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特表2024-510314アミトリプチリン及びアルカリ性水相を含む局所用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】アミトリプチリン及びアルカリ性水相を含む局所用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240228BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240228BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P29/00
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557355
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 FR2022050461
(87)【国際公開番号】W WO2022195214
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2102760
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519382570
【氏名又は名称】アルゴセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ピコー フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD09F
4C076DD46F
4C076EE27
4C076EE31
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206KA06
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA83
4C206NA10
(57)【要約】
本発明は、塩基形態のアミトリプチリンをベースとする油相とアルカリ性水相とを含む水中油型エマルジョン形態の局所用医薬組成物に関する。本発明は、神経障害性疼痛及び肢端紅痛症の治療における局所使用のための本発明による組成物にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルジョン形態の局所適用用医薬組成物であって、
(i)少なくとも塩基形態のアミトリプチリンを、前記組成物の総質量に対して1~30質量%の範囲の総含有量で含有する油相、及び
(ii)pHが7以上である水相
を含む組成物。
【請求項2】
アミトリプチリンの総含有量が、前記組成物の総質量に対して1~10質量%、好ましくは1~9質量%、より好ましくは1~8質量%、更により好ましくは1~7質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
油滴の体積平均サイズが1nm~50μmの範囲、好ましくは10nm~20μmの範囲、より好ましくは100nm~10μmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水相のpHが、8以上、好ましくは8~13、より好ましくは8.5~13、更により好ましくは9~12.5、より更に良好には9~12の範囲であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン界面活性剤から選択されるものを更に含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、ソルビタンエステル、グリセロールエステル、及びこれらの混合物から選択される、任意にポリオキシアルキレン化された少なくとも1つの非イオン界面活性剤を更に含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1つのC2~C8ポリオールを更に含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも1つの増粘剤、好ましくはセルロース系ポリマーから選択されるものを更に含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
含水量が、前記組成物の総質量に対して75質量%以上、好ましくは75~95質量%の間、より好ましくは75~90質量%の間であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
塩基形態のアミトリプチリンが、前記油相を構成することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも1つの液体脂肪物質、好ましくは炭化水素、8~40個の炭素原子を含む脂肪エステル、シリコーン、及びこれらの混合物から選択されるものを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬品として使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、好ましくは化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛、帯状疱疹後神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、より好ましくは化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
肢端紅痛症の治療における局所使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基形態のアミトリプチリンをベースとする油相とアルカリ性水相とを含む水中油型エマルジョン形態の局所用医薬組成物に関する。
本発明は、神経障害性疼痛及び肢端紅痛症の治療における局所使用のための本発明による組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
末梢神経障害性疼痛は、末梢神経終末又は侵害受容器などの神経構造への損傷に起因し、これにより刺激に対して極めて敏感になり、刺激がない時にインパルスを生じることがある。
こうした損傷は、外傷や、糖尿病、帯状疱疹、及び進行がんなどの疾患、化学療法、又は化学熱傷といった様々な理由に起因する可能性がある。末梢神経の病変は、表在(灼熱感又は疼痛を伴う冷たさ)又は深部(圧迫感又は締め付け感)の持続的な自発痛、臨床検査では、感覚鈍麻、若しくは反対に痛覚過敏(侵害刺激に対する反応亢進)、アロディニア(疼痛をもたらさない刺激による疼痛)、又はヒペルパチー(通常繰り返される非侵害刺激に対する持続性疼痛)を伴う発作性疼痛(感電、穿刺)の存在を特徴とする病態に至る可能性がある。神経障害は、感覚異常、痺れ、及び掻痒などの感覚的徴候を伴うこともある。
化学療法誘発性神経障害は特によく見られ、日常生活に支障を来す上に治療が困難である。こうした障害は用量依存性である。末梢神経損傷は、化学療法毒性に関連する神経学的損傷の大部分を占める。これらは、軸索への直接的な毒性損傷又は脱髄の結果であり、血液毒性に次いで最も頻度の高い限定要因である。
【0003】
Algotherapeutixが以前に出願した国際公開第2018/197307号、及び論文「Rossignol,J.et al.High concentration of topical amitriptyline for treating chemotherapy-induced neuropathies.Support Care Cancer 27,3053-3059(2019)」は、高濃度のアミトリプチリンを含有し、pHがわずかに酸性であるクリーム形態の医薬組成物の、末梢神経障害性疼痛の治療における局所使用について記載している。
Algotherapeutixが以前に出願した仏国特許出願公開第2003425号明細書(登録番号)は、高濃度のアミトリプチリンを含有し、pHが酸性であるゲル形態の医薬組成物の、末梢神経障害性疼痛の治療における局所使用について記載している。
【発明の概要】
【0004】
疼痛の治療、特に末梢神経障害性疼痛、及び特に化学療法誘発性神経障害性疼痛の治療での皮膚適用において、有効性が良好な、及び場合によっては有効性が向上した、アミトリプチリンをベースとする新規組成物の開発及び提供が本当に必要とされている。
更に、あらゆる三環系抗うつ薬と同様にアミトリプチリンは、特に経口投与した場合に、多くの望ましくない作用(動脈性低血圧、鎮静、QT延長)をもたらす可能性とがある。
従って、疼痛治療での皮膚適用において、望ましくない作用のリスクを低減しながらも、良好な有効性を維持し、場合によっては有効性を向上させるために、低濃度のアミトリプチリンを含む新規組成物の処方にも関心が持たれている。
驚くことに、組成物の総質量に対して1~30質量%の塩基形態のアミトリプチリンを含有する油相と、pHが7以上である水相とを含む水中油型エマルジョン形態の局所適用用医薬組成物が、疼痛、特に化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛(CIPN,chemotherapy-induced peripheral neuropathy)、帯状疱疹後神経障害性疼痛(PHN,post herpetic neuralgia)、又は糖尿病性神経障害性疼痛(DPN,diabetic peripheral neuropathy)を効果的に治療できることが発見された。
特に、この発見が更に驚きであることに、予想に反して、アミトリプチリンをベースとする組成物のpHをアルカリ性に上昇させても、アミトリプチリンを沈殿させる作用が見られなかった。更にこの組成物は、アルカリ性水相に分散した塩基形態のアミトリプチリンの液滴を含むエマルジョン形態である。
【0005】
従って、本発明の目的は、
(i)少なくとも塩基形態のアミトリプチリンを、組成物の総質量に対して1~30質量%の範囲の総含有量で含有する油相、及び
(ii)pHが7以上である水相
を含む、水中油型エマルジョン形態の局所適用用医薬組成物である。
本発明による医薬組成物は、皮膚からアミトリプチリンが浸透しやすく、そのためアミトリプチリンが低濃度でも治療有効性が良好であることがわかっている。
特に、pHが7以上、より好ましくはpHが8以上、更に良好にはpHが8.5~12である水相を有する本発明による組成物は、酸性pHの水相を有する類似の組成物よりも、皮膚からのアミトリプチリンの浸透が良好であることが認められている。
加えて、本発明による組成物は、組成物の総質量に対するアミトリプチリン濃度が、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~9質量%の場合に良好な生物学的利用能を有する。
更に、本発明による組成物は賦形剤を殆ど含まず、これにより組成物の局所忍容性が良好となる(アレルギーのリスク及び刺激作用のリスクが小さい)。
本発明による組成物は使用特性にも優れ、即ち、組成物は無臭であり、触感が良い。
【0006】
特に驚くべきことに、本発明による医薬組成物により、肢端紅痛症の効果的な局所治療が可能であったことも発見されている。
肢端紅痛症は、両下肢に紅斑、熱、及び灼熱痛が対称的に生じる珍しい発作性肢端症候群である。この希少疾患については、特に「Leroux MB.Erythromelalgia:a cutaneous manifestation of neuropathy? An Bras Dermatol.2018;93(1):86-94」など多くの科学論文に記載されている。
本発明による組成物の局所(皮膚)適用により、肢端紅痛症及び神経障害性疼痛、より具体的には、化学療法誘発性、帯状疱疹後、及び糖尿病性末梢神経障害性疼痛などの末梢神経障害性疼痛を効果的に治療できる。
アミトリプチリンをベースとする組成物は、疼痛の緩和に加え、健康な皮膚に回復させることもわかっている。
更に、本発明による組成物の局所適用には副作用が殆どなく、全くないことすらある。特に、組成物を塗布した部位に皮膚刺激が認められない。
本発明のもう1つの目的は、本発明による組成物の医薬品としての使用、より具体的には、末梢神経障害性疼痛などの神経障害性疼痛の治療における、及び肢端紅痛症の治療における局所使用である。
本発明のその他の目的、特徴、態様、及び利点は、本明細書及び以下の実施例を読むことで更に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、別段の指示がない限り、
- 「少なくとも1つ」という語句は、「1つ又は複数の」という語句と等価であり、これに置き換えることができる。
- 「A~Bの間である」という語句は、「A~Bの範囲である」という語句と等価であり、これに置き換えることができ、またその境界が含まれることを意味する。
- 「ポリオキシアルキレン化」という語句は、本発明の文脈では、-(O-アルキル)n-単位に対応し、nは2~200、好ましくは2~40、より好ましくは2~20まで変化する整数である。
- 「ポリオキシエチレン化」という語句は、本発明の文脈では、-(O-CH2CH2n-に対応し、nは2~200、好ましくは2~40、より好ましくは2~20まで変化する整数である。
【0008】
本発明に従って、組成物は水中油型エマルジョン形態である。本発明による組成物は、ゲル形態ではない。
好ましくは、本発明による水中油型エマルジョンは、油滴の体積平均サイズが1nm~50μmの範囲である。
より好ましくは、本発明による組成物中の油滴の体積平均サイズは10nm~20μm、更により好ましくは100nm~10μmの範囲である。
特に、油滴の体積平均サイズは、周知の動的光散乱(DLS)法を用いて測定し得る。この測定に使用できる装置として、Zeiss社製Axio顕微鏡、又はMalvern社製Mastersizer3000、若しくは標準レーザー(出力:4mW、波長:633nm)を備えたZetasizer Nano ZS粒度計が挙げられる。この装置には、相関器(25ns~8,000s、最大4,000チャンネル)も装備されている。
【0009】
アミトリプチリン
本発明による組成物は、塩基形態のアミトリプチリンをベースとする油相を含む。本発明に従って、総アミトリプチリン含有量は、組成物の総質量に対して1~30質量%の範囲である。
アミトリプチリンは以下の式(I)を有する。
【化1】
【0010】
有利には、本発明による組成物中に存在するアミトリプチリンは塩基形態である。即ち、本発明による組成物中に存在するアミトリプチリンは塩化されていない。更に言い換えると、本発明による組成物中に存在するアミトリプチリンの窒素原子はプロトン化されていない。
好ましくは、塩基形態のアミトリプチリンは、本発明による組成物の油相を構成する。
本発明の特定の実施形態に従って、本発明による組成物は、アミトリプチリン以外の1つ又は複数の液体脂肪物質(複数可)を更に含み得る。
好ましくは、アミトリプチリンの総含有量は、組成物の総質量に対して1~10質量%、より好ましくは1~9質量%、更により好ましくは1~8質量%、更に良好には1~7質量%の範囲である。
特に、アミトリプチリンの総含有量が、本発明による組成物の総質量に対して1~10質量%、良好には1~9質量%、更に良好には1~8質量%、より更に良好には1~7質量%の範囲である場合、皮膚からのアミトリプチリンの浸透がより良好であることが観察されている。
【0011】

本発明による組成物は水を含む。好ましくは、総含水量は、組成物の総質量に対して75質量%以上、より好ましくは75~95質量%の間、更により好ましくは75~90質量%の間である。
【0012】
界面活性剤
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を更に含む。
本発明に従って使用できる界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性又は双性界面活性剤、非イオン界面活性剤、及びこれらの混合物から選択し得る。
より好ましくは、本発明に従って使用できる界面活性剤(複数可)は、非イオン界面活性剤から選択し得る。
本発明に従って使用できる非イオン界面活性剤は、アルキルポリグルコシド(APG)、オキシアルキレン化グリセロールエステル、オキシアルキレン化脂肪酸及びソルビタンエステル、任意にステアリン酸PEG-100/ステアリン酸グリセリル混合物(例えば、Arlacel165の名称でICI社から販売されている)などの脂肪酸とグリセロールエステルとの組み合わせでポリオキシアルキレン化脂肪酸エステル(特に、ポリオキシエチレン化及び/又はポリオキシプロピレン化)、オキシアルキレン化糖エステル、並びにこれらの混合物から選択し得る。
アルキルポリグルコシドとして、6~30個の炭素原子、好ましくは8~16個の炭素原子を含むアルキル基と、好ましくは1.2~3のグルコシド単位を含むグルコシド基とを含むものが挙げられる。例えば、アルキルポリグルコシドは、Mydol 10(登録商標)の名称で花王ケミカル社から、又はPlantacare 2000UP(登録商標)の名称でCognis社から販売されている製品のようなデシルグルコシド(アルキル-C9/C11-ポリグルコシド(1.4));Plantacare KE3711(登録商標)の名称でCognis社から販売されている製品のようなカプリリル/カプリルグルコシド;Plantacare 1200UP(登録商標)の名称でCognis社から販売されている製品のようなラウリルグルコシド;Plantacare 818UP(登録商標)の名称でCognis社から販売されている製品のようなココグルコシド;Plantacare 810UP(登録商標)の名称でCognis社から販売されている製品のようなカプリリルグルコシド;及びこれらの混合物から選択し得る。
ポリオキシアルキレン化グリセロールエステルは、特に、グリセリル及び脂肪酸エステルのポリオキシエチレン化誘導体、並びにそれらの水素化誘導体である。これらのオキシアルキレン化グリセロールエステルは、例えば、グリセリルのエステル並びに水素化及びオキシエチレン化脂肪酸、例えばRewoderm LI-S80の名称でGoldschmidt社から販売されているPEG-200水素化グリセリルパルメート;オキシエチレン化グリセリルココエート、例えばTegosoft GCの名称でGoldschmidt社から販売されているPEG-7グリセリルココエート、及びRewoderm LI-63の名称でGoldschmidt社から販売されているPEG-30グリセリルココエート;オキシエチレン化ステアリン酸グリセリル;並びにこれらの混合物から選択できる。
特に、オキシアルキレン化糖エステルは、脂肪酸及び糖エステルのポリエチレングリコールエーテルである。例えば、これらのオキシアルキレン化糖エステルは、Glucamate DOE120の名称でAmerchol社から販売されているジオレイン酸PEG-120メチルグルコースなどのオキシエチレン化グルコースエステルから選択し得る。
好ましくは、本発明に従って使用できる非イオン界面活性剤のアルキレンオキシドのモル数は、2~400、より好ましくは4~250まで様々である。
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つの非イオン界面活性剤;より好ましくは、ソルビタンエステル、グリセロールエステル、及びこれらの混合物から選択される、任意にポリオキシアルキレン化された非イオン界面活性剤;更により好ましくはポリオキシアルキレン化グリセロールエステルの中から;更により良好には水素化及びポリオキシエチレン化グリセリルエステル及び脂肪酸、ポリオキシエチレン化グリセリルココエート、ポリオキシエチレン化ステアリン酸グリセリル、並びにこれらの混合物の中から選択される非イオン界面活性剤を含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つの界面活性剤を含む場合、界面活性剤(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~4質量%の間である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つの界面活性剤を含む場合、非イオン界面活性剤(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~4質量%の間である。
【0013】
ポリオール
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つのC2~C8ポリオールを更に含む。
本発明の文脈では、「C2~C8ポリオール」は、任意に1個又は複数の酸素原子で中断された、かつ異なる炭素原子が付着した少なくとも2個の遊離ヒドロキシル基(-OH)を有するC2~C8炭化水素鎖からなる有機化合物と理解すべきであり、この化合物は、環式又は非環式、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和で、室温(25℃)及び大気圧(即ち1.013×105Pa)で液体状態である可能性がある。
好ましくは、本発明によるC2~C8ポリオール(複数可)は非環式で非芳香族である。
本発明によるC2~C8ポリオールは、構造中に2~8個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、より好ましくは2~5個の炭素原子を含む。
より具体的には、本発明に従って使用できるポリオール(複数可)は、2~10個のヒドロキシ基、より好ましくは2~5個のヒドロキシ基、より好ましくは2~3個のヒドロキシ基を含む。
好ましくは、本発明に従って使用できる前記C2~C8ポリオール(複数可)は、C3~C6ポリオール、エチレングリコール、及びこれらの混合物から選択される。
本発明の好ましい実施形態に従って、本発明に従って使用できる前記C2~C8ポリオール(複数可)は、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ペンタン-1,2-ジオール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、及びこれらの化合物の混合物から選択され、より好ましくは、組成物は少なくともプロピレングリコールを含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つのC2~C8ポリオールを含む場合、C2~C8ポリオール(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~15質量%の間、より好ましくは0.5~10質量%の間、更により好ましくは1~6質量%の間、更に良好には3~6質量%の間である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つのC2~C8ポリオールを含む場合、総プロピレングリコール含有量は、組成物の総質量に対して0.1~15質量%の間、より好ましくは0.5~10質量%の間、更により好ましくは1~6質量%の間、更に良好には3~6質量%の間である。
【0014】
増粘剤
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つの増粘剤を更に含む。
より好ましくは、増粘剤(複数可)は増粘ポリマーである。
本発明に従って、「増粘ポリマー」は、0.05質量%の濃度で存在することにより、それらが導入された化粧料組成物の粘度を、室温(25℃)、大気圧、及び1s-1のせん断速度で、少なくとも20cps(20mPa.s)、好ましくは少なくとも50cps(50mPa.s)増加させるポリマーと理解すべきである(粘度はHaake R600レオメーター又はこれと同等の円錐・平板型粘度計を用いて測定し得る)。
例として、増粘剤は、アクリル酸又はメタクリル酸の架橋ホモポリマー又はコポリマー、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋ホモポリマー及びこれらの架橋アクリルアミドコポリマー、アクリル酸アンモニウムのホモポリマー又はアクリル酸アンモニウムのコポリマー、並びにアクリルアミド、セルロース系ポリマー、並びにこれらの混合物で作られていると言及し得る。
アクリル酸の架橋ホモポリマーの中では、糖系統のアルコール、アリルエーテルと架橋されたもの、例えば、CARBOPOL980、981、954、2984、及び5984の名称でNOVEON社から販売されている製品、又はSYNTHALEN M及びSYNTHALEN Kの名称で3VSAから販売されている製品が挙げられる。これらのポリマーのINCI名はCarbomerである。増粘ポリマーは、AQUA SF1の名称でNOVEON社から販売されているポリマーなどの(メタ)アクリル酸の架橋コポリマーでもあり得る。
【0015】
更により好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つのセルロース系ポリマーを更に含む。
本発明に従って、「セルロース系」ポリマーは、構造中にβ-1,4結合で結合されたグルコース残基の鎖を有する置換又は非置換の任意の多糖化合物と理解すべきであり、セルロース誘導体は、非置換セルロース以外に、陰イオン、陽イオン、両性又は非イオンであり得る。
従って、本発明に従って使用できるセルロース系ポリマーは、微結晶形態を含む非置換セルロース、及び置換セルロースから選択し得る。
より好ましくは、本発明に従って使用できるセルロース系ポリマーは、構造中にC10~C30脂肪酸側鎖を含まない。
好ましくは、本発明に従って使用できるセルロース系ポリマー(複数可)は、平均分子量が5,000~1,500,000の間、より好ましくは50,000~800,000の間、更により好ましくは400,000~800,000の間である。
【0016】
本発明によるセルロース系ポリマーの中では、セルロースエーテル、セルロースエステル、及びセルロースエーテルエステルの区別が可能である。
セルロースエステルの中では、無機セルロースエステル(硝酸セルロース、硫酸セルロース、又はリン酸セルロース等)、有機セルロースエステル(セルロースモノアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアミドプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースアセテートトリメリテート等)、並びにセルロースアセテートブチレートサルフェート及びセルロースアセテートプロピオネートサルフェートなどの混合有機/無機セルロースエステルが挙げられる。セルロースエーテルエステルの中では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びエチルセルロースサルフェートが挙げられる。
非イオン性セルロースエーテルの中では、(C1~C4)アルキルセルロース、例えばメチルセルロース及びエチルセルロース(例えば、DOW CHEMICAL社製のEthocel standard 100 Premium);(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキルセルロース、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、AQUALON社製のNatrosol 250HHR)、及びヒドロキシプロピルセルロース(例えば、AQUALON社製のKlucel EF);混合(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキル-(C1~C4)アルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、DOW CHEMICAL社製のMethocel E4M)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース(例えば、AKZO NOBEL社製のBermocoll E481FQ)、及びヒドロキシブチルメチルセルロースが挙げられる。
陰イオン性セルロースエーテルの中では、(ポリ)カルボキシ(C1~C4)アルキルセルロース及びこれらの塩が挙げられる。一例として、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース(例えば、AQUALON社製のBlanose 7M)、及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、並びにこれらのナトリウム塩が挙げられる。
陽イオン性セルロースエーテルの中では、陽イオン性セルロース誘導体、例えば水溶性第4級アンモニウムモノマーでグラフトしたセルロース系コポリマー又はセルロース誘導体、特に米国特許第4131576号明細書に記載されている、例えば、特にメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルミドプロピルトリメチルアンモニウム、又はジメチルジアリルアンモニウム塩でグラフトしたヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロースのような(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキルセルロースが挙げられる。より具体的には、この定義に合致する市販の製品は、「Celquat(登録商標)L200」及び「Celquat(登録商標)H100」の名称でNational Starch社から販売されている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態に従って、セルロース系ポリマー(複数可)は、構造中にC10~C30脂肪酸側鎖を含まないセルロース系ポリマーから;より好ましくはセルロースエーテルの中から;更により好ましくは非イオン性セルロースエーテルの中から;更に良好には(a)(C1~C4)アルキルセルロース、例えばメチルセルロース及びエチルセルロース、(b)(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキルセルロース、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、(c)混合(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキル-(C1~C4)アルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びヒドロキシブチルメチルセルロース、並びに(d)これらの混合物の中から選択される。
より優先的には、本発明による組成物は、少なくとも1つの(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキルセルロース、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース;更に良好には、少なくともヒドロキシエチルセルロースを含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つの増粘剤を含む場合、増粘剤(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~2.5質量%の間である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つのセルロース系ポリマーを含む場合、セルロース系ポリマー(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~2.5質量%の間である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つのセルロース系ポリマーを含む場合、(ポリ)ヒドロキシ(C1~C4)アルキルセルロース(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~2.5質量%の間である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1つのセルロース系ポリマーを含む場合、ヒドロキシエチルセルロースの総含有量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%の間、より好ましくは0.5~5質量%の間、更により好ましくは1~2.5質量%の間である。
【0018】
液体脂肪物質
本発明による組成物は、場合によっては少なくとも1つの液体脂肪物質を更に含み得る。
本発明の文脈では、「脂肪物質」は、30℃及び大気圧(760mmHg、又は1.013×105Pa)で水に不溶、即ち、溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満(g/mL水)の有機化合物と理解すべきである。
一般に、液体脂肪物質は、例えばクロロホルム、エタノール、又はベンゼンのように、同一の温度及び圧力条件下で有機溶剤に可溶である。
本発明の文脈では、「液体脂肪物質」は、25℃及び大気圧(760mmHg、又は1.013×105Pa)で液体状態である脂肪物質と理解すべきである。
好ましくは、25℃の温度及び1s-1のせん断速度で、2Pa.s以下、更に良好には1Pa.s以下、更により良好には0.1Pa.s以下の粘度を有する。
本発明による組成物で使用できる液体脂肪物質は、一般にオキシアルキレン化されておらず、好ましくはCOOHカルボン酸機能を持たない。
有利には、本発明による液体脂肪物質は、炭化水素、好ましくは8~40個の炭素原子を含む脂肪アルコール、好ましくは8~40個の炭素原子を含む脂肪エステル、好ましくは8~40個の炭素原子を含む脂肪エーテル、シリコーン、及びこれらの混合物から選択し得る。
【0019】
液体炭化水素は、炭素原子及び水素原子のみからなり、25℃の温度及び大気圧(760mmHg、即ち1.013×105Pa)で液体であり、鉱物又は植物又は合成由来の炭化水素と理解すべきである。
より具体的には、液体炭化水素は以下から選択される。
- 直鎖又は分岐、任意に環状のC6~C16アルカン。例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、及びイソデカンのようなヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
- 鉱物、動物、又は合成由来で、16個超の炭素原子を有する直鎖又は分岐炭化水素、例えば、パラフィン又はワセリン油、ワセリン油、ポリデセン、例えば日油株式会社からParleam(登録商標)の名称で販売されているものなどの水素化ポリイソブテン、スクワラン。
【0020】
液体脂肪アルコールは、30℃及び大気圧(760mmHg、即ち1.013×105Pa)で液体である、非グリセロール化及び非オキシアルキレン化脂肪アルコールと理解すべきである。
好ましくは、本発明の液体脂肪アルコールは、8~30個の炭素原子、更に良好には8~20個の炭素原子を含む。
本発明の液体脂肪アルコールは飽和又は不飽和であり得る。
好ましくは、飽和液体脂肪アルコールは分岐状である。これらは、場合によっては構造中に少なくとも1つの芳香環を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、これらは非環式である。
より具体的には、本発明の液体飽和脂肪アルコールは、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、及び2-ヘキシルデカノールから選択される。
液体不飽和脂肪アルコールは、構造中に少なくとも1つの二重結合又は三重結合、好ましくは1つ又は複数の二重結合を有する。複数の二重結合が存在する場合、結合は好ましくは2又は3個であり、これらは共役結合であってもなくてもよい。
これらの不飽和脂肪アルコールは直鎖状又は分岐状であり得る。
これらは、場合によっては構造中に少なくとも1つの芳香環を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、これらは非環式である。
より具体的には、本発明の液体不飽和脂肪アルコールは、オレイン酸(又はオレイル)アルコール、リノール酸(又はリノレイル)アルコール、リノレン酸(又はリノレニル)アルコール、及びウンデシレンアルコールから選択される。
【0021】
液体脂肪エステルは、30℃及び大気圧(760mmHg、即ち1.013×105Pa)で液体であり、脂肪酸及び(ポリ)グリセロールモノエステル(複数可)とは異なる脂肪酸及び/又は脂肪アルコールから得られるエステルと理解すべきである。
好ましくは、液体脂肪エステルは、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐、C1~C26脂肪族モノ酸又はポリ酸、及び飽和又は不飽和、直鎖又は分岐、C1~C26脂肪族モノアルコール又はポリアルコールの液体エステルであり、液体エステルの炭素原子の総数は、10個以上である。
好ましくは、モノアルコールの脂肪エステルの場合、本発明のエステルが得られるアルコール又は酸のうち少なくとも1つは分岐状である。
モノ酸及びモノアルコールのモノエステルの中では、パルミチン酸エチル及びパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、ラウリン酸エチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、オクタン酸エチル、カプリン酸エチル、ネオペンタン酸イソデシル、及びネオペンタン酸イソステアリルが挙げられる。
ジ又はトリカルボン酸のC4~C22エステル、並びにモノ、ジ、又はトリカルボン酸のC1~C22アルコール及びエステル、並びにC4~C26ジ、トリ、テトラ、又はペンタヒドロキシル化非糖アルコールも使用し得る。
また、グリセロールを有する二酸又は三酸の天然又は合成エステルも使用が可能である。
これらの中では、植物油又は植物由来の油が挙げられる。
本発明の組成物で液体脂肪エステルとして使用できる植物由来の油又は合成トリグリセリドとして、例えば、植物又は合成由来のトリグリセリド油、例えばヘプタン酸若しくはオクタン酸のトリグリセリドのような6~30個の炭素原子を含む脂肪酸の液体トリグリセリド、又は、例えばヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、カボチャ油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アララ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、アボカド油、オリーブ油、菜種油、コプラ油、小麦胚芽油、甘扁桃油、アプリコット油、ベニバナ油、ククイナッツ油、カメリナ油、タマヌ油、ババス油、プラカシー油、STEARINERIES DUBOIS社から販売されている物、又はMiglyol(登録商標)810、812、及び818の名称でDYNAMIT NOBEL社から販売されている物のようなカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油、シアバター油が挙げられる。
【0022】
本発明による組成物で使用できる油(複数可)は、シリコーンからも選択し得る。
好ましくは、液体シリコーン(複数可)は、ポリジアルキルシロキサン、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)、並びにアミノ基、アリール基、及びアルコキシ基から選択される少なくとも1つの官能基を含むオルガノ変性ポリシロキサンから選択される。
オルガノポリシロキサンは、Walter NOLLの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968)(Academie Press)に詳細に定義されている。
本発明に従って使用できるオルガノ変性シリコーンは、上記で定義するシリコーンであり、構造中に、炭化水素基を介して固定化した1つ又は複数のオルガノ官能基を含む。
オルガノ変性シリコーンは、ポリジアリールシロキサン、特にポリジフェニルシロキサン、及び前述のオルガノ官能基で官能化したポリアルキルアリールシロキサンであり得る。
【0023】
本発明による液体脂肪物質(複数可)は、アミトリプチリン及び前述の界面活性剤とは異なる。
本発明の特定の実施形態に従って、組成物は、炭化水素、8~40個の炭素原子を含む脂肪エステル、シリコーン、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの液体脂肪物質を更に含む。
好ましくは、液体脂肪物質(複数可)の総含有量は、組成物の総質量に対して0~20質量%の間、より好ましくは0~10質量%の間である。
より好ましくは、本発明による組成物は、アミトリプチリン及び前述の界面活性剤とは異なる任意の液体脂肪物質を含まない。
本発明による組成物は、1つ又は複数の香料及び/又は抗菌剤のような、医薬品で一般に使用される添加剤を更に含有し得る。
抗菌剤として、好ましくは、パラベン、例えばメチルパラベン又はプロピルパラベン、フェノキシエタノール、及びイソチアゾリノン、より好ましくはイソチアゾリノン、例えばベンゾイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、及び/又はメチルクロロイソチアゾリノンが使用される。
これらの添加剤は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0~20質量%の範囲で存在し得る。
当業者であれば、これらの添加剤候補及び量を、本発明の組成物の特性に影響を及ぼさないよう確実に選択するであろう。
【0024】
本発明による組成物の水相のpHは7以上である。
好ましくは、水相のpHは8以上、より好ましくは8~13、更により好ましくは8.5~13、更に良好には9~12.5、より更に良好には9~12の範囲である。
本発明の変形例に従って、本発明による組成物のpHは7~8の間である。
pHは、一般に使用されるアルカリ化剤を使用して所望の値に調整し得る。アルカリ化剤の中では、例として、アンモニア、アルカノールアミン、水酸化鉱物、又は有機水酸化物が挙げられる。本発明による組成物は、場合によっては、前述した1つ又は複数のアルカリ化剤を含み得る。
pHの調整のために、本発明による組成物は、場合によっては1つ又は複数の緩衝液を含み得る。
例として、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、ソルビン酸塩、酢酸塩、又はトリスEDTA緩衝液が挙げられる。これらの緩衝液は、特にFischer社又はVWR社から販売されている。
【0025】
本発明の好ましい実施形態に従って、組成物は以下を含む。
(i)少なくとも塩基形態のアミトリプチリンを、組成物の総質量に対して1~10質量%、好ましくは1~9質量%、より好ましくは1~8質量%、更により好ましくは1~7質量%の範囲の総含有量で含有する油相、及び
(ii)pHが7以上である水相。
【0026】
本発明の特定の実施形態に従って、組成物は以下を含む。
(i)組成物の総質量に対して総含有量が1~10質量%、好ましくは1~9質量%、より好ましくは1~8質量%、更により好ましくは1~7質量%の範囲である塩基形態のアミトリプチリンからなる油相、及び
(ii)pHが7以上である水相。
【0027】
本発明の一変形例に従って、組成物は以下を含む。
(i)少なくとも塩基形態のアミトリプチリンを、組成物の総質量に対して1~10質量%、好ましくは1~9質量%、より好ましくは1~8質量%、更により好ましくは1~7質量%の範囲の総含有量で含有する油相、及び
(ii)pHが7~8の間である水相。
【0028】
本発明は、局所使用のための前述の組成物である。本発明による組成物は、局所投与に適した組成物である。
また、本発明の別の目的は、医薬製品としての使用のための前述の本発明による組成物である。
本発明の別の目的は、神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、好ましくは末梢神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、より好ましくは化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛、帯状疱疹後神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛の治療における局所使用のための、更により好ましくは化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛の治療における局所使用のための前述の本発明による組成物である。
本発明の別の目的は、肢端紅痛症の治療における局所使用のための前述の本発明による組成物である。
本発明は、化学療法によって誘発されやすい神経障害性疼痛の緩和又は予防に使用するための前述の本発明による組成物にも関する。
より具体的には、本発明は、化学療法セッションを含むがんの治療で使用するための前述の本発明による組成物に関し、組成物は、化学療法セッション間に、化学療法によって誘発されやすい神経障害性疼痛を緩和又は予防するために局所的に投与される。
以下の実施例で、本発明による組成物及び本組成物の利点を説明する。ただし、これらは決して本発明を限定するものではなく、本発明を説明するものにすぎない。
【実施例
【0029】
以下の表に記載する成分を用いて、以下の本発明による組成物Aを調製した。量は質量%で示す。
【表1】
【0030】
特に、アミトリプチリンをベースとする組成物のpHを7超に上昇させると、疼痛の治療における皮膚適用において良好な有効性を維持し、場合によっては有効性を向上させることができる一方で、アミトリプチリンの濃度を低下させ、それにより望ましくない作用のリスクを低減できることが観察されている。
本発明による組成物は、アミトリプチリンの含有量が少なくても、皮膚からのアミトリプチリンの浸透に優れていることも観察されている。
【国際調査報告】