(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20240229BHJP
A61F 2/32 20060101ALI20240229BHJP
A61F 2/38 20060101ALI20240229BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20240229BHJP
A61F 2/34 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61F2/30
A61F2/32
A61F2/38
A61F2/44
A61F2/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023555273
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 FI2022050165
(87)【国際公開番号】W WO2022195165
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511185553
【氏名又は名称】スクレ インプランツ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】ペッカ バリッツ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097AA04
4C097AA05
4C097AA06
4C097AA07
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC14
4C097CC20
4C097DD01
4C097DD11
(57)【要約】
本発明は、繊維強化複合材料で作られ骨と等弾性を有する非金属構造部分(4、38、73)を備えるインプラント(1、30、50、70)に関する。
インプラントはまた、構造部分に関連して配置された第1の基準応力レベルセンサー(6、31、51、76)と、構造部分の表面に配置された第2のオッセオインテグレーションレベルセンサー(7、32、52、77)とを備え、および、インプラントのオッセオインテグレーション中に骨に付着することが可能である。
【選択図】
【
図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 骨と等弾性特性を有する繊維強化複合材料で作られた非金属構造部分と(4、38、73)、
- 前記構造部分に関連して配置された第1の基準応力レベルセンサーと(6、31、51、76)、および
- 前記構造部分の表面に配置され、インプラントのオッセオインテグレーション中に骨に取り付けられる性能を有する第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーと(7、32、52、77)を備えるインプラント(1、30、50、70)。
【請求項2】
前記インプラントは、前記構造部分(4、38、73)の表面上に配置された第3のセンサー(8、33)をさらに備える、請求項1に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項3】
前記第3のセンサーは、前記第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーと正反対に位置し、インプラントのオッセオインテグレーション中に骨結合中に骨に取り付けられることができるオッセオインテグレーションレベルセンサー(8、33)である、請求項2に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項4】
前記第2のオッセオインテグレーションレベルセンサー(7、32、52、77)および選択的な前記第3のオッセオインテグレーションセンサー(8、33)は応力レベルセンサーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項5】
各応力レベルセンサーが、応力ゲージ、微小電気機械センサー、ピエゾ抵抗センサー、および受動共振器ベースのセンサーからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項6】
前記インプラントは、前記構造部分(4、38、73)の表面上に配置された生化学センサー(34、78)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項7】
前記生化学センサーがpHセンサーである、請求項6に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項8】
前記インプラントが、骨折固定プレート、人工股関節の大腿骨ステム(4)、人工股関節(1)、人工膝関節(70)、髄内釘、椎骨固定インプラント、形成外科用インプラント、顎骨インプラント、頭蓋インプラント、歯科用インプラント、または伸延器である請求項1~7のいずれか一項に記載のインプラント(1、30、50、70)。
【請求項9】
前記インプラントは人工股関節(1)であり、
- 前記第1の構造部分は大腿骨ステム(4)であり、
- 前記第1の基準応力レベルセンサー(6)は、大腿骨ステムの軸上(12)で大腿骨ステムの内側に配置され、
- 前記第2のオッセオインテグレーションレベルセンサー(7)は、大腿骨ステムの側面の表面に配置され、および、
- 選択的な前記第3のオッセオインテグレーションレベルセンサー(8)は、大腿骨ステムの内側の表面に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項10】
寛骨臼カップ(3)である第2の構造部分をさらに備える、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記インプラントは椎間板(50)であり、
- 前記第1の基準応力レベルセンサー(51)は、前記構造部分の第1の表面上に配置され、該第1の表面は前記構造部分の外側遠位表面であり、および、
- 前記第2のオッセオインテグレーションレベルセンサー(52)は、前記構造部分の第2の表面上に配置され、該第2の表面は椎体(54)に面するように配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
前記インプラントは人工膝関節(70)であり、
- 前記第1の構造部分は、脛骨ベースプレート(73a)と脛骨ステム(73b)とを含む脛骨コンポーネント(73)であり、前記脛骨ステムは脛骨軸(79)を画定し、
- 前記第1の基準応力レベルセンサー(76)は、前記脛骨ステムの表面に、基本的に前記脛骨軸と平行に配置され、
- 前記第2のオッセオインテグレーションレベルセンサ(77)は、前記脛骨ベースプレートの表面上に配置され、その表面は前記脛骨軸に対して本質的に垂直で、前記脛骨ベースプレートとは反対側の側面に配置され、および、
- 選択的なpHセンサー(78)は、前記脛骨ベースプレートの表面に配置され、その表面は前記脛骨軸に対して90°異なる角度にある、請求項1~8のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項13】
大腿骨コンポーネント(71)である第2の構造部分と、スペーサ(75)である第3の構造部分とをさらに備える請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
- 請求項1~13のいずれか一項に記載のインプラント(1、30、50、70)と、および、
- コンピュータ実行可能命令を含む少なくとも1つの処理コアとメモリを含み、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記メモリおよび少なくとも1つの前記処理コアとともに、インプラントシステムに前記センサーから受信した測定結果を処理させるように構成されている、インプラントシステム。
【請求項15】
コンピュータ実行可能命令を含む少なくとも1つの処理コアおよびメモリがモバイル装置中に含まれる、請求項14に記載のインプラントシステム。
【請求項16】
前記モバイル装置は、前記測定結果の処理の結果をデータベースに送信し、および、分析結果に変化があった場合に警報を発するように構成されている、請求項15に記載のインプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、整形外科手術に有用なインプラントに関する。本発明は、本インプラントを含むインプラントシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科用インプラントは、欠損した関節や骨を置き換えたり、損傷した骨をサポートしたりするために製造される医療機器である。これらのインプラントは通常金属でできており、骨格の損傷した部分の機能を維持するように設計されている。現在使用されているインプラントは長期的にも良好な効果をもたらすが、場合によっては合併症を引き起こす可能性もある。例えば、転子周囲の整形外科的修復のうち最大10%が固定の失敗により失敗すると報告されている。同様の問題は、特に脛骨コンポーネントの全膝置換インプラントでも発生している。
【0003】
応力遮蔽および過負荷は、インプラントに使用される金属の弾性率(チタン-バナジウムの弾性率は120GPa、コバルト-クロムの弾性率は210GPa)と、これに比べてかなり低い骨の弾性率(骨および骨の部分によって異なるが、通常は10~20GPa)との不一致によるものと考えられている。
【0004】
骨修復インプラントの場合、最も深刻な合併症はインプラントの緩みである。インプラントが周囲の骨から緩むのは、周囲の骨の応力遮蔽や過負荷による無菌的な緩みでありうる、または、インプラント周囲の感染症が原因でありうる。インプラントの緩みの診断には、医療画像技術が使用される。しかし、高精度の医用画像システムを使用しても、インプラントの緩みの極めて初期段階では検出することはできない。もう1つの潜在的な問題は、骨折や層間剥離によるインプラントの破損であり、これは放射線学的に、またはインプラント内のセンサーによって制御されうる。
【0005】
生体内での、組織の病理学的プロセスを検出するためのセンサーの組み込みの可能性をテストするいくつかの試みが行われてきたが、新しい技術の多くの課題に直面している。
複雑な電子機器を備えたシステムの場合、消費電力、システムのサイズと堅牢性、さらにコストは、周囲の組織の情報およびインプラントの組織へのオッセオインテグレーションのような統合を提供できるインプラントの開発を制限してきた。
センサーに関する別のグループの課題は、高弾性率材料の硬いインプラント構造とセンサーのインプラント構造への組み込みに関連する。
硬いインプラント構造は、生理学的負荷、つまり体重や通常の動きの影響下での、金属インプラントの曲がりや歪みを阻止する。
このため、現在使用されている構造的に硬い金属インプラントは、インプラントのさまざまな領域、および、それらのおそらく異なる応力レベルを観察するためにモニタリングすることができない。
さらに、金属インプラントは、ファラデーケージ効果により、無線周波数で信号を自由に送信することができない。
【0006】
米国特許公開第2019/192198号には、多層の繊維強化複合材料で形成された内部コアとシャフトを含む整形外科用固定装置が記載されている。感知要素は、多層の繊維強化複合材料内に埋め込まれている。
この装置では、感知要素は、装置内に埋め込まれているため、従ってオッセオインテグレーション中に骨へ取り付けることができない。
さらに、この感知要素は、固定装置自体の状態、すなわち繊維強化複合材の層間剥離の状態を感知するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2019/192198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の目的と概要)
本発明の目的は、上に列挙した欠点を有さない、または少なくともそれらの欠点の少なくとも一部が軽減されるインプラントを提供することである。
具体的には、本発明の目的は、継続的に監視されうる、または、インプラントの耐用年数を通じて、周囲環境との統合を効率的かつ確実に監視されうる、例えば、股関節インプラント、膝インプラントまたは脊椎インプラントなどのインプラントを提供することである。
さらなる目的は、移植後のオッセオインテグレーションを監視することができ、骨溶解(osteolysis)、すなわち緩みも早期段階で検出できるインプラントを提供することである。
さらに別の目的は、炎症または感染の兆候について周囲の組織の状態を監視可能なインプラントを提供することである。
さらに別の目的は、使用時にインプラントを取り囲む骨と等弾性を有するインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書による典型的なインプラントは、
- 骨と等弾性特性を有する繊維強化複合材料で作られた非金属構造部分と、
- 前記構造部分に関連して配置された第1基準応力レベルセンサーと、および
- 前記構造部分の表面に配置され、インプラントのオッセオインテグレーション中に骨に取り付けられる性能を有する第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーと、を備える。
【0010】
本明細書による典型的なインプラントシステムは、
- 本明細書に記載されているインプラントと、および
- 少なくとも1つの処理コアとコンピュータ実行可能命令を含むメモリを含み、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記メモリおよび少なくとも1つの前記処理コアとともに、インプラントシステムに前記センサーから受信した測定結果を処理させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態による股関節インプラントを概略的に示す。
【
図2】
図2は、第1の実施形態による股関節インプラントの時間関数の様々なセンサーにおける応力レベルを示す。
【
図3】
図3は、第2の実施形態による股関節インプラントを概略的に示す。
【
図4】
図4は、第2の実施形態による股関節インプラントの時間関数の様々なセンサーにおける応力レベルを示す。
【
図5】
図5は、第3の実施形態による脊椎インプラントを概略的に示す。
【
図6】
図6は、第3の実施形態による脊椎インプラントの時間関数の様々なセンサーにおける応力レベルを示す。
【
図7】
図7は、第4の実施形態による膝インプラントを概略的に示す。
【
図8】
図8は、第4の実施形態による膝インプラントの時間関数の様々なセンサーにおける応力レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、硬化とは、重合および/または架橋を意味する。
マトリックスとは、組成物の連続相であると理解され、未硬化マトリックスとは、変形可能な状態にあるが、本質的に変形不可能な状態まで硬化、すなわち硬化できるマトリックスを意味する。
未硬化マトリックスはすでにいくつかの長鎖を含んでいる可能性があるが、本質的にはまだ重合および/または架橋はされていない。
本明細書において、重合は、自動重合、光重合、熱重合、超音波またはマイクロ波重合などの任意の既知の方法によって実施することができる。
樹脂の硬化により複合材料が得られ、硬化した樹脂がマトリックスを形成する。
【0013】
インプラントという用語は、本文中一般的用語として用いられ、プロテーゼ、骨取り付けプレートなどのさまざまな埋め込み可能なデバイスについて説明する。
【0014】
等弾性(isoelasticity)とは、人骨と同様の弾性率を有する材料を意味する。弾性率は、海綿骨では14.8GPa、皮質骨では20.7GPaと考えられている。例えば、等弾性は、弾性率が、インプラントが配置される骨の弾性率の+/-25%、+/-10%、または+/-5%以内であることを意味し得る。ガラス繊維強化複合材は、皮質骨の弾性率の範囲内の弾性率を有し得る。
例えば、熱硬化性ポリマーマトリックスを有する連続一方向ガラス繊維強化複合材料は、25.5GPaの弾性率を有することが知られており、弾性率は繊維の割合に関係すると考えられている(J Biomed Mater Res 2006;76:98-105)。
モデリングと動物研究により、繊維強化複合材料と骨の等弾性挙動が示されている(Med Eng Phys 2009;31:461-469)。
【0015】
本明細書による典型的なインプラントは、
- 骨と等弾性特性を有する繊維強化複合材料で作られた非金属構造部分と、
- 前記構造部分に関連して配置された第1基準応力レベルセンサーと、および
- 前記構造部分の表面に配置され、インプラントのオッセオインテグレーション中に骨に取り付けられる性能を有する第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーと、を備える。
【0016】
本明細書にかかるインプラントは、非金属インプラント材料、すなわち、例えば、繊維強化複合材料で作られたインプラント、および、インプラントにかかる応力を測定する適切に配置されたセンサー、の組み合わせを利用する。応力は圧縮または牽引であり得る。
したがって、インプラントは、骨との等弾性特性を有し、およびインプラント内の応力レベルを検出するために挿入された少なくとも2つのセンサーを含む非電磁シールド材料を含む。
応力レベルは、オッセオインテグレーション、つまり移植後にインプラントが周囲の骨にどの程度適切に、そしていつ取り付けられるかという情報を提供する。
一旦インプラントが骨に取り付けられると、応力レベルの変化は骨溶解、つまり骨からのインプラントの剥離を示す。
センサーはワイヤレスで読み取ることができるため、インプラントの状態を簡単かつ安全に監視できると同時に、インプラントの緩みを早期に検出することができる。
上述のとおり、緩みは、インプラント材料が骨とは異なる弾性率を有するという事実との組み合わせで、オッセオインテグレーションセンサー上およびインプラントの中のさまざまな場所にかかる異なる応力によって引き起こされると考えられている。本明細書では、繊維強化複合材料は骨と等弾性である。
これは、骨の弾性特性が骨によって、場合によっては特定の骨の部分によって異なるため、複合材料が特定の用途ごとに設計されていることを意味する。
インプラントは軟組織と接触するように設計することもでき、その場合、応力レベルは、軟組織の弾性特性に対する機能に応じて変化する。
したがって、インプラントは、整形外科、脊椎、頭蓋、顎顔面、または形成外科インプラントなどの任意の骨修復インプラントであり得る。
【0017】
センサーはしたがって、通常、例えば、最低レベルの物理的応力(中立軸)及び最高レベルの応力(表面)等の、インプラント内またはインプラント上の異なる応力レベルの場所に配置され、センサーからの信号を比較することで、インプラント自体が重さによる荷重にどの程度耐えているか、またオッセオインテグレーションによって周囲の骨構造が荷重にどのように耐えているかを監視することができる。
つまり、インプラント自体が隣接する骨に良好に付着しながら歪み、曲がりまたは圧縮されている場合は、インプラントがまだ骨治癒段階にある場合や、以前に一体化されたインプラントが緩んできている場合とは信号が異なる。
一方、インプラント自体の表面にあるセンサーは、骨へのオッセオインテグレーションのレベルに基づいてインプラントの応力レベルを監視する。
オッセオインテグレーションセンサーの応力は、張力、圧縮、せん断、またはそれらの組み合わせのいずれかになりうる。
【0018】
したがって、前記インプラント(本明細書では「インプラント」とも呼ばれる)は、両方とも応力センサーである少なくとも2つのセンサーを備える。
第1のセンサーは、第1の基準応力レベルセンサー(本明細書では簡潔にするために「第1センサー」とも呼ばれる)と呼ばれ、用途に応じて、つまりインプラントの種類に応じて、構造部分の内部または外表面に配置される。
この第1センサーは、第2センサーの測定値と比較される基準レベルを提供する。第1センサーが構造部分の内部に配置される場合、通常、インプラントにかかる応力が時間、オッセオインテグレーションおよび/または骨溶解の関数として変化しない位置である、構造部分の中心軸上に配置される。
このような場合、第1センサーからの応力の測定値は基本的に一定である。
他のいくつかの場合、例えば脊椎ケージインプラントの場合、第1の基準センサーはわずかに異なる機能を有していてもよく、これについては以下でより詳細に説明する。
したがって、インプラントの種類に応じて、基準応力レベルセンサーをインプラントの表面に配置してもよい。
【0019】
インプラントはまた、構造部分の表面に配置された第2のオッセオインテグレーションレベルセンサー(簡潔にするため、この説明では「第2センサー」とも呼ばれる)を備える。
インプラントに応じて、インプラントが骨に取り付けられているかどうかによって応力レベルが異なる位置に第2センサーが配置される。
さらに、第2センサーは、そのオッセオインテグレーションのレベルを監視することを目的とする。
したがって、第2センサーの露出表面は、インプラント本体の表面と同様に生体活性を有する。
【0020】
第1センサーおよび第2センサーの両方、ならびに任意のさらなるセンサーは、測定結果を無線で送信するように構成されることが好ましい。
理想的には、両方のセンサーは外部電源を必要としないものであるか、インプラントの耐用年数が続くことが期待できる電源を備えているものである。
当然のことながら、インプラントのすべてのコンポーネントは生体適合性を持っていなければならない。
いくつかの実施形態では、応力センサーは、測定結果の読み出し中に無線で電力を供給される。
例えば、応力センサーは、測定結果の提供を可能にする近距離無線通信(NFC)または無線周波数識別(RFID)機能を備えることができ、また任意選択でセンサーの無線給電も可能にする。
様々な実施形態における応力センサーに適用可能な無線通信技術のさらなる例には、Bluetooth(登録商標)およびBluetooth-low Energy(登録商標)(BTLE)が含まれる。
【0021】
好ましくは、インプラントおよび第2センサーは、物理的および化学的相互作用の両方によって骨に取り付けられる。
物理的な取り付けは通常、インプラントの表面を粗化することに基づいており、骨との摩擦を生じさせて取り付けを実現する。
化学的結合には通常、インプラントに生物活性成分(複数可)を使用する必要がある。
典型的には、インプラントのそのようなコーティングは、生物活性ガラス粒子またはゾルゲルコーティングを含む。
他の一般的な生物活性化合物は、ヒドロキシルアパタイト、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウムなどのリン酸カルシウムである。
繊維強化複合材料は、皮質骨と同じ弾性率を有するように設計されることが好ましく、すなわち、皮質骨と等弾性である。さらに、インプラントの設計は、骨格の構造をシミュレートすることが好ましい。
これらの側面により、例えば、歩行時に骨にかかる応力は、骨結合界面を介して等弾性インプラントに伝達され、インプラントは自然の骨や関節と同様に機能する。
したがって、インプラントが隣接する骨にオッセオインテグレーションする際、インプラントとセンサーにおける応力レベルは時間とともに変化する。
骨溶解、つまりインプラントの緩みが起こった場合にも同じことが当てはまる。少なくともいくつかの実施形態では、第2センサーは、第2センサーが取り付けられるインプラントの部分においてインプラントの長さ軸に平行な方向の応力を測定するように配置される。
【0022】
一実施形態によれば、インプラントは、構造部分の表面上に配置された第3センサーをさらに備える。第3センサーも測定結果をワイヤレスで送信するように構成される。
第3センサーは、追加の応力センサー、または、骨溶解または他の生理学的または病理学的プロセスの指標としてインプラントおよび/またはセンサーと骨の界面のpHを測定するpHセンサーなどの生化学的センサーであってもよい。
特に追加の応力センサーである場合、第3センサーは第2センサーと正反対に配置されてもよい。
【0023】
3つのセンサーを使用すると、インプラントおよび骨とインプラントの界面の異なる位置でのインプラントの曲げ、歪み、オッセオインテグレーション、およびpHを測定することが可能になる。
骨に結合した後(つまり、インプラントの骨結合後)、体重や動きによって荷重がかかると、骨や骨格の隣接部分がインプラントに歪みを与えるため、等弾性インプラントは歪み始める。
骨が治癒し、インプラントがオッセオインテグレーションすると、インプラント表面のpHは通常7.35~7.45である。
【0024】
一実施形態によれば、第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーおよび任意の第3センサーは、インプラント周囲組織における生化学反応を監視するためのセンサーである。
【0025】
応力レベルセンサーは、応力ゲージ、微小電気機械センサー(MEMS)、ピエゾ抵抗センサー、および受動共振器ベースのセンサーからなるグループから選択することができる。
好ましくは、センサーは無線であり、電池または他の外部エネルギー源なしで機能し、電気接続も必要としない。典型的には、センサーのサイズも小型である。
センサーは、アンテナ-SAW-共振器システム(SAW=表面弾性波)であってもよい。センサーは、サファイア、酸化アルミニウム、ダイヤモンド状カーボンなどのコーティングで被覆可能である。
コーティングは、例えば原子層堆積(ALD)が適用されてもよい。ダイヤモンド状炭素コーティングはナノコーティングであってもよい。このコーティングは、追加の生体活性コーティングによる気密封止と生体適合性のために使用される。
【0026】
上述のとおり、高精度医用画像システムを使用しても、非常に初期段階のインプラントの緩みは検出できないが、インプラントの緩みの初期の兆候は、インプラントと骨の接触および付着の観察、または分子マーカーおよび/または局所的な炎症や感染反応の兆候としてのpHの変化の検出によって検出可能である。
しかしながら、周囲の骨にさらなる損傷を与える前に、インプラントの緩みを早い段階で検出できることが好ましいため、これらの問題に対するさらなる解決策が必要である。
実際、インプラントが緩むと感染のリスクが高まり、感染によりその後の交換手術が大幅に困難になる可能性がある。
【0027】
したがって、別の実施形態によれば、インプラントは、構造部分の表面に配置されたpHセンサーなどの生化学センサーをさらに備え、生化学センサーは測定結果を無線で送信するように構成されている。
実際、1以上のセンサーを使用して、骨の治癒およびインプラントの取り付けまたは緩みに関連する物理的ストレス以外のパラメータも検出および測定することができる。
例えば、生化学センサーは、インプラント界面でのpHを監視したり、または、例えば、インプラント界面のpHを示す特定のバイオマーカーの存在、すなわちマクロファージの活動、を監視したりしてもよい。
無菌状態でまたは微生物感染によりインプラントが緩むと、組織のpHは生理学的レベル(7.35~7.45)から酸性(6.8~6.9)に低下する。したがって、pH変化はインプラント診断における追加情報として使用しうる。
pHセンサーは、pH、イオン、抗原、温度、グルコースなどの化学刺激の測定に外部電源を必要としないため、ハイドロゲルベースのセンサーにすることができる。
ハイドロゲルセンサーは、特に頭蓋インプラントにおいて重要な骨化のレベルや微生物感染の兆候に関する情報も提供してもよい。
生化学センサーのハイドロゲルのモニタリングは、超音波を利用してワイヤレスで行うことができる。
センサーインターフェースで反射された超音波は、オシロスコープに接続された送信トランスデューサーによって捕捉してもよい。
【0028】
一実施形態によれば、インプラントは、骨折固定プレート、人工股関節の軸、人工股関節、膝プロテーゼ、髄内釘、椎骨間融合インプラント、形成外科用インプラント、顎骨インプラント、頭蓋インプラント、歯科インプラントまたは伸延器である。椎骨間融合インプラントは、脊椎固定ケージと呼ばれることもある。
【0029】
歩く、走る、特に座位から立ち上がるなどの単純な日常動作では、インプラント-骨システムに対して異なる力のベクトルがかかることになる。
股関節インプラントの場合、インプラント表面に最も近い骨梁が人間の大腿骨近位部の総荷重の54%を支え、荷重の46%が皮質骨によって支えられる。
応力の種類、位置、大きさはインプラント-骨構造の部分によって異なる。たとえば、大腿骨では軸方向の荷重により、内側が圧縮応力を受けるのに対し、側部は引張応力を受ける。
【0030】
椎骨間融合インプラント手術における脊椎融合ケージインプラント挿入後の最も重要な臨床課題の1つは、いつ強固な骨融合が起こったかを判断することである。脊椎にかかる力は大きく動的であり、体重の4.7倍を超える筋収縮力を伴う。したがって、インプラント自体の負荷分散を示すインプラントに関するすべての情報は、手術後の通常の日常生活の開始のタイミングを決めるのに有益である。
【0031】
変形性膝関節症(Osteoarthritis)は一般的な筋骨格系の病状であり、全膝関節形成術によって外科的に治療される。全膝関節形成術では、大腿骨遠位部(distal femur bone)と脛骨近位部(proximal tibia)が切除され、通常はポリエチレンの関節コンポーネントを備えたインプラントと置き換えられる。インプラントには、歩行時には体重の約1.8~2.6倍、ジョギング時には体重の4倍の力がかかる。
全膝関節形成術の合併症の発生率は比較的低いものの、インプラントの緩みは時々観察されるため、膝インプラントも注意深く監視できると有益である。
【0032】
頭蓋インプラントの場合、インプラントが所定の位置に配置された後、インプラントに影響を及ぼす可能性のある打撃や衝撃を受けていないかどうかを監視する必要がある場合がある。本センサーはこの目的に使用できる。同様に、頭蓋インプラントに対する感染や炎症の影響も監視することが有益である。
【0033】
特定の実施形態によれば、インプラントは人工股関節であり、
- 第1の構造部分は大腿骨幹であり、
- 第1の基準応力レベルセンサーは、大腿骨ステムの軸上で大腿骨ステムの内側に配置され、
- 第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーは、大腿骨ステムの側面の表面に配置され、および、
- 選択的な第3のオッセオインテグレーションレベルセンサーは、大腿骨ステムの内側の表面に配置される。
【0034】
このような人工股関節は、寛骨臼カップである第2の構造部分をさらに備えていてもよい。
【0035】
別の特定の実施形態によれば、インプラントは椎間板であり、
- 第1の基準応力レベルセンサーは、構造部分の第1の表面上に配置され、該第1の表面は構造部分の外側遠位表面(a lateral distal surface)であり、および、
- 第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーは、構造部分の第2の表面上に配置され、第2の表面は椎体に面するように配置される。
【0036】
外側遠位表面は、したがって、インプラントが所定の位置に配置され、患者が立っているとき、本質的に垂直であり、人の身体の後方を向いている面である。この状況では、第2の面は水平面である。
【0037】
さらに別の特定の実施形態によれば、インプラントは人工膝関節であり、
- 第1の構造部分は、脛骨ベースプレートと脛骨ステムとを含む脛骨コンポーネントであり、脛骨ステムは脛骨軸を画定し、
- 第1の基準応力レベルセンサーは、脛骨ステムの表面に、基本的に脛骨軸と平行に配置され、
- 第2のオッセオインテグレーションレベルセンサーは、脛骨ベースプレートの表面上に配置され、その表面は脛骨軸に対して本質的に垂直で、脛骨ベースプレートとは反対側の側面に配置され、および、
- 選択的pHセンサーは、脛骨ベースプレートの表面に配置され、その表面は脛骨軸に対して90°異なる角度である。
【0038】
この実施形態では、人工膝関節は、大腿骨コンポーネントである第2の構造部分と、スペーサである第3の構造部分とを備えることもできる。
【0039】
インプラントの構造部分は均一な構造を持っていてもよく、または、それが置換する骨あるいは関節を模倣する構造を持っていてもよい。
例えば、人工股関節の場合、大腿骨ステムは、そのコアとして、骨と等弾性特性を有する比較的薄い金属部分を有していてもよい。インプラントの構造部分は、均一な構造および均一な特性を有することが好ましい。
インプラントの表面は、多孔質であっても非多孔質であってもよく、非多孔質とは、移植部位に存在する流体に対して本質的に不透過性の材料を意味する。
表面層が多孔質である、すなわち穿孔されている場合(その材料に起因して、またはその製造中の特定の穿孔ステップの後のいずれかによる)、その多孔度は、例えば、その平均細孔径が0.8~500マイクロメートルであるようなものである。
インプラントの表面は、インプラント内の特定の深さまで(例えば、インプラントの表面からそのコアに向かって0.5~5.0mm)、例えば平均細孔径が100~1000マイクロメートルの連続気孔率を有する多孔質であってもよい。
多孔性は、細胞外液および細胞が多孔性部分に浸透し、骨、血球、およびその他の組織の内方成長を可能にするようなものである。
内骨への適用に最適な孔径は、骨の内方成長を考慮すると100~500マイクロメートルであるが、多孔質部分には任意選択的にさらに大きな孔も含まれていてもよい。
【0040】
インプラントの構造部分は、たとえば焼結、レーザー焼結、適切な材料の成形、エレクトロスピニング、3Dプリンティング、フィラメントワインディング、ラミネート加工、またはフライス加工によって製造してもよい。
一実施形態によれば、これらのインプラントの製造技術は、骨の構造および機械的要件を最適にシミュレートする繊維強化複合材料層の積層などの、デジタル技術および積層造形プロセスの使用に基づいている。
【0041】
インプラントに最適な等弾性材料は繊維強化複合材料である。
好ましい強化繊維は、ガラス、カーボン、グラファイト、ポリエチレン、アラミド、ポリスチレン、またはリジッドロッドポリマー(RRP)などの非金属繊維である。
マトリックスは、好ましくは、アクリレート、エポキシ、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、またはポリエステルの生体安定性ポリマーマトリックスである。他の適切な材料を以下に列挙する。
【0042】
インプラント材料に使用される生体活性ガラスの適切な一例は、ガラスS53P4であり、これは、53%のSiO2、23%のNa2O、20%のCaOおよび4%のP2O5の組成を有する吸収性生体活性ガラスである(例えば、BonAlive Biomaterials Ltd、フィンランド、トゥルクから入手可能)。
骨への良好な付着を可能にするために、インプラントの表面に特に有用である可能性がある。
【0043】
繊維は、それ自体公知の任意の適切な繊維であってよく、例えば、以下からなる群から選択される。
不活性ガラス繊維、シリカ/石英繊維、カーボン/グラファイト繊維、不活性セラミック繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維(リジッドロッドポリマー繊維)、ポリエチレン繊維、テフロン(登録商標)繊維などのポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリ(2,6-ジイミダゾ(4,5-b4’,5’-e)ピリジニレン-1,4(2,5-ジヒドロ)フェニレン繊維、ポリオレフィン繊維、オレフィンの共重合体から製造された繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維およびそれらの混合物。
ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維およびポリ(2,6-ジイミダゾ(4,5-b4’,5’-e)ピリジニレン-1,4(2,5-ジヒドロ)フェニレン繊維は、リジッドロッドポリマー繊維と呼ばれるグループに属する。
所望の機械的特性を達成するために前記繊維とマトリックスとの間に適切な接着を得ることが可能であり、かつ繊維が生体適合性であるという条件で、他の任意の既知の繊維を本発明に使用することができることは当業者にとって明らかである。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、繊維は不活性ガラス繊維からなる群から選択される。
別の実施形態によれば、ガラス繊維は、Eガラス、Sガラス、Rガラス、Cガラス、または生物活性ガラス組成物から作られる。
【0045】
さらに別の実施形態によれば、繊維の直径は4~25μmである。
繊維の直径は、例えば、3、5、6、10、15、20、25、30、40、45、50、60、70または80μmから、5、6、10、15、20、25、30、40、45、50、60、70、80、90または100μmまででありうる。
ナノメートルスケールの繊維、つまり断面直径が200~1000nmの間で変化する繊維をも使用しうる。
【0046】
繊維は、繊維織物または繊維マットの形態であってもよく、2方向、3方向、4方向またはそれらのランダムな方向に配向していてもよい。
【0047】
複合材料のマトリックスは、以下からなる群から選択されるモノマーからなる樹脂で作ることができる;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸モルホリノエチル、ジウレタンジメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、メタクリレート官能化デンドリマー、その他のメタクリル化多分岐オリゴマー、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンジメタクリレート、エチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、スターバーストメタクリル化ポリエステル、多分岐メタクリル化ポリエステル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジ-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ)フェニル)プロパン(BisGMA)、2,2’-ビス(4-メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシフェニル)]プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)-プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシ-プロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)-プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリレート]プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリレート]プロパン、ポリエーテルエーテルケトンおよびそれらの混合物。
【0048】
マトリックスは当然、モノマー(複数可)とポリマー(複数可)の混合物から構成されていてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、マトリックス材料はアクリレートポリマーである。
別の実施形態によれば、マトリックス樹脂は、置換および非置換のジメタクリレートおよびメタクリレートからなる群から選択される。
特に有利なマトリックス材料(モノマー)には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸官能化デンドリマー、ジメタクリル酸グリシジル(bis-GMA)、ジメタクリル酸トリエチレングリコール(TEGDMA)、およびジメタクリル酸ウレタン(UDMA)などがある。
これらの材料は混合して使用することができ、相互侵入高分子網目(IPN)を形成することができる。
また、薬物のような接触効果を可能にする生物活性分子で官能基化してもよい。
樹脂系の放射線不透過性を高める上でさらなる利点を提供するヨウ素を含む抗菌性側基による樹脂系の修飾も含む、モノマーとポリマーの組み合わせも使用に適している。
【0050】
インプラントおよびオッセオインテグレーションセンサーは、表面に改質剤粒子が存在する場合には、多孔質部に改質剤粒子をさらに含むことができる。
これらの改質剤粒子は、例えば生物活性であり、および、例えばインプラントおよび表面位置応力センサーの骨伝導性、骨誘導およびオッセオインテグレーションを改善することができる。粒子は、粒子状充填剤または繊維の形態であってもよい。
一実施形態によれば、改質剤粒子は、生物活性セラミックス、シリカゲル、チタンゲル、シリカキセロゲル、シリカエアロゲル、ナトリウムシリカガラス、チタンゲル、生物活性ガラスアイオノマー、Ca/Pドープシリカゲル、及びそれらの混合物からなる群から選択される。当然のことながら、前記材料の任意の組み合わせを使用することもできる。
【0051】
インプラントはさらに、金属酸化物、セラミック、ポリマーおよびそれらの混合物などの追加の粒子状充填材を含んでもよい。
金属酸化物は、例えば、放射線またはX線を透過しない材料として、または着色材料として使用され得る。
充填材を選択するときは、センサーからの信号の送信を妨げないことに留意すべきである。
【0052】
インプラントの多孔質表面部分は、それが存在する場合、治療上活性な薬剤または幹細胞などの細胞、成長因子および/またはシグナル伝達分子などのタンパク質を含んでもよい。
造血骨髄細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、再生細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪幹細胞などの幹細胞を含む数種類の細胞がインプラントに播種されうる。胚性幹細胞はヒト由来のものであっても、そうでないものでもよい。
インプラントに播種された幹細胞は、形成された組織を最終的な場所に挿入する前に、または再生および再建治療が必要な場所に直接挿入する前に、体外のバイオリアクター内、体の他の部分で培養可能である。
【0053】
インプラントおよびその骨への取り付けに関するより詳細な情報を受信するために、表面に配置された応力センサーを、実際のインプラント表面と同じ生理活性物質で覆うことができる。生体活性性を介して、骨はインプラントおよびセンサー表面に取り付けられ、センサーは信号を測定および送信し、この信号をより確実に骨の治癒と骨の付着を決定するために使用しうる。
インプラントとセンサー表面が骨から緩んでいる場合、応力のレベルは骨に良好に取り付けられている場合とは異なる。センサー表面を骨に取り付けるのに適した生物活性コンポーネントには、生物活性ガラス、リン酸カルシウム、アパタイト、炭酸カルシウムのバイオセラミックス、および生物活性ゾルゲルコーティングなどがある。
【0054】
インプラントは、外傷、欠損、または病気の手術後の骨の再構成に使用してもよい。
骨格の損傷または欠損部分のインプラント再構築は、隣接組織からインプラントに血液と骨形成細胞を同時に浸透させながら、解剖学的形状の即時修復と残りの骨片の適切な機械的サポートを提供することによって行われる。
【0055】
本発明のインプラントはまた、骨と等弾性特性を有する繊維強化複合材料で作られた非金属構造部分、および、インプラント周囲組織の生化学反応とマーカーを検出するセンサーを含んでもよい。
センサーは、例えば、上述したようなpHセンサーであり得る。上記に開示した他のすべての実施形態および変形例は、応力レベルセンサーのないこの種のインプラントに準用して適用される。
【0056】
本明細書による典型的なインプラントシステムは、
- 上述のようなインプラント、
- コンピュータ実行可能命令を含む少なくとも1つの処理コアとメモリを含み、該コンピュータ実行可能命令は、メモリおよび少なくとも1つの処理コアとともに、インプラントシステムにセンサーから受信した測定結果を処理させるように構成されている。
【0057】
インプラントシステムは、応力センサー(複数可)から測定結果を無線で受信するように構成された無線受信機と、任意選択で、電磁波を使用して無線で応力センサー(複数可)に電力を供給することができる無線送信機をさらに備えてもよい。
いくつかの実施形態では、インプラントシステムは、応力センサー(複数可)から測定結果を直接無線で受信できる別個の無線トランシーバへの有線または無線接続を有する。
【0058】
コンピュータ実行可能命令を含む少なくとも1つの処理コアおよびメモリは、監視装置などの単一の装置に統合され得る。例えば、単一の装置は、一定期間データを収集し、一定の時間間隔でデータベースなどに送信する移動通信装置などのモバイル装置であってもよい。監視装置は、例えば衣服に組み込まれてもよい。
【0059】
一実施形態によれば、コンピュータ実行可能命令を含む少なくとも1つの処理コアおよびメモリは、モバイル装置に統合される。
モバイル装置は、分析結果をデータベースに送信し、分析結果に変化があった場合に警報を発するように構成されていてもよい。
通常、分析には、同じインプラントからの以前のデータとデータを比較することが含まれ、データは医療ケアデータベースに送信できる。
【0060】
したがって、監視デバイスは、診断目的のため病院で使用されるデバイス、ポータブルデバイス、または、運動中などの負荷がかかったときのインプラントの機能のリアルタイム情報を提供するスマート衣服に組み込まれたデバイスでありえる。
【0061】
通常、測定結果は電磁信号として送信され、その周波数はセンサーの応力状態に依存する可能性がある。信号は無線周波数を使用してワイヤレスで送信可能である。
実際、インプラント内のセンサーから監視装置への信号伝達は、インプラントが配置されている本体の部分を高周波場にさらすことによって行われてもよい。
インプラントに加えられる物理的応力は、センサーの静電容量またはインダクタンスが変化を引き起こす可能性があり、この変化は、監視デバイスの外部アンテナを使用して検出され、さらに医療データベースまたは患者の携帯電話のデータ保存システムに送信される。
インプラントからの正確な信号伝達を可能にするために、インプラントの材料は、電磁シールドや電磁干渉を引き起こしてはならず、したがって、少なくとも主に非金属である。生化学センサーでは、信号伝達はたとえば超音波によって行われる。
【0062】
センサーを監視する方法の具体的な例をいくつか以下に示す。
股関節インプラントの場合、この例では大腿骨ステムに3つの応力センサーが含まれており、以下の
図1に示すように配置されている。
患者が歩行しているときに大腿骨ステムとインプラントのセンサーにかかる応力はセンサーの自由空間共振周波数を変化させ、このシフトは、センサーの変形の結果として生じる電界と磁場の局所的な変化に関連する。大腿骨ステムの3つのセンサーは、インダクタンスと静電容量が異なるため、監視デバイスによって区別できる。
監視デバイスは、センサーに問い合わせるために使用されるネットワークアナライザーシステムである。ループアンテナは、センサーの共振モードを励起するエネルギーを送信し、アンテナはセンサーからの戻り応答を受信するために使用される。
【0063】
頭蓋インプラントの場合、インプラントの多孔質繊維強化複合フレームワークは、シリカナノ粒子とアクリルアミドで作られたpH感受性ハイドロゲルセンサーを備えていてもよい。
インプラントがオッセオインテグレーションされた後、インプラントおよびインプラント周囲組織のpHは生理学的pHレベルになり、ファンクションジェネレータと高周波増幅器を使用して、所定の共振周波数を持つ超音波トランスデューサーで軟組織を通して監視できる。
したがって、センサーインターフェースで反射された超音波は、オシロスコープに接続された送信トランスデューサーで捕捉しうる。インプラントが微生物に感染すると、インプラント周囲組織のpHが低下し、これが監視され、抗生物質による治療のための措置が示される。
【0064】
本説明はまた、上述のシステムを使用して、上述のインプラントを監視する方法にも関し、この方法は、
- センサーの測定結果を受信し、
- 受信した測定結果を処理し、
- 任意選択的に、分析結果をデータベースに送信し、
- 分析結果に変化があった場合に警報を発する。
【0065】
インプラントが大腿骨に摩擦付着した状態で挿入され、荷重がかかると、インプラントは緩んだ物体として動作し、限られた程度にしか応力がかからない。この段階では、センサーからの信号はいかなる周波数シフトも示さない。
オッセオインテグレーション中、応力が骨からインプラントにさらに伝達され始め、インプラントステムがわずかに曲がり始め、これにより、側面に引張応力が発生し、中央部側面に圧縮応力が発生しおよびこの応力は周波数シフトによって観察される。
周波数シフトは、ベースラインの信号および内部基準センサー(中立軸のセンサー)の信号と比較される。
骨溶解が始まり、インプラントが骨から緩み始めると、その逆が観察される。
インプラントにpHセンサーも装備されている場合、pHが低下し始めることが観察され、インプラントが緩んでいることが確認される。
インプラントが緩み始めるまで、よって、信号差のレベルは同じのままである。従って、インプラントの取り付けを監視することが可能であり、緩みが観察された場合には、外科的または他の医学的矯正措置を講じることができる。
【0066】
図5に示すような椎骨融合インプラントの場合、診療所にあるモニタリング装置を使用して、インプラントの軸壁の基準センサーと比較した上面センサーの圧力変化を追跡する。
上面センサーによる表面圧力の低下は、骨融合が起こったことを示す。
【0067】
本明細書はさらに、少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合、上述のように、装置にインプラントを監視するための方法の少なくともステップを実行させるプログラム命令を含む(非一時的な)コンピュータ読取可能媒体に関する。
さらに、本明細書は、上記で定義した方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムに関する。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面においてより詳細に説明されるが、これらは特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。参照符号も特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
センサー付き人工股関節の大腿骨ステムの製造
全股関節インプラントの置換インプラントのステムは、ジメタクリレート樹脂マトリックス中の非導電性の連続一方向Sガラス繊維強化複合材料から製造され、繊維負荷は複合材の総重量68重量%を含む。
単一繊維の直径は15μmで、樹脂マトリックスは、ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート(BisGMA)およびカンファーキノンと2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEM)の光開始剤系を含む70/30の比率のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)モノマーの混合物であった。
光開始剤系の量は樹脂の総重量の0.7重量%であり、2つの成分は等量で存在した。
インプラントの大腿骨ステムは、ねじり力への耐性を高めるために、織られたガラス繊維の表面層を備えた連続一方向ガラス繊維で作られた。
インプラントの最外表面は、骨付着のために平均粒径500μm(篩い分けによる測定で450μm~550μmの範囲)の生体活性ガラス(S53P4)の粒子でコーティングされていた。
ファイバーの積層中に、3つの開回路センサー(銅製の受動共振器ベースのセンサー)のセンサーアレイが以下のように組み込まれた。
センサーの1つはステムの中央(ステムの軸上)に、1つはステムの中央部表面(圧縮側)に、もう1つはステムの外側表面(引張側)にステムの中央部表面にあったセンサーと正反対に配置された。
表面センサーは、インプラント表面と骨との間の界面における応力を感知するために、厚さ0.06mmのガラス繊維織物の層の下に配置された。
pH変化に敏感なセンサーを圧縮側センサーまたは張力側センサーの近くに追加して、センサーアレイシステムを完成させた。
【0070】
(実施例2)
円筒形の椎骨融合インプラントは、壁厚1.5mmのガラス繊維強化複合管(実施例1と同じ材料)で作製した。
チューブ内の繊維配向はチューブの長軸に対し+/-45度であった。
インプラントを所定の位置に取り付けるために使用される器具に必要な穴のために、チューブをフライス加工した。
管の内部は、椎骨の固い骨の融合を促進するために、生体活性ガラスの粒子(S53P4、平均粒径500μm、実施例1と同様に測定)で満たされた。
管状インプラントの上部と下部は、穴の開いたメッシュラインのガラス繊維強化複合積層板で覆われており、穴の最大直径は400μmであった。
【0071】
第1のセンサーを管状インプラントの長軸壁に挿入して壁のせん断応力を測定し、第2の同一のセンサーを管の穿孔壁に挿入して、椎骨間の圧縮力による表面圧力を感知した。
使用されたセンサーはすべて、銅製の受動共振器ベースのセンサーであった。
【0072】
(図面の説明)
図1は、第1の実施形態による股関節インプラント1を概略的に示す。股関節インプラント1は、寛骨臼カップ3を介して股関節2に取り付けられる。大腿骨頭(図示せず)は寛骨臼カップ3内に配置される。構造部分4(大腿骨頭に取り付けられた)、すなわち大腿骨ステムは、患者の大腿骨5内に配置される。
第1の応力レベルセンサー6は、基準応力レベルを示すために大腿骨ステム4の軸12上に配置されている。
第2の応力レベルセンサー7は、大腿骨ステム4の表面、インプラントが所定の位置に配置されると患者の側に向かう側、すなわち側面に配置される。
第3の応力レベルセンサー8も大腿骨ステム4の表面上に配置されるが、第2のセンサー7とは正反対、すなわち、インプラントが所定の位置に配置されると患者の内腿に向かう側、すなわち、内側に配置される。
【0073】
矢印は、使用時、つまり患者が動いたり立ったりするときに股関節インプラントにかかる力の方向を示す。
矢印9は主な力の方向を示し、矢印10と11はそれぞれ第2と第3のセンサーにかかる力の方向を示す。
大腿骨5の外側に配置された第2のセンサー7では、力は矢印10で示すようにセンサーの外端に向けられる。
大腿骨5の内側に配置された第3のセンサー8では、力は矢印11で示すようにセンサーの中点に向けられる。
【0074】
図2は、第1の実施形態による股関節インプラントの時間Tの関数としての様々なセンサーにおける応力Sレベルを示す。時間Tは、従って、横軸に示され、応力Sが縦軸に示され、図の上半分は引張応力、下半分は圧縮応力を示す。
斜線21は、大腿骨ステムの軸上に配置され、したがって安定したままであり、基準を形成する第1のセンサー6からの応力測定値を示す。上の曲線22は第2のセンサー7の応力測定値を示し、下の曲線23は第3のセンサー8の応力測定値を示す。
ハッチング領域24によって示される初期段階では、インプラントはまだ大腿骨にしっかりと取り付けられていないが、曲線22および23が示すように、時間Tが進むとオッセオインテグレーションが起こり、曲線22および23はプラトーレベルに達する。骨融合が発生し、インプラントが緩んだ場合、ハッチング領域25における曲線22および23がこれを示す。
【0075】
図3は、第2の実施形態による股関節インプラント30を概略的に示す。股関節インプラント30は、構造部分38(大腿骨ステム)と接続して、基準応力レベルを示すために大腿骨ステムの軸上に配置された第1の応力レベルセンサー31を備える。第2の応力レベルセンサー32は、大腿骨ステムの側面の表面に配置される。第3の応力レベルセンサー33も大腿骨ステムの表面上に配置されるが、第2のセンサー32とは正反対、すなわち内側に配置される。第4のpHセンサー34は、インプラントの表面上、この実施形態では第3のセンサー33の近くに配置される。矢印35、36、37は、
図1と同様に力の方向を示す。
【0076】
図4は、第2の実施形態による股関節インプラントの時間Tの関数としての様々なセンサーにおける応力レベルS、およびインプラントと周囲の骨との間の界面内のpHの変化を示す。
時間Tは、横軸に示され、応力SとpHが縦軸に示され、図の上半分は引張応力、下半分は圧縮応力を示す。
斜線41は、大腿骨ステムの軸上に配置され、したがって安定したままであり、基準を形成する第1のセンサー31からの応力測定値を示す。
上の曲線42は第2のセンサー32の応力測定値を示し、下の曲線43は第3のセンサー33の応力測定値を示す。ハッチングされた曲線46は、pHセンサー(第4のセンサー)34からのpH測定値を示す。
ハッチング領域44で示される初期段階では、インプラントはまだ大腿骨にしっかりと取り付けられていないが、曲線42および43が示すように、時間Tが進むとオッセオインテグレーションが起こり、曲線42および43はプラトーレベルに達する。
骨溶解が発生し、インプラントが緩んだ場合、ハッチング領域45における曲線42および43がこれを示す。
感染または炎症が起こる可能性があるため、骨溶解もpHを低下させる効果があるため、pHの変化の影響も曲線46で示されている。
【0077】
図5は、第3の実施形態による脊椎インプラント50を概略的に示す。ここで、脊椎インプラントは、椎体54の間に配置された椎間板50である。
脊椎インプラント50は、2つのセンサー51および52を備え、そのうち、第1のセンサー51は、椎体と本質的に接触するように配置され、第2のセンサー52は、脊椎の遠位側のインプラントの側に配置される。矢印53および53’は、脊椎インプラント50に加えられる力の方向を示している。
【0078】
図6は、第3の実施形態による脊椎インプラントの時間Tの関数における様々なセンサーにおける応力Sレベルを示す。時間Tが横軸に、応力Sが縦軸に示され、図の上半分は圧縮応力、下半分はせん断応力を示す。上の曲線60は、第1のセンサー51からの応力測定値を示し、下の曲線61は、第2のセンサー52の応力測定値を示す。
ハッチング領域62によって示される初期段階では、インプラントはまだ椎体にしっかりと取り付けられていないが、曲線60および61が示すように、時間Tが進むとオッセオインテグレーションが起こり、曲線60および61はプラトーレベルに達する。
【0079】
図7は、第4の実施形態による膝インプラント70を概略的に示す。膝インプラント70は、大腿骨72に取り付けられた大腿骨コンポーネント71と、脛骨74に取り付けられた脛骨コンポーネント73と、スペーサ75とを備える全人工膝関節である。
脛骨コンポーネント73(構造部分)は、ベースプレート73aおよびステム73bを備え、ステムは脛骨軸79を画定する。
脛骨コンポーネント73は、第1の応力レベルセンサー76、第2の応力レベルセンサー77、および第3のpHセンサー78の3つのセンサーを備える。第1のセンサー76は、脛骨軸79と本質的に沿ってステム73bの表面上に配置される。
第2のセンサー77は、脛骨に面して、すなわち大腿骨から離れて、ベースプレート73aの表面上に配置されている。
pHセンサー(第3のセンサー)78は、ベースプレート73aの外表面に近接して、ベースプレート73a内に配置される。
【0080】
図8は、第4の実施形態による膝インプラントの時間Tの関数における様々なセンサーにおけるせん断応力Sレベルを示す。この図は、第3センサー78によって測定されたpHの変化も示す。したがって、時間Tが横軸に示され、応力SとpHが縦軸に示される。ハッチングされた線80は基準レベル、すなわち応力の中立軸を示す。最上部の曲線81は第2のセンサー77の応力測定値を示し、中央の曲線82は第3のセンサー78の応力測定値を示す。ハッチングされた曲線83は、pHセンサー(第3のセンサー)78からのpH測定値を示す。
ハッチング領域844によって示される初期段階では、インプラントはまだ大腿骨にしっかりと取り付けられていないが、曲線81、82および83が示すように、時間Tが進むとオッセオインテグレーションが起こり、曲線81、82および83がプラトーレベルに達する。
骨溶解が発生し、インプラントが緩んだ場合、ハッチング領域85における曲線84、82および83がこれを示す。
【国際調査報告】