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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】クラッチの作動機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 28/00 20060101AFI20240229BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20240229BHJP
   F16D 23/14 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16D28/00 Z
F16D13/52 Z
F16D23/14 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522509
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 CN2022084766
(87)【国際公開番号】W WO2023159720
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】202210166167.X
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523131313
【氏名又は名称】浙江▲シン▼可伝動科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】金 建華
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA11
3J056AA60
3J056AA62
3J056BE07
3J056CC12
3J056CC17
3J056CC32
3J056GA02
3J056GA12
(57)【要約】
本発明は、クラッチの作動機構を開示し、それは、動力ユニットであって、アクチュエータモーターと動力軸を備え、アクチュエータモーターが動力軸に接続される動力ユニットと、トランスミッションユニットであって、シフトカムとクラッチカムを備え、シフトカムとクラッチカムの両方が動力軸に固定されるトランスミッションユニットと、シフトフォークであって、シフトカムに接続されるシフトフォークと、クラッチ押圧ユニットであって、押圧部材を備え、押圧部材の両端はそれぞれ動力部と支点部であり、押圧部材の中央は押圧部であり、前記動力部はクラッチカムに接続され、前記支点部とハウジングとの間には弾性補償構造が設けられ、前記押圧部材の対応する支点部と押圧部との間にはリターン部が設けられ、前記リターン部にはリターン構造が設けられるクラッチ押圧ユニットと、を含み、本発明は、クラッチ嵌合の駆動力として電気モーターを使用し、ワンアクションでシフトフォークとクラッチ押圧ユニットを同時に作動させて迅速なシフトを可能にするとともに、クラッチ摩耗時に弾性補償構造により十分な押圧力を確保することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチの作動機構であって、動力ユニットと、トランスミッションユニットと、シフトフォークと、クラッチ押圧ユニットと、ハウジングとを備え、ここで、
動力ユニットは、アクチュエータモーターと動力軸を備え、アクチュエータモーターが動力軸に接続される、
トランスミッションユニットは、シフトカムとクラッチカムを備え、シフトカムとクラッチカムの両方が動力軸に固定される、
シフトフォークは、シフトカムに接続される、
クラッチ押圧ユニットは、押圧部材を備え、押圧部材の両端はそれぞれ動力部と支点部であり、押圧部材の中央は押圧部であり、前記動力部はクラッチカムに接続され、前記支点部とハウジングとの間には弾性補償構造が設けられ、前記押圧部材の対応する支点部と押圧部との間にはリターン部が設けられ、前記リターン部にはリターン構造が設けられる、ことを特徴とするクラッチの作動機構。
【請求項2】
前記弾性補償構造は、ピボットピンを含み、前記ハウジングには摺動溝が設けられ、ピボットピンの一端は摺動溝内に延び、他端は摺動溝の外に位置し、かつ、ピボットピンとハウジングとの間にはその摺動距離を制限するための制限構造が設けられ、前記ピボットピンの摺動溝の外に位置する端部は支点部に回転可能に接続され、前記ピボットピンとハウジングとの間には補償スプリングが設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチの作動機構。
【請求項3】
前記制限構造は、ブレーキプレートとスプリング押圧プレートを含み、前記ブレーキプレートは、前記ハウジングと固定的に接続され、かつ、ブレーキプレートとハウジングとの間には間隔があり、スプリング押圧プレートはブレーキプレートの下にあり、かつ、補償スプリングはスプリング押圧プレートとハウジングとの間にあり、前記ピボットピンはスプリング押圧プレートに接続される、ことを特徴とする請求項2に記載のクラッチの作動機構。
【請求項4】
前記ハウジングには収容溝が設けられ、補償スプリングが収容溝に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載のクラッチの作動機構。
【請求項5】
複数の前記補償スプリングが設けられ、複数の補償スプリングがピボットピンの周囲に均等に配置される、ことを特徴とする請求項4に記載のクラッチの作動機構。
【請求項6】
前記ピボットピンと支点部との接続部はボールヘッド構造となる、ことを特徴とする請求項5に記載のクラッチの作動機構。
【請求項7】
前記リターン構造は、固定プラテンとリターンスプリングを含み、固定プラテンはハウジングに固定され、かつ、固定プラテンとハウジングとの間に間隔があり、前記リターン部は固定プラテンとハウジングとの間に配置され、前記リターンスプリングは固定プラテンとリターン部との間に配置される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のクラッチの作動機構。
【請求項8】
前記押圧部は閉じたリング状であり、前記押圧部の内側には押圧リングが設けられ、押圧リングの片側は押圧部の外側に突出し、押圧リングは回転軸によって押圧部に回転可能に接続され、かつ、回転軸の軸は動力部と支点部との接続線に対して垂直である、ことを特徴とする請求項7に記載のクラッチの作動機構。
【請求項9】
前記ハウジングにはガイドシリンダが設けられ、前記押圧リングがガイドシリンダに嵌着され、かつ、ガイドシリンダにスライド可能に接続される、ことを特徴とする請求項8に記載のクラッチの作動機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ技術の分野に属し、より具体的には、クラッチの作動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチは、エンジンとギアボックスの間にあるフライホイールハウジング内にあり、ネジでクラッチアセンブリをフライホイールの後面に固定し、クラッチの出力軸はギアボックスの入力軸である。自動車の運転中、ドライバーは必要に応じてクラッチペダルを踏んだり離したりすることで、エンジンとギアボックスを一時的に切り離し、または徐々に接続し、これにより、エンジンからトランスミッションへの動力入力が遮断または伝達される。
【0003】
ここで、湿式多板クラッチは、一般に、油圧によって結合され、すなわち、油圧を動力源として多板クラッチを駆動して嵌合させる。
【0004】
油圧の利点:(1)作動圧が高いため、クラッチ圧が高く、トルク伝達能力も高い。(2)油圧の制御が容易であるため、シフトの制御も容易になる。(3)油圧は別のシステム操作で行うため、外部に影響を与えない。
【0005】
従来のトランスミッションでは、油圧システムが広く使用されるが、構造が複雑であるだけでなく、油圧作動のために油圧ポンプが必要であり、トランスミッション全体の効率が低くなる。
【0006】
EV車に多板クラッチを搭載し、油圧ポンプによる効率低下を避けるために、ポンプレスの作動機構が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点に対して、本発明は、クラッチ嵌合の駆動力として電気モーターを使用する方法を提供し、ワンアクションでシフトフォークとクラッチ押圧ユニットを同時に作動させて迅速なシフトを可能にするとともに、クラッチ摩耗時に弾性補償構造により十分な押圧力を確保することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する、
クラッチの作動機構であって、動力ユニットと、トランスミッションユニットと、シフトフォークと、クラッチ押圧ユニットと、ハウジングとを備え、ここで、
動力ユニットは、アクチュエータモーターと動力軸を備え、アクチュエータモーターが動力軸に接続される、
トランスミッションユニットは、シフトカムとクラッチカムを備え、シフトカムとクラッチカムの両方が動力軸に固定される、
シフトフォークは、シフトカムに接続される、
クラッチ押圧ユニットは、押圧部材を備え、押圧部材の両端はそれぞれ動力部と支点部であり、押圧部材の中央は押圧部であり、前記動力部はクラッチカムに接続され、前記支点部とハウジングとの間には弾性補償構造が設けられ、前記押圧部材の対応する支点部と押圧部との間にはリターン部が設けられ、前記リターン部にはリターン構造が設けられる。
【0009】
さらに、前記弾性補償構造は、ピボットピンを含み、前記ハウジングには摺動溝が設けられ、ピボットピンの一端は摺動溝内に延び、他端は摺動溝の外に位置し、かつ、ピボットピンとハウジングとの間にはその摺動距離を制限するための制限構造が設けられ、前記ピボットピンの摺動溝の外に位置する端部は支点部に回転可能に接続され、前記ピボットピンとハウジングとの間には補償スプリングが設けられる。
【0010】
さらに、前記制限構造は、ブレーキプレートとスプリング押圧プレートを含み、前記ブレーキプレートは、前記ハウジングと固定的に接続され、かつ、ブレーキプレートとハウジングとの間には間隔があり、スプリング押圧プレートはブレーキプレートの下にあり、かつ、補償スプリングはスプリング押圧プレートとハウジングとの間にあり、前記ピボットピンはスプリング押圧プレートに接続される。
【0011】
さらに、前記ハウジングには収容溝が設けられ、補償スプリングが収容溝に配置される。
【0012】
さらに、複数の前記補償スプリングが設けられ、複数の補償スプリングがピボットピンの周囲に均等に配置される。
【0013】
さらに、前記ピボットピンと支点部との接続部はボールヘッド構造となる。
【0014】
さらに、前記リターン構造は、固定プラテンとリターンスプリングを含み、固定プラテンはハウジングに固定され、かつ、固定プラテンとハウジングとの間に間隔があり、前記リターン部は固定プラテンとハウジングとの間に配置され、前記リターンスプリングは固定プラテンとリターン部との間に配置される。
【0015】
さらに、前記押圧部は閉じたリング状であり、前記押圧部の内側には押圧リングが設けられ、押圧リングの片側は押圧部の外側に突出し、押圧リングは回転軸によって押圧部に回転可能に接続され、かつ、回転軸の軸は動力部と支点部との接続線に対して垂直である。
【0016】
さらに、前記ハウジングにはガイドシリンダが設けられ、前記押圧リングがガイドシリンダに嵌着され、かつ、ガイドシリンダにスライド可能に接続される。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は、電気モーターを駆動力として、加圧式押圧ユニットと組み合わせて使用すると、電気自動車の多板クラッチにより大きな圧力を加えることができ、かつ、ワンアクションでシフトフォークとクラッチ押圧ユニットを同時に作動させ、迅速なシフトを実現し、多板クラッチが摩耗した場合でも、弾性補償構造により十分な押圧力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハウジングが他の構造から分離されたときの概略図である。
【0019】
図2】本発明の正面図である。
【0020】
図3図2におけるA-Aでの断面図である。
【0021】
図4】本発明の立体構造図(ハウジングなし)である。
【0022】
図5】本発明におけるクラッチ押圧ユニットの立体構造図1である。
【0023】
図6】本発明におけるクラッチ押圧ユニットの立体構造図2である。
【0024】
図7】多板クラッチと加圧式押圧ユニットの分解図である。
【0025】
図8】電気自動車における2つのギア位置の構造概略図である。図面において、1-ハウジング、11-ガイドシリンダ、12-収容溝、2-動力ユニット、21-アクチュエータモーター、22-動力軸、3-トランスミッションユニット、31-シフトカム、32-クラッチカム、4-シフトフォーク、5-押圧部材、51-動力部、511-トランスミッションロータ、52-押圧部、53-支点部、54-リターン部、6-嵌合ベアリング、7-押圧リング、8-弾性補償構造、81-ピボットピン、82-ブレーキプレート、83-スプリング押圧プレート、84-補償スプリング、9-リターン構造、91-固定プラテン、92-リターンスプリング、10-多板クラッチ、101-内側ハブ、102-外側ハブ、100-第一ギア構造、200-第二ギア構造。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明におけるクラッチの作動機構の実施例を、図1図8を参照してさらに説明する。
【0027】
本発明の説明において、向き用語について、「中心」、「水平方向(X)」、「縦方向(Y)」、「垂直方向(Z)」、「長さ」、「幅」、「厚み」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「縦」、「横」、「頂部」、「底部」、「内側」、「外側」、「時計回り」、「反時計回り」などは、図面に示される向きまたは位置関係に基づいて向きおよび位置関係を示し、本発明を説明する便宜上および説明を簡略化するためのものに過ぎず、デバイスまたは要素が特定の向きを有し、特定の向きで構築および作動されなければならないことを示すまたは示唆するものではなく、本発明の特定の保護範囲を限定するものとして理解されるものではない。
【0028】
さらに、「第一」、「第二」などの用語は説明目的でのみ使用され、相対的な重要性を示すまたは暗示するものとして、または技術的特徴の数を暗黙的に指定するものとして理解されることはない。したがって、「第一」、「第二」の特徴の定義は、これらの特徴の1つ以上を明示的または暗示的に含むことができ、本発明の説明において、「数個」および「複数」は、明示的かつ具体的に限定しない限り、2つ以上を意味する。
【0029】
クラッチの作動機構であって、動力ユニット2と、トランスミッションユニット3と、シフトフォーク4と、クラッチ押圧ユニットと、ハウジング1とを備え、ここで、
動力ユニット2は、アクチュエータモーター21と動力軸22を備え、アクチュエータモーター21が動力軸22に接続される、
トランスミッションユニット3は、シフトカム31とクラッチカム32を備え、シフトカム31とクラッチカム32の両方が動力軸22に固定される、
シフトフォーク4は、シフトカム31に接続される、
クラッチ押圧ユニットは、押圧部材5を備え、押圧部材5の両端はそれぞれ動力部51と支点部53であり、押圧部材5の中央は押圧部52であり、前記動力部51はクラッチカム32に接続され、前記支点部53とハウジング1との間には弾性補償構造8が設けられ、前記押圧部材5の対応する支点部53と押圧部52との間にはリターン部54が設けられ、前記リターン部54にはリターン構造9が設けられる。
【0030】
本発明におけるハウジング1は、ギアボックスのハウジング1であってもよく、各ユニットをその内部に固定することができる。アクチュエータモーター21と動力軸22との間に減速ギアセットを設けてトルクを増加させることができる。
【0031】
図8に示すとおり、本発明におけるクラッチの作動機構は、電気自動車に適用され、この電気自動車は2つのギア位置を有し、ここで、シフトフォーク4が第一ギア位置に接続され、クラッチ押圧ユニットが第二ギア位置に接続される。本発明において、ギアボックス内の第一ギア構造100は、出願人の先願である出願番号201710902598.7に開示された低速ギア構造(嵌合と分離構造)を採用することができ、第二ギア構造200は、出願人の先願である出願番号201810915737.4に開示されたクラッチ構造を採用することができる。
【0032】
本発明において、トランスミッションユニット3は、動力軸22の回転中にシフトフォーク4とクラッチ押圧ユニットを動力軸22に沿って軸方向に往復移動させることができる。図4に示すとおり、シフトカム31の周面にホイール溝があり、かつ、ホイール溝が軸方向で位置変化を持たせ、シフトフォーク4は、ホイール溝と嵌合するローラによって軸方向に移動可能である。クラッチカム32の構造はシフトカム31の構造と同じであってもよく、または、次の構造を採用でき、クラッチカム32は、片側にトグルを有する谷構造を採用し、押圧部材5の動力部51にはこの谷構造と嵌合するトランスミッションロータ511が設けられる。
【0033】
図8に示すとおり、シフトフォーク4とクラッチ押圧ユニットが左に力を加えると第二ギア位置が結合されて第一ギア位置が分離され、右に移動すると第二ギア位置が分離されて第一ギア位置が結合される。本発明において、押圧部材5と第二ギア位置の多板クラッチ10との間が嵌合ベアリング6で接続され、すなわち、押圧部材5の押圧部52が嵌合ベアリング6に当接し、押圧部材5が左に移動すると、押圧部52が嵌合ベアリング6を左に押圧して多板クラッチ10を嵌合させる。
【0034】
本実施例における第二ギア構造200は、加圧式押圧ユニット、すなわち特許番号201810915737.4における押圧ユニットを備え、前記押圧ユニットは、内側ハブ101を含み、前記内側ハブ101は前記スリーブに接続され、前記内側ハブ101と前記外側ハブ102との間には嵌合構造が設けられ、前記嵌合構造は、前記内側ハブ101の外面に設けられた複数のタブと、前記外側ハブ102の内面に前記タブと合致するように設けられた溝とを含み、ここで、前記タブは、前記スリーブの軸方向に沿って、前記第二摩擦ディスクアセンブリに近い一方の側から他方の側へ向かって広がる。タブの両端には内側ハブ101の周方向に沿って傾斜面が形成され、これに対応して溝の両端には外側ハブ102の周方向に沿って傾斜面が形成される。スリーブが回転して内側ハブ101を回転させると、タブの一端の傾斜面が溝の対応する傾斜面に押し付けられ、傾斜面の合致構造によって、内側ハブ101は、タブと溝との合致により、傾斜面の合致部で外側ハブ102に対して内側ハブ101の回転速度方向に沿った接線分力と、摩擦ディスクユニットに向かうスリーブの軸方向に沿った軸方向分力とを発生する。ここで、接線分力は外側ハブ102を回転させ、軸線分力と嵌合ベアリング6の圧着力との複合作用により、第一摩擦ディスクアセンブリを圧着するか、または第一摩擦ディスクアセンブルと第二摩擦ディスクアセンブリを一緒に圧着するために使用される。スリーブを逆方向に回転させると、タブと溝の他端の傾斜面との合致によって駆動分力と軸方向分力を発生する。
【0035】
このような設置により、嵌合ベアリング6は、第一摩擦ディスクアセンブリまたは第一摩擦ディスクアセンブリと第二摩擦ディスクアセンブリの組合せを半合致状態にするために小さな押圧力を加えるだけでよく、嵌合構造の作用下で、内側ハブ101は、外側ハブ102に対してスリーブの軸方向に沿って摩擦ディスクユニットに向かう軸方向分力を発生して第一摩擦ディスクアセンブルまたは第一摩擦ディスクアセンブルと第二摩擦ディスクアセンブルの組合せを完全に係合させる。このように、駆動モーターなどの駆動力の小さい駆動装置を用いて嵌合ベアリング6を駆動することでクラッチを係合することができ、それによって嵌合ベアリング6にかかる力を低減させ、耐用年数を向上させる。
【0036】
図4および図5に示すとおり、本実施例における好ましい前記弾性補償構造8は、ピボットピン81を含み、前記ハウジング1には摺動溝が設けられ、ピボットピン81の一端は摺動溝内に延び、他端は摺動溝の外に位置し、かつ、ピボットピン81とハウジング1との間にはその摺動距離を制限するための制限構造が設けられ、前記ピボットピン81の摺動溝の外に位置する端部は支点部53に回転可能に接続され、前記ピボットピン81とハウジング1との間には補償スプリング84が設けられる。
【0037】
具体的には、前記制限構造は、ブレーキプレート82とスプリング押圧プレート83を含み、前記ブレーキプレート82は、ハウジング1と固定的に接続され、かつ、ブレーキプレート82とハウジング1との間には間隔があり、スプリング押圧プレート83はブレーキプレート82の下にあり、かつ、補償スプリング84はスプリング押圧プレート83とハウジング1との間にあり、前記ピボットピン81はスプリング押圧プレート83に接続される。
【0038】
本実施例における好ましいブレーキプレート82とスプリング押圧プレート83は、ピボットピン81が通過するための穴を備え、かつ、ブレーキプレート82は、スプリング押圧プレート83の通過を防止することができ、ピボットピン81とスプリング押圧プレート83を固定的に接続でき、またはスプリング押圧プレート83に対応するピボットピン81の外側にストップリングを設置でき、スプリング押圧プレート83がストップリングに接触した後、ピボットピン81を全体として押し上げる(摺動溝の外側へ移動する)。
【0039】
図3に示すとおり、押圧部材5の動力部51がクラッチカム32の山部に達すると、押圧部材5は支点部53を支点として右側に偏倚し、ピボットピン81はスプリング押圧プレート83とブレーキプレート82の抜き出し方向に停止し、かつ、補償スプリング84によってスプリング押圧プレート83を介して抜き出し方向に付勢され、ピボットピン81は作動時にトランスミッションロータ511と支点部53の制限を受けて沈み(摺動溝の内側へ移動する)、このときの補償スプリング84の力がレバー比によって多板クラッチ10を押圧するための付勢力に変換される。多板クラッチ10が摩耗すると沈み込み量が徐々に減少するが、この状態でもトルク伝達能力を確保するため、補償スプリング84の荷重を設定し、クラッチが新品のとき、ピボットピン81の移動量が最も多く、クラッチの摩耗に伴ってピボットピン81の移動量が徐々に減少する。
【0040】
本実施例における好ましい前記ハウジング1には収容溝12が設けられ、収容溝12には補償スプリング84が配置され、図5に示すとおり、複数の前記補償スプリング84が設けられ、複数の補償スプリング84がピボットピン81の周りに均等に配置される。
【0041】
本実施例における好ましい前記ピボットピン81と支点部53との間の接続部は、ボールヘッド構造となり、すなわち支点部53をピボットピン81の端部を中心に任意に回転させることができ、両者を常に接続させることが可能であり、当然で、ピボットピン81と支点部53を軸の一方向回転で接続することもできる。
【0042】
本実施例における好ましい前記リターン構造9は、固定プラテン91とリターンスプリング92を含み、固定プラテン91はハウジング1に固定され、かつ、固定プラテン91とハウジング1との間に間隔があり、前記リターン部54は固定プラテン91とハウジング1との間に配置され、前記リターンスプリング92は固定プラテン91とリターン部54との間に配置される。
【0043】
図5および図6に示すとおり、動力部51でのトランスミッションロータ511がクラッチカム32の谷間にあるとき、支点部53を支点として、多板クラッチ10が切断されても、リターンスプリング92がリターン部54を圧着して多板クラッチ10から離間するように偏向する。押圧部材5にかかる力をバランスさせるために、リターン構造9を2組設けることが好ましく、2組のリターン構造9は動力部51と支点部53を結ぶ線の両側に対称に設けられる。
【0044】
本実施例における好ましい前記押圧部52は閉じたリング状であり、前記押圧部52の内側には押圧リング7が設けられ、押圧リング7の片側は押圧部52の外側に突出し、押圧リング7は回転軸によって押圧部52に回転可能に接続され、かつ、回転軸の軸は動力部51と支点部53との接続線に対して垂直である。
【0045】
図4に示すとおり、押圧リング7が嵌合ベアリング6に押し付けられたときの状態を示し、図5および図6において、嵌合ベアリング6は含まれず、すなわち、本実施例では、力を加える際に押圧部材5が押圧リング7を介して伝達され、力を加える間、押圧部材5は軸方向に並進せず、支点部53を中心に偏向し、かつ、支点部53の位置を変化させることができ、したがって、押圧部材5全体の動作が非並進的であるのに対し、回転する押圧リング7を設けることによって、押圧リング7に力を伝達することができ、押圧リング7は常に嵌合ベアリング6と面接触を保ち、すなわち押圧リング7は並進して嵌合ベアリング6に均等な力を加えることができる。
【0046】
本実施例における好ましい前記ハウジング1にはガイドシリンダ11が設けられ、前記押圧リング7がガイドシリンダ11に嵌着され、かつ、ガイドシリンダ11にスライド可能に接続され、図3に示すとおり、押圧リング7がガイドシリンダ11に嵌着され、押圧リング7と押圧部材5の押圧部52との間には可動間隙があり、さらにガイドシリンダ11は押圧リング7をガイドし、押圧部52が力を加えるとき、押圧リング7はガイドシリンダ11とともに他の方向にずれることなく軸方向に移動し、嵌合ベアリング6にバランスよく力がかかるようにする。
【0047】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は上記実施例に限定されず、本発明の思想に該当する全ての技術的解決手段は本発明の保護範囲に属する。なお、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改良および変更が行われ、これらの改良および変更も本発明の保護範囲と見なされるべきである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】