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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】病原体部分及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/095 20060101AFI20240228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K39/095
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557756
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 AU2022050213
(87)【国際公開番号】W WO2022192937
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/161,399
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509075181
【氏名又は名称】グリフィス・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】GRIFFITH UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】504315680
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェニングス
(72)【発明者】
【氏名】フレダ(エン-チー) ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ケイト シーブ
(72)【発明者】
【氏名】エブゲニー セムチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン キーフェル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アピセラ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA16
4C085BA31
4C085CC07
4C085DD56
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
本開示は、一般にナイセリア表面部分に関する。より詳細には、本開示は、ナイセリアリポオリゴ糖に対応するオリゴ糖、及びナイセリア生物に対する免疫応答を誘発するため、及び/又はナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するためのこれらの部分を含むキメラ分子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、ナイセリアリポオリゴ糖に対応するオリゴ糖配列を含むオリゴ糖と、を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になるキメラ分子であって、前記オリゴ糖配列が、末端糖単位としてケトデオキシオクツロソネート(KDO)を含む、キメラ分子。
【請求項2】
前記オリゴ糖配列が、KDOα(2→3)Galを含む、請求項1に記載のキメラ分子。
【請求項3】
前記オリゴ糖配列が、KDOα(2→3)Galβ(1→4)GlcNAcを含む、請求項1に記載のキメラ分子。
【請求項4】
前記オリゴ糖が、n個の前記オリゴ糖配列を含み、nが1以上4以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキメラ分子。
【請求項5】
nが2である、請求項4に記載のキメラ分子。
【請求項6】
それぞれのオリゴ糖配列が、リンカーによって互いに連結されている、請求項4又は5に記載のキメラ分子。
【請求項7】
前記担体が、リンカーによって前記オリゴ糖に連結されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラ分子。
【請求項8】
前記担体が、タンパク質、ペプチド、脂質、ポリマー、デンドリマー、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、外膜小胞又はそれらの組み合わせである、請求項1~7のいずれか一項に記載のキメラ分子。
【請求項9】
前記担体が、タンパク質担体である、請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ分子。
【請求項10】
前記タンパク質担体が、細菌性トキソイド、毒素、外毒素、及びそれらの非毒性誘導体、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、サイログロブリン、アルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びオボアルブミンなど)、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、ツベルクリンの精製タンパク誘導体(PPD);トランスフェリン結合タンパク質、ポリアミノ酸、例えば、ポリ(リジン:グルタミン酸)、破傷風トキソイド、破傷風毒素フラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM(非毒性ジフテリア毒素突然変異体)、コレラトキソイド、黄色ブドウ球菌外毒素又はトキソイド、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、緑膿菌エキソトキシンA、及び細菌外膜タンパク質(髄膜炎菌血清型B外膜タンパク質複合体(OMPC)及び外膜クラス3ポリン(rPorB)など)から選択される、請求項9に記載のキメラ分子。
【請求項11】
前記タンパク質担体が、CRM197である、請求項9に記載のキメラ分子。
【請求項12】
前記ナイセリアリポオリゴ糖が、淋菌又は髄膜炎菌のリポオリゴ糖である、請求項1~11のいずれか一項に記載のキメラ分子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子、及び薬学的に許容されるビヒクル又はアジュバントを含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる、組成物。
【請求項14】
ナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するための補助剤を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記補助剤が、抗菌剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記補助剤が、ナイセリア生物に対する免疫応答を誘発するための補助免疫原(例えば、AniA、MsrAB、MetQ、NhbAなどのナイセリア抗原に由来するタンパク質性免疫原)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
対象におけるナイセリア生物に対する免疫応答を誘発する方法であって、前記方法が、請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子、又は請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物で前記対象を免疫化し、それによって前記対象における前記ナイセリア生物に対する免疫応答を誘発することを含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる、方法。
【請求項18】
前記ナイセリア生物が、淋菌又は髄膜炎菌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ナイセリア生物が、少なくとも1つの抗菌薬に耐性である、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生する方法であって、前記方法が、(1)請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子、又は請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物で、動物を免疫化することと、(2)前記キメラ分子と特異的に結合する、前記動物由来のB細胞を検出することと、(3)そのB細胞によって発現される前記抗原結合分子を単離することと、を含む、方法。
【請求項21】
ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生する方法であって、前記方法が、(1)請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子、又は請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物で、抗原結合分子のライブラリーをスクリーニングすることと、(2)前記キメラ分子、又はナイセリア生物若しくはナイセリア生物のLOSと特異的に結合する抗原結合分子を検出することと、(3)検出された前記抗原結合分子を単離することと、を含む、方法。
【請求項22】
請求項20又は請求項21に記載の方法によって産生される、抗原結合分子、又は前記抗原結合分子と同じエピトープ結合特異性を有する、抗原結合分子誘導体。
【請求項23】
前記抗原結合分子誘導体が、抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖(scFv)及びドメイン抗体(例えば、サメ及びラクダ科動物抗体を含む)、並びに抗体を含む融合タンパク質、並びに抗原結合/認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成から選択される、請求項22に記載の抗原結合分子。
【請求項24】
請求項22又は請求項23に記載の抗原結合分子を産生する、細胞(例えば、ハイブリドーマ又は細胞株)。
【請求項25】
対象におけるナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するための方法であって、前記方法が、請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子の有効量、又は請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物の有効量、又は請求項22若しくは請求項23に記載の抗原結合分子の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
前記キメラ分子又は前記抗原結合分子が、補助剤(例えば、抗菌剤及び/又は免疫原)と同時に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
対象におけるナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するためのキットであって、前記キットが、請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラ分子、又は請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項22若しくは請求項23に記載の抗原結合分子、及び任意で、前記治療又は抑制を行うための教材を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連用途
本出願は、2021年3月15日に出願された「病原体部分及びその用途」と題する米国仮出願第63/161399号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府資金
本発明は、アメリカ国立アレルギー感染症研究所により授与された助成金番号NIAD AI108255及びNAID AI024616の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般にナイセリア(Neisseria)表面部分に関する。より詳細には、本開示は、ナイセリアリポオリゴ糖に対応するオリゴ糖、及びナイセリア生物に対する免疫応答を誘発するため、及び/又はナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するための、これらの部分を含むキメラ分子に関する。
【背景技術】
【0004】
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は、性感染症淋病を引き起こす宿主適応細菌病原体である。淋菌感染症は、症候性又は無症候性であることができ、雌における感染の80%までは無症候性である。雌における未治療の淋病は、骨盤内炎症性疾患、有害な妊娠転帰、新生児合併症、又は不妊症をもたらし得る。さらに、それは、HIVを獲得し、伝播するリスクを増加させることができる。世界中で毎年1億600万超の淋菌症例が存在し、淋菌(N.gonorrhoeae)の多剤耐性(MDR)株の出現が主要な公衆衛生問題であると推定されている。淋病を治療するために使用されるほぼ全ての抗生物質に対する耐性を有する分離株が、同定されている。過去100年間に、臨床試験において試験された潜在的な淋菌ワクチンは、わずか3種類であり、これらのワクチンは、いずれも成功していなかった。したがって、治療及びワクチン開発のための新規なアプローチに対する緊急のアンメットニーズが存在する。
【0005】
リポオリゴ糖(LOS)は、外膜の主要な構造成分の1つであり、淋菌の重要な病原性因子である。これは、淋菌とヒト尿道上皮細胞との間の直接的相互作用を媒介することを含む、淋菌の病因において多くの重要な役割を果たす(Harveyら、2000、Mol Microbiol.36:1059-70、及びSongら、2000、J Exp Med 191:949-60)。淋菌のリポオリゴ糖の脂質Aは、一次子宮頸部上皮細胞における補体受容体3の活性化に必要な補体成分C3に結合する(Edwardsら、2002、Cell Microbiol 4:585-98)。淋菌などの細菌は、検出を避けるために宿主構造を模倣することができる。この模倣の一態様は、細菌表面上での、ヒトに見られる糖構造である、シアル酸の発現である。淋菌のリポオリゴ糖構造は、淋菌毒性において複数の役割を有するN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)で終結させることができる(Apicellaら、1989、Pediatr Infect Dis J.8:901-2、及びMandrellら、1993、Immunobiology 187:382-402)。しかしながら、淋菌は、リポオリゴ糖生合成に必要なヌクレオチド糖前駆体であるシチジン-5’-一リン酸(CMP)-Neu5Acを合成することができず、宿主からCMP-Neu5Acを獲得しなければならない(Mandrellら、1993、Immunobiology 187:382-402)。対照的に、密接に関連する病原体髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、髄膜炎菌血清群B、C、W及びYの多糖カプセル構造にも必要である、CMP-Neu5Acを合成することができる。これらの病原性ナイセリア種の両方は、図1に示されるように、Neu5AcをCMP-Neu5Acからリポオリゴ糖の末端ガラクトースに転移させる、ほぼ同一の(95%のアミノ酸同一性)シアリルトランスフェラーゼ、Lstを有する(Gilbertら、1996、J Biol Chem 271:28271-6)。病原性ナイセリア種によって発現されるLstシアリルトランスフェラーゼは、非型別性インフルエンザ菌(non-typeable Haemophilus influenzae)(NTHi)のLsgBシアリルトランスフェラーゼと相同である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、細菌特異的糖、ケトデオキシオクトロソネート(KDO)が淋菌及び髄膜炎菌(N.meningitidis)上のシアル酸の代わりに末端リポオリゴ糖として一般的に見出され、KDOが図1に示されるように、シアリルトランスフェラーゼLstによって添加される、という知見に一部基づいている。この知見は、両生物Lstにおいて、シアル酸をLOSに付加する酵素は以前に、細菌細胞の外側にあると考えられていた(Shellら、2002、Infect Immun.70:3744-51)が、一方、生体分子、シチジン-一リン酸KDO(CMP-KDP)にKDOを付加するためのドナー分子は、細菌細胞の細胞質にあると考えられていた。この知見は、細菌KDO炭水化物が淋菌及び髄膜炎菌感染症を含むナイセリア感染症を予防及び治療するための、新しい戦略の開発のための標的として考慮されることを可能にするので、本知見は、ワクチン開発に関して重要なパラダイムシフトを表す。KDO系ワクチンは、自然感染の間に誘発されるものとは異なる免疫応答を誘発し、この細菌KDOエピトープを標的とする抗体は、殺菌性及びオプソニン食作用性の死滅を媒介し、したがってナイセリア感染症に対する免疫防御を提供することが提案されている。
【0007】
したがって、1つの態様において開示されるのは、担体と、ナイセリアリポオリゴ糖(LOS)(例えば、淋菌又は髄膜炎菌LOS)に対応するオリゴ糖配列を含むオリゴ糖と、を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になるキメラ分子であって、オリゴ糖配列は、末端糖単位としてケトデオキシオクツロソネート(KDO)を含む。オリゴ糖配列は、適切にはガラクトース(Gal)に結合したKDOを含み、典型的には、Galは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に更に結合している。代表的な実施形態では、KDOは、α(2→3)結合を介してGalに結合し、及び/又はGalは、β(1→4)結合を介してGlcNAcに結合する。この種類の例示的な例において、オリゴ糖配列は、KDOα(2→3)Gal、又はKDOα(2→3)Galβ(1→4)GlcNAcを含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、オリゴ糖は、オリゴ糖配列のn回の出現を含み、nは1~4である。この種類の代表的な例において、nは2である。適切には、それぞれのオリゴ糖配列は、リンカーによって互いに連結される。
【0009】
担体は、典型的にはリンカーによってオリゴ糖に連結される。適切には、担体は、タンパク質、ペプチド、脂質、ポリマー、デンドリマー、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、外膜小胞又はそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、担体は、タンパク質担体であり、例えば、細菌性トキソイド、毒素、外毒素、及びそれらの非毒性誘導体、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、サイログロブリン、アルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びオボアルブミンなど)、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、ツベルクリンの精製タンパク誘導体(PPD);トランスフェリン結合タンパク質、ポリアミノ酸、例えば、ポリ(リジン:グルタミン酸)、破傷風トキソイド、破傷風毒素フラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM(非毒性ジフテリア毒素突然変異体)、コレラトキソイド、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)外毒素又はトキソイド、大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性エンテロトキシン、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エキソトキシンA、及び細菌外膜タンパク質(髄膜炎菌血清型B外膜タンパク質複合体(OMPC)及び外膜クラス3ポリン(rPorB)など)であってもよい。特定の実施形態では、タンパク質担体は、CRM197である。
【0010】
本開示の別の態様は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載されるキメラ分子と、薬学的に許容されるビヒクル又はアジュバントと、を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる組成物に関する。組成物は、任意に、ナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するための1つ以上の補助剤を含んでもよい。補助剤は、ナイセリア生物に対する免疫応答を誘発するための抗菌剤及び免疫原(例えば、AniA、MsrAB、MetQ、NhbAなどのナイセリア抗原に由来するタンパク質性免疫原)から選択され得る。
【0011】
別の態様において、本明細書に開示されるのは、対象においてナイセリア生物に対する免疫応答を誘発する方法であり、本方法は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載されるキメラ分子又は組成物で対象を免疫化することを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、それによって対象においてナイセリア生物に対する免疫応答を誘発する。好ましくは、ナイセリア菌は、淋菌又は髄膜炎菌である。幾つかの実施形態では、ナイセリア菌は、少なくとも1つの抗菌薬に耐性である。
【0012】
本開示の更に別の態様は、ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生する方法に関するものであって、本方法は、(1)上記及び本明細書の他の箇所で広く記載されるキメラ分子又は組成物で動物を免疫化することと、(2)キメラ分子(特に、そのオリゴ糖成分)又はナイセリア生物のLOSと特異的に結合する、動物由来のB細胞を検出することと、(3)そのB細胞によって発現される抗原結合分子を単離することと、を含む。
【0013】
また、別の態様において本明細書に開示されるのは、ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生する方法であって、本方法は、(1)上記及び本明細書の他の箇所に広く記載されるキメラ分子又は組成物で抗原結合分子のライブラリーをスクリーニングすることと、(2)キメラ分子(特に、そのオリゴ糖成分)又はナイセリア生物のLOSと特異的に結合する抗原結合分子を検出することと、(3)検出された抗原結合分子を単離することと、を含む。
【0014】
関連する態様において、本開示は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載される方法によって産生される抗原結合分子、又は抗原結合分子と同じエピトープ結合特異性を有する抗原結合分子誘導体に関する。代表的な実施形態では、抗原結合分子誘導体は、抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖(scFv)及びドメイン抗体(例えば、サメ及びラクダ科動物抗体を含む)、並びに抗体を含む融合タンパク質、並びに抗原結合/認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成から選択される。
【0015】
別の関連する態様において、本開示は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載される抗原結合分子を産生する細胞(例えば、ハイブリドーマ又は細胞株)に関する。
【0016】
また、本明細書に開示されるのは、対象におけるナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するための方法であって、本方法は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載される有効量のキメラ分子、組成物又は抗原結合分子を対象に投与することを含む。幾つかの実施形態では、キメラ分子又は抗原結合分子は、補助剤(例えば、抗菌剤及び/又は免疫原)と同時に投与される。
【0017】
更に別の態様において、本明細書に開示されるのは、対象におけるナイセリア生物の存在を検出するための方法であって、本方法は、対象から採取された生物学的試料を、上記及び本明細書の他の箇所で広く記載されるナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、ナイセリア生物又はその一部(例えば、LOS)を含む複合体の存在を検出し、それによって対象におけるナイセリア生物の存在を検出することと、を含む。
【0018】
本開示の更に別の態様は、対象におけるナイセリア感染症の発症を治療又は抑制するためのキットに関するものであって、キットは、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載されるキメラ分子、組成物、又は抗原結合分子と、任意で、治療又は抑制を実施するための教材と、を含む。
【0019】
更に別の態様では、対象におけるナイセリア生物の存在を検出するためのキットが提供され、キットは、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載される抗原結合分子と、任意で、検出を実施するための教材と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、淋菌株1291のKDO含有LOSの構造を示す図である。MAb 6E4は、末端KDOグリカンのみを認識する。Lstは、Neu5Acの非存在下で、末端Gal上にKDOを組み込むこともできるシアリルトランスフェラーゼである。LgtBは、KDO受容体ガラクトース(Gal)をN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に転移するガラクトシルトランスフェラーゼである。Lstがなければ、Galは、淋菌におけるLOSの末端糖である。
図2図2は、6E4の全細胞ELISAを示すグラフ及び写真表示である。(A)6E4 MAbを使用した全細胞淋菌WT及びlst変異株のELISA。Lstは、末端シアル酸を髄膜炎菌のLOSの末端Galに転移する。ここでは、lst突然変異体は、Lstも淋菌の末端GalにKDOを転移することを示した。(B)淋菌臨床分離株20株を試験するために、6E4の全細胞ELISAを実施した。1291及び1291lstは、このELISAにおける陽性及び陰性対照であった。(C)6E4 MAbを使用した全細胞髄膜炎菌MC58 WT、siaB及びlst変異株のELISA。MC58 WTは、LOSの末端グリカンとしてNeu5Acを有する。SiaBがなければ、髄膜炎菌はCMP-Neu5Acを産生することができないので、Lstは、シアル酸の代わりにLOSの末端にKDOを付加する。(D)淋菌性LOSへのKDOの組み込み。6E4の全細胞ELISAは、増殖培地中のCMP-Neu5Acの存在が末端GalへのKDOの取り込みを阻害し得ることを示した。淋菌1291及びlst突然変異体を、0μg/mL、30μg/mL、及び100μg/mLのCMP-Neu5Ac補充培地中で増殖させた。(E)髄膜炎菌MC58、淋菌1291野生型及びグリコシルトランスフェラーゼ変異株由来の精製LOS試料の銀染色及び6E4ウェスタンブロット分析。
図3図3は、抗KDO MAb 6E4(テキサスレッド)及び抗LOS MAb 6B4(FITC)の両方で染色された淋菌感染症が立証された患者由来の子宮頸部スワブの共焦点顕微鏡研究を示す写真である。感染多形核白血球(PMN)は、別々に抗体(赤色又は緑色)で染色された淋菌、及び同じ生物に共局在する抗体(黄色)で見ることができる。この試験は、KDO終結がin vivo及びin vitroで起こることを示している。
図4図4は、淋菌に対するMab 6E4の機能的活性を示すグラフ表示である。補体源としての0μg/mL以上10μg/mL以下のMab 6E4、初代ヒトPMN及び10%正常ヒト血清の存在下での淋菌の生存を示す。データは、抗体の非存在下での細菌の割合として示される、3回の試料についての平均生存率(±1標準偏差)を表す(100%に設定された0μg/mLのMab 6E4は、5.07×10CFUを表す)。一元配置分散分析(F(6,14)=59.20,P=<.0001)により、群間に統計的有意差が認められた。両側スチューデントt検定を使用して、未処理野生型と比較して統計的に有意な差を示す:P<0.05;**P≦0.01;***P≦0.001(P値:1.25μg/mL、0.012;2.5μg/mL、0.005;5μg/mL、0.001;10μg/mL、0.0003)。
図5図5は、KDOスペーサーの化学合成を示す模式図である。公開された化学を使用して合成されたKDOの保護された形態は、フッ化グリコシル誘導体に変換され、次いで、標準的なルイス酸触媒グリコシド化化学を使用してスペーサーユニットと反応する。次いで、化学合成を容易にするために導入された全ての保護基が除去され、最終化合物を結合の準備が整った状態にする。
図6図6は、(A)CRM197へのNH結合KDOのカップリングを示す例示及び写真表示である。(B)結合後、CRM197(クマシー、レーン2)は、結合していないCRM197と比較して、より高い見かけの分子量(クマシー、レーン1)にシフトし、KDO陽性(6E4を用いたウェスタンブロット、レーン1)になる。
図7図7は、KDOα(2,3)Galスペーサーの化学合成を示す模式図である。公開された化学を用いて合成されたKDOの保護された形態は、フッ化グリコシル誘導体に変換される。市販のガラクトースは、標準的な炭水化物化学操作を使用してGalスペーサー誘導体に変換される。KDOフッ化物及びGalスペーサーユニットを、標準的なルイス酸触媒グリコシド化化学を使用して、一緒に組み合わせる。次いで、化学合成を容易にするために導入された全ての保護基は、標準的な方法を使用して除去され、結合の準備が整った最終化合物が得られる。
図8図8は、KDOα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcスペーサーの化学合成を示す模式図である。公開された化学を使用して合成されたKDOの保護された形態は、フッ化グリコシル誘導体に変換される。市販のラクツロースは、標準的な炭水化物化学操作を使用してGal-GlcNAcスペーサー誘導体に変換される。KDOフッ化物及びGal-GlcNAcスペーサーユニットを、標準的なルイス酸触媒グリコシド化化学を使用して、一緒に組み合わせる。次いで、化学合成を容易にするために導入された全ての保護基は、標準的な方法を使用して除去され、結合の準備が整った最終化合物が得られる。
図9図9は、KDO(A)二糖及び(B)三糖抗原を合成するための化学酵素的アプローチを示す模式図である。緑色のKdsBとLstは合成に関与する酵素である。
図10図10は、(A)外膜小胞OMV)中にKDO抗原を含有するLOSのin vivo生合成経路;OmpA及びBraunリポタンパク質の発現を欠く二重突然変異を有する大腸菌株に典型的なOMV産生を示す挿入電子顕微鏡画像が、Sonntagら(1978,J.Bacteriol.136:280-285)から改変されていることを示す概略的かつ図式的な表現である。ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)は、LgtE、LgtA及びLgtBによって合成される。Lst及びKdsB(オレンジ色)のアップレギュレーションは、LNnTへの末端KDOの修飾を増加させる。合成されたLOSは、外膜に輸送される。(B)LgtE、LgtA、LgtB及びLstは、同時発現することができ、大腸菌におけるNgと同じ末端KDOグリカンを産生することができる。末端KDOは、mAb 6E4を使用するELISAによって確認される。P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができ、好ましい方法及び材料を記載する。本開示の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0022】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では冠詞の文法上の物の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an element」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、組成物中の特定の免疫原(例えば、本開示のキメラ分子)と組み合わせて使用される場合、抗体及び細胞性免疫応答の一方又は両方の特異性の増強又は拡大を含む、結果として生じる免疫応答を増強する化合物を指す。本開示の文脈において、アジュバントは、好ましくは本開示の活性剤の特異的免疫原性効果を増強する。「アジュバント」という用語は、典型的には、それ自体で免疫を付与する薬剤を含まないと理解される。アジュバントは、例えば、免疫系への抗原の提示又は非特異的先天性免疫応答の誘導を促進することによって、免疫系が非特異的に抗原特異的免疫応答を増強するのを助ける。さらに、アジュバントは、好ましくは例えば、優性Th2系の抗原特異的応答を、よりTh1系の抗原特異的応答にシフトさせることによって、又はその逆によって、抗原特異的免疫応答を調節することができる。したがって、アジュバントは、サイトカイン発現/分泌、抗原提示、免疫応答の種類などを有利に調節することができる。
【0024】
用語「同時投与」又は「同時投与する(administering concurrently)」又は「同時投与する(co-administering)」などは、2つ以上の薬剤を含有する単一の組成物の投与、又は別個の組成物としての各薬剤の投与、及び/又は全てのそのような薬剤が単一の組成物として投与される場合に得られる効果的な結果と同等である十分に短い期間内に、同時に(contemporaneously)又は同時に(simultaneously)又は連続的に別々の経路によって送達されることを指す。「同時に(simultaneously)」とは、薬剤が実質的に同時に、望ましくは一緒に同じ組成物で投与されることを意味する。「同時に(contemporaneously)」とは、薬剤が時間的に密接に投与されることを意味し、例えば、1つの薬剤が約1分以内から約1日以内に、別のものの前又は後に投与される。任意の同時時間が有用である。しかしながら、同時に投与されない場合、薬剤は、約1分~約8時間以内、好適には約1時間~約4時間以内に投与されることが多い。同時に投与される場合、薬剤は、対象上の同じ部位に適切に投与される。用語「同じ部位」は、正確な位置を含むが、約0.5センチメートル~約15センチメートル以内、好ましくは約0.5センチメートル~約5センチメートル以内であり得る。本明細書で使用される「別々に」という用語は、薬剤がある間隔で、例えば、約1日から数週間又は数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。薬剤は、いずれの順序で投与されてもよい。本明細書で使用される「連続的に」という用語は、薬剤が例えば、数分間、数時間、数日又は数週間の間隔で、連続して投与されることを意味する。適切な場合、薬剤は、規則的な反復サイクルで投与され得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意の及び全ての可能な組合せ、並びに代替(又は)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」及びその文法的に等価な表現(例えば、「抗原性」)は、抗体分子又はT細胞受容体などの特定の体液性又は細胞性免疫の産物によって特異的に結合され得る化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、例えば、ハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに複合炭水化物(例えば、多糖)、リン脂質、及びタンパク質などの高分子を含む、任意の種類の分子であり得る。
【0027】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に対して結合親和性を有する分子を意味する。この用語は、抗原結合活性を示す免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント及び非免疫グロブリン由来タンパク質フレームワークにまで及ぶことが理解されるであろう。本開示の実施において有用である代表的な抗原結合分子としては、ポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにそれらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖(scFv)及びドメイン抗体(例えば、サメ及びラクダ科動物抗体を含む)、並びに抗体を含む融合タンパク質、並びに抗原結合/認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成が挙げられる。抗体は、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)などの、任意のクラスの抗体を含み、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造は、周知である。抗原結合分子はまた、二量体抗体、並びに多価形態の抗体を包含する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の配列と同一であるか又は相同である一方で、鎖の残部は、所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の配列と同一であるか又は相同である、キメラ抗体、並びにそのような抗体のフラグメントである(例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855を参照されたい)。非ヒト(例えば、げっ歯類、好ましくはマウス)免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖からヒト可変ドメインに相補性決定領域(CDR)を移入することによって一般に産生されるヒト化抗体も企図される。次いで、ヒト抗体の典型的な残基は、非ヒト対応物のフレームワーク領域において置換される。ヒト化抗体に由来する抗体成分の使用は、非ヒト定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を未然に防ぐ。非ヒト、特にマウスの免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技術は、例えば、Orlandiら(1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833)によって記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を産生する技術は、例えば、Jonesら(1986、Nature 321:522)、Carterら(1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285)、Sandhu(1992、Crit.Rev.Biotech.12:437)、Singerら(1993、J.Immun.150:2844)、Sudhir(ed、Antibody Engineering Protocols、Humana Press,Inc.1995)、Kelley(「Engineering Therapeutic Antibodies」、タンパク質工学:Principles and Practice Clelandら(編者)、399~434ページ(John Wiley&Sons,Inc.1996)、及びQueenら、米国特許第5,693,762号(1997)によって記載されている。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、目的の抗原でマカクザルを免疫することによって産生される抗体に由来する、「霊長類化」抗体を含む。抗原結合分子として、ヒト化抗体も企図される。
【0028】
「抗菌剤」という用語は、本明細書で使用される場合、抗菌活性を有する薬剤、すなわち、抗菌剤の非存在下と比較して、例えば、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%又はそれ以上、微生物を阻害又は低減及び/又は死滅させる能力を指す。「抗菌剤」という用語は、微生物が存在するか又は存在している宿主の微生物及び/又は細胞と直接相互作用することによって、微生物の増殖を阻害又は低減し、及び/又は微生物を死滅させる薬剤を包含する。抗菌剤の非限定的な例としては、銀ナノ粒子、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物、抗体若しくはそのフラグメント、核酸、酵素(例えば、リソスタフィンなどの抗菌性金属エンドペプチダーゼ)、アプタマー、薬物、抗生物質、化学物質、又は微生物の増殖を阻害及び/若しくは死滅させることができる任意の実体が挙げられる。本明細書に記載される組成物に含まれ得る抗菌性ペプチドの例としては、限定されないが、メフロキン、ベンツリシジンA、アンチマイシン、ミキソチアゾール、スチグマテリン、ジウロン、ヨードアセトアミド、テルルル酸カリウム水和物、aDL-ビニルグリシン、N-エチルマレイミド、L-アリルグリシン、ジアリルキノリン(diaryquinoline)、ベタインアルデヒドクロライド、アシブシン、プシコフライン、ブチオニンスルホキシミン、ジアミノペメリン酸、4-ホスホ-D-エリスロンヒドロキサム酸、モテキサフィンガドリニウム及び/若しくはオキシシトリン又はこれらの修飾バージョン若しくは類似体が挙げられる。代表的な抗菌剤としては、抗生物質、抗真菌剤、抗原虫剤、抗マラリア剤、抗結核剤及び抗ウイルス剤、並びにこれらのいずれかの混合物が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、タンパク質及び他の生物製剤などの高分子を含む分子の不均一な集団の存在下で、本開示のキメラポリペプチド又は複合体の存在を決定する結合反応を指す。特定の実施形態では、「特異的に結合する」という用語は、抗原結合分子に言及する場合、「特異的免疫相互作用」という用語などと互換的に使用され、タンパク質及び他の生物製剤の異種集団の存在下で、本開示のキメラポリペプチド又は複合体の存在を決定する結合反応を指す。指定されたアッセイ条件下で、分子は、本開示のキメラポリペプチド又は複合体に特異的に結合し、試料中に存在する他の分子(例えば、タンパク質又は抗原)に有意な量で結合しない。抗原結合分子の実施形態では、様々なイムノアッセイ形式を使用して、本開示のキメラポリペプチド又は複合体と特異的に免疫相互作用する抗原結合分子を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫相互作用するモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用される。特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイフォーマット及び条件の説明については、Harlow及びLane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照されたい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、得られるオリゴ糖-担体キメラ分子の免疫原性をオリゴ糖単独よりも大きく高めるために、本開示のオリゴ糖にカップリングされる、タンパク質、ペプチド、脂質、ポリマー、デンドリマー、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、外膜小胞又はそれらの組み合わせを指す。同様に、用語「タンパク質担体」は、本明細書で使用される場合、オリゴ糖に作動可能に連結されて、得られるオリゴ糖-タンパク質担体キメラ分子の免疫原性をオリゴ糖単独よりも大きく増強するタンパク質又はペプチドを指す。例えば、担体として使用される場合、タンパク質担体は、T細胞を活性化し、動員し、それによってT細胞依存性抗体産生を増強することができるT依存性抗原として働き得る。
【0031】
「キメラ」という用語は、分子に関して使用される場合、分子が2つ以上の異なる起源(origins)又は起源(sources)に由来する、それらから得られる、又はそれらから単離される、又はそれらに基づく部分を含むことを意味する。特定の実施形態では、本開示のキメラ分子が、動物において特異的免疫応答を刺激又は誘発するための免疫原性キメラ分子である。幾つかの実施形態では、免疫応答は、免疫原性キメラ分子が向けられる生物からの感染に対して動物がより良好に抵抗することを可能にする点で防御的である。
【0032】
本明細書を通して、文脈が別途必要としない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記述された段階又は要素又は段階若しくは要素の群の包含を意味するが、任意の他の段階又は要素又は段階若しくは要素の群の排除を意味しないと理解される。したがって、用語「含む(comprising)」などの使用は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在しても存在しなくてもよいことを示す。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含むこと、及びそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であること、及び他の要素が存在しないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素についての開示において指定された活性又は作用に干渉しないか、又は寄与しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要であるか又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0033】
本明細書で使用される場合、化学的結合又は組換え手段を含むいかなる手段によっても、2つ以上の要素又は構成要素又はドメインを一緒に連結する文脈における「結合された」、「連結された」、「融合された」又は「融合」という用語及びそれらの文法的等価物は、交換可能に使用される。化学的結合の方法(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を使用する)は、当該技術分野において公知であり、共有結合及び/又は非共有結合を含む。本明細書で使用される場合、「結合する」は、リンカー及び/又は架橋剤を介して担体に化学的に結合したオリゴ糖を指す。
【0034】
「有効量」とは、ある状態を治療、その状態の進展を抑制、又はその状態を予防する文脈において、その状態の、症状を被ることの予防、そのような症状の確認、及び/又は現存する症状の治療に有効である、単回用量で、又は一連のものの一部として、そのような治療、抑制、又は予防を必要とする個体へのある量の薬剤又は組成物の投与を意味する。有効量は、治療される個々の健康及び身体状態、治療される個々の分類群、組成物の製剤、医学的状況の評価、及び他の関連因子に応じて変化する。量は、日常的な試験を通して決定することができる比較的広い範囲に入ると予想される。例えば、淋菌感染症の非限定的な症状としては、下腹部、骨盤、精巣、又は膣における疼痛、痛みを伴う排尿、異常な膣分泌物、陰茎からの分泌物、又は膣分泌物の増加、発熱、頻回の尿意切迫、不規則な月経、膿、又は咽頭痛が挙げられる。髄膜炎菌感染症の代表的な例としては、発熱及び悪寒、疲労、嘔吐、冷たい手足、筋肉、関節、胸部、又は腹部の重度の痛み又は疼痛、急速呼吸性下痢、及び後期の暗紫色発疹が挙げられる。
【0035】
「エピトープ」という用語は、抗原結合分子又は抗原受容体、例えばB細胞受容体(BCR)又はT細胞受容体(TCR)によって特異的に結合される抗原決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸及び/又は糖側鎖などの分子の表面グループからなり、直鎖状であってもよく、又は特異的三次元構造特性、並びに特異的電荷特性を有してもよい。タンパク質、オリゴ糖、又は他のバイオポリマー上のB細胞エピトープ部位は、フォールディングによって一緒にされた高分子の異なる部分からの部分から構成され得る。この種のエピトープは、部位が線状配列では不連続であるが、折り畳まれた立体構造では連続であるポリマーのセグメントから構成されるので、立体構造又は不連続エピトープと呼ばれる。バイオポリマー又は他の分子の単一セグメントから構成されるエピトープは、連続エピトープ又は線状エピトープと呼ばれる。T細胞エピトープは、一般に、直鎖状ペプチドに限定される。同じエピトープを認識する抗原結合分子は、1つの抗原結合分子が別の抗原結合分子の標的抗原への結合を遮断する能力を示す、単純な免疫測定法で同定することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「抑制する(inhibit)」、「抑制する(inhibits)」、又は「抑制」(及びその文法的等価物)は、疾患の完全な廃止を意味するものではなく、状態の発生を低減し、状態の発症を遅延させ、及び/又は発症後の状態に関連する条件を低減する任意の種類の予防的治療を包含する。
【0037】
本明細書で使用される「免疫応答」は、対象の免疫系による応答を指す。例えば、免疫応答は、対象の免疫系が外来性(例えば、非自己抗原)又は自己(例えば、外来性として認識される自己抗原)として認識する抗原/免疫原に対するものであり得る。免疫応答は、免疫グロブリン若しくは抗体の産生を伴う、体液性であってもよく、又は、様々な種類のBリンパ球及びTリンパ球、樹状細胞、マクロファージ、抗原提示細胞など、又はその両方を伴う、細胞性であってもよい。免疫応答はまた、サイトカインなどの様々なエフェクター分子の製造又は合成を伴い得る。「免疫応答」という用語は、対象における特定の抗原(例えば、病原性生物の抗原)又は生物(例えば、病原性微生物)に対する免疫応答を引き起こす、活性化する、誘発する、又は誘導する免疫原性応答、並びに免疫応答を抑制する(inhibit)、抑制する(suppress)、減少させる、若しくは排除する、又は免疫系を非応答性にする、又はアレルゲンに対する、若しくは自己抗原や、このような抗原を発現する細胞、組織あるいは器官に対する、免疫応答の発生若しくは開始を遅延させる、免疫抑制性若しくは寛容原性免疫応答を包含する。
【0038】
本明細書における「免疫相互作用性」への基準は、分子間の任意の相互作用、反応、又は他の形態の会合への基準を含み、特に、分子の1つが免疫系の成分であるか、又はそれを模倣する場合である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「免疫」という用語は、疾患を引き起こすことができる微生物(例えば、病原体)への曝露時の疾患からの保護(例えば、疾患の徴候、症状又は状態の予防又は減弱(例えば、抑制))を指す。免疫は、先天性(例えば、抗原への以前の曝露の非存在下で存在する非適応性(例えば、非獲得性)免疫応答)及び/又は後天性/適応性(例えば、抗原への以前の曝露後にB細胞及びT細胞によって媒介される免疫応答(例えば、抗原に対して増加した特異性及び反応性を示す))であり得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「免疫原」という用語は、適応免疫系からの応答を刺激する分子を指し、これは、抗体応答、細胞傷害性T細胞応答、Tヘルパー応答、及びT細胞記憶応答を含む群から引き出される応答を含み得る。免疫原は、結果として生じる炎症性応答を伴う免疫応答の上方制御を刺激し得るか、又は下方制御若しくは免疫抑制をもたらし得る。典型的には、免疫原は、抗原特異的免疫応答をもたらすリンパ球活性化を開始することができる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「免疫原性組成物」又は「免疫原性製剤」という用語は、脊椎動物、特に哺乳動物などの動物に投与された場合に、免疫原性組成物が投与される対象において、少なくともあるレベルの免疫をもたらす応答を含み得る、免疫原性免疫応答を誘導する調製物を指す。
【0042】
「リンカー」及び「スペーサー」という用語は、本明細書において互換的に使用され、2つの分子を連結し、しばしば2つの分子を所望の構成に配置する役割を果たす、分子又は分子の基(モノマー又はポリマーなど)を指す。幾つかの実施形態では、リンカーが2つの基を連結する共有結合、又は長さが1原子以上50原子以下、長さが2原子以上20原子以下、長さが3原子以上30原子以下、長さが4原子以上40原子以下、長さが10原子以上50原子以下、長さが10原子以上30原子以下、長さが12原子以上26原子以下、長さが14原子以上30原子以下、又は長さが1原子のいずれかの範囲の鎖を有する化学部分であってもよい。例えば、リンカー又はリンカーの一部は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、22個、24個、26個、28個、30個、32個、34個、36個、38個、40個、45個、又は50個の炭素原子の長さである長さを有することができ、リンカーは、直鎖、分枝、環状、又は単一原子であってもよい。幾つかの実施形態では、リンカーは、長さが10オングストローム、11オングストローム、12オングストローム、13オングストローム、14オングストローム、15オングストローム、16オングストローム、17オングストローム、18オングストローム、19オングストローム、20オングストローム、22オングストローム、23オングストローム、24オングストローム、25オングストローム、26オングストローム、27オングストローム、28オングストローム、29オングストローム、30オングストローム、32オングストローム、34オングストローム、36オングストローム、38オングストローム、40オングストローム、45オングストローム、50オングストローム、又はその中の1オングストローム単位の任意の量であり得る。幾つかの実施形態では、リンカー骨格の1個、2個、3個、4個又は5個以上の炭素原子は、硫黄、窒素又は酸素ヘテロ原子で置換されていてもよい。骨格原子間の結合は、飽和又は不飽和であってもよく、通常、1つ、2つ、又は3つ以下の不飽和結合がリンカー骨格中に存在する。リンカーは、例えば、アルキル、アリール又はアルケニル基を有する1つ以上の置換基を含み得る。リンカーは、オリゴ(エチレングリコール);エーテル、チオエーテル、第三級アミン、直鎖又は分枝鎖であり得るアルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)などを含むことができるが、これらに限定されない。リンカー骨格は、環式基、例えば、アリール、複素環又はシクロアルキル基を含んでもよく、式中、環式基の2個以上の原子、例えば、2個、3個又は4個の原子が骨格に含まれる。幾つかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの糖単位であってもよい。リンカーは、切断可能であっても非切断可能であってもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「部分」という用語は、分子の特徴的な化学的、生物学的、及び/又は薬学的特性に関与する、分子内の官能基、官能基のセット、及び/又は原子の特定の基であり得る、分子の一部を指す。
【0044】
「単糖単位」及び「単糖残基」という用語は、本明細書では炭水化物の最も基本的な単位を指すために互換的に使用され、アルドース(例えば、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロースなど)、ケトース(例えば、D-フルクトース、D-ソルボース、D-タガトースなど)、デオキシ糖(例えば、L-ラムノース、L-フコースなど)、デオキシアミノ糖(例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルマンノサミン、N-アセチルガラクトサミンなど)、アルダル酸、ウロン酸、ケトアルドン酸(例えば、シアル酸)、ウロン酸(例えば、KDO)、又は同等物を含む。
【0045】
「単糖誘導体」又は「単糖単位誘導体」という用語は、本明細書において、単糖の部位が1つ以上の置換基及び/又は官能基で置換された単糖の誘導体を指すために使用され、その非限定的な例としては、デオキシ糖(水素で置換されたアルコール性ヒドロキシ基)、アミノ糖(アミノ基で置換されたアルコール性ヒドロキシ基)、チオ糖(チオールで置換されたアルコール性ヒドロキシ基、又はC=Sで置換されたC=O、又は硫黄で置換された環酸素)、セレノ糖、テルロ糖、アザ糖(窒素で置換された環炭素)、アミノ糖(窒素で置換された環酸素)、ホスファノ糖(リンで置換された環炭素)、C-置換された単糖(炭素で置換された非末端炭素原子での水素)、不飽和単糖、アルジトール(CHOH基で置換されたカルボニル基)、アルドン酸(カルボキシ基で置換されたアルデヒド基)、ケトアルドン酸、ウロン酸、アルダル酸などが挙げられる。単糖単位などは、更に置換され得ることが理解される。
【0046】
「ナイセリア」という用語は、多くの動物の粘膜表面にコロニーを形成する、グラム陰性細菌の大きな属を指す。ヒトにコロニーを形成する11種のうち、病原体である髄膜炎菌(細菌性髄膜炎の原因となる病原体の1つ)及び淋菌(淋病の原因となる病原体)は、2種のみである。特定の実施形態では、本開示の薬剤及び組成物によって標的とされる感染症には、原発性淋菌感染症の治療の欠如から生じ得る、二次感染症が含まれる。例示的な二次感染症としては、尿道炎、排尿困難、精巣上体炎、骨盤炎症性疾患、子宮頸管炎及び子宮内膜炎、並びに全身性淋菌感染症(例えば、関節炎、心内膜炎又は髄膜炎として現れるもの)が挙げられる。淋菌感染症は、少なくとも1つの既知の抗菌薬、例えば少なくとも1つのβ-ラクタム系薬に耐性である淋菌株によって、引き起こされるものであってもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「中和する」及びその文法的等価物は、抗原を発現する生物の活性を含む、抗原結合分子が結合する抗原の活性を阻害するための、抗原結合分子の能力を指す。用語「中和する」はまた、その範囲内に、抗原を発現する病原性生物を非病原性にさせることを含む。例えば、生物は、生物に対する免疫応答を誘発する(例えば、食細胞による)抗原結合分子の結合を通して中和され得る。生物はまた、生物が増殖すること、宿主に感染すること、又は毒素を産生することを不可能にする抗原結合分子の結合を介して中和され得る。
【0048】
「オリゴ糖」という用語は、適切にグリコシド結合している(例えば、α-グリコシド結合及び/又はβ-グリコシド結合によって)、単糖残基(本明細書では「単糖単位」とも呼ばれる)2つ以上、一般に2個以上10個以下、典型的には2個以上6個以下を含む分子を指す。オリゴ糖は、還元末端及び非還元末端を有すると考えられる。
【0049】
「オリゴ糖配列」という用語は、配列中の単糖残基/残基がより大きな複合糖質の一部であり、鎖中に他の単糖残基を含有し、分岐していてもよく、及び/又はオリゴ糖鎖の置換(例えば、天然置換)修飾を有していてもよいことを示す。オリゴ糖鎖は、通常、脂質アンカー又はタンパク質に結合されるか、さもなければ連結される。幾つかの実施形態では、オリゴ糖配列は、非還元末端オリゴ糖配列であり、これは、オリゴ糖配列がオリゴ糖配列の還元末端からの場合を除いて、別の単糖又はオリゴ糖構造に連結されていないことを意味する。結合体又はキメラ分子として存在する場合、オリゴ糖配列は、オリゴ糖配列の還元末端から適切に結合され、又は他の方法で連結されるが、抗原結合分子又は他の結合物質によって許容される他の連結位置も使用することができる。本開示のオリゴ糖配列において定義される隣接する単糖単位は、それらの技術的範囲内にそれらの間の代替のグリコシド結合を含み、開示されるオリゴ糖配列において定義される特定の単糖単位は、それらの技術的範囲内にそれらの単糖単位の誘導体を含むことが理解されるべきである。
【0050】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、そのように記載された成分が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある並置を指す。例えば、担体を本明細書に記載のオリゴ糖に「作動可能に連結する」ことは、オリゴ糖に対する免疫応答の誘発のためにオリゴ糖が免疫系に提示されるような担体の配置及び/又は配向を包含する。
【0051】
本明細書で互換的に使用される「患者」、「対象」、「宿主」又は「個体」という用語は、治療又は予防が望まれる任意の対象、特に脊椎動物対象、さらにより具体的には哺乳動物対象を指す。本開示の技術的範囲内に入る好適な脊椎動物としては、霊長類(例えば、ヒト、サル及び類人猿であり、Macaca属(例えば、Macaca fascicularis、及び/又はアカゲザル(Macaca mulatta)などの、カニクイザル)及びヒヒ(Papio ursinus)などのサルの種、並びにキヌザル(Callithrix属)、リスザル(Saimiri属)及びタマリン(Saguinus属)、並びにチンパンジー(Pan troglodytes)などのサルの種を含む)、げっ歯類(例:マウス、ラット、モルモット)、ウサギ類(例:ウサギ、ノウサギ)、ウシ類(例:ウシ)、ヒツジ類(例:ヒツジ)、ヤギ類(例:ヤギ)、ブタ類(例:ブタ)、ウマ類(例:ウマ)、イヌ科(例:イヌ)、ネコ科(例:ネコ)、鳥類(例:ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、カナリア、セキセイインコなどのコンパニオンバード)、海洋哺乳類(例:イルカ、クジラ)、爬虫類(例:ヘビ、カエル、トカゲ)、及び魚類を含む脊索亜門の任意のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい対象は、ヒト、特にナイセリア生物に対する免疫応答を誘発する必要があるヒトである。しかしながら、前述の用語は、症状が存在することを意味しないことが理解されるであろう。
【0052】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物への局所又は全身投与において安全に使用することができる、固体又は液体の充填剤、希釈剤又は封入物質を意味する。代表的な薬学的に許容されるビヒクルとしては、当業者に知られているような、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料などの材料及びそれらの組み合わせが挙げられる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照されたい)。任意の従来の担体が活性成分と不適合である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が企図される。「ビヒクル」という用語は、典型的には、天然又は合成の有機又は無機成分を意味し、それと活性剤を組み合わせて適用を容易にする。
【0053】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり(特別な又はカスタマイズされた意味に制限されない)、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって)親化合物が修飾される、開示された化合物の誘導体を指すが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱物又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、並びに非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むが、これらに限定されないアミン陽イオンが挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩を含む。本開示の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的に、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸又は塩基の形態を化学量論的な量の適切な塩基又は酸と、水中又は有機溶媒中、又は二者の混合物中で反応させることにより調製することができ、一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような、非水性の媒体が好ましい。適切な塩の一覧は、レミントンのPharmaceutical Sciences、17.sup.th.ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、1418頁、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、P.H.Stahl及びC.G.Wermuth(編者)、Wiley-VCH、2008、及びBergeら、Journal of Pharmaceutical Science、66、1-19(1977)に見出され、これらの各々は、その全体により本明細書に組み込まれる。
【0054】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」及び「タンパク質性分子」は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを含むか又はそれからなる分子、並びにその変異体及び合成類似体を指す。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、合成非天然アミノ酸、例えば対応する天然アミノ酸の化学類似体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0055】
「耐性」という用語は、1つ以上の公知の抗菌薬に対する非感受性を示した、細菌の株を指すことが意図される。非感受性株は、その株の所与の化合物又は化合物のクラスのMICが、対応する感受性株よりも高い数にシフトしている株である。例えば、それは、β-ラクタム系抗生物質に対して非感受性である株、1つ以上のフルオロキノロンに対して非感受性である株、及び/又は1つ以上の他の抗生物質(すなわち、β-ラクタム系及びフルオロキノロン以外の抗生物質)に対して非感受性である株を指し得る。特定の実施形態では、「耐性」という用語は、その株についての所与の化合物又は化合物のクラスのMICが、対応する感受性株についてよりも有意に高い数にシフトしているものを指し得る。細菌株は、治療不全の高い可能性に関連する、この薬物の濃度によってin vitroで阻害される場合、所与の抗生物質に対して耐性であると言われ得る。細菌株は、1つ以上のフルオロキノロン抗生物質、例えば、レボフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、グレパフロキサシン、パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、ベシフロキサシン、クリナフロキサシン、ガレノキサシン、ゲミフロキサシン、ガチフロキサシン、シタフロキサシン、トロバフロキサシン、プルリフロキサシン、シプロフロキサシン、ペフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、デラフロキサシン、ザボフロキサシン、アバロフロキサシン、フィナフロキサシンから選択される1つ以上の抗生物質に耐性があってもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「糖単位」という用語は、単一の単糖残基/部分を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「末端糖単位」という用語は、非(単糖の場合)又は1つの隣接する糖単位のみ(オリゴ糖の場合)のいずれかに連結される糖単位を指す。
【0058】
用語「治療する」、「治療すること」又は「の治療」(又は文法的に当量用語)とは、対象の状態の重症度が、軽減されるか、少なくとも部分的に改善される(improved)か、改善される(ameliorated)こと、及び/又は少なくとも1つの臨床症状のある程度の緩和、軽減又は減少が達成されること、及び/又は状態の進行の遅延があることを意味する。
【0059】
本明細書に記載される各実施形態は、特に明記しない限り、各実施形態及び全ての実施形態に準用される。
【0060】
2.略語
本出願では、以下の略語を使用する:
CFU=コロニー形成単位
CMP=シチジン一リン酸
CRM197=ジフテリア毒素の無毒変異体
EDC=1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
Gal=ガラクトース
Glc=グルコース
GlcNAc=N-アセチルグルコサミン
Hep=ヘプトース
hr.=時間
HRP=西洋ワサビペルオキシダーゼ
Ig=免疫グロブリン
IgG=免疫グロブリンG
IgG1=免疫グロブリンG1
IgG2a=免疫グロブリンG2a
IgG2b=免疫グロブリンG2b
IgG3=免疫グロブリンG3
IgG4=免疫グロブリンG4
IgM=免疫グロブリンM
kDa=キロダルトン
KDO=3-デオキシ-D-マンノ-oct-2-ウロソン酸、ケトデオキシオクトン酸、又はケトデオキシオクツロソネート
LNnT=ラクト-N-ネオテトラオース
LOS=リポオリゴ糖
MAb=モノクローナル抗体
MDR=多剤耐性
MIC=最小発育阻止濃度
Neu5Ac=N-アセチルノイラミン酸
NCS=N-クロロスクシンイミド
NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド
NTHi=非型インフルエンザ菌
OMV=外膜小胞
PMN=多形核白血球
TMB=3,3’,5,5-テトラメチルベンジジン
【0061】
3.ナイセリアオリゴ糖を含むキメラ分子
本開示は、一部には、ナイセリアLOSα-2,3-シアリルトランスフェラーゼ(Lst)が、細菌の細胞質中に存在するという判定に基づき、Neu5AcをCMP-Neu5AcからLOSの末端に転移することに加えて、Lstは、淋菌及び髄膜炎菌の両方において、Neu5Acの代わりにKDOをLOSに転移することができるという判定に基づく。特に、本発明者らは、KDOが感染した女性由来のin vivo試料において末端LOS構造として発現され、抗KDOモノクローナル抗体6E4が淋菌のオプソニン食作用性殺傷を媒介することができることを見出した。したがって、淋菌LOS上に発現されるKDOは、ナイセリア生物に対する免疫原性組成物の開発のための新規オリゴ糖抗原を表すことが提案されている。
【0062】
したがって、本開示は、淋菌又は髄膜炎菌などのナイセリア生物に対する免疫応答を誘発する際に使用するためのキメラ分子、及び、例えばナイセリアオリゴ糖抗原を標的とする免疫応答を誘発することによって、ナイセリア感染症を治療及び/又は抑制するための、そのようなキメラ分子を使用する方法に関する。
【0063】
キメラ分子は、担体と、ナイセリアLOSに対応するオリゴ糖配列を含むオリゴ糖と、を含み、オリゴ糖配列は、末端糖単位としてKDOを含む。特定の実施形態では、キメラ分子は、式(I):
【数1】
によって表され、
式中、
KDO-OSは、2以上10以下(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)、典型的には2以上6以下、単糖単及びKDOを末端糖単位として含むオリゴ糖配列を表し、
Lは、任意のリンカーであり、
Crは、担体であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、少なくとも1であるか、
又はその薬学的に許容される塩である。
【0064】
オリゴ糖配列は、好ましくはGalに結合したKDOを含み、適切には、Galは、GlcNAcに更に結合している。代表的な実施形態では、KDOは、α(2→3)結合を介してGalに結合し、及び/又はGalは、β(1→4)結合を介してGlcNAcに結合する。この種類の非限定的な例では、オリゴ糖配列は、KDOα(2→3)Gal又はKDOα(2→3)Galβ(1→4)GlcNAcを含む。
【0065】
適切な担体は、当該技術分野で公知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.,Mack Easton,Pa.(1990)を参照されたい)、例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、ポリマー、デンドリマー、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、外膜タンパク質(OMP)、又はそれらの組み合わせを含むことができ、それら自身は、特定の抗原特性を示さないが、宿主の、担体の表面上に提示される本開示のオリゴ糖(抗原)に対する免疫原性反応を支持し得る。
【0066】
特定の実施形態では、担体は、タンパク質担体であり、細菌毒素、毒素、外毒素、及びその非毒性誘導体、例えば破傷風毒素、破傷風毒素フラグメントC、ジフテリア毒素、CRM 197などのCRM(非毒性ジフテリア毒素突然変異体)、コレラ毒素、黄色ブドウ球菌外毒素又は毒素、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、緑膿菌外毒素Aを含むが、これらに限定されず、組換え生産された、遺伝的に無毒化されたその変異体;髄膜炎菌血清型B外膜タンパク質複合体(OMPC)、外膜クラス3ポリン(rPorB)、及びその他のポリンなどの、細菌外膜タンパク質;キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、オボアルブミンなどのアルブミン;肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA);ツベルクリンの精製タンパク誘導体(PPD);トランスフェリン結合タンパク質、ポリ(リジン:ギウタミン酸)などのポリアミノ酸;TLR-5のペプチジルアゴニスト(例えば、リステリア(Listeria)のような運動性細菌のフラジェリン);並びに上記の担体の誘導体及び/又は組み合わせを含む。ヒトにおける使用のための好ましい担体には、破傷風トキソイド、CRM197、及びOMPCが含まれる。
【0067】
リンカーと担体との間の結合の種類、並びに担体及びオリゴ糖の構造的性質に応じて、担体は、その表面上に平均して、例えば、1以上500以下、1以上100以下、1以上20以下、又は3以上9以下のオリゴ糖単位を示し得る。
【0068】
担体タンパク質などの、担体にオリゴ糖を結合させるための方法は、従来のものであり、当業者は、従来の方法を使用して、本開示に従って結合体を作製することができる。ガイダンスは、例えば、米国特許第4,356,170号;第4,619,828号;第5,153,312号;第5,422,427号;及び第5,445,817号;並びに様々な印刷物及びオンラインPierceタンパク質架橋ガイド及びカタログ(Thermo Fisher,Rockford,IL)を含む、様々な開示においても入手可能である。
【0069】
オリゴ糖の担体への結合に続いて、キメラ分子は、当業者に周知の様々な技術によって精製することができる。精製工程の1つの目標は、結合反応生成物組成物から非結合オリゴ糖を除去することである。精製のための例示的な方法は、米国特許第6,146,902号に記載されている硫酸アンモニウムの存在下での限外濾過を含む。あるいは、キメラ分子は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、疎水性相互作用クロマトグラフィー、又は硫酸アンモニウム分画を含む、任意の数の標準的技術によって、未反応オリゴ糖及び担体から精製することができる(例えば、Andersonら、1986.J.Immunol.137:1181-1186;及びJennings&Lugowski、1981.J.Immunol.127:1011-1018を参照されたい)。キメラ分子の組成物及び純度は、GLC-MS及びMALDI-TOF分光法によって決定することができる。
【0070】
特定の実施形態において、本開示のオリゴ糖抗原は、多数のFDA承認ワクチンにおいて使用される市販のタンパク質担体である、CRM197に結合される。CRM結合体は、OMPCなどの他のFDA承認担体よりも合成、精製、及び特徴付けが容易であるという利点を有する。オリゴ糖抗原は、チオール-ブロモアセチル結合化学を介してCRMに結合され得る。CRM活性化は、前述の米国特許公開第2007-0134762号に記載されるように、リシン側鎖をブロモ酢酸のNHSエステルと反応させることにより、達成することができる。CRMは、結合の前に、タンパク質あたり10個以上20個以下のブロモアセチル基(n=10~20)で官能化され得る。結合は、CRMの凝集を回避するために、pH=9で実施され得る。CRMのバックグラウンド加水分解を最小限に抑えながら、NHS-ブロモ酢酸との完了CRM反応を確実にするために、pHの注意深い監視を使用しなければならない。活性化CRMは、結合の前にサイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。抗原-CRM結合体は、チオール末端炭水化物抗原をブロモアセトアミド活性化CRMと反応させることによって合成することができる。
【0071】
CRM結合体は、サイズ排除クロマトグラフィーを介して精製して、任意の未反応炭水化物を除去及び回収することができる。MBTH(GlcNAc残渣に特異的)及びBradfordアッセイを使用して、前述のように、それぞれ炭水化物:タンパク質比及びタンパク質含有量を決定することができる(例えば、Manziら、1995.Curr.Prot.Mol.Biol.,section 17.9.1(Suppl.32)を参照されたい)。特定の実施形態では、各結合体について約10重量%の最小オリゴ糖含量が生成され得る。典型的には、結合体は、タンパク質担体あたり約3個以上約20個以下の抗原を含み得る。
【0072】
他の実施形態では、オリゴ糖抗原は、ELISA及びマイクロアレイを含む、診断アッセイの開発に適した1つ以上の担体に結合され得る。このようなアッセイで使用するための例示的な担体には、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ビオチン、標識、スライドガラス又は金表面が含まれる。例として、合成炭水化物抗原は、チオール-マレイミドカップリング手順によってBSAに結合され得る(図5B)。マレイミド-BSAは、タンパク質当たり15個以上20個以下のマレイミド基を含有する(n=15~20)。したがって、オリゴ糖抗原をマレイミド官能化BSAに結合することができ、それによって、20倍モル過剰の抗原を、マレイミド結合バッファー(Pierce)中で市販のlmjectTMマレイミドBSA(Pierce)と反応させる。結合中のマレイミド基の加水分解を避けるために、結合をpH=7.2で行ってもよい。
【0073】
BSA結合体は、サイズ排除クロマトグラフィーを介して精製して、未反応の炭水化物を除去し、回収することができる。フェノール-硫酸及びBradfordアッセイによる特性評価をMALDI-MSと共に行い、結合体の炭水化物含量及び結合価に関する情報を提供することができる。好ましい態様において、結合体は、BSA結合体あたり約10重量%及び結合体あたり8超の抗原複写の最小オリゴ糖含量を含む。
【0074】
関連する態様において、本開示は、ナイセリアLOSに対応するオリゴ糖配列を含むオリゴ糖に関し、オリゴ糖配列は、上記及び本明細書の他の箇所に広く記載されるように、末端糖単位としてKDOを含む。
【0075】
4.抗原結合分子
本明細書に開示されるオリゴ糖は、ナイセリアLOSの構造模倣物であり、本開示によれば、淋菌及び髄膜炎菌などの病原性ナイセリア生物を含む、ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生するのに有用である。
【0076】
当業者は、例えば、Abbasら、Cellular and Molecular Immunology,6th ed.,W.B.Saunders Company(2010)又はMurpheyら、Janeway’s Immunobiology,8th ed.,Garland Science(2011)に記載されているような抗原結合タンパク質に基づく十分に開発された知識を理解するであろう。幾つかの実施形態では、ナイセリアLOSと特異的に結合する抗原結合タンパク質は、抗体である。抗体は、定義の節に記載されるように、インタクト抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。抗体は、完全抗体分子(完全長重鎖及び/又は軽鎖を有するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、又はヒト型を含む)を含んでもよく、又はその抗原結合フラグメントを含んでもよい。抗体フラグメントとしては、F(ab’)2、Fab、Fab’、Fv、Fc、及びFdフラグメントが挙げられ、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、マキシボディ、ミニボディ、細胞内抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びビス-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson,2005,Nature Biotechnology,23,9,1126-1136を参照されたい)。また、フィブロネクチンポリペプチドモノボディを含む、米国特許第6,703,199号に開示されているような抗体ポリペプチドも含まれる。他の抗体ポリペプチドは、単鎖ポリペプチドである米国特許出願公開第2005/0238646号に開示されている。
【0077】
関心対象の抗原に対する抗体を調製する多数の方法が、当該技術分野において公知である。例えば、ナイセリアLOSと特異的に結合するモノクローナル抗体は、Kohler,G.ら(1975,“Continuous Cultures Of Fused Cells Secreting Antibody Of Predefined Specificity”,Nature 256:495-497)の精神的方法又はその修飾に基づくことが多い、従来のハイブリドーマ法を用いて作製することができる。典型的には、モノクローナル抗体は、マウスなどの非ヒト種において発達する。一般に、マウス又はラットは、免疫化のために使用されるが、他の動物も使用することができる。抗体は、免疫原性量の免疫原性、この場合は本開示のキメラ分子、でマウスを免疫することによって産生され得る。免疫原は、隔週、又は毎週などの周期的間隔で、複数回投与されてもよく、又は動物の生存率を維持するような方法で投与されてもよい。
【0078】
抗体応答を監視するために、動物から小型生物学的試料(例えば、血液)を得て、免疫原に対する抗体力価について試験することができる。脾臓及び/又は幾つかの大きなリンパ節を除去し、単一細胞に解離することができる。必要に応じて、脾臓細胞を、細胞懸濁液をプレート又は抗原でコーティングされたウェルに適用することによって、(非特異的接着細胞の除去後に)スクリーニングすることができる。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、プレートに結合し、懸濁液の残りの部分で洗い流されない。次いで、得られたB細胞、又は全ての解離した脾臓細胞を、骨髄腫細胞(例えば、X63-Ag8.653、及びSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.からのもの)と融合させることができる。ポリエチレングリコール(PEG)を使用して、脾臓又はリンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを形成させることができる。次いで、ハイブリドーマを選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、別名「HAT培地」)中で培養する。次いで、得られたハイブリドーマを限界希釈によってプレーティングし、例えば、FACS(蛍光活性化細胞選別)又は免疫組織化学(IHC)スクリーニングを使用して、免疫原に特異的に結合する抗体の産生についてアッセイする。次いで、選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを、in vitro(例えば、組織培養瓶又は中空繊維反応器中)又はin vivo(例えば、マウスの腹水として)のいずれかで培養する。
【0079】
細胞融合技術の別の代替法として、エプスタイン-バーウイルス(EBV)不死化B細胞を使用して、ナイセリアLOSと特異的に結合するモノクローナル抗体を産生することができる。ハイブリドーマを増殖させ、必要に応じてサブクローニングし、上清を、従来のアッセイ手順(例えば、FACS、IHC、ラジオ免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法など)によって抗免疫原活性についてアッセイする。
【0080】
したがって、本開示は、ナイセリア生物と特異的に結合する抗原結合分子を産生する方法を更に企図し、本方法は、(1)本明細書に開示されるキメラ分子で動物を免疫することと、(2)キメラ分子、又はナイセリア生物若しくはそのLOSと特異的に結合する、動物由来のB細胞を検出することと、(3)そのB細胞によって発現される抗原結合分子を単離することと、を含む。
【0081】
本開示はまた、このような方法によって産生される抗原結合分子、並びにその誘導体を包含する。また、本開示の抗原結合分子を産生することができるハイブリドーマを含む細胞、及びそれらの細胞から抗原結合分子を産生する方法も包含される。特定の実施形態では、本開示の方法及び細胞によって産生される抗原結合分子は、好ましくは中和抗原結合分子である。
【0082】
キメラ抗体及びヒト化抗体も企図される。幾つかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変ドメイン(又はその抗原結合部位の全部若しくは一部)及びヒト抗体に由来する定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体フラグメントは、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位及びヒト抗体に由来する可変ドメインフラグメント(抗原結合部位を欠く)を含み得る。操作されたモノクローナル抗体の生産手順には、Riechmannら、1988、Nature 332:323、Liuら、1987、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 84:3439、Larrickら、1989、Bio/Technology 7:934、及びWinterら、1993、TIPS 14:139に記載されているものが挙げられる。一実施形態では、キメラ抗体は、CDRグラフト抗体である。抗体をヒト化する技術については、例えば、米国特許第5,869,619号;第5,225,539号;第5,821,337号;第5,859,205号;第6,881,557号、Padlanら、1995、FASEB J.9:133-39、Tamuraら、2000、J.Immunol.164:1432-41、Zhang,W.ら、Molecular Immunology 42(12):1445-1451、2005;Hwang W.ら、Methods 36(1):35-42、2005;Dall’Acqua W Fら、Methods 36(1):43-60、2005;及びClark,M.、Immunology Today 21(8):397-402、2000に記載されている。
【0083】
本開示の抗体はまた、完全ヒトモノクローナル抗体であり得る。完全ヒトモノクローナル抗体は、当業者が精通している任意の数の技術によって作製することができる。そのような方法としては、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含む)のエプスタインバーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のin vitro免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化トランスジェニックマウスからの脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、又は当該技術分野で公知であり、本明細書の開示に基づく他の手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
非ヒト動物において、ヒトモノクローナル抗体を生成するための手順が開発されている。例えば、1つ以上の内因性免疫グロブリン遺伝子が、様々な手段によって不活性化されたマウスが調製されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子は、不活性化されたマウス遺伝子を置き換えるために、マウスに導入されている。この技術では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素を、内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウスの株に導入する(Bruggemannら、1997、Curr.Opin.Biotechnol.8:455-58も参照されたい)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、ミニ遺伝子構築物、又は酵母人工染色体上の導入遺伝子であってもよく、これは、マウスリンパ組織において、B細胞特異的DNA転位及び超変異を受ける。
【0085】
動物において産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質によってコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込む。一実施形態では、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物を、対象のキメラポリペプチド又は複合免疫原で免疫する。
【0086】
ヒト抗体又は部分的にヒト抗体を産生するためのトランスジェニック動物の生産及び使用に関する技術の例は、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号及び第5,545,806号、Davisら、Production of human antibodies from transgenic mice in Lo,ed.Antibody Engineering:Methods and Protocols,Humana Press,NJ:191-200(2003),Kellermannら、Curr Opin Biotechnol.2002,13:593-97,Russelら、Infect Immun.2000,68:1820-26,Galloら、Eur J.Immun.2000,30:534-40,Davisら、Cancer Metastasis Rev.1999,18:421-25,Green,J Immunol Methods 1999,231:11-23,Jakobovits,Advanced Drug Delivery Reviews 1998,31:33-42,Greenら、J Exp Med.1998,188:483-95,Jakobovits A,Exp.Opin.Invest.Drugs 1998,7:607-14,Tsudaら、Genomics 1997,42:413-21,Mendezら、Nat.Genet.1997,15:146-56,Jakobovits,Curr Biol.1994,4:761-63,Arbonesら、Immunity 1994,1:247-60,Greenら、Nat.Genet.1994,7:13-21,Jakobovitsら、Nature 1993,362:255-58,Jakobovitsら、Proc Natl Acad Sci USA 1993,90:2551-55.Chen,J., M.ら、Int.Immunol.1993,5:647-656,Choiら、Nature Genetics 1993,4:117-23,Fishwildら、Nature Biotech.1996,14:845-51,Hardingら、1995,Annals of the New York Academy of Sciences,Lonbergら、1994,Nature 368:856-59,Lonberg,1994,Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101,Lonbergら、Int.Rev.Immunol.1995,13:65-93,Neuberger,Nature Biotech.1996,14:826,Taylorら、Nucleic Acids Research 1992,20:6287-95,Taylorら、Int.Immunol.1994,6:579-91,Tomizukaら、Nature Genetics 1997,16:133-43,Tomizukaら、Proc Natl Acad Sci USA 2000,97:722-27,Tuaillonら、Proc Natl Acad Sci USA 1993,90:3720-24、及びTuaillonら、J.Immunol.1994,152:2912-20.;Lonbergら、Nature 1994,368:856;Taylorら、Int.Immunol.1994,6:579;米国特許第5,877,397号;Bruggemannら、Curr.Opin.Biotechnol.1997 8:455-58;Jakobovitsら、Ann.N.Y.Acad.Sci.1995.764:525-35に記載されている。さらに、XenoMouse(登録商標)(Abgenix社、現Amgen社)を用いたプロトコールが、例えば、U.S.05/0118643及びWO05/694879号、WO98/24838、WO00/76310、及び米国特許第7,064,244号に記載されている。
【0087】
あるいは、本明細書に開示されるキメラ分子を使用して、抗原結合分子ライブラリーから抗原結合分子をスクリーニングすることができる。例えば、本開示のキメラ分子は、固体支持体(例えば、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、ポリスチレンビーズ、アルミナゲル、又は多糖、磁気ビーズ)に固定化され、抗原結合分子への結合についてスクリーニングされ得る。代替として、抗原結合分子を固体支持体に固定化し、キメラ分子への結合についてスクリーニングすることができる。パンニングアッセイ、ELISA、表面プラズモン共鳴、又は当該技術分野で公知の他の抗原結合分子スクリーニングアッセイなどの任意のスクリーニングアッセイを使用して、本明細書に開示されるキメラ分子、特にそのオリゴ糖成分に結合する抗原結合分子をスクリーニングすることができる。スクリーニングされる抗原結合分子ライブラリーは、市販のライブラリー、in vitroで生成されたライブラリー、又はナイセリア生物に感染した個体から抗体を同定及びクローニング又は単離することによって得られたライブラリーであり得る。特定の実施形態では、抗原結合分子ライブラリーは、ナイセリア生物に感染した対象から作製される。抗原結合分子ライブラリーは、当該技術分野で公知の方法に従って作製することができる。特定の実施形態では、ライブラリーは、抗体をクローニングし、それらをファージディスプレイライブラリー又はファージミドディスプレイライブラリー中で使用することによって生成される。
【0088】
本開示は、抗ナイセリアLOS抗体のフラグメントを更に包含する。このようなフラグメントは、抗体由来配列から完全になり得るか、又は更なる配列を含み得る。抗原結合フラグメントの例としては、Fab、F(ab’)2、単鎖抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ、及びドメイン抗体が挙げられる。他の例は、Lundeら、Biochem.Soc.Trans.2002,30:500-06によって提供される。
【0089】
一本鎖抗体は、アミノ酸架橋(短いペプチドリンカー)を介して重鎖及び軽鎖可変ドメイン(Fv領域)フラグメントを連結することによって形成することができ、単一のポリペプチド鎖をもたらす。このような一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VL及びVH)をコードするDNA間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることによって調製されている。得られたポリペプチドは、2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、それ自体で折り返して抗原結合単量体を形成することができ、又は多量体(例えば、二量体、三量体、又は四量体)を形成することができる(Korttら、Prot.Eng.1997,10:423;Korttら、Biomol.Eng.2001,18:95-108)。異なるVL及びVH含有ポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することができる(Kriangkumら、Biomol.Eng.2001,18:31-40)。一本鎖抗体の産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号;Bird,Science 1988,242:423;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988,85:5879;Wardら、Nature 1989,334:544,de Graafら、Methods Mol.Biol.2002,178:379-87に記載されているものを含む。
【0090】
抗体に由来する抗原結合フラグメントは、例えば、抗体のタンパク質分解加水分解、例えば、従来の方法による全抗体のペプシン又はパパイン消化によっても得ることができる。例として、抗体フラグメントは、F(ab’)2と称される5Sフラグメントを提供するために、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって産生され得る。このフラグメントを、チオール還元剤を使用して更に切断して、3.5S Fab’一価フラグメントを作製することができる。任意に、ジスルフィド結合の切断で生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用して、切断反応を行うことができる。代替として、パパインを使用した酵素的切断は、2つの一価Fabフラグメント及びFcフラグメントを直接産生する。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,331,647号、Nisonoffら、Arch.Biochem.Biophys.1960,89:230;Porter、Biochem.J.1959,73:119;Edelmanら、in Methods in Enzymology 1:422(Academic Press 1967);及びAndrews、S.M.及びTitus,J.A.in Current Protocols in Immunology(Coligan J.E.ら、編者),John Wiley&Sons,New York(2003),ページ2.8.1-2.8.10及び2.10A.1-2.10A.5に記載されている。抗体を切断するための他の方法、例えば、重鎖を分離して、一価軽鎖-重鎖フラグメント(Fd)を形成すること、フラグメントの更なる切断、又は他の酵素的、化学的、若しくは遺伝的技術もまた、フラグメントがインタクト抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用され得る。
【0091】
抗体フラグメントの別の形態は、抗体の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDRは、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することによって得ることができる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として使用して可変領域を合成することによって、調製される(例えば、Larrickら、Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106,1991;Courtenay-Luck、「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」,in Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application,Ritterら(編者),166ページ(Cambridge University Press 1995);及びWardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」,in Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birchら(編者),137ページ(Wiley-Liss,Inc.1995を参照されたい)。抗体フラグメントは、本明細書に記載される抗体の少なくとも1つの可変領域ドメインを更に含み得る。したがって、例えば、V領域ドメインは、単量体であってもよく、少なくとも10-7M以下の親和性で対象の外部ドメインポリペプチド又は複合体に独立して結合することができるVL及びVHドメインであってもよい。
【0092】
可変領域ドメインは、任意の天然に存在する可変ドメイン又はその操作されたバージョンであってもよい。操作されたバージョンとは、組換えDNA操作技術を使用して作製された可変領域ドメインを意味する。このような操作されたバージョンには、例えば、特異的抗体のアミノ酸配列の挿入、欠失、又は変化によって特異的抗体可変領域から作製されたものが含まれる。特定の例としては、第1の抗体由来の少なくとも1つのCDR及び任意で1つ以上のフレームワークアミノ酸、並びに第2の抗体由来の可変領域ドメインの残部を含有する、操作された可変領域ドメインが挙げられる。
【0093】
可変領域ドメインは、C末端アミノ酸において、少なくとも1つの他の抗体ドメイン又はそのフラグメントに共有結合され得る。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインは、免疫グロブリンCH1ドメイン又はそのフラグメントに連結され得る。同様に、VLドメインは、CKドメイン又はそのフラグメントに連結され得る。このようにして、例えば、抗体は、抗原結合ドメインが、それぞれCH1ドメイン及びCKドメインにそのC末端で共有結合した関連VHドメイン及びVLドメインを含有するFabフラグメントであってもよい。CH1ドメインは、例えば、Fab’フラグメントに見られるようなヒンジ領域又はヒンジ領域ドメインの一部を提供するために、又は抗体CH2及びCH3ドメインなどの、更なるドメインを提供するために、更なるアミノ酸で伸長され得る。
【0094】
本明細書に記載の方法で同定された抗原結合分子は、当該技術分野で公知の又は本明細書に記載の生物学的アッセイを使用して、中和活性及び自己反応性の欠如について試験することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラ分子を使用して誘発又は同定される抗原結合分子は、ナイセリア生物を中和する。
【0095】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラ分子を使用して誘発又は同定される抗原結合分子は、治療及び/又は疾患進行の有効性をモニターするために使用され得る。
【0096】
キメラ分子を使用して誘発又は同定された抗原結合分子は、生物学的試料中のナイセリア生物の存在を検出するための診断イムノアッセイ、受動免疫療法、及び抗イディオタイプ抗原結合分子の生成に使用され得る。加えて、抗原結合分子がナイセリア生物を中和する能力、及びナイセリアLOSに対する抗原結合分子の特異性は、受動免疫療法において抗原結合分子を使用する前に試験され得る。
【0097】
本明細書に開示されるキメラ分子、特にそのオリゴ糖成分への抗原結合分子の特異的結合、及び他の抗原との交差反応性は、当該技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。特異的結合及び交差反応性を分析するために使用することができる免疫測定法としては、限定されないが、幾つか例を挙げると、ウェスタンブロット、ラジオ免疫測定法、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫測定法、タンパク質A免疫測定法などの技術を使用する、競合及び非競合アッセイ系が挙げられる。このようなアッセイは、日常的であり、当該技術分野で周知である(例えば、Ausubelら、編者、1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい)。
【0098】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される抗原結合分子がナイセリア生物、例えば、淋菌又は髄膜炎菌を結合、精製、除去、定量、及び一般的に検出するための免疫検出方法において使用される。幾つかの免疫検出法としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ、フルオロイムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、及びウェスタンブロットが挙げられる。免疫検出方法はまた、試料中のナイセリア生物又はその関連成分(例えば、LOS)の量を検出及び定量するための方法、並びに結合プロセス中に形成される任意の免疫複合体の検出及び定量を含む。非限定的な例では、ナイセリア生物を含有することが疑われる試料を患者から得て、試料を、本明細書に開示されるキメラ分子のオリゴ糖成分に特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、続いて、特定の条件下で形成される免疫複合体の量を検出及び定量する。抗原検出に関して、分析される生物学的試料は、ナイセリア生物による感染に関連する生物学的流体及び/又は組織を含む、組織切片又は標本、均質化組織抽出物、生物学的流体などのナイセリア生物を含有することが疑われる任意の試料であり得る。
【0099】
適切な条件下、免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分な時間で、選択された生物学的試料を抗原結合分子と接触させることは、一般に、単に、抗原結合分子を試料に添加し、抗原結合分子が、免疫複合体を形成するのに十分な時間、すなわち試料中に存在するナイセリア生物又は関連成分(例えば、そのLOS)と結合するのに十分な時間、混合物をインキュベートすることである。この後、組織切片、ELISAプレート、ドットブロット又はウェスタンブロット分析などの試料抗原結合分子組成物を一般に洗浄して、非特異的に結合した抗原結合分子種を除去し、一次免疫複合体内に特異的に結合した抗原結合分子のみを検出することを可能にする。
【0100】
5.組成物
本明細書に開示されるキメラ分子及び抗原結合分子(「活性剤」)は、医薬組成物(治療製剤及び予防製剤を含む)に含まれてもよく、典型的には、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル、及び任意選択で、他の治療成分(例えば、抗菌剤、免疫原など)と一緒に組み合わされる。
【0101】
薬学的に許容されるビヒクルを使用して、活性剤の送達を増強し、及び/又は作用持続時間を制御することができる。制御放出製剤は、活性剤及び/又はアジュバントを複合化又は吸収するためのポリマーの使用によって達成され得る。制御された送達は、適切な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミン)及び高分子の濃度、並びに放出制御するための組み込みの方法を選択することによって達成され得る。放出制御製剤による作用持続時間を制御するための別の可能な方法は、本明細書に開示される活性剤を、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレンビニルアセテートコポリマーなどのポリマー材料の粒子に組み込むことである。あるいは、これらの薬剤をポリマー粒子に組み込む代わりに、これらの材料を、例えば、界面重合、例えば、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)-マイクロカプセルをそれぞれ調製したマイクロカプセルに、又はコロイド状薬物送達系、例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセルに、又はマクロエマルジョンに封入することが可能である。このような技術は、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0102】
アジュバントを組成物に含めることができる。例示的なアジュバント及び/又はアジュバントの組み合わせは、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウム(ミョウバン)などのアルミニウム塩(例えば、AlhydrogelTM、Superfos、デンマーク)及びリン酸カルシウムを含むミネラル塩;RIBIは、バクテリアから抽出した3つの成分、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコラート、及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%のスクアレン/Tween(登録商標)80エマルジョンに含有し、MPL、TDM、CWSの3つの成分のいずれかを単独で、又は2つずつ組み合わせて使用することもできる、RIBI;例えば、TLR-1のアゴニスト(例えば、トリアシルリポペプチド)を含む、Toll様受容体(TLR)アゴニスト;TLR-2のアゴニスト[例えば、連鎖球菌やブドウ球菌のようなグラム陽性菌のペプチドグリカン;リポテイコ酸];TLR-3のアゴニスト(例えば、二本鎖RNAやポリ1:Cなどのその類似体);TLR-4のアゴニスト(例えば、サルモネラ菌や大腸菌などのグラム陰性菌のリポ多糖(エンドトキシン));TLR-5のアゴニスト(例えば、リステリア菌のような運動性細菌のフラジェリン);TLR-6のアゴニスト(例えば、TLR-2ペプチドグリカンや特定の脂質(ジアシルリポペプチド));TLR-7のアゴニスト(インフルエンザや麻疹、おたふく風邪などのウイルスの一本鎖RNA(ssRNA)ゲノム;並びにロキソリビン、ssRNA及びそれらの類似体のようなグアノシン塩基の小さな合成抗ウイルス分子);TLR-8のアゴニスト(例えば、ssRNAと結合する);TLR-9のアゴニスト(例えば、病原体のDNAの非メチル化CpG及びその類似体);TLR-10のアゴニスト(機能は定義されていない)及びTLR-11-(例えば、幾つかの感染性原虫(Apicomplexa)によって発現されるタンパク質と結合し、特異的なToll様受容体アゴニストには、モノホスホリル脂質A(MPL.RTM.)、3脱O-アシル化モノホスホリル脂質A(3 D-MPL)、OM-174(大腸菌脂質A誘導体)が含まれる);OMトリアシル脂質A誘導体、並びにOMトリアシルリピドA誘導体、並びにMPL.RTM.-SE、RC-529(Dynavax Technologies)、AS01(リポソーム+MPL+QS21)、AS02(水中油型PL+QS-21)、及びAS04(ミョウバン+MPL)(GlaxoSmith Kline,Pa.)、免疫刺激性CpGモチーフを含有するCpG-オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、二本鎖RNA、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C)、並びに任意でリポソーム中に封入された他のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む、他のMPL又は脂質A系の製剤及びそれらの組み合わせ;AS03(GlaxoSmith Kline、Pa.)、MF-59(マイクロ流体洗浄剤安定化スクアレン水中油型エマルション;Novartis)、Montanide ISA-51 VG(安定化油中水型エマルション)及びMontanide ISA-720(安定化水/スクアレン;Seppic Pharmaceuticals、Fairfield、N.J.)を含む、水中油型エマルション;コレラ毒素Bサブユニット;Quil A又はQS21などのサポニン、QuillajaSaponaria Molinaの樹皮由来のHPLC精製非毒性画分(STIMULON.TM.(Antigenics,Inc.、Lexington、Mass.)、免疫刺激複合体(ISCOM;サポニンと脂質の構造化複合体)などのサポニン系のアジュバント、及びISCOMATRIX.TM.やAbISCO.RTM.-100及び-300シリーズのアジュバント(Isconova AB、Uppsala、Sweden);QS21及び3 D-MPLと、米国特許第2006/0073171号明細書に開示されている水中油型エマルジョン;ステアリルチロシン(ST)及びそのアミド類似体;ウイルス様粒子(VLP)及び再構成インフルエンザビロソーム(ILP);完全フロイントアジュバント(CFA);不完全フロイントアジュバント(IFA);大腸菌熱-ラベル性エンテロトキシン(LT);IL-2、IL-12、GM-CSF、Flt3などのサイトカイン、B7.1などのアクセサリー分子、及び肥満細胞活性化化合物48/80(C48/80)などの肥満細胞(MC)活性化剤などの免疫アジュバント;水不溶性無機塩;DNPC/Chol及びDC Cholから作られたものを含むリポソーム;ミセル;スクワレン;スクワラン;米国特許第4,606,918号に見られるようなN-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’2’-ジパルミトイル-n-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルなどの、ムラミルジペプチド;SAF-1(Syntex);AS05(GlaxoSmith Kline、Pa.);及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0103】
幾つかの実施形態では、アジュバント効力は、様々な送達系を免疫増強物質と組み合わせて、in vivoで抗原特異的免疫応答を増強するために、相乗的に作用する可能性を有する多成分アジュバントを形成することを含む、上記のような複数のアジュバントを組み合わせることによって増強され得る。例示的な免疫増強物質としては、例えば、MPL及び合成誘導体、MDP及び誘導体、オリゴヌクレオチド(CpGetc)、ds RNA、代替病原体関連分子パターン(PAMP)(大腸菌熱不安定性エンテロトキシン;フラジェリン、サポニン(QS-21など)、小分子免疫増強剤(SMIP、例えば、レシキモド[R848])、サイトカイン、及びケモカインが挙げられる、上記のアジュバントが挙げられる。
【0104】
本開示の組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、それによって、これらの材料又はそれらの機能的誘導体は、薬学的に許容されるビヒクル(又は希釈剤)と混合される。他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンを含む、適切なビヒクル及びそれらの製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、前出、に記載されている。有効な投与に適した薬学的に受容可能な組成物を形成するために、このような組成物は、適切な量のタンパク質担体及び/又はビヒクルと共に、有効量の上記化合物を含有する。
【0105】
典型的には、組成物は、注射剤として、液体溶液又は懸濁液;注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態のいずれかとして調製され得る。非経口投与のための水性組成物は、例えば、薬学的に許容されるビヒクル又は希釈剤、好ましくは主として水性ビヒクル中に、溶解又は懸濁された活性剤の溶液を含み得る。薬学的に許容されるビヒクル又は希釈剤は、水、リン酸塩で緩衝化された中性生理食塩水を含む、生理食塩水、トリス、グリセロール、エタノールなどを含み得る。水性組成物は、防腐剤を含んでもよく、又は防腐剤を含まなくてもよい、無菌の発熱物質を含まない緩衝生理食塩水又はリン酸塩含有溶液として製剤化されてもよい。適切な防腐剤としては、例えば、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。水溶液は、好ましくは、ほぼ等張であり、その等張性は、酒石酸ナトリウム、塩化ナトリウム、プロピレングリコール、及びリン酸ナトリウムなどの薬剤で調整することができる。さらに、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどを含む、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などを含む、生理学的条件に近似するのに必要な補助物質を、本明細書に記載のビヒクルと共に含めることができる。
【0106】
これらの組成物は、慣用的な滅菌方法により滅菌することができ、又は濾過により滅菌することができる。得られた水溶液は、そのままの使用のために包装されてもよく、又は凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌溶液と組み合わされる。このような医薬組成物の調製は、当業者の範囲内であり、Remington’s Pharmaceutical Science、前出、などの標準的な参考書によって導かれ得る。
【0107】
組成物は、経口送達のために固体又は液体形態で製剤化され得る。固体組成物の場合、非毒性及び/又は薬学的に許容される固体タンパク質担体としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。経口投与のために、薬学的に許容される非毒性組成物は、以前に列挙されたタンパク質担体を含む、通常使用される賦形剤のいずれかと、単位用量の活性成分、すなわち、本明細書に開示される1つ以上の活性剤と、を組み込むことによって形成され得る。
【0108】
医薬組成物中の活性剤の濃度は広く、すなわち、約0.1重量%未満、通常、又は少なくとも約0.1重量%から、20重量%以上50重量%以下又はそれ以上まで変化することができ、主に、流体体積、粘度などによって、及び選択される特定の投与様式に従って選択される。活性剤のヒト単位用量形態は、典型的にはヒト単位用量の許容されるタンパク質担体、好ましくは水性タンパク質担体を含む医薬組成物中に含まれ、ヒトへのそのような組成物の投与に使用されることが当業者に知られている一定量の流体中で投与され、治療される特定の対象について一般に理解されている原理に従って調整される。特定の実施形態では、活性薬剤の単位用量が0.1mL以上3mL以下、好ましくは0.2mL以上2mL以下などの、適切な量の水溶液で提供される。
【0109】
このような医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔内、肺内、若しくは経皮送達によるものを含む様々な粘膜投与様式によって、又は他の表面への局所送達によって、対象に投与することができる。任意で、活性薬剤は、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、腹腔内、又は非経口経路を含む非粘膜経路によって、投与することができる。あるいは、活性薬剤は、対象に由来する細胞、組織又は器官への直接曝露によってex vivoで投与することができる。特定の実施形態では、投与経路が非経口投与(例えば、皮内、筋肉内又は皮下送達)、眼投与、経口投与、鼻腔内投与、肺投与、膣内投与、及び直腸内投与を含む。医薬組成物の製剤は、非経口、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、又は眼投与(例えば、注射投与)のための液体製剤、例えば、滅菌溶液、懸濁液、又はエマルションを含み得る。医薬組成物の製剤はまた、溶液、懸濁液、シロップ又はエリキシル剤を含む、眼、経口、経鼻、肛門、及び膣投与のための液体製剤(例えば、局所製剤又は摂取可能製剤)を含み得る。医薬組成物は、送達前に凍結乾燥し、投与前に再構成することができる。
【0110】
本開示の医薬組成物は、典型的には無菌であり、製造、貯蔵及び使用の条件下で安定である。滅菌溶液は、必要に応じて、本明細書に列挙される成分の1つ又は組み合わせと共に、適当な溶媒中に必要量の結合体を組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、活性剤及び/又は他の生物学的活性剤を、塩基性分散媒及び本明細書に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌粉末の場合、調製方法には、結合体の粉末と、予め滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分とが得られる、真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0111】
6.治療方法
本開示の組成物は、ナイセリア生物に感染しているか、又はナイセリア生物による感染を発症する危険性がある対象に投与することができる。本開示の様々な治療方法によれば、活性剤は、治療又は予防が求められるナイセリア感染症の管理に関連する従来の方法論と一致する様式で対象に送達することができる。本明細書の開示によれば、活性剤の予防的又は治療的有効量は、ナイセリア感染症又はその1つ以上の症状を予防、抑制、及び/又は改善するのに十分な時間及び条件下で、そのような治療を必要とする対象に投与される。例えば、淋菌感染症の非限定的な症状としては、下腹部、骨盤、精巣、又は膣における疼痛、痛みを伴う排尿、異常な膣分泌物、陰茎からの分泌物、又は膣分泌物の増加、発熱、頻回の尿意切迫、不規則な月経、膿、又は咽頭痛が挙げられる。髄膜炎菌感染症の代表的な例としては、発熱及び悪寒、疲労、嘔吐、冷たい手足、筋肉、関節、胸部、又は腹部の重度の痛み又は疼痛、急速呼吸性下痢、及び後期の暗紫色発疹が挙げられる。
【0112】
組成物が、活性剤として本開示のキメラ分子を含む場合、治療は、単回投与スケジュール、又は好ましくは、一次治療コースが1回以上10回以下の別々の投与であり得る反復投与スケジュールで与えられてもよく、その後、応答を維持及び/又は強化するために必要なその後の時間隔で、例えば、1ヶ月以上4ヶ月以下で、2回目の投与、及び必要であれば、数ヶ月後のその後の投与で与えられ得る。適切な治療スケジュールの例としては、(i)0、1ヶ月及び6ヶ月、(ii)0、7日及び1ヶ月、(iii)0及び1ヶ月、(iv)0及び6ヶ月、又は疾患症状を軽減する、又は疾患の重症度を軽減すると予想される所望の応答を誘発するのに十分な他のスケジュールが挙げられる。
【0113】
免疫応答を誘導するか、又は防御免疫を提供するために有効な量は、キメラ分子のオリゴ糖抗原成分、関連する担体、任意のアジュバントの包含及び性質、投与の様式、患者の重量及び一般的な健康状態、並びに処方する医師の判断を含む、様々な因子に依存する。例として、初回免疫(すなわち、予防投与)の場合、一般的に70kgの患者に対して約1.0μg以上約5,000μg以下(例えば、1.0μg、2.0μg、2.5μg、3.0μg、4.0μg、4.5μg、5. 0μg、7. 5μg、10μg、12.5μg、15μg、17.5μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、75μg、100μg、250μg、500μg、750μg、1,000μg、1,500μg、2,000μg、2,500μg、3,000μg、3,500μg、4,000μg、4,500μg又は5,000μg)のオリゴ糖抗原を投与することができる。対象に投与される実際の用量は、多くの場合、対象の体重1kgあたりの適当量に従って決定される。例えば、有効量は、約0.1μg以上約5μg/kg以下体重であり得る。
【0114】
一次投与に続いて、患者の血液中の特異的抗体価及び/又はT細胞活性を測定することにより、患者の反応と状態に応じて、数週間から数ヶ月にわたるブースティング療法に従って、約1.0から約1,000のオリゴ糖抗原(例えば、1.0μg、2.0μg、2.5μg、3.0μg、4.0μg、4.5μg、5.0μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、17.5μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、75μg、100μg、250μg、500μg、750μg、1,000μg、1,500μg、2,000μg、2,500μg、3,500μg、4,000μg、4,500μg又は5,000μg)のブースティング投与を任意に行うことができる。
【0115】
活性剤は、任意に、補助的又は補助的な薬学的活性物質と組み合わせて投与することができる。例えば、活性剤は、ナイセリア感染症の治療に有用な抗菌薬と組み合わせて投与することができ、その代表例としては、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン及びパロマイシン);アンサマイシン(例えば、ゲルダナマイシン及びヘルビマイシン);カルバセフェム(例えば、ロラカルベフ);カルバペネム(例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、及びメロペネム);例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)/セファロチン(cefalothin)、セファレキシンを含む、セファロスポリン(第1世代);例えば、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、及びセフロキシムを含む、セファロスポリン(第2世代);例えば、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、及びセフジニルを含む、セファロスポリン(第3世代);例えば、セフェピムを含む、セファロスポリン(第4世代(foxiurth generation));グリコペプチド(例えば、バンコマイシン及びテイコプラニン);マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、及びスペクチノマイシン);モノバクタム(例えば、アズトレオナム);ペニシリン(例えば、アモシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、及びチカルシリン);ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB、及びコリスチン);キノロン(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、及びトロバフロキサシン);スルホンアミド(例えば、マフェニド、プロントシル、スルファセトアミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コ-トリモキサゾール、TMP-SMX));テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びテトラサイクリン);アミノクマリン(例えば、ノボビオシン、アルバマイシン、クママイシン、及びクロロビオシン);オキサゾリジノン(例えば、リネゾリド及びAZD2563);リポペプチド(例えば、ダプトマイシン);ストレプトグラミン(例えば、キヌプリスチン/ダルホプリスチン);グリシルシクリン(例えば、チゲサイクリン);ランチビオティック(例えば、A型ランチビオティック(ナイシン、スブチリン、エピデルミン、ムタシンII、ムタシンI及びIIIなど)及びB型ランチビオティック(メルサシジン、アクタガーディン、及びシンナマイシンなど)、などの抗生物質が挙げられる。補助剤として有用な他の適切な抗生物質としては、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン/リファンピシン及びチニダゾールから選択される1種以上の抗生物質が挙げられる。
【0116】
したがって、本明細書に開示される活性剤は、ペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カプレオマイシン、サイクロセリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エタンブトール、エチオナミド、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、キノロン、シノキサシン、ナリジクス酸、フルオロキノロン(例えば、レボフロキサシン、モキサフロキサシン及びガチフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン)、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、p-アミノサリチル酸、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、スルホンアミド、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、コアモキシクラブ、セファロチン、セフロキシム、セフトリアキソン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ニトロフラントイン、コトリモキサゾール、リファマイシン及びその誘導体(例えば、リファンピシン、リファブチン、リファペンチンなど)、イソニアジド、ピラジナミド、キロマイシン、チオストレプトン、ミクロコシン、フシジン酸、チオラクトマイシン、及びホスミドマイシンから選択される1種以上の抗生物質と組み合わせて使用することができる。その他の適切な抗菌補助剤は、以下の表に示すもの、DU-6859、エリスロマイシンスチノプレート、オリタバンシン、テラバンシン、ダルババンシン、セフトビプロメドカリル、テビペネムピボキシル、イクラプリム、OPT-80、セフタロリンフォサミル、RX-3341、セスロマイシン、TD-1792、EDP-420、RX-1741、MK-2764、ネモノキサシン、フロプリスチン+リノプリスチン、トモペネム、ラモプラニン、リネゾリド、セフジトレンピボキシル、エルタペネム、ゲミフロキサシン、ダプトマイシン、テリスロマイシン、及びチゲサイクリン(Tigecyline)から選択することができる。
【0117】
幾つかの実施形態では、本開示のキメラ分子は、代表的な例として、AniA、BamA、CssA、CssB、CssC、CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、CtrE、CtrF、ExbB、GNA1030、GNA1162、GNA1220、GNA1870(fHbp)、GNA1946、GNA2001、GNA2091、GNA2132(NHBA)、GNA33、GNA992、LctP、LpdA、LptD、MsrAB、NadA、NGO2054、NGO2139(MetQ)、NspA、OpaD、OpcA、PilC1、PilQ、PorA P1、TamA、TBP2、及びTbpAを含む、ナイセリア抗原に由来する1つ以上の免疫原と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、免疫原がAniA、MsrAB、MetQ及びNhbAから選択される。
【0118】
本開示の組成物及び方法による治療を意図した典型的な対象には、ヒト、並びに非ヒト霊長類及び他の動物が含まれる。本開示の方法による予防又は治療のための対象を同定するために、許容されるスクリーニング方法を使用して、本明細書で考察されるように、標的とされる又は疑われる病状(例えば、咳疾患)に関連するリスク因子を決定する、又は対象における既存の疾患又は状態の現状を決定する。これらのスクリーニング方法には、例えば、標的とされる又は疑われる疾患又は状態に関連し得る環境的、家族的、職業的、及び他のこのような危険因子を決定するための従来のワークアップ、並びに疾患関連マーカーを検出及び/又は特徴付けるために、利用可能であり、当該技術分野において周知である、様々なELISA及び他のイムノアッセイ法などの診断方法が含まれる。これら及び他の日常的な方法により、臨床医は、本開示の方法及び医薬組成物を使用して、治療を必要とする患者を選択することができる。これらの方法及び原理によれば、結合体及び/又は他の生物学的に活性な薬剤は、本明細書の教示に従って、独立した予防若しくは治療プログラムとして、又は手術、ワクチン接種、免疫療法、ホルモン治療、細胞、組織、若しくは臓器移植などを含む、他の治療に対するフォローアップ、補助又は調整治療レジメンとして投与することができる。
【0119】
本開示の活性剤の投与は、予防又は治療目的のいずれかのためであり得る。予防的に提供される場合、活性薬剤は、任意の症状に先立って提供される。活性剤の予防的投与は、任意のその後の感染を予防又は改善するのに役立つ。治療的に提供される場合、結合体は、疾患又は感染症の症状の発症時(又はその直後)に提供される。したがって、本開示の活性剤は、感染症及び/又は関連する疾患症状の予想される重症度、期間又は程度を減弱させるために、ナイセリア生物への予想される曝露の前に、細菌への曝露若しくは疑われる曝露の後に、又は感染症の実際の開始の後に提供することができる。
【0120】
活性剤を使用する方法、並びに本開示の関連する組成物及び方法を使用する方法は、ナイセリア生物に対する耐性を増加させること、及び/又はナイセリア生物によって引き起こされる感染症及び疾患を予防、改善、及び/又は治療すること、動物宿主において、並びに他のin vitro用途において有用である。本開示のキメラ分子を含む組成物は、感染症の予防のための能動免疫化のため、及び免疫抗体の調製のために使用することができる。
【0121】
7.キット
本開示はまた、本開示の方法を実施するためのキットを含む。これらの試薬及びキットは、様々であってもよく、典型的には、脊椎動物対象におけるナイセリア感染症の予防及び治療に使用するための、本明細書に開示される活性剤又は組成物のいずれか1つ以上を含有し、場合により、それらを投与するための説明書又は手段を含む。診断用途のためのキットも提供される。幾つかの実施形態では、これらのキットは、本明細書に記載のキメラ分子の1つ以上を含有する容器又は製剤を含む。一例では、この成分は、対象への送達のための医薬製剤に製剤化される。本開示のキメラ分子は、任意で、バルク分注容器又は単位又は複数単位剤形中に含有される。任意の分配手段を提供することができる。包装材料は、任意で、どのような処理目的のために、及び/又は、それと共に包装された活性剤をどのように使用することができるかを示す、ラベル又は説明書を含む。医薬組成物又は成分は、任意の適切な形態(例えば、液体形態又は凍結乾燥形態)で提供され得る。キットは、凍結乾燥された活性剤を再懸濁又は溶解するための溶媒を更に含み得る。
【0122】
本開示を容易に理解し、実用的に実施することができるように、特定の好ましい実施形態を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0123】
実施例1
KDOが淋菌に表面発現していることの証明
Blast分析は、淋菌シアリルトランスフェラーゼLstがグリコシルトランスフェラーゼスーパーファミリー52に属し、NTHiにおけるシアリルトランスフェラーゼLsgBと相同であることを示した(アミノ酸レベルで27%の同一性、e値=6e-31)。淋菌が、LOSの末端単糖としてKDOを輸送できるかどうかを決定するために、NTHiと同様に、全細胞ELISAを、3つの十分に特徴付けられた淋菌株1291、MS11及びF62、並びにそれらのlstノックアウト変異体上のLOS末端KDO特異的モノクローナル抗体(MAb)6E4を用いて実施した。3つの野生型株は、全てKDO陽性であったが、これらの株の全てのlst突然変異体は、MAb 6E4と反応せず(図2A)、LstがLOSへのKDO転移に必要であることが示された。以前の研究と一致して、6E4は、全てのLOS構造に共通する基底KDO残渣を検出することができない。更なる分析により、粘膜又は播種性淋菌感染症患者からの淋菌臨床分離株20株中19株においてKDO(図2B)が検出された。淋菌LOS上のKDOの可変提示は、LgtAがスイッチオフされる場合には、末端ガラクトース受容体が存在しないこと、又は別のグリコシルトランスフェラーゼ、LgtDが「オン」で相変化し、末端ガラクトース受容体に対するLst/CMP-KDOと競合してGalNAcを転移する場合には、競合を介することに起因し得る。LOSへのKDOの転移も、淋菌とは異なり、SiaBを介してCMP-Neu5Acを合成できる髄膜炎菌で調べた。図2CのELISA結果は、髄膜炎菌MC58株野生型及びlst突然変異体におけるKDOの非存在を示す。しかしながら、CMP-Neu5Acを合成できないMC58 siaB突然変異体がMAb 6E4によって認識され、KDOの存在を示した。これらのデータは、LOSへの末端糖のLst媒介転移についてCMP-Neu5AcとCMP-KDO基質との間に競合が存在すること、及びCMP-Neu5Ac合成を除去する髄膜炎菌における突然変異が、LOSへのKDO付加を可能にするのに十分であることを示す。LOS上の末端KDO構造を定義するために、MC58、1291及びそれらのLOSグリコシルトランスフェラーゼ(lst及びlgtB)変異株から精製したLOSを用いたMAb 6E4ウェスタンブロットを行った。LgtBは、CMP-Neu5Ac及びCMP-KDO受容体ガラクトース(Gal)をN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に転移するβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。図2Eに示されるように、1291野生型及びMC58 siaB突然変異体からの精製LOSは、6E4陽性であったが、1291及びMC58 lst及びlgtB変異体は、全て6E4陰性であった。MC58野生型由来のLOSは、わずかに6E4陽性であり、LOS上の少量のKDO取り込み末端の存在を示した。
【0124】
増殖培地へのCMP-Neu5Acの漸増的添加が、LOSへのLst添加のためのCMP-KDOで完了し、それによってMAb 6E4の結合を減少させることができるかどうかを決定するために、淋菌株1291を0μg/mL、30μg/mL及び100μg/mLのCMP-Neu5Ac中で増殖させ、全細胞ELISAを行った。図2Dに示される結果は、全細胞への6E4 MAb結合の用量依存的阻害が30μg/mLのCMP-Neu5Acで始まり、100μg/mLで増加することを示す。これらのデータは、媒体から取り込まれたCMP-Neu5AcがLst活性の基質として内因性CMP-KDOと競合することを示唆する。
【0125】
実施例2
KDO抗原は、in vivoで発現する
淋菌がin vivo感染中にLOSの末端グリカンとしてKDOを組み込むことができるかどうかを調べるために、淋菌感染症が立証された患者の子宮頸部スワブ上でMAb 6E4を使用して共焦点顕微鏡検査を実施した。図3は、in vivoで、末端KDOエピトープが子宮頸部上皮細胞上の淋菌に存在することを示す。これは、子宮頸部環境における遊離CMP-Neu5AcがLOSにKDOを組み込むLstを阻害するのに十分ではなかったことを示唆する。
【0126】
実施例3
MAb 6e4は、KDOエピトープを標的とすることにより、オプソニン食作用死滅を媒介する
淋菌において表面発現したKDOがワクチン標的であり得るかどうかを調べるために、MAb 6E4を、淋菌株1291に対するオプソニン食作用死滅アッセイにおいて使用した。用量依存性のオプソニン食作用死滅が0.65μg/mL以上10μg/mL以下のMAb 6E4から観察され、無処置対照と比較して、5μg/mLのMAb 6E4は54%の死滅を誘発し、10μg/mLは71%の死滅を誘発した(図4)。これらのデータは、KDOを標的とする抗体が、オプソニン食作用活性を介して細菌死滅を媒介し得ること、及び淋菌におけるLOS末端KDOエピトープが、潜在的ワクチン標的であることを示唆する。
【0127】
実施例4
担体タンパク質CRM-197上に提示されたKDO単糖は、マウスで免疫応答を引き起こす
KDOスペーサー合成
市販のマンノースは、Feng基によって記載された方法に従って、2工程で保護されたKDO誘導体に変換される(Fengら、2015,Org Lett.17(10):2388-91)。次いで、保護されたKDOは、L’Heureuxら(2010,J Org Chem.75(10):3401-11)の手順に従って、フッ化グリコシルに活性化される。市販の5-アミノ-1-ペンタノールは、Varalaら(2007,J Iran Chem Soc.4:370-374)によって記載された方法に従って、保護されたアミン基を有する。活性化KDOとスペーサーとの間のグリコシド化は、Boltjeら(2012,J Am Chem Soc.134,14255-14262)に記載されている手順を用いて行われる。次いで、脱保護により、結合体のためのKDOスペーサー化合物が提供される。図5は、KDOスペーサー化学合成の工程を示す。
【0128】
KDOスペーサーの特性評価
本研究で合成された全ての小分子化学物質は、標準的な分光技術、特に核磁気共鳴(NMR、1H及び13Cの両方)、質量分析、及び赤外分光法を使用して特徴付けられる。KDOがスペーサーと結合したときに、正しいグリコシド結合配向が形成されたことの証拠はNMR分光法、特に、Kongら(Kongら、2016,Nat Chem.8:242-249)によるように、アノマー炭素及び炭素-3に結合したプロトンの化学シフトを使用して決定される。
【0129】
CRM197及びBSA(又は他の担体)へのKDO結合
CRM197へのKDO結合の化学構造を図6Aに示す。0.3M NaHCO(1mg/mL)中のCRM197(又はBSA及び他の担体)を、0.3M NaCO、pH9中のNCS KDO連結(200モル当量)に添加して、最終容量1mLとした。得られた混合物を、20℃で18時間穏やかに振盪した。SDS-PAGE及びウェスタンブロットを使用して、反応生成物を分析した。EDC-NHS反応において、CRM197及びNH連結KDOを、EDC(25mM)及びNHS(25mM)(GE、EDC-NHSカップリングキット)中、室温で30分間インキュベートした。得られた結合反応を、脱塩カラム(Bio-SpinTM、Bio-Rad)を通過させることによって停止させて、過剰な非結合グリカンを除去し、緩衝液をPBSに交換した。図6Bに示されるような6E4のSDS-PAGEウェスタンブロット、及びMSを使用して、複合糖質CRM197を分析し、確認した。
【0130】
マウス抗原性研究
マウス抗原性研究の分析は、以前に公開されたように実施した(Jenら、2015、Front Immunol.10:137)。KDO単糖に基づく複合糖質構築物の免疫原性を評価するために、10匹のマウスをそれぞれ、AlhydrogelTMアジュバントを用いて1:1の形成で100μgのKDO複合糖質又は天然キャリアタンパク質(CRM197)で免疫した。2回のブースター注射を、最初の注射後21日目及び28日目に投与し、最終出血を42日目に予定した。研究期間中、全ての動物は健康なままであり、副作用は観察されなかった。終末出血血清を、ELISAアッセイを介して抗KDO免疫応答について分析した。
【0131】
免疫応答の分析
CRM-KDOの免疫原性を調べるために、10匹のマウスをAlhydrogelTMアジュバントでCRM-KDOで免疫した。血清を、ELISAによって評価した。プレートのウェルを、100μLのコーティング緩衝液(0.5M炭酸塩/重炭酸塩緩衝液、pH9.6)中の100ngのBSA-KDO複合糖質タンパク質で、室温で1時間コーティングした。全てのELISAを、マウス前免疫血清又はCRM-KDO免疫血清、及び二次抗体、ポリクローナル抗マウスIg HRP(Dako)を用いて実施した。基質TMB(3,3’,5,5-テトラメチルベンジジン)溶液(Thermofisher Scientific)を、製造業者の指示に従って使用した。反応を停止させるために、等量の1N塩酸を添加した。TECAN Model Infinite 200 Proプレートリーダーにおいて450nmで吸光度を読み取った。コーティング抗原としてBSA-KDOを用いたELISAの結果は、表1に示されるように、25,000超の力価を有するCRM-KDOで免疫化されたマウスにおけるKDO特異的免疫応答を示す。
【表1】
【0132】
実施例5
KDO抗原(I)の合成 KDO二糖抗原及び三糖抗原の化学的合成
KDOα(2,3)Galスペーサー合成
市販のマンノースは、Feng基(Fengら、2015、前出)によって記載された方法に従って、2工程で保護されたKDO誘導体に変換される。次いで、保護されたKDOは、L’Heureuxら(2010、前出)の手順に従って、フッ化グリコシルに活性化される。市販のガラクトースは、社内で開発された標準的な炭水化物化学を使用して、Galスペーサー化合物に変換される。活性化KDOとGalスペーサーとの間のグリコシド化は、文献(Kongら、2016、前出)から適合された方法を用いて達成される。次いで、脱保護により、共役のためのKDOα(2,3)Galスペーサー化合物が得られる。図7は、KDOα(2,3)Galスペーサー化学合成の工程を示す。
【0133】
KDOα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcスペーサー合成
市販のマンノースは、Feng基(Fengら、2015、前出)によって記載された方法に従って、2工程で保護されたKDO誘導体に変換される。次いで、保護されたKDOは、L’Heureuxら(2010、前出)の手順に従って、フッ化グリコシルに活性化される。市販のラクツロースは、Agostonら(2016、Tet Lett.57:2595-2597)によって記載された方法を使用して、LacNAc(Galβ(1,4)GlcNAc)に変換される。自社で開発された一連の標準的な炭水化物保護基操作によって、LacNAcは、Galβ(1,4)GlcNAcスペーサー化合物に変換される。活性化KDOとGalβ(1,4)GlcNAcスペーサーとの間のグリコシド化は、文献(Kongら、2016、前出)から適合された方法を使用して達成される。次いで、脱保護により、共役のためのKDOα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcスペーサー化合物が得られる。図8は、KDOα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcスペーサー化学合成の工程を示す。
【0134】
二糖及び三糖KDOスペーサーの特性評価(すなわち、合成後)
本研究で合成された全ての小分子化学物質は、標準的な分光技術、特に核磁気共鳴(NMR、1H及び13Cの両方)、質量分析、及び赤外分光法を使用して特徴付けられる。KDOがGalと結合したときに、正しいグリコシド結合配向が形成されたことの証拠は、NMR分光法、特にKongら(2016、前出)により、アノマー炭素及び炭素-3に結合したプロトンの化学シフトを使用して決定される。
【0135】
CRM197及びBSAへの二糖及び三糖KDO抗原結合
0.3M NaHCO(1mg/mL)中のCRM197(あるいは、BSA又は他の担体)を、0.3M NaCO、pH9中のNCS KDO連結(200モル当量)に添加して、最終容量1mLとした。得られた混合物を20℃で18時間穏やかに振盪した。SDS-PAGE及びウェスタンブロットを使用して、反応生成物を分析した。EDC-NHS反応において、CRM197及びNH連結KDOを、EDC(25mM)及びNHS(25mM)(GE、EDC-NHSカップリングキット)中、室温で30分間インキュベートした。得られた結合反応を、脱塩カラム(Bio-SpinTM、Bio-Rad)を通過させることによって停止させて、過剰な非結合グリカンを除去し、緩衝液をPBSに交換した。6E4及びMSのSDS-PAGEウェスタンブロットを使用して、複合糖質CRM197を分析及び確認した。
【0136】
マウス抗原性研究
KDO二糖及び三糖系複合糖質構築物の免疫原性を評価するために、10匹のマウスをそれぞれ、25μg、50μg又は100μgのKDO複合糖質、又は天然キャリアタンパク質(CRM197)を用いて、AlhydrogelTMアジュバントで1:1の形成で免疫化する。2回のブースター注射を、最初の注射後21日目及び28日目に投与し、最終出血を42日目に予定する。研究期間中、全ての動物は健康なままであり、副作用は観察されなかった。終末出血血清を、ELISAアッセイを介して抗KDO免疫応答について分析する。
【0137】
免疫応答の分析
免疫応答の分析は、以前に公開されたように実施される(Jenら、2015、前出)。ELISAを使用して、BSA-KDO抗原又は淋菌全細胞のいずれかでコーティングされたプレートを使用して、産生された血清の抗体力価及びアイソタイプを決定する。プレートのウェルを、100μLのコーティング緩衝液(0.5M炭酸塩/重炭酸塩緩衝液、pH9.6)中の100ngのBSA-KDO複合糖質及びBSAタンパク質で、室温で1時間又は4℃で一晩コーティングして、KDO特異的免疫応答を試験する。全てのELISAは、マウス前免疫血清又はCRM-KDO免疫血清、及び二次抗体、ポリクローナル抗マウスIg HRP(Dako)又はIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、又はIgM HRP(Thermofisher Scientific)を用いて実施される。基質TMB(3,3’,5,5-テトラメチルベンジジン)溶液(Thermofisher Scientific)を、製造業者の指示に従って使用する。等量の1N塩酸を添加して、反応を停止させる。吸光度は、TECAN Model Infinite 200 Proプレートリーダーで、450nmで読み取る。
【0138】
実施例6
KDO抗原(II)の合成 KDO二糖及び三糖抗原の化学酵素的合成
図9に示されるように、実施例5からのGal誘導体又はLacNAc誘導体は、CRM197とのEDC-NHSカップリングを可能にするリンカーの端部で遊離NCS又はNHで脱保護される。CRM197にリンカーを介してGal及びLacNAc化合物を首尾よく結合させた後、化学酵素法の次の段階は、(Sugaiら、1995、Bioorg Med Chem.3(3):313-20)に基づく酵素KdsB(大腸菌からのCMP-KDO合成酵素)を使用して、CMP-KDO誘導体にin situでKDOを活性化し、次いで、CRM197にすでに結合されている糖配位子に、(Gilbertら、1996、J Biol Chem.271:28271-6)上のグリコシルトランスフェラーゼLst(ナイセリアからのシアリルトランスフェラーゼ)塩基によって転移させることができる。
【0139】
実施例7
KDO抗原の生体内合成におけるKDO抗原(III)の合成
淋菌OMVでKDOをワクチン候補として過剰発現させる
図10Aに示されるように、CMP-KDO合成酵素(KdsB)及びCMP-KDOトランスフェラーゼ(Lst)は、IPTG誘導性発現構築物上の淋菌染色体に転移する。LOS上の末端KDO発現のレベルは、MAb 6E4及びMSを使用するELISAによって決定される。天然に分泌された外膜小胞(OMV)は、先に記載された2つの方法:超遠心分離による天然精製(Semchenkoら、2017、Infect Immun.85(2))及びデオキシコール酸(DOC)洗浄剤抽出(Fredriksenら、1991、NIPH Ann.14(2):67-79)、によって単離/精製される。これらの方法は、異なるOMV組成物及び収率をもたらし、両方が調査される。6時間接種した培養物(OD600約0.8)から、短時間の遠心分離(5,000×g)及びその後の上清の濾過(0.22μmフィルター)によって、天然の淋菌OMVを単離する。次いで、濾液を遠心分離し(100,000×g、1時間、4℃)、OMVを含有するペレットをPBSで3回洗浄し、次いで、0.2%SDSを含有するPBSに可溶化する。界面活性剤抽出のために、10mM EDTA及び0.5%DOCを含有する0.1M Tris-HCl、pH8.6中で6時間接種培養物を室温で30分間インキュベートし、次いで遠心分離する(20,000×g;30分;4℃)。上清を超遠心分離し(125,000×g;2時間;4℃)、OMVペレットを50mM Tris-HCl、pH8.6、2mM EDTA、1.2%DOC、20%スクロース中に再懸濁し、第2の超遠心分離工程を行う。次いで、OMVを30%スクロース中でホモジナイズする。全ての精製OMVをSDS-PAGEにより分析し、BCAタンパク質アッセイを使用してタンパク質濃度を測定する。
【0140】
10匹のBALB/cマウスの基を、0日目、21日目、及び28日目にAlhydrogelTM(水酸化アルミニウム、InvivoGen)で5μgのOMVで免疫する。標準的な手順に従って、42日目に終末採血を行う。対照マウスを、5μgの天然OMV、又はAlhydrogelTMを用いたPBSシャムで免疫する。各マウスの事前出血を、免疫化の4日前に収集する。次に、ELISAを用いて、免疫抗原又は淋菌全細胞のいずれかでコーティングされたプレートを使用して、上昇した血清の抗体力価及びアイソタイプを決定する。
【0141】
KDO-OMVをワクチン候補として評価するために、操作され、毒性が低減され、制御されたブレビング大腸菌株においてKDOを過剰発現させる
異種オリゴ糖を発現する株として、大腸菌のエンドトキシンが減少し、OMVが上昇した株(C600ΔwaaOBΔlppΔmsbBattλ::ParaB-lppΔompA:pGb3)が生成され、糖質ワクチン抗原の送達に使用される可能性がある(Patonら、2015、Infect Immun.83(9):3526-33)。大腸菌における末端KDO四糖の発現を可能にするために、プラスミドpLNnT(LgtE、LgtA及びLgtB発現構築物)及びpBAD Lstをこの大腸菌株に形質転換する。図10Aに示すように、LgtE、LgtA、LgtB及びLstは、それぞれ異なる受容体特異性を有するβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ及びシアリルトランスフェラーゼをコードする。図10B及びMSに示されるような全細胞6E4 ELISAを使用して、大腸菌小疱形成株におけるLOS上のKDO発現を確認した。この株の小疱形成は、増殖培養物中に0.2%グルコースを補充することによって誘導され、OMVは、遠心分離(3,900×g、4℃で10分間、次いで再度15分間、全細胞を除去する)によって単離される。得られた上清を150,000×gで3時間、4℃で遠心分離する。OMVを含有するペレットをPBSで洗浄した後、120,000gで30分間、4℃で2回目の遠心分離を行う。ペレット中のOMVは、SDS-PAGE及びBCAタンパク質アッセイによる分析のためにPBS中に再懸濁される。
【0142】
精製OMVのマウス抗原性試験は、以前に公開されたように実施される(Jenら、2015、前出)。10匹のBALB/cマウスの基を、0日目、21日目、及び28日目にAlhydrogelTM(水酸化アルミニウム、InvivoGen)で5μgのOMVで免疫する。標準的な手順に従って、42日目に最終出血を採取する。対照マウスは、天然の大腸菌OMV及びAlhydrogelTMを用いたPBSシャムで免疫化する。各マウスの事前出血を、免疫化の4日前に収集する。次に、ELISAを用いて、免疫抗原又は淋菌全細胞のいずれかでコーティングされたプレートを使用して、産生された血清の抗体力価及びアイソタイプを決定する。
【0143】
あるいは、図10に示される同じ末端KDO四糖抗原を大腸菌中で生成することができ、次いで、OMVの代わりに、ミニ細胞又は細菌ゴーストを調製して、KDO炭水化物ワクチン抗原を提示することができる(Patonら、2015、Infect Immun.83(9):3526-33)。図10に示されるKDO抗原の異種発現のためのさらなるin vivo戦略は、確立された方法を使用して、in vivoで担体タンパク質に結合することができる所望のKDO抗原を生成するために、適切なグリコシルトランスフェラーゼを発現させることである(Ravenscroftら、2019、Glycobiology.29(9):669-680)。
【0144】
実施例8
KDO抗原に対するヒト血清力価
正常ヒト血清(NHS)が抗KDO抗体を含むかどうかを評価するために、NHSでプローブするKDO抗原のELISAを行った。KDOを有する(野生型LOS、図1の構造を参照)及びKDOを有さない(Lst突然変異体LOS、図1の構造を参照)100ngの精製淋菌LOSをELISAプレート上のコーティング抗原として使用した。Sigma-Aldrich(カタログ番号S1-M)からの10個の個々のNHS試料及び市販のプールNHSを使用して、KDOを標的とする抗体を含有するかどうかを試験した。各NHS試料についてのKDO特異的力価を、KDOを有するLOS(野生型LOS)の読取からKDOを有さないLOS(Lst突然変異体LOS)の読取を差し引くことによって測定した。エンドポイントは、二次抗体のみの対照を上回る陽性読取によって決定した。ELISAの結果、表2に示されるように、ヒト血清は、測定可能な抗KDO力価を有することが示された。陽性対照として6E4を使用した。
【表2】
【0145】
材料及び方法
細菌株及び増殖条件
淋菌株1291、1291lst、MS11、MS11lst、F62、及びF62lst(Mubaiwaら、2017、Sci Rep 7:5693)を、1% IsoVitaleX及び髄膜炎菌株MC58、MC58lst(Mubaiwaら、2017、Sci Rep 7:5693)及びMC58siaB(Chopraら、submitted)を有するGC寒天(Oxoid)又はGCブロス上で増殖させ、ブレインハートインフュージョン(BHI)1%寒天及び10%Levinthal塩基性培地上で37℃、5%COで培養した。播種性又は粘膜性淋菌感染からの淋菌の20個の臨床分離株(Powerら、2007、Infect Immun 75:3202-4)も研究した。選択された実験において、示されるように、様々な濃度のCMP-Neu5Acを培地に添加した。
【0146】
リポオリゴ糖(LOS)精製
細胞をBHI又はGC固体培地上で増殖させた。細菌をかき取ることによって回収し、60mM TRIS、10mM EDTA、及び2%(wt/vol)ドデシル硫酸ナトリウム、pH6.8の溶液に懸濁した。プロテイナーゼKを50μg/mlの最終濃度まで添加し、試料を37℃で一晩インキュベートした。3回のエタノール沈殿後、試料をDNase I及びRNase Aで処理した。次いで、試料をフェノール抽出し、回以上エタノール沈殿させ、120,000×gで75分間遠心分離した。ペレットを水に再懸濁し、凍結し、次いで凍結乾燥した。
【0147】
全細胞ELISA
細菌をBHI又はGCプレート上で16時間増殖させた。細胞を回収し、0.20のOD600nmでPBSに再懸濁した。マイクロタイタープレートウェルに50μLの細菌懸濁液を充填し、層流キャビネット中で、室温で一晩乾燥させた。乾燥したウェル中の細菌を56℃で1時間加熱殺菌した後、ウェルを洗浄し、1:64の希釈度でMAb 6E4を用いてELISAを行った。二次抗体(Dako P044701ポリクローナル抗マウスIg HRP)を1:2,000の希釈で使用した。基質TMB(3,3’,5,5-テトラメチルベンジジン)溶液(Thermofisher Scientific)を、製造業者の指示に従って使用した。等量の1N塩酸を添加して、反応を停止させた。TECAN Model Infinite 200 Proプレートリーダーにおいて、450nmで吸光度を読み取った。
【0148】
臨床試料の蛍光標識
淋病を呈する患者から採取した頸部スワブからのパラホルムアルデヒド固定保存臨床標本も、ガラス顕微鏡スライド上で乾燥させた。これらの試料を、MAb 6E4(IgG)及び6B4(IgM)と同時にインキュベートした。蛍光標識は、ヤギ抗マウスIgG3/FITCとのインキュベーションによって提供され、MAb 6E4を標識し、さらにMAb 6B4に対するヤギ抗マウスIgM/Texas Red(両方ともJackson ImmunoResearchからの結合体)を標識した。試料を、Draq5(Cell Signaling Technologies)で対比染色して細胞核を標識し、Leica STEDシステム上で共焦点顕微鏡によって観察した。
【0149】
オプソニン食作用死滅アッセイ
多形核白血球(PMN)を、製造業者の説明書に従ってPolymorphprepTM(Axis-Shield)を使用して、ドナー血液(K3 EDTAチューブ(Greiner Bio-One)に回収)から単離し、アッセイ緩衝液(0.15mM CaCl、0.5mM MgCl及び0.5%(v/v)ヒト血清アルブミンを補充したRPMI(Gibco))に再懸濁した。淋菌1291(約1×10CFU)をMAb 6E4(0μg以上10μg以下)の連続希釈液中、37℃で15分間インキュベートした。次いで、PMN(約1×10細胞)及び補体源(淋菌で予め吸収された10%v/vの正常ヒト血清)を添加し、37℃で90分間インキュベートした。淋菌の生存率は、GC寒天上に連続希釈物をプレーティングした後に測定し、非抗体対照に対する割合として、生存率を計算した。統計的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)及びスチューデントt検定を用いて計算した。
【0150】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が基準により本明細書に組み込まれる。
【0151】
本明細書中の文献の引用は、これらの文献が本件出願の「従来技術」として利用し得ることを認めたものと見なされるべきではない。
【0152】
本明細書全体を通して、目的は、本開示を任意の1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本開示の好ましい実施形態を説明することである。したがって、当業者は、本開示に照らして、本開示の技術的範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において様々な修正及び変更を行うことができることを理解するのであろう。全てのそのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】