(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】一般的な加齢関連併存疾患の治療のための新しいクラスのトランスサイレチンリガンドを含む新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20240229BHJP
C07D 413/04 20060101ALI20240229BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240229BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240229BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240229BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
C07D413/04
C07D403/14
A61K31/497
A61P25/02
A61P9/00
A61P27/02
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548924
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022015917
(87)【国際公開番号】W WO2022173904
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518360944
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コランビア・ユニバーシティー・イン・ザ・シティー・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】523306689
【氏名又は名称】オールバニー・カレッジ・オブ・ファーマシー・アンド・ヘルス・サイエンシーズ・イン・ザ・シティ・オブ・オールバニー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペトルキン、コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ラーチェ、ボグラルカ
(72)【発明者】
【氏名】バラディ、アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】シオッフィ、クリストファー・エル.
(72)【発明者】
【氏名】マサラマン、パルタサラティ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ、アルン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB02
4C063CC34
4C063CC47
4C063CC51
4C063DD22
4C063DD34
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC49
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA20
4C086ZA33
4C086ZA36
(57)【要約】
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。本発明は、哺乳動物においてTTR四量体を安定化する方法であって、前記哺乳動物に、TTR四量体を安定化するのに有効な、本発明の一定の量の化合物又は本発明の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】
(式中、
X
1は、N又はCR
5であり、
R
5は、H、OH、ハロゲン又はアルキルであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-SH、-S-(アルキル)、-S-(アルケニル)、-S-(アルキニル)、-S-(アリール)、-S-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)、-NH-(ヘテロアリール)、-C(O)R
7、-S(O)R
7、-SO
2R
7、-NHSO
2R
7、-OC(O)R
7、-SC(O)R
7、-NHC(O)R
7又は-NHC(S)R
7であり、
R
7は、H、-(アルキル)、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
Bは、
【化2】
であるか、存在せず、
R
8は、H、OH、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
Cは、H、置換若しくは非置換の単環、二環、ヘテロ単環、ヘテロ二環、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、CO
2H、COOR
9、OH、OR
9、NH
2、NHR
9、NR
9R
10、SO
2R
11、CH
2NHR
9、CH
2NR
9R
10又はCH
2COOR
9であり、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OH、-C(O)-O-アルキル、-C(O)-O-シクロアルキル、-C(O)NH
2、-C(O)NH(アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)N(アルキル)
2、-CH
2NH(アルキル)、-CH
2COOH、-SO
2CH
3、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
R
11は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NH
2、NH(アルキル)、NH(シクロアルキル)、NH(ヘテロサイクル)、NH(アリール)、NH(ヘテロアリール)又はNHCOR
12であり、
R
12は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル、アリール又はヘテロアリールである。)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
X
1は、N又はCR
5であり、
R
5は、H、OH、ハロゲン又はアルキルであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-SH、-S-(アルキル)、-S-(アルケニル)、-S-(アルキニル)、-S-(アリール)、-S-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)又は-NH-(ヘテロアリール)であり、
Bは、
【化3】
であるか、存在せず、
R
8は、H、OH、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
Cは、置換若しくは非置換の単環、二環、ヘテロ単環、ヘテロ二環、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、CO
2H、COOR
9、OH、OR
9、NH
2、NHR
9、NR
9R
10、SO
2R
11、CH
2NHR
9、CH
2NR
9R
10又はCH
2COOR
9であり、
R
9 及びR
10は、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OH、-C(O)-O-アルキル、-C(O)-O-シクロアルキル、-C(O)NH
2、-C(O)NH(アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)N(アルキル)
2、-CH
2NH(アルキル)、-CH
2COOH、-SO
2CH
3、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
R
11は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NH
2、NH(アルキル)、NH(シクロアルキル)、NH(ヘテロサイクル)、NH(アリール)、NH(ヘテロアリール)又はNHCOR
12であり、
R
12は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル、アリール又はヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
X
1はNであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)又は-NH-(ヘテロアリール)であり、
B-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化4】
である、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
構造:
【化5】
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
構造:
【化6】
を有する、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
X
3はNHで、X
2及びX
4はCR
6であるか、
X
3はOで、X
2及びX
4はCR
6であるか、又は
X
3はSで、X
2及びX
4はCR
6である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
6は、H、OH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
6はアルキルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
6はメチル又は-CF
3である、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
B-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化7】
である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
B-Cは-CO
2Hである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH
3、CF
3又はOCH
3である、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
R
1は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、
R
2は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、
R
3は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、又は
R
4は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
R
1は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであるか、
R
1は、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であり、R
3はCH
3であり、R
2及びR
4は、それぞれHであるか、
R
1はFであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、
R
1はFであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであるか、
R
1はClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、又は
R
1はClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHである、
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
B-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化8】
である、請求項1~10又は13~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R
1は、F若しくはClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであり、B-Cは、-CO
2Hであるか、
R
1は、F若しくはClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであり、B-Cは、-CONH
2であるか、又は
R
1は、F若しくはClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであり、B-Cは、
【化9】
である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
構造:
【化10】
を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
X
1は、N又はCR
5である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
B-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化11】
である、請求項18又は19に記載の化合物。
【請求項21】
構造:
【化12】
を有する、請求項18~20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH
3、CF
3又はOCH
3である、請求項18~21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
R
1は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、
R
2は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、
R
3は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であるか、又は
R
4は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3である、
請求項18~21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
R
1は、H、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであるか、
R
1は、F、Cl、CH
3、CF
3若しくはOCH
3であり、R
3はCH
3であり、R
2及びR
4は、それぞれHであるか、
R
1はFであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであるか、又は
R
1はClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHである、
請求項18~21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物は、構造:
【化13】
である、請求項1に記載の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項26】
前記化合物は、構造:
【化14】
である、請求項1に記載の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項27】
前記化合物は、構造:
【化15】
である、請求項1に記載の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項28】
前記化合物は、構造:
【化16】
である、請求項1に記載の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項29】
前記化合物は、構造::
【化17】
である、請求項1に記載の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項31】
哺乳動物においてTTR四量体を安定化する方法であって、前記哺乳動物に、TTR四量体を安定化するのに有効な、請求項1~29のいずれか一項に記載の一定の量の化合物又は請求項30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項32】
哺乳動物における、TTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防する方法であって、前記哺乳動物に、TTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防するのに有効な、請求項1~29のいずれか一項に記載の一定の量の化合物又は請求項30に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項33】
TTRアミロイドーシス(ATTR)に罹患している哺乳動物において、前記ATTRを治療する方法であって、前記哺乳動物に、請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物又は請求項30に記載の組成物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記方法は、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化するのに更に有効である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記TTRアミロイドーシス(ATTR)は、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM)、遅発性家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)又は老人性全身性アミロイドーシス(SSA)である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記TTRアミロイドーシス(ATTR)は、アミロイド凝集体の沈着を特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に、請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物又は請求項30に記載の組成物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記疾患はビスレチノイドによる黄斑の変性を更に特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物の量は、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であり、又は、前記化合物の量は、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記ビスレチノイドは、A2E、イソA2E、A2-DHP-PE又はatRAL ジ-PEである、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、加齢黄斑変性、乾燥型(萎縮型)加齢黄斑変性、シュタルガルト病、ベスト病、成人卵黄状黄斑症又はシュタルガルト様黄斑ジストロフィーである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
TTRアミロイドーシス(ATTR)、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患、又は、TTRアミロイドーシス(ATTR)と過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患の両者を治療する方法であって、前記哺乳動物に、請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物又は請求項30に記載の組成物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項43】
前記化合物の量は、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化するのに有効である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物の量は、TTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防するのに有効である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物の量は、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であり、又は、前記化合物の量は、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物の量は、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化して、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であり、前記哺乳動物においてTTR凝集体の形成若しくは高分子量凝集体の形成を予防して、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であり、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化して、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効であり、又は、前記哺乳動物においてTTR凝集体の形成を予防若しくは高分子量凝集体の形成を予防して、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記TTRアミロイドーシス(ATTR)は、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM)、遅発性家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)又は老人性全身性アミロイドーシス(SSA)である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記TTRアミロイドーシス(ATTR)は、アミロイド凝集体の沈着を特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患はビスレチノイドによる黄斑の変性を更に特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記化合物の量は、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であり、又は、前記化合物の量は、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である、請求項42又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記ビスレチノイドは、A2E、イソA2E、A2-DHP-PE又はatRAL ジ-PEである、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、加齢黄斑変性、乾燥型(萎縮型)加齢黄斑変性、シュタルガルト病、ベスト病、成人卵黄状黄斑症又はシュタルガルト様黄斑ジストロフィーである、請求項42~51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願第63/149124号(出願日:2021年2月12日)の優先権を主張し、その内容は参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願全体で、参考文献を括弧内で参照する。これらの参考文献の完全な書誌を、明細書の末尾に示す。この発明が関連する技術水準を完全に説明するために、これらの参考文献の開示全体が、参照によりこの出願に組み込まれる。
【0003】
この発明は、米国国立衛生研究所(NIH)によって授与されたR01EY028549に基づく政府の支援を受けて行われた。政府はこの発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
トランスサイレチン(TTR、チロキシン結合プレアルブミン)は、血液中に分泌するために主に肝臓で合成される、βシートリッチな127残基のポリペプチド単量体4つからなる55kDaのホモ四量体である(Vieira, M. & Saraiva 2014)。TTR四量体には、甲状腺ホルモン チロキシン(T4、1)(
図1)に対する2か所の高親和性結合部位がある。別の血清タンパク質であるチロキシン結合グロブリン(TBG)は、血液中でT4の主な輸送体として機能するのに対して、T4と結合した血中TTRは1%未満である(Vieira, M. & Saraiva 2014)。TTRは、血清中のT4の主なキャリアではないが、中枢神経系(CNS)ではホルモンの主要な輸送タンパク質として機能し、脈絡叢由来のTTRが、T4を脳脊髄液(CSF)から脈絡叢及び脳に輸送する(Kassem, N.A. et al. 2006)。TTRが、CNSから末梢へのβ-アミロイド(Aβ)ペプチドのクリアランスを促進することによって、CSF内のAβペプチドの隔離に補助的な役割を果たしている可能性があり、アルツハイマー病(AD)に対する神経保護効果を提供する可能性があることを、蓄積された証拠は示唆する(Gimeno, A. et al. 2017;Giao, T. et al. 2020;Gales, L. et al. 2005)。血液中では、TTRのかなりの部分(約50%)が、オールトランスレチノール(ビタミンA、2)と会合したレチノール結合タンパク質4(RBP4)と高分子複合体を形成する(
図1)(Kanai, M. et al. 1968; Hyung, S.J. et al. 2010)。このレチノール依存性RBP4-TTR相互作用は、低分子量のRBP4-オールトランスレチノール複合体の糸球体濾過を妨げるので、オールトランスレチノールの効率的な全身輸送に不可欠である(Kawaguchi, R. et al. 2015)。
【0005】
血液中のTTR分子は、2つの二量体から形成されるホモ四量体である(Vieira, M. & Saraiva 2014)。ホモ四量体構造を形成するには、最初に2つのTTR単量体が二量体サブユニットに会合し、更に別の二量体サブユニットと会合する。得られた二量体の二量体構造は、四量体の中央のチャネル内に位置し、二量体-二量体界面で形成された、2つの同じC2対称T4結合部位を有する四量体を示す(Vieira, M. & Saraiva 2014)。TTRの二量体-二量体界面は比較的弱く、その解離はTTR四量体解離工程全体における律速段階である(Sun, X. et al. 2018)。その後、遊離した二量体サブユニットが、ミスフォールディングしてオリゴマー化する潜在的な可能性を有する単量体に更に解離する可能性がある。オリゴマー化は、最終的に、有毒なアミロイド線維の凝集と形成につながる可能性があり、これがTTRアミロイドーシス(ATTR)の病態生理の基礎である(Sun, X. et al. 2018)。
【0006】
常染色体優性ATTRは、組織における上記有毒なTTRアミロイド線維の細胞外沈着による重篤な臓器損傷を伴う、まれで進行性の疾患である。この疾患は通常、臨床的には、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM;不整脈、動脈細動、両心室心不全につながる可能性がある)(Ruberg, F.L. et al. 2019; Yamamoto, H. & Yokochi, T. 2019)又は末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN;感覚の喪失、ヒリヒリ感、しびれ又は痛みを引き起こし、また、自律神経系に損傷を与える可能性がある)(Waddington-Cruz, M. et al. 2019)として現れ、遺伝性TTR変異による前病原性単量体によって生じる可能性がある。非遺伝性ATTRは、高齢者において、野生型TTR(WT-TTR)単量体のミスフォールディングで生じる可能性がある(Park, G.Y. et al. 2019)。家族性ATTRに関係するTTRの変異は少なくとも77あり、これらの変異は、1) TTR四量体の熱力学的安定性を低下させること(すなわち、単量体が会合してTTR四量体を形成する可能性は低くなり、アミロイド形成中間体にミスフォールドされる可能性が高くなる)、2) 四量体解離の速度論的障壁を低下させること(変異したTTR四量体はWT-TTRよりも速く解離し、同時に単量体のの凝集速度も増加する)3) TTR四量体を、熱力学的、かつ、速度論的に不安定化すること、のいずれかにより、アミロイド形成性に影響を与える(Leach, B.I. et al. 2018)。速度論的には安定であるが、熱力学的に不安定な変異V30M(Jesus, C.S. et al. 2016)は、主に遅発性家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)と関係しており、病原性が強い。最も一般的なアミロイド形成性TTR変異であるV122I(Damrauer, S.M. et al. 2019)は、アフリカ系アメリカ人において比較的高い頻度(約3.4%)で存在し、主に家族性アミロイド心筋症(FAC)と関係している。その病原性は、TTR四量体を速度論的に不安定化し、解離速度をWT-TTRの約2倍にする能力に起因すると考えられる(Jiang, X. et al. 2001)。L55P変異は、熱力学的にも速度論的にも四量体形成を不安定にし、ATTR-CM及びATTR-PNの早期発症を積極的に促進する可能性がある(Sousa, M.M. et al. 2002)。逆に、アミロイド形成促進TTR変異(例.V30M)と、T119M又はR104HなどのTTR四量体を過剰に安定化させる疾患抑制変異(Kamata, M. et al. 2009)を有する複合ヘテロ接合体は、軽度の遅発性病態を発症するか、ATTRから完全に防御されるかのいずれかであることが報告されている。T119M変異はTTR四量体を速度論的に安定化し、R104H変異は四次構造を熱力学的に安定化する。T119M変異は四量体の解離と凝集に耐性があり、in vitroでのTTR凝集に対し、R104Hと比較して高いレベルの保護を提供することから、この安定化メカニズムの相違は重要である。最後に、加齢に伴い非遺伝的に生じるWT-TTRのミスフォールディングと凝集は、80歳以上の10%~20%が罹患すると推定されている、遅発性で蔓延しているATTRである老人性全身性アミロイドーシス(SSA)と関連している。
【0007】
ATTR-CM及びATTR-PNの治療に現在利用できるFDAが承認したアプローチには、血液中のTTRを低下させる2つの治療法(アンチセンスオリゴヌクレオチドのイノテルセン(Mathew, V. & Wang, A.K. 2019)及び低分子干渉RNA(siRNA)のパチシラン(Hoy, S.M. 2018))と、TTR四量体に結合して安定化させる低分子化合物タファミジス(ビンダケル及びビンマックス、3)(
図2)(Bulawa, C.E. et al. 2012;Coelho, T. et al. 2013;Coelho, T. et al. 2016;Cruz, M.W. 2019;Lamb, Y.N. & Deeks, E.D. 2019;Park, J. et al. 2020)が含まれる。T4部位でのリガンド結合は、天然の四量体状態の解離エネルギー障壁を増加させることによって、TTR四量体を速度論的に安定化することが示されている。2つのT4輸送タンパク質(TGB及びアルブミン)が更に存在するため、血液中のTTRの大部分はTTRと結合せず、T4結合部位はほとんど(99%以上)占有されない。そのため、TTR四量体を速度論的に安定化できるT4競合低分子化合物を特定する創薬アプローチは、ATTR治療の選択肢として大きな関心を集めている。タファミジスに加え、多くの構造的に多様な分子骨格がT4部位に結合してTTR四量体を安定化することが報告されており、このクラスの代表的なものを
図2(化合物3~12)に示す。2つの最も先進的な低分子TTR四量体安定化剤には、現在までのところ、前記FDAが承認した化合物3と臨床試験中のAG10(4)が含まれる(Alhamadsheh, M.M. et al. 2011;Miller, M. et al. 2018;Penchala, S.C. et al. 2013)。TTR安定化剤3は、FAP及びATTR-CMの治療に承認されている。ATTR-CMの患者441人を対象とした第III相試験では、プラセボと比較して、化合物3の投与により死亡のリスクが30%減少し、心血管に関連する入院が32%減少したことが示された(Maurer, M.S. et al. 2018)。TTR安定化剤4は忍容性が良好であることが報告されており、症候性慢性心不全のATTR-CM患者を対象とした28日間の第II相概念実証試験において、TTRをほぼ完全に安定化することが実証された(Judge, D.P. et al. 2019)。化合物4のATTR-CM及びATTR-PNの治療を目的とした第III相臨床試験が現在進行中である。さらに、別の目的に再利用されたFDA承認非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)ジフルニサル(5)(Berk, J.L. et al. 2013)及びカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤トルカポン(7)(Sant'Anna, R. et al. 2016)も、TTR四量体安定化活性を示すことが報告されており、ATTR-PNに対する臨床効果が調査されている。
【0008】
近年、血液中のRBP4-TTR-オールトランスレチノール輸送複合体が、A2E、イソA2E、A2-DHP-PE及びatRAL ジ-PE(
図3、4)といった細胞傷害性のリポフスチン ビスレチノイドの網膜における蓄積亢進に関連する眼疾患における薬理学的介入の標的となっている。アポRBP4はTTRとあまり結合しないことから、この輸送複合体の形成には最初に化合物2とRBP4(ホロRBP4)が結合する必要がある(Kawaguchi, R. et al. 2015)。RBP4-TTR-オールトランスレチノール三元複合体形成の予防は、選択的オールトランスレチノール競合RBP4アンタゴニストによって達成できることが報告されており、比較的小さな分子量(21kDa)のため、急速な糸球体濾過によって促進される血清RBP4の低下につながる(Kawaguchi, R. et al. 2015)。選択的RBP4アンタゴニストによる血清RBP4の低下が、多種多様な適応症に対する治療の可能性を秘めていることを、証拠は示唆している。例えば、RBP4アンタゴニストは、化合物2の眼への流入を妨げ、網膜における細胞傷害性のリポフスチン ビスレチノイドの蓄積を停止することにより、乾燥型加齢黄斑変性(AMD)及びシュタルガルト病患者における局所的萎縮の進行を遅らせるか、停止させるメカニズムを提供する可能性があるという仮説が立てられている(Radu, R.A. et al. 2005)。強力で選択的なRBP4アンタゴニストは、in vitroでRBP4-TTR-オールトランスレチノール三元複合体の形成を阻止し、in vivoでげっ歯類、イヌ及びヒト以外の霊長類の血清RBP4を大幅に低下させる(Cioffi, C.L. et al. 2014;Cioffi, C.L. et al. 2015;Cioffi, C.L. et al. 2019;Racz, B. et al. 2020)。さらに、シュタルガルト病の表現型を再現する過剰なリポフスチン生成モデルであるAbca4
-/-ノックアウトマウスに対してRBP4アンタゴニストを長期間経口投与すると、網膜色素上皮(RPE)における補体系タンパク質発現の安定化を伴って、網膜における細胞傷害性のビスレチノイドの蓄積が減少した(Racz, B. et al. 2018;Dobri, N. et al. 2013)。加えて、野生型BALB/cJマウスにおける別の投与実験は、RBP4アンタゴニストによる血中RBP4の低下が、視覚サイクルの動態を損なわずに、ビスレチノイド前駆体濃度の部分的な低下と相関していることが明らかにした(Racz, B. et al. 2018)。
【0009】
今日まで、RBP4の選択的オールトランスレチノール競合アンタゴニストのみが、TTRとの三元複合体の形成を阻止し、in vivoで血中RBP4を低下させ、同時に網膜におけるビスレチノイド合成の阻害することが報告されている。選択的RBP4アンタゴニストは、大多数の乾燥型AMD及びシュタルガルト病の患者にとって、安全で効果的なビスレチノイド低下薬となる可能性があるが、このクラスの化合物は、TTR凝集に関連する疾患にかかりやすい一部の黄斑変性の患者に適応外となる可能性がある。選択的RBP4アンタゴニストは、血液中のRBP4-TTR-オールトランスレチノール輸送複合体からリガンドと結合していないTTR四量体を放出する。これまでに、RBP4-TTR-オールトランスレチノール相互作用はTTR四量体を安定化させる可能性があり(Leach, B.I. et al. 2018;Jesus, C.S. et al. 2016)、選択的RBP4アンタゴニストによって誘導されるリガンドと結合していないTTR四量体の大量の放出は、ATTRを促進する感受性の高い個体におけるTTRアミロイド線維形成を促進する可能性があることが示唆されている(Damrauer, S.M. et al. 2019;Jiang, X. et al. 2001;Sousa, M.M. et al. 2002)。
【0010】
この発明は、TTR四量体に選択的に結合する新規なTTR四量体速度論的安定化剤について説明する。したがって、これらの化合物は、ATTR-CM、ATTR-PN、FAP、FAC又はSSA、及び他のATTRの治療に応用できる。加えて、この明細書では、これらの化合物がRBP4のレベルを低下できるため、AMD、乾燥型AMD、シュタルガルト病、ベスト病、成人卵黄状黄斑症及び網膜におけるリポフスチン蓄積の亢進を特徴とする他の状態の治療薬としても使用できる可能性があることを示す。
【発明の概要】
【0011】
この発明は、構造:
【0012】
【0013】
(式中、
X1は、N又はCR5であり、
R5は、H、OH、ハロゲン又はアルキルであり、
X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR6であり、
各R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)2又は-CO2Hであり、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-CF3、-CF2H、-OCF3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-SH、-S-(アルキル)、-S-(アルケニル)、-S-(アルキニル)、-S-(アリール)、-S-(ヘテロアリール)、-NH2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)、-NH-(ヘテロアリール)、-C(O)R7、-S(O)R7、-SO2R7、-NHSO2R7、-OC(O)R7、-SC(O)R7、-NHC(O)R7又は-NHC(S)R7であり、
R7は、H、-(アルキル)、-OH、-O(アルキル)、-NH2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)2であり、
Bは、
【0014】
【0015】
であるか、存在せず、
R8は、H、OH、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)2又は-CO2Hであり、
Cは、置換若しくは非置換の単環、二環、ヘテロ単環、ヘテロ二環、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、CO2H、COOR9、OH、OR9、NH2、NHR9、NR9R10、SO2R11、CH2NHR9、CH2NR9R10又はCH2COOR9であり、
R9及びR10は、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OH、-C(O)-O-アルキル、-C(O)-O-シクロアルキル、-C(O)NH2、-C(O)NH(アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)N(アルキル)2、-CH2NH(アルキル)、-CH2COOH、-SO2CH3、-OH、-O(アルキル)、-NH2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)2であり、
R11は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NH2、NH(アルキル)、NH(シクロアルキル)、NH(ヘテロサイクル)、NH(アリール)、NH(ヘテロアリール)又はNHCOR12であり、
R12は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル、アリール又はヘテロアリールである。)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】甲状腺ホルモン チロキシン(T4)(1)及びオールトランスレチノール(ビタミンA)(2)。
【
図2】T4結合部位で結合するTTR四量体安定化剤のさまざまなクラスの代表例。TTR四量体安定化剤のこの試料セットには、タファミジス(3)、AG10(4)、ジフルニサル(5)、ヨウ化ジフルニサル(6)、トルカポン(7)、ベンズブロマロン(8)、ジクロフェナク(9)、N-フェニルフェノキサジン 10、ジベンゾフラン 11およびビスアリールオキシムエーテル 12が含まれる。
【
図3】レチナール リポフスチンの細胞傷害性成分で、ビスレチノイドであるA2E及びイソA2Eの構造。
【
図4】レチナール リポフスチンの細胞傷害性成分で、ビスレチノイドであるatRAL ジ-PE(オールトランスレチナール二量体-ホスファチジルエタノールアミン)及びA2-DHP-PEの構造。R
1及びR
2は、さまざまな脂肪酸の成分を指す。
【
図5A】類似体18aは、酸誘導凝集アッセイで高分子量のTTRの形態の形成を減少させる。酢酸緩衝液(pH4.0)でTTRタンパク質(5μg)を凝集させ、37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション中のTTR四量体の濃度は9μMであった。DMSO、50μMの3(タファミジス)又は50μMの化合物18aの存在下でインキュベートし、グルタルアルデヒドで架橋した後、試料のSDS-PAGEを行い、続いてTTRのウエスタンブロット分析を行った。少なくとも3回の独立した実験を代表するブロットを示す(A)。
【
図5B-5D】グラフは、TTRの高分子量凝集体(B)、二量体(C)および単量体(D)について、イムノブロットをスキャンしたバンドの任意単位のピクセル体積平均±S.D.を表す。Holm-Sidak事後検定を用いた一元配置ANOVAによって統計的有意性を決定した;TTR凝集+DMSO群(pH4.0)と比較
*, p≦0.05;
**, p ≦0.01;
***, p≦0.001;
****, p≦0.0001; 凝集のないTTR群(pH7.5)と比較
#, p≦0.05;
##, p≦0.01;
###, p≦0.001;
####, p≦0.0001
【
図6A】マウスにおける化合物18aの薬物動態および薬力学的特性。(A)化合物18aの単回25mg/kg経口投与後の血清RBP4量。データは平均±SDとして示す。1処置群につき3匹のマウスをPK-PD研究に使用。
【
図6B】マウスにおける化合物18aの薬物動態および薬力学的特性。(B)化合物18aの単回5mg/kg経口投与後の血液中の化合物量。データは平均±SDとして示す。1処置群につき3匹のマウスをPK-PD研究に使用。
【
図7】化合物18a・2塩酸塩で8週間経口処置したAbca4
-/-マウスにおけるRBP4量。
【
図8】化合物で8週間処置したAbca4
-/-マウスにおける化合物18a・2塩酸塩のビスレチノイド低減効果。
【
図9A-9C】マウス網膜切片におけるリポフスチンの自己蛍光。A~C、129S1/SvLmJ未処置マウス(A)、ビヒクル処置129S-Abca4tm1Ght/Jマウス(B)、および化合物18a・2塩酸塩処置129S-Abca4tm1Ght/Jマウス(C)の眼から調製したマウス網膜切片の自己蛍光画像。飼料に配合した化合物18a・2塩酸塩27mg/kgを6週間投与。40オイル対物レンズを備えた共焦点顕微鏡を用い、405nm(青、DAPI)、488nm(緑)の励起波長および420~470nm(青、DAPI)、500~600nm(緑)の発光波長で画像を撮影。微分干渉コントラストモードで画像化した、網膜層(青、DAPI)および網膜組織(DIC)内のリポフスチン自己蛍光のピーク(緑)の局在化を示す結合画像。GCL、神経節細胞層;IPL、内側網状層;INL、内側核層;OPL、外側網状層;ONL、外側核層;IS/OS、光受容体層の内側および外側セグメント;RPE、網膜色素上皮。スケールバー、50μm。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
この発明は、構造:
【0018】
【0019】
(式中、
X
1は、N又はCR
5であり、
R
5は、H、OH、ハロゲン又はアルキルであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-SH、-S-(アルキル)、-S-(アルケニル)、-S-(アルキニル)、-S-(アリール)、-S-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)、-NH-(ヘテロアリール)、-C(O)R
7、-S(O)R
7、-SO
2R
7、-NHSO
2R
7、-OC(O)R
7、-SC(O)R
7、-NHC(O)R
7又は-NHC(S)R
7であり、
R
7は、H、-(アルキル)、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
Bは、
【化4】
であるか、存在せず、
R
8は、H、OH、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
Cは、置換若しくは非置換の単環、二環、ヘテロ単環、ヘテロ二環、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、CO
2H、COOR
9、OH、OR
9、NH
2、NHR
9、NR
9R
10、SO
2R
11、CH
2NHR
9、CH
2NR
9R
10又はCH
2COOR
9であり、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OH、-C(O)-O-アルキル、-C(O)-O-シクロアルキル、-C(O)NH
2、-C(O)NH(アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)N(アルキル)
2、-CH
2NH(アルキル)、-CH
2COOH、-SO
2CH
3、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
R
11は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NH
2、NH(アルキル)、NH(シクロアルキル)、NH(ヘテロサイクル)、NH(アリール)、NH(ヘテロアリール)又はNHCOR
12であり、
R
12は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル、アリール又はヘテロアリールである。)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、
X
1は、N又はCR
5であり、
R
5は、H、OH、ハロゲン又はアルキルであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-SH、-S-(アルキル)、-S-(アルケニル)、-S-(アルキニル)、-S-(アリール)、-S-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)又は-NH-(ヘテロアリール)であり、
Bは、
【化5】
であるか、存在せず、
R
8は、H、OH、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
Cは、置換若しくは非置換の単環、二環、ヘテロ単環、ヘテロ二環、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、CO
2H、COOR
9、OH、OR
9、NH
2、NHR
9、NR
9R
10、SO
2R
11、CH
2NHR
9、CH
2NR
9R
10又はCH
2COOR
9であり、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)OH、-C(O)-O-アルキル、-C(O)-O-シクロアルキル、-C(O)NH
2、-C(O)NH(アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)N(アルキル)
2、-CH
2NH(アルキル)、-CH
2COOH、-SO
2CH
3、-OH、-O(アルキル)、-NH
2、-NH(アルキル)又は-N(アルキル)
2であり、
R
11は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NH
2、NH(アルキル)、NH(シクロアルキル)、NH(ヘテロサイクル)、NH(アリール)、NH(ヘテロアリール)又はNHCOR
12であり、
R
12は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル、アリール又はヘテロアリールである。
【0021】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、
X
1はNであり、
X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、NH、N、S、O又はCR
6であり、
各R
6は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)
2又は-CO
2Hであり、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-CF
3、-CF
2H、-OCF
3、-(アルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-(アリール)、-(ヘテロアリール)、-(シクロアルキル)、-(シクロアルキルアルキル)、-(ヘテロアルキル)、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、-(アルキルヘテロアルキル)、-(アルキルアリール)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-O-(アルケニル)、-O-(アルキニル)、-O-(アリール)、-O-(ヘテロアリール)、-NH
2、-NH-(アルキル)、-NH-(アルケニル)、-NH-(アルキニル)、-NH-(アリール)又は-NH-(ヘテロアリール)であり、
B-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化6】
である。
【0022】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、構造:
【化7】
を有する。
【0023】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、構造:
【化8】
を有する。
【0024】
いくつかの態様では、化合物のX3はNHで、X2及びX4はCR6である。
【0025】
いくつかの態様では、化合物のX3はOで、X2及びX4はCR6である。
【0026】
いくつかの態様では、化合物のX3はSで、X2及びX4はCR6である。
【0027】
いくつかの態様では、化合物のR6は、H、OH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)、-NH2、-NH-(アルキル)、-N(アルキル)2又は-CO2Hである。
【0028】
いくつかの態様では、化合物のR6はアルキルである。
【0029】
いくつかの態様では、化合物のR6はメチルである。
【0030】
いくつかの態様では、化合物のR6は-CF3である。
【0031】
いくつかの態様では、化合物のB-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化9】
である。
【0032】
いくつかの態様では、化合物のB-Cは、-CO2Hである。
【0033】
いくつかの態様では、化合物のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-CF3、-CF2H、-OCF3、-(アルキル)、-(ハロアルキル)、-(アルケニル)、-(アルキニル)、-OH、-OAc、-O-(アルキル)、-S-(アルキル)である。
【0034】
いくつかの態様では、化合物のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0035】
いくつかの態様では、化合物のR1は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0036】
いくつかの態様では、化合物のR2は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0037】
いくつかの態様では、化合物のR3は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0038】
いくつかの態様では、化合物のR4は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0039】
いくつかの態様では、化合物のR1は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3であり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0040】
いくつかの態様では、化合物のR1は、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3であり、R3はCH3であり、R2及びR4は、それぞれHである。
【0041】
いくつかの態様では、化合物のR1はFであり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0042】
いくつかの態様では、化合物のR1はFであり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0043】
いくつかの態様では、化合物のR1はClであり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0044】
いくつかの態様では、化合物のR1はClであり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0045】
いくつかの態様では、化合物のB-Cは、-CO
2H、-CONH
2又は
【化10】
である。
【0046】
いくつかの態様では、化合物のR1は、F又はClであり、R2、R3及びR4は、それぞれHであり、B-Cは-CO2Hである。
【0047】
いくつかの態様では、化合物のR1は、F又はClであり、R2、R3及びR4は、それぞれHであり、B-Cは-CONH2である。
【0048】
いくつかの態様では、化合物のR
1は、F又はClであり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれHであり、B-Cは
【化11】
である。
【0049】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、構造:
【化12】
を有する。
【0050】
いくつかの態様では、化合物のX1は、N又はCR5である。
【0051】
いくつかの態様では、化合物のB-Cは、-CO
2H、-CONH
2、又は
【化13】
である。
【0052】
いくつかの態様では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、構造:
【化14】
を有する。
【0053】
いくつかの態様では、化合物のR1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0054】
いくつかの態様では、化合物のR1は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0055】
いくつかの態様では、化合物のR2は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0056】
いくつかの態様では、化合物のR3は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0057】
いくつかの態様では、化合物のR4は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3である。
【0058】
いくつかの態様では、化合物のR1は、H、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3であり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0059】
いくつかの態様では、化合物のR1は、F、Cl、CH3、CF3又はOCH3であり、R3はCH3であり、R2及びR4は、それぞれHである。
【0060】
いくつかの態様では、化合物のR1はFであり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0061】
いくつかの態様では、化合物のR1はClであり、R2、R3及びR4は、それぞれHである。
【0062】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化15】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0063】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化16】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0064】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化17】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0065】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化18】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0066】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化19】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0067】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化20】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0068】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化21】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0069】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化22】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0070】
いくつかの態様では、化合物は、構造:
【化23】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0071】
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0072】
本発明は、哺乳動物においてTTR四量体を安定化する方法であって、前記哺乳動物に、TTR四量体を安定化するのに有効な、本発明の一定の量の化合物又は本発明の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0073】
本発明は、哺乳動物におけるTTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防する方法であって、前記哺乳動物に、TTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防するのに有効な、本発明の一定の量の化合物又は本発明の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0074】
本発明は、TTRアミロイドーシス(ATTR)に罹患している哺乳動物において、前記疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に、本発明の化合物又は本発明の組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0075】
この方法のいくつかの態様では、方法は、哺乳動物のTTR四量体を安定化するのに更に有効である。
【0076】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)である。
【0077】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM)である。
【0078】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、遅発性家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)である。
【0079】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、家族性アミロイド心筋症(FAC)である。
【0080】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)である。
【0081】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、アミロイド凝集体の沈着を特徴とする。
【0082】
本発明は、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に、本発明の化合物又は本発明の組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0083】
この方法のいくつかの態様では、疾患は、ビスレチノイドによる黄斑の変性を更に特徴とする。
【0084】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であるか、哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である。
【0085】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはA2Eである。
【0086】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはイソA2Eである。
【0087】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはA2-DHP-PEである。
【0088】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはatRAL ジ-PEである。
【0089】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、加齢黄斑変性である。
【0090】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、乾燥型(萎縮型)加齢黄斑変性である。
【0091】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、シュタルガルト病である。
【0092】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、ベスト病である。
【0093】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、成人卵黄状黄斑症である。
【0094】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、シュタルガルト様黄斑ジストロフィーである。
【0095】
本発明は、TTRアミロイドーシス(ATTR)、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患、又は、TTRアミロイドーシス(ATTR)と過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患の両者を治療する方法であって、前記哺乳動物に、本発明の化合物又は本発明の組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0096】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、哺乳動物のTTR四量体を安定化するのに有効である。
【0097】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、TTR凝集体の形成を予防する又は高分子量凝集体の形成を予防するのに有効である。
【0098】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であるか、哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である。
【0099】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化して、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効である。
【0100】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、前記哺乳動物においてTTR凝集体の形成又は高分子量凝集体の形成を予防して、前記哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効である。
【0101】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、前記哺乳動物のTTR四量体を安定化して、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である。
【0102】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、前記哺乳動物においてTTR凝集体の形成を予防又は高分子量凝集体の形成を予防して、前記哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である。
【0103】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)である。
【0104】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、TTRアミロイド心筋症(ATTR-CM)である。
【0105】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、遅発性家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)である。
【0106】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、家族性アミロイド心筋症(FAC)である。
【0107】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)である。
【0108】
この方法のいくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、アミロイド凝集体の沈着を特徴とする。
【0109】
この方法のいくつかの態様では、疾患は、ビスレチノイドによる黄斑の変性を更に特徴とする。
【0110】
この方法のいくつかの態様では、化合物の量は、哺乳動物のRBP4の血清濃度を低下させるのに有効であるか、哺乳動物のリポフスチン中のビスレチノイドの網膜濃度を低下させるのに有効である。
【0111】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはA2Eである。
【0112】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはイソA2Eである。
【0113】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはA2-DHP-PEである。
【0114】
この方法のいくつかの態様では、ビスレチノイドはatRAL ジ-PEである。
【0115】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、加齢黄斑変性である。
【0116】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、乾燥型(萎縮型)加齢黄斑変性である。
【0117】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、シュタルガルト病である。
【0118】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、ベスト病である。
【0119】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、成人卵黄状黄斑症である。
【0120】
この方法のいくつかの態様では、網膜における過剰なリポフスチンの蓄積を特徴とする疾患は、シュタルガルト様黄斑ジストロフィーである。
【0121】
ビスレチノイドによる黄斑の変性は、網膜色素上皮でのリポフスチン沈着物の蓄積を含んでいてもよい。
【0122】
この明細書では、「ビスレチノイド リポフスチン」は、細胞傷害性のビスレチノイドを含むリポフスチンである。細胞傷害性のビスレチノイドには、A2E、イソA2E、atRAL ジ-PE(オールトランスレチナール二量体-ホスファチジルエタノールアミン)及びA2-DHP-PE(A2-ジヒドロピリジン-ホスファチジルエタノールアミン)が含まれるが、必ずしもこれらには限定されない(
図3~4)。
【0123】
この明細書では、「高分子量凝集体」は、分子量が198kDaより大きい全ての形態のTTR凝集体を指す。
【0124】
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス(ATTR)は神経変性疾患であり、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)又は心筋症(ATTR-CM)を含むが、これらには限定されない。
【0125】
いくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、アミロイド凝集体の沈着を特徴とする。
【0126】
いくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、変異体(TTRm)又は野生型(TTRwt)のいずれかに由来するアミロイド凝集体の沈着を特徴とする。
【0127】
いくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)である。
【0128】
いくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)である。
【0129】
いくつかの態様では、TTRアミロイドーシス(ATTR)は、心筋症(ATTR-CM)である。
【0130】
いくつかの態様では、本発明の化合物は、トランスサイレチン(TTR)四量体速度論的安定化活性を示す。
【0131】
いくつかの態様では、本発明の化合物は、RBP4の循環量を低下させると同時に、ホロRBP4-TTR複合体から放出されたリガンドと結合していないTTR四量体を安定化する。
【0132】
いくつかの態様では、本発明の化合物は血液中のRBP4を低下させる。
【0133】
いくつかの態様では、本発明の化合物は、ホロRBP4-TTR複合体から放出されたリガンドと結合していないTTR四量体を安定化する。
【0134】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、乾燥型加齢黄斑変性(AMD)でTTRアミロイドーシス(ATTR)併存疾患の治療に使用してもよい。
【0135】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、乾燥型加齢黄斑変性(AMD)で老人性全身性アミロイドーシス(SSA)の治療に使用してもよい。
【0136】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、乾燥型加齢黄斑変性(AMD)で末梢ポリニューロパチー(ATTR-PN)の治療に使用してもよい。
【0137】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、乾燥型加齢黄斑変性(AMD)で心筋症(ATTR-CM)の治療に使用してもよい。
【0138】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、2型糖尿病の治療に使用してもよい。
【0139】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、肥満の治療に使用してもよい。
【0140】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、インスリン抵抗性の治療に使用してもよい。
【0141】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、心血管疾患の治療に使用してもよい。
【0142】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、脂肪肝の治療に使用してもよい。
【0143】
いくつかの態様では、本発明の化合物又は本発明の組成物は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療に使用してもよい。
【0144】
いくつかの態様では、哺乳動物はヒトである。
【0145】
当業者は、この明細書に開示した技術を用い、その重水素類似体を製造してもよい。
【0146】
別段の定めがある場合を除き、本発明の化合物が不斉炭素原子を含む場合、化合物は、ラセミ体、ラセミ混合物、さまざまな比のエナンチオマー混合物及び単離された単一のエナンチオマーとして存在することが理解される。これらの化合物のこのような異性体の全ては、この発明に明示的に含まれる。別段の定めがある場合を除き、各不斉炭素は、R配置又はS配置である。したがって、このような不斉から生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマー及びジアステレオマー)は、別段の定めがある場合を除き、この発明の範囲に含まれることが理解される。このような異性体は、"Enantiomers, Racemates and Resolutions" by J. Jacques, A. Collet and S. Wilen, Pub. John Wiley & Sons, NY, 1981に記載されているような、古典的な分離技術及び立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で得ることができる。例えば、分割は、キラルカラムによる分取クロマトグラフィーで実施できる。
【0147】
別段の定めがある場合を除き、この発明は、この明細書で開示する化合物に存在する原子の全ての同位体を含むことが意図される。同位体は、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子を含む。限定するものではないが、一般的な例として、水素の同位体は、トリチウム及び重水素を含む。炭素の同位体は、C-13及びC-14を含む。
【0148】
この出願全体で、構造中の炭素は、更に注釈しない場合、12C、13C又は14Cなどの炭素の全ての同位体を表すことが意図されることに留意されたい。さらに、13C又は14Cを含む化合物は、具体的には、この明細書で開示する化合物のいずれかの構造である可能性がある。
【0149】
この出願全体で、構造中の水素(H)は、更に注釈しない場合、別段の定めがある場合を除き、1H、2H(D)又は3H(T)などの水素の全ての同位体を表すことが意図されることに留意されたい。さらに、2H又は3Hを含む化合物は、別段の定めがある場合を除き、具体的には、この明細書で開示する化合物のいずれかの構造である可能性がある。
【0150】
同位体標識化合物は、一般に、使用する非標識試薬に代えて、適切な同位体標識試薬を使用して、当業者に公知の従来技術で製造できる。
【0151】
重水素(2H又はD)は、水素の安定な非放射性同位体で、原子量は2.0144である。化合物中の水素原子は、同位体1H(水素又はプロチウム)、D(2H又は重水素)及びT(3H又はトリチウム)の混合物として天然に存在する。自然界の重水素の存在度は0.0156%である。したがって、天然に存在する化合物を含む組成物において、その化合物中の特定の水素原子部位における重水素の割合は、0.0156%と予想される。したがって、0.0156%という天然の存在度よりも多くなるように濃縮された化合物中の水素原子の任意の部位での重水素を有する化合物を含む組成物は、その天然に存在する対応物に対して新規である。
【0152】
用語「置換(substitution)」、「置換され(substituted)」及び「置換基(substituent)」は、通常の原子価が維持され、置換によって安定な化合物が得られることを条件として、そこに含まれる水素原子との1つ以上の結合が、水素以外の原子又は炭素以外の原子との結合によって置き換えられる官能基を指す。置換基は、炭素原子又は水素原子への1つ以上の結合が、ヘテロ原子への二重結合又は三重結合を含む1つ以上の結合によって置き換えられている基も含む。置換基の例には、これまでに説明した官能基、並びに、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br及びI);メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル及びトリフルオロメチルなどのアルキル基;ヒドロキシル;メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ及びイソプロポキシなどのアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ基;ベンジルオキシ(フェニルメトキシ)及びp-トリフルオロメチルベンジルオキシ(4-トリフルオロメチルフェニルメトキシ)などのアリールアルキルオキシ;ヘテロアリールオキシ基;トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル及びp-トルエンスルホニルなどのスルホニル基;ニトロ、ニトロシル;メルカプト;メチルスルファニル、エチルスルファニル及びプロピルスルファニルなどのスルファニル基;シアノ;アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ及びジエチルアミノなどのアミノ基;並びにカルボキシルが含まれる。複数の置換基が説明され、又は特許請求される場合、置換された化合物は、1つ以上の説明される又は特許請求される置換基によって、1回又は複数回、独立して置換できる。独立して置換できるとは、(2つ以上の)置換基が同じであっても異なっていてもよいことを意味する。
【0153】
本発明の方法で使用する化合物では、別段の定めがある場合を除き、置換基は、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0154】
本発明の方法で使用する化合物では、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロサイクル、ヘテロシクロアルキル、アルキルヘテロアルキル、アルキルアリール、単環、二環、ヘテロ単環及びヘテロ二環は、1つ以上の水素原子を別の水素以外の基で置き換えることで更に置換できる。これらには、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、カルボキシ、シアノ及びカルバモイルが含まれるが、これらには限定されない。
【0155】
本発明の方法で使用する化合物の置換基及び置換パターンは、化学的に安定な化合物を提供するために当業者が選択でき、容易く入手できる出発物質から、当該技術分野において公知の技術によって容易く合成できることが理解される。置換基自体が複数の基で置換されている場合、安定な構造が得られる限り、これらの複数の基は同じ炭素上にあっても異なる炭素上にあってもよいことが理解される。
【0156】
本発明の方法で使用する化合物の選択では、当業者は、さまざまな置換基(すなわち、R1、R2など)が、化学構造の結合の周知の原理に従って選択される必要があることを認識する。
【0157】
この明細書では、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する分枝鎖及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含み、置換されていなくても置換されていてもよい。したがって、「C1~Cnアルキル」におけるC1~Cnは、直鎖又は分枝鎖で、1、2、・・・、n-1又はn個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C1~C6アルキル」におけるC1~C6は、直鎖又は分枝鎖で、1、2、3、4、5又は6個の炭素を有する基を含むと定義され、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。他に特定されない限り、1~10個の炭素を含む。アルキル基は、非置換であるか、又はハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、メトキシ及びヒドロキシルを含むがこれらには限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。「ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン原子を有するアルキル基を含む。
【0158】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分枝鎖の非芳香族炭化水素基を指し、最大可能な数までの非芳香族炭素-炭素二重結合が存在してもよい。したがって、C2~Cnアルケニルは、1、2、・・・n-1又はn個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C2~C6アルケニル」は、2、3、4、5又は6個の炭素原子、及び少なくとも1個の炭素-炭素二重結合、例えば、C6アルケニルの場合、3個までの炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル及びシクロヘキセニルが含まれる。アルキルで説明したように、アルケニル基の直鎖、分枝鎖又は環状部分は二重結合を含んでいてもよく、置換アルケニル基という場合、置換されていてもよい。ある態様では、C2~C12アルケニル又はC2~C8アルケニルである。
【0159】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指し、最大可能な数までの非芳香族炭素-炭素三重結合が存在してもよい。したがって、C2~Cnアルキニルは、1、2、・・・、n-1又はn個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C2~C6アルキニル」は、2若しくは3個の炭素原子及び1個の炭素-炭素三重結合を有するか、4若しくは5個の炭素原子及び2個までの炭素-炭素三重結合を有するか、又は、6個の炭素原子及び3個までの炭素-炭素三重結合を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル及びブチニルが含まれる。アルキルで説明したように、アルキニル基の直鎖又は分枝鎖は三重結合を含んでいてもよく、置換アルキニル基という場合には置換されていてもよい。ある態様では、C2~Cnアルキニルである。ある態様では、C2~C12アルキニル又はC3~C8アルキニルである。
【0160】
この明細書では、「アリール」は、各環が最大10原子の、安定な単環、二環又は多環式炭素環を意味することが意図され、少なくとも1つの環は芳香族で、置換されていなくても置換されていてもよい。このようなアリール基の例には、フェニル、p-トルエニル(4-メチルフェニル)、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フェナントリル、アントリル又はアセナフチルが含まれるが、これらには限定されない。アリール基が二環式で、1つの環が非芳香族である場合、芳香環で結合することが理解される。
【0161】
この明細書では、用語「ヘテロアリール」は、各環が最大10原子の、安定な単環、二環又は多環を表し、少なくとも1つの環が芳香族で、O、N及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を有する。二環式芳香族ヘテロアリール基には、(a) 1個の窒素原子を有する6員芳香族(不飽和)複素環に縮合した;(b) 2個の窒素原子を有する5員若しくは6員芳香族(不飽和)複素環に縮合した;(c) 1個の酸素と1個の窒素原子若しくは1個の硫黄原子と1個の窒素原子を有する5員芳香族(不飽和)複素環に縮合した;又は (d) O、N若しくはSから選択される1個のヘテロ原子を有する5員芳香族(不飽和)複素環に縮合した、フェニル、ピリジン、ピリミジン又はピリダジン環を含む。この定義のヘテロアリール基には、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、アジリジニル、1,4-ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれるが、これらには限定されない。ヘテロアリール基が二環式であって、1つの環が非芳香族であるか、又はヘテロ原子を有さない場合、それぞれ、芳香環で結合するか、又はヘテロ原子を有する環で結合することが理解される。ヘテロアリール基が窒素原子を有する場合、そのN-オキシドも含まれることが理解される。
【0162】
この明細書では、「シクロアルキル」は、総炭素原子数3~8、又はこの範囲内の任意の数のアルカンの環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル)を含む。「シクロアルキルアルキル」は、少なくとも1つのシクロアルキル環を有するアルキル基を含む。
【0163】
この明細書では、「ヘテロアルキル」は、鎖又は分枝内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する分枝状及び直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を含む。「アルキルヘテロアルキル」は、少なくとも1つのヘテロアルキル基を有するアルキル基を含む。
【0164】
用語「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」又は「複素環式」は、飽和であるか、又は不飽和度が1つ以上で、1つ以上のヘテロ原子を有する単環式環系又は多環式環系を指す。好ましいヘテロ原子には、N、O及び/又はS(N-オキシド、S-オキシド及びジオキシドを含む)が含まれる。好ましくは、環は3~10員で、飽和であるか、又は不飽和度が1以上である。ヘテロサイクルは、置換されていなくても置換されていてもよく、複数の置換が許容される。このような環は、必要に応じて、1つ以上の別の「複素環」、ヘテロアリール環、アリール環又はシクロアルキル環と縮合していてもよい。ヘテロサイクルの例には、テトラヒドロフラン、ピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロチオフェン、1,3-オキサチオランなどが含まれるが、これらには限定されない。
【0165】
この明細書では、「ヘテロシクロアルキル」は、O、N及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~10員の非芳香族環を意味することが意図され、二環式基を含む。したがって、「ヘテロシクリル」には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:イミダゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピペリジニル、テトラヒドロチオフェニルなど。ヘテロサイクルが窒素を有する場合、そのN-オキシドも含まれることが理解される。
【0166】
用語「アルキルアリール」は、アルキル基中の水素への1つ以上の結合が、上述したアリール基への結合によって置き換えられている、これまでに説明したアルキル基を指す。「アルキルアリール」基は、アルキル基を介してコア分子と接続し、アリール基は、アルキル基の置換基であることが理解される。アリールアルキルの例には、ベンジル(フェニルメチル)、p-トリフルオロメチルベンジル(4-トリフルオロメチルフェニルメチル)、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、2-フェニルプロピルなどが含まれるが、これらには限定されない。
【0167】
この明細書では、「単環」は、最大で10原子の安定な多環式炭素環を含み、置換されていなくても置換されていてもよい。このような非芳香族単環の例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれるが、これらには限定されない。このような芳香族単環の例には、フェニルが含まれるが、これには限定されない。この明細書では、「ヘテロ単環」は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する単環を含む。
【0168】
この明細書では、「二環」は、最大で10原子の多環式炭素環と縮合した最大で10原子の安定な多環式炭素環を含み、各環は独立して、置換されていないか、又は置換されている。このような非芳香族二環の例には、デカヒドロナフタレンが含まれるが、これには限定されない。このような芳香族二環要素の例には、ナフタレンが含まれるが、これには限定されない。この明細書では、「ヘテロ二環」は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する二環を含む。
【0169】
本発明の方法で使用する化合物は、有機合成において周知で、当業者によく知られている技術によって製造できる。しかし、これらは、所望の化合物を合成又は入手する唯一の手段ではない可能性がある。
【0170】
本発明の方法で使用する化合物は、参照によりこの明細書に組み込まれる、Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry, A.I. Vogel, A.R. Tatchell, B.S. Furnis, A.J. Hannaford, P.W.G. Smith, (Prentice Hall) 5th Edition (1996)、March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Michael B. Smith, Jerry March, (Wiley-Interscience) 5th Edition (2007) 及びその中の参考文献に記載の技術で製造してもよい。しかし、これらは、所望の化合物を合成又は入手する唯一の手段ではない可能性がある。
【0171】
この明細書で開示する化合物の芳香環に結合するさまざまなR基は、標準的な手順、例えば、参照によりこの明細書に組み込まれる、Advanced Organic Chemistry: Part B: Reactions and Synthesis, Francis Carey and Richard Sundberg, (Springer) 5th ed. Edition. (2007)に記載の手順によって環に付加されてもよい。
【0172】
本発明の別の態様は、医薬組成物としての本発明の化合物又は組成物を含む。
【0173】
この明細書では、用語「薬学的に活性な薬剤」は、対象への投与に適切な物質又は化合物を意味し、疾患の処置、治癒、緩和、診断又は予防における生物学的活性又は他の直接的な効果を提供するか、対象の構造又は機能に影響を与える。薬学的に活性な薬剤には、参照によりこの明細書に組み込まれるPhysicians’ Desk Reference (PDR Network, LLC; 64th edition; November 15, 2009)及び“Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations” (U.S. Department of Health and Human Services, 30th edition, 2010)に記載の物質及び化合物が含まれるが、これらには限定されない。ペンダントカルボン酸基を有する薬学的に活性な薬剤は、本発明に従い、容易に利用でき、かつ、化学合成の当業者に知られている標準的なエステル化反応及び方法によって修飾できる。薬学的に活性な薬剤がカルボン酸基を有さない場合、当業者は、カルボン酸基を設計して薬学的に活性な薬剤に組み込むことができ、修飾が薬学的に活性な薬剤の生物学的活性又は効果を妨げない限り、続いてエステル化してもよい。
【0174】
本発明の方法で使用する化合物は、塩の形態であってもよい。この明細書では、「塩」は、化合物の酸性塩又は塩基性塩を製造することで修飾された本発明の化合物の塩である。疾患又は医学的障害の処置に使用する化合物の場合、塩は薬学的に許容される。薬学的に許容される塩の例には、塩基性の残基(例.アミン)の鉱酸塩又は有機酸塩;酸性の残基(例.フェノール)のアルカリ塩又は有機塩;酸性の残基(例.カルボン酸)のアルカリ塩又は有機塩が含まれるが、これらには限定されない。塩は、有機酸又は無機酸を使用して製造できる。このような酸塩は、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。フェノラート塩は、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩などである。カルボン酸塩は、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩などである。この点で、用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機及び有機の酸又は塩基の付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離及び精製中にin situで製造できるか、本発明の精製された化合物の遊離塩基形態又は遊離酸形態を、適切な有機又は無機の酸又は塩基と別々に反応させ、形成された塩を単離することで製造できる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。
【0175】
塩又は薬学的に許容される塩は、この明細書で開示する全ての化合物について意図される。
【0176】
この明細書では、「処置」は、疾患の進行の予防、遅延、停止又は逆転を意味する。処置は、疾患の1つ以上の症状の改善も意味する場合がある。
【0177】
本発明の方法で使用する化合物は、この明細書で詳しく説明する形態を含むさまざまな形態で投与できる。化合物による処置は、併用療法又は補助療法の一部であってもよく、すなわち、薬物を必要とする対象又は患者は、本化合物の1つ以上と疾患に対する別の薬物を併用して処置されるか、又は与えられる。この併用療法は、患者が最初に1つの薬物で処置され、次いで、他の薬物が投与されるか又は2つの薬物が同時に投与される、逐次治療の可能性がある。これらは、適用する剤形に応じて、同じ経路で、又は2つ以上の異なる投与経路で、独立して投与できる。
【0178】
この明細書では、「薬学的に許容される担体」は、本発明の化合物を動物又はヒトに送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤又はビヒクルである。担体は、液体又は固体であってもよく、計画された投与方法を念頭に選択される。リポソームは、カプセル、コーティング及びさまざまなシリンジと同様に、薬学的に許容される担体でもある。
【0179】
処置で投与する化合物の用量は、特定の化学療法剤の薬力学的特徴とその投与の様式及び経路;レシピエントの年齢、性別、代謝速度、吸収効率、健康状態及び体重;症状の性質と程度;行われている処置の種類;処置の頻度;並びに所望の治療効果といった因子に応じて変化する。
【0180】
本発明の方法で使用する化合物の投与単位は、単一の化合物又は別の薬剤との混合物を含んでいてもよい。化合物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤及び乳剤のような経口製剤で投与できる。化合物は、静脈内(ボーラス又は注入)、腹腔内、皮下若しくは筋肉内に投与してもよく、又は、例えば注射、局所適用、若しくは他の方法によって、疾患部位の中又は上に直接導入してもよく、全て、薬学分野の当業者に周知の剤形を使用する。
【0181】
本発明の方法で使用する化合物は、予定の投与形態に応じて適切に選択され、そして、従来の製薬実務と一致する、適切な薬学的希釈剤、増量剤、賦形剤又は担体(この明細書ではまとめて薬学的に許容される担体という)と混合して、投与できる。投与単位は、経口、直腸、局所、静脈内若しくは直接の注射又は非経口投与に適した形態である。化合物は、単独で、又は薬学的に許容される担体と混合して投与できる。この担体は、固体又は液体であってもよく、一般的に、使用される投与方法に基づいて選択される。活性な薬剤は、錠剤若しくはカプセル、リポソームの形態で、凝集粉末として、又は液体の形態で同時に投与できる。適切な固体の担体の例には、乳糖、ショ糖、ゼラチン及び寒天が含まれる。カプセル剤又は錠剤は簡単に製剤化でき、嚥下や咀嚼を容易にできる;他の固体形態には、顆粒及び原末が含まれる。錠剤は、適切な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘発剤及び融解剤を含んでいてもよい。適切な液体製剤の例には、水、薬学的に許容される脂肪及び油、アルコール又は他の有機溶媒(エステル、エマルション、シロップ又はエリキシルを含む)中の溶液又は懸濁液、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成された溶液及び/又は懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が含まれる。このような液体製剤は、例えば、適切な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、増粘剤及び融解剤を含んでいてもよい。経口製剤は、必要に応じて、着香剤及び着色剤を含む。非経口及び静脈内投与の剤形は、選択した注射又は送達系に適合させるために、ミネラル及び他の材料をも含んでいてもよい。
【0182】
本発明で有用な剤形を製造するための技術と組成物は、以下の参考文献:7 Modern Pharmaceutics, Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, Editors, 1979);Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (Lieberman et al. 1981);Ansel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 2nd Edition (1976);Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. (Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985);Advances in Pharmaceutical Sciences (David Ganderton, Trevor Jones, Eds., 1992);Advances in Pharmaceutical Sciences Vol. 7. (David Ganderton, Trevor Jones, James McGinity, Eds., 1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms (Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Series 36 (James McGinity, Ed., 1989);Pharmaceutical Particulate Carriers: Therapeutic Applications: Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol 61 (Alain Rolland, Ed., 1993);Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract (Ellis Horwood Books in the Biological Sciences. Series in Pharmaceutical Technology;J. G. Hardy, S. S. Davis, Clive G. Wilson, Eds.);Modem Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol 40 (Gilbert S. Banker, Christopher T. Rhodes, Eds.)に記載されている。これらの刊行物は全て、参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0183】
錠剤は、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘発剤及び融解剤を含んでいてもよい。例えば、錠剤又はカプセル剤での経口投与では、活性薬剤成分は、経口用の毒性がなく薬学的に許容される不活性担体(例.乳糖、ゼラチン、寒天、デンプン、ショ糖、ブドウ糖、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど)と組み合わせることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然の糖(例.ブドウ糖又はβ-乳糖)、トウモロコシ甘味料、天然及び合成のガム(例.アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形で使用する潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれるが、これらには限定されない。
【0184】
本発明の方法で使用する化合物は、リポソーム送達系(例.小さな単層小胞、大きな単層小胞及び多層小胞)の形態でも投与できる。リポソームは、さまざまなリン脂質(例.コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン)から形成できる。化合物は、組織標的化乳剤の成分として投与してもよい。
【0185】
本発明の方法で使用する化合物は、標的化可能な薬物担体として、又はプロドラッグとしての可溶性ポリマーと結合させることもできる。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノール又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリシンが含まれる。さらに、化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマー(例.ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマー)とも結合できる。
【0186】
ゼラチンカプセルは、活性成分化合物及び粉末キャリア(例.乳糖、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)を含んでいてもよい。同様の希釈剤を使用して、圧縮錠剤を製造できる。錠剤及びカプセルの両者は、即時放出製剤として、又は数時間にわたり薬物を連続放出する持続放出製剤として製造できる。圧縮錠剤は、糖衣若しくはフィルムコーティングを行うことで、不快な味をマスクし、かつ、錠剤を大気から保護でき、又は胃腸管で選択的に崩壊するように腸溶コーティングできる。
【0187】
液体製剤での経口投与では、経口薬物成分は、経口用の毒性がなく薬学的に許容される不活性担体(例.エタノール、グリセリン、水など)と組み合わされる。適切な液体製剤の例には、水、薬学的に許容される脂肪及び油、アルコール又は他の有機溶媒(エステル、エマルション、シロップ又はエリキシルを含む)中の溶液又は懸濁液、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成された溶液及び/又は懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が含まれる。このような液体製剤は、例えば、適切な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、増粘剤及び融解剤を含んでいてもよい。
【0188】
経口投与用の液体製剤は、着色剤及び着香剤を配合して患者の受容性を高めることができる。一般に、水、適切な油、生理食塩水、水性デキストロース(ブドウ糖)、並びに関連する糖溶液及びプロピレングリコール又はポリエチレングリコールといったグリコールは、非経口溶液のための適切なキャリアである。非経口投与用の溶液は、好ましくは、活性成分の水溶性塩、適切な安定化剤、及び必要であれば緩衝物質を含む。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤は、単独で又は組み合わせて、適切な安定化剤である。クエン酸及びその塩並びにEDTAナトリウムも使用できる。加えて、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン、及びクロロブタノールなどの保存剤を含むことができる。適切な医薬担体は、この分野の標準的な参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989に記載されている。
【0189】
本発明の方法で使用する化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルを使用する鼻腔内投与の形態で、又は当業者に周知の経皮パッチの形態で経皮経路により、投与することもできる。経皮送達系の形態で投与される場合、一般に、製剤の投与は、断続的ではなく連続的である。
【0190】
非経口及び静脈内投与の形態は、ミネラル及び他の材料を含んで、注射又は選択した送達系と適合性にしてもよい。
【0191】
この明細書で開示する各態様は、他の開示される態様に適用可能と考えられる。したがって、本明細書に記載されたさまざまな要素の全ての組合せは、この発明の範囲内である。開示する一般的又は具体的な化合物のいずれも、開示する組成物、プロセス又は方法のいずれにも適用可能である。
【0192】
本発明は、以下の実験の詳細を参照することでよく理解されるが、当業者は、これらの詳述する実験が、特許請求の範囲において完全に記載されるような本発明の単なる例示であることを容易に理解する。
【実施例】
【0193】
実験の詳細
一般的な化学
全ての反応は、特に指定しない限り、乾燥した窒素中で行った。示した反応温度は反応槽の温度で、室温は25℃である。市販の等級の試薬及び無水溶媒は、購入したものをそのまま使用し、更なる精製又は乾燥は行わなかった。減圧による溶媒の除去は、Buchiロータリーエバポレーターを用いて行い、Teflon-linked KNF真空ポンプを使用して圧力を約28mmHgとした。薄層クロマトグラフィーは、1インチ×3インチAnalTech No. 02521シリカゲルプレートを用いて行い、蛍光指示薬を使用した。TLCプレートの視覚化は、短波長UV光(254nmランプ)、エタノール又はヨウ素蒸気中の10%リンモリブデン酸のいずれかを用いた。分取薄層クロマトグラフィーは、Analtech製の20×20cm、1000ミクロン分取TLCプレートを使用して行った。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Teledyne Isco CombiFlash Companion Unit及びTeledyne Isco RediSep Rf及びBiotage Sfaerシリカゲルカラムを備えたBiotage(登録商標)Selekt Systemで行った。必要であれば、生成物を、Teledyne Isco CombiFlash Companion Unit及びRediSep Gold C18を備えたBiotage(登録商標)Selekt Systemを用い、逆層クロマトグラフィーで精製した。プロトンNMRスペクトルは、400MHz Varian核磁気共鳴分光計で得た。化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で、カップリング定数(J)値はHzで示し、以下のスペクトルパターン:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;quint、クインテット;m、マルチプレット;dd、ダブルダブレット;dt、ダブルトリプレット;dq、ダブルカルテット;br、ブロード のシグナルで示す。テトラメチルシランを内部標準として使用した。ピークの列挙、多重度の指定、及びカップリング定数の計算は、Mnova v.14ソフトウェア(Mestrelab Research)を使用して行った。カーボンNMRスペクトルは、500MHz Bruker AV III核磁気共鳴分光計で得、テトラメチルシランを内部標準として使用した。フッ素NMRスペクトルは、400MHz Bruker AV III核磁気共鳴分光計で得た。融点は、自動融点システムを備えたStanford Research Systems OptiMelt融点装置(MPA100)を使用して得、補正は行っていない。質量分析は、Waters AQUITY UPLC MS三連四重極質量分析計でESIイオン化により行った。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)精製分析は、Waters Breeze2 HPLCシステム(フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備える)を用い、2成分溶媒系A及びBによる勾配溶出[A、0.1%ギ酸を含むH2O;B、0.1%ギ酸を含むCH3CN]、流速0.5mL/分で行い、UV254nmで検出した。ACQUITY UPLC BEH C18 column、130Å、1.7μm、2.1mm×50mmを使用した。高分解能質量分析(HRMS)を、Agilent 6530 Accurate-Mass Q-TOFを使用して行った。in vitro及びin vivoで生物学的試験を行った全ての最終化合物は、純度を95%以上に精製し、純度は、1H NMR及びHPLCで測定した。
【0194】
【0195】
試薬及び条件: (a) 置換ブロモ安息香酸メチル、XPhos、Pd2(dba)3、Cs2CO3、1,4-ジオキサン、還流、16時間; (b) TFA、CH2Cl2、0℃から室温、16時間; (c) 3-クロロペンタン-2,4-ジオン、i-Pr2NEt、DMF、0℃から室温、16時間; (d) N2H2・H2O(H2O中に64~65%)、CH3OH、室温、1時間; (e) (i) LiOH、CH3OH、THF、H2O、室温、16時間; (ii) 2N塩酸でpH7に中和
【0196】
実施例1 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸18a
工程A 無水1,4-ジオキサン(50mL)中のピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13(2.00g、10.7mmol)と3-ブロモ-4-フルオロ安息香酸メチル(2.25g、9.67mmol)の混合物をN2で5分間脱気した。次いで、Cs2CO3(10.0g、32.2mmol)、X-Phos(0.600g、1.29mmol)及びPd2(dba)3(0.491g、0.53mmol)を加え、混合物をN2雰囲気で16時間撹拌還流した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(ヘキサン中の0~30%EtOAc)し、4-(2-フルオロ-5-(メトキシカルボニル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル14aを褐色の油状物として得た(3.0g、83%)。この化合物は、次の工程でそのまま使用した。
ESI MS m/z 339 [M + H]+
【0197】
工程B 0℃に冷却した4-(2-フルオロ-5-(メトキシカルボニル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル14a(3.00g、8.87mmol)のCH2Cl2(30mL)溶液にTFA(6.7mL、88.7mmol)を加え、得られた溶液を徐々に室温まで温め、室温で16時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、H2O(30mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50mL)で塩基性にし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をEt2Oでトリチュレートし、ろ過して、純粋な4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-イル)安息香酸メチル15aを白色の固体として得た(1.20g、60%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.85 (br, 1H), 7.72-7.69 (m, 1H), 7.63-7.60 (m, 1H), 7.21-7.04 (m, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.35 (s, 8H);ESI MS m/z 239 [M + H]+
【0198】
工程C 0℃に冷却した4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-イル)安息香酸メチル15a(1.20g、5.02mmol)の無水DMF(10mL)溶液に、i-Pr2NEt(0.9mL、5.02mmol)と3-クロロペンタン-2,4-ジオン(0.672g、5.02mmol)を同時に加え、得られた溶液を徐々に室温まで温め、N2雰囲気中、室温で16時間撹拌した。混合物を、H2O(50mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(ヘキサン中の0~50%EtOAc)し、3-(4-(2,4-ジオキソペンタン-3-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル16aを褐色の油状物として得た(0.600g、35%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.64-7.62 (m, 2H), 7.06-7.01 (m, 1H), 3.86 (s, 1H), 3.31-3.09 (m, 4H), 3.09-3.05 (m, 4H), 2.27 (s, 1H), 2.24 (s, 6H);ESI MS m/z 337 [M + H]+
【0199】
工程D 3-(4-(2,4-ジオキソペンタン-3-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル16a(0.500g、1.48mmol)のCH3OH(10mL)溶液に、N2H2・H2O(0.2mL、2.67mmol、H2O中に64~65%の溶液)を加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(ヘキサン中の0~50%EtOAc)して、3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル17aを、褐色の固体として得た(0.420g、85%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.67-7.63 (m, 2H), 7.04-7.01 (m, 1H), 3.86 (s, 1H), 3.16-3.15 (m, 4H), 3.15-3.11 (m, 4H), 2.24 (s, 6H);ESI MS m/z 333 [M + H]+
【0200】
工程E 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル17a(0.420g、1.26mmol)のCH3OH(4mL)、THF(4mL)及びH2O(2mL)溶液に、LiOH(91mg、3.79mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、減圧下で濃縮した。水相をH2O(30mL)で希釈し、2N塩酸でpH7に中和した。水性混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出し、合わせた有機相溶液をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(CH2Cl2中に0~10%のCH3OH)して、3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸18aを白色の固体として得た(0.390g、97%)。
融点 = 220~222℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.53-7.55 (m, 2H, H1 and H2), 7.23-7.18 (dt, J = 12 Hz, 3.2 Hz, 1H, H3), 3.04 (m, 4H, H4), 3.01 (m, 4H, H5), 2.10 (s, 6H, H6);13C NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 128.73, 121.71, 124.10, 124.03, 120.25, 120.21, 116.39, 116.22;19F NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ -116.00 (s, F);ESI MS m/z 319 [M + H]+;HRMS (ESI+) C16H19FN4O2 [M + H]+計算値= 319.157, [M + H]+実測値= 319.1562;燃焼解析(%CHN): C16H19FN4O2・0.5 H2O・0.5 HClの計算値: %C = 55.61; %H = 5.98; %N = 16.21;実測値: %C = 55.88; %H = 5.74; %N = 15.97;HPLC >99% (AUC), tR = 11.5分
【0201】
実施例2 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)安息香酸18b
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ安息香酸メチルから、化合物18bを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.48 (s, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.23 (m, 1H), 3.23 (m, 4H), 3.04 (m, 4H), 2.14 (s, 6H);ESI MS m/z 301[M + H]+;HPLC >99% (AUC), tR = 10.7分
【0202】
実施例3 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-メトキシ安息香酸18c
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-4-メトキシ安息香酸メチルから、化合物18cを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.58 (dd, J = 8.4 Hz, 2.0 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.99 (s, 8H), 2.08 (s, 6H);ESI MS m/z 331 [M + H]+;HPLC 94.6 % (AUC), tR = 10.2分
【0203】
実施例4 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-メチル安息香酸18d
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-4-メチル安息香酸メチルから、化合物18dを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.57 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.01 (m, 4H), 2.90 (m, 4H), 2.46 (s, 3H), 2.12 (s, 6H);ESI MS m/z 315 [M + H]+;HPLC >99% (AUC), tR = 11.2分
【0204】
実施例5 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸18e
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-4-トリフルオロメチル安息香酸メチルから、化合物18eを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.99 (s, 1H), 7.84 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.97 (m, 4H), 2.94 (m, 4H), 2.11 (s, 6H);ESI MS m/z 369 [M + H]+;HPLC 98.7% (AUC), tR = 11.9分
【0205】
実施例6 4-クロロ-3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)安息香酸18f
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-4-クロロ安息香酸メチルから、化合物18fを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.66 (s, 1H), 7.58 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.04 (br, 8H), 2.12 (s, 6H);ESI MS m/z 335 [M + H]+;HPLC 98.0% (AUC), tR = 11.5分
【0206】
実施例7 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸18g
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-2-フルオロ安息香酸メチルから、化合物18gを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.29 (m, 1H), 7.19 (m, 1H), 7.12 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 3.03 (br, 8H), 2.12 (s, 6H);ESI MS m/z 319 [M + H]+;HPLC 98.3% (AUC), tR = 10.3分
【0207】
実施例8 5-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸18h
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と5-ブロモ-2-フルオロ安息香酸メチルから、化合物18hを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.29 (m, 1H), 7.19 (m, 1H), 7.12 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 3.13 (br, 4H), 2.99 (br, 4H), 2.10 (s, 6H);ESI MS m/z 319 [M + H]+;HPLC >99% (AUC), tR = 10.6分
【0208】
実施例9 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-5-フルオロ安息香酸18i
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と3-ブロモ-5-フルオロ安息香酸メチルから、化合物18iを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.28 (s, 1H), 6.99 (m, 2H), 3.24 (m, 4H), 2,98 (m, 4H), 2.10 (s, 6H);ESI MS m/z 319 [M + H]+;HPLC 97.6% (AUC), tR = 11.3分
【0209】
実施例10 5-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ-2-メチル安息香酸18j
化合物18aの合成と同様の手順で、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル13と4-フルオロ-5-ブロモ-2-メチル安息香酸メチルから、化合物18jを製造した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 3.04 (br, 8H), 2.45 (s, 1H), 2.13 (s, 6H);ESI MS m/z 333 [M + H]+;HPLC 98.7% (AUC), tR = 11.6分
【0210】
【0211】
試薬及び条件: (a) NH2OH・HCl、CH3OH、室温、16時間; (b) (i) LiOH、CH3OH、THF、H2O、室温、16時間; (ii) 2N塩酸でpH7に中和
【0212】
実施例11 3-(4-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸20
工程A 3-(4-(2,4-ジオキソペンタン-3-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル16a(80.0mg、0.23mmol)のCH3OH(2mL)溶液に、NH2OH・HCl(32.0mg、0.47mmol)を加え、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(ヘキサン中の0~50%EtOAc)して、3-(4-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル19を褐色の固体として得た(20.1mg、25%)。
ESI MS m/z 334 [M + H]+
【0213】
工程B 3-(4-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸メチル19(8.1mg、0.023mmol)のCH3OH(1mL)、THF(1mL)及びH2O(0.5mL)溶液に、LiOH(2.7mg、0.11mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、減圧下で濃縮した。水相をH2O(15mL)で希釈し、2N塩酸でpH7に中和した。水性混合物をEtOAc(3×10mL)で抽出し、合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(CH2Cl2中に0~10%のCH3OH)して、3-(4-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸20を白色の固体として得た(2.5mg、34%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.71-7.59 (m, 1H), 7.19-7.10 (m, 2H), 3.18-3.3.17 (m, 4H), 3.12-3.11 (m, 4H), 2.38 (s, 3H), 2.25 (s, 3H);ESI MS m/z 320 [M + H]+;HPLC 96.8% (AUC), tR = 13.7分
【0214】
【0215】
試薬及び条件: (a) NH4Cl、HBTU、i-Pr2NEt、DMF、室温、18時間; (b) NaN3、テトラクロロシラン、CH3CN、80℃、18時間
【0216】
実施例12 3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロベンズアミド21
工程A DMF(4mL)中の3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロ安息香酸18a(0.100g、0.314mmol)、HBTU(0.178g、0.471mmol)及びi-Pr2NEt(0.218mL、1.26mmol)の混合物に、NH4Cl(16.7mg、0.314mmol)を加えた。得られた溶液を、N2雰囲気中、室温で18時間撹拌した。混合物をH2O(10mL)で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機相を、H2O(3×20mL)とブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた粗残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(ヘキサン中の0%~80%EtOAc)して、3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロベンズアミド21を、白色の固体として得た(71.7mg、72%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.84 (br, 1H), 7.94 (bs, 1H), 7.54-7,48 (m, 2H), 7.31 (s, 1H), 7.14 (m, 1H), 3.06-3.01 (m, 8H), 2.10 (s, 6H);ESI MS m/z 318 [M + H]+;HPLC >99% (AUC), tR = 10.5分
【0217】
実施例13 1-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-4-(2-フルオロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル)ピペラジン22
工程A CH3CN(4mL)中の3-(4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピペラジン-1-イル)-4-フルオロベンズアミド21(0.180g、0.526mmol)、NaN3(0.142g、0.375mmol)及びテトラクロロシラン(98.5mg、0.579mmol)の混合物を、密封容器中、80℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3(5mL)で希釈した。水性混合物をCHCl3(3×50mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでクロマトグラフ処理(CH2Cl2中の0%~10%のCH3OH)して、1-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-4-(2-フルオロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル)ピペラジン22を白色の固体として得た(60.3mg、30%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.69 (m, 1H), 7.67 (m, 1H), 7.36-7. (dd, J = 4Hz, J = 8.4 Hz, 1H);3.12 (m, 4H), 3.09 (m, 4H), 2.13 (s, 6H);ESI MS m/z 343 [M + H]+
;HPLC >99% (AUC), tR = 11.1分
【0218】
実施例14 蛍光偏光TTR四量体結合アッセイ
化合物とTTRの結合を蛍光偏光アッセイで評価した。アッセイは、ヒト血漿から単離したTTR(Clabiochem-Millipore、cat. No. 52957)における蛍光プローブFITC-ジクロフェナクの競合的置換を測定した。FITC-ジクロフェナックはLeadGen Labs, LLCで合成された。各ウェルに、試験化合物と共に、200nMのTTR及び100nMのFITC-ジクロフェナクを含有するFP緩衝液(10mMのトリス塩酸pH7.5、150mMのNaCl、0.01%CHAPS、0.01%Prionex)を加えた。500μMの非標識ジクロフェナク(Sigma-Aldrich)の存在下で、非特異的結合を測定した。試験化合物との反応物を4℃で一晩インキュベートし、SpectramaxM5eプレートリーダー(Molecular Devices)でFPを測定した。
【0219】
実施例15 TTR凝集アッセイ
試験化合物のTTR凝集を防止する能力を、TTR凝集及び線維形成に有利な酸性条件で評価した。167μMのヒトTTR(ACRO Biosystems #H5223)の溶液2μlを、1μlのTTR阻害剤存在下又は非存在下で、7μlの50mM酢酸ナトリウム(pH=4.0)(Sigma #S7545)、100mM KCl(Sigma #S5405)と共に、37℃で72時間インキュベートした。インキュベーションの終了時に、500mMのリン酸ナトリウム(Sigma #S5136)緩衝液(pH=8.0)3.5μlを中和のために各試料に加え、5%CHAPS(Sigma #C5070)0.6μlを界面活性剤として加えて、タンパク質の再会合を防止した。5%グルタルアルデヒド溶液(Sigma #G6257)1.5μlを添加して架橋した。4分後、用時調製した2.5μlの5%NaBH4を加え、反応を停止した。プレアルブミン抗体(1:500;Dako #A0002)を使用して試料のTTRウェスタンブロッティングを行った。TTR単量体及びTTR凝集体のバンド強度をブロットのスキャン画像から定量した。
【0220】
実施例16 in vitroでのRBP4と化合物の結合
RBP4に結合する化合物を、これまでに説明(Cioffi, C.L. et al. 2014;Cioffi, C.L. et al. 2015;Cioffi, C.L. et al. 2020)した放射線測定シンチレーション近接アッセイ(SPA)で評価した。このアッセイは、ヒト尿から精製した天然RBP4(Fitzgerald、30R-AR022L)における放射性標識[3H]-オールトランスレチノールの競合的置換を測定した。タンパク質を、ThermoFisherのEZ-link Sulfo-NHS-LC-Biotinylationキット(Cat #21335)を用い、製造業者が推奨するようにビオチン化した。結合アッセイは、最終容量100μLのSPA緩衝液(1×PBR、pH7.4、1mMのEDTA、0.1%BRA、0.5%CHAPS)中で行った。アッセイ反応は、放射性リガンド、10nM[3H]-オールトランスレチノール(48.7Ci/mmol;PerkinElmer, Waltham, MA)を、0.3mg/ウェルのストレプトアビジン-PVTビーズ(PerkinElmer、RPNQ0006)及び50nMのビオチン化ヒトRBP4と共に含んだ。対照ウェルに20μMの非標識レチノール(Sigma、cat #95144)を添加して、非特異的結合を評価した。室温での穏やかな振盪による16時間インキュベート後、CHAMELEONプレートリーダー(Hidex Oy, Turku、フィンランド)を使用して放射能カウントを測定した。
【0221】
【表1】
a 固定濃度25μMのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合TTR FPプローブの存在下で得た蛍光偏光(FP)アッセイのIC
50値。
b 固定濃度10nMの
3H-レチノールの存在下で得たSPAアッセイのIC
50値。
c 複数回(3回以上)試験した化合物については、IC
50データを平均±標準偏差として表す。2回試験した化合物については、IC
50データは、平均±標準偏差としてではなく、2回の独立した実験の平均として示す。
【0222】
実施例17 速度論的溶解度アッセイ
PBS(pH7.4)中の化合物18aの速度論による水溶性を、UV検出(230nm)を使用してEurofinsで決定した。水溶性(μM)は、有機溶媒(メタノール/水、60/40、v/v)を含有する較正標準(200μM)中の主要ピークの面積を、緩衝液試料中の対応するピークの面積と比較することで決定した。さらに、クロマトグラフィー純度(%)を、較正標準のHPLCクロマトグラムにおける総積分ピーク面積に対する主要ピークのピーク面積として規定した。各試験化合物の較正標準のクロマトグラムを、標識された吸収極大を有するUV/VISスペクトルと共に作成した。
【0223】
速度論的溶解度実験のための標準
メトプロロール - 192.6μM
リファンピシン - 200μM
ケトコナゾール - 152.8μM
フェニトイン - 101.8μM
シンバスタチン - 14.2μM
ジエチルスチルベステロール - 7.0μM
タモキシフェン - 1.9μM
【0224】
実施例18: CYP450阻害アッセイ
ヒトシトクロムP450(CYP)アイソフォーム2C9、2C19、2D6及び3A4に対する化合物18aの阻害能(IC50値)の結果。各組換えヒトCYPアイソフォームを、CYP活性を測定する蛍光検出により、標準的な陽性対照及び陰性対照を用いて試験した。それぞれの標準阻害剤についてIC50の実測値は全て、各アイソフォームに対する予想の範囲内であった(以下を参照)。
【0225】
標準CYP阻害剤のIC50濃度:
CYP阻害剤IC50(μM):
2C9 スルファフェナゾール IC50=3.4μM
2C19 トラニルシプロミン IC50=2.8μM
2D6 キニジン IC50=0.058μM
3A4 ケトコナゾール IC50=0.0084μM
【0226】
予め製剤化されたNADPH再生溶液、組換えCYPアイソフォーム2C19及び3A4(それぞれ、Lot #3007790及び2276593)、3-[2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチル]-7-メトキシ-4-メチルクマリン(AMMC)、3-シアノ-7-エトキシクマリン(CEC)及び7-ベンジルオキシ-4-トリフルオロメチルクマリン(BFC)は、Corning Life Sciences(Bedford, MA)から入手した。組換えCYPアイソフォーム2D6(Lot #49242)はInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手した。CYPアイソフォーム2C9(Lot #0446966-1)はCayman Chemical(Ann Arbor, MI)から入手した。7-メトキシ-4-トリフルオロメチルクマリン(MFC)、トランス-2-フェニルシクロプロピルアミン塩酸塩(TCP)、スルファフェナゾール(SFZ)、ケトコナゾール(KTZ)及びキニジン(QDN)はSigma(St. Louis, MO)から入手した。全ての溶媒及び緩衝液は、市販品を更に精製することなく使用した。
【0227】
方法
試験化合物をアセトニトリル中の10mMストック溶液として調製した。昆虫細胞でcNNAを発現させた4つのヒトP450アイソフォーム(CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)の試験化合物による阻害を、蛍光ベースのアッセイにより試験した。各試験化合物のストック溶液の9種の段階希釈物(濃度0~100μM)を、黒色マイクロタイタープレートに調製した。この希釈系列を、それぞれのCYPアイソフォーム及びそれぞれのアイソフォームに対する標準的な蛍光発生プローブ基質と共に37℃でインキュベートした。加えたプローブ基質の濃度は、各CYPアイソフォームのKm値又はその近傍であった。反応混合物は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)及びNADPH再生系を含んでいだ。最終的な反応体積は0.20mLで、適切なインキュベーション時間(15~45分)の後、反応を75μLの停止溶液(アセトニトリル中0.5Mのトリス塩基)で終了させた。蛍光測定は、適切な励起及び発光波長で行った。試験化合物を有さない対照ウェル、アイソフォームに添加する前の停止溶液を有するブランクウェル、及び各アイソフォームの標準阻害剤を有する希釈系列についても実施した。全ての実験は、2回行った。IC50値は、非阻害率が約50%の濃度でのデータの線形補間によってサポートされているIDBSソフトウエア(Emeryville, CA)のXLFit 5.2を用いた4パラメータロジスティックモデル(用量応答式)フィットを使用して、データの非線形回帰を使用して計算した。
【0228】
実施例19 血漿タンパク質結合アッセイ
PBS(pH7.4)中の化合物18aの血漿タンパク質結合(PPB)を、HPLC-UV/Vis検出による血漿の平衡透析を使用して、Eurofinsで決定した。
【0229】
ヒト、ラット(Sprague Dawley)、マウス(CD-1)及びイヌ(ビーグル犬)の血漿の対照プロプラノロールの平均血漿タンパク質結合
緩衝液及び試験試料中の試験化合物のピーク面積を用い、以下の式:
【数1】
(式中、Area
pは、タンパク質マトリックス中の分析物のピーク面積、
Area
bは、緩衝液中の分析物のピーク面積、
Area
cは、対照試料中の分析物のピーク面積である)
で、結合率及び回収率を計算した。
【0230】
実施例20 代謝安定性
ミクロソームにおける代謝安定性
新規化合物及びテストステロン(陽性対照)の代謝安定性の測定を、ヒト、ラット、マウス及びサルの肝ミクロソームの存在下で実施した。示した値は、30分インキュベーションした後に残存する親の割合(%)である。全ての測定は二回行った。テストステロンのアッセイの結果は許容範囲内であった。
【0231】
ミクロソームにおける代謝クリアランス
男女混合ヒト肝ミクロソーム(Lot #1710084)、雄のSprague-Dawleyラット肝ミクロソーム(Lot #1610290)、雄のCD-1マウス肝ミクロソーム(Lot #1710069)及び雄のカニクイザル肝ミクロソーム(Lot #1510193)は、XenoTechで購入した。NADPHを除く反応混合物を以下のように調製した。試験化合物を最終濃度1μMで反応混合物に添加した。対照化合物であるテストステロンを、別の反応で、試験化合物と同時に実行した。(補因子を含まない)反応混合物のアリコートを、37℃の振盪水浴中で3分間平衡化させた。補因子を添加して反応を開始し、混合物を37℃の振盪水浴中でインキュベートした。アリコート(100μL)を、0分、10分、20分、30分及び60分の時点で回収した。試験化合物及びテストステロン試料は、0.1%ギ酸及び内部標準を有する氷冷した400μLのアセトニトリル(ACN)/H2O(50/50)と直ちに混合し、反応を終了させた。次いで、試料を混合し、遠心分離してタンパク質を沈殿させた。全ての試料を、エレクトロスプレーイオン化によるLC-MS/MSでアッセイした。内部標準に対するピーク面積応答比(PARR)を、時間0でのPARRと比較して、各時点での残存割合(%)を決定した。半減期は、GraphPadソフトウェアを使用して、単相指数関数的減衰方程式に当てはめて計算した。
【0232】
【0233】
a PBS(pH=7.4)中で測定した速度論的溶解度。 b ミクロソーム固有クリアランス(CLint);H=ヒト;R=ラット;M=マウス;cyno=カニクイザル。 c 肝ミクロソーム代謝安定性、ミクロソームの存在下で30分間インキュベートした後に残存する親薬物の割合(%);HLM=ヒト肝ミクロソーム;RLM=ラット肝ミクロソーム;MLM=マウス肝ミクロソーム;cynoLM=カニクイザル肝ミクロソーム。 d CiPA hERG QPatchアッセイ;化合物を5点濃度-応答実験で試験(n=2)。 e %PPB=血漿タンパク質結合;H=ヒト、R=ラット、M=マウス。
【0234】
実施例21: in vivo PKアッセイ
マウスPK実験情報及びデータ
薬物にナイーブな雄のCD-1マウス成体に、静脈内(IV)又は経口(PO)で試験化合物を単回投与した。
【0235】
試験施設及び試験場: Absorption Systems, LLC、436 Creamery Way, Suite 600, Exton, PA 19341-2556
試験化合物及びビヒクル:
IV投与用ビヒクル: 3%DMA/45%PEG300/12%エタノール/40%滅菌水。
PO投与用ビヒクル: 0.9%生理食塩水中の2%Tween(登録商標)80。
製剤: 所望の最終濃度となる体積の試験化合物に、ビヒクルの個々の成分を(列挙した順序で)段階的に添加することによって、製剤を調製した。各製剤は、秤量した試験化合物を適切な体積のビヒクルと混合することで調製した。
投与する溶液の分析: 投与する溶液をLC-MS/MSで分析した。投与溶液をマウスの血液で希釈し分析した(三回実施)。全ての濃度は、遊離塩基のmg/mLで示す。群1の全ての計算では、名目上の用量を使用した。
【0236】
試験系:
種及び株: マウス;雄CD-1。
平均体重: IV群では0.034kg;PO群では0.027kg。
数: 合計3匹の動物(各投薬群(群1(IV)及び群2(PO))で同じ3匹の動物を使用)。
コンプライアンス: この非臨床試験は、吸収系の確立された慣行と標準的な操作手順及び試験プロトコールに従った。この試験は、本質的に探索的なものであり、米国食品医薬品局(FDA)の安全性試験実施基準(GLP)規則、21連邦規則集(CFR)パート58に規定されている原則に従って実施したものではない。レポートは、有効な科学データ管理システムに保管される。電子署名は、21CFRのパート11に準拠する。
【0237】
実験計画
投与前、並びに投与後5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間及び48時間に、マウスから血液を採取した。溶血した血液試料を、アセトニトリルによるタンパク質沈殿で抽出した。アセトニトリルによるタンパク質除去後、化合物の量をLC-MS/MSで測定した。血中濃度の時間経過から薬物動態パラメータを計算した。薬物動態パラメータを、Phoenix WinNonlin(v8.0)ソフトウェアの非コンパートメントモデルで決定した。IV投与後の最高血中濃度(C0)は、最初の2つの時点のデータをt=0に外挿することで推定した。PO投与後の最高血中濃度(Cmax)及び最高血中濃度到達時間(tmax)をデータから観察した。血中濃度時間曲線下面積(AUC)は、最後の定量可能なデータまで計算し、可能であれば無限まで外挿する、線形台形公式を使用して計算した。血中半減期(t 1/2)は、0.693/最終消失の傾き、から計算した。平均滞留時間MRTは、モーメント曲線下面積(AUMC)をAUCで割ることで計算した。クリアランス(CL)を、用量/AUCで計算した。定常状態における分布容積(Vss)をCL×MRTで計算した。バイオアベイラビリティは、個々の用量で正規化したPO AUC∞値を平均の用量で正規化したIV AUC∞値で割ることで決定した。定量限界(1.00ng/mL)を下回る試料は、薬物動態のデータ解析では、ゼロとして処理した。
【0238】
【0239】
データは、括弧内に標準偏差を伴う平均(平均(SD))として示す。投薬群は、薬物にナイーブな雄のCD-1マウス成体で構成された。IV投与: 試験化合物を用量2mg/kgで投与;試験化合物のビヒクル=3%DMA/45%PEG300/12%エタノール/40%滅菌水;PO投与: 試験化合物を用量5mg/kgで投与;ビヒクル=0.9%生理食塩水中の2%Tween(登録商標)80。 a 時間ゼロでの化合物の初期血中濃度。 b 全身クリアランス。 c 化合物の血液からの最終消失の見かけの半減期。
d 定常状態の分布容積。 e 0から化合物が血液中で定量できた最後の時点までの血中濃度時間曲線下面積。 f 0から無限大までの血中濃度時間曲線下面積。 g 化合物の最高血中濃度。 h 化合物の最高血中濃度到達時間。 i バイオアベイラビリティ;F = (AUCINFpo × 用量iv) ÷ AUCINFiv × 用量po)
【0240】
実施例22 血清RBP4測定アッセイ
血液試料を尾静脈から採取した。全血を遠心管に入れ、室温で30分間凝固させた後、48℃、2000gで15分間遠心分離して血清を収集した。マウスの薬物動態実験で収集した血漿試料のアリコートを、製造業者の指示に従い、RBP4(マウス/ラット)デュアルELISAキット(AdipoGen, San Diego, CA)を使用して、RBP4の濃度について分析した。全血を遠心管に採取し、室温で30分間凝固させた後、4℃、2000gで15分間遠心分離して血清を収集した。(主に肝臓で産生された)マウス血清RBP4を、RBP4デュアルELISAキット(AdipoGen, San Diego, CA;cat #AG-45A-0012YTP-KI01)を用いて測定した。
【0241】
実施例23 Abca4
-/-モデルにおける有効性
飼料に配合した化合物18a・2塩酸塩の長期12週間投与をAbca4
-/-マウスで行った。Abca4
-/-の週齢を一致させた対照群には、化合物を含まない標準的なPicolab(登録商標)5053飼料を与えた。週齢を一致させた野生型マウスの参照群を、Abca4 欠失のないマウス(これらのAbca4
+/+マウスは、標準的なPicolab(登録商標)5053飼料で飼育)におけるA2Eの基礎レベルを特定するために使用した。RBP4の血清レベルを評価する血液試料を、化合物で処置したAbca4
-/-マウス及び対照の飼料で処置したAbca4
-/-マウスから、投薬前、4週目及び化合物処置終了の8週目に採取した。化合物処置マウスでは、有意な血清RBP4の減少が記録された(
図7)。8週間の投与後、処置及び未処置Abca4
-/-マウスのアイカップ、並びに参照Abca4
+/+マウスのアイカップを、HPLCで行う定量的A2E分析のために収集した。未処置のAbca4
-/-マウスと比較して、化合物処置Abca4
-/-マウスでは、A2Eが有意に減少した(
図8)。化合物18a・2塩酸塩で誘導されたA2E量の98.5%の減少により、A2Eレベルは、未処置の野生型動物のレベルよりも低くなった(
図8)。
【0242】
HPLCによるA2E量の生化学的特性評価に加え、発明者らは、未処置Abca4
+/+マウス(
図9A)、未処置Abca4
-/-マウス(
図9B)及び化合物18a・2塩酸塩処置Abca4
-/-マウス(
図9C)の網膜切片におけるA2E蛍光を評価した。Abca4遺伝子の欠失は、野生型対照(
図9A)と比較して、Abca4
-/-マウスでA2E自己蛍光の有意な増加を誘導した(
図9B)。化合物18a・2塩酸塩による処置は、A2E自己蛍光の強度を著しく減少させ(
図9C)、ビスレチノイド合成の強い阻害と一致した。
【0243】
動物の管理と使用に関する声明: 全ての手順は米国農務省(USDA)の動物福祉法(9CFRパート1、2及び3)、実験動物の管理と使用に関するガイド、実験動物資源局、National Academy Press, Washington, D.C., 1996及び国立衛生研究所実験動物福祉局に準拠する。この研究の手順は、可能な限り、動物の不快感、苦痛、疼痛を回避又は最小限に抑えるように設計されている。
【0244】
考察
血液中のRBP4を低下できる新規なクラスのTTR四量体速度論的安定化剤を特定するために、臨床研究された化合物4(
図2)をリード化合物として使用して、構造に基づく薬物設計を行った。1) 化合物4は、WT-TTR及びアミロイド形成促進V122I-TTRバリアントの両者に効果的に結合することが報告されており、2) 化合物4は、TTR結合親和性が化合物3と同様である(化合物4のK
d=4.8±1.9nM;化合物3のK
d=4.4±1.3nM)(Miller, M. et al. 2018;Penchala, S.C. et al. 2013)にもかかわらず、緩衝液及びヒト血清中のTTR四量体の安定化では、化合物3よりも強力かつ選択的であることも報告されているので、化合物4を、新規な一連のリガンドを開発するためのベンチマークとなる分子骨格として選択した。
【0245】
最初に、(1) リガンドと結合していないTTR四量体に対する化合物の結合親和性(蛍光偏光アッセイ、FP)、及び、(2) TTRと会合していないRBP4に対する化合物の結合親和性(シンチレーション近接アッセイ、SPA)を測定するように設計された2つのアッセイで、化合物を評価した。結果を表1に示す。化合物18a(FP IC50=220nM)は、ベンチマーク3(FP IC50=410nM)と比較して、TTRでおよそ2倍強力であり、ベンチマーク4(FP IC50=160nM)と同等の効力であった(表1)。化合物18aは、RBP4におけるオールトランスレチノール競合リガンドの結合力を測定するin vitro RBP4シンチレーション近接アッセイ(SPA)では不活性である(RBP4 SPA IC50>3μM)ことが判明したことから、化合物18aは、RBP4に対して良好な選択性を示した(表1)。
【0246】
TTR四量体の速度論的安定化剤として作用するTTRリガンドの能力を、低pH誘導TTR凝集SDS-PAGEアッセイによりin vitroで評価した(Coelho, T. et al. 2016;Cruz, M.W. 2019)。TTR四量体をpH=4.0で72時間インキュベーションすると、誤って集合し、アミロイド線維及び他の高分子量の形態にオリゴマー化する単量体中間体への解離が始まる(Lamb, Y.N. & Deeks, E.D. 2019)。化合物18aのTTR四量体の速度論的安定化剤として作用する能力を、以前に公開されたプロトコル(Park, J. et al. 2020;Cioffi, C.L. et al. 2020)を使用して、低pH媒介TTR凝集体形成を抑制する能力によって評価した。FDAが認可した化合物3を凝集実験における陽性対照として使用した。
図5Aに示すように、TTR四量体をDMSOと共にpH4、37℃で72時間インキュベートした後の高分子量の形態のTTRの量は、pH7.5で72時間インキュベートしたDMSO対照と比較して大幅に増加している。速度論的TTR安定化剤として作用するその能力と一致して、化合物18a(50μM)での処理は、化合物3(50μM)の場合と同様、TTRの高分子量形態の形成を大幅に阻害した(
図5A)。DMSOと比較して、化合物18a又は化合物3で処理した試料中のTTR単量体及び二量体のバンドの強度が強いことは、化合物18a又は化合物3が誘導するTTR凝集体の対応する減少と相関していた。ウエスタンブロットのバンド強度の定量化により、化合物18aの存在下で凝集物の量が1/3.1に減少することが、化合物3では1/3.0の減少が誘導されることが確認された(
図5B)。化合物18a又は化合物3によってもたらされる、二量体バンド強度の有意な増加及びTTR単量体バンドの強度のかなりの増加は、低pH誘導TTR凝集体形成の阻害と関連していた(
図5C及び5D)。これらの結果は、化合物18aがTTR四量体速度論的安定化剤として作用できることを示した。
【0247】
化合物18aは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)中で優れた速度論的溶解度を示し、観察されたミクロソーム安定性及びCLint値は、複数の種で予測される肝クリアランスが非常に低いことを示唆している(表2)。血漿タンパク質結合率(%PPB)のデータは、ヒト、ラット及びマウスで結合していない割合が低いことを示す(表2)。さらに、化合物18aは、標準的なCYPパネル、hERGチャネル、又は核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ(PPARγ)受容体で、制限的な阻害活性を欠いていた(表2)。
【0248】
化合物18aは、CD-1雄マウスへの単回投与(2mg/kg IV)後に、良好な血漿クリアランス(0.354L/hr/kg)を示し、半減期が5.08時間であった(表3)。この化合物は、十分に吸収され、そして血漿からゆっくりと排出され、単回用量(5mg/kg)の経口投与後のCmaxは1563ng/mlで、対応するTmaxは0.42時間であった(表3)。化合物18aは、良好な全体的曝露(AUCINFは16073hr・ng/mL)と優れた経口バイオアベイラビリティ(%F=103%)を示した。
【0249】
化合物18aの単回25mg/kg経口投与の2時間後に、血清RBP4が最大66%減少した(
図6A)。血清TTR量に対する化合物投与の影響はなかった(データは示さず)。血清RBP4が減少するin vivoの動態は、経口投与後の化合物18aの血液中の存在(
図6B)と血清RBP4の減少との間の良好な相関(
図6A)を実証した。1時間及び2時間の時点で観察されたRBP4の最大の減少は、これらの時点での血液中の化合物18aの高濃度をもたらす急速な経口吸収と非常によく相関していた(
図6A、6B)。同様に、24時間後に血液中の化合物18aが低レベルであることは、血清RBP4量とよく対応する(
図6A、6B)。このデータは、マウスにおける化合物18a曝露と血清RBP4の低下活性との間に非常に良好なPK/PD関係があることを示している。
【0250】
異なるクラスの選択的RBP4アンタゴニストによって誘導される血清RBP4低下と、シュタルガルト病のAbca4-/-モデルマウスにおけるビスレチノイド低下活性との間の直接的な相関関係が以前に確立されている(Radu, R.A. et al. 2005;Racz, B. et al. 2018;Dobri, N. et al. 2013)。化合物18aが示す非常に良好なin vivoでのRBP4低下活性に基づき、この化合物は、網膜における細胞傷害性のリポフスチン ビスレチノイドの形成を抑制するのに有効な可能性があることが期待され、このことは、シュタルガルト病、乾燥型AMD及び網膜におけるリポフスチン蓄積の亢進を特徴とする他の状態の処置のための潜在的な治療剤のクラスという選択的TTRリガンドの評価を正当化する。
【0251】
これらの結果は、TTR四量体に選択的に結合する新規なクラスのTTR四量体の速度論的安定化剤を示す。したがって、これらの化合物は、ATTR-CM、ATTR-PN、FAP、FAC又はSSA及び他のATTRの処置に適用できる。これらのリガンドは、in vivoでRBP4の血中レベルも減少させる可能性がある。したがって、ATTRを特徴とする疾患に加えて、これらの化合物は、網膜における細胞傷害性のリポフスチン ビスレチノイドの形成を抑制し、同時に、TTRアミロイド線維形成の可能性も防止するのに有効である可能性がある。よって、これらの選択的TTR四量体リガンドは、シュタルガルト病、乾燥型AMD及び網膜におけるリポフスチン蓄積の亢進を特徴とする他の状態、特に散発性SSA又は遺伝性TTRアミロイドーシスといったATTR併存疾患も起こす傾向の患者の治療剤としての用途も有している可能性がある。
【0252】
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