(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】多層エマルジョン化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240228BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/65
A61K8/20
A61K8/24
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/84
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/92
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557712
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2022006234
(87)【国際公開番号】W WO2022255653
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072089
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513160763
【氏名又は名称】コルマー コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOLMAR KOREA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Kolmar Korea, 12-11, Deokgogae-gil, Jeonui-myeon, Sejong, 30004, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ユン ソク チョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン ジン バエ
(72)【発明者】
【氏名】ジン モ キム
(72)【発明者】
【氏名】イン キ ホン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AB282
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC421
4C083AC531
4C083AC542
4C083AC661
4C083AC841
4C083AD021
4C083AD071
4C083AD092
4C083AD211
4C083AD221
4C083AD241
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD351
4C083AD371
4C083AD391
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083CC02
4C083DD05
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD39
(57)【要約】
本発明は、界面活性剤を含有せずに、優れた安定性を示す多層エマルジョン化粧料組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル(hydrogel)層の内相と、オルガノゲル(organogel)層の中間相と、水(water)層の外相と、を含む多層エマルジョン化粧料組成物であって、
前記内相が精製水、ヒドロゲル形成物質および塩を含み、
前記塩がアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうち1種以上の塩とホスフェート塩を含み、
前記中間相がオイルおよびオルガノゲル形成物質を含み、
前記中間相の総重量を基準として、前記オルガノゲル形成物質5~40重量%を含む多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項2】
前記ヒドロゲル形成物質は、ジェランガム(Gellan Gum)、寒天(Agar)、カラギーナン(Carrageenan)、アルギネート(Alginate)、ペクチン(Pectin)、ゼラチン(Gelatin)、キサンタンガム(Xanthan gum)、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム(Guar Gum)、デンプン(Starch)、キトサン(Chitosan)、セルロース(Cellulose)およびコラーゲン(Collagen)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がカルシウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、ポタシウム塩、ナトリウム塩およびリチウム塩からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項4】
前記オルガノゲル形成物質は、N-ラウロイル-Lグルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミン、デキストリンパルミテート、デキストリンステアレート、デキストリンパルミテート/エチルヘキサノアート、デキストリンミリステート、スクロースパルミテート、スクロースステアレート、イヌリンステアレート、フルクトオリゴ糖2-エチルヘキサノアート、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール、ポリウレタン-79(Polyurethane-79)、ポリエチレン(Polyethylene)、グリセリルベヘネート(Glyceryl Behenate)、グリセリルベヘネート/エイコサジオエート(Glyceryl Behenate/Eicosadioate)、ステアロイルイヌリン(Stearoyl Inulin)、トリヒドロキシステアリン(Trihydroxystearin)、ポリブテン(Polybutene)、ポリアミド-2(Polyamide-2)、ポリアミド-3(Polyamide-3)、ポリアミド-5(Polyamide-5)、ポリアミド-8(Polyamide-8)、硬化植物油(Hydrogenated vegetable oil)およびイソホロンジイソシアネート共重合体(IPDI Copolymer)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項5】
前記内相の総重量を基準として、前記ヒドロゲル形成物質0.05~10重量%、前記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうち1種以上の塩0.005~0.5重量%および前記ホスフェート塩0.0025~0.25重量%を含む、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項6】
前記中間相の総重量を基準として、安定化剤5~40重量%をさらに含む、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項7】
前記外相の総重量を基準として、水溶性増粘剤0.05~10重量%をさらに含む、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【請求項8】
前記中間相のオルガノゲルの硬度が5~60Dyne/cm
2である、請求項1に記載の多層エマルジョン化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物、具体的には、ヒドロゲル(hydrogel)層の内相と、オルガノゲル(organogel)層の中間相と、水(water)層の外相と、を含む多層エマルジョン化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に各種効能成分を提供するための様々な種類の乳化型化粧料が使用されており、乳化型化粧料は、一般的に、水中油(oil-in-water,O/W)型と、油中水(water-in-oil,W/O)型剤形に分類される。これらは、いずれも、油相と水相を含んでいて、柔軟効果および保湿効果を提供することができる。しかしながら、水中油型剤形は、外相が水であるから、塗るときに涼しく、伸展性に優れているが、化粧持続性と耐水性が劣る短所がある。一方、油中水型剤形は、化粧持続性と耐水性に優れているが、べたつき、オイリー感などに起因して爽やかな感じを与えず、伸展性、広がり性などの使用感が良くないという短所がある。また、各種効能成分のうち不安定な成分の場合、従来の乳化型化粧料内に安定して担持させにくいため、効能成分が剤形内で析出したり分離するなどの問題がある。
【0003】
このような従来乳化型化粧料の代案としてO/W型化粧料とW/O型化粧料の長所を同時に有する水中油中水(W/O/W)型の多層エマルジョン化粧料に対する研究が進行されている。ただし、W/O/W型は、内水相と外水相との間に油相が存在する形態で外水相と内水相の電解質の濃度差に起因する浸透圧現象などによって界面膜が破壊されたり相転換現象が起こりやすいため、安定性を確保するのに困難がある。水相と油相の割合を適切に調節して、優れた使用感および界面膜の安定性を具現するために、通常、界面活性剤が使用されるが、これは、皮膚および環境に安全な成分を好む最近の消費者の好みに反するという問題がある。したがって、界面活性剤を含有せずに、水相と油相間の界面膜の安定度に優れた多層エマルジョン化粧料組成物に対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、界面活性剤を含有せずに、優れた安定性を示す多層エマルジョン化粧料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多層エマルジョン化粧料組成物は、ヒドロゲル(hydrogel)層の内相と、オルガノゲル(organogel)層の中間相と、水(water)層の外相と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、界面活性剤を含有せずに、水相と油相間の界面膜の安定度が高く、優れた安定性を示す多層エマルジョン化粧料組成物を提供する。本発明による化粧料組成物は、界面活性剤を含まないので、皮膚刺激が少なく、環境に優しく、多層エマルジョン剤形で伸展性、広がり性、使用感に優れていると同時に、化粧持続性と耐水性にも優れている。また、本発明の化粧料組成物は、多層エマルジョンが有する構造的な特性上、中間相と内相が空気と接触しないので、油溶性および水溶性からなる有効成分を1つの剤形で同時に安定化させるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】実施例7のW/O/W剤形の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について説明する。しかしながら、下記内容によってのみ限定されるのではなく、必要に応じて各構成要素が様々に変形されたり、選択的に混用されることができる。したがって、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物や代替物を含むものと理解すべきである。
【0009】
本発明は、多層エマルジョン化粧料組成物に関し、ヒドロゲル(hydrogel)層の内相と、オルガノゲル(organogel)層の中間相と、水(water)層の外相と、を含む。
【0010】
内相
本発明による多層エマルジョン化粧料組成物の内相は、ヒドロゲル(hydrogel)層であり、精製水、ヒドロゲル形成物質および塩を含む。
【0011】
前記ヒドロゲル形成物質としては、当該技術分野においてヒドロゲル構造を形成するものと知られた物質を使用することができる。例えば、前記ヒドロゲル形成物質には、ジェランガム(Gellan Gum)、寒天(Agar)、カラギーナン(Carrageenan)、アルギネート(Alginate)、ペクチン(Pectin)、ゼラチン(Gelatin)、キサンタンガム(Xanthan gum)、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム(Guar Gum)、デンプン(Starch)、キトサン(Chitosan)、セルロース(Cellulose)、コラーゲン(Collagen)などがあり、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0012】
前記ヒドロゲル形成物質は、内相の総重量を基準として0.05~10重量%、例えば0.1~5重量%含まれてもよい。ヒドロゲル形成物質の含有量が前述した範囲未満の場合、ヒドロゲルが形成されないことがあり、前述した範囲を超える場合、硬度の上昇によってヒドロゲルが皮膚の上でこわれないことがある。
【0013】
前記塩は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうち1種以上の塩とホスフェート塩を含む。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩は、ヒドロゲルを硬化する役割をし、ホスフェート塩は、硬化速度を遅延させる役割をする。したがって、前記2種の塩を混用することによって、多層エマルジョンのヒドロゲル相を安定的に形成することができる。
【0014】
前記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、ポタシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩などを使用することができる。一例として、カルシウムクロリド(Calcium Chloride)、カルシウムサルフェート(Calcium Sulfate)、カルシウムカーボネート(Calcium Carbonate)、ポタシウムクロリド(Potassium Chloride)、ポタシウムバイカーボネート(Potassium Bicarbonate)、ポタシウムヒドロキシド(Potassium hydroxide)、ナトリウムヒドロキシド(Sodium hydroxide)、リチウムヒドロキシド(Lithium hydroxide)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0015】
前記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうち1種以上の塩は、内相の総重量を基準として0.005~0.5重量%、例えば、0.01~0.25重量%含まれてもよい。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうち1種以上の塩の含有量が前述した範囲未満の場合、ヒドロゲルを硬化させる程度が不十分であり、前述した範囲を超える場合、反応性が非常に高くなり、均一にヒドロゲルを硬化することが難しくなる。
【0016】
前記ホスフェート塩としては、テトラピロリン酸ナトリウム(Tetrasodium Pyrophosphate)、リン酸三ナトリウム(Trisodium Phosphate)、テトラリン酸ナトリウム(Sodium Tetraphosphate)、トリポリリン酸ナトリウム(Sodium Tripolyphosphate)、リン酸ナトリウム(Sodium Phosphate)、ピロリン酸二ナトリウム(Disodium Pyrophosphate)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0017】
前記ホスフェート塩は、内相の総重量を基準として0.0025~0.25重量%、例えば0.005~0.125重量%含まれてもよい。ホスフェート塩の含有量が前述した範囲未満の場合、硬化速度を遅延させる効果が不十分で、硬化速度が非常に速くて、粒子サイズの均一性に影響を与えることができ、前述した範囲を超える場合、硬化速度遅延効果が過度で、硬化速度が非常に遅くて、ゲル形成を妨害し、球形粒子の形成を困難にする。
【0018】
前記内相は、有効成分を含んでもよい。一例として、ナイアシンアミド(niacinamide)、アデノシン(adenosine)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アゼライン酸(Azelaic acid)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、コウジ酸(Kojic acid)、グリコール酸(Glycolic acid)、アルブチン(Arbutin)、ペプチド(peptides)などを含んでもよい。
【0019】
精製水は、内相の総重量(100重量%)を満たす量で含まれてもよい。
【0020】
中間相
本発明による多層エマルジョン化粧料組成物の中間相は、オルガノゲル(organogel)層であり、オイルおよびオルガノゲル形成物質を含む。
【0021】
前記オルガノゲル形成物質は、親油性溶媒からなる3次元ネットワーク構造であるオルガノゲル構造を形成する役割をする。中間相にオルガノゲルを形成させる場合、オイルおよび増粘剤とともにネットワーク構造を維持し、その結果、乳化剤(界面活性剤)を使用せずに、界面膜の破壊や相転換がない安定した多層エマルジョンを形成することができる。
【0022】
前記オルガノゲル形成物質としては、N-ラウロイル-Lグルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミンなどのようなアミノ酸誘導体、デキストリンパルミテート、デキストリンステアレート、デキストリンパルミテート/エチルヘキサノアート、デキストリンミリステートなどのようなデキストリン脂肪酸エステル、スクロースパルミテート、スクロースステアレートなどのようなスクロース脂肪酸エステル、イヌリンステアレート、フルクトオリゴ糖2-エチルヘキサノアートなどのようなフルクトオリゴ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトールなどのようなソルビトールベンジリデン誘導体、ポリウレタン-79(Polyurethane-79)、ポリエチレン(Polyethylene)、グリセリルベヘネート(Glyceryl Behenate)、グリセリルベヘネート/エイコサジオエート(Glyceryl Behenate/Eicosadioate)、ステアロイルイヌリン(Stearoyl Inulin)、トリヒドロキシステアリン(Trihydroxystearin)、ポリブテン(Polybutene)、ポリアミド-2(Polyamide-2)、ポリアミド-3(Polyamide-3)、ポリアミド-5(Polyamide-5)、ポリアミド-8(Polyamide-8)、硬化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、イソホロンジイソシアネート共重合体(IPDI Copolymer)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0023】
前記オルガノゲル形成物質は、中間相の総重量を基準として5~40重量%、例えば10~20重量%含まれてもよい。オルガノゲル形成物質の含有量が前述した範囲未満の場合、オルガノゲルが形成されないか、または形成されるとしても、弱く形成され、粒子維持力および安定度が低下することがあり、前述した範囲を超える場合、粘度および硬度が高くなり、使用感を損なうだけでなく、多層エマルジョンを製造することが困難になる。
【0024】
前記中間相は、安定化剤を含んでもよい。前記安定化剤は、増粘効果およびオイルスウェッティングを阻止する効果を発揮することによって、オルガノゲルの安定化を増進させて、安定した多層エマルジョンを維持させる。
【0025】
前記安定化剤としては、ジステアルジモニウムヘクトライト(Disteardimonium Hectorite)、ステアラルコニウムヘクトライト(Stearalkonium Hectorite)、クオタニウム-18ヘクトライト(Quaternium-18 Hectorite)、ジ水素化タローベンジルモニウムヘクトライト(Dihydrogenated Tallow Benzylmonium Hectorite)、モンモリロナイト(Montmorillonite)、ベントナイト(Bentonite)、アタパルジャイト(Attapulgite)、セピオライト(Sepiolite)、カルシウムシリケート(Calcium Silicate)、シリカ(Silica)、シリカシリレート(Silica Silylate)、シリカジメチルシリレート(Silica Dimethyl Silylate)、ポリメチルシルセスキオキサン/シリカクロスポリマー(Polymethylsilsesquioxane/Silica Crosspolymer)、マイカ(Mica)、ポリメチルメタクリレート(Polymethyl Methacrylate)、ナイロン-6(Nylon-6)、酸化鉄(Iron Oxides)、酸化スズ(Tin Oxide)、メチルメタクリレートクロスポリマー(Methyl Methacrylate Crosspolymer)、チタニウムジオキシド(Titanium Dioxide)、合成フルオロフロゴパイト(Synthetic Fluorphlogopite)、ポリメチルシルセスキオキサン(Polymethylsilsesquioxane)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0026】
前記安定化剤は、中間相の総重量を基準として5~40重量%、例えば、10~20重量%含まれてもよい。安定化剤の含有量が前述した範囲未満の場合、形成されたオルガノゲルの高温および長期安定度の強化効果が不十分であり、前述した範囲を超える場合、粘度および硬度が高くなり、使用感を損なうだけでなく、多層エマルジョンを製造することが困難になる。
【0027】
前記オイルとしては、当該技術分野において使用されるオイルを特に限定されずに使用することができる。例えば、前記オイルとしては、ミネラルオイル、イソヘキサデカン、イソステアリルイソステアレート、イソプロピルミリステート、カプリリック/カプリクトリグリセリド、ジイソプロピルアジペート、イソノニルイソノナノエート、イソデシルネオペンタノエート、セチルエチルヘキサノエート、オクチルドデシルミリステート、ジ-C12-13アルキルマレート、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノエート、ジイソステアリルマレート、イソプロピルパルミテート、C12-15アルキルベンゾアート、ジカプリリックカーボネート、ジカプリリックエーテル、2-オクチルドデカノール、ジメチコン、ラウリルジメチコン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、トリシロキサン、メチルトリメチコン、アモジメチコン、フェニルトリメチコン、フェニルメチコン、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールアセテート、シリコーングリコールコポリオール、ジメチコノール、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコンコポリオールメチルエーテル、メチルシクロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、アミノプロピルジメチコン、カプリリルメチルポリシロキサン、シメチコン(simethicone)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0028】
前記中間相は、有効成分を含んでもよい。一例として、レチニルパルミテート(Retinyl Palmitate)、レチノール(Retinol)、レチナール(Retinal)、トレチノイン(Tretinoin)、レチノイン酸(Retinoic Acid)、アダパレン(Adapalene)、タザロテン(Tazarotene)、イソトレチノイン(Isotretinoin)、カルシフェロール(Calciferol)、トコフェロール(Tocopherol)、フィトナジオン(Phytonadione)などを含んでもよい。
【0029】
前記オイルは、中間相の総重量(100重量%)を満足させる量で含まれてもよい。
【0030】
前記中間相のオルガノゲルは、硬度が5~60Dyne/cm2、例えば、10~30Dyne/cm2であってもよい。オルガノゲルの硬度が前述した範囲未満の場合、ゲルリングが進行されないため、粒子形態を維持することが難しくなり、その結果、多層エマルジョン構造を維持しない。一方、前述した範囲を超える場合、固まる速度が速いため、多層エマルジョンの形成に適しておらず、皮膚において広がり性が劣る。
【0031】
外相
本発明による多層エマルジョン化粧料組成物の外相は、水(water)層であり、精製水を含む。
【0032】
前記外相は、水溶性増粘剤を含んでもよい。外相に存在する水溶性増粘剤は、前記中間相と前記内相内粒子安定度(沈み/浮き)を維持する役割をする。
【0033】
前記水溶性増粘剤としては、カルボマー(Carbomer)、ナトリウムポリアクリロイルジメチルタウレート(Sodium Polyacryloyldimethyl Taurate)、ポリアクリレートクロスポリマー-11(Polyacrylate Crosspolymer-11)、アクリレートコポリマー(Acrylates Copolymer)、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体(Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer)、カルボマーアンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/ビニルピロリドン共重合体(Carbomer Ammonium Acryloyldimethyltaurate/VP Copolymer)、ナトリウムポリアクリレート(Sodium Polyacrylate)、セルロースガム(cellulose Gum)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)、エチルセルロース(ethylcellulose)、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー(Carboxymethyl Hydroxypropyl Guar)、キサンタンガム(Xanthan Gum)、アラビアガム(Gum Arabic)、グアーガム(Guar Gum)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0034】
前記水溶性増粘剤は、外相の総重量を基準として0.05~10重量%、例えば0.1~5重量%含まれてもよい。水溶性増粘剤の含有量が前述した範囲未満の場合、粘度が低いため、粒子安定度が劣り、前述した範囲を超える場合、粘度が高いため、広がり性、べたつきなど使用感が悪くなり、多層エマルジョンを製造しにくい。
【0035】
前記外相は、ポリオールを含んでもよい。前記ポリオールとしては、グリセリン(Glycerin)、1,3-ブチレングリコール(Butylene Glycol)、プロピレングリコール(Propylene Glycol)、ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)、ソルビトール(Sorbitol)、ペンチレングリコール(pentylene Glycol)、メチルプロパンジオール(Methylpropanediol)などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0036】
前記ポリオールは、外相の総重量を基準として0.5~40重量%、例えば1~20重量%含まれてもよい。
【0037】
前記外相は、キレート剤、pH調節剤、溶媒、皮膜形成剤、保湿剤、防腐安定剤、皮膚コンディショニング剤および機能性化粧品主成分などを含んでもよい。防腐剤としては、1,2-ヘキサンジオール、エチルヘキシルグリセリン、ヒドロキシアセトフェノン、グリセリルカプリレート、カプリリルグリコール、フェノキシエタノールなどを使用することができる。キレート剤としては、ジナトリウムEDTA、トリナトリウムEDTA、テトラナトリウムEDTAなどを使用することができる。pH調節剤としては、トロメタミン、トリエタノールアミン、イミダゾリジニルウレアなどを使用することができる。
【0038】
本発明の多層エマルジョン化粧料組成物は、ローション、エッセンス、クリーム、セロム、マスク液、アンプルまたはパック剤形のうちいずれか1つの剤形であってもよいが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の多層エマルジョン化粧料組成物は、当該技術分野において一般的に知られた様々な方法によって製造することができる。一例として下記方法で製造することができる。
【0040】
精製水、ヒドロゲル形成物質および塩を含むヒドロゲル相とオイル、オルガノゲル形成物質および必要に応じて安定化剤を含むオルガノゲル相をそれぞれ製造する。前記製造されたヒドロゲル相をオルガノゲル相に投入し、撹拌して、W(ヒドロゲル)/O(オルガノゲル)乳化剤形を製造する。前記製造されたW/O乳化剤形を外相に投入し、撹拌して、W/O/W多重乳化剤形を製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、下記実施例は、本発明の理解を助けるためのものであり、いかなる意味でも本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1~3:中間相の製造]
下記表1に記載された組成によって各実施例の中間相を製造した後、下記方法で物性を測定した。
【0043】
[比較例1~3:中間相の製造]
下記表1に記載された組成によることを除いて、実施例1~3と同じ方法で中間相を製造し、物性を測定した。
【0044】
O/W剤形の製造
カルボマー0.2重量%、トロメタミン0.2重量%、ポリオール10重量%、1,2-ヘキサンジオール1.5重量%、エチルヘキシルグリセリン0.05重量%、残量の水(to 100)からなる外相を製造し、各実施例および比較例の中間相を前記外相に投入し、O/W剤形を製造した。内相の関与を排除し、外相が存在する状態における中間相の安定性を確認するために、O/W剤形内中間相の物性を評価した。
【0045】
オルガノゲル形成の有無
各実施例および比較例のO/W剤形内中間相でオルガノゲルが形成されたか否かを目視または顕微鏡で観察した。
【0046】
オルガノゲルの粒子形態
顕微鏡で各実施例および比較例のO/W剤形内オルガノゲルの粒子形態を観察した。
[評価基準]
○:粒子の界面が安定した丸い形態
X:粒子の界面が不安定で歪んだ形態
【0047】
硬度
FUDOHレオメーター(FUDOH rheo meter)を使用して、各実施例および比較例の中間相の硬度を測定した(1mmΦ、30cm/mim、10mm Depthの条件)。
【0048】
高温安定度
前記実施例および比較例で製造されたO/W剤形を40~60℃の温度下に一ヶ月間放置した後、オイルが染み出るか否かを顕微鏡で確認し、高温安定度を評価した。
[評価基準]
●:全温度区間でオイルが全く染み出ない
○:60℃でオイルが微細に染み出る
X:60℃未満でオイルが染み出る
【0049】
【0050】
前記表1に示されたように、本発明による実施例1~3の中間相は、粒子の界面が安定した丸い形態を有するオルガノゲルを形成し、優れた硬度および高温安定度を示した。特に、安定化剤をさらに含む実施例1の中間相は、粒子の界面が安定した丸い形態を有するオルガノゲルを形成し(
図1)、高温安定度に非常に優れていた。
【0051】
一方、オルガノゲル形成物質を本発明の範囲未満の量で含む比較例1の場合、中間相の硬度が非常に低く現れ、その結果、高温で粒子が維持されずに、歪んでいて、結局、粒子が破裂する現象、すなわち、乳化が壊れる現象が発生した(
図2)。オルガノゲル形成物質を本発明の範囲を超える量で含む比較例2の中間相は、オルガノゲルを形成したが、粒子の界面が不安定で、歪んだ形態で形成された。比較例2のように、硬度が過度に高ければ、温度に敏感で、すぐ固まるので、多層エマルジョンを作る途中に粒子が固まって丸い形態で形成されにくく、堅くて皮膚の上でこわれないため、塗布が難しくなり、高温でオイルが染み出る現象が増加する。なお、オルガノゲル形成物質を含まずに安定化剤のみを含む比較例3の中間相は、オルガノゲルを形成しなかった(
図3)。
【0052】
[実施例4~6:W/O剤形の製造]
下記表2に記載された組成によって各実施例の内相を製造した後、実施例1で製造された中間相(オルガノゲル)に実施例4~6の内相(ヒドロゲル)を投入し、ホモミキサーで撹拌して、W(ヒドロゲル)/O(オルガノゲル)乳化剤形を製造した。製造された各実施例のW/O剤形に対して下記方法で物性を測定した。
【0053】
[比較例4~5:W/O剤形の製造]
下記表2に記載された組成によることを除いて、実施例4~6と同じ方法でW/O剤形を製造し、物性を測定した。
【0054】
ヒドロゲル形成の有無
各実施例および比較例のW/O剤形内内相でヒドロゲルが形成されたか否かを目視または顕微鏡で観察した。
【0055】
ヒドロゲルの粒子形態/粒子均一性
光学顕微鏡で各実施例および比較例のヒドロゲルの粒子形態および内相の粒子が中間相に均一に分布しているか否かを観察した。
【0056】
【0057】
前記表2に示されたように、本発明による実施例4-6のW/O剤形内内相は、ヒドロゲルを形成した(
図4~
図6)。特に、ホスフェート塩を0.1重量%含む実施例4のW/O剤形内内相は、粒子サイズが均一な球形のヒドロゲルを形成した(
図4)。
【0058】
一方、本発明による2種の塩中でカルシウム塩のみを含む比較例4のW/O剤形内内相は、ヒドロゲルを形成したが、直ちにゲル化し、粒子が均一に形成されなかった。なお、本発明による2種の塩中でホスフェート塩のみを含む比較例5のW/O剤形内内相は、ヒドロゲルを形成しなかった。したがって、比較例4、5のW/O剤形は、多層エマルジョンの製造に使用されなかった。
【0059】
[実施例7~9:多層エマルジョン(W/O/W)の製造]
カルボマー0.2重量%、トロメタミン0.2重量%、ポリオール10重量%、1,2-ヘキサンジオール1.5重量%、エチルヘキシルグリセリン0.05重量%、残量の水(to 100)からなる外相を製造した。製造された外相に実施例4-6のW/O乳化剤形を投入し、アジミキサーで撹拌して、実施例7~9のW/O/W多層エマルジョンを製造した。
【0060】
光学顕微鏡を利用して各実施例のW/O/W多層エマルジョンを観察した結果、実施例7~9のエマルジョンのいずれにおいても中間相の粒子が内相を含んだまま、外相に均一に分布しており(
図7)、これによって、安定した多層エマルジョンが形成されたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、界面活性剤を含有せずに、水相と油相間の界面膜の安定度が高いため、優れた安定性を示す多層エマルジョン化粧料組成物を提供する。本発明による化粧料組成物は、界面活性剤を含まないので、皮膚刺激が少なく、環境に優しく、多層エマルジョン剤形で伸展性、広がり性、使用感に優れると同時に、化粧持続性と耐水性にも優れている。また、本発明の化粧料組成物は、多層エマルジョンが有する構造的な特性上、中間相と内相が空気と接触しないため、油溶性および水溶性からなる有効成分を1つの剤形で同時に安定化させるのに適している。
【国際調査報告】