(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】改良された退色性
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240229BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03H1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023548801
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2022053414
(87)【国際公開番号】W WO2022171820
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523305095
【氏名又は名称】ゼトス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノッケ,フランク
【テーマコード(参考)】
2H225
2K008
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD07
2H225AM62P
2H225AM94P
2H225AN11P
2H225AN14P
2H225AN21P
2H225AN65P
2H225AN66P
2H225AN82P
2H225AN89P
2H225BA17P
2H225CA28
2H225CB02
2H225CB03
2H225CC01
2H225CC13
2K008AA04
2K008AA13
2K008AA14
2K008BB04
2K008BB08
2K008DD13
2K008EE04
2K008FF17
(57)【要約】
本発明は、UV/VIS光重合性組成物及びそれから調製される素子、並びにそれらの使用に関する。具体的には、屈折率変調を用いた光学素子のための記録材料、特にホログラムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV/VIS照射により硬化可能な光重合性組成物であって、
(a)80~99.8重量%の、ラジカル反応硬化可能なモノマー含有混合物、
b)0.1~10重量%の光重合開始剤系、及び
c)0.1~10重量%の漂白剤、
を含み、
a)、b)及びc)の合計量が100重量%であり、そして前記漂白剤が、化学線照射下で性能を発揮する、光重合性組成物。
【請求項2】
前記光重合開始剤系が、色素及び共重合開始剤を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記共重合開始剤が、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記色素が、アクリフラビン、ジアミノアクリジン、ローダミンB、サフラニン-O、ジエチルサフラニン、及びメチレンブルーからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
漂白物質が、化学線照射の作用により、成分c)から形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
成分c)が、光重合開始剤を含む、請求項1~5に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
成分c)において使用される前記光重合開始剤が、化学線照射の作用下で、ベンゾイルラジカル及びアルコールラジカルを発生する、請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
前記光重合性組成物が、少なくとも0.005の大きさすなわちΔnを有する屈折率変調を形成することが可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
素子であって、請求項1~8のいずれか1項に記載の光重合性組成物の上に、UV/Vis放射線、好ましくは化学線UV/VIS放射線を作用させることにより得ることが可能な成分を含む、素子。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光重合性組成物を、空間的又は干渉法的に変調された放射線に暴露させることによって得ることが可能なホログラムを含む、請求項9に記載の素子。
【請求項11】
請求項9及び10のいずれか1項に記載の素子の使用であって、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光スイッチ、又はセンサーとしての、使用。
【請求項12】
請求項9及び10のいずれか1項に記載の素子の使用であって、ヘッドアップディスプレイ、積層ガラス、データガラス、光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルのための、使用。
【請求項13】
請求項9及び10のいずれか1項に記載の素子を作成するための方法であって、前記素子を後漂白するためにUV光が使用される、方法。
【請求項14】
プロセスであって、請求項1~8のいずれか1項に記載の光重合性組成物の成分c)が、溶媒として使用されるか、又は前記色素の溶媒の一成分として使用される、プロセス。
【請求項15】
基板表面又はコピー原版の上で、光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法であって、請求項1~8のいずれか1項に記載の光重合性組成物の層を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV/VIS光重合性組成物及びそれから作成される素子、並びにそれらの使用に関する。具体的には、屈折率変調を用いた光学素子のための記録材料、特にホログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光線を用いて、光重合性組成物を硬化させるためには、適切な光重合開始剤系が必要であり、それらは、その光のエネルギーを吸収して、フリーラジカルを形成し、ラジカル重合の連鎖反応を開始させる。
そのような系は公知であり、たとえば以下の特許に記載されている:特許文献1(DuPont社)、特許文献2(Bayer社)、及び特許文献3(Xetos社)。
【0003】
そこでは、増感剤として色素が、そして共重合開始剤としてホウ酸塩が使用されている。その系が影響を受けやすい光に合わせて、その色が使用される。その露光波長の補色である蛍光性色素を使用して、その光のエネルギーを効果的に吸収するのが好ましい。たとえば、グリーンの光に対してはマゼンタの色素、レッドに対してはブルーの色素、そしてブルーに対してはイエローの色素が使用される。複数の波長を用いる露光では、組み合わせることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第69032682T2号公報
【特許文献2】国際公開第2010091795A1号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1779196B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い感光性を有利に達成するためには、その光重合性組成物が、十分でクリアに発色することが必要である。しかしながら、露光させた素子のほとんどの用途では、クリアで、透明で、無色な層が望ましい。好都合なことには、それらの色素は、耐光堅牢性に乏しく、UV下では、多少なりとも退色する。しかしながら、色素によっては、それにはいくらかの時間と強い放射照度を必要とするので、通常、明らかに認識可能な残存着色が、レーザー露光の後に実施されるUV硬化の後でも残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、UV光の下で、より早くそしてより効果的に退色する系を提供する目的をベースにしている。そしてこれには、品質の劣化及び追加の作業ステップを伴わない。
その目的は、本発明において、UV/VISの照射により硬化することが可能な、以下のものを含む光重合性組成物によって解決される:
a)80~99.8重量%の、ラジカル硬化可能なモノマー含有混合物、
b)0.1~10重量%の光重合開始剤系、及び
c)0.1~10重量%の漂白剤、
ここで、a)、b)及びc)の合計量が100重量%であり、そしてその漂白剤は、化学線照射下で有効である。その漂白物質が、化学線照射によってのみ形成されれば、特に好ましい。漂白物質が、化学線照射の作用により、成分c)から形成されれば、特に好ましい。
【0007】
さらに好ましい実施態様は、従属請求項に定義されている。
アクティニティ(化学線照射)は、各種の波長の電磁放射の光化学的活性と理解されたい。
その用語は、たとえば、各種の色のレーザー光の生理学的影響、又は写真用フィルム及び紙の分光感度を評価する際に使用される。光化学においては、アクティニックな化学薬品とは、光又は放射線の影響を受けやすいものである。
【0008】
本発明の文脈においては、「化学線照射の下で効果がある(effective under actinic irradiation)」ということは、高輝度化(brightening)」が起きることを意味している。
本発明における光重合性組成物は、好ましくは、屈折率変調を用いた素子、特にはホログラムを製造するために使用される。それらの素子の調製は、一般的には、支持基板又は複写テンプレートの上に置いた光重合性組成物の層に対して、変調された放射線を、空間的又は干渉法的に照射することにより実施される。本発明における素子を作成するために使用されるキャリヤー基板は、ガラス、プラスチック、特には、PET、PP、PMMA、ポリカーボネート、又はセルロースのジ-若しくはトリアセテート、又は紙であってよい。露光の際には、その光重合性組成物は、たとえば、2枚のガラス板の間に位置させるのがよい。
【0009】
好ましいのは、本発明における光重合性組成物の上に、UV/VIS照射、好ましくは化学線のUV/VIS照射を作用させることにより得ることが可能な成分を含む素子である。
特に好ましいのは、本発明における光重合性組成物の上に、空間的又は干渉法的に変調された放射線を作用させることにより得ることが可能なホログラムを含む素子である。
特に好ましいのは、そのようにして得ることが可能で、UV照射により漂白された、ホログラムを含む本発明における素子である。
【0010】
UV/VIS露光の後で、UV光を用いて素子を再漂白する製造プロセスを使用するのが好ましい。
その素子は、好ましくは、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光スイッチ、又はセンサーとして使用される。ヘッドアップディスプレイ、合せガラス、データガラス光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルのために使用するのが、特に好ましい。
【0011】
本発明のまた別の目的は、基板表面又はコピー原版の上の光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法であって、本発明における光重合性組成物の層を、ホログラム情報を含む変調された放射線に暴露させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】サンプルBの相当する測定点での測定曲線を示す
【
図4】UVブリッジ下での30秒の漂白前後の2種の光重合させた組成物A及びBのスペクトル吸収曲線を示す。
【0013】
漂白剤
驚くべきことには、化学線照射の際に生成する、ある種の光重合開始剤の崩壊反応生成物が、色素を、より良好に且つより早く退色させるのに役立つことが見出された。
それらは、以下のようにして構築された光重合開始剤である。次の一般式(1)で表されるアリールケトン化合物:
【化1】
[式中、Rx及びRyは同一であるか又は異なっていて、以下のものを表す;1~8個の炭素原子を有し、場合によっては1個のヒドロキシル基を用いて置換された、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;1~8個の炭素原子を有し、場合によっては1個のヒドロキシル基を用いて置換された、シクロアルキル基;1~8個の炭素原子を有し、場合によっては1個のヒドロキシル基を用いて置換された、アルコキシ基;(そのアルコキシ基が、1~8個の炭素原子を有し、)場合によっては1個のヒドロキシル基を用いて置換された、アルコキシカルボニル基;場合によってはホスフェート基を用いて置換されたカルバモイル基;場合によっては1~8個の炭素原子を有するアルキル基又は6~8個の炭素原子を有するアリール基によって置換されたホスホリル基;場合によっては1個のヒドロキシル基を用いて置換された、アシル基若しくは縮合アシル基、又は式(2)で表される基;
【0014】
【化2】
(式(2)において、R
1z~R
5zは同一であるか又は異なっていて、水素原子;1~8個の炭素原子を有するアルキル基;2~8個の炭素原子を有するアルケニル基;1~8個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~8個の炭素原子を有し、ハロゲン原子を用いて置換されたアルキル基;1~8個の炭素原子を有し、ハロゲン原子を用いて置換されたアルコキシ基;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;を表し、
ここで、式(2)において、R
1z~R
5zからの各種の二つの隣接する基が、場合によっては、相互に結合して、それらが結合されているベンゼン環と共になって、ナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、テトラヒドロナフタレン環、インダン環、テトラヒドロキノリン環、及びテトラヒドロイソキノリン環から選択される縮合環を形成し、そしてそれに対してR
1z~R
5zの二つの隣接する基が結合している複数の炭素原子が、場合によっては、1~8個の炭素原子のアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2~8個の炭素原子を有するアルケニル基、1~8個の炭素原子を有し、場合によってはハロゲン原子を用いて置換されたアルコキシ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基から選択される、同一又は異なった置換基の1~4個で置換されている)、
ここで、Rx及びRyの内の少なくとも1個が、式(2)で表される]。
【0015】
【0016】
そして、特に好ましいのは、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンである。
【化4】
【0017】
光重合性組成物の中の漂白剤c)には、これらの光重合開始剤若しくはそれらの分解反応生成物、又はそれらの成分の混合物の1種又は複数が含まれる。
その漂白剤の中での好適な光重合開始剤の比率は、50重量%より大、好ましくは90重量%より大である。その漂白剤が、1種又は複数の好適な光重合開始剤のみで構成されていれば、特に好ましい。
【0018】
好ましい分解反応生成物は、ベンゾイル誘導体及びアルコールであり、特に好ましい分解反応生成物は、ベンズアルデヒド及び2-プロパノールである。
本発明における光重合性組成物の成分c)が光重合開始剤を含むのが好ましく、成分c)の中で使用される光重合開始剤が、化学線照射の作用下で、ベンゾイルラジカル及びアルコールラジカルを発生させるのが特に好ましい。
【0019】
所望の分解反応生成物を得る目的で、2種の光重合開始剤の混合物を使用することも可能であって、その場合、照射下で、その第一の光重合開始剤が、ベンゾイルラジカルを形成し、そしてその第二の光重合開始剤が、アルコールラジカルを形成する。
その漂白物質及び漂白効果が、化学線照射によってのみ得られるのが特に好ましい。これらの物質が効果的に機能するためには、適切な使用量とする必要があるが、それは、そうではない光重合開始剤の通常の推奨量よりは多くなる可能性がある。少なくとも1重量%の比率が好ましく、少なくとも3重量%であれば、特に好ましい。
【0020】
室温で液状である光重合開始剤を使用するのが好ましく、それらは同時に、色素のための溶媒としても機能することができる。したがって、好ましいことには、色素濃縮物のための溶媒の一成分として、成分c)を使用することができる。
したがって、本発明のさらなる目的は、その中で、本発明における光重合性組成物の成分c)を、色素のための溶媒として、又は溶媒の一成分として使用する、プロセスである。
UV光の下で、可能な限り薄い黄色である光重合開始剤もまた、好ましい。
【0021】
モノマー含有混合物
そのラジカル反応硬化可能なモノマー含有混合物には、ラジカル付加重合が可能なエチレン性不飽和モノマーが含まれる。その比率が、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%であるのが好ましい。
そのモノマー含有混合物にはさらに、ポリマー性バインダーたとえば、酢酸ビニル(独国特許第69032682T2号公報)、PMMA、又はポリオールが、95重量%未満、好ましくは60重量%未満、特に好ましくは20重量%未満の比率で含まれていてよい。ポリマー性バインダーの中に組み入れる代わりに、モノマーを、ポリウレタンマトリックスの中に組み入れることも可能である(国際公開第2008/125229A1号パンフレット、国際公開第2012/062655A2号パンフレット)。
【0022】
フィルムの性能を改良する、可塑剤及びたとえば流動剤及び脱気剤のような添加剤もまた、含まれていてよい。或いは、他の不活性で非架橋成分たとえばトリグリセリド(欧州特許第1 779 196B1号公報)が含まれていてよい。混合物の成分は、その光重合性組成物が最後の化学線照射で固体層を形成するように選択する。その光重合性組成物を適切に光に露光させたときに、そのモノマー含有混合物の成分が、少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.01、特に好ましくは少なくとも0.02の屈折率差を確保できるのが好ましい。ホログラムを記録する際に、1000本/mmを超える分解能を有する屈折率変調が発生されるようにするのが、特に好ましい。
本発明における光重合性組成物が、振幅を伴うもしくは少なくとも0.005のΔnを有する屈折率変調を形成することが可能であれば好ましい。
【0023】
屈折率変調Δnは、Kogelnikの結合波理論を使用し、測定された回折効率(BWG)η及び層厚dに基づいて計算することができる(参照;H.Kogelnik,The Bell System Technical Journal,Volume 48,November 1969,Number 9,p.2909~2947)。
【0024】
屈折率変調が表面に対して平行である、表面ミラーの反射ホログラム又はLippmann-Braggホログラムでは、次式の関係が成立する;
【数1】
(式中、λは、光の波長である)。したがって、同一の回折効率を達成しようとすると、厚い層では、そのホログラム記録材料のΔn値は、薄い層の場合よりも低くすることができる。
【0025】
回折効率は、分光計(たとえば、CAS 140B、Instrument Systems製)を用い、室温で、透過光中で測定することができる。これは、垂直照明を用いて実施する。ホログラムは、Bragg条件を満たす波長のみを反射するので、この時点では、スペクトル曲線には、クリアな吸収ピークが認められる。
ピーク値TPeakと、近傍の上側ベースラインの参照値TRefとから、回折効率(BWG)ηが、次式で計算される;
η=(TRef-TPeak)/TRef
【0026】
その層の厚みdは、デジタルマイクロメーターを用い、マイクロメーターゲージの外側で測定することができる。屈折率変調は、それら二つの測定値から、次のようにして計算される:
【数2】
【0027】
そのモノマー含有混合物は、実質的にクリアで透明な層を形成するが、その層は、室温で固体であってもよい。特に好ましいのは、20℃~150℃の温度範囲で液状であるモノマー含有混合物である。20℃での粘度は、少なくとも2000mPa・s、好ましくは10000mPa・s、特に好ましくは少なくとも20000mPa・sであるべきである。
その粘度は、プレート-プレート回転式レオメーター(たとえば、Haake製、タイプ006-2805)を用いて測定することができる。材料を、2枚の同軸の円形プレートの間に置き、一方のプレートを回転させる。それらのプレート間の距離は、たとえば、1mmであり、直径は、35mmである。粘度は、そのトルク及び速度(たとえば、10回転/秒)の測定から求めることができる(DIN53018、ISO3210)。
【0028】
好ましくは、モノマー含有混合物は、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーを含む。モノマー含有混合物は、1個又は複数の二官能又はより高級官能性のモノマーだけからなっている、すなわち、その組成物が、単官能のエチレン性不飽和モノマーを含まないのがよい。好ましくは、本発明における組成物の成分c)の中での、少なくとも2種のエチレン性不飽和基を有するモノマーの含量は、10重量%より大、特に好ましくは30重量%より大である。
二官能又はより高級官能性のモノマーを使用することによって、具体的には、それにより作成されたホログラム素子の熱的安定性及び機械的安定性が特に高くなり、これは、鏡映(reflexion)ホログラムの作成では、特に有利である。
【0029】
少なくとも2種のエチレン性不飽和基を有する好ましいモノマーは、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、具体的には、次式の化合物である:
【化5】
(式中、n、mは0~12、好ましくは1~12、oは0.1;であり、Arは単核もしくは多核置換又は非置換芳香族、もしくは複素環式芳香族基であり、R
1は水素、メチルはエチルである)。
【0030】
特に好ましいモノマーは、次の構造式の化合物である:
【化6】
モノマー又はモノマー混合物の粘度が、室温で少なくとも900mPa・sであるのが好ましい。
【0031】
光重合開始剤系
化学線照射に露光させると、モノマーの重合を活性化させる光重合開始剤系は、光重合開始剤、又は共重合開示剤、又は共光重合開始剤及び色素からなっている。それが、上記の三つの成分全部を含んでいるのが好ましい。ここで、その光重合開始剤は、漂白組成物の中でおそらくは使用される光重合開始剤とは別なものである。その光重合開始剤系すなわち成分b)が、共重合開始剤及び色素だけを含んでいるのが、特に好ましい。「共重合開始剤」及び「共光重合開始剤」は、本発明の文脈においては、相互に交換可能に使用されている。
色素は、近UV、可視、又は近赤外範囲からの放射線のエネルギーを吸収する増感剤として機能し、そして共光重合開始剤の助けを借りてラジカル生成反応を開始させる。
【0032】
色素
色素は、共光重合開始剤のための増感剤として機能する。この目的のために好適なのは、たとえば以下のものである:メチレンブルー、並びに米国特許第3,554,753A号公報、米国特許第3,563,750A号公報、米国特許第3,563,751A号公報、米国特許第3,647,467A号公報、米国特許第3,652,275A号公報、米国特許第4,162,162A号公報、米国特許第4,268,667A号公報、米国特許第4,454,218A号公報、米国特許第4,535,052A公報、及び米国特許第4,565,769A号公報に開示されている増感剤、さらには国際公開第2012062655A2号パンフレットに記載の色素及び共光重合開始剤(それらは、本明細書にも、明示的に引用されている)。特に好ましい増感剤としては、以下のものが挙げられる;DBC、すなわち、2,5-ビス[(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)メチレン]シクロペンタノン;DEAW、すなわち、2,5-ビス[(4-ジエチルアミノフェニル)メチレン]シクロペンタノン;ジメトキシ-JDI、すなわち、2,3-ジヒドロ-5,6-ジメトキシ-2-[(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-9-イル)メチレン]-1H-インデン-1-オン;及びサフラニン O、すなわち、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチル-5-フェニル-フェナジニウムクロリド。
【0033】
本発明における光重合性組成物の中の色素が、蛍光色素であるのが好ましく、それらは、たとえば、カチオン性色素とアニオンとからなっていてもよい。カチオン性色素は、式F
+で表すことができる。
したがって、式F
+のカチオン性色素によって、次式のものが好適に理解される:
【化7】
[式中、
X
1は、O、S、N-R
6、又はCR
6aR
6bを表し、
X
2は、N又はC-R
5を表し、
R
5は、水素、シアノ、C
1~C
4-アルキル、C
4~C
7-シクロアルキル、C
6~C
10-アリール(場合によってはC
1~C
4-アルコキシカルボニル又はNR
7R
8によって置換されている)、ヘテロサイクリック基、又はカルボキシル基によって置換されたC
6~C
10-アリールを表し、
R
6は、水素、C
1~C
16-アルキル、C
4~C
7-シクロアルキル、C
7~C
16-アラルキル、C
6~C
10-アリール、又はヘテロサイクリック基を表し、
R
6a及びR
6bは、互いに独立してメチル、エチルを表すか、又は合体して-CH
2-CH
2-CH
2-若しくは-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-のブリッジを表すか、又はカルボキシル基を用いて置換されたC
6~C
10-アリールを表し、
R
1~R
4、R
7、及びR
8は、互いに独立して、水素、C
1~C
16-アルキル、C
4~C
7-シクロアルキル、C
7~C
16-アラルキル、C
6~C
10-アリール若しくはヘテロサイクリック基を表すか、又は
NR
1R
2、NR
7R
4及びNR
7R
8は、互いに独立して、5員若しくは6員の飽和環(これは、Nを介して結合され、さらにN又はOを含んでいてもよく、及び/又はノニオン性基によって置換されていてもよい)を表すか、又は
R
1~R
4、R
7、及びR
8は、互いに独立して、N原子に隣接するベンゼン環のC原子と2員若しくは3員のブリッジを形成し、そのブリッジには、O又はNを含んでいてもよく、及び/又はノニオン性基によって置換されていてもよく、
R
9、R
9a、R
9b、R
10、R
10a、及びR
10bは、互いに独立して、水素、ハロゲン、又はC
1~C
4-アルキルを表す]、
【0034】
【化8】
[式中、
R
15は、水素、ハロゲン、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-アルコキシ、又はNR
18R
19を表し、
R
11~R
14、R
18、及びR
19、互いに独立して、水素、C
1~C
16-アルキル、C
4~C
7-シクロアルキル、C
7~C
16-アラルキル、C
6~C
10-アリール若しくはヘテロサイクリック基を表すか、又は
NR
11R
12、NR
13R
14及びNR
18R
19は、互いに独立して、5員若しくは6員の飽和環(これは、Nを介して結合され、さらにN又はOを含んでいてもよく、及び/又はノニオン性基によって置換されていてもよい)を表すか、又は
R
12、R
17b、R
13、R
17c、及びR
18;R
17aは、互いに独立して、2員若しくは3員のブリッジを形成し、そのブリッジには、O又はNを含んでいてもよく、及び/又はノニオン性基によって置換されていてもよく、
R
16は、水素、塩素、メチル、メトキシカルボニル、又はエトキシカルボニルを表し、
R
16aは、水素、塩素、又はメチルを表し、
R
17a、R
17b、及びR
17cは、互いに独立して、水素、塩素、メチル、又はメトキシを表す]。
【0035】
ノニオン性基は、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルチオ、C1~C4-アルカノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、モノ-若しくはジ-C1~C4-アルキルアミノである。
アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、及びヘテロサイクリック基は、場合によっては、アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、CO-NH2、アルコキシ、トリアルキルシリル、トリアルキルシロキシ、又はフェニルのような基をさらに担持していてもよく、そのアルキル及びアルコキシ基は、直鎖状であっても或いは分岐状であってもよく、そのアルキル基は、部分的若しくは全面的にハロゲン化されていてもよく、そのアルキル及びアルコキシ基は、エトキシル化若しくはプロポキシル化若しくはシリル化されていてもよく、アリール若しくはヘテロサイクリック基の上の隣接しているアルキル及び/又はアルコキシ基は、合体して、3員若しくは4員のブリッジを形成していてもよく、そして、そのヘテロサイクリック基は、ベンゾ縮合及び/又は四級化されたりしていてもよい。
【0036】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくはフッ素、塩素、又は臭素を意味している。
置換されたアルキル基の例は、トリフルオロメチル、クロロエチル、シアノメチル、シアノエチル、メトキシエチルであり、分岐状のアルキル基の例は、イソプロピル、tert-ブチル、2-ブチル、ネオペンチルである。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシである。
【0037】
好適な、場合によっては置換されたC1~C4-アルキル基は、以下のものである:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペルフルオロ化メチル、ペルフルオロ化エチル、2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロエチル、ペルフルオロブチル、シアノエチル、メトキシエチル、クロロエチル。
好適なアラルキルは、たとえば、ベンジル、フェネチル、又はフェニルプロピルである。
C6~C10-アリールの例は、フェニル及びナフチルである。置換されたアリール基の例は、トリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、メトキシフェニル、ニトロフェニル、シアノフェニル、ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルである。
【0038】
ヘテロアリール基、特に5員若しくは6員のヘテロサイクリック基の例は、インドリル、ピリジル、キノリル、ベンズチアゾリルである。置換されたヘテロ環状基の例は、1,2-ジメチルインドル-3-イル、1-メチル-2-フェニルインドル-3-イルである。
式F+のカチオン性色素に対するアニオンは、たとえば、ハロゲン、硫酸塩、炭酸塩、又は硝酸塩のアニオンであってよい。
【0039】
特に好適なカチオン性色素は、マラカイトグリーン、メチレンブルー、サフラニン O、式IIIのローダミンである。
【化9】
[式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、及びR
gはそれぞれ、H又はアルキル基を表し、X
-は、塩化物イオン、トリフルオロメタンスルホネート、ナフタレンジスルホネート、パラ-トルエンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、メタ-ニトロベンゼンスルホネート若しくはメタ-アミノベンゼンスルホネート、たとえば、次に示すような、ローダミンB、ローダミン6G又はビオラミンR、さらにはスルホローダミンB又はスルホローダミンGを表す]。
【0040】
ローダミンB:
【化10】
ローダミン6G:
【化11】
ビオラミンR:
【化12】
スルホローダミンB:
【化13】
スルホローダミンG:
【化14】
【0041】
その他の好適な色素は、Neckers et al.,J.Polym.Sci.,Part A,Poly.Chem.,1995,33,1691~1703に記載されているようなフルオロンである。特に興味を引くのが、次の化合物である:
【化15】
【0042】
その他の好適な色素の例は、式IVのシアニンである:
【化16】
[式中、R
IV=アルキルであり;n
1=0、1、2、3、又は4であり、そしてY
1=CH=CH、N-CH
3、C(CH
3)
2、O、S、又はSeである]。好ましいのは、式IVの中のY
1が、C(CH
3)
2又はSであるシアニンである。
【0043】
本発明における光重合性組成物の中の色素が、以下のものからなる群より選択されるのが好ましい:アクリフラビン、ジアミノアクリジン、ローダミンB、サフラニン-O、ジエチルサフラニン、及びメチレンブルー。
【0044】
光重合開始剤
好ましくは、光重合開始剤系、すなわち光重合性組成物の成分b)には、光重合開始剤が含まれる。
本発明における光重合性組成物の中の光重合開始剤が、100nm~480nmの間、好ましくは150nm~460nmの間、より好ましくは200nm~380nmの間の波長を用いて照射したときに、ラジカルを発生させることができるのが好ましい。
【0045】
ラジカル形成性重合開始剤は公知であり、たとえば以下の文献を参照されたい:H.J.Timpe and S.Neuenfeld,“Dyes in Photoinitiator System”.Contacts(1990),p.28~35、及びJ.Jakubiak and J.F.Rabek,“Photoinitiators for visible light polymisation”,Polimery(Warsaw)(1999),44,p.447~461。
【0046】
UV照射により活性化可能で、一般的には185℃までの温度では不活性な、好適なラジカル形成性重合開始剤としては、置換又は非置換の多核のキノンが挙げられるが、これらは、共役炭素環式環系の中に、2個の環内炭素原子を有する化合物であって、たとえば、以下のものが挙げられる:9,10-アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントレンキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロナフトキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2,3-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アントラキノン-α-スルホン酸のナトリウム塩、3-クロロ-2-メチルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10-テトラヒドロナフタセンキノン、及び1,2,3,4-テトラヒドロベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン。やはり有用であるその他の光重合開始剤(但し、それらの内のいくつかは、85℃程度の低い温度で熱的に活性化される)が、米国特許第2,760,663号公報に記載されており、たとえば、以下のものが挙げられる;ビシナルケトアルドニルアルコールたとえば、ベンゾイン、ピバロイン、アシロインエーテルたとえば、ベンゾインのメチル及びエチルエーテル、α-ヒドロゲン-置換された芳香族アシロインたとえば、α-メチルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、及びα-フェニルベンゾイン。
【0047】
光重合開始剤として、使用可能なのは、以下のものである:光還元性色素及び還元剤たとえば、米国特許第2,850,445A号公報、2,875,047A号公報、米国特許第3,097,096A号公報、米国特許第3,074,974号公報、米国特許第3,097,097A号公報、米国特許第3,145,104号公報、米国特許第3,579,339A号公報に開示されている光還元性色素及び還元剤;さらにはフェナジン、オキサジン、及びキノンのクラスからの色素;米国特許第3,427,161A号公報、米国特許第3,479,185A号公報、米国特許第3,549,367A号公報、米国特許第4,311,783A号公報、米国特許第4,622,286A号公報、及び米国特許第3,784,557A号公報に記載されているような、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、水素供与体を有する2,4,5-トリフェニルイミダゾリルダイマー、及びそれらの混合物。色素増感光重合についての有用な考察が、次の文献に見出される;D.F.Eaton,“Dye Sensitized Photopolymerization”,Adv.in Photochemistry,vol.13(D.H.Volman、G.S.Hammond and K.Gollnick、eds,Wiley-Interscience,New York,1986),p.427~487。同様にして、米国特許第4,341,860号公報のシクロヘキサジエノン化合物も、重合開始剤として有用である。好適な光重合開始剤としては、以下のものも挙げられる:CDM-HABI、すなわち、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス(m-メトキシフェニル)-イミダゾールダイマー;o-Cl-HABI、すなわち、2,2’-ビス-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール;及びTCTM-HABI、すなわち、2,5-ビス(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-1H-イミダゾールダイマー、それぞれ典型的には、水素供与体、たとえば、2-メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される。
【0048】
特に好ましい光重合開始剤は、たとえば以下のUV光重合開始剤である;IRGACURE(登録商標)OXE-01(1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、及びIRGACURE(登録商標)OXE-02(1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム(BASF AG製)、さらにはOMNIRAD-MBF(ギ酸メチルベンゾイル)、OMNIRAD-TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド)、OMNIRAD-TPO-L(エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート)、OMNIRAD-1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン)、OMNIRAD 1000(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(80%)と1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(20%)との混合物)、OMNIRAD 184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、OMNIRAD 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)、OMNIRAD 2022(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートの混合物)、及びOMNICAT 440(4,4’-ジメチル-ジフェニル-ヨードニウム-ヘキサフルオロホスフェート)、これらは、IGM Resinsから入手可能で、好ましくは0.1~10重量%の量で使用される。
【0049】
【0050】
上述の光重合開始剤は、単独で使用しても、或いは組み合わせて使用してもよい。
好ましくは、その光重合開始剤が液状であって、及び/又は以下のものからなる群より選択される;1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、(1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、ギ酸メチルベンゾイル)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(80%)と1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(20%)との混合物、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート)の混合物、並びに4,4’-ジメチル-ジフェニル-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート。
好ましくは、光重合開始剤系、すなわち光重合性組成物の成分b)には、共光重合開始剤が含まれる。
【0051】
共光重合開始剤
本発明における組成物において使用される共光重合開始剤に、式(I)の化合物が含まれているのが好ましい。
【化18】
[式中、
R
1cは、C
1~C
20-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、C
2~C
8-アルケニル、フェニル-C
1~C
6-アルキル、又はナフチル-C
1~C
3-アルキルを表すが、ここでそれらの基C
1~C
20-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、C
2~C
8-アルケニル、フェニル-C
1~C
6-アルキル、又はナフチル-C
1~C
3-アルキルが、1種又は複数の基O、S(O)
p、又はNR
5cによって中断されてもよいか、或いはそれらの基C
1~C
20-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、C
2~C
8-アルケニル、フェニル-C
1~C
6-アルキル、又はナフチル-C
1~C
3-アルキルが、非置換であるか、又はC
1~C
12-アルキル、OR
6、R
7cS(O)
p、R
7cS(O)
2O、NR
8cR
9c、SiR
10cR
11cR
12c、BR
13cR
14c、又はR
15cR
16cP(O)
qによって置換され;R
2c、R
3c及びR
4cは、互いに独立して、フェニル又はビフェニルであり、そのフェニル又はビフェニル基は、非置換であるか、又は以下の基によって置換されており;OR
6c、NR
8cR
9c、若しくはハロゲン置換されたC
1~C
12-アルキル、OR
6c、R
7cS(O)
p、R
7cS(O)
2O、R
8cR
9cNS(O)
2、NR
8cR
9c、NR
3cR
8cCO、
【0052】
【化19】
SiR
10cR
11cR
12c、BR
13cR
14c、ハロゲン、R
15cR
16cP(O)
q、
【化20】
R
5cは、水素、C
1~C
12-アルキル、フェニル-C
1~C
6-アルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって1~5回置換されている)、又はフェニル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって1~5回置換されている)であり;
R
6c及びR
7cは、C
1~C
12-アルキル(これは、非置換であるか、又はハロゲンによって置換されている)、フェニル-C
1~C
6-アルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって1~5回置換されている)、又はフェニル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって1~5回置換されている)を表し;
R
8c、R
9c、R
10c、R
11c、R
12c、R
13c、R
14c、R
15c、及びR
16cは、互いに独立して、C
1~C
12-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって1~5回置換されている)、又はハロゲン置換フェニルC
1~C
6-アルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲン置換フェニルによって1~5回置換されている)、又は、R
8c及びR
9cが、それらが結合されているN-原子と合体して、6員の脂肪族環を形成し、それにはさらに、さらなるヘテロ原子として酸素又は硫黄が含まれていてもよく;
R
17c、R
18c、R
19c、及びR
20cは、互いに独立して、水素、C
1~C
12-アルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
12-アルコキシ、又はフェニルによって置換されている)、又はフェニル-C
1~C
6-アルキル、基フェニル、又はフェニル-C
1~C
6-アルキル(非置換であるか、又はC
1~C
6-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、又はハロゲンによって、モノ置換~ペンタ置換されている)であり;pは、0~2の数であり;
rは、0~5の数を表し;
R
21cは、水素、又はC
1~C
12-アルキルであり;
R
22c、R
22a、R
23c、及びR
24cは、互いに独立して、水素、C
1~C
12-アルキル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
12-アルコキシ、OH、又はハロゲンによって置換されている)、又はフェニル(これは、非置換であるか、又はC
1~C
12-アルコキシ、OH、又はハロゲンによって置換されている)を表し;
qは、0又は1を表し;そして
Gは、正イオンを形成することが可能な残基を表す。
【0053】
本発明における光重合性組成物の中の共光重合開始剤は、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択するのが、好ましい。
チバ・スペシャリティー・ケミカルズ・インコーポレーテッドにより「CGI7460」名にて開発され、現在「SEC LCA1460」名にてBASF AGより入手可能であり、下記の通り表わされる、構造式(Ia)を有する共光重合開始剤が非常に好ましい。
【化21】
【実施例】
【0054】
下記の色素が漂白試験に用いられた。
【0055】
【0056】
UV開始剤
漂白試験のため、これらのUV開始剤が互いに比較された。
【表2】
【0057】
【0058】
溶媒
漂白試験においては、下記の溶媒を、色素及び粉体化したUV光重合開始剤のために使用した。低分子量のポリカプロラクトン(PCL-トリオール)を溶媒として使用したが、このものは、漂白には影響しなかった。
【0059】
【0060】
漂白試験
色素の退色を改良するための、光重合開始剤及び溶媒の適合性を試験する目的で、それらを用いて、飽和色素溶液を調製した。この目的のためには、スパチュラ1~2杯分(約0.1~0.2g)の色素を、小型の1.5mLキュベットの中に入れた。粉体化したUV光重合開始剤も、スパチュラ2~4杯分(約0.2~0.4g)を添加し、その全体を、ポリカプロラクトントリオール(PCL-トリオール)で満たした。液状のUV光重合開始剤と溶媒とを用いる混合物では、キュベットを完全に充満させれば十分であった。純粋なPCL-トリオールと色素の混合物を参照として採用したが、その理由は、それらの溶液では、退色の改良が認められなかったからである。
【0061】
それらの混合物を十分に攪拌し、120℃のオーブンの中で、1~2時間保持した。次いで、それらのサンプルを遠心分離機にかけて、不溶性成分を底に沈降させた。ピペットを用いて少量の上澄み液を採取し、ガラススライドの上に、液滴として載せた。この液滴の右側及び左側に、比較のために、また別の参照溶液の液滴を置いた。それ全体を、第二のガラススライドで覆った。
【0062】
それらのサンプルは、今や、測定し、漂白させることが可能となった。漂白させるために、それらのサンプルを、アーク長さ70mm、出力120W/cmを有するUVブリッジの下に、30秒間置いた。漂白の前及び後に、それらのサンプルを目視で観察し、そして分光計を用いてスペクトル吸収曲線を測定した。
【0063】
すべての試験が、Omnirad 1173とベンズアルデヒドとの混合物の中で、色素がもっとも良好に退色することを示した。別のUV光重合開始剤混合物に対して2-プロパノールを添加すると、退色に及ぼすそれらの効果が部分的に改良された。
【0064】
光重合性組成物
本発明による効果の一例として、サフラニン-O色素を用いて、2種の光重合性組成物を調製した。最初に、2種の色素濃縮物及びモノマー含有混合物を混合した。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
ホログラム露光のために、上に列記したモノマー含有混合物と、2種の色素濃縮物とから、2種の光重合性組成物を調製した。色素濃縮物FK1を用いた混合物を、比較例として使用した。
【0069】
【0070】
【0071】
調製法
最初に、着色濃縮物及びモノマー含有混合物を調製する。それぞれの成分を、マグネチック攪拌をしながら、次々とビーカーの中に加える。この目的では、そのビーカーは秤の上に載せて、液状物質を正確な量で添加できるようにする。次いで、加熱可能なマグネチックスターラーの上で攪拌しながら、全体を加熱して120℃とする。粉体状物質は、秤量ボウルを用いて計量し、攪拌しながらその混合物に添加する。その混合物を、120℃で約1時間攪拌してから、その溶液を濾過し、ボトルに充填する。
その色素濃縮物とモノマー含有混合物とを、(たとえば、高速ミキサーを用いて振盪させるか、又は攪拌ロッドを用いて攪拌して)混合して、光重合性組成物を製造させる。
【0072】
【0073】
光重合性組成物A及びBを、20℃~21℃の温度範囲で、532nmの波長を有するレーザーに露光させた。その光重合性組成物を、オーブン中、80℃で保存し、塗布後直ぐに露光させた。レーザー露光及びUVフラッシュを用いた急速UV硬化の後で、分光計を用いてスペクトル吸収曲線を測定した。その後で、それらのサンプルを、UVブリッジ下で、もう30秒間かけて後硬化させて、漂白させた。それら二つのサンプルの漂白の違いは、目視でも、そしてもう一度スペクトル吸収を測定しても明らかに認められた。そのスペクトル吸収曲線を使用してさらに、回折効率(BWG、「Beugungswirkungsgrad」)も求めた。ヘーズメーターを用いて、追加の透明度の測定を実施した。そのフィルムの厚みは、デジタルマイクロメーターを用い、マイクロメーターゲージの外側で測定した。
【0074】
露光の構成
4.0Wの実測出力を有するレーザービームを、多面鏡スキャナーを用いて水平に拡張させ、円柱レンズにより集束させて、それが23cmの露光幅をカバーするようにした。
図1に、露光装置を模式的に示す。
図1での参照符号:
1 レーザー 532nm
2 ミラー
3 多面鏡スキャナー
4 円柱レンズ
5 走査ビーム
6 スキャナーミラー
【0075】
それぞれのサンプルを、このラインで、可動ミラーを用いてスキャンし、露光させた。移動速度は、9mm/秒に設定した。レーザービームは、サンプル表面上に、22度~垂直の角度で当たった。
【0076】
図2に、ビームの経路を示す。
図2での参照符号:
1 走査ビーム 532nm
2 スキャナーミラー
3 露光方向
4 露光角度、22度
5 基板、ガラス又はフォイル
6 感光性ポリマー(光重合性組成物)
7 原版、ミラープレート
【0077】
反射ホログラムを作成するために、サンプル物質を、レーザー光を反射するミラープレートに塗布した。入射ビームと反射ビームとの干渉により、ミラーの表面に対して平行に、明と暗のスポットのラインパターンが形成される。この干渉縞が、屈折率変調の形式でその光重合性組成物により記録され、いわゆるLippmann-Braggホログラムが作り出される。
【0078】
レーザー露光を使用する場合、その感光性ポリマー層は、ミラーシートと、透明な基板、たとえば、PETフィルム又はガラスとの間にある。それらの例では、スライドガラス基板を使用した。そのガラスを使用して、ミラーシートに塗布された液滴を覆った。層厚は、その液滴の量及びその液滴の広がりで決まる。その円形の広がりの大きさは、接触圧、温度、及び流動時間で調節することができる。所望の層厚を達成するために、スペーサーを使用することも可能である。レーザー露光の後で、UV光を使用してその光重合性組成物を硬化させる。第一の硬化ステップでは、出力3000WSのUVフラッシュが使用された。その後でシートから、キャリヤーと共にホログラムを取り外すには、これで十分である。ガラスに対する接着性を確保するためには、プライマーを用いた前処理をするべきである。
それらのサンプルの最終硬化及び漂白をさせるために、アーク長さ70mm、出力120W/cmを有するUVブリッジを使用した。その光源は、水銀蒸気電球であった。露光もしくは漂白時間は30秒であった。
【0079】
測定装置
それらのサンプルを、透過光中で、分光計(CAS 140B、Instrument Systems製)を用いて測定した。これは、垂直照明を用いて実施した。ホログラムは、Bragg条件を満たす波長のみを反射するので、この時点では、スペクトル曲線には、クリアな吸収ピークが認められる。
ピーク値TPeakと、近傍の上側ベースラインの参照値TRefとから、回折効率(BWG)ηが、次式で計算される;
η=(TRef-TPeak)/TRef
【0080】
図3に、サンプルBの相当する測定点での測定曲線を示す。
露光の表(第6表)の値は、両方のサンプルが、80%を超える高い回折効率を達成したが、露光サンプルBの方が、はるかに透明であるということを示している。
図4に、UVブリッジ下での、30秒の漂白の前後の、2種の光重合させた組成物A及びBのスペクトル吸収曲線を示す。
透明度の値は、ASTM D 1003の標準手順に従い、ヘーズメーター(haze-gard i、BYK製)を用い、4mmの開口絞りを使用して測定した。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV/VIS照射により硬化可能な光重合性組成物であって、
(a)80~99.8重量%の、ラジカル反応硬化可能なモノマー含有混合物、
b)0.1~10重量%の光重合開始剤系、及び
c)0.1~10重量%の漂白剤、
を含み、
a)、b)及びc)の合計量が100重量%であり、そして前記漂白剤が、化学線照射下で性能を発揮し、
前記光重合開始剤系が、色素及び共重合開始剤を含み、
成分c)が、光重合開始剤を含み、
成分c)において使用される前記光重合開始剤が、化学線照射の作用下で、ベンゾイルラジカル及びアルコールラジカルを発生する、
光重合性組成物。
【請求項2】
前記共重合開始剤が、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス-(3-フルオロフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、及びトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項
1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記色素が、アクリフラビン、ジアミノアクリジン、ローダミンB、サフラニン-O、ジエチルサフラニン、及びメチレンブルーからなる群より選択される、請求項
1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
漂白物質が、化学線照射の作用により、成分c)から形成される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記光重合性組成物が、少なくとも0.005の大きさすなわちΔnを有する屈折率変調を形成することが可能である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
素子であって、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光重合性組成物の上に、UV/Vis放射線、好ましくは化学線UV/VIS放射線を作用させることにより得ることが可能な成分を含む、素子。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の光重合性組成物を、空間的又は干渉法的に変調された放射線に暴露させることによって得ることが可能なホログラムを含む、請求項
6に記載の素子。
【請求項8】
請求項
6及び7のいずれか1項に記載の素子の使用であって、フィルム、レンズ、格子、プリズム、ミラー、ビームスプリッター、ディフューザー、表面レリーフ、光スイッチ、又はセンサーとしての、使用。
【請求項9】
請求項
6及び7のいずれか1項に記載の素子の使用であって、ヘッドアップディスプレイ、積層ガラス、データガラス、光誘導システム、分光計、検出システム、安全用素子、又はラベルのための、使用。
【請求項10】
請求項
6及び7のいずれか1項に記載の素子を作成するための方法であって、前記素子を後漂白するためにUV光が使用される、方法。
【請求項11】
プロセスであって、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光重合性組成物の成分c)が、溶媒として使用されるか、又は前記色素の溶媒の一成分として使用される、プロセス。
【請求項12】
基板表面又はコピー原版の上で、光重合性層の中に光安定性のホログラムを形成させる方法であって、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光重合性組成物の層を、ホログラム情報を担持する変調された放射線に暴露させることを含む、方法。
【国際調査報告】