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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】リチウム前駆体の再生方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557250
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 KR2022003513
(87)【国際公開番号】W WO2022197027
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034363
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】スン ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ソン スン レル
(72)【発明者】
【氏名】ホン スク ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ユン ビン
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031BB00
5H031BB04
5H031BB09
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH09
5H031RR02
(57)【要約】
リチウム前駆体の再生方法では、リチウム複合酸化物粒子を含む正極活物質混合物を準備する。正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造する。活物質パウダーを還元処理して予備前駆体混合物を製造する。予備前駆体混合物からリチウム前駆体を回収する。これにより、リチウム前駆体の回収効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム複合酸化物粒子を含む正極活物質混合物を準備するステップと、
前記正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造するステップと、
前記活物質パウダーを還元処理して予備前駆体混合物を製造するステップと、
前記予備前駆体混合物からリチウム前駆体を回収するステップとを含む、リチウム前駆体の再生方法。
【請求項2】
前記正極活物質混合物を準備するステップは、廃リチウム二次電池から正極を分離するステップと、
分離された前記正極を粉砕して正極活物質混合物を製造するステップとを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項3】
前記正極活物質混合物は、多峰性(multimodal)の粒度分布を有する、請求項2に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項4】
前記正極活物質混合物の粒度は10~500μmである、請求項3に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項5】
前記活物質パウダーの粒度は20~1,000μmである、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項6】
前記活物質パウダーの密度は1~10g/cmである、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項7】
前記活物質パウダーは、体積分率が0.7以上の凝集体を含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項8】
前記活物質パウダーは、体積分率が0.58以下の凝集体を含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項9】
前記正極活物質混合物の凝集は、ディスクペレタイザー(disc pelletizer)または噴霧乾燥機(spray drier)を用いて行う、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項10】
前記活物質パウダーの還元処理は、還元性ガスを用いて流動層反応器内で行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム前駆体の再生方法に関し、より詳細には、廃リチウム含有化合物からリチウム前駆体を再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電の繰り返しが可能な電池であり、情報通信及びディスプレイ産業の発展につれてカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器に広く適用されてきた。二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などが挙げられる。中でもリチウム二次電池は、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜(セパレーター)を含む電極組立体と、前記電極組立体を含浸させる電解質とを含むことができる。前記リチウム二次電池は、前記電極組立体および電解質を収容する、例えばパウチ状の外装材をさらに含むことができる。
【0004】
前記リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらに、ニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を共に含有することができる。
【0005】
前記正極活物質としてのリチウム金属酸化物は、リチウム前駆体と、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有するニッケル-コバルト-マンガン(NCM)前駆体とを反応させて製造することができる。
【0006】
前記正極活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、近年、環境保護への関心が高まることによって、正極活物質のリサイクル方法の研究が進められている。前記正極活物質のリサイクルのためには、廃正極から前記リチウム前駆体を高効率、高純度で再生する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの課題は、リチウム含有化合物から高純度、高収率でリチウム前駆体を回収するためのリチウム前駆体の再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるリチウム前駆体の再生方法では、リチウム複合酸化物粒子を含む正極活物質混合物を準備する。前記正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造する。前記活物質パウダーを還元処理し、予備前駆体混合物を製造する。前記予備前駆体混合物からリチウム前駆体を回収する。
【0009】
いくつかの実施形態では、正極活物質の準備では、廃リチウム二次電池から正極を分離する。そして、分離した前記正極を粉砕して正極活物質混合物を製造する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物は、多峰性(multimodal)の粒度分布を有することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物の粒度は10~500μmであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記活物質パウダーの粒度は20~1,000μmであってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記活物質パウダーの密度は1~10g/cmであってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記活物質パウダーは、体積分率が0.7以上の凝集体を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記活物質パウダーは、体積分率が0.58以下の凝集体を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記予備活物質パウダーの凝集は、ディスクペレタイザー(disc pelletizer)または噴霧乾燥機(spray drier)を用いて行うことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記活物質パウダーの還元処理は、還元性ガスを用いて流動層反応器内で行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
前述の例示的な実施形態によれば、正極活物質混合物を凝集し、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造することができる。この場合、前記活物質パウダーはより容易に流動化されるので、還元工程の効率を優れたものとすることができる。これにより、高収率、高純度のリチウム前駆体をより容易に得ることができる。
【0019】
また、前記活物質パウダーは、相対的に大きな粒度を有することができる。これにより、前記活物質パウダーを流動化する過程で飛散して流出する量を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、例示的な実施形態によるリチウム前駆体の再生方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図2図2は、例示的な実施形態による活物質パウダーの密度による最小流動化速度を示す概略的なグラフである。
図3図3は、例示的な実施形態によるディスクペレタイザーを示す概略的な模式図である。
図4図4は、例示的な実施形態による噴霧乾燥機を示す概略的な模式図である。
図5図5は、例示的な実施形態による活物質パウダーの体積分率による最小流動化速度を示す概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態は、正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造する。前記活物質パウダーは、単峰性(unimodal)の粒度分布を有するので、より容易に流動化することができる。
【0022】
本明細書で単峰性(unimodal)の粒度分布とは、粒子の粒度分布図において、前記分布図内にピークが1つある場合を意味する。例えば、多峰性(multimodal)の粒度分布とは、粒子の粒度分布図において、前記分布図内にピークが複数ある場合を意味する。
【0023】
以下では、添付の図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明することとする。しかし、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0025】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム前駆体の再生方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0026】
図1を参照すると、リチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を準備することができる(例えば、S10ステップ)。
【0027】
前記正極活物質混合物は、電気素子、化学素子から取得または再生されるリチウム含有化合物を含むことができる。前記正極活物質混合物は、リチウム酸化物、リチウム炭酸化物、リチウム水酸化物などの様々なリチウム含有化合物を含むことができる。
【0028】
前記正極活物質混合物は、廃リチウム二次電池から取得または再生されるリチウム含有化合物を含むことができる。前記廃リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ、正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0029】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含有するリチウム複合酸化物を含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表されるリチウム複合酸化物を含むことができる。
【0031】
[化学式1]
LiM1M2M3
【0032】
化学式1中、M1、M2およびM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される遷移金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.2、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むNCM系のリチウム複合酸化物を含むことができる。前記NCM系のリチウム複合酸化物は、リチウム前駆体およびNCM前駆体(例えば、NCM酸化物)を、例えば共沈反応によって互いに反応させて製造することができる。
【0034】
しかし、本発明の実施形態は、前記NCM系のリチウム複合酸化物を含む正極材だけでなく、リチウム含有リチウム複合酸化物正極材に共通して適用することができる。
【0035】
例えば、前記廃リチウム二次電池から前記正極を分離して回収することができる。前記正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質と共に、導電材およびバインダーを共に含むことができる。
【0036】
前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。
【0037】
前記バインダーは、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0038】
いくつかの例示的な実施形態では、前記正極活物質混合物は、前記廃リチウム二次電池から正極を分離し、分離された前記正極を粉砕することによって準備することができる。
【0039】
前記粉砕は、通常使用される粉砕装置を用いて行うことができる。例えば、前記粉砕は、ハンマーミル(hammer mill)、破砕機(shredder)、切断粉砕機(cut crusher)などを用いて行うことができる。前記正極活物質混合物は、粉砕によって粉末状に準備することができる。
【0040】
例えば、前記粉砕後、通常の分級装置を用いて、粉砕済みの粒子を粒度別に分級することができる。例えば、前記分級装置は、ツイストスクリーン(twist screen)であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記粉砕前に、回収された前記正極を熱処理してもよい。これにより、前記粉砕処理時に正極集電体の脱着を促進することができ、前記のバインダーおよび導電材を少なくとも部分的に除去することができる。前記熱処理の温度は、例えば約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。
【0042】
例えば、前記正極集電体は、分離された前記正極を有機溶媒に浸漬して除去することができる。前記正極集電体は、分離された前記正極から遠心分離によって除去することができ、前記正極集電体を除去することによって前記正極活物質混合物を選択的に抽出することができる。
【0043】
前述の工程により、アルミニウムのような正極集電体成分が実質的に完全に分離除去され、前記の炭素系導電材およびバインダーに由来する炭素系成分の含有量が除去または減少された前記正極活物質混合物を得ることができる。
【0044】
例示的な実施形態では、前記正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造することができる(例えば、S20ステップ)。
【0045】
いくつかの例示的な実施形態では、前記正極活物質混合物は、多峰性(multimodal)の粒度分布を有することができる。
【0046】
この場合には、多峰性(multimodal)の粒度分布を有する正極活物質混合物を凝集させ、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造することができる。
【0047】
例えば、前記多峰性(multimodal)の粒度分布を有する正極活物質混合物は、それを流動化する過程で、互いに異なる粒度を有する正極活物質のため容易に流動化されないことがある。
【0048】
例えば、前記正極活物質混合物を流動化するための気体の流速が小さいと、十分な流動化ができないことがあり、前記気体の流速が大きいと、小さい粒度を有する正極活物質が飛散し、後述するリチウム前駆体の回収効率が低下することがある。
【0049】
これに対して、前記活物質パウダーは、前記正極活物質混合物とは異なり、単峰性(unimodal)の粒度分布を有するので、前記活物質パウダーの粒度の大きさに応じて前記気体の流速を調整することにより、より容易に流動化を行うことができる。これにより、リチウム前駆体の回収効率をより向上させることができる。
【0050】
いくつかの例示的な実施形態によれば、前記正極活物質混合物の粒度は約10~500μmであってもよい。前記範囲では、前記正極活物質混合物の凝集を効果的に行い、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーをより容易に製造することができる。
【0051】
いくつかの例示的な実施形態によれば、前記活物質パウダーの粒度は、約20~1,000μmであってもよい。より好ましくは、前記活物質パウダーの粒度は、約30~500μmであってもよい。例えば、前記範囲を満たすと、後述する前記活物質パウダーの流動化をより容易に行うことができる。
【0052】
また、前記正極活物質混合物を凝集する過程で製造される前記活物質パウダーの粒度が前記範囲内にあると、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーをより容易に製造することができる。
【0053】
いくつかの例示的な実施形態によれば、前記活物質パウダーの密度は、約1~10g/cmであってもよい。例えば、前記活物質パウダーが前記密度の範囲内にあると、前記活物質パウダーをより容易に流動化することができる。
【0054】
図2は、例示的な実施形態による活物質パウダーの密度による最小流動化速度を示すグラフである。
【0055】
図2を参照すると、例えば、前記活物質パウダーの密度が大きくなるほど、前記活物質パウダーを流動化するための流動化速度が増加し、密度が小さくなるほど、前記活物質パウダーを流動化するための流動化速度が減少し得る。
【0056】
この場合、前記活物質パウダーの密度は、後述する流動層反応器の内部に流入する気体の速度に合わせて適宜調整することができる。これにより、前記活物質パウダーをより容易に流動化することができる。これにより、リチウム前駆体の回収効率をより向上させることができる。
【0057】
いくつかの例示的な実施形態によれば、前記正極活物質混合物の凝集は、ディスクペレタイザー(disc pelletizer)または噴霧乾燥機(spray drier)を用いて行うことができる。
【0058】
図3は、例示的な実施形態によるディスクペレタイザーを示す概略的な模式図である。
【0059】
図3を参照すると、ディスクペレタイザー100は、斜めに立てられている広い円柱状の凝集ボディー110を含み、前記正極活物質混合物は、凝集ボディー110内に注入され、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーに凝集することができる。
【0060】
例えば、前記正極活物質混合物は、凝集ボディー110の内部を回転することができる。この場合、粒度の大きい粒子は凝集ボディー110の下部で回転し、粒度の小さい粒子は凝集ボディー110の上部で回転することができる。凝集ボディー110の内部を回転する前記正極活物質混合物に水を噴射し、粒度の異なる正極活物質混合物を互いに凝集させることができる。
【0061】
この場合、粒度が増加した前記正極活物質混合物は、凝集ボディー110の下部に移動し、一定の粒度を有する前記正極活物質混合物は、凝集ボディー110の下部に位置する収集部120を介して排出することができる。これにより、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを容易に製造することができる。
【0062】
例えば、前記凝集ボディー110の側面が底面と成す角度は40~60°であってもよい。前記角度の範囲では、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーをより容易に製造することができる。
【0063】
図4は、例示的な実施形態による噴霧乾燥機を示す概略的な模式図である。
【0064】
図4を参照すると、噴霧乾燥機200は、噴射器210と、乾燥凝集ボディー220と、分離器230とを含むことができる。
【0065】
例えば、前記正極活物質混合物と水を混合して混濁液240を製造することができる。例えば、混濁液240は、噴射機210を介して乾燥凝集ボディー220の内部に投入することができる。噴射された混濁液240は、乾燥凝集ボディー220の上部に注入される乾燥気体によって乾燥することができる。この場合、水が蒸発して前記正極活物質混合物が凝集することにより、予備活物質パウダーを製造することができる。前記予備活物質パウダーは、前記正極活物質混合物が凝集した活物質パウダーと、凝集していない正極活物質混合物とを含むことができる。
【0066】
例えば、噴射機210は、スプレーノズル(spray nozzle)を含むことができる。例えば、前記スプレーノズル(spray nozzle)の噴霧粒径は、約100~1,000μmであってもよい。
【0067】
例えば、前記予備活物質パウダーは、分離器230に移動し、前記活物質パウダーと前記正極活物質混合物とに分離することができる。例えば、前記予備活物質パウダーは、分離器230の内部にサイクロンガスを注入して形成されたサイクロン(cyclone)によって、前記活物質パウダーと前記正極活物質混合物とに分離することができる。
【0068】
例えば、前記予備活物質パウダーは、前記サイクロン(cyclone)によって分離器230の内側面に沿って螺旋状に回転し、回転する過程で凝集して粒度が増加した活物質パウダーは漸次下降し得る。これにより、単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造することができる。この場合、製造された活物質パウダーは、分離器230の下部に位置する活物質パウダー収集器260で収集することができる。
【0069】
例えば、前記予備活物質パウダーから分離された凝集していない正極活物質混合物は、前記サイクロン(cyclone)によって分離器230の上部に飛散することができる。飛散した前記正極活物質混合物は、残余気体と共に分離器230の上部に配置されている排出口250を介して排出することができる。例えば、排出口250から排出された前記正極活物質混合物を水と再び混合して混濁液240を製造することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率は、選択的に調整することができる。
【0071】
例えば、前述のディスクペレタイザー100の凝集ボディー110の回転速度、または凝集ボディー110の側面が底面と成す角度を調節することにより、活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率を調節することができる。
【0072】
例えば、前述の噴霧乾燥機200の噴射器210によって混濁液240の噴霧速度を調節し、活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率を調節することができる。
【0073】
例えば、前記体積分率は、1から前記凝集体の空隙率を引いた値を意味し得る。例えば、前記空隙率は、容器を粒子(例えば、前記凝集体)でいっぱいにし、容器がいっぱいになるように水を加えた後、加えた水の量を容器の体積で割って求めることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、活物質パウダーは、体積分率が0.7以上(例えば、空隙の体積分率が0.3以下)の凝集体を含むことができる。好ましくは、前記体積分率は0.7~0.9であってもよい。
【0075】
活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率が前記範囲内にあると、例えば、凝集体に含まれる粒子同士の結合力を相対的に高くすることができる。これにより、後述する流動層反応器における還元処理ステップで飛散して失われる粒子の割合(例えば、粒子飛散損失率)を低減することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、活物質パウダーは、体積分率が0.58以下(例えば、空隙の体積分率が0.42以上)の凝集体を含むことができる。好ましくは、前記体積分率は0.1~0.58であってもよい。
【0077】
活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率が前記範囲内にあると、例えば、流動層反応器における還元処理ステップで流動化を円滑に行うことができる。これにより、投入される還元性ガス及びキャリアガスの投入量を低減することができ、工程経済性を改善することができる。
【0078】
図5は、例示的な実施形態による活物質パウダーの体積分率による最小流動化速度を示す概略的なグラフである。
【0079】
図5を参照すると、活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率が低いと、流動化に必要な最小流動化速度を減少させることができる。
【0080】
例えば、前記活物質パウダーに含まれる凝集体の体積分率を目的および状況に合わせて選択的に調整することができる。これにより、優れた工程性およびリチウム前駆体回収率を実現することができる。
【0081】
例示的な実施形態によれば、活物質パウダーから予備前駆体混合物を製造することができる(例えば、S30ステップ)。例示的な実施形態では、前記活物質パウダーを還元処理して、前記予備前駆体混合物を製造することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記水素還元処理は、流動層反応器によって行うことができる。例えば、前記活物質パウダーを前記流動層反応器内に投入し、前記流動層反応器の下部から還元性ガスを注入することができる。例えば、前記還元性ガスは、水素ガスであってもよい。
【0083】
前記還元性ガスによって前記流動層反応器の下部からサイクロンが形成され、活物質パウダーと接触しながら前記予備前駆体混合物が生成され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、活物質パウダーの粒子が凝集せず、粒子の粒度が相対的に小さくなり得る(例えば、200μm以下)。この場合、前記還元性ガスは、流動層反応器内に8~12cm/sの流速で注入することができる。これにより、過剰な流動による微粒子の飛散を低減することができ、不要な還元性ガスの投入を防止して優れた工程性および経済性を実現することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、活物質パウダーの粒子が一部凝集し、粒子の粒度が相対的に大きくなり得る(例えば、400μm以上)。この場合、前記還元性ガスは、流動層反応器内に16cm/sを超える流速で注入することができる。これにより、粒子の円滑な流動を実現して均一な還元を行うことができる。
【0086】
例えば、前述の活物質パウダーの製造ステップでは、正極活物質混合物が凝集し得る。この場合には、流動層反応器において前記還元処理時に活物質パウダーに含まれる粒子が上部に飛散して失われる割合(例えば、粒子飛散損失率)を低減することができる。これにより、活物質パウダー粒子の損失を最小限に抑えながら予備前駆体混合物を製造し、後述するリチウム前駆体の回収ステップで高いリチウム前駆体回収率を確保することができる。
【0087】
例えば、前記還元性ガスと共にキャリアガスを前記流動層反応器の下部から混合して注入することができる。これにより、前記流動層は、気体-固体の混合を促進して反応を促進することができ、前記流動層反応器内における前記予備前駆体混合物の反応層を容易に形成することができる。前記キャリアガスは、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)のような不活性ガスを含むことができる。
【0088】
前記予備前駆体混合物は、前記活物質パウダーに含まれるリチウム-遷移金属酸化物の水素還元反応物を含むことができる。前記リチウム-遷移金属酸化物としてNCM系リチウム酸化物が使用される場合、前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体および遷移金属含有反応物を含むことができる。
【0089】
前記予備リチウム前駆体は、リチウム水酸化物、リチウム酸化物及び/又はリチウム炭酸化物を含むことができる。例示的な実施形態によれば、水素還元反応によって前記予備リチウム前駆体が得られるので、リチウム炭酸化物の混合含有量を減少させることができる。
【0090】
前記遷移金属含有反応物は、Ni、Co、NiO、CoO、MnOなどを含むことができる。前記水素還元反応は、約400~700℃、好ましくは450~550℃で行うことができる。
【0091】
例示的な実施形態によれば、前記予備前駆体混合物を収集した後、水洗処理を行うことができる(例えば、S40ステップ)。
【0092】
前記水洗処理により、前記予備リチウム前駆体は、実質的にリチウム水酸化物で構成されたリチウム前駆体に変換することができる。例えば、前記予備リチウム前駆体に混入されたリチウム酸化物およびリチウム炭酸化物は、水と反応してリチウム水酸化物に変換するか、または水洗して除去することができる。これにより、所望のリチウム水酸化物の形態に変換された高純度のリチウム前駆体を生成することができる。
【0093】
前記予備リチウム前駆体は、水と反応して溶解し、実質的にリチウム水酸化物水溶液を製造することができる。
【0094】
前記予備前駆体混合物に含まれる前記遷移金属含有反応物は、前記水洗処理によって水に溶解または反応することなく沈殿し得る。これにより、ろ過処理によって前記遷移金属含有反応物を分離し、高純度のリチウム水酸化物を含むリチウム前駆体を得ることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記水洗処理は、二酸化炭素(CO)が排除された条件で行うことができる。例えば、COフリー(free)雰囲気(例えば、COが除去された空気(air)雰囲気)で前記水洗処理を行うので、リチウム炭酸化物の再生成を防止することができる。
【0096】
一実施形態では、前記水洗処理時に提供される水を、CO欠乏ガスを用いてパージ(例えば、窒素パージ)することにより、COフリー雰囲気を形成することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、沈殿分離された前記遷移金属含有反応物は、酸溶液で処理することにより、各遷移金属の酸塩の形態の前駆体を形成することができる。一実施形態では、前記酸溶液として硫酸を使用することができる。この場合には、前記遷移金属前駆体として、NiSO、MnSOおよびCoSOをそれぞれ回収することができる。
【0098】
前述のように、水素還元して生成した予備前駆体混合物を水洗処理し、実質的にリチウム水酸化物で構成されたリチウム前駆体を得ることができる。これにより、リチウム炭酸化物のような他の形態のリチウム前駆体の副生成を防止し、より高容量、長寿命の正極活物質を得ることができる。
【0099】
前記リチウム前駆体は、リチウム水酸化物(LiOH)、リチウム酸化物(LiO)またはリチウム炭酸化物(LiCO)を含むことができる。リチウム二次電池の充放電特性、寿命特性、高温安定性などの観点から、リチウム水酸化物がリチウム前駆体として有利である。例えば、リチウム炭酸化物の場合は、分離膜上に沈積反応を起こして寿命安定性を弱めることがある。
【0100】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0101】
実施例1
廃リチウム二次電池から分離された正極材の1kgを小単位に切断し、ミリングにより粉砕処理して、Li-Ni-Co-Mn酸化物およびバインダー(ポリフッ化ビニリデン,PVDF)を含む正極活物質混合物を採取した。前記正極活物質混合物は、多峰性(multimodal)の粒度分布を有し、10~100μmの粒度を有していた。
【0102】
前記正極活物質混合物をディスクペレタイザーに入れ、粒度が15μmであり、且つ単峰性(unimodal)の粒度分布を有する活物質パウダーを製造した。前記活物質パウダーの密度は5g/cmであった。
【0103】
前記活物質パウダーを前記流動層反応器内で流動化し、水素ガスと反応させて、酸化リチウムおよび水酸化リチウムを含む予備前駆体混合物を製造した。前記流動層反応器の内部温度は450℃に維持した。また、前記流動層反応器内に注入される前記水素ガスの流速は20cm/sであった。
【0104】
形成された予備前駆体混合物を収集し、水で水洗した。形成されたリチウム前駆体水溶液を分離してリチウム前駆体を得た。
【0105】
実施例2~6
製造された活物質パウダーの粒度、密度および水素ガス流速を下記表1に示す通りにした以外は、実施例1と同様にしてリチウム前駆体を得た。
【0106】
比較例
前記正極活物質混合物から活物質パウダーを製造する工程を行わず、前記正極活物質混合物を直ちに前記流動層反応器内に注入して水素還元工程を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウム前駆体を得た。
【0107】
実験例
(1)粒子飛散損失率の測定
前記の実施例および比較例では、還元前の活物質パウダーの重量に対する還元後の予備前駆体混合物の重量を下記式のように算出して粒子飛散損失率を算出した。
【0108】
[式]
粒子飛散損失率(%)={(活物質パウダーの重量-予備前駆体混合物の重量)/(活物質パウダーの重量)}×100
【0109】
(2)流動性の判断
前記の実施例および比較例では、流動層反応器の下部に流動しない活物質パウダーが存在するかどうかを目視で観察した。
Ο:流動層反応器の下部に流動しない活物質パウダーの凝集体が観察されない。
Χ:流動層反応器の下部に流動しない活物質パウダーの凝集体が観察される。
【0110】
前記の実施例および比較例における物性及び粒子飛散損失率を下記表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1を参照すると、前記正極活物質混合物を単棒性の粒度分布を有する活物質パウダーに凝集させた後、前記活物質パウダーを流動化反応器によって水素還元させた実施例は、前記正極活物質混合物を直ちに還元させた比較例に比べて、流動層反応器における粒子飛散損失率が減少した。これにより、活物質パウダー粒子の損失を最小限に抑えながら予備前駆体混合物を製造し、リチウム前駆体回収率が増加した。
【0113】
ただし、活物質パウダーの粒度が20μm未満の実施例1は、粒度が20~1,000μmの実施例2~6に比べて粒子飛散損失率が高かった。
【0114】
また、活物質パウダーの粒度が1,000μmを超える実施例7は、実施例2~6に比べて重いパウダー粒子を有するため流動性が低下した。
【0115】
また、粒度が200μm以下で、且つ水素ガスの流速が8~12cm/sである実施例8及び9は、水素ガスの流速が12cm/sを超える同じ粒度の実施例1及び2に比べて粒子飛散損失率が減少した。
【0116】
さらに、粒度が400μm以上で、且つ水素ガスの流速が16cm/s未満である実施例10は、同じ粒度の実施例4に比べて流動性が低下した。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
いくつかの実施形態では、正極活物質混合物の準備では、廃リチウム二次電池から正極を分離する。そして、分離した前記正極を粉砕して正極活物質混合物を製造する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物の凝集は、ディスクペレタイザー(disc pelletizer)または噴霧乾燥機(spray drier)を用いて行うことができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
実施例2~10
製造された活物質パウダーの粒度、密度および水素ガス流速を下記表1に示す通りにした以外は、実施例1と同様にしてリチウム前駆体を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
また、粒度が200μm以下で、且つ水素ガスの流速が8~12cm/sである実施例8及び9は、水素ガスの流速が12cm/sを超える同じ粒度の実施例及びに比べて粒子飛散損失率が減少した。
【国際調査報告】