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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】新規の抗菌かつ抗血栓性の医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/06 20060101AFI20240229BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240229BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61L29/06
A61L27/18
A61L29/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535497
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2022054854
(87)【国際公開番号】W WO2022180235
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21159597.0
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】500029925
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ド・リエージュ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LIEGE
【住所又は居所原語表記】Place du XX Aout, 7, 4000 Liege, Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】505006194
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテーレ・ド・リエージュ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE LIEGE
【住所又は居所原語表記】Avenue de l’Hopital 13(Bat. B35), 4000 Liege, Belgum
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ランセロッティ、パトリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】オウリー、セシル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム、クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】デトレンブル、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アキル、アブデルハフィド
(72)【発明者】
【氏名】メロ、ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ピエラルド、アナ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB35
4C081AC03
4C081AC06
4C081AC08
4C081BA15
4C081CA211
4C081CA212
4C081CE01
4C081CE03
(57)【要約】
1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器、及びその製造方法。生理活性分子、特に抗菌分子、抗血栓性分子、及び抗石灰化分子を、搭載及び放出又はグラフト結合させるための医療機器の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)1を含む埋め込み型医療機器であって、前記1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、式(1)又は式(9)
【化1】
(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20であり、
ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化2】
ではなく、
並びに、ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化3】
ではなく、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、並びに、
式中、uは、≧1の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である)に基づくことを特徴とする、医療機器。
【請求項2】
は、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
式(1)に基づくポリヒドロキシウレタン(PHU)を含み、式中、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、Rは、アルキレンである、請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
式(1)に基づく前記ポリヒドロキシウレタンは、
式(2)のポリシクロカーボネート
【化4】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、xは、1~4の整数であり、
式中、yは、2以上の整数である)と、
式(3)のポリアミン
【化5】
(式中、zは、2~6の整数であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルを表し、好ましくは、R及びRは、水素であり、
ただし例外として、R及び/又はRが水素の場合、Rは、
【化6】
ではなく、
ただし例外として、R及び/又はRが水素原子の場合、Rは、
【化7】
ではない)との熱重付加により得られる、請求項1に記載の医療機器。
【請求項5】
式(2)の前記ポリシクロカーボネートは、式(5)のポリ(プロピレングリコール)-ビス-シクロカーボネート(PPGbisCC)であり、式中、mは、≧1の整数であり、好ましくは1~100、最も好ましくは1~10であり、
【化8】
前記ポリアミンは、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)
【化9】
であることを特徴とする、請求項4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記ポリアミンは、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)に式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)
【化10】
を組み合わせたものであることを特徴とする、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記ポリシクロカーボネートは、式(8)のポリテトラヒドロフランビスシクロカーボネートであり、式中、pは、≧1の整数、好ましくは1~100、最も好ましくは1~10であり、
【化11】
前記ポリアミンは、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)
【化12】
であることを特徴とする、請求項4に記載の医療機器。
【請求項8】
前記ポリアミンは、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)に式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)を組み合わせたものであることを特徴とする、請求項7に記載の医療機器。
【化13】
【請求項9】
式(9)に基づく前記ポリヒドロキシウレタン(PHU)は、
式(2)のポリカーボネート
【化14】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
式中、yは、2以上の整数であり、
式中、Xは、1~4の整数である)と、
式(15)のポリアミン
【化15】
(式中、Rは、2個~40個の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素鎖であり、前記直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素鎖は、少なくとも光応答性基を有し、
式中、Rは水素であり、Rは、水素、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルであり、並びに、
式中、zは、≧1の整数であり、好ましくは1~6である)と、
の熱付加により、光応答性基を有するポリカルバメートヒドロキシ誘導体を得て、
光応答性基を有する前記ポリカルバメートヒドロキシ誘導体を、
式(16)のチオール、好ましくは、式(11)のジチオール及び光重合開始剤
-(SH) (16)
【化16】
(式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、kは、2以上の整数、好ましくは2~6である)を用いて、UV重付加により、更に反応させることにより得られる、請求項1に記載の医療機器。
【請求項10】
及びRは、水素である、請求項9に記載の医療機器。
【請求項11】
前記光応答性基は、アリル基であり、
光応答性基を有する前記ポリカルバメートヒドロキシ誘導体は、式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体であり、
【化17】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
並びに前記チオールは、式(11)のジチオールであり、
【化18】
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンである、請求項9又は10に記載の医療機器。
【請求項12】
前記ポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体は、式(14)のポリアリルカルバメートヒドロキシプロピレンオキシドであり、
【化19】
式中、t≧1であり、好ましくは、tは、1~1000、最も好ましくは1~20であることを特徴とする、請求項11に記載の医療機器。
【請求項13】
カテーテル又は人工心臓弁である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリヒドロキシウレタンを含む埋め込み型医療機器を製造する方法であって、
それぞれ熱重合若しくはUV重合に相当する工程(a)若しくは工程(b):
a)式(2)のポリシクロカーボネートと、式(3)のポリアミンと、任意に触媒とを混合して、熱重合により、式(1)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化20】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルを表し、好ましくは、R及びRは、水素であり、ただし例外として、R及び/又はRが水素の場合、Rは、
【化21】
ではなく、
並びに、ただし例外として、R及び/又はRが水素の場合、Rは、
【化22】
ではなく、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくはnは、1~100、より好ましくは1~20であり、
ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化23】
ではない)、
b)光応答性基を有するポリビニルカルバメートヒドロキシ誘導体、好ましくは式(10)のものと、式(16)のチオール、好ましくは式(11)のものと、光重合開始剤とを混合して、UV重合により式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化24】
(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、並びに、
式中、kは、≧2の整数、好ましくは2~6であり、
式中、uは、≧1の整数、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である)、
又は両者の組合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリヒドロキシウレタンを含む埋め込み型医療機器をコーティングする方法であって、
前記医療機器の表面に、式(1)及び/又は式(9)に基づくポリヒドロキシウレタン
【化25】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、前記炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化26】
ではなく
並びに、ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化27】
ではなく、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、前記炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、uは、≧1の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~5であり、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20である)の層を少なくとも1層沈着させることを含む、方法。
【請求項16】
更に、生理活性分子、好ましくは抗細菌剤又は抗血栓剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシウレタンを含む新規医療機器、特に、カテーテル又は人工心臓弁、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、生理活性分子、特に抗細菌性又は抗血栓性分子を搭載及び放出するための医療機器の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
患者の体内に埋め込む又は挿入する医療機器は、医療分野で一般的に使用される。カテーテル及び留置管又は人工弁は、重要な市場規模の医療機器となっている。
【0004】
留置用具等の医療機器は、患者の治療に必要なものであるが、そのような留置用具の使用又は留置用具を体内に設置する手技のために、微生物による炎症又は感染症のリスクが生じる可能性がある。
【0005】
患者の体内に埋め込む又は挿入する医療機器は、in vivoで、石灰化、分解、及び血栓形成を生じる可能性もある。
【0006】
留置用具の炎症又は感染症は、留置用具表面若しくはその周辺範囲に細菌がコロニー形成する、又は留置用具表面にバイオフィルムが形成されることで始まる。
【0007】
炎症又は感染症のリスクを最小限にするため、医療機器が抗細菌性コーティングを有することが一般的になりつつある。
【0008】
カテーテルに微生物がコロニー形成するのを防ぐために複数の方法が用いられてきた。最も一般的な方法は、抗菌剤搭載又は抗菌剤コーティングしたカテーテルの使用を含む。
【0009】
しかしながら、コーティング戦略は、抗菌剤の迅速な放出を招くことが多い。他のコーティングは、従来の抗生物質を使用するが、それだと長期使用になるにつれて耐性の懸念が起こる。
【0010】
非特許文献1は、オーラノフィンを放出する抗細菌性かつ抗バイオフィルムのポリウレタン(PU)を血管内カテーテルのコーティングに使用する方法を記載している。PU+オーラノフィンでコーティングされたカテーテルは、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)のバイオフィルム形成を阻害することができる。
【0011】
しかしながら、ポリウレタン化合物には、深刻な問題がいくつかある。ポリウレタンは、ジオールとイソシアネートが反応して直鎖ポリウレタンを形成することを含む、イソシアネート化学反応に基づく。
【0012】
イソシアネート系材料は、毒性で有害なホスゲンから合成されるため、それらは毒性である。また、ポリウレタン系イソシアネートは、水分に敏感であり、水分により不安定な一置換カルバミン酸を形成する可能性がある。一置換カルバミン酸は、強力な発熱反応で分解して、尿素及び二酸化炭素を生成する。
【0013】
そのうえさらに、in vitro及びin vivoでのポリウレタン(PU)留置用具の評価から、長期留置術に関連した問題が明らかとなった。すなわち、PUの表面構造に影響を及ぼす分解が観察されるのである。石灰化した宿主材料がPUに浸透することによる石灰化加速が、留置用具の早期失敗の原因となる可能性が高い。
【0014】
それゆえに、新規の手頃で安全かつ有効な医療機器、特にカテーテル及び人工弁が、必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Frontiers in Cellular and infection microbiology 9, art 37 of February 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、今回、新規医療機器の製造に使用するための又は医療機器をコーティングするための、非イソシアネートポリウレタン(NIPU)、別称ポリヒドロキシウレタン(PHU)を見出した。1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む新規医療機器は、生理活性分子、特に、抗細菌性分子、抗血栓性分子、又は抗石灰化剤を、搭載及び放出する、又はそのような分子をグラフト結合させることが可能である。
【0017】
非イソシアネートポリウレタンの使用には、バイオメディカル用途向きの魅力的な特長が多数あり、そのような特長として、低コスト、優れた生体適合性、低毒性、及び各種機械的特性が挙げられ、これらの機械的特性により、複数の製造方法、例えば、押出法、共押出法、鋳造法、又は3Dプリンティング法等でのそれらの使用が可能になる。
【0018】
本発明の目的は、非イソシアネートポリウレタン、すなわちポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む新規医療機器の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
埋め込み型医療機器という用語は、本明細書中使用される場合、宿主哺乳類における臨床用途の全ての埋め込み型外来材料、例えば、人工関節、ペースメーカー、埋め込み型電気除細動器-除細動器、カテーテル、例えば、血管内カテーテル又は尿路カテーテル、冠動脈ステントをはじめとするステント、人工心臓弁、眼内レンズ、歯科インプラント、乳房インプラント、気管内チューブ、胃瘻造設チューブ等を指す。
【0020】
特には、ポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む埋め込み型医療機器は、流体を送達するために宿主哺乳類に導入することが可能なカテーテルであり、流体は、例えば、血液製剤、ブドウ糖液、薬物、診断薬等である。カテーテルは、例えば、血液を処理する目的で脈管構造から血液を抜き出す、又は膀胱から尿を排出させる、又は試料を集めるために、使用することもできる。
【0021】
「カテーテル」という用語は、本発明に従って、尿路カテーテル、中心静脈カテーテル、心血管カテーテル、神経血管カテーテル、静脈内カテーテル、及び特殊カテーテルを指すが、気管内チューブ、カニューレ、眼部カテーテル等も指す。
【0022】
本発明によるカテーテルは、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む。本発明によるカテーテルは、部分的に又は全体が、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)製であることが可能である。
【0023】
これに加えて又はこれに代えて、本発明によるカテーテルは、部分的に又は全体が、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でコーティングされていることが可能である。
【0024】
特には、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器は、人工心臓弁、例えば、重合体弁、機械弁、又は生体弁である。
【0025】
1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む人工心臓弁は、部分的に又は全体が、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)製であることが可能である。
【0026】
あるいは、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む人工心臓弁は、部分的に又は全体が、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でコーティングされていることが可能である。
【0027】
特定の実施の形態において、弁は、機械弁である。機械弁は、熱分解性炭素製又は熱分解性炭素でコーティングされたチタン製のいずれかである、一葉心臓弁又は二葉心臓弁であることが可能であり、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)で更にコーティングされていることが可能である。
【0028】
特定の実施の形態において、弁は、生体弁である。生体弁は、組織弁とも呼ばれるが、これは、ドナー動物から提供された組織成分を有する、二葉心臓弁又は三葉心臓弁であることが可能であり、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)で更にコーティングされていることが可能である。
【0029】
特定の実施の形態において、弁は、重合体弁である。重合体弁は、全体が又は部分的に、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)から作られた二葉心臓弁又は三葉心臓弁であることが可能である。重合体弁は、別の重合体組成物から作られている場合に、全体が又は部分的に、その表面をPHUでコーティングされていることも可能である。
【0030】
「宿主哺乳類」という用語は、本明細書中使用される場合、ヒトを指すが、動物も指すことができる。
【0031】
当該一種以上の非イソシアネートポリウレタン、すなわちポリヒドロキシウレタン(PHU)を、表面のコーティングとして及び/又は医療機器のバルク組成の主成分として含む、新規医療機器は、有利なことに、イソシアネート系ポリウレタンを含む医療機器よりも血液適合性が高く、より低い凝固性及びより少ない血小板付着を誘導する。
【0032】
当該一種以上の非イソシアネートポリウレタン、すなわちポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む新規医療機器は、有利なことに、局所治療処置用の1種以上の生理活性分子を搭載及び放出することができる。
【0033】
第一の態様において、本発明は、式(1)に基づく1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器を提供し、このポリヒドロキシウレタンは、任意に、熱重合により得られ、式中、nは、1以上の整数であり(n≧1)、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20である。熱重合により得られるポリヒドロキシウレタンは、直鎖構造又はネットワーク構造いずれかであり、
【化1】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、
は、好ましくは、アルキレン、例えば、メチレン、エチレン、メチレンビス-シクロヘキシル、ヘプタメチレン等であり、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、水素原子(H)、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ter-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル等;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキル、例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペントキシ等を表し、
及びRは、好ましくは、同一であって、水素原子に等しく、
ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化2】
ではなく、
並びに、ただし例外として、R及び/又はRが水素原子を表す場合、Rは、
【化3】
ではない。
【0034】
いくつかの実施の形態において、R及びRが水素原子を表す場合、Rは、
【化4】
ではなく、
及びRが水素原子を表す場合、Rは、
【化5】
ではない。
【0035】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)が、式(1)に基づくことを特徴とし、
【化6】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは、1~20である。
【0036】
本発明による医療機器のいくつかの実施の形態においては、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、Rは、アルキレンである。
【0037】
本発明による医療機器のいくつかの実施の形態においては、式(1)に基づくポリヒドロキシウレタンは、
式(2)のポリシクロカーボネート
【化7】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物である)と、
式(3)のポリアミン
【化8】
(式中、zは、2~6の整数であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルを表し、好ましくは、R及びRは、水素である)との熱重付加により得られる。
【0038】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、式(2)のポリシクロカーボネートが、式(5)のポリ(プロピレングリコール)-ビス-シクロカーボネート(PPGbisCC)であり、式中、mは、≧1の整数であり、好ましくは1~100、最も好ましくは1~10であり、
【化9】
ポリアミンが、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)
【化10】
であることを特徴とする。
【0039】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、ポリアミンが、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)に式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)
【化11】
を組み合わせたものであることを特徴とする。
【0040】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、ポリシクロカーボネートが、式(8)のポリテトラヒドロフランビスシクロカーボネートであり、式中、pは、≧1の整数、好ましくは1~100、最も好ましくは1~10であり、
【化12】
ポリアミンが、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)
【化13】
であることを特徴とする。
【0041】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、ポリアミンが、式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)に式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)を組み合わせたものであることを特徴とする。
【化14】
【0042】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、式(9)に基づくものであり:
【化15】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、並びに、
式中、uは、≧1の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である。
【0043】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、式(9)に基づくものであって、式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体に式(11)のジチオール及び光重合開始剤を用いてUV重付加させることにより得られ、
【化16】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
【化17】
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンである。
【0044】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、ポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体が式(14)のポリアリルカルバメートヒドロキシプロピレンオキシドであることを特徴とし、
【化18】
式中、t≧1であり、好ましくは、tは、1~1000、最も好ましくは1~20である。
【0045】
いくつかの実施の形態において、本発明の医療機器は、カテーテル又は人工心臓弁である。
【0046】
本発明は、本明細書中記載されるとおりのポリヒドロキシウレタンを含む医療機器を製造する方法も包含し、本方法は、混合工程(a)又は混合工程(b)を含むことを特徴とし、工程(a)又は工程(b)は、それぞれ、熱重合又はUV重合に対応する:
a)式(2)のポリシクロカーボネートと式(3)のポリアミン、任意に触媒を混合し、熱重合により式(1)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化19】
(式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルを表し、好ましくは、R及びRは、水素であり、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20である)、
b)式(10)のポリビニルカルバメートヒドロキシ誘導体と式(11)のジチオール、及び光重合開始剤を混合し、UV重合により式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化20】
(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、並びに、
式中、uは、≧1の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である)。
【0047】
本発明は、本明細書中記載されるとおりのポリヒドロキシウレタンを含む医療機器をコーティングする方法も包含し、本方法は、医療機器の表面に、式(1)又は式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンの層を少なくとも1層沈着させることを含み、
【化21】
式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~40個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、
式中、R及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル;1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルコキシアルキルを表し、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これらは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、好ましくは、Rは、アルキレンであり、
式中、uは、≧1の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~5であり、
並びに式中、nは、≧1の整数であり、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20である。
【0048】
いくつかの実施の形態において、本発明による医療機器は、更に、生理活性分子、好ましくは、抗細菌剤又は抗血栓剤を含む。
【0049】
直鎖構造を持つ式(1)に基づくPHU、例えば、R及びRが水素原子を表す場合のものは、有利なことに、溶融フィラメント製造(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)、別称3Dプリンティングに使用することができる。
【0050】
いくつかの実施の形態において、式(1)のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、式(3)のポリアミンと式(2)のポリシクロカーボネートの熱重付加により得られ、
【化22】
式中、Rは、環状カーボネート環の間の炭素結合であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、yは、2以上の整数であり、好ましくは、2~6であり、より好ましくは、2又は3であり、並びに
式中、xは、1~4の整数であり、これは、メチレン基の個数を表す。本発明に従って、xが1~4の値であることが想定される場合、得られる環状カーボネート基は、5個、6個、7個、及び/又は8個の原子でできており、
好ましくは、整数xは、1であり、五員環カーボネート基になる。
【0051】
本発明で使用されるポリシクロカーボネートの例は、以下のものであり:
【化23】
式中、Xは、酸素原子(O)又は窒素原子(N)であり、
式中、Rは、以下から選択される基の1つである:
【化24】
【0052】
ポリシクロカーボネートは、当該技術分野で既知の任意の方法により調製することができ、例えば、欧州特許出願公開第3199569号に記載のとおり、ポリオールから、そのポリオールのアルコール官能基の全て又は一部をグリシジルエーテル官能基に変換し、続いてそのグリシジルエーテル官能基を炭酸化するか、又は以下に記載のとおり、少なくとも2つの外側二重結合を有する分子をエポキシ化し、続いて(有機)触媒を用いた二酸化炭素カップリング反応を行うことによる等である:L.-N. He & al., "One-pot stepwise synthesis of cyclic carbonates directly from olefins with CO2 promoted by K2S2O8/NaBr", J. CO2 Util., 2016, 16, 313-317、及びR. Wang & al., "Direct Synthetic Processes for Cyclic Carbonates from Olefins and CO2", Catal. Surv. from Asia, 2011, 15, 49-54、及びC. Detrembleur & al., "Organocatalyzed coupling of carbon dioxide with epoxides for the synthesis of cyclic carbonates: catalyst design and mechanistic studies", Catal. Sci. Technol., 2017, 7, 2651。
【0053】
式(3)のポリアミンにおいて、
【化25】
zは、2以上の整数であり、好ましくは、2~6、最も好ましくは、2又は3に等しく、
は、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~60個の炭素原子、より好ましくは2個~20個の炭素原子、更により好ましくは2個~15個の炭素原子を有し、好ましくは、Rは、アルキレン基、例えば、メチレン、エチレン、メチレン-ビス-シクロヘキシル、ヘプタメチレン等、分子量が好ましくは、300g/mol~10000g/molの範囲のポリエーテル、分子量が300g/mol~10000g/molの範囲のポリエステル、分子量が300g/mol~10000g/molの範囲のポリシロキサン、又はそれらの混合物であり、
及びRは、同一であるか異なっていて、H、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ter-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル等、又はC3-8シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロオクチル等を表し、
及びRは、好ましくは水素であり、ただし例外として、R及び/又はRが水素の場合、Rは、
【化26】
ではない。
【0054】
式(3)のポリアミンは、第一級ポリアミン、第二級ポリアミン、又は第三級ポリアミンであることが可能である。
【0055】
式(3)のポリアミンは、例えば、ジアミン、特には、直鎖脂肪族ジアミン、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、ブタン-1,4-ジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、若しくは1,12-ジアミノドデカン、ヘキサメチレンジアミン、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、2,2’-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ジエタンアミン等、又は環状脂肪族ジアミン、例えば、イソホロンジアミン(IPDA)等、トリアミン、例えば、トリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)等、又は任意の他のポリアミン、例えば、ポリエチレンイミン若しくは二量体脂肪酸ジアミン等、又は芳香族ジアミン、例えば、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、若しくは1,2-ジフェニルエチレンジアミン等である。長鎖部分を持つ及び/又は-NH官能基数の少ない多官能アミンの使用は、直鎖の柔軟な構造体をもたらすことができ、一方、短鎖部分を持ち、-NH官能基数の多いポリアミンの使用は、架橋したより剛直なネットワーク構造体をもたらすことができる。
【0056】
好ましくは、式(3)のポリアミンは、第一級ポリジアミン、最も好ましくは、式(4)の4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)であり、
【化27】
これにより、式中、Rがメチレンビス(シクロヘキシル)基である、式(1)のポリヒドロキシウレタンPHUがもたされる。
【0057】
代替的に、第一級ポリアミンを、別の第一級ポリアミンと組み合わせて、又は第二級ポリアミン若しくは第三級ポリアミンと組み合わせて、使用することができる。
【0058】
「第一級ポリアミン」という用語は、本明細書中使用される場合、式中、R及びRが水素である、式(3)のポリアミンを指す。
【0059】
「第二級ポリアミン」という用語は、本明細書中使用される場合、式中、R又はRいずれかが水素である、式(3)のポリアミンを指す。
【0060】
「第三級ポリアミン」という用語は、本明細書中使用される場合、式中、R及びRが両方とも、水素ではない、式(3)のポリアミンを指す。
【0061】
熱重付加は、10℃~100℃、好ましくは65℃~80℃の温度で、式(3)のポリアミンを用いて式(2)のポリシクロカーボネートを開環する反応である。
【0062】
式(2)のポリシクロカーボネートは、求核試薬(Nu)として用いられるポリアミンと反応する。
【0063】
熱重付加は、好ましくは、カーボネート/アミン反応の速度を上昇させ、環状カーボネートの脱カルボキシル化を可能にするために用いられる触媒を用いて実行される。広範囲の触媒が、使用可能である(例えば、Blain et al., Green Chemistry 2014, 16, 4286を参照)。適切な触媒の選択は、使用する具体的な配合に依存するが、ポリヒドロキシウレタンを形成するのに用いる温度にも依存する。限定ではない例として、触媒は、アミン触媒、例えば、トリアザビシクロデセン(TBD)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、又は他のグアニジン及びアミジン、トリメチルヒドロキシエチルエチレンジアミン、トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリメチルアミン(NEt)、トリメチルアミン、ホスファゼン、ホスフィン(トリアリールホスフィン及びトリアルキルホスフィン)から選択することができる。
【0064】
触媒は、カチオンとアニオンの組合せで構成されるイオン塩又はイオン性液体から選択することもできる。カチオンは、国際公開第2021/004993号に記載のとおり、アルカリ金属、例えば、Na、Li、K、Cs等、又は他の金属、例えば、Mg2+、Ca2+等、又はアンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、トリアゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、若しくはアミジニウムを含む他の有機カチオンから選択することができる。
【0065】
「ポリエーテル」という用語は、本明細書中使用される場合、直鎖又は分岐鎖の、脂肪族又は芳香族の、重合体鎖であって、2つ以上のエーテル(-O-)結合を有するものを指す。
【0066】
ポリエーテルという用語は、特に、ポリアルキレンオキシドC2n4nn+1、例えば、ポリプロピレンオキシド、別称ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、別称ポリエチレングリコール、ポリブチレンオキシド、別称ポリブチレングリコール、又はそれらの混合物を指す。
【0067】
ポリエチレンオキシドという用語は、以下を指し:
【化28】
式中、nは、分子量約300g/mol~約10000g/molを有するのに十分な大きさの整数である。
【0068】
ポリプロピレンオキシドという用語は、以下を指し:
【化29】
式中、nは、分子量約300g/mol~約10000g/molを有するのに十分な大きさの整数である。
【0069】
ポリブチレンオキシドという用語は、以下を指し:
【化30】
式中、nは、分子量約300g/mol~約10000g/molを有するのに十分な大きさの整数である。
【0070】
「ポリエステル」という用語は、本明細書中使用される場合、直鎖又は分岐鎖の、脂肪族又は芳香族の、重合体鎖であって、2つ以上のカルボキシル(-COO-)結合を有するものを指す。
【0071】
「ポリオール」という用語は、本明細書中使用される場合、直鎖又は分岐鎖の、脂肪族又は芳香族の、重合体鎖であって、2つ以上のアルコール基を有するものを指す。
【0072】
「ポリシロキサン」という用語、すなわちシリコーンは、本明細書中使用される場合、式(18)のケイ素酸素骨格からなる重合体を指し、
【化31】
式中、nは、分子量約300g/mol~約10000g/molを有するのに十分な大きさの整数である。
【0073】
「C1~6アルキル」という用語は、本明細書中使用される場合、単独でも組合せでも、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖であって、1個~6個の炭素原子を有するもの、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び1,2,2-トリメチルプロピル等を指す。
【0074】
「C1~6アルコキシ」という用語は、本明細書中使用される場合、単独でも組合せでも、直鎖又は分岐鎖の一価置換基であって、エーテル酸素を通じて結合するC1~6アルキル基を含み、このエーテル酸素に由来する自由原子価結合を有し、1個~6個の炭素原子を有するもの、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペントキシを指す。
【0075】
「ケトン」という用語は、本明細書中使用される場合、C=O基を指す。
【0076】
「ヘテロ原子」という用語は、本明細書中使用される場合、N、O、S、Si、及びS(O)n(式中、nは、0、1、又は2である)、SiOから選択される原子を指す。
【0077】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書中使用される場合、一価又は二価の三員~八員の炭素環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロオクチルを指す。
【0078】
「複素環」という用語は、本明細書中使用される場合、一価又は二価の非芳香族の単環又は二環ラジカルで環原子を4個~9個持ち、そのうち1個~3個の環原子は、独立して、N、O、及びS(O)n(式中、nは、0、1、又は2である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであるものを指す。特には、ピペリジル又は環状カーボネートである。
【0079】
「アリール」という用語は、本明細書中使用される場合、一価又は二価の芳香族炭素環式基であって、6個~14個、特には6個~10個の炭素原子を含み、少なくとも1つの芳香環又は複数の縮合した環を有し、複数の縮合した環のうち少なくとも1つの環は芳香族であるものを指す。例として、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、アズレニル、又はインダニルが挙げられる。
【0080】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中使用される場合、一価又は二価の環状芳香族基であって、1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含み、少なくとも1つの芳香環又は複数の縮合した環を有し、複数の縮合した環のうち少なくとも1つの環は芳香族であるものを指す。芳香環は、六員環、例えばピリジニル等、又は五員環、例えば、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、若しくはチアジアゾリル等が可能である。
【0081】
「アリル」という用語は、本明細書中使用される場合、CH=CH-CH-基を指す。
【0082】
1つの特定の実施の形態において、本発明は、式(7)に基づく1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器を提供し、
【化32】
式中、rは、1以上の整数であり(r≧1)、sは、1以上の整数である(s≧1)。好ましくは、rは、1~100、より好ましくは、1~10である。好ましくは、sは、1~500、より好ましくは、1~20、最も好ましくは、1~6である。
【0083】
式(7)に基づくポリヒドロキシウレタン(PHU)、別称ポリプロピレングリコール系PHUは、式(5)のポリプロピレングリコールビス(シクロカーボネート)(PPG biscc)
【化33】
(式中、mは、1以上の整数であり(m≧1)、好ましくは、mは、1~1000、より好ましくは1~20である)と、
式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)
【化34】
の間の熱重付加により得ることができる。
【0084】
本明細書中記載されるとおりのポリプロピレングリコール系PHUが有する利点は、式(17)の相当するポリウレタン(PU)又はポリプロピレングリコール系PUよりも高い血液適合性があり、これが、より少ない凝血及び血小板付着を誘導すること、並びに細菌感染のしやすさがより低いということである。式(17)の相当するポリウレタン(PU)又はポリプロピレングリコール系PUは、図1に示す反応により得られ、式中、m及びqは、1以上である(m≧1)及び(q≧1)。
【化35】
(PPG系PU)(17)
【0085】
好適な実施の形態において、本発明は、式(5)のポリプロピレングリコールビス(シクロカーボネート)(PPG bisCC)と、ジアミン、好ましくは式(4)の4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)との、及びトリアミン、好ましくは式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)との間の重付加により得られる1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む、医療機器を提供する。
【化36】
【0086】
トリアミンを添加するおかげで、得られるPHUは、より良好な機械的特性を持つ相互接続3Dネットワークになる。
【0087】
別の特定の実施の形態において、本発明は、式(8)のポリテトラヒドロフランビスシクロカーボネート(PTHF bisCC)
【化37】
(式中、pは、1以上の整数であり(≧1)、好ましくは、pは、1~100、最も好ましくは、pは、1~10である)と、
ジアミン、好ましくは、式(4)の4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン):
【化38】
との熱重付加により得られる1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む、医療機器を提供する。
【0088】
熱重付加により得られるポリテトラヒドロフラン系PHUが有する利点は、相当するポリウレタン(PTHF系PU)よりも高い血液適合性があり、これが、より少ない凝血及び血小板付着を誘導すること、並びに細菌感染のしやすさがより低いということである。
【0089】
別の好適な実施の形態において、本発明は、式(8)のポリテトラヒドロフランビスシクロカーボネートと、ジアミン、好ましくは式(4)の4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)との、及びトリアミン、好ましくは式(6)のトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)との熱重付加により得られる1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む、医療機器を提供する:
【化39】
【0090】
第二の態様において、本発明は、式(9)に基づき、UV重合により得られる1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む、医療機器を提供する。
【0091】
UV重合を用いる場合、得られる式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンは、ネットワーク構造体であり、
【化40】
式中、uは、1以上の整数であり(n≧1)、好ましくは、nは、1~100、より好ましくは1~20であり、
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、
は、好ましくは、アルキレンである。
【0092】
式(9)に基づくポリヒドロキシウレタン(PHU)は、UV重合により、2工程反応で得られる。
【0093】
第一工程は、式(2)のポリカーボネート
【化41】
(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物であり、
式中、xは、1~4の整数であり、好ましくは、1に等しく、yは、2以上の整数であり、好ましくは、2~6であり)を、
式(15)のポリアミン
【化42】
(式中、Rは、2個~40個の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素鎖であり、当該直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素鎖は、少なくとも光応答性基を有し、
式中、Rは、水素であり、Rは、水素、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖の1個~6個の炭素原子を有するC1~6アルキルであり、並びに、
式中、zは、≧1の整数であり、好ましくは1~6である)でアミノ分解して、光応答性基を有するポリカルバメートヒドロキシ誘導体を得ることであり、
好ましくは、1つ以上のオレフィンを有するアミン、例えば、アリルアミンを用いて、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖に、特には主鎖の末端に、光応答性基を有するポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体を得ることである。
【0094】
好適な実施の形態において、式(2)のポリカーボネートをアミノ分解する第一工程は、アリルアミンを用いて行われて、式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体が得られ、
【化43】
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖であり、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ以上の炭化水素基は、ヘテロ原子、ケトン、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールで置き換えることができ、これらはそれぞれ、置換されることも無置換でも可能であり、当該炭化水素鎖は、2個~60個の炭素原子を有し、
好ましくは、Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物である。
【0095】
式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体は、主たる直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖の末端にビニル光応答性基を有するが、主鎖中にもビニル光応答性基を有することができる。
【0096】
アミノ分解は、20℃~100℃、好ましくは40℃~60℃、最も好ましくは40℃の温度で行うことができる。
【0097】
アミノ分解は、本明細書中以下で例示するとおりのDBU、DMAP、DABCO、TBD、MTBD、及びDBNを触媒として用いることができる:
【化44】
【0098】
アミノ分解は、好ましくは、DBU触媒、すなわち2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1,2-a]アゼピン(DBU)を用いて行われる。
【0099】
第二工程において、得られる式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体は、次いで、架橋剤としての式(16)のチオール、好ましくは式(11)のチオール及び光重合開始剤の存在下で、UV重合され、
-(SH) (16)
【化45】
式中、kは、≧2の整数であり、好ましくは、2~6であり、
式中、Rは、アリール若しくはヘテロアリールであって、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であるか、又は直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって、これは、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖の1つ又はいくつかの炭化水素基は、ヘテロ原子、シクロアルキル、又は複素環で置き換えることができ、これらはそれぞれ、無置換でも置換されることも可能であり、当該炭化水素鎖は、少なくとも2個の炭素原子、特別には2個~60個の炭素原子、より特別には2個~20個の炭素原子、更により特別には2個~15個の炭素原子を有し、又はそれらの混合物であり、
は、好ましくは、アルキレンである。
【0100】
チオールという用語は、本明細書中使用される場合、ビチオール、トリチオール、テトラチオール、又はヘキサチオール、好ましくは、ペンタエリスリチルテトラチオール、チオールトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、及び/又はトリメチロールプロパンチオグリコレート、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレートを指す。この用語は、各鎖末端にチオール基を有する、テレケリックポリマー、分岐ポリマー、若しくは多腕ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールジチオール又はポリプロピレングリコールジチオール)、又はポリマー骨格に沿って、ペンダント基としてチオール基を有するポリマー、又は少なくとも2つのチオールを有するペプチド若しくはタンパク質も指す。
【0101】
好適なジチオール及びトリチオールは、例えば、式(12)の2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール及び式(13)の2,2-ビス(3-スルファニルプロパノイルオキシメチル)ブチル-スルファニルプロパノエートである。
【化46】
【0102】
「光重合開始剤」という用語は、本明細書中使用される場合、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、別称Irgacure 819;ビス-(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム、別称Ivocerin;2,3-ボルナンジオン、別称カンファーキノン;リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、別称LAP、リボフラビン-5-ホスフェートを指す。好ましくは、光重合開始剤は、Irgacure 819である。
【0103】
光重合開始剤は、0%~0.1%、好ましくは0.1%未満の低濃度で使用することができる。
【0104】
いくつかの実施の形態に従って、UV重合は、300nm~400nm、好ましくは365nmの波長で起こる。任意に、UV重合を、更に加熱と組み合わせて、架橋を増大させ、痕跡量の溶媒を蒸発させることができる。そのような追加の加熱は、40℃~100℃、好ましくは70℃で行うことができる。
【0105】
得られる式(9)のポリヒドロキシウレタンは、ヒドロキシル基と、局所医薬治療用の生理活性分子を搭載及び放出するのに有利に使用することができる他の基とを含む。
【0106】
1つの特定の実施の形態において、第一工程は、式(5)のポリプロピレンオキシドビシクロカーボネート、別称PPGbisCCのアミノ分解であり、
【化47】
式中、mは、1以上の整数であり、好ましくは、mは、1~1000、より好ましくは1~20である。
【0107】
いくつかの実施の形態において、式(5)のビシクロカーボネートを、最初に、アリルアミンと反応させて、式(14)のポリアリルカルバメートヒドロキシプロピレンオキシド、別称PPG-アリルを得て、
【化48】
式中、tは、1以上の整数であり、好ましくは、tは、1~1000、より好ましくは1~20である。
【0108】
第二工程において、式(14)のポリアリルカルバメートヒドロキシプロピレンオキシドを、次いで、光重合開始剤、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドの存在下、好ましくは300nm~400nm、最も好ましくは365nmのUV照射下で、式(13)のジチオールと架橋させる。
【化49】
【0109】
特定の態様において、医療機器は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)、特には式(1)に基づくPHU又は式(9)に基づくPHUでできている又は部分的にできている。ポリヒドロキシウレタン(PHU)でできている又は部分的にできている医療機器は、任意に、高表面積粒子又は繊維で補強して、機械的特性を改善することができ、そのような機械的特性とは、例えば、引張強度、破断伸び、弾性率、及び剪断弾性率である。
【0110】
式(1)に基づくポリヒドロキシウレタン(PHU)の構造体は、任意に、高表面積粒子又は繊維の添加により補強することができ、そのような高表面積粒子又は繊維とは、例えば、シリカ、機能性シリカ、ポリプロピレンテレフタレートメッシュ、若しくはポリエチレンメッシュ、又はそれらの混合物である。高表面積粒子又は繊維の添加は、熱重合前に、式(2)のポリカーボネートと式(3)のポリアミンの混合物でなされる。
【0111】
式(9)に基づくポリヒドロキシウレタン(PHU)の構造体は、任意に、高表面積粒子又は繊維の添加により補強することができ、そのような高表面積粒子又は繊維とは、例えば、シリカ、機能性シリカ、ポリプロピレンテレフタレートメッシュ、若しくはポリエチレンメッシュ、又はそれらの混合物である。高表面積粒子又は繊維の添加は、UV重合前に、式(10)のポリアリルカルバメートヒドロキシ誘導体と式(11)のチオールの混合物でなされる。
【0112】
1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でできている又は部分的にできており、任意に、高表面積粒子を有する医療機器は、鋳造、射出成形、押出し、共押出し、噴射、3Dプリンティング、コーティング、又は追加の製造工程に供して本発明による医療機器を生成することにより得ることができる。
【0113】
1種以上のPHUで部分的に又は全部できている医療機器は、有利なことに、ポリウレタン(PU)を含む相当する医療機器よりも高い血液適合性があり、これが、より少ない凝血及び血小板付着を誘導し、並びに細菌感染のしやすさがより低い。
【0114】
1種以上のPHUで部分的に又は全部できている医療機器は、有利なことに、生理活性分子を搭載及び放出することができ、それにより局所医薬治療をもたらすことができる。
【0115】
本発明の別の特定の態様において、医療機器は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)、特に式(1)に基づくPHU又は式(9)に基づくPHUを含み、このPHUは、医療機器の表面、例えば、カテーテル又は人工心臓弁の表面を、少なくとも部分的に又は全体的にコーティングしている。
【0116】
医療機器の表面を少なくとも部分的に又は全体的にコーティングするために使用されるポリヒドロキシウレタン(PHU)は、さまざまな物理的又は化学的方法を用いて、医療機器の表面に係留させる又は付着させることができ、そのような方法として、例えば、表面照射、交互積層(LbL)法、スピンコーティング、プラズマ堆積法等がある。
【0117】
1種以上のPHUで部分的に又は全体的にコーティングされた医療機器は、有利なことに、ポリウレタン(PU)でコーティングされた相当する医療機器よりも高い血液適合性があり、これが、より少ない凝血及び血小板付着を誘導し、並びに細菌感染のしやすさがより低い。
【0118】
少なくとも部分的に又は全体的にPHUコーティングされた医療機器は、有利なことに、生理活性分子を搭載及び放出することができ、又はこの医療機器に生理活性分子をグラフト結合させることができ、それにより局所医薬治療をもたらすことができる。
【0119】
特定の実施の形態において、医療機器は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でできたシャフトを有するカテーテルであるか、又は1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でコーティングされたカテーテルである。シャフトは、シングルルーメンシャフト、マルチルーメンシャフト、例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれより多いルーメンを持つシャフトが可能である。シャフトは、当該技術分野で既知である方法に従って、単層又は多層共押出しプロセスの間、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)の押出しにより調製される。
【0120】
別の特定の実施の形態において、医療機器は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でできている又は部分的にできている人工弁である。PHUは、図2に再現されるとおりの対称三葉設計を有する自然弁を模倣するように設計された金型中で直接合成することができる。
【0121】
自然弁の性質に合わせる目的で、ポリヒドロキシウレタン(PHU)は、十分に強い機械的特性、例えば、2MPa~3MPa前後のヤング率、1.5MPa超の引張強度、及び35%超の弾性変形を有していなければならない。
【0122】
そのような特性は、ポリヒドロキシウレタン(PHU)で満たされるが、シリカ等の補強粒子が組み込まれた後に架橋の節が形成され、そこにポリヒドロキシウレタンが自身のOH基で付加することにより、又は補強ポリエステルメッシュが組み込まれた後に引張強度が改善されることで、改善することができる。補強メッシュの例としては、ポリエチレン又はポリプロピレンテレフタレートメッシュがある。
【0123】
人工心臓弁は、数値流体力学を満たすように弁設計用に最適化されたコンピュータープログラムを用いて、3Dプリンティングにより作ることができる。
【0124】
実際、人工材料の選択だけが重要なのではなく、設計も、可能な限り層状であり乱流を減少させる流れをもたらすものでなければならず、また微小血栓を最小限にするため弁要素の十分な拡張期洗浄(diastolic washing)を組み込まなければならないことが、経験を通じて習得されてきている。
【0125】
1種以上のPHUでできている又はコーティングされている新規医療機器は、有利なことに、生理活性分子を含むことができ、この生理活性分子は、更に、時間とともに漸進的に放出され、それにより、医薬治療、例えば、抗感染性効果又は抗血栓性効果の改善をもたらす。特定の実施の形態において、PHUは、1種以上の生理活性分子で含浸されている。したがって、特定の実施の形態において、医療機器は、生理活性分子を含浸させた1種以上のPHUを含む。他の特定の実施の形態において、医療機器は、生理活性分子をグラフト結合させた1種以上のPHUを含む。そのうえさらに、生理活性分子を含浸させた1種以上のPHUを含む新規医療機器は、有利なことに、局所送達をもたらして、オフサイト毒性を最小限に抑え、耐性に対する感受性を低下させつつ、迅速な治療活性を提供する。
【0126】
実際、本発明によるポリヒドロキシウレタン(PHU)は、生理活性分子を含有する溶媒中に浸漬することにより、生理活性分子を搭載することができる。
【0127】
本発明によるポリヒドロキシウレタン(PHU)は、溶媒と接触した際に膨潤し、これにより生理活性分子を搭載することが可能になる。浸漬溶媒は、アルコール、水、THF、CHCl、若しくはそれらの混合物、又は生理活性分子を溶解させ、PHUを膨潤させることができる任意の他の混合溶媒が可能である。生理活性分子の搭載は、PHUのOH基によるH結合を通じて起こる。
【0128】
溶媒の除去後、本発明のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、ヒトの体内に実装した際、時間とともに生理活性分子を放出することができる。
【0129】
あるいは、本発明のポリヒドロキシウレタン(PHU)は、当該技術分野で既知である方法により、生理活性分子とグラフト結合させることができる。
【0130】
「生理活性分子」という用語は、本明細書中使用される場合、例えば、抗細菌剤、バイオフィルム形成抑制剤(anti-biofilm formation agent)、抗血小板剤、抗凝血剤、抗血栓剤、及び抗石灰化剤を指す。生理活性分子は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)でできた医療機器のバルク内に、又は1種以上のポリヒドロキシウレタンでコーティングされた医療機器の表面に組み込むことができる。
【0131】
生理活性分子は、治療効果を目的とするものを含めて、細胞機能を調節する、又はいずれにしろ修飾するため、細胞、組織、又は臓器に送達されることが望まれる任意の作用剤を含むことができる。生理活性分子として、医薬活性化合物又は診断用化合物が挙げられるが、これらに限定されない。生理活性分子として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヌクレオチド(アプタマー、RNAi、アンチセンスオリゴヌクレオチド)、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アポタンパク質、糖タンパク質、抗原及び抗体又はそれらの抗体断片、受容体及び他の膜タンパク質、レトロインベルソ(retro-inverso)オリゴペプチド、少なくとも1つの非ペプチド結合によりペプチド結合が置き換えられているタンパク質類似体、酵素、補酵素、酵素阻害剤、アミノ酸及びそれらの誘導体、ホルモン、脂質、リン脂質、リポソーム、リシン又はリシン断片;毒素、例えば、アフラトキシン、ジゴキシン、キサントトキシン、ルブラトキシン等;鎮痛薬、例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びアセトアミノフェン等;気管支拡張薬、例えば、テオフィリン及びアルブテロール等;ベータ遮断薬、例えば、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール、ラベタロール、チモロール、ペンブトロール、及びピンドロール等;抗菌剤、例えば、上記に記載したもの、並びにシプロフロキサシン、シノキサシン、及びノルフロキサシン等;降圧剤、例えば、クロニジン、メチルドパ、プラゾシン、ベラパミル、ニフェジピン、カプトプリル、及びエナラプリル等;心血管作用薬、これには、抗不整脈薬、強心配糖体、抗狭心症薬、及び血管拡張剤が含まれる;中枢神経系作用薬、これには、覚醒剤、向精神薬、抗躁薬、及び抑制剤が含まれる;抗ウイルス剤;抗ヒスタミン薬、例えば、クロルフェニラミン及びブロムフェニラミン等;化学療法薬を含む癌治療薬、例えば、クロラムブシル、カルボプラチン、ブスルファン誘導体、ドキソルビシン、エトポシド、トポテカン(TPT)等;精神安定剤、例えば、ジアゼパム、クロル(chor)ジアゼポキシド、オキサゼパム、アルプラゾラム、及びトリアゾラム等;抗鬱薬、例えば、フルオキセチン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、及びイミプラミン等;H-2アンタゴニスト、例えば、ニザチジン、シメチジン、ファモチジン、及びラニチジン等;抗痙攣薬;鎮吐薬;プロスタグランジン;筋弛緩薬;抗炎症物質;刺激薬;鬱血除去薬;制吐薬;利尿薬;鎮痙薬;抗喘息薬;抗パーキンソン病薬;去痰薬;鎮咳薬;粘液溶解薬;ビタミン;並びにミネラル及び栄養添加剤。他の分子として、以下が挙げられる:ヌクレオチド;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;並びにそれらの当該技術分野で認められた生物学的に機能性の類似体及び誘導体、これには、例えば、メチル化ポリヌクレオチド及びホスホロチオエート結合を有するヌクレオチド類似体が含まれる;プラスミド、コスミド、人工染色体、他の核酸ベクター;アンチセンスポリヌクレオチド、これには、少なくとも1つの内在性核酸に対し実質的に相補的なもの、又は選択されたウイルス若しくはレトロウイルスゲノムの少なくとも一部分に対して対立するセンスを持つ配列を有するものが含まれる;プロモーター;エンハンサー;阻害剤;遺伝子の転写及び翻訳を調節する他のリガンド。
【0132】
生理活性分子は、抗感染薬であることが可能である。抗感染薬として、抗生物質、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、リファキシミン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリン、フォサミル、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、オリタバンシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、アズトレオナム、フラゾリドン、ニトロフラントイン、リネゾリド、アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルアミド、スルフイソキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、スルファミドクリソイジン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロファジミン、ダプソン、リファンピシン、リファブチン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、メトロニダゾール、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾール、トリメトプリムが挙げられるが、これらに限定されず、抗細菌性活性を有し、抗細菌剤とも称する、国際公開第2019/158655号に定義されるとおりのピリミジン誘導体又は欧州特許第3292867号に定義されるとおりのトリアゾロ(4,5-d)ピリミジン誘導体も挙げられる。
【0133】
バイオフィルム形成抑制剤として、天然に生じるペプチド、例えば、ヒトカテリシジンLL-37若しくはウシペプチドインドリシジン等、又は合成ペプチド、例えば、1018等、2-アミノイミダゾール部分を持つ天然化合物、2-アミノイミダゾール系阻害剤、ベンズイミダゾール類似体、インドール-トリアゾ-アミド類似体、植物由来バイオフィルム阻害剤、例えば、エモジン、フロレチン、カスバンジテルペン(casbane diterpene)、レスベラトロール及びそのオリゴマー、硫黄誘導体、臭素付加フラノン類似体、ブロモピロールアルカロイド、スキラマイシン(skyllamycin)及び(-)-アゲロキシム(ageloxime)D構造体、センブラノイド、N-アシルホモセリンラクトン類似体、カプロラクトン、アミロイド様繊維の形成に干渉する分子、脂肪酸、一酸化窒素ドナー、イオン性液体、例えば、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-アルキルキノリニウムブロミド等が挙げられるが、これらに限定されず、これらの作用剤は全て、従来の抗生物質と、又は抗細菌性活性を有し、抗細菌剤とも称する、国際公開第2019/158655号に定義されるとおりのピリミジン誘導体、若しくは欧州特許第3292867号に定義されるとおりのトリアゾロ(4,5-d)ピリミジン誘導体と組み合わせて使用することができる。
【0134】
抗血小板剤として、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、アスピリン及びトリフルサル(Disgren)等、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤、例えば、クロピドグレル(Plavix)、プラスグレル(Effient)、チカグレロル(Brilinta)、チクロピジン(Ticlid)等、ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、シロスタゾール(Pletal)等、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)アンタゴニスト、例えば、ボラパクサール(Zontivity)等、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(静脈内使用のみ)、例えば、アブシキシマブ(ReoPro)、エプチフィバチド(Integrilin)、チロフィバン(Aggrastat)等、アデノシン再取込み阻害剤、例えば、ジピリダモール(Persantine)等、トロンボキサン阻害剤、トロンボキサンシンターゼ阻害剤、及びトロンボキサン受容体アンタゴニスト、例えば、テルトロバン等、糖タンパク質VI阻害剤、例えば、レバセプト(Revacept)等、糖タンパク質Ib阻害剤、及びフォンビルブランド因子阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
抗凝血剤として、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクーモン、ワルファリン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ベミパリン、セルトパリン、アルデパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、ダビガトラン、アピキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、エドキサバン、オタミキサバン、リバーロキサバン、アルテプラーゼ、ダナパロイド、チンザパリン、及びフォンダパリヌクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
血栓溶解剤として、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、サルプラーゼ、ウロキナーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、アンクロッド、ブリナーゼ、及びフィブリノリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
抗血栓剤は、抗凝血剤及び抗血小板剤を含む。
【0138】
抗石灰化剤として、ビスホスホネート製剤、アルミニウム塩、グルタルアルデヒド、アミノオレイン酸、及びメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
本発明の別の目的は、1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器を製造する方法を提供することであり、本方法は、熱重合若しくはUV重合にそれぞれ対応する工程(a)若しくは工程(b)又はその組合せを含む:
a)式(2)のポリシクロカーボネートと式(3)のポリアミンと、任意に触媒とを混合し、熱重合により式(1)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化50】
(式中、n、R、Rは、上記で定義したとおりである)、又は、
b)2つ以上の光応答性基を末端に若しくはペンダント基として主たる炭化水素鎖に有するポリカルバメートヒドロキシル誘導体と、架橋剤としてのジチオールと、光重合開始剤とを混合し、UV重合により式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンを得る工程
【化51】
(式中、u及びRは、上記で定義したとおりである)。
【0140】
1種以上のポリヒドロキシウレタン(PHU)を含む医療機器を製造する方法は、任意に、更に、混合工程(a)又は混合工程(b)において補強粒子又は繊維の添加を含むことができる。
【0141】
次いで、工程(a)又は工程(b)で得られる混合物を、更に、鋳造、押出し、共押出し、又は3Dプリンティングのいずれかにより処理して、それぞれ熱重合又はUV重合により、それぞれ式(1)又は式(9)に基づくポリヒドロキシウレタンを含む医療機器を得ることができる。
【0142】
「光応答性基」という用語は、本明細書中使用される場合、1つ以上のビニル基又はアリル基を指す。
【0143】
ここで、本発明を、以下の図面を参照して解説する。図面は、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】ポリプロピレングリコール系ポリウレタンの合成を示す図である。
図2】実施例22によるポリヒドロキシウレタンの鋳造により作られた三葉弁を示す図である。
図3a】実施例1のポリ(エチレングリコール)ビシクロカーボネート(PEGbisCC)の合成を示す図である。
図3b】実施例2によるPPGbisCC728又はPHU1の熱重合を示す図である。
図4】実施例5によるポリヒドロキシウレタンのUV合成を示す図である。
図5H NMRスペクトル及びFTIR-ATRスペクトルによるPHU特性決定を示す図である。
図5a】PPGDE及びPPG bisCCのH NMRスペクトルを示す図である。
図5b】PPGDE及びbisCC PPGのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図5c】bisCC PPG及PHUのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図5d】PTHFDE及びPTHF bisCCのH NMRスペクトルを示す図である。
図5e】PTHF及びPTHFDEのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図5f】PTHFDE及びPTHF bisCCのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図5g】PTHF bisCC及びPHUのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図5h】PPG bisCC及びPPG-アリルのH NMRスペクトルを示す図である。
図5i】PPG-アリル及びPHU A6bのFTIR-ATRスペクトルを示す図である。
図6】PTHF PHU、PPG PHUと、PTHF-PU及びPPG-PUとの経時的ミノサイクリン放出の比較を示す図である。
図7】PU、PPG-PHUの溶血%の比較を示す図である:PPG-PHU及びPTFH-PHUは、溶血を引き起こさない。医療グレードのPUを、基準の対照として使用した。2%未満の溶血率は、非溶血性と見なす(破線)。
図8】補体活性化試験におけるPU、PPG-PHUの比較を示す図である:PPG-PHUは、ヒト全血において補体カスケードを活性化しない。医療グレードのPUを、基準の対照として使用し、ザイモサンを陽性対照として使用した。
図9】接触相での凝固活性化試験におけるPU、PPG-PHU、及びPTHF-PHUの比較を示す図である:PPG-PHU及びPTHF-PHUは、医療グレードのPUに比べて誘導する接触相での凝固活性化が少ない。カオリンを陽性対照として使用した。
図10】ヒト血小板付着(UV吸収試験)におけるPU、PPG-PHUの比較を示す図である:ヒト血小板は、PPG-PHUに付着しない。医療グレードのPUを、基準の対照として使用し、フィブリノーゲンコーティングポリスチレンを陽性対照として使用した。
図11】ヒト血漿タンパク質吸着におけるPU、PPG-PHUの比較を示す図である:PPG-PHUへの血漿タンパク質の吸着は、医療グレードのPUよりも少ない。
図12】動的レオロジーを示す図である:UV硬化させたPHU1(bis CC PPG468)及びPHU2(bisCC PPG728)の貯蔵弾性率及び損失弾性率。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0145】
実施例1:ポリ(エチレングリコール)ビシクロカーボネート(PEGbisCC)、588g/モルの合成
機械撹拌器を備えた80ml高圧セル(Autoclave、Top Industrie)中、触媒としてテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI、0.03mol、0.05当量)(Sigma Aldrich)を組み合わせた二成分有機触媒を用いて、COとPEGジグリシジルエーテル500g/mol(0.06mol、30g、1当量)(Sigma Aldrich)をカップリングさせることにより、ポリ(エチレングリコール)ビスシクロカーボネートを合成した。図3に示すカップリング反応を、5モル%の触媒([TBAI])を用いて、80℃及び100barで行った。これらの条件により、24時間で、末端エポキシ環が対応する環状カーボネートへと完全に変換されることを確実にした。
【0146】
反応器の除圧後、液液抽出により、ポリ(エチレングリコール)ビスシクロカーボネートを収集してTBAIを除去した。最初に、ポリ(エチレングリコール)ビスシクロカーボネートを、クロロホルム400mlに溶解させ、Milli-Q水400mlで4回洗い、最後に硫酸アンモニウム(10g/l)を加えたMilli-Q水400mlで洗った。有機画分を収集し、ロータリーエバポレートした(rotavaped)。
【0147】
同じ手順を使用して、PPGジグリシジルエーテル380g/mol(0.079モル)(Sigma Aldrich)及びテトラブチルアンモニウムヨージド(Sigma Aldrich)0.004モルを用いて、ポリ(プロピレングリコール)ビスシクロカーボネートを調製することができる。
【0148】
実施例2:ポリプロピレングリコールビスシクロカーボネートPPG bisCC(728及び468)からのポリヒドロキシウレタン(PHU728及びPHU468)の熱合成。ANPIA1bL6及びANPIA1bL7
ANPIA1bL6:PPG bisCC 728g/mol(1.92mmol、1.40g、1当量、PPGDE 640g/molから調製(実施例1を参照))、4-((4-アミノシクロヘキシル)メチル)シクロヘキサンアミン(MBCHA、0.38mmol、0.08g、0.2当量)(Sigma Aldrich)、及びトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA、1.02mmol、0.15g、0.53当量)(Sigma Aldrich)を、バイアルに入れて、40℃で10分間、磁気撹拌した。得られる混合物を、平らなTeflon鋳型(5×2.5×0.1cm)に注ぎ入れ、オーブン中70℃で24時間放置した。
【0149】
ANPIA1bL7:PPG bisCC 468g/mol(PPGDE 380g/molから調製)を用い、他の試薬の量を調節して同じモル比(PPGDE/MBCHA/TAEA:1/0.2/0.53)に維持することにより、同じ手順を使用した。
【0150】
実施例3:ポリプロピレングリコール系ポリウレタンPU(L25C)の熱合成。
乾燥N2パージを備えた丸底フラスコに、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(1.08g、4.12mmol)(Sigma Aldrich)、トリエタノールアミン(0.16g、1.07mmol)、及びポリプロピレングリコール(1g、2.5mmol)(Sigma Aldrich)を投入し、撹拌して均一溶液を形成させた。10分後、ジラウリン酸ジブチルスズ(5mg)を加え、丸底フラスコを真空下30℃で油浴に入れた。反応を5分間進行させ、得られる溶融物を、Kapton油紙上に注ぎ、1mmスペーサーを備えた2枚のアルミニウム板の間で80℃及び5psiで3時間プレスした。鋳型を外した後、試料を、100℃で24時間、後硬化させた。
【0151】
実施例4:ポリプロピレングリコール系ポリウレタンPU(L25D)、別称PPG系PUの熱合成。
実施例3のL25Cの合成と同じ手順に従ったが、ただし、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)/PPG間の比は異なるもの(1/0.8)を用い、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(0.82g、3.13mmol)(Sigma Aldrich)、トリエタノールアミン(0.062g、0.41mmol)(Sigma Aldrich)、及びポリプロピレングリコール(1g、2.5mmol)(Sigma Aldrich)を混合して、PPG系PU(L25D)を調製した。
【0152】
実施例5:PHUのUV合成。
PHUネットワークを得る第二の経路は、UV架橋である。この実施例では、図4に示す化学反応スキームに従って、2工程でUV-PHUを合成した。
【0153】
第一工程は、PPG bisCC鎖の末端にアリル官能基をグラフト結合させることである。定量的官能基導入を得る目的から、したがって、アリルアミンは過剰に添加され、2,3,4,7,8,9-オクタヒドロピリミド(1,2-a)アゼピン(DBU)を用いて反応を触媒させた。第一工程については、実施例16でも、より詳細に記載する。PPG bisCCからPPG-アリルへの変換は、H NMR分光測定によりチェックした(図5h)。PPG bisCC 468のシクロカーボネートに帰属される4.8ppm及び4.5ppmのピークの消失が視認され、同様にPPG-アリルに相当するピーク(5.9ppm~5.8ppm及び5.2ppm~5.1ppm)の出現が視認される。
【0154】
第二工程では、第一工程で得られたPPG-アリルが、UV照射(365nm)下、架橋剤としての2,2-ビス(3-スルファニルプロパノイルオキシメチル)ブチル3-スルファニルプロパノエートのチオール基及び光重合開始剤としてのIrgacure 819(BASF)と、反応する。したがって、この工程は、PHUネットワークをもたらした。第二工程については、実施例17でも、より詳細に記載する。
【0155】
各PHU溶液を調製し、平らなTeflon鋳型に注ぎ入れ、UVランプ下に15分間置いてから、オーブン中70℃で一晩静置した。鋳型を外した後、生成物を、FTIP-ATR分光測定により、図5iに示すとおり、-OH基及び-NH基(3200cm-1~3500cm-1)、並びにウレタン基のCO(1711cm-1)、NH(1535cm-1)、N-CO-O及びC-O-C(1256cm-1)で特性決定した。
【0156】
実施例6:機械的特性-ポリプロピレングリコール系PUとポリプロピレングリコール系PHUの比較
機械的特性を、ASTMD638に従って、乾燥条件下、室温で測定した。試験装置(Instron 5566、USA)で、速度10mm/分、圧2.7bar、及び静的試験用ロードセル10N号を用いて、HPUフィルムの引張強度及び伸びを測定し、PUフィルムと比較した。試験には、幅1cm及び長さ3cmの試料を2つのクランプ間に置き、フィルムが破断するまで伸ばすことが含まれる。
【0157】
結果を表1に示す。他の機械的試験、例えば、膨潤及び接触角についても行った。
【0158】
乾燥ネットワークの膨潤比は、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.2)に24時間浸漬した後に測定した。この溶液は、そのpH(=7.2)が生理的pHに近いことを理由に選択した。膨潤比は、以下の式を用いて特定した:膨潤=(Ws,w-W)/W×100%
式中、Ws,wは、PBSで膨潤した試料の重量であり、Wは、乾燥した試料の重量である。
【0159】
接触角は、接触角メーターDGD Fast/60及びソフトウェアWINDROP(GBX Instruments)を表面エネルギーモードで使用して測定した。各測定について、Milli-Q水15μlの液滴を、材料の表面に載せた。次いで、180秒後に接触角を特定した。測定は、異なる3箇所で3回繰り返した。
【0160】
結果を、表1にも記載する。
【0161】
【表1】
【0162】
実施例7:架橋したネットワークとしてのポリヒドロキシウレタンの合成
第一工程:ビス(シクロカーボネート)ポリ(プロピレングリコール)(PPG bisCC)728g/molの合成:
80ml高圧オートクレーブ(Top Industrie)に、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPGDE)640g/mol(0.047mol、30g、1当量)(Sigma Aldrich)、及びテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI、0.047mol、1.73g、0.05当量)(Sigma Aldrich)を入れた。次いで、ステンレス鋼反応器を、100barのCO(Air Liquide)で満たし、24時間、80℃まで加熱した。反応器の除圧後、液液抽出により、得られる生成物を収集してTBAIを除去した。最初に、PPG bisCCを、クロロホルム400mlに溶解させ、Milli-Q水400mlで4回洗い、最後に硫酸アンモニウム(10g/l)(Sigma Aldrich)を加えたMilli-Q水400mlで洗った。有機画分を収集し、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した。同じ手順を、PPGDE 380g/mol(0.079mol)(Sigma Aldrich)及びテトラブチルアンモニウムヨージド(Sigma Aldrich)0.079モルで用いた。
【0163】
図5aは、PPGDE 640g/mol及び触媒精製後のPPG bisCCのH NMRスペクトルを示す。PPGDEからPPG bisCCへの変換は、2.6ppm~3.2ppmの範囲のエポキシ基に相当するピークがPGG bisCCスペクトルでは完全に消失し、一方でPPG bisCCのシクロカーボネートに帰属されるピークが4.5ppm及び4.8ppmに出現することから明白に示される。変換の更なる証拠として、PPGDE及びPPG bisCCのFTR-ATRスペクトルも、図5bに示す。PPGDEのエポキシ基に帰属される1250cm-1及び907cm-1のピークの総合的な消失が視認される。シクロカーボネートのC=Oに帰属されるピークも、1797cm-1及び1162cm-1に視認される。
【0164】
第二工程:架橋したポリ(ヒドロキシウレタン)ネットワークの合成:
ビス(シクロカーボネート)ポリ(プロピレングリコール)(PPG bisCC)728g/mol(1.92mmol、1.40g、1当量、PPGDE 640g/molから調製)、4-((4-アミノシクロヘキシル)メチル)シクロヘキサンアミン(MBCHA、0.38mmol、0.08g、0.2当量)、及びN’,N’-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(TAEA、1.02mmol、0.15g、0.53当量)を、バイアルに入れて、40℃で10分間、磁気撹拌した。次いで、この溶液を、平らなTeflon鋳型(5×2.5×0.1cm)に注ぎ入れ、オーブン中70℃で24時間放置してから、FTIR-ATRスペクトルにより特性決定した。
【0165】
シクロカーボネートからPHUへの変換は、IR分光測定によりチェック及び確認した。図5cは、bisCC PPG及びPHUのFTIR-ATRスペクトルを示し、スペクトル中、PTHF bisCCのシクロカーボネート官能基に相当する1797cm-1及び1166cm-1のピークは、完全に消失してしまい、-OH基及び-NH基(3340cm-1)並びにウレタン基のCO(1698cm-1)、NH(1552cm-1)、N-CO-O、及びC-O-C(1342cm-1)に相当する新規ピークが視認される。
【0166】
残存する未反応シクロカーボネートに帰属されるピークも、1797cm-1に視認される。
【0167】
PPG bisCC 468g/mol(PPGDE 380g/molから調製)を用い、他の試薬の量を調節して同じモル比に維持する(2.99mmol、1.40g、及び1当量のBisCC PPG、0.60mmol、0.13g、及び0.2当量のMBCHA、並びに1.58mmol、0.23g、及び0.53当量のTAEA)ことにより、同じ手順を使用した。使用したアミンは、場合により変化したが、同じモル比で使用した。
【0168】
実施例8:ポリテトラヒドロフラン系PHUの熱合成
第一工程:ジエポキシポリテトラヒドロフラン(DEPTHF)分子量760g/molの合成。
【化52】
ポリテトラヒドロフラン(PTHF)(20g、650g/mol、30mmol)(Sigma-Aldrich)を無水トルエン(Sigma-Aldrich)250mLに溶解させ、溶媒をトルエンとする共沸蒸留を3回行って乾燥させた。次いで、30℃で2時間、水素化ナトリウム(4g)と反応させることにより、PTHFのO-ヒドロキシ末端基をナトリウムアルコキシドに変換した。溶液に、エピクロロヒドリン(ECH)(19mL、92.5g/mol)8当量を加え、40℃で12時間反応させた。次いで、過剰なECHを真空下で蒸発させることにより、DEPTHFを回収し、ジクロロメタン(200mL)(Aldrich)に再溶解させた。CHCl溶液を、水で2回抽出し、続いて無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ジクロロメタンを除去した。
【0169】
図5dは、PTHF及びPTHF bisCCのH NMRスペクトルを示し、PTHFからDEPTHFへの変換は、エポキシ基に相当する2.6ppm~3.2ppmの範囲のピークの出現により裏付けられた。40℃で12時間の反応後、ほぼ定量的収率(91%~97%)が観察された。
【0170】
図5eは、PTHF及びPTHFDEのFTIR-ATRスペクトルを示し、PTHFの官能基導入は、エポキシ基に相当する1250cm-1及び910cm-1の新規ピークの出現により、並びにPTHFの-OH基に帰属される3400cm-1のピークの消失により確認された。
【0171】
工程2:ポリテトラヒドロフランビス(シクロカーボネート)(PTHF bisCC)850g/molの合成:
80ml高圧オートクレーブに、DEPTHF 760g/mol(25g、1当量)及びテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI、0.6g、0.05当量)を入れた。次いで、ステンレス鋼反応器を、100barのCO(Air Liquide)で満たし、24時間、80℃まで加熱した。反応器の除圧後、液液抽出により、得られる生成物を収集し、及びそこからTBAIを除去した。したがって、最初に、PTHF bisCCを、クロロホルム400mlに溶解させ、Milli-Q水400mlで4回洗い、最後に硫酸アンモニウム(10g/l)(Sigma Aldrich)を加えたMilli-Q水400mlで洗った。有機画分を収集し、ロータリーエバポレートした。
【0172】
図5dは、PTHF及びPTHF bisCCのNMR分析を示し、エポキシ基に相当する2.6ppm~3.2ppmの範囲のピークが完全に消失してしまい、一方でPTHF bisCCのシクロカーボネートに帰属されるピークが4.5ppm及び4.8ppmに出現することから、PTHFDEからPTHF bisCCへの全変換が、明白に確認される。
【0173】
図5fは、PTHFDE及びPTHF bisCCのFTR-ATRスペクトルを示し、PTHF bisCCのシクロカーボネート基に帰属されるピークの出現が、1797cm-1及び1166cm-1に記録される。
【0174】
第三工程:直鎖ポリ(ヒドロキシウレタン)の合成:
PTHF bisCC 850g/mol(1当量)及び1,12-ジアミノドデカン(1当量)(Sigma Aldrich)を、バイアルに入れて、120℃で10分間、磁気撹拌した。次いで、得られる溶液を、平らなTeflon鋳型(5×2.5×0.1cm)に注ぎ入れ、オーブン中40℃で24時間放置してから、示差走査熱量測定(DSC)により特性決定した。
【0175】
インジウムで較正したTA Instruments DSC Q100熱分析装置を用い、示差走査熱量測定により、ガラス転移温度(Tg)及び融解温度(Tm)を特定した。曲線は、TA Instruments Universal Analysis 2000ソフトウェアを用いて分析した。試料を挿入した後の手順は、以下のとおりであった:-80℃で平衡化及び等温工程を2分、10℃/分のランプで100℃まで加熱し(第一加熱サイクル)、続いて等温工程を2分、10℃/分のランプで-80℃まで冷却し(第一冷却サイクル)、続いて等温工程を2分、10℃/分のランプで150℃まで加熱し(第二加熱サイクル)、続いて等温工程を2分、10℃/分のランプで-80℃まで冷却し(第二冷却サイクル)、続いて等温工程を2分、10℃/分のランプで150℃まで加熱し(第三加熱サイクル)、続いて等温工程を2分。
【0176】
DSC分析は、Tgが-61℃前後であり、Tmが約8℃~約14℃の範囲であることを示す。これらは、半結晶ポリマーの特徴である。
【0177】
第三工程:架橋したポリ(ヒドロキシウレタン)ネットワークの合成:
PTHF bisCC 850g/mol(1g、1当量)、4-((4-アミノシクロヘキシル)メチル)シクロヘキサンアミン(MBCHA、0.05g、0.2当量)(Sigma Aldrich)、及びN’,N’-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(TAEA、0.09g、0.53当量)(Sigma Aldrich)を、バイアルに入れて、40℃で10分間、磁気撹拌した。次いで、この溶液を、平らなTeflon鋳型(5×2.5×0.1cm)に注ぎ入れ、オーブン中70℃で24時間放置してから、IR分光測定により特性決定した。
【0178】
シクロカーボネートからPHUへの変換は、IR分光測定によりチェック及び確認した。
【0179】
図5fは、PTHF bisCC及びPHUのFTIR-ATRスペクトルを示し、PTHF bisCCのシクロカーボネート官能基に相当する1797cm-1及び1166cm-1のピークは完全に消失し、-OH基及び-NH基(3340cm-1)並びにウレタン基のCO(1698cm-1)、NH(1552cm-1)、N-CO-O、及びC-O-C(1342cm-1)に相当する新規ピークが視認される。
【0180】
実施例9:ミノサイクリンの経時的な搭載及び放出-ポリプロピレングリコール系PU/ポリプロピレングリコール系PHU及びポリテトラヒドロフラン系PU/ポリテトラヒドロフラン系PHUの比較
ポリプロピレングリコール系PU(380g/mol)、ポリテトラヒドロフラン系PU(650g/mol)、ポリプロピレングリコール系PHU(468g/mol)、及びポリテトラヒドロフラン系PHU(850g/mol)を、ミノサイクリンのCHCl/COH(1:1)溶液(5mg/mL)1mLに、25分間浸漬した。
【0181】
PHUディスク(7mm)を、ミノサイクリンのCHCl/COH(1:1)溶液(5mg/mL)1mLに、25分間浸漬した。
【0182】
膨潤したディスク(7mm)を、濾紙で拭き、真空オーブン中、室温で2時間乾燥させた。静的条件下で放出させるため、フィルムをPBS緩衝液(1mL)に浸して、PHUディスクに搭載されたミノサイクリンの量を特定した。放出溶液を収集し、新たな媒体で完全に交換してから、HPLC分光測定によりミノサイクリンを定量/分析し、ミノサイクリンのCHCl/COH(1:1)溶液の標準濃度曲線と比較した。
【0183】
図6は、PTHF PHU及びPPG PHUが6000分後にそれぞれ1mg及び0.6mgの放出という、PTHF系PU及びPPG系PPUが6000分後にそれぞれ0.01mgの放出及び放出なしであったことに比べて非常に良好な放出であったことを示す。
【0184】
実施例10:血液適合性試験、凝血試験、及び血小板付着試験-ポリプロピレングリコール系PU(PPG-PU)/ポリプロピレングリコール系PHU(PPG-PHU)及びポリテトラヒドロフラン系PU(PTHF-PU)/ポリテトラヒドロフラン系PHU(PTHF-PHU)の比較。
本実施例は、ポリマー血液適合性を試験する5つのプロトコルを記載することで、実施例11~実施例15において、本発明によるポリヒドロキシウレタンを含む医療機器には、基準として用いた医療グレードのポリウレタンを含む医療機器よりも高い血液適合性があり、これが、より少ない凝血及び血小板付着を誘導することを、更に解説する。
【0185】
以下の試験で用いた試験材料:
ポリウレタン(PU)(医療グレードの尿路カテーテル、SpeediCath(商標)、Coloplast及びCarbothane(商標)、ref PC3585A、Lubrizol)、及びPHU(PPG-PHU、PTHF-PHU)の0.5cmポリマーパッチ。
【0186】
使用前に、UV滅菌したパッチを、3日間、震盪下で滅菌生理食塩水を用いて洗った。洗浄液は毎日交換した。
【0187】
a.洗浄赤血球(RBC)を用いた溶血試験:直接接触
材料:
表面積対体積比及び溶血率の計算は、標準ISO 10993-12、ISO 10993-4、及びASTM標準F756-13に従う
採血管:クエン酸ナトリウムバキュテイナ管(3.2%クエン酸塩、BD Biosciences)
懸濁培養用の非結合の48ウェルプレート及び96ウェルプレート(ポリスチレン、Greiner Bio-One)
分光光度計Spectra max PLUS 384(Molecular Devices)。
【0188】
プロトコル:
1.健康なボランティアから、静脈穿刺によりクエン酸塩添加管に血液を採取する。血液は、21G針を使用して採血する。最初の2mlは廃棄する。血液試料は、採取後1時間以内に使用する。
2.全血を、室温(RT)で15分間、100×gで遠心分離する
3.上層(多血小板血漿及び白血球層)を取り出す
4.赤血球を含有する下層を2体積分のリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁させ、管を上下反転させて混合する
5.室温(RT)で15分間、900×gで10分間遠心分離し(Jouan B4iシリーズ、S-40 High Throughput Swing-Out Rotor)、上清を廃棄する
6.合計で3回洗浄するため又は上清が清澄するまで、工程7及び工程8を2回繰り返す
7.上清を完全に取り出し、赤血球(RBC)を溶血試験に用いる
8.1mLのRBC濃縮液(チップの先端を切断する)を7mLのPBSに再懸濁させ、管を上下反転させて混合する
9.300μl(マイクロリットル)の混合RBC/PBSを、48ウェルプレートの、PUパッチ又はPHUパッチを含有するウェル及び空ウェル(陰性対照)に加える。陽性対照には、1mLのRBC濃縮液を7mLの蒸留HOに再懸濁させたものを、1ウェルあたり300μL使用する
10.オービタルシェーカーを用いて、37℃で穏やかに100rpmにて撹拌しながら、1時間又は3時間インキュベートする
11.3時間インキュベーション後、試料を試験管に移し、室温で15分間、900×gで遠心分離する(エッペンドルフベンチトップ遠心分離)
12.上清を新たな管に移す。吸引する間、どのような固形不純物も回避する。ピペットで100μlずつ96ウェルポリスチレンプレートに移す。
13.ISO 10993-4に従って、マルチウェルプレートリーダーで545nmの吸光度を測定する(光学ヘモグロビン検出法)
14.以下の式を用いて溶血率(%)を計算する:
溶血(%)=(OD試料-OD陰性対照)/(OD陽性対照-OD陰性対照)×100
【0189】
材料のもたらした溶血が、5%超の場合を溶血性、5%~2%の場合をやや溶血性、2%未満の場合を非溶血性と分類する(Totea G et al. Cent. Eur. J. Chem. 12(7) 2014 796-803)。
【0190】
b.血漿タンパク質吸着アッセイ
材料:
マイクロBCAタンパク質アッセイキット、ThermoFisher製Ref 23235
クエン酸塩添加血漿:プールされた正常ヒト血漿、Cryopep製(CCN-10)
ポリマーパッチ、PU(医療グレード尿路カテーテル、SpeediCath(商標)、Coloplast及びCarbothane(商標)、ref PC3585A、Lubrizol)及び試験PHU(PPG-PHU、PTHF-PHU)、面積0.5cm
懸濁培養用の非結合の48ウェルプレート(ポリスチレン、Greiner Bio-One)
分光光度計Spectra max PLUS 384(Molecular Devices)。
【0191】
条件:陰性対照:空ウェル;陽性対照:カバーガラス
【0192】
プロトコル:
1.1.5mLエッペンドルフ中、パッチが血漿に完全に浸漬するようにして、一定分量の血漿をポリマーパッチとともに、37℃で2時間15分インキュベートする。
2.ポリマーパッチを48ウェルプレートに移す。
3.300μlのPBSで穏やかに洗う。
4.1%SDS含有PBSを350μl用いて、4℃で1時間、タンパク質を抽出する。マイクロBCA(ビシンコニン酸)アッセイは、高感度な方法であり、下限5ng/mlのタンパク質まで検出する。ビシンコニン酸は、Cuイオンと2:1の化学量論で結合し、高感度をもたらす。
5.分光光度計で製造元の指示書に従って562nmの吸光度を測定することにより、タンパク質濃度を特定する。
【0193】
c.接触相凝血アッセイ(NaPTT試験)
材料:
5-CLOT NAPTT試薬、5-Diagnostics製(5D-51426)
カオリン(水酸化ケイ酸アルミニウム)(Sigma-Aldrich 1332-58-7)
Stago STart(商標)4 Hemostasis Analyzer
クエン酸添加血漿:プールされた正常ヒト血漿、Cryopep製(CCN-10)
CaCl溶液
【0194】
プロトコル
NaPTT試薬は、接触相凝血の活性化を試験することを目的とする、合成リン脂質血小板代替物である。Stago Analyzerは、電気機械的血餅検出法を組み込んだ半自動化システム(粘度に基づく検出システム)である。クエン酸添加ヒト標準血漿中の血餅形成は、Ca2+イオンの添加により、並びにリン脂質により触媒される。カオリンを、接触相活性化の陽性対照として使用した。
【0195】
条件:陰性対照:血漿単独;陽性対照:100mg/mLのカオリン
【0196】
1.一定分量の血漿を、水浴中、37℃で解凍する。
2.1.5mLエッペンドルフ管中、パッチが血漿に完全に浸漬するようにして、一定分量の血漿をポリマーパッチとともに、37℃で10分間インキュベートする。陽性対照として1.5mLエッペンドルフ管中、100μlの血漿を100mg/mLのカオリンとともに37℃で10分間インキュベートする。
3.次いで、血漿をドライアイス/アセトン浴(-78℃)で急速凍結して、分析するまで-80℃で貯蔵する。
4.試験日に、血漿を37℃で解凍し、直ちにStago STart(商標)4装置で処理する。
5.コーティングした金属ビーズを含有するキュベット中、あらかじめ温めた血漿100μlに、37℃のあらかじめ温めたNodia試薬を加えてから、あらかじめ温めたカルシウム溶液(8.3mM)を加えることにより凝血を開始させる。
6.電磁場により整列したビーズの振り子運動により凝血終点を測定する。そのような運動は、血漿の粘度により影響を受け、粘度が最大になった時、すなわち血漿凝血が起こった時に、停止する。
【0197】
d.血小板付着アッセイ
材料
採血管:クエン酸ナトリウムバキュテイナ管(3.2%クエン酸塩、BD Biosciences)
懸濁培養用の非結合の24ウェルプレート及び96ウェルプレート(ポリスチレン、Greiner Bio-One)
分光光度計Spectra max PLUS 384(Molecular Devices)
ヒトフィブリノーゲン ref 341576(Calbiochem)
2倍pNPP緩衝液(0.1Mクエン酸緩衝液pH5.4、10mMのp-ニトロフェニルリン酸塩、2%TritonX-100)
【0198】
プロトコル
条件:陰性対照:BSAコーティングウェル;陽性対照:フィブリノーゲンコーティングウェル
p-ニトロフェニルリン酸塩(pNPP)試験を用いることにより、表面への血小板付着を分析する。この試験で得られる値は、表面に付着する血小板の数に直接比例する。pNPP試験は、血小板溶解に際して放出されるアルカリホスファターゼ及び酸ホスファターゼのレベルを測定する。これらホスファターゼの基質であるpNPPの加水分解はp-ニトロフェノールを生成する。このp-ニトロフェノールは405nmに最大吸光度を有していて、表面に結合した血小板の量に比例する。
【0199】
1.健康なボランティアから、21ゲージ針を用いて静脈穿刺によりクエン酸塩添加管に血液を採取する。最初の2mlは廃棄する。血液試料は、採取後1時間以内に使用する。
2.100×gで遠心分離することにより多血小板血漿(PRP)を調製する。
3.自己の乏血小板血漿(PPP)を用いて、血小板密度を250000血小板/μlに調節する。
4.ポリマーパッチを、24ウェルプレートのBSAコーティングウェルに加える。
5.多血小板血漿(PRP)又はPPP350μl(マイクロリットル)を、PUポリマーパッチ若しくはPHUポリマーパッチとともに、又は空のBSAコーティングウェル若しくはフィブリノーゲンコーティングウェル中で、震盪条件下(100rpm)、37℃で45分間インキュベートする。
6.表面を、生理食塩水で3回洗浄する。
7.pNPP緩衝液200μLを加え、震盪及び遮光条件下で1時間インキュベートすることにより、付着した血小板の溶解を達成する。
8.各ウェルに、2MのNaOH溶液140μlを加える。
9.100μlを96ウェルプレートに移してから、分光光度計で405nmの吸光度を測定する。
10.PPPインキュベーションで読んだバックグラウンドを、PRPの読みから差し引く。
11.血小板密度を上昇させながら行った較正曲線から、血小板数を特定する。
【0200】
e.補体活性化アッセイ
材料:
採血管:クエン酸ナトリウムバキュテイナ管(3.2%クエン酸塩、BD Biosciences)
ザイモサン(Merck ref 58856-93-2)
抗C5a ELISAキット(ThermoFisher Scientific ref BMS2088)
懸濁培養用の非結合の24ウェルプレート(ポリスチレン、Greiner Bio-One)
【0201】
条件:陰性対照:空ウェルでインキュベートした血液;陽性対照:ザイモサン10μg/mlとともにインキュベートした血液
【0202】
プロトコル:
1.ポリマーパッチを、24ウェルプレートのBSAコーティングウェルに加える。
2.血液400μLを、試験ポリマー又はザイモサンとともに、100rpm震盪下、37℃で30分間インキュベートする。
3.血液を、室温で15分間、900×gで遠心分離する。血漿を新たな管に移し、再度15分間、900×gで遠心分離する。血漿試料を等分割し、分析するまで-80℃で凍結させておく。
4.活性化補体(C5a)の血漿レベルを、ELISAにより製造元の指示書に従って特定する。
【0203】
実施例11:PU、PPG-PHU、PTHF-PHUの溶血%の比較:
ヒト赤血球とPPG-PHU又はPTHF-PHUの直接接触は、溶血を引き起こさない。
【0204】
ポリウレタン(PU)製(医療グレード尿路カテーテル、SpeediCath(商標)、Coloplast)又はポリヒドロキシウレタン(PHU):PPG(468g/mL)-PHU製若しくはPTHF(850g/mL)-PHU製の0.5cmポリマーパッチを、ヒト赤血球(RBC)濃縮物300μlとともに、震盪下(100rpm)、37℃で1時間又は3時間インキュベートした。
【0205】
実施例10の試験プロトコルの段階aで記載したとおりに、溶血率を特定した。
【0206】
図7に示すとおり、溶血率は、全て、非溶血性と見なされる2%未満であった。すなわち、PPG-PHUポリマーもPTHF-PHUポリマーも、溶血を引き起こさなかった。溶血率は、基準対照として用いた医療グレードのPUと直接接触させて得られたものと同様であった。
【0207】
実施例12:PU、PPG-PHUの補体活性化試験の比較:
補体活性化は、炎症及び細菌感染に対する免疫系の応答である。
【0208】
抗凝血ヒト全血とPPG-PHUの直接接触は、補体カスケードを活性化しない。
【0209】
ポリウレタン(PU)製(医療グレード尿路カテーテル、SpeediCath(商標)、Coloplast)又はポリヒドロキシウレタン(PHU):PPG(468g/mL)-PHU製の0.5cmポリマーパッチを、ヒトクエン酸塩添加全血400μLとともに、100rpm震盪下、37℃で5分間、15分間、及び30分間インキュベートした。ザイモサン(1mg/mL)を、陽性対照として用いた。
【0210】
血漿を分離し、活性化補体5(C5a)のレベルを、ELISAにより、実施例10の試験プロトコルの段階eで記載したとおりに特定した。
【0211】
図8に示すとおり、PPG-PHUは、医療グレードPUと同じように、補体カスケードを活性化しなかった。これは、ザイモサンが血漿C5aレベルの明白な上昇を誘導したのとは対照的であった。
【0212】
実施例13:PU、PPG-PHU、PTHF-PHUの接触相活性化凝血試験の比較:
ヒト血漿と直接接触した際の接触相凝血活性化は、PPG-PHU又はPTHF-PHUの方が医療グレードPUより低い。
【0213】
ポリウレタン(PU)製(医療グレード尿路カテーテル、SpeediCath(商標)、Coloplast)、又はポリヒドロキシウレタン(PHU):PPG(468g/mL)-PHU製、PPG(728g/mL)-PHU製、若しくはPTHF(850g/mL)-PHU製の0.5cmポリマーパッチを、ヒトクエン酸塩添加血漿に、37℃で10分間浸漬した。カオリン(100mg/mL)を、凝血活性化刺激(陽性対照)として用いた。
【0214】
凝血活性化は、実施例10の試験プロトコルの段階cで記載したとおりに、NaPTT試薬を用いて、血漿再石灰化する際に血液凝固計で評価した。図9に示すとおり、PPG-PHU(2種の異なる分子量のPPGでできている)は、凝固時間がより長いことから示されるとおり、誘導する凝血活性化が医療グレードPUよりも低かった。陽性対照のカオリンは、ポリマーよりも顕著に短い凝固時間を招いた。ベースラインは、ポリマーと接触させなかった血漿に相当する。
【0215】
実施例14:PU、PPG-PHUのヒト血小板付着の比較(吸光度試験):
ヒト血小板は、PPG-PHUに付着しない。
【0216】
ポリウレタン(PU)製(医療グレードCarbothane(商標)、ref PC3585A、Lubrizol)又はポリヒドロキシウレタン(PHU):PPG(468g/mL)-PHU製若しくはPPG(728g/mL)-PHU製の0.5cmポリマーパッチを、ヒトクエン酸塩添加多血小板血漿(PRP)に、37℃で45分間浸漬した。血小板付着の陽性対照として、PRPをフィブリノーゲンコーティングポリスチレンウェルに、震盪条件(100rpm)下、37℃で45分間、加えておいた。
【0217】
血小板付着を、p-ニトロフェニルリン酸塩(pNPP)アッセイを用いて、実施例10の試験プロトコルの段階bで記載したとおりに分析した。
【0218】
図10に示すとおり、ヒト血小板は、PPG-PHUにも医療グレードPUにも付着しなかったが、一方フィブリノーゲンでは付着が観察された。
【0219】
実施例15:PU、PPG-PHUのヒトタンパク質吸収の比較:
ヒト血漿タンパク質の吸着は、PPG-PHUの方が医療グレードPUよりも少ない。
【0220】
ポリウレタン(PU)製(医療グレードCarbothane(商標)ref PC3585A、Lubrizol)又はポリヒドロキシウレタン(PHU):PPG(468g/mL)-PHU製若しくはPPG(728g/mL)-PHU製の0.5cmポリマーパッチを、ヒトクエン酸塩添加血漿に、37℃で2時間浸漬した。
【0221】
タンパク質吸着を、MicroBCA(ビシンコニン酸)アッセイを用いて、実施例10の試験プロトコルの段階b)で記載したとおりに分析した。
【0222】
図11に示すとおり、PPG-PHU(2種の異なる分子量のPPGでできている)の方が医療グレードPUよりも少ないタンパク質吸着であった。
【0223】
実施例16:アリルポリプロピレングリコールビスシクロカーボネートPPG bisCC Mw728及び468の合成
バイアル中、PPG bisCC 728(1.30mmol、1g、1当量)、アリルアミン(3.25mmol、0.19g、2.5当量)、及び2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1,2-a]アゼピン(DBU、0.13mmol、0.02g、0.1当量)を40℃で3日間~4日間混合することにより、PPG bisCC 728g/molにアリル官能基をグラフト結合した。次いで、混合物を、数時間、真空下で吸引して過剰なアリルアミンを除去し、PPG鎖の両末端にアリルを持つPPGを得た。
【0224】
同じモル比を維持して、PPG bisCC 468g/molでも同じ手順を用いた。
【0225】
実施例17:ポリヒドロキシウレタン(PHU):ポリプロピレングリコールビスシクロカーボネートPPG bisCC 728のUV合成
PPG-アリル(1.19mmol、1g、1当量)、2,2-ビス(3-スルファニルプロパノイルオキシメチル)ブチル3-スルファニルプロパノエート(0.79mmol、0.31g、0.67当量)、及びIrgacure 819(0.19mmol、0.05g、0.1当量、数滴のクロロホルムであらかじめ溶解させる)を、一緒に混合してホモジナイズしてから、平らなTeflon鋳型(5×2.5×0.1cm)に注ぎ、15分間、UVランプ(Omnicure Series 2000、200W、Hg、波長=365nm)下に置いた。次いで、鋳型を、オーブン中、70℃で24時間放置した。PPG bisCC 468g/molを用い、他の試薬の量を調節して同じモル比に維持することにより、同じ手順を使用した。(PPG-アリル(1.72mmol、1g、1当量)、2,2-ビス(3-スルファニルプロパノイルオキシメチル)ブチル3-スルファニルプロパノエート(1.15mmol、0.45g、0.67当量)、及びIrgacure 819(0.115mmol、0.048g、0.1当量)
【0226】
次いで、PPGbisCC728及びPPGbisCC468を鋳型から取り出し、さまざまな技法で特性決定した。bisCC PPGからPPG-PHU-アリルへの変換はH NMR分光測定によりチェックした(図5h)。bisCC PPGのシクロカーボネートに帰属される位置4.8ppm及び4.5ppmのピークの消失が視認され、PPG-PHU-アリルに相当する5.9ppm~5.8ppm及び5.2ppm~5.1ppmのピークの出現についても同様である。次いで、PPG-PHU-アリルからUV硬化PPG-PHUネットワークへの変換を、IR分光測定によりチェック及び確認した。PPG-PHU-アリル及びUV硬化ネットワークのFTIR-ATRスペクトルを、図5iに示す。アリル官能基に帰属されるピークの消失が、1642cm-1(C=C)、991cm-1(C-H)、及び909cm-1(アリル)で視認される。先行工程中のbisCC PPGの変換の更なる証拠として、PPG-PHUの官能基に相当するピーク、すなわち-OH基及び-NH基(3200cm-1~3500cm-1)、並びにウレタン基のCO(1711cm-1)、NH(1535cm-1)、N-CO-O、及びC-O-C(1256cm-1)も示される。
【0227】
実施例18:ガラス転移温度-熱硬化及びUV硬化させたPPGbisCC728(PHU1)及びPGbisCC468(PHU2)の比較。
インジウムで較正したTA Instruments DSC Q100熱分析計を用い、示差走査熱量測定によりガラス転移温度を特定した。曲線は、TA Instruments Universal Analysis 2000ソフトウェアを用いて分析した。試料を挿入した後の手順は、以下のとおりであった:-60℃で平衡化及び等温工程を2分(サイクル1)、10℃/分のランプで120℃まで加熱し、続いて等温工程を2分(サイクル2)、-60℃で平衡化及び等温工程を2分(サイクル3)、最後に10℃/分のランプで200℃まで加熱する(サイクル4)。第四サイクルの間、サーモグラムを記録した。
【0228】
UV硬化PHU及び熱硬化PHUで示差走査熱量測定及び熱重量分析を行った。UV-PHU及びUV-PHUのガラス転移温度は、熱硬化PHUのものと同様であることがわかった。実際、表3に示すとおり、UV-PHU1及びUV-PHU2は、それぞれ、Tが-23.1℃及び-4.7℃であったが、一方、PHU1及びPHU2は、表2に示すとおり、Tが-25.1℃及び-1.3℃であった。同じ傾向が、熱重量測定で観察された。UV-PHU1及びUV-PHU2のTGA曲線は、PHU1及びPHU2のものと同様、すなわち、300℃~350℃での熱分解を示した。
【0229】
実施例19:平衡吸水率-熱硬化及びUV硬化させたPPGbisCC728(PHU1)とPGbisCC468(PHU2)の比較。
乾燥PHUネットワークの重量増加を、リン酸緩衝食塩水溶液(PBS、pH=7.2)に4時間、8時間、及び24時間浸漬した後に測定した。この溶液は、そのpH(=7.2)が生理的pHに近いことを理由に選択された(医薬用途を検討する場合に重要である)。
【0230】
平衡吸水率(EWA)は、以下の式を用いて特定した:
EWA=(Ws,w-W)/Wi×100%
式中、Ws,wは、PBS中で膨潤した試料の重量であり、Wは、乾燥試料の重量である。
【0231】
熱硬化及びUV硬化させたPPGbisCC728(PHU1)及びPGbisCC468(PHU2)のEWAを、それぞれ表4及び表5に報告した。
【0232】
実施例20:レオロジー特性:熱硬化及びUV硬化させたPPGbisCC728(PHU1)とPGbisCC468(PHU2)の比較。
2種類のひずみ制御レオメーターを用いてレオロジー特性を測定した。1種類目(ARES、Rheometric Scientific製)は、熱的動的レオロジー用に70℃でソフトウェアTA Orchestratorを用いて使用し、2種類目(ARES G2、TA Instruments製)は、UV動的レオロジー用に室温でTRIOSプログラムを用いて使用した。UVランプは、UV合成用のものと同じ、すなわちOmnicure Series 2000の200W、365nmであった。
【0233】
実施例17に従って調製した両方のUV硬化PHUの架橋形成に続いて、UV条件下でレオロジー実験を行った。UV硬化させた高質量PHU(UV-PH728又はUV-PHU)及び低質量PHU(UV-PH468又はUV-PHU)の貯蔵弾性率及び損失弾性率を、図12に示す。UV-PHU及びUV-PHU両者に相当するゲル化点は、たった4分後に起こり、これは、相当する熱硬化PHUの場合、すなわちPHU及びPHUそれぞれの23分及び16分よりも早いことがわかる。架橋ネットワークは、このようにして、熱条件下よりもUV条件下の方が迅速に形成され、おそらくアリル官能基に対するチオールの反応性の高さによるものである。しかしながら、熱アプローチの場合とまったく同様に、UV-PHU(GP)のゲル化点は、PHU(GP)のゲル化点よりも低く、これは、架橋ネットワークは質量の小さいポリマーの方が速く形成されることを意味する。PHUの貯蔵弾性率がPHUのものより高いことは、その架橋度合いがより高いことも示しており、その理由は、PHUの架橋節間のモル質量がより小さいためである。
【0234】
機械特性、例えば、ヤング率、破断応力、及び破断伸びを、乾燥状態下及び水和状態下で測定した。乾燥条件下、UV-PHUは、PHUのものと実質的に同一であり、同様なPHUが熱架橋経路により得られた(注、表2及び表3)。しかしながら、これは、UV-PHU及びPHUについては当てはまらない。事実、PHUが15.62MPaというヤング率を有する一方で、UV-PHUが示す弾性率は1.53MPaでしかない。これの破断応力及び破断伸びも、PHUに比べて低い。
【0235】
表5に示すとおり、UV-PHUは、水和状態で、UV-PHUよりも高いT値並びにより高い破断応力及び破断伸びを提示する。乾燥条件下及び湿潤条件下で得られるヤング率値の間の差もまた、熱硬化PHUの場合に比べて差が非常に少ない。これは、アリル基及び2,2-ビス(3-スルファニルプロパノイルオキシメチル)ブチル3-スルファニルプロパノエートの挿入を理由として、UV硬化PHUの方が、疎水性基含有量が高いことにより説明可能である。実際、UV硬化PHUは、熱硬化PHUと同じぐらい多く、-OH基を有する。しかしながら、極性基と非極性基の間の比は、UV硬化PHUで大幅に低下する。疎水性基含有量が高く、これが鎖に沿ったヒドロキシル基と水の相互作用を防げるというこの仮説は、UV硬化PHUで得られるEWA(平衡吸水率)の低さ(10%前後、注、表5)により裏付けられる。
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
【0239】
【表5】
【0240】
実施例21:UV-PHU及びUV-PHUの3Dプリンティング
UV硬化PHUの速い架橋速度のおかげで、同じ条件を維持する目的で、実施例17のUV-PHU及びUV-PHUと同じプロトコルで、溶液が調製された。
【0241】
PHUのシートを、3Dプリンターの加熱プレートにプリントした。3Dプリンティングのパラメーターは、プレート上の流速0.03ml/分、加熱最高70℃、及びUV光曝露パーセンテージ50%であった。プリンティング試験用に、UV-PHUを選択した。なぜなら、これが最良の機械特性を示したからである。プリントされたPHUをプレートから取り外した後、これを、UVオーブン中、60℃で10分間放置した。3DプリントしたPHUで最良の結果を示すものを、表6に示す(3D-PHU)。表中、3D-PHUを、UV-PHUと比較しているが、これは、同じポリマーであるが、3Dプリントされることなく架橋している(注、実施例17)。3D-PHUは、UV-PHUと同じEWAを示し(10%しかない)、乾燥状態及び水和状態の両方で、より一層高い機械特性を示す。したがって、これらの結果は、UV-PHU製の医療機器の調製に向けて道筋をつけるものである。
【0242】
【表6】
【0243】
実施例22:PHUに基づく人工心臓弁の調製。
ポリヒドロキシウレタンに基づく三葉人工心臓弁プロトタイプを、圧縮成形により調製した。この弁は、寸法が24mmで葉厚さが0.5mmであり、図2に再現される。
【0244】
ビス(シクロカーボネート)ポリ(プロピレングリコール)(bisCC PPG)728g/mol(1.92mmol、1.40g、1当量)、4-((4-アミノシクロヘキシル)メチル)シクロヘキサンアミン(MBCHA、0.38mmol、0.08g、0.2当量)、及びN’,N’-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(TAEA、1.02mmol、0.15g、0.53当量)を、バイアルに入れて、40℃で10分間、磁気撹拌した。次いで、この溶液を、鋳型内側に注入し、オーブン中、70℃で24時間放置した。
【0245】
次いで、この弁プロトタイプを、その水力学的特性についてISO 5840要件に従って、パルスデュプリケーター(pulse duplicator)(Vivitro Labs、製品番号18363)で試験した。模擬心臓条件下でフロー及び圧データを得た。
【0246】
平均動脈圧=100mmHg及び心拍数を1分間に70回として、データを得た。有効弁口面積(EOA)及び逆流率を特定し、市販されているバイオプロテーゼ(Avalus(商標)、Medtronic製Mosaic(商標)、及びAbbott製Trifecta(商標))と比較した。EOAに関するISO基準(ISO基準>1.25cm)及び逆流率パーセンテージ(ISO基準<10%)を満たす弁プロトタイプが得られる。
【0247】
この用途につながるプロジェクトは、Interreg Euregio Meuse-Rhineからの資金援助を受けている(助成合意書名EMR100 PolyValve)。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図5i
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】