(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】セーフティレーザ、保護方法、およびモバイル自律ロボット
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240228BHJP
G01S 17/93 20200101ALN20240228BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S17/93
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557345
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2022057186
(87)【国際公開番号】W WO2022195088
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523010373
【氏名又は名称】アイフォロー
【氏名又は名称原語表記】iFollow
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムニゴ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクマー ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC04
5J084AC07
5J084EA18
(57)【要約】
本技術は、異なる温度の環境内において移動するように意図されているセーフティレーザ(10)を提案している。セーフティレーザ(10)は、レーザ出射手段と、少なくとも1つの光学素子(101)とを備えているともに、セーフティレーザ(10)の内部の温度を調整するための手段(102)を有する少なくとも1つの光学素子(101)を保護するための手段と、セーフティレーザ(10)を気密するための手段(103)と、少なくとも1つの光学素子(101)を保護するためにセーフティレーザ(10)の内部の湿度を調整するための手段(104)と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる温度の環境内において移動するように意図されているセーフティレーザ(10)であって、
前記セーフティレーザ(10)は、レーザ出射手段と、少なくとも1つの光学素子(101)と、を備えており、
前記セーフティレーザ(10)は、
前記セーフティレーザ(10)の内部の温度を調整するための手段(102)を含んでいる少なくとも1つの前記光学素子(101)を保護するための手段と、
前記セーフティレーザ(10)を気密するための手段(103)と、
少なくとも1つの前記光学素子(101)を保護するために、前記セーフティレーザ(10)の内部の湿度レベルを調整するための手段(104)と、
を備えている、セーフティレーザ(10)。
【請求項2】
前記内部温度を調整するための前記手段(102)は、熱伝導性取付手段を介して前記セーフティレーザ(10)の第1表面(10a)に取り付けられている第1加熱素子(102a)を含んでいる、請求項1に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項3】
前記内部温度を調整するための前記手段(102)は、熱伝導性取付手段を介して前記セーフティレーザ(10)の第2表面(10b)に取り付けられている第2加熱素子(102a)をさらに含んでいる、請求項2に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項4】
前記内部温度を調整するための前記手段(102)を制御する手段を備えている、請求項1に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項5】
前記気密手段(103)は、前記光学素子の周囲に設けられている少なくとも1つのシール(103a,103b)を含んでいる、請求項1に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項6】
前記保護手段は、第1溶液(S1)の少なくとも1つの層の形態をとって前記光学素子(101)に施される特定アンチミスト処理を含むアンチミスト手段を含んでいる、請求項1に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項7】
前記特定アンチミスト処理は、前記溶液(S1)の層の少なくとも一部に塗布される、第2溶液(S2)の少なくとも1つの層をさらに含んでいる、請求項6に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項8】
前記第1溶液(S1)の少なくとも1つの層と前記第2溶液(S2)の少なくとも1つの層とを含んでいる前記特定アンチミスト処理が、前記光学素子(101)の内面および外面に施されている、請求項6または7に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項9】
前記内部湿度レベルを調整するための前記手段(104)は、乾燥剤材料を含んでいる少なくとも1つの部材を含んでいる、請求項1に記載のセーフティレーザ(10)。
【請求項10】
異なる温度の環境内において移動するように意図されているセーフティレーザを保護するための方法であって、
前記レーザは、レーザ出射手段と、少なくとも1つの光学素子と、を備えており、
前記方法は、
前記セーフティレーザの内部の温度を調整するステップ(E1)と、
気密手段を設けるステップ(E2)と、
前記セーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するステップ(E3)と、
保護された前記光学素子を提供するためにアンチミスト手段を設けるステップ(E4)と、
を含んでいる、セーフティレーザを保護するための方法。
【請求項11】
保護された前記光学素子を較正するステップをさらに含んでいる、請求項10に記載のセーフティレーザを保護する方法。
【請求項12】
前記内部温度を調整するステップは、熱伝導性取付手段を介して、前記セーフティレーザの第1表面に第1加熱素子を取り付けるステップを含んでいる、請求項10に記載のセーフティレーザを保護するための方法。
【請求項13】
少なくとも1つの前記光学素子を保護するために第1手段を設けるステップは、前記光学素子の周囲に少なくとも1つのシールを設けるステップを含んでいる、請求項10に記載のセーフティレーザを保護するための方法。
【請求項14】
前記セーフティレーザの内部の前記内部湿度レベルを調整するステップは、乾燥剤材料を含んでいる少なくとも1つの部材を取り付けるステップを含んでいる、請求項10に記載のセーフティレーザを保護するための方法。
【請求項15】
少なくとも1つの前記光学素子を保護するために第2手段を設けるステップは、
特定アンチミスト処理の第1溶液の少なくとも1つの層を、前記光学素子の内面および/および外面に設けるステップ(E41)と、
前記光学素子に対して第1加熱を行うステップ(E42)と、
特定アンチミスト処理の第2溶液の少なくとも1つの層を、前記光学素子に設けるステップ(E43)と、
前記光学素子に対して第2加熱を行うステップ(E44)と、
を含んでいる、請求項10に記載のセーフティレーザを保護するための方法。
【請求項16】
異なる温度の環境内において移動するモバイル自律ロボット(1)であって、
請求項1から9のいずれか1項に記載のセーフティレーザ(10)と、
少なくとも1つの電子コンポーネントを有しているボックスであって、当該ボックスの内部の温度を調整するための手段を有しているとともに、少なくとも1つのファンを有しているボックスと、
極端な温度に耐えるグリースを含む保護手段を有している少なくとも1つの電気ギアモータであって、当該電気ギアモータの温度を調整するための手段を有している電気ギアモータと、
少なくとも1つの内部抵抗によって温度が自動調整される、少なくとも1つの断熱リチウムバッテリと、
を備えている、モバイル自律ロボット(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明の分野は、ロジスティック(物流)の分野であり、特に、発送されるべき製品を格納する倉庫内におけるオーダーピッキングに関する。
【0002】
本発明は、特に、オーダーピッカーとともに低温室内を移動するロボットの性能を改善することに関し、より具体的には、モバイル自律ロボット(移動可能な自律ロボット)に関する。
【0003】
[従来技術]
ロジスティクス分野は、長年に亘り継続的に発展してきている。特に、オーダーピッキングに関しては、管理ソフトウェアから、スマートストレージラックを通過する製品コンベアに至るまで、技術的な変化およびテクノロジー上の変化が数多く存在している。
【0004】
我々の関心は、より具体的にはロボットに関し、特に、温度が異なるまたは非常に異なる、環境またはゾーン内/ゾーン間を移動する、モバイル自律ロボットに関する。
【0005】
したがって、当該ロボットがオーダーピッキングに使用される場合、当該ロボットは、例えば乾燥製品を格納するための周囲温度のゾーンと、例えばチルド製品を格納するための1.5℃~5℃の温度のゾーンと、冷凍(フローズン)製品を格納するための-18℃~-40℃の温度のゾーンとの間を、オーダーピッキングの過程において移動しなければならない。
【0006】
しかしながら、これらの温度変化は、ロボットにダメージ(損傷)を与えうるので、オーダーピッキングの品質を阻害するおそれがある誤動作を引き起こしうる。加えて、これらのロボットは、当該ロボットの多大な技術的性質に起因して、比較的高いコストを有している。したがって、使用条件に起因する劣化を理由として当該ロボットをリプレース(交換)することは、重大な不利益を示す。このような重大な不利益は、ロジスティックの業績を改善することを目的としてロボットを購入する産業界にとって受け入れがたい。
【0007】
したがって、ロボットが(特に低温室における)異なる温度の複数のゾーン間を効率的に移動することを可能にし、かつ、特にゾーンおよび温度が変化した場合に、誤動作を引き起こしうるダメージを被らないようにするとともに、当該ロボットの製造およびメンテナンスのコストを最適化できる、新規なアプローチを提供することについてのニーズが存在している。
【0008】
[発明の概要]
本発明は、セーフティレーザを保護するための技術的解決策を提案している。当該セーフティレーザは、レーザ出射手段と、少なくとも1つの光学素子とを備えているとともに、異なる温度の環境内において移動するように意図(設計)されている。このことを実現するために、セーフティレーザは、その内部温度を調整するための手段を含んでいる少なくとも1つの光学素子を保護するための手段と、気密性手段と、光学素子を保護するためにその内部湿度を調整するための手段と、を備えている。
【0009】
したがって、本技術は、セーフティレーザが異なる温度の環境内において移動する場合に、その光学素子を最適な動作状態に維持するように、その光学素子の保護に基づいて、温度変化に起因する誤動作からセーフティレーザを保護するための新規かつ創作的な解決策を提案している。
【0010】
その理由は、セーフティレーザの複数のコンポーネント(構成要素)のうちの一部は頻繁な温度変化に適していないので、当該温度変化がセーフティレーザにダメージを与えるおそれがあるからである。ただし、例えば、オーダーピッキングのためのモバイル自律ロボットにセーフティレーザが組み込まれている場合、この温度変化はセーフティレーザの使用に大きな影響を及ぼす誤動作を引き起こすおそれがある。実際のこのような用途は、例えば、周囲温度の環境と非常に高度な冷却環境との間における多大な温度変動を想定している。
【0011】
セーフティレーザを保護するために、セーフティレーザの内部における温度および湿度が調整され、セーフティレーザの気密性が最適化される。これにより、特に、セーフティレーザの動作に不可欠な素子である光学素子における、結露またはミストの発生を防止できる。
【0012】
本技術の特定の態様によれば、内部温度を調整するための手段は、熱伝導性取付手段を介してセーフティレーザの第1表面に取り付けられている第1加熱素子を含んでいる。
【0013】
したがって、セーフティレーザは、加熱素子から成る加熱システムの形態をとって、その内部温度を調整するための手段を含んでいる。当該加熱素子は、例えば、アルミニウムスコッチテープなどの熱伝導性取付手段を介して、セーフティレーザの複数の表面のうちの1つの表面(例:底面)に取り付けられているパッチである。また、いかなる不必要な熱損失をも避けるために、フォーム(発泡体)タイプの外部断熱材または等価な外部断熱材が、セーフティレーザおよび加熱システムから成るアセンブリを包囲していてもよい。
【0014】
特定の構成によれば、内部温度を調整するための手段は、熱伝導性取付手段を介してセーフティレーザの第2表面に取り付けられている第2加熱素子をさらに含んでいる。
【0015】
この実施形態によれば、セーフティレーザの内部の温度を調整するための手段は、セーフティレーザの複数の表面のうちの別の表面(例:上面)に取り付けられている第2加熱素子を含んでいる。同一の熱伝導性取付手段が使用されてもよいし、熱損失を回避するためのフォームが使用されてもよい。
【0016】
特定の態様によれば、セーフティレーザは、内部温度を調整するための手段を制御するための手段を備えている。
【0017】
本実施形態によれば、セーフティレーザの内部の温度が所定の閾値を下回ることを防止することが必要である場合には、セーフティレーザの内部の温度を調整するための手段がトリガされるように制御される。
【0018】
例えば、これらの制御手段は、測定温度が別の所定の閾値に対応している場合に、加熱パッチをトリガする温度センサである。
【0019】
特定の構成によれば、気密手段は、光学素子の周囲に設けられているシール(封止部)を含んでいる。この実施形態によれば、セーフティレーザは、光学素子の周囲に、すなわち、光学素子とセーフティレーザの他のコンポーネントとの間に、シールを備えている。このシールは、蒸気状態での水(この水は、例えば、セーフティレーザがより低温の環境へと移動する場合に、状態変化し、それゆえ結露するおそれがある)の侵入によるセーフティレーザのいかなる汚染をも制限するために、セーフティレーザの気密性を改善する。このような結露は、セーフティレーザの誤動作に招くおそれがあるためである。例えば、このシールは、セーフティレーザのレンズと当該セーフティレーザのフレームとの間に配置されたエポキシシールに対応している。
【0020】
特定の態様によれば、保護手段は、第1溶液の少なくとも1つの層の形態において光学素子に施される特定アンチミスト(耐霧)処理を含むアンチミスト手段を含んでいる。
【0021】
この実施形態によれば、例えば表面からワニスを除去し、次いで消毒することによって予め表面を下処理することを要し、次いで、例えば加熱によって第1溶液層を定着させる非常に具体的な操作方法に従って、アンチミスト処理の第1溶液が光学素子(光学ガラスの内側および/または外側)に塗布される。
【0022】
この作業方法の定義は、このミスト防止処理の第1溶液の塗布時にセーフティレーザにダメージを与えないように、当該セーフティレーザに対する作業における非常に多大な専門性を要することに留意されたい。
【0023】
この第1溶液は、例えばプライマーである。
【0024】
特定の構成によれば、特定アンチミスト処理は、第1溶液の層の少なくとも一部に塗布される、第2溶液の少なくとも1つの層をさらに含んでいる。
【0025】
この実施形態によれば、アンチミスト処理の第2溶液は、第1層の定着が確認された後、当該第1層に塗布される。この第2溶液の層も、非常に精密な作業方法に従って、例えば加熱によって定着させられる。この例においても、この作業方法の定義は、このアンチミスト処理の第2溶液の塗布時にセーフティレーザにダメージを与えないように、当該セーフティレーザに対する作業における非常に多大な専門性を要する。
【0026】
この第2溶液は、例えば帯電防止製品である。
【0027】
特定の態様によれば、内部湿度レベルを調整するための手段は、乾燥剤材料を含んでいる少なくとも1つの部材を含んでいる。
【0028】
この実施形態によれば、セーフティレーザは、自身が受ける温度変化に起因して当該セーフティレーザの内部に生じうる湿気を吸収するために、例えばシリカビーズなどの乾燥剤材料を含んでいるか、または、当該乾燥剤材料によって満たされているパッチおよび/またはサック(小袋)をも含んでいる。
【0029】
本技術は、異なる温度の環境内において移動するように意図されているセーフティレーザを保護するための方法にも関する。当該レーザは、レーザ出射手段と、少なくとも1つの光学素子と、を備えている。当該方法は、下記のステップ、すなわち、
-セーフティレーザの内部の温度を調整するステップ;
-気密手段を設けるステップ;
-セーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するステップ;
-保護された光学素子を提供するためにアンチミスト手段を設けるステップ;
を含んでいる。
【0030】
このように、本技術は、温度変化による誤動作からセーフティレーザを保護するための新規かつ創作的な方法を提案している。当該方法は、セーフティレーザが異なる温度の環境内において移動する場合に、特に当該セーフティレーザの光学素子を最適な動作状態に維持することを可能とする様々なステップを含んでいる。
【0031】
このことを実現するために、このセーフティレーザ内部の湿度レベルまたは温度を調整するステップが実行される。例えば、当該ステップは、検出された温度および湿度レベルを考慮した所定の閾値、ならびに、セーフティレーザの様々なゾーン(特に当該セーフティレーザの光学素子)に特有の様々な気密性手段およびアンチミスト手段を設けたことに従ってトリガ(開始)される。
【0032】
特定の態様によれば、本方法は、保護された光学素子を較正(キャリブレーション)するステップをさらに含んでいる。この実施形態によれば、様々な保護ステップが実行された後に、光学素子が較正される。その理由は、光学素子に対して特定の気密手段および/またはアンチミスト手段を設けること(例:アンチミスト処理を施すこと)は、当該光学素子の動作を変化させるためである。したがって、光学素子は、特有の較正、および、セーフティレーザの管理ソフトウェアについての適合化された設定を要する。
【0033】
加えて、光学素子の構成および較正を改善(リファイン)するために必要であれば、セーフティレーザの動作に対して問題となりうると以前に特定された極端な条件のもとで(例:極端な低温下において)、試験および/またはバーンインを行うことも要する。
【0034】
例えば、内部温度を調整するステップは、熱伝導性取付手段を介して、セーフティレーザの第1表面に第1加熱素子を取り付けるステップを含んでいる。
【0035】
特定の構成によれば、気密手段を設けるステップは、光学素子の周囲に少なくとも1つのシールを設けるステップを含んでいる。そして、セーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するステップは、乾燥剤材料を含んでいる少なくとも1つの部材を取り付けるステップを含んでいる。
【0036】
特定の構成によれば、アンチミスト手段を設けるステップは、下記のステップ、すなわち、
-特定アンチミスト処理の第1溶液の少なくとも1つの層を、光学素子の内面および/または外面に設けるステップ;
-光学素子に対して第1加熱を行うステップ;
-特定アンチミスト処理の第2溶液の少なくとも1つの層を、光学素子に設けるステップ;
-光学素子に対して第2加熱を行うステップ;
を含んでいる。
【0037】
この実施形態によれば、アンチミスト処理を施すステップが、セーフティレーザの光学素子に対して実行される。
【0038】
このことを実現するために、第1溶液(例:プライマー)の層が、関心のある表面に設けられる。この第1層は、塗布される溶液に適している第1期間(例:30分)に亘り、かつ、塗布される当該溶液に適している第1温度(例:120℃)で、オーブン内において光学素子に対する第1加熱が実行されることによって定着させられる。
【0039】
第2溶液(例:帯電防止製品)の層は、第1層の全部または一部の上部に設けられる。この第2層は、塗布される溶液に適した第2期間(例:20分)に亘り、かつ、塗布される当該溶液に適した第2温度(例:130℃)で、オーブン内において光学素子に対する第2加熱が実行されることによって定着させられる。
【0040】
第1溶液層を設けるステップに先立ち、処理されるべき内面および/または外面を下処理する第1ステップが実行されてもよい。そして、仕上げステップが、処理された表面に対して実行されてよい。例えば、当該仕上げステップは、2つの溶液の塗布後に、処理された表面上に発生した可能性がある任意の粗さおよびバブル(気泡)を除去するステップを含んでいる。
【0041】
本技術は、異なる温度の複数の環境内において移動するモバイル自律ロボットにも関する。当該モバイル自律ロボットは、
-上述のセーフティレーザ;
-少なくとも1つの電子コンポーネントを有するボックスであって、当該ボックスの内部の温度を調整するための手段を有しているともに、少なくとも1つのファンを有しているボックス;
-極端な温度に耐えるグリースを含む保護手段を有する少なくとも1つの電気ギアモータであって、当該電気ギアモータの温度を調整するための手段を含んでいる電気ギアモータ;
-少なくとも1つの内部抵抗によって温度が自動調整される、少なくとも1つの断熱リチウムバッテリ;
を備えている。
【0042】
したがって、本技術は、温度変化の影響に最も敏感な素子を保護することに基づいて、当該温度変化に起因する誤動作に対抗している、新規かつ創作的な手法によって保護されているモバイル自律ロボットを提案している。
【0043】
この解決策は、オーダーピッキング時に、温度が非常に大きくかつ非常に頻繁に変化する環境内において、オーダーピッキングおよび移動を行うように意図されているモバイル自律ロボットに特に適している。
【0044】
[図面のリスト]
提案されている技術および当該技術が提供している様々な利点は、複数の例示的かつ非限定的な実施形態に関する以降の説明および添付の図面に照らせば、より容易に理解されるであろう。図面は下記の通りである。
【0045】
図1は、本技術の実施形態の一般的な原則に係るセーフティレーザを例示している;
図2は、本技術の実施形態に係るセーフティレーザの内部の温度を調整するための手段を例示している;
図3は、本技術の実施形態に係るセーフティレーザを気密するための手段を例示している;
図4は、本技術の実施形態に係るセーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するための手段を例示している;
図5は、本技術の一般的な原理に係るセーフティレーザを保護するための方法の主要なステップを例示している;
図6は、本技術の実施形態に係る、
図5におけるセーフティレーザを保護するための方法について、アンチミスト手段を設けるサブステップを例示している;
図7aは、本技術の一般的な原則に係るモバイル自律ロボットの例の外観図を示す;
図7bは、本技術の一般的な原則に係る、
図7aにおけるモバイル自律ロボットの例の平面図を示す。
【0046】
[発明の詳細な説明]
提案されている技術の一般的な原則は、異なる温度の環境内/環境間を移動する場合に受ける温度変化の影響から、セーフティレーザ、すなわちライダー(Lider)を保護することにある。Liderは、「光検出および測距(LIght Detection And Ranging)」あるいは「レーザ画像検出および測距(Laser Imaging Detection And Ranging)」の略語である。
【0047】
セーフティレーザは、その名前が示す通り、当該セーフティレーザが組み込まれる対象物(オブジェクト)のために重要なセーフティ機能(例:障害物の検出、マップ上の環境または位置の知覚など)を果たす。したがって、この点に関して、セーフティレーザの動作の全部または一部を劣化させ、当該セーフティレーザのセーフティ機能を果たせなくするおそれがある全ての予期せぬイベントから、当該セーフティレーザを最適に保護することを要する。
【0048】
例えば、当該セーフティレーザは、ロボット、ドローン、自律車両などに組み込まれる。したがって、これらは、他の移動デバイスおよび/または個人と共存する開放環境を含めて、自律的かつ安全な方法で移動することが可能となる。
【0049】
しかしながら、セーフティレーザのこのセーフティ機能は、最適な精度を要求する。ただし、特に、当該セーフティレーザのレンズまたは光学素子、もしくは、温度の変化および当該変化の影響(例:結露またはミストの発生)に対して特に敏感な素子へのダメージによって、当該精度が劣化する場合がある。
【0050】
さらに、当該セーフティレーザが異なる温度の環境内において移動するように意図されているモバイル自律ロボットに組み込まれている場合、例えばオーダーピッキングの状況において、ロボットの他の要素(部材)も、温度の変化および当該変化の影響(例:結露またはミストの発生、もしくは、一部のコンポーネントの変形)に対して敏感である。したがって、本技術は、オンボード電子コンポーネント、電気ギアモータ、リチウムバッテリ、または専用ケーブルクラスタなど、ロボットの各要素に適した特定の保護についての解決策をも提案している。
【0051】
まず、
図1~
図4を参照して、本技術によって提案されているセーフティレーザを保護するための様々な手段について説明する。次いで、
図5および
図6を参照して、これらの保護手段を実現するための保護方法の主要なステップについて説明する。最後に、
図7aおよび
図7bを参照して、自律移動ロボットの他の要素を保護するための手段について説明する。
【0052】
図1は、具体的には光学素子101を有するセーフティレーザ10を例示している。当該光学素子は、1つ以上のレーザビームを出射し、レーザの経路上に配置された1つ以上の物体によって反射された1つ以上の信号を受信するように適合化されている。公知の方法では、反射された信号は、収集され、次いで電気信号へと変換される。次いで、例えば、当該信号に一連の処理が施されることにより、要求されている情報(例:レーザが反射される物体の距離)が当該信号から抽出される。
【0053】
上述の通り、この光学素子は、セーフティレーザの最も重要かつ最も敏感(高感度)なコンポーネントの1つを構成している。したがって、セーフティレーザの光学素子の最適な品質によって、全ての使用状況下において、特にセーフティレーザが異なる温度の環境間を移動する場合に、当該セーフティレーザの精度が大いに保証される。これらの温度変化によって引き起こされうる任意の誤動作を克服するために、セーフティレーザを保護するための様々な手段(特に、当該セーフティレーザの光学素子を保護するための様々な手段)が、本技術に従って具現化されている。これらの手段は、具体的には下記の通りである。
【0054】
-
図2を参照して説明されている、セーフティレーザの内部温度を調整するための手段102;
-
図3を参照して説明されている、セーフティレーザを気密するための手段103;
-
図4を参照して説明されている、セーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するための手段104。
【0055】
上記の様々な保護手段の目的は、主に、セーフティレーザ内部における結露の発生を避けることにある。セーフティレーザの光学素子におけるミストまたは結露のいかなる痕跡も、当該セーフティレーザの性能および精度に即座に影響を及ぼすおそれがあり、当該セーフティレーザのセーフティ機能を果たせなくするおそれがあるためである。
【0056】
1つの解決策は、セーフティレーザが冷却環境内において移動する場合を含めて、例えば一定の温度(例えば25℃)を維持するために、レーザの内部を連続的に加熱することであろう。ただし、この解決策の欠点は、加熱に起因してレーザの特定の部材が変形し、当該レーザの性能の劣化をも引き起こすことにある。このことは、公知のリスクである。
【0057】
そこで、本願の発明者らは、この技術的課題に鑑み、複数の保護手段を最適に組み合わせることにより、レーザの動作に悪影響を与えることなく、当該レーザの内部の湿度レベルおよび温度をリアルタイムで制御できる技術的解決策を見出した。様々な解決策の組み合わせは、これらの様々な解決策の様々な効果を考慮しつつ最適な結果を得るために、多数の計算、試験、および調整の対象であった。このように、様々な組み合わせられた手段によって、セーフティレーザの内部の温度および湿度レベルを調整する技術的な効果を実現することが可能となる。これにより、レーザの光学素子にミストまたは結露が生じることを防止できる。
【0058】
このことを実現するために、技術的データを考慮しつつ、温度および湿度を調整するための特に手段を含む保護手段と、シーリング手段と、アンチミスト手段とが組み合わせられてよい。当該技術的データは、例えば、その値を下回ると空気中に含まれる水蒸気が飽和作用によって表面上にて結露する1つ以上の閾値を支配している、温度値、圧力値、および湿度値である。
【0059】
したがって、セーフティレーザの内部温度を調整するための手段102によれば、当該セーフティレーザの外部の温度にかかわらず、当然セーフティレーザの内部の温度を、当該セーフティレーザの最適動作に対応する温度範囲内において制御することが可能となる。このことを実現するために、
図2に示す通り、第1加熱素子102aが、熱伝導性取付手段を介して、セーフティレーザの第1表面10a(例:光学素子101の上部外面)に取り付けられている。当該加熱素子は、例えば、加熱素子を担持するパッチである。当該パッチは、例えば、(熱伝導性の)アルミニウムスコッチテープによって保持されている。セーフティレーザに対して想定されている使用条件によれば、例えば、当該セーフティレーザが非常に低温の環境内において移動しなければならない場合、第2加熱素子102b(例:第1加熱素子102aと同タイプ)が、当該セーフティレーザの第2表面10b(例:当該セーフティレーザの底部外面)に取り付けられる。
【0060】
セーフティレーザの内部温度を調整するためのこれらの手段102はさらに、所定のトリガ閾値に従って当該手段をトリガする制御手段(不図示)によって制御される。これらのトリガ閾値は、特に、セーフティレーザについて想定されている使用条件および使用される保護手段を考慮したノモグラム(計算図表)に従って決定されている。そして、制御手段は、セーフティレーザに組み込まれた1つ以上の温度センサによって供給される温度値を考慮する。さらに、制御手段は、加熱素子をオンおよびオフする周波数をも考慮する。これにより、セーフティレーザにダメージを与えるおそれがある連続的な加熱を行わないようにすることができ、かつ、所定の慣性を考慮できる(「ターゲット」温度が瞬時に得られないが、加熱が過剰である場合、および/または、長すぎる場合には、同温度を超えることになる)。
【0061】
変形例によれば、熱損失を回避し、ひいては加熱素子のトリガを制限するために、外部断熱材(例:セーフティレーザおよび温度調整手段を包囲するフォーム)も設けられている。
【0062】
最後に、加熱素子の選択および調整、ならびに当該加熱素子のトリガは、セーフティレーザの「製造者」の技術的特性、および、当該セーフティレーザをわずかな程度であっても劣化させない必要性に従って、当該セーフティレーザの脆弱性および精度を考慮に入れている。
【0063】
上述の通り、セーフティレーザの内部温度を調整するための手段102は、気密手段103と思料深く組み合わされている。気密手段103は、当該セーフティレーザがより低温の環境に向かって移動する場合に結露へと変化しうる水蒸気のいかなる侵入をも制限する機能を有している。
【0064】
図3に示す実施形態によれば、気密手段103は、セーフティレーザのフレームとの係合部において光学素子101の周囲に設けられている少なくとも1つのシール103aを含んでいる。光学素子自体の2つのパーツの接合部において、別のシール103bが使用されてもよい。例えば、このシールまたはこれらのシールは、エポキシ樹脂によって、または適した特性を有する任意の他の材料によって作成されている。
【0065】
このシールまたはこれらのシール103a,103bの性能に関する知見は、特に上述の制御手段をパラメータ化することを可能にする。当該シールの性能は、セーフティレーザにおける湿度の制御に寄与するためである。
【0066】
加えて、湿度測定センサ(不図示)がセーフティレーザに設けられている。これにより、湿度レベルがセーフティレーザに多大なダメージを与えるおそれがある所定の閾値を超えた場合に、当該セーフティレーザを保護動作モードにセットできる。この保護動作モードは、例えば、セーフティレーザが組み込まれてその内部に固定されているデバイスのために、適切にアラート(警告)を発することを含んでいる。
【0067】
図示されていない実施形態によれば、保護手段は、アンチミスト手段を含んでいる。当該アンチミスト手段は、特にレーザビームまたはビームが通過した場合に、結露が生じるいかなるリスクをも回避するために、疎水性膜を設けることによる表面処理を含んでいる。例えば、この表面処理は、特定かつ個別の技術的効果を有する2つの個別の溶液の2つの層の形態をとって光学素子に施される特定のアンチミスト処理である。2つの層が組み合わされると、補助的な技術的効果を得ることができる。例えば、プライマー層および帯電防止処理層によれば、最適な疎水性処理を実現できる。
【0068】
したがって、第1溶液S1(例:プライマー)の少なくとも1つの層は、様々な変形例に従って、必要とされる効果、光学素子の構成、および第1溶液S1に特有の塗布条件に応じた所定の基準に従って、当該光学素子の内面の全部または一部に、および/または、当該光学素子の外面の全部または一部に設けられる。さらに、この溶液S1の塗布は、特定の作業方法に適合しており、任意ではあるが好ましくは、以下に詳述する通り、処理されるべき1つ以上の表面を下処理するステップと共に開始し、塗布された第1溶液層を定着させるステップを提供する。
【0069】
例えば、この定着ステップは、下記の通り定められている所定の持続時間および温度パラメータに従って、光学素子を加熱することを含んでいる。
【0070】
最適な効果を確実にするために、次に、第2溶液S2(例:帯電防止製品)の少なくとも1つの層が、第1溶液S1の層の少なくとも一部に設けられる。
【0071】
この例においても、様々な変形例に従って、この第2溶液は、必要とされる効果、光学素子の構成、第2溶液S2に特有の塗布条件、および第1溶液S1の以前の塗布の使用に応じた所定の基準に従って、光学素子の内面の全部または一部に、および/または、当該光学素子の外面の全部または一部に設けられる。この第2溶液S2の塗布は、例えば、下記の通り定められている所定の持続時間および温度パラメータに従って光学素子を加熱することを含んでいる定着ステップを提供する特定の作業方法にも適合している。
【0072】
好ましくは、アンチミスト手段の性能を最適化するために、1つ以上のアンチミスト処理が、光学素子の内部および外面に施される。この結果として、光学素子のより良好な保護がなされ、当該光学素子の最適な動作が保証される。
【0073】
発明者らは、アンチミスト処理の実行時に多大な困難に直面した。このタイプのアンチミスト処理が、非常に脆弱なセーフティレーザレンズに対して施されたことはなかったためである。したがって、このアンチミスト処理を光学素子の内部および外面に施すことの開発および実行は、よりいっそう困難であった。
【0074】
このように、選択される表面処理は、この脆弱性およびレーザの精度に適していなければならなかった。そして、特に、レーザが通過した表面に常に結露が生じず、かつ、最適な精度を維持することを保証するために、当該表面処理の様々な適用ステップが、これらのセーフティレーザに対して具体的に定められた。
【0075】
最後に、第1の変形例によれば、アンチミスト手段は単独で設けられていてよい。あるいは、第2の変形例によれば、アンチミスト手段は、気密手段103と組み合わせて、すなわち、上述の1つ以上のシール103a,103bと組み合せて設けられていてもよい。
【0076】
また、本技術に係るセーフティレーザは、アンチミスト手段、温度を調整するための手段102、および気密手段103と組み合わせて、湿度レベルを調整するための手段104を備えている。例えば、
図4に示す通り、湿気を吸収するために、乾燥剤材料を含んでいる少なくとも1つの部材104(例:シリコンビーズを収容しているサック)が、セーフティレーザの内部に挿入される。特に部材104のサイズおよびセーフティレーザの内部の自由空間に応じて、複数の当該部材がセーフティレーザの内部に挿入されてもよい。
【0077】
次いで、
図5を参照して、セーフティレーザを保護するための方法の主要なステップについて説明する。これらの主要なステップが並列的に実行されることにより、上述の通り使用されている手段の組合せを提供してもよい。
【0078】
保護方法は、セーフティレーザの内部の温度を調整するステップE1を含んでいる。例えば、上述の
図2に示す通り、ステップE1は、セーフティレーザの内部の戦略的な点に配置された加熱素子を制御するステップを特に含んでいる。加熱素子のこの制御は、特に、セーフティレーザの内部に配置された温度センサだけでなく、気密手段を設けるステップE2をも考慮している。ステップE2は、特に光学素子とセーフティレーザのフレームとの間に位置している1つ以上のシールを使用するステップを含んでいる。
【0079】
同様に、セーフティレーザの内部の温度を調整するステップE1は、セーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するステップE3をも考慮している。ステップE2は、例えば、乾燥剤材料によって作成されている1つ以上の部材をセーフティレーザの内部に配置するステップを含んでいる。
【0080】
ステップE2およびステップE3は、例えば、セーフティレーザの製造時に実行される。その一方、ステップE1は、セーフティレーザの使用時に連続的に実行される。
【0081】
さらに、保護された光学素子(すなわち、セーフティレーザにおける従来の光学素子と比較して具体的に修正された光学素子)を供給するために、アンチミスト手段を設けるステップE4も実行される。このステップE4は、セーフティレーザの使用前に、本技術に特有の製造フェーズにおいて実行される。ステップE4は、特に下記のサブステップを含んでいる。
【0082】
-特定のアンチミスト処理の第1溶液(例えばプライマー)の少なくとも1つの層を、光学素子の内面および/または外面に設けるステップE41、および、第1加熱を行うステップE42。これらは、第1層を定着させるために光学素子を要する。この第1溶液が塗布されるゾーン(外面および/または内面、この/これらの表面の全部または一部)、層の厚さ、および加熱のパラメータ(例:30分間に亘り120℃)は、この第1溶液の技術的特性および機能的特性ならびにセーフティレーザのレンズの脆弱性についての制約によって決定される。
【0083】
-特定のミスト防止処理の第2溶液(例:帯電防止溶液)の少なくとも1つの層を、光学素子に設けるステップE43、および、光学素子に対する第2加熱を行うステップE44。この例においても、この第2溶液が塗布されるゾーン(外面および/または内面、この/これらの表面の全部または一部)、層の厚さ、および加熱のパラメータ(例:20分間に亘り130℃)は、第1溶液の塗布の条件、この第2溶液の技術的特性および機能的特性、ならびにセーフティレーザのレンズの脆弱性についての制約によって決定される。
【0084】
サブステップE41に先行して、例えば、処理されるべき表面を下処理するサブステップが存在していてもよい。当該下処理は、例えば、セーフティレーザの光学素子に従来設けられていたワニスの除去、処理されるべき表面の研削/洗浄、および、例えば70℃のアルコールによるこれらの表面の消毒である。
【0085】
同様に、サブステップE44に後続して、処理された表面を仕上げるサブステップが存在していてもよい。当該サブステップは、例えば、2つの溶液の塗布および2つの加熱の後に、処理された表面上に発生した可能性がある任意の粗さおよびバブルを除去することを含む。
【0086】
最後に、光学素子にアンチミスト処理を施すこのステップE4は、セーフティレーザの精度に、(わずかであっても)少しの不具合を必然的に引き起こす。したがって、このように保護されている光学素子を較正するステップをさらに実行して、再度、これらの全ての能力を光学素子に与えることが有用である。このことを実現するために、例えば非常に高度な冷却環境内において、かつ、異なる温度の複数の環境間の変化時における、実際の使用条件下での試験が実施されている。セーフティレーザの制御ソフトウェアは、特に、アンチミスト処理によって保護される光学素子に応じて設定されている。
【0087】
このため、上述の様々な手段およびステップは、組合せおよび相互作用によって、セーフティレーザが異なる温度の環境内において移動する場合に、結露およびミストの発生のリスクから保護された当該セーフティレーザを提供しつつ、特に精度の観点から当該セーフティレーザの最適性能を維持することを可能とする。
【0088】
したがって、保護された当該セーフティレーザは、例えば、オーダーに応じて取得されるべき製品の様々な格納環境におけるオーダーピッキングのために、モバイル自律ロボットに完全に組み込まれてよい。
図7aおよび
図7bは、セーフティレーザ10を有するモバイル自律ロボット1の例を示す。この例におけるレーザビーム1010は、モバイル自律ロボット1の移動の安全性の観点から、その有効性および利点を測定することを可能にする。セーフティレーザによれば、モバイル自律ロボットが当該ロボットの速度に応じて任意の障害物を検出するために、当該ロボットが、(例えば、当該ロボットの周囲170°までの)当該ロボットの環境についてのリアルタイム知識を有することが可能となるためである。したがって、当該ロボットは、制御オペレータまたは他のロボットと安全に共存できるようになる。
【0089】
さらに、当該モバイル自律ロボットの性能も、本願の発明者らによって見出された解決策に従う当該ロボットの他の要素の保護によって、当該使用条件下において強化されうる。
【0090】
このため、電子コンポーネントは、内蔵された産業用コンピュータによって放出される熱に起因する温度に対して調整されたボックスの内部に、可能な限り格納される。その理由は、発明者らは、1つ以上のファン(例:ある方向に回転する場合には空気を遮断するが、他方向に回転する場合には空気を進入させるタイプのファン)の助力により、コンピュータを含む全ての組み込み電子機器が温度を自己調整できることを観察したからである。したがって、ロボットに組み込まれた電子コンポーネントも、当該ロボットが移動する環境内の温度の頻繁な変化に関するいかなる影響からも保護される。
【0091】
また、ロボットに組み込まれている電気ギアモータには、(i)-60℃~+40℃の範囲において変化しうる特定のグリースと、(ii)温度変化に起因する特定のパーツの変形を制限するための加熱素子と、が設けられている。この二重の保護によれば、特に、互いに相対的に移動可能なパーツの摩擦のない動作(フリクションレス動作)、ひいてはギアモータの最適な動作を保証することが可能となる。
【0092】
最後に、ロボットがエネルギーの多大な自律性を伴って動作することを可能にするリチウムバッテリは、断熱されており、かつ、自律的に調整される温度を当該バッテリの内部抵抗を介して測定できるように製造されている。したがって、当該バッテリは、低温において16時間まで動作可能である。これらの内部抵抗は、温度センサに従ってトリガされ、より多くの電池が使用されるほど、より多くの電池が加熱されるという事実を考慮している。最後に、セルの周囲において検出された周囲温度が負である場合、バッテリセルを非アクティブ化するためにセーフティデバイスが使用される。
【0093】
したがって、本発明の様々な実施形態に従って保護されているモバイル自律ロボットは、極端な使用条件下において最適な性能を有する。このため、当該ロボットを使用するオーダーピッキングの生産性をさらに改善するとともに、従来技術と比較して強化されたロバスト性を有するこれらのロボットのメンテナンス性をさらに改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】本技術の実施形態の一般的な原則に係るセーフティレーザを例示している。
【
図2】本技術の実施形態に係るセーフティレーザの内部の温度を調整するための手段を例示している。
【
図3】本技術の実施形態に係るセーフティレーザを気密するための手段を例示している。
【
図4】本技術の実施形態に係るセーフティレーザの内部の湿度レベルを調整するための手段を例示している。
【
図5】本技術の一般的な原理に係るセーフティレーザを保護するための方法の主要なステップを例示している。
【
図6】本技術の実施形態に係る、
図5におけるセーフティレーザを保護するための方法について、アンチミスト手段を適用するサブステップを例示している。
【
図7a】本技術の一般的な原則に係るモバイル自律ロボットの例の外観図を示す。
【
図7b】本技術の一般的な原則に係る、
図7aにおけるモバイル自律ロボットの例の平面図を示す。
【国際調査報告】