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  • 特表-タイヤコード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】タイヤコード
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/48 20060101AFI20240228BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
D02G3/48
B60C9/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557403
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2022001204
(87)【国際公開番号】W WO2022203183
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0038234
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユ,スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン ホ
【テーマコード(参考)】
3D131
4L036
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA44
3D131AA45
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA11
3D131BA20
3D131BC09
3D131BC31
3D131DA01
3D131DA32
3D131DA54
3D131LA28
4L036MA05
4L036MA33
4L036MA37
4L036PA03
4L036PA21
4L036PA46
4L036UA07
(57)【要約】
本発明はタイヤコードに関する。前記タイヤコードは、再生ポリエチレンテレフタレートを含有したポリエステル延伸糸を含む。前記タイヤコードは、環境に優しい素材を含みながらも産業的に要求される水準を充足する優れた物性を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.9dl/g~1.5dl/gの固有粘度と、カルボン酸成分の全体に対して1.0モル%未満のイソフタル酸含量とを有する再生ポリエチレンテレフタレートを、25重量%以上含有したポリエステル延伸糸を含み、
ASTM D 885の標準試験法による7.0g/d~8.0g/dの引張強度および15.0%~17.5%の切断伸度を有する、
タイヤコード。
【請求項2】
前記再生ポリエチレンテレフタレートは、前記再生ポリエチレンテレフタレート中のジカルボン酸成分の全体に対する0モル%~0.95モル%のイソフタル酸含量を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項3】
前記タイヤコードは、88.5%以上の強力利用率{=[(前記タイヤコードの引張強度)/(前記ポリエステル延伸糸の引張強度)]×100}を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項4】
前記タイヤコードは、ASTM D 885の標準試験法によって4.5g/dの荷重下で測定された3.5%~5.0%の中間伸度を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項5】
前記タイヤコードは、ASTM D 885の標準試験法(試片の長さ250mm、177℃、2分、0.01g/dの荷重)による3.0%~6.0%の乾熱収縮率を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項6】
前記タイヤコードは、1000デニール~9000デニールの総繊度を有するローコード(raw-cord)を含む、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項7】
前記ポリエステル延伸糸は、30重量%~100重量%の前記再生ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項8】
前記ポリエステル延伸糸は、8.0g/d~9.0g/dの引張強度および14.0%~17.0%の切断伸度を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項9】
前記ポリエステル延伸糸は、ASTM D 885の標準試験法(試片の長さ250mm、177℃、2分、0.01g/dの荷重)による9.5%~15.0%の乾熱収縮率を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項10】
前記ポリエステル延伸糸は、1.0倍~3.0倍の総延伸比を有する、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項11】
前記タイヤコードは、前記ポリエステル延伸糸を含む2本撚り合撚糸(2-ply yarn)である、請求項1に記載のタイヤコード。
【請求項12】
請求項1によるタイヤコードを含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ポリエチレンテレフタレートを含有したポリエステル延伸糸を含むタイヤコードに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の性能が次第に向上し道路の状況が改善されるにつれて、自動車の高速走行時にタイヤの安定性と耐久性を維持することが要求されている。また、環境問題、エネルギー問題、および燃料効率などを考慮して、軽いながらも耐久性に優れたタイヤが要求されている。このような要求に応えるための一つの方策として、タイヤのゴム補強材として使用されるタイヤコードに関する研究が活発に行われている。
【0003】
タイヤコードは、使用される部位および役割に応じて区分される。例えば、タイヤコードは、タイヤを全体的に支持するカーカス、高速走行による荷重を支持し変形を防止するベルト、及び、ベルトの変形を防止するキャッププライに、大きく区分される(図1参照)。
【0004】
一方、欧州連合を含む多くの国は、環境規制を強化するに伴い、車両用品に、再生材料の使用を義務化している。これにより、プラスチック容器や繊維などとして使用された後に捨てられた、再生可能なプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を車両用品の製造に適用する方策が試みられている。
【0005】
しかし、再生プラスチックは、元のプラスチック素材に比べて劣悪な物性を有し、加工工程での熱的分解などによる物性の低下が不可避である。
【0006】
したがって、再生プラスチックを使用することで環境に優しいのでありつつも、再生プラスチックの物性的限界を克服することができる方策が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、再生ポリエチレンテレフタレートを含有したポリエステル延伸糸を含むタイヤコードを提供するためのものである。
【0008】
そして、本発明は、前記タイヤコードを含むタイヤを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、
1.5dl/g以下の固有粘度と、全カルボン酸成分に対する1.0モル%未満のイソフタル酸含量とを有する再生ポリエチレンテレフタレートを25重量%以上含有したポリエステル延伸糸を含み、
ASTM D 885の標準試験法による7.0g/d~8.0g/dの引張強度および15.0%~17.5%の切断伸度を有する、
タイヤコードが提供される。
【0010】
本発明の他の一実施形態によれば、前記タイヤコードを含むタイヤが提供される。
【0011】
以下、本発明の実施形態によるタイヤコードおよびこれを含むタイヤについて、より詳しく説明する。
【0012】
本明細書で他に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明の属する通常の技術者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限するものと意図されない。
【0013】
本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれに明確に反する意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0014】
本明細書で使用される“含む”の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0015】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施形態を例示し、下記にて詳細に説明しようとする。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、前記の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0016】
本明細書にて、例えば‘~上に’、‘~上部に’、‘~下部に’、‘~横に’などでもって二つの部分の位置関係が説明される場合、‘直ちに’または‘直接’という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置しうる。
【0017】
本明細書にて、例えば‘~後に’、‘~に次いで’、‘~次に’、‘~前に’などでもって時間的前後関係が説明される場合、‘直ちに’または‘直接’という表現が使用されない限り、連続的でない場合も含むことができる。
【0018】
本明細書にて‘少なくとも一つ’の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組み合わせを含むものと理解されなければならない。
【0019】
本明細書にて、用語‘再生ポリエチレンテレフタレート’、‘再生PET’または‘r-PET’は、各種の容器、フィルム、シート、繊維などといった、本来の用途として使用された後に捨てられたポリエチレンテレフタレート(PET)を、再使用するための目的で再生したPET樹脂を意味する。
【0020】
本明細書にて、用語‘バージンポリエチレンテレフタレート’、‘バージンPET’または‘v-PET’は、前記再生ポリエチレンテレフタレート、再生PETまたはr-PETと区別するための用語であって、各種の容器、フィルム、シート、繊維などを製造するための再生されない本来のPET樹脂を意味する。
【0021】
本明細書にて、用語‘下撚糸’(primarily twisted yarn)は、一つのフィラメントをいずれか一方向に撚って作った単糸(single yarn)を指す。
【0022】
本明細書にて、用語‘合撚糸’(plied yarn)は、二本以上の下撚糸をある一方向に共に撚り合わせて作った糸を意味し、‘ローコード’(raw-cord)と称されうる。
【0023】
本明細書にて、用語‘タイヤコード’は、タイヤ用ゴム製品に直ちに適用することができるように接着剤を含有した合撚糸を意味し、‘ディップコード’(dip-cord)と称されうる。
【0024】
再生PETを適用して製造されたタイヤコード用原糸は、一般に高い強度を有しにくい。その原因の一つは、再生PETが有する低い固有粘度であり得る。素材の固有粘度が低ければ、原糸の製造時に高分子の配向が難しい。このことに起因して、原糸に要求される紡糸張力を十分に付与しにくく、発現可能な強度に限界がある。
【0025】
再生PETは、その供給と費用的な理由で、PET素材の廃棄ボトル(廃瓶)から大部分が得られている。しかし、PET素材のボトル(瓶)には、高い柔軟性を付与するためのイソフタル酸と、反応性の向上のための多量の触媒が含有されている。再生PETに含有されたイソフタル酸および触媒のような添加物は、タイヤコード用原糸の製造において欠陥として作用することがある。
【0026】
なぜなら、タイヤコード用原糸を製造するためには、高張力を付与するための高速紡糸方式が要求され、前記添加物は原糸の軸方向配向に妨害要素として作用することがあるためである。
【0027】
しかし、本発明者らの継続的な研究結果、再生PETが有する固有粘度の範囲とイソフタル酸の含量範囲とを制御して得られたポリエステル延伸糸を使用することによって、環境に優しいながらも優れた物性を有するタイヤコードが提供できることが確認された。
【0028】
発明の一実施形態によれば、
0.9dl/g~1.5dl/gの固有粘度と、カルボン酸成分の全体に対して1.0モル%未満のイソフタル酸含量とを有する再生PETを、25重量%以上含有したポリエステル延伸糸を含み、
ASTM D 885の標準試験法による7.0g/d~8.0g/dの引張強度および15.0%~17.5%の切断伸度を有する、
タイヤコードが提供される。
【0029】
原糸を製造するための溶融紡糸の場合、原料を溶融点以上の温度で溶融することが先行する。しかし、高い結晶化度を有する原料は、高い溶融点を示すため溶融紡糸の工程温度を高めなければならない。このような工程温度の上昇は、エネルギー消耗量の増加や設備の改良のような費用増加の問題だけでなく、原料の熱分解とそれによる原糸の物性低下の問題を引き起こす。特に、再生PETは、その回収の過程にて廃PETを溶融する過程を経ることが一般的であるため、再生PETを適用した溶融紡糸の場合、前述の問題点が加重されうる。
【0030】
しかし、0.9dl/g~1.5dl/gの固有粘度と、カルボン酸成分の全体に対して1.0モル%未満のイソフタル酸含量とを有する再生PETを適用することによって、再生PETが有する結晶化度を、適正水準下となるように制御することができるのであって、その結果、前述の問題点を防止することができる。即ち、固有粘度とイソフタル酸との含量が前記範囲となるように制御された再生PETを適用する場合、環境に優しいのでありながらも優れた物性を有するタイヤコードを提供することができる。
【0031】
一つの例示にて、前記再生PETは、前記再生PETに含まれているジカルボン酸成分の全体に対して、1.0モル%未満、あるいは0.95モル%以下、あるいは0.9モル%以下、あるいは0.85モル%以下、あるいは0.8モル%以下のイソフタル酸含量を有することができる。
【0032】
好ましくは、前記再生PETは、前記再生PETに含まれているジカルボン酸成分の全体に対して、0モル%以上1.0モル%未満、あるいは0モル%~0.95モル%、あるいは0モル%~0.9モル%、あるいは0モル%~0.85モル%、あるいは0モル%~0.8モル%、あるいは0.1モル%以上1.0モル%未満、あるいは0.1モル%~0.95モル%、あるいは0.1モル%~0.9モル%、あるいは0.1モル%~0.85モル%、あるいは0.1モル%~0.8モル%、あるいは0.25モル%以上1.0モル%未満、あるいは0.25モル%~0.95モル%、あるいは0.25モル%~0.9モル%、あるいは0.25モル%~0.85モル%、あるいは0.25モル%~0.8モル%、あるいは0.5モル%以上1.0モル%未満、あるいは0.5モル%~0.95モル%、あるいは0.5モル%~0.9モル%、あるいは0.5モル%~0.85モル%、あるいは0.5モル%~0.8モル%のイソフタル酸含量を有することができる。
【0033】
そして、前記再生PETは、前記再生PETに含まれているジカルボン酸成分の全体に対して、99.0モル%超過100.0モル%以下、あるいは99.05モル%~100.0モル%、あるいは99.10モル%~100.0モル%、あるいは99.15モル%~100.0モル%、あるいは99.20モル%~100.0モル%、あるいは99.0モル%超過99.9モル%以下、あるいは99.05モル%~99.9モル%、あるいは99.10モル%~99.9モル%、あるいは99.15モル%~99.9モル%、あるいは99.20モル%~99.9モル%、あるいは99.0モル%超過99.75モル%以下、あるいは99.05モル%~99.75モル%、あるいは99.10モル%~99.75モル%、あるいは99.15モル%~99.75モル%、あるいは99.20モル%~99.75モル%、あるいは99.0モル%超過99.50モル%以下、あるいは99.05モル%~99.50モル%、あるいは99.10モル%~99.50モル%、あるいは99.15モル%~99.50モル%、あるいは99.20モル%~99.50モル%のテレフタル酸含量を有することができる。
【0034】
ここで、前記イソフタル酸とテレフタル酸の含量は、前記再生PETに含まれている全体ジカルボン酸またはこれに由来する単位を基準にした、イソフタル酸、テレフタル酸またはそれに由来する単位の含有率を意味する。前記イソフタル酸およびテレフタル酸の含量は、前記再生PETに対するNMR測定を通じて所定のプロトンのピーク強度を算出して、ジカルボン酸成分100モル%中のイソフタル酸成分とテレフタル酸成分との含有率(モル%)を算出することで得ることができる。
【0035】
他の一つの例示で、前記再生PETは、0.9dl/g~1.5dl/gの固有粘度を有するのでありうる。以下の実施形態を通じて確認されるように、前記再生PETの固有粘度が0.9dl/g未満である場合、これを含むポリエステル延伸糸およびタイヤコードにおける引張強度と切断伸度などが十分に確保されないのでありうる。但し、前記再生PETの固有粘度が1.5dl/g超過である場合、ポリエステル延伸糸およびタイヤコードを製造する際、高粘度によるポリマーの流動性悪化でもって、ノズル部圧力(パック圧、pack pressure)が上昇し、パックリーク(pack leak)現象が発生して、多量の毛羽および頻繁な糸切れが発生しうる。
【0036】
具体的に、前記再生PETは、0.9dl/g以上、あるいは0.95dl/g以上、あるいは1.0dl/g以上の固有粘度を有するものであってもよい。そして、前記再生PETは、1.5dl/g以下、あるいは1.45dl/g以下、あるいは1.4dl/g以下、あるいは1.35dl/g以下、あるいは1.3dl/g以下、あるいは1.25dl/g以下、あるいは1.2dl/g以下の固有粘度を有するものであってもよい。
【0037】
好ましくは、前記再生PETは、0.90dl/g~1.45dl/g、あるいは0.90dl/g~1.40dl/g、あるいは0.90dl/g~1.35dl/g、あるいは0.90dl/g~1.30dl/g、あるいは0.90dl/g~1.25dl/g、あるいは0.90dl/g~1.20dl/g、0.95dl/g~1.50dl/g、あるいは0.95dl/g~1.45dl/g、あるいは0.95dl/g~1.40dl/g、あるいは0.95dl/g~1.35dl/g、あるいは0.95dl/g~1.30dl/g、あるいは0.95dl/g~1.25dl/g、あるいは0.95dl/g~1.20dl/g、1.00dl/g~1.50dl/g、あるいは1.00dl/g~1.45dl/g、あるいは1.00dl/g~1.40dl/g、あるいは1.00dl/g~1.35dl/g、あるいは1.00dl/g~1.30dl/g、あるいは1.00dl/g~1.25dl/g、あるいは1.00dl/g~1.20dl/gの固有粘度を有しうる。
【0038】
前記固有粘度は、測定対象樹脂を有機溶媒に溶かして試料溶液を準備した後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計とアスピレーター(aspirator)、または、自動粘度計を用いて測定することができる。
【0039】
前記ポリエステル延伸糸に含まれる前記再生PETの含量は、25重量%以上、あるいは25重量%~100重量%、あるいは30重量%~100重量%であることが好ましい。即ち、環境保護と資源再利用の側面から、前記再生PETは、前記ポリエステル延伸糸に25重量%以上、あるいは30重量%以上で含まれることが好ましい。
【0040】
選択的に、前記再生PETの含量は、再生PETが由来した再生方法によって調節できる。
【0041】
一例として、前記再生PETが、化学的な再生方法に由来したものである場合、前記ポリエステル延伸糸に含まれる前記再生PETの含量は、25重量%~100重量%、あるいは30重量%~100重量%でありうる。廃PETに対する、解重合、加水分解、および再重合などを通じて、化学構造を変化させて得られる化学的再生PETは、相対的に優れていて安定した物性の発現を可能にする。それに伴い、前記化学的再生PETは、最大100重量%の含量で前記ポリエステル延伸糸に含まれうる。
【0042】
他の一例として、前記再生PETが物理的な再生方法に由来したものである場合、前記ポリエステル延伸糸に含まれる前記再生PETの含量は、25重量%~95重量%、あるいは30重量%~90重量%でありうる。廃PETの回収、色選別、破砕、洗浄、および乾燥などを通じて、フレーク(flake)として得られる物理的再生PETは、相対的に物性の偏差が大きく、これを原料にした加工の工程で熱的分解などによる物性の低下を考慮する必要がある。それに伴い、前記物理的再生PETは、前記ポリエステル延伸糸に95重量%以下、あるいは90重量%以下で含まれることが好ましい。
【0043】
一つの例示で、前記ポリエステル延伸糸には、前記再生PETと共にバージンPETを含むことができる。好ましくは、前記ポリエステル延伸糸は、前述の含量範囲の前記再生PET、およびその残量の前記バージンPETを含むことができる。前記バージンPETは、イソフタル酸またはそれに由来する単位を含まないのでありうる。
【0044】
好ましくは、ポリエステル延伸糸およびタイヤコードにて、引張強度と切断伸度などが十分に確保されるようにしながらも、多量の毛羽および糸切れの発生を防止するために、前記バージンPETは、0.8dl/g~1.4dl/gの固有粘度を有するものでありうる。
【0045】
具体的に、前記バージンPETは、0.8dl/g以上、あるいは0.85dl/g以上、あるいは0.9dl/g以上、あるいは0.95dl/g以上、あるいは1.0dl/g以上の固有粘度を有するものでありうる。そして、前記バージンPETは、1.4dl/g以下、あるいは1.35dl/g以下、あるいは1.3dl/g以下、あるいは1.25dl/g以下の固有粘度を有するものでありうる。
【0046】
より好ましくは、前記バージンPETは、0.8dl/g~1.4dl/g、あるいは0.85dl/g~1.4dl/g、あるいは0.85dl/g~1.35dl/g、あるいは0.9dl/g~1.35dl/g、あるいは0.9dl/g~1.3dl/g、あるいは0.95dl/g~1.3dl/g、あるいは0.95dl/g~1.25dl/g、あるいは1.0dl/g~1.25dl/gの固有粘度を有するものでありうる。
【0047】
一方、前記タイヤコードに含まれる前記ポリエステル延伸糸は、本発明による物性を満足することができる水準で、適切な繊度を有することができる。例えば、前記ポリエステル延伸糸は、2デニール~15デニールの単糸繊度および500デニール~3000デニールの総繊度を有することができる。
【0048】
前記タイヤコードは、二本以上の前記ポリエステル延伸糸を、ある一方向に、一緒に撚り合わせて作ったローコード(raw-cord)と、前記ローコードに付着された接着剤を含む。
【0049】
好ましくは、前記タイヤコードは、1000デニール~9000デニール、あるいは1000デニール~8000デニール、あるいは1000デニール~7000デニール、あるいは1000デニール~6000デニールの総繊度を有する前記ローコードを含むことができる。
【0050】
好ましくは、前記タイヤコードは、前記ポリエステル延伸糸を含む2本撚り合撚糸(2-plyyarn)であってもよい。非制限的な例として、前記ローコードは、500デニール~3000デニールの繊度を有する前記ポリエステル延伸糸を2本撚り合撚糸として、1000デニール~6000デニールの総繊度を有するようにすることができる。
【0051】
前記タイヤコードは、前記再生PETを含有することによって、環境保護に対する貢献の側面から優れた特性を示すことができる。さらに、前記タイヤコードは、前述の範囲の固有粘度とイソフタル酸含量とを充足する再生PETを含むポリエステル延伸糸を含むことによって、バージンPETのみを使用して得られたタイヤコードと対比して、同等の水準の機械的物性及び寸法安定性を示すことができる。
【0052】
一つの例示で、前記タイヤコードは、ASTM D 885の標準試験法による7.0g/d~8.0g/dの引張強度および15.0%~17.5%の切断伸度を示すことができる。
【0053】
具体的に、前記タイヤコードは、7.0g/d以上、あるいは7.1g/d以上、あるいは7.2g/d以上;そして8.0g/d以下、あるいは7.95g/d以下、あるいは7.9g/d以下の引張強度を示すことができる。
【0054】
そして、前記タイヤコードは、15.0%以上、あるいは15.1%以上、あるいは15.2%以上、あるいは15.3%以上、あるいは15.4%以上、あるいは15.5%以上;そして17.5%以下、あるいは17.2%以下、あるいは17.0%以下、あるいは16.9%以下、あるいは16.8%以下、16.7%以下、16.6%以下の切断伸度を示すことができる。
【0055】
好ましくは、前記タイヤコードは、7.1g/d~8.0g/d、あるいは7.1g/d~7.95g/d、あるいは7.2g/d~7.95g/d、あるいは7.2g/d~7.9g/dの引張強度;および15.1%~17.5%、あるいは15.1%~17.2%、あるいは15.2%~17.2%、あるいは15.2%~17.0%、あるいは15.3%~17.0%、あるいは15.3%~16.9%、あるいは15.4%~16.9%、あるいは15.4%~16.8%、あるいは15.5%~16.8%、あるいは15.5%~16.7%、あるいは15.5%~16.6%の切断伸度を示すことができる。
【0056】
前記引張強度と切断伸度は、汎用試験機を用いてASTM D 885の標準試験法にしたがって測定されうる。
【0057】
一つの例示で、前記タイヤコードは、ASTM D 885の標準試験法にしたがって4.5g/dの荷重下で測定された、3.5%~5.0%の中間伸度を有することができる。前記中間伸度は、前記引張強度および切断伸度の測定の際に得られた応力-ひずみ曲線(Stress-Straincurve)での荷重4.5g/dにおける伸度を意味する。
【0058】
具体的に、前記タイヤコードは、3.5%以上、あるいは4.0%以上;そして5.0%以下、あるいは4.5%以下の中間伸度を有することができる。好ましくは、前記タイヤコードは、4.0%~5.0%、あるいは4.0%~4.5%の中間伸度を有することができる。
【0059】
一つの例示で、前記タイヤコードは、ASTM D 885の標準試験法(試片の長さ250mm、177℃、2分、0.01g/dの荷重)による3.0%~6.0%の乾熱収縮率を示すことができる。ここで、前記乾熱収縮率値が(+)である場合、収縮挙動を意味し、(-)である場合、弛緩挙動を意味する。
【0060】
具体的に、前記タイヤコードは、6.0%以下、あるいは5.9%以下、あるいは5.8%以下、あるいは5.7%以下、あるいは5.6%以下、あるいは5.5%以下、あるいは5.4%以下、あるいは5.3%以下、あるいは5.2%以下;そして3.0%以上、あるいは3.1%以上、あるいは3.2%以上の前記乾熱収縮率を示すことができる。
【0061】
好ましくは、前記タイヤコードは、3.0%~5.9%、あるいは3.0%~5.8%、あるいは3.0%~5.7%、あるいは3.0%~5.6%、あるいは3.0%~5.5%、あるいは3.0%~5.4%、あるいは3.0%~5.3%、あるいは3.0%~5.2%、あるいは3.1%~5.9%、あるいは3.1%~5.8%、あるいは3.1%~5.7%、あるいは3.1%~5.6%、あるいは3.1%~5.5%、あるいは3.1%~5.4%、あるいは3.1%~5.3%、あるいは3.1%~5.2%、あるいは3.2%~5.9%、あるいは3.2%~5.8%、あるいは3.2%~5.7%、あるいは3.2%~5.6%、あるいは3.2%~5.5%、あるいは3.2%~5.4%、あるいは3.2%~5.3%、あるいは3.2%~5.2%の前記乾熱収縮率を示すことができる。
【0062】
そして、一つの例示で、前記タイヤコードは、88.5%以上の強力利用率を示すことができる。ここで、前記強力利用率は、{[(前記タイヤコードの引張強度)/(前記ポリエステル延伸糸の引張強度)]×100}の式で計算される値である。
【0063】
具体的に、前記タイヤコードは、88.5%以上、あるいは88.6%以上、あるいは88.7%以上、あるいは88.8%以上、あるいは88.9%以上;そして、91.0%以下、あるいは90.8%以下、あるいは90.6%以下、あるいは90.4%以下の前記強力利用率を示すことができる。
【0064】
好ましくは、前記タイヤコードは、88.5%~91.0%、あるいは88.5%~90.8%、あるいは88.6%~90.8%、あるいは88.6%~90.6%、あるいは88.7%~90.6%、あるいは88.7%~90.4%、あるいは88.8%~90.4%、あるいは88.9%~90.4%の前記強力利用率を示すことができる。
【0065】
一方、前記タイヤコードに含まれる前記ポリエステル延伸糸は、前記再生PETと前記バージンPETを使用して得られるPET素材の延伸糸であってもよい。
【0066】
前述の物性が前記タイヤコードで発現できるようにするために、前記タイヤコードに含まれる前記ポリエステル延伸糸は8.0g/d~9.0g/dの引張強度および14.0%~17.0%の切断伸度を有するものであってもよい。
【0067】
具体的に、前記ポリエステル延伸糸は、8.0g/d以上、あるいは8.1g/d以上;そして9.0g/d以下、あるいは8.9g/d以下、あるいは8.8g/d以下の引張強度を有するものであってもよい。
【0068】
そして、前記ポリエステル延伸糸は、14.0%以上、あるいは14.5%以上、あるいは15.0%以上;そして17.0%以下、あるいは16.5%以下、あるいは16.0%以下、あるいは15.6%以下の切断伸度を有するものであってもよい。
【0069】
好ましくは、前記ポリエステル延伸糸は、8.1g/d~9.0g/d、あるいは8.1g/d~8.9g/d、あるいは8.1g/d~8.8g/dの引張強度;および14.5%~17.0%、あるいは14.5%~16.5%、あるいは14.5%~16.0%、あるいは14.5%~15.6%、あるいは15.0%~15.6%の切断伸度を有するものであってもよい。
【0070】
前記ポリエステル延伸糸は、1.0倍~3.0倍、あるいは1.5倍~3.0倍、あるいは1.5倍~2.5倍の総延伸比を有するものであってもよい。延伸を通じて配向度を高めて適正水準の強度を示すことができるようにするために、前記ポリエステル延伸糸の総延伸比は1.0倍以上であることが好ましい。但し、過度な延伸による糸切れを防止するために、前記ポリエステル延伸糸の総延伸比は3.0倍以下であることが好ましい。
【0071】
前記ポリエステル延伸糸は、ASTM D 885の標準試験法(試片の長さ250mm、177℃、2分、0.01g/dの荷重)による9.5%~15.0%の乾熱収縮率を示すものであってもよい。
【0072】
具体的に、前記ポリエステル延伸糸は、15.0%以下、あるいは14.5%以下、あるいは14.0%以下、あるいは13.7%以下、;そして9.5%以上、あるいは9.6%以上、あるいは9.7%以上、あるいは9.8%以上の前記乾熱収縮率を示すものであってもよい。
【0073】
好ましくは、前記ポリエステル延伸糸は、9.6%~15.0%、あるいは9.6%~14.5%、あるいは9.7%~14.5%、あるいは9.7%~14.0%、あるいは9.8%~13.7%の前記乾熱収縮率を示すものであってもよい。
【0074】
一方、前記ポリエステル延伸糸は、0.9dl/g~1.5dl/gの固有粘度と、カルボン酸成分の全体に対する1.0モル%未満のイソフタル酸含量とを有する再生PETを、25重量%~95重量%で含有した材料を、溶融紡糸することで延伸する方法で得ることができる。
【0075】
前記材料を十分に溶融させつつ前記材料の過度な熱分解を防止し、優れた紡糸性が確保されるようにするために、前記材料の溶融は、250℃~320℃、あるいは260℃~310℃、あるいは270℃~300℃の温度下で行うことができる。
【0076】
前記溶融紡糸の紡糸速度は、2000m/min以上4000m/min未満、あるいは2000m/min~3500m/min、あるいは2000m/min~3000m/minに調節されることが好ましい。前記紡糸速度は、前記材料の物性を考慮して調節することができる。但し、前記紡糸速度が過度に速い場合、糸切れが発生して原糸の製造が難しいのでありうる。
【0077】
前記溶融紡糸を通じて得られる未延伸糸は、15℃~60℃の温度下で冷却することができる。
【0078】
そして、前記未延伸糸は、複数のローラを備えた延伸装備を用いて前述の範囲内で延伸することができる。
【0079】
前記延伸工程の後に、熱固定、弛緩および巻取りの工程を追加的に行うことができる。一つの例示で、前記弛緩工程は、1%~3%の弛緩率で行うことができる。過度に高い張力による糸切れを防止するために、前記弛緩率は1%以上であることが好ましい。但し、過度な弛緩によって気密性または耐久性が低下しうるので、前記弛緩率は3%以下であることが好ましい。
【0080】
一方、前記タイヤコードは、前記ポリエステル延伸糸を使用して、通常の方法で製造することができる。
【0081】
一つの例示で、前記ポリエステル延伸糸をケーブルコード撚糸機に投入し、200TPM~500TPMの撚り数で下撚りおよび上撚りを行うことで、ローコード(raw-cord)を製造することができる。前記ローコードを接着コーティング液に浸漬した後、乾燥および熱処理を行うことでタイヤコード(ディップコード)を製造することができる。
【0082】
発明のさらに他の一実施形態によれば、前述のタイヤコードを含むタイヤが提供される。
【0083】
図1は、本発明の一実施形態によるタイヤ101の部分切開図である。
【0084】
前記タイヤコードは、タイヤ101のキャッププライ90、ベルト50、およびカーカス70のうちの少なくとも一つに適用することができる。
【0085】
図1を参照すれば、タイヤ101は、トレッド(tread)10、ショルダー(shoulder)20、サイドウォール(side wall)30、ビード(bead)40、ベルト(belt)50、インナーライナー(inner liner)60、カーカス(cacass)70、およびキャッププライ(capply)90を含む。
【0086】
トレッド10は、直接に路面と接触する部分である。トレッド10は、キャッププライ90の外側についている強力なゴム層で、耐摩耗性に優れたゴムからなる。トレッド10は、自動車の駆動力および制動力を地面に伝達する直接的な役割を果たす。トレッド10領域にはグルーブ(groove)80が形成されている。
【0087】
ショルダー20は、トレッド10の隅角部分であって、サイドウォール30と連結される部分である。ショルダー20は、サイドウォール30と共にタイヤの最も弱い部分のうちの一つである。
【0088】
サイドウォール30は、トレッド10とビード40とを連結するタイヤ101の横(側方)の部分であって、カーカス70を保護し、タイヤに側面安定性を提供する。
【0089】
ビード40は、カーカス70の端部のまわりを巻く鉄線が入っている領域であって、鉄線にゴム膜を被覆してからコードを包み込む構造となっている。ビード40は、タイヤ101をホイールリム(wheel rim)に装着および固定する役割を果たす。
【0090】
ベルト50は、トレッド10とカーカス70との中間に位置したコート層である。ベルト50は、外部からの衝撃や外的条件による、カーカス70などの内部構成要素の損傷を防止する役割を果たし、トレッド10の形状を扁平に維持することで、タイヤ101と路面との接触が最上の状態で維持されるようにする。ベルト50は、本発明の一実施形態によるタイヤコードを含むことができる。
【0091】
インナーライナー60は、チューブレス(tubeless)タイヤにてチューブの代わりに使用されるものであって、空気透過性がないか非常に少ない特殊ゴムでもって作られる。インナーライナー60は、タイヤ101に充填された空気が漏れないようにする。
【0092】
カーカス70は、強度の強い合成繊維からなるコードが複数枚重ねられて作られ、タイヤ101の骨格を形成する重要な部分である。カーカス70は、タイヤ101が受ける荷重と衝撃に耐えて空気圧を維持する役割を果たす。カーカス70は、本発明の一実施形態によるタイヤコードを含むことができる。
【0093】
グルーブ80は、トレッド領域にある太い溝・穴(void)を称する。グルーブ80は、漏れた路面を走行する際、タイヤの排水性を高めタイヤの接地力を高める機能を果たす。
【0094】
キャッププライ90は、トレッド10の下の保護層であって、その内部の他の構成要素を保護する。キャッププライ90は、高速走行の車両に必須的に適用される。特に、自動車の走行速度が増加するに伴い、タイヤのベルト部分が変形して乗車感が低下するなどの問題が発生しており、ベルト部分の変形を防止するキャッププライ90の重要性が増加している。キャッププライ90は、本発明の一実施形態によるタイヤコードを含むことができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明によるタイヤコードは、環境に優しい素材を含みながらも産業的に要求される水準を充足する優れた物性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】本発明の一実施形態によるタイヤの部分切開図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、発明の理解を助けるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明をこれらのみに限定するのではない。
【実施例
【0098】
参考例
テレフタル酸とエチレングリコールとから形成され、1.2dl/gの固有粘度を有する、バージンPETチップを準備した。前記バージンPETチップを一軸押出機に投入し、これを溶融して紡糸用溶融物を準備した。
【0099】
前記紡糸用溶融物を、紡糸口金を通じて押し出すことで、1000デニールの総繊度(約4デニールの単糸繊度)を有するポリエステル延伸糸を得た。前記ポリエステル延伸糸を得る工程は、290℃の紡糸温度、3000m/minの紡糸速度、1.5倍の総延伸比、および1.5%の弛緩率(延伸後180℃で熱処理)の下で行われた。
【0100】
前記ポリエステル延伸糸について、ケーブルコード撚糸機に投入し、430TPMの下撚りと430TPMの上撚りとを同時にそれぞれ行うことで、2本撚り合撚糸(2-plied yarn)であるローコード(raw-cord)を製造した。前記ローコードを、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む接着コーティング液に浸漬した後、これを150℃で100秒間乾燥し、240℃で100秒間熱処理することでタイヤコード(ディップコード)を製造した。前記の浸漬、乾燥、および熱処理の工程にて前記ローコードに加えられた張力は0.5kg/cordであった。
【0101】
実施例1
ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0.8モル%(テレフタル酸の含量が99.2モル%)であり、1.2dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(A)を準備した。
【0102】
テレフタル酸とエチレングリコールとから形成され、1.2dl/gの固有粘度を有するバージンPETチップを準備した。
【0103】
30重量%の前記再生PETチップ(A)と、70重量%の前記バージンPETチップとを含む混合物を一軸押出機に投入し、これを溶融して紡糸用溶融物を準備した。
【0104】
前記紡糸用溶融物を、紡糸口金を通じて押し出すことで、1000デニールの総繊度(約4デニールの単糸繊度)を有するポリエステル延伸糸を得た。前記ポリエステル延伸糸を得る工程は、290℃の紡糸温度、2000m/minの紡糸速度、2.5倍の総延伸比、および1.5%の弛緩率(延伸後180℃で熱処理)の下で行われた。
【0105】
前記ポリエステル延伸糸を使用したことを除いて、前記参照例と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0106】
実施例2
前記ポリエステル延伸糸を得る工程にて3000m/minの紡糸速度および1.5倍の総延伸比を適用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0107】
実施例3
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0.8モル%(テレフタル酸の含量が99.2モル%)であり、1.0dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(B)を使用したことを除いて、前記実施例2と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0108】
比較例1
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0.8モル%(テレフタル酸の含量が99.2モル%)であり、0.8dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(C)を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0109】
比較例2
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0.8モル%(テレフタル酸の含量が99.2モル%)であり、0.8dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(C)を使用したことを除いて、前記実施例2と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0110】
比較例3
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が1.0モル%(テレフタル酸の含量が99.0モル%)であり、1.2dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(D)を使用したことを除いて、前記実施例2と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0111】
実施例4
前記紡糸用溶融物の準備工程で50重量%の前記再生PETチップ(A)と50重量%の前記バージンPETチップを使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0112】
実施例5
前記紡糸用溶融物の準備工程で70重量%の前記再生PETチップ(A)と30重量%の前記バージンPETチップを使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0113】
実施例6
前記紡糸用溶融物の準備工程で前記バージンPETチップを使用せず100重量%の前記再生PETチップ(A)を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0114】
実施例7
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0モル%(テレフタル酸の含量が100モル%)であり、1.2dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(E)を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0115】
比較例4
前記化学的再生PETチップ(A)の代わりに、ジカルボン酸成分の全体に対するイソフタル酸の含量が0.8モル%(テレフタル酸の含量が99.2モル%)であり、1.6dl/gの固有粘度を有する化学的再生PETチップ(F)を使用したことを除いて、前記実施例1と同一の方法でローコードとディップコードを製造した。
【0116】
試験例
(1)PETチップ内のイソフタル酸の含量
PETチップを、トリフルオロ酢酸D(system peak:11.50)に2%~3%の濃度で溶解させて試片を製造した。前記試片に対してNMR装置(AS400;Oxford Instruments社製造)を用いた64MHz H-NMRを実施して前記試片内のイソフタル酸(IPA)の含量を測定した。
【0117】
*IPA Peak:(a)8.7~8.8ppm、(b)8.2~8.3ppm、(c)7.5~7.6ppm
*IPA含量(mol%)={[(a)面積+(b)面積+(c)面積]×100}/(全体の面積)
【0118】
(2)樹脂の固有粘度
四塩化炭素を使用してPETチップから油剤を抽出し、PETチップを160±2℃でo-クロロフェノール(OCP)に溶かして試料を製造した。25℃下で自動粘度計(Skyvis-4000;SKC Limited、Korea)を用いて粘度管での試料粘度を測定して下記計算式で固有粘度(intrinsic viscosity、I.V.)を測定した。
【0119】
*固有粘度(I.V.)={(0.0242×Rel)+0.2634}×F
*Rel=[(試料の秒数)×(試料の比重)×(粘度係数)]/(OCPの粘度)
*F=(標準チップのI.V.)/(標準チップを標準動作で測定した3つの平均I.V.)
【0120】
(3)引張強度、切断伸度および中間伸度
ASTM D 885の標準試験法によって、インストロン(Instron)社の汎用試験機(universal testing machine)を用いて、ポリエステル延伸糸とタイヤコードの、引張強度(g/d)および切断伸度(%)を測定した。試片長さは250mmであり、引張速度は300mm/minであり、初期荷重(load)は0.05g/dと設定した。
【0121】
前記試験で得られた応力-ひずみ曲線(Stress-Strain curve)での荷重4.5g/dにおける伸度を‘中間伸度’と示した。
【0122】
(4)乾熱収縮率
ASTM D 885の標準試験法によって、長さ250mmの試片を25℃および65%RHで24時間放置した後、0.01g/dの荷重で長さ(L)を測定した。前記試片に0.05g/dの荷重を付与し、2分間177℃の熱を加えた後、前記試片の長さ(L)を測定した。前記のLおよびLをそれぞれ5回ずつ測定し、前記試片の長さ変化率{=[(L-L)/L]×100}を乾熱収縮率と示した。前記乾熱収縮率値が(+)である場合、収縮挙動を意味し、(-)である場合、弛緩挙動を意味する。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
上記表1および表2を参照すれば、実施例によるタイヤコードは、再生PETを含むことで環境に優しいのでありながらも、参考例のタイヤコードと同等の水準の物性を示すことが確認された。
【0126】
前記比較例3および4では、ポリエステル延伸糸の製造時巻取りは可能であったが、多量の毛羽および頻繁な糸切れが発生して、原糸の品質が相対的に劣悪であった。
【符号の説明】
【0127】
10:トレッド
20:ショルダー
30:サイドウォール
40:ビード
50:ベルト
60:インナーライナー
70:カーカス
80:グルーブ
90:キャッププライ
101:タイヤ
図1
【国際調査報告】