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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】埋込型グルコースセンサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0538 20210101AFI20240229BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20240229BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B5/0538
G01N27/02 D
A61B5/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023545971
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2022053147
(87)【国際公開番号】W WO2022171684
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21156594.0
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523285133
【氏名又は名称】ディー.ティー.アール. ダーマル セラピー リサーチ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オルマー,スティグ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥエナス,サウル アレハンドロ ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ルス,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ビルガーソン,ウルリク
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス シュルンダー,アレハンドロ
【テーマコード(参考)】
2G060
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AD06
2G060AE16
2G060AF06
2G060AG04
2G060GA01
4C038KK10
4C038KL01
4C038KY01
4C127AA06
4C127LL08
(57)【要約】
本明細書において、生物の組織内のインピーダンスを決定するための埋込型グルコースセンサ(1、1’、1’ ’、1’ ’ ’、1’ ’ ’ ’)が開示され、この埋込型グルコースセンサは、ハウジング(2、2’)と、組織内に電流を注入するための2つの注入電極(4、4’)と、2つの注入電極(4、4’)から分離して配置された、組織内のインピーダンスを測定するための2つの感知電極(5)と、ハウジング(2、2’)内に配置された、電源(10)を介して埋込型グルコースセンサに給電するためのコイル(7)と、ハウジング(2、2’)内に配置され、2つの感知電極(5)および2つの注入電極(4、4’)およびコイル(7)に電気的に接続された回路基板(8)と、回路基板(8)に接続された、データパッケージを送信および受信するための通信ユニット(9)とを備え、ハウジング(2)は、第1部分(3a)および第2部分(3b、3b’)を備える。2つの感知電極(5)および2つの注入電極(4、4’)は、第1部分(3a)の外側表面に配置される。第1部分(3a)の外側表面は凸形であり、2つの感知電極(5)および2つの注入電極(4、4’)は、凸形の外側表面と同一平面上にあるように凸形に埋め込まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の組織内のインピーダンスを決定するための埋込型グルコースセンサ(1、1’、1’ ’、1’ ’ ’、1’ ’ ’ ’)であって、
ハウジング(2、2’)と、
前記組織内に電流を注入するための2つの注入電極(4、4’)と、
前記2つの注入電極(4、4’)から分離して配置された、前記組織内のインピーダンスを測定するための2つの感知電極(5)と、
前記ハウジング(2、2’)内に配置された、電源(10)を介して前記埋込型グルコースセンサに給電するためのコイル(7)と、
前記ハウジング(2、2’)内に配置され、前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)および前記コイル(7)に電気的に接続された回路基板(8)と、
前記回路基板(8)に接続された、データパッケージを送信および受信するための通信ユニット(9)と、
前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)を外側表面に備える前記ハウジング(2)
とを備え、
前記外側表面は凸形であり、前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)は、前記凸形の前記外側表面と同一平面上にあるように前記凸形に埋め込まれ、前記コイル(7)は、前記ハウジング(2、2’)内で前記注入電極(4、4’)、前記感知電極(5)、および前記回路基板(8)から物理的に分離され、離間していることを特徴とする、埋込型グルコースセンサ。
【請求項2】
前記コイル(7)は、前記埋め込み型グルコースセンサの長手方向軸(a)に沿った方向に前記回路基板から離間して前記回路基板(8)の隣に配置される、請求項1に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項3】
前記回路基板(8)と前記コイル(7)との間で前記長手方向軸に沿って測定された距離(b)は、前記回路基板(8)および前記コイル(7)が、前記長手方向軸に垂直に見える方向に重なり合わないように選択される、請求項2に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項4】
前記ハウジング(2、2’)は、調和して丸みを帯びた形状である、請求項1または2に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項5】
前記2つの注入電極は、たとえば縦長長円形または縦長長方形などの縦長形状(4)を有する、請求項1~4のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項6】
前記2つの測定電極(5)は、前記注入電極(4、4’)の間に配置される、請求項1~5のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は楕円形である、請求項1~6のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項8】
前記ハウジング(2)は卵形である、請求項1~7のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項9】
前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形は、長手方向軸(a)を画定し、前記楕円形は、少なくとも前記感知電極(5)、前記注入電極(4、4’)、および前記回路基板(8)を第1の半分(11a)に備え、前記コイル(7)は、第2の半分(11b)に配置され、前記第1の半分(11a)および前記第2の半分(11b)は、前記長手方向軸に垂直な方向に見えるように前記第1の半分(11a)と重なり合わず、前記第2の半分(11b)は、前記長手方向軸(a)に垂直に向けられた平面に沿った前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形の分割によって画定され、この平面は、前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形の中心を通って延びる、請求項8または9に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項10】
前記通信ユニット(9)も前記第1の半分(11a)に配置される、請求項10に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項11】
前記2つの注入電極(4、4’)および前記2つの測定電極(5)は、射出成形プロセスにおいて、前記ハウジング(2、2’)に一体化される、請求項1~10のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項12】
前記ハウジング(2、2’)は、たとえばシリコンなどの生体適合性材料で作られ、前記2つの注入電極(4、4’)および前記2つの感知電極(5)は、金または他の生態適合性かつ導電性の材料で作られる、請求項1~11のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項13】
前記埋込型グルコースセンサは、それが埋め込まれると前記生物の前記組織に前記埋込型グルコースセンサを固定するための固定手段(6)を備える、請求項1~12のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項14】
前記埋込型グルコースセンサの外寸は、10mm~50mm、好適には20mm~30mmの長さ、5mm~25mm、好適には11mm~15mmの幅、および1mm~15mm、好適には2mm~5mmの厚さに対応する、請求項1~13のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の電気測定のための埋込型センサの分野に関する。特に、本発明は、筋肉組織であってよい身体組織におけるインピーダンスを決定するために4点測定を適用する埋込型グルコースセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
体内に埋め込むための既知のセンサは、一般に、印刷回路基板と、電源と、体内の様々なパラメータを決定するための電極または化学電極とを含む。多くの既知のセンサは、移植臓器におけるインピーダンスの傾向を測定することによって、臓器移植後の臓器の拒絶反応を検出することを目的とする。臓器の拒絶反応の兆候は、移植臓器内の臓器(臓器組織)における電気インピーダンスの増加(傾向)である。そのような増加が始まると、医師は、ある程度まで薬剤を投与することができるが、閾値に到達した場合、臓器が拒絶され、受容者の体内で基本的に機能停止する。そのようなセンサは、たとえばUS5,970,986B1号に示される。US5,970,986B1号において、埋込型拒絶センサにデータを送信することが可能な高周波送信器および受信器ユニットを備える余分な身体基地局を備えた、臓器移植後の拒絶反応診断のための装置が開示される。埋込型拒絶センサは、集積回路部品、すなわちIC部品を備え、そこに受信および送信コイルが割り当てられる。埋込型拒絶センサは、ハウジングの平坦面に配置された4つの電極から成るセンサ構成を更に備える。US5,970,986B1号には、更に、電極およびコイルがIC部品に統合され得ることが記載される。埋込型拒絶センサは、提供者の臓器に固定されるように構成される。ここで重要な点として、US5,970,986B1号に開示されるセンサは、臓器の拒絶反応を測定するためのものであり、そうする場合、重要となるパラメータは、上述したような臓器内のインピーダンスの傾向であることに留意する。インピーダンスの絶対値は、臓器の拒絶反応を検出する場合、重要ではない。対照的に、生物という用語で総称され得る動物や人間の組織内でグルコース濃度が決定される場合、絶対インピーダンス値は、グルコース濃度に相関するために関心対象となる。これらの測定値が誤っている場合、相関するグルコース値が誤っており、不所望の結果を招き得る。センサが生物の体内に埋め込まれた後、測定されたインピーダンスの誤りを招く事項の1つは、埋込型センサの周囲および電極の周囲の特定のエリアに集中する体液である。この体液は、血液、創傷液、または他の細胞外液、またはそれらの混合物であってよい。導電率は液体内で良好になるため、これらの体液は、測定されたインピーダンスに影響を及ぼし、誤りを招くことにより、測定の精度に影響を及ぼす。試験および基準測定により、体液がインピーダンス測定の精度に大きく影響を及ぼすことが示されている。US5,970,986B1号に示されるセンサは、その鋭利なエッジおよび平坦な表面により、まさにこの問題を有する。しかし、US5,970,986B1号は、臓器の拒絶反応を検出することに関するので、この問題は、この文書において言及されていない。多くの既知のセンサの別の問題は、センサに給電するための電源からの磁場を受け取るためのコイルがセンサの印刷回路基板(PCB)、またはその上下に配置されることである。PCBは一般に、導電ループなどを含むので、磁場によってPCBに渦電流が誘発され、渦電流は測定性能に影響を及ぼし、埋込型センサと外部リーダとの間の許容可能または作動可能な距離を低減することによって、電源からセンサへのエネルギまたは電力転送を乱すことがある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の目的は、グルコースセンサが埋め込まれている生物の組織内インピーダンス測定が正確であるようにグルコースを決定するための改善されたセンサを提供することである。本発明の別の目的は、信頼性が高く安全なグルコースセンサを提供することである。本発明の更なる目的は、患者にとって取扱いが簡単なグルコースセンサを提供することである。上述した問題点および目的の観点から、本発明の発明者は、グルコースセンサを設計する際、ハウジングの外形および組織内のインピーダンスを決定するための電極の形状を調整すべきであることを発見した。発明者は更に、最適な結果のために、平坦表面の鋭利なエッジを回避すべきであることを発見した。また発明者は、測定性能の改善のため、およびコイルを介してセンサに給電するためにモバイルデバイスを使用する場合、パルス磁場を介して誘発される渦電流は、回路基板または回路および注入および感知電極からコイルを幾何学的に分離して配置することによって最小限にされ得ることも発見した。
【0004】
更に留意点として、本発明の発明者は、埋込型グルコースセンサの近傍における体液の蓄積や動きが、特に感知電極ペアの直近において、結果に大きく影響を及ぼすことを発見した。これはモデル計算において示された。またモデル計算により、特に感知電極は、埋込型グルコースセンサのハウジングの外側表面および第1部分の外側表面とそれぞれ完全に同一平面上にあるべきであることも示された。これにより、埋込型グルコースセンサのハウジングは、埋込型グルコースセンサの直近における体液ポケットの形成を防ぐために、埋込型グルコースセンサの周囲の組織を延伸させるために、凸状、全ての側面で凸状、卵形、楕円形、または超楕円形であるべきであるという発見が導かれた。そのような体液で満たされたポケットの存在は、患者の動き、外部原因による物理的衝撃、または外部原因による患者の身体への圧力も原因となり得る。これらのアーチファクトは全て、本明細書に開示される埋込型グルコースセンサの形状提案によって排除される。
【0005】
本明細書において、生物の組織内インピーダンスを決定するための埋込型グルコースセンサが開示される。この埋込型グルコースセンサは、
ハウジングと、
組織内に電流を注入するための2つの注入電極と、
2つの注入電極とは別の、組織内のインピーダンスを測定する2つの感知電極と、
ハウジング内に配置された、電源を介して埋込型グルコースセンサに給電するためのコイルと、
ハウジング内に配置され、2つの感知電極および2つの注入電極およびコイルに電気的に接続された回路基板と、
回路基板に接続された、データパッケージを送信および受信するための通信ユニットと
を備え、
ハウジングは、少なくとも第1部分および第2部分を備え、2つの感知電極および2つの注入電極は、第1部分の外側表面上に配置される。
【0006】
第1部分の外側表面は凸形であり、電極は、凸形の外側表面と同一平面上にあるように凸形に埋め込まれ、コイルは、ハウジング内で注入電極、感知電極、および回路基板から幾何学的に分離されている。
【0007】
コイルを他の電気部品および感知電極、注入電極、および回路基板または回路から幾何学的に分離することにより、外部デバイスによってコイルを介して埋込型グルコースセンサが給電される時、これらの構成要素における渦電流が大幅に低減される。そのような渦電流は、外部デバイスを介してコイルに転送されるエネルギを吸収し、これは、外部デバイスによって発生するパルス磁場から転送されるエネルギが低減され、たとえば熱に変換されることを意味する。熱自体は問題ないが、この場合、コイルによって受け取るエネルギが、インピーダンスの測定およびセンサと外部デバイスとの間の通信の動力源になるために十分ではないことが問題である。センサ内の小さなコイルと外側読取りデバイスの大きなコイルを整列させるべきである。
【0008】
ハウジングが楕円形または卵形に成形される場合、楕円形または平坦な卵形は常に1つの方向が他の2つの方向よりも長いため、長手方向が常に画定される。楕円形(または卵形)は、長手方向に垂直な平面に沿って半分に分割することができ、この平面は、楕円形または卵形の中心を通って延びる。これら2つの半分の一方である第1の半分はコイルを備え、第2の半分は、楕円および回路基板の外側表面上に、注入電極および感知電極を備える。第2の半分は通信ユニットを更に備えてよい。
【0009】
センサまたはハウジングが凸形、二重凸形、卵形、楕円形、または超楕円形のどれかであれば、センサまたはハウジングは細長い形状を有することに留意すべきである。細長い形状とは、センサを通って延びる1つの軸が長手方向軸と識別され得ることを意味する。
【0010】
上記構成、およびコイルを他の電子部品、特に感知電極、注入電極、および回路基板から分離することにより、測定中に外部デバイスを介して埋込型グルコースセンサが給電される場合の渦電流の大きな低減がもたらされる。
【0011】
埋込型グルコースセンサは、埋込型グルコースセンサへのパルス磁場によって外部デバイスを介して給電される場合のみグルコース測定を行うので、渦電流の防止または少なくとも低減は重要である。外部デバイスは、埋込型センサのコイルおよび外部デバイスに由来するパルス磁場を介して埋込型センサに給電し、このパルス磁場が導体内に電流(渦電流)を誘発し得るため、外部デバイスは、回路基板、感知および注入電極、またはこれらの間の電気接続に電流を誘発し得る。回路基板および感知および注入電極、および通信モジュールにおける渦電流を防止する必要がある理由は、渦電流はパルス磁場のエネルギを使い果たすことによってインピーダンスの測定に直接的に影響を及ぼし、センサ内でタスクを行うためにエネルギが利用できなくなるためである。センサハウジング内で回路基板とコイルとを物理的に分離することによって、回路基板とコイルとが重なり合わなくなる。これにより、渦電流を防止する最適な効果が得られ、その結果、エネルギ転送が低減される。
【0012】
コイルおよび回路基板は、横並びに、または互いに隣り合って配置する必要がある。それらは、重なり合わずに互いに隣り合って配置され得る。回路基板およびコイルは、重なり合わないが、長手方向軸に垂直に見える方向に互いに隣り合って配置される。
【0013】
外部デバイスは、モバイルフォンなどであってよい。
【0014】
埋込型グルコースセンサの外側表面は、可能な限り滑らかであり、たとえばISOグレード番号N1~N5、粗さRa値0.025~0.4マイクロメートルの範囲内である。埋込型グルコースセンサおよびハウジングの外層はそれぞれシリコンで作られ得る。あるいは、ハウジング全体がシリコンで作られてよい。
【0015】
感知電極および注入電極は、シリコン内に完全に一体化され得る。
【0016】
表面に鋭利なエッジや傷などがなく表面を可能な限り滑らかにすることで、センサが埋め込まれた場合にセンサの外側表面の周囲に液体の蓄積が生じないことが確実になる。センサの外側表面周囲での、外側表面と直接接する液体、液体ポケットの発生は、測定に影響を及ぼして誤りを招く可能性があり、回避する必要がある。
【0017】
これは、センサの非常に滑らかで調和した外側表面またはハウジングを設計することによって実現され得る。
【0018】
上述した液体の回避は、感知および注入電極をセンサまたはハウジングの外層に一体化することに及ぶ。感知および注入電極は、(体)液の蓄積を防ぐためにセンサおよびハウジングの外側表面と完全に同一平面上であり外側表面に一体化する必要がある。
【0019】
センサまたはハウジングの外側表面および感知および注入電極の外側表面は、可能な限り最高の滑らかさを実現するために研磨され得る。
【0020】
凸形状の外側表面により、埋込型グルコースセンサの周囲、特に電極周囲での体液の形成が妨げられ、それによって、測定される組織のインピーダンス値の精度が高まり、グルコース濃度相関が向上する。
【0021】
留意点として、ハウジングの第2部分は、凸形である必要はなく、平面として、すなわち平坦に設計されてよい。
【0022】
埋込型グルコースセンサのためのそのような凸形ハウジングの製造は安価ではないが、測定精度における長期的利益がこのコストを上回る。
【0023】
ハウジングの第2部分に、たとえば小さなループやフックなどの固定手段が配置され、生物の体内における埋込型グルコースセンサの固定を可能にする。
【0024】
第2部分に固定手段を配置することにより、測定プロセスにおける固定の影響が低減される。組織に埋込型グルコースセンサを実際に固定することにより、組織に傷が生じ、測定精度に影響が及ぼされ得る。それぞれ手術および埋め込みの後に固定手段の周囲に体液が蓄積する場合、2つの感知電極および2つの注入電極における測定は影響を受けない。
【0025】
実施形態において、コイルは回路基板に隣接して配置される。これにより、磁場を介して埋込型グルコースセンサに給電するために電源が使用される場合、回路基板への渦電流の影響が低減される。
【0026】
別の実施形態において、ハウジングは、調和して丸みを帯びた形である。
【0027】
調和した形状でもある丸みを帯びた形状のハウジングは、体液の蓄積のリスクを低減する。
【0028】
1つの実施形態において、2つの注入電極は、たとえば縦長楕円形状または縦長長方形状などの縦長形状を有してよい。
【0029】
電流注入電極の縦長形状は、発生する電界を改善することにより、2つの測定電極による測定を向上させる。
【0030】
更に改善された測定性能のために、2つの測定電極は、注入電極の間に配置され得る。
【0031】
別の実施形態において、ハウジングは、楕円形または超楕円形であってよい。
【0032】
楕円形、長円形、超楕円または超長円形は、埋込型グルコースセンサの周囲の体液の形成を更に妨げることができる。
【0033】
1つの実施形態において、2つの注入電極および2つの測定電極は、たとえば射出成形中、ハウジングの第1部分に一体化され得る。
【0034】
埋込型グルコースセンサは、生体適合性材料で作られてよく、電極は、金または他の生体適合性かつ導電性の材料で作られ得る。
【0035】
埋込型グルコースセンサは、10mm~50mm、好適には20mm~30mmの長さ、5mm~25mm、好適には11mm~15mmの幅、および1mm~15mm、好適には2mm~5mmの厚さを有し得る。
【0036】
用語説明
以下、本明細書で使用される特定の表現および用語が説明および定義される。
【0037】
調和した、および/または丸みを帯びた
本明細書におけるこの表現は、丸みを帯び、全体的に調和した形状であるセンサハウジングを表す。調和した、丸みを帯びたハウジングは、エッジや角部を備えず、特に鋭利なエッジおよび鋭利な角部を備えない。本明細書における調和した、および丸みを帯びたという表現は、楕円形、二重凸形、卵形、任意の楕円様形状、超楕円様形状、および球面形状、および楕円と球面または卵形の任意のハイブリッドも含み、包含する。調和した、および/または丸みを帯びたという用語は、超楕円形も含む。
【0038】
凸形および/または凸状形
本明細書における凸形および/または凸状形という用語は、外側に向かって、本例では、埋込型グルコースセンサが埋め込まれた場合に外側にある身体組織に向かって膨れ上がる形状を指す。したがってハウジングの第1部分は、ハウジングの内側から離れる方向に、すなわち回路基板、コイル、および通信ユニットから離れる方向に、そこから膨れ上がるように延びる。第1部分の凸形および/または凸状形は、多角形、または完全に丸みを帯びて滑らかであってよい。多角形は最適ではないが、正方形センサに比べて、したがって平坦な表面に比べると測定精度が改善される。
【0039】
本明細書に示す実施形態は、組み合わせることが可能であり、1つの実施形態の様々な特徴は、他の実施形態に取り入れられ得る。1つの実施形態に示す特徴は、別の実施形態において適用され得る。特に、特徴はいずれも、本明細書に示す別の実施形態において利用または実装されることが除外されることはない。
【0040】
本発明は、典型的な目的のために、実施形態(複数も可)によって、また添付図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】楕円形埋込型グルコースセンサの斜視図を概略的に示す。
図2図1に示すものと同様の実施形態の斜視図を概略的に示す。
図3図1に示すものと同様の実施形態の斜視図を概略的に示す。
図4】埋込型グルコースセンサの別の実施形態の斜視図を概略的に示す。
図5】例示のために特定の部品が省略された、埋込型グルコースセンサの内部を概略的に示す。
図6図2の直線VI-VIに沿って埋込型グルコースセンサの断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、両凸楕円または楕円形のハウジング2を備える埋込型グルコースセンサ1を示し、ハウジングは、第1部分3aおよび第2部分3bを備える。上側第1部分3aと考えられ得る第1部分3aは、2つの注入電極4と、2つの感知電極5とを備える。注入電極4は、電流を注入するように構成され、感知電極5は、インピーダンスを測定および決定するように構成される。下側第2部分3bと考えられ得る第2部分3bは、埋込型グルコースセンサ1を組織に固定するための固定手段6を備える。固定手段6は、ループまたはフックの形状で用いられ得る。図1において、ループが示される。これらの固定手段6は、図1に係る実施形態のみに示されるが、これらの固定手段6は、他の任意の実施形態で、好適にはハウジング1の第2部分3bにおいて用いられ得ることに留意されたい。注入電極4および感知電極5は、ハウジング1に統合され、第1部分3aの外側表面と滑らかに同一平面上に配置される。注入電極4は縦長形状であり、感知電極5は、円形で示される。図1に示す例において、ハウジング2は、両凸楕円または楕円形を有する。
【0043】
図2は、図1と同様の埋込型グルコースセンサ1’の実施形態を示すが、この例では、円形注入電極4’が示される。他の特徴は全て、図1に示す実施形態と同じか同様である。ただし、固定手段は図示されない。
【0044】
図1および図2に示す実施形態において、注入および感知電極4、4’、5は、第1部分3aの外側表面上に一列に配置され、2つの感知電極5が、2つの注入電極4、4’の間に配置される。
【0045】
図2は、ハウジング2の長手方向軸を更に示す。加えて、図2は、ハウジングの第1の半分11aおよび第2の半分11bも示す。第1の半分11aおよび第2の半分11bは、長手方向軸aに沿って示すように中間で分割することによって画定され、または長手方向軸aに垂直に延び、ハウジング2の中心を通って延びる平面によって分割される。
【0046】
次に図3を参照すると、埋込型グルコースセンサ1’ ’の別の実施形態が示され、2つの注入電極4および2つの感知電極5が、ハウジング2の第1部分3aの外側表面上に配置されて長方形を画定する。したがって、注入および感知電極4、5は、仮想長方形または方形枠の角部に配置される。他の特徴は全て、図1および図2に示す実施形態と同じか同様である。ただし、固定手段は図示されない。
【0047】
また図3には、第1の半分11aおよび第2の半分11bが良好に示される。
【0048】
図4は、埋込型グルコースセンサ1’ ’ ’の更なる実施形態を示し、ハウジング2’は、図1の実施形態に示すものと同様の注入電極4および感知電極5を有する第1部分3aを備える。ハウジング2の第2部分3b’は、平面として平坦に形成される。第1部分3aは、ここでも凸状形である。第1部分3aから第2部分3b’への変形は、好適には、鋭利なエッジに形成されるのではなく丸みを帯びてよい。
【0049】
図5は、埋込型グルコースセンサ1、1’、1’ ’、1’ ’ ’の内部を示し、互いに電気的に接続されたコイル7、回路基板8、および通信ユニット9を示す。ハウジング2は、例示のために省略されたことを示すために破線で示される。コイル7は、回路基板8の隣に配置されるが、重なってはいない。図5から分かるように、2つの注入電極4、4’および2つの感知電極5、5’は、ハウジング2の回路基板8の周囲に配置された側に配置されている。したがって2つの注入電極4、4’および2つの感知電極5は、コイル7の上ではなく回路基板8の上に配置されている。
【0050】
図5において、距離bが更に示され、距離bは、長手方向a(図2を参照)に沿って測定される回路基板8とコイル7との間の距離である。
【0051】
上述したように、図6に示すように、埋込型グルコースセンサ1、1’、1’ ’、1’ ’ ’が外部電源10によって給電される場合、回路基板8からコイル7を距離bだけ離間させることにより、渦電流の存在が低減される。
【0052】
図6は、図2の埋込型グルコースセンサ1’を通る断面図を示す。コイル7、回路基板8、および通信ユニット10が示され、たとえば任意の種類の読取りデバイスまたはスマートフォンであってよい外部電源10が、どのようにパルス磁場を介してコイルに給電するかも示される。電流注入電極4’および電流感知または電流測定電極5も、それらの回路基板8への電気接続を含んで示される。2つの注入電極4’および2つの感知電極5を有する第1部分3aを備えるハウジング2がよく見えており、コイル7の周囲または上ではなく回路基板8の上に全ての電極が配置されているという特徴も示される。これにより、組織インピーダンスの測定中、2つの注入電極4’および2つの感知電極5に対する、たとえば渦電流などの不所望の電気および/または電磁効果が回避される。
【0053】
センサ1’の給電中、通信ユニット9は、外部電源10と通信し、無線通信を介して測定データを提供してよい。
【0054】
本発明は、いくつかの実施形態に従って説明されており、実施形態および図示された特徴の任意の組み合わせが、本明細書の開示に則して可能であることが留意される。図示された実施形態の全てにおいて、様々な特徴または修正がなされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の組織内のインピーダンスを決定するための埋込型グルコースセンサ(1、1’、1’ ’、1’ ’ ’、1’ ’ ’ ’)であって、
ハウジング(2、2’)と、
前記組織内に電流を注入するための2つの注入電極(4、4’)と、
前記2つの注入電極(4、4’)から分離して配置された、前記組織内のインピーダンスを測定するための2つの感知電極(5)と、
前記ハウジング(2、2’)内に配置された、電源(10)を介して前記埋込型グルコースセンサに給電するためのコイル(7)と、
前記ハウジング(2、2’)内に配置され、前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)および前記コイル(7)に電気的に接続された回路基板(8)と、
前記回路基板(8)に接続された、データパッケージを送信および受信するための通信ユニット(9)と、
前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)を外側表面に備える前記ハウジング(2)
とを備え、
前記外側表面は凸形であり、前記2つの感知電極(5)および前記2つの注入電極(4、4’)は、前記凸形の前記外側表面と同一平面上にあるように前記凸形に埋め込まれ、前記コイル(7)は、前記埋込型グルコースセンサの長手方向軸(a)に沿った方向に前記回路基板から離間して前記回路基板(8)の隣に配置され、前記ハウジング(2、2’)内で前記注入電極(4、4’)、前記感知電極(5)、および前記回路基板(8)から物理的に分離され、離間していることを特徴とする、埋込型グルコースセンサ。
【請求項2】
前記回路基板(8)と前記コイル(7)との間で前記長手方向軸に沿って測定された距離bは、前記回路基板(8)および前記コイル(7)が、前記長手方向軸に垂直に見える方向に重なり合わないように選択される、請求項に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項3】
前記ハウジング(2、2’)は、調和して丸みを帯びた形状である、請求項1または2に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項4】
前記2つの注入電極は、たとえば縦長長円形または縦長長方形などの縦長形状(4)を有する、請求項1~4のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項5】
前記2つの測定電極(5)は、前記注入電極(4、4’)の間に配置される、請求項1~5のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項6】
前記ハウジング(2)は楕円形である、請求項1~6のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は卵形である、請求項1~7のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項8】
前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形は、長手方向軸(a)を画定し、前記楕円形は、少なくとも前記感知電極(5)、前記注入電極(4、4’)、および前記回路基板(8)を第1の半分(11a)に備え、前記コイル(7)は、第2の半分(11b)に配置され、前記第1の半分(11a)および前記第2の半分(11b)は、前記長手方向軸に垂直な方向に見えるように前記第1の半分(11a)と重なり合わず、前記第2の半分(11b)は、前記長手方向軸(a)に垂直に向けられた平面に沿った前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形の分割によって画定され、この平面は、前記ハウジング(2)の前記楕円形または卵形の中心を通って延びる、請求項またはに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項9】
前記通信ユニット(9)も前記第1の半分(11a)に配置される、請求項に記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項10】
前記2つの注入電極(4、4’)および前記2つの測定電極(5)は、射出成形プロセスにおいて、前記ハウジング(2、2’)に一体化される、請求項1~10のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項11】
前記ハウジング(2、2’)は、たとえばシリコンなどの生体適合性材料で作られ、前記2つの注入電極(4、4’)および前記2つの感知電極(5)は、金または他の生態適合性かつ導電性の材料で作られる、請求項1~11のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項12】
前記埋込型グルコースセンサは、それが埋め込まれると前記生物の前記組織に前記埋込型グルコースセンサを固定するための固定手段(6)を備える、請求項1~12のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【請求項13】
前記埋込型グルコースセンサの外寸は、10mm~50mm、好適には20mm~30mmの長さ、5mm~25mm、好適には11mm~15mmの幅、および1mm~15mm、好適には2mm~5mmの厚さに対応する、請求項1~13のいずれかに記載の埋込型グルコースセンサ。
【国際調査報告】