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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5517 20060101AFI20240228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K31/5517
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/30
A61P25/28
A61P25/32
A61P17/02
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557190
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 AU2022050244
(87)【国際公開番号】W WO2022192964
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2021900789
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522089516
【氏名又は名称】キノシス・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・トーマス・ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】イアイン・スチュワート・マクレガー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA03
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA21
4C086ZC37
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の式(I)の化合物:
【化1】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、それを必要とする対象に投与し、それにより、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置することを含む、前記対象の前記攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法。
【請求項2】
対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防するための医薬の製造における、式(I)の化合物
【化2】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が式(Ia)の化合物
【化3】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、請求項1に記載の方法、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、請求項3に記載の方法又は使用。
【請求項5】
前記攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りが、前記対象の認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項6】
前記認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害が、脳への物理的変化若しくは損傷に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、請求項5に記載の方法又は使用。
【請求項7】
前記認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害が、1つ以上の遺伝子変異又はリスクバリアントによって引き起こされる、請求項5に記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記認知障害及び/又は知的障害が、神経発達障害に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記脳への前記物理的変化又は損傷が、神経変性状態、後天性脳損傷、化学的損傷、又は感染症に起因する損傷のうちの1つ以上によって引き起こされるか、又はそれらに関連する、請求項6に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記化学的損傷が、アルコール、薬物又は神経毒に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記後天性脳損傷が、外傷性脳損傷(TBI)を引き起こす前記脳への圧迫又は鈍的外傷、一過性脳虚血発作(TIA)に起因する虚血性損傷、虚血性脳卒中又は出血性脳卒中に起因する、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記神経変性状態が、アミロイドパシー、シヌクレイノパシー又はタウパシーを含む、前記脳内の異常なタンパク質沈着の存在を特徴とする、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記神経変性状態又は障害が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体病(レビー小体型認知症(DLB))、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、3型ゴーシェ病、及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項12に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記神経変性状態又は障害が、血管性認知症、前頭側頭型認知症、又は典型的には異常なタンパク質沈着物の沈着に関連しない他の形態の認知症から選択される、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りが、AD、血管性認知症、前頭側頭型認知症、混合型認知症、若しくはコルサコフ症候群のうちの1つ以上に関連するか、又はそれによって引き起こされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りが、ADに関連するか、又はそれによって引き起こされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項17】
前記神経発達障害が、脆弱X症候群、X連鎖知的障害-筋緊張低下-顔面異形-攻撃的行動症候群、クリーフストラ症候群、ハンター症候群(MPS II)、ADNP(活性依存性神経保護因子ホメオボックス)症候群、レット症候群、自閉症スペクトラム障害、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群、ブルンナー症候群、猫鳴き症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・レムリ・オピッツ症候群、スミス・マギニス症候群、結節性硬化症、CHARGE症候群、ソトス症候群、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、PTEN関連障害、脳性麻痺、及び胎児性アルコールスペクトラム障害からなる群から選択される、請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記治療有効量の前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが、処置を受けている前記対象の鎮静を引き起こさない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項19】
前記式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが、経口、鼻腔内、全身(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内)若しくは直腸に投与されるか、又は経口、鼻腔内、全身若しくは直腸投与用である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項20】
有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又はプロドラッグを含むキットであって、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施するための書面による説明書を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動障害の処置及び予防のための方法、及びそれにおける使用のための組成物に関する。
【0002】
関連出願
この出願は、豪州仮特許出願第2021900789号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
攻撃性は、神経変性疾患、神経発達障害、脳卒中及び外傷性脳損傷を含む、広範な障害、疾患、及び状態の症状として発症し得る。これらの障害の多くで、攻撃性の有症率が非常に高い。例えば、攻撃性は、脳卒中後の患者の35%、外傷性脳損傷後の患者の29%、アルツハイマー病を有する患者の40%に存在する。
【0004】
これらの症状における攻撃性の広範性及び消耗性にもかかわらず、抗攻撃薬(serenic)、すなわち攻撃性、激越、易怒性を特に標的とする薬を開発する試みは、これまでのところ成功していない。その結果、特定の状況下で激越、易怒性及び攻撃性を管理するために、最小限の有効性しかなく、大きな副作用を有する薬がよく処方される。例えば、抗精神病薬のリスペリドン及びアリピプラゾールは、無数の副作用を有するが、自閉症スペクトラム障害を有する子供の易怒性を管理するために処方され、アルツハイマー病患者の攻撃性を軽減するために、鎮静用量で、適応外で使用されている。
【0005】
コリンエステラーゼ阻害剤は、抑鬱、不快、感情鈍麻/無関心、及び不安に対して、小さいが測定可能な効果を有するようであるが、これらは激越又は攻撃性に対する効果的な短期処置とはみなされない。メマンチンはアルツハイマー病患者の処置においていくつかの利点を有する。しかし、臨床的に有意な激越を有する中等度から重度のアルツハイマー病患者における適切に管理された無作為化試験では、メマンチンによる激越の軽減は実証されなかった。バルプロ酸を含む抗けいれん薬は、最近の研究では肯定的な結果を示していない。リスペリドンなどの抗精神病薬は、激越や攻撃性の管理にある程度の効果を有するが、認知症を有する高齢患者では死亡率が増加するというFDAの黒枠警告があり、この患者集団には禁忌となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、アルツハイマー病及びその他の認知症を含む様々な患者群における攻撃性及び激越を処置及び管理するための、新規且つ改良された方法が必要とされている。
【0007】
本明細書における先行技術への言及は、その先行技術が任意の管轄区域における共通の一般的知識の一部を形成すること、又はその先行技術が当業者によって理解され、関連するとみなされ、及び/又は先行技術の他の部分と組み合わされることが合理的に期待され得ることの承認又は示唆ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物
【化1】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、それを必要とする対象に投与し、それにより、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置することを含む、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法を提供する。
【0009】
別の態様において、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防するための医薬の製造における、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用が提供される。
【0010】
さらにまた、本発明は、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの処置における使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを提供する。
【0012】
本発明はまた、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの処置又は予防における使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを含む医薬組成物も提供する。
【0013】
任意の態様において、攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りは、対象の認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害に関連し得るか、又はそれらによって引き起こされ得る。
【0014】
認知機能低下、認知障害又は知的障害は、脳への物理的変化若しくは損傷に関連するか、又はそれらによって引き起こされ得る。或いは、認知障害又は知的障害は、神経発達障害に関連し得るか、又はそれらによって引き起こされ得る。
【0015】
身体的変化又は脳への損傷は、神経変性状態の結果であってもよく、化学的損傷(例えば、アルコール又は薬物誘発性認知症及び関連する神経変性状態)、外傷性脳損傷(TBI)を引き起こす脳への圧迫若しくは鈍的外傷、一過性脳虚血発作(TIA)に起因する虚血性損傷、虚血性脳卒中若しくは出血性脳卒中、又は感染症による損傷のうちの1つ以上に起因する後天的脳損傷であってもよい。
【0016】
任意の態様において、神経変性状態は、アミロイドパシー、シヌクレイノパシー又はタウパシーを含む、脳内の異常なタンパク質沈着の存在を特徴とし得る。神経変性状態又は障害は、アルツハイマー病(AD)、レビー小体病(レビー小体型認知症(DLB))、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、3型ゴーシェ病、又はパーキンソン病を含み得る。神経変性疾患は、血管性認知症、前頭側頭型認知症、又は典型的には異常なタンパク質沈着物の沈着に関連しない他の形態の認知症であり得る。
【0017】
本発明の任意の態様において、攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りは、AD、血管性認知症、前頭側頭型認知症、混合型認知症、又はコルサコフ症候群のうちの1つ以上に関連し得る。
【0018】
好ましくは、攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りは、ADに関連する。したがって、本発明は、アルツハイマー病(AD)に関連する攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りを処置又は予防する方法を提供し、本方法は、ADと診断されたか、又はADの疑いがある対象者に、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを投与し、それにより対象のアルツハイマー病(AD)に関連する攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りを処置又は予防することを含む。
【0019】
神経発達障害は、遺伝子変異又は遺伝子リスクバリアント(リスクバリアント)に関連するか、又はそれらによって引き起こされる任意の神経発達障害であり得る。神経発達障害を引き起こすか、又はそれ関連する遺伝子変異又はリスクバリアントは、単一の遺伝子変異又はリスク変異体であってもよく、又は神経発達障害は、多元発生的原因を有し得る。単一遺伝子変異又はリスクバリアントは、SFARIデータベースにリストされている1つ以上の遺伝子、又は他の予測される若しくは公知の神経発達障害感受性遺伝子における変異を含み得る。任意の実施形態において、変異又はリスクバリアントは、ニューロリギン-3、ニューロリギン-4、ARID1B(ATリッチ相互作用ドメイン1B)、ASH1L(ASH1様ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ)、CHD2(クロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質2)、CHD8(クロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質8)、DYRK1A(二重特異性チロシンリン酸化調節キナーゼ1A)、POGZ(ZNFドメインで導出されたポゴ転移因子)、SHANK3(SH3及び複数のアンキリン反復ドメイン3)、SYNGAP1(シナプスRas GTPase活性化タンパク質1)、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)、FMR1(FMRP翻訳制御因子1)、ACTL6B、ACY1、AHI1、ALDH1A3、ANKS1B、AP1S2、ARID2、ATP1A1、ATP1A3、ALG6、ANKRD17、BCORL1、BRWD3、C12orf57、CACNA1A、CAMK2A、CAMK2B、CCNK、CDK13、CDK8、CEP290、CHD1、CDK19、CHKB、CLCN4、CNKSR2、CNTNAP2、CSNK2A1、CSNK2B、CTNNA2、CUX2、CYP27A1、DEPDC5、DHX30、DDX23、DLL1、DMD、DOLK、EEF1A2、ELP2、FBXO11、FBRSL1、FGF13、FRMPD4、GABBR2、GABRA3、GATM、GALNT2、HCFC1、HCN1、HDAC4、HDAC8、HEPACAM、HERC2、HNRNPD、HNRNPK、HNRNPR、HOXA1、HUWE1、INTS1、KAT6A、HNRNPUL2、KIF5C、KIF1A、KPTN、LNPK、MED12L、NACC1、NFIB、NFIX、NR2F1、NTNG1、NTNG2、NTRK2、OCRL、PACS2、PAK1、PAX6、NOVA2、PCCA、PCCB、NSD2、PHF8、PIK3R2、POU3F3、PPM1D、PPP2CA、PRKD1、PRODH、PRR12、POLR3A、PPP3CA、RAC1、RAD21、RALA、RFX4、RHEB、RLIM、RNF135、RORA、RPS6KA3、SATB2、RFX7、RIMS2、RSRC1、SETD1B、SGSH、SETD1A、SIK1、SLC1A2、SIN3B、SLC45A1、SMARCA2、SMC1A、SMC3、SNX14、STAG1、SOX6、SPTBN1、SYNE1、SYT1、TAF1、TBC1D23、TBX1、SUPT16H、TET3、TM4SF20、TRAF7、TRAPPC6B、TRRAP、TTI2、TTN、UNC13A、USP7、USP9X、VAMP2、WASF1、WDR26、XPC、YWHAG、ZMIZ1、ZMYM2、ZSWIM6、GNB2、ZBTB7A、KCNA2、TFE3、H1-4、PTPN4、及びGRIA3のうちの1つ以上の遺伝子に存在し得る。特定の実施形態では、遺伝子変異は、ニューロリギン-3-遺伝子におけるR451C点変異を含み得る。
【0020】
任意の実施形態において、遺伝子変異又はリスクバリアントに関連するか、又はそれらによって引き起こされる神経発達障害は、脆弱X症候群、X連鎖知的障害-筋緊張低下-顔面異形-攻撃的行動症候群、クリーフストラ症候群、ハンター症候群(MPS II)、ADNP(活性依存性神経保護因子ホメオボックス)症候群、レット症候群、自閉症スペクトラム障害、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群、ブルンナー症候群、猫鳴き症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・レムリ・オピッツ症候群、スミス・マギニス症候群、結節性硬化症、CHARGE症候群、ソトス症候群、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及びPTEN関連障害からなる群から選択され得る。
【0021】
神経発達障害は、物理的若しくは化学的損傷(アルコール又は薬物など)、又は炎症性免疫反応若しくは代謝障害による損傷を含む、先天性脳損傷の結果である可能性もある。神経発達障害は、脳性麻痺、胎児性アルコールスペクトラム障害又は注意欠陥/多動性障害(ADHD)であり得る。
【0022】
特定の好ましい実施形態では、神経発達障害はADHDである。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、処置を受けている対象の明白な鎮静を同時に引き起こさない。
【0024】
本発明の任意の方法又は使用において、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、経口、鼻腔内、全身(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内)若しくは直腸に投与される。
【0025】
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又はプロドラッグを含むキットも提供し、ここで、キットは、任意選択により、本発明の方法を実施するための書面による説明書を含む。いくつかの実施形態では、これらの医薬組成物及びキットは、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて使用され得る。
【0026】
本発明の任意の方法、使用又はキットを含む本発明の任意の態様において、式(I)の化合物は、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0027】
化合物は、二塩酸塩(CMPD1-2HCL)などの、化合物1の塩酸塩であってもよい。
【0028】
化合物は、化合物1のリン酸付加塩(CMPD1-PO4)であってもよい。リン酸付加塩は、化合物1のリン酸塩と呼ばれ得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、文脈上別段の必要がある場合を除き、「含む(comprise)」及びその変形、例えば「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含んだ(comprised)」という用語は、さらなる添加物、成分、整数又はステップを排除することを意図するものではない。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「症状」及び/又は「少なくとも1つの症状」への言及は、1つ以上の症状などを含み得る。
【0031】
「及び/又は」という用語は、「及び」又は「又は」を意味することができる。
【0032】
名詞に続く「(s)」という用語は、単数形若しくは複数形、又はその両方を企図する。
【0033】
本明細書で別途定義しない限り、化学用語は、当技術分野で公知のそれらの一般的な意味を有する。
【0034】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される「C1~5アルキル」という用語は、1~5個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を指す。当業者によって理解されるように、「C1~5アルキル」という用語は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、整数のうちの任意の2つを含む範囲の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。適切なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルが含まれるが、これらに限定されない。C1~4アルキルは、任意選択により1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、基-OHを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される「OC1~5アルキル」という用語は、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基を指す。当業者によって理解されるように、「OC1~5アルキル」という用語は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、それらの整数のうちの任意の2つを含む範囲の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。適切なOC1~5アルキル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシが含まれるが、これらに限定されない。OC1~5アルキルは、任意選択により1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)又はヨウ素(ヨード)を指す。
【0038】
本発明のさらなる態様、及び前の段落で説明された態様のさらなる実施形態は、例として与えられ、添付の図面を参照して、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】KNX100用量反応。ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、集団飼育マウスよりも、闘争(A)、ハドリング(B)に有意に長い時間を費やし、有意に長い距離を移動した(D)。集団飼育マウスとビヒクルで処置された単独飼育マウスとの間でグルーミングに差はなかった(D)。KNX100(その二塩酸塩)は、用量依存的に闘争(A)及び移動距離(D)を阻害し、用量依存的にハドリング(B)及びグルーミング(C)を増加させた。#p≦0.05、##p≦0.05対集団飼育。*****p≦0.00001用量の線形傾向対比(単独飼育群のみ傾向対比を評価した)。
図2】KNX100の経口投与。マウスを3つの群:VEH(集団飼育)、VEH(単独飼育)及びKNX100(単独飼育、20mg/kg PO)に分けた。5分間の攻撃性試験セッションの30分前に、マウスにビヒクル生理食塩水又は生理食塩水中のKNX100(その二塩酸塩)のいずれかを強制経口投与した。ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスよりも有意に長い時間を闘争に費やした。KNX100で処置されたマウスは、単独飼育のビヒクルで処置されたマウスよりも闘争に費やした時間が有意に短く、集団飼育マウスと比較して闘争に費やした時間に有意差はなかった。
図3】KNX100対リスペリドン。ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、集団飼育マウスよりも有意に長い時間をハドリングに費やした(B)。集団飼育マウスとビヒクルで処置された単独飼育マウスとの間で、闘争(A)若しくはグルーミング(C)に費やした時間、又は移動距離(D)に差はなかった。0.1mg/kgのリスペリドン及び10mg/kgのKNX100(その二塩酸塩)はいずれも、闘争を有意に阻害し(A)、ハドリングを増加させた(B)。リスペリドンのみがグルーミングに費やす時間を有意に増加させた(C)。リスペリドン及びKNX100はいずれも、ビヒクルで処置された単独飼育マウスと比較して、移動距離を有意に減少させた。しかし、リスペリドンは、KNX100よりも有意に大きく運動活動の阻害を引き起こした(D)。#p≦0.05、##p≦0.01、####p≦0.0001対集団飼育。**p≦0.01、***p≦0.001、*****p≦0.00001対ビヒクル処置単独飼育。+++p≦0.001対0.1mg/kgリスペリドン。
図4】侵入者マウスの攻撃の頻度に対するKNX100リン酸塩の効果。データは、平均値±SEMとして表される。*p<0.05、ビヒクルで処置されたAPP/PS1群と比較(ダネット検定)。
図5】侵入者マウスを攻撃するまでの時間に対するKNX100リン酸塩の効果。データは、平均値±SEMとして表される。*p<0.05、ビヒクルで処置されたAPP/PS1マウスと比較(ダネット検定)。~p<0.086、ビヒクルで処置されたAPP/PS1マウスと比較(ダネット検定)、フィッシャーのLSD検定を使用してp=0.022。
図6】隔離されたマウスの闘争に対する急性対亜慢性のKNX100の効果。急性及び亜慢性のKNX100(そのリン酸塩、15mg/kg遊離塩基相当量p.o.)はいずれも、隔離されたマウスにおいて、闘争に費やす時間の増加(A)、闘争回数の増加(B)、及び最初の闘争までの時間の短縮(C)を防止し、同様に効果的であった。バー及びエラーバー(A及びB)は平均値+SEMを表す。白丸は生データである。***p<0.001対VEH集団飼育、###p<0.001対VEH単独飼育。
【発明を実施するための形態】
【0040】
ここで、本発明の特定の実施形態に詳細に言及する。本発明を実施形態に関連して説明するが、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されよう。逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替物、修正物、及び均等物を包含することを意図している。
【0041】
当業者であれば、本発明の実施に使用できる、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明は、記載された方法及び材料に限定されるものでは決してない。本明細書に開示及び定義された本発明は、本文又は図面に言及され、又はそれから明らかな、個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されよう。これら全ての異なる組み合わせは、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0042】
この明細書を解釈する目的で、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、その逆も同様である。
【0043】
現在、アルツハイマー病及び認知症などの神経変性疾患における攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの軽減を特異的に標的とした薬剤は承認されていない。現在まで、これらの特定の患者群の症状を安全に処置できる鎮静薬を特定する試みは成功していない。社会的相互作用を促進する能力があることで知られる薬物を別用途で利用する試みは成功しておらず、したがって、ある薬物が向社会的行動を促進する能力は、攻撃性を処置するための同じ薬物の有用性を示す信頼できる指標ではないことが研究によって示されている。例えば、げっ歯類の社会的相互作用を増加させるベンゾジアゼピンは、非適応的攻撃性のモデルにおいて攻撃性を増加させる。
【0044】
この背景に対して、本発明者らは、驚くべきことに、神経変性疾患のモデルを含む、様々な状態での攻撃性の軽減における使用のための候補薬剤を同定するために使用されるモデルにおいて、式(I)の化合物(以下に示す)が攻撃性及び激越を有意に阻害できるという予想外の特性を有することを見出した。式(I)の化合物は、前臨床モデルにおいて強力な抗依存症効果を有することが過去に記載されていたが、驚くべきことに、これらの化合物が攻撃的行動にも重大な効果を有し得ることが見出された。
【0045】
したがって、本発明は、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法を提供し、本方法は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグを対象に投与するステップを含む。
【0046】
本発明はまた、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防するための医薬の製造における、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグの使用に関する。
【0047】
本発明はまた、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法における使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグに関する。
【0048】
症状及び処置対象
本発明の方法、組成物及び使用は、様々な患者群、特に、
・以下を含む身体的変化又は脳への損傷;
○脳内の異常なタンパク質沈着物、ニューロン喪失を特徴とする神経変性疾患;
○感染症による認知症;
○外傷性脳損傷;
○虚血性脳損傷(例えば、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作又は虚血性脳卒中の後);
・脳への化学物質誘発性損傷(アルコール誘発性認知症又は薬物若しくは重金属への曝露によって引き起こされる損傷など);
・脳への栄養欠乏誘発性損傷(アルコール乱用又はその他の原因に起因する重度のチアミン欠乏によって引き起こされるコルサコフ症候群など);
・神経発達障害(特に、遺伝子変異又はリスクバリアントに関連するものであるが、発達初期における脳への化学的若しくは物理的損傷に関連するか、又はそれによって引き起こされるものも含む)
のうちの1つ以上によって引き起こされるか、又はそれらに関連するものを含む、認知機能低下、認知障害、及び/又は知的障害を有する患者における、攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの処置及び/又は予防において、特に用途が見出される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「攻撃性」は、自分自身、他者及び/又は物に向けられる明らかに敵対的で有害な行動を指す。攻撃性は、言語的、非言語的、又は物理的であり得る。これは適応的攻撃性又は非適応的攻撃性に分類できる。
【0050】
本発明による処置を必要とする攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りは、神経変性状態の結果である認知機能低下に関連し得る。神経変性状態は、アミロイドパシー、シヌクレイノパシー、又はタウパシーから選択され得る。任意の実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、軽度認知障害、レビー小体病(レビー小体型認知症(DLB))、又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含み得る。
【0051】
攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りは、脳への鈍的外傷の結果であり得、外傷性脳損傷(TBI)を引き起こす。
【0052】
攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りは、虚血性脳損傷に関連している可能性があり、これは、一過性脳虚血発作又は脳卒中などの虚血の結果であり得る。
【0053】
任意の態様において、攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りは、特発性、すなわち原因が不明であり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、認知障害又は神経認知障害(NCD)は、学習、記憶、知覚、及び/又は問題解決を含む認知能力に主に影響を与える、精神的健康及び/又は神経学的障害を指す。神経認知障害には、せん妄、並びに軽度及び重度の神経認知障害(以前は認知症として知られていた)が含まれる。これらは(発達性ではなく)後天的な認知能力の欠損によって定義され、典型的には機能低下を表し、根底に脳の病変を有し得る。DSM-5は、認知機能の6つの主要ドメイン:実行機能、学習及び記憶、知覚・運動機能、言語、複雑性注意、及び社会的認知を定義する。
【0055】
アルツハイマー病は神経認知障害の大部分を占めるが、前頭側頭変性症、血管性認知症、ハンチントン病、レビー小体病、外傷性脳損傷(TBI)、パーキンソン病、プリオン病、HIV感染による認知症/神経認知の問題を含む、記憶、思考、推論能力などの精神機能に影響を与える様々な病状が存在する。
【0056】
神経認知障害は、症状の重症度に基づいて軽度及び重度として診断される。当業者であれば、認知症若しくは関連する神経認知障害のリスクを有する対象を特定する、又は本明細書に記載されるもののいずれかを含む神経変性疾患を有する対象を診断するための、標準的なアプローチに精通しているであろう。
【0057】
同様に、当業者であれば、患者が知的障害、例えば、神経発達障害に関連する知的障害を有するかを特定する;及び患者が本発明による処置を必要とする攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りを有するかをさらに決定するための、標準的な方法に精通しているであろう。そのような方法は、遺伝子試験、完全な病歴及び家族の病歴の取得、及び様々な行動及び認知試験を含み得る。
【0058】
例えば、神経変性疾患の状況において、生存している患者でこれらの状態(ADを含む)の多くを診断するための決定的な試験は存在しないが、当業者であれば、可能性の高い診断を予測し、それにより本発明による処置を受ける患者を特定するために、必要な情報収集に精通しているであろう。例えば、ADの診断は、典型的には、以下の情報の収集を含む:
・完全な病歴及び家族の病歴;
・基本的な健康診断(血液検査、尿検査);
・神経心理学的検査及び知的機能検査(例えば、記憶検査、問題解決、言語検査、ミニメンタルステート検査(MMSE));
・患者の行動を包括的に把握するための家族との面談;
・他の脳病変及び認知症のサブタイプを除外し前駆段階(軽度認知障害)からADへの移行を予測するために、プラークを含有する領域を特定するための脳の医療画像(例えば、MRI、CT、SPECT、又はPETスキャン);
・遺伝的要因(ADの家族歴);
・環境要因(アルミニウム、亜鉛、その他の金属への曝露)。
【0059】
国立神経・コミュニケーション障害・脳卒中研究所(NINCDS)及びアルツハイマー病・関連障害協会(ADRDA、現在はアルツハイマー協会として知られる)は、1984年に、最も一般的に使用されるNINCDS-ADRDAアルツハイマー診断基準を確立し、これは2007年に大幅に更新された。これらの基準では、認知障害の存在及び認知症症候群の疑いが、ADの可能性又は推定の臨床診断のための神経心理学的試験によって確認されることが求められる。確定診断には、脳組織の顕微鏡検査を含む病理組織学的確認を要する。診断基準と最終的な病理組織学的確認との間で、良好な統計的信頼性及び妥当性が示されている。ADでは、記憶、言語、知覚能力、注意力、運動能力、見当識、問題解決、及び実行機能能力の8つの知的ドメインが最も一般的に障害される。これらのドメインは、アメリカ精神医学会が発行する精神障害の診断及び統計マニュアル(DSM-IV-TR)にリストされているNINCDS-ADRDAアルツハイマー基準と同等である。
【0060】
ADは段階的に進行し、軽度の物忘れから重度の認知症までに及ぶ。疾患の経過及び機能低下の速度は人によって異なる。症状の発症から死亡までの期間は5~20年であり得る。
【0061】
認知症の初期兆候は微妙で漠然としており、すぐに明らかにならない場合がある。一般的な症状は以下を含み得る:
・進行性且つ頻繁な記憶喪失
・混乱
・性格の変化
・感情鈍麻及び引きこもり
・日常的な作業を遂行する能力の喪失。
【0062】
AD(認知症の前段階)の最初の症状は、よく誤って老化又はストレスが原因であるとされる。詳細な神経心理学的試験により、ADの臨床診断基準を満たす最長8年前に軽度の認知障害が明らかになることがある。これらの初期症状は、日常生活の最も複雑な活動に影響を与え得る。最も顕著な欠陥は短期記憶喪失であり、これは、最近学んだ事実を思い出すことの困難、及び新しい情報を取得することの不能として現れる。
【0063】
注意力、計画、柔軟性、及び抽象的思考といった実行機能の微妙な問題、又は意味記憶(意味の記憶、及び概念の関係性)の障害も、ADの初期段階の症状である可能性がある。感情鈍麻はこの段階で観察される可能性があり、疾患の経過を通じて最も持続する精神神経症状として残存する。抑鬱症状、易怒性、及び微妙な記憶障害の自覚の低下も一般的である。この疾患の前臨床段階は、軽度認知障害(MCI)とも呼ばれる。これは、通常の老化と認知症の間の移行段階であることがよく見出される。MCIは様々な症状を呈する可能性があり、記憶喪失が主な症状である場合、これは「健忘性MCI」と呼ばれ、アルツハイマー病の前駆段階としてよく見られる。
【0064】
ADを有する人においては、学習及び記憶の障害が増大し、最終的には確定診断につながる。少数の割合では、言語、実行機能、知覚(失認)、又は動作の実行(失行)の困難さが記憶の問題よりも顕著である。ADは全ての記憶能力に等しく影響を与えるわけではない。その人の人生の古い記憶(エピソード記憶)、学習した事実(意味記憶)、及び潜在記憶(フォークを使って食べること、又はどのようにグラスから飲むかなどの、物事のやり方に関する身体の記憶)は、新しい事実又は記憶よりも影響を受ける程度が小さい。
【0065】
言語の問題は、主に語彙の減少及び語の流暢性の低下によって特徴付けられ、話し言葉及び書き言葉の全般的な貧困化につながる。この初期段階では、アルツハイマー病を有する患者は、通常、基本的な考えを適切に伝えることができる。書く、絵を描く、服を着るなどの細かい運動作業を行っているときに、特定の動作の調整及び計画の困難(失行)が存在し得るが、通常は気づかれない。疾患が進行するにつれて、ADを有する患者は多くの作業を独立して実施し続けることができる場合が多いが、最も認知的に要求の高い活動については支援又は監督を要し得る。
【0066】
進行性の機能低下により、最終的には自立が妨げられ、対象は日常生活の最も一般的な活動を行うことができなくなる。語彙を思い出すことができないために言語障害が顕著になり、これは、頻繁な誤った単語の置き換えにつながる(錯語)。読み書きの能力も徐々に失われる。時間が経過し、ADが進行するにつれて、複雑な運動シーケンスが調整されなくなるため、転倒のリスクが高まる。この段階では、記憶障害が悪化し、近親者を認識できなくなり得る。以前は損なわれていなかった長期記憶が損なわれる。
【0067】
神経変性/神経認知機能低下が進行するにつれて、行動変化及び神経精神医学的な変化がより多く見られる。一般的な徴候は、徘徊、易怒性及び感情易変性であり、泣くこと、予期せぬ攻撃性の爆発、介護への抵抗につながる。夕暮れ症候群も現れ得る。ADを有する人のおよそ30%が、錯覚的誤認及びその他の妄想症状を発症する。対象はまた、自己の疾患の過程及び制限についての洞察を失う(病態失認)。尿失禁が発生し得る。これらの症状は、親族及び介護者にストレスを生じるが、これは、その人を在宅介護から他の長期介護施設に移すことで軽減できる。
【0068】
レビー小体型認知症(DLB)は、幻視及び「パーキンソン症」の主症状を有する認知症である。パーキンソン症は、振戦、筋肉の硬直、及び感情のない顔などのパーキンソン病の症状である。DLBにおける幻視は、一般に人又は動物の非常に鮮明な幻覚であり、眠りに落ちようとしているとき、又はちょうど目覚めたときによく発生する。その他の顕著な症状としては、注意力、組織力、問題解決及び計画(実行機能)の問題、視空間機能の困難が挙げられる。
【0069】
画像検査によって必ずしもDLBの診断がなされるわけではないが、いくつかの兆候は特に一般的である。DLBを有する人は、SPECTスキャンで後頭低灌流、又はPETスキャンで後頭低代謝を示す場合が多い。一般に、DLBの診断は単純であり、それが合併症のない限り、脳スキャンは必ずしも必要ではない。
【0070】
当業者はまた、対象が外傷性脳損傷(TBI)に関連した攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りを有するかどうかを決定するための標準的なアプローチにも精通しているであろう。対象は、1つ以上の脳領域に炎症及び/又はタウ沈着を有し得、これは磁気共鳴画像法(MRI)及び/又は陽電子放出断層撮影法(PET)の画像化によって特定することができる。
【0071】
完全な病歴は、攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りがTBIに関連しているか、又はTBIによって引き起こされる可能性が高いかを決定することにも役立つ。TBIは、転倒、暴行、自動車事故、スポーツ若しくはレクリエーション損傷、揺さぶられっ子症候群、銃創、闘争損傷、又は電気ショックによって引き起こされ得る。
【0072】
患者/対象は、記憶喪失、抑鬱、気分変動、平衡感覚障害、不安、薬物乱用、強迫性障害、及び感情の抑制のうちの1つ以上を含む、TBIに関連する1つ以上のさらなる神経学的症状を有し得る。
【0073】
TBIの重症度は、グラスゴー昏睡スケール(GCS)スコア、TBIのレベルの測定(例えば、人の意識、記憶喪失、及びGCSのレベルのランク付け)、発話及び言語試験、認知及び神経心理学的試験、並びに画像試験などであるがこれらに限定されない、当技術分野で公知の1つ以上の試験を使用して推定することができる。www.nichd.nih.gov/health/topics/tbi/conditioninfo/diagnoseを参照されたい。TBIの診断のための方法及び試験は、例えば、Byrnes et al.,Front Neuroenergetics,2013,5:13;Mutch et al.,Neurosurg Clin N Am,2016,27:409-439;Prince et al.,Brain Sci,2017,7:105;及びReis et al.,Int J Mol Sci,2015,16:11903-11965にも記載されている。
【0074】
同様に、虚血性脳損傷(例えば、出血性脳卒中、一過性脳虚血発作又は虚血性脳卒中の後)、化学物質誘発性脳損傷、栄養欠乏に関連する脳損傷、並びにそれらと攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りの虚血性脳損傷との関連性の可能性の存在を決定する方法は、当業者にはよく知られているであろう。
【0075】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、1つ以上の認知及び神経心理学的試験を使用して特定される。認知及び神経心理学的試験には、対象の認知(例えば、思考、推論、問題解決、情報処理、記憶機能)、言語、行動、運動、及び実行機能を評価する試験が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
対象は、当業者に公知の確立された精神医学的評価に基づく激越又は攻撃性の評価によって、本発明の方法による処置のために特定され得る。攻撃性及び激越を特定するための様々な適切なスケールが公知であり、本発明がどのスケールを使用するかによって限定されないことが理解されよう。特定の実施形態では、処置を必要とする対象は、以下のうちの1つ以上を利用することによって特定され得る:
・神経精神症状評価(Neuropsychiatric Inventory)-臨床医の激越及び攻撃性評価スケール(NPI-C A+A);
・神経精神症状評価-介護施設版(NPI-NH)激越/攻撃性スケール;
・コーエン・マンスフィールド激越評価(CMAI)合計スコア又はコーエン・マンスフィールド激越評価-簡易版(CMAI-SF)合計スコア;
・介護者の苦痛を評価する方法(例えば、NPI-C介護者の苦痛)、
・臨床医による激越の包括的評価(例えば、アルツハイマー病共同研究-変化の臨床的包括的印象、すなわちmADCS-CGIC)、神経精神症状評価質問表(NPI-Q)及び/又は認知状態(MMSE);
・コロンビア大学アルツハイマー病精神病理(CUPSAD);
・ポジティブ及びネガティブ症候群スケール(PANSS);
・BEHAVE-AD評価スケール;
・多元認知症評価スケール(MDDAS);
・激越-鎮静評価スケール;又は
・行動活動評価スケール。
【0077】
利用されるスケールは、攻撃性と激越を区別しない複合スケールであってもよい。或いは、使用されるスケールは、攻撃的行動又は激越行動を別個に分類できるものであってもよい。
【0078】
「神経精神症状評価(Neuropsychiatric Inventory)」すなわち「NPI」は、12項目のNPI(Cummings JL,et al,Neurology.1994;44(12):2308-14)を指し、これは認知症患者の精神病理を評価し、ADの臨床試験で広く使用されている。これは、12の精神神経症状(NPS)又は認知症に一般的なドメインを評価する。神経精神症状は、対象の介護者/研究パートナーに与えられた質問に基づいて評価される。各NPIドメインのスコアは、最も高いスコア又は重症度を有する項目/質問に基づいて、頻度スコア(0~4)に重症度スコア(0~3)を乗じたものである。最大のドメインスコアは12(4×3)であり、各ドメインについて可能な値は、1、2、3、4、6、8、9、及び12である。ドメインの症状が全て存在しない場合、ドメインの合計スコアは0になる。NPI-A/A(NPI激越及びNPI攻撃性)の最大スコアは12(頻度4、重症度3)である。このように、「NPI-A/A」は、NPIの激越ドメインと攻撃性ドメインを組み合わせた評価を反映している。易怒性、異常な運動行動、及び妄想のNPIドメインも、激越及び攻撃性を有するAD患者において頻繁に発生する。それぞれの最大スコアは12(頻度4、重症度3)である。合計NPIスコアは、AD患者におけるNPSの全体的な負担を表す。これは、12個のドメイン全てからのドメインスコアを合計することによって計算される。12項目のNPIの最大合計スコアは144(12×12)である。より高いNPIのスコアは、より高いNPSの頻度及び重症度に関連し、したがって、ベースラインスコアからの負の変化は、ベースラインからの改善を示す。
【0079】
「神経精神症状評価-臨床医評価スケール」又は「NPI-C」は、広く使用されている神経精神症状評価(12-item NPI,Cummings 1997)の拡張版である。「神経精神症状評価-臨床医の激越及び攻撃性」又は「NPI-C A+A」は、激越及び攻撃性のドメインを組み合わせたNPI-C評価を反映する。NPI-Cは、神経精神医学的AD専門家の共同体によって開発され、検証された。NPI-Cスケールは、ADにおける激越及び攻撃性の臨床試験の主要評価基準としての使用をサポートする以下の特徴を有する。これらの特徴は、(a)激越及び攻撃性を評価するための別個のドメイン(NPI-C激越及びNPI-C攻撃性)を有すること、(b)これらの2つのドメインのそれぞれで質問/項目の数を増やして、これらの行動の包括的なプロファイルを提供すること(NPI-C A+Aは合計21項目を有するのに対し、NPI-A/Aは8項目)、並びに(c)経験豊富で訓練を受けた評価者を利用して、患者を直接観察し、患者及び介護者の両方と面接をした後に臨床的重症度の評価を実施することを含む。NPI-Cスコアは、患者及びその介護者/研究パートナーの両方の面接後の臨床医による各NPS又はドメイン(激越又は攻撃性)の重症度の評価に基づいている。NPI-Cの各ドメインスコアは、そのドメイン内の全ての項目/質問の「臨床重症度」スコアを合計することによって計算される。各ドメインについて、全体的な臨床重症度スコアの範囲は、項目/質問ごとに0~3である。したがって、各ドメインの最大スコアは、そのドメイン内の項目数の3倍になる。したがって、激越の最大スコアは39(13×3)、攻撃性の最大スコアは24(8×3)である。激越と攻撃性を組み合わせたNPI-C(NPI-C A+A)のスコアの範囲は0~63である。より高いNPI-Cドメインのスコアは、症状のより高い臨床的重症度に関連し、したがって、ベースラインスコアからの負の変化は、ベースラインからの改善を示す。
【0080】
NPI-Qは、日常的臨床診療(NPI-Q)における使用のために開発されたNPIの簡単な質問票である(Kaufer,DI,J Neuropsychiatry Clin Neurosci.2000 Spring;12(2):233-9を参照)。NPI-NHは、介護施設における認知症を有する患者の精神病理を評価し、評価するために開発された。このスケールの介護施設版は、介護施設患者の精神病理学を検査するために設計されており、この集団での使用が検証されている(Wood et al.,Am.J.Geriatr.Psychiatr.2000,vol.8(1),75-83)。
【0081】
NPI-NHには、10の行動ドメイン及び2つの自律神経変化ドメインが含まれる。行動ドメインは、妄想(ドメインA)、幻覚(ドメインB)、激越/攻撃性(ドメインC)、抑鬱/不快(ドメインD)、不安(ドメインE)、高揚感/多幸感(ドメインF)、感情鈍麻/無関心(ドメインG)、脱抑制(ドメインH)、易怒性/不安定性(ドメインI)、及び異常な運動行動(ドメインJ)である。神経栄養変化ドメインは、睡眠及び夜間行動障害(ドメインK)並びに食欲及び摂食障害(ドメインL)である。(Wood et al.,Am.J.Geriatr.Psychiatr 2000,vol.8(1),75-83)。
【0082】
NPI-NHは、入居者の日常的なケアに携わる、情報を得た専門の介護者からの回答に基づいている。面接は、入居者がいると説明が難しい可能性のある行動についてオープンに話し合うために、入居者の不在時に行うのが最善である。
【0083】
与えられたドメインのスコアを決定するために、介護者はその特定のドメインに関する患者の行動の頻度及び重症度を評価する。頻度は0~4点のスケールで評価される。例えば、頻度は、質問にある行動の発生がa)存在しない場合は0;b)時折の場合は1;c)よくある場合は2;d)頻繁な場合は3;及びe)非常に頻繁な場合は4と評価される。重症度は1~3点のスケールで評価される。例えば、重症度は、a)軽度の場合は1;b)中程度の場合は2;及び重度の場合は3と評価される。各ドメインのスコアは、頻度評価スコアに重症度評価スコアを乗じて決定される。各ドメインのスコアの範囲は0~12である。
【0084】
合計NPI-NHスコアは、10個の行動ドメインスコアを全て加算することで計算できる。
【0085】
CMAIは、直接観察可能な行動に基づいて、物理的攻撃的行動及び言語的攻撃的行動を含む、高齢者の激越の発現頻度を評価する14項目又は28項目の手段である(Werner et al.,Geriatric Nursing,1994,vol.15(3),142-146;Koss et al.,Alzheimer’s Disease and Associated Disorders,1997,vol.11,45-50)。(Cohen-Mansfield et al.,J of Gerontology Med.Sci.,1989,vol.44(3),M77-M84;Werner et al.,Geriatric Nursing,1994,vol.15(3),142-146;Koss et al.,Alzheimer’s Disease and Associated Disorders,1997,vol.11,45-50)。
【0086】
任意の実施形態において、処置を必要とする対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、又は16以上のベースラインスコアを有する。別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、6以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、9以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有する。
【0087】
任意の実施形態では、対象は、NPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。別の実施形態では、対象は、NPI-NHの抑鬱/不快サブスケール(ドメインD)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの不安サブスケール(ドメインE)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの高揚感/多幸感サブスケール(ドメインF)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの感情鈍麻/無関心サブスケール(ドメインG)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの脱抑制サブスケール(ドメインH)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの脱抑制サブスケール(ドメインH)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの易怒性/不安定性サブスケール(ドメインI)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの睡眠及び夜間行動障害サブスケール(ドメインJ)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの睡眠及び夜間行動障害サブスケール(ドメインK)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの食欲及び摂食障害サブスケール(ドメインL)において、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のベースラインスコアを有する。
【0088】
任意の実施形態において、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、6以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、3以上のベースラインスコアを有する。別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、6以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、6以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、6以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、9以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、9以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、3以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、9以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、6以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、9以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、9以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、ヒト対象(hu subject man)は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、3以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、6以上のベースラインスコアを有する。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、9以上のベースラインスコアを有する。
【0089】
一実施形態では、対象は、抗精神病剤の使用を処方された履歴を有しない。別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有し、且つ/又は抗精神病剤の使用を処方された履歴を有しない。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、6以上のベースラインスコアを有し、且つ/又は抗精神病剤の使用を処方された履歴を有しない。さらに別の実施形態では、対象は、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)において、12以上のベースラインスコアを有し;且つ/又はNPI-NHの激越及び攻撃性サブスケール(ドメインC)において、6以上のベースラインスコアを有し;且つ/又は抗精神病剤の使用を処方された履歴を有しない。
【0090】
本発明の特定の実施形態では、本処置方法は、ヒトのNPI-NHに関するベースラインスコアを決定するステップ;及び式(I)の化合物を対象に投与する前に、NPI-NHの激越/攻撃性サブスケール(ドメインC)において6以上のスコアを有する対象を特定するステップをさらに含んでもよい。
【0091】
ベースライン並びに激越及び攻撃性スコアの例は、NPI-NHスケールに関連して上記に提供されているが、本発明による処置を必要とする対象を特定する目的;及び処置の成功を決定する目的で、任意のスケールが使用され得ることが理解されよう。このようなスケールは当業者にはよく知られており、参照により本明細書に組み込まれるVolicer et al.,(2017)CNS Spectrums:1-8に提供される成人及び高齢患者の激越及び攻撃性の測定によく使用される測定スケールの概要にも例示されている。
【0092】
本明細書で使用される場合、それを必要とする対象における攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りを処置することは、対象において観察される攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りの兆候又は症状の軽減、緩和、又は改善を指すと理解されるものとする。軽減、緩和、又は改善は、言語的激越、又は言語的攻撃的行動の出現又は発生の減少又は頻度の低下を含み得る。軽減、緩和、又は改善は、身体的激越、又は身体的攻撃的行動の出現又は発生の減少又は頻度の低下を含み得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「予防すること」又は「予防」は、攻撃性、激越、易怒性、又は本明細書に記載の他の状態を発症するリスク(又はその感受性)の可能性の少なくとも低減を指すことが意図される(すなわち、その疾患に曝露されているか、又はその素因を有するが、まだその疾患の症状を経験していないか、又はその症状を示していない患者において、その疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させない)。例えば、予防又は予防的手段は、リスクがあるとみなされる患者、例えば、認知症又は他の認知若しくは神経変性又は本明細書に記載される攻撃性若しくは激越に関連する他の状態を有すると特定された患者について採用され得る。予防的手段は、本明細書で特定される対象が、攻撃的又は激越反応を誘発すると疑われる状況又は環境に置かれた場合に、攻撃的又は激越状態の発生を防止するためにも使用され得る。
【0094】
臨床状態に関して本明細書で使用される「改善」、「改善された」、及び「改善する」という用語は、特定の期間後にベースラインと比較したときに、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、200%、300%、400%、又は500%を超える臨床的に関連する効果が達成されることを指す。いくつかの実施形態では、改善は、ベースライン(すなわち、式(I)の化合物の投与前)と比較した、式(I)の化合物の投与後の単一の患者における有効な効果の改善を指す。他の実施形態では、改善は、プラセボ又は処置の欠如と比較して、特定の期間後に有効な効果を示す患者の割合がより多いことによる有効性の実証を指す。様々な実施形態では、有効な効果を示す患者の割合は、プラセボ又は処置の欠如と比較したときに、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、200%、300%、400%、又は500%を超えて増加する。いくつかの実施形態では、特定の期間は、約2週間、4週間、又は6週間である。一実施形態では、特定の期間は6週間である。
【0095】
臨床状態に関して本明細書で使用される「低減」、「低減された」及び「低減する」という用語は、特定の期間後にベースラインと比較したとき、又はプラセボ又は処置の欠如と比較したときに、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、200%、300%、400%、又は500%未満の臨床的に関連する効果が達成されることを指す。いくつかの実施形態では、特定の期間は、約2週間、4週間、又は6週間である。一実施形態では、特定の期間は6週間である。
【0096】
本発明の任意の実施形態又は態様において、激越行動及び/又は攻撃的行動は、常に行ったり来たりするなどの、歩き回り及び目的のない徘徊;服を着すぎる、服を変に着る(例えば、頭にズボンをかぶる)、公共の場で服を脱ぐなどの、不適切な着衣及び脱衣;床及び他人に唾を吐くなどの、唾吐き;言葉を使うなどの、罵倒又は言語的攻撃性;罵り、卑猥な言葉の使用、冒涜、不親切な発言又は批判、言葉による怒り、言葉による闘争的行為;言葉を用いる又は用いない不当な文句、懇願、要求などの、注目又は助けの絶え間ない不当な要求;同じ文又は質問を次々に繰り返すなどの、文又は質問の繰り返し;暴行、他人を殴る、他人をつねる、自分自身/家具を叩くなどの、叩く行為;足で人又は物を強く打つなどの、蹴る行為;ひったくる、乱暴に掴む、強く掴む、又は引っ張るなどの、不適切に人又は物を掴む行為;強く押す、押し込む、圧力をかけるなどの、押す行為;強く投げつける、乱暴に空中に投げる、表面をひっくり返す、投げ飛ばす、故意に食べ物をこぼすなどの、物を投げる行為;泣く、すすり泣く、うめく、奇妙な笑い声、歯ぎしりなどの、変な音を出す行為;大きな金切り声、大声、甲高い唸り声などの、叫ぶ行為;音を立てて噛む、歯ぎしり、かじるなどの、噛む行為;爪で引っ掻く、爪で削るなどの、引っ掻く行為;建物から出ようとする、敷地外に出る、不適切な退出、施錠されたエリアに入ろうとする、ユニット内、オフィス、他の居住者の部屋又はクローゼットに侵入するなどの、別の場所に行こうとする行為;車椅子、椅子、又はベッドなどから意図的に床に落ちるなどの、意図的な転倒;愚痴、自分自身についての不満、身体的不満、個人的な不満、又は外部のもの若しくは他人に関する不満などの、不満の訴え;悪い態度、何も気に入らない、何も正しくないなどの、マイナス思考;不適切なものを口に入れ飲み込もうとするなどの、不適切な物質の飲食;自分又は他人を火傷させる、自分又は他人を切る、自分又は他人を有害な物体に触れさせるなどの、自分又は他人を傷つける行為;自分のものではないものを拾う、引き出しをあさる、家具を動かす、食べ物で遊ぶ、糞便を塗りつけるなどの、物を不適切に扱う行為;物を何かの下又は後ろに置くなどの、物を隠す行為;財布又はポケットに多くの物又は不適切な物を入れる、物を多く持ちすぎるなどの、物をため込む行為;何かを切り裂く、破く、壊す、踏みつけるなどの、物を引き裂く又は財物を破壊する行為;撫でる、叩く、体を揺する、何かをいじる、何かをいじる、自分自身又は物をこする、指をしゃぶる、靴の脱ぎ履き、自分自身、衣服、又は物を引っ張る、空中又は床から想像上の物を拾う、近くの物を繰り返し操作するなどの、常同運動などの、反復的な癖の実行;性的な言い寄り、性的なほのめかし、又は「卑猥な」話などの、言葉による性的誘いかけ;不適切な性的方法で人に触れる、陰部をこする、自分の部屋又はバスルームに一人ではない場合の不適切な自慰、望まない愛撫又はキスなどの、身体的な性的誘いかけ又は性器の露出;そわそわする、座席で常に動き回る、立ち上がったり座ったりする、じっと座っていられないなどの、一般的な不穏状態のうちの1つ以上であり得る。
【0097】
特定の実施形態では、言語的激越行動及び/又は言語的攻撃的行動には、大声を出すこと、叫ぶこと、罵ること、言葉による性的誘いかけ、罵倒又は言語的攻撃性、文又は質問の繰り返し、変な音を出すこと(奇妙な笑い声又は泣き)、不満、マイナス思考、注目又は助けの絶え間ない不当な要求、及び脅迫が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
特定の実施形態では、激越は、何の焦点も又は意図も伴わない過度の運動又は言語活動を含むと理解され得る一方、攻撃性は、害を与えることを意図した、誘発性又は非誘発性の行動を含むと理解され得る。自己防衛に用いられる攻撃性は「反応的攻撃性」と呼ばれる。
【0099】
当業者が本発明による処置を必要とする対象を特定する方法に精通しているのと同様に、当業者は、処置の成功を決定することもできる。例えば、当業者は、本明細書に記載の評価のいずれかに従って、対象における攻撃性又は激越の兆候又は症状の改善を評価するための方法に精通しているであろう。
【0100】
いくつかの実施形態では、「改善」は、神経精神症状評価-介護施設版(NPI-NH);アルツハイマー病共同研究-変化の臨床的包括的印象(ADSC-CGIC);コーエン・マンスフィールド激越評価(CMAI);又はコーエン・マンスフィールド激越評価-簡易版(CMAI-SF)のスケール又はサブスケールにおけるスコアの減少を指し得る。例えば、改善は、患者の合計NPI-NHスコアがスコア50からスコア40に低下することを指す。いくつかの実施形態では、改善は、任意選択により、1人以上の患者を指し得る。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の方法による処置の成功は、以下の1つ以上を含み得る:
・NPI-NHの激越/攻撃性サブスケールにおける患者スコアの改善;
・NPI-NHの睡眠/夜間行動サブスケールにおける患者スコアの改善;
・コーエン・マンスフィールド激越評価-簡易版(CMAI-SF)又はコーエン・マンスフィールド撹拌激越評価(CMAI)合計スコアにおける患者スコアの改善;
・CMAI-SF又はCMAIの攻撃的行動サブドメインにおける患者スコアの改善;
・CMAI-SF又はCMAIの物理的非攻撃性サブドメインにおける患者スコアの改善;
・CMAI-SF又はCMAIの言語的攻撃性サブドメインにおける患者スコアの改善。
【0102】
特定の実施形態では、効果は、NPI-NHにおけるスコアの改善によって決定される。特定の実施形態では、NPI-NHにおけるスコアの改善は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9ポイントである。特定の実施形態では、NPI-NHにおけるスコアの改善は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4ポイントである。
【0103】
特定の実施形態では、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)におけるスコアの改善は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9ポイントである。特定の実施形態では、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)におけるスコアの改善は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4ポイントである。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、患者のNPI-NHスコアを少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9ポイント低下させる。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、患者のNPI-NHスコアを少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4ポイント低下させる。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)における患者のスコアを少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9ポイント低下させる。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、式(I)の化合物を投与する前のベースラインスコアと比較して、NPI-NHの精神病サブスケール(ドメインA及びB)における患者のスコアを少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4ポイント低下させる。
【0106】
当業者であれば、改善したスコア又は低下したスコアのポイントが、ベースラインスコアよりも小さくなるであろうことを理解するであろう。
【0107】
特定の実施形態では、効果は、式(I)の化合物の初回投与から少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、又は少なくとも約8週間後のスコアの改善によって決定される。特定の実施形態では、効果は、式(I)の化合物の初回投与から約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、又は約12週間後に決定される。特定の実施形態では、効果は、式(I)の化合物の初回投与から約6週間後に決定される。
【0108】
特定の実施形態では、改善のp値は0.0001~0.05又は0.05以下である。
【0109】
いくつかの実施形態では、NPI-NHの改善は、式(I)の化合物の約3~9週間、又は約4週間、約5週間、約6週間、約7若しくは約8週間の毎日の投与で決定される。
【0110】
本発明の方法及び使用は、好ましくはヒトにおける使用を意図している。しかし、本方法は、非ヒト霊長類を含む非ヒト動物、及びイヌ、ネコ、ウマなどを含むコンパニオンアニマルにも適用され得ることが理解されよう。化合物及び組成物の受容者は、本明細書において、互換的用語「患者」、「受容者」、「個体」、及び「対象」で呼ばれる。これら4つの用語は互換的に使用され、本明細書で定義されるように、(別段の指示がない限り)任意のヒト又は動物を指す。
【0111】
化合物
本発明の方法は、式(I)の化合物
【化3】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
を投与することを含む。
【0112】
任意の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物:
【化4】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル、又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル、又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグとして提供され得る。
【0113】
任意の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物:
【化5】
(式中:
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグとして提供され得る。
【0114】
任意の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物:
【化6】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグとして提供され得る。
【0115】
任意の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物:
【化7】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグとして提供され得る。
【0116】
任意の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ie)の化合物:
【化8】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグとして提供され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(If)の化合物
【化9】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
として提供され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0119】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0120】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0121】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0122】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ie)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0123】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(If)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0124】
いくつかの実施形態では、VはNHである。
【0125】
いくつかの実施形態では、VはCHである。
【0126】
いくつかの実施形態では、Vは直接結合である。
【0127】
いくつかの実施形態では、WはNHである。
【0128】
いくつかの実施形態では、WはCHである。
【0129】
いくつかの実施形態では、Wは直接結合である。
【0130】
いくつかの実施形態では、XはNHである。
【0131】
いくつかの実施形態では、XはCHである。
【0132】
いくつかの実施形態では、Xは直接結合である。
【0133】
いくつかの実施形態では、YはNHである。
【0134】
いくつかの実施形態では、YはCHである。
【0135】
いくつかの実施形態では、Yは直接結合である。
【0136】
いくつかの実施形態では、ZはNHである。
【0137】
いくつかの実施形態では、ZはOである。
【0138】
いくつかの実施形態では、ZはSである。
【0139】
いくつかの実施形態では、ZはS(O)である。
【0140】
いくつかの実施形態では、ZはSOである。
【0141】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0142】
別の実施形態では、RはC(O)Rである。
【0143】
いくつかの実施形態では、RはC(O)Rであり、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルのいずれか1つから選択される、任意選択により置換されたC1~5アルキルである。
【0144】
いくつかの実施形態では、RはC(O)Rであり、Rは任意選択により置換されたメチルである。
【0145】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0146】
いくつかの実施形態では、Rはヒドロキシル基である。
【0147】
いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。
【0148】
いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。
【0149】
いくつかの実施形態では、Rは塩素である。
【0150】
いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたC1~5アルキルである。
【0151】
いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたメチルである。
【0152】
別の実施形態では、Rは、任意選択により置換されたOC1~5アルキルである。
【0153】
別の実施形態では、Rは、任意選択により置換されたメトキシ基である。
【0154】
一実施形態では、Rは水素である。
【0155】
いくつかの実施形態では、Rはヒドロキシル基である。
【0156】
いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。例えば、いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。別の実施形態では、Rは塩素である。
【0157】
いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたC1~5アルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルから選択される、任意選択により置換されたC1~5アルキルであってもよい。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたメチルである。
【0158】
いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたOC1~5アルキルである。例えば、Rは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシ基から選択される、任意選択により置換されたOC1~5アルキルであってもよい。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択により置換されたメトキシ基である。
【0159】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、
【化10】
又はその塩若しくはプロドラッグから選択される。
【0160】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化11】
又はその塩若しくはプロドラッグから選択される。
【0161】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化12】
又はその塩若しくはプロドラッグから選択される。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は:
【化13】
又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0162】
本方法は、式(I)の化合物を任意の薬学的に許容される形態で投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、N-オキシド、多形体、互変異性体若しくはプロドラッグの形態、又はこれらの形態の任意の比率での組み合わせで提供される。
【0163】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩、例えば薬学的に許容される塩である。
【0164】
薬学的に許容される適切な塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩;又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、イセチオン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、及び吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
塩基塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム及びアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンで形成されるもの;トリエチルアミンから形成される塩;エタノールアミンで形成されるものなどのアルコキシアンモニウム塩;並びにエチレンジアミン、コリン、又はアルギニン、リジン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸から形成される塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩のタイプ及びそれらの形成に関する一般的な情報は、当業者に公知であり、“Handbook of Pharmaceutical salts”P.H.Stahl,C.G.Wermuth,1st edition,2002,Wiley-VCHなどの一般的な文書に記載されている。
【0166】
式(I)における塩基性含窒素基(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)若しくは式(If)の化合物における塩基性含窒素基)は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージドなどのC1~6ハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル及びジエチルなどの硫酸ジアルキル;並びに当技術分野で公知のその他などの薬剤で第4級化され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、
【化14】
から選択される化合物の塩である。
【0168】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化15】
から選択される化合物の塩である。
【0169】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化16】
から選択される化合物の塩である。
【0170】
例えば、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の塩は、
【化17】
の塩である。
【0171】
一方、さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の塩は、
【化18】
の塩である。
【0172】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩酸塩である。
【0173】
いくつかの実施形態では、塩酸塩は、
【化19】
である。
【0174】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、リン酸付加塩である。
【0175】
プロドラッグには、アミノ酸残基、又は2つ以上(例えば、2つ、3つ又は4つ)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が式(I)の化合物の遊離アミノ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基に共有結合している化合物が含まれる。アミノ酸残基は、3文字記号によって一般に示される20の天然に存在するアミノ酸を含み、また、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デモシン、イソデモシン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン及びメチオニンスルホンを含む。プロドラッグはまた、カルボニル炭素プロドラッグ側鎖を介して式(I)の上記置換基に共有結合され得る、カーボネート、カルバメート、アミド及びアルキルエステルを含む化合物を含む。プロドラッグはまた、リン-酸素結合を介して式(I)の化合物の遊離ヒドロキシルに結合した式(I)の化合物のリン酸誘導体(酸、酸の塩、又はエステルなど)を含む。本明細書に開示及び定義された本発明は、本文又は図面に言及され、又はそれから明らかな、個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0176】
式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、多形体若しくはプロドラッグは、溶媒和物の形態で提供することができる。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、水、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの薬学的に許容される溶媒との結晶化のプロセス中に形成され得、溶媒和物は、非共有結合によって、又は結晶格子中の孔を占めることによって、結晶格子の一部を形成する。水和物は、溶媒が水の場合に形成され、アルコラートは、溶媒がアルコールの場合に形成される。本発明の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセス中に好都合に調製又は形成することができる。一般に、溶媒和形態は、本明細書に提供される化合物及び方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0177】
結晶性固体を形成する式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/又はプロドラッグは、多形性を示し得る。化合物、塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/又はプロドラッグの全ての多形形態が、本発明の方法において使用され得る。
【0178】
式(I)の化合物は、互変異性を示し得る。互変異性体は、一般に平衡状態で存在する分子の2つの交換可能な形態である。式(I)の化合物の任意の互変異性体が、本発明の方法において使用され得る。
【0179】
式(I)の化合物の作製方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT/AU2016/050588号明細書に記載されている。
【0180】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される「C1~5アルキル」という用語は、1~5個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を指す。当業者によって理解されるように、「C1~5アルキル」という用語は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、それらの整数のうちの任意の2つを含む範囲の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。適切なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルが含まれるが、これらに限定されない。C1~4アルキルは、任意選択により1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、基-OHを指す。
【0182】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される「OC1~5アルキル」という用語は、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基を指す。当業者によって理解されるように、「OC1~5アルキル」という用語は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、それらの整数のうちの任意の2つを含む範囲の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。適切なOC1~5アルキル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシが含まれるが、これらに限定されない。C1~5アルキルは、任意選択により1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
本明細書で使用される場合、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)又はヨウ素(ヨード)を指す。
【0184】
投与
本明細書で定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグは、任意の適切な手段、例えば、経口、直腸、鼻、膣、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、又は槽内注射、吸入、吹送、注入又は移植技術(例えば、滅菌注射用水性又は非水性溶液又は懸濁液として)によって投与され得る。
【0185】
本発明の化合物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)のためのものを含む医薬組成物として、又は吸入若しくは吹送による投与に適した形態で提供され得る。したがって、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグは、従来のアジュバント、担体又は希釈剤とともに、医薬組成物及びその単位投与量の形態に配置してもよく、そのような形態で、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体、又は溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシルなどの液体若しくはこれらで満たされたカプセルとして、全て経口使用のために、又は非経口(皮下を含む)使用のための無菌注射用溶液の形態で使用してもよい。
【0186】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、好都合には、単位剤形で提示され得、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,2005,Lippincott Williams & Wilkinsを参照されたい)。全ての方法は、活性成分、例えば、式(I)によって定義される化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグを、1つ以上の補助成分を構成する担体と結合させるステップを含む。一般に、医薬組成物は、活性成分、例えば、式(I)によって定義される化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグを、液体担体若しくは微粉化した固体担体又はその両方と均一且つ緊密に結合させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物において、活性対象化合物は、所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。
【0187】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグは、対象の体重の約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.15mg/kg、約0.2mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg又は約30mg/kg以上の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.001mg/kg~約30mg/kg、約0.2mg/kg~約30mg/kg、又は約0.2mg/kg~約10mg/kgなど、これらの量のいずれかから任意の他の量であってもよい。しかし、任意の特定の対象についての投与の特定の用量レベル及び頻度は変動し得、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに治療を受ける宿主を含む、様々な因子に依存することが理解されよう。
【0188】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグは、例えば、適切な化合物が医薬組成物に添加される場合、「有効量」で提供され得る。「有効量」は、その化合物を含む組成物の化合物を投与する研究者、獣医師、医師又は他の臨床医が求める、組織、系、動物又はヒトの所望の生物学的又は医学的反応を誘発する化合物の量を意味すると解釈される。いくつかの実施形態では、有効量は、「治療有効量」であってもよく、対象活性化合物の量は、対象において発現した状態及び/又はその症状を処置するのに有効である。他の実施形態では、有効量は、「予防有効量」であってもよく、対象活性化合物の量は、その状態及び/又は症状の発症を予防的に処置及び/又は予防するのに十分であり、又は症状が現れた場合、式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグでの処置を受けていない対象の集団における状態及び/又はその症状の平均重症度と比較して、状態及び/又はその症状の重症度のレベルを低下させる。
【0189】
「有効量」は、本明細書で提供される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグの量であり、対象へのその投与は、単回用量で、又は一連の一部として、本明細書に記載される攻撃性、激越、易怒性を処置又は予防するのに有効である。ある量は、例えば、その投与が、本明細書に記載されるような激越若しくは攻撃性の状態、又は任意の他のパラメーターの緩和又は改善をもたらす場合に有効である。
【0190】
「有効量」は、特定の化合物の効力、処置される対象の身体状態、化合物の製剤、及び/又は医学的状況の専門的評価を含む、多くの因子に依存するであろう。対象の体重及び年齢も、対象が受けるべき化合物の量を決定する場合、当業者にとっての因子であり得る。
【0191】
化合物「の投与」及び/又は「を投与する」という語句は、式(I)の化合物(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie))、又は式(If)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグを、それを必要とする対象に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0192】
本明細書に記載される任意の方法又は使用において、式(I)の化合物(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie))、又は式(If)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグは、激越、攻撃性、易怒性及び/又は怒りの処置又は予防のために、1つ以上の他の医薬組成物と組み合わせて投与してもよい。
【0193】
式(I)の化合物(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie))、又は式(If)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグと組み合わせた投与に適切な薬物の例には、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの管理における使用のための他の薬物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、薬物は非定型精神病薬であってもよい。適切な非定型精神病薬の例には、オランザピン、アリピプラゾール、リスペリドン、及びジプラシドンが含まれる。
【0194】
式(I)の化合物(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie))、又は式(If)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物、多形体及び/又はプロドラッグはまた、神経変性状態、後天性脳損傷、化学的損傷、又は感染症に起因する損傷に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、激越、攻撃性、易怒性及び/又は怒りの処置のために、他の医薬と組み合わせて使用してもよい。激越、攻撃性、易怒性、及び/又は怒りがアルツハイマー病によって引き起こされる場合、組み合わせは、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アリセプト、イクセロン、ラザダイン)又はメマンチン(ナメンダ)を含み得る。
【実施例
【0195】
実施例1:過剰攻撃性行動のマウスモデル:方法
目的
誘発された過剰攻撃性行動のマウスモデルを使用して、
(1)攻撃性に対するKNX100の効果を一定範囲の用量にわたって試験し;
(2)攻撃性に対する経口投与KNX100の効果を試験し;及び
(3)リスペリドンと比較して攻撃性を選択的に軽減するKNX100の有効性を調べる(自閉症スペクトラム障害に関連する易怒性及び攻撃性の処置についてFDA承認されており、アルツハイマー病の状況における攻撃性及び激越の処置に適応外で通常使用されている)。
【0196】
このモデルは、ヒトの攻撃性に対する優れた予測的妥当性、及びヒトの攻撃性における攻撃的な衝動的攻撃性をモデル化するための表面的妥当性を有すると考えられ、他の行動の変化と混同することなく、特に攻撃的行動の変化につながるため、このモデルが選択された。このモデルは、認知症及び関連障害における攻撃性/激越の処置における使用のための潜在的な鎮静剤のスクリーニング/同定にも使用されている。
【0197】
孤立誘発性攻撃性モデルは、攻撃性の神経生物学を理解するためにも広く使用されており、これは、認知症で調節不全のマウスにおいて攻撃性を駆動する共通の経路を特定している。重要な例を1つだけ挙げると、5-HT経路の調節不全が雄マウスの孤立誘発性攻撃性、アルツハイマー病マウスモデルの攻撃性、アルツハイマー病患者の攻撃性に大きく関与していることを実証する相当なエビデンスが存在する。
【0198】
次の式の化合物:
【化20】
の二塩酸塩、(KNX100)は以下の例で利用されており、本明細書では互換的にKNX100 2HCL又はKNX100と呼ばれる。
【0199】
対象
この研究では、目的(1)及び(3)について、到着時6~7週齢の80匹の雄スイスマウス(ARC,Perth,Australia)を使用し、目的(2)について、同じ年齢及び系統の30匹のマウスを使用した。対象は、到着時、標準的な実験室条件(12時間の明/暗サイクル;明周期07:00~19:00)下で、温度制御されたコロニー室(22℃±1℃)で、ケージ当たり4匹で飼育された。マウスは標準的なIVCケージに収容された。マウスは、ホームケージ内で食物及び水を自由に摂取させた。全ての実験は明周期中に実施された。全ての実験手順は、シドニー大学動物倫理委員会(University of Sydney Animal Ethics Committee)によって承認された。
【0200】
誘発された攻撃性パラダイム
1週間順化させた後、n=64匹のマウスを単独飼育に移すことにより過剰攻撃性を与え、一方、n=16匹の動物は4匹の集団で飼育した。この期間中、全てのマウスの体重を少なくとも週に1回測定した。試験開始の1週間前に、試験中の注射によるストレス及び不安の混同の可能性を軽減するために、マウスに生理食塩水(0.9%、10mL/kg)を訓化注射した。
【0201】
孤立誘発性攻撃性の誘導を成功させるために、IVCケージからの気流がフィルターを通過し、部屋に再排出され、これにより他のケージ内のマウスからのフェロモンにマウスが曝露されなければならないことが判明した。これは、マウスの攻撃性においてフェロモンが重要な役割を果たしているためであると考えられる。
【0202】
2匹のマウスの社会的相互作用試験及び薬物投与
試験は隔離後6週間から開始した。全ての実験は、マットブルーの内壁及び床(400mm×400mm×400mm)を備えたアクリル製の試験活動領域で行われた。試験中の活動領域中央の照明は10ルクス未満であった。各試験の前に、各ペア中の1匹のマウスの背中に毒性のない緑色のマーカーで印を付け、これにより、自動行動追跡ソフトウェアが2匹のマウスを区別できるようにした(以下を参照)。試験当日、体重及び状態が一致した見知らぬマウスのペアに、以下に記載する薬物処置を施し、次いで、10分間の試験セッション(実施例2及び4)又は5分間の試験セッション(実施例3)のために共に試験活動領域に配置した。
【0203】
薬物は、腹腔内(i.p.)注射(注射量10ml/kg)又は経口投与(示されている通り)のいずれかで投与された。残留臭気を除去するために、セッションの間に試験活動領域をエタノール(80%)及びF10消毒剤を使用して清掃した。各実験において、体重が一致した新しいペアが形成され、各ペアにおいてマウス間の体重差は5g以下であった。薬物処置は、ペアに無作為で割り当てられ、マウスには試験の間に1週間の休薬期間が与えられた。
【0204】
薬物
KNX100 2HCL(Wuxi Apptech,Hong Kong,China)を生理食塩水(0.9%)に溶解した。リスペリドン(AK Scientific,CA,USA)を1mg/mlのストック溶液(10% 0.1M酢酸、90% 0.9%生理食塩水、及び最大pH6にするための少量のNaOH)に調製した。
【0205】
KNX100用量反応
5群の対象間計画が利用された。試験の15分前に、集団飼育マウスにはビヒクル処置(VEHg)を施し、単独飼育マウスには4つの異なる用量のKNX100(0別名VEH、2.5、5、又は10mg/kg)のうちの1つを投与した。各群のサンプルサイズは次の通りであった:集団飼育(n=12);KNX100用量0(n=14)、0.25(n=16)、0.5(n=18)、及び10(n=16)mg/kgをi.p.投与した単独飼育。
【0206】
KNX100経口投与
経口投与の場合、マウスを同様にグループ化し、生理食塩水中の20mg/kg KNX100又はビヒクル(生理食塩水)を、1群あたりn=10匹のマウスで強制経口投与した。
【0207】
KNX100対リスペリドン
4群の対象間計画が利用された。試験前に、集団飼育マウスにはビヒクル処置(VEHg)を施し、単独飼育マウスにはビヒクル(VEH)、0.1mg/kgリスペリドン、又は10mg/kg KNX100を投与した。リスペリドンは試験の30分前に投与され、ビヒクル及びKNX100は試験の15分前に投与された。各群のサンプルサイズは次の通りであった:ビヒクル集団飼育(n=6);ビヒクル単独飼育(n=12);0.1mg/kgリスペリドン(n=10);及び10mg/kg KNX100(n=10)。
【0208】
従属変数
目的の行動は、(1)闘争に費やした時間(秒);(2)ハドリング(マウスが静止中に互いに物理的に密接に接触していることとして定義される)に費やした時間(秒);(3)グルーミングに費やした時間(秒);及び(4)実験セッション中の各マウスによる移動距離(mm)であった。
【0209】
データの取得及び分析
実験セッションは、CaptureStar(バージョン1.00,CleverSys,Virginia,USA)を使用してオーバーヘッドカメラで記録された。上記で詳述した行動は、行動追跡ソフトウェアTopScan、SocialScan、及びAggressionScan(CleverSys,Virginia,USA)を使用してビデオから自動的に定量された。データはSPSS(バージョン24.0,IBM,USA)を使用して分析した。データは、一元配置分散分析及び計画された対比を用いて分析した。有意性はp≦0.05に設定した。
【0210】
実施例2:KNX100は用量依存的に攻撃性を軽減する
集団飼育マウスと比較して、単独飼育マウスは、闘争(p=.021)、ハドリング(p<0.0001)、及びグルーミング(p=0.014)に有意に多くの時間を費やした。集団飼育マウスと単独飼育マウスとの間で、移動距離に有意差はなかった(p=0.692)。
【0211】
実施例2のデータを図1に示す。単独飼育マウスは、集団飼育マウスよりも有意に長い時間を闘争に費やした(VEHg対VEH、p=0.012)。線形傾向対比は闘争時間に関して有意であり(p<0.00001)、KNX100が単独飼育マウスの誘発攻撃性を用量依存的に阻害することが明らかになった。
【0212】
単独飼育マウスは、集団飼育マウスよりも有意に長い時間をハドリングに費やした(VEHg対VEH、p<0.001)。線形傾向対比はハドリングに関して有意であり(p<0.00000001)、KNX100が単独飼育マウスにおいてこの形態の密接な物理的接触に費やす時間を用量依存的に増加させることが明らかになった。
【0213】
単独飼育マウスと集団飼育マウスの間で、セルフグルーミングに費やした時間に有意差はなかった(VEHg対VEH、p=0.919)。線形傾向対比はセルフグルーミングに関して有意であり(p<0.001)、KNX100が単独飼育マウスのセルフグルーミングに費やす時間を用量依存的に増加させることが明らかになった。
【0214】
ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスよりも有意に長い距離を移動した(VEHg対VEH、p=0.004)。線形傾向対比は移動距離に関して有意であり(p<0.00001)、KNX100が単独飼育マウスの移動距離を用量依存的に減少させることが明らかになった。KNX100のいずれの用量も、集団飼育マウスと比較して移動距離に有意差が生じなかったことに留意されたい(対:2.5mg/kg、p=0.262;5mg/kg、p=0.858;10mg/kg、p=0.092)。
【0215】
実施例3:経口投与KNX100は攻撃性を軽減する
実施例3のデータを図2に示す。ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスよりも有意に長い時間を闘争に費やした(p=0.0011)。KNX100 20mg/kg(経口)で処置されたマウスは、ビヒクルで処置された単独飼育マウスよりも闘争に費やした時間が有意に短く(p=0.0004)、ビヒクルで処置された集団飼育マウスと比較して闘争に費やした時間に有意差はなかった(p=0.725)。
【0216】
実施例4:KNX100は攻撃性の軽減についてリスペリドンと同程度に効果的であり、鎮静作用は低い
実施例4のデータを図3に示す。ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスと比較して、闘争に費やした時間に差はなかった(p=0.896)。しかし、0.1mg/kgリスペリドン群と10mg/kg KNX100群はいずれも、ビヒクルで処置された単独飼育マウス(それぞれp<.001及び0.0001)及びビヒクルで処置された集団飼育マウス(それぞれp<0.01及び.001)と比較して、闘争に費やした時間が短かった。0.1mg/kgリスペリドン群と10mg/kg KNX100群の間で、闘争に費やした時間に有意差はなかった(p=0.807)。
【0217】
ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスよりも有意に長い時間をハドリングに費やした(p<0.0001)。0.1mg/kgリスペリドン及び10mg/kg KNX100で処置されたマウスはいずれも、ビヒクルで処置された単独飼育マウスよりも有意に長い時間をハドリングに費やした(それぞれp<0.0000001及び0.00001)。リスペリドン群とKNX100群の間で、ハドリングに費やした時間に有意差はなかった(p=0.247)。
【0218】
ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスと比較して、グルーミングに費やした時間に差はなかった(p=0.191)。0.1mg/kgリスペリドンで処置されたマウスは、ビヒクルで処置された単独飼育マウスと比較して、グルーミングに有意に長い時間を費やした(p=0.047)。10mg/kgのKNX100で処置されたマウスは、グルーミングに費やした時間において、ビヒクルで処置された集団飼育マウスと有意差はなかった(p=0.07)。リスペリドン処置マウスとKNX100処置マウスの間で、グルーミングに費やした時間に有意差はなかった(p=0.859)。
【0219】
ビヒクルで処置された単独飼育マウスは、ビヒクルで処置された集団飼育マウスと比較して、移動距離に差はなかった(p=0.445)。0.1mg/kgリスペリドン及び10mg/kg KNX100で処置されたマウスはいずれも、ビヒクルで処置された単独飼育マウスよりも移動距離が有意に短かった(それぞれp<0.000001及び0.01)。しかし、0.1mg/kgリスペリドンで処置されたマウスは、10mg/kg KNX100で処置されたマウスよりも移動距離が有意に短かった(p=0.001)。
【0220】
KNX100はリスペリドンに比べて有意な利益を提供するようであり、リスペリドンと少なくとも同等の攻撃性の阻害を生じつつ、自発運動の抑制は有意に小さい。
【0221】
実施例5:アルツハイマー病攻撃性マウスモデルにおけるKNX100の評価
動物
雄のAPP/PS1及びWTマウス(生後約3ヶ月)を使用して、アルツハイマー病のマウスモデルにおける攻撃性に対するKNX100の効果を評価した。
【0222】
APP/PS1は、キメラマウス/ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)及びプレセニリン(PS1)を発現するダブルトランスジェニックマウスである。これらのマウスは、CSF及び脳組織におけるAβ及びタウのレベルの増加、並びに関連する行動異常を示すため、アルツハイマー病を研究するためのモデルとして頻繁に使用される。
【0223】
雄のC57BL/6Jマウスは、7~8週齢でJackson Laboratoryから購入し、この研究で侵入者として使用した。光制御環境(12/12の明/暗サイクル)下で、餌及び水を自由に摂取させ、APP/PS1マウス及び野生型対照マウスは単独飼育され、C57BL/6Jマウスは集団飼育された(ケージあたり4匹)。試験は動物の明サイクル中に実施された。
【0224】
試験化合物及び参照化合物
参照化合物のリスペリドン(0.05mg/kg)を25%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに溶解し、試験の30分前に10ml/kgの用量で腹腔内(IP)注射した。
【0225】
試験化合物のKNX100は、リン酸塩の形態で提供された。2.5、5、及び10mg/kgの遊離塩基当量の用量を生理食塩水に溶解し、試験の15分前に10ml/kgの用量でIP注射した。
【0226】
処置群
処置群は次の通りであった:
・WT-生理食塩水(IP)
・APP/PS1-生理食塩水(IP)
・APP/PS1-KNX100(2.5mg/kg、IP)
・APP/PS1-KNX100(5mg/kg、IP)
・APP/PS1-KNX100(10mg/kg、IP)
・APP/PS1-リスペリドン(0.05mg/kg、IP)
各群でn=12。
【0227】
居住者・侵入者(RI)試験におけるADマウスの事前スクリーニング
全てのAPP/PS1マウスは、居住者-侵入者(RI)パラダイムを使用して事前にスクリーニングされた。事前スクリーニングRIセッションは、居住者APP/PS1マウスのホームケージ内で実施された。全てのRIセッションは赤色光の下で行われた。
【0228】
簡潔には、全てのマウスを試験前に60分間赤色光条件に順化させた。RI試験中、見知らぬ侵入者C57BL/6JマウスをAPP/PS1居住者マウスのホームケージに直接300秒間入れた。5分間のセッション中、攻撃までの時間(攻撃は一噛みで定義した)及び攻撃の総数(頻度)が、処置群を知らされていない実験者によって手動で記録された。試験後すぐにマウスを離し、侵入者マウスをホームケージに戻した。負傷した全てのマウスは、IACUCガイドラインに従って処置された。
【0229】
この事前スクリーニング試験は、APP/PS1処置群全体で攻撃的行動が均一に分布していることを確認するために必要であった(データは示さず)。攻撃までの時間が150秒を超えたAPP/PS1マウスは、さらなるRI試験には使用しなかった。
【0230】
ADマウスの攻撃性に対する処置の効果
事前スクリーニングRIセッションの1週間後、AD居住者マウスにビヒクル、試験化合物、又はリスペリドンを投与した。RI試験セッションは、適切な前処置時間の後に上記のように実施した。
【0231】
統計分析
体重を上記のように各時点で記録した。攻撃性については、攻撃までの時間及び攻撃の総数が記録された。
【0232】
データは分散分析(ANOVA)によって分析され、その後、適切な場合に事後比較を行った。p<0.05の場合、効果は有意であるとみなされた。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表示される。
【0233】
結果
侵入者マウスへの攻撃数に対するKNX100の効果を図4に示す。全ての処置群にわたる一元配置分散分析により、処置の有意な主効果が明らかになった。ダネットの事後検定により、APP/PS1ビヒクルマウスと比較して、WTマウスの攻撃頻度が有意に低いことが明らかになった。リスペリドン又はKNX100(2.5、5、又は10mg/kg)での処置により、ビヒクルと比較してAPP/PS1マウスの攻撃数が減少した。
【0234】
侵入者マウスを攻撃するまでの時間に対するKNX100の効果を図5に示す。全ての処置群にわたる一元配置分散分析により、有意な処置効果が判明した。ダネットの事後検定により、APP/PS1ビヒクルマウスと比較して、WTマウスは攻撃までの時間が長いことが明らかになった。KNX100(10mg/kg)は、攻撃までの時間が増加する傾向を示した(p=0.086)。フィッシャーのLSD事後検定を使用した場合、効果は有意性に達することに留意されたい(p=0.022)。
【0235】
この研究では、APP/PS1マウスの攻撃性に対するKNX100の急性注射の効果を評価した。KNX100は、全ての用量(2.5、5及び10mg/kg)で、積極的攻撃の数を確実に減少させた。試験された最高用量(10mg/kg)でも、RI試験において侵入者を攻撃するまでの時間が長くなる傾向があった。
【0236】
実施例6:KNX100の亜慢性投与
この研究では、実施例1に記載した2匹のマウスの社会的相互作用試験と同じモデル及び試験手順を使用し、リン酸塩形態のKNX100を使用した。この研究の目的は、KNX100が反復投与された場合に攻撃性を軽減する効果を維持するかどうかを評価することであった。
【0237】
VEH(集団飼育)及びVEH(単独飼育)条件のマウスに、1日1回の生理食塩水を6日間、強制経口(p.o.)投与し、次いで7日目に、10分間の2匹のマウスの社会的相互作用試験を受ける30分前に、最後の生理食塩水をp.o.投与した。急性KNX100(単独飼育)条件のマウスに、1日1回の生理食塩水を6日間p.o.投与し、次いで7日目に、10分間の2匹のマウスの社会的相互作用試験を受ける30分前に、KNX100リン酸塩を15mg/kg(遊離塩基相当量)の用量でp.o.投与した。亜慢性KNX100(単独飼育)条件のマウスに、1日1回のKNX100リン酸塩を15mg/kg(遊離塩基相当量)の用量で6日間p.o.投与し、次いで7日目に、10分間の2匹のマウスの社会的相互作用試験を受ける30分前に、KNX100リン酸塩を15mg/kg(遊離塩基相当量)の用量でp.o.投与した。
【0238】
データを図6に示す。VEH(単独飼育)マウスは、VEH(集団飼育)マウスよりも、闘争により長い時間を費やし(p<0.001)、より多くの闘争をし(p<0.001)、最初の闘争までの時間が短かった(p<0.001)。急性及び亜慢性のKNX100はいずれも、単独飼育マウスにおいて、闘争に費やす時間の増加(いずれもp<0.001)、闘争回数の増加(いずれもp<0.001)、及び最初の闘争までの時間の短縮(いずれもp<0.001)を防止した。急性と亜慢性のKNX100の間では、闘争に費やす時間(p=0.514)、闘争回数(p=0.281)、又は最初の闘争までの時間(p=0.055)について有効性に有意差はなかった。
【0239】
これらの知見は、経口投与されたKNX100が反復投与後も攻撃的行動を軽減する完全な有効性を維持することを示している。
【0240】
実施例7:遺伝的原因又はリスクバリアントに関連する神経発達障害における攻撃性の処置
多数の単一遺伝子点変異は、攻撃性の増加を示す患者を含む臨床集団における神経発達障害と因果関係がある。一例は、神経発達障害に対する高い浸透率を有するとして臨床集団において特定されているニューロリギン-3遺伝子における点変異(R451C)である。
【0241】
NL3R451C点変異を有するマウスは、その変異を有する患者で観察される症状の多くを再現し、攻撃性の亢進を示す。これらのマウスは、神経発達障害に関連する異常な行動表現型を研究するためのモデルとして、適切な臨床候補を同定するために以前に使用されてきた。
【0242】
KNX100は、野生型対照と比較して、NL3R451Cマウスにおける闘争回数の増加、闘争に費やす時間、及び最初の攻撃までの時間を阻害する能力について評価される。
【0243】
簡潔には、目的の6つの主要な実験条件を調べる:
・ビヒクルで処置したWTマウス(WT-VEH)
・ビヒクルで処置したNL3R451C(NL3)マウス(NL3-VEH)
・陽性対照リスペリドン(0.05~0.1mg/kg i.p.)で処置したNL3マウス
・1.845mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は3.75mg/kg p.o.により処置したNL3マウス(NL3-KNX100-D1)
・3.69mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は7.5mg/kg p.o.により処置したNL3マウス(NL3-KNX100-D2)
・7.38mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は15mg/kg p.o.により処置したNL3マウス(NL3-KNX100-D3)。
【0244】
次いで、居住者・侵入者試験を使用して、NL3マウスの攻撃性の亢進に対する処置の効果を評価する。この試験では、WT及びNL3居住者マウスに加えて、雄のC57BL/6マウスを侵入者マウスとして使用する。居住者マウス(WT及びNL3マウス)は、試験前に少なくとも1週間隔離される。WT又はNL3マウスは、試験の15分前(i.p.)又は30分前(p.o.)のいずれかで処置を受ける。次いで、5~10分間の攻撃性試験のために、侵入者マウスを居住者マウスのホームケージに入れる。WT又はNL3居住者マウスの行動が評価され、これには、闘争に費やした合計時間、合計闘争数、及び最初の闘争までの時間が含まれる。KNX100で処置したNL3マウスは、これらの行動基準の一部又は全ての低下を示す。
【0245】
NL3R451Cマウスにおいて、KNX100は、本明細書の他の場所に記載されているADマウスモデル及び社会的隔離マウスモデルで観察された結果と同様に、闘争の発生、闘争時間、及び最初の攻撃までの時間を阻害することが示されている。したがって、KNX100は、遺伝的原因又はリスクバリアントに関連するか、又はそれによって引き起こされる、攻撃性の処置に有用な臨床候補であることが期待される。
【0246】
同様の実験プロトコルは、遺伝的原因又はリスクバリアントに関連し、動物が攻撃性の亢進を示す、神経発達障害の他の動物モデルの状況に適用される。いくつかの例は、アンジェルマン症候群のUBE3Aマウスモデル(Simchi & Kaphzan et al.,(2021)Scientific Reports,11:47);SHANK3マウスモデル(Zhang et al.,(2021)Translational Psychiatry,11:99);ニューレキシン1アルファマウスモデル(Armstrong et al.,(2020)Genes Brain and Behavior,19:e12630);脆弱X症候群マウスモデル(Cogram et al.,(2019)Frontiers in Behavioural Neuroscience,13:141);Dlgap2マウスモデル(Jian-Xie et al.,(2014)Molecular Autism,5:32);及びOxtr KOマウスモデル(Sala et al.,(2011)Biological Psychiatry,69:875-82)である。投与量及び条件は上記のNL3マウスモデルと同じであり、居住者・侵入者試験又は中立的な状況での社会的相互作用試験のいずれかを使用して、攻撃的行動に対するKN100の効果を決定する。
【0247】
実施例8:ADHDにおける攻撃性の処置
ADHDを有する患者において、攻撃性の増加が一般的に観察される。この攻撃性の増加は、ADHDのいくつかの動物モデルでも観察される。そのようなモデルの1つは、新生児6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)病変マウスモデルである。
【0248】
簡潔には、生後5日前後のマウスの脳に6-OHDAを脳室内注入すると、大部分のマウスにおいて、離乳期以降に生物学的ADHD表現型(例えば、ドーパミン枯渇)及び行動的表現型(例えば、多動性、注意障害、衝動性、攻撃性、並びに学習及び記憶障害)が引き起こされる。
【0249】
目的の5つの主要な実験条件を調べる:
・ビヒクルで処置した偽病変マウス
・ビヒクルで処置した6-OHDA病変マウス
・1.845mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は3.75mg/kg p.o.により処置した6-OHDA病変マウス
・3.69mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は7.5mg/kg p.o.により処置した6-OHDA病変マウス
・7.38mg/kg遊離塩基相当量のKNX100リン酸塩i.p.又は15mg/kg p.o.により処置した6-OHDA病変マウス。
【0250】
思春期中、マウスは社会的相互作用テ試験を受けて、対照マウス(偽病変マウス)と比較したADHDモデルマウス(6-OHDA病変マウス)の攻撃性の増加に対するKNX100の効果を試験する。マウスは、社会的相互作用試験の15分前(i.p.)又は30分前(p.o.)のいずれかで処置を受ける。対照又はADHDモデルマウスの行動が評価され、これには、闘争に費やした合計時間、合計闘争数、及び最初の闘争までの時間が含まれる。KNX100で処置したADHDモデルマウスは、これらの行動基準の一部又は全ての低下を示す。
【0251】
ADHDモデルマウスにおいて、KNX100は、本明細書の他の場所に記載されているADマウスモデル及び社会的隔離マウスモデルで観察された結果と同様に、闘争の発生、闘争時間、及び最初の攻撃までの時間を阻害することが示されている。したがって、KNX100は、ADHDに関連するか、又はADHDによって引き起こされる、攻撃性の処置に有用な臨床候補であることが期待される。
【0252】
本明細書に開示及び定義された本発明は、本文又は図面に言及され、又はそれから明らかな、個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0253】
条項
1.治療有効量の式(I)の化合物:
【化21】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、それを必要とする対象に投与し、それにより、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置することを含む、対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防する方法。
【0254】
2.対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りを処置又は予防するための医薬の製造における、式(I)の化合物
【化22】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用。
【0255】
3.対象の攻撃性、激越、易怒性、及び/又は怒りの処置又は予防における使用のための、式(I)の化合物
【化23】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ又はそれを含む医薬組成物。
【0256】
4.式(I)の化合物が、式(Ia)の化合物
【化24】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、任意選択により置換されたC1~5アルキル又は任意選択により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、任意選択により置換されたC1~5アルキルである)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、条項1に記載の方法、条項2に記載の使用、又は条項3に記載の使用のための化合物若しくは医薬組成物。
【0257】
5.式(I)の化合物が、
【化25】
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、条項4に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0258】
6.攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りが、対象の認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、条項1~5のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0259】
7.認知機能低下、認知障害及び/又は知的障害が、脳への物理的変化若しくは損傷に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、条項6に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0260】
8.認知障害及び/又は知的障害が、神経発達障害に関連するか、又はそれらによって引き起こされ、任意選択により、神経発達障害が、1つ以上の遺伝子変異若しくはリスクバリアント、並びに/又は発達初期における物理的及び/若しくは化学的損傷に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、条項6に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0261】
9.脳への物理的変化又は損傷が、神経変性状態、後天性脳損傷、化学的損傷、又は感染症に起因する損傷のうちの1つ以上によって引き起こされるか、又はそれらに関連する、条項7に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0262】
10.化学的損傷が、アルコール、薬物又は神経毒に関連するか、又はそれらによって引き起こされる、条項9に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0263】
11.後天性脳損傷が、外傷性脳損傷(TBI)を引き起こす脳への圧迫又は鈍的外傷、一過性脳虚血発作(TIA)に起因する虚血性損傷、虚血性脳卒中又は出血性脳卒中に起因する、条項9に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0264】
12.神経変性状態が、アミロイドパシー、シヌクレイノパシー又はタウパシーを含む、脳内の異常なタンパク質沈着物の存在を特徴とする、条項9に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0265】
13.神経変性状態又は障害が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体病(レビー小体型認知症(DLB))、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、3型ゴーシェ病、及びパーキンソン病からなる群から選択される、条項12に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0266】
14.神経変性状態又は障害が、血管性認知症、前頭側頭型認知症、又は典型的には異常なタンパク質沈着物の沈着に関連しない他の形態の認知症から選択される、条項9に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0267】
15.攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りが、AD、血管性認知症、前頭側頭型認知症、混合型認知症、又はコルサコフ症候群のうちの1つ以上に関連する、条項9に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0268】
16.攻撃性、激越、易怒性及び/又は怒りがADに関連する、条項1~7のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0269】
17.神経発達障害が、脆弱X症候群、X連鎖知的障害-筋緊張低下-顔面異形-攻撃的行動症候群、クリーフストラ症候群、ハンター症候群(MPS II)、ADNP(活性依存性神経保護因子ホメオボックス)症候群、レット症候群、自閉症スペクトラム障害、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群、ブルンナー症候群、猫鳴き症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・レムリ・オピッツ症候群、スミス・マギニス症候群、結節性硬化症、CHARGE症候群、ソトス症候群、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、PTEN関連障害、脳性麻痺、胎児性アルコールスペクトラム障害からなる群から選択される、条項8に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0270】
18.治療有効量の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが、処置を受けている対象の鎮静を同時に引き起こさない、条項1~17のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0271】
19.式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが、経口、鼻腔内、全身(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内)若しくは直腸に投与されるか、又は経口、鼻腔内、全身若しくは直腸投与用である、条項1~18のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用、又は化合物若しくは医薬組成物。
【0272】
20.有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又はプロドラッグを含むキットであって、条項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施するための書面による説明書を含む、キット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
【国際調査報告】