが任意の所望の曲がり又は姿勢に調節可能である、ロックされていない状態と、前記第1のスタビライザアームの前記曲がり又は姿勢が定位置でロックされている、ロックされた状態と、を含み、前記第1のスタビライザアームは、前記水平方向調節レールに沿って、前記患者台に対して軸方向に調節可能である、前記第1のスタビライザアームと、
前記水平方向調節レールと結合された第2のスタビライザアームであって、前記第2のスタビライザアームは、前記第2のスタビライザアームが任意の所望の曲がり又は姿勢に調節可能である、ロックされていない状態と、前記第2のスタビライザアームの前記曲がり又は姿勢が定位置でロックされている、ロックされた状態と、を含み、前記第2のスタビライザアームは、前記水平方向調節レールに沿って、前記患者台に対して軸方向に調節可能である、前記第2のスタビライザアームと、
前記第1のスタビライザアームと結合された画像化システムと、
前記第2のスタビライザアームと結合された療法システムと、
を含む手術療法システム。
【請求項32】
前記療法システムは蒸気療法システムを含む、請求項31に記載の手術療法システム。
【請求項33】
前記画像化システムは経直腸画像化プローブを含む、請求項31に記載の手術療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている、2021年3月16日に出願された米国特許仮出願第63/161,857号、件名「蒸気療法のシステム及び方法(VAPOR THERAPY SYSTEMS AND METHODS)」の優先権を主張するものである。
文献の引用
【0002】
特許及び特許出願を含む、本明細書で言及される全ての発行物は、個々の発行物のそれぞれが、参照によって組み込まれるものとして具体的且つ個別に示されているのと同程度に、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている。
【0003】
本発明は、最小侵襲方式による前立腺がんの治療のための装置及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ヒトの男性の前立腺は、3つのゾーン、即ち、辺縁域、移行域、及び中心域に分けることができる。辺縁域(PZ)は、男性の前立腺の体積の約70%を含む。この、前立腺の後面の被膜下部分は遠位尿道を囲んでおり、70~80%のがんが辺縁域の組織で発生する。中心域(CZ)は、射精管を囲んでおり、前立腺の体積の約20~25%を含む。中心域は、しばしば炎症過程の部位である。移行域(TZ)は、良性前立腺過形成(BPH)が発現する部位であり、通常の前立腺の場合には腺要素の体積の約5~10%を含むが、BPHの場合にはそのような体積の最大80%を構成しうる。移行域は、2つの外側前立腺葉と、尿道周囲腺領域とを含む。移行域の周囲には天然バリアが存在する。即ち、それらは、尿道前立腺部、前部線維筋性間質(FS)、及び移行域と辺縁域との間の線維面(FP)である。前部線維筋性間質(FS)又は線維筋性域は主に線維筋性組織である。
【0005】
前立腺がんの約70~80%が前立腺の辺縁域で発生し、辺縁域の範囲内にとどまりうる。近年では、前立腺がんの局所療法への関心が高まっている。これは、生検でがんがみつかった筋肉領域だけを治療するものである。先行技術の局所療法治療(例えば、RFアブレーションエネルギを使用するもの)では、治療を辺縁域組織の範囲内に又は前立腺内の組織の範囲内にとどめることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前立腺治療システムが提供され、本システムは、患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、導入シャフトと結合されたカートリッジと、カートリッジ内に配置されて、凝縮性蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、カートリッジに取り外し可能に取り付けられるハンドルであって、蒸気送達機能を制御するためのアクチュエータを含み、導入シャフトが尿道内に挿入されている間はハンドルとして働くように、且つ、ハンドルが取り外されて導入シャフトスタビライザ装置に置き換えられた場合はリモートコントローラとして働くように設計されてよいハンドルと、蒸気発生器と連通していて、導入シャフト内に摺動可能に配置された針と、針に取り付けられた磁石と、磁石の周囲に配置されたソレノイドアクチュエータであって、組織内に展開し、一定速度で又は間欠的なステップで前進し、シャフト内に後退する、針の制御された動きを実現するソレノイドアクチュエータと、針上及びシャフト上に配置されたセンサと、療法中に前立腺のリアルタイム画像を提供する外部経直腸超音波システム(TRUS)と、センサデータを、針先端の位置及び組織内での進行方向に変換し、この情報をTRUS画像上に表示する針ガイドシステム(NGS)と、蒸気を標的組織に安全且つ効果的に送達することを確実に行い、蒸気の送達が標的組織から外れるのを防ぐために、カートリッジ、ハンドル、及び外部コンソールに配置されて、互いに通信し、ユーザとも通信する電子機器群と、を含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、前立腺治療システムが提供され、本システムは、患者の前立腺のリアルタイム画像を提供するように構成された画像化システムと、患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針であって、画像化システムからのリアルタイム画像における蒸気送達針の可視性を高めるために振動するように構成されている蒸気送達針と、療法針と結合されて、蒸気送達針を導入シャフトから尿道前立腺部に通して患者の前立腺内まで前進させるように構成された前進機構と、を含む。
【0009】
幾つかの実施形態では、本システムは、蒸気送達針と結合された磁石を更に含み、前進機構は、磁石を動かして蒸気送達針を前進及び後退させるように構成されたプッシュプルソレノイドドライバを含む。
【0010】
幾つかの実施形態では、ソレノイドドライバは、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0011】
幾つかの実施形態では、本システムは、導入シャフト上又は導入シャフト内に配置された圧電クリスタルを更に含み、圧電クリスタルは、信号発生器と電気的に結合されて、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0012】
別の実施形態では、本システムは、蒸気送達針上又は蒸気送達針内に配置された圧電クリスタルを更に含み、圧電クリスタルは、信号発生器と電気的に結合されて、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0013】
幾つかの実施例では、本システムは、導入シャフト上又は導入シャフト内に配置されたバルーンを含み、バルーンは供給管腔と作用的に結合されており、バルーンが急速に膨れたりしぼんだりすることが、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0014】
別の実施形態では、本システムは、蒸気送達針上又は蒸気送達針内に配置されたバルーンを含み、バルーンは供給管腔と作用的に結合されており、バルーンが急速に膨れたりしぼんだりすることが、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0015】
幾つかの実施例では、本システムは、導入シャフト上又は導入シャフト内に配置された形状記憶フォイルを含み、形状記憶フォイルは、信号発生器と電気的に結合されて、信号発生器からの電流が形状記憶フォイルを通ったときに振動することにより、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0016】
一実施形態では、本システムは、蒸気送達針上又は蒸気送達針内に配置された形状記憶フォイルを更に含み、形状記憶フォイルは、信号発生器と電気的に結合されて、信号発生器からの電流が形状記憶フォイルを通ったときに振動することにより、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0017】
幾つかの実施形態では、本システムは、導入シャフト上又は導入シャフト内に配置されたソレノイドコイルを含み、ソレノイドコイルは、導入シャフト又は蒸気送達針を打つことにより、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0018】
別の実施形態では、本システムは、蒸気送達針上又は蒸気送達針内に配置されたソレノイドコイルを含み、ソレノイドコイルは、導入シャフト又は蒸気送達針を打つことにより、蒸気送達中に蒸気送達針を振動させるように構成されている。
【0019】
幾つかの実施形態では、画像化システムはドップラー超音波画像化システムを含む。
【0020】
患者の前立腺を治療する方法が提供され、本方法は、患者内に療法装置のシャフトを経尿道的に挿入するステップと、療法針を、シャフトから患者の尿道前立腺部に通して患者の前立腺内まで前進させるステップと、療法針から前立腺内に療法を送達するステップと、療法針を振動させるステップと、振動している療法針をリアルタイム画像化下で可視化するステップと、を含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、振動している療法針を可視化するステップは更に、振動している療法針のリアルタイムドップラー超音波画像を提供することを含む。
【0022】
別の実施形態では、療法を送達するステップは更に、療法針から前立腺内に蒸気療法を送達することを含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、シャフトから療法針を前進させるステップは更に、療法針に磁気結合されたソレノイド針ドライバをアクチュエートすることを含む。
【0024】
一実施例では、療法針を振動させるステップは更に、療法針をソレノイド針ドライバで振動させることを含む。
【0025】
別の実施形態では、療法針を振動させるステップは更に、シャフト上又はシャフト内に配置された圧電クリスタルを信号発生器で振動させることを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、療法針を振動させるステップは更に、療法針上又は療法針内に配置された圧電クリスタルを信号発生器で振動させることを含む。
【0027】
一実施例では、療法針を振動させるステップは更に、シャフト上又はシャフト内に配置されたバルーンを信号発生器で急速に膨らませたり、しぼませたりすることを含む。
【0028】
別の実施形態では、療法針を振動させるステップは更に、療法針上又は療法針内に配置されたバルーンを信号発生器で急速に膨らませたり、しぼませたりすることを含む。
【0029】
幾つかの実施例では、療法針を振動させるステップは更に、シャフト上又はシャフト内に配置された形状記憶フォイルを信号発生器で振動させることを含む。
【0030】
更なる実施形態では、療法針を振動させるステップは更に、療法針上又は療法針内に配置された形状記憶フォイルを信号発生器で振動させることを含む。
【0031】
前立腺治療装置が提供され、本装置は、患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、蒸気送達針上に配置された1つ以上の電極と、1つ以上の電極に電気的に接続されて、蒸気送達針の長さに沿って延びるように構成された1つ以上のリード線と、療法針と結合されて、蒸気送達針を導入シャフトから尿道前立腺部に通して患者の前立腺内まで前進させるように構成された前進機構と、前進機構の近位側に配置されたPCBであって、1つ以上のリード線のための出口穴と、1つ以上のリード線を、前進機構から近位方向に延びるフレキシブルワイヤリード線に電気的に結合するように構成されたPCT相互接続と、を含むPCBと、を含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、1つ以上のリード線は、1つ以上のリード線が出口穴から延びる場所と、1つ以上のリード線がPCT相互接続に接続される場所と、の間にたるみを含む。
【0033】
別の実施形態では、たるみは、蒸気送達中の1つ以上のワイヤリード線と前記蒸気送達針との熱膨張の差に対応するために1つ以上のワイヤリード線に与えられている。
【0034】
前立腺治療装置が提供され、本装置は、患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、導入シャフト及び蒸気送達針と結合された装置ボディと、前立腺治療装置を操作するための1つ以上のコントローラを含むハンドルであって、装置ボディから取り外し可能であって、ハンドルが装置ボディに取り付けられているときにも、装置ボディから取り外されているときにも、前立腺治療装置の動作を制御するように構成されているハンドルと、を含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、ハンドルは蒸気の送達を制御するように構成されている。
【0036】
別の実施形態では、ハンドルは生理食塩水の送達を制御するように構成されている。
【0037】
幾つかの実施形態では、ハンドルは、蒸気送達針の前進及び後退を制御するように構成されている。
【0038】
手術療法システムが提供され、本システムは、患者台と、水平方向調節レールと、水平方向調節レールと結合された第1のスタビライザアームであって、第1のスタビライザアームは、第1のスタビライザアームが任意の所望の曲がり又は姿勢に調節可能である、ロックされていない状態と、第1のスタビライザアームの曲がり又は姿勢が定位置でロックされている、ロックされた状態と、を含み、第1のスタビライザアームは、水平方向調節レールに沿って、患者台に対して軸方向に調節可能である、第1のスタビライザアームと、水平方向調節レールと結合された第2のスタビライザアームであって、第2のスタビライザアームは、第2のスタビライザアームが任意の所望の曲がり又は姿勢に調節可能である、ロックされていない状態と、第2のスタビライザアームの曲がり又は姿勢が定位置でロックされている、ロックされた状態と、を含み、第2のスタビライザアームは、水平方向調節レールに沿って、患者台に対して軸方向に調節可能である、第2のスタビライザアームと、第1のスタビライザアームと結合された画像化システムと、第2のスタビライザアームと結合された療法システムと、を含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、療法システムは蒸気療法システムを含む。
【0040】
別の実施形態では、画像化システムは経直腸画像化プローブを含む。
【0041】
本発明のよりよい理解が得られるように、且つ、本発明が実際にはどのように実施されうるかを示すために、ここからは、添付図面を参照しながら、あくまで非限定的な例として、幾つかの好ましい実施形態を説明する。但し、添付図面の類似の実施形態の全てにわたり一貫して、類似の参照符号は対応する特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2B】TRUSプローブ、蒸気送達針の先端、及び蒸気送達装置のシャフトの遠位端部の位置を追跡するセンサ及び送信器のセットの一実施形態を示す。
【
図2D】針先端から送達装置針の壁内の穴を通るリード線を含む蒸気送達針の一実施形態を示す。
【
図2E】NGSコイルを含む蒸気送達針の一実施形態である。
【
図2F】針先端が前立腺被膜壁に接触したときの生体インピーダンス測定値の変化を周波数に対して示したチャートを示す。
【
図2H】センサリード線が蒸気送達針から出たところでセンサリード線の張力緩和を行う一実施形態を示す。
【
図2I】組織の抵抗及びキャパシタンスの電気モデルを示す。
【
図3D】蒸気送達装置のカートリッジから蒸気送達装置のハンドルを取り外し、そのハンドルをリモートコントローラとして使用する一実施形態を示す。
【
図4B】ユーザが選択した位置で送達装置及びTRUSプローブを安定させることを可能にする、可撓でありロック可能であるアームの動作を示す。
【
図5C】蒸気送達装置の取り外し可能ハンドルの一実施形態を示す。
【
図6B】スタビライザアームが蒸気送達装置のカートリッジに取り付けられる様子を示す。
【
図7C】蒸気発生コイルをプリント回路基板にマウントする手法を含む、蒸気発生コイルの一実施形態を示す。
【
図8】加熱素子及びソレノイドの構成を示す、蒸気送達装置のカートリッジの一実施形態を示す。
【
図9B】蒸気送達針の先端の温度センサの実施例を示す。
【
図10G】超音波画像上の送達装置針の先端を明るくする実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
一般に、前立腺のがんを治療する一方法は、間質を通して加熱蒸気を前立腺の内部に導入することを含み、この蒸気は前立腺組織を制御可能にアブレーションする。この方法は、外来患者に行う処置として、蒸気を利用して、蒸気治療の1回ごとに50~600カロリーの熱エネルギを印加することが可能である(そして、この方法は、前立腺葉ごとに複数回の治療を想定する)。この方法は、尿道前立腺部を損傷することなく、且つ、前立腺の外側の組織を損傷することなく、前立腺組織の局所アブレーションを引き起こすことが可能である。
【0044】
本開示は、前立腺がんの治療に関し、特に、中心域又は移行域の前立腺組織をアブレーションすることなく、辺縁域の前立腺組織をアブレーションすることに関する。
【0045】
本システムは、水蒸気を含む蒸気媒体を送達する蒸気送達機構を含んでよい。本システムは、温度が少なくとも60~140℃である蒸気を供給するように構成された蒸気源を利用してよい。別の実施形態では、本システムは更に、1~30秒の範囲の時間にわたって蒸気を送達するように構成されたコンピュータコントローラを含む。
【0046】
幾つかの実施形態では、本システムは更に、蒸気とともに送達される、薬理作用物質又は他の化学物質又は化合物の源を含む。このような物質として、麻酔薬、抗生物質、又は毒素(ボトックス(登録商標)等)、又はがん組織細胞を治療することが可能な化学物質があり、これらに限定されない。更に、このような物質として、封止剤、粘着剤、接着剤、強力瞬間接着剤等があってよい。幾つかの実施形態では、超音波画像化下での蒸気の可視性を高めるために反響性又は無響性の物質が蒸気とともに送達されてよく、これは、例えば、画像上で針先端を見つけることに役立つ。例えば、空気等の気体は反響性である。
【0047】
幾つかの実施形態では、前立腺治療装置が提供されてよく、これは、患者内への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフトと、凝縮性蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、蒸気発生器と連通していて導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、アクチュエータと、を含み、アクチュエータは、蒸気送達針を、導入シャフト内の格納位置と、少なくとも一部分が導入シャフトの外側にある伸長位置との間で動かすことと、尿道前立腺部と前立腺被膜との間の任意の場所にある組織まで連続的に又は段階的に針を前進させたり、後退させたりすることと、を行うように構成されている。
【0048】
本開示は、組織をアブレーションするために蒸気を安全且つ効果的に送達することに関する。蒸気送達装置が、患者の前立腺への経尿道アクセスを行うように構成されたシャフトと、蒸気発生器と、1つ以上の蒸気送達ポートを含んでよい蒸気送達針と、を含んでよい。一実施形態では、がん組織又は前がん組織をアブレーションするために蒸気送達針の穴を通して蒸気が送達される。好ましい実施形態では、蒸気送達針は、尿道前立腺部を穿刺して、前立腺内の、蒸気が送達される1つ以上の部位まで前進するように構成されている。前立腺内の組織アブレーションのゾーン同士が部分的に重なり合うように複数の穿刺部位が間隔を空けて配置されてよく、ある部位に送達された蒸気が直前の穿刺部位のエントリーホールを通って外に出ることを可能にするほどには互いに近づかないように配置されてよい。
【0049】
より具体的には、本開示は、前立腺被膜を貫通することのないようにがん組織をアブレーションするために、前立腺内へ且つ前立腺全体にわたって、蒸気送達針を含む蒸気送達装置をナビゲートすることに関する。アブレーションの標的とされた組織に囲まれている部位に蒸気が送達される。蒸気送達装置上のセンサ、及びTRUS(経直腸超音波システム)プローブ上のセンサが、操作者に対して、針先端の位置をTRUS画像上に示す。超音波画像にスーパインポーズされたアニメーションが、針先端が尿道内の所与の場所から展開されているときの針先端のコンピュータで計算された軌道を示すことが可能である。先行技術の蒸気送達装置の場合、操作者は、針を展開して、蒸気が送達される標的部位まで前進させる際には送達装置を1箇所で固定的に保持することを必要とされる。送達装置がわずかに動いただけでも、そこからは標的組織にアクセスできない場所に針が送達されてしまう可能性がある。標的組織にアクセスするために、更なる針展開が必要になる可能性がある。尿道壁及び前立腺組織を貫通する穴が複数あって、特にそれらが密集している場合には、蒸気が隣の穴を通って外に出てしまい、標的組織の治療が不十分になる可能性がある。針展開後及び標的組織へのナビゲート中に操作者が送達装置を動かすと、組織を貫通してできた軌道が大きくなって、蒸気が近位側の尿道内に抜けてしまい、標的組織の治療が不十分になり、且つ尿道壁を損傷しかねない可能性がある。本明細書においては、これらの問題に対処する。
【0050】
幾つかの実施形態では、シャフトが尿道前立腺部内まで進んだ後は、蒸気送達装置ハンドルを装置カートリッジから取り外してよい。その後、カートリッジをスタビライザアームに取り付けてよく、そのスタビライザアームは患者台に固定的に取り付けられる。膀胱鏡及び超音波画像で観察されるシャフト先端が所望の位置に入るまで、セグメント化されたスタビライザアームを自由に動かしてよい。そしてモータがスタビライザアームを作動させることにより、その各セグメントが定位置に固くロックされて、送達装置カートリッジが所望の位置に保持される。カートリッジ及び送達装置シャフト及び針は、その位置で任意の方位の組織に対処するように回転してよい。そして針は、尿道壁を貫通して前立腺内へと展開され、蒸気が送達される所望の位置まで進んでよい。カートリッジから取り外された送達装置ハンドルは、操作者が、針の動きと洗浄用生理食塩水及び蒸気の送達のためのリモートコントローラとして使用する。送達装置を尿道前立腺部内の別の位置に移動する場合には、スタビライザアームをロック解除し、新しい部位に蒸気が送達されるように再ロックしてよい。幾つかの実施形態では、スタビライザアームは、システムコンピュータから制御されるロボットアームである。
【0051】
別の実施形態では、針先端の近傍の組織電気インピーダンスを測定するために、針先端に電極が配置されている。組織インピーダンス(抵抗及びキャパシタンスの両方)は、前立腺内の細胞組織から被膜壁内の線維組織にかけて急に変化する。針先端上の、蒸気送達穴のわずかに近位側に位置する細いワイヤのコイルが、TRUS画像に対して相対的な針先端の位置を特定する追跡装置を構成する。インピーダンス電極及びコイルセンサの両方からの細いワイヤリード線が、蒸気送達針の壁内に押出成形された管腔を通ってフィードされ、針の近位端部から出たところで張力が緩和される。針から出たセンサリード線は、針の熱膨張を可能にするように、且つ、展開及びナビゲート中に針が動くことを可能にするように設計されている。
【0052】
がんが見つかった前立腺の選択された領域又はゾーンをアブレーションするための蒸気の送達は、組織細胞を変性させ死滅させるのに十分な長さの時間にわたって組織の温度を上昇させることを含んでよい。蒸気送達針の先端にある温度センサであって、針先端の近傍の組織の温度の測定を、(組織がまだアブレーション温度に達していないことを確認するために)蒸気送達前に、(蒸気の送達が安全且つ効果的であることを確認するために)蒸気送達中に、並びに(組織がアブレーション温度に達していることを確認するために)蒸気送達後に行うことを可能にする温度センサを開示する。幾つかの実施形態では、温度測定値は、針先端追跡に使用されるワイヤのコイルの電気抵抗から導出される。一実施形態では、AC電流がコイルに印加されて、追跡用外部磁気センサによって検出され、一方、コイルのAC抵抗(コイルの両端の電圧振幅を電流振幅で割ったもの)が同時に測定される。コイル抵抗は、温度とともに直線的に増加する。
【0053】
針先端の位置を検知してTRUS画像上に表示する、代替又は追加のシステム及び方法を感じする。幾つかの実施形態では、針先端は小振幅で振動させられ、この振幅は、これらの動きをTRUSシステムのドップラー機能で検出するのに十分である。針が動くと、針は、TRUSプローブに向かう方向に動いているときには青色でTRUS画像上に表示され、TRUSプローブから離れる方向に動いているときには赤色でTRUS画像上に表示される。装置カートリッジ内のソレノイド針ドライバは、システム又は操作者が選択した振幅及び周波数で針を振動させる一手段を含む。針を周期的に動かす他の手法も開示する。幾つかの実施形態では、針先端にある圧電素子が、TRUSプローブからの超音波信号を受けて、その位置をTRUS画像上に表示する。別の実施形態では、送達針に取り付けられた小さいバルーンが、針壁管腔を通して空気等のガスで膨らみ、これが超音波画像上に明るく表示される。バルーンの代替として、反響性の流体又はガスが針壁内の流路をパルスの形で通り抜け、針先端の近くで外に出てよい。このパルス状の流体は、ドップラーモードの超音波画像上に表示される。
【0054】
蒸気送達システム
【0055】
図1は蒸気送達システム100を示しており、これは、蒸気送達装置102と、経直腸超音波システム(TRUS)等の画像化システム104と、蒸気コンソール106と、膀胱鏡システム108と、針ガイドシステム(NGS)110と、生理食塩水送達システム122と、1つ以上のディスプレイ112とを含む。
【0056】
蒸気送達装置102はシャフト114を含んでよく、シャフト114は、尿道壁を貫通して前立腺組織内へと展開されるように構成された蒸気送達針115を含む。シャフトは蒸気送達装置カートリッジ116から延び、蒸気送達装置カートリッジ116は、送達装置のハンドル又はハンドピース118に取り外し可能に取り付けられる。一実施形態では、ハンドピースは、取り外されると、蒸気送達装置の動作を制御するためのリモートコントローラとして働くように構成されてよい。蒸気送達装置は更に、スタビライザ120を含んでよく、これは、可撓及び可動であるが、作動すると、カートリッジを患者に対して保持及び固定する固いアームになってよい。蒸気送達装置は更に、針の全ての動きを制御するプッシュプルソレノイド針ドライバをカートリッジ内に含んでよく、又、針ドライバ磁石の位置、従って、シャフトに対して相対的な針の位置を監視する磁気センサをカートリッジ内に含んでよい。
【0057】
本システムは更に、カートリッジに電力を供給し、センサからの信号を中継するケーブルであって、それらのセンサは、加熱素子の温度、及びソレノイド内の針の位置を測定するためにカートリッジ内に展開されているセンサと、組織インピーダンスを測定するために、並びに、外部追跡アンテナからの信号を測定するために針上及びシャフト上に展開されているセンサと、である、ケーブルと、カートリッジ内の蒸気発生器に滅菌水を、流体ドライバ内で測定された圧力で送出する流体管路と、蒸気療法中にシャフトを冷却することと、膀胱鏡の視野からデブリを除去することと、のために洗浄用生理食塩水を送出する流体管路と、カートリッジ内及びシャフト内を延びる管腔であって、尿道及び膀胱の検査、並びに送達装置の針の展開及び後退の監視のための膀胱鏡を取り外し可能に収容する管腔と、を含んでよい。
【0058】
引き続き
図1を参照すると、本システムは更に、蒸気送達コンソール106を含んでよく、これは、蒸気発生器、コンソールコンピュータ、及び電子機器に電力を供給するための容量を有する1つ以上の電源と、流体ポンプ及び追跡システム要素等の補助機器とを含む。コンピュータ及び電子機器は、送達装置の機能及びユーザコマンドを監視することと、センサ入力を調整及び処理することと、針及びシャフトの位置及び方位の3D軌道を計算することと、超音波画像及び膀胱鏡画像を処理して、アニメーション及び追跡ソフトウェアと統合することと、コンソールのユーザと通信することと、を行うように構成されてよい。更に、コンソールは、コンソールから1つ以上の針122の中への滅菌水、生理食塩水洗浄、及び前立腺周囲生理食塩水送達の流れを引き起こすように構成されたポンピングシステムを含んでよい。コンソールは更に、滅菌水/蒸気管路圧力、コンソール内部温度、及び電子機器の電流及び電圧を測定するセンサを含んでよい。更に、コンソールは、蒸気送達装置からの、蒸気療法の進捗に関するリアルタイム情報を表示する蒸気療法モニタを含んでよく、この表示は、クリティカルなセンサ出力及びシステム状態の表示を含む。コンソールは又、システムの監視及び保守に関する技術情報をユーザに提供してよい。
【0059】
上述のように、本システムは、膀胱鏡システム108を使用するように又は膀胱鏡システム108と連携するように構成されてよく、膀胱鏡システム108は計測装置と1つ以上のディスプレイとを含んでよい。膀胱鏡システムは膀胱鏡を含んでよく、膀胱鏡は、蒸気送達装置を通して挿入されて、針の展開前、展開中、及び展開後の尿路及び送達装置の針のリアルタイム画像を提供するように構成されている。幾つかの実施形態では、蒸気送達装置は、膀胱鏡を収容するように構成された管腔をシャフト内に含んでよい。膀胱鏡システムのディスプレイは、治療及び療法の途中でユーザに対してリアルタイム膀胱鏡画像を表示するように構成されてよい。幾つかの実施形態では、膀胱鏡システムは、一体型カメラ(例えば、小型CMOSセンサ)を含んでよい。
【0060】
本システムは更に、針ガイドシステム(NGS)110を含んでよく、これは多くの要素を含んでよい。一実施形態では、NGSは、1つ以上のアレイ素子から正弦磁界を発生させるように構成された送信器又はアンテナアレイと、蒸気送達装置の針先端上に一体化されて、正弦磁界を測定するように構成された1つ以上の磁界センサと、を含んでよい。NGSは更に、送達装置のシャフト先端上、及びTRUSプローブ上にマウントされた磁界センサを含んでよい。コンソール内のソフトウェアを使用して、磁気センサデータが、TRUSプローブに対して相対的な針先端及びシャフト先端の位置及び方位に変換されてよい。この情報は1つ以上のディスプレイ112に表示されてよく、これは、TRUS画像上の針の予測された軌道及び/又は実際の軌道、蒸気療法送達のマーキングされた位置、TRUS画像上の予測されたアブレーションゾーン、及びアニメーション化され、NGS又は他のデータとマージされたTRUS画像を含む。幾つかの実施形態では、針先端コイルから磁界が送信され、これは、TRUSプローブ内に配置された磁気センサのアレイによって受信される。
【0061】
本システムは更に、画像化システム104を含んでよく、これは、例えば、TRUSシステムを含んでよい。画像化システムは、前立腺のリアルタイム画像を1つ以上のビューで(例えば、軸方向と矢状方向の画像で)提供するように構成されてよい。この実施形態では、画像化システムは、NGSセンサが組み込まれた画像化直腸プローブと、TRUSプローブスタビライザと、TRUS画像プロセッサ及びモニタと、画像のビュー及びパラメータを選択するコントローラとを含んでよい。
【0062】
1つ以上のディスプレイ112は、療法の画像(例えば、TRUS画像)を、NGS追跡情報を含む蒸気療法情報と重ね合わせて表示するように構成されてよい。
【0063】
システムコンソール106内のソフトウェアが、NGSの針及びプローブの位置及び軌道及びアニメーション及び他の情報をTRUS画像上にまとめる。そのように注釈の付いたTRUS画像が、膀胱鏡画像とともにシステムモニタ112に表示される。
【0064】
本システムは、任意選択で、1つ以上の生理食塩水送達針122を含んでよく、これは、蒸気療法中に前立腺周囲組織を冷却するために、画像ガイド下で前立腺の外側及び周囲の組織内に生理食塩水を射出する又は当てることに使用されてよい。前立腺の周囲に送達された生理食塩水の層が、TRUS画像上の前立腺被膜の画像を明確化する超音波造影を実現することが可能である。
【0065】
NGS追跡システム
【0066】
図2A~2Bは、針ガイドシステム(NGS)の構成要素を示しており、これは、磁界発生器224と、追跡コンソール226と、図示のように蒸気送達装置及び/又は画像化システム上に配置された1つ以上のセンサとを含んでよい。例えば、
図2Bを参照すると、センサ1が蒸気送達針215上に配置されてよく、センサ2が蒸気送達装置のシャフト214上に配置されてよく、センサ3がTRUSプローブ204のシャフト上に配置されてよい。磁界発生器224は、複数の位置で、複数の方位で正弦磁界を発生させるように構成されたコイルのアレイを含んでよい。そしてこれらのセンサは、磁界発生器からの正弦磁界を検知するように構成されてよく、そしてコンソール226は、このデータを使用して、磁界発生器224に対して相対的なセンサの位置(x,y,z)並びに極方位角及びアジマス方位角(θ,φ)を計算して、TRUSプローブ204及びTRUS画像に対して相対的な針先端及びシャフト先端の位置及び方位を与えるように構成されてよい。そしてTRUSプローブ画像は、シャフト先端及び針先端の位置を超音波画像上にスーパインポーズするように、蒸気送達コンソール226によって処理されてよい。幾つかの実施形態では、アニメーションが追加されてよく、アニメーションは、シャフト、針先端、現在のシャフト位置から展開されている場合の針先端の潜在的位置を、不確実性のコーン、前の蒸気送達ショットの位置及び範囲等とともに示す。
【0067】
図2Aは、蒸気送達装置の蒸気送達針215の拡大図であり、センサ又はNGS追跡コイル217と、1つ以上の生体インピーダンス電極219(後述)と、1つ以上の蒸気送達ポート221とを示している。
【0068】
針先端磁気センサ217は、
図2A及び2Eに示すように、絶縁された細いワイヤのコイル(マグネットワイヤ)を含んでよい。ワイヤは、合金48等の透磁性材料のフォイルに巻き付けられてよく、且つ/又は、コイルは、センサ感度を高めるためにニッケル等の透磁性金属が巻き付けられてよい。AWG#48~AWG#58の範囲のゲージのワイヤが使用されてよい。より細いワイヤであれば、コイル217の巻線数を増やすことが可能であり、針の壁に切り込まれたノッチの中に巻かれることが可能である。磁界発生器によってコイル又はセンサ217に誘導される電圧は、コイルの巻線数に比例する。しかしながら、ワイヤを細くすると信号対ノイズ比は一定値に近づく。これは、ワイヤの量が一定であれば、ワイヤの抵抗に発生するジョンソンノイズもコイルの巻線数に比例するためである。ワイヤをより重くすると、ジョンソンノイズは増幅器のノイズより小さくなり、増幅器のノイズはコイルの巻線数に無関係である。一例では、コイルは65ミクロンの深さで巻かれ、長さ3mmのスロットが1.25mm径の針の壁内にエッチングされる。ワイヤが#56ゲージまで細くなるにつれて、信号対ノイズ比は高くなる。#56から#58にかけてのワイヤでは、信号対ノイズ比の有意な向上はない。コイルには#56のワイヤが選択されており、これは、より細い#58のワイヤより扱いが容易なためである。
【0069】
蒸気送達針215の先端近くのスロットに巻き付けられたコイル磁気センサ217の一例を
図2Eに示す。コイルからのリード線228aと、生体インピーダンス電極からのリード線228bとが、針先端から針の近位端部まで延びてよく、それらは近位端部で、蒸気コンソールまで延びるワイヤにつながる。これらのリード線は、蒸気の流れを乱さずに蒸気送達管腔231を通ることができない。そうする代わりに、それらは、
図2C~2Dに示すように、針の全長に沿って針の壁内に押出成形されたスロット230を通って引き回される。生体インピーダンスリード線228bはそれぞれ別々の穴を通り、コイルからのリード線228aは、
図2Eに示すように互いにより合わされて1つの管腔を通る。一実施形態では、コイルリード線は、ワイヤ間の空間でのスプリアス電圧の誘導を防ぐためにより合わされる。幾つかの実施形態では、
図2Dに示すように、2つの管腔だけが蒸気送達壁を通る。この2つの管腔230は、図示のように2つの生体インピーダンスリード線228bに使用されてよく、NGSコイルには使用されない。代替として、これらのリード線は、NGSコイルからのリード線と、コイル温度の監視のためのコイル電圧測定用リード線とを含む2つのツイストペアに使用されてよい。
図2Dでは、蒸気送達穴221の場所の針先端の断面が示されている。管腔230のこのような位置及び形状により、蒸気送達穴221に障害物が全くないことが可能である。
【0070】
図2Eには、生体インピーダンス電極219及びリード線228bもより詳細に示されている。2つの生体キャパシタンス電極の間を一定振幅の正弦波電流が通ることが可能である。先端電極の間にある、針先端の近傍の組織の中を電流が流れる。そして、電極間の電圧が測定されてよい。インピーダンス振幅は、電圧と電流の振幅の比に等しい。電圧と電流との間の位相シフトも測定される。針先端が前立腺被膜に近づくにつれて、インピーダンス振幅の増加が見られる。これは、相対的に、前立腺内の細胞組織の導電率及び静電容量がより大きく、被膜を含む線維組織の導電率及び静電容量がより小さいためである。蒸気送達針が前立腺内に展開された後にインピーダンスが測定される。その後、針が動いた場合の、初期展開時のインピーダンスに対する測定されたインピーダンスの比が、好ましいアラートパラメータである。展開後に測定されたインピーダンスは、患者ごとの基準を与える。この比は、患者間及び処置間の組織因子及び環境因子の変動には無関係でありうる。
【0071】
摘出されたヒトの前立腺において測定された、前立腺組織内に展開された後のインピーダンス振幅(基準インピーダンス)に対する、前立腺被膜におけるインピーダンス振幅の比を周波数に対して示したチャートを
図2Fに示す。更に
図2Fでは、初期組織インピーダンスに対する、前立腺被膜に針を穿刺した後のインピーダンス振幅の比を周波数に対して示す。針が被膜に近づいたときにユーザにアラートすることが重要であり、更により重要なのは、針が被膜を破ったときにユーザにアラートすることである。蒸気療法は被膜の近くで適用されてよいが、被膜の外側で前立腺周囲組織内に適用されてはならない。インピーダンス比は、10~50kHzの好ましい周波数範囲において最大であることが分かった。振幅及び位相の正確な測定は、この範囲では低コストの電子機器で行われ、この範囲には環境ノイズ源がほとんどない。組織と被膜との間の最適コントラスト(並びに被膜の穿刺を検出するための、被膜と前立腺周囲組織との間の最適コントラスト)を与える周波数は、電極のサイズ、形状、材料、及び表面仕上げによって、並びに針先端上でのそれらの分離及び位置によって決定される。これらのパラメータを少しでも変更又は改善するには、最適周波数を決定する新たな実験(
図2F)が必要である。好ましい一周波数は15kHzである。
【0072】
図2G及び2Hを参照すると、蒸気送達針215の近位端部が磁石キャリア223に接続されており、磁石キャリア223は、針を、蒸気装置シャフト内の格納位置と、蒸気送達針がシャフトから外に延びる展開位置との間で動かすように構成されている。この接続は、例えば、針接着アタッチメント225により行われてよい。既に述べたリード線(例えば、上述のリード線228a及び228b)は、磁石キャリア223の壁の穴から外に出てよい。ここで、細いワイヤリード線228a及び228b(これらは生体インピーダンス電極及び/又はNGSコイルと電気的に結合されている)は、相互接続PCB232に接続され、フレキシブルワイヤリード線234として基板から出て、ケーブルに入れられ、蒸気コンソールにプラグで接続される。幾つかの実施形態では、細いワイヤリード線228bにたるみが与えられており、これは、蒸気送達時のワイヤと蒸気送達針との熱膨張の差に対応するためである。又、針の展開、後退、及び介入の動きの間の磁石及び針の動きに対応するために、フレキシブルワイヤリード線234にもたるみが与えられてよい。
【0073】
前立腺組織は、
図2Iに示すように、抵抗器とキャパシタの並列接続としてモデル化されてよい。針先端が前立腺組織に入って被膜に近づくにつれて、抵抗及びキャパシタンスが変化する。組織の抵抗及びキャパシタンスの値は、インピーダンスの絶対値と、電流と電圧の間の位相シフトとに関して、
図2Iの並列RC組織モデル及び式により導出される。前立腺組織の抵抗は線維性被膜の抵抗より小さい。これは、被膜の水分含有量がより少ないことが理由の1つである。組織被膜のキャパシタンスは前立腺組織のキャパシタンスより小さい。これは、前立腺組織が細胞質であるのに対して線維性被膜が無細胞であるためである(細胞膜がキャパシタンスに寄与する)。被膜の抵抗が大きいこと、及び被膜のキャパシタンスが小さいことのいずれによっても
図2Iの並列モデルのインピーダンスは大きくなり、これは、
図2Fに示したインピーダンス比が大きくなることにつながる。一実施態様では、前立腺を囲む組織の中に生理食塩水が送達されてよい。生理食塩水の抵抗は比較的小さいため、
図2Fに示したように、針が被膜を穿刺するにつれてインピーダンスが減少する。
【0074】
蒸気療法の前(アイドルモード時)及び蒸気療法中に、蒸気送達針から濃縮滅菌水が連続的に射出されてよく、滅菌水の層が生体インピーダンス電極を覆いうる可能性がある。滅菌水は、生理食塩水及び組織に比べて抵抗が非常に大きい。一方、滅菌水のキャパシタンスは、生理食塩水及び組織のキャパシタンスと同等である。従って、組織と被膜の間のキャパシタンスの変化は、滅菌水の存在下での抵抗又はインピーダンス絶対値の変化より重要でありうる。幾つかの測定システムでは、インピーダンス絶対値|Z|の値は、滅菌水の存在下では電圧増幅器を飽和させるほどの大きさになる可能性があり、それでも位相の正確な測定値は得られるものの、R及びCの計算がさほど意味を持たなくなる。この問題は、位相シフトを測定し、sin(φ)を0~1の範囲の生体インピーダンス信号として報告することによって回避可能であり、sin(φ)は、組織が純粋に抵抗性であれば0であり、組織が純粋に容量性であれば1である。一実施形態では、位相角φそのものが報告される。
図2Iの組織モデルは、DCでの組織抵抗及び高い周波数での容量結合を説明する、おそらく最もシンプルなモデルである。これまで、(例えば、キャパシタに直列な抵抗器を追加する)細胞内の電気抵抗、細胞のキャパシタンス及び抵抗と並列な非細胞性キャパシタンス、及び他の意味合いを説明する、ずっと複雑なモデルが提案されてきた。高度なシステムであれば、これらのモデルにおけるパラメータを評価することが可能であり、それは、ある周波数範囲にわたって取得されたデータをモデルパラメータに合わせることによって行われる。組織モデルは又、電極の近傍にあって、組織のキャパシタンス及び抵抗に追加する形の(組織のキャパシタンス及び抵抗と並列な)キャパシタンス及び抵抗を追加する電荷分離層を説明することが可能である。この「二重層」の、キャパシタンスに対する寄与は、純水内ではゼロに近づく。一般に、前立腺組織と前立腺被膜との間のコントラスト、及び/又は前立腺被膜と前立腺周囲組織との間のコントラストを最適化する、測定されたインピーダンス及び位相シフト、及び/又は計算された抵抗及びキャパシタンスの任意の組み合わせが生体キャパシタンス系に組み込まれてよい。
【0075】
BPHの蒸気療法では針の深さが12mmに固定されて蒸気が送達されるが、それとは対照的に、前立腺がんの療法では、前立腺内の全ての深さの組織にアクセスすることが必要である。好ましい実施形態では、本明細書に記載の蒸気送達針は、約26mmに達する針の軌道にある全ての箇所にアクセス可能である。一BPH方式では9秒にわたって蒸気を展開及び送達するが、それとは対照的に、がん治療では、展開後に針軌道に沿って1つ又は複数の部位まで針をゆっくり進めることが必要である。ナビゲーション中及び蒸気送達中は、送達装置を1箇所に固定して保持しなければならない。針が動くと、針の周囲の流路が大きくなって、蒸気が逆流して尿道内に放出される可能性があり、それによって、標的部位での治療が不十分になる可能性があり、潜在的には尿道粘膜を損傷する可能性がある。この問題は、針を近傍の場所に送達して再治療することによって是正可能である。しかしながら、その2つの挿入穴が互いに近い場合には、第2の部位に送達された蒸気が、第1の針軌道を通って尿道内に漏れる可能性がある。送達装置を保持している医師が装置を展開前に少しでも動かしたり回転させたりすると、そこからは標的組織にアクセスできない部位に針が展開されてしまう可能性がある。こうした問題を最小限に抑えるためには、2人の医師が処置を実施することが考えられる。つまり、1人が針の膀胱鏡画像を見ながら送達装置を安定的に保持し、もう1人がTRUSシステムを操作するのである。医師が1人だけでよい、よりシンプルな処置が望まれる。
【0076】
図3A~3Bは、蒸気送達装置302の一実施形態を示しており、特に、取り外し可能ハンドルとしても使用可能な、蒸気送達装置302のコントローラ318を示している。
図3A~3Bを参照すると、蒸気送達装置302のコントローラ318が、取り外し箇所332においてカートリッジ316から取り外されうる様子を見ることができる。コントローラは、取り外されると、カートリッジを含む蒸気送達装置の動作を制御する(例えば、蒸気/生理食塩水の送達、洗浄、針の前進/後退、及び他の、装置の機能を療法中に制御する)ように構成された1つ以上のボタン、レバー、又は調整つまみ334を有するリモートコントローラとして使用されてよい。なお、ハンドル及びカートリッジは両方とも、コンソールに接続されているケーブルを有しており、それによって、ハンドル及びカートリッジは、取り外されても互いに通信することが可能である。
図3Aに更に示すように、カートリッジ及び/又はコントローラ318は更に、取り外し可能スタビライザアーム用の取付箇所336を含んでよく、これについては後で詳述する。
【0077】
別の実施形態では、コントローラ318は、送達装置用ハンドルとしては機能しない。
図3Cは、装置から分離されたリモートコントローラ318を示しており、
図3Dは、カートリッジ318に取り外し可能に取り付けられた、機械的ハンドル機能を持たないコントローラ318を示している。リモートコントローラは、カートリッジから切り離されて保持されてよく、或いは、送達装置に接続されて使用されてよい。リモートコントローラは、複数のボタン、レバー、スイッチ、及び/又は調整つまみ334を含み、操作者は、これらを使用して、蒸気送達針の前進又は後退、療法のオン/オフ、プローブを通って遠位尿道に出る冷却用生理食塩水の流れ、及び療法中の前立腺の周囲の組織までの前立腺周囲の生理食塩水の流れを制御することが可能である。幾つかの実施形態では、操作者は、トグルスイッチを使用して、前立腺及び送達装置プローブの超音波ビュー及びカメラビューを変更することが可能である。超音波画像は、矢状方向ビュー又は軸方向ビューのいずれか、又はビューの組み合わせであってよく、膀胱鏡カメラは針の注入部位を示す。ビューの組み合わせ及び画像サイズは、トグルスイッチで選択されてよい。
【0078】
本開示の好ましい一実施形態は、
図4Aに示したスタビライザアーム420を含む。スタビライザアームは、上述のコントローラがカートリッジ416から取り外された後にカートリッジ416に取り外し可能に取り付けられるように構成されている。一例では、スタビライザアームは、カプラ422でカートリッジ416に取り付けられ、カプラ422は、スタビライザアームがロックされた状態とロックされていない状態とを切り換えるロック制御機構を含んでよい。そしてコントローラは、カートリッジ416がスタビライザアーム420に取り付けられている間は、蒸気療法の上述の機能のリモートコントローラとして動作する。スタビライザアームは更に、カプラ426によってモータ424と結合されてよい。スタビライザアームは複数の個別リンク421を含み、各個別リンク421は、一方の側に開放端部を有し、他方の側に、隣接リンクの開放端部と連結されるように構成された丸い「ボールジョイント」端部を有する。DCモータ424がアームの近位端部に位置してケーブル(図示せず)と結合されており、ケーブルは、各リンクの中心部を通って、スタビライザアームの最遠位のリンクに接続されている。このモータケーブルにたるみがあれば、アームは、任意の所望の曲がり又は姿勢に調節可能である。モータを作動させてケーブルをぴんと張ると、各リンクは一斉に引っ張られて定位置にロックされる。モータの制御は、上述のように、カプラ422上の調整つまみで行われてよい。使用時には、シャフト先端が尿道内の標的位置に到達すると、スタビライザアームの最上部近くのスイッチによって、
図4に示したスタビライザモータ424が作動して、スタビライザアームの各セグメントが一斉に、3次元弧の形に固くロックされる。その後、操作者はカートリッジを手放し、カートリッジは、患者台に対して所望の位置及び弧に固定されたままとなる。操作者は、スタビライザアームをロック解除して姿勢変更してよい。送達装置シャフトは、針の後退を可能にする、選択された角度まで回転可能である。
【0079】
同様に、
図4Bを参照すると、上述のカートリッジと同様に、TRUSプローブ404がスタビライザアームに取り付けられてよい。
図4Bの実施形態では、2つの別々のスタビライザアーム420が使用されており、1つはTRUSプローブ404用であり、もう1つはカートリッジ/蒸気送達装置402用である。上述したものと同様に、スタビライザアームの作動及び作動停止は、アームの最上部にあるスイッチ(例えば、アームとプローブとの間にあるカプラにあるスイッチ)によって切り換えられてよい。TRUSプローブからのリード線、並びにTRUSプローブに固定的にマウントされた任意選択のNGSセンサからのリード線は、TRUSコンソールまで延びてよい。TRUSプローブは、図示の調節可能クランプ423を操作することによってセットアップされてよく、調節可能クランプ423は、水平方向調節レール425に沿った、患者台427上の患者に対するプローブ及びスタビライザアームの適切な位置決めを可能にする。図示のように、患者台427は又、ピボット429によって回転可能/調節可能である。スタビライザアームの作動が停止された状態では、TRUSプローブは、患者の直腸内の所望の位置に挿入されている。その後、スタビライザアームは、クレードルを、患者に対して固定された位置及び方位で保持するように作動する。TRUSプローブはその後、矢状方向画像化面の位置を調節するために前進させたり後退させたりしてよく、軸方向画像化面の面を調節するために回転させてよい。
【0080】
そして、針の展開、前進、及び蒸気送達は、針軌道をほとんど又は全く乱すことなく進行する。これは、カートリッジ及びシャフトがスタビライザによって安定した位置に保持されているためである。そして、1人の操作者が、蒸気を尿道に逆流させることなく確実に標的位置に送達するために、TRUS画像に集中することが可能である。針軌道に沿って1つ以上の部位に蒸気が送達された後、針はシャフト内に後退し、スタビライザアームモータは作動停止して、スタビライザアームの各セグメントをロック解除する。その後、その1人の医師が手動で、カートリッジ及びシャフトを尿道内の次の位置に移動させて、この処置を繰り返すことが可能である。
【0081】
幾つかの実施形態では、送達装置カートリッジ及びTRUSプローブは両方とも、モータ制御スタビライザアームに取り付けられる。幾つかの実施形態では、2つのスタビライザアームのセグメント化されたシャフトに、アームを保護して水の浸入を防ぐフレキシブル防水スリーブが被せられてよい。電磁追跡センサ(即ち、針ガイドシステム(NGS)センサ)が、送達装置シャフト先端及びTRUSプローブの両方に固定的に取り付けられてよい。それによって、プローブ先端の位置をTRUS画像上に表示することが可能である。2つのスタビライザアームが定位置にロックされると、送達装置シャフト先端の位置は、送達装置針が展開されて前進しても安定したままである。針の展開された長さは、カートリッジ内で磁気位置センサによって測定可能であり、これらのセンサは、針の格納位置を基準とする針前進磁石の位置を測定して、針先端位置を示す情報を提供する。装置が安定化された状態で、針は、予測可能な弧の形に展開する。ソフトウェアが、針の展開された長さの測定値、及び予測された針弧から、展開後の針先端の位置を推定することが可能であり、推定された位置は、不確実性のコーンとともにTRUS画像上に表示可能である。そして操作者は、超音波画像化面を少し調節するだけで、超音波画像に針が明確に表示されるようにできる。針が前進するに従って、TRUS調節ノブを使用して、TRUSプローブ及び画像化面を前進させたり後退させたりして、針先端がフォーカスされている状態を保つことが可能である。ペアのスタビライザは、針が動いている間、TRUSプローブと送達装置カートリッジとが互いに対して動かないようにする。先行技術のTRUSスタビライザは、大きくて扱いにくい。本明細書に記載のモータ駆動ロッキングアームにより、薄型で使いやすいスタビライザが得られる。
【0082】
送達装置ハンドル(コントローラ)518をカートリッジ516に取り付けたり、カートリッジ516から取り外したりするためのシンプル且つ人間工学的な一システムを
図5A~5Cに示す。図示のように、ハンドル(コントローラ)をカートリッジに取り付けるには、カートリッジの係合フィーチャ519をハンドルのノッチ538に引っかけ、ハンドルを上方に旋回させ、ハンドルがカートリッジ内の定位置にカチッと収まるまでハンドルを押し込む。図示のように、ハンドル(コントローラ)は、ばね仕掛けのアクチュエータ540を含んでよい。ハンドルが定位置にカチッと収まると、アクチュエータのアーム541がカートリッジのスロット543にぴったり収まる。ハンドルを解放するには、ばね仕掛けのアクチュエータ540を押し込み、ハンドルを取り外して、スタビライザアームに置き換える。
【0083】
図6A~6Bを参照すると、蒸気送達装置のカートリッジ616にスタビライザアーム620を取り付ける場合も同様の機構が使用されてよい。例えば、それら2つの構成要素を接続するために、1つ以上のノッチ又は相補的な係合部分が使用されてよい。一実施形態では、それらは、1つ以上のばね仕掛けのアクチュエータ642で定位置に保持されてよい。それら2つが接続されたときにスタビライザが定位置にカチッと収まる(ロックされる)ことが可能である。アクチュエータ642を押し込むと、スタビライザをカートリッジから解放することが可能である。図示の実施形態では、スタビライザは、ハンドルがまだカートリッジに取り付けられているときでもカートリッジに取り付けることが可能である。別の実施形態では、スタビライザがカートリッジに取り付けられる場所は、ハンドルがカートリッジに取り付けられる場所と同じであるようになっている(従って、スタビライザを取り付ける前にハンドルを取り外す必要がある)。
【0084】
先行技術の蒸気送達装置は、コイルを流れるRF電流を用いており、RF電流は加熱素子チューブと誘導結合し、滅菌水がポンピングされて加熱素子チューブの中を通って蒸気が生成される。RFコイルにおいて発生するオーム熱は、誘導コイルを流れる水を加熱することにはほとんど寄与しないが、送達装置にかなりの熱を加えて送達装置の温度を上昇させる。本開示では、
図7A~7Bに示したPCB748に電気的に接続された特別設計の大電流コネクタ746を介して、DC電流が加熱素子チューブ744内を直接通る。図示のように、大電流コネクタ746は、加熱素子チューブ744のクレードルになる又は加熱素子チューブ744を保持するように設計及び構成された切り欠き又はノッチを含んでよい。この例では、2つの大電流コネクタ746がチューブ744全体を保持及び支持しており、第1のコネクタが、蒸気送達装置の長さに沿って軸方向に延びる、チューブの入口部分を保持し、第2の大電流コネクタが、入口部分に対してほぼ半径方向に又は直交方向に延びる、チューブのコイル状部分を保持する。DC電流は、システムコンソール内に配置された、24ボルト、0~25アンペアの医療グレードDC電源から供給されてよい。そして、加熱素子の両端の電圧と、加熱素子を通る電流とを測定して掛け合わせることにより、加熱素子で損失する電力の正確なリアルタイム測定値が得られる。加熱素子電力は、設定された電力になるように、コンソール内のパルス幅変調(PWM)回路によってサーボ制御されてよい。システムのカロリー毎秒蒸気出力は、効率因子を経由して加熱素子電力に比例する。加熱素子電力を制御することにより、加熱素子の電気的負荷のいかなる変化にも無関係にカロリー出力が制御される。RF加熱素子とは対照的に、DC加熱素子を囲むカートリッジ壁の温度は常に、操作者が無理なく握れるほどに低い。
【0085】
図7A~7Bの加熱素子は、インコネル625ステンレス綱から製造されてよく、これが選択されるのはその電気抵抗が比較的高いためであり、特に、その電気抵抗が、公称20~300℃の動作範囲にわたって温度にほぼ無関係であるためである。室温の滅菌水が加熱素子744に入り、100℃を超える温度で水蒸気が加熱素子から出るので、チューブに沿って温度勾配が存在する。もし加熱素子チューブの電気抵抗が温度とともに上昇すれば、チューブの遠位端部の抵抗が高くなるであろうし、チューブの遠位端部でより多くのオームI
2R熱が放散されるであろう。これは、蒸気への変換の効率が低下し、蒸気出口温度が過剰に高くなることにつながる。インコネル625は、優れた電気絶縁性及び高温安定性を有する薄壁ポリイミドチューブで覆われてよい。絶縁された加熱素子の巻線は、巻線同士に良好な熱的接触をさせるようにあらかじめ応力をかけられてよい。これによって、チューブに沿っての温度勾配が小さくなり、蒸気発生の効率が向上する。加熱素子内の温度が上昇することで、より多くの熱が、伝導、対流、及び放射により送達装置カートリッジに出ていくことが可能である。カートリッジ上の高温部が安全上の懸念になることがある。効率が高いほど(熱損失が小さいほど)、蒸気カロリー出力が安定する。これらの理由により、加熱素子からの熱損失を最小限に抑えることが重要である。
【0086】
図7A~7Bの設計では、機械的な取り付けを加熱素子の低温の入力端部で行い、高温の遠位端部では電気コネクタだけが加熱素子と接触していることにより、伝導熱損失が最小限に抑えられている。真鍮、ステンレス綱、又はインコネルの大電流コネクタ746が、加熱素子に溶接されるか機械的に取り付けられてよく、PCB(プリント回路基板)748上の太い低抵抗パターンにはんだ付けされてよい。これらのパターンは、機械的安定性と、電気抵抗が非常に低い接続とを実現する。PCBは、システム内の他の電気リード線が送達装置ケーブルを通り抜けて出たところでそれらを着地させる。蒸気出口温度を監視するために、加熱素子の遠位端部に熱電対が溶接されてよく、コンソールは、熱電対を使用して、蒸気出口温度が規定の範囲から外れた場合にシステムをシャットダウンしてよい。幾つかの実施形態では、熱電対は、電気コネクタの遠位側に溶接される。これは、遠位コネクタポストの近位側に熱電対が置かれると、その熱電対の両端に、加熱素子チューブの長さに沿って流れるDC電流がIR電圧降下を発生させるためである。熱電対は、IR電圧降下を、熱電対を含む異種金属の両端の電圧降下と区別することができない。熱電対が遠位コネクタの近位側に溶接されると、熱電対接合部に浮遊電圧が現れ、これがソフトウェアでは温度の読み取り間違いとして解釈される。浮遊電圧は、熱電対の溶接ボールの材料の分布に依存するため、装置ごとに異なる。遠位コネクタの遠位側であれば、電流の流れはなく、浮遊電圧もない。
【0087】
幾つかの実施形態では、熱電対は遠位コネクタの近位側に配置されてよく、これは、例えば、チューブの対流冷却を大幅に低減する可能性のある気泡を素早く検出するためである。気泡の場所にあるチューブを流れる電流は、その場所のチューブを急速に加熱することになり、この事象は、遠位コネクタの近位側に置かれた熱電対によって検出される。熱電対の読みのIR電圧降下誤差は、2つの熱電対リード線をチューブの周囲に巻くようにチューブに取り付けて、それらの電位が同じになるようにすることにより、低減可能である。溶接ボールと加熱素子とを絶縁するために、熱電対と加熱素子チューブとの間に電気絶縁材料の薄層が配置されてよい。一代替技術の温度計として、例えば、RTD(抵抗温度計)が使用されてよく、これは、加熱素子チューブを流れる電流の影響を受けない。一実施形態では、絶縁された細いワイヤがチューブに巻き付けられてコイルを形成している。このコイルの抵抗が監視される。銅又は白金等のコイルワイヤ材料の場合、コイルの抵抗は、動作温度範囲(20~300℃)にわたって温度とともに直線的に増加する。コイルは、倍の長さのワイヤを折り返してから巻き付けることによって(ノイズ電圧が誘導されるのを防ぐように)無誘導性として作られてよい。RTDは一般に、熱電対より正確且つロバストであり、外部の電子機器に接続しやすい。この用途で使用可能な他のタイプの温度計として、サーミスタ及びチップマウント型光学温度計がある。幾つかの実施形態では、加熱素子チューブの長さに沿った2つ以上の場所に超小型温度計が設置されてよい。
【0088】
加熱素子744に送達された滅菌水の圧力を測定するようにセンサが構成されてよい。水圧は、加熱素子744内での蒸気の発生の影響を受ける。例えば、気泡が加熱素子を通って、圧力及び温度の両方でスパイクが発生すると、測定可能な圧力変化が起こる。水圧が、あらかじめ設定された時間にわたって、あらかじめ設定された値を超えた場合は、加熱素子への電力が自動的にシャットダウンされてよい。
【0089】
図7Cに示す好ましい一実施形態では、滅菌水がシリンジ755で押されて、送達システムの送水管を通って、加熱素子チューブ744に入る。プランジャシャフト759を前進/後退させるステッパモータ(図示せず)によって、シリンジプランジャ757が前進及び後退することが可能である。プランジャとシリンジとの間にOリング756が設けられてよい。プランジャとプランジャシャフトは磁石761で結合可能であり、これにより、使い捨てのシリンジをコンソールプランジャシャフト759から取り外すことが可能である。プランジャシャフトが前進すると、ロードセル763及びロードセルボタン765を通してプランジャ757に力がかかる。そして、ロードセルとロードセルボタンとの間で測定された力をプランジャの断面積で割ると、圧力が計算されることが可能である。一例では、力が0から50ポンドまで増えると、このロードセルボタンがロードセルに対して全部で18ミクロン動く。ダウエルピン767とロードセルアダプタ769との隙間が0.5mmあれば、ロードセルボタンのわずかな変位に対しては十分な隙間であることが可能である。ロードセルからのリード線がプランジャシャフトの近位側からコンソールの電子機器に出ている。ロードセルは、加熱素子チューブ及び蒸気送達針を含む滅菌水の送水管の全体にわたって圧力及び圧力変化を測定する。圧力の増加は、(例えば、蒸気送達穴の中のデブリに起因する)流れの閉塞を示している可能性がある。圧力の減少は、流体送達管路の漏れを示している可能性がある。圧力及び温度の測定値は、コンソールソフトウェアによってリアルタイムで処理され、それによって、エンジニアリングデータが提供され、システムアラート及びシャットダウンが自動で行われる。圧力の急な変化が、約+/-25mmHgの分解能で検出される。
【0090】
図7Cのロードセルは、プランジャシャフトの前進時に圧力を測定する。プランジャシャフトの後退時には圧力は測定されない。
図7Cのダウエルピン767がロードセルアダプタの後退を可能にする。シリンジプランジャは、
図7Cの磁石間の吸引により後退する。幾つかの実施形態では、ダウエルピンは常磁性金属から作られており、これがプランジャ磁石に引き寄せられる。ダウエルピンとアダプタとの間の磁気吸引によってロードセルが中心に位置決めされて安定化され、一方、この磁気吸引は力の測定を妨げない。
【0091】
送達装置のカートリッジに組み込まれた加熱素子を
図8に示す。ソレノイド針ドライバ866及びホール効果磁気センサ868も図示されており、磁気センサ868は、蒸気送達針に取り付けられている磁石を動かすことによって針の展開及び後退を駆動する磁石の磁界を測定する。図示の位置では、この2つのホールセンサの読みの平均値は、磁石の位置(従って、針の位置)においてほぼ直線的であることが分かっている。ホールセンサの読みの平均は又、ソレノイドコイルの磁界を検知し、この磁界は、ソレノイドコイルを流れる電流に比例する。ホールセンサ信号の平均から、測定されたソレノイド電流に比例する項を差し引くことにより、ソレノイド電流の寄与分を除去できることが分かっている。このように条件付けられたホール信号は、単純に磁石位置に比例する。位置信号を較正するには、装置の準備中に、針が格納されたホーム位置と、完全に展開された位置とでホール信号の平均を測定する。そしてコンソールソフトウェアが、磁石の完全に後退した位置に対して相対的な磁石の位置を計算して表示する。ホールセンサはPCBに電気的に接続されており、そこからリード線がケーブルを通ってコンソールまで延びている。
【0092】
図8には、カートリッジ上に配置された1つ以上の洗浄ボタン870も示されている。シャフトが尿道内を進み、選択された角度まで回転する際に、ユーザはこれらのボタンを使用して洗浄を実施して、膀胱鏡の視界をクリアにすることが可能である。洗浄ボタンは、リモートコントローラとして使用可能なハンドルにも二重に設けられている。
【0093】
針先端温度センサ
【0094】
蒸気送達針の先端又は先端近くに設置された温度計又は熱電対は、療法前、療法中、及び療法後に組織についての診断情報を提供する。針先端に組み込まれた温度センサの例を
図9A~9Bに示す。これは、針の壁に埋め込まれた1つ以上の超小型熱電対903(
図9A)、及びワイヤのコイル905(
図9B)の電気抵抗を含み、この抵抗は温度とともに直線的に上昇する。ワイヤのコイルは、絶縁された銅又は白金のワイヤを含んでよく、これらは両方とも、抵抗が、室温から300℃までの範囲にわたって温度とともに直線的に増加する。幾つかの実施形態では、ワイヤのコイルは、針ガイドシステム(NGS)検知コイル又はNGS送信コイルを含む。コイルの抵抗の測定は、一定振幅のDC電流又はAC電流をコイルに通して、コイルのリード線間の電圧振幅を測定することによって行われてよい。AC電流であれば、AC電流の周波数でのバンドパスフィルタリングによってノイズ源を除去できるので、好ましいのはAC電流である。電流振幅に対する電圧の比が、コイルの電気抵抗である。コイルの電気抵抗は、温度の関数として次式で与えられる。
【0095】
R=R0[1+α(T-T0)]
但し、Rは、温度Tでのコイル抵抗であり、R0は、既知の温度T0(例えば、室温)でのコイル抵抗であり、αは、抵抗の温度係数であり、銅及び白金の両方において0.00393/℃に等しい。温度に関して解くために上式を変形すると次式が得られる。
【0096】
T=T0+(R/R0-1)/α
【0097】
温度を測定するコイルがNGSセンサでもある場合、コイルは、NGSセンサの測定の合間の短時間に温度計として働くことが可能である。温度を測定するコイルがNGS送信器でもある場合、一定振幅のAC送信電流がコイルを連続的に通り、コイルの両端の電圧振幅を測定することによって、同時且つ連続的な温度計算が可能になる。NGSコイルの駆動電流が温度上昇を引き起こす場合は、補償するための新たな項を温度の式に追加してよい。温度センサのリード線は、既に図示及び説明したように、蒸気送達針の壁内の導管を通り抜ける。
【0098】
幾つかの実施形態では、電圧を測定するリード線は、
図9Bに示したコイルの遠位側のリード線に取り付けられ、やはり(
図2C~2Eに示したような)蒸気送達針の1つ以上の導管を通る。T
0が室温の場合、T
0は、処置の最初に、蒸気送達システム内の1つ以上の温度センサ(例えば、蒸気発生器のコイル出口の熱電対)によって測定されてよく、同時に室温でのコイル抵抗R
0が測定されてよい。
【0099】
蒸気送達針の先端の近傍の温度を測定することには、様々な診断用途がある。組織のアブレーションは、温度に依存する一定時間にわたって組織の温度が上昇することが必要であるため、針先端の温度は、組織が十分な時間にわたってアブレーション温度を達成しているかどうかを示すものとして働く。(例えば、針が引き返すことによって、又は針が別の組織に挿入されることによって)針先端が治療部位から別の組織に移ったときに、組織の温度は、その別の組織が治療済みかどうかを示し、それによって、療法の実施回数が最小限に抑えられる。別の実施形態では、所与の部位にある組織の温度反応を探査するために蒸気のわずかなひと吹きが送達されてよい。この測定は、その部位において所与のサイズの損傷を引き起こすために必要なカロリー総量(即ち、蒸気量)を示すことが可能である。一般に、針先端の近傍の組織の温度測定は、貴重な診断ツールである。
【0100】
本開示の蒸気送達システムは、膀胱鏡画像と組み合わされた超音波画像化と、針先端のリアルタイム追跡とを用いて、針の位置を評価し、針を前立腺内の、蒸気送達を行うように選択された場所までガイドする。操作者は、処置中に超音波画像を見ており、NGS針先端位置はNGSセンサデータから計算されて、超音波画像上にマーキングされる。針先端は、超音波画像の面内にあれば超音波画像に表示される。幾つかの実施形態では、超音波画像化面は、NGS追跡位置と位置合わせされるように調節可能である。NGS追跡の支援があってもなくても、超音波画像上で針を見る別の手法が望ましい。
【0101】
図10Aは、NGS追跡の支援なしで超音波画像上に蒸気送達針1015を表示するように構成された蒸気送達装置1002及び蒸気送達システム1000の一実施形態を示す。
図10~10Gのいずれかの実施形態の蒸気送達装置は、本明細書に記載の且つ上述の特徴のいずれかを含んでよく、これは、患者への経尿道アクセスを行うようにサイズ決定及び構成された導入シャフト、導入シャフト内に摺動可能に配置された療法針又は蒸気針、療法針と結合されて、療法針を導入シャフトから尿道前立腺部に通して患者の前立腺内まで前進させるように構成された前進機構(例えば、ソレノイドドライバ)、その他を含む。
【0102】
図10Aの実施形態では、針1015は針ドライバ磁石1065と結合されてよく、針ドライバ磁石1065は、蒸気送達針の展開/後退を担うのと同じ針ドライバソレノイド(例えば、
図8のソレノイド866)によって振動させられるように構成されている。一実施形態では、ソレノイドは、画像化システム1004によって生成される、ドップラー画像化モードの超音波画像において針を明るく表示させる振幅及び周波数で針を振動させてよい。
図10Aは、超音波画像1005及びドップラー画像1007を示す。ドップラーモードでは、針は、超音波クリスタルに近づきつつあるときには青く表示され、超音波クリスタルから離れつつあるときには赤く表示される。
図10Aのドップラー超音波画像では、針は、0.25mmのピークツーピーク振幅と16.7Hzの周波数(60ミリ秒の周期)とで振動させられている。針のドップラー画像は、周期的にTRUSクリスタルに近づいたり離れたりするにつれて、青く表示されたり、赤く表示されたりする。
【0103】
針先端を振動させることの別の実施形態を
図10Bに示す。この実施形態では、蒸気送達装置のシャフト上に圧電クリスタル1009が設置されてよい。例えば、圧電クリスタルは、シャフトに埋め込まれていく、又はシャフトの表面上に設置されてよい。この実施形態では、クリスタルはシャフトの先端近くに設置されているように示されているが、当然のことながら、シャフト上又はシャフト内のどこに設置されても、結果として蒸気送達針1015は振動する。このクリスタルが信号発生器で振動させられる場合、針は外側面内で振動し、やはりそれによって、振動している針がドップラー超音波画像上に表示される。
【0104】
図10C~10Eは、針先端を振動させる他の3つの実施形態を示す。
図10Cの実施形態では、シャフト上又はシャフト内に設置されたバルーン1011が急速に膨れたりしぼんだりして針先端を振動させる。幾つかの実施形態では、バルーンは、水、空気、流体、又はガスを使用して膨れたりしぼんだりしてよく、供給管腔がバルーンをフィードし、バルーンは、シャフト内の管腔を通り抜ける。同様に、
図10Dでは、信号発生器からの電流が、シャフト上又はシャフト内に配置された形状記憶フォイル1013を通るときにフォイル1013が振動するように、フォイル1013が構成されてよい。フォイルは、フォイルの両端に電流が印加されたときに形状が変化するサーモメカニカルフィルムを含んでよい。当業者であれば理解されるように、形状記憶フォイルに電流を供給するために、シャフトの長さに沿って電流リード線が延びてよい。
図10Eの実施形態では、シャフト上又はシャフト内に配置された小型ソレノイドコイル1015が、針1015を打って又は針1015に接触して外側振動を与えるように構成されてよい。これらの実施形態では、ドップラー超音波画像上で針先端を見つけることを可能にするために、シャフトの下側に設置された素子によって、針先端の周期的な動きが誘導される。代替実施形態では、
図10A~10Eの振動部材は、上述のようなシャフト上ではなく針先端自体の上に設置されてよい。
【0105】
針先端を視覚化するための2つの代替実施形態を
図10F~10Gに示す。
図10Fの実施形態では、針先端に又は針先端上に又は針先端内に圧電クリスタル1017が設置されてよい。針管腔を使用してリード線がクリスタルまで延びてよい。このクリスタルは、TRUS画像化プローブの周波数で動作する送信器として使用されてよい。クリスタルは、超音波画像上では明るい反射として表示される。反射された超音波と異なり、針先端の送信は一方向であり、受信された針パルスは、反射されたパルスの距離の半分の距離にあるように見える。ソフトウェアにおいて補償が行われてよく、ディスプレイ上で補償が修正されてよい。ずっと高い周波数(例えば、40~60MHzの範囲の周波数)で動作する、より小型の超音波クリスタルが、小径の針に物理的によりよく適合することが可能である。この場合は、高い周波数のバーストが、TRUS画像化周波数のバーストレートで送達されてよい。針先端クリスタルは、受信器として、TRUSクリスタルアレイから超音波を受信し、超音波画像に対して相対的な針先端の位置を計算する。この位置は、超音波画像上に表示されてよい。
【0106】
図10Gの実施形態を参照すると、膨張式バルーン1019が蒸気送達針に取り付けられてよく、又は接続されてよい。バルーンは、ガスで膨らむと、超音波画像1021に示されるように、超音波画像ガイド下で明るく表示されることが可能であり、これによって与えられるコントラストで針の位置特定/可視化が改善されうる。
【0107】
図10A~10Gに示した実施形態のいずれにおいても、シャフト上又はシャフト内、或いは蒸気送達針上又は蒸気送達針内に振動素子を設置することが可能である。
【0108】
ここまで本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、当然のことながら、この説明は例示を目的としたものに過ぎず、本発明の上述の説明は網羅的ではない。本発明の具体的な特徴が幾つかの図面には示されており、他の図面には示されていない。これはあくまで便宜上のことであり、本発明に従って、任意の特徴が別の特徴と組み合わされてよい。当業者であれば、変形形態や代替形態が明らかであろう。そのような代替形態及び変形形態は、特許請求の範囲に含まれるものとする。従属請求項に示されている各特徴は組み合わされてよく、本発明の範囲に含まれる。本発明は又、従属請求項が代替として、他の従属請求項を参照する多項従属請求項形式で書かれているかのように実施形態を包含する。
【国際調査報告】