(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】疾患の治療のためのメラノコルチンサブタイプ-2受容体(MC2R)アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240228BHJP
A61P 5/46 20060101ALI20240228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240228BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P5/46
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556949
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022020543
(87)【国際公開番号】W WO2022197798
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519006414
【氏名又は名称】クリネティックス ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェラーラ-クック,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】クラスナー,アラン エス.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC081
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4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB17
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC08
4C086ZC41
(57)【要約】
クッシング病、異所性ACTH症候群、及び先天性副腎過形成などのACTH過剰の疾患の治療のための方法及び組成物が、本明細書で提供される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおけるクッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、それを必要とする前記ヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【化1】
【請求項2】
前記ヒトが、過剰なACTHを産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒトが、下垂体腺腫又はコルチコトロフ腺腫を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトが、異所性ACTH分泌腫瘍を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒトが、副腎内に、コルチゾール合成障害をもたらす遺伝子変異を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒトが、21β-ヒドロキシラーゼ、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼ、又はそれらの組み合わせをコードする遺伝子に変異を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒトが、外因性コルチコステロイドを投与されたか、又は現在投与されている、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記外因性コルチコステロイドが、グルココルチコイドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
クッシング病、CAH、EAS、又はそれらの組み合わせを治療することが、前記ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
クッシング病若しくはEAS、又はそれらの組み合わせを治療することが、前記ヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
クッシング病若しくはEAS、又はそれらの組み合わせを治療することが、血液、血清、唾液、若しくは尿又は前記ヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
クッシング病若しくはEAS、又はそれらの組み合わせを治療することが、コルチゾールレベルを、クッシング病若しくはEAS、又はそれらの組み合わせを有しないヒトの平均レベルまで低減させることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
CAHを治療することが、前記ヒトにおけるステロイド、アンドロゲン、ステロイド前駆体、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
CAHを治療することが、前記ヒトにおけるA4、17-OHP、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
クッシング病又は異所性ACTH症候群(EAS)を有する前記ヒトが、過剰な量のACTHを分泌する非下垂体腫瘍を有し、前記非下垂体腫瘍が、肺、膵臓、甲状腺、胸腺、腸、副腎、又は傍神経節にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
クッシング病又はEASを治療することが、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、嗜眠、肥満、月経不順、又はそれらの組み合わせを低減させることを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ヒトにおける先天性副腎過形成(CAH)を治療する方法であって、それを必要とする前記ヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【化2】
【請求項18】
前記ヒトが、コルチゾール合成障害をもたらす遺伝子変異を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒトが、21β-ヒドロキシラーゼ、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼ、又はそれらの組み合わせをコードする遺伝子に変異を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記CAHが、古典的なCAHである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記古典的なCAHが、塩類喪失型CAH又は単純男性型CAHを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記CAHが、非古典的CAHである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
CAHを治療することが、前記ヒトにおけるACTH刺激アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
CAHを治療することが、前記ヒトにおけるACTH刺激アンドロゲン又はコルチゾール前駆体のレベルを低減させることを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アンドロゲンが、アンドロステンジオン(A4)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記コルチゾール前駆体が、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
CAHを治療することが、アンドロゲンの分泌を低減させることを含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
CAHを治療することが、不適切な性腺発達、高アンドロゲン症、及びミネラルコルチコイドの置換の発生率を低減させることを含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の前記投与が、前記ヒトに対する外因性グルココルチコイドの用量要件を低減することを含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
先天性副腎過形成(CAH)を有するヒトにおいて、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、嗜眠、肥満、月経不順、又はそれらの組み合わせを低減させる方法であって、それを必要とする前記ヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【化3】
【請求項31】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の前記投与が、CAHを有する前記ヒトのための外因性グルココルチコイド用量要件を低減することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記外因性グルココルチコイドが、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のレベル、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させる方法であって、それを必要とする前記ヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【化4】
【請求項34】
前記ヒトが、クッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ACTH刺激コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、DHEAS、DHEA、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることが、クッシング病、CAH、EAS、又はそれらの組み合わせを治療することを含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、1日1回又は1日2回、投与経口投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約5mg~約300mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約10mg~約250mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ヒトにおける過剰なACTHに関連する疾患又は病態を治療する方法であって、それを必要とする前記ヒトに、選択的非ペプチド小分子メラノコルチン2受容体(MC2R)アンタゴニストを投与することを含み、前記非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストが、MC1R、MC3R、MC4R、MC5R、又はそれらの任意の組み合わせよりもMC2Rに対して約100倍選択的である、方法。
【請求項41】
過剰なACTHを有する前記ヒトへの前記選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与が、ACTHによって媒介される副腎ステロイドホルモンの病理学的上昇の抑制又は低減を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
過剰なACTHを有する前記ヒトへの前記選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与が、副腎由来コルチゾール及びアンドロゲンの抑制又は低減を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
過剰なACTHを有する前記ヒトへの前記選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与が、副腎由来コルチゾール及びアンドロゲンの抑制又は低減を含み、ミネラルコルチコイド産生に実質的に影響を及ぼさない、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒトが、上昇したコルチゾールレベルを有する、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記上昇したコルチゾールレベルが、ACTH依存性である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒトが、下垂体腺腫又はコルチコトロフ腺腫を有する、請求項40~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒトが、異所性ACTH分泌腫瘍を有する、請求項40~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
過剰なACTHに関連する疾患又は病態を治療することが、前記ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む、請求項40~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
過剰なACTHに関連する疾患を治療することが、前記ヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む、請求項40~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
過剰なACTHに関連する疾患又は病態が、クッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ヒトにおけるクッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、前記ヒトに、治療有効量の選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニスト、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含み、前記ヒトにおける前記コルチゾールレベルが、ベースラインから少なくとも10%低減する、方法。
【請求項52】
前記ヒトにおける前記コルチゾールレベルが、ベースラインから少なくとも10%低減し、低減したレベルに少なくとも4時間維持される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記CAHが、古典的なCAHである、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記古典的なCAHが、塩類喪失型CAH又は単純男性型CAHを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記CAHが、非古典的CAHである、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項56】
前記選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストが、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項40~55のいずれか一項に記載の方法。
【化5】
【請求項57】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、1日1回又は1日2回、投与経口投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約5mg~約300mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約10mg~約250mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項60】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgの化合物1に相当する量で投与される、請求項56又は57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月19日に出願された米国仮特許出願第63/163,310号、及び2022年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/298,571号の利益を主張するものであり、これらの各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
メラノコルチンサブタイプ-2受容体(MC2R)アンタゴニスト、並びにクッシング病、先天性副腎過形成、及び異所性ACTH症候群などのメラノコルチンサブタイプ-2受容体活性を調節することから利益を得るであろう状態、疾患、又は障害の治療においてMC2Rアンタゴニストを使用する方法が、本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
メラノコルチン受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)(MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、及びMC5R)のファミリーを形成し、これらは、異なるメラノコルチンペプチド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、並びにメラノコルチンペプチドα-、β-、及びγ-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH、β-MSH、及びγ-MSH)によって選択的に活性化され、これらは全て、プロオピオメラノコルチンホルモン又はPOMCからのタンパク質分解性に由来する。ACTHは、副腎グルココルチコイド合成及び分泌の主要調節因子であり、MC2Rに対してのみ親和性を有する39アミノ酸ペプチドである。この視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の中心的なアクターとして、ACTHは、ストレス刺激に応答して下垂体から分泌され、副腎でコルチゾールの合成及び分泌を刺激する。MC2Rの調節は、メラノコルチン受容体活性の調節から利益を得るであろう状態、疾患、又は障害の治療のために魅力的である。
【発明の概要】
【0004】
過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の疾患の治療のための方法が、本明細書で提供される。
【0005】
一態様では、ヒトにおけるクッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。
【0006】
【0007】
いくつかの実施形態では、ヒトは、過剰なACTHを産生する。いくつかの実施形態では、ヒトは、下垂体腺腫又はコルチコトロフ腺腫を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、異所性ACTH分泌腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、副腎内に、コルチゾール合成障害をもたらす遺伝子変異を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、21β-ヒドロキシラーゼ、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼ、又はそれらの組み合わせをコードする遺伝子に変異を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、外因性コルチコステロイドを投与されたか、又は現在投与されている。いくつかの実施形態では、外因性コルチコステロイドは、グルココルチコイドである。
【0008】
いくつかの実施形態では、クッシング病、CAH、EAS、又はそれらの組み合わせを治療することは、ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、クッシング病又はEAS、又はそれらの組み合わせを治療することは、ヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病又はEAS、又はそれらの組み合わせを治療することは、血液、血清、唾液、若しくは尿又はヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病又はEAS、又はそれらの組み合わせを治療することは、コルチゾールレベルを、クッシング病又はEAS、又はそれらの組み合わせを有しないヒトの平均レベルまで低減させることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、ヒトにおけるステロイド、アンドロゲン、ステロイド前駆体、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、ヒトにおけるA4、17-OHP、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、クッシング病又は異所性ACTH症候群(EAS)を有するヒトは、過剰量のACTHを分泌する非下垂体腫瘍を有し、非下垂体腫瘍は、肺、膵臓、甲状腺、胸腺、腸、副腎、又は傍神経節にある。
【0012】
いくつかの実施形態では、クッシング病又はEASを治療することは、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、嗜眠、肥満、月経不順、又はそれらの組み合わせを低減させることを含む。
【0013】
別の態様では、ヒトにおける先天性副腎過形成(CAH)を治療する方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。
【0014】
【0015】
いくつかの実施形態では、ヒトは、コルチゾール合成障害をもたらす遺伝子変異を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、21β-ヒドロキシラーゼ、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼ、又はそれらの組み合わせをコードする遺伝子に変異を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、CAHは、古典的なCAHである。いくつかの実施形態では、古典的なCAHは、塩類喪失型CAH又は単純男性型CAHを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、CAHは、非古典的CAHである。
【0018】
いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、ヒトにおけるACTH刺激アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、ヒトにおけるACTH刺激アンドロゲン又はコルチゾール前駆体のレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、アンドロゲンは、アンドロステンジオン(A4)を含む。いくつかの実施形態では、コルチゾール前駆体は、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)を含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、アンドロゲンの分泌を低減させることを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、不適切な性腺発達、高アンドロゲン症、及びミネラルコルチコイドの置換の発生率を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与は、ヒトのための外因性グルココルチコイド用量要件を低減することを含む。
【0020】
別の態様では、先天性副腎過形成(CAH)を有するヒトにおいて、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、嗜眠、肥満、月経不順、又はそれらの組み合わせを低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。
【0021】
【0022】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与は、CAHを有するヒトに対する外因性グルココルチコイド用量要件を低減することを含む。いくつかの実施形態では、外因性グルココルチコイドは、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0023】
別の態様では、ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のレベル、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。
【0024】
【0025】
いくつかの実施形態では、ヒトは、クッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ACTH刺激コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、DHEAS、DHEA、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることは、クッシング病、CAH、EAS、又はそれらの組み合わせを治療することを含む。
【0027】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1日1回又は1日2回、投与経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg~約300mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約10mg~約250mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgに相当する量で投与される。
【0028】
別の態様では、ヒトにおける過剰なACTHに関連する疾患又は病態を治療する方法であって、選択的非ペプチド小分子メラノコルチン2受容体(MC2R)アンタゴニストを必要とするヒトに投与することを含む方法であって、非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストが、MC1R、MC3R、MC4R、MC5R、又はそれらの任意の組み合わせよりもMC2Rに対して約100倍選択的である、方法が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、過剰なACTHを有するヒトへの選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与は、ACTHによって媒介される副腎ステロイドホルモンの病理学的上昇の抑制又は低減を含む。いくつかの実施形態では、過剰なACTHを有するヒトへの選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与は、副腎由来のコルチゾール及びアンドロゲンの抑制又は低減を含む。いくつかの実施形態では、過剰なACTHを有するヒトへの選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストの投与は、副腎由来のコルチゾール及びアンドロゲンの抑制又は低減を含み、ミネラルコルチコイドの産生に実質的に影響を及ぼさない。
【0029】
いくつかの実施形態では、ヒトは、上昇したコルチゾールレベルを有する。いくつかの実施形態では、コルチゾールレベルの上昇は、ACTH依存性である。いくつかの実施形態では、ヒトは、下垂体腺腫又はコルチコトロフ腺腫を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、異所性ACTH分泌腫瘍を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患又は病態を治療することは、ヒトにおけるACTH刺激コルチゾール、アンドロステンジオン(A4)、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患を治療することは、ヒトにおけるコルチゾールのレベルを低減させることを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患又は病態は、クッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0032】
別の態様では、ヒトにおけるクッシング病、先天性副腎過形成(CAH)、異所性ACTH症候群(EAS)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、当該ヒトに、治療有効量の選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニスト、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含み、ヒトにおけるコルチゾールレベルが、ベースラインから少なくとも10%低減する、方法が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、ヒトにおける当該コルチゾールレベルは、ベースラインから少なくとも10%低減し、低減したレベルに少なくとも4時間維持される。
【0033】
いくつかの実施形態では、CAHは、古典的なCAHである。
【0034】
古典的なCAHが、塩類喪失型CAH又は単純男性型CAHを含む、請求項53に記載の方法。
【0035】
いくつかの実施形態では、CAHは、非古典的CAHである。
【0036】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、選択的非ペプチド小分子MC2Rアンタゴニストは、化合物1の構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である。
【0037】
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1日1回又は1日2回、投与経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg~約300mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約10mg~約250mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgに相当する量で投与される。
【0039】
包装材料、包装材料内の化合物1、又はその薬学的に許容される塩、及び化合物1、又はその薬学的に許容される塩が、メラノコルチン受容体(例えば、メラノコルチンサブタイプ2受容体(MC2R))の活性を調節するため、又はメラノコルチン受容体(例えば、メラノコルチンサブタイプ2受容体(MC2R))の活性の調節から利益を得るであろう疾患又は病態の1つ以上の症状の治療、予防、又は改善のために使用されることを示す標識を含む、製造物品が、提供される。
【0040】
本明細書に記載される化合物、方法、及び組成物の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の精神及び範囲内の様々な変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明白になるため、詳細な説明及び特定の実施例は、特定の実施形態を示すが、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】単回用量のACTH(1~24)の投与後の雄ラットにおけるコルチコステロンレベルに対する単回用量の化合物1の効果を示す。
【
図2】単回用量のACTH(1~24)の投与後の雌ラットにおけるコルチコステロンレベルに対する単回用量の化合物1の効果を示す。
【
図3】反復用量のACTH(1~24)の投与後のラットにおけるコルチコステロンレベルに対する単回用量の化合物1の効果を示す。
【
図4】化合物1の毎日の投与を繰り返した後、ACTH(1~24)を連続的に投与したラットにおけるコルチコステロンレベルの用量依存的抑制を示す。
【
図5】化合物1の毎日の投与を繰り返した後、ACTH(1~24)を連続的に投与したラットにおける、副腎重量及び副腎皮質面積の低減を示す。
【
図6】化合物1の毎日の投与を繰り返した後、ACTH分泌AtT-20細胞腫瘍を有するラットにおけるコルチコステロンレベルの用量依存的抑制を示す。
【
図7】化合物1の単回投与漸増(SAD)研究からの薬物動態結果を示す。
【
図8】化合物1の単回投与漸増(SAD)研究からの副腎からの基礎コルチゾール産生の用量依存的抑制を示す。
【
図9】化合物1の単回投与漸増(SAD)研究からの超病態生理学的ACTHチャレンジ後のコルチゾールの用量依存的抑制を示す。
【
図10】化合物1による治療を用いた低用量(1mcg)のACTH刺激試験における基礎及びACTH刺激コルチゾールレベルの抑制を示す。
【
図11】高用量(250mcg)及び低用量(1mcg)のACTH刺激試験における80mgの化合物1の効果を示す。
【
図12】10日間にわたる化合物1の40mgの1日用量での処置後の1日目及び10日目の薬物動態結果を示す。
【
図13】化合物1を10日間毎日投与した後の基礎コルチゾールレベル及びACTH刺激コルチゾールレベルに対する化合物1の効果を示す。
【
図14】10日間の研究を通して、投与から4時間後及び投与から24時間後の基礎及びACTH刺激コルチゾール分泌の抑制を示す。
【
図15】血清中のコルチゾールレベルをモニタリングするために24時間の概日サンプリングを使用した10日間の研究全体にわたるACTH刺激コルチゾールの抑制を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、プロオピオメラノコルチンホルモン(POMC)のタンパク質分解切断によって垂体前皮質刺激細胞によって合成される39アミノ酸ペプチドである。ACTHは、副腎グルココルチコイド(GC;ヒト及び他のほとんどの種におけるコルチゾール;げっ歯類におけるコルチコステロン)の合成及び分泌の主要な調節因子である。この視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の中心的なアクターとして、ACTHは、ストレス刺激に応答して下垂体から分泌され、副腎でコルチゾールの合成及び分泌を刺激する。この刺激は、副腎皮質でほぼ一意に発現する非常に特異的なGタンパク質共役受容体(GPCR)を介して媒介される。受容体は、メラノコルチン2受容体(MC2R)であり、ACTHとともに、より大きなメラノコルチン系の一部である。
【0043】
メラノコルチン系は、5つのGPCR(MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、及びMC5R)のファミリー、それらの天然アゴニスト、メラノコルチンペプチドα-、β-、及びγ-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH、β-MSH、及びγ-MSH)、並びにACTH、並びに内因性メラノコルチンアンタゴニストアグーチ及びアグーチ関連タンパク質(AGRP)を含む。メラノコルチン受容体(MCR)は、内因性アゴニスト及びアンタゴニストペプチドに対して異なる選択性を有し、多様な組織において発現され、それらは、多様で控えめな生理学的機能を果たす(Gantz,I.and T.M.Fong,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.,284:E468-E474,2003)。
【0044】
MCRのうちのいずれか1つ、又はそれらの組み合わせを選択的に調節することが可能である。いくつかの実施形態では、他のMCRに対してMCRのうちのいずれか1つ、又はそれらの組み合わせを選択的に調節することは、様々な臨床的応用において有用である。いくつかの実施形態では、他のMCRに対してMCRのいずれか1つ、又はそれらの組み合わせを選択的に調節することは、様々な臨床的応用における望ましくない副作用を低減する。一態様では、本明細書に記載の化合物は、MC2Rのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、MC2R相対又は他のMCRに対する選択的アンタゴニストである。
【0045】
MC2Rは、ACTHに対する高度選択的な受容体である。ACTHは、5つ全てのMCRを活性化することができるが、生理学的レベルでは、他の受容体の感受性は、活性化されるほど高くなく、ACTHは、MC2Rを選択的に活性化する。重要なことに、他の天然に存在するアゴニストα-MSH、β-MSH、及びγ-MSHは、MC2Rに対する親和性を有しない(Gantz,I.and T.M.Fong,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.,284:E468-E474,2003)。MC2Rの主な機能は、副腎皮質の束状帯細胞を刺激して、コルチゾールを合成し、分泌させることである。MC2Rは、GPCRアクセサリータンパク質MRAP(メラノコルチン2受容体タンパク質)が正常に細胞表面に分泌され、機能することを必要とする。MRAPは、MC2Rとの安定した複合体において逆平行ホモ二量体を形成する単一の膜貫通ドメインを有する小さいタンパク質であり、MC2Rの細胞表面発現及びACTHに結合する能力の両方に必要である。MRAPは、MCRのうちのいずれかに結合し、それらの活性に影響を及ぼし得るが、MC2R活性にのみ不可欠である。副腎皮質細胞上のMC2R/MRAP複合体へのACTHの結合は、GSを活性化して、細胞内cAMPレベルを上昇させ、次いで、ステロイド産生経路の複数のステップを調節することによってコルチゾール合成及び分泌を刺激する。
【0046】
クッシング病
クッシング症候群(CS)は、グルココルチコイド、特にコルチゾールの上昇したレベルへの慢性的な過剰曝露を特徴とする稀な障害である。クッシング症候群の臨床的徴候には、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、及び高い罹患率をもたらす他の様々な代謝障害が含まれる。クッシング症候群の重症型で不適切に制御された場合、クッシング症候群は、高い死亡率と関連している。グルココルチコイド過剰は、例えば、機能亢進性副腎腺腫、がん腫、又はステロイド乱用からのコルチゾールの過剰な自律分泌から、ACTHに依存しない場合があるが、全ての症例の約60~80%は、クッシング病(CD)として知られているACTH依存性クッシング症候群である。
【0047】
クッシング病は、ACTHを過剰に分泌する下垂体向皮質細胞腫瘍によって引き起こされ、同様に、副腎によるコルチゾールの下流合成及び過剰分泌を引き起こす。コルチゾールは、体の主なストレスホルモンであり、過剰な量は、死亡率及び罹患率の大幅な増加を引き起こし得る。コルチコトロフ腺腫は、小さい、通常、成長が緩徐な良性の腫瘍であり、通常、グルココルチコイド過剰の効果の結果として臨床的に注目される。CDは、女性によくみられ、通常は、30歳~50歳の間に発症する。CDは、推定診断時間38カ月で診断するのに長年かかることが多く、嗜眠、うつ病、肥満、高血圧、多毛症、及び月経不順などのその症状の多くが他のより一般的な疾患に誤って起因する可能性があるため、一般集団では十分に診断不足であり得る。クッシング病は、米国で約10,000人の患者の有病率を有する孤児の適応症である。
【0048】
クッシング病の第一選択療法は、外科的であり、下垂体のACTH分泌腫瘍、又は重篤な場合には副腎自体のいずれかの切除を伴う。手術が、不成功、禁忌、又は遅延することが多いため、これらの患者のための薬理学的治療が必要となる。副腎酵素阻害剤(例えば、メチラポン及びケトコナゾール)は、コルチゾールの合成を防止し、症状を改善することができるが、前駆体ステロイドの蓄積の結果として機械的副作用に苦しんでいる。例えば、メチラポンは、女性の多毛症と関連しており、患者は、副腎機能低下症、低カリウム血症、及び高血圧を避けるために慎重にモニタリングされなければならない。ケトコナゾールは、多くの場合、疾患制御を維持するために漸進的に用量を増やす必要があるが、これは、最終的に、薬物の肝毒性によって制限される。加えて、ケトコナゾールは、肝臓で最も重要な薬物代謝酵素のうちの1つであるCYP3A4の強力な阻害剤であり、副作用として負の薬物相互作用の可能性がある。強力なグルココルチコイド受容体アンタゴニストであるミフェプリストンは、クッシング症候群における高血糖の制御に認可されているが、滴定することは困難であり、その強力な抗プロゲステロン活性のために重大な副作用がある。最近認可されたソマトスタチンアナログ、パシレオチドは、ACTH分泌を阻害するが、最近発表された研究では、第3相試験の患者のわずか15~26%が尿遊離コルチゾールの正常化を達成し、一方、73%の患者は、化合物のインスリン分泌の強力な阻害に起因する高血糖関連有害事象を経験した。
【0049】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、クッシング病の治療に使用される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、クッシング病におけるグルココルチコイド過剰の治療に使用される。いくつかの実施形態では、クッシング病におけるグルココルチコイド過剰は、ACTH依存性である。
【0050】
異所性ACTH症候群
異所性ACTH症候群(EAS)、又は異所性クッシング症候群若しくは疾患は、過剰な量のACTHを分泌する非下垂体腫瘍に起因する稀な疾患である。多くの場合、これらの腫瘍は、肺に生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、膵臓、甲状腺、及び胸腺に生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、腸内で生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、褐色細胞腫などの副腎上に生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、傍神経節に生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、別の臓器において生じる。場合によっては、異所性腫瘍は、がん性である。EASにおけるACTH分泌の超生理学的な程度は、クシンゴイドから急性の生命を脅かすまでの範囲の効果によって変化し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、肺又は胃腸管のどこにでも生じる小さなカルチノイド腫瘍である。
【0051】
EASの治療選択肢は限られており、可能であれば、最初の目標は腫瘍の外科的除去である。手術が選択できない場合は、薬物療法は、コルチゾール産生を遮断するために使用することができる。また、場合によっては、腫瘍の位置を特定できず、薬物療法が、コルチゾール産生を完全に遮断しない場合には、副腎切除が必要となる。
【0052】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、異所性ACTH症候群の治療に使用される。
【0053】
先天性副腎過形成
先天性副腎過形成(CAH)は、下垂体及び視床下部に対するコルチゾールによる負のフィードバックが失われるため、コルチゾール合成が低減又は消失し、その結果、ACTH及びコルチコトロピン放出ホルモンが過剰になることを特徴とする。CAHは、コルチゾール合成の障害をもたらす副腎内の遺伝子変異によって引き起こされる一連の障害を包含する。
【0054】
いくつかの実施形態では、CAHは、21β-ヒドロキシラーゼにおける変異に起因する。21β-ヒドロキシラーゼを担う遺伝子の異なる変異は、異なるレベルの酵素をもたらし、一連の効果を生み出す。21β-ヒドロキシラーゼ欠損によるCAHは、CAHの全症例の95%に関与しており、更に、塩類喪失型及び単純男性型を含む古典的なCAH、並びに非古典的なCAHの2つのサブカテゴリーに分類される。場合によっては、古典的なCAHは、検出及び治療されない場合、副腎危機及び死亡をもたらし得る。場合によっては、非古典的CAHは、より軽度であり、症状を示す場合と示さない場合がある。コルチゾールの不足は、過剰なACTH分泌につながる下垂体への負のフィードバックがなくなり、副腎皮質の過剰刺激を引き起こす。結果として生じる副腎過形成及び他のステロイド(特にアンドロゲン)及びステロイド前駆体の過剰分泌は、不適切な性腺発達、高アンドロゲン症、及びミネラルコルチコイドの生命を脅かす置換を含む様々な効果をもたらし得る。CAHは、米国で約27,000人の患者の有病率を有する孤児の適応症である。
【0055】
他の実施形態では、CAHは、11β-ヒドロキシラーゼ欠損症、17α-ヒドロキシラーゼ欠損症、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症、先天性リポイド副腎過形成症、又はp450オキシドレダクターゼ欠損症における変異に起因し、これらは全て、異なる症状を呈する。
【0056】
CAHの現在の治療パラダイムは、生涯にわたる毎日のグルココルチコイド補充(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン)からなり、コルチゾールの合成不能とのバランスをとり、負のフィードバックの不足を緩和しようとするものである。21β-ヒドロキシラーゼ欠損に起因する古典的なCAHを有する患者の約2/3において、ミネラルコルチコイド置換も必要である。多くの場合、ACTHを抑制するために必要なグルココルチコイドの用量は、生理学的置換を超えており、この過剰な外因性グルココルチコイドは、クッシング様症状を引き起こし得る。追加的に、グルココルチコイドを正確に投与することができないことは、多くの場合、過剰又は過少治療のサイクルにつながり得る。過少治療は、副腎危機を引き起こし得、急性疾患のためのグルココルチコイドのストレス用量が一般的である。過剰な治療は、CS様の症状を引き起こし得る。CAH患者は、一般集団と比較して、骨折の2倍のリスクを有し、一般的に、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、及び高血圧に苦しんでいる。一般集団と比較して、CAH患者の平均余命は、7年減少し、CAH患者の20%以上が、副腎危機を伴う状態で死亡する。
【0057】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、CAHの治療に使用される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、高アンドロゲン症に関連するCAHの治療に使用される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、CAHの治療における過剰な外因性グルココルチコイド投与によって引き起こされるクッシング様症状の治療に使用される。
【0058】
化合物1
化合物1は、他のヒトメラノコルチン受容体サブタイプよりも2900倍超の選択性を示し、強力な経口、非ペプチプ、低分子MC2Rアンタゴニスト(Ki<10nM)である。
【0059】
化合物1は、以下に示す化学構造を有する6-(2-エトキシフェニル)-3-((R)-2-エチル-4-(1-(トリフルオロメチル)シクロブタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-N-((S)-キヌクリジン-3-イル)ピコリンアミドを指す。
【0060】
【0061】
化合物1は、N-[(3S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]-6-(2-エトキシフェニル)-3-[(2R)-2-エチル-4-[1-(トリフルオロメチル)シクロブタンカルボニル]ピペラジン-1-イル]ピリジン-2-カルボキサミドとも称される。
【0062】
治療方法
ある特定の態様では、ヒトにおける内因性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)活性を低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、副腎上のACTHの活性を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、副腎上のACTHの下流シグナル伝達を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、ヒトにおける内因性コルチゾールレベルを低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、ヒトにおける内因性副腎ステロイドホルモンレベルを低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。他の態様では、ヒトにおける副腎からのコルチゾール分泌を阻害する方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。更に他の態様では、ヒトにおける副腎アンドロゲン分泌及びコルチゾール前駆体産生を阻害する方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、アンドロゲンは、アンドロステンジオン(A4)である。いくつかの実施形態では、コルチゾール前駆体は、17ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)である。いくつかの実施形態では、ヒトは、過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)に関連する疾患を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、クッシング病を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、CAHを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、EASを有する。
【0063】
ある特定の態様では、過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)に関連する疾患を有するヒトにおけるコルチゾールレベルを低減させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。ある特定の実施形態では、本方法は、内因性コルチゾールレベルを低減させることを含む。他の実施形態では、本方法は、ACTH刺激コルチゾールレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、クッシング病である。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、CAHである。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、EASである。
【0064】
ある特定の態様では、クッシング病を有するヒトにおけるコルチゾールレベルを減少させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。ある特定の態様では、CAHを有するヒトにおけるコルチゾールレベルを減少させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。ある特定の態様では、EASを有するヒトにおけるコルチゾールレベルを減少させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。ある特定の態様では、クッシング様症状を有するCAHを有するヒトにおけるコルチゾールレベルを減少させる方法であって、それを必要とするヒトに、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。ある特定の実施形態では、本方法は、内因性コルチゾールレベルを低減させることを含む。他の実施形態では、本方法は、ACTH刺激コルチゾールレベルを低減させることを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、過剰なACTHに関連する疾患を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、疾患は、過剰なコルチゾールレベルを含む。いくつかの実施形態では、治療は、コルチゾールレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、治療は、内因性コルチゾールレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、治療は、ACTH刺激コルチゾールレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、クッシング病である。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、CAHである。いくつかの実施形態では、過剰なACTHに関連する疾患は、EASである。
【0066】
いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、クッシング症候群のうちの1つ以上の症状を治療することを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長、過度の発汗、毛細血管の拡張、皮膚の菲薄化、筋力低下、多毛症、うつ病/不安、高血圧、骨粗鬆症、インスリン抵抗性、高血糖、心臓病、嗜眠、肥満、月経不順、又はそれらの組み合わせを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、脂肪パッド(鎖骨、首の後ろ、顔及び胴体)の成長を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、過剰な発汗を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、毛細血管の拡張を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、皮膚の菲薄化を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、筋力低下を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、多毛症を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、うつ病/不安を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、高血圧を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、骨粗鬆症を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、インスリン抵抗性を低減させることを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、高血糖を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、心臓病を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、嗜眠を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、肥満を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、クッシング病を含むクッシング症候群を治療することは、月経不順を低減させることを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、不適切な性腺発達、高アンドロゲン症、及びミネラルコルチコイドの置換を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、不適切な性腺発達を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、高アンドロゲン症を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、CAHを治療することは、ミネラルコルチコイドの置換を低減させることを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの代謝産物のレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、代謝産物は、ACTH刺激代謝産物である。いくつかの実施形態では、代謝産物は、コルチゾール、A4、17-OHP、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、内因性コルチゾールのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ACTH刺激コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、DHEAS、DHEA、又はそれらの組み合わせを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、代謝産物は、治療前の対象における代謝産物のレベルと比較して低減する。いくつかの実施形態では、代謝産物は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、又は50%を超えて低減する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、コルチゾールのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、内因性コルチゾールのレベルを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、内因性コルチゾールのレベルは、血液、血清、唾液、又は尿において低減させる。いくつかの実施形態では、本方法は、ACTH刺激コルチゾールを低減させることを含む。いくつかの実施形態では、ACTH刺激コルチゾールのレベルは、血液、血清、唾液、又は尿において低減する。いくつかの実施形態では、血中コルチゾールレベルは、低減する。いくつかの実施形態では、血清コルチゾールレベルは、低減する。いくつかの実施形態では、唾液レベルは、低減する。いくつかの実施形態では、尿遊離コルチゾール(UFC)レベルは、低減する。いくつかの実施形態では、コルチゾールのレベルは、ACTH刺激試験によって決定されるように低減する。いくつかの実施形態では、コルチゾールのレベルは、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、又は50%を超えて低減する。いくつかの実施形態では、血液、血清、唾液、又は尿中のコルチゾールのレベルは、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、又は50%を超えて低減する。いくつかの実施形態では、コルチゾールのレベルは、治療前のコルチゾールのレベルと比較して低減する。いくつかの実施形態では、コルチゾールのレベルは、本明細書に記載される疾患のうちの1つを有しないヒトのレベルに低減する。すなわち、いくつかの実施形態では、コルチゾールのレベルは、ヒトにおいて正常レベルまで回復する。
【0071】
対象
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0072】
いくつかの実施形態では、対象は、過剰なACTHに関連する疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は、クッシング病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、CAHを有する。いくつかの実施形態では、対象は、EASを有する。いくつかの実施形態では、対象は、CAHの治療における過剰な外因性グルココルチコイド投与によって引き起こされるクッシング様症状を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、ヒトは、過剰なコルチゾールを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、上昇したコルチゾールレベルを有する。場合によっては、上昇したコルチゾールレベルを有しないヒトは、血中で約10~20mcg/dLのコルチゾールレベル、又は24時間の尿中コルチゾール試験において50~100mcg/日のコルチゾールレベルを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、血中で約20mcg/dL、25mcg/dL、30mcg/dL、又はそれ以上高いコルチゾールレベルを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、24時間尿コルチゾール試験において、約50mcg/日、100mcg/日、150mcg/日、200mcg/日、又はそれ以上高い24時間尿コルチゾールレベルを有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、ヒトは、ヒトの正常上限(ULN)よりも高い24時間尿コルチゾール排泄を有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、又はそれ以上のULNで24時間尿コルチゾール排泄を有する。いくつかの実施形態では、24時間尿コルチゾール排泄のULNは、約50~55mcg/日である。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヒトは、ヒトのULNよりも高い深夜唾液コルチゾールレベルを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、又はそれ以上のULNの深夜唾液コルチゾールレベルを有する。いくつかの実施形態では、深夜の唾液コルチゾールレベルのULNは、約100ng/dLである。
【0076】
いくつかの実施形態では、ヒトは、低用量デキサメタゾン抑制試験において上昇した血清コルチゾールを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、1mgのデキサメタゾンの夜間投与の翌朝、1.8mcg/dL又はそれ以上の血清コルチゾールレベルを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、ヒトは、ACTH依存性である過剰のコルチゾールを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、過剰のACTHを有する。場合によっては、上昇したACTHレベルを有しないヒトは、血中で約10~50pg/mLを有する。いくつかの実施形態では、ヒトは、血中で約50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、又はそれ以上高いACTHレベルを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、ヒトは、外因性コルチコステロイドを投与されたか、又は現在投与されている。いくつかの実施形態では、ヒトは、外因性コルチコステロイドを投与されたか、又は現在投与されており、外因性コルチコステロイドは、グルココルチコイドである。いくつかの実施形態では、ヒトは、外因性コルチコステロイドを投与されたか、又は現在投与されており、外因性コルチコステロイドは、経口、注射可能、又は吸入されたコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、ヒトは、外因性グルココルチコイドに曝露されている。いくつかの実施形態では、ヒトは、ヒトの急性又は慢性状態を治療するために、持続的な期間にわたって外因性グルココルチコイドに曝露されている。いくつかの実施形態では、外因性グルココルチコイドは、経口、注射可能、又は吸入されたコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、外因性グルココルチコイドは、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンなどである。いくつかの実施形態では、外因性グルココルチコイドは、ヒトにおける関節リウマチ、狼瘡、又は喘息などの炎症性疾患、関節痛、滑液包炎、腰痛、又は湿疹などの皮膚疾患を治療するために使用されている。いくつかの実施形態では、ヒトは、CAHを有し、外因性グルココルチコイドに曝露されている。いくつかのそのような実施形態では、CAHを有するヒトは、クッシング様症状を示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、ヒトは、過剰なACTHを産生する。いくつかの実施形態では、ヒトは、下垂体腫瘍(下垂体腺腫)又はコルチコトロフ腺腫を有する。いくつかの実施形態では、下垂体腺腫又はコルチコトロフ腺腫は、良性である。他の実施形態では、ヒトは、異所性ACTH分泌腫瘍を有する。他の実施形態では、ヒトは、通常ACTHを産生しない臓器内にACTH分泌腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、ACTH分泌腫瘍は、肺、膵臓、甲状腺、胸腺、腸、副腎、又は傍神経節にある。いくつかの実施形態では、ACTH分泌腫瘍は、がん性である。いくつかの実施形態では、ACTH分泌腫瘍は、良性である。
【0080】
いくつかの実施形態では、ヒトは、コルチゾール合成に影響を及ぼす遺伝子座に変異を有する。最も一般的な変異(約95%)は、21β-ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子で発生し、21β-ヒドロキシラーゼ欠損をもたらす。より稀な原因としては、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼをコードする遺伝子の遺伝子変異が挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒトは、21β-ヒドロキシラーゼ、11β-ヒドロキシラーゼ、17α-ヒドロキシラーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、及びp450オキシドレダクターゼ、又はそれらの組み合わせをコードする遺伝子に変異を有する。
【0081】
投与量及び投与
一実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、過剰なACTHに関連する疾患の治療のための医薬の調製に使用される。疾患又は病態のうちのいずれかの治療を必要とする対象における本明細書に記載の疾患又は病態のうちのいずれかを治療するための方法は、少なくとも化合物1又はその薬学的に許容される塩、活性代謝産物、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容される溶媒和物を含む薬学的組成物を、治療有効量で当該対象に投与することを含む。
【0082】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与される。ある特定の治療用途において、組成物は、疾患又は病態を既に患っている患者に、疾患又は病態の症状のうちの少なくとも1つを治癒するか、又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。この使用に有効な量は、疾患又は病態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、及び薬物に対する応答、並びに治療を行う医師の判断に依存する。治療有効量は、用量漸増及び/又は用量範囲臨床試験を含むが、これらに限定されない、方法によって任意に決定される。
【0083】
予防用途において、本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、特定の疾患、障害、又は状態にかかりやすいか、又はそうでなければそのリスクがある患者に投与される。そのような量は、「予防的に有効な量又は用量」であると定義される。この使用において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する。患者で使用する場合、この使用のための有効な量は、疾患、障害、又は状態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態、及び薬物に対する応答、並びに治療を行う医師の判断に依存する。一態様では、予防的治療は、疾患又は病態の症状の再発を予防するために、以前に治療されている疾患のうちの少なくとも1つの症状を経験し、現在寛解している対象に、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0084】
患者の状態が改善されない特定の実施形態では、医師の裁量により、化合物の投与は、慢性的に、すなわち、患者の疾患又は病態の症状を改善又は他の方法で制御又は制限するために、患者の生涯の期間全体を含む長期間にわたって投与される。
【0085】
患者の状態の改善が起こったらすぐに、必要に応じて維持用量が投与される。その後、特定の実施形態では、投与量又は投与頻度、又はその両方は、症状の関数として、改善された疾患、障害、又は状態が保持されるレベルまで低減される。しかしながら、ある特定の実施形態では、患者は、症状の任意の再発に基づいて長期的に断続的な治療を必要とする。
【0086】
そのような量に対応する所与の薬剤の量は、特定の化合物、疾患の状態及びその重症度、治療を必要とする対象又は宿主の同一性(例えば、体重、性別)などの要因によって異なるが、それにもかかわらず、例えば、投与される特定の薬剤、投与経路、治療される状態、及び治療される対象又は宿主を含む、症例を取り巻く特定の状況に応じて決定される。
【0087】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、ヒトに経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、連続投与スケジュールでヒトに投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、連続的な毎日の投与スケジュールでヒトに投与される。
【0088】
「連続的な投与スケジュール」という用語は、特定の治療剤を定期的に投与することを指す。いくつかの実施形態では、連続的な投与スケジュールは、特定の治療剤からいかなる休薬期間もなく、特定の治療剤を定期的に投与することを指す。いくつかの他の実施形態では、連続的な投与スケジュールは、サイクルでの特定の治療剤の投与を指す。いくつかの他の実施形態では、連続的な投与スケジュールは、薬物投与のサイクルにおける特定の治療剤の投与に続いて、特定の治療剤からの休薬期間(例えば、薬物が投与されない洗浄期間又は他のそのような期間)を指す。例えば、いくつかの実施形態では、治療剤は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、週に7回、1日おき、3日おき、4日おき、1週間毎日投与し、続いて1週間にわたって治療剤を投与しないこと、2週間毎日投与し、続いて1週間又は2週間にわたって治療剤を投与しないこと、3週間毎日投与し、続いて1週間、2週間、又は3週間にわたって治療剤を投与しないこと、4週間毎日投与し、続いて1週間、2週間、3週間、又は4週間にわたって治療剤を投与しないこと、毎週治療剤を投与し、続いて1週間治療剤を投与しないこと、又は隔週治療剤を投与し、続いて2週間治療剤を投与しない。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日1回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日2回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日3回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日3回を超える。
【0089】
「連続的な毎日の投与スケジュール」という用語は、毎日ほぼ同じ時間に特定の治療剤を毎日投与することを指す。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日1回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日2回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日3回である。いくつかの実施形態では、毎日の投与は、1日3回を超える。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の量は、1日1回投与される。
【0091】
ヒトにおける疾患又は病態の状態の改善が観察されない特定の実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の1日用量が増加する。いくつかの実施形態では、1日1回の投与スケジュールは、1日2回の投与スケジュールに変更される。いくつかの実施形態では、1日3回の投与スケジュールは、投与される化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の量を増加させるために採用される。いくつかの実施形態では、投与頻度は、ACTHアンタゴニスト(例えば、化合物1、又はその薬学的に許容される塩)への維持される、又はより規則的な曝露を提供するために増加される。いくつかの実施形態では、投与頻度は、より規則的に繰り返される高いCmaxレベルを提供するために、及び/又はACTHアンタゴニスト(例えば、化合物1、又はその薬学的に許容される塩)への維持される、又はより規則的な曝露を提供するために増加される。
【0092】
前述の態様のうちのいずれかには、有効量のACTHアンタゴニスト(例えば、化合物1、又はその薬学的に許容される塩)の単回投与を含む更なる実施形態があり、これには、ACTHアンタゴニストが(i)1日に1回、又は(ii)1日の間に複数回投与される更なる実施形態が含まれる。
【0093】
前述の態様のうちのいずれかには、(i)ACTHアンタゴニストが、単回投与のように、連続的又は断続的に投与され、(ii)複数回投与の間の時間が6時間毎であり、(iii)ACTHアンタゴニストが8時間毎に哺乳動物に投与され、(iv)ACTHアンタゴニストが12時間毎に哺乳動物に投与され、(v)ACTHアンタゴニストが24時間毎に哺乳動物に投与される更なる実施形態を含む、有効量のACTHアンタゴニスト(例えば、化合物1、又はその薬学的に許容される塩)の複数回の投与を含む更なる実施形態がある。更なる又は代替の実施形態では、本方法は、休薬期間を含み、ACTHアンタゴニストの投与は、一時的に中断されるか、又は投与されるACTHアンタゴニストの用量が、一時的に低減され、休薬期間の終わりに、ACTHアンタゴニストの投与が再開される。一実施形態では、休薬期間の長さは、2日から1年まで変化する。
【0094】
しかしながら、一般に、成人のヒト治療に用いられる化合物1の用量は、典型的には、1日当たり0.01mg~500mgの範囲である。一実施形態では、所望の用量は、単回用量で、又は同時に、若しくは適切な間隔で、例えば、1日当たり2回、3回、4回、又はそれ以上のサブ用量として投与される分割用量で、都合よく提示される。
【0095】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg~約300mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg~約250mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約10mg~約250mgに相当する量で投与される。
【0096】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約40mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約80mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約120mgに相当する量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約160mgに相当する量で投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の少なくとも約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgの用量で投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1の約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mg以下の用量で投与される。
【0099】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の化合物に適切な1日投与量は、体重当たり約0.01~約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、剤形における1日投与量又は活性の量は、個々の治療レジームに関していくつかの変数に基づいて、本明細書に示される範囲よりも低いか、又は高い。様々な実施形態では、1日用量及び単位用量は、使用される化合物の活性、治療される疾患又は病態、投与様式、個々の対象の要件、治療される疾患又は病態の重症度、及び開業医の判断を含むが、これらに限定されない、いくつかの変数に応じて変更される。
【0100】
そのような治療レジメンの毒性及び治療有効性は、LD50及びED50の決定を含むが、これらに限定されない、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定される。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50とED50との間の比率として表される。ある特定の実施形態では、細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトを含む対象において使用するための治療上有効な1日投与量の範囲及び/又は治療上有効な単位用量の量を製剤化する際に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の1日投与量は、最小限の毒性でED50を含む循環濃度の範囲内にある。ある特定の実施形態では、1日投与量の範囲及び/又は単位用量の量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化する。
【0101】
バイオマーカー検出に基づく治療
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む薬学的組成物の投与は、患者の循環コルチゾールレベル、アンドロステンジオン(A4)レベル、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)レベル、アルドステロンレベル、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)レベル、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)レベル、又はそれらの組み合わせに基づいている。
【0102】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、滴定スケジュールを介して投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与に関連する有害事象を最小限に抑えるために、滴定スケジュールを介して投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物による滴定は、対象が、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を許容すること、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与に関連する有害事象を最小限に抑えること、最適化された用量の化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、対象に投与され、許容される可能性を最大限にすること、又はそれらの組み合わせを可能にする。いくつかの実施形態では、滴定は、用量漸増(すなわち、上方滴定)、用量減量(すなわち、下方滴定)、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上のサイクルを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、上方滴定を含む。
【0103】
本明細書で使用される場合、対象は、その対象へのその用量の投与が許容できない有害事象又は有害事象の許容できない組み合わせをもたらさない場合、ある用量の化合物を「許容する」と言われている。当業者は、許容が主観的尺度であり、1人の患者に許容され得るものが異なる患者に許容され得ないことを理解するであろう。
【0104】
本明細書で使用される場合、「有害事象」は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物による治療に関連する有害な医学的発生である。
【0105】
本明細書で使用される場合、「最適化された用量」は、特定の対象の必要性に最適化された治療用量を指し、任意に対象の医療従事者と協議して、対象によって決定されるように、化合物1の最高用量に相当する、対象において求められており、対象によって耐容され得る生物学的又は薬学的応答を誘発する、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の最高用量である。いくつかの実施形態では、「最適化された用量」が決定されると、治療が必要である限り(すなわち、最適化された用量は維持用量である)、最適化された用量が対象に投与される。
【0106】
いくつかの実施形態では、クッシング病及び/又はEASのための滴定スケジュールは、コルチゾール変化の速度、個々の耐容性、並びに疾患徴候及び症状の改善に基づいている。いくつかの実施形態では、クッシング病及び/又はEASのための滴定スケジュールは、尿遊離コルチゾール(UFC)レベルに基づいている。いくつかの実施形態では、クッシング病及び/又はEASのための滴定スケジュールは、尿遊離コルチゾール(UFC)レベルの変化率に基づいている。
【0107】
本明細書で使用される場合、化合物の「上方滴定」は、対象が増加した量を許容しないまで化合物の量を増加させることを指す。上方滴定は、1つ以上の用量増分で達成することができ、これは、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、最初の用量で1日1回、最初の期間にわたって投与することと、続いて、その後1日1回、より高い用量の化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に上方滴定することと、を含む。いくつかの実施形態では、初期期間は、1日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、又は約12週間を含む。いくつかの実施形態では、このサイクルは、最適化された用量が得られるまで繰り返される。
【0108】
いくつかの実施形態では、滴定の方法は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、初回用量で1日1回又は2回、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、又は約8週間投与することと、続いて、その後1日1回又は2回、より高い用量の化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に上方滴定することと、を含む。いくつかの実施形態では、このサイクルは、最適化された用量が得られるまで繰り返される。
【0109】
いくつかの実施形態では、滴定の方法は、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、初回用量で1日1回、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、又は約8週間投与することと、続いて、その後1日1回、より高い用量の化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に上方滴定することと、を含む。いくつかの実施形態では、このサイクルは、最適化された用量が得られるまで繰り返される。
【0110】
いくつかの実施形態では、滴定の方法は、上方滴定、又は下方滴定、続いて、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の任意の再上方滴定を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、滴定スケジュールは、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、初回用量で約1週間投与することと、患者が初回用量に耐えることを条件に、用量を第1の増分値に等しい量だけ増加させるか、又は患者が初回用量に耐えないことを条件に、用量を第1の増分値に等しい量だけ減少させることと、を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、滴定スケジュールは、化合物1又はその薬学的に許容される塩を、増加した用量で約1週間又は2週間投与することであって、患者が増加した用量を許容することを条件に、用量を第2の増分値に等しい量だけ更に増加させることと、又は化合物1又はその薬学的に許容される塩を、減少した用量で約1週間投与することであって、患者が減少した用量を許容することを条件に、任意に、用量を第2の増分値に等しい量だけ増加させることと、を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の増分値は、第2の増分値と同じである。いくつかの実施形態では、第1の増分値及び第2の増分値は、異なる。
【0113】
滴定スキームのいくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の用量は、毎週、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に調整される。
【0114】
滴定スキームのいくつかの実施形態では、ヒトがULNを超える24時間の尿遊離コルチゾール(UFC)レベルを有する場合、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の用量は、増分値だけ増加する。
【0115】
滴定スキームのいくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の用量は、UFCレベルが標的範囲を下回る場合、及び/又はコルチゾールレベルの急速な減少がある場合、減少する。
【0116】
いくつかの実施形態では、最適化された用量は、24時間尿遊離コルチゾール(UFC)レベルが、もはやULNよりも大きくなく、24時間尿遊離コルチゾール(UFC)レベルが、処置、又はそれらの組み合わせに応答して実質的に変化しない場合に得られる。
【0117】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の初期用量は、化合物1の約1mg~約300mgに相当する。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の初期用量は、化合物1の約1mg~約200mgに相当する。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の初期用量は、化合物1の約1mg~約100mgに相当する。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の初期用量は、化合物1の約1mg~約50mgに相当する。
【0118】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の初期用量は、化合物1の約:5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgに相当する量で投与される。
【0119】
いくつかの実施形態では、第1の増分値は、化合物1の約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約23mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、又は約50mgに相当する。
【0120】
いくつかの実施形態では、第2の増分値は、化合物1の約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約23mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、又は約50mgに相当する。
【0121】
いくつかの実施形態では、滴定スケジュールは、最適化された用量が得られるまで繰り返される。最適化された用量は、ACTHアンタゴニスト治療による副作用を最小限に抑えながら治療の有効性を提供する。
【0122】
いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の最適化された用量は、化合物1の約:5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、又は300mgに相当する。
【0123】
いくつかの実施形態では、最適化された用量は、UFCレベルが目標範囲を下回る場合、及び/又はコルチゾールレベルの急速な減少がある場合、漸減される。
【0124】
併用療法
ある特定の例では、少なくとも化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて投与することが適切である。
【0125】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物のうちの1つの治療有効性は、アジュバントの投与によって増強される(すなわち、アジュバント自体は、最小限の治療上の利益を有するが、別の治療剤と組み合わせると、患者に対する全体的な治療上の利益が増強される)。あるいは、いくつかの実施形態では、患者が経験する有益性は、本明細書に記載の化合物のうちの1つを、治療上の有益性も有する別の薬剤(治療レジメンも含む)とともに投与することによって増加する。
【0126】
1つの特定の実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、第2の治療剤と同時投与され、化合物1の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び第2の治療剤は、治療される疾患、障害、若しくは状態の異なる態様を調節し、それによって、いずれかの治療剤単独の投与よりも大きな全体的な利益を提供する。
【0127】
1つの特定の実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、第2の治療剤と同時投与され、第2の治療剤は、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与は、ヒトのための外因性グルココルチコイド用量要件を低減することを含む。同時投与のために企図されるグルココルチコイドの例には、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、エタメタゾネブ、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンなどが含まれるが、これらに限定されない。同時投与のために企図されるミネラルコルチコイドの例には、フラドロコルチゾンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
クッシング病又はEASの治療のいくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、第2の治療剤と同時投与され、第2の治療剤は、グルココルチコイド(すなわち、「block and replace」療法)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドは、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、エタメタゾネブ、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、又はトリアムシノロンである。クッシング病又はEASの治療のいくつかの実施形態では、化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、低用量のグルココルチコイドと同時投与される。いくつかの実施形態では、低用量のグルココルチコイドは、20mg/日以下のプレドニゾン当量を含む。いくつかの実施形態では、低用量のグルココルチコイドは、15mg/日以下のプレドニゾン当量を含む。いくつかの実施形態では、低用量のグルココルチコイドは、10mg/日以下のプレドニゾン当量を含む。いくつかの実施形態では、低用量のグルココルチコイドは、5mg/日以下のプレドニゾン当量を含む。
【0129】
いずれの場合も、治療されている疾患、障害、又は状態にかかわらず、患者が経験する全体的な利益は、単に2つの治療剤の相加的であるか、又は患者が相乗的利益を経験する。
【0130】
本明細書に記載の併用療法では、同時投与する化合物の投与量は、使用する併用薬物の種類、使用する特定の薬物、治療する疾患又は病態などに応じて変動する。追加の実施形態では、1つ以上の他の治療剤と同時投与する場合、本明細書で提供される化合物は、1つ以上の他の治療剤と同時に、又は連続して投与される。
【0131】
併用療法において、複数の治療剤(そのうちの1つは、化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である)は、任意の順序で、又は更に同時に投与される。投与が同時に行われる場合、複数の治療剤は、単なる例として、単一の、統一された形態で、又は複数の形態で(例えば、単一の錠剤として、又は2つの別個の錠剤として)提供される。
【0132】
化合物1、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、並びに併用療法は、疾患又は病態の発生の前、その間、又はその後に投与され、化合物を含有する組成物を投与するタイミングは異なる。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、予防薬として使用され、疾患又は病態の発生を防止するために、病態又は疾患を発症する傾向を有する対象に、連続的に投与される。別の実施形態では、化合物及び組成物は、症状の発症中又は発症後できるだけ早く、対象に投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、疾患又は病態の発症が検出又は疑われた後、実行可能な限り速やかに、及び疾患の治療に必要な期間投与される。いくつかの実施形態では、治療に必要とされる長さは変化し、治療の長さは、各対象の特定の必要性に適合するように調整される。
【0133】
薬学的組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、薬学的組成物に製剤化される。薬学的組成物は、薬学的に使用される調製物への活性化合物の処理を容易にする1つ以上の薬学的に許容される不活性成分を使用して、従来の方法で製剤化される。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。本明細書に記載の薬学的組成物の概要は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania1975、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980、及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams&Wilkins1999)に見出され、そのような開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、若しくは希釈剤と組み合わせて、薬学的組成物中で投与される。本明細書に記載の化合物及び組成物の投与は、化合物を作用部位に送達することを可能にする任意の方法によって行うことができる。これらの方法は、経口投与を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、経口投与に適している薬学的組成物は、各々が既定の量の活性成分を含有する、カプセル、カシェット、又は錠剤などの別個の単位として、粉末又は顆粒として、水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として、又は水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤として提示される。いくつかの実施形態では、活性成分は、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提示される。
【0136】
経口で使用することができる薬学的組成物には、錠剤、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で作られた密封軟カプセル剤が含まれる。錠剤は、圧縮又は成形によって、任意に1つ以上の副成分を用いて作製することができる。圧縮錠剤は、任意に結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑剤、表面活性剤又は分散剤と混合された粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を好適な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。いくつかの実施形態では、錠剤は、コーティング又はスコアリングされ、その中の活性成分の持続又は制御放出を提供するように製剤化される。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に適している投与量でなければならない。プッシュフィットカプセル剤は、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに任意に安定剤との混合物中に含有することができる。軟カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤が添加される。糖衣剤の芯には、好適なコーティングが提供される。この目的には、濃厚な糖溶液を使用することができ、その濃厚な糖溶液は、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有することができる。染料又は顔料を、識別のために、又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤又は糖衣剤のコーティングに添加してもよい。
【0137】
特に上記の成分に加えて、本明細書に記載の化合物及び組成物は、問題になっている製剤の種類を考慮して、当該技術分野で従来の他の薬剤を含み得、例えば、経口投与に適したものは、香料剤を含み得ることが理解されるべきである。
【0138】
ある特定の用語
特に明記しない限り、本出願で使用される以下の用語は、以下に示される定義を有する。「含む(including)」という用語、並びに「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(included)」などの他の形態の使用は、限定されない。本明細書で使用されるセクション見出しは、整理の目的のみのものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0139】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の参照を含む。例えば、「試料」という用語は、その混合物を含む複数の試料を含む。
【0140】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、その数のプラス又はマイナス10%を指す。「約」範囲という用語は、その範囲からその最小値の10%を差し引き、その最大値の10%を差し引いたものを指す。
【0141】
「決定すること」、「測定すること」、「評価すること」、「評価すること」、「アッセイすること」、及び「分析すること」という用語は、多くの場合、測定の形態を指すために本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、要素が存在するかどうかを決定すること(例えば、検出)を含む。これらの用語には、定量的、定性的、又は定量的及び定性的決定が含まれ得る。評価は、相対的又は絶対的であり得る。「の存在を検出すること」は、文脈に応じて、それが存在するか存在しないかを決定することに加えて、存在するものの量を決定することを含むことができる。
【0142】
本明細書で使用される場合、製剤、組成物、又は成分に関して「許容される」という用語は、治療される対象の一般的な健康に持続的な有害な影響を及ぼさないことを意味する。
【0143】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、標的の活性を変化させるように、標的の活性を直接的又は間接的に相互作用させることを意味し、これには、単なる例として、標的の活性を増強すること、標的の活性を阻害すること、標的の活性を制限すること、又は標的の活性を延長することが含まれる。
【0144】
本明細書で使用される「モジュレータ」という用語は、標的と直接的又は間接的に相互作用させる分子を指す。相互作用には、アゴニスト、部分アゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニスト、デグレーダー、又はそれらの組み合わせの相互作用が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、モジュレータは、アゴニストである。
【0145】
「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」、「投与(administration)」などの用語は、本明細書で使用される場合、生物学的作用の所望の部位への化合物又は組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、又は注入を含む)、局所及び直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書に記載の化合物及び方法とともに用いることができる投与技術に精通している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物及び組成物は、経口投与される。
【0146】
「同時投与」などの用語は、本明細書で使用される場合、選択された治療剤の単一の患者への投与を包含することが意図され、薬剤が同じ若しくは異なる投与経路によって、又は同じ若しくは異なる時間で投与される、治療レジメンを含むことが意図される。
【0147】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、投与される薬剤又は化合物の十分な量を指し、これは、治療される疾患又は病態の症状のうちの1つ以上をある程度緩和する。その結果は、疾患の徴候、症状、又は原因の低減及び/又は軽減、又は生体系の任意の他の所望の変化を含む。例えば、治療的使用のための「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少をもたらすために必要な、本明細書に開示される化合物を含む組成物の量である。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、任意に、用量漸増研究などの技術を使用して決定される。
【0148】
本明細書で使用される「増強する」又は「増強すること」という用語は、所望の効果の効力又は持続時間のいずれかを増加又は延長することを意味する。したがって、治療剤の効果を増強することに関して、「増強すること」という用語は、システムに対する他の治療剤の効果を、効力又は持続時間のいずれかで増加又は延長する能力を指す。本明細書で使用される「増強する有効量」は、所望のシステムにおける別の治療剤の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0149】
本明細書で使用される「薬学的組み合わせ」という用語は、2つ以上の活性成分の混合又は組み合わせから生じる生成物を意味し、活性成分の固定した組み合わせ及び非固定の組み合わせの両方を含む。「固定した組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び補助剤の両方が、単一の実体又は投与量の形態で同時に患者に投与されることを意味する。「非固定の組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び補助剤が、具体的な干渉する時間制限なしで、同時に、同時発生的に又は連続して、別個の実体として患者に投与されることを意味し、そのような投与は、患者の体内に有効レベルの2つの化合物を提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0150】
「製品」及び「キット」という用語は、同義語として使用される。
【0151】
「対象」又は「患者」という用語は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、哺乳動物クラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、並びに他の類人猿及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜動物;ウサギ、イヌ、及びネコなどの家畜動物;ラット、マウス、及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが含まれるが、これらに限定されない。一態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0152】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、又は「治療(treatment)」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患又は病態の少なくとも1つの症状を緩和、軽減、又は改善すること、追加の症状を予防すること、疾患又は疾病を阻害すること、例えば、疾患又は疾病の進行を妨げること、疾患又は疾病を軽減すること、疾患又は疾病の退行を引き起こすこと、疾患又は疾病によって引き起こされた病態を軽減すること、あるいは予防的及び/又は治療的のいずれかで疾患又は病態の症状を停止することを含む。
【0153】
本出願を通して、様々な実施形態が、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上のもの及び簡潔にするためのものであり、本開示の範囲に対する堅固な限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、全ての可能なサブ範囲を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されたサブ範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を有するとみなすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0154】
本明細書で使用されるセクション見出しは、整理の目的のみのものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0155】
以下の実施例は、例示のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0156】
実施例1:メラノコルチン受容体(MCR)アッセイ
ACTH結合の阻害:
粗膜画分を、機能性hMC2受容体を安定に発現するCellSensor CRE-bla CHO-K1細胞から調製する(ThermoFisher#K1483)。細胞を、成長培地[10%透析されたウシ胎仔血清(Gemini Bio-Products#100-108)、0.1mMの非必須アミノ酸(Gibco#11140-050)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン(Gemini Bio-Products#400-110)、5μg/mLのブラスチジン(GoldBio#B-800-100)、100μg/mLのゼオシン(Invitogen#R25005)、及び600μg/mLのハイグロマイシンB(GoldBio#31282-04-9)を補充したGlutaMax DMEM(Gibco#10569-010)]中で85~100%のコンフルエンシーになるまで培養する。細胞を回収し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(Corning#21-031-CV)中で洗浄した。細胞ペレットを、膜調製緩衝液[20mM HEPES(Biopioneer#C0113)、6mMのMgC12(Sigma#M8266)、及び1mMのEDTA(JT Baker#4040-01)、プロテアーゼ阻害剤錠剤(Pierce#A32963);pH7.4)]中で再構成し、Dounceホモジナイザーを使用して均質化する。膜画分を、細胞破片から分離し、膜調製緩衝液中に収集し、液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で保管する。
【0157】
ヒトMC2R受容体への結合の阻害を、放射性標識された[125I]-TYR23]-ACTH(1-39)リガンド(PerkinElmer#NEX083、カスタム合成)を受容体のプローブリガンドとして使用する放射性競合結合アッセイで測定した。簡言すれば、ヒトMC2Rを発現する細胞からの膜を、結合アッセイ緩衝液[50mMのHEPES(Biopioneer#C0113)、5mMのMgCl2(Sigma#M8266)、1mMのCaCl2(Fisher Scientific#BP510)、0.2%BSA(Fisher Scientific#BP1600)、及びプロテアーゼ阻害剤(Pierce#A32963);pH7.4]中のSPAビーズ(PerkinElmer#RPNQ0001)とともにインキュベートした。SPAビーズに結合した膜を、96ウェルアイソプレート(PerkinElmer#6005040)中で、化合物の様々な希釈液(最終濃度は通常0~10,000nM)、及び0.2nMの放射性標識リガンドで、室温で90分間処理した。放射性シグナルは、MicroBetaTriLux1450 LSC(PerkinElmer)を用いて検出した。Ki値を決定するための全てのデータ操作は、GraphPad v8(GraphPad,San Diego CA)を用いて行った。
【0158】
化合物1は、ヒトMC2R(hMC2R)を介したcAMP産生を強力に阻害し、結合アッセイにおける平衡阻害定数(Ki)は、10nM未満であった。他のヒトMCRサブタイプに対する選択性は、市販のMC1R、MC3R、MC4R、及びMC5R膜結合アッセイを用いて評価した。結合アッセイにおける半最大阻害濃度(IC50)は、試験した最高濃度より大きいか、又はMC1R、MC3R、MC4R、及びMC5Rについて、それぞれ、>10,000nM、>1000nM、>10,000nM、及び>1000nMであると決定された。化合物1は、他のヒトMCRと比較して、MC2Rに対して2900倍超の選択性を示す。
【0159】
実施例2:オフターゲット選択性パネル
化合物1は、Eurofins Panlabs Discovery Services Taiwan,Ltd.のアッセイのSafetyScreen(商標)パネルで評価するために試験された。これには、Gタンパク質共役受容体、核内受容体、その他の細胞表面受容体、イオンチャネル、酵素、及びトランスポーターを含む87の標的における選択性アッセイが含まれる。化合物1は、単一濃度(10μM)で試験され、パネル全体でほとんど活性を示さなかった。セロトニン5-ヒドロキシトリプタミン1B受容体(5-HT1B)、カルシウムチャネルL型(フェニルアルキルアミン)、及びナトリウムチャネル(部位2)のみが、この濃度で70%超の阻害/活性を示した。
【0160】
機能的アゴニスト及びアンタゴニストモードにおける5-HT1B受容体に対する化合物1のその後の用量応答は、化合物1がアゴニスト活性(3000nMまでのシグナルなし)及び弱いアンタゴニスト活性(IC50約750nM)を有さなかったことを決定した。5-HT1Bに対するhMC2Rに対する化合物1の選択性は、2200倍超である。
【0161】
実施例3:ACTH誘導性コルチコステロンの抑制
化合物1の薬力学的(PD)効果を、ACTHの投与によって誘発されるコルチコステロン(ヒトにおけるコルチゾール)応答の抑制を評価することによって、ラットにおいて調べた。
【0162】
単回経口投与ACTHチャレンジ試験:
化合物1の単回経口投与が、ACTHチャレンジ試験に応答して2時間にわたってコルチコステロンを抑制する能力を、雄及び雌のラットにおいて評価した。1μg/kgのACTH(1~24)の急性IV投与は、雄及び雌のラットにおいてベースラインと比較して、血漿コルチコステロンレベルの堅牢な増加を誘導した。化合物1の経口投与は、ACTH刺激コルチコステロン分泌を用量依存的に抑制した。
【0163】
コルチコステロンの統計的に有意な抑制は、ビヒクル処置ラットと比較して、雄ラットで≧3mg/kgの化合物1(それぞれ、3及び10mg/kgで62%及び78%の抑制、
図1)及び雌ラットで≧1mg/kgの化合物1(それぞれ、1、3、及び10mg/kgで51%、71%、及び88%の抑制、
図2)で観察された。1μg/kgのACTH刺激急性アッセイにおいて決定された経口投与された化合物1の最小有効用量は、雄ラットにおいて3mg/kgであり、149ng/mLのC
max及び1400ng・hr/mLの最後の測定可能濃度(AUC
0-t)までのAUCと関連付けられた。
【0164】
繰り返しACTHチャレンジを伴う単回経口投与の効果:
繰り返しACTH(1~24)(1μg/kg)チャレンジ後の単回投与の化合物1のコルチコステロンを抑制する能力を評価して、ACTH刺激コルチコステロン応答の再現性及びコルチコステロン応答をビヒクルレベルに回復するのに必要な時間を決定した。
【0165】
図3に示されるように、各ACTH刺激試験後(化合物1の投与から1、4、24、及び48時間後)、コルチコステロンは、ビヒクル処置ラットにおいて、ベースライン(<100ng/mL)から>350ng/mLに再現可能に増加した。化合物1は、ビヒクル処置と比較して、経口投与後1時間(それぞれ、3及び30mg/kgで44%及び88%)及び4時間(それぞれ、3及び30mg/kgで36%及び84%)でACTH刺激コルチコステロンを抑制した。ACTH刺激コルチコステロンは、3又は30mg/kgの化合物1の単回経口投与後、24時間及び48時間で正常なビヒクルレベルに戻った。
【0166】
実施例4:動物疾患モデルにおけるACTH誘導性コルチコステロンの抑制
化合物1は、ラット及びマウスにおける過剰なACTH及び高コルチゾール血症の疾患モデルにおいて評価された。
【0167】
ACTHの連続ポンプ投与:
外因性ACTH(1~24)(100μg/kg/日)を、皮下に移植された浸透圧ポンプを介して雄ラットに投与した。化合物1を毎日繰り返し経口投与して7日間にわたってコルチコステロンを抑制する能力が評価された。
【0168】
10mg/kg/日以上で投与した化合物1は、1日目及び7日目の投与から1時間後に測定したコルチコステロンを用量依存的に抑制した(
図4)。
【0169】
追加的に、化合物1は、ビヒクル処置と比較して、10及び30mg/kg/日投与されたラットにおける副腎重量及び副腎皮質面積をalleviationさせることによって、副腎肥大を改善した(
図5)。
【0170】
ACTH分泌マウス下垂体細胞腫瘍モデル:
ACTH過剰のマウスモデルにおいて、化合物1を14日間毎日経口投与してコルチコステロンを抑制する能力が評価された。
【0171】
簡言すれば、雌Balb/cヌードマウスに、0日目に、後脇腹にAtT-20コルチコトロフ腫瘍細胞(300万個の細胞/注射/動物)を皮下に移植した。無腫瘍(NT)対照群には、培地のみを注射した。腫瘍が21日目に触知可能になったとき、マウスを、体重、及び0、15、30、又は100mg/kg/日の化合物1について無作為化した群に割り当てた。化合物1を、14日間(21日目~34日目)経口投与した。
【0172】
化合物1の毎日の経口投与は、実験の経過にわたって、腫瘍体積又は体重に有意な影響を及ぼさなかった。34日目に、ACTH分泌AtT-20コルチコトロフ腫瘍細胞を皮下に移植したマウスは、培地のみの偽注射を受けたマウスと比較して、血漿ACTHが3.8倍増加し、血漿コルチコステロンレベルが1.7倍増加した
図6。投与の最終日の投与から2時間後に評価されるように、ACTH分泌AtT-20細胞腫瘍を有するマウスにおけるビヒクル処置と比較して、15mg/kg/日以上の化合物1の繰り返し経口投与は、化合物1を、それぞれ、15、30、及び100mg/kg/日で、血漿コルチコステロンを73%、88%、及び92%で用量依存的に抑制した。ビヒクル処置と比較して、100mg/kg/日の化合物1では、ACTHレベルの2.4倍の増加が観察された。
【0173】
実施例5:ヒトにおける副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)に対する化合物1の効果を評価するための臨床試験
ヒトにおけるACTHアンタゴニストの臨床試験の非限定的な例は、以下に記載される。
【0174】
目的:
この第1相、first-in-human、二重盲検、無作為化、プラセボ対照研究は、健康なボランティアにおける化合物1の安全性、並びに曝露と、血液、唾液、及び尿中で測定されるACTH刺激及び内因性コルチゾール分泌を含む薬力学(PD)パラメータとの間の関係を評価する。結果は、クッシング病(CD)又は先天性副腎過形成(CAH)及び異所性ACTH症候群(EAS)を含む過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の他の疾患を有する患者における将来の後の研究においてエンドポイント及び他のパラメータの情報を提供するために使用される。
【0175】
介入:
スクリーニング期間:28日以内
【0176】
治療期間:SADで1日/単回投与、MADで10日
【0177】
評価及び観察期間:SADで6日、MADで17日
【0178】
フォローアップ期間:治験薬の最終投与から少なくとも7日後(計画:8日目/SAD及び20日目/MAD)
【0179】
SAD/パート1:上昇単回投与、無作為化、プラセボ対照、二重盲検;5つの計画されたコホート及び最大8つの合計コホート、n=64。各コホートでは、6人の被験者が化合物1を投与され、2人の被験者がプラセボを投与される。用量は、コホート1で10mgから250mg以下に漸増する。
【0180】
MAD/パート2:複数の上昇用量、無作為化、プラセボ対照、二重盲検;2つの計画されたコホート及び最大4つの合計コホート(n=36)。各コホートでは、6人の被験者が化合物1を投与され、3人の被験者がプラセボを投与される。用量は、SADでは用量を超えない。
【0181】
試験対象患者基準:
スクリーニング時に、18歳以上55歳以下の健康な男性及び女性の被験者。女性は、少なくとも12カ月の閉経後若しくは外科的に不妊であるか、又はスクリーニングから治験薬の最終投与から少なくとも30日後まで、安定かつ認可された極めて有効な避妊方法を使用することに同意しなければならない。男性は、外科的に不妊であるか、又は禁欲していなければならないか、又はスクリーニングから治験薬の最終投与から少なくとも30日後まで、出産可能な女性パートナーと性的に活発な場合、殺精子剤コーティングされたコンドームを使用することに同意しなければならない。女性パートナーはまた、この同じ期間に極めて有効な避妊形態を使用する必要がある。男性被験者はまた、研究期間中及び治験薬の最終投与から少なくとも90日後まで精子を提供しないことにも同意しなければならない。
【0182】
スクリーニング時の30分又は60分のACTH刺激血清コルチゾールの18μg/dL以上のピーク。
【0183】
除外基準:
被験者は、以下の基準に基づいて除外される:妊娠中又は授乳中の女性;化合物1による事前の処置;無作為化日前の3日以内又は5半減期のいずれか長い方の期間内に、局所、鼻腔、吸入、若しくは経口のコルチコステロイドを使用した場合、又は研究期間中に必要とされることが期待される場合;スクリーニング前の7日以内に、禁止処方薬若しくは非処方薬及び/又は非処方薬/代替医薬品の使用し、研究中にこれらの物質の使用を中止する意思がない(特に指定がない限り);本試験のスクリーニング前の30日以内のシトクロムP450 CYP3A4の強力な誘導剤である薬物の使用、又はスクリーニング前の14日以内のCYP3A4の強力阻害剤の使用;スクリーニング前の過去60日以内又は5半減期のいずれか長い方の期間内の任意の治験薬の使用;治験責任医師の意見では、被験者の本研究への適切な参加を危うくし得る任意の状態。
【0184】
アウトカム測定:
化合物1の単回投与及び複数回投与の安全性及び忍容性を評価すること。
【0185】
化合物1の単回投与及び複数回投与のPKを評価すること。
【0186】
ACTH刺激血清コルチゾール及び副腎アンドロゲン産生の抑制、早朝血清コルチゾール、並びに副腎アンドロゲン産生を含む、化合物1のPD効果を評価すること。
【0187】
MADフェーズでは、24時間尿遊離コルチゾール(UFC)は、クッシング病(CD)及び異所性ACTH症候群(EAS)の後の研究のための投薬を確認するために使用され得る初期用量反応データを収集するために評価される。
【0188】
加えて、副腎アンドロゲン及びコルチゾール前駆体分泌(それぞれ、A4及び17-OHPを含む)に対する化合物1の効果は、SAD及びMADの両方で評価され、これは、先天性副腎過形成(CAH)の後の研究のための投薬を支持するために使用され得る。
【0189】
潜在的な患者集団で上昇するACTH(1~39)は、内因性ACTHに対する薬物効果の理解を得るために指定された時点で測定される。
【0190】
ACTH刺激試験
ACTH刺激試験は、この研究の両方の段階にわたって複数の研究日に実施される。この試験は、その使用頻度及び検証のための副腎不全の診断のための診断「ゴールドスタンダード」とみなされる。
【0191】
最初に、ACTH刺激試験をスクリーニングで実施して、安全要素としての視床下部下垂体-副腎(HPA)軸を評価し、すなわち、試験に入る前に、対象が十分な副腎機能(ACTH刺激されたコルチゾール分泌のピークによって評価される)を有することを確実にする。研究中に、追加のACTH刺激試験を実施して、ACTHの外因性上昇並びにコルチゾール及びアンドロゲンの結果として得られる上昇を生じさせる。
【0192】
ACTH刺激試験は、断食中に実施される。PD分析の場合、血清コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、及びDHEAの測定のために血液サンプルを収集する。手順の概要は、以下のとおりである。「高用量」試験では、各対象は、各試験の開始時に、IV250μg用量(37ポンド超の対象については)のコシントロピン(ACTH(1~24))を投与され、「低用量」試験では、代わりに、1mcgが投与される。治験薬投与後2時間/時間0(±5分)で、血液サンプルを収集する。5分以内に、2分間にわたってコシントロピンIV注入を投与する。時間30分(±5分)に、血液サンプルを収集する。時間60分(±5分)に、血液サンプルを収集する。
【0193】
SAD血液バイオマーカー
内分泌バイオマーカーは、研究を通して評価される。
【0194】
朝バイオマーカー:
-1日目に開始してEOS(又はET)まで、血清コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、ACTH(1 39)、レニン、及びDHEASの測定のために、投与(約0800時間)前の15分以内に、空腹時投与前の血液サンプルを収集する。ACTH刺激試験が行われる日に、これらの試験は、治験薬投与の約2時間後に行われる。コシントロピン投与の前に、投与後2時間(±15分)で、コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、及びDHEAの測定のために、血液サンプルを収集する。次いで、コシントロピンを投与して、ACTH刺激試験の時間0を定義する。投与後2.5時間(±15分)/コシントロピン後30分で、コルチゾールの測定のために、血液サンプルを収集する。投与後3時間(±15分)/コシントロピン後60分で、コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、及びDHEAの測定のために、血液サンプルを収集する。
【0195】
中間日バイオマーカー:
-1日目、1日目、及び2日目に、投与後4時間(±15分)(約1200時間)の血清コルチゾールの測定のために、空腹時血液サンプルを収集する。ACTH刺激試験が実施される日に、この収集は、コシントロピン投与後120分であり、コシントロピン後コルチゾール収集時間は、時間30分(±5分)、時間60分(±5分)、及び時間120分(±5分)である。
【0196】
MAD血液バイオマーカー
内分泌バイオマーカーは、存在する場合、概日サイクルが果たす役割を評価するために、研究を通して評価される。
【0197】
朝バイオマーカー:
-1日目に開始してEOS(又はET)まで、血清コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、ACTH(1 39)、レニン、及びDHEASの測定のために、投与前の15分以内に、空腹時投与前の血液サンプルを収集する。ACTH刺激試験が行われる日に、これらの試験は、治験薬投与の約2時間後に行われる。コシントロピン投与の前に、投与後2時間(±15分)で、コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、及びDHEAの測定のために、血液サンプルを収集する。次いで、コシントロピンを投与し(「高用量」試験で250mcg、「低用量」試験で1mcg)、ACTH刺激試験の時間0を定義する。投与後2.5時間(±15分)/コシントロピン後30分で、コルチゾールの測定のために、血液サンプルを収集する。投与後3時間(±15分)/コシントロピン後60分で、コルチゾール、A4、17-OHP、アルドステロン、及びDHEAの測定のために、血液サンプルを収集する。
【0198】
中間日バイオマーカー:
スクリーニング及び2、3、5、6、7、8、10、11、及び12日目に、投与後4時間(±15分)(約1200時間)で血清コルチゾールの測定のために、空腹時血液サンプルを収集する。ACTH刺激試験が実施される日に、この収集は、コシントロピン投与後120分であり、コシントロピン後コルチゾール収集時間は、時間30分(±5分)、時間60分(±5分)、及び時間120分(±5分)である。
【0199】
24時間バイオマーカー:
24時間の血液バイオマーカープロファイルは、-1日目から開始して投与前の1日目まで、投与後の1日目から投与前の2日目まで、投与後の4日目から投与前の5日目まで、及び投与後の9日目から投与前の10日目まで測定される。
【0200】
プロファイルの最初の血液サンプルは、0800時間の朝(空腹時)血液バイオマーカー評価の一部として収集され、残りの5つのサンプルは、例えば、投与後4時間/1200時間(空腹時)、8時間/1600時間、12時間/2000時間、16時間(空腹時)2400時間(真夜中)、及び20時間/0400時間(空腹時)に4時間(±15分)毎に収集される。各時点で、血清コルチゾール、A4、17OHP、ACTH(1-39)が測定される。
【0201】
唾液コルチゾール
MADにおける24時間唾液コルチゾールの評価のために、唾液サンプルは、例えば、投与前から開始して、投与後4時間/1200時間(空腹時)、8時間/1600時間、12時間/2000時間、16時間(空腹時)2400時間(真夜中)、及び20時間/0400時間(空腹時)に4時間(±15分)毎に収集される。
【0202】
尿遊離コルチゾール(UFC)
MADにおける24時間UFCの評価のために、尿サンプルは、8時間(±15分)単位(すなわち、0~8時間、8~16時間、16~24時間)で3回のプールした捕獲物で24時間収集される。被験者は、治験薬投与前30分以内に排尿すべきである。各捕獲後の尿クレアチニン及び尿量の出力を測定する。
【0203】
SAD研究からの結果
SAD研究からの薬物動態結果を、
図7に示す。示されるデータは、平均±標準誤差である。全ての用量n=6。コホート4(n=6、80mg)は、高用量ACTH刺激試験で評価され、一方、コホート5(n=6、80mg)は、低用量ACTH刺激試験で評価された。半減期~24時間が観察され、有効な用量でtmax~1時間が観察された。
【0204】
化合物1は、用量比例曝露を伴う経口バイオアベイラビリティを示した。
【0205】
化合物1はまた、ACTH刺激試験の文脈において評価され、経口化合物1又はプラセボは、コシントロピン(ACTH(1~24))の静脈内(IV)投与の前に投与された。薬理学的介入の不在下では、ACTHのIV投与は、コルチゾールの分泌をもたらすのに対して、薬理学的介入は、刺激されていない基礎コルチゾールレベルの分泌を抑制することができる。
【0206】
化合物1の経口投与は、副腎からの基礎コルチゾール出力を急速に低減させた。
図8に示されるように、化合物1の投与の2時間後に基礎コルチゾールの急速な低減(80mgで56%)が観察された。コルチゾール産生の完全な抑制は、化合物1の投与時にこれ以上コルチゾールが産生されず、コルチゾールの半減期が66±18分であると仮定する(McKay Li,Cidlowski,JA.Pharmacokinetics of Corticosteroids in Kufe DW et al,editors,Holland-Frei Cancer Medicine 6
th edition.Hamilton(ON)2003を参照のこと)。示されるデータは、平均±標準誤差である。
【0207】
コシントロピン(ACTH(1~24))の前の化合物1の経口投与は、超病態生理学的高用量ACTH(250mcg)チャレンジ後の用量依存的で強力なコルチゾール抑制(41%)を示した(
図9)。コルチゾールAUCにおける測定された抑制%は、10mg、20mg、40mg、及び80mgの用量について、それぞれ、約9%、約22%、約36%、及び約41%であった。
【0208】
化合物1(80mg)の経口投与はまた、より疾患関連の低用量ACTH(1mcg)刺激チャレンジにおける正常なコルチゾールレベルの維持を実証し、コルチゾールレベルの48%の低減を示した(
図10)。80mgの化合物1で処置した対象において、高用量(250mcg)及び低用量(1mcg)のコシントロピンチャレンジ試験の両方において、コルチゾール分泌が抑制された(
図11)。PBO=プラセボ。
MAD研究からの結果
【0209】
10日間にわたる化合物1の40mgの1日用量を使用したMAD研究からの1日目及び10日目の薬物動態結果を、
図12に示す。示されるデータは、平均±標準誤差である。1日目のPKプロファイル及び曝露は、SAD研究からの40mgの単回投与に匹敵した。平均半減期は、約30時間であった。クリアランスの低減に起因して、慢性投与による蓄積は、SAD研究結果から予測されたものより約2.4倍高かった。
【0210】
高用量ACTH刺激試験では、化合物1は、投与の10日後に基礎コルチゾールレベル及びACTH刺激コルチゾールレベルを抑制した(
図13)。化合物1はまた、MAD試験を通して投与後4時間で基礎及びACTH刺激コルチゾール分泌を抑制したが、基礎非刺激コルチゾールの抑制は、24時間で(次の投与前に)観察されなかった(
図14)。したがって、最大のコルチゾール抑制は、24時間の概日サンプリングによって観察されるように、MAD研究を通して概日周期の早い段階で発生する(
図15)。PBO=プラセボ
【0211】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されているが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。いまや、本発明を逸脱することなく、当業者は多数の変形、変更、及び置換が想起され得る。本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替物が、本発明を実施する際に用いられ得ることを理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内の方法及び構造がそれによって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】