(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】マイクロ流体インピーダンスサイトメトリーを用いた無標識細胞活性化プロファイリングのための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240228BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557226
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 SG2022050149
(87)【国際公開番号】W WO2022197253
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10202102747Y
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ハン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペチャクプ、チャヤコーン
(72)【発明者】
【氏名】リ、キング ホー ホールデン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029BB11
4B029CC01
4B029DC07
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS39
4B063QX04
4B063QX10
(57)【要約】
本発明は、統合型バイオセンサを含むマイクロ流体インピーダンスサイトメータ、ならびに骨髄球および/またはリンパ球および好中球などの試料中の細胞の無標識活性化プロファイリングのためのそのデバイスの使用に関する。マイクロ流体インピーダンスサイトメータは、スパイラル形状のフローチャネルと、チャネルにわたって電場を発生させるための共面電極と、第1の試料入口と、第2のシース流体入口とを備えてもよく、試料入口は、試料入口の高さがシース流体入口およびフローチャネルの高さよりも低いという点で、段差付き試料入口である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インピーダンスサイトメトリーを使用した、任意選択で定量的な、無標識細胞プロファイリングのための方法であって、前記方法は:
(i)細胞を含む流体試料を提供するステップと;
(ii)第1の試料入口および第2のシース流体入口ならびにフローチャネルを有するインピーダンスサイトメータに前記試料を灌流させるステップであって、前記フローチャネルは、前記チャネルにわたって電場を生成するための共面電極と、前記電気インピーダンスにおける変化を検出することによって前記電場の破壊を検出するための手段とを備える、灌流させるステップと;
(iii)前記試料中の細胞の無標識定量的プロファイリングのために前記電気インピーダンスの変化を測定するステップと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞が血液細胞、好ましくは骨髄球および/またはリンパ球および好中球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記方法は:
(a)活性化リンパ球プロファイリング;および/または
(b)好中球プロファイリング;
のためのものである、方法。
【請求項4】
前記インピーダンス測定が、リンパ球細胞サイズを決定するために、0.1~1MHz、好ましくは0.2~0.6MHzの範囲の低周波数で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
インピーダンス測定が、高周波数でのインピーダンス信号の大きさに対する低周波数でのインピーダンス信号の大きさの比として電気的不透明度を決定するために、>1~20MHz、好ましくは1.2~12.0MHzの範囲の高周波数でさらに行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インピーダンス測定が、膜不透明度を決定するために>1~10Mhz、好ましくは1.2~8Mhzの周波数で、および/または核容量を決定するために>10~20Mhz、好ましくは10.5~15Mhzの周波数で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、マイクロ流体インピーダンスサイトメトリーを使用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)はスパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備えるマイクロ流体デバイスの形態のインピーダンスサイトメータを提供することをさらに含み、前記2つの入口のうちの一方は試料入口であり、前記スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、前記2つの入口のうちの他方はシース入口であり、前記スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置し、前記出口のうちの少なくとも1つは、リンパ球の直接インピーダンス定量化のための共面電極を含むインピーダンス検出器を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(ii)は、(i)の前記試料を試料流量で前記試料入口ポートに導入し、シース流体をシース流量で前記シース入口に導入するステップであって、試料対シース流量比が1:15以下、好ましくは1:20以下である、導入するステップと、細胞選別および集束のために、前記試料およびシース流体を前記スパイラル形状フローチャネルを通して駆動するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(iii)は、選別され集束されたリンパ球を、インピーダンス検出器を備える少なくとも1つの出口内に駆動することによって、ステップ(ii)において選別されるとともに集束された細胞をインピーダンス検出器へと向かわせて、インピーダンス信号読み出しを決定することにより、細胞、好ましくは活性化リンパ球を定量的にプロファイリングすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料流量が10~400μL/分の範囲にある、請求項9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料対シース流量比が1:20~1:50である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料入口は、前記試料入口の高さが前記シース流体入口および前記フローチャネルの高さよりも、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3~10倍低い段差付き試料入口であり、前記試料入口は、任意選択で前記フローチャネルの底部に位置する、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料入口は、15~50μmの高さを有し、前記シース流体入口および前記フローチャネルは、80~250μmの高さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シース流体入口の開口幅は、200~700μmの範囲内であり、および/または前記試料入口の開口幅は、50~200μmである、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シース流体入口と前記試料入口のアスペクト比(高さに対する幅)は、3~10、好ましくは4~8の範囲にある、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
シース入口の試料入口に対する面積比は、10~50、好ましくは20~40の範囲内である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、任意選択で、ステップ(ii)および(iii)におけるインピーダンスプロファイリングの前に、前記試料を望ましくない細胞に結合する磁気ビーズとともにインキュベートし、望ましくない細胞が結合した磁気ビーズを磁場によって結合していない細胞から分離することによって、磁気活性化細胞選別(MACS)を実施することによる、細胞精製のステップをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記望ましくない細胞が単球を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インピーダンスサイトメトリーを使用する定量的無標識細胞プロファイリングのためのバイオセンサであって、前記バイオセンサは:
(i)スパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備えるマイクロ流体デバイスであって、前記2つの入口のうちの一方は試料入口であり、前記スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、前記2つの入口のうちの他方はシース流体入口であり、前記スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する、マイクロ流体デバイスと;
(ii)細胞の直接インピーダンス定量化のための共面電極であって、前記マイクロ流体デバイスの前記出口のうちの少なくとも1つと一体化されている共面電極と;
を備える、バイオセンサ。
【請求項21】
前記試料入口は、前記試料入口の高さが前記シース流体入口および前記フローチャネルの高さよりも、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3~10倍低い段差付き試料入口であり、前記試料入口は、任意選択で前記フローチャネルの底部に位置する、請求項20に記載のバイオセンサ。
【請求項22】
前記試料入口は、15~50μmの高さを有し、前記シース流体入口および前記フローチャネルは、80~250μmの高さを有する、請求項20または請求項21に記載のバイオセンサ。
【請求項23】
前記シース流体入口の開口幅は、200~700μmの範囲内であり、および/または前記試料入口の開口幅は、50~200μmである、請求項20~22のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項24】
前記シース流体入口と前記試料入口のアスペクト比(高さに対する幅)は、3~10、好ましくは4~8の範囲にある、請求項20~23のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項25】
シース入口の試料入口に対する面積比は、10~50、好ましくは20~40の範囲内にある、請求項20~24のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項26】
請求項20~25のいずれか一項に記載のバイオセンサを含む統合型インピーダンスサイトメータであって、(1)マイクロチップ、(2)インピーダンス分析器、ならびに(3)灌流制御を可能にするために前記試料およびシース流体入口に接続された流体ポンプをさらに含み、前記マイクロチップは前記インピーダンス分析器および前記流体ポンプと接続され、前記インピーダンス分析器はインピーダンス測定を可能にするために前記共面電極に接続されている、統合型インピーダンスサイトメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、インピーダンスサイトメトリーに基づく無標識マイクロ流体法を用いた細胞の選別およびプロファイリングの分野に関する。具体的には、本発明は、前記目的のために特に設計された統合型バイオセンサを有するマイクロ流体インピーダンスサイトメトリーを使用することによる、試料中の好中球およびリンパ球の生物物理学的プロファイリング、ならびに前記バイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球は我々の獲得免疫系に不可欠である。特異的抗原が認識されると、それらはサイトカインを分泌し、増殖および分化を受け、全体的な免疫応答を調節する。これらの細胞は、HIVなどの病原体に対する応答に加えて、癌および心血管疾患などの障害においても重要である。したがって、リンパ球表現型の定性的および定量的検出は、宿主免疫状態を反映するために、および疾患診断のために臨床的に有用である。例えば、リンパ球数および好中球対リンパ球比は、しばしば、菌血症、マラリアおよび結核における疾患予測のための臨床パラメータとして使用される。細胞媒介性免疫応答にとって極めて重要な活性化Tリンパ球は、HIV感染に対する感受性ならびに癌患者の生存にも関連している。
【0003】
Tリンパ球は非常に多様であるので、種々のリンパ球亜集団を同定するために単一細胞分析を行うことが重要である。リンパ球細胞活性化を研究するための従来の技術は、フローサイトメトリーによる表面マーカー発現(CD69、CD137など)の測定(非特許文献1;非特許文献2)、または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いた分泌サイトカイン(IFNγ、IL2など)の測定(非特許文献3;非特許文献4)を含む。しかしながら、これらのアプローチは、抗体の使用に起因して高価で手間がかかるため、臨床試験のために必ずしも拡張可能であるとは限らない。
【0004】
電気ベースのマイクロテクノロジー(誘電泳動(DEP)、エレクトロローテーション、インピーダンスサイトメトリーなど)は、最小限の試料要件と細胞摂動で単一細胞の無標識測定を容易にする魅力的な代替手段である(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。最近の研究としては、エレクトロローテーションを用いたリンパ球プロファイリング(非特許文献9;非特許文献10)、インピーダンスサイトメータを用いたマウスリンパ球活性化およびリンパ球差分計数(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)が挙げられる。しかしながら、これらのアプローチは、低スループット(試料流量<20μL/分)に悩まされ、追加の血液試料調製ステップを必要とする。インピーダンスサイトメトリーではスループットの向上が可能であるが(非特許文献15)、細胞は垂直方向(チャネルの高さ方向)に>1の平衡位置を持つように慣性集束を受ける可能性がある。これは、表現型決定精度に悪影響を及ぼす電気的プロファイルにおける複数の細胞クラスタにつながる(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)。DEP集束(非特許文献19)やマルチ電極を用いた位置センシング(スペンサー(Spencer)ら、前掲;デニノ(De Ninno)ら、前掲)を含むいくつかの解決策が提案されているが、追加の機器(増幅器)を備えることからセットアップが複雑であり、(追加の電極により)検出領域が大きくなることで、粒子の同時発生事象(検出領域に2つ以上の粒子が存在すること)が増加する可能性がある。
【0005】
好中球は、先天性免疫の最も豊富で重要なエフェクター細胞である。好中球活性化を研究するための従来の技術は、フローサイトメトリーによる表面マーカー発現の測定、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いた分泌サイトカイン/酵素の測定を含む。しかしながら、これらのアプローチは、抗体の使用に起因して高価で手間がかかるため、臨床試験のために必ずしも拡張可能であるとは限らない。電気ベースのマイクロテクノロジー(誘電泳動(DEP)、エレクトロローテーション、インピーダンスサイトメトリーなど)は、最小限の試料要件と細胞摂動で単一細胞の無標識測定を容易にする魅力的な代替手段である(非特許文献5(doi:10.1007/s10404-010-0580-9(2010));非特許文献6;非特許文献8(doi:10.1039/D0LC00840K(2021)))。最近の研究としては、エレクトロローテーションを用いた白血球プロファイリング(非特許文献9(doi:10.1002/1522-2683(200207)23:13<2057::AID-ELPS2057>3.0.CO;2-X(2002));非特許文献10(doi:https://doi.org/10.1016/S0005-2736(98)00253-3(1999)))および差動インピーダンスサイトメータ(非特許文献12(doi:10.1126/scitranslmed.3006870(2013));非特許文献13(doi:https://doi.org/10.1016/j.bios.2017.02.047(2017));非特許文献14(doi:10.1021/acsnano.0c03018(2020)))が挙げられる。しかしながら、これらのアプローチは、低スループット(試料流量<20μL/分)に悩まされ、追加の血液試料調製ステップを必要とする。
【0006】
主たる障害を軽減するために、インピーダンスサイトメトリーは、細胞固有の電気的特性に基づく無標識の単一細胞表現型分類技術として台頭してきている(非特許文献7)。この技術は細胞の種類の決定に広く用いられている(非特許文献11(doi:10.1038/nprot.2016.038);非特許文献20;非特許文献21)が、微細加工インピーダンスサイトメータは分析前に標的細胞を精製する従来の試料処理ステップを必要とするため、臨床での有用性は限られている。
【0007】
インピーダンスサイトメトリーではスループットの向上が可能であるが、細胞は垂直方向(チャネルの高さ方向)に>1の平衡位置を持つように慣性集束を受ける可能性がある。これは、表現型決定精度に悪影響を及ぼす電気プロファイルにおける複数の細胞クラスタにつながる(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18(doi:https://doi.org/10.1016/j.snb.2017.10.113(2018)))。
【0008】
DEP集束(非特許文献19(doi:10.1021/acssensors.6b00286(2016)))やマルチ電極を用いた位置センシング(スペンサー(Spencer)ら、前掲;デニノ(de Ninno)ら、前掲)を含むいくつかの解決策が提案されているが、追加の機器(増幅器)を備えることからセットアップが複雑であり、(追加の電極により)検出領域が大きくなることで、粒子の同時発生事象(検出領域に2つ以上の粒子が存在すること)が増加する可能性がある。
【0009】
白血球表現型決定のためのオンチップインピーダンス検出を備えた統合型スパイラルマイクロ流体デバイス(ディーンフロー分画(Dean Flow Fractionation),DFF)は、以前に開発されている(非特許文献15(doi:10.1039/C9LC00250B(2019)))。しかしながら、このデバイスについても、慣性ベースの選別の使用により、流動中に2つの異なる垂直位置(チャネル高さに沿った位置)で粒子集束をもたらすことが判明した。これは、同じ粒子/細胞でも垂直方向の位置が異なると信号の大きさが異なるため、インピーダンスの検出精度に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ヴェルフル(Wolfl)ら、Blood、2007、110、201-210
【非特許文献2】シブリアンおよびサンチェス-マドリッド(Cibrian & Sanchez-Madrid)、European journal of immunology、2017、47、946-953
【非特許文献3】フェルステーヘン(Versteegen)ら、J Immunol Methods、1988、111、25-29
【非特許文献4】イギーチェメおよびヘルスコビッツ(Igietseme&Herscowitz)、Journal of immunological methods、1987、97、123-131
【非特許文献5】サンおよびモーガン(Sun&Morgan)、Microfluidics and Nanofluidics、2010、8、423-443
【非特許文献6】チェン(Chen)ら、International Journal of Molecular Sciences、2015、16、9804
【非特許文献7】ペチャクプ(Petchakup)ら、Micromachines,2017、8、87
【非特許文献8】ホンラド(Honrado)ら、Lab on a Chip、2021、21、22-54
【非特許文献9】ペシグ(Pethig)ら、Electrophoresis、2002、23、2057-2063
【非特許文献10】ファン(Huang)ら、Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes、1999、1417、51-62
【非特許文献11】ハッサン(Hassan)ら、Nat.Protocols、2016、11、714-726
【非特許文献12】ワトキンズ(Watkins)ら、Science Translational Medicine、2013、5、214ra170-214ra170
【非特許文献13】ロロ(Rollo)ら、Biosensors and Bioelectronics、2017、94、193-199
【非特許文献14】ハン(Han)ら、ACS Nano、2020、14、8646-8657
【非特許文献15】ペチャクプ(Petchakup)ら、Lab on a Chip、2019、19、1736-1746
【非特許文献16】スペンサー(Spencer)ら、Lab on a Chip、2016、DOI:10.1039/C6LC00339G
【非特許文献17】デニノ(De Ninno)ら、Lab on a Chip、2017、DOI:10.1039/C6LC01516F
【非特許文献18】キャセリ(Caselli)ら、Sensors and Actuators B:Chemical、2018、256、580-589
【非特許文献19】ハーンドベック(Haandbaek)ら、ACS Sensors、2016、1、1020-1027
【非特許文献20】サイモン(Simon)ら、Lab on a Chip、16、2326-2338、doi:10.1039/C6LC00128A(2016)
【非特許文献21】ソング(Song)ら、Lab on a Chip、13、2300-2310、doi:10.1039/C3LC41321G(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当技術分野では、細胞プロファイリング、特にリンパ球および好中球のプロファイリングのためのさらに改善された方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(マイクロ流体)インピーダンスサイトメトリーに基づく、無標識の(label-free)血球(リンパ球または好中球等)活性化プロファイリングのための方法を提供することにより、この必要性を満たす。
【0013】
第1の態様において、本発明は、インピーダンスサイトメトリーを使用する無標識の細胞プロファイリングのための方法であって、前記方法は:
(i)細胞を含む流体試料を提供するステップと;
(ii)第1の試料入口および第2のシース流体入口ならびにフローチャネルを有するインピーダンスサイトメータに前記試料を灌流させるステップであって、前記フローチャネルは、前記チャネルにわたって電場を生成するための共面電極(coplanar electrodes)と、電気インピーダンスの変化を検出することによって前記電場の破壊(disruptions)を検出するための手段とを備える、灌流させるステップと;
(iii)前記試料中の細胞の無標識定量的プロファイリングのために前記電気インピーダンスの変化を測定するステップと;
を含む。
【0014】
本方法は、定量的無標識細胞プロファイリングのためのものであり得る。
そのような方法の種々の実施形態において、細胞は血液細胞、好ましくは骨髄球および/またはリンパ球である。特定の実施形態において、細胞はリンパ球または好中球である。したがって、本方法は、活性化リンパ球プロファイリングまたは活性化好中球プロファイリングのための方法であり得る。
【0015】
種々の実施形態において、インピーダンス測定は、リンパ球細胞サイズを決定するために、0.1~1MHz、好ましくは0.2~0.6MHzの範囲の低周波数で実施される。種々の実施形態において、前記測定は、電気的不透明度を決定するために、>1~20MHz、好ましくは1.2~15.0または1.2~12.0MHzの範囲の高周波数でインピーダンス測定をさらに実行することによって補足されてもよい。電気的不透明度(electrical opacity)は、高周波数(>1~20MHz)におけるインピーダンス信号の大きさに対する低周波数(0.1~1MHz)におけるインピーダンス信号の大きさの比として計算することができ、細胞膜キャパシタンスまたは細胞核特性を反映する。種々の実施形態において、測定は、2つのより高い周波数範囲で行われることができ、1つは、膜特性(>1~10MHz)を決定するためのものであり、1つは、核特性(>10~20MHz)を決定するためのものである。
【0016】
種々の実施形態において、本方法は、マイクロ流体インピーダンスサイトメトリーを使用する。そのような実施形態において、ステップ(i)は、スパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備えるマイクロ流体デバイスの形態のインピーダンスサイトメータを提供することをさらに含んでもよく、2つの入口のうちの一方は試料入口であり、スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、2つの入口のうちの他方はシース入口であり、スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置し、出口のうちの少なくとも1つは、リンパ球の直接インピーダンス定量化のための共面電極を含むインピーダンス検出器を備える。そのような実施形態において、ステップ(ii)は、(i)の試料を試料流量で試料入口ポートに導入し、シース流体をシース流量でシース入口に導入するステップであって、試料対シース流量比が1:15以下、好ましくは1:20以下である、導入するステップと、細胞選別および集束のために、前記試料およびシース流体を、スパイラル形状フローチャネルを通して駆動するステップとを含んでもよい。次いで、ステップ(iii)は、選別され集束されたリンパ球を、インピーダンス検出器を備える少なくとも1つの出口内に駆動することによる、ステップ(ii)で選別されるとともに集束された細胞をインピーダンス検出器へと向かわせて、インピーダンス信号読み出しを決定することによって、細胞、好ましくは活性化リンパ球を定量的にプロファイリングすることを含んでもよい。
【0017】
これらの方法において、試料流量は、10~400μL/分の範囲であり得る。
種々の実施形態において、試料対シース流量比は、1:20~1:50である。
試料入口は、試料入口の高さがシース流体入口およびフローチャネルの高さよりも、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3~10倍低いという、段差付き試料入口であってもよい。この設定は、本明細書では「段差付き試料入口(stepped sample inlet)」とも呼ばれる。試料入口は、細胞のより良好な集束を可能にするために、フローチャネルの底部に位置してもよい。
【0018】
種々の実施形態において、試料入口は、15~50μmの高さを有し、および/またはシース流体入口およびフローチャネルは、80~250μmの高さを有する。
方法の種々の実施形態において、シース流体入口の開口幅は、200~700μmの範囲内であり、および/または試料入口の開口幅は、50~200μm、好ましくは60~180または70~160μmまたは80~150μmである。このような実施形態において、シース流体入口と試料入口のアスペクト比(高さに対する幅)は、3~10、好ましくは4~8の範囲にある。種々の実施形態において、シース入口対試料入口の面積比は、10~50、好ましくは20~40の範囲内である。
【0019】
本発明の方法は、ステップ(ii)および(iii)におけるインピーダンスプロファイリングの前に、試料を望ましくない細胞に結合する磁気ビーズとともにインキュベートし、望ましくない細胞が結合した磁気ビーズを磁場によって結合していない細胞から分離することによって、磁気活性化細胞選別(MACS)を行うステップをさらに含んでもよい。そのような望ましくない細胞には、特に本方法がリンパ球プロファイリングのためのものである場合、単球などの骨髄球が含まれ得る。
【0020】
別の態様において、本発明はまた、インピーダンスサイトメトリーを使用する定量的無標識細胞プロファイリングのためのバイオセンサであって、同バイオセンサは:
(i)スパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備えるマイクロ流体デバイスであって、2つの入口のうちの一方は試料入口であり、スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、2つの入口のうちの他方はシース入口であり、スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する、マイクロ流体デバイスと;
(ii)細胞の直接インピーダンス定量化のための共面電極であって、前記マイクロ流体デバイスの前記出口のうちの少なくとも1つと一体化されている共面電極と;
を備える。
【0021】
方法の文脈において上述され、マイクロ流体デバイスおよびインピーダンス検出器自体に関する全ての実施形態は、本発明のバイオセンサに同様に適用可能である。
さらに別の態様において、本発明はまた、本発明のバイオセンサを含み、(1)マイクロチップ、(2)インピーダンス分析器、ならびに(3)灌流制御を可能にするために試料およびシース流体入口に接続された流体ポンプをさらに含み、マイクロチップはインピーダンス分析器および流体ポンプと接続され、インピーダンス分析器はインピーダンス測定を可能にするために共面電極に接続されている統合型インピーダンスサイトメータを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】段差を備えた高さの試料入口を使用する、単一ストリーム粒子集束が向上した細胞選別および検出デバイスの概略図を示す。段差を備えた高さの入口の3D形状は、点線のボックスで強調されている。
【
図2】スパイラルデバイスの入口領域(断面図)における3D試料集束を示すCFDシミュレーションである。黒色および灰色は、それぞれ試料流線およびシース流線を示す。粒子は、慣性集束および二次ディーン渦によりチャネル底部で平衡化し、(電極に近い)検出領域まで集束されたままである。
【
図3】段差を備えた入口粒子集束の特徴付けを示す。試料対シース流量比を変えた場合のCFDシミュレーションの断面図(左)と、単一粒子の平衡位置を示す10μmビーズのインピーダンス検出(右)。
【
図4】試料流線(黒色ドット)に対する試料入口の段差を備えた高さの変更の影響を示す。シース入口開口は、すべての条件について100μmに固定される。
【
図5】試料流線に対する試料入口の開口幅の影響を示す。試料入口高さは、すべての条件について20μmに固定される。灰色の点および黒色の点は、それぞれシースおよび試料の流線を表す。
【
図6】試料流閉じ込めの効率を示す、チャネルの下半分における試料流線のパーセンテージの定量化を示す。
【
図7】インピーダンスモデル化の項で説明される二重シェルモデルを使用して、インピーダンススペクトル(上)、差動電流応答(differential current response)(中)、および不透明度(opacity)(下)に対する膜伝導率の影響を調べるための数値インピーダンスシミュレーションを示す。表1は、細胞成分の電気特性を含む。
【
図8】核サイズ(上)および核膜伝導率(下)を変化させる効果についての数値インピーダンスシミュレーションを示す。垂直の点線は、システムの周波数選択を示す。
【
図9】好中球のマルチパラメータインピーダンス表現型決定(phenotyping)を示す。異なる表現型を有する好中球を、統合デバイスにおいて試験した。多周波数測定スキーム(0.3MHz、1.72MHzおよび12MHz)を使用することによって、インピーダンス特性、すなわち、1)細胞サイズ(0.3MHzにおけるインピーダンス)、2)原形質膜特性を反映する膜の不透明度(1.72MHzにおけるインピーダンスの0.3MHzに対する比)、および3)核特性を表す核の不透明度(12MHzにおけるインピーダンスの0.3MHzに対する比)に基づいて、異なる表現型を区別することができる。
【
図10】統合デバイスを使用する好中球の表現型決定を示す。好中球表現型は、1)未処理対照、2)死滅(75℃熱処理)、3)ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)で2時間処理(NETosis)、および4)pH9における自発的NETosisである。強度スケールは、単一細胞事象の密度を示す。
【
図11】NETosis集団の定量化。(A)NETosis定量化のための核の不透明度を使用するインピーダンスゲーティング戦略(上)、および膜の不透明度対電気的サイズに対する対応するバックゲーティングされた集団(下)。健常な集団およびNETosis集団の(B)細胞サイズおよび(C)核の不透明度。(D)異なるpH環境における好中球の自発的NETosis定量化。
【
図12】大腸菌(EC)に対する好中球細菌応答のインピーダンスプロファイリング。好中球を、1)細菌ストックからの10倍希釈(EC-10×、OD625:0.29)2)10
3倍希釈(EC-1k×)3)10
6倍希釈(EC-1M×)で、異なる細菌懸濁液で24時間処理した。
【
図13】統合慣性インピーダンスサイトメトリーを使用したリンパ球活性化プロファイリングのワークフローを示す。活性化されたリンパ球はサイズが大きく、インピーダンス検出領域に分類され、一方、健常なリンパ球(サイズが小さい)はスパイラル段階で廃棄物に分類される。
【
図14】統合慣性インピーダンスサイトメトリーを使用するリンパ球インピーダンスプロファイリングを示す。(A)死滅リンパ球集団、対照リンパ球集団および活性化リンパ球集団についての選別段階およびインピーダンス検出前の段階の分岐における細胞集束を示す積み重ねられた高速画像。(B)3分間の各条件における活性化リンパ球のインピーダンスカウント数。
【
図15】リンパ球試料の選別前(pre-sorted)(試料)画分、(インピーダンス検出器の出口から)選別された画分、および(スパイラル選別器の廃棄出口からの)廃棄画分の前方散乱シグナルおよび側方散乱シグナルの散布図を示す。
【
図16】元のリンパ球試料(入口)およびインピーダンス出口からの選別されたリンパ球のリンパ球活性化マーカーCD137発現プロファイルを示す。
【
図17】選別された画分対選別前の画分における活性化細胞のパーセンテージの散布図を示す。点線は、選別前の(presorted)細胞中の5%活性化細胞を示す(左)。二人の異なるドナーからの選別前の(試料)中の活性化細胞のパーセンテージに対するインピーダンスカウント数の較正曲線(右)。
【
図18】1)PBMC単離および抗原との培養、2)Tリンパ球のMACS分離(CD4ネガティブセレクション)、ならびに3)マイクロ流体インピーダンスプロファイリングを含む、インピーダンスサイトメトリーを使用する抗原特異的Tリンパ球応答試験のワークフローを示す。
【
図19】未刺激対照リンパ球および刺激リンパ球(フィトヘマグルチニン(PHA)およびツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD))のインピーダンスプロファイルを示す。nは、検出されたインピーダンス細胞数を示す(入口試料として100k細胞に正規化されている)。
【
図20】三人の異なるドナーからの選別前および選別後における活性化リンパ球(CD69+CD137+)の定量化を示す(左)。PPD処理されたPBMCについての選別前細胞(入口)および選別後細胞(インピーダンス出口)の代表的なフローサイトメトリー分析(右)。
【
図21】フローサイトメトリー分析(左)によってインピーダンス選別された画分(左)中の対照(未刺激)に対して正規化された刺激を受けた試料(PPD、PHA)中のCD69+CD137+リンパ球の比を示す。四人の異なるドナーからの選別された画分におけるマイクロ流体差動インピーダンスカウント比(対照(未刺激)に対して正規化された刺激を受けた試料(PHA、PPD)中の検出細胞)(右)。
【
図22】試料(選別前)中のリンパ球集団(対照、PHAおよびPPD処理)、ならびにマイクロ流体選別後のより大きな(活性化)リンパ球(選別後)および非活性化リンパ球(廃棄物)の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
【
図23】PHAで刺激された末梢血単核細胞(PBMC)を使用するインピーダンス活性化プロファイリングを示す。(A)実験ワークフローおよび(B)未刺激対照およびPHA刺激PBMCの選別を示す積み重ねられた高速画像。スケールバーは150μmである。(C)対照、PHAおよびPPDについて選別されたリンパ球の3分間でのインピーダンスプロファイル。
【
図24】インピーダンスシステムプロトタイピングを示す。流体ポンプ、マイクロ流体デバイス、およびインピーダンス分析器に接続されたPCBチップホルダを含むマイクロ流体サイトメータセットアップ。挿入図は、PCBおよびチップホルダの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、非限定的な実施例および添付の図面と併せて考慮されるとき、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう。
以下の詳細な説明は、例示として、本発明が実施され得る特定の詳細および実施形態を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分詳細に説明されている。他の実施形態が利用されてもよく、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的変更が行われてもよい。いくつかの実施形態を1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせて新しい実施形態を形成することができるので、種々の実施形態は必ずしも相互に排他的ではない。
【0024】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または(or)」という語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、「および(and)」を含むことが意図される。用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。矛盾がある場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。
【0025】
本発明者らは、インピーダンスシグネチャに基づく無標識ハイスループットマイクロ流体リンパ球表現型決定アッセイ法を開発した。この開発は、異なるTリンパ球集団(CD4+)の最初の特徴付け、すなわち、これらは、健常なリンパ球、(抗CD3/CD28ダイナビーズ(Dynabeads(登録商標))によって)活性化されたリンパ球、および(10%DMSOによって処理された)死滅リンパ球のインピーダンスプロファイルにおいて有意な生物物理学的差異を示すことが観察されたこと、によって可能となった。マイトジェンレクチンフィトヘマグルチニン(PHA)およびツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)抗原を使用する末梢血単核細胞(PBMC)刺激もまた、リンパ球活性化(CD69+CD137+)に対応するリンパ球細胞サイズの増加(>8μm)を明らかにした。次いで、臨床利用のための概念実証として、本発明者らは、活性化Tリンパ球(>8μm)の無標識定量的測定のために統合型の細胞選別およびインピーダンスプロファイリングプラットフォームを適用し、段差付き高さを備えた(stepped height)試料入口を使用して、共面電極に近接する単一細胞集束流を流体力学的に達成した。これは、単一細胞インピーダンス測定にいくつかの利点をもたらすことが見出された。すなわち、1.初期選別段階中の細胞損失を最小限にする、十分に整列した粒子集束流、2.電極への細胞の近接に起因する改善された信号検出感度、および3.チャネルの下半分におけるより閉じ込められた粒子の位置/高さに起因して、インピーダンス信号変動がより小さくなること。これらの利点は、より大きな活性化Tリンパ球の有意な濃縮(約11.7倍)および低レベルのリンパ球活性化(<5%)の電気的検出を可能にした。次いで、PHAおよびPPDで刺激されたPBMCからの活性化Tリンパ球(CD4+)のインピーダンスプロファイリングのために、統合マイクロチップを磁気活性化細胞選別(MACS)と結合した。活性化Tリンパ球を識別するために、差動インピーダンス細胞数比(刺激/未刺激)を定義し、それはフローサイトメトリーによる免疫表現型決定と比較してより良好な感度を示した。
【0026】
本明細書に説明される統合慣性インピーダンスサイトメトリープラットフォームは、1)サイズベースの活性化リンパ球濃縮、および2)インピーダンス検出感度を改善するための流体力学的ベースの単一ストリーム集束を含む、いくつかの重要な利点を提供する。MACSと組み合わせた場合、プラットフォームは、PHAおよびPPDで刺激されたPBMCからの活性化CD4Tリンパ球応答を首尾よく検出した。まとめると、本明細書に報告される結果は、無標識抗原特異的リンパ球プロファイリングのための開発されたプラットフォームの可能性を実証する。開発された技術は、感染症(例えば、結核およびCOVID19)のためのポイントオブケア検査として抗原特異性Tリンパ球応答の定量的検出のためにさらに使用され得ることが想定される。無標識細胞分析および溶出細胞の連続収集は、生物物理学的細胞特性と抗原特異的応答との間の新規な関連を解明するための下流の生物分析を非常に容易にする。
【0027】
本発明者らはさらに、単一ストリーム粒子集束のための段差付き高さを備えた試料入口の組み込みが、スパイラル状マイクロ流体およびインピーダンスサイトメトリーの統合型プラットフォームを強化可能にすることを発見した。この新規な特徴を用いて、核および膜特性に基づく異なる好中球表現型(健常、死滅、NETosis)の無標識特徴付けを首尾よく実証することができた。開発されたプラットフォームはまた、最小限の細胞摂動を伴って、試料の取扱いおよび分析/試験時間を大幅に最小化し、これは、ポイントオブケア用途への重要な進歩を表す。
【0028】
本発明の方法は、インピーダンスサイトメトリーを用いた定量的な無標識細胞プロファイリングを可能にし、以下のステップ:
(i)細胞を含む流体試料を提供するステップと;
(ii)第1の試料入口および第2のシース流体入口ならびにフローチャネルを有するインピーダンスサイトメータに前記試料を灌流させるステップであって、前記フローチャネルは、前記チャネルにわたって電場を生成するための共面電極と、電気インピーダンスの変化を検出することによって前記電場の破壊を検出するための手段とを備える、灌流させるステップと;
(iii)前記試料中の細胞の無標識定量的プロファイリングのための電気インピーダンスの変化を測定するステップと;
を含む。
【0029】
本発明の種々の実施形態において、本発明の方法は、(a)遠心分離ステップ;および/または(b)少なくとも1つの型の血液細胞がマーカー分子で標識される標識ステップを含まない。
【0030】
プロファイリングされる細胞は、典型的には血液細胞、通常は白血球、すなわち骨髄球および/またはリンパ球であり、リンパ球および好中球が、本明細書における方法の実現可能性を実証するための特定の例として使用される。したがって、記載および例示される方法は、主に、活性化リンパ球または活性化好中球プロファイリングを可能にする方法である。
【0031】
用語「血液細胞」は、本明細書で使用される場合、血小板、赤血球および白血球(white blood cell)を含むことを意味する。全ての白血球は有核であり、無核の赤血球および血小板と区別される。白血球のタイプは、標準的な方法で分類することができる。2対の最も広いカテゴリーは、構造(顆粒球または無顆粒細胞)または細胞系統(骨髄細胞またはリンパ系細胞)のいずれかによってそれらを分類する。これらの最も広いカテゴリーは、さらに5の主要なタイプに分けることができる:好中球、好酸球、好塩基球、単球、およびリンパ球。これらのタイプは、それらの物理的および機能的特徴によって区別される。単球および好中球は食作用性である。さらなるサブタイプ分類は、当技術分野において周知である。
【0032】
本明細書で互換的に使用される「リンパ球細胞」または「リンパ球」という用語は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞およびそれらの任意の組合せのいずれか1つを指す。末梢血単核(PBMC)細胞、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞もリンパ球細胞と考えられる。リンパ球の非限定的な例としては、細胞傷害性リンパ球(CTL、CD8+またはCD4+)、NK細胞(CD2+)、およびTヘルパー細胞(CD4+)が挙げられる。
【0033】
したがって、使用される試料は、典型的には血液試料である。この試料は、本発明の方法において使用される前に、例えば、種々の分離、精製および保存処理(これらの全ては当業者に周知である)に供することによって、処理されてもよい。例えば、赤血球は、白血球の濃度を増加させ、赤血球バックグラウンドを減少させるために、溶解され得るか、またはそうでなければ血液試料の残りから分離され得る。
【0034】
種々の実施形態において、さらなる分離ステップが、白血球の亜集団を分離するために実施される。優勢な好中球およびリンパ球集団と比較して少ない総数で生じる白血球(例えば、好塩基球、好酸球および単球など)については、赤血球および血小板だけでなく、リンパ球および/または好中球も分離して、これらの細胞のプロファイリングを可能にすることが有益であり得る。好中球またはリンパ球をプロファイリングする場合にも同じことが当てはまる。そのような実施形態において、本明細書に記載の方法を実施する前に、プロファイリングされているものから評価されない亜集団を分離する(seperatre)ことは必須ではないが、依然として有益であり得る。白血球の異なる亜集団を互いに分離するための手段は、当該分野で周知であり、いくつかはまた、本明細書中において、以下に記載される。
【0035】
試料は、指穿刺試料または静脈穿刺から生成された試料であり得る。
「試料」または「患者試料」は、本明細書で使用する場合、一般に、組織および体液などの生物学的試料を含む。「体液」には、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、胸膜液、涙、乳管液、リンパ液、痰、尿、羊水、および精液が含まれ得るが、これらに限定されない。試料は、「無細胞」である体液を含んでもよい。「無細胞体液」は、約1%(w/w)未満の全細胞物質を含む。血漿または血清は無細胞体液の例である。試料は、天然または合成起源の標本を含み得る。「血漿」は、本明細書で使用する場合、血液中に見出される無細胞流体を指す。「血漿」は、当技術分野で公知の方法(例えば、遠心分離、濾過など)によって血液から全細胞性物質を除去することによって血液から得ることができる。本明細書で使用される場合、「末梢血血漿」は、末梢血試料から得られる血漿を指す。本明細書で使用される「血清」は、血漿または血液を凝固させ、凝固した画分を除去した後に得られる血漿の画分を含む。したがって、血清試料も無細胞である。一方、本明細書において使用される場合、「全血」とは、ヒト等の対象から採取された血液そのものであって、分離されていない血球を含む血液を意味する。また、全血試料としては、全血を適当な緩衝液等で希釈することによって、および/または抗凝固剤、プロテアーゼ阻害剤等の添加剤を添加することによって、得られた試料を用いてもよい。全血試料は、血小板、赤血球および白血球などの血液細胞を含む。本明細書に開示される方法は、細胞、特にリンパ球のプロファイリングに関するので、細胞を典型的に含有する試料のタイプが、本発明の意味において好ましい。
【0036】
本明細書で使用される「指穿刺試料(Finger prick sample)」は、指(先端)から採取された1滴からなる血液の試料である。好ましくは、試料は、痛みを伴わずに皮膚を穿刺して新鮮な血流を生み出すことができる小型の指先ランセットデバイスによって採取される。血液の液滴が指に垂れたら、コレクターを液滴に当て、血液をコレクターに吸収させることができる。指穿刺試料の体積は、10~500μL、好ましくは50~300μL、より好ましくは80~150μLの範囲であり得る。あるいは、血液滴はまた、耳たぶのような身体の他の部分から採取されてもよい。指穿刺試料について記載された特徴は、身体の他の領域から採取されたそのような血液滴試料にも同様に当てはまる。
【0037】
種々の実施形態において、本方法は、マイクロ流体インピーダンスサイトメトリーを使用する。そのような実施形態において、ステップ(i)は、マイクロ流体デバイスの形態のインピーダンスサイトメータを提供することをさらに含んでもよい。
【0038】
前記マイクロ流体デバイスは、スパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備える。典型的には、2つの入口のうちの一方は試料入口であり、2つの入口のうちの他方はシース入口である。いくつかの実施形態において、試料入口は、スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、シース流体入口は、スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する。デバイスは3つ以上の入口を備えてもよいが、典型的な設定では、これは必要ではなく、したがって好ましくない。少なくとも2つの出口ポートは、少なくとも3つまたは少なくとも4つの出口ポートであってもよく、2つ、3つ、または4つの出口であってもよい。一実施形態において、デバイスは3つの出口ポートを有する。
【0039】
スパイラル形状フローチャネルは、少なくとも第1の端部および第2の端部を有してもよく、前記フローチャネルは、前記第1の端部またはその近傍に2つの入口ポートを有し、前記第2の端部またはその近傍に少なくとも2つの出口ポートを有し、2つの入口ポートのうちの一方は、スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、他方の入口ポートは、スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する。
図3、
図6および
図10に概略的に示すように、第1の端部はスパイラルの内側端部であってもよく、第2の端部は外側端部であってもよい。
【0040】
マイクロ流体デバイスのこれらの設定において、インピーダンス測定、特にリンパ球の直接インピーダンス定量化に必要とされる共面電極を含むインピーダンス検出器は、出口の少なくとも1つ、典型的にはプロファイリングされる細胞がマイクロ流体デバイスによって選別される出口に位置する。
【0041】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる本発明者らの以前の研究(国際公開第2017/003380A1号)において、特にマイクロ流体デバイスに関する節において、本発明者らは、ディーンフロー分別(DFF)が、血液中に存在する血液成分および/または微粒子(細菌など)を分離するのに適格であることを見出し、異なる細胞および粒子の効率的かつ別個の精製のためにマイクロ流体デバイスのパラメータ設定をどのように適合させる必要があるかを説明した。しかしながら、この以前に報告された方法は、好中球の精製に焦点を当てていた。本方法は、細胞選別および集束のためにDFFを使用して、以下のインピーダンス測定を可能にする。
【0042】
ディーンフロー分画(Dean Flow Fractionation(DFF))と称されるマイクロ流体細胞選別技術は、罹患細胞のサイズに基づく分離として周知である(ホウ(Hou)ら、Sci.Rep.3(2013);ホウ(Hou)ら、Lab Chip、15、2297-2307(2015))。DFFは、高い流速(レイノルズ数、Re約50~100)での支配的な慣性力(FL)に起因してより明確な位置で集束するための、流線にわたる粒子または細胞の側方移動を伴う、慣性微小流体技術に基づく選別方法である。DFFシステムにおいて、スパイラル状マイクロチャネルを通って流れる流体は、半径方向外向きの遠心加速を受けて、チャネルの上半分および下半分で2つの対称な反対方向に回転するディーン渦の形成をもたらす。スパイラルマイクロチャネル内にディーン渦が存在すると、側方のディーン牽引力(FD)が追加され、両方の力(FLおよびFD)が粒子サイズに応じて非線形に変化し、それらの重ね合わせ(FL/FD)がチャネル断面内の平衡位置を決定するため、優れた分離分解能が得られる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「フローチャネル」という用語は、液体のための管状通路を意味する。好ましくは、フローチャネルはスパイラル形状である。スパイラル形状は非対称形状を表すので、内壁および外壁を定義することができる。本明細書で使用される場合、「マイクロ流体デバイス」という表現は、小さい、典型的にはサブミリメートル規模に幾何学的に制約された流体の制御および操作を可能にする物理的要素を意味する。本明細書で使用される「マイクロ流体デバイス」は、典型的には1ミリリットル未満の体積の液体試料を搬送、貯蔵、混合、反応、および/または分析するように設計された1つ以上のマイクロ流体フローチャネルを含むデバイスを指す。マイクロ流体デバイスを作製するために使用され得る材料の代表的な例としては、限定されるものではないが、シリコーンゴム、ガラス、プラスチック、シリコンおよび金属が挙げられ、好ましくは、マイクロ流体デバイスは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から作製される。
【0044】
本明細書で使用される「入口ポート」という用語は、試料およびシース流体と最初に接触するフローチャネルの端部として定義される。反対に、「出口ポート」という用語は、試料の流体材料およびシース流体をマイクロ流体デバイスから、例えば、それが接続されている容器内に放出するフローチャネルの端部を指す。
【0045】
本明細書で使用される「容器に接続される」という用語は、本発明のマイクロ流体デバイス内で回収された流体の第2の貯蔵ユニットへの移送に関する。「容器」は、本発明の意味において、その唯一の機能が回収された流体を貯蔵することであるユニットであり得るが、カラムまたはフィルターユニットなどのさらなる精製、または回収された流体の分析を可能にするデバイスでもあり得る。回収された流体の分析のために使用されるデバイスは、限定されるものではないが、FACSデバイス、質量分析デバイス、顕微鏡、遠心分離機、PCRサーモサイクラー、および機能アッセイを実行するために使用され得るコーティングを含む第2のフローチャネルを含み得る。
【0046】
「シース流体」という用語は、本明細書で使用される場合、水性もしくは非水性流体、および/または追加の材料成分、例えば、可溶性化学成分または少なくとも部分的に不溶性の成分の懸濁液もしくはエマルジョンを含み得る流体を含む、種々の流体を指す。好ましくは、シース液は緩衝液、好ましくは血液細胞と適合性の緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(略してPBS)および他の周知の緩衝液である。本明細書で使用される「緩衝液」という用語は、それらが溶解または分散される環境のpHを制御する任意の化合物または化合物の組合せの水溶液を意味する。pH値に関して、緩衝物質は、緩衝溶液に添加される酸または塩基の効果を減少させる。水溶性緩衝物質の例としては、限定されるものではないが、メグルミン、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、水素リン酸ジナトリウム、水素リン酸ジカリウム、リン酸トリカリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、トロメタミン、酸化マグネシウムまたはこれらの任意の組合せが挙げられる。金属カチオンは、緩衝物質の緩衝特性を変化させることなく、別の適切な金属カチオンで置換され得ることが理解される。低い水溶性を有する緩衝物質もまた、典型的には他のより可溶性の成分と組み合わせて使用され得る。例としては、限定されるものではないが、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酸化マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。緩衝液には、塩、界面活性剤、BSA(ウシ血清アルブミン)などの補助剤を補充することもできる。上記に列挙した緩衝物質の各々について使用され得る濃度は、当該分野で周知である。
【0047】
マイクロ流体デバイスを使用する方法の上記の実施形態において、ステップ(ii)は、典型的には、試料を試料流量で試料入口ポートに導入することと、シース流体をシース流量でシース入口に導入することとを含む。試料およびシース流体の流量は、本方法の細胞選別特性に影響を及ぼすパラメータである。
【0048】
種々の実施形態において、試料対シースの流量比は、1:15以下、好ましくは1:20以下、例えば、1:15~1:100または1:15~1:80または1:15~1:60または1:15~1:50または1:18~1:45または1:20~1:45の範囲、例えば、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40または1:45である。これらの方法において、試料の流速は、10~400μL/分の範囲であり得る。試料対シースの流量比が低い場合、試料流量も低く、この低い比を可能にし、シース流体流量を大幅に増加させなければならない。典型的な試料流量は、約1:15~約1:250の範囲であり得る。したがって、シース流体の流量は、例えば、約200~約5000μL/分の範囲であってもよい。使用される流量は、典型的には、フローチャネルおよびマイクロ流体デバイスの寸法によって制限される。
【0049】
数値に関連して本明細書で使用される「約」は、参照される数値±10%または±5%を指す。
試料は、シリンジまたは他の手段によって、マイクロ流体デバイスのフローチャネルに導入され得る。マイクロ流体デバイスのフローチャネルに試料を導入するための他の手段としては、マイクロディスペンサ、例えば、液滴ディスペンサ(例えば、注入ノズルなど);チャネル内ディスペンサ(例えば、計量ディスペンサ)が挙げられる。マイクロ流体デバイスのフローチャネルに試料を導入するための手段は、ヌグイェン(Nguyen)らおよびリー(Li)らにより、より詳細に考察されている(ヌグイェン(Nguyen)ら、「マイクロ流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(マサチューセッツ州ノーウッド:2006年)、395-417頁;リー(Li)ら、「マイクロチップに基づく分析システム用の注射スキーム(Injection Schemes for Microchip-based Analysis Systems)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、385-403頁)。ヌグイェンらは、マイクロディスペンサを詳細に論じている。リー(Li)らは、マイクロディスペンサを詳細に論じている。
【0050】
試料入口は、段差付きの試料入口であってもよい。本明細書で使用される場合、「段差付きの試料入口」は、試料入口の高さがフローチャネルの高さよりも、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3~10倍、例えば約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、または約9倍低いことを意味する。試料入口は、細胞のより良好な集束を可能にするために、フローチャネルの底部に位置してもよい。種々の実施形態において、前記段差付きの試料入口はまた、その高さがシース流体入口の高さよりも、典型的にはフローチャネルの場合と同じ係数だけ低いことを意味する。種々の実施形態において、シース流体入口およびフローチャネルは、類似または同一の高さを有し、試料入口は、「段差(step)」を提供するために有意に低い。
【0051】
本発明者らは、段差付きの入口の試料が、インピーダンス測定に使用される共面電極の近くで単一細胞集束流を流体力学的に達成するための適切な手段を表すことを見出した。これは、単一細胞インピーダンス測定にいくつかの利点をもたらす:すなわち、1.初期選別段階中の細胞損失を最小限にする、十分に整列した粒子集束流、2.電極への細胞の近接に起因する改善された信号検出感度、および3.チャネルの下半分におけるより閉じ込められた粒子の位置/高さに起因して、インピーダンス信号変動がより小さくなること。
【0052】
種々の実施形態において、試料入口は、15~50μmの高さを有し、および/またはシース流体入口およびフローチャネルは、80~250μmの高さを有する。一例において、試料流体入口の高さは約20μmであり、フローチャネルおよび任意選択でシース流体入口も約110μmの高さを有する。
【0053】
本方法の種々の実施形態において、シース流体入口の開口幅は、200~700μmの範囲内であり、および/または試料入口の開口幅は、50~200μm、好ましくは60~180または70~160μmまたは80~150μmである。いくつかの実施形態において、シース流体入口と試料入口のアスペクト比(高さに対する幅)は、3~10、好ましくは4~8の範囲にある。試料入口および/またはシース(Sheat)流体入口のアスペクト比は、1より大きく、典型的には1.5より大きく、または2より大きいことが一般に好ましい。種々の実施形態において、シース入口対試料入口の面積比は、10~50、好ましくは20~40の範囲内である。
【0054】
本発明の種々の実施形態において、少なくとも2つの出口ポートは、少なくとも3つまたは少なくとも4つの出口ポートである。本明細書で説明されるいくつかの実施形態において、デバイスは、3つの出口ポートを備え、1つは、インピーダンス検出器につながり、他の2つは、廃棄物出口ポートである。種々の実施形態において、インピーダンス測定につながる試料出口ポートは、中間出口ポート(middle outlet port)であり、流動特性は、標的細胞がこの中間出口ポートに選別されるように調節される。
【0055】
種々の実施形態において、スパイラル形状フローチャネルを通して流動する試料のレイノルズ数(Re)は、50~100である。本明細書で使用される場合、「レイノルズ数」という表現は、ρυL/μを意味し、式中、ρは液体の密度を表し、υは液体の速度を表し、Lはフローチャネルの特徴的な長さを表し、μは液体の粘度を表す。
【0056】
スパイラル形状フローチャネルは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むか、またはポリジメチルシロキサンからなってもよい。それは、200~700μm、例えば300~650または400~600μm、好ましくは約500μmの幅を有してもよい。種々の実施形態において、それは、110~130μmの高さを有し、および/または4~20、5~15または7~13cm、好ましくは約10cmの全長を有する。
【0057】
デバイスの種々の実施形態において、少なくとも2つの出口ポートは、2つの出口ポートである。上記で定義された2つの出口ポートデバイスのより好ましい実施形態において、第1の出口ポートはフローチャネルの幅の5~30%、好ましくは20%をカバーし、第2の出口ポートはフローチャネルの幅の70~95%をカバーし、第1の出口ポートは内壁に位置し、第2の出口ポートは外壁に位置する。上記で定義された2つの出口ポートデバイスの種々の実施形態において、スパイラル形状のフローチャネルは、(a)ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むか、またはそれからなり;(b)5~10cm、好ましくは6.5cmの全長を有し;(c)200~400μm、好ましくは300μmの幅を有し;および/または(d)30~90μm、好ましくは60μmの高さを有する。そのような実施形態において、第1の出口ポートの幅は、1~50μmであってもよく、第2の出口ポートの幅は、内壁から外壁まで測定して51~300μmであってもよい。
【0058】
他の実施形態において、スパイラル形状フローチャネルは、(a)ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むか、またはそれからなり、(b)幅が300~600μm、好ましくは500μmであり、(c)高さが100~130μm、好ましくは110μmであり、および/または(d)全長が7~13cm、好ましくは10cmである。そのような実施形態において、デバイスは、3つまたは4つの出口ポート、例えば、3つの出口ポートを有してもよい。種々の実施形態において、スパイラル形状フローチャネルは、出口ポートの分岐において800~1200μmの幅まで徐々に拡大してもよい。3~4個の出口ポートが存在する本発明のさらなる種々の実施形態において、フローチャネルの幅は、3または4で等分されて、本質的に同じ幅を有する3または4個の出口ポートを提供し得る。出口ポートは一般に水平に配置され、スパイラルの中心に対して、1つが内壁の近くにあり、別の1つが外壁の近くにあり、任意のさらなる出口ポートが内壁の出口ポートと外壁の出口ポートとの間に位置する。
【0059】
マイクロ流体デバイスおよびそのフローチャネルの寸法、ならびにマイクロ流体デバイスを構築するための材料およびマイクロ流体デバイスを構築するための方法は、ヌグイェン(Nguyen)ら、タベリング(Tabeling)、アルマニ(Armani)ら、ツァオ(Tsao)ら、カーレン(Carlen)ら、チェン(Cheung)ら、サン(Sun)らおよびワッデル(Waddell)により記載がなされている(ヌグイェン(Nguyen)ら、「マイクロ流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(マサチューセッツ州ノーウッド:2006年)、55-115頁;タベリング(Tabeling)著、「マイクロ流体技術入門(Introduction to Microfluidics)」、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)(英国オックスフォード:2005年)、244-295頁;アルマニ(Armani)ら、「ビニルサインプロッターを用いたPDMSマイクロ流体チャネルの製作(Fabricating PDMS Microfluidic Channels Using a Vinyl Sign Plotter)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、9-15頁;ツァオ(Tsao)ら、「熱可塑性マイクロ流体におけるボンディング技術(Bonding Techniques for Thermoplastic Microfluidics)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、45-63頁;カーレン(Carlen)ら、「シリコンおよびガラス微細加工(Silion and Glass Micromachining)、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、83-114頁;チェン(Cheung)ら、「多成分生体適合性微細構造の製作におけるマイクロ流体技術に基づくリソグラフィー(Microfluidics-based Lithography for Fabrication of Multi-Component Biocompatible Microstructures)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、115-138頁;サン(Sun)ら、「酵素および化学分析のためのラミネートオブジェクト製造(LOM)技術に基づく多チャネルラブオンアチップ(Laminated Object Manufacturing(LOM)Technology-Based Multi-Channel Lab-on-a-Chip for Enzymatic and Chemical Analysis)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、161-172頁;ワッデル(Waddell)著、「レーザー微細加工(Laser Micromachining)」、Lab on a Chip Technology、第1巻:「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、173-184頁)。
【0060】
種々の実施形態において、スパイラル形状フローチャネルは、例えば、出口ポートの分岐部において800~1200μmの幅まで徐々に拡大する。いくつかの実施形態において、拡大された幅は約1000μmである。本明細書で使用される場合、「分岐される(furcated)」という用語は、枝に分割されることを意味する。本明細書で使用される場合、「枝(branch)」という用語は、より大きいまたはより複雑な本体の限られた部分、すなわち、一次フローチャネルから出現するかまたは一次フローチャネルに入力もしくは再入力するより小さいフローチャネルを意味する。本明細書で使用される場合、用語「一次フローチャネル」または「第1のフローチャネル」は、試料の少なくとも大部分がフロースルーするフローチャネルを意味する。
【0061】
4つの出口ポートが使用される本発明の種々の実施形態において、第1の出口ポートは、内壁から外壁に向かって画定されるフローチャネルの幅の、0~100μmをカバーし、第2の出口ポートは、同幅の101~250μmをカバーし、第3の出口ポートは、同幅の251~650μmをカバーし、第4の出口ポートは、同幅の651~1000μmをカバーする。本発明の代替実施形態において、第1の出口ポートはフローチャネルの幅の1~20%をカバーし(cover)、第2の出口ポートはフローチャネルの幅の10~20%をカバーし、第3の出口ポートはフローチャネルの幅の30~50%をカバーし、第4の出口ポートはフローチャネルの幅の25~45%をカバーし、ここで、出口ポート1~4の順序は内壁から外壁に向かって定められる。
【0062】
ステップ(ii)は、マイクロ流体デバイスを採用する実施形態において、細胞選別および集束のために、スパイラル形状フローチャネルを通して前記試料およびシース流体を駆動するステップを含んでもよい。
【0063】
試料は、毛管作用の力によって駆動されてもよい。あるいは、試料は、ポンプによって、電気的な力によって、または試料を駆動するための他の手段によって駆動されてもよい。同じことがシース流体にも当てはまるが、シース流体は、典型的には、毛管作用によって駆動されるのではなく、ポンプなどの能動的手段によって駆動される。適切なポンプとしては、限定されるものではないが、回転(遠心)ポンプ;蠕動ポンプ;および超音波ポンプが挙げられる。電気的な力は、限定されるものではないが、電気流体力学的力;電場駆動力、例えば、電気泳動、電気浸透;および表面張力駆動、例えば、電気湿潤、誘電体表面上の電気湿潤を含む。試料を駆動するための手段は、ヌグイェン(Nguyen)ら、エリクソン(Erickson)ら、グローバー(Grover)ら、ハント(Hunt)らおよびベルサノ・ベゲイ(Bersano-Begey)らにより、より詳細に考察されている(ヌグイェン(Nguyen)ら、「マイクロ流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(マサチューセッツ州ノーウッド:2006年)、255-309頁;エリクソン(Erickson)ら、「マイクロ流体システムにおける動電輸送への導入(Introduction to Electrokinetic Transport in Microfluidic Systems)」、Lab on a Chip Technology、第1巻、「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、231-248頁;グローバー(Grover)ら、「モノリシック膜の弁およびポンプ(Monolithic Membrane Valves and Pumps)」、Lab on a Chip Technology、第1巻、「製作およびマイクロ流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、285-317頁;ハント(Hunt)ら、「誘電体操作のための集積回路/マイクロ流体チップ(Integrated Circuit/Microfluidic Chips for Dielectric Manipulation)」、Lab on a Chip Technology、第2巻:「生体分子の分離および分析(Biomolecular Separation and Analysis)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、187-206頁、ベルサノ・ベゲイ(Bersano-Begey)ら、「ブライユマイクロ流体(Braille microfluidics)」、Lab on a Chip Technology、第2巻:「生体分子の分離および分析(Biomolecular Separation and Analysis)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(英国ノーフォーク:2009年)、269-285頁)。ヌグイェン(Nguyen)らは、マイクロバルブ、マイクロポンプ、マイクロフローセンサ、マイクロフィルタおよびマイクロセパレータを詳細に論じている。ヘロルド(Herold)らにおける章では、バルブ、ポンプ、および分離について詳細に説明している。
【0064】
次いで、ステップ(iii)は、選別され集束されたリンパ球をインピーダンス検出器、すなわちインピーダンス測定に使用される共面電極を備える少なくとも1つの出口内に駆動することによって、ステップ(ii)の選別かつ集束された細胞をインピーダンス検出器へと向かわせて、インピーダンス信号読み出しを決定することによって、細胞、好ましくは活性化リンパ球を定量的にプロファイリングするステップを含む。
【0065】
種々の実施形態において、インピーダンス測定は、細胞サイズを決定するために、0.1~1MHz、好ましくは0.2~0.8または0.2~0.6MHzの範囲の低周波数で実施される。種々の実施形態において、前記測定は、電気的不透明度を決定するために、>1~20MHz、好ましくは1.2~15.0または1.2~12.0MHzの範囲の高周波数でインピーダンス測定をさらに実行することによって補足されてもよい。電気的不透明度は、高周波数(>1~20MHz)におけるインピーダンス信号の大きさの低周波数(0.1~1MHz)におけるインピーダンス信号の大きさに対する比として計算することができる。電気的不透明度(1.72MHz/0.3MHz)は細胞膜の電気的特性を反映し、電気的不透明度(12MHz/0.3MHz)は核の電気的特性を反映する。種々の実施形態において、測定は、2つのより高い周波数範囲で行うことができ、1つは膜特性を決定するため(>1~10MHz、好ましくは1.2~8MHzまたは1.3~5MHzまたは1.3~3MHz)であり、1つは核特性を決定するため(>10~20MHz、好ましくは10.5~15MHzまたは10.5~13MHz)である。したがって、このより高い周波数帯域のうちの第1の周波数帯域は、膜不透明度を決定するために使用されるものとも呼ばれ、第2の周波数帯域は、核不透明度を決定するために使用される。示されたより高い周波数範囲、すなわち>10~20MHzは、細胞内構造の特性を決定するために、例えば食作用を評価するために使用することもできる。また、この高周波数範囲は、好中球をプロファイリングして、NETosisを受けているものを同定することを可能にすることも見出されている。なぜなら、これは核の膨化(nuclear swelling)を伴うからである。種々の実施形態において、上記の低周波数範囲での測定は、膜特性または核特性の決定を可能にするために2つのより高い周波数範囲のいずれか1つと組み合わせることができ、あるいは両方を決定するために両方のより高い周波数範囲と組み合わせることができる。したがって、種々の実施形態において、インピーダンス測定は、0.1~1MHz、好ましくは0.2~0.6MHzの周波数で、任意選択で、>1~10MHz、好ましくは1.3~5MHzの周波数、および/または>10~20MHz、好ましくは10.5~13MHzの周波数で行われる。
【0066】
ステップ(iii)の後、細胞は廃棄され得るか、またはそれぞれの出口ポートに連結された容器に収集され得る。これは、選別された細胞のさらなる使用および/または分析を可能にする。
【0067】
本発明の方法は、ステップ(ii)および(iii)におけるインピーダンスプロファイリングの前に、磁気活性化細胞選別(MACS)を行うステップをさらに含んでもよい。これは例えば、試料を望ましくない細胞に結合する磁気ビーズとともにインキュベートし、望ましくない細胞が結合した磁気ビーズを磁場によって結合していない細胞から分離することによって、達成され得る。そのような望ましくない細胞には、特に本方法がリンパ球プロファイリングのためのものである場合、単球などの骨髄球が含まれ得る。そのような細胞選別を可能にするために、磁気ビーズは、典型的には、特定のタイプの細胞によってのみ結合される化合物またはリガンドでコーティングされる。当該化合物は、種々の実施形態において、抗体または抗体様分子であってもよい。
【0068】
本発明の種々の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つの型の血液細胞がマーカー分子で標識される標識ステップを含まない。本明細書中で使用される場合、用語「標識(labeling)」は、本発明において使用される細胞、タンパク質および/またはペプチドへの1つ以上の検出可能なマーカー(または「標識」)の付着または組み込みを示す。本明細書で互換的に使用される「マーカー分子」または「検出可能なマーカー」という用語は、化学的、物理的または酵素的反応において検出可能な化合物またはシグナルを直接的または間接的に生成する、1つまたは複数の適切な化学物質または酵素を含む任意の化合物を指す。本明細書中で使用される場合、この用語は、標識自体(すなわち、タンパク質および/またはペプチドに結合した化合物または部分)ならびに標識試薬(すなわち、ペプチドまたはタンパク質と結合する前の化合物または部分)の両方を含むと理解されるべきである。本発明において使用される標識は、共有結合または非共有結合を介してタンパク質および/またはペプチドのアミノ酸残基に結合され得る。典型的には、結合は共有結合である。標識は、とりわけ、同位体標識、等圧標識、酵素標識、着色標識、蛍光標識、発色標識、発光標識、放射性標識、ハプテン、ビオチン、金属錯体、金属、および金コロイドから選択することができ、等張標識(isotonic label)および等圧標識が特に好ましい。全てのこれらのタイプの標識は、当該技術分野で十分に確立されている。
【0069】
本発明はまた、本明細書に開示されるマイクロ流体デバイスを包含する。一実施形態において、本発明はまた、インピーダンスサイトメトリーを使用する定量的無標識細胞プロファイリングのためのバイオセンサであって、前記バイオセンサは:
(i)スパイラルの中心に対して内壁および外壁を有し、2つの入口および少なくとも2つの出口を有するスパイラル形状フローチャネルを備えるマイクロ流体デバイスであって、2つの入口のうちの一方は試料入口であり、スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、2つの入口のうちの他方はシース入口であり、スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する、マイクロ流体デバイスと;
(ii)細胞の直接インピーダンス定量化のための共面電極であって、前記マイクロ流体デバイスの前記出口のうちの少なくとも1つと一体化されている共面電極と;
を備える。
【0070】
「バイオセンサ」という用語は、この文脈で使用される場合、本明細書に記載され、以下にも定義されるマイクロ流体デバイスに関し、選別された細胞のインピーダンス測定を実行するための手段を備える。
【0071】
本方法の文脈で、また寸法および部品を含むマイクロ流体デバイスおよびインピーダンス検出器に関して上述したすべての実施形態は、本発明のバイオセンサにも同様に適用可能である。したがって、種々の実施形態において、バイオセンサは、試料入口の高さがシース流体入口およびフローチャネルの高さよりも、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3~10倍低いという点で段差付き試料入口である試料入口を備え、試料入口は、任意選択でフローチャネルの底部に位置する。
【0072】
バイオセンサの種々の実施形態において、試料入口は、15~50μmの高さを有し、そしてシース流体入口およびフローチャネルは、80~250μmの高さを有する。シース流体入口の開口幅は、200~700μmの範囲内であってもよく、および/または試料入口の開口幅は、50~200μmであってもよく、好ましくは両方の寸法範囲が満たされる。シース流体入口と試料入口のアスペクト比(高さに対する幅)は、好ましくは3~10、より好ましくは4~8の範囲にある。種々の実施形態において、シース入口対試料入口の面積比は、10~50、好ましくは20~40の範囲内である。種々の実施形態において、スパイラル形状のフローチャネルは、4~20、5~15または7~13cm、好ましくは約10cmの全長を有する。
【0073】
このようなバイオセンサ/マイクロ流体デバイスは、好ましくは、試料がデバイスの試料入口に導入される前に、それぞれの他の細胞集団が除去されるセットアップにおいて、好中球およびリンパ球の両方の選別およびプロファイリングのために使用され得る。
【0074】
さらに別の態様は、本発明のバイオセンサを含む統合型インピーダンスサイトメータであり、さらに、(1)マイクロチップ、(2)インピーダンス分析器、ならびに(3)灌流制御を可能にするために試料およびシース流体入口に接続された流体ポンプのうちの1つ以上、好ましくは全てを含み、マイクロチップはインピーダンス分析器および流体ポンプと接続され、インピーダンス分析器はインピーダンス測定を可能にするために共面電極に接続されている。統合型インピーダンスサイトメータは、サイトメータを操作するためのソフトウェアをさらに含んでもよい。
【0075】
単一チップ上での連続的な無標識の細胞分離およびインピーダンスプロファイリングを特徴とする統合型プラットフォームの実現は、免疫学研究、癌診断、ならびにポイントオブケアおよび免疫健常プロファイリングを含む広範囲の臨床適用を伴う大きな商業的関心の対象である。この技術は、ヒトによる取り扱いが最小限で、単一ステップかつ無標識の細胞分離およびインピーダンス分析を提供する。マルチパラメータ研究のために、開発されたプラットフォームを他の細胞ベースのプラットフォームと統合することも可能である。この統合型プラットフォームの全ての特徴を用いて、それは、免疫学研究およびポイントオブケア検査市場のための製品に開発され得る。
【0076】
本発明の方法に関連して上記に開示された全ての実施形態は、本発明のバイオセンサおよびインピーダンスサイトメータに同様に適用され、逆もまた同様である。
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。しかしながら、本発明は、例示された実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0077】
材料および方法
デバイス設計、製作および動作
デバイスの概略図を
図1Aに示す。簡単に述べると、それは3つのステージ、すなわち(1)スパイラル細胞選別器、(2)慣性細胞集束器、および(3)共面電極を使用するインピーダンス検出器からなる。これは、白血球(約8~10μm)研究のための以前の統合型プラットフォームに基づいており、インピーダンスサイトメータの詳細は以前の文献(ペチャクプ(Petchakup)ら(2019)、前掲;ペチャクプ(Petchakup)ら(2018)、前掲)に記載されている。
【0078】
インピーダンスの検出感度および一貫性をさらに改善するために、本発明者らは、シース流体を使用して試料流をチャネルの下半分に流体力学的に閉じ込めるために、段差付き試料入口を追加した(
図1B)。スパイラルマイクロチャネル内の慣性結合ディーンフロー移動の影響下で、より大きな細胞(流体力学的直径(D
h)に対する粒径(A
p)>0.07)は、好中球選別およびインピーダンス検出のために(電極表面により近い)チャネル底部付近で平衡化する(
図1B)。
【0079】
デバイスにおける段差付き試料入口を実現するために、SU-8マスター作製のための二層フォトリソグラフィを使用し、第1の層(高さ約20μm)が試料入口および検出領域(幅30μm)を画定し、第2の層を第1の層の上に位置合わせしてデバイスの残りの部分(高さ約110μm)を画定した。シース入口(開口幅500μm)と段差付き高さ試料入口(開口幅100μm)との面積比は、約27.5であった。統合型プラットフォームに関して、最適流量試料およびシース流量は、それぞれ80μL/分および1680μL/分(1:21)であった。ポリジメチルシロキサン(PDMS)をSU-8マスター上にキャストしてマイクロ流体デバイスを作製し、マイクロ流体デバイスは、パターン化された共面金電極(幅20μm、ギャップ20μmおよび厚さ200nm)を有するガラス上に接合される。
【0080】
任意の実験の前に、デバイスをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Lonza)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA、Biowest)で少なくとも1時間コーティングして、デバイスへの非特異的接着を防止した。試料およびシース(いずれもPBS中0.1%BSA中)をデバイスにロードし、シリンジポンプ(PHD ULTRA(商標)、Harvard Apparatus)によって灌流した。
【0081】
電気的測定および高速イメージングの前に、試料およびシースを1分間灌流して、フローが安定状態に達するようにした。実験中、プラットフォームを倒立顕微鏡(Nikon Eclipse Ti)上に取り付けた。PhantomV9.1(AMETEK)を用いて高速画像を撮影した。
【0082】
測定セットアップおよびデータ提示
3つの電極による差動測定(Differential measurement)を、単一細胞インピーダンスプロファイリングのために使用した。中央の電極を使用して、ロックイン増幅器(HF2LI、Zurich instrument)によって3つの異なる周波数(0.3MHz、1.72MHzおよび12MHz)で1Vの励起信号を印加した。側部電極からの電流応答は、10kV/Aのトランスインピーダンス利得を有するトランスインピーダンス増幅器(DHPCA-100、FEMTO(登録商標))によって電圧に変換され、ロックイン増幅器にフィードバックされ、印加された周波数における大きさおよび位相が230kサンプル/sのサンプリングレートで抽出された。時系列インピーダンス応答を3分間記録し、処理して、単一粒子事象に対応する振幅ピークを抽出した。参照ビーズ(10μmビーズ)をスパイクすることによって、細胞の電気的サイズ(electrical size)を、以前の文献(キャセリ(Caselli)ら、前掲)に示されるように決定することができ(|ZLF|α電気的サイズ3)、データ較正を実施して、電気的サイズおよび正規化不透明度(参照ビーズの不透明度によって正規化された粒子不透明度、ペチャクプ(Petchakup)ら(2019)、前掲)を計算した。最後に、電気的サイズ(μm)対正規化不透明度の2D散乱プロットをプロットして、細胞集団のインピーダンスプロファイルを示した。データ処理は、MATLAB(登録商標)(MathWorks)で書かれたカスタムメイドのプログラムを用いて行った。
【0083】
試料調製
健康なドナーの血液試料を、インフォームドコンセント後、実験のために、静脈穿刺によってクエン酸ナトリウムバキュテナー(登録商標)(BD)に収集した。初代好中球を単離するために、全血試料をPolymorphPrep(商標)上に1:1の比で重層した。製造業者のプロトコールに従って密度遠心分離した後、好中球を収集し、0.5×PBSで洗浄した。その後、さらにRBCを除去するためにRBC溶解を行った。RBC溶解緩衝液(eBioscience)を好中球ペレット(1mL)に3分間添加し、PBS中0.5%BSAでクエンチした。好中球を洗浄し、PBS中の0.1%BSAに再懸濁した。
【0084】
末梢血単核細胞(PBMC)を抽出するために、全血を、製造業者のプロトコールに従ってFicoll-Paque(商標)Plus(GE Healthcare)密度遠心分離に供した。精製リンパ球を必要とする実験のために、ヒトCD4 T細胞ネガティブ分離キット(STEMCELL)を使用して、培養の前または後に他の残留する免疫細胞集団を除去した。
【0085】
異なる実験およびデバイスにわたる比較のために、10μmポリスチレンビーズ(Polysciences)を試料(104~105ビーズ/mL)にスパイクして、それらが一貫した誘電特性を有するので、参照として使用した。
【0086】
CD3/CD28 Dynabeads(登録商標)を用いたリンパ球活性化
Dynabeads(登録商標)Human T-Activator CD3/CD28(Thermofisher)をリンパ球活性化に使用した。簡潔に述べると、リンパ球を、30U/mLのrIL-2と共に1:1の細胞対ビーズ比で抗CD3/CD28ビーズを有するウェルプレート上で培養し、加湿CO2インキュベーター中、37℃で維持した。24時間後、細胞を収集し、磁石を使用して活性化因子を除去した。その後、細胞を所望の濃度でPBS中の0.1%BSAに再懸濁した。未処理の対照試料については、リンパ球を活性化剤およびrIL-2なしで培養した。
【0087】
PHAおよびPPD刺激
単離されたPBMCをまず24ウェルプレート上に2×106細胞/mlの濃度で播種し、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S、Life Technologies)を補充したRPMI1640培地(Hyclone)中、37℃で24時間インキュベートした。活性化実験のために、PHA(最終濃度2.5μg/ml、Sigma)またはPPD(最終濃度10μg/ml、Statens Serum Institute、デンマーク)を培地に添加してリンパ球を活性化した。所望の時点の後、細胞を回収し、推奨されるMACs緩衝液に再懸濁した。CD4リンパ球MACsネガティブ分離を使用して、他の免疫細胞集団を除去した。その後、インピーダンス測定のために、細胞を約5~50×104細胞/mLの濃度でPBS中の0.1%BSA中に再懸濁した。
【0088】
好中球活性化
好中球の生物物理学的特性に対する異なるpHの効果を研究するために、異なるpHを有するRPMIに再懸濁した好中球を、4℃で2時間インキュベートした。細菌研究のために、好中球を、オービタルシェーカー内で24時間、ペニシリン-ストレプトマイシン(PS)を含まないRPMI中で異なる細菌濃度でインキュベートした。
【0089】
フローサイトメトリー分析
リンパ球活性化状態を評価するために、異なる細胞画分を、氷上で15分間、CD3-BUV737、CD4-BV650(BD Biosciences,USA)、CD137-PE、およびCD69-FITC(Thermofisher,USA)抗体で染色した。細胞を1回洗浄して未結合の抗体を除去し、次いでBD LSR Fortessa(商標)X-20フローサイトメータ(BD Biosciences)で分析した。細胞選別は、BD FACSFusionセルソーター(BD Biosciences)で行った。FlowJo(商標)(BD Biosciences)を使用して、フローサイトメトリーデータを分析および定量化した。
【0090】
統計解析
全ての統計分析は、GraphPad Prism(商標)V8.0(GraphPadソフトウェア)を用いて行った。
【0091】
研究承認
募集中に全ての対象について書面によるインフォームドコンセントを得た。全てのプロトコールは、Human Biomedical Research Act(シンガポール保健省)に従って、ナンヤン工科大学(Nanyang Technical University)(IRB-2014-04/27およびIRB-2018-10-015-02)、タントックセン病院(Tan Tock Seng Hospital)(2014/00416)の施設内倫理委員会によって承認された。実験のために、健康なドナーの4mLクエン酸ナトリウムまたはリチウムヘパリンチューブ(BD Vacutainer(登録商標))へ静脈穿刺からの血液試料を採取した。
【0092】
インピーダンスモデリング
インピーダンスシグナルにおける膜伝導率の効果を理解するために、マクスウェルの混合理論(MMT)(サン(Sun)ら、IET Nanobiotechnology,2007,1,69-79;非特許文献5(サンおよびモルガン(Sun&Morgan),Microfluidics and Nanofluidics,2010,8,423-443))に基づく二重シェルモデルを使用して、異なる膜伝導率を有する単一細胞をモデル化した。このモデルでは、球状細胞は、励起電極と感知電極との間のチャネル中心に懸架される。混合物のインピーダンスは以下の式で与えられる。
【0093】
【0094】
式中:
【0095】
【0096】
は、誘電率(ε)および導電率(σ)が与えられた場合の複素誘電率(complex permittivity)を表し、j2=-1、ωは角周波数であり、φは、検出チャネル内の細胞の体積と培地の体積との比である体積分率である。下付き文字「mix」は混合物を表す。lはチャネルの幅である。Gは不均一なフリンジ電界1を説明するためのセル定数である。混合物の複素誘電率の計算は、以下の式に基づいている:
【0097】
【0098】
ここで、φは体積分率であり、検出チャネル内の培地の体積に対する細胞の体積の比である。下付き文字「mix」、「cell」および「med」は、それぞれ混合物、細胞および培地を示す。細胞構造を説明するために、細胞の複素誘電率は、以下のように、内部成分(膜、細胞質含有物および核)の関数として計算することができる:
【0099】
【0100】
式中:
【0101】
【0102】
は、2つの隣接する成分(例えば、膜および細胞質)の有効複素誘電率であり、θは外側成分の体積に対する内側成分の体積の比である体積分率である。下付き文字「in」および「out」は、それぞれ内側成分および外側成分を表す。このモデルにおいて、本発明者らは、まず、核エンベロープおよび核細胞質の複素誘電率を使用して核の有効複素誘電率を計算し、続いて、細胞質および核の複素誘電率を使用して細胞質含有物の有効複素誘電率を計算する。最後に、細胞の複素誘電率は、細胞質含有物および膜の複素誘電率を使用して計算することができる。
【0103】
マイクロ流体デバイス設計では、差動測定のための3電極設計を用いて、コモンモードノイズ(common-mode noise)および信号ドリフトを最小限に抑えた。差動電流応答
【0104】
【0105】
は、細胞が第1および第2の電極
【0106】
【0107】
との間にあるときの電流読み出しをシミュレートするように計算され、そして、第2および第3電極
【0108】
【0109】
との間には媒体(medium)のみが存在する。
電気的不透明度は、低周波数(0.3MHz)に対する高周波数での電流応答の比として定義される。
【0110】
【0111】
計算流体力学
計算流体力学シミュレーションは、Ansys FLUENT(登録商標)(Ansys、米国ペンシルベニア州キャノンズバーグ(Canosburg))を使用して行った。入口分岐部から半ループ後にチャネル長が切り取られた部分スパイラルチャネルをシミュレートした。水力直径(180.32μm)の76倍と同等のチャネル長を有する切り取られた領域後の下流流は、入口分岐部における流線(streamline)プロファイルに対して無視できる影響を有すると仮定する。圧力ベースのソルバーを使用して、PBSのシース液を模倣するための媒体として水を使用して定常状態層流をシミュレートした。境界条件は、チャネル壁でのスリップなし状態、両方の入口での速度入口、および出口での0ゲージ圧出口を有する静止壁に設定した。高さ方向に沿って3.5μm、幅方向に沿って8.5μmおよび長さ方向に沿って310μmの要素寸法を有する完全な六面体メッシュを、ICEM(Ansys.、米国ペンシルベニア州キャノンズバーグ(Canosburg))を使用して生成した。格子細分化(Mesh refinement)は、メッシュ全体を1.5倍に細分化して行い、その結果、ノードの数は、152680ノードから432832ノードに増加した。スパイラルチャネルの異なる断面領域におけるチャネル高さに沿った速度プロファイルを、元のメッシュと細分化したメッシュとの間で比較した。メッシュ間のピーク速度の差は8%未満に制御され、152680個のノードを有するメッシュのシミュレーション結果を、本研究における分析のために選択した。流線は、離散相モデル(DPM)を使用して試料入口で開始され、粒子と連続相との間の相互作用は、流体流線の動態を模倣するために無効にした。流線の座標は後にエクスポートし、MATLAB(登録商標)(Mathworks,USA)で処理した。
【0112】
結果および考察
実施例1:段差付き入口の特徴
最適な試料ピンチ効果(pinching effects)を決定するために、まず、計算流体力学(CFD)シミュレーションを使用して、様々な試料対シース流量比を特徴付けた(
図2および
図3)。流速比1:10(160μL/分:1600μL/分)では、細胞/粒子流を示す試料流線(黒色)は、チャネルの上半分および下半分の両方に等しく広がっている。流量比が増加すると(1:21)、粒子流線は、チャネルの下半分に流体力学的に閉じ込められた。10μmビーズ(好中球と同様のサイズ)のインピーダンス特徴付けに基づくシミュレーション結果をさらに検証した(
図3)。1:10および1:14の流量比では、粒子(最初は閉じ込められていない)がスパイラルチャネル内の2つの異なる平衡位置(チャネルの上半分および下半分)に慣性的に集束されたので、インピーダンスプロファイル内に2つの別個のクラスタが観察された。これに対して、より高い流量比条件(1:21および1:43)では、単一のクラスタが存在し、これは、チャネルの下半分で粒子集束が成功したことを示した。これらの結果は、粒子もまた電極の近くに整列したままであったことから、インピーダンス検出を向上させるためには、単一ストリーム粒子集束が極めて重要であることを浮き彫りにした。これらの結果に基づいて、1:21(80μL/分:1680μL/分)の流量比を引き続く実験で使用した。
【0113】
段差付き試料入口設計は、二重層フォトリソグラフィへの製作プロセスを簡略化するために、高さ20μm(検出チャネルと同じ)である。さらなるCFDシミュレーションを実行して、段差付き試料入口パラメータ(幅および高さ)が3D集束にどのように影響するかを理解した(
図4~
図6)。
【0114】
段差付き入口高さを20から60μmに変化させることによって(
図4)、20μmおよび40μmの高さの両方は、1:21の流量比で試料流線をチャネルの下半分に閉じ込めること(>90%)に匹敵した。より低い段差付き入口高さ(<20μm)は、細胞処理に適しておらず、目詰まりしやすいので、本研究に含めなかった。開口幅に関して、小さい開口幅(50μm)は、高速流の形成(
図5)および試料流体とシース流体との極端な混合をもたらした。これは、より大きい開口幅(>100μm)と比較して、より分散された試料流線(1:21について約50%)をもたらした。
【0115】
実施例2:好中球活性化プロファイリングのための統合型細胞選別およびインピーダンスサイトメトリー
3つの周波数測定スキーム(0.3MHz、1.72MHzおよび12MHz、各周波数について1V)を使用して、各細胞の3つの電気的特性を捕捉した:1)細胞のサイズを示す0.3MHzでのインピーダンス信号の大きさ。2)細胞膜キャパシタンスを反映する0.3MHzでのインピーダンス信号の大きさに対する1.72MHzでのインピーダンス信号の大きさの比として定義される膜不透明度、および3)核特性を反映する0.3MHzでのインピーダンス信号の大きさに対する12MHzでのインピーダンス信号の大きさの比として定義される核不透明度。不透明度スペクトルに対する様々な核パラメータ(核膜、核サイズ)の影響を研究するために、数値インピーダンスシミュレーションを行った(
図8)。不透明度(Opacity)は、異なる周波数におけるインピーダンス応答と0.3MHzにおけるインピーダンス応答との間の比として定義される。アポトーシスまたは壊死などの特定の生物学的事象は、核膜の分解をもたらし得るので(リンデンボーム(Lindenboim)ら、2020年、6巻、29頁;クウォン(Kwon)ら、Scientific Reports、2015年、5巻、15623頁)、核エンベロープの様々な伝導率の影響を調べ、伝導率が増加するにつれて不透明度が増加することを観察した(8)。NETosisを受けている好中球については、それらは、核膨化などの特徴的な核変化を示す(リ(Li)ら、EMBO reports,2020,21,e48779)。電気的測定が核サイズに関連する変化を捕捉することができるかどうかを理解するために、核サイズを変更して、核サイズが増加するにつれて不透明度が減少することを明らかにした(8)。これらのシミュレーションに基づいて、核の電気的特性の変化を表すために、12MHzでのインピーダンス測定を行った。粒子分布を説明するために、密度散乱プロットを用いて細胞集団の電気的パラメータを表した。臨床試験のための概念実証として(
図9)、このプラットフォームをさまざまな好中球の表現型(1.対照、2.死滅(75℃で培養)、3.PMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート)によるNETosis、4.高pH培地(pH9)での自発的NETosis)の特性評価に利用した。死滅好中球と対照好中球との間の比較(
図10)は、死滅細胞が、おそらく細胞死の特徴である損なわれた/漏出性の膜から生じる高い膜伝導率(
図7)に起因して、小さい電気的サイズおよび高い膜不透明度を示すことを明らかにしている。
【0116】
次に、プラットフォームを利用して、新たに発見された好中球機能であるNETosisを受けている好中球を研究し、ここで、好中球は、感染を解決するために抗菌物質と共にそれらの核を放出する。PMAを2時間処理することによって、NETosisを受けている好中球は、電気的サイズが大きくなり、膜不透明度(細胞膜面積の増加による)および核不透明度(核形態の変化(イップ(Yipp)およびクベシュ(Kubes)、Blood、122、2784-2794,doi:10.1182/blood-2013-04-457671(2013))が低下した。PMAは強力なNETosis誘導物質であるため(タッシー(Tatsiy)およびマクドナルド(McDonald)、Frontiers in Immunology、9、doi:10.3389/fimmu.2018.02036(2018))、本発明者らは次に、本発明者らの統合型プラットフォームを使用して、pH変化によって誘導されるNETosisの存在を検出することができるかどうかを決定した。本発明者らは、好中球を高アルカリ溶液(pH9)中に懸濁して、自発的なNETosisを促進した(カーン(Khan)ら、Frontiers in Medicine、5、doi:10.3389/fmed.2018.00019(2018))。
【0117】
その結果、pH9の試料の電気特性の変化は、PMA刺激よりも小さく、細胞サイズが大きく、膜の不透明度がわずかに低い(約0.8)テール領域の存在が明らかであった。興味深いことに、核不透明度に関して、対照試料に近いインピーダンス特性を示した主な集団および(PMA処置と同様の)自発的なNETosisの存在を示す長いテール領域(0.4~0.7の範囲)が観察された。次に、
図11に示されるような健常な集団およびNETosis集団の定量化が行われ、核不透明度(nucleus opacity)が、膜不透明度(membrane opacity)と比較して、NETosis集団のより良好な分離を提供することが見出された。
【0118】
最後に、細菌感染に応答した好中球の電気的シグネチャを調べた。RPMI中の単離された好中球を、異なる濃度(10×、10
3×および10
6×希釈)の大腸菌(EC)と共に37℃で24時間培養した。
図12は、低EC濃度(EC-1M×)が、増加した細胞サイズ、減少した膜不透明度および核不透明度において明らかなように、インピーダンスプロファイルの観察可能な変化を誘導したことを示す。より高いEC濃度において、膜不透明度プロファイルは、2つの別個の集団;1)高い不透明度(約0.9~1)を有する死細胞集団、および2)高密度活性化好中球集団(0.75~0.85の範囲の膜不透明度)を明らかにした。核不透明度に関して、インピーダンスプロファイルは、PMA処置において観察されるものと同様のより低い不透明度(約0.4)を有する主たる高密度集団を示す。NETosis研究とは異なり、好中球は細菌を根絶するための異なる応答(食作用、脱顆粒またはNETosis)を示すことができるので、好中球インピーダンス表現型を生物学的機能に関連付けることは依然として不明である。全体として、これらの結果は、様々な好中球応答(生死、NETosisおよび細菌応答)を研究するための多周波インピーダンスサイトメトリー、特に高周波インピーダンスシグネチャの使用を実証している。これら全ての能力により、本明細書に記載されるプラットフォームは、癌、尿路感染症(UTI)ならびに敗血症などの様々な疾患における好中球応答に基づく臨床診断のために容易に変換され得ることが想定される。
【0119】
実施例3:リンパ球活性化プロファイリングのための統合型細胞選別およびインピーダンスサイトメトリー
細胞は、交流(AC)でエネルギー印加された共面電極を横切って流れるとき、電界を破壊し、電気インピーダンスの変化をもたらす。低周波(0.1~1MHz)でのインピーダンス測定は、粒子(ビーズ/細胞)を通る最小の電場浸透に起因して粒子サイズに相関するが、高周波領域(1~10MHz)でのインピーダンス測定は、膜分極の効果に起因して膜特性を反映する(サンおよびモルガン(Sun&Morgan)、前掲;ホンラド(Honrado)ら、前掲)。本願明細書において、二重周波数測定スキーム(0.3MHzおよび1.72MHz)を用いて、各細胞の2つの電気的特性を捕捉した:1.細胞膜キャパシタンスを反映する0.3MHzでのインピーダンス信号の大きさに対する1.72MHzでのインピーダンス信号の大きさの比として定義される不透明度、および2.細胞サイズを示す0.3MHzにおけるインピーダンス信号の大きさ。高導電性媒体(PBS中0.1%BSA、約1.6S/m)(ホンラド(Honrado)ら、前掲)中での電気化学反応による損傷を防ぐために、各周波数の励起電圧を1Vに設定した。粒子分布を説明するために、密度散乱プロットを用いて細胞集団の両方の電気的パラメータを表す。
【0120】
異なる精製リンパ球集団の第1のインピーダンスプロファイリングを行った;1.健常リンパ球(対照)、2.死滅リンパ球(10%ジメチルスルホキシド(死滅)、24時間)、および3.活性化リンパ球(抗CD3/CD28Dynabeads(登録商標)(活性化)、24時間)。死滅リンパ球の不透明度は、おそらくリンパ球アポトーシスに起因して(デアブレウコスタ(de AbreuCosta)ら、Molecules、2017、22、1789)健常なリンパ球よりも高く、これは膜統合性の喪失(チャン(Zhang)ら、Cell Res、2018、28,9-21)および膜コンダクタンスの増加(ワン(Wang)ら、Biochimica et biophysica acta、2002、1564、412-420)をもたらした。これらの観察は、二重シェルインピーダンスモデルを使用して確認され、シミュレーション結果は、膜コンダクタンスの増加が、低周波(|Z
LF|)におけるインピーダンス信号を低下させ、不透明度(|Z
HF|/|Z
LF|)を高めることを示した(
図7)。活性化リンパ球については、リンパ球が活性化を受けるにつれて増加した膜表面積に起因し得る、より低い不透明度を伴う細胞サイズの増加が観察された(ファン(Huang)ら、Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes、1999、1417、51-62;テーグ(Teague)ら、Cytometry、1993、14、772-782)。これらのインピーダンス測定はまた、活性化リンパ球について細胞サイズの有意な増加を示した光学画像と一致した。
【0121】
次に、定量的リンパ球活性化プロファイリングのための統合型慣性インピーダンスサイトメトリーの使用を検討した(
図13)。簡単に述べると、前記プラットフォームは3つのステージ、すなわち(1)スパイラル細胞選別器、(2)慣性細胞集束器、および(3)共面電極を使用するインピーダンス検出器からなる。プラットフォームは以前に好中球(約8~10μm)研究に適用されたので(ペチャクプ(Petchakup)ら(2019)、前掲)、デバイスは活性化リンパ球(>8μm)を濃縮し、電気的に特徴付けることができると仮定した。インピーダンス検出感度および一貫性をさらに改善するために、段差付き試料入口を追加して、シース流体を使用して試料流をチャネルの下半分に流体力学的に閉じ込めた。スパイラルマイクロチャネル内の慣性結合ディーンフロー移動の影響下で、より大きな細胞(流体力学的直径(D
h)に対する粒径(A
p)>0.07)は、活性化されたリンパ球選別およびインピーダンス検出のために(電極表面により近い)チャネル底部付近で平衡化する。最適な試料ピンチ効果を決定するために、まず、計算流体力学(CFD)シミュレーションを使用して、様々な試料対シース流量比を特徴付けた(
図2)。1:10の流速比(160μL/分:1600μL/分)では、細胞/粒子流を示す試料流線(黒色)は、チャネルの上半分および下半分の両方に等しく広がる。流量比が増加すると(1:21)、粒子流線は、チャネルの下半分に流体力学的に閉じ込められた。10μmビーズ(活性化リンパ球と同様のサイズ)のインピーダンス特徴付けに基づくシミュレーション結果をさらに検証した(
図3)。1:10および1:14の流量比では、粒子(最初は閉じ込められていない)がスパイラルチャネル内の2つの異なる平衡位置(チャネルの上半分および下半分)に慣性的に集束されたので、インピーダンスプロファイル内に2つの別個のクラスタが観察された(ホウ(Hou)ら、Scientific Reports、2016、6、29410)。これに対し、より高い流量比条件(1:21および1:43)では、単一のクラスタが存在しており、これは、チャネルの下半分で粒子集束が成功したことを示す。これらの結果は、粒子もまた電極の近くに整列したままであったことから、インピーダンス検出を向上させるためには、単一ストリーム粒子集束が極めて重要であることを浮き彫りにした。これらの結果に基づいて、1:21(80μL/分:1680μL/分)の流量比を引き続く実験で使用した。
【0122】
デバイスパフォーマンスに関して、プラットフォームは、約1×103粒子/秒のインピーダンス測定スループットを達成することができる(ペチャクプ(Petchakup)ら(2019)、前掲)。このプラットフォームにおいて利用される受動的慣性ベースの集束はまた、高流動条件(レイノルズ数、Re>50)において確立され、これは、高粒子濃度(最大10×106粒子/mL)の処理を可能にする。まとめると、このチップは、無標識で迅速な免疫細胞プロファイリングのための複雑な生物学的試料(例えば血液)の処理を容易にする。
【0123】
実施例4:統合型プラットフォームを用いた活性化Tリンパ球の定量的プロファイリング
次に、統合型慣性インピーダンスサイトメトリープラットフォームを、異なるTリンパ球(CD4+)表現型(対照、死滅および活性化)の電気的プロファイリングに適用した。スパイラルチャネル設計(約110μmの高さ)に基づいて、活性化リンパ球(>8μm、A
p/D
h>0.07)のみが、支配的な慣性力を経験し、内壁付近で平衡化する。次いで、これらの細胞は、中間出口に選別され、インピーダンス検出器に向かって送られる。より小さい活性化されていないリンパ球は、内壁領域からさらに離れて位置し、スパイラル選別器中の廃棄物として底部出口に除去される。
図14Aは、対照および活性化リンパ球および死滅リンパ球集団に対するスパイラル細胞選別器および前インピーダンス検出器の三分岐点に焦点を合わせた細胞の重ねられたタイムラプス画像(stacked time-lapse images)を示す。予想通り、対照リンパ球および死滅リンパ球の両方についてインピーダンス検出器に選別された細胞はほとんどなかった。対照的に、より大きな活性化リンパ球は、それらが内壁に近づくにつれて流動位置の明確なシフトを示し、これは、インピーダンスサイトメータによって選別および検出される細胞の有意な増加をもたらした。これは、健常対照と比較して、より高いインピーダンスシグナル読み出し(より高い活性化細胞カウント数、約15倍高い)と解釈される(
図14B)。
【0124】
さらに、活性化CD4Tリンパ球試料(抗CD3/CD28ビーズによる)を使用して、選別前(試料入口)、選別された細胞(インピーダンス検出器の出口から)、および廃棄細胞(スパイラル選別器の廃棄出口から)を含む様々な細胞画分に対するフローサイトメトリー分析を行った。サイズに基づく選別原理に起因して、前方側方散乱(FSC)の増加が、選別された画分中の細胞について観察され、これにより、インピーダンスによって検出されるより大きな細胞の存在が確認された(
図15)。選別感度およびインピーダンス検出限界を決定するために、様々なレベル(0.3%~74.6%)のスパイクされた活性化(CD137+)リンパ球を有する試料(10
5細胞/mLの濃度)を処理した(
図16)。多数の活性化リンパ球(>5%)を含有する試料については、約60~75%のCD137+発現細胞が、選別された画分において一貫して収集された(
図17)。低いリンパ球活性化(5%未満)を有する試料については、平均選別後濃縮は約30%(約11.7倍)であり、これはランダムノイズ事象に起因し得る。較正曲線はまた、278.8インピーダンスカウント/mLの感度および1.7×10
3細胞/mLの検出限界(3つの異なる実験から外挿された0%活性化細胞における検出数の3標準偏差)で、インピーダンスカウントと試料中の活性化リンパ球のパーセンテージとの間の良好な直線性を示した(
図17)。これらの測定基準は、試料中に存在する初期/自発的に活性化された細胞の量(ミン(Min)、Frontiers in Immunology、2018,9)ならびに細胞サイクルに起因する生物物理学的特性の変動性(ホアン(Huang)ら、前掲;キンジョウ(Kinjyo)ら、Nature Communications、2015、6、6301)に影響を及ぼし得る処理プロトコールおよび期間に依存することに留意されたい。まとめると、結果は、低レベルのリンパ球活性化(<5%)を定量化するために、開発された統合型プラットフォームを使用することの実現可能性を明確に示唆する。
【0125】
実施例5:CD4Tリンパ球抗原活性化プロファイリングのための統合ワークフロー
感染性疾患における定量的リンパ球プロファイリングの概念実証として、開発されたプラットフォームを使用してリンパ球活性化を検出するために、PBMCをPHAおよびPPDで24時間刺激した。高細胞カウント数が対照試料について観察され、これはPBMC中の(より大きい)単球の存在に起因し得る(
図23)。この問題を克服するために、CD4磁気活性化細胞選別(MACs、ネガティブ分離)を組み合わせて、インピーダンスプロファイリングの前に単球および他の常在細胞を枯渇させた(
図18)。この戦略を使用して、対照についての低い細胞カウント数(n=552)、ならびに活性化Tリンパ球の存在を示すPHAおよびPPD処理後PBMCについてのより高いインピーダンス細胞カウント数(それぞれ、n=31983および710)が首尾よく検出された(
図19)。これは、活性化リンパ球(CD69+CD137+)が、スパイラル選別器におけるより小さいリンパ球の効率的な除去を伴うPPD処置について0.387%から7.017%(約18倍)に有意に濃縮されたので、フローサイトメトリー分析と良好に一致した(
図20)。ドナー変動性を説明するために、刺激された試料(PHAまたはPPD)の選別された細胞(インピーダンス出口から)におけるリンパ球活性化(CD69+CD137+)の、対照試料(刺激されていない)における選別された細胞に対する比を定量化した(
図21)。同様に、刺激された条件(PHAまたはPPD)において検出された細胞数のそれぞれの対照(刺激されていない)に対する比としての「差動インピーダンスカウント(differential inpedance count)」も定義した。予想通り、差動インピーダンスカウント比は、より強いマイトジェン応答に起因して、PPD(約6倍)よりもPHA(約105倍)について高かった(
図21)。インピーダンスサイトメトリーによるPPD特異的リンパ球応答の検出はまた、フローサイトメトリーよりも感度が高く(約6倍(インピーダンス)、約3倍(フローサイトメトリー))、全てのドナーにおいて検出された1を超える差動インピーダンスカウントを備えていた。まとめると、これらの結果は、抗原特異的Tリンパ球応答に基づくポイントオブケア検査としてさらに適用することができる、無標識の定量的リンパ球活性化プロファイリングのための統合型プラットフォームの使用を実証する。
【0126】
実施例6:統合型インピーダンスサイトメータのためのシステムプロトタイピング
統合型インピーダンスサイトメータの商業化を容易にするために、
図24に示されるようにシステムプロトタイピングを実施した。最初に、システムの小型化の実現可能性を、1.インピーダンス分析器へのマイクロチップのインターフェースのためのPCBチップホルダ、および2.統合ソフトウェアを使用して試料およびシースの灌流制御を可能にするための流体ポンプを組み込むことによって試験した(
図24)。次に、現場結果分析のためのリアルタイムデータ視覚化および定量化を提供するために、エンドユーザ/共同作業者用のグラフィカルユーザインターフェースを有するソフトウェアを開発した。
【0127】
本発明は、本明細書において広く一般的に記載されてきた。一般的な開示に含まれるより狭い種および亜属の分類のそれぞれもまた、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を除去する条件または否定的限定を有する本発明の一般的な記載を含む。他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
【0128】
当業者は、本発明が、目的を実行し、言及された結果および利点、ならびにその中に固有のものを得るために十分に適合されることを容易に理解するであろう。さらに、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示されている本発明に対して様々な置換および改変を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書中に記載される組成物、方法、手順、処置、分子および特定の化合物は、好ましい実施形態の現在の代表例であり、例示的であり、本発明の範囲に対する限定として意図されていない。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神に包含される変更および他の使用を思い付くであろう。本明細書における以前に公開された文書の列挙または考察は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であるという承認として解釈されるべきではない。
【0129】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数または複数)、限定(単数または複数)の非存在下で適切に実施され得る。したがって、本発明は、例示的な実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示されている実施形態において具体化されている本発明の修正形態および変形形態は、当業者によって用いられてもよく、そのような修正形態および変形形態は、本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。
【0130】
本明細書に引用される全ての文献および特許文献の内容は、その全体が参照により組み込まれる。
【国際調査報告】