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特表2024-510276水の電気化学的再生処理のための装置及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】水の電気化学的再生処理のための装置及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240228BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20240228BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
B01D29/08 520A
B01D29/08 530D
B01D29/08 540A
B01D29/10 510D
B01D29/10 530A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557105
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 CA2022050375
(87)【国際公開番号】W WO2022192997
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/161,271
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/161,278
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351966
【氏名又は名称】ヴィリディス リサーチ インク
【氏名又は名称原語表記】VIRIDIS RESEARCH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100089923
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】カタルド-ヘルナンデス, マカレナ エー.
【テーマコード(参考)】
4D061
4D116
【Fターム(参考)】
4D061DA09
4D061DB09
4D061DB19
4D061DC11
4D061EA03
4D061EB04
4D061EB18
4D061EB19
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
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4D116GG40
4D116KK04
4D116QA27C
4D116QA27E
4D116QA27F
4D116QA27G
4D116RR19
4D116VV09
(57)【要約】
流体流から少なくとも1つの汚染物質を受け取って捕捉するように構成された保持材料を含む少なくとも1つの物理的保持ユニットと、物理的保持ユニットに動作可能に接続された、第1及び第2の電極を有する少なくとも1つの電気化学セルとを有する、流体流からの少なくとも1つの汚染物質の標的化された除去及び分解のための装置及び方法が提供される。少なくとも1つの電気化学セルの電気酸化反応によって生成された少なくとも1つの酸化剤が物理的保持ユニットに供給されて、保持材料内に保持及び捕捉された少なくとも1つの汚染物質と接触して分解する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流からの少なくとも1つの汚染物質の除去及び分解のための装置であって:
流体流の少なくとも一部分を入力流体流として受け取るための少なくとも1つの入口と、流体流の少なくとも一部分を出力流体流として排出するための少なくとも1つの出口、及び、
前記入力流体流から前記少なくとも1つの汚染物質を受け取り、捕捉するように構成される保持材料
を有する、少なくとも1つの物理的保持ユニット、並びに、
前記物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有する、少なくとも1つの電気化学セル、
を備え、
少なくとも1つの電気化学セル内の電気酸化反応によって生成された少なくとも1つの酸化剤は物理的保持ユニットに供給されて、保持材料内に保持され捕捉された少なくとも1つの汚染物質と接触し、これを分解させる
装置。
【請求項2】
前記流体流が、排水、廃水、または水を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記保持材料が化学的に不活性な材料を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記保持材料が、メッシュ材料、砂材料、およびビーズ材料からなる群から選択される、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
メッシュ材料の場合、前記保持材料が実質的に円筒形である、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電気酸化反応中に、前記少なくとも1つの第1の電極は電圧源の正極に接続され、前記少なくとも1つの第2の電極は前記電圧源の負極に接続される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の電極が、酸化鉛(IV)(PbO)、酸化スズ(IV)(SnO)、白金(Pt)、酸化ルテニウム(IV)(RuO)、酸化イリジウム(IV)(IrO)、及び、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)からなる群から選択され、前記少なくとも1つの第2の電極がステンレス鋼である、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電気化学セルは、前記第1及び第2の電極に対して実質的に直角な層流流体流れ場のために構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の電極が穿孔されている、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記物理的保持ユニットは、前記少なくとも1つの電気化学セルを収容し含むように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの汚染物質が有機化合物を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記有機化合物は、マイクロプラスチックを含むことができる、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
流体流から少なくとも1つの汚染物質を除去及び分解する方法であって、
保持材料を含む物理的保持ユニットを提供し、
物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有する少なくとも1つの電気化学セルを提供し、
流体流の少なくとも一部を入力流体流として物理的保持ユニットに導入し、少なくとも1つの汚染物質を保持材料によって受け取って捕捉することを可能にし、
少なくとも1つの酸化剤を生成するために電気化学セルを動作させ、
前記少なくとも1つの汚染物質を分解させるために、前記少なくとも1つの酸化剤を物理的保持ユニットに供給し、及び、
物理的保持ユニットからの流体流の少なくとも一部を出力流体流として排出する、
方法。
【請求項14】
前記方法が、前記物理的保持ユニットを通過する前記入力流体流のための乱流流体流路を生成することをさらに含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記乱流流体流路が渦を形成する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記出力流体流の少なくとも一部が、前記電気化学セルに再循環して戻される、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記電気化学セルを通過する再循環された出力流体流のための層流流体流路を生成することをさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記層流流体流路が、前記少なくとも1つの第1及び第2の電極に対して実質的に直角である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電気化学セルによって生成された前記酸化剤が、前記物理的保持ユニットに直接的又は間接的に供給される、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記入力流体流は、前記物理的保持ユニットに連続的に導入される、
請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願番号63/161,271及び63/161,278(両方とも2021年3月15日出願)に対する優先権の利益を主張する。それらが開示又は教示するすべてについて、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0002】
本明細書の実施形態は、全体として、水、廃水(wastewater)、及び、排水(greywater)などの流体を処理するための改善されたシステム及び方法に関する。具体的には、実施形態は、全体として、流体からの濾過された汚染物質の除去及び分解を向上させるために、汚染物質の濾過を電気化学的酸化プロセスと結合させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水生態系における農薬、染料、医薬化合物、マイクロプラスチック(MPs)、バイオフィルムなどの有機化合物汚染物質の拡がりは、特にプラスチック製品の急増に伴い、増加し続けている。証拠は、プラスチック廃棄物のほぼ71%がすでに環境に直接吸収されており、プラスチック廃棄物のほぼ800万トンが毎年海洋生態系と混合し、その数は2050年までに4倍に増加すると予測されていることを示唆している。
【0004】
排水及び廃水は地球上の全マイクロプラスチック汚染物質の60%を超えるマイクロプラスチック(例えば、マイクロビーズ、マイクロファイバー)の主要な担体であるが、船舶ベースの排水処理システムも、ほとんどの陸上ベースの廃水処理プラント(WWTPs)も、流出物から汚染物質をうまく除去することができない。
【0005】
廃水及び/又は排水を含む水から有機汚染物質を効果的に除去するための改善されたシステム及び方法が明らかに必要とされている。
【0006】
廃水から有機化合物汚染物質を除去するために、様々な試みがなされてきた。いくつかの試みは吸着及び膜分離技術などによる、汚染物質の廃水からの物理的分離に焦点を当ててきたが、他の試みは高度な酸化技術などによる汚染物質の酸化的分解に焦点を当ててきた。
【0007】
より具体的には、いくつかの膜分離技術は、沈殿処理、バイオフィルタ、バイオリアクタ、及び/又は生物学的活性フィルタを含む物理的保持方法を使用して、廃水からの有機化合物の選択的捕捉を提供することができる。例えば、いくつかの膜分離技術は、異なるサイズ及び特性の化合物を分離する能力によって特徴づけられる物理的濾過法を含む。
【0008】
しかしながら、公知の膜分離技術は効率が限られており、サイズ、形状、電荷、及び/又は化合物の種類、ならびに技術が単独で使用されるか、又は他の処理と組み合わせて使用されるかに大きく依存する。また、公知の膜分離技術は、多くの場合、化合物を分離する(例えば、膜自体が化合物と化学的に結合するように働く)際に膜が活性な役割を有することを必要とし、その結果、化合物は膜内に短時間保持され、膜の全寿命を減少させる(例えば、触媒で覆われた膜は、より短い寿命を有する)。公知の膜分離技術はまた、表面の付着物に悩まされ、膜透過流束及び保持低下の問題を引き起こし、効率的で安定した洗浄手順を必要とする。さらに、公知の膜分離技術はまた、典型的には、廃水から汚染物質を捕捉するのに役立つだけであり、捕捉された断片を分解するために追加の処理を必要とする。
【0009】
電気化学的酸化などの酸化的分解技術は、廃水中の有機化合物の迅速かつ非選択的な酸化を提供することができる。廃水の電気化学的処理の分野では、汚染物質の酸化に対する2つの主要なアプローチ、すなわち、アノード(陽極)表面上での直接的な、化合物の直接的電気化学的酸化、及び化学的酸化種(ヒドロキシル、塩素、酸素、もしくは過塩素酸塩ラジカルなど、又は次亜塩素酸塩、オゾン、もしくは過酸化水素などの化合物)のその場生成(in-situ)による化合物の間接的電気化学的酸化がある。これらの化学的酸化種はアノード表面上で直接生成され、その後、バルク溶液中の(すなわち、廃水中の)汚染物質を酸化する。
【0010】
流水平行平板、分割チャンバ、充填層電極、積層ディスク、同心円シリンダ、移動床電極、及びフィルタプレスを含む様々な電気化学セル構成が、流体の直接及び間接電気化学処理の両方のために開発されている。しかしながら、これらの電気化学セル構成の全てに共通するのは、低い動作効率及び性能であり、高いエネルギー消費及び/又は低い汚染物質除去率につながる。さらに、そのような電気化学セル構成はまた、電極の比較的短い寿命、及び特に犠牲陽極が使用される場合に、消費された電極を交換する必要性に関連するコストの増加に悩まされる可能性がある。
【0011】
例えば、廃水のイオン伝導度が非常に低いため、電解質として廃水を使用する既知のシステムは、電池効率を改善し、妥当な電池電圧を得るために、かなりの濃度の支持化学電解質の添加を必要とする。この要件は汚染物質及びpH放出限界に適合しない塩基濃度及びpHを有する追加の陽極液及び/又は陰極液の必要性をもたらし、処理された廃水の処分及び追加の電解質の取扱いの両方のための処理にコストを追加する可能性がある。大きな電極間隙及び低い表面積の電極もまた、効率損失及び低い汚染物質除去速度に寄与し得る。例えば、高い電極過電位を必要とする反応動力学が不十分な多孔質層及び非最適化触媒材料の細孔におけるゆっくりとした物質移動も、より低い性能効率及び損失に寄与する。そのような運転条件は、大型の複雑な反応器の必要性をもたらし得る。既知の酸化電気化学システムはまた、大量の追加的に添加される化学物質及び/又は供給酸素を必要とし得、追加のコストを生じ、しばしば環境に有害である二次汚染をもたらす。
【0012】
廃水処理のための電気化学セルの性能を高めるために、多くの試みがなされてきた。しかしながら、今日まで、廃水から汚染物質を除去するための改良された装置及び使用方法が依然として必要とされている。このような装置は、有機化合物の物理的保持を酸化ラジカルの生成と組み合わせて保持された化合物を分解するように動作する。そのような改良された装置は、その大きさ、形状、電荷、及び/又はタイプにかかわらず、汚染物質を効率的かつ効果的に分解するために、有機化合物の物理的捕捉及び酸化を結合することによって、高速物質移動(乱流)を高める。また、そのような改良された装置は二次汚染物質を生成することなく、かつpHを維持しながら、流体流内の有機化合物を迅速かつ非選択的に分解するように動作する二重機能システムを提供して、既存の技術に代わる環境に優しい、グリーンな代替物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
実施形態によれば、流体流から少なくとも1つの汚染物質を除去及び分解するための装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、装置が少なくとも1つの物理的保持ユニットを備え、ユニットは入力流体流として流体流の少なくとも一部分を受け取るための少なくとも1つの入口と、出力流体流として流体流の少なくとも一部分を放出するための少なくとも1つの出口とを有し、保持材料を含有し、保持材料は入力流体流から少なくとも1つの汚染物質を受け取って捕捉するように構成され、装置は少なくとも1つの電気化学セルを備え、セルは物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有し、少なくとも1つの電気化学セル内で電気酸化反応によって生成された少なくとも1つの酸化剤が保持材料内に保持され捕捉された少なくとも1つの汚染物質に接触し、それを分解させるために、物理的保持ユニットに供給される。
【0014】
いくつかの実施形態では、流体流が排水、廃水、または水を含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの汚染物質は、有機化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの汚染物質がマイクロプラスチックを含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、保持材料が化学的に不活性な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、保持材料がメッシュ材料、砂材料、およびビーズ材料からなる群から選択されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、電気酸化反応中に、少なくとも1つの第1の電極が電圧源の正極に接続されてもよく、少なくとも1つの第2の電極は電圧源の負極に接続されてもよい。少なくとも1つの第1の電極が、酸化鉛(IV)(PbO)、酸化スズ(IV)(SnO)、白金(Pt)、酸化ルテニウム(IV)(RuO)、酸化イリジウム(IV)(IrO)、及び、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)からなる群から選択され得る。少なくとも1つの第2の電極はステンレス鋼であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気化学セルが対向する第1及び第2の電極に実質的に直角な層流流体流れ場のために構成され得る(すなわち、第1又は第2の電極のうちの1つを通って流れる(例えば、有孔カソードを通って流れる)流体が対向する他の電極に実質的に直角であり得る(例えば、有孔カソードに動作可能に隣接するアノードに向く))。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の電極が穿孔されてもよい。
【0019】
実施形態によれば、流体流から少なくとも1つの汚染物質を除去及び分解するための装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法が保持材料を含む物理的保持ユニットを提供し、物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有する少なくとも1つの電気化学セルを提供し、流体流の少なくとも一部を入力流体流として物理的保持ユニットに導入し、少なくとも1つの汚染物質が保持材料によって受け取られ捕捉されることを可能にし、電気化学セルを動作させて少なくとも1つの酸化剤を生成し、少なくとも1つの汚染物質を分解させるために少なくとも1つの酸化剤を物理的保持ユニットに供給し、流体流の少なくとも一部を物理的保持ユニットから出力流体流として排出することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法が物理的保持ユニットを通過する入力流体流のための乱流流体流路を生成することをさらに含むことができ、乱流流体流路は渦を形成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、出力流体流の少なくとも一部が電気化学セルに再循環して戻されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法が電気化学セルを通過する再循環される出力流体流のための層流流体流路を生成することをさらに含むことができ、層流流体流路は少なくとも1つの第1及び第2の電極の反対側に実質的に垂直又は対向し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、電気化学セルによって生成された酸化剤が物理的保持ユニットに直接又は間接的に供給されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、入力流体流が物理的保持ユニットに連続的に導入されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態による、本装置を描写する一般化されたプロセスフロー図を示す。
図2】実施形態による、本装置の代替実施形態を描写する、一般化されたプロセスフロー図を示す。
図3】実施形態による、本装置のさらなる代替実施形態を描写する、一般化されたプロセスフロー図を示す。
図4】実施形態による、本装置による少なくとも1つの汚染物質の、除去及び分解の結果を示すグラフ表示を提供する。
図5】(A)は実施形態による、本装置の物理的保持ユニット(PRU)内で捕捉され、保持される汚染物質を描写する画像を示す。(B)は、実施形態による、汚染物質が除去され、分解された、(A)の物理的保持ユニット(PRU)を示す画像を示す。
図6】実施形態による、本装置の代替実施形態を描写する、一般化されたプロセスフロー図を示す;
図7】実施形態による、本装置の物理的保持ユニット(PRU)の代替実施形態の模式図を示し、PRUは、それを通る流体流れ渦を作り出すように構成される。
図8】実施形態による、図7の流体流れ渦によって引き起こされる乱流流体流路を表す例示的なコンピュータ流体力学(CFD)画像を、斜視側面図(A)において、及び、断面側面図(B)において示す。
図8(C)】図8(B)に示される断面側面図の図示において、流体流れをまとめた矢印を示す。
図9】(A)は、本装置の電気化学セルの代替実施形態の斜視断面図を示し、電気化学セルは、電気化学セルを通る電極に実質的に垂直な流体流路を形成するように構成される。(B)は、(A)に示される本装置の電気化学セルの代替実施形態の断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態によれば、水、排水、廃水などからの有機化合物を含む、流体流からの少なくとも1つの汚染物質の除去及び分解を向上させるための装置及び使用方法が提供される。いくつかの実施形態では、現在改良されている装置がバルク溶液の酸化を促進し、少なくとも1つの汚染物質の急速な酸化を提供するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本装置が再生式であってもよく、あらゆるサイズ、形状、及び種類の化合物を酸化することができる自己洗浄ユニットとして動作する。
【0027】
より具体的には、いくつかの実施形態によれば、流体流からの少なくとも1つの汚染物質の標的化された除去及び分解のための装置及び使用方法が提供される。システムは入力流体流として流体流の少なくとも一部分を受け入れるための少なくとも1つの入口と、出力流体流として流体流の少なくとも一部分を排出するための少なくとも1つの出口とを有し、入力流体流から少なくとも1つの汚染物質を受け取って捕捉するように構成された保持材料を含む少なくとも1つの物理的保持ユニットと、物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有する少なくとも1つの電気化学セルとを備え、少なくとも1つの電気化学セル内で電気酸化反応によって生成された少なくとも1つの酸化剤が物理的保持ユニットに供給されて、保持材料内に保持及び捕捉された少なくとも1つの汚染物質に接触して分解する。
【0028】
他の実施形態によれば、流体流から少なくとも1つの汚染物質を除去及び分解するための装置及び使用方法が提供され、この方法は、保持材料を含む物理的保持ユニットを提供し、物理的保持ユニットに動作可能に接続された第1及び第2の電極を有する少なくとも1つの電気化学セルを提供し、流体流の少なくとも一部を入力流体流として物理的保持ユニットに導入し、少なくとも1つの汚染物質が保持材料によって受け入れられ捕捉されることを可能にし、電気化学セルを動作させて少なくとも1つの酸化剤を生成し、少なくとも1つの汚染物質を分解するために少なくとも1つの酸化剤を物理的保持ユニットに供給し、物理的保持ユニットから流体流の少なくとも一部を出力流体流として排出することを含む。
【0029】
特定の用語が本明細書で使用され、以下に提供される定義に従って解釈されることが意図される。
【0030】
本明細書において、用語「汚染物質(contaminant(s))」及び/又は「汚染物質(pollutant(s))」は、流体流から除去される任意の分子、細胞、又は微粒子を意味するために互換的に使用され、マイクロプラスチック、マイクロファイバー、農薬、染料、医薬品、及び/又はバイオフィルムなどの有機化合物を含む懸濁及び/又は固体化合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、流体流の少なくとも一部が排水及び/又は廃水を含んでもよい。他の実施形態では、流体流の少なくとも一部が水浄化のための水を含んでもよい。
【0031】
本明細書では、「排水(greywater)」又は「廃水(wastewater)」という用語が一般に家庭、オフィス又は産業ビル、船舶、航空機、及び流し台、シャワー、風呂、及び洗濯機又は食器洗い機から発生する都市及び家庭の廃水(すなわち、トイレからの廃水を除く、又は糞便物質を含むすべての都市及び家庭の流体流)を意味するために、互換的に使用される。
【0032】
本明細書において、「マイクロプラスチック」、「MPs」、又は「マイクロビーズ」という用語は、様々な寸法、構造、密度、色、及びポリマーのタイプを有する、廃水を含む環境中の様々な流体中に見られる固体形態の汚染物質を意味するために使用される。マイクロプラスチックは一般に、繊維、球体、発泡体、シート、断片、及びフィルム、又はそれらの組み合わせとして形態学的に分類することができ、微小繊維が環境中で最も一般的に検出される。マイクロプラスチックはまた、分散した不溶性粒子として流体内にコロイド状に懸濁されてもよく、又はより大きな凝集体として懸濁されてもよい。
【0033】
本明細書では、「マイクロファイバー」がそれぞれ0.02~25.8繊維/L及び0.09~27.06mmの範囲の水中の平均濃度及びサイズを有するマイクロプラスチック繊維を意味するために使用される。衣料産業は環境におけるマイクロファイバーの主要な供給源であり、そこでは、マイクロファイバーが衣料品の洗浄の様々なステージ中に生成され、洗浄流出物などのプロセスからの廃水と共に放出される。このように、繊維形状のマイクロプラスチックは工業用及び住宅用の両方の衣料産業の放出から、また、風化のプロセスを介して起こり得るさらなる断片化を介して、環境中にますます見出されるようになっている。
【0034】
本明細書において、「酸化ラジカル」、「酸化種」、「酸化剤」、及び「酸化生成物」は酸化剤として作用する、すなわち、別の物質を酸化する能力を有する、任意の種又は物質を意味する。
【0035】
本明細書で使用され、定義される各用語は説明の目的のみのためであり、決して本技術の範囲を限定することを意図するものではない。
【0036】
ここで、本装置及び使用方法を、図1図9を参照して説明する。
【0037】
実施形態によれば、図1を参照すると、本装置10及び廃水の処理のための使用方法は、少なくとも1つの電気化学セル30に動作可能に接続された少なくとも1つの物理的保持ユニット20を備えることができる。後述するように、少なくとも1つの有機汚染物質を含有する入力流体流、すなわち「流入物」12の少なくとも一部を物理的保持ユニット20に導入することができ、それによって有機汚染物質が保持材料22によって捕捉される。保持されている間、汚染物質は少なくとも1つの電気化学セル30からの強酸化性ラジカルと接触し、それによって分解される。入力流体流12は本明細書では少なくとも1つの汚染物質を含有するものとして説明することができるが、本装置10は入力流体流12が汚染物質及び/又はパーフルオロアルキル物質(PFAs)などの他の持続性有機物から精製されて、より滅菌された又は蒸留された流体流を提供し得る、流体精製用途においても動作可能であり得ることを理解されたい。
【0038】
理論によって制限されることなく、また、フィルタ内の汚染物質の固定化を防止することを目的とする既知のシステムとは対照的に、物理的保持ユニット20内の汚染物質の現在の拘束は、より低い濃度の酸化物質で汚染物質の効果的かつより効率的な分解を提供する、小型の単純なシステムにおけるより長い、より目標とされる酸化期間を可能にする。直観に反して、本装置10の物理的保持ユニット20内の汚染物質の固定化がより長い反応時間にわたる流体の連続処理を可能にし、蓄積された廃水のための貯蔵タンクの必要性を排除する。
【0039】
例として、いくつかの用途では、本装置10がプラグアンドプレイ再生、セルフクリーニング、マイクロプラスチック緩和システムとして動作する、VEOX(商標)ユニットと呼ばれるコンパクトな独立型流体処理システムを備えてもよい。いくつかの用途では、システムが洗濯機などの都市又は家庭の廃水発生装置に接続され、化合物のサイズ、形状、装入量、及び/又はタイプにかかわらず、洗濯機から排出される有機化合物を破壊するように働くように設計され得る。他の用途では本装置10が動物用給水システム(例えば、鳥類の畜舎、又は家禽農場)に入る既存の水線に容易に組み込むことができ、VEOX(商標)ユニットは、流体流を大腸菌及びサルモネラ菌を含む様々な細菌から連続的に精製、洗浄、及び/又は消毒するのに役立つ。
【0040】
また、後述するように、汚染物質(及び酸化剤)を含まない処理済み出力流体流、又は「流出物」14の少なくとも一部は物理的保持ユニット20から通過することができ、それによって、出力流16の少なくとも第1の部分は少なくとも1つの電気化学セル30を通って再循環及び再循環され、出力流18の少なくとも第2の部分はさらなる処理、貯蔵、又は廃棄のために安全である。有利なことに、流出物16の少なくとも一部の再循環及び再使用が再生酸化プロセスを可能にし、化学物質の使用又は追加された廃棄物の発生なしに自己洗浄システムを提供する。
【0041】
上記のように、図1をさらに参照すると、本機器10は流体流から少なくとも1つの汚染物質を濾過及び保持するための少なくとも1つの手段を備えることができ、前記手段は、本明細書では物理的な保持ユニット20(「PRU」)と呼ばれ、PRU20への入力流体流12を受け入れるための少なくとも1つの入口端部13と、PRU20から出力流体流14を排出するための少なくとも1つの出口端部15とを有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、PRU20が入力流体流12を受け取り、そこを通過させるための容器を備えてもよい。いくつかの実施形態ではPRU20が実質的に垂直に構成される実質的に円筒形の容器を備えてもよいが、PRU20の任意のサイズ、形状、又は構成が企図される。
【0043】
いくつかの実施形態では、汚染物質を含有する入力流体流12の少なくとも一部を、入口13を介してPRUに導入することができる。上記のように、流体流12は、汚染物質を含有する廃水、又は精製されるべき水を含み得る。入力流体流12は、PRU20と流体連通する、流体供給パイプ11などの少なくとも1つの入口ヘッダ手段を通してPRU20に供給され得る。流体供給パイプ11は、PRU20の頂部又はその付近に配置されてもよく、PRU20の本体の周りに入力流体流12を均一に分散させるように中央に配置されてもよい。1つの流体供給パイプ11が図示されているが、必要に応じて、又は所望に応じて、任意の数の流体供給パイプ、ノズル、弁、ポンプ、マニホールドなどが使用され得ることが企図される。
【0044】
いくつかの実施形態では、PRU20が入力流体流12から少なくとも1つの汚染物質を濾過及び保持するための手段を収容及び支持するように設計され得、この手段はPRU20を通過する際に、流体流から汚染物質を受け取り、捕捉するように働く(例えば、図1の矢印23)。すなわち、入力流体流12が入口13を介してPRU20に導入されると、入力流12は流体流12中の汚染物質が保持材料22に接触し、その中に保持されるように、保持材料22を通って流れるように方向付けられ、それらをバルク溶液(すなわち、溶液の分子が他の溶液分子によってのみ影響され得、いかなる固体又は気体分子によっても影響され得ない、溶液のその部分)から濾過する。
【0045】
実施形態によれば、少なくとも1つの汚染物質を濾過するための手段は、任意の化学的に不活性又は不活性な濾過材を含み得る。いくつかの実施形態では、図1を参照すると、保持材料22はPRU20の断面全体にわたって実質的に水平に延在し、複数のアパーチャ又はスロット24を形成する、層状メッシュ材料を備えてもよい(例えば、図2、5(A)、及び5(B)を参照)。
【0046】
例えば、いくつかの実施形態では保持材料22がステンレス鋼製の織られた(woven/weaved)ワイヤメッシュ(例えば、40~100メッシュ;400~60μm;SS304業界標準の織られたワイヤメッシュ;又は約0.1mmのワイヤ厚、約1mの幅、及び約30mの長さを有する他のそのような市販のメッシュ)を含んでもよいが、そのような寸法はPRU20で使用されてもよく、又は使用されなくてもよい。開口部24は濾過された汚染物質を固定する一方で、依然としてPRU20を通る流体の流れを可能にするように、サイズ及び寸法を変えてもよい。
【0047】
他の実施形態では、図2を参照すると、保持材料22は固体ガラスビーズ(例えば、ホウケイ酸塩、直径6mm、3mm、1mm; Sigma Aldrich Z143952)、標準的な砂(例えば、粒径約0.2~0.8mm; Sigma Aldrich CAS番号14808-60-7; SiOモル質量60.08g/mol)、及び/又はステンレス鋼ビーズ(例えば、密度7.9g/cを有する0.9~2.0mmのブレンド)などの充填層を含み得る。
【0048】
メッシュ、砂、及びビーズフィルタ材料が本明細書に記載されているが、入力流体流12から汚染物質を物理的に濾過し、保持するための、当技術分野で知られている任意の適切なフィルタ材料が企図されることを理解されたい。そのようなフィルタ材料は少なくとも1つの汚染物質を捕捉し、PRU20内でのその保持及び反応時間を増加させるように働くことができ、その結果、少なくとも1つの汚染物質は少なくとも1つの電気化学セル30によって生成された反応剤によって連続的かつ均一に接触され得る(すなわち、フィルタ材料が、少なくとも1つの汚染物質が酸化剤に曝露される時間を増加させる)ことが望ましい。そのようなフィルタ材料は汚染物質が完全に酸化されるまでPRU20内に保持されるように、いかなる電荷又は結合親和性も使用することなく(すなわち、材料22は、汚染物質を保持/引き付けるために電荷を必要としない)、少なくとも1つの汚染物質の物理的分離を提供することが望ましい。このようにして、有利なことに、PRU20と電気化学セル30内で生成された酸化剤との間の連続的な相互作用によって、フィルタ材料が同時に酸化(及び洗浄)され、装置10のより長い寿命を提供する(故障又は汚損を防止するために、触媒が耐性フィルタ材料上に担持されるため)。
【0049】
いくつかの実施形態では、入力流体流12から少なくとも1つの汚染物質を濾過するための収容及び支持手段に加えて、PRU20はユニット20(図6参照)を通る乱流流体流路(すなわち、流体が不規則な揺らぎ、混合、及び/又は流体流速の大きさ及び向きの両方の変化を受けるようにされる場所)を生成又は引き起こすようにさらに構成されてもよい。例えば、図7を参照すると、PRU20は少なくとも1つの汚染物質を濾過するために、少なくとも1つの実質的に円筒状の保持手段22などの渦流パターンで入力流体流12を受容するように配置された保持手段22を収容し支持するように構成されてもよい。そのような実施形態では、PRU20そのものは渦状流体流れ模様(図8(A)~図8(C)参照)を生成するように設計されてもよく、又は加えて、PRU20は少なくとも1つの乱流発生器(例えば、渦乱流発生器、図示せず)に動作可能に接続されてもよく、乱流発生器は実質的にフィルタ手段22の周りを通過する流路(例えば、旋回流路、螺旋流路、又は円形流路)など、入力流体流12の乱流流体流路を生成するように動作可能である。円筒状の保持手段22が記載されているが、渦流ろ過のための任意の適切に構成された保持手段が企図されることを理解されたい。
【0050】
理論に限定されるものではないが、流入流12の乱流を増加させると、フィルタ手段 22の表面上での滞留時間及び反応時間を増加させることができ、渦度による混合を高めることができる。さらに、乱流流路はフィルタ手段22からの汚染物質(例えば、電気的に非反応性又は非酸化性)を緩和する働きをし、反応速度の改善及び目詰まりの低減を可能にすることができる。
【0051】
例えば、いくつかの実施形態では、乱流流路が生成されて、流入流12をフィルタ手段 22の外部の周りを実質的に下方に通過させ、次いで、フィルタ手段22の内部に対して上方に通過させることができる(図8(A)~図8(C)に図示するように)。いくつかの実施形態では、所望される場合、1つ又は複数の流体流ダイバータが提供され得、物理的保持ユニット20に入る流体12を方向付け、渦流経路の外側部分に沿って収集するように、より大きく、より密で、かつ/又はより塊状の粒子を付勢する遠心力を潜在的に生成することによって、流体内の少なくとも1つの汚染物質の濾過及び保持をさらに強化する。
【0052】
上記のように、実施形態によれば、本装置10は、少なくとも1つの電気化学セル30を備える。電気化学セル30はセル30内で電気化学反応によって生成された酸化化学種がPRU20に供給され得るように、かつ清浄な(例えば、イオン及び汚染物質のない)出力流体流14の少なくとも一部がセル30に再循環し戻され得るように、PRU20に動作可能に接続され、かつ流体連通していてもよい。このようにして、本電気化学セル30は、PRU20に酸化種を連続的に供給して、その中に保持された汚染物質を常に洗浄/分解することができる。有利なことに、本明細書に記載の装置10及び使用方法が自己充足再生流体処理システムを提供することを目的とする。
【0053】
図1を参照すると、セル30は少なくとも1つの電気化学反応を介して、反応性酸化剤又は化学種などの少なくとも1つの反応性生成物を生成するために、電圧源(例えば、DC電源、図示せず)に動作可能に接続された、カソード32及びアノード34などの少なくとも2つの電極を備え得る。いくつかの実施形態では、カソード32がNi、ステンレス鋼、Ti、NiCoLaOxなどの当技術分野で知られている任意の適切な材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアノード34が酸化鉛(IV)(PbO)、酸化スズ(IV)(SnO)、白金(Pt)、酸化ルテニウム(IV)(RuO)、酸化イリジウム(IV)(IrO)、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)などであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、電気化学セル30が活性であり、カソード32が電圧源の負極に接続され、アノード34が電圧源(例えば、DC電源、図示せず)の正極に接続される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反応性酸化剤が電気化学セル30によって生成され得、その中で処理されるべき少なくとも1つの汚染物質と接触するようにPRU20に供給され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、電気化学セル30が流体流12内の汚染物質の直接電気酸化のために構成されてもよく、一方、他の実施形態では電気化学セル30が汚染物質の間接電気酸化のために構成されてもよい。例えば、少なくとも1つの反応性酸化剤は単独で、又は入力流体流12と組み合わせて導入されてもよく(すなわち、電気化学セル30がPRU20の外側に配置され得る実施形態;図1及び2)、又は少なくとも1つの反応性酸化剤はPRU20内に生成されてもよい(すなわち、電気化学セル30がPRU20内に配置され得る実施形態;図3)。すなわち、いくつかの実施形態では、PRU20がその中に少なくとも1つの電気化学セル30を収容し、支持するように構成され得、少なくとも1つの電極32、34は保持材料による濾過としてさらに機能し、かつ/又は濾過を強化し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本装置10が電気化学セル30内の境界層の流れのよどみの影響を軽減するための手段をさらに備えてもよい。理論によって制限されるものではないが、物質移動が電気酸化反応の有効性に影響を及ぼす重要な因子であり得ることを考慮すると、乱流流体流路の生成はシステム効率を増加させ得る。例えば、電気化学的用途において電極表面上で起こり得る境界層の流れのよどみの影響を軽減することが望ましい場合がある。境界層の流れのよどみは典型的には流体の流れが電極に平行であるときに電極表面上で生じるが、反応速度を大幅に妨げ、システムの有効性を低下させる可能性がある。そのような条件はまた、反応物質の生成又は触媒作用が電極の電気化学的交換の近接性に依存する電気化学反応の発生を軽減する。
【0057】
実施形態によれば、図9(A)及び図9(B)を参照すると、本装置10は、電極に対して実質的に垂直である電気化学セル30aを通る流体流路を生成又は生じさせるように設計された代替の電気化学セル30aを備えてもよい。例えば、電気化学セル30aは、電極に対して実質的に垂直である電気化学セル30aを通る層状化された流体流れ場を形成するように幾何学的に成形された流体流調整デバイスを提供するように構成され得る。
【0058】
より具体的には、いくつかの実施形態では、電気化学セル30aが電圧源(例えば、DC電源、図示せず)に動作可能に接続され、少なくとも1つの電気化学反応(上述のように)を介して、反応性酸化剤又は反応種などの少なくとも1つの反応性生成物を生成する、カソード32及びアノード34などの少なくとも2つの電極を備えてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカソード32が電気化学セル30aを通って流れる流体(例えば、PRU20からの出力流体16の少なくとも一部)を対向する電極反応表面に向けるように動作可能な複数の穿孔35を備えてもよい。いくつかの実施形態では、入力流体流が電気化学セル30aに導入されると、入力流はセル30aを出る(その後、入力流体流12とともにPRUに入る)前に、有孔カソード32の穿孔35を通って、対向する又は動作可能に隣接するアノード34の表面に向かって流れるように方向付けられる。そのような流体流は、例えば、圧力又は流量容積均等化デバイスを介して層流流体の流れ場を通過することができる。
【0059】
理論に限定されるものではないが、穿孔されたカソード32が記載されているが、平行な方向の流れ状態で生じる境界層の流れのよどみが、近方電極表面渦発生によって緩和されるように、電気化学セル30a内の流路を成形するための任意の手段が企図される。また、そのような構成は電極を通って流れる流体として可変形状のパターン及び構造を使用することによって、局所的な流れ場の相互作用及び混合の強化の調整をさらに可能にし、相互作用する渦の生成を可能にし、加速された反応を促進し得ることも企図される。
【0060】
電気酸化反応によって生成される少なくとも1つの酸化剤(例えば、ヒドロキシルラジカル)との反応による酸化によって流体流から少なくとも1つの有機汚染物質を除去するのに適した任意の高度酸化プロセス(AOP)が企図されることが企図される。限定されるものではないが、純粋に電気化学的(ほとんどがアノード)、電気フェントン法(H生成カソードへのFe2+の付加)、及び/又は光電気化学的方法(Hをヒドロキシラジカル(・OH)に変換するための補助紫外線(UV)源を使用する)などを含む、任意のAPO化学的方法が使用され得ることが企図される。
【0061】
実施形態によれば、限定されないが、追加の又は層状のカソード/アノード、保持材料、ポンプ、バルブ、脱ガスユニット(ガスに酸化及び/又は分解される汚染物質)、攪拌機(保持材料中の酸化物質の分配を助けるため)、触媒/触媒組成物を含む任意の他の構成要素を、必要に応じて、本装置10に組み込むことができ、このようなシステムは自動的に制御及び監視される。
【0062】
例えば、図6に関連して、本装置10は、少なくとも1つの入力流体流12を貯蔵するための1つ以上の吸入ユニット40をさらに含むことができる(PRU20への導入前又はPRU20から放出に続けてのいずれか)。そのような吸入ユニット40は、流体の流れを制御するための1つ以上の吸入圧力センサ及び/又は流体制御弁41を備えてもよい。いくつかの実施形態では、本装置10が少なくとも1つの粒子分離器42及び/又は少なくとも1つの濁度センサ43をさらに備えることができる。理解されるように、本装置10は、少なくとも流体吸入弁44、過圧破裂ディスク45、少なくとも1つの再循環ポンプ46、及び対応する再循環流体制御弁46をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、本装置10がPRU20を出る排出流体16の少なくとも一部を廃棄するために、少なくとも1つのドレイン49と流体連通する少なくとも1つの排出流体ライン48をさらに備えることができる。排出流体ライン48は、少なくとも1つの流体制御弁50、50ii、…50を備えてもよい。
【0063】
流体流からの少なくとも1つの汚染物質の除去及び分解のための本装置及び使用方法を、以下の実施例によってより詳細に説明する。
【0064】
(実施例)
本明細書では、本方法が上記の実施形態に従って説明されるような少なくとも1つの装置を提供することを含む。
【0065】
例えば、少なくとも1つの電気化学セル30に動作可能に接続された保持材料22を含む少なくとも1つのPRU20が使用された。少なくとも1つの電気化学セル30はサイズが約100mm×50mm×3mmであり、約5mm離れているカソード32及びアノード34を備えていた。カソード32は、ステンレス鋼カソード32(グレード304)を含んでいた。2つのアノード34が使用され、アノード34は、BDD(DIACHEM BDD、多結晶、厚さ5μm、単結晶ニオブ板上への1000~4000ppmのホウ素ドーピング)及びRuOx(RuO被覆チタニウム)両面から構成された。約25L/分の流量、約4L/分の再循環速度、及び約1Lの再循環体積で、電気化学セル30の電流密度は、約25~200mA/cm(例えば、10mA/cm~50mA/cm図4)であった。
【0066】
入力流体流12の少なくとも一部をPRU20の入口端部13に導入し、保持材料22と接触させた。流体流12が保持材料22を通過すると、流体流内の汚染物質の少なくとも一部が、保持材料22によって受け取られ、捕捉された(図5(A)参照)。電気化学セル30はPRU20の入口端部13への同時導入のために、電気酸化反応によって少なくとも1つの反応性酸化剤を生成するように活性化された。少なくとも1つの反応性酸化剤と、保持材料22内に固定化された少なくとも1つの汚染物質との間の接触は、少なくとも汚染物質の除去及び分解を引き起こした(BDDアノード34及び50mA/cmでの処理の2時間後の図5(A)に示される同じ保持材料22を示す図5(B)を参照されたい)。保持材料22を通過する酸化剤及び汚染物質を含まない流体流は、出口端部15を介してPRU20から排出されて、出力流体流16を形成した。
【0067】
出力流体流16の少なくとも一部は本装置10による再利用及び再使用のために、電気化学セル30に再循環された。PRU20内の固定化された汚染物質は完全に(例えば、CO中に)無機化されるので、保持物質22は、入力流体流12からのさらなる汚染物質及び電気化学セル30からのさらなる反応性酸化剤を連続的に受容するように入れ込まれる。
【0068】
図4を参照すると、本装置及び使用方法は全有機炭素の95%までを破壊し、入力流体流12内に存在するプラスチックマイクロファイバーの99%までを破壊した(例えば、マイクロファイバーの質量除去は20及び50mA/cmでBDDを使用した2時間の処理後に、全有機炭素(TOC)の検出不可能な値に達する電流密度に対して有意な効果を示す)。当然のことながら、本装置10は少なくとも1つの汚染物質を分解するのに、既知のシステム(例えば、荷電された物理的分離膜を光又は電気化学と組み合わせるそのような既知のシステム、しかしながら、フィルタ膜がサイズ及び親和性によって分子を分離する際に活性な役割を有し、荷電されたフィルタ膜と酸化剤との間の相互作用を有さないことを必要とするシステム)よりも、約10倍効率的である。
【0069】
いくつかの実施形態が示され、説明されたが、それらの範囲、意図、又は機能性を変更又は逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更及び修正を行うことができることが、当業者によって理解されるのであろう。先の明細書で使用された用語及び表現は限定ではなく説明の用語として本明細書で使用されており、示された特徴及びその説明された部分の等価物を除外するそのような用語及び表現を使用することは意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8(C)】
図9
【国際調査報告】