(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体または抽出物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240229BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240229BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240229BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240229BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20240229BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240229BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240229BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240229BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61K35/747
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A23L33/10
C12N1/20 C
C12P19/04 C
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61P29/00
A61P1/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547212
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2022001731
(87)【国際公開番号】W WO2022169283
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0016012
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0014543
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518355261
【氏名又は名称】ネオレーゲン バイオテック
【氏名又は名称原語表記】NEOREGEN BIOTECH
【住所又は居所原語表記】(Seoul National University College of Agriculture and Life Science,Seodun-dong)2-101,Business Incubation Center,89,Seoho-ro,Gwonseon-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do 16614,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェ フン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD27
4B018MD85
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4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZB11
4C087ZC21
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体または抽出物を含む組成物に関するものであり、より詳しくは、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含むことにより、炎症反応の抑制、脂肪生成の抑制、細胞内ブドウ糖取り込みの抑制、インスリン抵抗性の減少および肝脂肪症の減少効果を示すことができ、代謝性疾患の治療または予防効果を示すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または治療用の薬学組成物。
【請求項2】
前記ラクトバチルスプランタラムは、ラクトバチルスプランタラムL-14(受託番号KCTC13497BP)、ラクトバチルスプランタラムATCC10241、ラクトバチルスプランタラムNCDO704、ラクトバチルスプランタラムNCDO1193からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記多糖体は、細胞内多糖体または細胞外多糖体のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記多糖体は、グルコースである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記ラクトバチルスプランタラム抽出物は、前記ラクトバチルスプランタラムの超音波破砕物である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記代謝性疾患は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂質血症、脂肪肝、肥満および炎症からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または改善用の食品組成物。
【請求項8】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を個体に投与するステップ;を含む代謝性疾患の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によると、プロバイオティクス(probiotics)は「適切な量を投与したときに宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義される。プロバイオティクス市場は、腸の健康改善、インスリン抵抗性の予防などの効果で、2016年から2020年まで世界的に37%成長すると予想される。しかし、最近の研究によると、プロバイオティクスを定期的に摂取する場合、予期しない副作用が発生する可能性がある。プロバイオティクスの投与は、例えば、感染、望まない炎症反応、およびプロバイオティクスから天然宿主微生物への遺伝子送達を引き起こす可能性がある。
【0003】
前述のプロバイオティクスの副作用を最小限に抑えるために、最近ではポストバイオティクス(postbiotics)への関心が高まっている。「単純代謝産物」または「無細胞上清液」としても知られているポストバイオティクスは、生きた乳酸菌(lactic acid bacteria,LAB)が分泌する生理活性化合物であることが確認される。ポストバイオティクスには、代謝産物、機能性タンパク質、細胞溶解物および短鎖脂肪酸などの機能性生理活性化合物が含まれ得る。ポストバイオティクスは、抗生物質耐性遺伝子を宿主に送達する危険なしにプロバイオティクスの効果を示すことができるので、プロバイオティクスの代用として利用することができる。また、ポストバイオティクスは、乳幼児において肺炎、髄膜炎などのLAB関連感染のリスクが少ないため、5歳未満の子供に勧めることができる。さらに、ポストバイオティクスは広範囲のpHと温度において安定であり、個々の成分に分離できるので、インビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)の研究に適しており、商用化が容易である。最近の研究では、乳酸菌が分泌するポストバイオティクスの一つである細胞外多糖体(Expolysaccharide,EPS)は、腸上皮細胞内で抗ウイルス効果を示すことが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または治療用の薬学組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または改善用の食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または治療用の薬学組成物。
【0008】
2.前記項目1において、前記ラクトバチルスプランタラムは、ラクトバチルスプランタラムL-14(受託番号KCTC13497BP)、ラクトバチルスプランタラムATCC10241、ラクトバチルスプランタラムNCDO704、ラクトバチルスプランタラムNCDO1193からなる群より選択される少なくとも1つである薬学組成物。
【0009】
3.前記項目1において、前記多糖体は、細胞内多糖体または細胞外多糖体の少なくとも1つである薬学組成物。
【0010】
4.前記項目1において、前記多糖体はグルコースである薬学組成物。
【0011】
5.前記項目1において、前記ラクトバチルスプランタラム抽出物は、前記ラクトバチルスプランタラムの超音波破砕物である薬学組成物。
【0012】
6.前記項目1において、前記代謝性疾患は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂質血症、脂肪肝、肥満および炎症からなる群より選択される少なくとも1つである薬学組成物。
【0013】
7.ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む代謝性疾患の予防または改善用の食品組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物は、炎症反応を抑制することができる。本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物は、LPSとTLR4の相互作用を抑制することによって抗炎症効果を示すことができる。
【0015】
また、本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物は、脂肪生成の抑制、細胞内ブドウ糖取り込みの抑制、インスリン抵抗性の減少および肝脂肪症の減少効果を示すことができ、代謝性疾患の改善効果を示すことができる。本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物は、TLR2と相互作用してAMPK経路を活性化することによって脂肪の生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来の細胞外多糖体の特性を分析した結果を示す。
【
図2】
図2は、ラクトバチルスプランタラムL-14菌株から分泌される代謝産物のマウスマクロファージにおける炎症反応抑制効果を確認した結果を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来のEPSのLPSによって誘導された細胞の形態学的変化の抑制効果を確認した結果を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来のEPSのLPSによって誘導された炎症反応の抑制効果を確認した結果を示す。
【
図5】
図5は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来のEPSのLPSによって誘導されたNF-κBの核転位(Nuclear Translocation)の抑制効果を確認した結果を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来のEPSが主な炎症反応調節経路であるMAPKとNRF2/HO-1経路を調節することを確認した結果を示す。
【
図7】
図7は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来のEPSがTLR4経路によって炎症反応を抑制することを確認した結果を示す。
【
図8】
図8は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物の脂肪前駆細胞から成熟脂肪細胞への分化抑制効果を確認した結果を示す。
【
図9】
図9は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物の高脂肪食マウスモデルにおける体重増加抑制効果と炎症誘発マーカーの発現阻害効果を確認した結果を示す。
【
図10】
図10は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物のインスリン抵抗性マーカーと肝脂肪阻害効果を確認した結果を示す。
【
図11】
図11は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物のAMPKシグナル伝達経路上方制御効果および脂肪生成阻害効果を確認した結果を示す。
【
図12】
図12は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物のヒト骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)の脂肪細胞への分化阻害効果を示す。
【
図13】
図13は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物の過酷な温度条件またはpH変化条件下で脂肪生成抑制効果を確認した結果を示す。
【
図14】
図14は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の脂肪生成阻害効果を確認した結果を示す。
【
図15】
図15は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の脂肪生成阻害効果を確認した結果を示す。
【
図16】
図16は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム抽出物の脂肪生成阻害効果を確認した結果を示す。
【
図17】
図17は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体がTLR4およびMyD88シグナル伝達を抑制して、NF-BおよびMAPK経路のような前炎症媒介体を抑制することを図式化した図である。
【
図18】
図18は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体がTLR2およびAMPKシグナル伝達経路によって脂質蓄積およびブドウ糖取り込みを調節することを図式化した図である。
【
図19】
図19は、一実施形態のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の特性を分析したFPLC結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む炎症または代謝性疾患の予防または治療用の薬学組成物を提供する。
【0018】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ポストバイオティクスの一つであってもよい。用語「ポストバイオティクス(postbiotics)」とは、プロバイオティクス(probiotics)の代謝、発酵などによって生成される物質を意味し、短鎖脂肪酸、抗菌ペプチド、ビタミンB、ビタミンK、複合アミノ酸、ペプチド、神経伝達物質、酵素、ミネラル、タイコ酸(teichoic acid)、多糖体、細胞表面タンパク質などを含むことができ、これらはそれぞれ異なる機能を示すことができる。
【0019】
ラクトバチルスプランタラム菌、前記菌を含む培養液などのプロバイオティクスは生きている菌が含まれているため、免疫力が弱くなった個体において菌血症のような安全性の問題を起こす可能性があるのに対し、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、菌を含むことによって発生し得る副作用を回避することができ、優れた安全性を示すことができる。また、プロバイオティクスは、生産時点から消費期限まで生きている菌の数(CFU)が一定に維持されず、継続的に減少してその機能性が維持されにくいのに対し、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、機能性を示す成分の容量が製造時から一定に維持され、その機能性を一貫して維持することができる。具体的には、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ラクトバチルスプランタラム菌や菌を含む培養液に比べて、熱、湿度、pHなどの外部環境の変化に影響されず、多様な条件下で機能を維持することができる。したがって、ラクトバチルスプランタラムから分離された多糖体は、製品として商用化するのに適している。一実施形態により、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、熱、湿度、pHなどの外部環境の変化に影響されずに安定性を示すことを確認した。
【0020】
ラクトバチルスプランタラムは、公知の菌株であってもよく、例えば、ラクトバチルスプランタラムL-14(受託番号KCTC13497BP)、ラクトバチルスプランタラムATCC10241、ラクトバチルスプランタラムNCDO704、ラクトバチルスプランタラムNCDO1193からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ラクトバチルスプランタラムL-14(受託番号KCTC13497BP)は、韓国生命工学研究院 生物資源センターに2018年3月15日に寄託番号KCTC13497BPとして寄託されている(寄託機関名:韓国生命工学研究院、受託番号:KCTC13497BP、受託日:2018年3月15日)。
【0022】
用語「多糖体(polysaccharide)」とは、単糖類3個以上がグリコシド結合によって大きな分子を作っている糖類を総称するものであり、加水分解すると、単糖類(monosaccharide)となる。
【0023】
多糖体は、乳酸菌を含む微生物が生育過程で生産および排出する高分子多糖体であれば、その種類を限定しない。例えば、多糖体は、細胞外多糖体(exopolysaccharides,EPS)、細胞内多糖体または構造多糖体であってもよく、具体的には、多糖体は細胞外多糖体または細胞内多糖体である。
【0024】
例えば、多糖体は、ラクトバチルスプランタラムの培養液から回収されたものであってもよい。多糖体は、ラクトバチルスプランタラムが発酵中に培養液に排出した代謝産物であり、培養液から回収されたものであってもよい。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム菌株を培地で培養して得られた培養液から分離することができ、具体的には、菌株が除去された培養液でタンパク質を変性させた後に除去し、エタノールを添加して多糖体を分離することができる。
【0025】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ラクトバチルスプランタラム菌株抽出物から分離されたものであってもよい。例えば、多糖体はラクトバチルスプランタラム菌株の破砕物から分離されたものであってもよい。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム菌株を超音波破砕して得られた抽出物(「破砕物」ともいう。)でタンパク質を変性させた後、上澄み液を収集してエタノールを添加して分離したものであってもよい。
【0026】
微生物を用いた多糖体の生産は、培養時間、培養pH、培養温度、O2濃度、攪拌などの環境要因と炭素源の種類及び濃度、窒素源の種類及び濃度、リン酸、硫黄、カリウム、マグネシウム、鉄、カルシウムのような栄養素の含有量と培養方法によって影響を受ける可能性がある。
【0027】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ラクトバチルスプランタラムに由来するものであれば十分であり、菌株の種類は限定されない。
【0028】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ホモジニアス多糖体(homogenus polysaccharide)であってもよい。
【0029】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、グルコースであってもよい。
【0030】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、グルコースホモジニアス多糖体であってもよい。
【0031】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、3×104Da~12×104Da、4×104Da~11×104Da、5×104Da~10×104Da、6×104Da~9×104Da、または7×104Da~8×104Daの重量平均分子量(Mw)を有することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、7.57×104Daの重量平均分子量を有するものであってもよい。
【0032】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、0.01×104Da~6×104Da、0.05×104Da~5×104Da、0.1×104Da~4×104Da、0.5×104Da~3×104Da、または1×104Da~2×104Daの数平均分子量(Mn)を有することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、1.84×104Daの数平均分子量を有するものであってもよい。
【0033】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、2.5~6、3~5.5、3.5~5、または4~4.5の多分散指数(PDI)を有することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、4.12の多分散指数を有するものであってもよい。
【0034】
一実施形態では、ラクトバチルスプランタラムから分離した多糖体の固有の特性を高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography,TLC)、FTIR(Fourier-Transform Infrared Spectroscopy)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより分析した。
【0035】
本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、優れた抗炎症効果を示す。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、炎症性サイトカインを抑制することができる。例えば、ラクトバチルスプランタラム由来の細胞外多糖体は、IL-6、TNF-αおよびIL-1αなどの発現レベルを減少させることができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、炎症の主な媒介体として知られているCOX-2と誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現レベルを減少させることができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、NF-κBのリン酸化および核への転位を抑制することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、MAPKファミリータンパク質、例えばJNK、ERKまたはp38などのリン酸化を抑制することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、Nuclear Factor E2-Related Factor 2(NRF2)およびヘム酸素添加酵素(Heme Oxygenase-1,HO-1)の発現を抑制することができる。本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、LPSとTLR4の相互作用を抑制して抗炎症効果を示すことができる。
【0036】
本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、優れた抗肥満効果を示す。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を抑制することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、脂肪生成の抑制、細胞内ブドウ糖取り込みの抑制効果を示すことができる。本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、TLR2と相互作用してAMPK経路を活性化することによって脂肪生成を抑制することができる。
【0037】
本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、優れたインスリン抵抗性または肝脂肪阻害効果を示すことができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、空腹時血糖、空腹時インスリン、レプチン、レジスチンを減少させることができ、肝における脂肪蓄積を阻害することができる。
【0038】
本発明のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、アルコール沈殿法を用いて精製することができる。
【0039】
例えば、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ラクトバチルスプランタラム培養液に酢酸を添加した後、アルコールを添加して沈殿物を分離するステップ;を含む方法により得ることができる。
【0040】
他の例では、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、ラクトバチルスプランタラム抽出物に酢酸を添加した後、アルコールを添加して沈殿物を分離するステップ;を含む方法により得ることができる。
【0041】
前記方法は、アルコールを添加して沈殿物を分離するステップの後に、前記沈殿物に精製水を投入して透析するステップをさらに含むことができる。
【0042】
酢酸は、トリクロロ酢酸であってもよい。酢酸を処理して培養液中のタンパク質の含有量を変性させることができる。
【0043】
アルコールはC1~C4のアルコールであってもよく、一実施形態によれば、エタノールであってもよい。アルコールを添加して核酸を分解することができる。アルコールは、無水エタノールであってもよい。
【0044】
ラクトバチルスプランタラム抽出物は、ラクトバチルスプランタラムの破砕物であってもよく、例えば、ラクトバチルスプランタラムの破砕物を凍結乾燥して得られたパウダーまたはその溶液若しくは分散液であってもよい。
【0045】
ラクトバチルスプランタラム抽出物は、ラクトバチルスプランタラムの超音波破砕物であってもよい。
【0046】
ラクトバチルスプランタラム抽出物は、ラクトバチルスプランタラム菌株を超音波粉砕機で超音波処理して得られる抽出物であれば、菌株の種類を限定しない。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム抽出物は、ラクトバチルスプランタラムL-14抽出物、ラクトバチルスプランタラムATCC10241抽出物、ラクトバチルスプランタラムNCDO704抽出物、またはラクトバチルスプランタラムNCDO1193抽出物であってもよい。
【0047】
ラクトバチルスプランタラム抽出物は、培養培地で培養されたラクトバチルスプランタラムに超音波処理して得られたものであってもよい。ラクトバチルスプランタラム抽出物は、培養された超音波処理済みのラクトバチルスプランタラムから細胞壁成分および他の残留物が除去されたものであってもよい。超音波処理は、0℃以下で行うことができる。
【0048】
本発明のラクトバチルスプランタラム抽出物は、優れた抗炎症効果を示すことができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム抽出物は、肝または脂肪組織におけるレプチン、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、レジスチンのような炎症誘発マーカーの発現を減少させることができ、アディポネクチンおよびアルギナーゼ1(Arg1)のような抗炎症マーカーの発現を増加させることができる。
【0049】
本発明のラクトバチルスプランタラム抽出物は、優れた抗肥満効果を示すことができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム抽出物は、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を抑制することができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム抽出物は、脂肪生成の抑制、細胞内ブドウ糖取り込みの抑制効果を示すことができる。
【0050】
本発明のラクトバチルスプランタラム抽出物は、優れたインスリン抵抗性または肝脂肪阻害効果を示すことができる。一実施形態によれば、ラクトバチルスプランタラム抽出物は、空腹時血糖、空腹時インスリン、レプチン、レジスチンを減少させることができ、肝における脂肪蓄積を阻害することができる。
【0051】
代謝性疾患は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂質血症、脂肪肝、肥満および炎症からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0052】
薬学組成物は、経口および非経口の様々な製剤で投与することができ、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造することができる。
【0053】
用語「治療」とは、治癒だけでなく、軽度の緩和、実質的な緩和、大規模な緩和を含む任意の程度の緩和を含み、治療されるべき症状に罹患している対象体または患者に有益な効果をもたらす処置を指し、緩和の程度は、少なくとも軽度の緩和である。
【0054】
用語「予防」とは、全体の予防だけでなく、症状の発症または再発の可能性の軽度の、実質的な、又は大規模な減少を含み、予防されるべき症状または再発の可能性の任意の程度の減少をもたらす予防的措置を指し、可能性の減少の程度は、少なくとも軽度の減少である。
【0055】
また、本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を含む炎症または代謝性疾患の予防または改善用の食品組成物を提供する。
【0056】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体、ラクトバチルスプランタラム抽出物、および炎症または代謝性疾患については、前述の通りであるので具体的な説明を省略する。
【0057】
食品組成物の形態は特に限定されず、例えば、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、餅、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、アルコール飲料およびビタミン複合剤、乳製品および乳加工製品などであってもよい。
【0058】
さらに、本発明は、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体またはラクトバチルスプランタラム抽出物を個体に投与するステップ;を含む、炎症または代謝性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0059】
ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体、ラクトバチルスプランタラム抽出物、および炎症または代謝性疾患については、前述の通りであるので具体的な説明を省略する。
【0060】
個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、またはネコであってもよい。
【0061】
投与は当業界で知られている方法によって行うことができる。投与は、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経皮(transdermal)、粘膜、鼻腔内(intranasal)、気管内(intratracheal)または皮下投与などの経路で、任意の手段によって個体に直接投与することができる。投与は全身的または局部的に行うことができる。投与は局所投与であってもよい。
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果についてより具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明の理解を助けるために例示を目的として提供されるものであり、本発明の範囲および範囲を限定するものではない。
【0063】
I.ラクトバチルスプランタラム抽出物の製造
1.実施例1:ラクトバチルスプランタラムL-14抽出物
ネオレーゲン・バイオテック(韓国、ギョンギ-ド)から入手したラクトバチルスプランタラムL-14菌株(本発明の説明内では「L-14」ともいう。)(KTCT13497BP)をMRS培地において37℃で18時間予備培養した。次いで、これらを500mL MRSブロスに1%接種し、37℃で18時間培養した。培養したL-14を遠心分離機(4℃で10分間10,000g)で回収し、PBSで2回洗浄した。その後、蒸留水で洗浄してMRSブロスとPBSを完全に除去した。20mLの蒸留水に再懸濁したL-14を、超音波粉砕機を用いて氷上で30分間超音波処理した。細胞壁成分および他の残留物を除去するために、4℃において10,000gで20分間遠心分離した後、ペレットを廃棄した。上澄み液をろ過(0.2μm)し、-80℃で一晩凍結した。次いで、凍結乾燥してL-14抽出物を得た(実施例1)。得られたL-14抽出物は、使用前にPBSで再構成した。また、L-14抽出物(N60、実施例2-1)をpH7.0に調整(以下、「P60」)するか、または90℃で30分間培養(以下、「H60」)し、L-14抽出物中で有効な分子の特性を確認した。
【0064】
2.実施例2:ラクトバチルスプランタラムATCC10241抽出物
実施例1の製造方法と同様にして製造する一方、ラクトバチルスプランタラムL-14菌株(KTCT13497BP)の代わりにラクトバチルスプランタラムsubsp.plantarum(菌株番号:ATCC10241)を用いて、ラクトバチルスプランタラムATCC10241抽出物(実施例2)を製造した。
【0065】
3.実施例3:ラクトバチルスプランタラムNCDO704抽出物
実施例1の製造方法と同様にして製造する一方、ラクトバチルスプランタラムL-14菌株(KTCT13497BP)の代わりにラクトバチルスプランタラム(菌株番号:NCDO704)を用いて、ラクトバチルスプランタラムNCDO704抽出物(実施例3)を製造した。
【0066】
4.実施例4:ラクトバチルスプランタラムNCDO1193抽出物
実施例1の製造方法と同様にして製造する一方、ラクトバチルスプランタラムL-14菌株(KTCT13497BP)の代わりにラクトバチルスプランタラム(菌株番号:NCDO1193)を用いて、ラクトバチルスプランタラムNCDO1193抽出物(実施例4)を製造した。
【0067】
II.ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の製造
1.実施例5:ラクトバチルスプランタラムL-14(KTCT13497BP)由来の細胞外多糖体
ネオレーゲン・バイオテック(韓国、ギョンギ-ド)から入手したラクトバチルスプランタラムL-14菌株(KTCT13497BP、以下「L-14」ともいう。)をデキストロース(dextrose)2%、動物組織のペプシン消化物(peptic digest)1%、牛肉抽出物1%、酵母抽出物0.5%、酢酸ナトリウム0.5%、リン酸二ナトリウム0.2%、クエン酸アンモニウム0.2%、ポリソルベート80 0.1%、硫酸マグネシウム0.01%、マンガン0.005%および硫酸塩0.005%を含むMRS培地(Hardy Diagnostics,SantaMaria,CA,USA)において30℃で18時間培養した。L-14培養培地を10,000gで20分間遠心分離して分離した。次いで、培地の上澄み液を分離し、トリクロロ酢酸を添加して37℃で1時間L-14培養培地のタンパク質を変性させた。次に、変性タンパク質を除去するために10,000gで20分間遠心分離し、上澄み液のみを無水エタノールと混合した。無水エタノールと混合して生成した沈殿物を回収し、4℃で24~48時間、蒸留水(D.W.)を用いた透析によって培地成分及び他の物質を完全に除去した。次に、透析した溶液を減圧下で凍結乾燥(lyophilize)してL-14由来のEPS(実施例5)を取得し、後続する実験のためにEPSを蒸留水に再懸濁して-80℃で保存した。
【0068】
2.実施例6:ラクトバチルスプランタラムL-14(KTCT13497BP)由来の多糖体
前記「I.1.」の方法で製造されたL-14抽出物(実施例1)に、最終濃度が14%(v/v)となるようにトリクロロ酢酸を添加してタンパク質含有量を変性させた。L-14抽出物を90rpmの振盪培養器において37℃で30分間培養し、8,000gで20分間遠心分離した。上澄み液を収集し、最終濃度が67%(v/v)になるように冷たい無水エタノールを加えた。混合物を4℃で24時間培養し、沈殿物を収集した。沈殿物と同じ体積の蒸留水(D.W.)を添加した。Standard RC tubing(molecular weight cut-off:3.5 kDa;Spectrum Chemical,New Brunswick,NJ,USA)を用いて2日間、水を1日に2回交換しながら溶液を透析し、透析液をろ過(0.2μm)した。次いで、凍結乾燥してL-14由来の多糖体を得た(実施例6)。得られた実施例6の多糖体は、使用前にPBSで再構成した。
【0069】
3.実施例7:ラクトバチルスプランタラムATCC10241由来の多糖体
前記実施例6の方法と同様にする一方、前記「I.1.」の方法で製造されたL-14抽出物(実施例1)の代わりに前記「I.2.」の方法で製造された抽出物(実施例2)を用いて、ラクトバチルスプランタラムATCC10241由来の多糖体(実施例7)を製造した。
【0070】
4.実施例8:ラクトバチルスプランタラムNCDO704由来の多糖体
前記実施例6の方法と同様にする一方、前記「I.1.」の方法で製造されたL-14抽出物(実施例1)の代わりに前記「I.3.」の方法で製造された抽出物(実施例3)を用いて、ラクトバチルスプランタラムNCDO704由来の多糖体(実施例8)を製造した。
【0071】
5.実施例9:ラクトバチルスプランタラムNCDO1193由来の多糖体
前記実施例6の方法と同様にする一方、前記「I.1.」の方法で製造されたL-14抽出物(実施例1)の代わりに前記「I.4.」の方法で製造された抽出物(実施例4)を用いて、ラクトバチルスプランタラムNCDO1193由来の多糖体(実施例9)を製造した。
【0072】
III.ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の分析
1.高速タンパク質液体クロマトグラフィー(Fast Protein Liquid Chromatography,FPLC)
前記「II.」の方法で分離されたラクトバチルスプランタラム由来の多糖体が均一な多糖類であるかを識別するために、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(Fast Protein Liquid Chromatography,FPLC)サイズ排除クロマトグラフィーにより多糖体を分析した。具体的には、HiLoad(登録商標)16/600 Superdex 200pgカラム(GE Healthcare)でPBSを用いてサイズ排除クロマトグラフィーによりEPS(30mg/mL)を分離し、AKTA高速タンパク質液体クロマトグラフィー(GE Healthcare)により分析した。その結果、分離されたラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、単一の対称ピークを生成した。これは、多糖体が均質な多糖類であることを示す(
図1A(実施例5)及び
図19(実施例6))。
【0073】
2.薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography,TLC)とベネディクトのテスト(Benedict's test)
前記「II.」の方法で分離された多糖体の単糖類の組成を確認するために、10mgの多糖体を100℃で4時間、1mL硫酸(2N)で加水分解した。残留硫酸を十分なBaCO
3で12時間中和した。EPS加水分解物をpH7に調整した後、分析のために凍結乾燥した。EPS加水分解物をTLCシリカゲル(Merck,Darmstadt,Germany)で処理し、n-ブタノール:メタノール:25%アンモニア溶液:DW(5:4:2:1)から構成されたバッファーに移した。EPSの構成を可視化するために、ゲルをアニリン-ジフェニルアミン試薬に浸し、110℃のオーブン中で5分間焼いた。ベネディクトのテスト(Benedict's test)を行うために、多糖体と多糖体加水分解物を同じ定量のベネディクト試薬(BIOZOA Biological Supply,Seoul,Korea)と混合した後、沸騰水に加熱した。多糖体の単糖類成分は、薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography,TLC)により決定した。多糖体の加水分解物は、標準物質であるブドウ糖と同じ点で発現した(
図1B、実施例5)。ベネディクトのテストの結果、多糖体の加水分解物は試薬の色を橙色-赤色に変えた。さらに、多糖体は試薬の色を緑色に変えた(
図1C、実施例5)。このような結果から、分離された多糖体は主にブドウ糖で構成されていることが分かった。
【0074】
3.フーリエ変換型赤外分光(Fourier-transform infrared spectroscopy,FTIR)およびゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)
ソウル大学国立大学間研究施設センターでは、4000~500cm-1の吸収範囲において、TENSOR27 FTIR(Bruker,Bilerica,MA,USA)を用いて多糖体の構造的特性を分析した。また、多糖体の分子量を決定するために、40℃で120Å、500Åおよび1000Åのカラム(Waters,Milford,MA,USA)付きのDionex HPLC Ultimate3000 RI System(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)を用いてGPC分析を行った。実験データはプルランで補正し、クロマトグラフィーデータシステム(Chromeleon 6.8 Extention-pak)で処理した。多糖体は、Sodium azide 0.1M in waterを用いて溶離し、1mL/分の流速で作動した。
【0075】
実施例5の多糖体のFTIR結果は、3500cm
-1から500cm
-1までの複雑なピークパターンを示した。そのうち、3307.31cm
-1のピークはO-H基、2935.1cm
-1のピークはメチル基の弱いC-H伸縮ピーク、1648.88cm
-1のピークはC=O伸縮ピークのようなブドウ糖の特徴的なグループを示す。また、最も強い吸収帯である1032.58cm
-1のピークは、C-O結合とO-H結合を示す。911.98cm
-1および812.28cm
-1のピークは、炭水化物の側面グループを示す(
図1D、実施例5)。このような結果から、分離された多糖体がブドウ糖を主成分とする多糖類の吸収ピークを有していることを確認した。また、GPCによる分子量の計算結果、実施例5の多糖体は、1.84×10
4Daの数平均分子量(Mn)、7.57×10
4Daの重量平均分子量(Mw)、3.74×10
5DaのZ平均分子量(Mz)および4.12の多分散指数(PDI)を示した(
図1E)。このような結果から、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体は、主にブドウ糖で構成される均質な多糖類であることを確認した。
【0076】
IV.ラクトバチルスプランタラム抽出物またはラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の抗炎症効果の確認
1.実験方法
(1)細胞培養、材料および統計
マウスマクロファージRAW264.7は、ATCC(American Type Culture Collection)から入手した。細胞を10%ウシ胎児血清(HyClone,Logan,UT,USA)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco,Grand Island,NY,USA)を含むDMEM(Dulbecco's modified Eagle's media)(WELGENE,テグ市,韓国)、5% CO2加湿雰囲気のインキュベーターで37℃の条件下で培養した。抗体の購入先は以下の通りである:phospho-NF-κB、NF-κB、phospho-ERK、ERK、phospho-p38、p38、phospho-JNK、JNKおよびCOX-2は、Cell Signaling Technology(Danvers,MA,USA)、HO-1は、Abcam(Cambridge,UK)、NRF2およびTLR4は、Cusabio(Wuhan,China)、iNOSは、Invitrogen(Carlsbad,CA,USA)、MyD88は、Novus Biologicals(Centennial,CO,USA)、GAPDHは、BioLegend(San Diego,CA,USA)から購入した。全てのデータは3つの独立した実験によって得られ、平均±標準偏差(SD)として示す。統計的な分析は、unpaired ANOVAを用いて決定し、有意性は*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001と定義した。
【0077】
(2)細胞生存力の分析
ラクトバチルスプランタラムL-14菌株の細胞生存力に対する効果を確認するために、RAW264.7細胞を96ウェルプレートに1ウェル当たり2.0×103細胞の密度で播種した。1日経過後、培地を、L-14菌株を含む培地に交換し、さらに6時間培養した。次いで、L-14菌株を含む培地を、LPSを含む新しい培地に交換し、6時間、表示された濃度で炎症反応を誘導した。細胞生存率は、Quanti-MaxWST-8細胞生存率キット(BIOMAX,Seoul,Korea)を用いて確認した。
【0078】
また、L-14由来のEPS(実施例5)の細胞生存力に対する効果を確認するために、接種された細胞を様々な濃度のL-14由来のEPS(実施例5)を含有する培地で1日間培養した。生存力は同じキットで確認した。
【0079】
(3)ELISA
RAW264.7細胞を1ウェル当たり2.0×105細胞の密度で12ウェルプレートに接種した。次いで、培地を1.0×106CFU/mL濃度のL-14菌株が接種された培地に交換し、6時間維持した。その後、培地を除去し、細胞をDMEMで徹底的に3回洗浄した。炎症を誘発するために、洗浄した細胞を、LPS(1g/mL)を含む培地で培養し、6時間維持した。各ウェルで得られた培養液を10,000gで3分間遠心分離し、上澄み液を集めた。サイトカインは、製造メーカーの指針に従ってELISAMAX-Deluxe Set(BioLegend)によって定量化した。
【0080】
さらに、L-14由来のEPS(実施例5)の前処理が、LPSによるサイトカインの誘導を減少させたかどうかを調べるために、RAW264.7細胞を12ウェルプレートに24時間接種した。細胞をL-14由来のEPS(実施例5)で6時間前処理した後、培養された培地を18時間、LPSを含む新鮮な培地に交換して炎症反応を誘導した。培養培地中のサイトカインを前述のようにして定量化した。
【0081】
(4)クリスタルバイオレット染色
RAW264.7細胞を12ウェルプレートに接種し、1日間培養した。EPS前処理が細胞の形態に影響を及ぼし、LPSによって誘導された形態学的変化を抑制するかどうかを調べるために、細胞をEPS(実施例5)で6時間処理し、培養培地を18時間、LPS(1g/mL)を含む新鮮な培地に交換した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、クリスタルバイオレット溶液(Sigma-Aldrich,Saint Louis,MO,USA)で染色した。EVOS CL Core顕微鏡(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて、形態学的変化を100倍率で測定した。
【0082】
(5)ウェスタンブロット
プロテアーゼ阻害剤カクテル及びホスファターゼ阻害剤カクテルと共に、Cell Culture Lysis 1×Reagent(Promega,Fitchburg,WI,USA)を用いて、LPSで処理したRAW264.7細胞からタンパク質を分離した。細胞質および核タンパク質は、製造メーカーの指針に従って、ExKine-Nuclear and Cytoplasmic Protein Extraction Kit(Abbkine,Wuhan,China)を用いて得た。総タンパク質濃度は、Pierce-BCAタンパク質分析キット(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)で定量化した。次いで、変性されたタンパク質を12%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、ポリビニリデンジフルオリド膜に移した。室温(RT)で1時間遮断した後、膜を適切な一次抗体(1:1000)を含む脱脂乳において4℃で一晩培養した。メンブレンは、0.1%トリス緩衝生理食塩水を用いて洗浄した。Tween 20(Sigma)および二次抗体(1:2000)を含む脱脂乳において室温でさらに1時間培養した。ECL Western Blot Substrate(Daeil Lab Service,Seoul,Korea)を用いてタンパク質シグナルを検出した。
【0083】
(6)免疫蛍光(IF)の分析
RAW264.7細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり1.0×106個細胞の密度で播種し、一晩インキュベートした。EPS(実施例5)で前処理した細胞を、LPSを含有する新鮮な培地で培養し、掻き取って回収した。4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100(Sigma)で透過化した後、細胞を3%ウシ血清アルブミン(BSA,Bovogen,East Keilor,Australia)で1時間ブロックした。次いで、PE接合されたiNOS抗体と共にインキュベートした。洗浄した細胞をNucBlue-Stainを含むProLong-Glass Antifade Mountant(Invitrogen)で装着した。また、NF-κBの転位を可視化するために、RAW264.7細胞をEPSで2時間前処理し、炎症反応をLPS(1g/mL)で1時間刺激した。同様の方法で分離された細胞を製造した。ブロックを1時間行った後、細胞を4℃で18時間NF-B抗体(1:200)と共に培養した。次いで、細胞を徹底的に洗浄し、Alexa Fluor 488接合二次抗体と共に3%BSAにおいて室温で30分間培養した。同じ菌株を用いて細胞を装着した。全てのスライドは、LSM 800共焦点レーザー走査顕微鏡293(Carl Zeiss,Oberkochen,Germany)を用いて分析した。
【0084】
2.実験の結果
(1)ラクトバチルスプランタラム菌株から分泌される代謝産物のマウスマクロファージにおけるLPSによる炎症反応抑制効果の確認
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、マウスマクロファージRAW264.7(American Type Culture Collection)でLPSにより誘導されたサイトカインを定量化し、ラクトバチルスプランタラムL-14菌株(KTCT13497BP)の炎症反応抑制効果を確認した。12ウェルプレートに播種した細胞をL-14菌株と6時間共培養し、炎症誘発マーカーであるIL-6、TNF-αおよびMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)をLPS処理によって誘導した。その結果、LPS処理により、IL-6、TNF-αおよびMCP-1の発現レベルが増加したが、L-14単独処理によっては増加しなかった。炎症性サイトカインの放出は、対照群(LPS処理群)と比較して、L-14と共培養された細胞において有意に減少した(
図2A)。また、L-14菌株が細胞増殖に影響を及ぼして炎症性サイトカインが減少しないのではないかを確認するために、同じ培養条件で培養されたRAW264.7細胞の生存力を定量化した。その結果、細胞生存力はL-14またはLPSによる影響を受けなかった(
図2B)。このような結果は、ラクトバチルスプランタラムL-14から分泌される代謝産物は、免疫細胞と直接相互作用して抗炎症効果を示すことを示唆している。
【0085】
(2)ラクトバチルスプランタラム由来のEPSのマウスマクロファージにおけるLPSによる形態学的変化の抑制効果の確認
ラクトバチルスプランタラム由来のEPSがLPSによって誘導された形態学的変化を抑制するかどうかを確認するために、マウスマクロファージに実施例5のEPSを6時間前処理した後、LPSで18時間形態学的変化を刺激した後、細胞の形態を確認した。クリスタルバイオレット染色の結果、L-14由来のEPS(実施例5)がLPS処理による細胞の形態学的変化を緩和した(
図3A、
図3において、EPS100は実施例5の100μg/ml処理、EPS200は実施例5の200μg/ml処理を意味する。)。また、RAW264.7細胞をより高い濃度のEPSで1日間処理した場合、細胞生存力は影響を受けないままで維持された(
図3B)。このような結果は、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSは、細胞生存力に影響を及ぼさずにマウスマクロファージにおけるLPSで誘導された形態学的変化を抑制することを示す。
【0086】
(3)ラクトバチルスプランタラム由来のEPSのマウスマクロファージにおけるLPSによる炎症反応抑制効果の確認
ラクトバチルスプランタラム由来のEPSが、LPS刺激による炎症反応を抑制するかどうかを確認するために、実施例5のEPSで前処理したRAW264.7細胞で産生された前炎症性サイトカインを定量化した。サイトカインの定量化の結果、L-14由来のEPSの前処理は、IL-6、TNF-αおよびIL-1βのレベルを弱め、特にIL-1βを対照群の発現レベルと類似したレベルに減少させた(
図4A、
図4において、EPSは実施例5を意味する。)。また、ウェスタンブロットにより、実施例5のEPSが前処理されたRAW264.7細胞における炎症の主な媒介体として知られているCOX-2および誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現レベルを分析した。LPSの処理後、COX-2およびiNOSタンパク質の発現レベルが増加したが、これらの発現レベルはEPS前処理されたRAW264.7細胞において抑制された(
図4B)。さらに、免疫蛍光(IF)分析により、実施例5のEPSが前処理されたRAW264.7細胞におけるLPS誘導型iNOSの発現レベルを分析した。分析の結果、LPS処理後、LPS誘導型iNOSの発現が増加したが、EPS前処理されたRAW264.7細胞におけるLPS誘導型iNOSの発現が減少した(
図4C)。このような結果から、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSは、LPS誘導炎症反応に対して抑制効果を示すことを確認した。
【0087】
(4)ラクトバチルスプランタラム由来のEPSのマウスマクロファージにおけるLPSによるNF-κBの核転位(Nuclear Translocation)抑制効果の確認
ラクトバチルスプランタラム由来のEPSが、LPSによって誘導されたNF-κBの核への転位およびリン酸化を抑制するかどうかを確認するために、実施例5のEPSで前処理したRAW264.7細胞にLPSで炎症反応を誘導した後、NF-κBの発現レベルおよびリン酸化された形態の位置を分析した。その結果、L-14由来のEPS(実施例5)前処理により、p-NF-κB/NF-κB比率は減少した(
図5A、
図5において、EPSは実施例5を意味する。)。L-14由来のEPS(実施例5)自体は、NF-κBのリン酸化を促進しなかった。一方、L-14由来のEPS(実施例5)は、全ての濃度においてNF-κBのLPS誘導核転位を抑制した(
図5B)。一貫して、NF-κBの核への転位は、LPSによって誘導されたが、L-14由来のEPS(実施例5)の前処理によって減少した(
図5C、
図5Cにおいて、EPS100は実施例5の100ug/ml処理、EPS200は実施例5の200μg/ml処理を意味する。)。
【0088】
(5)ラクトバチルスプランタラム由来のEPSのマウスマクロファージにおける炎症抑制経路の確認
1)MAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase,MAPK)およびNuclear Factor E2-Related Factor 2/Heme Oxygenase-1(NRF2/HO-1)経路の調節
MAPKおよびNRF2/HO-1経路は、マウスマクロファージにおける炎症反応の主な調節因子として知られている。まず、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSがLPSで誘導されたRAW264.7細胞でMAPK経路を抑制できるかどうかを確認するために、MAPKファミリータンパク質(JNK、ERKおよびp38)のリン酸化をウェスタンブロットにより分析した。その結果、実施例5のEPSは、100g/mLの濃度でもJNK及びERKのリン酸化を有意に抑制した(
図6A、
図6においてEPSは実施例5を意味する。)。p38のリン酸化は、実施例5のEPSを200g/mLの濃度で処理した場合に抑制された。また、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSの抗炎症効果がNRF2/HO-1経路によって媒介されるかを確認するために、NRF2、HO-1マーカーのタンパク質発現レベルを確認した。その結果、HO-1およびNFR2の発現レベルは、LPSの有無に関係なく増加した(
図6B)。さらに、実施例5のEPSは、炎症反応を媒介する主な経路として知られているNRF2の核への転位を増加させた(
図6C)。すなわち、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSは、MAPK系のタンパク質のリン酸化を抑制し、LPSで誘導されたRAW264.7細胞におけるNRF2/HO-1の発現を向上させた。
【0089】
2)LPSとTLR4との相互作用の抑制
ラクトバチルスプランタラム由来のEPSが、TLR4による炎症反応を抑制するかどうかを調べるために、RAW264.7細胞に実施例5のEPSおよびLPSを処理した後、TLR4の発現程度を分析した。その結果、LPSによって上方制御されたTLR4は、EPS(全ての濃度)によって減少した(
図7A、
図7においてEPSは実施例5を意味する。)。また、TLR4経路を遮断することが確認されたTAK-242を用いて、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSがTLR4と相互作用する方法を確認した。興味深いことに、RAW264.7細胞にEPSのみを処理した場合、TLR4のタンパク質発現は、無処理対照群よりもさらに抑制された(
図7B)。EPSはまた、TAK-242処理群で観察されたものと同様に、LPSで誘導された群におけるTLR4およびMyD88の発現レベルを抑制した。COX-2の発現は、TAK-242によって抑制され、EPSによっても同様な方式で抑制された。一貫して、EPSは、TAK-242がそれらを下方制御するほど培地から分泌されたサイトカインIL-1、IL-6およびTNF-αの発現を有意に減少させた(
図7C)。前記の結果は、ラクトバチルスプランタラム由来のEPSが、LPS処理されたRAW264.7細胞においてTLR4によって抗炎症効果を示すことを示唆している。
【0090】
V.ラクトバチルスプランタラム抽出物またはラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の抗肥満、インスリン抵抗、脂肪肝阻害効果の確認
1.実験方法
(1)細胞培養、材料および統計
3T3-L1細胞株およびhBM-MSCは、それぞれATCC(American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA)およびPromoCell(Heidelberg,Germany)から入手した。3T3-L1細胞を4.5g/L D-グルコース、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、25mM HEPES、3.7g/L重炭酸ナトリウム、4mM L-グルタミン、および1mMピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)(GE Healthcare,Chicago,IL,USA)で培養した。3T3-L1細胞を、5%CO2の加湿雰囲気を含むインキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0091】
60%kcal脂肪を含有するRodent DietをResearch Diets(New Brunswick,NJ,USA)から購入した。AICARおよびCCは、Selleckchem(Houston,TX,USA)から購入し、C29は、Cayman Chemical(Ann Arbor,MI,USA)から購入した。インスリン、レプチン、アディポネクチンおよびレジスチンELISAキットは、CUSABIO(中国、フーベイ)から購入し、IFN-γ、IL-6およびMCP1 ELISAキットは、BioLegend(San Diego,CA,USA)から購入した。抗体の購入先は以下の通りである:Akt、ウサギIgGアイソタイプおよびヤギIgGアイソタイプ抗体は、Bioss(Woburn,MA,USA);PPARγ、C/EBPα、FABP4、t-AMPKα、p-AMPKα、t-ACC、p-ACC、FAS、p-NF-κB、t-NF-κB、p-AKT、t-AKT、t-AS160、p-AS160およびMyD88抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers,MA,USA);Arg1、ATGL、IL-6、TNF-α、TLR2抗体は、CUSABIO;SREBP-1c抗体は、Novus Biologicals(Centennial,CO,USA);レプチン(leptin)及びレジスチン(resistin)抗体は、R&D Systems(Minneapolis,MN,USA);β-アクチン(actin)、GAPDHおよびSCD1抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Dallas,TX,USA)から購入した。
【0092】
統計分析は、SPSSソフトウェア(バージョン25.0;SPSS Inc.,Chicago,Illinois)およびGraphPad Prism 5(GraphPad,CA,USA)を用いて行った。データは、平均±標準偏差として示した。統計分析はANOVAを用いて決定し、有意性は*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001と定義した。
【0093】
(2)3T3-L1細胞およびhBM-MSCの分化;並びに、脂肪蓄積およびトリアシルグリセロールの分析
3T3-L1細胞またはhBM-MSCを培地の24ウェルプレートに1ウェル当たり1.0×105個細胞の密度で播種した。細胞が融合してから2日後、培地をα-MEM、10% FBS、1% P/S、1uMデキサメタゾン、0.5mMイソブチルメチルキサンチン、100uMインドメタシン、10mg/mLインスリン、およびラクトバチルスプランタラム抽出物(実施例1~4)、pH7.0に調整したラクトバチルスプランタラム抽出物(P60)、および90℃で30分間培養したラクトバチルスプランタラム抽出物(H60)を含有する脂肪生成誘導培地(MDI)に交換した。最初の脂肪生成誘導から4日後、α-MEM、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、10mg/mLインスリン、および抽出物を含む脂肪生成維持培地に培地を交換した。脂肪分化中に2日ごとに培地を交換し、3T3-L1細胞とhBM-MSCをそれぞれ12日および7日間維持した。12日後、脂質蓄積を比較するために、3T3-L1細胞とhBM-MSCをPBSで洗浄し、4%ホルムアルデヒドで固定し、次いでオイルレッドO溶液で30分間染色した。染色した脂肪細胞をEVOS CL Core顕微鏡(Life Technologies)で200倍拡大して観察した。相対的脂質蓄積を比較するために、3T3-L1細胞およびhBM-MSCのオイルレッドOをイソプロパノールに溶解し、マイクロプレートリーダーを用いて500nmにおける吸光度を測定して定量化した。結果は、対照群の値を1.0とし、それに対する百分率として分析した。相対的脂質蓄積を示す式は、(Asample-Ablank)/(Acontrol-Ablank)であった。また、トリアシルグリセロール(TAG)は、製造メーカーの指針に従ってTAG分析キット(Cayman Chemical)で定量した。
【0094】
(3)細胞生存力の分析
3T3-L1細胞を、96ウェルプレートに1ウェル当たり1.0×103個細胞の密度で播種した。24時間後、培地を様々な濃度のラクトバチルスプランタラム抽出物(実施例1~4)に交換し、4日間維持した。細胞生存力は、WST-1細胞生存力分析キット(DONGIN LS CO., LTD,Seoul,Korea)で確認した。
【0095】
(4)ウェスタンブロット分析
3T3-L1細胞およびhBM-MSCを条件に従って回収し、氷上でプロテアーゼとホスファターゼ阻害剤(MCE)の混合物を含有するCell Culture Lysis 1X Reagent(Promega)に5分間溶解した。不溶性の破片を4℃において15分間15,000gで遠心分離して除去した。分離した上澄み液から合計10~40μgのタンパク質を8~12%SDS-PAGEを用いて分離し、ポリビニリデンジフルオリド膜に移した。膜を室温で1時間、5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する0.1%ツイン20トリス緩衝生理食塩水(TBST)中で培養した。膜を4℃で一次抗体と共に5%BSA-TBSTで一晩培養した。TBSTで3回洗浄した後、膜を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が結合した5%BSA-TBSTにおいて室温で1時間培養した。膜のタンパク質シグナルをECLウェスタンブロット基質(DAEILLAB SERVICE)で展開して分析した。全ての実験は3回繰り返した。
【0096】
(5)リアルタイム定量的PCR
3T3-L1細胞からmRNAを分離し、PureLinkTMRNAminikit(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて、ラクトバチルスプランタラム抽出物(実施例1~4)と培養し、cDNAキット(Promega,Madison,WI,US)を用いてcDNAに逆転写した。次いで、StepOnePlusTMReal-Time PCR Systems(Applied Biosystems,Foster City CA,USA)を用いて、TBグリーンミックス(TAKARA,Shinga,Japan)でcDNAを増幅して分析した。RT-qPCRに使用したプライマーを下記表1に示す。
【0097】
【0098】
(6)動物、食事および研究設計
動物研究は、ソウル大学歯医科大学公認の動物施設センターで行われた。動物を対象とする手続きは、動物実験に関する韓国法規に基づいて行われ、研究はソウル大学動物管理委員会(SNU-180309-1)の承認を受けた。
【0099】
4週齢のC57BL/6J雄マウスをOrient Bio(韓国、城南市)から購入した。マウスをランダムに3つのグループに分けた:(i)正常食(normal diet:ND、n=6);(ii)高脂肪食(high fat diet,HFD)(n=7);(iii)L-14食(L-14抽出物(実施例1)を処理した高脂肪食(HFD))(n=8)。マウスにNDまたはHFDをさらに7週間供給し、マウスが水を自由に利用できるようにした。L-14食群に、L-14抽出物(500mg/kg体重)を動物研究期間中2日毎に針カテーテルで経口投与した。他の2つのグループには、同じストレスを与えるために同じ条件下でPBSを経口投与した。体重と食物摂取量を2日に1回測定した。7週間の摂食および投与後、マウスを一晩絶食させ、安楽死させた。表皮(Epididymal)および鼠径部(inguinal)の白色脂肪組織を採取して重量を測定した。肝および血清は、さらなる研究のために直ちに分離した。SuperFastPrep-2TM(MP Biomedicals,Irvine,CA,USA)を用いてマウス脂肪組織から総タンパク質を分離し、ウェスタンブロット分析を行った。Korea Mouse Phenotyping Center(Seoul,Korea)で血清の生化学的分析を行い、製造メーカーの指針に従ってELISAキットを用いてマウス血清中のホルモンとサイトカインを定量した。
【0100】
(7)マウス表皮の白色脂肪組織(eWAT)および肝組織学
マウスのeWATおよび肝を滅菌PBSで2回すすぎ、PBS中の4%パラホルムアルデヒドに一晩固定した。組織を5μmの断片に切断し、パラフィンブロックに挿入し、接着顕微鏡(Paul Marienfeld,Lauda-Konigshofen,Germany)に配置した。ワックスを除去し、再水和した部分をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。免疫組織化学のために、セクションの抗原をクエン酸緩衝液(pH7.0)で満たされた圧力容器で10分間回収した。セクションを室温で20分間、BLOXALL(登録商標)Endogenous Peroxidase Solution(Vector Laboratories,Burlingame、CA,USA)に浸漬し、2.5%正常ウマ血清(normal horse serum)で培養して非特異的結合を減らした。抗体を2.5%の正常ウマ血清(normal horse serum)で1:100-200に希釈し、セクションを希釈した一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。ウサギIgG抗体およびヤギIgG抗体は、陰性対照群として使用した。次いで、セクションを室温で30分間ImmPRESSポリマー抗ウサギIgG試薬および抗ヤギIgG試薬と共にインキュベートした。セクションをImmPACT(登録商標)DAB Peroxidase(HRP)基質(Vector Laboratories)で染色し、次いでヘマトキシリンで軽く対照染色した。顕微鏡(BX50,Olympus,Tokyo,Japan)で画像を得た。
【0101】
(8)ラクトバチルスプランタラム抽出物とラクトバチルスプランタラム由来の多糖体がAMPKおよびTLR2シグナル経路に及ぼす影響の分析
3T3-L1細胞を培地の24ウェルプレートに1ウェル当たり1.0×105個細胞の密度で播種した。細胞が融合してから2日後、培地を1時間、DMEMおよび1%P/Sのみを含有する飢餓培地に交換した。飢餓状態の後、培地を250μM 5-アミノイミダゾール-4-カルボキシアミドリボヌクレオチド(AICAR)、5μM Compound C(CC)および50μM C29を含む一般の培地に交換し、細胞を2時間培養した。L-14抽出物(実施例1)またはラクトバチルスプランタラム由来の多糖体(実施例6~9)を用いて、MDIにおいて細胞が成熟脂肪細胞に分化するように誘導した。AICARおよびC29を2日ごとに処理し、CCは全期間にわたってさらなる処理を行わなかった。12日後、AMPKおよびTLR2シグナル伝達経路によるL-14抽出物またはラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の脂肪生成抑制効果を、オイルレッドO染色およびTAG分析によって分析した。さらに、脂肪分化の初期段階におけるL-14抽出物またはラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の効果を確認するために、4日目にタンパク質を分離し、ウェスタンブロットで分析した。
【0102】
2.実験の結果
(1)ラクトバチルスプランタラム抽出物の3T3-L1脂肪前駆細胞およびhBM-MSCの成熟脂肪細胞への分化抑制効果の確認
ラクトバチルスプランタラム抽出物が脂肪生成抑制効果を示すかどうかを確認するために、以下の実験を行った。3T3-L1細胞に、脂肪分化過程で2日毎に20及び60μg/mL濃度のラクトバチルスプランタラム抽出物(実施例1~4)を処理した(
図8A)。オイルレッドO染色の結果、脂質蓄積はL-14抽出物によって用量依存的に抑制された(
図8B及び8C、スケールバー=100μm、
図8B及び8Cは実施例1の実験結果を示す。)。また、TAGアッセイによりラクトバチルスプランタラム抽出物(実施例1~4)がTAG保存を抑制することを確認した(
図8D及び
図16、8D及び
図16はそれぞれ、順に実施例1及び実施例2~4の実験結果を示す。)。各乳酸菌株の1L培養液を基準で抽出されて出てくる菌体タンパク質含有量を基準でそれぞれL-14(32.015mg)、ACTT10241(23.247mg)、NCDO71(19.181mg)、NCDO1193(17.532mg)の量を得ることができ、同じ培養体積を基準でL-14の方が最も速い成長率で高い菌体量が得られた。菌体抽出物定量したタンパク質を基準で同じタンパク質量を処理した場合、対照群と比較して75%程度の減少効果を示すことを確認することができた。すなわち、75%程度の減少効果を示すのに必要な量は、1L培養した菌体のタンパク質を基準とした希釈倍数(25μg/mlの濃度に相当)は、それぞれL-14(1280倍希釈量_1280x)、ACTT10241(930倍希釈量_930x)、NCDO71(767倍希釈量_767x)、NCDO1193(701倍希釈量_701x)の通りである。このことから、ラクトバチルスプランタラム菌株の中で、L-14種菌が最も多くの抗肥満物質を生産できることが分かった。L-14抽出物(実施例1)は、3T3-L1細胞の細胞生存力に影響を与えなかった(
図8E)。これは、脂肪細胞分化に対する抑制効果がL-14抽出物(実施例1)の細胞毒性によるものではないことを意味する。さらに、ウェスタンブロット分析により、L-14抽出物(実施例1)が主な脂肪生成マーカーとして知られているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(peroxisome proliferator-activated receptor γ,PPARγ)、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(CCAAT-enhancer-binding proteins α,C/EBPα)、及び脂肪酸結合タンパク質4(fatty acid-binding protein 4,FABP4)のタンパク質発現を減少させることを確認した(
図8F)。また、RT-qPCRにより確認した結果、ウェスタンブロットの結果と一貫して、L-14抽出物(実施例1)が3T3-L1細胞においてPPARγ、C/EBPα、FAB4、脂肪タンパク質リパーゼ(lipoprotein lipase,LPL)、脂肪酸合成酵素(fatty acid synthase,FAS)、グリセロール-3リン酸脱水素酵素(glycerol-3-phosphate dehydrogenase,GPDH)、CD36を含む脂肪生成分化マーカーの遺伝子発現を有意に減少させた(
図8G、
図8H)。前記マーカーは、脂肪生成分化の初期段階(0~4日目)でL-14抽出物(実施例1)によって既に減少していた。このような結果は、ラクトバチルスプランタラム抽出物による脂肪生成の抑制は、分化初期に脂肪生成因子の発現を減少させることによって発生し得ることを示している。
図8中の「NC」とは、陰性対照群として正常培地で培養された細胞を意味する。
【0103】
(2)ラクトバチルスプランタラム抽出物のHFDマウスモデルにおける体重増加および炎症誘発マーカーの発現抑制効果の確認
生体内でのラクトバチルスプランタラム抽出物摂取の効果を確認するために、C57BL/6Jマウスをランダムに3つのグループに分けた:正常食(n=6)、高脂肪食(HFD)(n=7)およびL-14食(L-14抽出物(実施例1)を処理した高脂肪食(HFD))(n=8)。L-14食群にL-14抽出物(実施例1)(500mg/kg体重)を動物研究期間中2日毎に針カテーテルで経口投与した。他の2つのグループには、同じストレスを与えるために同じ条件下でPBSを経口投与した。経口投与の結果、マウスの平均体重は36日後に有意な差を示した。特に、L-14食群の体重(31.51±1.96g)は、HFD群の体重(35.14±3.18g)と有意な差を示した(
図9A及び
図9B、
図9において、NDは正常食群、HFDは高脂肪食群、HFD+L-14はL-14食群を意味する。)。L-14抽出物の経口投与後、食物摂取量には大きな変化がなかった(
図9C)。L-14食群では、HFD群と比較して表皮の白色脂肪組織(eWAT)(1.10±0.14 v.s.0.81±0.10g)および鼠径部(inguinal)の白色脂肪組織(iWAT)(0.99±0.19 v.s.0.67±0.12g)の脂肪量を大幅に減少させた(
図9D及び9E)。H&E染色により、eWATの脂肪細胞サイズがHFD群よりもL-14食群において顕著に小さいことを確認した(
図9F、スケールバー=100μm)。また、L-14食群の脂肪組織において、レプチン、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、レジスチンのような炎症誘発マーカーの発現が減少し、アディポネクチンおよびアルギナーゼ1(Arg1)のような抗炎症マーカーの発現が増加した(
図9F及び
図9G)。
【0104】
(3)ラクトバチルスプランタラム抽出物のインスリン抵抗性マーカーおよび肝脂肪阻害効果の確認
血液化学検査およびELISAにより、ラクトバチルスプランタラム抽出物のインスリン抵抗性マーカーおよび肝脂肪症の減少効果を確認した。血液化学検査により、HFD群と比較してL-14食マウスにおいて低密度リポタンパクコレステロール(LDL-c)およびTAGのレベルが顕著に減少し、高密度リポタンパクコレステロール(HDL-c)のレベルが並列に増加(p<0.056)することを確認した(
図10A、
図10において、NDは正常食群、HFDは高脂肪食群、HFD+L-14はL-14食群を意味する。)。一貫して、L-14抽出物(実施例1)によって総コレステロールが減少し、血清中のインスリン抵抗性マーカーであるTAG/HDL-cの割合も有意に減少することを確認した(
図10B)。空腹時血糖、空腹時インスリン、レプチン、レジスチンは減少しているのに対して、GOT(AST)、GPT(ALT)、アディポネクチン、インターフェロンγ(IFN-γ)、IL-6、MCP1(monocyte chemoattractant protein 1)は有意な変化がなかった(
図10C及び10D)。また、L-14抽出物(実施例1)が肝に与える影響を確認するために、HFDモデルから分離した肝組織サンプルを組織学的に分析した。H&E染色の結果、L-14抽出物(実施例1)がHFDによって誘導された肝脂肪症を弱めることを確認した(
図10E、スケールバー=100μm)。さらに、SuperFastPrep-2
TM(MP Biomedicals,Irvine,CA,USA)を用いてマウスおよび肝から総タンパク質を分離し、ウェスタンブロットで分析した。L-14抽出物(実施例1)はMCP1およびIL-6の発現を抑制する一方、AMPKシグナル伝達経路を活性化することを確認した。Arg1と脂肪分解に関与するATGL(adipose triglyceride lipase)の発現には有意な変化がなかったが、肝でのIL-6の発現はL-14抽出物によって減少した(
図10F)。前述したTAG阻害効果のように、実施例1と同じラクトバチルスプランタラム抽出物である実施例2~4においても、このようなインスリン抵抗性マーカーおよび肝脂肪阻害効果が示されることを十分に予測することができる。
【0105】
(4)ラクトバチルスプランタラム抽出物の脂肪分化初期段階における脂肪生成抑制効果の確認
脂肪生成分化に対するラクトバチルスプランタラム抽出物の抑制効果がAMPKシグナル伝達経路によって媒介されるかどうかを確認するために、AMPK活性化剤であるAICARおよびAMPK阻害剤であるCCと共に、L-14抽出物(実施例1)を3T3-L1細胞に処理した。その結果、AICARは分化後の3T3-L1細胞の脂質含有量を有意に減少させ、追加のL-14抽出物(実施例1)処理はAICARの抑制効果を向上させた。CCは3T3-L1細胞における脂質蓄積に影響を及ぼさなかったが、L-14抽出物(実施例1)はAMPK抑制条件下でもTAGを減少させた(
図11A及び
図11B、スケールバー=100μm、
図11においてL14は実施例1を意味する。)。このような結果は、ラクトバチルスプランタラム抽出物の抗脂肪生成効果がAMPKシグナル伝達経路によって媒介されることを示唆している。ラクトバチルスプランタラム抽出物によって脂肪分化の初期段階(Day0-4)でAMPK経路が活性化できるかどうかを確認するために、マーカーをウェスタンブロットで分析した。AMPK経路は、4日以内にAICARおよびL-14抽出物(実施例1)によって相乗的に活性化された。その結果、PPARγおよびFABP4などの脂肪生成マーカーの発現が有意に減少した(
図11C)。さらに、L-14抽出物(実施例1)は、CCによって抑制されたAMPKαのリン酸化を増加させた。AICARとL-14抽出物(実施例1)を同時に処理すると、TAG蓄積が相乗的に抑制された。また、L-14抽出物(実施例1)は、分化初期(4日目)にAMPKシグナル伝達経路を上方制御してヒト骨髄間葉幹細胞(BM-MSC)の脂肪生成分化を抑制した(
図12、
図12においてL14は実施例1を意味する。)。具体的には、オイルレッドO染色により、L-14抽出物(実施例1)がhBM-MSCで脂質蓄積を抑制することを確認した(スケールバー=100μm)(
図12C)。TAGアッセイにより、L-14抽出物(実施例1)がTAG保存を抑制することを確認した(
図12D)。脂肪分化マーカー(PPARγ、C/EBPα、FABP4、レプチン、GPDHおよびCD36)の遺伝子発現もL-14抽出物(実施例1)によって減少した(
図12E)。L-14抽出物(実施例1)を4日間培養したhBM-MSCにおける主な脂肪生成マーカーおよびアディポネクチンのタンパク質発現は減少し、AMPKシグナル伝達経路マーカーの発現は増加した(
図12F)。このような結果は、ラクトバチルスプランタラム抽出物が脂肪分化の初期段階でAMPKシグナル伝達経路を上方制御し、マウス脂肪前駆細胞とhBM-MSCが成熟脂肪細胞に分化することを抑制することを示唆している。
【0106】
(5)ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の脂肪生成分化調節効果の確認
ラクトバチルスプランタラム抽出物において脂肪生成抑制効果を示す分子が何であるかを確認するために、過酷な温度条件やpH条件に暴露されたラクトバチルスプランタラム抽出物(H60、P60)の脂肪生成抑制効果を確認した。その結果、ラクトバチルスプランタラム抽出物の脂肪生成抑制効果は、過酷な温度条件でpH変化や培養によって変化せず、これは脂肪生成抑制効果を有する有効分子が熱に安定であることを意味する(
図13、スケールバー=100μm)。
【0107】
実施例5~9のラクトバチルスプランタラム由来の多糖体が脂質蓄積を抑制できるかどうかを確認するために、3T3-L1細胞をEPSと共にMDIで12日間培養し分析した。脂質蓄積分析およびTAG分析の結果、4種類のラクトバチルスプランタラム菌株由来の多糖体がいずれも脂肪生成抑制効果を有することを確認した(
図14A~14C及び
図15、
図14は実施例6の実験結果を示し、
図15は実施例7~9の実験結果を示す。)。また、ウェスタンブロット分析により、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体がAMPK経路を上方制御し、脂肪生成マーカーとアディポネクチンの発現を下方制御することを確認した。さらに、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体が細胞内ブドウ糖取り込みに関連していることが知られているAKT(Protein kinase B)と160kDaのAkt基質(AS160)のリン酸化を増加させることを確認した(
図14D)。さらに、細胞内のどの受容体がラクトバチルスプランタラム由来の多糖体と相互作用するかを確認するために、TLR2阻害剤C29を使用してさらなる研究を行った。その結果、脂質蓄積はC29の影響を受けなかったが、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体の脂肪生成抑制効果はC29処理群で有意に減少した(
図14E及び
図14F)。さらに、TLR2およびMyD88(myeloid differentiation primary response 88)の発現がC29によって抑制された初期段階(4日目)において、EPSによるAMPK経路の活性化が抑制された。これは、ラクトバチルスプランタラム由来の多糖体がTLR2と相互作用してAMPK経路を活性化し、結果として脂肪生成を抑制することを意味する(
図14G)。
【0108】
【配列表】
【国際調査報告】