(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】S-アデノシル-L-メチオニン類似体(XSAMS)を用いたメチルシトシン及びその誘導体の検出
(51)【国際特許分類】
C12N 15/00 20060101AFI20240228BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240228BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240228BHJP
C07H 21/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C12N15/00 ZNA
C12Q1/6869
C12N15/11 Z
C07H21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557709
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2022020144
(87)【国際公開番号】W WO2022197593
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】サラ シュルツァバージャー
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン ウー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ブルスタッド
(72)【発明者】
【氏名】ニアル ゴームリー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C057
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ62
4B063QR06
4B063QR10
4B063QR42
4B063QS04
4B063QS24
4B063QS28
4C057AA05
4C057BB02
4C057DD03
4C057MM02
(57)【要約】
本明細書で提供される実施例は、S-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAMs)を用いたメチルシトシン及びその誘導体の検出に関する。そのような検出を行うための組成物及び方法が開示される。標的ポリヌクレオチドは、シトシン(C)及びメチルシトシン(mC)を含み得る。方法は、(a)標的ポリヌクレオチド中のCを脱アミノ化から保護することと、(b)工程(a)の後に、標的ポリヌクレオチド中のmCを脱アミノ化してチミン(T)を形成することと、を含み得る。脱アミノ化からCを保護することは、例えば、xSAMから第1の保護基を付加するメチルトランスフェラーゼ酵素を使用して、Cの5位に保護基を付加することを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトシン(C)及びメチルシトシン(mC)を含む標的ポリヌクレオチドを修飾する方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチド中の前記Cを脱アミノ化から保護することと、
(b)工程(a)の後に、前記標的ポリヌクレオチド中の前記mCを脱アミノ化してチミン(T)を形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記Cを脱アミノ化から保護することが、前記Cの5位に第1の保護基を付加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のメチルトランスフェラーゼ酵素が、前記Cの5位に前記第1の保護基を付加する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のメチルトランスフェラーゼ酵素が、以下の構造であって、
【化1】
式中、Xは、前記第1の保護基と、メチレン基であって、それを介して前記第1の保護基がスルホニウムイオン(S+)に結合するメチレン基と、を含む、構造を有するS-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAM)から前記第1の保護基を付加する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のメチルトランスフェラーゼ酵素が、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、dam、及びCpG(M.SssI)からなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の保護基が、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記mCのメチル基が、前記mCの5位へのXの付加を阻害する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シチジンデアミナーゼ酵素が、前記mCを脱アミノ化する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Xが前記第1のメチルトランスフェラーゼ酵素内に収まり、前記シチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シチジンデアミナーゼ酵素がAPOBECを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記APOBECが、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3E、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、及びAPOBEC4からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記標的ポリヌクレオチドが、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を更に含み、工程(b)が、前記標的ポリヌクレオチド中の前記hmCを脱アミノ化してヒドロキシチミン(hT)を形成することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記標的ポリヌクレオチドがヒドロキシメチルシトシン(hmC)を更に含み、前記方法が、
(c)工程(b)の前に、前記標的ポリヌクレオチド中の前記hmCを脱アミノ化から保護すること
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(c)が、工程(a)の後に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記hmCを脱アミノ化から保護することが、第2の保護基を前記hmCの前記ヒドロキシメチル基に付加することを含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酵素が、前記第2の保護基を前記hmCの前記ヒドロキシメチル基に付加する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素が、β-グルコシルトランスフェラーゼ(βGT)及びβ-アラビノシルトランスフェラーゼ(βAT)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の保護基が糖を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、前記標的ポリヌクレオチドを含む第2の試料に対して工程(a)、(b)、及び(c)を実施することと、を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記標的ポリヌクレオチドが、ホルミルシトシン(fC)を更に含み、前記fCのホルミル基が、工程(b)中の前記fCの脱アミノ化を阻害する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記標的ポリヌクレオチドがホルミルシトシン(fC)を更に含み、前記方法が、
(d)工程(b)の前に、前記fCを、工程(b)の間に脱アミノ化された保護されていないCに変換して、ウラシル(U)を形成すること
を更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
チミンデグリコシラーゼ酵素がfCの塩基をCで置換する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、前記標的ポリヌクレオチドを含む第3の試料に対して工程(a)、(b)及び(d)を実施することと、を含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的ポリヌクレオチドがカルボキシルシトシン(caC)を更に含み、前記caCのカルボキシル基が、工程(b)の間に前記fCの脱アミノ化を阻害する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記標的ポリヌクレオチドがカルボキシルシトシン(caC)を更に含み、前記方法が、
(e)工程(b)の前に、前記caCを、工程(b)中に脱アミノ化される保護されていないCに変換して、ウラシル(U)を形成すること
を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第2のメチルトランスフェラーゼ酵素がcaCからカルボキシル基を除去する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
チミンデグリコシラーゼ酵素がcaCの塩基をCで置換する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、前記標的ポリヌクレオチドを含む第4の試料に対して工程(a)、(b)、及び(e)を実施することと、を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記標的ポリヌクレオチドがDNAを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記標的ポリヌクレオチドが第1及び第2アダプターを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1及び第2のアダプターが、工程(a)の前に前記標的ポリヌクレオチドに付加される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1及び第2のアダプターが、工程(b)の後に前記標的ポリヌクレオチドに付加される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
請求項1~32のいずれか一項に記載の標的ポリヌクレオチドを修飾することと、
前記修飾された標的ヌクレオチドの第1のアンプリコンであって、前記第1のアンプリコンが、前記保護されたCに相補的な位置に第1のグアニン(G)と、前記Tに相補的な位置に第1のアデニン(A)と、を含む、前記修飾された標的ヌクレオチドの第1のアンプリコンを生成することと、
前記第1のアンプリコンの第2のアンプリコンであって、前記第2のアンプリコンが、前記第1のGに相補的な位置に第1の保護されていないCと、前記第1のAに相補的な位置に第1のチミン(T)とを含む、前記第1のアンプリコンの第2のアンプリコンを生成することと、
前記第1のアンプリコン、前記第2のアンプリコン、又は前記第1のアンプリコン及び前記第2のアンプリコンの両方を配列決定することと、
前記第1のアンプリコン中の前記第1のA、前記第2のアンプリコン中の前記第1のT、又は前記第1のアンプリコン中の前記第1のA及び前記第2のアンプリコン中の前記第1のTの両方に基づいて、前記mCを同定することと、
を含む、方法。
【請求項34】
前記第1のアンプリコンが、前記hTに相補的な位置に第2のAを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第2のAに相補的な位置に第2のTを含み、前記方法が、
前記第1のアンプリコン中の前記第2のA、前記第2のアンプリコン中の前記第2のT、又は前記第1のアンプリコン中の前記第2のA及び前記第2のアンプリコン中の前記第2のTの両方に基づいて、前記hmCを同定すること
を更に含む、請求項12に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のアンプリコンが、前記hmCと相補的な位置に第2のGを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第2のGと相補的な位置に第2の保護されていないCを含み、前記方法が、
第1のアンプリコン中の前記第2のG、前記第2アンプリコン中の前記第2の保護されていないC、又は前記第1のアンプリコン中の前記第2のG及び前記第2のアンプリコン中の前記第2の保護されていないCの両方に基づいて、前記hmCを同定することを更に含む、請求項13に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のアンプリコンが、前記fCに相補的な位置に第3のGを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第3のGに相補的な位置に第3の保護されていないCを含み、前記方法が、
前記第1のアンプリコン中の前記第3のG、前記第2のアンプリコン中の前記第3の保護されていないC、又は前記第1のアンプリコン中の前記第3のG及び前記第2のアンプリコン中の前記第3の保護されていないCの両方に基づいて、前記fCを同定することを更に含む、請求項20に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のアンプリコンが、前記Uに相補的な位置に第3のAを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第3のAに相補的な位置に第3のTを含み、前記方法が、
前記第1のアンプリコン中の前記第3のA、前記第2のアンプリコン中の前記第3のT、又は前記第1のアンプリコン中の前記第3のA及び前記第2のアンプリコン中の前記第3のTの両方に基づいて、前記fCを同定することを更に含む、請求項21に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のアンプリコンが、前記caCに相補的な位置に第4のGを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第4のGに相補的な位置に第4の保護されていないCを含み、前記方法が、
前記第1のアンプリコン中の前記第4のG、前記第2のアンプリコン中の前記第4の保護されていないC、又は前記第1のアンプリコン中の前記第4のG及び前記第2のアンプリコン中の前記第4の保護されていないCの両方に基づいて、前記caCを同定することを更に含む、請求項24に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のアンプリコンが、前記Uに相補的な位置に第4のAを含み、前記第2のアンプリコンが、前記第4のAに相補的な位置に第4のTを含み、前記方法が、
前記第1のアンプリコン中の前記第4のA、前記第2のアンプリコン中の前記第4のT、又は前記第1のアンプリコン中の前記第4のA及び前記第2のアンプリコン中の前記第4のTの両方に基づいて、前記caCを同定することを更に含む、請求項25に従属する請求項33に記載の方法。
【請求項40】
細胞外液試料から単離されたポリヌクレオチドであって、
5位に保護基を含むシトシン(C)と、
チミン(T)と、
を含む、細胞外液試料から単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
前記第1の保護基が、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む、請求項40に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を更に含む、請求項40又は41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記hmCが第2の保護基を含む、請求項40又は41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記第2の保護基が糖を含む、請求項43に記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
ヒドロキシチミン(hT)を更に含む、請求項40又は41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
ホルミルシトシン(fC)を更に含む、請求項40~45のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
カルボキシルシトシン(caC)を更に含む、請求項40~46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項48】
ウラシル(U)を更に含む、請求項40~47のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項49】
DNAを含む、請求項40~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項50】
第1及び第2のアダプターを含む、請求項40~49のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項51】
以下の構造であって、
【化2】
式中、Xは、第1の保護基と、メチレン基であって、それを介して前記保護基がスルホニウムイオン(S+)に結合するメチレン基と、を含む、構造を有するS-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAM)。
【請求項52】
前記保護基が、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む、請求項51に記載のxSAM。
【請求項53】
ポリヌクレオチドと、請求項51又は請求項52に記載のxSAMと、前記ポリヌクレオチド中のシトシンに前記xSAMの前記保護基を付加するメチルトランスフェラーゼ酵素と、を含む組成物。
【請求項54】
細胞外液中に、単離されたポリヌクレオチド及びシチジンデアミナーゼ酵素を含む組成物であって、
前記ポリヌクレオチドが、(i)5位に保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)メチルシトシン(mC)又はヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含み、
前記シチジンデアミナーゼ酵素が、mCを脱アミノ化してチミン(T)を形成するか、又はhmCを脱アミノ化してヒドロキシチミン(hT)を形成する、組成物。
【請求項55】
細胞外液中に、単離されたポリヌクレオチド及びメチルトランスフェラーゼ酵素を含む組成物であって、
前記ポリヌクレオチドが、(i)5位に保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)ホルミルシトシン(fC)又はカルボキシルシトシン(caC)を含み、
前記メチルトランスフェラーゼ酵素が、前記fC又はcaCをCに変換すると、を含む、組成物。
【請求項56】
細胞外液中に、単離されたポリヌクレオチド及びβ-グルコシルトランスフェラーゼ(βGT)又はβ-アラビノシルトランスフェラーゼ(βAT)酵素を含む組成物であって
前記ポリヌクレオチドが、(i)5位に第1の保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含む、単離されたポリヌクレオチドと、
βGT又はβAT酵素が、前記hmCに第2の保護基を付加する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月15日に出願された「DETECTING METHYLCYTOSINE AND ITS DERIVATIVES USING S-ADENOSYL-L-METHIONINE ANALOGS(xSAMS)」という名称の米国仮特許出願第63/161,330号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、メチルシトシンを検出するための組成物及び方法に関する。
【0003】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、8549102516_SL.txtである。テキストファイルは2.06KBであり、2022年3月9日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0004】
ヒトなどの生物内では、ゲノム中の選択されたシトシン(C)がメチル化され得る。例えば、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)は、メチルトランスフェラーゼ(MTase)と呼ばれる酵素によって触媒される様々な生物学的メチル化反応のための遍在性メチル供与体であることが知られている。酵素5-MTaseは、Deen et al.,「Methyltransferase-directed labeling of biomolecules and its applications,」Angewandte Chemie International Edition 56:5182-5200(2017)に記載されているような方法で、シトシンの5位にメチル基を付加して5-メチルシトシン(5mC)を形成することができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。別の酵素は、シトシンのメチル基を酸化して5mC誘導体5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を形成することができ、5hmCを更に酸化して5mC誘導体5-ホルミルシトシン(5fC)及び5-カルボキシシトシン(5caC)を形成することができる。
【0005】
5mC及び5hmCは、エピジェネティックマーカーと呼ばれる場合があり、ゲノム配列においてそれらを検出することが望ましい場合がある。5mC及び5hmCを検出するための現在のゴールドスタンダード方法は、バイサルファイトシーケンスであり、これは、配列中の任意の非メチル化Cをウラシル(U)に変換するが、5mC又は5hmCを対応するウラシル誘導体に変換しない。配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅される場合、ウラシルはチミジン(T)として増幅され、したがって非メチル化CはTとして配列決定される。比較すると、5mC及び5hmCはCとして増幅され、したがってCとして配列決定される。したがって、配列中の任意のCは、それらがUに変換されなかったので、5mC又は5hmCに対応するものとして同定され得る。そのようなスキームは、任意の非メチル化CがTに変換されるため、「3塩基」配列決定スキームと称され得る。しかしながら、このタイプのスキームは、配列複雑性を低減し、配列決定品質の低減、より低いマッピング率、及び配列の比較的不均一なカバレッジをもたらし得る。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供される実施例は、S-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAMs)を用いたメチルシトシン及びその誘導体の検出に関する。そのような検出を行うための組成物及び方法が開示される。
【0007】
本明細書のいくつかの例は、標的ポリヌクレオチドを修飾する方法を提供する。標的ポリヌクレオチドは、シトシン(C)及びメチルシトシン(mC)を含み得る。方法は、(a)標的ポリヌクレオチド中のCを脱アミノ化から保護することを含み得る。方法は、(b)工程(a)の後に、標的ポリヌクレオチド中のmCを脱アミノ化してチミン(T)を形成することを含み得る。
【0008】
いくつかの例では、脱アミノ化からCを保護することは、Cの5位に第1の保護基を付加することを含む。いくつかの例では、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素は、Cの5位に第1の保護基を付加する。いくつかの例では、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素は、以下の構造であって、
【化1】
式中、Xは、第1の保護基と、メチレン基であって、それを介して第1の保護基がスルホニウムイオン(S+)に結合するメチレン基と、を含む、
構造を有するS-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAM)から第1の保護基を付加する。
【0009】
いくつかの例では、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素は、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、dam、及びCpG(M.SssI)からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの例では、第1の保護基は、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む。
【0011】
いくつかの例では、mCのメチル基は、mCの5位へのXの付加を阻害する。
【0012】
いくつかの例では、シチジンデアミナーゼ酵素は、mCを脱アミノ化する。いくつかの例では、Xは、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素内に適合し、シチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害する。いくつかの例では、シチジンデアミナーゼ酵素は、APOBECを含む。いくつかの例では、APOBECは、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3E、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、及びAPOBEC4からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を更に含み、工程(b)は、標的ポリヌクレオチド中のhmCを脱アミノ化して、ヒドロキシチミン(hT)を形成することを含む。
【0014】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を更に含む。方法は、(c)工程(b)の前に、標的ポリヌクレオチド中のhmCを脱アミノ化から保護することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、工程(c)は、工程(a)の後に実施される。いくつかの例では、脱アミノ化からhmCを保護することは、hmCのヒドロキシメチル基に第2の保護基を付加することを含む。いくつかの例では、酵素は、hmCのヒドロキシメチル基に第2の保護基を付加する。いくつかの例では、酵素は、β-グルコシルトランスフェラーゼ(βGT)及びβ-アラビノシルトランスフェラーゼ(βAT)からなる群から選択される。いくつかの例では、第2の保護基は糖を含む。
【0015】
いくつかの例では、方法は、標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、標的ポリヌクレオチドを含む第2の試料に対して工程(a)、(b)、及び(c)を実施することと、を含む。
【0016】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、ホルミルシトシン(fC)を更に含み、fCのホルミル基は、工程(b)中にfCの脱アミノ化を阻害する。
【0017】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、ホルミルシトシン(fC)を更に含み、方法は、(d)工程(b)の前に、fCを、工程(b)中に脱アミノ化される保護されていないCに変換して、ウラシル(U)を形成することを更に含んでもよい。いくつかの例では、チミンデグリコシラーゼ酵素は、fCの塩基をCで置換する。
【0018】
いくつかの例では、方法は、標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、標的ポリヌクレオチドを含む第3の試料に対して工程(a)、(b)、及び(d)を実施することと、を含む。
【0019】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、カルボキシルシトシン(caC)を更に含み、caCのカルボキシル基は、工程(b)中にfCの脱アミノ化を阻害する。
【0020】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、カルボキシルシトシン(caC)を更に含み、方法は、(e)工程(b)の前に、caCを、工程(b)中に脱アミノ化される保護されていないCに変換して、ウラシル(U)を形成することを更に含む。いくつかの例では、第3のメチルトランスフェラーゼ酵素は、caCからカルボキシル基を除去する。いくつかの例では、チミンデグリコシラーゼ酵素は、caCの塩基をCで置換する。
【0021】
いくつかの例では、方法は、標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して工程(a)及び(b)を実施することと、標的ポリヌクレオチドを含む第4の試料に対して工程(a)、(b)、及び(e)を実施することと、を含む。いくつかの例では、第3の試料は第4の試料であり、第2のメチルトランスフェラーゼは第3のメチルトランスフェラーゼである。
【0022】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドはDNAを含む。
【0023】
いくつかの例では、標的ポリヌクレオチドは、第1及び第2のアダプターを含む。いくつかの例では、第1及び第2のアダプターは、工程(a)の前に標的ポリヌクレオチドに付加される。いくつかの例では、第1及び第2のアダプターは、工程(b)の後に標的ポリヌクレオチドに付加される。
【0024】
本明細書のいくつかの例は、標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法を提供する。方法は、前述の方法のいずれかに従って標的ポリヌクレオチドを修飾することを含み得る。方法は、修飾された標的ヌクレオチドの第1のアンプリコンを生成することを含み得る。第1のアンプリコンは、保護されたCに相補的な位置に第1のグアニン(G)、及びTに相補的な位置に第1のアデニン(A)を含み得る。方法は、第1のアンプリコンの第2のアンプリコンを生成することを含み得、第2のアンプリコンは、第1のGに相補的な位置に第1の保護されていないC、及び第1のAに相補的な位置に第1のチミン(T)を含む。方法は、第1のアンプリコン、第2のアンプリコン、又は第1のアンプリコン及び第2のアンプリコンの両方を配列決定することを含み得る。方法は、第1のアンプリコン中の第1のA、第2のアンプリコン中の第1のT、又は第1のアンプリコン中の第1のA及び第2のアンプリコン中の第1のTの両方に基づいて、mCを同定することを含み得る。
【0025】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、hTに相補的な位置に第2のAを含み、第2のアンプリコンは、第2のAに相補的な位置に第2のTを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第2のA、第2のアンプリコン中の第2のT、又は第1のアンプリコン中の第2のA及び第2のアンプリコン中の第2のTの両方に基づいて、hmCを同定することを更に含み得る。
【0026】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、hmCに相補的な位置に第2のGを含み、第2のアンプリコンは、第2のGに相補的な位置に第2の保護されていないCを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第2のG、第2のアンプリコン中の第2の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第2のG及び第2のアンプリコン中の第2の保護されていないCの両方に基づいて、hmCを同定することを更に含み得る。
【0027】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、fCに相補的な位置に第3のGを含み、第2のアンプリコンは、第3のGに相補的な位置に第3の保護されていないCを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第3のG、第2のアンプリコン中の第3の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第3のG及び第2のアンプリコン中の第3の保護されていないCの両方に基づいて、fCを同定することを更に含み得る。
【0028】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、Uに相補的な位置に第3のAを含み、第2のアンプリコンは、第3のAに相補的な位置に第3のTを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第3のA、第2のアンプリコン中の第3のT、又は第1のアンプリコン中の第3のA及び第2のアンプリコン中の第3のTの両方に基づいて、fCを同定することを更に含み得る。
【0029】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、caCに相補的な位置に第4のGを含み、第2のアンプリコンは、第4のGに相補的な位置に第4の保護されていないCを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第4のG、第2のアンプリコン中の第4の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第4のG及び第2のアンプリコン中の第4の保護されていないCの両方に基づいて、caCを同定することを更に含み得る。
【0030】
いくつかの例では、第1のアンプリコンは、Uに相補的な位置に第4のAを含み、第2のアンプリコンは、第4のAに相補的な位置に第4のTを含む。方法は、第1のアンプリコン中の第4のA、第2のアンプリコン中の第4のT、又は第1のアンプリコン中の第4のA及び第2のアンプリコン中の第4のTの両方に基づいて、caCを同定することを更に含み得る。
【0031】
本明細書のいくつかの例は、細胞外液試料から単離されたポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、5位に保護基を含むシトシン(C);及びチミン(T)を含んでもよい。
【0032】
いくつかの例では、第1の保護基は、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む。
【0033】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含む。いくつかの例では、hmCは、第2の保護基を含む。いくつかの例では、第2の保護基は糖を含む。
【0034】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、ヒドロキシチミン(hT)を含む。
【0035】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドはホルミルシトシン(fC)を含む。
【0036】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、カルボキシルシトシン(caC)を含む。
【0037】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドはウラシル(U)を含む。
【0038】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドはDNAを含む。
【0039】
いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、第1及び第2のアダプターを含む。
【0040】
本明細書におけるいくつかの例は、以下の構造であって、
【化2】
式中、Xは、第1の保護基と、メチレン基であって、それを介して保護基がスルホニウムイオン(S+)に結合するメチレン基と、を含む、
構造を有するS-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAM)を提供する。
【0041】
いくつかの例では、保護基は、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含む。
【0042】
本明細書におけるいくつかの例は、ポリヌクレオチドと、前述のxSAMsのいずれかと、ポリヌクレオチド中のシトシンにxSAMの保護基を付加するメチルトランスフェラーゼ酵素と、を含む組成物を提供する。
【0043】
本明細書のいくつかの例は、細胞外液中に単離ポリヌクレオチド及びシチジンデアミナーゼ酵素を含む組成物を提供する。ポリヌクレオチドは、(i)5位に保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)メチルシトシン(mC)又はヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含んでもよい。シチジンデアミナーゼ酵素は、mCを脱アミノ化してチミン(T)を形成し得るか、又はhmCを脱アミノ化してヒドロキシチミン(hT)を形成し得る。
【0044】
本明細書のいくつかの例は、細胞外液中に単離されたポリヌクレオチド及びメチルトランスフェラーゼ酵素を含む組成物を提供する。ポリヌクレオチドは、(i)5位に保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)ホルミルシトシン(fC)又はカルボキシルシトシン(caC)を含んでもよい。組成物は、fC又はcaCをCに変換する酵素を含んでもよい。
【0045】
本明細書のいくつかの例は、細胞外液中の単離されたポリヌクレオチド及びβ-グルコシルトランスフェラーゼ(βGT)又はβ-アラビノシルトランスフェラーゼ(βAT)酵素を提供する。ポリヌクレオチドは、(i)5位に第1の保護基を含むシトシン(C)、及び(ii)ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含んでもよい。βGT又はβAT酵素は、hmCに第2の保護基を付加することができる。
【0046】
本明細書に記載されている利益を実現するため、本明細書に記載されている本開示の態様の各々の任意のそれぞれの特徴/例は、任意の適切な組み合わせで一緒に実施されてもよいこと、及びこれらの態様のいずれか1つ以上からの任意の特徴/例は、任意の適切な組み合わせで、本明細書に記載されている他の態様の特徴のいずれかと一緒に実施されてもよいことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】S-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAMs)を用いてメチルシトシン及びその誘導体を検出するための一連の反応を概略的に示す図である。
【0048】
【
図2】
図1の選択された反応を概略的に示す図である。
【0049】
【
図3】xSAMsを用いて、メチルシトシン及びその誘導体を検出するための、及びメチルシトシン誘導体を互いに区別するための更なる一連の反応スキームを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で提供される実施例は、S-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAMs)を用いたメチルシトシン及びその誘導体の検出に関する。そのような検出を行うための組成物及び方法が開示される。
【0051】
本明細書で提供されるように、任意のメチルシトシン(mC)をチミン(T)に変換し、任意のヒドロキシメチルシトシン(hmC)をヒドロキシチミン(hT)に変換するために使用される更なる反応に対して比較的安定であるXCを生成するために、保護基(X)が、ポリヌクレオチド配列中の任意の非メチル化シトシン(C)の5位に付加される。配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅される場合、T及びhTはチミン(T)として増幅され、したがってmC及びその誘導体hmCはTとして配列決定される。比較すると、非メチル化Cは増幅され、Cとして配列決定される。したがって、配列中の任意のCは、Tに変換されていないので、Cに対応するものとして同定され得る。そのようなスキームは、任意の非メチル化CがCとして配列決定されるので、「4塩基」配列決定スキームと称され得る。「3塩基」配列決定スキームと比較して、本スキームは配列の複雑さを維持し、配列決定品質の向上、より高いマッピング率、及び配列の比較的均一なカバレッジをもたらし得る。mC及びその誘導体を互いに区別するための更なる反応が提供され、したがって、ゲノム配列中の任意のエピジェネティックマーカーを特徴付けるための更なる分析ツールが提供される。
【0052】
最初に、本明細書で使用されるいくつかの用語を簡単に説明する。次に、xSAMSを用いてメチルシトシン及びその誘導体を検出するためのいくつかの例示的な組成物及び例示的な方法を説明する。
【0053】
用語
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。「含むこと(including)」という用語、並びに「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含まれた(included)」などの他の形態の使用は、限定ではない。「有すること(having)」という用語、並びに「有する(have)」、「有する(has)」及び「有した(had)」などの他の形態の使用は、限定ではない。本明細書で使用される場合、移行句中か又は請求項の本文中のいずれであっても、「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」という用語は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0054】
本明細書全体を通して使用される「実質的に」、「およそ(approximately)」、及び「約」という用語は、処理のばらつきなどに起因する小さな変動を記載及び考慮するために使用されている。例えば、それらは、±5%以下など、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下などの、±10%以下を指し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズ」は、それらのポリマーの長さに沿って第1のポリヌクレオチドを第2のポリヌクレオチドに非共有結合させて、二重の鎖となった「二本鎖」を形成することを意図する。例えば、2つのDNAポリヌクレオチド鎖は、相補的な塩基対合を介して会合し得る。第1及び第2のポリヌクレオチド間の会合の強度は、それらのポリヌクレオチド内のヌクレオチド配列間の相補性とともに増加する。ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの強度は、二重鎖の50%が互いに解離する融解温度(Tm)によって特徴付けられ得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、糖、及び少なくとも1つのホスフェート基を含み、一部の例では、核酸塩基もまた含む分子を意味することが意図される。核酸塩基を欠くヌクレオチドは、「脱塩基」と称され得る。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、修飾ホスフェート糖骨格ヌクレオチド、及びそれらの混合物を含む。ヌクレオチドの例には、アデノシン一リン酸(adenosine monophosphate、AMP)、アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate、ADP)、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate、ATP)、チミジン一リン酸(thymidine monophosphate、TMP)、チミジン二リン酸(thymidine diphosphate、TDP)、チミジン三リン酸(thymidine triphosphate、TTP)、シチジン一リン酸(cytidine monophosphate、CMP)、シチジン二リン酸(cytidine diphosphate、CDP)、シチジン三リン酸(cytidine triphosphate、CTP)、グアノシン一リン酸(guanosine monophosphate、GMP)、グアノシン二リン酸(guanosine diphosphate、GDP)、グアノシン三リン酸(guanosine triphosphate、GTP)、ウリジン一リン酸(uridine monophosphate、UMP)、ウリジン二リン酸(uridine diphosphate、UDP)、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate、UTP)、デオキシアデノシン一リン酸(deoxyadenosine monophosphate、dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(deoxyadenosine diphosphate、dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(deoxyadenosine triphosphate、dATP)、デオキシチミジン一リン酸(deoxythymidine monophosphate、dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(deoxythymidine diphosphate、dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(deoxythymidine triphosphate、dTTP)、デオキシシチジン二リン酸(deoxycytidine diphosphate、dCDP)、デオキシシチジン三リン酸(deoxycytidine triphosphate、dCTP)、デオキシグアノシン一リン酸(deoxyguanosine monophosphate、dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(deoxyguanosine diphosphate、dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(deoxyguanosine triphosphate、dGTP)、デオキシウリジン一リン酸(deoxyuridine monophosphate、dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(deoxyuridine diphosphate、dUDP)及びデオキシウリジン三リン酸(deoxyuridine triphosphate、dUTP)が含まれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語はまた、天然に存在するヌクレオチドと比較して修飾された核酸塩基、糖及び/又はリン酸部分を含むタイプのヌクレオチドである、任意のヌクレオチドアナログを包含することが意図される。例となる修飾核酸塩基の例には、イノシン、キササニン、ヒポキササニン、イソシトシン、イソグアニン、2-アミノプリン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、2-プロピルグアニン、2-プロピルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、15-ハロウラシル、15-ハロシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン又はグアニン、8-アミノアデニン又はグアニン、8-チオールアデニン又はグアニン、8-チオアルキルアデニン又はグアニン、8-ヒドロキシルアデニン又はグアニン、5-ハロ置換ウラシル又はシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニンなどが含まれる。当技術において公知のとおり、ある特定のヌクレオチドアナログは、ポリヌクレオチド、例えば、アデノシン5’-ホスホスルフェートなどのヌクレオチドアナログに組み込まれた状態にはなり得ない。ヌクレオチドは、任意の好適な数のホスファート、例えば、3、4、5、6、又は6を超えるホスフェートを含み得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、相互に結合しているヌクレオチドの配列を含む分子を指す。ポリヌクレオチドは、ポリマーの非限定的な一例である。ポリヌクレオチドの例は、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)、リボ核酸(ribonucleic acid、RNA)、及びそれらのアナログを含む。ポリヌクレオチドは、RNA又は一重鎖DNAなどのヌクレオチドの一重鎖配列であり得、二重鎖DNAなどのヌクレオチドの二重鎖配列であるか、又はヌクレオチドの一重鎖及び二重鎖配列の混合物を含み得る。二本鎖DNA(double stranded DNA、dsDNA)は、ゲノムDNA、及びPCR及び増幅生成物を含む。一本鎖DNA(single stranded DNA、ssDNA)は、dsDNAに変換され得、その反対もあり得る。ポリヌクレオチドには、エナンチオマーDNAなどの天然に存在しないDNAが含まれ得る。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの正確な配列は、既知であっても未知であってもよい。以下は、ポリヌクレオチドの例である:遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、発現配列タグ(expressed sequence tag、EST)、又は遺伝子発現連続分析(serial analysis of gene expression、SAGE)タグ)、ゲノムDNA、ゲノムDNA断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いかなる配列の単離されたDNA、いかなる配列の単離されたRNA、核酸プローブ、前述のいずれかのプライマー又は増幅されたコピー。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドをポリヌクレオチドに重合することによってポリヌクレオチドを組み立てる活性部位を有する酵素を意味することが意図される。ポリメラーゼは、プライミングされた一重鎖標的ポリヌクレオチドに結合し、ヌクレオチドをプライマーに連続的に付加して成長させ、標的ポリヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する「相補的コピー」ポリヌクレオチドを形成することができる。次いで、別のポリメラーゼ、又は同じポリメラーゼは、その相補的コピーポリヌクレオチドの相補的コピーを形成することによって、標的ヌクレオチドのコピーを形成することができる。かかるコピーのいずれも、本明細書では「アンプリコン」と称され得る。DNAポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに結合し、次いで、標的ポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチド鎖の3’末端の遊離ヒドロキシル基に連続的に付加して成長させ(アンプリコン成長)つつ、標的ポリヌクレオチドを下流へ移動することができる。DNAポリメラーゼは、DNA鋳型から相補的DNA分子を合成し得、RNAポリメラーゼは、DNA鋳型からRNA分子を合成し得る(転写)。ポリメラーゼは、短いRNA又はDNA鎖(プライマー)を使用して、鎖成長を開始し得る。いくつかのポリメラーゼは、それらが鎖に塩基を付加する部位の上流の鎖を置換し得る。かかるポリメラーゼは、鎖置換であるとも言われ得、これは、ポリメラーゼによって読み取られる鋳型鎖から相補鎖を除去する活性を有すると言われ得る。鎖置換活性を有する例示的なポリメラーゼには、Bst(バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus))ポリメラーゼ、エキソ-クレノウポリメラーゼ又はシークエンシンググレードT7エキソ-ポリメラーゼの大きな断片が含まれるが、これらに限定されない。いくつかのポリメラーゼは、それらの前の鎖を切断し、それを成長する鎖に効果的に置き換える(5’エキソヌクレアーゼ活性)。いくつかのポリメラーゼは、それらの後ろの鎖を分解する活性を有する(3’エキソヌクレアーゼ活性)。いくつかの有用なポリメラーゼは、3’及び/又は5’エキソヌクレアーゼ活性を低減又は排除するために変異又は他の方法で修飾されている。
【0060】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、ヌクレオチドが遊離3’OH基を介して付加され得るポリヌクレオチドとして定義される。プライマーの長さは、任意の好適な数の塩基の長さであり得、天然及び/又は非天然ヌクレオチドの好適な組み合わせを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、プライマーにハイブリダイズする(プライマーに相補的な配列を有する)「アダプター」を含み得、プライマーの遊離3’OH基にヌクレオチドを付加することによって相補的コピーポリヌクレオチドを生成するように増幅され得る。プライマーは、基板に結合され得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「基板」とは、本明細書に記載されている組成物のための支持体として使用される材料を指す。例となる基板材料は、ガラス、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、オルガノ-シリケート(例えば、多面体有機シルセスキオキサン(polyhedral organic silsesquioxanes、POSS))、ポリアクリレート、酸化タンタル、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor、CMOS)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。POSSの一例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、本出願に使用される基板は、ガラス、溶融シリカ、又は他のシリカ含有材料などのシリカベースの基板を含む。いくつかの例では、基板は、シリコン、窒化ケイ素、又は水素化シリコーンを含み得る。いくつかの例では、本出願において使用される基板は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリ(メタクリル酸メチル)などのブラスチック材料又は構成成分を含む。プラスチック材料の例は、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、及び環式オレフィンポリマー基板を含む。いくつかの例では、基板は、シリカベースの材料若しくはプラスチック材料、又はそれらの組み合わせであるか、又はそれらを含む。特定の例では、基板は、ガラス又はケイ素系ポリマーを含む少なくとも1つの表面を有する。いくつかの例では、基板は金属を含み得る。一部のこのような例では、金属は金である。いくつかの例では、基板は、金属酸化物を含む少なくとも1つの表面を有する。一例では、表面は、酸化タンタル又は酸化スズを含む。アクリルアミド、エノン、又はアクリレートもまた、基板材料又は構成成分として利用することができる。他の基板材料としては、ガリウムヒ素、インジウムホスフィド、アルミニウム、セラミック、ポリイミド、石英、樹脂、ポリマー、石英、樹脂、ポリマー及びコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの例では、基板及び/又は基板表面は、石英であり得るか、又は石英を含み得る。いくつかの他の例では、基板及び/又は基板表面は、GaAs又はITOなどの半導体であり得るか、又はそれを含み得る。上述のリストは、本出願を例示することが意図されているが、本出願を限定するものではない。基板は、単一の材料又は複数の異なる材料を含み得る。基板は、複合材又は積層体であり得る。いくつかの例では、基板は、有機シリケート材料を含む。基板は、平坦、円形、球形、棒状、又は任意の他の好適な形状であり得る。基板は、剛性であってもよく、又は可撓性であってもよい。いくつかの例では、基板は、ビーズ又はフローセルである。
【0062】
いくつかの例では、表面はパターン化された表面である。「パターン化された表面」は、基板の露出層内又はその上における、異なる領域の配列を指す。例えば、1つ以上の領域は、1つ以上の捕捉プライマーが存在する特徴であり得る。この特徴は、捕捉プライマーが存在しない間隙領域によって分離され得る。いくつかの例では、パターンは、行及び列にある特徴のx-yフォーマットであり得る。いくつかの例では、パターンは、特徴及び/又は間隙領域の繰り返し配列であり得る。いくつかの例では、パターンは、特徴及び/又は間隙領域のランダム配列であり得る。いくつかの例では、基板は、表面にウェル(窪み)のアレイを含む。ウェルは、実質的に垂直な側壁によって提供され得る。ウェルは、フォトリソグラフィ、スタンピング技術、成形技術、及びマイクロエッチング技術を含むがこれらに限定されない様々な技術を使用して、当該技術分野において一般的に知られているように製造することができる。当該技術分野において理解されるように、使用される技術は、アレイ基板の組成物及び形状に依存する。
【0063】
基板のパターン付き表面内の特徴としては、パターン化された、ポリ(N-(5-アジドアセトアミルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)(PAZAM)などの共有結合性のゲルが、ガラス、シリコン、プラスチック、又は他の適切な材料の上にアレイ状に並んだウェルなどが挙げられ得る。このプロセスは、シークエンシングのために使用されるゲルパッドを作成し、これは、多数のサイクルでシークエンシング操作にわたって安定であり得る。ポリマーをウェルに共有結合することは、様々な用途の間に、構造化基板の寿命全体にわたってゲルを構造化特徴部に維持するのに有用であり得る。しかしながら、多くの例では、ゲルは、ウェルに共有結合される必要はない。例えば、いくつかの条件では、構造化基板のどの部分にも共有結合されていないシランフリーのアクリルアミド(silane free acrylamide、SFA)をゲル材料として使用することができる。
【0064】
特定の例では、構造化基板は、ウェル(例えば、マイクロウェル又はナノウェル)を用いて好適な材料をパターン化し、パターン化された材料をゲル材料(例えば、PAZAM、SFA、又はその化学修飾された変異体、例えばSFAのアジド化型(アジド-SFA)など)でコーティングし、ゲルでコーティングされた材料を、例えば化学的研磨又は機械的研磨によって研磨することによって作製することができ、それによって、ウェル内にゲルが保持されるが、ウェル間の構造化基板の表面の間隙領域からは、実質的に全てのゲルを除去されるか又は不活性化される。プライマーは、ゲル材料に結合され得る。次いで、複数の標的ポリヌクレオチド(例えば、断片化されたヒトゲノム又はその一部)を含む溶液を、個々の標的ポリヌクレオチドがゲル材料に付着したプライマーとの相互作用を介して個々のウェルにシードされるように、研磨された基板と接触させ得るが、標的ポリヌクレオチドは、ゲル材料が存在しないか又はそれが不活性であるため、間隙領域を占有しない。標的ポリヌクレオチドの増幅は、間隙領域内のゲルの不在又は不活性により、クラスタの外向きの移動を防止するため、ウェル内に限局され得る。このプロセスは、簡便な製造が可能であり、スケーラブルであり、また従来のマイクロ又はナノ製造方法を利用するものである。
【0065】
パターン化された基板としては、例えば、スライド又はチップにエッチングされたウェルが挙げられ得る。ウェルのエッチング及び幾何学形状のパターンは、様々な異なる形状及びサイズとすることができ、かかる特徴は、互いに物理的又は機能的に分離可能であり得る。かかる構造的特徴を有する特に有用な基板としては、ミクロスフェアなどの、固体粒子のサイズを選択し得るパターン化基板が挙げられる。これらの特性を有するパターン化基板の例は、BEAD ARRAY technology(Illumina,Inc.,San Diego,CA)に関連して使用されるエッチング基板である。
【0066】
いくつかの例では、本明細書に記載されている基板は、フローセルの少なくとも一部を形成するか、又はフローセル内に位置するか、又はフローセルに結合されている。フローセルは、複数のレーン又は複数のセクターに分割されているフローチャンバを含んでもよい。本明細書に記載の方法及び組成物で使用され得るフローセル及びフローセルの製造のための基板の例には、Illumina,Inc.(San Diego,CA)から市販されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「複数の」とは、2つ以上の異なるメンバーの集団を意味することを意図する。複数とは、小さい、中程度、大きい、から非常に大きいサイズまでの範囲であり得る。小さいサイズの複数とは、例えば、数メンバー~数十メンバーの範囲であり得る。中程度のサイズの複数とは、例えば、数十メンバー~約100メンバー又は数百メンバーの範囲であり得る。大きい複数とは、例えば、約数百メンバー~約1000メンバー、数千メンバー、及び数万メンバーの範囲であり得る。非常に大きな複数とは、例えば、数万メンバー~約数十万、数百万、数千万、又は数億以上のメンバーの範囲であり得る。したがって、複数は、2から1億をはるかに超えるメンバーのサイズの範囲、並びにメンバーの数によって測定される全てのサイズの間及び上記の例示的な範囲よりも大きい範囲であり得る。複数のポリヌクレオチドの例としては、例えば、約1×105以上、5×105以上又は1×106以上の異なるポリヌクレオチドの集団が挙げられる。したがって、この用語の定義は、2より大きい全ての整数値を含むことが意図される。複数値の上限は、例えば、試料中のポリヌクレオチド配列の理論的多様性によって設定され得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「標的ポリヌクレオチド」は、分析又は動作の対象であるポリヌクレオチドを意味することが意図される。分析又は動作は、ポリヌクレオチドを増幅、配列決定、及び/又は他の手順に供することを含む。標的ポリヌクレオチドは、分析される標的配列に追加のヌクレオチド配列を含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、プライマー結合部位として機能するアダプターを含む1つ以上のアダプターを含み得、それは、分析される標的ポリヌクレオチド配列の側方にある(flank)。
【0069】
「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書においては交換可能に使用される。用語の違いは、特に明記しない限り、サイズ、配列、又は他の特性の任意の特定の違いを示すことを意図するものではない。説明を明確にするために、いくつかのポリヌクレオチド種を含む特定の方法又は組成物を説明する際に、1つの種のポリヌクレオチドを別の種と区別するために用語を使い分けてもよい。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「アンプリコン」は、ポリヌクレオチドに関して使用する場合、ポリヌクレオチドの複製による生成物を意味し、この生成物は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の少なくとも一部と実質的に同じ又は相補的なヌクレオチド配列を有する。「増幅」及び「増幅すること」は、ポリヌクレオチドのアンプリコンを作製するプロセスを指す。標的ポリヌクレオチドの第1のアンプリコンは、典型的には相補的なコピーであり得る。追加的なアンプリコンは、第1のアンプリコンの生成後に、標的ポリヌクレオチド又は第1のアンプリコンから作成されたコピーである。後続のアンプリコンは、標的ポリヌクレオチドと実質的に相補的であるか、又は標的ポリヌクレオチドと実質的に同一である配列を有し得る。ポリヌクレオチドの(例えば、増幅アーチファクトによる)少数の変異が、そのポリヌクレオチドのアンプリコンを生成するときに起こり得ることは理解されるであろう。
【0071】
本明細書で使用される場合、「メチルシトシン」又は「mC」という用語は、メチル基(-CH3又は-Me)を含むシトシンを指す。メチル基はシトシンの5位に位置してもよく、その場合、mCは5mCと称され得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、メチルシトシンの「誘導体」は、酸化メチル基を有するメチルシトシンを指す。酸化されたメチル基の非限定的な例は、ヒドロキシメチル(-CH2OH)であり、その場合、mC誘導体は、ヒドロキシメチルシトシン又はhmCと称され得る。酸化メチル基の別の非限定的な例はホルミル基(-CHO)であり、この場合、mC誘導体はホルミルシトシン又はfCと称され得る。酸化メチル基の別の非限定的な例は、カルボキシル(-COOH)であり、この場合、mC誘導体は、カルボキシルシトシン又はcaCと称され得る。酸化メチル基はシトシンの5位に位置してもよく、その場合、hmCは5hmCと呼ばれてもよく、fCは5fCと呼ばれてもよく、又はcaCは5caCと呼ばれてもよい。
【0073】
本明細書で使用される場合、チミン(T)の「誘導体」とは、酸化メチル基を有するチミンを指す。酸化メチル基の非限定的な例は、ヒドロキシメチル(-COH)であり、この場合、T誘導体は、ヒドロキシチミン又はhTと称され得る。酸化メチル基はチミンの5位に位置してもよく、この場合、hTは5hTと称されてもよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)は、以下の構造を有する化合物を指す。
【化3】
スルホニウム(S+)イオンに結合したメチル基は、上で参照したDeen et al.に記載されているような方法でメチルトランスフェラーゼによってシトシンに転移させることができる。塩素(Cl-)などの対イオンが存在する可能性があるか、又はプロトンをCOOHから除去して中性原子を提供することができる。更に、溶液中のアミノ酸は、双性イオンアイソフォーム(COO-、NH3+)であってもよい。
【0075】
本明細書で使用される場合、S-アデノシル-L-メチオニン類似体(xSAM)という用語は、以下の構造であって、
【化4】
式中、Xは、保護基と、メチレン基であって、それを介して保護基がSに結合するメチレン基と、を含む、構造を有する化合物を指す。Xは、1つ以上の酵素の活性に適合していてもよく、1つ以上の酵素の活性を阻害していてもよい。例えば、本明細書においてより詳細に記載されるように、Xは、メチルトランスフェラーゼ酵素の活性と適合性であり得、その結果、メチルトランスフェラーゼは、Deem et al.に記載されているのと同様の様式で、xSAMに作用して、xSAMのスルホニウムイオンに結合したXをシトシンに移動させてXCを形成することができ、メチルトランスフェラーゼはSAMに作用して、スルホニウム結合メチル基をシトシンに移動させてmCを形成する。それに加えて、又はその代わりに、Xは、シチジンデアミナーゼ酵素の活性と不適合であり得、その結果、シチジンデアミナーゼ酵素は、他の場合ではシチジンデアミナーゼがCに作用してUを形成し、mCに作用してTを形成し、又はhmCに作用してhTを形成するのと同様の様式でXCを脱アミノ化するようにXCに作用し得ない。Xの非限定的な例としては、メチレンアルキン基
【化5】
メチレンカルボキシル基
【化6】
メチレンアミノ基
【化7】
メチレンヒドロキシメチル基
【化8】
メチレンイソプロピル基
【化9】
又はメチレン色素基
【化10】
が挙げられる。
【0076】
本明細書で使用使用される場合、「メチルトランスフェラーゼ酵素」又は「MTase」は、基質にメチル基を付加(又は「メチル化」)し得るか、又は基質からメチル基を除去(又は「脱メチル化」)し得る酵素を指す。いくつかのメチルトランスフェラーゼは、SAM由来のメチル基(Me)を基質(例えば、C)に付加し得、そしてまた、代替的に、XSAM由来の保護基(X)をこのような基質(例えば、C)に付加し得る。保護基XをXSAMからCに付加するのに適したメチルトランスフェラーゼの非限定的な例としては、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Jin et al.,「DNA methytransferases(DNMTs),DNA damage repair,and cancer,」Adv Exp Med Biol.754:3-29(2013)に記載されているDNMT1、DNMT3A、及びDNMT3Bなどの哺乳動物メチルトランスフェラーゼ、並びにNew England Biolabs(Ipswitch,MA)から市販されているdam及びCpG(M.SssI)などの細菌メチルトランスフェラーゼが挙げられる。いくつかのメチルトランスフェラーゼは、caCなどの基質から酸化メチル基(ホルミル又はカルボキシルなど)を除去することができる。SAMの非存在下でcaCを脱炭酸し得るメチルトランスフェラーゼの非限定的な例としては、細菌C5-メチルトランスフェラーゼM.HhaI及びM.SssIが挙げられる(後者はまた、上記のような様式でXSAM由来の保護基XをCに付加するために使用され得る)。caCからカルボキシ基を除去してCを形成するためのメチルトランスフェラーゼの使用の更なる詳細については、全内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Liutkeviciute et al.,「Direct decarboxylation of 5-carboxylcytosine by DNA C5-methyltransferases,」J.Am.Chem.Soc.136(16):5884-5887(2014)を参照されたい。
【0077】
本明細書で使用される場合、「チミンデグリコシダーゼ」(TDG)は、fC又はcaCから塩基を切除し、切除された塩基をCで置き換える酵素を指し、これは塩基除去修復(BER)と呼ばれ得る反応である。TDG及びBERに関する更なる詳細については、全内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Kohli et al.,「TET enzymes,TDG and the dynamics of DNA methylation,」Nature 502(7472):472-479(2013)を参照されたい。
【0078】
本明細書で使用される場合、「シチジンデアミナーゼ酵素」は、シトシン及び/又は1つ以上のシトシン誘導体を脱アミノ化する酵素を指す。脱アミノ化は、シトシン又はシトシン誘導体の6位で行うことができる。例えば、シチジンデアミナーゼ酵素は、シトシンを脱アミノ化してUを形成することができ、mCを脱アミノ化してTを形成することができ、並びに/あるいはhmCを脱アミノ化してhTを形成することができる。シチジンデアミナーゼ酵素は、必ずしも全ての可能なシトシン誘導体を脱アミノ化しなくてもよい。例えば、シチジンデアミナーゼ酵素は、5位にXを含むシトシンを脱アミノ化しなくてもよく、fCを脱アミノ化してホルミルウリジン(fU)を形成しなくてもよく、及び/又はcaCを脱アミノ化してカルボキシウリジン(caU)を形成しなくてもよい。シトシンを脱アミノ化してUを形成し得る、mCを脱アミノ化してTを形成し得る、及び/又はhmCを脱アミノ化してhTを形成し得る、並びにfCを脱アミノ化してfUを形成しなくてもよい、及び/又はcaCを脱アミノ化してcaUを形成しなくてもよいシチジンデアミナーゼ酵素の非限定的な例は、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様(APOBEC)である。そのようなAPOBECの非限定的な例には、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3E、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、及びAPOBEC4が含まれる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「β-グルコシルトランスフェラーゼ酵素」又は「βGT」は、グルコース基(例えば、グルコース又はグルコース誘導体)をhmCに、例えば、hmCの5位のヒドロキシメチル基に付加して、β-グルコシル-5-ヒドロキシメチルシトシン(1,2)を形成する酵素を指す。βGTの非限定的な例は、New England Biolabs(Ipswitch,MA)から市販されているT4ファージβ-グルコシルトランスフェラーゼ(T-4BGT)である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「β-アラビノシルトランスフェラーゼ酵素」又は「βAT」は、アラビノース基をhmCに、例えばhmCの5位のヒドロキシメチル基に付加して、アラビノシル-hmCを形成する酵素を指す。βATの非限定的な例は、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Thomas et al.,「The odd ‘RB’Phage-identification of arabinosylation as a new epigenetic modification of DNA in T4-like phage RB69,」Viruses 10(6):313,18 pages(2018)に記載される、T4様ファージRB69 ORF003cである。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「保護基」は、酵素の活性を阻害する化学基を意味することが意図される。例えば、メチレン基を介してシトシンの5位に結合される保護基は、他の場合ではシトシンを脱アミノ化してウラシルを形成するシチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害し得る。別の例として、hmCの5位のヒドロキシメチル基における保護基(例えば、グルコース又はアラビノースなどの糖)は、他の場合ではhmCを脱アミノ化してヒドロキシチミンを形成するシチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害し得る。
【0082】
xSAMSを用いてメチルシトシン及びその誘導体を検出するための組成物及び方法
本明細書で提供されるいくつかの例は、xSAMsを用いたメチルシトシン及びその誘導体の検出に関する。そのような検出を行うための組成物及び方法が開示される。
【0083】
例えば、シトシン(C)及びメチルシトシン(mC)を含み、そしてまたヒドロキシメチルシトシン(hmC)を含み得る配列を有する標的ポリヌクレオチドは、脱アミノ化からCを保護し、次いでmCを脱アミノ化してチミン(T)を形成し、hmCを脱アミノ化してヒドロキシチミン(hT)を形成するような様式で修飾され得る。以下により詳細に記載されるような様式で、その後、配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅される場合、T及び任意のhTは、チミジン(T)として増幅され、したがって、mC及びhmCは、Tとして配列決定され得る。比較において、非メチル化(及び保護)Cは、Cとして増幅され、配列決定される。したがって、配列中の任意のCは、mC及びhmCのようにT又はT誘導体に変換されていないので、Cに対応するものとして同定され得る。したがって、本方法は、非メチル化CがCとして配列決定され得る「4塩基」配列決定法を提供し、したがって、その塩基によって保有されるゲノム情報を保存する。以下により詳細に記載されるような様式で、mC及びhmCは、更なる反応スキームを使用して互いに区別され得る。
【0084】
図1は、xSAMSを用いてメチルシトシン(mC)及びその誘導体を検出するための一連の反応を概略的に示す。
図1に示されるように、脱アミノ化からCを保護することは、Cの5位に第1の保護基を付加することを含み得る。例えば、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素(MTase)は、XをCの5位に付加して、
図1に示されるような様式でXCを形成し得、ここで、Xは、保護基及びメチレン基を含み、メチレン基を介して保護基がCに結合される。例示的には、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素は、以下の構造であって、
【化11】
式中、Xは、第1の保護基と、メチレン基であって、それを介して第1の保護基がスルホニウムイオンに結合するメチレン基と、を含む、構造を有するxSAMからXを付加し得る。非限定的な例では、第1の保護基は、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含み得る。スルホニウムに結合した第1の保護基及びメチレン基を有するxSAMは、スルホニウムに結合したメチル基を有するSAMの代わりに代理の補因子として働くことができ、したがって、メチルトランスフェラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の任意の非メチル化Cの5位にメチレン基(それに結合した第1の保護基を有する)を共有結合的に付着させて、5XCを形成することができる。メチルトランスフェラーゼの作用中に、ポリヌクレオチド、xSAM、及びxSAMからのXをポリヌクレオチド中のCに付加するメチルトランスフェラーゼ酵素を含む組成物が形成され得る。適切な量のメチルトランスフェラーゼ及びxSAMが、細胞外液中でポリヌクレオチドと混合され得ることが理解される。例えば、xSAMは化学量論的試薬であるため、少なくともゲノム試料中に存在するCと同じ量のxSAMを添加してもよく、過剰のxSAMを添加してもよい。
【0085】
図1に示すように、メチルトランスフェラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の任意のmC及び/又は任意のmC誘導体にXを付加することができない場合がある(したがって、第1の保護基を付加することができない場合がある)ことに留意されたい。例えば、mCのメチル基は、メチル基が既にその位置を占めているので、mCの5位へのX(及び第1の保護基)の付加を阻害し得る。同様に、任意のhmCのヒドロキシメチル基は、hmCの5位へのX(及び第1の保護基)の付加を阻害し得、任意のfCのホルミル基は、fCの5位へのX(及び第1の保護基)の付加を阻害し得、任意のcaCのカルボキシル基は、caCの5位へのX(及び第1の保護基)の付加を阻害し得る。
【0086】
標的ポリヌクレオチド中のCの保護に続いて、mC及び/又はその誘導体のいずれかを、例えばシチジンデアミナーゼ酵素を用いて脱アミノ化することができる。これに関して、第1の保護基は、第1のメチルトランスフェラーゼ酵素内に適合するように選択されてもよく、したがって第1のメチルトランスフェラーゼ酵素の活性と適合性であってもよいが、第1の保護基はシチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害し得る。更に、任意のfCのホルミル基は、シチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害し得、任意のcaCのカルボキシル基は、シチジンデアミナーゼ酵素の活性を阻害し得る。比較すると、mCのメチル基及びhmCのヒドロキシメチル基は、シチジンデアミナーゼ酵素の活性と適合し得る。したがって、
図1に示されるように、XC、任意のfC、及び任意のcaCは、シチジンデアミナーゼ酵素によって脱アミノ化され得ないが、任意のmCは脱アミノ化されてTを形成し得、任意のhmCは脱アミノ化されてhTを形成し得る。シチジンデアミナーゼ酵素の作用中に、細胞外液中にポリヌクレオチド及びシチジンデアミナーゼ酵素を含む組成物が形成され得る。ポリヌクレオチドは、XC及びmC及び/又はhmCを含み得る。シチジンデアミナーゼ酵素は、mCを脱アミノ化してTを形成するか、又はhmCを脱アミノ化してhTを形成することができる。適切な量のシチジンデアミナーゼ酵素が、細胞外液中のポリヌクレオチドと混合され得ることが理解される。例えば、シチジンデアミナーゼは、触媒量で、例えば、脱アミノ化されるmC及びhmCの数より少ない量で添加され得る。
【0087】
図1に示すように、次にPCRを行って標的ポリヌクレオチドのアンプリコンを生成することができる。アンプリコンの第1のセットにおいて、メチル化されていない保護されたCはCとして増幅されるが、T及びhTはTとして増幅され、fC及びcaCはCとして増幅される。相補的アンプリコンの第2のセットもまた、PCRを使用して生成され、ここで、メチル化されていない保護されたCはGとして増幅され、T及びhTはAとして増幅され、fC及びcaCはGとして増幅されることが理解されるであろう。次いで、アンプリコンは、合成による配列決定(SBS)などの公知の技術を使用して配列決定され得る。mC及びhmCが位置し、T及びhTが脱アミノ化を使用して生成され、Cが本xSAMを使用して保護される標的ポリヌクレオチド中の位置は、得られたアンプリコンの配列を、mC及びhmCが脱アミノ化されず、したがって、Cとして(又は相補的アンプリコンではGとして)増幅され、配列決定されるアンプリコンの配列と比較することによって決定することができる。脱アミノ化アンプリコンにおいてT(又はA)であり、非脱アミノ化アンプリコンにおいてC(又はG)である塩基は、hC及び/又はhmCに対応するものとして同定することができる。
【0088】
例えば、
図2は、
図1の選択された反応を概略的に示す。
図2に、例示的なポリヌクレオチド配列CCGT(5hmC)GGAC(mC)GC(配列番号1)を示す。他のCは、メチルトランスフェラーゼ酵素によってxSAMから転移された保護基(X)を用いて保護される。次いで、シチジンデアミナーゼ酵素(例えば、APOBEC)が、5hmC及び5mCを脱アミノ化するために使用され、配列CCGT(5hT)GGAC(T)GC(配列番号2)を生じ、これは、PCRによって増幅され、次いで、
【化12】
として配列決定され、ここで、太字のTは、元の配列中の5hmC及びmCに対応する。5hmC及びmCの標的ポリヌクレオチドにおける存在及び位置は、配列
【化13】
(太字のCは元の配列における5hmC及びmCに対応する)を得るための保護及び脱アミノ化工程なしで標的ポリヌクレオチドを増幅及び配列決定することと、標的ポリヌクレオチドのこれらのアンプリコンの配列を、保護及び脱アミノ化後のアンプリコンの配列の配列と比較することと、によっても検出され得る。そのような比較を通して、太字のCがCからTに「変換」されていることが分かり得、脱アミノ化が起こったこと、したがってmC又はhmCが元々それらの位置に存在していたことを示している。
【0089】
更に、上で更に述べたように、本開示は、メチルシトシン及び特定のその誘導体を互いに区別するための方法を提供する。例えば、
図3は、xSAMSを用いて、mC及びその誘導体を検出するための、及びメチルシトシン誘導体を互いに区別するための反応スキームの更なるセットを概略的に示す。
【0090】
図3に示すように、mC及びhmCは、xSAMsを用いてCを保護した後であるが脱アミノ化の前に、追加の反応を用いて互いに区別することができる。そのような反応は、標的ポリヌクレオチド中のhmCを脱アミノ化から保護し、したがって、hmCは脱アミノ化中にhTに変換されず(したがって、増幅され、Cとして配列決定され)、一方、mCはTに変換される(したがって、増幅され、Tとして配列決定される)。脱アミノ化からhmCを保護することは、hmCのヒドロキシメチル基に第2の保護基を付加してgmCを形成することを含み得る。実例として、β-グルコシルトランスフェラーゼ(βGT)又はβ-アラビノシルトランスフェラーゼ(βAT)酵素などの糖転移酵素は、hmCのヒドロキシメチル基に第2の保護基を付加することができる。第2の保護基は、糖供与体から転移された糖、例えば、グルコシル供与体から転移されたグルコース若しくはグルコース誘導体(例えば、UDP-グルコース、若しくはUDP-6-アジド-グルコース)、又はアラビノース供与体から転移されたアラビノース(例えば、UDP-アラビノース)を含み得、糖-メチルシトシン(sMC)を形成する。糖転移酵素の作用の間、細胞外液中にポリヌクレオチド及び酵素を含む組成物が形成され得る。ポリヌクレオチドは、XC及びhmCを含み得、酵素は、第2の保護基をhmCに付加し得る。適切な量の酵素が、細胞外液中のポリヌクレオチドと混合され得ることが理解される。例えば、酵素を触媒量で付加してもよく、糖供与体を化学量論量又は過剰量で添加してもよい。
【0091】
次いで、ポリヌクレオチド中の保護されていないメチルシトシンは、例えば、
図1を参照して記載されるような様式でシチジンデアミナーゼ酵素を使用して脱アミノ化されてTを形成し得、次いで、配列が増幅され、配列決定され得る。6-アジド-グルコースなどのグルコース誘導体の使用は、例えば、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Song et al.,「Simultaneous single-molecule epigenetic imaging of DNA methylation and hydroxymethylation,」PNAS 113(16):4338-4343(2016)に記載されているような様式での色素とアジドとのクリックケミストリー反応などを介して、グルコースへの更なる修飾を可能にし得ることに留意されたい。
【0092】
hmCをmCから区別するために、
図1を参照して記載されるC保護及び脱アミノ化工程は、標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して行われ得、その後増幅及び配列決定が続き、
図3を参照して記載されるC保護、hmC保護、及び脱アミノ化工程は、標的ポリヌクレオチドを含む第2の試料に対して行われ得、その後増幅及び配列決定が続く。第1の試料由来のアンプリコンの配列は、第2の試料由来のアンプリコンの配列及び/又は元の配列のアンプリコンと比較され得る。このような比較を通して、元の配列と比較して、第1の試料においてCからTに「変換」されるCは、mC又はhmCに対応し、第1の試料と比較して、第2の試料においてTからCに同様に「変換」されないこのようなCは、hmCに対応することが理解され得る。
【0093】
更に、又はあるいは、
図3に示されるように、fC及びcaCは、xSAMsを使用してCを保護した後であるが脱アミノ化の前に、1つ以上の更なる反応を使用して、Cから区別され得る。より具体的には、標的ポリヌクレオチドがfC及び/又はcaCを含む場合、任意のfC由来のホルミル基及び/又は任意のcaC由来のカルボキシル基は、脱アミノ化前に除去されて、脱アミノ化されてUを形成し得る保護されていないCを形成し得る。カルボキシル基の除去は、本明細書の他の箇所に記載されるようなメチルトランスフェラーゼ酵素を使用して実施され得るか、又はfC若しくはcaCの塩基は、本明細書の他の箇所に記載されるような様式でチミンデグリコシラーゼ(TDG)を使用してCで置換され得る。次いで、ポリヌクレオチド中の保護されていないCは、例えば、
図1を参照して記載されるような様式でシチジンデアミナーゼ酵素を使用して、脱アミノ化されてUを形成し得、次いで、配列が増幅され、配列決定され得る。fC及び/又はcaCをCから区別するために、
図1を参照して記載されるC保護及び脱アミノ化工程は、標的ポリヌクレオチドを含む第1の試料に対して実施され得、増幅及び配列決定が続き、
図3を参照して記載されるC保護、fC及び/又はcaC脱保護、並びに脱アミノ化工程は、標的ポリヌクレオチドを含む第2の試料に対して実施され得、増幅及び配列決定が続く。第1の試料由来のアンプリコンの配列は、第2の試料由来のアンプリコンの配列及び/又は元の配列のアンプリコンと比較され得る。このような比較を通して、元の配列と比較して、第1の試料においてCのままであるCは、C、fC、又はcaCに対応し、第1の試料と比較して、第2の試料においてCからTに「変換」されるこのようなCは、fC又はcaCに対応することが理解され得る。メチルトランスフェラーゼ又はTDG酵素の作用の間、細胞外液中にポリヌクレオチド及び酵素を含む組成物が形成され得る。ポリヌクレオチドは、XC及びfC及び/又はcaCを含み得る。酵素は、fC及び/又はcaCをCに変換してもよい。適切な量のメチルトランスフェラーゼ酵素が、例えば、触媒量で、細胞外液中のポリヌクレオチドと混合され得ることが理解される。
【0094】
本明細書に提供されるいくつかの例では、標的ポリヌクレオチドはDNAを含むが、本発明の方法及び組成物は、RNAなどの任意の適切なタイプのポリヌクレオチド中のmC及び/又はその誘導体を検出するために適切に修飾され得ることが理解される。ポリヌクレオチドは、細胞外液試料から単離され得、5位に第1の保護基を含むCと、
図1~2を参照して記載される反応スキームを使用して提供されるようなTと、を含み得る。第1の保護基は、メチレン基を介してCに結合されてもよく、例示的に、アルキン基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、イソプロピル基、又は色素を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、
図3を参照して記載される反応スキームを使用して提供されるような、糖(例えば、グルコース又はアラビノース)などの第2の保護基を含み得るhmCを更に含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、
図1~2を参照して記載される反応スキームを使用して提供されるようなhTを更に含み得る。ポリヌクレオチドは、
図1~2を参照して記載される反応スキームを使用して提供されるように、ホルミルシトシン(fC)を更に含んでもよく、及び/又はカルボキシルシトシン(caC)を含んでもよい。あるいは、ポリヌクレオチドは、
図3を参照して記載される反応スキームを使用して提供されるように、Uを含み得る。
【0095】
増幅及び配列決定を容易にするために、標的ポリヌクレオチドは、例えば、目的の配列に隣接する第1及び第2のアダプターを含んでもよい。このようなアダプターは、xSAMSを使用してCを保護する前に標的ポリヌクレオチドに付加されてもよく、脱アミノ化工程後に標的ポリヌクレオチドに付加されてもよく、又は任意の他の適切な時点で付加されてもよい。
【0096】
本明細書に提供される任意の適切な様式で修飾される標的ポリヌクレオチドの配列決定に関するいくつかの更なる詳細を提供するために、修飾標的ヌクレオチドの第1及び第2の相補的アンプリコンが生成され得る。第1のアンプリコンは、保護されたC(XC)に相補的な位置に第1のC、及びTに相補的な位置に第1のアデニン(A)を含み得る。第2のアンプリコンは、第1のGに相補的な位置に第1の保護されていないC、及び第1のAに相補的な位置に第1のチミン(T)を含み得る。第1のアンプリコン、第2のアンプリコン、又は第1のアンプリコン及び第2のアンプリコンの両方が配列決定され得る。mCは、例えば、
図1及び2を参照して記載されるような様式で、第1のアンプリコン中の第1のA、第2のアンプリコン中の第1のT、又は第1のアンプリコン中の第1のA及び第2のアンプリコン中の第1のTの両方に基づいて同定され得る。
【0097】
図1及び
図2を参照して記載されるようないくつかの例では、第1のアンプリコンは、hTに相補的な位置に第2のAを含み、第2のアンプリコンは、第2のAに相補的な位置に第2のTを含む。hmCは、第1のアンプリコン中の第2のA、第2のアンプリコン中の第2のT、又は第1のアンプリコン中の第2のA及び第2のアンプリコン中の第2のTの両方に基づいて同定され得る。
図3を参照して記載される追加の反応を使用するなどの他の例において、第1のアンプリコンは、hmCに相補的な位置に第2のGを含み、第2のアンプリコンは、第2のGに相補的な位置に第2の保護されていないCを含む。hmCは、第1のアンプリコン中の第2のG、第2のアンプリコン中の第2の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第2のG及び第2のアンプリコン中の第2の保護されていないCの両方に基づいて同定され得る。
【0098】
図1及び2を参照して記載されるようないくつかの例では、第1のアンプリコンは、fCに相補的な位置に第3のGを含み、第2のアンプリコンは、第3のGに相補的な位置に第3の保護されていないCを含む。fCは、第1のアンプリコン中の第3のG、第2のアンプリコン中の第3の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第3のG及び第2のアンプリコン中の第3の保護されていないCの両方に基づいて同定され得る。
図3を参照して記載される更なる反応を使用するような他の例において、第1のアンプリコンは、Uに相補的な位置に第3のAを含み、第2のアンプリコンは、第3のAに相補的な位置に第3のTを含む。fCは、第1のアンプリコン中の第3のA、第2のアンプリコン中の第3のT、又は第1のアンプリコン中の第3のA及び第2のアンプリコン中の第3のTの両方に基づいて同定され得る。
【0099】
図1及び2を参照して記載されるようないくつかの例では、第1のアンプリコンは、caCに相補的な位置に第4のGを含み、第2のアンプリコンは、第4のGに相補的な位置に第4の保護されていないCを含む。caCは、第1のアンプリコン中の第4のG、第2のアンプリコン中の第4の保護されていないC、又は第1のアンプリコン中の第4のG及び第2のアンプリコン中の第4の保護されていないCの両方に基づいて同定され得る。
図3を参照して記載される更なる反応を使用するような他の例において、第1のアンプリコンは、Uに相補的な位置に第4のAを含み、第2のアンプリコンは、第4のAに相補的な位置に第4のTを含む。caCは、第1のアンプリコン中の第4のA、第2のアンプリコン中の第4のT、又は第1のアンプリコン中の第4のA及び第2のアンプリコン中の第4のTの両方に基づいて同定され得る。
【0100】
更なるコメント
様々な例示的な例が上に記載されているが、様々な変更及び改変が、本発明から逸脱することなく、本明細書において行われ得ることは、当業者に明白であろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内に収まる、このような変更及び改変の全てを包含することが意図される。
【0101】
本明細書に記載されている利益を実現するため、本明細書に記載されている本開示の態様の各々の任意のそれぞれの特徴/例は、任意の適切な組み合わせで一緒に実施されてもよいこと、及びこれらの態様のいずれか1つ以上からの任意の特徴/例は、任意の適切な組み合わせで、本明細書に記載されている他の態様の特徴のいずれかと一緒に実施されてもよいことを理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】