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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】力検知装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240229BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20240229BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/045
G06F3/044
G06F3/041 495
G06F3/041 660
G06F3/041 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023549114
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 GB2022000021
(87)【国際公開番号】W WO2022175638
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】2102134.0
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519104503
【氏名又は名称】ペラテック ホールドコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145883
【弁理士】
【氏名又は名称】新池 義明
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル・ウィリアムス, トーマス, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォータス, アポストロス, テオカリス
(57)【要約】
力検知装置は、第1の電極(401)及び第2の電極(402)と、少なくとも1つの溝(202)を含む基板(201)を備えている。力検知装置は、第1電極と第2電極の間に活物質(501)を更に備えている。少なくとも1つの溝は、第1の面(301)と、第1の面に対して傾斜した第2の面(302)を含む。第1の面と第2の面は、互いに距離(303)を隔てて配置されている。第1の電極は第1の面に、第2の電極は第2の面に付着されている。この距離は、加えられた力(701)によって変化し、活物質を変形させ、活物質の抵抗、静電容量又はその組み合わせなどの電気的特性に変化を与える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極;
少なくとも1つの溝を含む基板;及び
前記第1の電極と前記第2の電極の間に設けられた活物質を含み;
前記少なくとも1つの溝は、第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した第2の面を含み、前記第1の面と前記第2の面は、互いに距離を隔てて配置されている;及び
前記第1の電極は前記第1の面上に被着し、前記第2の電極は前記第2の面上に被着している;ここで
前記距離は、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるために、加えられた力の適用時に変化するように構成されている:
力検知装置。
【請求項2】
前記電気的特性が、
抵抗の変化;静電容量の変化
の少なくとも1つである、請求項1記載の力検知装置。
【請求項3】
前記活物質が、
ピエゾ抵抗複合材料;量子トンネル材料;導電性発泡体;導電性エラストマー繊維のメッシュ;誘電体材料;エラストマー;エラストマー発泡体;実質的に多孔質の材料
の中のいずれか1つを含む、請求項1又は請求項2記載の力検知装置。
【請求項4】
前記基板が可撓性のある非導電性材料を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の力検知装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝がエンボス加工によって形成されている、請求項1ないし請求項4のいずれか1記載の力検知装置。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも1つが、
導電性材料;金属材料;アルミニウム;チタン;銅
の中のいずれか1つを含む、請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の力検知装置。
【請求項7】
前記各電極が、
物理蒸着プロセス;蒸発プロセス;パルスレーザー蒸着プロセス;分子線エピタキシー
の中のいずれか1つによって被着する、請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の力検知装置。
【請求項8】
前記力検知装置の汚染を防止するように構成された封入剤を更に含む、請求項1ないし7のいずれか1項記載の検知装置。
【請求項9】
前記封入剤が接着剤を含む、請求項8記載の力検知装置。
【請求項10】
前記封入剤が、
紫外線硬化材料;熱硬化材料;ポリマー樹脂
の中のいずれか1つを含む、請求項8又は請求項9記載の力検知装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項記載の力検知装置を含む電子機器。
【請求項12】
第1の面と第2の面が互いに距離を隔てて配置され、前記第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した前記第2の面を含む少なくとも1つの溝を含む基板を形成するステップ;
前記第1の面上に第1の電極を被着するステップ;
前記第2の面上に第2の電極を被着するステップ;そして
前記第1の電極と前記第2の電極の間に活物質を適用し、使用中に力が加わると、前記距離を変化させ、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるステップ:
を含む、力検知装置を製造する方法。
【請求項13】
前記基板を形成する前記ステップが、エンボス加工によって前記少なくとも1つの溝を形成することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
更に前記力検知装置を電子機器に組み込むステップを含む、請求項12又は請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記被着するステップの少なくとも1つが、
物理蒸着プロセス;蒸発プロセス;パルスレーザー蒸着プロセス;分子線エピタキシー
の中のいずれか1つを含む、請求項12ないし請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
更に前記活物質の上部表面に封入剤を適用するステップを含む、請求項12ないし請求項15のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年2月16日に出願された英国特許出願番号21 02 134.0に基づく優先権を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、力検知装置、力検知装置を含む電子装置、及び力検知装置の製造方法に関する。
力検知装置は、トラックパッド又はフレキシブル又は折り畳み可能なディスプレイのような電子装置を形成するために、フレキシブルな「A」表面の真下に配置された検知素子又はセンセルのマトリックススタイルのアレイを含むことが知られている。「A」表面の下には、活物質が2つの電極と組み合わせて設けられており、加えられた力に応答して出力信号(力検知装置の抵抗値など)が生成される。「A」表面の存在は、大きな変位を防ぎ、そして、検知素子へ伝達する力を弱めることが知られている。その結果、検知素子は、力検知装置のダイナミックレンジを損なうことなく、小さな変位と小さな力の両方に敏感であることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの解決策には、出力信号の変化を達成するために必要なその後の変形を減少させることによって、最初の接触に対する感度を高めるプレローディング力検知装置が含まれていた。プレローディングは製造における統合公差を補正するために使用されることもある。場合によっては、センサアセンブリを大型化し、その後、製造公差を克服するために設置時にプレローディングをかけることがある。しかしながら、このようなプレローディングのプロセスは、力検知装置のダイナミックレンジを減少させる可能性がある。
【0005】
加えて、従来の力検知装置の設計では、活物質の圧縮によって「A」表面の力を測定できるように反力を与えるために、「A」表面の反対側に更に「B」表面を必要とする。
更に、力を加えると、活物質は横方向に増加しながら厚さを減少させるかもしれない。このことは更に、横方向の拡張ギャップ及び/又は活物質の適切なパターン形成を、現在の力検知装置について検知素子間に組み込む必要があり、それによりアレイのピッチが制限されることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の簡単な説明]
本発明の第1の観点によれば、第1の電極及び第2の電極;少なくとも1つの溝を含む基板;及び、前記第1の電極と前記第2の電極の間に設けられた活物質を含み;前記少なくとも1つの溝は、第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した第2の面を含み、前記第1の面と前記第2の面は、互いに距離を隔てて配置されている;及び、前記第1の電極は前記第1の面上に被着し、前記第2の電極は前記第2の面上に被着している;ここで、前記距離は、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるために、加えられた力の適用時に変化するように構成されている:力検知装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、第1の面と第2の面が互いに距離を隔てて配置され、前記第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した前記第2の面を含む少なくとも1つの溝を含む基板を形成するステップ;前記第1の面上に第1の電極を被着するステップ;前記第2の面上に第2の電極を被着するステップ;そして、前記第1の電極と前記第2の電極の間に活物質を適用し、使用中に力が加わると、前記距離を変化させ、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるステップ:を含む、力検知装置を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、力検知装置を含むトラックパッドを組み込んだ電子機器の1例を示す図であり;
図2図2は、力検知装置用基板の概略透視図であり;
図3図3は、図2の基板の断面図であり;
図4図4は、複数の電極が沈着した後の図3の基板を示す図であり;
図5図5は、活物質と組み合わせた基板を示す図であり;
図6図6は、封入剤の沈着を示す図であり;
図7図7は、静止状態の基板の溝を示す図であり;そして
図8図8は、力が加えられたときの図7の溝を示す図である。
【0009】
本発明の実施の形態について、図面を参照して例としてのみ説明する。詳細な実施形態は、発明者が知っている最良のモードを示し、特許請求された本発明をサポートする。ただし、これらは単なる例示であり、特許請求の範囲を解釈又は制限するために使用するべきではない。これらの目的は、当該技術分野の当業者に教示を提供することである。「第1」や「第2」のなどの序数句で区別される要素及びプロセスは、必ずしも何らかの順序やランク付けを定義するわけではない。
【0010】
[発明の詳細な説明]
図1
図1は、電子機器の一例を示す。電子装置101は、トラックパッド102を含むラップトップコンピュータを含む。トラックパッド102は、電子装置101のディスプレイ104上のカーソルを移動させるように構成された入力を提供するなど、電子装置101に入力を提供するためにユーザ103が利用することができる。これに影響を与えるために、トラックパッド102は力検知装置を含む。
【0011】
このタイプのトラックパッドは、従って、力検知装置とトラックパッド(及び力検知装置)への圧力入力信号をディスプレイ104への出力信号に変換するように構成された処理手段を含む。このような用途に利用され得る従来の力検知装置は、典型的には、電極が対向する面にあり、互いに同一平面上にある、平行な平面を含む。従って、このような配置では、複数の層が互いに平行に配置され、その間に活物質の層を有する第1の電極と第2の電極が配置される。このような装置では、活物質は、本出願人がQTC(登録商標)の名称で販売しているような量子トンネル材料であってもよく、この材料は、加えられた力に応答して抵抗が変化するようなピエゾ抵抗応答を示す材料である。
【0012】
このような従来の力検知装置では、電極が平面的に配置されているため、力検知装置がディスプレイや例示したトラックパッドの上部表面などの「A」表面の下に一体化されるとき、加えられた力が弱められることが起こり得る。場合によっては、軽く押しただけでは力検知装置が十分に作動しないことを意味する。加えて、確実に作動させるための補完的な圧縮力を提供するために、更に硬い底部表面も必要である。
ここで図1に記載した実施形態例では、ラップトップコンピュータとトラックパッドが例示されているが、ここに記載した発明は、携帯電話、タブレットコンピュータ、接触スクリーンディスプレイ、又は他の接触入力装置などの代替電子装置に関して更に利用することができるが、これらに限定されないことを理解されたい。
【0013】
図2
このような課題に対処するために、本発明は、力検知装置の応答を改善し、製造中の補償機能の導入、これは公差に影響を与える可能性のある、の複雑さを低減するために、このようなシナリオに組み込まれる改良された力検知装置を提供する。
電子装置101のような電子装置と共に使用するのに適した力検知装置は、基板201を含む。したがって、本明細書で説明する力検知装置は、図1に関して説明したように、電子装置101に好適に組み込むことができる。
【0014】
基板201は、少なくとも1つの溝を含み、この図示の実施形態では、複数の溝202を含む。実施形態では、基板201は7つのそのような溝を含むが、問題となる用途及び力検知装置の寸法及び、従って基板自体に応じて、他の適切な数の溝を利用してもよいことが理解できる。
実施形態では、基板201は可撓性のある非導電性材料を含む。基板201は、従って、任意の適切な可撓性非導電性材料であってよく、その例としては、ポリマー材料からなるものが挙げられる。
【0015】
1つの溝又は複数の溝は、任意の適切な追加される又は除去される製造プロセスによって形成される。一実施形態では、少なくとも1つの溝は、エンボス加工プロセスによって基板201に形成される。エンボス加工プロセスは、少なくとも1つの溝を含む基板を形成するために、パターン化された金属ローラに基板を通過させながら、熱及び圧力を用いて、熱可塑性材料などの適切なポリマー材料の表面をエンボス加工することを含む。同様のエンボス加工技術も、本発明の一部を形成すると理解できるであろう。
【0016】
代替の実施形態では、テクスチャローラ及びテンプレートによって、樹脂混合物を少なくとも1つの溝を含むパターンに光硬化させてもよい。樹脂混合物はUV硬化樹脂を含み、パターン化ローラと、その上に剥離シートを有するキャリアシートの間を通過させることができる。樹脂とテクスチャローラが接触するところでは、UV硬化樹脂に必要な形状(溝)を硬化させるためにUV光が使用される。他の適切なマイクロエンボス技術も、本明細書に記載されるような基板を形成するのに適していることが理解できる。
【0017】
図3
図3は、基板201の断面概略図を示す。複数の溝202が示されており、各溝は実質的に同様の断面形状を有する。実施形態では、複数の溝は、各溝が三角形の断面からなる実質的にのこぎり歯の断面形状を提供する。溝は、湾曲したU字形状又はV字形状又は矩形状などの代替断面形状を有していてもよいが、これらに限定されないことを理解されたい。
【0018】
しかしながら、各実施形態では、各溝は、互いに傾斜した第1の面と第2の面を含む。具体的には、溝202Aを参照すると、溝202Aは、面301と面302を含み、面302は面301に対して傾斜している。面301と面302は、互いに距離303が隔てて配置されている。図7及び図8に関して更に説明するように、力が加えられると、距離303が変化するように構成されているので、面301及び302が互いに離れる、又は互いに近づく。したがって、このようなことを可能にする任意の断面形状が、本発明に従って使用するのに適していることが理解できる。
【0019】
図4
製造においては、図2及び図3に関して説明した基板201の形成に続いて、少なくとも1つの溝のそれぞれの面上に電極が被着する。
したがって、再び、溝202Aを参照すると、第1の電極401が面301上に被着し、第2の電極402が面302上に被着する。同様に、他の溝202の各面は、溝202Aと実質的に同様な方法で配置されたそれぞれの面上に電極が被着する。
【0020】
実施形態では、電極401,402の各々は導電性材料を含む。一実施形態では、このような導電性材料は金属材料を含む。電極401又は電極402のいずれかに適した金属材料としては、アルミニウム、チタン又は銅を含む金属材料が含まれる。一実施形態において、各対の電極(すなわち、電極401及び402のような対向する面の電極)は、実質的に同様の金属材料を含む。別の実施形態では、各対の電極は異なる金属材料を含む。
【0021】
実施形態において、前記各電極は、物理蒸着プロセス、蒸発プロセス、パルスレーザー蒸着プロセス、スパッタリング物理蒸着プロセス又は分子線エピタキシーなどの任意の適切な製造プロセスによって被着し得るが、これらに限定されない。傾斜面301、302が電極材料で被覆され、溝202Aの他の部分が被覆されないようにするために、視線蒸着が利用され、傾斜面のみが電極材料を受け取るように、基板201に対する被着材料の供給源の角度が制御される。
電極材料の被着後、各対の電極は互いに切り離され、溝の面の性質によって間隔を開けられ、図4に示すように、静止状態(力が加えられていないとき)では接触しない。
【0022】
図5
各対の電極が各溝の対応する面に被着すると、活物質501が各対の電極間に適用される。
図示のように、活物質は基板201に適用される、そして、基板201に適用されるとき、各溝のそれぞれの面の間の溝202内に位置する。その結果、活物質501は、当該基板の少なくとも1つの溝又は複数の溝のそれぞれを埋める。各対の電極401、402も、その結果、一対の電極401、402及び活物質501が力検知装置として機能できるように、活物質501によって封入される。
【0023】
一実施形態では、活物質501は力検知装置の形成に適した材料を含む。特に、活物質の選択により、形成される力検知装置のタイプが決定される場合がある。一実施形態では、活物質501が、量子トンネル材料複合体、多孔性導電性発泡体、又は複数の導電性エラストマー繊維を含むメッシュなどのピエゾ抵抗複合体を含むとき、抵抗モード検知装置が組み立てられる。
別の実施形態では、活物質501は、エラストマーやエラストマー発泡体などの可撓性誘電体を含み、容量性検知装置を形成する。
【0024】
一実施形態では、活物質501として多孔質材料を利用することが望ましい場合がある。多孔質材料は、ヒステリシスを低減し、加えられた力に対するより速い応答を提供するという利点がある。更に、多孔質材料は、加えられた力による圧縮が体積変化として調整されるため、大きなポアソン膨張を経験しない。加えて、活物質501が可撓性誘電体を含み、容量性検知装置を形成する実施形態では、圧縮中の気孔の崩壊により、材料の実効誘電率が増加することによって測定される信号が付加的に増加する。
【0025】
活性材料501が、QTC(登録商標)の名称で本出願人である英国,キャッタリック ガリソンのペラテック・ホールドコ・リミテッドから入手可能な量子トンネル材料などの複合材料を含む実施形態では、加えられた力の測定は、力がゼロのときの複合材料の開始抵抗に依存する。本明細書に記載の力検知装置では、より大きな力が発生したときに抵抗信号に切り替わる前に、非常に小さな変形力が加えられたときに小さな容量性信号が測定されるであろう。
【0026】
したがって、力が加えられると、活物質から電気的特性を測定することができ、力検知装置を容量性力検知装置(活物質が絶縁材料であるとき)、容量性検知と抵抗性検知の両方を示すハイブリッド力検知装置(活物質が複合材料であるとき)、又は抵抗性力検知装置(活物質が力検知装置であるとき)として機能させることができる。
本実施形態では、活物質501は基板201より低い弾性率を含む。
【0027】
図6
本発明に係る力検知装置は、力検知装置の汚染を防止するように構成された封入剤を更に含むことができる。活物質501の適用後、活物質501の上部表面602に封入剤601が更に適用される。従って、封入剤601は、活物質501、電極401、402、溝202を封入し、力検知装置を保護する。
【0028】
実施形態では、力検知装置は環境汚染に対して封入される。この目的の必要性は、力検知装置が利用される用途によって異なるかもしれないが、封入材の目的は、例えば、水又は空気の浸入に対する環境障壁を提供することである。
更なる実施形態では、封入材は二重の目的を果たし、接着剤で構成されている。この実施形態では、封入材601の上部表面603は、力検知装置を所定の位置に保持するために電子装置101の表面に接着されるように構成されている。
【0029】
一実施形態では、接着剤は、紫外線硬化材料、熱硬化材料、又は溶媒系中のポリマー樹脂を含む。力検知装置のバリアを保持するために、他の適切な封入材料が利用され得ることが理解できる。
例えば、図1を参照して説明したように、力検知装置が電子装置に組み込まれたとき、封入剤/接着剤は、力検知装置が取り付けられる電子装置の表面上で滑らないように機能する。滑らないということは、電子機器に加えられた力に対して力検知装置が正確に機能し、その力が力検知装置に伝達されることを意味する。
【0030】
図7
力が加えられると、活物質501が変形し、面301と面302の間の距離303が変化するように構成されている。その結果、活物質501からの電気的特性の変化が測定できる。
図7は、単独の溝202Aと、加えられた力701を受ける方向を示す概略図である。図7に示す実施形態では、溝202Aは静止状態にある。したがって、活物質501から電気信号が読み取られると、出力信号は静止状態の活物質と一致するであろう。活物質の種類によっては、図5に関して上記したように、従来の電気回路によって測定される電気的特性は、一実施形態では抵抗値である。更なる実施形態では、測定される電気的特性は静電容量の値である。更なる実施形態では、抵抗と静電容量の両方が測定され、複素インピーダンス測定が行われる。これが問題になっている活物質に適していれば、他の電気特性が測定されてもよいことが理解できる。
【0031】
図7の概略図には封入剤601が図示されていないことに留意されたい。しかし、図7及び図8に関して説明する機構は、封入剤が力検知装置に含まれているか否かにかかわらず実質的に同様であることが理解できる。
実施形態では、力701に対する溝202Aの向きは、力が加えられたときに溝202Aが力701の屈曲中心を向くことを意味する。したがって、力701が活物質501の上部表面に加えられると、活物質501が電気特性の変化をもたらすように変形するにつれて、基板201が曲がるように構成されている。そして、電気特性の変化は、従来の方法によって電極401及び402を横切って測定することができる。電気的特性は、活物質の変形の変化に合わせて変化し、加えられる力の変化に応じた電気的特性の変動をもたらす。更に、付加的な応答として、基板の曲げと電極間の距離を測定することができる。
【0032】
図8
加えられた力701は、図8の概略図に示すように、力検知装置、特に活物質501と基板201に変形を及ぼす。図示のように、力検知装置の上部表面801に力701が加えられると、活物質501は圧縮し、基板201は曲がり、距離303は減少し、電極401及び402は互いに接近する。
力検知装置に力701が加えられると、この明細書中で説明したように、力検知装置の応答は少なくとも1つの溝の向きに依存する。その溝又は複数の溝が加えられた力701の屈曲中心を向いているならば、溝内の活物質501は圧縮され、電極401及び402は互いに接近し、力検知装置が力検知装置の上部表面801の屈曲を採用するにつれて距離303が減少する。力検知装置の下側に別の表面が存在するとき、活物質501は、基板201の応力集中溝202Aによって拡大される圧縮力を受ける。
【0033】
図示した実施形態とは別の実施形態では、例えば、力701が力検知装置の底面802から加えられ、それによって溝202Aが力検知装置の屈曲中心とは反対方向を向くことが確保されたとき、加えられた力に応じて可撓性基板201が曲がるにつれて、距離303が増加し、溝202Aの面が互いに離れる。従って、活物質501は緊張状態に置かれる。
【0034】
加えられた力701の下で活物質501にかかる応力と、力検知装置の変形に伴う電極401及び402の間の距離303と向きの変化は、上記のように、加えられた力701を抵抗又は静電容量などの測定可能な電気的特性に変換するのに使用され得る。従来の力検知装置とは異なり、加えられた力に対する反応力を提供するために「B」表面を必要とせず、代わりに、測定のための出力信号を提供するのは、少なくとも1つの溝を構成する基板の屈曲部である。このため、力検知装置を、図1に記載したような電子機器に組み込む手順が簡略化され、製造公差の影響を受けにくくなる。したがって、本発明に係る力検知装置は、例えば、フレキシブルディスプレイ又はキーボード又はトラックパッドに組み込まれるとき、単一の表面(すなわち、「A」表面)に確実に固着することができる。これにより、従来の「B」表面との正確かつ精密な機械的一体化の制約が軽減され、製造及び組立工程が容易になり、再現性が向上する。
【0035】
少なくとも1つの溝又は複数の溝は、それぞれ応力集中装置として機能する。各溝に応力が集中することにより、活物質が与えられた力に対してより大きく変形することが保証される。従って、各溝は、加えられた力のような機械的負荷を受けると、局所的な応力が強まる。この溝周辺の局所的応力の増大によって、その結果、力検知装置の感度が向上する。
【0036】
従来の装置では、出力信号を提供するために上層と下層が接触する必要があるため、プレローディングのプロセス上の影響や装置ごとのばらつきを低減するために、エアギャップ又はスペーサを含める必要があることが多い。特許請求の範囲に記載された発明は、エアギャップを必要とせず、また、例えばエアギャップの圧縮によるのではなく、加えられた力が活物質の変形にのみ応答して測定されるため、製造に依存することもない。これにより、力検知装置をより着実に電子機器に組み込むことが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
本発明は、力検知装置、力検知装置を含む電子装置、及び力検知装置の製造方法に関する。
力検知装置は、トラックパッド又はフレキシブル又は折り畳み可能なディスプレイのような電子装置を形成するために、フレキシブルな「A」表面の真下に配置された検知素子又はセンセルのマトリックススタイルのアレイから構成されていることが知られている。「A」表面の下には、活物質が2つの電極と組み合わせて設けられており、加えられた力に応答して出力信号(力検知装置の抵抗値など)が生成される。「A」表面の存在は、大きな変位を防ぎ、そして、検知素子へ伝達する力を弱めるにすることが知られている。その結果、検知素子は、力検知装置のダイナミックレンジを損なうことなく、小さな変位と小さな力の両方に敏感であることが必要である。
特許文献1には、法線方向または接線方向の力を検出できる2次元分布型の力センサが記載されている。力センサは、基盤上に形成されたV溝及びV溝の両側に形成された電極を有する。円筒形状の感圧素材は空隙によって分離されており、力が加わると電極に接触させることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【特許文献1】特開2005-91106号公報
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
[発明の簡単な説明]
本発明の1の観点によれば、請求項1にクレームされた力検知装置が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
[発明の簡単な説明]
本発明の第2の観点によれば、請求項11にクレームされた力検知装置を製造する方法が提供される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極(401)及び第2の電極(402)
少なくとも1つの溝(202)を含む基板(201);及び
前記第1の電極と前記第2の電極の間に設けられた活物質(501)を含み;
前記少なくとも1つの溝は、第1の面(301)と、前記第1の面に対して傾斜した第2の面(302)を含み、前記第1の面と前記第2の面は、互いに距離(303)を隔てて配置されている;及び
前記第1の電極は前記第1の面上に被着し、前記第2の電極は前記第2の面上に被着している;ここで
前記距離は、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるために、加えられた力(701)の適用時に変化するように構成されており、
前記基板が可撓性のある非導電性材料を含むことを特徴とする:
力検知装置。
【請求項2】
前記電気的特性が、
抵抗の変化;静電容量の変化
の少なくとも1つである、請求項1記載の力検知装置。
【請求項3】
前記活物質が、
ピエゾ抵抗複合材料;量子トンネル材料;導電性発泡体;導電性エラストマー繊維のメッシュ;誘電体材料;エラストマー;エラストマー発泡体;実質的に多孔質の材料
の中のいずれか1つを含む、請求項1又は請求項2記載の力検知装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溝がエンボス加工によって形成されている、請求項1ないし請求項のいずれか1記載の力検知装置。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも1つが、
導電性材料;金属材料;アルミニウム;チタン;銅
の中のいずれか1つを含む、請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の力検知装置。
【請求項6】
前記各電極が、
物理蒸着プロセス;蒸発プロセス;パルスレーザー蒸着プロセス;分子線エピタキシー
の中のいずれか1つによって被着している、請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の力検知装置。
【請求項7】
前記力検知装置の汚染を防止するように構成された封入剤(601)を更に含む、請求項1ないしのいずれか1項記載の検知装置。
【請求項8】
前記封入剤が接着剤を含む、請求項記載の力検知装置。
【請求項9】
前記封入剤が、
紫外線硬化材料;熱硬化材料;ポリマー樹脂
の中のいずれか1つを含む、請求項又は請求項記載の力検知装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項記載の力検知装置を含む電子機器(101)
【請求項11】
第1の面と第2の面が互いに距離を隔てて配置され、前記第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した前記第2の面を含む少なくとも1つの溝を含む基板を形成するステップ;
前記第1の面上に第1の電極を被着するステップ;
前記第2の面上に第2の電極を被着するステップ;そして
前記第1の電極と前記第2の電極の間に活物質を適用し、使用中に力が加わると、前記距離を変化させ、前記活物質を変形させ、前記活物質の電気的特性に変化を与えるステップ
を含み、前記基板が可撓性のある非導電性材料を含むことを特徴とする:
力検知装置を製造する方法。
【請求項12】
前記基板を形成するステップが、エンボス加工によって前記少なくとも1つの溝を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
更に前記力検知装置を電子機器(101)に組み込むステップを含む、請求項1又は請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記被着するステップの少なくとも1つが、
物理蒸着プロセス;蒸発プロセス;パルスレーザー蒸着プロセス;分子線エピタキシー
の中のいずれか1つを含む、請求項1ないし請求項1のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
更に前記活物質の上部表面(801)に封入剤(601)を適用するステップを含む、請求項1ないし請求項1のいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】