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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ラリンジアルマスク
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61M16/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579640
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 AU2022050209
(87)【国際公開番号】W WO2022187909
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2021900718
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523348830
【氏名又は名称】メデコ・ピーティーワイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDECO PTY LTD
【住所又は居所原語表記】91 CLEAR ISLAND ROAD, BROADBEACH WATERS, QUEENSLAND 4218, AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ダニエル
(57)【要約】
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクとを備えるラリンジアルマスク装置(LMA)が開示されている。該マスクは、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有する。該装置は、該マスクの該口腔咽頭面に広がる複数の吸引開口を画定するコレクタを形成する操作可能な下端部を有する独立した口腔咽頭吸引導管を含む。使用時に、該口腔咽頭吸引導管を介した該患者からの除去のために、分泌物を、該吸引開口を介して該口腔咽頭吸引導管内に引き込むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、前記マスクの前記口腔咽頭面に広がる複数の吸引開口を画定するコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、使用時に、前記口腔咽頭吸引導管を介した患者からの除去のために、分泌物が前記吸引開口を介して前記口腔咽頭吸引導管内に引き込まれる、独立した口腔咽頭吸引導管と、
を備えるラリンジアルマスク装置(LMA)。
【請求項2】
前記コレクタは、前記マスクの前記口腔咽頭面の実質的にすべてにわたって広がり、かつ前記複数の吸引開口は、前記口腔咽頭面にわたって互いに離間される、請求項1に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項3】
前記コレクタは、前記コレクタの少なくとも一部に沿って延在する外周領域と、前記外周領域の内側の隆起した内側領域とを有する、請求項1または請求項2に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項4】
前記コレクタは、前記外周領域に沿って一列に配置されて互いに離間された複数の吸引開口を有し、かつ前記コレクタは、さらなる複数の吸引開口を前記隆起した内側領域に含む、請求項3に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項5】
前記コレクタは、前記外周領域の全長の一部に沿って延在する、分泌物を前記外周領域の前記吸引開口に向かわせるための凹部をさらに含む、請求項4に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項6】
前記口腔咽頭吸引導管の前記操作可能な上端部は、外部の吸引導管への解放可能な結合のためのパイプ結合構造を含み、かつ前記パイプ結合構造は、臨床医が、前記口腔咽頭吸引導管に対して吸引を選択的に施すことを可能にするための吸引制御部を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項7】
前記パイプ結合構造は、使用中に、前記外部の吸引導管からの該パイプ結合構造の取外し、および該外部の吸引導管への該パイプ結合構造の再取付けを容易にするために、該外部の吸引導管上の雌型パイプ結合構造への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造を備える、請求項6に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項8】
胃に関する物を前記患者から取り除くための操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する経口胃導管をさらに含み、該経口胃導管は、その長さに沿って、前記口腔咽頭吸引導管内に開口しておらず、または該口腔咽頭吸引導管と連通していない、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項9】
前記経口胃導管は、外部の吸引導管への解放可能な接続のための経口胃パイプ結合構造を含み、かつ該経口胃パイプ結合構造は、臨床医が、前記経口胃導管に吸引を選択的に施すことを可能にするための吸引制御部を含む、請求項8に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項10】
前記経口胃パイプ結合構造は、使用中に、前記外部の吸引導管からの前記経口胃パイプ結合構造の取外し、および該外部の吸引導管への該経口胃パイプ結合構造の再取付けを容易にするために、該外部の吸引導管上の雌型パイプ結合構造への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造を備える、請求項9に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項11】
前記経口胃導管は、胃に関する物を前記患者から引き出すためにそれを通してカテーテルを受け入れるポートも形成するように構成されている、請求項10に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項12】
患者の体に対して前記マスクを密封するために膨張される膨張可能なカフを含み、該カフは、該カフを膨張させるために、該カフから離れて延在する膨張ラインをさらに含む、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項13】
膨張されることなく、患者の体に適合しおよび体を密封する適合した材料で形成された適合カフを含む、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項14】
前記通気導管および前記口腔咽頭吸引導管は、それぞれチューブで形成される、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項15】
前記通気導管および前記口腔咽頭吸引導管は、それらの長さに沿って、共通のハウジング内に収容される、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項16】
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、前記口腔咽頭面から分泌物を除去するために、前記マスクの前記口腔咽頭面にコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、前記操作可能な上端部が、前記吸引導管を外部の吸引導管に解放可能に結合するためのパイプ結合構造を備える、独立した口腔咽頭吸引導管と、
を備えるラリンジアルマスク装置(LMA)。
【請求項17】
前記パイプ結合構造は、前記外部の吸引導管上の雌型結合構造への解放可能な接続のための雄型結合構造を備える、請求項16に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項18】
前記口腔咽頭吸引導管は、臨床医が、前記吸引導管に吸引を選択的に施すことを可能にするための、その操作可能な上端部に関する吸引制御部を含む、請求項16または請求項17に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項19】
前記吸引制御部は、通常は、外部の空気を前記口腔咽頭吸引導管内に引き込むために外気に対して開口している開口端を有する、前記雄型パイプ結合構造上の分岐管の形態であり、かつ前記分岐管の前記開口端は、前記口腔咽頭吸引導管に吸引を施して、流体および分泌物を前記コレクタ内に引き込むために閉じられている、請求項18に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項20】
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、臨床医が前記口腔咽頭面から分泌物を除去することを可能にするために、前記マスクの前記口腔咽頭面にコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、前記操作可能な上端部が、外部の吸引導管上の相補的なパイプ結合構造への解放可能な結合のためのパイプ結合構造を備える、独立した口腔咽頭吸引導管と、
操作可能な上端部および操作可能な下端部と、外部の吸引導管上の相補的なパイプ結合構造への解放可能な結合のための、該操作可能な上端部の経口胃パイプ結合構造とを有する、前記口腔咽頭吸引導管と平行な独立した経口胃導管と、
を備え、
前記口腔咽頭吸引導管の前記パイプ結合構造と、前記経口胃導管の該パイプ結合構造は、同じ相補的なパイプ結合構造と係合し、それにより前記口腔咽頭吸引導管と前記経口胃導管とを、単一の外部の追加的な吸引導管に交換可能に結合できるように構成されている、ラリンジアルマスク装置(LMA)。
【請求項21】
前記口腔咽頭吸引導管の前記パイプ結合構造および前記経口胃導管のパイプ結合構造は、前記外部の吸引導管上の標準的な雌型パイプ結合構造内に収容されるように構成される雄型パイプ結合構造である、請求項20に記載のラリンジアルマスク装置。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載のLMA装置を取付けることと、前記通気導管を通して患者の呼吸樹に空気を向かわせることとを含む、患者の呼吸器に給気を供給する方法。
【請求項23】
手動の吸引制御によって前記口腔咽頭吸引導管に吸引を間欠的に施し、前記口腔咽頭吸引導管に吸引を施して前記導管を通して前記分泌物を引き上げることによって、前記マスクの前記口腔咽頭面から分泌物を除去することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
使用時に、患者の声門に隣接して配置される気道壁と、
前記気道壁から離間して該気道壁に広がり、それらの間に口腔咽頭スペースを画定する口腔咽頭壁であって、複数の吸引開口を画定し、該吸引開口を通して該口腔咽頭スペースに分泌物を引き込むためのコレクタを形成する口腔咽頭壁と、
前記気道壁に対して一定に離隔して前記口腔咽頭壁を支持するための少なくとも一つの内部支持部と、
前記気道壁および前記口腔咽頭壁の周囲に広がる適合したカフまたはシールとを備え、
前記気道壁と、前記口腔咽頭壁と、前記少なくとも一つの内部支持部と、前記適合したカフまたはシールとは一体形成される、ラリンジアルマスク装置(LMA)用のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラリンジアルマスク装置(laryngeal mask airway device:LMA)に関する。また、本発明は、LMA装置を用いて患者を治療する方法にも及ぶ。
【0002】
(定義)
この明細書において、「備えている(comprising)」という用語は、記述されている一つの整数または複数の整数の包含を意味することが意図されているが、該用語が用いられている文脈に依拠して、必ずしも他の任意の整数の除外を意味することは意図されていない。このことは、「備える(compriseまたはcomprises)」等の該用語の変化形にも当て嵌まる。
【0003】
この明細書において、「分泌物」および「胃に関する物」という該用語は広く解釈すべきである。「胃に関する物」という該用語は、胃の内容物、胃の逆流および胃液分泌を含むように解釈すべきである。
【0004】
さらに、この明細書において、「カフ」という該用語は、広く解釈すべきであり、および膨張式カフに限定すべきではない。具体的には、「カフ」という該用語は、膨張式カフおよび膨張されないカフの両方をカバーするように解釈すべきである。
【背景技術】
【0005】
ラリンジアルマスク装置(LMA)は、麻酔中に、または患者が意識を失っている間、患者の気道を開いたままにする医療用装置である。LMA装置の別の用語は、声門上器具であり、この用語は、従来技術およびこの明細書の両方において、LMA装置と同義的に用いることができる。
【0006】
該LMAは、英国の麻酔医Archibald Brainによって発明され、1987年に商品化された。それ以降、該LMAは、麻酔治療において世界中で幅広く用いられてきた。該LMA装置は、フェースマスクと、(気管チューブが患者の気管に挿入される)気管挿管の間のどこかでの治療法を提供する。LMA装置の利点は、エンドツーエンド接続で呼吸樹に直接、人工給気を向かわせるということである。該LMA装置は、完全挿管の外傷を伴うことなく、呼吸器に直接送られる有効な人工給気をもたらす。
【0007】
従来の基本的なLMA装置を図1に示す。該装置は、一旦、展開されると、患者の声門の上部に気密シールを形成するレセプタクルを、その操作可能な下端部に形成する楕円形マスクを有するエアチューブまたは通気導管を備えている。該チューブは、該患者の口から突出して、外部の給気部に接続される気道コネクタで終端する操作可能な上端を有している。図1に示すように、該エアチューブまたは通気導管は、該エアチューブと連通して該レセプタクルを配置する該マスクによって形成された該レセプタクル内に開口している。LMA装置が患者の定位置に正しく配置されると、該マスクの下端または先端が、食道の上方部に位置する。図2Aは、患者の喉および咽頭内の定位置に取付けられたLMA装置を示す。
【0008】
該楕円形マスクは、該患者の生体構造を密封して気密シールを形成するように構成されているカフを有している。このように、空気は、該エアチューブまたは通気導管から、該患者の呼吸器内に向けられて、該マスクの周縁部から漏出することはない。
【0009】
一つの形態において、該カフは、該患者の声門を密封して、気密接続を形成するように膨張される膨張式カフの形態になっている。膨張式カフは、患者の該口を通って出て行く該気道ラインと並行して該カフから離れて延在する膨張ラインを有する。該膨張ラインは、臨床医が該カフを膨張させるために用いるバルブを該患者の口の外部に有する。該膨張ラインは、該臨床医が、該患者の体内に収容された該カフを直接見ることができないことを認識して、該カフが適切に膨張したことを臨床医に示すための膨張インジケータも有していてもよい。別の形態において、該カフは、該声門に隣接する該患者の細胞組織を密封するように構成されている適合材料、例えば、柔らかい緩衝材で形成することができる。
【0010】
従来公知のLMA装置の別の実例は、該LMAが該患者の定位置に取付けられたときに、該患者の食道内に開口する経口胃ポート(または、胃ドレーン)を有する。該経口胃ポートは、該食道に対向する開口下端部と、該患者の該口の外部に配置される上端部を有する。該経口胃ポートは、該通気導管に平行に通り、および該通気導管内には開口しない。
【0011】
該経口胃ポートは、該患者からの胃の内容物または分泌物の除去を容易にする、該通気導管と平行して、そこを介してカテーテルを挿入するための基本的な導管を幅広く形成する。
【0012】
該カテーテルは、ガイド導管として機能する該経口胃ポートを介して挿入され、該経口胃ポートの該操作可能な下端部を通り、該食道を通って該患者の胃に向かって挿入される。分泌物を該経口胃ポートを介して引き上げて、それらを該体から除去するために、該カテーテルに対して吸引を施すことができる。
【0013】
該経口胃ポート内の該カテーテルは、該マスクが該声門を覆って取付けられている状態で該LMA装置が使用されている間の、該患者の該食道および胃からの胃液分泌および/または胃逆流の除去を容易にする。該カテーテルは、この物質を該LMA装置の該マスクの下に離間された位置から引張る。
【0014】
従来公知の別のLMA装置は、バイトブロックと、該気道コネクタに隣接するその操作可能な上端部に向かうタブとを有する。このことは、該LMAが該患者の定位置に取付けられたときに、該患者が該バイトブロックを噛むことを可能にする。
【0015】
しかし、LMAが最初に現れてから、該LMAの使い方が多いに改良されているが、依然として該LMAには欠点がある。例えば、LMAが取り外されるときの、経鼻領域または口腔咽頭領域または唾液中の術野からの血液から肺への分泌物の吸引というリスクがある。分泌物は、該LMAの上側(口腔咽頭の側面または表面)に溜まり、これは、該LMAが取り外されたときに声門上で終わる。特に覚醒時(すなわち、麻酔が浅い間)に該声門に落下する分泌物は、喉頭痙攣および/または気管支痙攣等の気道危機を引き起こす可能性がある。
【0016】
これらの欠点は、リスクの上昇につながり、該リスクが容認し難いと評価された場合には、該臨床医は、代わりに気管挿管を用いることを決断する可能性がある。しかし、挿管は、該LMA装置の使用よりも外傷性であり、および典型的には、アナフィラキシー、不適切な拮抗および麻酔下での覚醒のリスクを高める筋弛緩薬の使用を伴う。筋弛緩薬は、30kg以上の人によく使用されていた。
【0017】
上記の背景における従来技術に関する言及は、言及された従来技術が、オーストラリアまたは他のいずれかの国での当業者の技術常識の一部を構成する提案の承認または何らかの形態として理解されず、および理解すべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本出願人は、従来のLMA装置の該欠点のうちの少なくともいくつかを改善するラリンジアルマスク装置を考案することが有益であることを認識している。該患者に起きる気道危機のリスクを低減するために、該LMA装置が、マスクの口腔咽頭面に溜まっている分泌物の除去を容易にできることが特に有利であろう。気道危機は、命を脅かす可能性があり、および死またはICU入院につながる可能性がある。さらに、本出願人は、このことが臨床医が緊急時により迅速に対応することを可能にするため、該臨床医が使用することを該LMA装置が容易にすることが有利であると信じている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一つの態様によれば、
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面(または、後面)とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、該マスクの該口腔咽頭面に広がる複数の吸引開口を画定するコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、使用時に、該口腔咽頭吸引導管を介した該患者からの除去のために、分泌物が該吸引開口を介して該口腔咽頭吸引導管内に引き込まれる、該独立した口腔咽頭吸引導管と、
とを備えるラリンジアルマスク装置(LMA)が提供される。
【0020】
吸引を用いて、それらの分泌物を除去することにより、下気道への該分泌物の吸引、および吸引によって引き起こされる合併症に耐えることができる。該下気道に関するいくつかの潜在的な合併症は、喉頭痙攣および気管支痙攣を含み、およびそれらの状況は、患者が麻酔から覚めたときに特に見られる。
【0021】
該コレクタは、実質的に該マスクの全口腔咽頭面にわたって広がる可能性があり、該複数の吸引開口は、該口腔咽頭面にわたって互いに離間させることができる。すなわち、該コレクタは、該マスクの全口腔咽頭面から分泌物を集めるために、該口腔咽頭面の全面に広がることができる。
【0022】
該マスクは、楕円状に構成することができ、および楕円形マスクと呼ぶことができる。
【0023】
該LMA装置は、該マスクの周縁に及ぶ、患者、例えば、患者の声門に対して該マスクを密封するためのカフを含むことができる。
【0024】
該コレクタは、該コレクタの外周の少なくとも一部に沿って延在する外周領域と、該外周領域の内側の隆起した内側領域とを有することができる。該隆起した内側領域は、隆起ラインのそれぞれの側で該外周領域に向かって傾斜していてもよい。
【0025】
該コレクタは、該外周領域に沿って互いに離間された第一の複数の吸引開口を含むことができる。好都合なことに、該第一の複数の吸引開口は、該外周領域に沿って一列に配置することができる。
【0026】
また、該コレクタは、該コレクタの実質的に全長に及んで、該隆起した内側領域に、例えば、該隆起ラインの両側に、さらなる複数の吸引開口を含んでいてもよい。
【0027】
該吸引開口は、例えば、該コレクタに十分な構造的完全性を提供するために、該コレクタ上に互いに対して配列しおよび配置することができる。
【0028】
該コレクタは、該外周領域の該全長の一部に沿って延在する、分泌物を溜めるおよび/または該外周領域の該吸引開口に向かわせるための凹部をさらに含んでいてもよい。
【0029】
具体的には、該凹部は、該外周領域の実質的に全長に沿って延在する開口チャネルを構成することができる。具体的には、該開口チャネルには、(四角いまたは突出した縁部がない)湾曲面および丸みを帯びた縁部を設けることができる。
【0030】
該口腔咽頭吸引導管は、臨床医が、該口腔咽頭吸引導管に対して吸引を選択的に施すことを可能にするための吸引制御部を含むことができる。
【0031】
該口腔咽頭吸引導管の該操作可能な上端部は、外部の吸引導管への解放可能な結合のためのパイプ結合構造を含んでもよい。
【0032】
一つの形態において、該吸引制御部は、通常は、外部の空気を該口腔咽頭吸引導管内に引き込むために外気に対して開口している開口端を有する、該パイプ結合構造上の分岐管の形態にすることができる。
【0033】
該分岐管の該開口端は、例えば、臨床医が指を該開口端に当てて、該口腔咽頭吸引導管に吸引を施し、該口腔咽頭吸引導管の該操作可能な下端部において、流体および分泌物を該コレクタを通して引き込むことによって閉じることができる。
【0034】
該パイプ結合構造は、該外部の吸引導管上の相補的な雌型パイプ結合構造への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造を備えていてもよい。
【0035】
該雄型パイプ結合構造は、一つ以上の横方向リブ構造またはグリップ構造を有する差込部の形態とすることができ、該外部の吸引導管上の該雌型パイプ結合構造は、相補的な受け口の形態とすることができる。該リブ構造またはグリップ構造は、該雌型パイプ結合構造に解放可能に係合するように構成することができる。
【0036】
使用中、このことは、該外部の吸引導管からの該パイプ結合構造の取外し、および該パイプ結合構造への再取付けを容易にする。このことは、臨床医が該LMA装置の操作中に、該結合構造を互いに手動で接続できるようにする。
【0037】
該外部の吸引導管は、吸引ポンプに操作可能に結合することができる。
【0038】
該ラリンジアルマスクは、胃に関するものを該患者から取り除くための操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する経口胃導管をさらに含んでもよい。
【0039】
該経口胃導管または経口胃ポート(または、胃管)は、該LMA装置の使用中の、該患者の該胃または食道からの該胃に関する物の除去を容易にする。
【0040】
該経口胃導管は、該口腔咽頭吸引導管から分離され、その長さに沿って、該口腔咽頭吸引導管内に開口しておらず、または該口腔咽頭吸引導管と連通していない。具体的には、該経口胃導管は、胃に関する物または分泌物を該マスク上の該コレクタに近接して該経口胃導管から放出できるようになっている開口部を、該上端部と下端部の中間に有していない。このことは、該経口胃導管を通して引き上げられる何らかの胃の内容物を、該口腔咽頭吸引導管を通して引き上げられる分泌物と完全に分離した状態に保つ。
【0041】
該経口胃導管は、外部の吸引導管への解放可能な結合のための経口胃パイプ結合構造を含んでもよい。
【0042】
例えば、該経口胃パイプ結合構造は、使用中に、該外部の吸引導管からの該経口胃パイプ結合構造の取外し、および外部の吸引導管への該経口胃パイプ結合構造の再取付けを容易にするために、該外部の吸引導管上の相補的な雌型パイプ結合構造への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造を備えることができる。
【0043】
該経口胃パイプ結合構造は、臨床医が、該経口胃導管に吸引を選択的に施すことを可能にするための吸引制御部を含むことができる。該吸引制御部は、上述した該口腔咽頭吸引導管に対する該吸引制御のためのものと同様にすることができる。
【0044】
該口腔咽頭吸引導管と該経口胃ポートは、使用時に該外部の吸引導管に交換可能に結合することができ、すなわち、その結果、両方に対して吸引を実行するために、単一の外部の吸引ラインを用いることができる。
【0045】
したがって、該外部の吸引導管は、該口腔咽頭吸引導管および該経口胃ポートの両方に対して吸引を実行することができ、吸引は、該臨床医によって、該口腔咽頭吸引導管と該経口胃ポートのそれぞれに対して間欠的にのみ施されることが認識される。
【0046】
さらに、該経口胃導管は、胃に関する物を該患者から引き出すための、それを通してカテーテルを受け入れるためのポートを形成するように構成することができる。すなわち、胃に関する物のための導管として作用することに加えて、該導管は、該ポートを介して中に送りこまれる小さなカテーテルをその中に受け入れることもできる。このようなカテーテルは、小さなカテーテル、例えば、8Frカテーテルから12Frポートとすることができる。
【0047】
該カフは、患者の体に対して該マスクを密封するために膨張される膨張可能なカフとすることができ、また該カフは、該カフを膨張させるために該カフから離れて延びている膨張ラインをさらに含んでもよい。
【0048】
該カフは、該カフを膨張させるために圧力下で空気を該カフに導入するように操作することができるバルブを該膨張ライン上にさらに含んでもよい。また、該膨張ラインは、該カフが適切に膨張されたことを臨床医に対して指し示すための膨張インジケータも含んでもよい。
【0049】
その代わりに、該カフは、膨張されることなく、患者の該体に適合して該体を密封する適合したカフ材料で形成された適合カフまたはシールとすることができる。
【0050】
すなわち、該カフ材料は、それが当接し、および該体を密封する、該患者の解剖学的構造の表面の形状に適合しおよび適応する。該カフ材料の特性は、それが該患者の解剖学的構造に適合しおよび該構造に当たって密閉することを可能にする。
【0051】
該口腔咽頭吸引導管は、該通気導管の外部で該通気導管と平行に延在することができる必要に応じて、該通気導管と該口腔咽頭吸引導管は、それらの長さに沿って共通のハウジング内に収容してもよい。
【0052】
該共通のハウジングは、患者の該体の何らかの組織に干渉するであろう何らかの突出面のない滑らかな曲面を有することができる。必要に応じて、該共通のハウジングは、楕円形または円形の断面形状を有することができる。
【0053】
該LMA装置が経口胃導管を含む実施形態において、該経口胃導管は、該通気導管の外部で該通気導管と平行に延在していてもよい。さらに、該経口胃導管は、該通気導管および該口腔咽頭吸引導管を収容する該共通のハウジング内に収容してもよい。
【0054】
該通気導管と該口腔咽頭吸引導管、および必要に応じて該経口胃導管は、それぞれチューブによって形成することができる。
【0055】
さらに、該通気導管と、該口腔咽頭吸引導管と、該経口胃導管とは、それぞれ、多少の柔軟性または曲げ性を有していてもよい。
【0056】
該通気導管と該口腔咽頭吸引導管、および必要に応じて該経口胃導管は、適当な医療用材料、例えば、PVC、シリコーンゴム、熱可塑性ポリマーおよび/またはバイオプラスチックから形成することができる。
【0057】
該LMA装置は、該LMA装置が患者に挿入されたときに、該患者が噛むための硬い部材を形成する、該通気導管の上端部に隣接するバイトブロックをさらに含むことができる。
【0058】
該ラリンジアルマスクは、概要の項における本発明の他の任意の態様における該ラリンジアルマスクの形状構成のうちのいずれか一つ以上または形状構成の組合せを含んでもよい。
【0059】
本発明の別の態様によれば、
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、臨床医が該口腔咽頭面から分泌物を除去することを可能にするために、前記マスクの前記口腔咽頭面にコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、前記操作可能な上端部が、前記吸引導管を外部の吸引導管に解放可能に結合するためのパイプ結合構造を備える、独立した口腔咽頭吸引導管と、
を備えるラリンジアルマスク装置(LMA)が提供される。
【0060】
該装置は、該マスクの周縁に延在する、該マスクを患者に対して密封するためのカフを含むことができる。
【0061】
該パイプ結合構造は、該外部の吸引導管上の雌型パイプ結合構造への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造を備えていてもよい。
【0062】
該口腔咽頭吸引導管は、臨床医が、該吸引導管に対して吸引を選択的に施すことを可能にするための、その操作可能な上端部に関する吸引制御部を含むことができる。
【0063】
該吸引制御部は、通常は、外部の空気を該口腔咽頭吸引導管内に引き込むために外気に対して開口している開口端を有する、該雄型パイプ結合構造上の分岐管の形態にすることができ、該分岐管の該開口端は、該口腔咽頭吸引導管に吸引を施して、分泌物を該コレクタに引き込むために閉じることができる。
【0064】
該分岐管の該開口端は、使用時に、臨床医が指を該開口端に当てて、該口腔咽頭吸引導管に吸引を施し、該口腔咽頭吸引導管の該操作可能な下端部に、分泌物を該コレクタを通して引き込むことによって閉じることができる。
【0065】
該ラリンジアルマスクは、該概要の項における本発明の他の任意の態様における該ラリンジアルマスクの形状構成のうちのいずれか一つ以上または形状構成の組合せを含んでもよい。
【0066】
本発明のまた別の態様によれば、
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
前記通気導管の前記操作可能な下端部におけるマスクであって、前記通気導管と流体的に連通しているレセプタクルを構成する内側面と、前記内側面に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側の口腔咽頭面とを有するマスクと、
操作可能な上端部と、臨床医が該口腔咽頭面から分泌物を除去することを可能にするために、前記マスクの前記口腔咽頭面にコレクタを形成する操作可能な下端部とを有する独立した口腔咽頭吸引導管であって、前記操作可能な上端部が、相補的なパイプ結合構造への解放可能な結合のためのパイプ結合構造を外部の吸引導管に備える、独立した口腔咽頭吸引導管と、
操作可能な上端部および操作可能な下端部と、外部の吸引導管上の相補的なパイプ結合構造への解放可能な結合のための、該操作可能な上端部の経口胃パイプ結合構造とを有する、該口腔咽頭吸引導管と平行な独立した経口胃導管と、
を備え、
該口腔咽頭吸引導管の該パイプ結合構造と、該経口胃導管の該パイプ結合構造は、外部の吸引導管上で、同じ相補的なパイプ結合構造と係合し、それにより該口腔咽頭吸引導管と経口胃導管を単一の外部の吸引導管に交換可能に結合できるように構成される、ラリンジアルマスク装置(LMA)が提供される。
【0067】
該口腔咽頭吸引導管および経口胃導管のそれぞれの該雄型結合構造および雌型結合構造は、該LMA装置の操作中に、それらを手動で取外し、または互いに分離できるように、また、該LMA装置の使用中に、臨床医によって手動で互いに接続できるように構成することができる。
【0068】
この互換性は、麻酔薬と手術吸引が、手術室内で共通の接続構成または結合構成を有するために有用であり、また、異なる受渡し装置にすぎないため有用である。それにより、このことは、臨床医が、既存の外部の導管を用いて、該吸引導管および経口胃導管のそれぞれに対して吸引を選択的に施すことを可能にする。
【0069】
該LMA装置は、該口腔咽頭吸引導管および経口胃導管の各々の該パイプ結合構造に操作可能に接続可能である外部の吸引導管をさらに含むことができ、該外部のまたはさらなる吸引導管も同様に吸引ポンプに操作可能に結合することができる。
【0070】
該口腔咽頭吸引導管および経口胃導管の該パイプ結合構造は、該外部の吸引導管の標準的な雌型パイプ結合構造内に収容されるように構成される雄型パイプ結合構造とすることができる。
【0071】
該口腔咽頭吸引導管および経口胃導管は、臨床医が、該吸引導管に吸引を選択的に施すことを可能にするための、それらの操作可能な上端部に関する吸引制御部をそれぞれ有することができる。
【0072】
一つの形態において、該吸引制御部は、通常は、外部の空気を該吸引導管内に引き込むために該外気に対して開口している開口端を有する、該雄型パイプ結合構造上の分岐管の形態にすることができる。開口しているとき、該制御部は、大気圧と平衡を保つことによって該吸引を中止する。
【0073】
各吸引制御部の該分岐管の該開口端は、例えば、臨床医が指を該開口端に当てて、該口腔咽頭吸引導管または経口胃導管のいずれかに吸引を施して、流体および分泌物をそれぞれの導管を通して引き込むことによって閉じることができる。
【0074】
該ラリンジアルマスク装置は、該マスクの周縁に広がる、該患者に対して該マスクを密封するためのカフまたはシールを含むことができる。
【0075】
該ラリンジアルマスク装置は、該概要の項における本発明の他の任意の態様に記載された該ラリンジアルマスクのいずれか一つ以上の形状構成または形状構成の組合せを含んでもよい。
【0076】
本発明の別の態様によれば、
使用時に、患者の該声門に隣接して配置される気道壁と、
該気道壁から離間して該気道壁に広がり、それらの間に口腔咽頭スペースを画定する口腔咽頭壁であって、複数の吸引開口を画定し、該吸引開口を通して該口腔咽頭スペースに分泌物を受け入れるためのコレクタを形成する口腔咽頭壁と、
該気道壁に対して一定に離隔して該口腔咽頭壁を支持するための少なくとも一つの内部支持部と、
を備える、ラリンジアルマスク装置(LMA)用のマスクが提供される。
【0077】
該複数の吸引開口は、該口腔咽頭壁の全面から分泌物を集めるために、該口腔咽頭壁の該表面に分散させることができる。
【0078】
該気道壁と該口腔咽頭壁の各々は周囲を有することができ、該内部支持部は、それらの壁の各々の該周囲から内側に離間させることができる。
【0079】
該少なくとも一つの内部支持部は、例えば、該口腔咽頭スペース内の実質的に中心に、単一の内部支持部を備えることができる。
【0080】
代わりに、該少なくとも一つの内部支持部は、複数の内部支持部を備えていてもよい。
【0081】
該マスクは、該気道壁と、該口腔咽頭壁との間でこれらの壁の周囲の周りに延びる側壁さらに含んでもよい。
【0082】
該気道壁と、該口腔咽頭壁と、該少なくとも一つの内部支持部は、例えば、射出成形作業等の成形作業によって一体形成してもよい。
【0083】
必要に応じて、該側壁は、該気道壁および該口腔咽頭壁と一体形成してもよい。
【0084】
該マスクは、該気道壁および該口腔咽頭壁の該周囲に延在するカフをさらに含んでもよい。
【0085】
該カフは、適合したカフまたはシールとすることができ、該適合したカフまたはシールは、該気道壁および該口腔咽頭壁と一体形成してもよい。
【0086】
この形態において、該適合したカフは、例えば、射出成形作業等の成形作業によって、該気道壁および該口腔咽頭壁と一体形成してもよい。
【0087】
代わりに、該カフは、該カフに別々に形成される該気道壁および該口腔咽頭壁に取付けられた膨張可能なカフとすることができる。
【0088】
この形態において、該膨張可能なカフは、該気道壁および該口腔咽頭壁に、必要に応じて、該側壁にも取付けることができる。
【0089】
該マスクは、本発明の先行のいずれかの態様に記載されている該LMA装置に記載されている該マスクの他の形状構成のうちのいずれか一つ以上を含んでいてもよい。
【0090】
本発明の別の態様によれば、
使用時に、該患者の声門に隣接して配置される気道壁と、
前記気道壁から離間して該気道壁に広がり、それらの間に口腔咽頭スペースを画定する口腔咽頭壁であって、複数の吸引開口を画定し、該吸引開口を通して該口腔咽頭スペースに分泌物を引き込むためのコレクタを形成する口腔咽頭壁と、
前記気道壁に対して一定に離隔して前記口腔咽頭壁を支持するための少なくとも一つの内部支持部と、
前記気道壁および前記口腔咽頭壁の周囲に広がる適合したカフまたはシールとを備え、
前記気道壁と、前記口腔咽頭壁と、前記少なくとも一つの内部支持部と、前記適合したカフまたはシールは一体形成される、ラリンジアルマスク装置(LMA)用のマスクが提供される。
【0091】
また、本発明は、
操作可能な上端部および操作可能な下端部を有する通気導管と、
本発明の先行のいずれかの態様で定義されたマスクと、
操作可能な上端部と、該口腔咽頭壁につながる操作可能な下端部とを有する口腔咽頭吸引導管と、
を備え、使用時に、分泌物が、該吸引開口を介して、該口腔咽頭スペース内に引き込まれ、その後、除去のために該口腔咽頭吸引導管に吸い上げられる、LMA装置にも及ぶ。
【0092】
該LMA装置は、本発明の先行のいずれかの態様で記載されている該LMA装置の他の形状構成のうちのいずれか一つ以上を含んでいてもよい。
【0093】
本発明のまた別の態様によれば、本発明の他の記述のうちのいずれか一つでクレームされているLMA装置を取付けることと、該通気導管を通して患者の呼吸樹に空気を向かわせることとを含む、該患者の呼吸樹に給気を直接供給する方法が提供される。
【0094】
該方法は、該口腔咽頭吸引導管に吸引を間欠的に施し、該口腔咽頭吸引導管を通して分泌物を吸い上げることによって、該マスクの該口腔咽頭面から分泌物を除去することを含むことができる。
【0095】
該臨床医は、手動吸引制御のそれらの作業が必要になった場合に、該口腔咽頭吸引導管に対して該吸引を間欠的に施すことができる。
【0096】
該通気導管に空気を向かわせることは、陽圧下で空気を該通気導管の該操作可能な上端部に導入することを含むことができる。
【0097】
該方法は、口腔外科手術または上気道手術を実行するために、該LMA装置を患者に取付けることを含むことができる。また、該方法は、緊急時に、例えば、患者の意識がない場合に、該LMA装置を該患者に取付けることも含むことができる。
【0098】
該方法は、分泌物、例えば、該患者によって分泌された分泌物を、該LMA装置の該口腔咽頭面から除去するため、該分泌物は、該患者の気管に入らず、このことは、気管支痙攣および喉頭痙攣を含む呼吸器合併症のリスクを低減する。
【0099】
該LMA装置は、本発明の先行のいずれかの態様に記載されている該LMA装置の該他の形状構成のうちのいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0100】
例えば、該LMA装置は、経口胃導管も含むことができ、および該方法は、該経口胃導管を介した胃の内容物の間欠吸引を可能にするために、該経口胃導管を通してカテーテルを送り込むことを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
本発明によるLMA装置およびLMA装置を用いて患者を治療する方法は、それ自体をさまざまな形態で表すことができる。本願明細書においては以後、本発明のいくつかの実施形態を添付図面を参照して詳細に説明することが都合が良いであろう。この詳細な説明を提供する目的は、本発明の対象に関心のある人達に、本発明をどのように実施するかを教示することである。しかし、この詳細な説明の特異性は、先行の一般的な説明の普遍性に取って代わるものではないことを明確に理解すべきである。
図1】公知のラリンジアルマスク装置(LMA)の斜視図である。
図2A】該声門に取付けられた該マスクを示す、患者の定位置に取付けられた図1のようなLMA装置の断面図である。
図2B】気管通路への入口付近の人の解剖学的構造を示す概略図のセットである。
図3】本発明の一つの実施形態によるLMA装置の上方斜視図である。
図4図3の該LMA装置の下方斜視図である。
図5図3の該LMA装置の側面図である。
図6図3の該LMA装置の正面図である。
図7図3の該LMA装置の底面図である。
図8a】該マスクの該長さに沿った三つの異なる位置で取った、図3の該LMA装置の該マスクを通した三つの断面図を含む。
図8b】該マスクの該長さに沿った三つの異なる位置で取った、図3の該LMA装置の該マスクを通した三つの断面図を含む。
図8c】該マスクの該長さに沿った三つの異なる位置で取った、図3の該LMA装置の該マスクを通した三つの断面図を含む。
図9】本発明の第二の実施形態によるLMA装置の上方斜視図である。
図10図9の該LMA装置の下方斜視図である。
図11】該患者からの分泌物を該LMA装置によって選択的に吸い上げることができるようになっている吸引導管およびコレクタを示す、図9の該LMA装置の一部の側面図である。
図12図11の該LMA装置の該一部の断面図である。
図13図11の該LMA装置の該一部の上方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図1および図2は、上記の背景の項で既に説明している従来のLMA装置を示す。したがって、これらの図面は、該詳細な説明においてはさらに説明せず、該詳細な説明は、本発明による実施形態に注力する。
【0103】
図3図8は、本発明の一つの実施形態によるLMA装置を示す。このLMAは、カフ内の膨張圧力を示すための圧力インジケータバルーンを備えた該膨張可能なカフを有するLMAの実施様式の一つにすぎない。
【0104】
該LMA装置10は、操作可能な上端部14および操作可能な下端部16を有する気道ラインまたは気道チューブまたは通気導管12と、該気道ライン12の該操作可能な下端部16における楕円形マスク20とを概して備えている。該楕円形マスク20は、該気道ライン12内に開口しているレセプタクルを形成している内側面22と、前記内側面22に対向し、および該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側面または口腔咽頭面24とを有している。該マスク20は、例えば、該患者の該声門にわたって、該患者の気道の操作可能な上方開口端に対して該マスク20を密封するための、その周縁31に延在するカフ30を有する。
【0105】
また、該LMA装置10は、臨床医が、該マスク20の該口腔咽頭面24から体の分泌物を除去するための間欠吸引を施すことを可能にする、該通気導管12から離隔され、且つ該通気導管と平行な吸引導管40も含む。「吸引導管」40という該用語は、この明細書においては、口腔咽頭吸引導管という該用語と置換可能に用いることができる。
【0106】
次に、LMA装置10のこれらの構成要素の各々を、以下においてより詳細に説明する。
【0107】
該通気導管12は、ある程度の曲げ性または柔軟性を有する管状材料で形成され、且つ患者の口および喉に楽々と受け入れられるように形成されている。該通気導管12の該操作可能な上端部14は、外部の給気装置へのその操作可能な接続を容易にする(図1に示すもののような)気道コネクタを有している。外部の給気装置の構造および機能は、当業者には公知であるため、この明細書においては、さらに詳細に説明しない。
【0108】
該楕円形マスク20は、該通気導管12を通って下に移動する空気が、該患者の呼吸樹内に向けられ、且つ該胃につながる経路に沿って該食道内には向けられないように、患者の該声門にフィットし、且つ該声門の周りの該患者の解剖学的構造に対して該マスク20を密封するように形成されて構成される。
【0109】
該膨張可能なカフ30は、該患者の声門を密封するため該マスク20の該周縁31の周りに延在し、空気で膨張されてそれを該声門に密封接触させる。該膨張可能なカフ30は、圧力下の空気を該膨張ライン32に入れて該カフ30を膨張させることを可能にするように操作することができるバルブ(図示せず)を典型的には有する、該カフ30から離れて延在する膨張ライン32を含む。また、該膨張ライン32は、典型的には、該カフ30が適切に膨張されたときに、臨床医に指し示すための膨張指示バルーン(図示せず)も含む。
【0110】
該吸引導管40は、使用時に、患者の該口の外側に配置され、および外部の吸引導管70(図3には図示せず)に操作可能に結合される操作可能な上端部60と、操作可能な下端部61を有している。吸引制御は、臨床医が、該吸引チューブ40内に吸引を生成することによって操作される。該吸引を生成するのに用いられる該吸引装置は公知であるため、この明細書においては、詳細に説明しない。
【0111】
該図面に示すように、該導管40の該上端部60は、該導管40を該外部の導管70に解放可能に結合するのに用いることができるパイプ結合構造90を有する。好都合なことに、該パイプ結合構造90は、該外部の吸引導管70上の相補的な雌型パイプ結合構造92に例えば摩擦嵌めで収容される雄型パイプ結合構造を備えている。さらに、該吸引制御は、該臨床医が必要なときに吸引を間欠的に施すことができる、開口端を備えた分岐ライン94を有する該雄型パイプ結合構造90によって実行される。都合のよいことに、該雄型および雌型パイプ結合構造90、92は、カテーテル技術に用いられているものと同様であってもよい。
【0112】
該吸引チューブ40の該操作可能な下端部61は、該マスク20の口腔咽頭面全面または後面24に実質的に及ぶ(広がる)コレクタ62を構成している。該コレクタ62は、該マスク20の該周縁31に延在する外周領域と、該コレクタ62の各側の該外周領域に向かって下方に傾斜する隆起した内側領域とを備えている。該隆起した内側領域は、該コレクタ62の長さに沿って延在するリッジまたはハイラインまたはスパインを有し、ハイラインの各側で、該外周領域に向かって下方に傾斜する。
【0113】
該コレクタ62は、該口腔咽頭面に配置されている複数の吸引開口64を含む。該吸引開口64のうちのいくつかは、該周縁31の周りに配置され、また他の吸引開口64は、該隆起した内側領域に配置することができる。図示されている実施形態において、該コレクタ62は、一列に配置されて該外周領域に沿って互いに離間されている少なくとも八つの吸引開口64を有している。
【0114】
本出願人は、この実施形態における該コレクタ62の吸引開口64の数は、吸引開口64の構成の一つの例にすぎないことを指摘しておく。いくつかの他の構成においては、該コレクタ62上に、より少ない吸引開口64があってもよく、またそれらは、該コレクタ上に異なって配置してもよい。いくつかの他の形態において、該コレクタ62は、図3図8に示すものよりも多くの吸引開口64を有していてもよい。任意のLMA装置構造に対して、吸引開口64の該数と、それらの開口64の配置は、使用中に、該吸引開口64を通って流される分泌物の量と、該コレクタ62に要求される構造的強度とに依存する。
【0115】
該コレクタ62上の該吸引開口64の該配置における一つの要因は、該開口64を塞ぎまたは閉塞し、および潜在的には、該患者に対してある程度の組織損傷を引き起こすであろう、粘膜を該吸引開口64に直接吸引することを避ける要望である。
【0116】
さらに、該外周領域には、該マスク20の該周縁31のかなりの部分(substantial portion)の周りに延在する凹部または開口チャネル67を設けることができる。該チャネル67は、分泌物を溜めて、それを、該外周領域に形成された該吸引開口64に向けておよび該吸引開口内に向けるのに役に立つ。該チャネル67には、湾曲したまたは丸みのある縁部のみを設けることができ、何らかの正方形の縁部は有していない。該吸引開口64を該凹部67内に形成することで、該コレクタ62にわたって延在する粘膜組織への吸引外傷を避けることができる。開口チャネルは図3図8に明確に図示されてはいないが、当業者は、該口腔咽頭面24を、より明確なチャネルを備えるように構成できることを正しく認識するであろう。
【0117】
該コレクタ62は、該隆起した内側領域にさらなる複数の吸引開口64を含み、例えば、該ハイラインの各側に少なくとも一つの吸引開口64を含む。図3図8に示す該実施形態において、該さらなる複数の開口64は、エアチューブまたは通気導管12から離れた端部に向かって、すなわち、該通気導管12の該操作可能な上端部14から遠位に、該ハイラインの各側に数個の吸引開口を備える。
【0118】
したがって、該コレクタ62は、該マスク20の該後面または口腔咽頭面24にわたって広がり、および該口腔咽頭面24の全面にわたって、患者の体からの分泌物を該吸引開口64に引き込む。該体の分泌物は、該吸引開口64を通して引き込まれた後、該気管への該入口において該声門から離れて該口腔咽頭吸引導管40を通して吸い上げられる。
【0119】
該コレクタ62は、該図面に示すように低プロファイルを有し、および該LMA装置の残りの部分の上に多くのスペースを占めない。さらに、該コレクタ62は、(正方形の縁部または角部がない)湾曲面および丸みのある縁部のみを有するため、該患者の体組織に何らかの外傷を負わせない。これは、該LMA装置10が定位置にある場合に加えて、該患者に挿入され、および該患者から引き出される場合に特に当てはまる。
【0120】
該口腔咽頭吸引導管40は、その長さに沿って、該通気導管またはエアチューブ12の曲率に追従し、典型的には、該通気導管12と同様の材料で形成されている。該図面に示すように、該吸引導管40は、該通気導管12よりもかなり小さい直径を有している。単に一例として、該エアチューブまたは通気導管12は、約15mmの直径を有することができ、また、該吸引導管40は、約5mmの直径を有することができる。その結果として、該通気導管12と、関連する吸引導管40は、該導管が、該患者内の口腔咽頭管を通して該声門から上方に延びる際に、低プロファイルを有する比較的流線型の物体を構成する。そのコレクタ62および口腔咽頭吸引導管40を備えた該LMA装置10は、該患者の該口腔咽頭管によって形成される内部空間内に何の問題もなくフィットする。
【0121】
当業者には、該通気導管12および該吸引導管40の両方に用いられる管部材のサイズが、該LMA装置10の該サイズに依存して変わる、すなわち、より大きなサイズのLMA装置10は、一般的に、より大きな通気導管12を有するであろうことは正しく認識されるであろう。
【0122】
図3図8における該図示されている実施形態において、該通気導管12と該吸引導管40は、それらの長さに沿って一緒に保持される。しかし、当業者には、該導管12および40は、独立しておよび互いに取付けることなく、それらの上端部から下端部まで延在することもできることは容易に認識されるであろう。
【0123】
図3図8における該LMA装置は、該背景の項で従来のLMA装置に関して上述したような経口胃ポートを有していない。すなわち、該LMA装置は、該患者の胃の内容物および分泌物を該胃および/または食道から引き出すのに用いることができる、該通気導管12および該口腔咽頭吸引導管40と平行な独立した経口胃ポートを有していない。
【0124】
図3図8に示すようなLMA装置10は、使用時に、患者の呼吸樹に向けられる給気を供給するために該患者に取付けられる。該声門は、該呼吸樹への該入口と、該口から該胃への食べ物の通路が呼吸経路から分岐する箇所とを示す。LMA装置は、幅広い経歴および専門性を有する医療関係者によって使用される。例えば、該LMA装置は、コンサルタント麻酔科医が使用することができ、また場合により、該LMA装置は、リカバリーナースが取り外してもよい。
【0125】
該LMA装置10は、(該患者の外部の)給気から該呼吸樹の入口までの直接エンドツーエンド接続を備える。図2Bは、該LMA装置が取付けられる咽頭腔および該声門を含む該患者の関連する解剖学的構造を示す。該LMA装置10は、患者の口を通して喉に挿入された後、(該口腔咽頭面24と反対側の)該マスク20の前部またはカップ状の内側面22が、該患者の声帯に対向する該患者の声門にわたって配置される位置に至るまで下方に移動される。それまでに該声門の周りに配置されている該カフ30は膨張されて、該声門に当たって密封接触するように促されて気密シールを形成する。このように、該エアチューブまたは通気導管12に向かって下方に向けられた空気は、該肺を通過する血液に酸素を送り込むために、該呼吸樹内を直接通過し、該マスク20から漏出しない。
【0126】
該LMA装置10の使用中、該吸引導管40は、マスク20の該口腔咽頭面24の周りの体腔または空間に集めることができる上気道の分泌物および血液を吸引するのに主治医によって用いられることができる。該主治医は、必要に応じて間欠ベースで、例えば、該吸引導管40の該操作可能な上端部60において、および該患者の外部で、該吸引制御の手動作動によって吸引を施すことができる。該コレクタ62の該複数の吸引開口64は、該口腔咽頭面24の全範囲から分泌物を該吸引導管40に引き込む。吸引が施される場合、該分泌物は、該吸引導管40を通して引き上げられて、外部の吸引導管70に引き入れられ、そこから該分泌物は、キャニスター/リザーバに流される。
【0127】
気道治療、すなわち、該患者の肺への酸素の送出が完了した後、該LMA装置10は、該咽頭および喉を通して上方へ移動させて、該口を通して引き出すことができる。このことは、該気道コネクタまたは同様のものに固定することによって手動で行われる。現在の技術の場合、該LMA装置が引き出されたときに、該カフはまだ膨張している。このことは、分泌物が該喉頭に滴り落ちることを回避するのに役に立つ。本出願人は、この明細書に開示されているように、分泌物が該口腔咽頭面から吸引されるときに、引き出しのために該カフを収縮させる余地があると信じている。
【0128】
図9図13は、別の実施形態によるLMA装置を示す。該LMA装置は、上記の図3図8に示す該LMA装置とのいくつかの類似点を有しているため、別段の指示がない限り、同じ構成要素を指すために同じ参照数字が用いられている。さらに、以下の説明は、この実施形態と、図3の実施形態の違いに注目する。
【0129】
図9図13に示す該LMA装置10の構造は、Intersurgical Pty社によって製造されている‘i-gel’LMA装置の該構造と似ている。この実施形態において、基本的な‘i-gel’LMA製品は、該エアチューブまたは通気導管12に平行に延在する、臨床医が、該マスク20の該口腔咽頭面24に近接する体の分泌物および粘液を除去することを可能にするための吸引導管40を備えるように既に適合されている。
【0130】
概して、該LMA装置10は、操作可能な上端部14および操作可能な下端部16を有する気道ラインまたはエアチューブまたは通気導管12と、該通気導管12の該操作可能な下端部16における楕円形マスク20とを備えている。該楕円形マスク20は、該通気導管12内に開口しているレセプタクルを構成する内側面22と、前記内側面22に対向し、該レセプタクルから遠ざかる方向を向く外側または口腔咽頭面24とを有する。
【0131】
この実施形態において、該マスク20は、その周縁31に延在する、例えば、該患者の該声門にわたって、該患者の気道の操作可能な上方開口端に該マスク20を密封するための適合したカフまたはシール30を有する。該適合したカフまたはシール30は、該患者の該組織に当たって耐えて、該組織を密封する柔軟なカフ材料によって形成されている。該カフ材料の該特性は、該カフ材料が、当接して該患者に対して該マスク30を密封する内部の解剖学的構造面の形状に適合しおよび適応することを可能にする。該カフは膨張可能ではないため、カフ膨張ラインを有していない。
【0132】
該LMA装置10は、臨床医が、該マスク20の該口腔咽頭面24から分泌物を除去するための間欠吸引を施すことを可能にする、該通気導管12から離隔された(およびそれに平行な)口腔咽頭吸引導管40も含む。該口腔咽頭吸引導管40は、該図面に示すようなその上端部に、パイプ結合構造またはコネクタ90を有する。該コネクタ90は、外部の吸引導管70の相補的な雌型パイプ結合構造92への解放可能な接続のための雄型パイプ結合構造である。
【0133】
該雄型パイプ結合構造90は、業界標準の雌型パイプ結合構造92、例えば、該カテーテル技術において用いられるもののような50mm径のパイプ結合内に収容されるように構成されている横方向リブを有する差込口を備えている。
【0134】
また、該LMA装置10は、該食道からの逆流を含む胃に関する物を除去するための、(図3図8における該LMA装置には設けられていない)経口胃導管または経口胃ポート(胃ドレーン)80も有している。該経口胃導管80は、胃の分泌物が該肺に吸い込まれまたは引き込まれて、そこでそれらが周知のおよび上述されている合併症を引き起こす可能性があることを回避するのに役に立つ。
【0135】
該経口胃導管80は、該食道に対して開口し、および該呼吸樹の外部に配置される開口を有する操作可能な下端部81を有する。それは、該LMA装置の該マスクの下で、該胃に向かって該食道内に対向する。該経口胃導管80は、該通気導管12および該口腔咽頭吸引導管40の両方から離隔され、およびそれらの長さに沿ってそれらの導管12および40のいずれとも連通していない。
【0136】
該経口胃導管80は、上方へ通過して該患者の口から出て、該患者の体の外部で外部の吸引導管70に操作可能に結合することができる操作可能な上端部82を有する。該経口胃導管80は、該外部の吸引導管70を介した吸引の施しによって、該経口胃導管80を通して吸い上げられる胃の分泌物を除去するのに用いることができる。該経口胃導管80は、該通気導管12のような柔軟なチューブで形成され、および該マスク20から上方のその操作可能な上端部16へ移動する際に、該通気導管12の経路に概して追従する。
【0137】
該経口胃導管80は、該図面に示すように、その上端部82に、コネクタまたはパイプ結合構造91を有する。該パイプ結合構造91は、該口腔咽頭吸引導管40の該上端部の該パイプ結合構造90と基本的に同じである。具体的には、該パイプ結合構造91は、臨床医が、該経口胃導管80に吸引を施すことによって遮断することができる開口端を有する分岐ライン94によって形成された吸引制御部を有する。
【0138】
上記の説明において、適合したパイプ結合構造91を有する該経口胃導管80は、胃に関する物を直接除去するための吸引導管として用いることができる。該胃に関する物は、該胃に関する物を導いて該操作可能な上端部82へ向けるのに用いられる該導管91自体内に直接収容される。この出願において、該胃導管80は、胃の内容物を引き出すための該導管を構成する独立したカテーテルの挿入をガイドするポートとしては用いられない。
【0139】
しかし、該経口胃導管80は、該患者から胃に関する物を除去するために、中に小さなカテーテルを収容するための通路を設けるためのポート(または、収容管腔またはガイド)としても用いることができることを理解しなければならない。該カテーテルは、該経口胃ポートを介して下方へ送り込み、その後、下方の該ポートの該操作可能な下端部を通して送り込むことができる。典型的には、該カテーテルは、下方の該食道内に挿入され、および必要に応じて、該胃の中にも挿入される。このようなカテーテルは、それを該経口胃導管80内の隙間に収容できるようにするために、必然的に、例えば、8Frから12Frに至るまでの小さなカテーテルになるであろう。
【0140】
図9図13における該マスク20の該口腔咽頭面に取付けられた該コレクタ62には、上述した該第一の実施形態の該コレクタ62といくつかの違いがある。該コレクタ62は、該マスク20の該周縁31に延在する外周領域を有する。また、該コレクタ62は、該外周領域の内側に配置される隆起した内側領域も有している。該隆起した内側領域は、その長さに沿って延在するハイラインを有し、該ハイラインの両側から、該ハイラインの各側における該外周領域まで下方へ傾斜している。
【0141】
該コレクタ62は、該外周領域に沿って一列に配置された複数の吸引開口64を有する。該図示されている実施形態において、該コレクタ62は、該外周領域に配置された少なくとも10の吸引開口64、例えば、少なくとも18の吸引開口を有する。
【0142】
さらに、該外周領域は、図12の断面図に最も明確に図示されている、分泌物を溜めて、外周ゾーンに形成された該吸引開口64に向かわせるための凹溝またはチャネル67を形成するようにも構成されている。図9図13の該図示されている実施形態において、該チャネル67は、該外周領域の該長さのかなりの部分に沿って延在している。
【0143】
また、該コレクタ62は、その該隆起した内側領域内に、さらなる複数の吸引開口64も含む。本出願人は、該隆起した内側領域の追加的な吸引開口64が、実質的にすべての体の分泌物を該吸引導管40に引き込んで、それにより、該分泌物が該気道または気管内に引き込まれるという該リスクを回避するのに役立つであろうと信じている。図9図13の該図示されている実施形態において、これらのさらなる吸引開口64は、該ハイラインの両側に吸引開口64を備えている。さらに、これらの吸引開口64は、該通気導管12に隣接する該マスク20の操作可能な上端部から、該導管12から離れた該マスク20の操作可能な下端部まで延在している。ここでもまた、これは、吸引開口64の例示的な構成にすぎず、他のさまざまな構成も用いることができるであろうことを理解する必要がある。当業者には、該吸引開口の構造が、該患者にフィットすることに同様に依存する該LMAの該サイズに依存することは容易に理解されるであろう。また、それは、LMAのスタイルと、該LMAの該サイズと、使用される該材料と、該コレクタの適切な構造的完全性とにも依存する。
【0144】
さらに、本出願人は、該コレクタ62が、丸みのある縁部を有するなだらかな湾曲面で構成されていることを指摘する。該コレクタ62は、コレクタ62を有する該マスク20が、該患者の解剖学的構造に適合することを可能にする何らかの鋭い縁部はもちろん、何らかの正方形の縁部も有している。このことは、使用時に、該LMA装置が患者に挿入され、および該患者から引き出されるときに、該患者への何らかの外傷を避けるのに役に立つ。
【0145】
該図面に示すように、該吸引導管40と、該マスク20の該口腔咽頭面24に延在する該コレクタ62は、該装置10の該残りの部分と一体形成され、該コレクタ62は、例えば、製造中に、該LMA装置10の該マスク20に埋め込まれる。さらに、図9および図10に示すように、該吸引導管40は、該エアチューブまたは通気導管12と該経口胃導管80も収容するハウジングまたはシース98内に格納されている。これは、該内部導管スペースを互いに厳格に離隔しながら、これら三つの導管12、40および80を都合よく一緒に束ねている。該ハウジング98は、概して円形のまたは楕円形状の断面構造を有している。
【0146】
図9図12の該LMA装置10は、使用時に、図3図8を参照して上述した該実施形態と同様の方法で用いられる。そのため、図3図8に関連する上記の該説明も、ここで適用可能である。
【0147】
該LMAは、図3の該LMA装置と同じ方法で患者に挿入される。一旦、定位置に挿入されると、該LMAは使える状態になる。これは、該LMAが、該患者の体組織を自然に密封する、体に適合するカフを有し、膨張可能なカフを有していないためである。
【0148】
図9図12に示す該実施形態において、該吸引導管40は、該吸引導管40および該さらなる外部の吸引導管70の各々の相補的な雄型および雌型のパイプ結合構造によって、該さらなる外部の吸引導管70に解放可能に結合されている。このことは、該主治医が、必要なときに該吸引導管40および該コレクタ62の該吸引開口64に吸引を施すことを可能にする。上述したように、吸引制御は、該臨床医が、指を該雄型パイプ結合構造90の該分岐ラインまたはパイプ94の該開口端に置いて、該外部からではなくて、該吸引導管40を通して空気を引き込むことによって実行される。
【0149】
その後、該臨床医が、該経口胃導管80に吸引を施したい場合には、さらなる吸引導管70が手動で該吸引導管40から取り外され、または該導管から切り離されて、代わりに該経口胃導管80に接続される。この該経口胃導管80に対する取外しおよびその後の再取付けの動作は、該臨床医によって迅速かつ容易に手動で実現することができる。その結果、このことは、該臨床医が、該経口胃導管80に吸引を施すこと、および該経口胃導管80を通して胃の逆流または分泌物を引き上げて、該患者の該口から引き出すことを可能にする。したがって、吸引源または真空源に操作可能に結合されている単一の外部の吸引導管70を、該吸引導管40および該経口胃導管80の両方に吸引をもたらすのに用いることができ、このことは作業利点を与える。
【0150】
この明細書には図示されていない該LMA装置のまた別の態様において、該LMA装置は、通気導管と平行な経口胃吸引導管を有する。該LMA装置は、分泌物を該吸引チューブに引き込むための該マスクの該口腔咽頭面に広がるコレクタも有している。それらの構成要素の該構造および機能は、該図示されている実施形態に関して上述した対応する構成要素と同様である。
【0151】
また、該LMA装置は、図3図8の該実施形態において示したもののような該マスクの該周縁に膨張可能なカフも有している。該カフは、エアラインおよびバルブによって、これまでの実施形態と同じ方法で膨張される。
【0152】
該LMA装置はさらに、該食道まで延在するための、および必要に応じて、胃の内容物を除去するために該胃まで延在する経口胃導管を有する。該経口胃導管80は、図9図13を参照して上述した該実施形態の場合の該導管80と非常に似ている。
【0153】
さらに、この実施形態は、バイトブロックも含む。バイトブロックは、該通気導管の、および必要に応じて該口腔咽頭吸引導管および経口胃導管の周囲も包囲して、該LMA装置10が該患者の喉の定位置に挿入されたときに、該患者が噛むためのブロックを形成する。したがって、該バイトブロックは、該LMA装置を定位置に配置し、およびそれを定位置に維持するのに役に立つ。
【0154】
上述されているが、図示されてはいない該LMA装置は、使用時に、上述したこれまでの実施形態と非常に似ている方法で機能する。さらに、それは、臨床医によって、図3図8および図9図13を参照して上述したものに非常に似ている方法で用いられる。
【0155】
該図面の図3図8および図9図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMA装置の一つの利点は、それが、該マスクの該口腔咽頭面に隣接する該体腔内の分泌物を、該口腔咽頭吸引導管を通して引き出すことができるようにするということである。このことは、特に治療後に、該LMA装置が該患者から取出されるときに、該患者の肺へのそれらの分泌物の吸引を回避する。このことは、命に関わる可能性のある気管支痙攣および喉頭痙攣等の呼吸器の合併症を回避するのに役に立つ。そのため、該LMA装置は、LMA装置で治療される患者に対する呼吸器の合併症のリスクおよび発生を低減するのに役に立つ。
【0156】
該図面の図3図8および図9図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMA装置の別の利点は、該LMA装置は、口腔咽頭吸引導管と、該マスクの該口腔咽頭面のコレクタとを設けるように改良して、それにより、何らかの追加的なリスクまたは不快感または辛さを該患者に与えない方法で本発明を実施するように改良されているということである。それは、LMA装置の該構造にシームレスに統合されている。
【0157】
該図面の図3図8および図9図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMA装置の別の利点は、該マスクと、特に、該マスクの該口腔咽頭面の該コレクタが、鋭い面を有していないということである。より正確にいえば、該面は穏やかに湾曲され、該LMA装置の該マスクの他の形状構成の自然な曲線および輪郭に適合している。さらに、該マスクから該患者の該口腔咽頭通路および喉を通って上方へ延びる該口腔咽頭吸引導管は、比較的邪魔にならず、また都合のよいことに、該患者の該気管に給気を供給する該通気導管と一緒に束ねられる。
【0158】
該図面の図8図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMA装置の別の利点は、それが、該患者から胃内容物を直接吸引し、独立したカテーテルを必要としない経口胃導管を備えているということである。この出願における該装置は、それを使用できる前にポートを通してカテーテルを挿入することを必要とする基本的な経口胃ポートを越えるものを提供する。このことは、緊急時に有利である使用速度という該作業利点を与える。また、該装置は、臨床医が、該LMA装置を使用するときに、胃の内容物にアクセスして取り除くことを容易にもする。
【0159】
該図面の図8図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMAの別の利点は、該口腔咽頭吸引導管は、手術室において、それを標準的な市販の外部の吸引導管に迅速かつ容易に結合できるようになっているパイプ結合構造に取付けられるということである。さらに、該経口胃導管は、それを該同じ外部の吸引導管に結合できるようになっている該同じパイプ結合構造にも取付けられる。該二つの導管は、必要なときに両導管における吸引を該臨床医に提供するために、単一の外部の吸引導管に交換可能に結合することができる。
【0160】
該図面の図3図13を参照して該詳細な説明において上述した該LMAの別の利点は、該マスク上の、分泌物を集めるための該コレクタを、該マスクが製造されるときに該マスクと一体形成することができるということである。
【0161】
当然のことながら、上記のことは、単に本発明の例示として述べられていること、および実施例に対するすべての変更および変形は、当業者には明らかなように、本願明細書に記載されているかのように、本発明の広い範囲および領域内に入ると見なされることは認識されるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】