IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特表2024-510397製品をポッティングするためのポリウレタンフォーム組成物及びその使用
<>
  • 特表-製品をポッティングするためのポリウレタンフォーム組成物及びその使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】製品をポッティングするためのポリウレタンフォーム組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240229BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240229BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240229BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
C08G18/00 J
H01M50/293
H01M50/204 401F
C08G101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552192
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2021079884
(87)【国際公開番号】W WO2022188050
(87)【国際公開日】2022-09-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】チー、ユドン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、ウェイユエ
【テーマコード(参考)】
4J034
5H040
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG02
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA16
4J034QB01
4J034QB11
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA14
5H040AA03
5H040AA37
5H040AT01
5H040LL06
(57)【要約】
本開示は、ポリウレタンフォーム組成物に関し、ポリウレタンフォーム組成物は、(A)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含むポリオール成分であって、1つ以上のポリオールは、3~7の平均ヒドロキシル基官能価及び300~1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有する、ポリオール成分と、(B)1つ以上のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、を含み、(A)ポリオール成分及び(B)イソシアネート成分のいずれか又は両方において、ポリウレタンフォーム組成物は、ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下の量の1つ以上の難燃剤と、1つ以上の発泡剤と、を更に含み、イソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~5:1の範囲内である。本開示は更に、ポリウレタンフォーム組成物を使用することによって電池をポッティングする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォーム組成物であって、
(A)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含むポリオール成分であって、前記1つ以上のポリオールは、3~7の平均ヒドロキシル基官能価及び300~1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有する、ポリオール成分と、
(B)1つ以上のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、を含み、
前記(A)ポリオール成分及び前記(B)イソシアネート成分のいずれか又は両方において、前記ポリウレタンフォーム組成物は、前記ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下の量の1つ以上の難燃剤と、1つ以上の発泡剤と、を更に含み、
前記イソシアネート成分の前記ポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~5:1の範囲内である、ポリウレタンフォーム組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の発泡剤は、少なくとも1つの物理発泡剤を含む、請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項3】
前記難燃剤は、トリクロロプロピルホスフェート又はトリエチルホスフェートである、請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート成分の前記ポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~2.5:1の範囲内である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物から調製されるポリウレタンフォームであって、前記ポリウレタンフォームは、前記ポリウレタンフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤を含み、前記ポリウレタンフォームは、25℃で3.5MPa超の引張強度を有し、前記ポリウレタンフォームは、23℃で0.05W/(m・K)未満の熱伝導率を有する、ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォームは、65℃で1.0MPa超の引張強度を有する、請求項5に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記ポリウレタンフォームは、UL-94規格によるV0燃焼性試験に合格する、請求項5に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項8】
電池をポッティングする方法であって、
(i)ポリオール成分をイソシアネート成分と混合することによって反応混合物を形成することであって、
(A)前記ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含み、前記1つ以上のポリオールは、3~7の平均ヒドロキシル基官能価及び300~1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有し、
(B)前記イソシアネート成分は、1つ以上のイソシアネート化合物を含み、
前記(A)ポリオール成分及び前記(B)イソシアネート成分のいずれか又は両方において、前記ポリウレタンフォーム組成物は、前記ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下の量の1つ以上の難燃剤と、1つ以上の発泡剤と、を更に含み、
前記イソシアネート成分の前記ポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~5:1の範囲内である、ことと、
(ii)前記反応混合物を前記電池の密閉空間に注入し、前記反応混合物を反応、膨張、及び硬化させることと、を含む、方法。
【請求項9】
前記反応混合物を室温以上で反応、膨張、及び硬化させる、請求項8に記載の電池をポッティングする方法。
【請求項10】
前記反応混合物を45℃~65℃で密閉空間に注入する、請求項8に記載の電池をポッティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリウレタンフォーム組成物に関する。特に、本開示は、2成分ポリウレタンフォーム組成物と、それを使用することによって製品をポッティングする方法とに関する。ポリウレタンフォーム組成物は、適用中にバランスのとれた反応性プロファイルを示し、形成されたフォームに物理的特性の改善と、低濃度の難燃剤を使用する厳しい燃焼性基準の順守とをもたらす。
【背景技術】
【0002】
現在は、電池エネルギー密度を高めるために、小さな間隙で積み重ねられた多層円筒電池が使用されている。硬化ポッティング材は、振動、高温及び高湿などの様々な使用条件下で電池の長期安定性を確保するために、満足のいく物理的特性及び電気的安定性を有することが必要とされる。更に、ポッティング材は、バランスのとれた反応性プロファイルを示す必要がある。反応性ポッティング剤は、電池パック内の間隙を充填するのに十分な流動性を可能にする初期の低粘度と十分に遅い粘度増加とを示し、また一方で、迅速な離型、したがって短い成形サイクル時間を可能にするのに十分に速く硬化することが望ましい。
【0003】
現在使用されているポッティング技術は、満足な物理的性能を提供できないことが多く、必要とされるUL-94規格によるV0燃焼性能を満たすために、固体及び/又は液体難燃剤を増量して含むことが依然として必要である。
【0004】
したがって、例えば電池パックなどの製品をポッティングするために、時間効率がよく、したがってより費用効率がよいプロセスを促進し、更にそれらの動作寿命にわたって所望の安定性/耐久性を提供する、ポッティング剤が当該技術分野において依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、ポッティング材として使用するために、所望の流動プロファイルを示し、難燃剤が低減されて物理的特性が改善されたフォームを形成する、2成分組成物を開発した。
【0006】
一実施形態では、本開示は、ポリウレタンフォーム組成物について記載し、ポリウレタンフォーム組成物は、
(A)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含むポリオール成分であって、1つ以上のポリオールは、3~7の平均ヒドロキシル基官能価及び300~1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有する、ポリオール成分と、
(B)1つ以上のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、を含み、
(A)ポリオール成分及び(B)イソシアネート成分のいずれか又は両方において、ポリウレタンフォーム組成物は、ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下の量の1つ以上の難燃剤と、1つ以上の発泡剤と、を更に含み、
イソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~5:1の範囲内である。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、本開示によるポリウレタンフォーム組成物から調製されたポリウレタンフォームについて記載し、ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤を含み、ポリウレタンフォームは、25℃で3.5MPa超の引張強度を有し、ポリウレタンフォームは、23℃で0.05W/(m・K)未満の熱伝導率を有する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、請求項1に記載のポリウレタンフォーム組成物を使用して製品(例えば、電池)をポッティングする方法について記載し、本方法は、
(i)本開示によるポリウレタンフォーム組成物を提供することと、
(ii)(A)ポリオール成分を(B)イソシアネート成分と混合することによって反応混合物を形成することと、
(iii)反応混合物を電池の密閉空間に注入し、反応混合物を反応、膨張、及び硬化させることと、を含む。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、記載のポリウレタンフォームを含むポッティングされた製品(例えば、ポッティングされた電池)について記載する。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、製品(例えば、電池)をポッティングするための、記載のポリウレタンフォーム組成物の使用について記載する。
【0011】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、いかなる方法によっても限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に従って、電池用ポッティング樹脂として円筒電池を用いずに調製されたポリウレタンフォームの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0014】
本明細書で開示されるように、「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0015】
本明細書で開示する場合、本明細書で言及される全てのパーセントは、別段明記されない限り、重量基準であり、温度は℃である。
【0016】
ポリウレタンフォーム組成物
本開示によるポリウレタンフォーム組成物は、(A)ポリオール成分及び(B)イソシアネート成分を含む2成分組成物である。
【0017】
本明細書で使用するとき、「2成分」という用語は、ポリウレタンフォーム組成物が使用前に互いに分離された部分で提供されることを意味する。典型的には、本開示による組成物は、少なくとも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含む第1の成分(本明細書では「ポリオール成分」、「ポリオール成分(A)」、又は「OH成分」とも呼ばれる)と、1つ以上のイソシアネート化合物を含む第2の成分(本明細書では「イソシアネート成分」、「イソシアネート成分(B)」、又は「NCO成分」とも呼ばれる)とを含むことができる。ポリオール成分及びイソシアネート成分は、別々に調製、貯蔵、輸送、及び提供することができ、例えば、ポッティングされる製品に適用する少し前又は直前に組み合わせることができる。これらの2つの成分を接触させると、ポリオール基がイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成する硬化反応が開始することが企図される。2つの成分を接触させることによって形成される反応性ポリウレタン分散液は、「反応混合物」又は「硬化性混合物」と称され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物に含まれるイソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~5:1の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比は、以下の端点:0.5:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.8:1、2:1、2.2:1、2.5:1、3:1、4:1、及び5:1のうちのいずれか2つを組み合わせることによって得られる範囲内であり得る。いくつかの特定の実施形態では、イソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比は、0.5:1~4:1、又は0.5:1~3:1、好ましくは0.5:1~2.5:1、0.8:1~3:1、0.8:1~2.5:1、1:1~2.5:1、1.2:1~2.2:1、又は0.8:1~2.0:1、より好ましくは0.8:1~1.8:1、1:1~2:1、1.2:1~2:1、又は1:1~1.8:1の範囲内であり得る。
【0019】
本明細書で使用するとき、「NCO/OH比」という用語は、ポリウレタンフォーム組成物中のイソシアネート基の数対ヒドロキシル基の数の比を指し、又はより具体的には、本開示によるポリウレタンフォーム組成物の、イソシアネート成分中のイソシアネート基の数とポリオール成分中のヒドロキシル基の数との比を指す。
【0020】
本開示によるポリウレタンフォーム組成物は、1つ以上の発泡剤を更に含む。1つ以上の発泡剤は、ポリオール成分又はイソシアネート成分に含まれ得る。ポリウレタンフォーム組成物に使用される発泡剤は、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ジアルキルエーテル、若しくはフッ素置換ジアルキルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの物理発泡剤を含む。これらの種類の発泡剤としては、プロパン、イソペンタン、n-ペンタン、n-ブタン、イソブタン、イソブテン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、1,1-ジクロロ-l-フルオロエタン(HCFC-141b)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、l-クロロ-l,l-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、ヒドロフルオロオレフィン(HCFO)、LBAなどのヒドロフルオロオレフィン(HFO)、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ポリウレタンフォーム組成物はまた、化学発泡剤、例えば、水、カルボン酸、ギ酸、及びこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0021】
1つ以上の発泡剤は、ポリオール成分及びイソシアネート成分のいずれか又は両方に含まれ得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の発泡剤は、ポリオール成分に含まれる。典型的には、発泡剤は、ポリオール成分100重量部当たり1~20重量部を構成する。
【0022】
本開示によるポリウレタンフォーム組成物は、1つ以上の難燃剤を更に含む。1つ以上の難燃剤は、ポリオール成分及び/又はイソシアネート成分に含まれ得る。本明細書で使用するとき、「難燃剤(flame retardants)」及び「防火剤(fire retardants)」という用語は、火災の発生を防止するために、又は火災の広がりを遅らせて更なる脱出時間を提供するために、可燃性材料に添加される様々な物質を指す。そのような難燃剤としては、例えば、剥離性グラファイト、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。本発明で使用するためのホスホン酸エステルは、式R-P(O)(OR’)(OR’’)によって表すことができ、式中、R、R及びR’’は、それぞれ独立して1~4個の炭素原子を有するアルキルである。この群の好ましいメンバーは、ジメチルメチルホスホネート(DMMP)及びジエチルエチルホスホネート(DEEP)である。本開示で使用することができるリン酸エステルは、トリエチルホスフェート(TEP)などのトリアルキルホスフェート、及びトリクレジルホスフェートである。難燃性に関連するハロゲン化リン酸エステルは、当該技術分野において周知であり、一般式P(O)(OR’Xn)(OR’’X’’n)(OR’’X’’’n)によって表すことができ、式中、R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、X’、X’’及びX’’’は、それぞれ独立してハロゲンであり、nは1~3の整数である。ハロゲン化リン酸エステルの例としては、2-クロロエタノールホスフェート;1-クロロ-2-プロパノールホスフェート[トリス(l-クロロ-2-プロピル)ホスフェート](TCPP);トリス(l,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェートとも呼ばれる1,3-ジクロロ-2-プロパノールホスフェート;トリ(2-クロロエチル)ホスフェート;トリ(2,2-ジクロロイソプロピル)ホスフェート;トリ(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート;トリ(11,3-ジクロロプロピル)ホスフェート;テトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェート;ビス(2-クロロエチル)2-クロロエチルホスホネート;クリホスフェート(cliphosphates)[2-クロロエチルジホスフェート];テトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェート;トリス-(2-クロロエチル)-ホスフェート、トリス-(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス-(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリス(1,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2-クロロエチル-エチレンジホスフェート、及びテトラキス(2-クロロエチル)エチレンオキシエチレンジホスフェートが挙げられる。式[(BrCHC-CHO],PO(OCYHCHCl)を有し、式中、Yは、水素、1~3個の炭素原子を有するアルキル、又はクロロアルキル基を表し、nは0.95~1.15である、トリブロモノペンチル(Tribromonopentyl)クロロアルキルホスフェートも、使用することができる。いくつかの特定の実施形態では、難燃剤は、トリクロロプロピルホスフェート及び/又はトリエチルホスフェートである。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォームに含まれる1つ以上の難燃剤は、非固体難燃剤から選択される。
【0023】
典型的には、ポリオール成分100重量部当たり1~40重量部の難燃剤が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリオール成分100重量部当たり1、3、5、7、10、12、15、16、又は18重量部~20、25、30、35、又は40重量部の難燃剤が含まれる。いくつかの実施形態では、含まれる難燃剤の量は、ポリオール成分の5~40、5~30、5~25、又は5~20重量部の範囲内である。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物に含まれる1つ以上の難燃剤の量は、ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下である。いくつかの実施形態では、難燃剤は、形成されたフォーム中の難燃剤の濃度が最終フォームの15重量パーセント以下であるような特定の量で使用される。好ましくは、難燃剤は、形成されたフォームの1~15重量パーセントである。本開示によるポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、形成されたフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤を含むことで、UL-94規格によるV0燃焼性要件を満たすことが見出されている。
【0025】
前述の成分に加えて、気泡ポリマーの調製におけるその後の使用を容易にするために、ポリウレタンフォーム組成物中に存在する特定の他の成分を有することが多くの場合に望ましい。これらの成分の1つ以上は、ポリオール成分及び/又はイソシアネート成分に含まれ得る。これらの追加成分には、触媒、界面活性剤、防腐剤、顔料、着色剤、抗酸化剤、生物学的遅延剤、補強剤、安定剤、及び充填剤がある。
【0026】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物は、第三級アミン化合物、有機金属化合物、及びこれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上の触媒を更に含む。例示的な第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’,N’-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウムホルメート、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1-メチル-4-ジメチルアミノエチルピペラジン、3-メトキシ-N-ジメチルプロピルアミン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N-ココモルホリン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジメチルイソプロピルプロピレンジアミン、N,N-ジエチル-3-ジエチルアミノプロピルアミン、及びジメチルベンジルアミンが挙げられる。例示的な有機金属触媒としては、有機水銀、有機鉛、有機第二鉄、及び有機スズ触媒が挙げられる。好適なスズ触媒としては、塩化第一スズ、ジブチルスズジラウレート等のカルボン酸のスズ塩、並びに米国特許第2,846,408号に開示されているような他の有機金属化合物が挙げられる。アルカリ金属アルコキシド等のポリイソシアヌレートをもたらすポリイソシアネートの三量化のための触媒もまた、本明細書において任意選択的に用いられ得る。このような触媒は、ポリウレタンの生成速度を測定可能に増加させる量で使用される。典型的な量は、ポリオール成分100重量部当たり0.001~3重量部の触媒である。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物は、発泡反応混合物が硬化するまでそれを安定化させるために、1つ以上の界面活性剤を更に含む。そのような界面活性剤は、有利には、液体又は固体の有機シリコーン界面活性剤などのシリコーン界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は、発泡反応混合物を崩壊及び大きく不均一な気泡の形成に対して安定させるのに十分な量で用いられる。典型的には、ポリオール成分100重量部当たり0.2~3重量部、好ましくは1~2重量部の界面活性剤が、この目的に適している。
【0028】
当該技術分野で周知の他の混合物又は材料をポリウレタンフォーム組成物に含めることができ、それらは本発明の範囲内であることが理解される。
【0029】
ポリオール成分
本開示によるポリウレタンフォーム組成物に含まれるポリオール成分は、1つ以上のポリオールを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物は、2つ以上のポリオールを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物に含まれる1つ以上のポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0030】
本明細書で使用するとき、「ポリオール」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を指す。ポリオールは、厳密に2個のヒドロキシル基を有すると「ジオール」であり、厳密に3個のヒドロキシル基を有すると「トリオール」であり、厳密に4個のヒドロキシル基を有すると「テトラオール」であり、厳密に5個のヒドロキシル基を有すると「ペンタノール」であり、以下同様である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、3以上の平均ヒドロキシル基官能価を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、7以下の平均ヒドロキシル基官能価を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、3、3.2、3.4、又は3.5~5、5.6、5.8、6、6.5、又は7の平均ヒドロキシル基官能価を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、3~7、例えば、3~6.8、3~6.5、3~6、3~5.8、3~5.6、3.4~7、3.4~6.8、3.4~6.5、3.4~6、3.4~5.8、又は3.4~5.6の平均ヒドロキシル基官能価を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、300mgKOH/gを超える平均ヒドロキシル基数を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、1,000mgKOH/g未満の平均ヒドロキシル基数を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、例えば、300、305、310、315、320、325、又は330~700、750、800、850、900、950、又は1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールは、300~1000mgKOH/g、300~950mgKOH/g、300~900mgKOH/g、310~1000mgKOH/g、310~950mgKOH/g、320~1000mgKOH/g、又は320~950mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも1つのポリエステルポリオールを含み得る。同じ原子の直鎖中に2つ以上のエステル結合を含有する化合物は、本明細書では「ポリエステル」として知られている。ポリエステル及びポリオールである化合物は、本明細書では「ポリエステルポリオール」として知られている。
【0034】
ポリウレタンフォーム組成物に使用されるポリエステルポリオールは、10,000g/molを超えない分子量を有し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも2(すなわち、f≧2)のヒドロキシル基官能価を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、10以下(すなわち、f≦10)のヒドロキシル基官能価を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、2~8、2~7、3~7、3~6、又は3~5の範囲内のヒドロキシル基官能価を有し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、300mgKOH/gを超えるヒドロキシル基数を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、1,000mgKOH/g未満のヒドロキシル基数を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、300~950mgKOH/g、300~900mgKOH/g、310~1000mgKOH/g、310~950mgKOH/g、320~1000mgKOH/g、又は320~950mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールとしては、ジオール、また場合によってはポリオール(例えば、トリオール、テトラオール)の重縮合物、ジカルボン酸、また場合によってはポリカルボン酸(例えば、トリカルボン酸、テトラカルボン酸)又はヒドロキシカルボン酸又はラクトンの重縮合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエステルポリオールはまた、遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、又は低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステルから誘導され得る。
【0038】
好適なジオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキサレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、また、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。2を超えるポリエステルポリオール官能価を達成すべき場合、3以上の官能価を有するポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)が、ポリオール組成物に任意選択的に含まれ得る。
【0039】
好適なジカルボン酸としては、脂肪酸、芳香族酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な芳香族酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びテトラヒドロフタル酸が挙げられる。好適な脂肪族酸の例としては、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、及びトリメリット酸が挙げられる。本明細書で使用するとき、「酸」という用語は、当該酸の任意の無水物も含む。更に、安息香酸及びヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸は、最小限にするか又は開示された組成物から排除されるべきである。アジピン酸又はイソフタル酸等の飽和脂肪族及び/又は芳香族酸も本開示による使用に適している。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含み得る。同じ原子の直鎖中に2つ以上のエーテル結合を含有する化合物は、本明細書では「ポリエーテル」として知られている。ポリエーテル及びポリオールである化合物は、「ポリエーテルポリオール」である。
【0041】
ポリウレタンフォーム組成物に使用されるポリエーテルポリオールは、10,000g/molを超えない分子量を有し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、少なくとも2(すなわち、f≧2)のヒドロキシル基官能価を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、10以下(すなわち、f≦10)のヒドロキシル基官能価を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、2~8、2~7、3~7、3~6、3~5の範囲内のヒドロキシル基官能価を有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、300mgKOH/gを超えるヒドロキシル基数を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、1,000mgKOH/g未満のヒドロキシル基数を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、300~950mgKOH/g、300~900mgKOH/g、310~1000mgKOH/g、310~950mgKOH/g、320~1000mgKOH/g、又は320~950mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示で使用するためのポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドと多価アルコールスターター化合物との付加重合によって得られる。このような多価アルコールの例としては、グリセリン、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、又は他の糖が挙げられる。いくつかの実施形態では、スターター化合物は、ソルビトール又はスクロースである。これらの多価アルコール、並びにこれらのアルコールと水、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールとの混合物は、スターター化合物として使用することができる。使用することができる好適なソルビトール又はスクロース/グリセリン開始ポリエーテルの例としては、Voranol(商標)360、Voranol(商標)RN411、Voranol(商標)RN490、Voranol(商標)370、Voranol(商標)446、Voranol(商標)520、Voranol(商標)550、Voranol(商標)RN482、Tercarol(商標)RF55、又はVORANOL(商標)RH360ポリオールが挙げられ、全てThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物は、ポリオール成分100重量部当たり50~95重量部の1つ以上のポリオール、例えば、ポリオール成分100重量部当たり55~95、60~95、65~90、又は70~90重量部の1つ以上のポリオールを含む。特定の実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも3.5、少なくとも3.8、又は少なくとも4.0のヒドロキシル基官能価を有する1つ以上のポリオールを、ポリオール成分100重量部当たり少なくとも18重量部、又は少なくとも20重量部含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、記載の発泡剤及び難燃剤のうちの1つ以上を含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、本明細書に記載の触媒、界面活性剤、防腐剤、顔料、着色剤、抗酸化剤、生物学的遅延剤、補強剤、安定剤、充填剤、及びこれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の成分を更に含み得る。特定の実施形態では、ポリオール成分は、触媒、界面活性剤、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上を更に含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、ASTM D2196に従って測定するとき、25℃で200cSt~38,000cSt、例えば、200cSt~35,000cSt、又は250cSt~35,000cStの粘度を有することができる。
【0049】
イソシアネート成分
本開示によるポリウレタンフォーム組成物に含まれるイソシアネート成分は、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールと反応する1つ以上のイソシアネート化合物を含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマー、イソシアネートプレポリマー、変性イソシアネート、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上であり得る。
【0051】
本明細書で使用するとき、「イソシアネートモノマー」は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物である。「芳香族イソシアネート」は、1つ以上の芳香環を含有するイソシアネートである。「脂肪族イソシアネート」は芳香環を含有していない。いくつかの実施形態では、イソシアネート化合物は、芳香族イソシアネートを含む。
【0052】
本開示による使用に好適なイソシアネートモノマーは、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本開示による使用に好適な芳香族イソシアネートの例としては、メチレンジフェニルジポリイソシアネート(「MDI」)の異性体、例えば、4,4-MDI、2,4-MDI、及び2,2’-MDI、又は変性MDI、例えば、カルボジイミド変性MDI若しくはアロファネート変性MDI;トルエン-ジポリイソシアネート(「TDI」)の異性体、例えば、2,4-TDI、2,6-TDI、ナフタレン-ジポリイソシアネート(「NDI」)の異性体、例えば、1,5-NDI、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本開示による使用に好適な脂肪族ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジポリイソシアネート(「HDI」)の異性体、イソホロンジポリイソシアネート(「IPDI」)の異性体、キシレンジポリイソシアネート(「XDI」)の異性体、メチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(「HMDI」)の異性体、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、イソシアネートモノマーは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるジイソシアネートモノマーを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物のイソシアネート成分は、任意の有機ポリイソシアネート、変性ポリイソシアネート、イソシアネート系プレポリマー、及びこれらの混合物を使用して調製することができる。これらには、脂肪族及び脂環式イソシアネートが挙げられ得るが、芳香族及び特に多官能性芳香族イソシアネート、例えば、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート並びに対応する異性体混合物;4,4’-、2,4’-、及び2,2’-ジフェニル-メタンジイソシアネート(MDI)並びに対応する異性体混合物;4,4’-、2,4’-、及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PMDI)との混合物;及びPMDIとトルエンジイソシアネートとの混合物が好ましい。最も好ましくは、本発明のプレポリマー配合物を調製するために使用されるポリイソシアネートは、MDI若しくはPMDI又はこれらのいずれかの粗混合物である。
【0054】
イソシアネート化合物は、上記のように、0.5:1~5:1の範囲内であるイソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比を得る量で使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、記載の発泡剤及び難燃剤のうちの1つ以上を含むことができる。
【0056】
イソシアネート成分は、本明細書に記載の触媒、界面活性剤、防腐剤、顔料、着色剤、抗酸化剤、生物学的遅延剤、補強剤、安定剤、充填剤、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上から選択される成分(複数可)を更に含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、ASTM D2196に従って測定するとき、25℃で150mPa・s~20,000mPa・s、150mPa・s~18,000mPa・s、又は200mPa・s~18,000mPa・sの粘度を有することができる。
【0058】
ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム組成物から形成され得る。
【0059】
一般に、ポリウレタンフォームは、(i)記載の(A)ポリオール成分及び(B)イソシアネート成分を含むポリウレタンフォーム組成物を提供することと、(ii)(A)ポリオール成分を(B)イソシアネート成分と混合することによって反応混合物を形成することと、(iii)反応混合物を、ポリウレタンフォームを形成するように反応、膨張、及び硬化するような条件に供することと、によって形成され得る。
【0060】
ポリオール成分は、上記のように、1つ以上のポリオールを含む。ポリオール成分に含まれる1つ以上のポリオールは、3~7の平均ヒドロキシル基官能価及び300~1000mgKOH/gの平均ヒドロキシル基数を有し、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォーム組成物は、ポリオール成分100重量部当たり50~95重量部の1つ以上のポリオール、例えば、ポリオール成分100重量部当たり55~95、60~95、65~90、又は70~90重量部の1つ以上のポリオールを含む。
【0061】
イソシアネート成分は、上記のように、ポリオール成分中の1つ以上のポリオールと反応する1つ以上のイソシアネート化合物を含む。1つ以上のイソシアネート化合物は、イソシアネート成分のポリオール成分に対するNCO/OH比が0.5:1~5:1の範囲内であるように含まれる。
【0062】
1つ以上の発泡剤は、ポリオール成分及びイソシアネート成分のいずれか又は両方に含まれる。いくつかの実施形態では、上記のように、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ジアルキルエーテル、若しくはフッ素置換ジアルキルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの物理発泡剤が含まれる。典型的には、発泡剤は、ポリオール成分100重量部当たり1~20重量部を構成する。
【0063】
更に、1つ以上の難燃剤が、ポリオール成分及びイソシアネート成分のいずれか又は両方に含まれる。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフォームに含まれる1つ以上の難燃剤は、非固体難燃剤から選択される。典型的には、ポリオール成分100重量部当たり1~40重量部の難燃剤が含まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、密閉空間内で反応、膨張、及び硬化して、その密閉空間内でポリウレタンフォームを形成する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、室温以上で反応、膨張、及び硬化される。
【0065】
いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、硬質である。
【0066】
いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、ISO527-2に従って標準雰囲気中で測定するとき、25℃で3.5MPa超の引張強度を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、ISO527-2に従って65℃の温度で測定するとき、65℃で1.0MPa超の引張強度を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、最終フォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤を含む。いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、形成されたフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤を含むことで、UL-94規格によるV0燃焼性要件を満たす。
【0069】
いくつかの実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、ASTM C518に従って測定するとき、23℃で0.05W/(m・K)未満の熱伝導率を有する。
【0070】
特定の実施形態では、本開示によるポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、ISO527-2に従って標準雰囲気中で測定された25℃での引張強度が3.5MPaより高く、ASTM C518に従って測定された熱伝導率が0.05W/(m・K)未満であり、形成されたフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤濃度においてUL-94規格によるV0燃焼性要件を満たす。別の特定の実施形態では、記載のポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームは、ISO527-2に従って測定された25℃での引張強度が3.5MPaより高く、65℃での引張強度が1.0MPaより高く、ASTM C518に従って測定された23℃での熱伝導率が0.05W/(m・K)未満であり、形成されたフォームの総重量に基づいて15重量パーセント以下の難燃剤濃度においてUL-94規格によるV0燃焼性要件を満たす。
【0071】
ポリウレタンフォーム組成物の適用
本開示は、記載のポリウレタンフォーム組成物を使用することによって製品(例えば、電池)をポッティングする方法を更に記載する。
【0072】
例示的な実施形態では、本方法は、(i)記載の(A)ポリオール成分及び(B)イソシアネート成分を含むポリウレタンフォーム組成物を提供することと、(ii)(A)ポリオール成分を(B)イソシアネート成分と混合することによって反応混合物を形成することと、(iii)反応混合物を製品の密閉空間に注入し、反応混合物を反応、膨張、及び硬化させることと、を含み得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、室温又は高温で反応、膨張、及び硬化される。
【0073】
いくつかの実施形態では、密閉空間は、金型、又は金型の空洞である。これらの実施形態では、反応混合物は、開口部を通して金型内に所望の密度まで注入することができ、開口部を閉じた金型内で反応、膨張、及び硬化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の個々の電池が金型内に設定され、注入される反応混合物は、電池間の間隙を充填するように企図される。金型は、離型が必要な場合、任意選択で45~65℃の温度に加熱される。すなわち、いくつかの実施形態では、反応混合物は、45~65℃で密閉空間に注入される。いくつかの実施形態では、金型は、反応中に真空制御下にある。注入重量は、典型的には200~450kg/m、好ましくは250~350kg/mの充填密度によって制御され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、離型は、必要な場合、反応開始から10~60分又は数時間後に行われる。
【0074】
本開示は、本明細書に記載のポリウレタンフォームを含む製品を更に提供する。いくつかの実施形態では、製品は、ポッティング材としてポリウレタンフォームを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、製品は、ポリウレタンフォーム組成物から形成された反応混合物を、製品の寸法を画定する密閉空間(例えば、金型)にポッティングし、任意選択の離型工程の前に、反応混合物を反応、膨張、及び硬化させることによって製造される。
【0076】
いくつかの実施形態では、製品は、本開示による製品をポッティングする方法を使用することによって製造される。
【0077】
製品をポッティングするための(記載の)ポリウレタンフォーム組成物の使用も本明細書に記載される。
【実施例
【0078】
次に、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において説明し、全ての部及び百分率は、別段明記されない限り、重量による。
【0079】
原材料
実施例で使用した原材料を、以下の表1に列挙し、説明する。
【表1】
【0080】
サンプル調製
ポリウレタンフォーム組成物を、以下の表2に列挙する配合に従って調製した。
【表2】

*pbw=重量部(ポリオール成分の重量に基づく)
【0081】
調製したサンプルの各々について、難燃剤は、ポリウレタンフォーム組成物の総重量に基づいて15重量パーセント以下の量で存在した。
【0082】
調製した組成物からのフォームの製造は、以下のように行った。
【0083】
ポリオール、難燃剤、界面活性剤、化学発泡剤、及び物理発泡剤を混合し、ブレンドポリオールを製造した。
【0084】
ポリオール組成物とイソシアネートとの反応性及びフリーライズ密度を、手動混合又はキャノン高圧機の使用によって調べた。
【0085】
手動の発泡プロセスは、実験室用ベンチミキサHeidolph PR32を用いて行った。原材料の温度を23±5℃に設定し、混合速度を2000~3000rpmに設定する。フリーライズフォーム組成物をカップに注ぎ、反応時間(クリーム、ゲル、タックフリー)を測定した。フォームは、典型的には15~20cmの高さに達した。表面のフォームを除去し、フォームを5×5×5cmの立方体に切断して、フリーライズ密度を測定した。
【0086】
高圧機の発泡プロセスは、20~25℃の原材料温度、70~100g/sの出力、及び130バールのポリオール/イソシアネート圧力で行った。プラスチック袋を備えた20×20×20cmの木箱にフリーライズフォームを注ぎ、反応時間(クリーム、ゲル、タックフリー)を測定し、フォームは典型的には15~25cmの高さに達した。表面のフォームを除去し、フォームを5×5×5cm又は10×10×10cmの立方体に切断して、フリーライズ密度を測定した。
【0087】
電池を用いない金型内発泡
混合したポリオール及びイソシアネートを、20×10×30cmの金型内に300kg/mの密度まで注入した。硬化後、物理的特性を評価した。
【0088】
電池を用いる金型内発泡
2~7層の円筒電池を金型内に取り付けた。
【0089】
金型及び円筒電池を、離型が必要な場合に推奨される45~65℃の温度に加熱した。
【0090】
混合したポリオール及びイソシアネートを、注入開口部で開放金型に注入し、次いで金型を閉じた。閉鎖金型注入の初期段階において、金型に接続されたパイプを介した真空制御は任意選択であった。注入重量を充填密度によって制御し、典型的には250~350kg/mの充填密度を適用した。充填密度は、電池パックの設計に応じて200~400kg/mに調整することができる。
【0091】
10~60分又は数時間後、電池パックを取り出した。
【0092】
金型温度は、迅速な離型又は高い生産効率にとって重要であることが見出された。迅速な離型性能に適した範囲として45~65℃の金型温度が見出され、高圧発泡機を用いて行った一連の実験後に確認された。
【0093】
性能評価及び分析
これらの配合物から調製されたフォームについて試験した性能を、以下の表3に列挙する。
【表3】
【0094】
測定情報
物理的特性を、ASTM規格又は同等の規格などの現在の一般的な試験方法に従って測定する。
【0095】
引張強度をISO527-2に基づいて測定し、熱伝導率をASTM C518に基づいて測定する。
【0096】
ポリウレタンフォームの難燃性をUL94に基づいて測定し、全ての試験片の厚さは13mmである。
【0097】
流動性挙動は、反応液及び混合ポリオールの粘度に関連する。それは以下のように評価される。
不良-緩慢な広がり及び高粘度。
良好-中程度の広がり及び中程度の粘度。
優良-迅速な広がり及び低粘度。
【0098】
電池ポッティング用途のためのポリウレタンフォームが満たすべき重要なパラメータとしては、以下のものが挙げられる。
・25℃での引張強度が3.5MPaを超える、
・UL-94規格によるV0燃焼性要件を満たす。
【0099】
CE1及びCE2
3官能性ポリオールVORANOL2070を単独ポリオールとして用いて製造したフォームは、配合物中のTCPPの濃度8%又は16%の両方で、引張強度規格及びV0燃焼性要件の両方を満たすことができなかった。
【0100】
CE2及びCE3
20%の4.3官能性ポリオールRN490をポリオール側に添加したとき、25℃での引張強度は著しく増加したが、必要とされる3.5MPaを下回った。この配合物は、V0燃焼性試験に合格した。
【0101】
CE3及びCE4
高官能性ポリオールRN490を一定に保ち、3官能性ポリオールの含有量を増加させる一方で、TCPPを8%に減少させると、25℃での引張強度は3.85MPa超に増加した。しかしながら、この配合物は、V0燃焼性基準を満たさなかった。
【0102】
CE5及びCE6
高官能性及び高OH#ポリオールRN482を使用し、ポリオール側に16%のTCPP又はTEPを加えた。両方とも引張強度要件には不合格であり、V0燃焼性試験には合格した。高官能性ポリオールを単独ポリオールとして使用したため、CE5及びCE6で製造されたフォームは脆く砕けやすく、その結果、低い引張強度が観察された。加えて、CE5及びCE6のポリオールブレンド粘度は、RN482の粘度が高いために非常に高かった。TEPは、TCPPと同様の燃焼性能を有する。TEPの粘度は、TCPPと比較して著しく低いが、反応液の初期流動を改善するのに十分なほど初期粘度を低下させなかった。したがって、電池間の間隙を充填するための流動加工性は、両方の実施例で不十分であった。
【0103】
IE1及びCE3
RN490の量を20%から25%まで増加したとき、IE1の25℃での引張強度は、(CE3と比較して)3.40MPaから3.69MPaまで増加し、したがって引張強度要件を満たした。
【0104】
予想どおり、IE1はV0燃焼性試験に合格した。
【0105】
この比較は、この系で必要な引張強度に達するのに必要とされるより高官能性のポリオールの最小含有量を示す。
【0106】
IE1及びIE2
高官能性ポリオールRN490を単独ポリオールとして使用したとき、より高い引張強度をもたらし、V0燃焼性試験にも合格した。
【0107】
IE2及びCE7
CE7は、高官能性ポリオールRN490を単独ポリオールとして用いても、ポリオール側にTCPPが8%しかないと、依然としてV0燃焼性試験に合格しなかったことを示した。これは、V0燃焼性等級を満たすために、適切な量の高官能性ポリオールRN490(CE3)及び適切な量の難燃剤(CE7)の両方が必要であることを示す。
【0108】
IE3及びCE5/CE6
低OH#及び低官能性ポリオールは、フォームの柔軟性を改善して引張強度を増加させるのに役立った。加えて、ブレンドポリオールの全体的な粘度の低下により、流動性が改善された。これらの実施例は、物理的フォーム特性と流動性とのバランスを示した。このバランスは、高OH#を有する純粋ソルビトール又はスクロース開始ポリオールと、2又は3官能性ポリオールとのブレンドによって達成された。
【0109】
IE4及びCE3
CE3で使用したVORANOL2070と比較して、IE4では代替として25%のポリエステルPS3152を使用したが、これは、より良好な25℃での引張強度をもたらし、V0燃焼性試験に合格した。
【0110】
概要
上記分析は、高官能性ポリオールの量が引張強度の増加と相関することを示す。難燃剤については、少なくとも20重量%の高官能性ポリオールを含有する配合物では、形成されたフォームがV0燃焼性試験に合格するために、ポリオール成分の重量に基づいて16重量%の含有量が必要であることが観察された。高官能性ポリオールを低官能性及び低OH価ポリオールと混合した場合に、良好な性能(引張強度、燃焼性、加工性)が達成された。ポリエステルポリオールはまた、2~3官能性ポリオールの代替として引張強度を増加させ、V0燃焼性能を改善することができる。
【0111】
これらの結果から、3~7の範囲の平均官能価及び300~1000の範囲のヒドロキシル基価を有する1つ以上のポリオールを含むポリオール成分を有する本開示によるポリウレタンフォーム組成物は、イソシアネート成分と混合されて、25℃で>3.5MPaの引張強度を有し、かつV0難燃性要件を満たす、ポリウレタンフォームを製造し、これは、ポッティング用途、例えば、電池エネルギー密度の改善が望まれる電池ポッティング用途に有利に使用されることが示唆される。
図1
【国際調査報告】