(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】炎症性疾患の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20240229BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240229BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240229BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240229BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20240229BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20240229BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/80 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240229BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P11/06
A61P9/12
A61P9/10
A61K31/422
A61P19/02
A61K31/505
A61K31/4025
A61K38/12
A61K31/497
A61K31/506
A61K31/80
A61K31/519
A61K31/395
A61K31/496
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555558
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 AU2022050249
(87)【国際公開番号】W WO2022198264
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522070020
【氏名又は名称】ダイメリックス バイオサイエンス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シェパード, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター, ニーナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084AA21
4C084AA24
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA24
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA591
4C084ZA811
4C084ZA961
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC33
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC50
4C086BC67
4C086CB05
4C086DA33
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA12
4C086GA16
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
医薬組成物であって、a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、を含む、医薬組成物。この医薬組成物は、c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩とを更に含み得る。CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、同じ剤形または別々の剤形で投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、を含む、医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT
1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記エンドセリンA受容体阻害剤が、エンドセリンA受容体拮抗薬;エンドセリンAおよびB二重拮抗薬;ならびに異種受容体二重拮抗薬、ならびにそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
a)前記エンドセリンA受容体拮抗薬が、シタキセンタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、BQ-123、ジボテンタンを含む群から選択される、
b)前記エンドセリンAおよびB二重拮抗薬が、ボセンタン、マシテンタン、テゾセンタンを含む群から選択される、および/または
c)前記異種受容体二重拮抗薬が、スパルセンタンを含む群から選択される、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤が、レパゲルマニウム;プロパゲルマニウム;CCX140;セニクリビロク;PF-6309;PF-04178903;CCX872-B;MLN1202;およびPF-04634817を含む群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アンジオテンシン1型受容体(AT
1R)遮断薬が、スパルセンタン、イルベサルタン、エプロサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、ZD-7115、フィマサルタン、アジルサルタン、DuP 753、EXP 3174、エンブサルタン、KRH-594、フォンサルタン、およびプラトサルタンを含む群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤が、同じ剤形または別々の剤形で投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤が、同時投与または逐次投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤およびAT1R遮断薬が、同じ剤形または別々の剤形で投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤およびAT1R遮断薬が、同時投与または逐次投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
疾患の処置、改善または予防のための方法であって、治療有効量の
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせを対象に投与することを含む、疾患の処置、改善または予防のための方法。
【請求項12】
治療有効量の少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を、前記対象に投与することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が、腎疾患、肺疾患または心疾患である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
-前記腎疾患が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS;原発性FSGSおよび続発性FSGSを含む)、腎臓における線維性障害、糖尿病性腎症によって引き起こされる慢性腎疾患、腎不全(糖尿病性および非糖尿病性)、ならびに糖尿病性腎症、糸球体腎炎、強皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患のタンパク尿および腎血管性高血圧を含む腎不全症状を含むリストから選択される、
-前記肺疾患が、感染性または非感染性の炎症性肺疾患である、および/または
-前記心疾患が、冠動脈疾患である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記感染性または非感染性の炎症性肺疾患が、市中感染性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、気管支炎、肺気腫、肋膜炎または肺線維症を含むリストから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記冠動脈疾患が、関節硬化症(arthrosclerosis)、肺高血圧症、虚血性心疾患、心筋症、および炎症性心疾患を含むリストから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
疾患の処置、改善または予防のための剤形の製造のための
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
を含む、医薬組成物の使用。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT
1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を更に含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
疾患を処置、改善または予防するための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項20】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT
1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項21】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、前記少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
【請求項22】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、前記少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
【請求項23】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、前記少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
【請求項24】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、前記少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
【請求項25】
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬であって、前記少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬。
【請求項26】
疾患の処置、改善または予防のためのキットであって、前記キットが、
a)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)経路阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)使用説明書と、を含む、疾患の処置、改善または予防のためのキット。
【請求項27】
少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を更に含む、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、少なくとも1つのケモカイン受容体2経路阻害剤および少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤を含む併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
炎症性疾患の病態(特に、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)とC-Cケモカイン受容体2型(CCR2)との間の相互作用に関連するもの、およびエンドセリン系の機能障害に関連するもの)は、ブドウ膜炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、多発性硬化症、神経障害性疼痛、掻痒症、クローン病、腎炎、臓器同種移植片拒絶、線維化肺、腎不全、糖尿病および糖尿病合併症、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜炎、糖尿病性微小血管障害、結核、サルコイドーシス、侵襲性ブドウ球菌感染症、白内障手術後の炎症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性蕁麻疹、アレルギー性喘息、歯周疾患、歯周炎、歯肉炎、歯肉疾患、拡張型心筋症、心筋梗塞、心筋炎、慢性心不全、血管狭窄症、再狭窄、再灌流障害、糸球体腎炎、固形腫瘍および癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、悪性骨髄腫、ホジキン病、および膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、肺、前立腺または胃の癌腫等の疾患に関連している。
【0003】
腎疾患、肺疾患および心疾患を含む炎症性疾患の病態に対する新しい処置を提供すること、または少なくとも、炎症性疾患の病態に対する以前から知られている処置を補完するための代替処置の提供が必要とされている。
【0004】
背景技術の前述の説明は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。議論は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日における共通の一般知識であるか、またはその一部であったことの承認または自認ではない。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
本発明は、医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0006】
本発明は更に、
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩とを含む医薬組成物を提供する。
【0007】
好ましくは、エンドセリンA受容体阻害剤は、シタキセンタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、BQ-123およびジボテンタンなどのエンドセリンA受容体拮抗薬;ボセンタン、マシテンタンおよびテゾセンタンなどのエンドセリンAおよびB二重拮抗薬;ならびにスパルセンタンなどの異種受容体二重拮抗薬を含む群から選択される。
【0008】
好ましくは、ケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤は、レパゲルマニウム;プロパゲルマニウム;CCX140;セニクリビロク;PF-6309;PF-04178903;CCX872-B(CCX-872);MLN1202;およびPF-04634817を含む群から選択される。
【0009】
好ましくは、アンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬は、スパルセンタン、イルベサルタン、エプロサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、ZD-7115、フィマサルタン、アジルサルタン、DuP 753、EXP 3174、エンブサルタン(BAY 10-6734)、KRH-594、フォンサルタン(HR 720)、およびプラトサルタン(KT3-671)を含む群から選択される。
【0010】
CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、同じ剤形または別々の剤形で投与され得る。
【0011】
CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、同時投与または逐次投与され得る。
【0012】
本発明はまた、疾患の処置、改善または予防のための方法であって、治療有効量の
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせを対象に投与することを含む、疾患の処置、改善または予防のための方法を提供する。
【0013】
本発明は更に、疾患を処置、改善または予防するための方法であって、治療有効量の
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせを対象に投与することを含む、疾患を処置、改善または予防するための方法を提供する。
【0014】
好ましくは、疾患は、腎疾患、肺疾患または心疾患である。腎臓疾患は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS;原発性FSGSおよび続発性FSGSを含む)、腎臓における線維性障害、糖尿病性腎症によって引き起こされる慢性腎疾患、腎不全(糖尿病性および非糖尿病性)、ならびに糖尿病性腎症、糸球体腎炎、強皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患のタンパク尿および腎血管性高血圧を含む腎不全症状を含むリストから選択され得る。肺疾患は、感染性または非感染性の炎症性肺疾患であり得、好ましくは、市中感染性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、気管支炎、肺気腫、肋膜炎または肺線維症を含むリストから選択され得る。心疾患は、冠動脈疾患であり得、好ましくは、関節硬化症(arthrosclerosis)、肺高血圧症、虚血性心疾患、心筋症、および炎症性心疾患を含むリストから選択され得る。
【0015】
本発明はまた、疾患の処置、改善または予防のための剤形の製造のための
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
を含む、医薬組成物の使用を企図する。
【0016】
本発明は更に、疾患の処置、改善または予防のための剤形の製造のための
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩と、
を含む、医薬組成物の使用を企図する。
【0017】
本発明は、疾患を処置、改善または予防するための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0018】
本発明は、疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0019】
本発明は、以下を提供する:
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬。
【0020】
本発明は、疾患の処置、改善または予防のためのキットであって、当該キットが、
a)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)経路阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)使用説明書と、を含む、疾患の処置、改善または予防のためのキットを提供する。
【0021】
本発明は、疾患の処置、改善または予防のためのキットであって、当該キットが、
a)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)経路阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩と、
d)使用説明書と、を含む、疾患の処置、改善または予防のためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の更なる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態の以下の説明においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。上記の本発明の広範な概要、開示または説明に対する限定として理解されるべきではない。以下、添付図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、非標識CCR2の存在下でETARをRluc8でタグ付けし、β-アレスチンをVenusでタグ付けすると、予想されるように、ET-1の存在下でだけでなく、CCL2/MCP-1の存在下でもβ-アレスチンがETARに動員されることを示し、これにより受容体間の複合体の存在が確認される。両方のリガンドの存在は、β-アレスチン動員の過剰活性化を引き起こし、このヘテロマーの相互作用が確認される。
【
図2】
図2は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、CCL2が存在する場合にETARへのβ-アレスチン動員が起こることを示し、ETARと非標識CCR2との相互作用が確認される。スパルセンタンは、CCL2/CMP-1およびET-1リガンドの両方が存在するが、ETARへのβ-アレスチンの動員を停止させない場合、過活性化を抑制することができる。
【
図3】
図3は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、ETARおよびCCR2ヘテロマーの過剰活性化がスパルセンタン阻害またはCCR2阻害のいずれかの添加によって抑制することを示している。ETARは、CCR2の存在にかかわらず、ET-1で刺激された場合に低規模でβ-アレスチンを動員することができ、スパルセンタンはCCR2活性化とは無関係にこのシグナル伝達を阻害する。ETARへのβ-アレスチン動員の完全な阻害は、CCR2およびETARが同時に阻害される場合に、ET1およびCCL2/MCP-1が存在する場合にのみ起こる。
【
図4】
図4は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、非標識ETARの存在下でCCR2がRluc8でタグ付けされ、β-アレスチンがVenusでタグ付けされ、CCL2/MCP-1の存在下でβ-アレスチンがCCR2に動員される異なる実験的配向を示す。CCL2/MCP-1リガンドおよびET-1リガンドの両方の存在下でβ-アレスチンの動員の増加が観察され、CCR2とETARとの間の相互作用の存在が確認される。
【
図5】
図5は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、ETAR活性化がスパルセンタンで遮断された場合、CCL2/MCP-1およびET-1の存在下でβ-アレスチンの動員の増加は観察されないことを示す。
【
図6】
図6は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、これは、ET-1によるETAR活性化の有無にかかわらず、CCR2が阻害された場合に、CCL2/MCP-1の存在下でCCR2へのβ-アレスチンの動員がないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
研究により、Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、モノマーとして作用するだけでなく、ホモ二量体およびヘテロ二量体、および/またはホモオリゴマーおよびヘテロオリゴマー(ホモマーおよびヘテロマーとしても知られる)としても作用し得、リガンド結合、シグナル伝達およびエンドサイトーシスの変化を引き起こすことが示されている(Riosら.(2000)Pharmacol.Ther.92:71-87)。したがって、特異的受容体の作動薬(agonist)または拮抗薬(antagonist)として作用する薬物の効果は、この受容体の結合パートナーに依存し得る。薬物の効果を、特定の受容体二量体またはオリゴマーによって媒介される細胞応答に限定することが望ましくあり得る。
【0024】
組成物
本発明は、医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
本発明は更に、
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩とを含む医薬組成物を提供する。
【0026】
医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体または賦形剤を更に含み得る。
【0027】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、ケモカイン受容体2およびエンドセリンA受容体は、いくつかの組織においてヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーを形成すると考えられる。CCR2およびETARがそれらのヘテロ二量体/ヘテロオリゴマー配置にある場合、両方の受容体の同時の阻害は、受容体がヘテロ二量体配置にない場合のいずれかの受容体単独またはいずれかの受容体の阻害よりも大きな効果を引き起こす。
【0028】
ケモカイン受容体2およびアンジオテンシン1型受容体は、いくつかの組織においヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーを形成すると更に考えられる。CCR2およびAT1Rがそれらのヘテロ二量体/ヘテロオリゴマー配置にある場合、両方の受容体の同時の阻害は、受容体がヘテロ二量体配置にない場合のいずれかの受容体単独またはいずれかの受容体の阻害よりも大きな効果を引き起こす。
【0029】
上記の知見は、ヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーの両方の要素の同時阻害による特異的かつ標的化された介入を可能にし、これは、ヘテロ二量体が形成される組織ではより大きな治療効果をもたらすが、受容体がヘテロ二量体形態ではない組織ではより大きな治療効果をもたらさない。
【0030】
ケモカイン受容体2経路阻害剤
C-Cケモカイン受容体2型(CCR2またはCD192)は、ヒトGタンパク質共役受容体である。CCR2は、単球走化性タンパク質-1(MCP-1/CCL2)の主要な受容体である。
【0031】
「ケモカイン受容体2経路」という語句は、走化性移動、細胞運動性、細胞外調節キナーゼ(ERK)リン酸化、cAMP産生、アクチン動員、タンパク質リン酸化、核タンパク質局在化、遺伝子転写または翻訳、Gタンパク質カップリング、β-アレスチン動員または媒介シグナル伝達を引き起こす経路を含むがこれらに限定されない、そのネイティブリガンドによって活性化されるケモカイン受容体2の経路のいずれか1つを含むと理解されるべきである。
【0032】
「ケモカイン受容体2経路阻害剤」という語句は、ケモカイン受容体2に関連する経路のいずれか1つを阻害するかまたは部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むことを意図する。CCR2経路阻害剤には、ケモカイン受容体2の活性化を阻害または部分的に阻害する化合物または薬剤が含まれる。CCR2経路阻害剤は、ペプチド、ポリペプチドまたは小さな化学的実体であり得る。例えば、CCR2経路阻害剤は、タンパク質、結合タンパク質または抗体であり得る。
【0033】
これは、もはやケモカイン受容体2(CCR2)に結合することができないように、CCR2リガンドである単球走化性タンパク質-1(MCP-1/CCL2)への結合によるものであり得る。一実施形態では、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、MCP-1を直接標的化することによって、MCP-1によって誘導される単球のin vitro走化性移動を阻害または部分的に阻害する。そのような化合物には、MCP-1に結合する薬剤が含まれる。
【0034】
或いは、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、ケモカイン受容体2自体に結合し、リガンドのアクセスまたは結合を遮断し得る。そのようなCCR2経路阻害剤は、直接CCR2拮抗薬、直接CCR2逆作動薬または直接CCR2ネガティブアロステリックモジュレーターであり得る。CCR2拮抗薬は、CCR2を遮断し、MCP-1の結合を妨げ得る;CCR2逆作動薬は、CCR2に結合し、その活性を基底レベル未満に低下させ得る;CCR2ネガティブアロステリックモジュレーターは、CCR2に結合し、MCP-1が結合すると、MCP-1に対する親和性および/またはその有効性を低下させ得る。
【0035】
「ケモカイン受容体2経路阻害剤」という語句は、ケモカイン受容体2それ自体以外のケモカイン受容体2経路の構成要素を阻害または部分的に阻害する化合物または薬剤を含む。例えば、阻害剤は、ケモカイン受容体2と会合するタンパク質を阻害もしくは部分的に阻害し得るか、またはケモカイン受容体自体の前および/もしくは後の化合物もしくは経路工程を阻害し得る。そのような場合、好ましくは、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、間接CCR2拮抗薬、間接CCR2逆作動薬または間接CCR2ネガティブアロステリックモジュレーターから選択される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ケモカイン受容体2それ自体以外のケモカイン受容体2経路の構成要素」という用語は、構成要素自体がケモカイン受容体2ではないケモカイン受容体2経路の構成要素を指すと理解されるべきである。ケモカイン受容体2経路の構成要素は、ケモカイン受容体2と直接相互作用し得る。或いは、ケモカイン受容体2経路の構成要素は、タンパク質-タンパク質相互作用または複合体形成によって間接的にケモカイン受容体2と相互作用し得る。或いは、ケモカイン受容体2経路の構成要素は、シグナル伝達カスケードによって間接的にケモカイン受容体2と相互作用し得る。好ましくは、構成要素は、限定されないが、形質導入またはシグナル伝達タンパク質などのタンパク質である。
【0037】
一態様では、ケモカイン受容体2経路阻害剤がケモカイン受容体2自体以外の経路の構成要素を阻害または部分的に阻害する場合、阻害剤は、CD55、CD59およびCD16などのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合タンパク質の標的化を介して、MCP-1誘導性の単球の遊走および活性化ならびに走化性移動を遮断する。
【0038】
別の態様では、ケモカイン受容体2経路阻害剤がケモカイン受容体2以外の経路の構成要素を阻害または部分的に阻害する場合、阻害された構成要素は、CCL7(MCP-3)、CCL8、CCL13(MCP-4)およびCCL16(血液濾過物(hemofiltrate)CCケモカイン(HCC)-4)を含むCCR2リガンドのリストから選択される。一実施形態では、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、リガンドを直接標的化することによって、上記CCR2リガンドによって誘導される単球のin vitro走化性移動を阻害するか、または部分的に阻害する。そのような化合物には、CCL7、CCL8、CCL13およびCCL16に結合する薬剤が含まれる。
【0039】
別の実施形態では、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、CD55、CD59およびCD16を含む群から選択される1またはそれを超えるGPI結合タンパク質を標的とすることによって、MCP-1によって誘導される単球のin vitro走化性移動を阻害または部分的に阻害する。そのような場合、ケモカイン受容体2経路阻害剤は、複合体CCR2/CD55および/またはCCR2/CD59および/またはCCR2/CD16を安定化し得る。
【0040】
CCR2経路の公知の阻害剤としては、レパゲルマニウムまたはプロパゲルマニウム;RS504393;RS102895;MLN-1202(Millennium Pharmaceuticals);INCB3344、INCB3284およびINCB8696(Incyte Pharmaceuticals);MK-0812(Merck);CCX140およびCCX872-B(CCX-872);(ChemoCentryx);BMS-741672(Bristol-Myers Squibb);ならびにPF-04136309(PF-6309としても知られる)、PF-04178903およびPF-04634817(Pfizer);ならびにセニクリビロク(TAK-652、TBR-652)が挙げられる。好ましくは、ケモカイン受容体2経路2阻害剤は、レパゲルマニウム;プロパゲルマニウム;CCX140;PF-6309およびPF-04634817のリストから選択される。
【0041】
好ましい一実施形態では、CCR2経路阻害剤は、レパゲルマニウム、プロパゲルマニウムまたはCCX140などのケモカイン受容体2の直接拮抗薬である。
【0042】
プロパゲルマニウム(3-オキシゲルミルプロピオン酸ポリマー)は、慢性肝炎に対する治療剤として使用されてきた分子であり、CD55、CD59およびCD16などのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合タンパク質を必要とすると思われる機構を介して、MCP-1による単球のin vitro走化性移動を特異的に阻害することも示されている。プロパゲルマニウムは、3-[(2-カルボキシエチル-オキソゲルミル)オキシ-オキソゲルミル]プロパン酸、プロキシゲルマニウム、Ge-132、ビス(2-カルボキシエチルゲルマニウム)セスキオキシド(CEGS)、2-カルボキシエチルゲルマセスキオキサン、SK-818、有機ゲルマニウム、セスキオキシドゲルマニウム、3,3<’>-(1,3-ジオキソ-1,3-ジゲルマノキサンジイル)ビスプロピオン酸、3-オキシゲルミルプロピオン酸ポリマー、ポリ-fra/7s-(2-カルボキシエチル)ゲルマセスキオキサン、プロキシゲルマニウム、レパゲルマニウムおよびSerocion(商標)としても知られている。
【0043】
エンドセリンA受容体阻害剤
エンドセリン受容体A型(ETAR、ETA、EDNRA、ET1受容体、ETA受容体、ETA、EDN1およびET-ARとしても知られている)は、ヒトGタンパク質共役受容体である。
【0044】
「エンドセリンA受容体阻害剤」(ETAR阻害剤としても知られる)という語句は、エンドセリンA受容体に関連する経路のいずれか1つを阻害または部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むことを意図している。ETAR阻害剤は、ETARの活性化を阻害するまたは部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むと理解される。ETAR阻害剤は、ペプチド、ポリペプチドまたは小さな化学的実体であり得る。例えば、ETAR阻害剤は、タンパク質、結合タンパク質または抗体であり得る。
【0045】
これは、もはやエンドセリンA受容体(ETAR)に結合することができないように、ETARリガンドであるエンドセリン-1(ET-1)への結合によるものであり得る。一実施形態では、ETAR阻害剤は、ET-1を直接標的化することによって、ET-1によって誘導されるシグナル伝達を阻害または部分的に阻害する。そのような化合物には、ET-1に結合する薬剤が含まれる。
【0046】
或いは、ETAR阻害剤は、ETAR自体に結合し、リガンドのアクセスまたは結合を遮断し得る。そのようなETAR阻害剤は、直接ETAR拮抗薬、直接ETAR逆作動薬または直接ETARネガティブアロステリックモジュレーターであり得る。ETAR拮抗薬は、ETARを遮断し、ET-1の結合を妨げ得る;ETAR逆作動薬は、ETARに結合し、その活性を基底レベル未満に低下させ得る;ETARネガティブアロステリックモジュレーターは、ETARに結合し、ET-1が結合すると、ET-1に対するその親和性および/またはその有効性を低下させ得る。
【0047】
エンドセリンA受容体の既知の阻害剤としては、シタキセンタン、アンブリセンタン(Volibris(登録商標)、GalaxoSmithKline)、アトラセンタン(AbbVie)、BQ-123、ジボテンタン(ZD4054、AstraZeneca)などのエンドセリンA受容体拮抗薬;ボセンタン、マシテンタン、テゾセンタンなどのエンドセリンAおよびB二重拮抗薬;ならびにスパルセンタンなどの異種受容体二重拮抗薬が挙げられる。
【0048】
一例として、エンドセリンA受容体阻害剤はスパルセンタンであり得る。2-[4-[(2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル]-2-(エトキシメチル)フェニル]-N-(4,5-ジメチル-1,2-オキサゾール-3-イル)ベンゼンスルホンアミドとしても知られているスパルセンタンは、アンジオテンシンII 1型受容体(AT1R)とETA受容体の組合せ選択的拮抗薬である。
【0049】
アンジオテンシン1型受容体
アンジオテンシン1型受容体(AT1R、AT1R、アンジオテンシンII受容体1型)は、Gタンパク質共役受容体である。
【0050】
「アンジオテンシン1型受容体遮断薬」(AT1R遮断薬またはARBとも呼ばれる)という語句は、アンジオテンシン1型受容体に関連する経路のいずれか1つを阻害するまたは部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むことを意図している。AT1R遮断薬は、AT1Rの活性化を阻害または部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むと理解される。AT1R遮断薬は、ペプチド、ポリペプチドまたは小さな化学的実体であり得る。例えば、AT1R遮断薬は、タンパク質、結合タンパク質または抗体であり得る。
【0051】
これは、もはやAT1Rに結合することができないように、AT1Rリガンド、例えばアンジオテンシンII(AngII)への結合によるものであり得る。一実施形態では、AT1R遮断薬は、AT1Rリガンドを直接標的化することによって、AT1RへのAT1Rリガンドの結合によって誘導されるシグナル伝達を阻害するか、または部分的に阻害する。そのような化合物には、AT1Rリガンドに結合する薬剤、例えば、アンジオテンシンII(AngII)に結合する薬剤が含まれる。
【0052】
或いは、AT1R遮断薬はAT1R自体に結合し、リガンドのアクセスまたは結合を遮断し得る。そのようなAT1R遮断薬は、直接AT1R拮抗薬、直接AT1R逆作動薬または直接AT1Rネガティブアロステリックモジュレーターであり得る。AT1R拮抗薬は、AT1Rを遮断し、AT1Rリガンドの結合を妨げ得る;AT1R逆作動薬は、AT1Rに結合し、その活性を基底レベル未満に低下させ得る;AT1RネガティブアロステリックモジュレーターはAT1Rに結合し、AT1Rリガンドが結合すると、AT1Rリガンドに対するその親和性および/またはその有効性を低下させ得る。
【0053】
例えば、AT1R遮断薬は、スパルセンタン、イルベサルタン、エプロサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、ZD-7115、フィマサルタン、アジルサルタン、DuP753(2-n-ブチル-4-クロロ-5-ヒドロキシ-メチル-1-[(2’-(1H)-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]イミダゾールカリウム塩)、EXP3174、エンブサルタン(BAY10-6734)、KRH-594、フォンサルタン(HR720)およびプラトサルタン(KT3-671)を含む群から選択され得る。
【0054】
Taylorら(2011)は、AT1R遮断薬を再検討し、「このクラスの古い薬物間で有効性または他の臨床的特徴に大きな違いはないが、新しい薬剤のうちいくつかは古い薬剤よりも効果的に血圧を低下させる可能性がある」と述べた。特性の違いは、他の経路との相互作用に関連しており、コアアンジオテンシン1型受容体遮断には関連していないようである。ただし、「ARB間のいくつかの薬理学的差異があり、このクラスのいくつかの薬物はアンジオテンシンII受容体遮断とは無関係に特別な効果を有するが、これらが高血圧からの標的臓器損傷に対する独特の保護につながるという強力な証拠は現在のところない」ことに留意されたい。したがって、AT1R遮断に対するそれらの効果に関して、AT1R遮断薬は、構造的な違いにもかかわらず機能的に交換可能である。
【0055】
AT1R遮断薬は、1990年に最初に市販された。このクラスの薬物の長期間の使用にもかかわらず、医師は、これらを互いにほぼ置換可能な群として扱う。一部の群の正確な薬理学にはいくつかの特異的な微妙さがあるが、これらはそれらのアンジオテンシン1型受容体活性に関連していないようである。更に、全ての薬理学的製品は、一部の患者において微妙に異なる挙動を示すが、一部のサブグループの変動性は、治療に一般的に有用であることを妨げない(Taylorら、2011)。
【0056】
一例として、アンジオテンシン受容体阻害剤は、イルベサルタンであり得る。イルベサルタンは、2-ブチル-3-({4-[2-(2H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル)フェニル]フェニル}メチル)-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オンとしても公知のアンジオテンシン1型受容体拮抗薬である。アンジオテンシン受容体阻害剤は、スパルセンタンであり得る。2-[4-[(2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル]-2-(エトキシメチル)フェニル]-N-(4,5-ジメチル-1,2-オキサゾール-3-イル)ベンゼンスルホンアミドとしても知られているスパルセンタンは、アンジオテンシンII 1型受容体(AT1R)とETA受容体の組合せ選択的拮抗薬である。
【0057】
処置の方法
本発明はまた、疾患の処置、改善または予防のための方法であって、治療有効量の
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせを対象に投与することを含む、疾患の処置、改善または予防のための方法を提供する。
【0058】
本発明は更に、疾患を処置、改善または予防するための方法であって、治療有効量の
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩との組み合わせを対象に投与することを含む、疾患を処置、改善または予防するための方法を提供する。
【0059】
CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤は、同じ剤形または別々の剤形で投与され得る。CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤は、同時投与または逐次投与され得る。
【0060】
処置、改善または予防の方法が少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬を更に含む場合、AT1R遮断薬は、CCR2経路阻害剤および/またはETAR阻害剤と同じ剤形で、または別々の剤形で投与され得る。アンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬、CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤は、同時投与または逐次投与され得る。
【0061】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬の薬学的に許容され得る塩であってもよい。
【0062】
本発明の処置の1つの構成要素は、例えば標準的なケア処置として、既に対象に投与されていてもよい。そのような場合、本発明の処置の第2の(および存在する場合は第3の)構成要素は、本発明の治療を提供するための治療における第2の(および第3の)構成要素として投与される。
【0063】
いかなる特定の作用様式にも制限されることを意図しないが、好ましい一実施形態では、CCR2経路阻害剤は、CCR2と相互作用する場合、またはCCR2がエンドセリンA受容体と会合する場合にその下流経路を調節する場合、より大きな親和性および/または効力および/または有効性を有する。例えば、CCR2およびエンドセリンA受容体は、CCR2/ETARヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーとして会合し得る。更に好ましい実施形態では、CCR2経路阻害剤がエンドセリンA受容体阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される場合、組み合わされた親和性、効力および/または有効性は、CCR2経路阻害剤が(同時にまたは逐次にかかわらず)エンドセリンA受容体阻害剤と投与されない場合に達成されるであろう親和性、効力および/または有効性と比較して大きい。なお更なる好ましい実施形態では、CCR2経路阻害剤が(同時にまたは逐次にかかわらず)エンドセリンA受容体阻害剤と共に対象に投与される場合、(親和性、効力および/または有効性によって測定される)相乗効果が達成される。
【0064】
いかなる特定の作用様式にも限定されることを意図しないが、好ましい一実施形態では、エンドセリンA受容体阻害剤は、エンドセリンA受容体がCCR2と会合している場合にエンドセリンA受容体と相互作用するとき、より大きな親和性および/または効力および/または有効性を有する。例えば、CCR2およびエンドセリンA受容体は、CCR2/ETARヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーとして会合し得る。更に好ましい実施形態では、エンドセリンA受容体阻害剤がCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される場合、組み合わされた親和性、効力および/または有効性は、エンドセリンA受容体阻害剤が(同時にまたは逐次にかかわらず)CCR2経路阻害剤と投与されない場合に達成され得る親和性、効力および/または有効性と比較して大きい。なお更なる好ましい実施形態では、エンドセリンA受容体阻害剤を(同時にまたは逐次にかかわらず)CCR2経路阻害剤と共に対象に投与すると、(親和性、効力および/または有効性によって測定される)相乗効果が達成される。
【0065】
いかなる特定の作用様式にも制限されることを意図しないが、好ましい一実施形態では、CCR2経路阻害剤は、CCR2と相互作用する場合、またはCCR2がアンギオテンシン受容体と会合する場合にその下流経路を調節するとき、より大きな親和性および/または効力および/または有効性を有する。例えば、CCR2およびアンジオテンシン受容体は、CCR2/AT1Rヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーとして会合し得る。更に好ましい実施形態では、CCR2経路阻害剤がAT1R遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される場合、組み合わされた親和性、効力および/または有効性は、CCR2経路阻害剤が(同時にまたは逐次にかかわらず)AT1R遮断薬と投与されない場合に達成されるであろう親和性、効力および/または有効性と比較して大きい。なお更なる好ましい実施形態では、CCR2経路阻害剤を(同時にまたは逐次にかかわらず)AT1R遮断薬と共に対象に投与する場合、(親和性、効力および/または有効性によって測定される)相乗効果が達成される。
【0066】
いかなる特定の作用様式にも限定されることを意図しないが、好ましい一実施形態では、AT1R遮断薬は、アンジオテンシン受容体がCCR2と会合している場合、アンジオテンシン受容体と相互作用する場合、より大きな親和性および/または効力および/または有効性を有する。例えば、CCR2およびアンジオテンシン受容体は、CCR2/AT1Rヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーとして会合し得る。更に好ましい実施形態では、AT1R遮断薬がCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される場合、組み合わされた親和性、効力および/または有効性は、AT1R遮断薬が(同時にまたは逐次にかかわらず)CCR2経路阻害剤と共に投与されていない場合に達成されるであろう親和性、効力および/または有効性と比較して大きい。なお更なる好ましい実施形態では、AT1R遮断薬が(同時にまたは逐次にかかわらず)CCR2経路阻害剤と共に対象に投与される場合、(親和性、効力および/または有効性によって測定される)相乗効果が達成される。
【0067】
CCR2/ETARヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーは、それらの同族リガンドによって同時に活性化された場合、各要素単独よりも大きな親和性、効力および/または有効性を有し、CCR2/AT1Rヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーは、それらの同族リガンドによって活性化された場合、各要素単独よりも大きな親和性、効力および/または有効性を有することから、2セットのヘテロ二量体/ヘテロオリゴマーの同時阻害は、高レベルの治療上の利点をもたらすと予想される。
【0068】
処置される対象は、好ましくは、ヒト哺乳動物を含む哺乳動物である。
【0069】
症状または疾患
好ましくは、CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、肺疾患、腎疾患、(急性および慢性)鬱血性心不全、左心室機能不全および肥大性心筋症を含む心血管疾患、糖尿病性心筋症、上室性および心室性不整脈、心房細動または心房粗動、心筋梗塞およびその続発症、アテローム性動脈硬化症、アンギナ(angina)(不安定または安定)、心不全、狭心症(angina pectoris)、糖尿病、続発性アルドステロン症、原発性および続発性肺高アルドステロン症、原発性および肺高血圧症、糖尿病性網膜症、黄斑変性、眼障害、インスリン抵抗性、他の血管障害の管理、例えば、片頭痛、レイノー病、管腔過形成、認知機能障害(アルツハイマー病など)、脳卒中、高カリウム血症、子癇前症、サルコイドーシス、虚血および再灌流傷害、アテローム形成、慢性閉塞性肺疾患、喘息およびアレルギー腎疾患、関節リウマチ、神経障害性疼痛、ならびに掻痒症を含むリストから選択される疾患の処置、改善または予防における使用のためのものである。
【0070】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、腎疾患、より詳しくは、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS;原発性FSGSおよび続発性FSGSを含む)、腎臓における線維性障害、糖尿病性腎症によって引き起こされる慢性腎疾患、腎不全(糖尿病性および非糖尿病性)、ならびに糖尿病性腎症、糸球体腎炎、強皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患のタンパク尿および腎血管性高血圧を含む腎不全症状を含むリストから選択される疾患の処置、改善または予防において使用され得る。
【0071】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、肺疾患、好ましくは感染性または非感染性の炎症性肺疾患の処置、改善または予防に使用され得る。好ましくは、感染性または非感染性の炎症性肺疾患は、市中感染性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、気管支炎、肺気腫、肋膜炎または肺線維症を含むリストから選択される。
【0072】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、心疾患の処置、改善または予防に使用され得る。心疾患は、関節硬化症(arthrosclerosis)、肺高血圧症、虚血性心疾患、心筋症、および炎症性心疾患を含む冠動脈疾患を含むリストから選択され得る。
【0073】
「予防」という用語は、疾患を発症するリスクがあるが、処置時に疾患と診断されない可能性があることを示す症候を有する対象への本発明の組成物の投与を含む。例えば、対象は糖尿病を有し得るが、糖尿病関連腎疾患とまだ診断されていない可能性がある。
【0074】
「改善」という用語は、疾患を有しており、線維症および持続性炎症などの疾患後の症状を発症するリスクがある対象への本発明の組成物の投与を含む。疾患後の症状は、疾患自体に起因し得るか、または肺疾患の急性期に使用される人工呼吸器などの医学的介入に起因し得る。
【0075】
阻害の測定
「エンドセリンA受容体阻害剤」という語句は、エンドセリンA受容体の活性化を阻害または部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むと理解される。
【0076】
「アンジオテンシン1型受容体遮断薬」という語句は、AT1Rの活性化を阻害するまたは部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むと理解される。
【0077】
「ケモカイン受容体2経路阻害剤」という語句は、ケモカイン受容体2に関連する経路のいずれか1つを阻害するかまたは部分的に阻害する任意の化合物または薬剤を含むことを意図する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「阻害する」という用語は、参照と比較した場合に検出可能な限界を下回る減少を意味する。この語句は、望ましくない結果を防止するための動作を阻止すること、遅延させること、または妨げることを含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「部分的に阻害する」という用語は、参照と比較した場合に検出可能な限界内の任意の減少を意味する。この語句は、望ましくない結果を防止するための動作を阻止すること、遅延させること、または妨げることを含む。
【0080】
(i)CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤、または(ii)CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤およびAT1R遮断薬によって引き起こされるCCR2経路、エンドセリンA受容体および/またはAT1Rの阻害または部分阻害は、本明細書に記載のin vitro方法を使用して測定され得、限定されないが、当技術分野で公知のCCR2発現好中球および他の細胞のin vitro走化性移動を評価するための生化学的または細胞アッセイ、ならびにイノシトールリン酸産生、細胞外調節キナーゼ(ERK)リン酸化、cAMP産生、アクチン動員、タンパク質リン酸化、核タンパク質局在化、遺伝子転写、無標識技術(例えば、インピーダンス、光屈折または電荷再分配を使用すること)、近接レポーター系または他のアプローチを使用したGタンパク質カップリング、β-アレスチン動員または媒介シグナル伝達、転写因子ベースのレポーター系、蛍光標識を使用した顕微鏡法、受容体細胞局在化(酵素結合免疫吸着アッセイなど)および蛍光活性化細胞選別を評価するための抗体の使用が挙げられる。
【0081】
(i)CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤、または(ii)CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤およびAT1R遮断薬によって引き起こされるCCR2経路エンドセリンA受容体および/またはAT1Rの阻害または部分阻害は、本明細書に記載のin vivo方法を使用して測定され得る。
【0082】
例えば、疾患が腎疾患である場合、測定としては、限定されないが、自動分析装置などによる血漿クレアチニンおよび尿素の測定によって行われる腎機能の連続測定;タンパク尿の測定、アルブミン尿の測定;およびGFRまたは推定GFR;例えば、糸球体および心肥大、糸球体硬化症および/または線維症および/または糸球体上皮細胞(podocyte)の変化を評価するための光学顕微鏡(LM)による、腎臓および/または心臓および/または眼構造などのエンドポイントの評価、および/または;線維化促進性成長因子のマトリックス沈着および調節の程度ならびにそれらの活性を測定するための免疫組織化学;収縮期血圧の評価、インスリンの空腹時血漿グルコースの調節、ヘモグロビンA1cの調節;ならびに当該分野で公知のものなどの従来のアッセイに従って腎臓および心臓および眼の構造を評価するための分子生物学的技術が挙げられる。阻害または部分阻害は、1またはそれを超える上記のエンドポイントによって測定される腎臓および/または心臓および/または眼の構造の定性的改善、または生活の質の改善もしくは腎臓または全生存などの他の患者の利益のエンドポイントによって示され得る。
【0083】
或いは、疾患が肺疾患である場合、測定としては、限定されないが、肺滲出液の細胞およびサイトカイン含有量の測定、肺活量測定に基づく試験を使用した肺機能の物理的能力を含む肺機能の測定、または測定血液ガスもしくは他の生化学的測定を使用して測定された肺機能的出力、または生存または歩行試験などの定量的方法もしくは患者報告の転帰評価などの定性的方法によって測定された臨床的利益を含む機能的利益の改善が挙げられる。阻害または部分阻害は、1またはそれを超える上記のエンドポイントによって測定される肺構造の定性的改善によって示され得る。
【0084】
別の実施形態では、各構成要素が、いかなる他の構成要素の投与も伴わずに投与された場合のエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬またはCCR2経路阻害剤の有効性と比較すると、医薬製剤の総有効性はより高い。したがって、組み合わせ製剤は、治療量以下の用量を含む単回用量で投与され得るか、またはいずれかの構成要素が単一化合物として投与され得るよりも少ない頻度で投与され得る。
【0085】
好ましくは、任意の構成要素を他の構成要素の投与なしで投与した場合のエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤の有効性の合計と比較すると、医薬製剤の総有効性はより高い。より好ましくは、エンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤を同時投与または逐次投与すると、有効性の相乗効果が観察される。
【0086】
或いは、医薬製剤の総有効性は、任意の構成要素を他の構成要素の投与なしで投与した場合のエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤の有効性の合計に等しい。この代替の更に好ましい実施形態として、エンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤を同時投与または逐次投与した場合、有効性の相加効果が観察される。
【0087】
更なる代替では、医薬製剤の総有効性は、任意の構成要素が他の構成要素の投与なしで投与される場合のエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤の有効性の合計未満である。更なる実施形態では、複合された有効性は、各構成要素が他の構成要素の投与なしで投与された場合のエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤の有効性の合計よりも低いが、処置は、単独で投与されたエンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬またはCCR2経路阻害剤の単一処置と比較してより大きな有効性を提供する。
【0088】
好ましくは、構成要素は、同時に(例えば、各構成要素と共に製剤化された、2つもしくは3つの錠剤として服用されるか、または単一の錠剤として服用される)同時投与されるか、または逐次投与(例えば、別の錠剤の後に服用される1つもしくはまたは2つの錠剤)される。各構成要素の投薬は、一緒に(同時に)、または逐次に、互いに数秒、数分、数日、数週間または数ヶ月以内に行われてもよい。
【0089】
送達
本発明によって提供される剤形は、疾患の処置、改善または予防のための対象への剤形(複数可)の投与のための投与説明書と共に本発明の医薬製剤を含むバイアル、カートリッジ、容器、錠剤またはカプセル剤を更に含み得る。
【0090】
単一投与量を生成するために担体材料と組み合わせることができる各有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変化する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した製剤は、全製剤の約5~95%w/wで変動し得る適切で便利な量の担体材料と共に約0.5mg~1gの各活性化合物を含有し得る。投薬単位形態は、一般に、約0.5mg~500mgの有効成分を含有する。
【0091】
好ましくは、CCR2経路阻害剤は、1日当たり0.5mg~2000mgで提供され、1またはそれを超える用量で提供される。更により好ましくは、CCR2経路阻害剤は、1日当たり0.5mg~50mgの用量で提供され、1またはそれを超える用量で提供される。
【0092】
好ましくは、エンドセリンA受容体阻害剤は、1日当たり0.5mg~2000mgで提供され、1またはそれを超える用量で提供される。更により好ましくは、エンドセリンA受容体阻害剤は、1日当たり0.5mg~300mgの用量で提供され、1またはそれを超える用量で提供される。例えば、ETAR阻害剤はスパルセンタンであり、1日当たり75、150または300mgの用量で投与され、1またはそれを超える用量で提供される。他の例示的な用量としては、1日当たり5mgまたは10mgで投与され、1もしくはそれを超える用量で提供されるアンブリセンタン;1日当たり62.5mgまたは125mgの用量で投与され、1もしくはそれを超える用量で提供されるボセンタン;または1日当たり10mgの用量で投与され、1もしくはそれを超える用量で提供されるマシテンタンが挙げられる。
【0093】
好ましくは、AT1R遮断薬は、1日当たり50mg~500mgで提供され、1またはそれを超える用量で提供される。更により好ましくは、AT1R遮断薬は、1日当たり75mg~300mgで提供される。例えば、AT1R遮断薬はイルベサルタンであり、1日当たり75、150または300mgの用量で投与され、1またはそれを超える用量で提供される。例えば、AT1R遮断薬はスパルセンタンであり、1日当たり75、150または300mgの用量で投与され、1またはそれを超える用量で提供される。
【0094】
各活性剤の用量は、単一剤形、2つの別々の剤形または3つの別々の剤形のいずれかで提供され得る。活性物質は、1日当たり約0.5mg~2gのCCR2経路阻害剤、約0.5mg~2gのETAR阻害剤および/または約50mg~500mgのAT1R遮断薬として提供され得る。活性物質の用量は、単一剤形、2つの別々の剤形または3つの別々の剤形のいずれかで提供され得る。
【0095】
しかしながら、任意の特定の対象に対する特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ、および治療を受けている特定の症状または疾患の重症度を含む様々な因子に依存することが理解されよう。
【0096】
本発明の製剤は、様々な態様において、注射によって投与され得るか、または経口、肺、経鼻もしくは任意の他の形態の投与のために調製され得る。好ましくは、製剤は、例えば、経口投与または胃栄養チューブを介して、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、眼内投与、脳室内投与、頭蓋内投与、嚢内投与、脊髄内投与、大槽内投与、腹腔内投与、口腔内投与、直腸投与、膣投与、鼻腔内投与またはエアロゾル投与によって投与される。
【0097】
投与様式は、一態様では、製剤が調製された形態に少なくとも適している。最も効果的な応答のための投与様式は経験的に決定され得、以下に記載される投与手段は例として与えられ、決して本発明の製剤の送達方法を限定するものではない。提供される全ての製剤は、製薬業界で一般的に使用され、適切な資格を有する医師に一般的に知られている。
【0098】
注射用剤形
特定の態様における本発明の製剤は、薬学的に許容され得る非毒性賦形剤および担体を含み得、皮下、静脈内および腹腔内注射などの任意の非経口技術によって投与され得る。更に、製剤は、必要に応じて1またはそれを超えるアジュバントを含有してもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的担体」は、化合物を対象に送達するための薬学的に許容され得る溶媒、懸濁化剤、賦形剤またはビヒクルである。担体は、液体または固体であってもよく、計画された投与様式を念頭に置いて選択される。
【0099】
注射用途に適した医薬形態は、必要に応じて滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。或いは、本発明の化合物は、特定の態様では、リポソームにカプセル化され、細胞膜を横切るそれらの輸送を補助するために注射液において送達される。代替的に、または追加して、そのような調製物は、細胞膜を横切る輸送を促進するための自己集合性細孔構造の構成要素を含有する。担体は、様々な態様では、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒である。適切な流動性は、例えば、限定されないが、レシチンなどのコーティングによって、分散の場合に必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0100】
本発明はまた、本発明による治療上有効な医薬製剤および放出遅延剤を含む注射用の持続放出医薬製剤の長期吸収を提供する。放出遅延剤は、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンであり得る。
【0101】
滅菌注射液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した1またはそれを超える他の成分と共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された有効成分を、基本的な分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、特定の態様での調製は、限定されないが、有効成分+任意の追加の所望の成分の粉末を以前に滅菌濾過した溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥技術を含む。
【0102】
経口剤形
本明細書での使用が意図されるのは、参照により本明細書に組み込まれる、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990 Mack Publishing Co.Easton PA 18042)の第89章に一般的に記載されている経口剤形である。固体剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤またはロゼンジ剤、カシェ剤、液剤、懸濁剤またはペレット剤が挙げられる。また、リポソームまたはプロテノイドカプセル化を使用して、本発明の製剤を(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されているプロテノイドミクロスフェアとして)製剤化することができる。リポソーム封入を使用してもよく、リポソームを様々なポリマーで誘導体化してもよい(例えば、米国特許第5,013,556号)。治療薬の可能な固体剤形の説明は、参照により本明細書に組み込まれる、Modern Pharmaceutics,Chapter 10,Banker and Rhodes ed.,(1979)においてMarshallにより記載されている。一般に、製剤は、本発明の一部として記載される化合物(またはその化学的に修飾された形態)、および胃の環境からの保護および腸内での生物学的活性物質の放出を可能にする不活性成分を含む。
【0103】
本発明の経口剤形は、昏睡状態にあるおよび/または呼吸器を使用している、錠剤などを嚥下することができない患者の栄養管に直接送達される液体、懸濁液または他の適切な剤形であり得る。
【0104】
本発明のCCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤またはAT1R遮断薬の場合、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃内では溶解しないが、十二指腸または腸内の他の場所で材料を放出する利用可能な製剤を有する。一態様では、放出は、製剤の保護によって、または十二指腸もしくは腸内の他の場所などの胃環境を超えた化合物の放出によって、胃環境の有害な影響を回避する。
【0105】
胃に対する保護を意図していないコーティングまたはコーティングの混合物を錠剤に使用することもできる。これには、限定されないが、糖コーティング、または錠剤を嚥下しやすくするコーティングが含まれる。例示的なカプセル剤は、乾燥治療薬、すなわち粉末の送達の場合には、硬質シェル(ゼラチンなど)からなり、液体形態の場合には、軟質ゼラチンシェルを使用してもよい。特定の態様におけるカシェ剤のシェル材料は、濃いデンプンまたは他の食用紙である。丸剤、ロゼンジ剤、成形錠剤または錠剤トリチュレートの場合、限定されないが、モイスト・マッシング技術(moist massing techniques)も企図される。
【0106】
本明細書で使用される場合、「持続放出」という用語は、経口摂取後の治療用化合物含有量の比較的長期間にわたる漸進的であるが連続的または持続的な放出を意味する。放出は、医薬製剤が胃から通過した後、医薬製剤が腸に到達するまでおよびその後に継続し得る。「持続放出」という語句はまた、医薬製剤が胃に到達したときに治療用化合物の放出が直ちに開始されるのではなく、例えば医薬製剤が腸に到達するまでの期間にわたって遅延される遅延放出を意味する。腸に到達すると、pHの上昇は、医薬製剤からの治療用化合物の放出を誘発し得る。
【0107】
「放出遅延剤」という用語は、本明細書で使用される、経口摂取した場合に医薬製剤からの治療用化合物の放出速度を低下させる物質を意味する。放出遅延剤は、ポリマーであってもよく、または非ポリマーであってもよい。放出遅延剤は、例えば、拡散系、溶解系および/または浸透系を含むいくつかの持続放出系のいずれか1つに従って使用され得る。
【0108】
特定の態様では、治療薬は、粒径約1mmの顆粒またはペレットの形態の微細な多粒子として製剤に含まれる。カプセル投与のための材料の製剤は、特定の態様では、粉末、軽度に圧縮されたプラグ、または錠剤でさえある。一態様では、治療薬は圧縮によって調製することができる。
【0109】
着色剤および香味剤は、必要に応じていずれも含まれる。例えば、化合物は、製剤化され(例えば、限定されないが、リポソームまたはミクロスフェア封入)、次いで、着色剤および香味剤を含有する冷蔵飲料などの食用製品内に更に含有され得る。
【0110】
一態様では、不活性材料で希釈または増加された治療薬の体積。これらの希釈剤は、炭水化物、特にマンニトール、アルファ-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、変性デキストランおよびデンプンを含み得る。特定の無機塩も、必要に応じて、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む充填剤として使用される。いくつかの市販の希釈剤は、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0111】
他の実施形態では、崩壊剤が治療薬の固体剤形への製剤に含まれる。崩壊剤として使用される材料としては、デンプンに基づく市販の崩壊剤、Explotabを含むデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトも企図される。崩壊剤の別の形態は、不溶性カチオン性交換樹脂である。粉末ガムはまた、必要に応じて崩壊剤および結合剤として使用され、これらには、限定されないが、寒天、カラヤ(Karaya)またはトラガカントなどの粉末ガムが含まれる。アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0112】
結合剤は、治療用化合物を一緒に保持して硬質錠剤を形成することが企図され、限定されないが、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンなどの天然産物からの材料を含む。他の結合剤としては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、治療薬を顆粒化するためのアルコール溶液における使用が企図されている。
【0113】
製剤化プロセス中の固着を防止するために、摩擦防止剤を治療薬の製剤中に必要に応じて含めてもよい。潤滑剤は、必要に応じて、治療薬とダイ壁(die wall)との間の層として使用されてもよく、これらには、限定されないが、そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスを含み得る。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、ならびにCarbowax 4000および6000などの例示的な可溶性潤滑剤も使用され得る。
【0114】
製剤化中の化合物の流動特性を改善し、圧縮中の再配列を助ける可能性がある流動化剤を必要に応じて添加してもよい。流動化剤としては、限定されないが、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和ケイアルミン酸塩(hydrated silicoaluminate)が挙げられ得る。
【0115】
治療薬の水性環境への溶解を助けるために、特定の実施形態では、湿潤剤として界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、例えば、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびジオクチルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が挙げられ得る。カチオン性界面活性剤が、必要に応じて使用されてもよく、限定されないが、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられ得る。界面活性剤として製剤に含めることができる可能性のある非イオン性界面活性剤のリストは、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースである。使用される場合、これらの界面活性剤は、単独で、または異なる比率の混合物として、化合物の製剤中に存在し得る。
【0116】
化合物の取り込みを潜在的に高める添加剤は、例えば、限定されないが、脂肪酸オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0117】
制御放出製剤が望ましい場合がある。これらの製剤も企図される。特定の態様では、化合物は、拡散または浸出機構、のいずれかによる放出を可能にする不活性マトリックス、すなわちガム(gum)に組み込むことができる。いくつかの態様ではまた、ゆっくりと分解するマトリックスを製剤に組み込んでもよい。この治療薬の制御放出の別の形態は、Oros治療システム(Alza Corp.)に基づく方法によるものであり、すなわち、薬物は、水が浸透効果により単一の小さな開口部に入って薬物を押し出すことを可能にする半透膜に封入される。一部の腸溶コーティングはまた、遅延放出効果を有する。
【0118】
他の態様では、材料の混合物を使用して最適なフィルムコーティングを提供し得る。フィルムコーティングは、例えば、限定されないが、パンコータ内で、または流動床内で、または圧縮コーティングによって行うことができる。
【0119】
肺剤形および鼻剤形
本発明の製剤の肺送達も本明細書で企図される。これらの態様では、CCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤、またはAT1R遮断薬は、吸入しながら対象の肺に送達され、肺上皮内層を横切って血流に移動し得る。
【0120】
本発明の実施における使用が意図されているのは、これらに限定されないが、全て当業者によく知られているネブライザ、定量吸入器および粉末吸入器を含む、治療用製品の肺送達用に設計された広範囲の機械装置である。
【0121】
本発明の実施に適した市販の装置のいくつかの具体例は、例えば、限定されないが、ミズーリ州セントルイスのMallinckrodt,Inc.によって製造されたUltraventネブライザ;コロラド州イングルウッドのMarquest Medical Productsによって製造されたAcorn IIネブライザ;ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークのGlaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolinaによって製造されたVentolin定量吸入器;およびマサチューセッツ州ベッドフォードのFisons Corp.によって製造されたSpinhaler粉末吸入器である。
【0122】
そのような装置は全て、化合物の分配に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、使用される装置の種類に特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/または担体に加えて、適切な噴射剤材料の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセルもしくはミクロスフェア、包接錯体、または他のタイプの担体の使用も企図される。
【0123】
ジェット式または超音波式のいずれかのネブライザによる使用に適した製剤は、典型的には、水に懸濁された化合物を含む。製剤はまた、一態様では、緩衝液および単純糖(例えば、タンパク質の安定化および浸透圧の調節のため)を含み得る。一実施形態では、ネブライザ製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の霧化によって引き起こされる化合物の表面誘起凝集を低減または防止するために、界面活性剤を含有してもよい。
【0124】
定量吸入装置による使用のための製剤は、一般に、一態様では、界面活性剤の助けを借りて噴射剤に懸濁された化合物を含有する微粉末を含む。噴射剤は、この目的のために使用される任意の従来の材料、例えば、限定されないが、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2テトラフルオロエタン、またはそれらの組み合わせを含む炭化水素であってもよい。適切な界面活性剤としては、ソルビタントリオレエートおよび大豆レシチンが挙げられるが、これらに限定されない。オレイン酸はまた、特定の態様では、界面活性剤として有用であり得る。
【0125】
粉末吸入装置から分配するための製剤は、化合物を含有する乾燥微粉末を含み、装置からの粉末の分散を容易にする量、例えば製剤の50~90重量%でラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールなど(これらに限定されない)の増量剤を含んでもよい。特定の実施形態では、化合物(複数可)は、遠位肺への最も効果的な送達のために、10ミクロン未満、最も好ましくは0.5~5ミクロンの平均粒径を有する粒子形態で調製される。
【0126】
化合物の経鼻送達も企図される。鼻送達は、治療用製品を鼻に投与した後に、肺に製品を沈着させる必要なく、直接血流へのタンパク質の通過を可能にする。経鼻送達のための製剤としては、例えば、限定されないが、デキストランまたはシクロデキストランを含む製剤が挙げられる。
【0127】
投薬スケジュール
特定の態様では、本発明の製剤は、単回投薬スケジュールとして、または好ましくは複数回投薬スケジュールで与えられ得ることが理解されよう。複数回用量スケジュールは、送達の一次過程が1~10回の別々の用量であってもよく、必要に応じてその後に、処置を維持または強化するために必要とされるその後の時間間隔で与えられる他の用量が続くスケジュールである。投与計画はまた、少なくとも部分的に、個体の必要性および医師の判断によって決定される。
【0128】
したがって、本発明は、本発明の医薬製剤を含む錠剤、本発明の医薬製剤を含むカプセル剤、本発明の医薬製剤を含む注射用懸濁液、および本発明の医薬製剤を含む肺送達用製剤を提供する。エンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤は、同じ製剤で送達されてもよく、または別々の製剤で送達されてもよい。
【0129】
エンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤は、同じ剤形であってもよく、別々の剤形であってもよい。エンドセリンA受容体阻害剤、AT1R遮断薬および/またはCCR2経路阻害剤を投与されている対象は、1またはそれを超える活性剤を既に受けていてもよく、本発明によれば、本発明の処置の他の構成要素(複数可)を投与されてもよい。本発明の処置は、CCR2経路阻害剤およびエンドセリンA受容体阻害剤のみの投与を含み得るか、またはCCR2経路阻害剤、エンドセリンA受容体阻害剤およびAT1R遮断薬の投与を含み得る。
【0130】
賦形剤
CCR2経路阻害剤、ETAR阻害剤およびAT1R遮断薬は、それぞれの活性剤の薬学的に許容され得る塩であり得る。薬学的および獣医学的に許容され得る塩には、本開示の化合物の生物学的な有効性および特性を保持し、生物学的または他の点で望ましくないものではない塩が含まれる。多くの場合、本明細書に開示される化合物は、アミノ基および/またはカルボキシル基またはそれに類似する基の存在によって酸塩および/または塩基塩を形成することができる。許容され得る塩基付加塩を、無機塩基および有機塩基から調製することができる。無機塩基から誘導される塩としては、単なる例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、限定されないが、一級、二級および三級アミンの塩、例えば単なる例として、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、二置換シクロアルキルアミン、三置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、二置換シクロアルケニルアミン、三置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、複素環アミン、ジヘテロ環アミン、トリヘテロ環アミン、アミン上の置換基の少なくとも2つが異なり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環などからなる群から選択される混合ジアミンおよびトリアミンが挙げられる。2つまたは3つの置換基が、アミノ窒素と一緒になって複素環基またはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。
【0131】
薬学的および獣医学的に許容され得る酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製され得る。使用され得る無機酸としては、単なる例として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。使用され得る有機酸としては、単なる例として、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0132】
本開示において有用な化合物の薬学的または獣医学的に許容され得る塩を、従来の化学的方法によって、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水もしくは有機溶媒中、または2つの混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences.17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1985),p.1418に見られ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。そのような許容され得る塩の例は、ヨージド、アセテート、フェニルアセテート、トリフルオロアセテート、アクリレート、アスコルベート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、メチルベンゾエート、o-アセトキシベンゾエート、ナフタレン-2-ベンゾエート、ブロミド、イソブチレート、フェニルブチレート、γ-ヒドロキシブチレート、β-ヒドロキシブチレート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、カプロレート、カプレート、塩化物、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩(hydroxymaleate)、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオレート(propiolate)、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-I-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩等である。
【0133】
使用
本発明はまた、疾患の処置、改善または予防のための剤形の製造のための
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
を含む、医薬組成物の使用を企図する。
【0134】
本発明は更に、疾患の処置、改善または予防のための剤形の製造のための
a)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩と、
を含む、医薬組成物の使用を企図する。
【0135】
本発明は、疾患を処置、改善または予防するための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0136】
本発明は、疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩、および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0137】
本発明は、以下を提供する:
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤であって、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤が、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤。
・疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのCCR2経路阻害剤であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤。
疾患の処置、改善または予防のための製剤における使用のための少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬であって、少なくとも1つのCCR2経路阻害剤が、少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤および少なくとも1つのCCR2経路阻害剤と同時にまたは逐次に対象に投与される、少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体遮断薬。
【0138】
好ましくは、疾患は、腎疾患、肺疾患または心疾患である。腎臓疾患は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS;原発性FSGSおよび続発性FSGSを含む)、腎臓における線維性障害、糖尿病性腎症によって引き起こされる慢性腎疾患、腎不全(糖尿病性および非糖尿病性)、ならびに糖尿病性腎症、糸球体腎炎、強皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患のタンパク尿および腎血管性高血圧を含む腎不全症状を含むリストから選択され得る。肺疾患は、感染性または非感染性の炎症性肺疾患であり得、好ましくは、市中感染性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、気管支炎、肺気腫、肋膜炎または肺線維症を含むリストから選択され得る。心疾患は、冠動脈疾患であり得、好ましくは、関節硬化症(arthrosclerosis)、肺高血圧症、虚血性心疾患、心筋症、および炎症性心疾患を含むリストから選択され得る。
【0139】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、同じ剤形または別々の剤形で投与され得る。エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤およびAT1R遮断薬は、同時投与または逐次投与され得る。
【0140】
エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬は、エンドセリンA受容体阻害剤、CCR2経路阻害剤および/またはAT1R遮断薬の薬学的に許容され得る塩であってもよい。
【0141】
キット
本発明は、疾患の処置、改善または予防のためのキットであって、当該キットが、
a)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)経路阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)使用説明書と、を含む、疾患の処置、改善または予防のためのキットを提供する。
【0142】
本発明は、疾患の処置、改善または予防のためのキットであって、当該キットが、
a)少なくとも1つのケモカイン受容体2(CCR2)経路阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
b)少なくとも1つのエンドセリンA受容体阻害剤またはその薬学的に許容され得る塩と、
c)少なくとも1つのアンジオテンシン1型受容体(AT1R)遮断薬またはその薬学的に許容され得る塩と、
d)使用説明書と、を含む、疾患の処置、改善または予防のためのキットを提供する。
【0143】
キットの内容物を凍結乾燥することができ、キットは更に、凍結乾燥された構成要素の再構成に適した溶媒を含むことができる。キットの個々の構成要素は、別々の容器に包装され、そのような容器に関連して、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知とすることができ、この通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0144】
キットの構成要素が1またはそれを超える液体溶液で提供される場合、液体溶液は水溶液、例えば滅菌水溶液であり得る。in vivo使用のため、発現コンストラクトは、薬学的に許容され得る注射可能な組成物に製剤化され得る。この場合、容器手段は、それ自体が吸入剤、シリンジ、ピペット、点眼器、または他のそのような装置であってもよく、そこから製剤が肺などの動物の患部に適用され、動物に注射され、またはキットの他の構成要素に適用され、それと混合されてもよい。
【0145】
キットの構成要素はまた、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供されてもよい。試薬または構成要素が乾燥形態として提供される場合、再構成は一般に適切な溶媒の添加によるものである。溶媒はまた、別の容器手段において提供されてもよいことが想定される。容器の数または種類にかかわらず、本発明のキットはまた、動物の体内への最終的な複雑な組成物の注射/投与または配置を補助するための器具を含んでもよく、またはそれと共に包装されてもよい。そのような器具は、吸入剤、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、または任意のそのような医学的に承認された送達ビヒクルであり得る。
【0146】
一般
当業者は、本明細書に記載された本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正を受けやすいことを理解するであろう。本発明は、全てのそのような変形および修正を含む。本発明はまた、本明細書で言及されるかまたは示される工程、特徴、製剤および化合物の全てを個々にまたは集合的に含み、工程または特徴のありとあらゆる組み合わせまたは2もしくはそれを超えるいずれかを含む。
【0147】
本明細書に引用されている各文書、参考文献、特許出願または特許は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれており、これは、この明細書の一部として読者によって読まれ検討されるべきであることを意味する。本明細書で引用された文献、参考文献、特許出願または特許が本明細書で繰り返されていないことは、単に簡潔さのためである。
【0148】
本明細書で言及される任意の製品についてのまたは参照により本明細書に組み込まれる任意の文書における、任意の製造者の指示書、説明書、製品仕様書、および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施に使用され得る。
【0149】
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれによっても限定されない。これらの実施形態は、例示のみを目的としている。機能的に等価な生成物、製剤および方法は、本明細書中に記載されるような本発明の範囲内であることは明らかである。
【0150】
本明細書に記載の発明は、1またはそれを超える値の範囲(例えば、サイズ、変位、および電界強度など)を含むことができる。値の範囲は、範囲を定義する値、および範囲に対する境界を定義する値に直接隣接する値と同じまたは実質的に同じ結果をもたらす範囲に隣接する値を含む、範囲内の全ての値を含むと理解される。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。したがって、「約80%」は、「約80%」を意味し、「80%」も意味する。少なくとも、各数値パラメータは、有効数字の数および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0151】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを意味すると理解される。また、本開示において、特に特許請求の範囲および/または段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語は、米国特許法においてそれに起因する意味を有することができることに留意されたい。例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味することができる。「から本質的になる(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰される意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されていない要素を可能にするが、先行技術において見出されるか、または本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を及ぼす要素を除外する。
【0152】
本明細書で使用される選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出され、全体を通して適用され得る。他に定義されない限り、本明細書で使用される他の全ての科学用語および技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。「活性剤」という用語は、1つの活性剤を意味してもよく、または2もしくはそれを超える活性剤を包含してもよい。
【0153】
以下の実施例は、上述の本発明を使用する方法をより完全に説明するとともに、本発明の様々な態様を実施するために企図される最良の形態を説明するのに役立つ。これらの方法は決して本発明の真の範囲を限定するものではなく、むしろ例示目的のために提示されていることが理解される。
参考文献
・ Taylor et al,(2011)J Clin Hypertens.13:677-686
・ Rios et al.(2000)Pharmacol.Ther.92:71-87
・ Pfleger et al.(2006)Cell Signal 18:1664-1670
・ Pfleger et al.(2006)Nat Protoc 1:336-344
・ Ayoub et al.(2015)PLoS One 10(3):e0119803
【実施例】
【0154】
本発明の更なる特徴は、以下の非限定的な実施例においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。上記のような本発明の広範な説明に対する制限として理解されるべきではない。
【0155】
実施例1
受容体機能的相互作用についてのアッセイ
HEK293FT細胞をおよそ700,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、10%ウシ胎児血清(FCS;Bovogen)を補充した完全培地(0.3mg/mlグルタミン、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM(Thermo Fisher))中37°C、5%CO2で維持した。播種の24時間後に、製造者の説明書に従ってFuGene6(Promega)を使用して一過性トランスフェクションを行った。トランスフェクションの24時間後、細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン/0.53mM EDTAを用いて剥離し、5%FCSを含有するフェノールレッド非含有完全培地に再懸濁し、ポリ-L-リシン被覆白色96ウェルマイクロプレート(Greiner Bio-One)に添加した。トランスフェクションの48時間後、最終濃度30μMのEnduRen(商標)(Promega)を用いて細胞を37°C、5%CO2で2時間プレインキュベーションした後、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイを行った。BRET測定を、CLARIOstar(BMG Labtech)を使用して37°Cで行った。「ドナー波長ウインドウ」(410~490nm)および「アクセプタ波長ウインドウ」(520~620nm)の各々において1秒間、フィルタリングされた光の発光を連続的に測定した。
【0156】
アンタゴニストアッセイのため、細胞をEnduRen中で2時間プレインキュベートした。拮抗薬(10μM)を添加し、アッセイを30分間読み取った。その後、作動薬(CXCL8 10nM、AngII 100nM)を添加し、測定を更に1時間続けた。
【0157】
相互作用するタンパク質間で観察されるBRETシグナルは、バックグラウンドBRET比を差し引くことによって正規化される。これは、2つの方法(Pflegerら(2006)Cell Signal 18:1664-1670;Pflegerら(2006)Nat Protoc 1:336-344を参照)のうちの1つで行うことができる:1)ドナーコンストラクトのみを含有する細胞試料についての460~490nmの発光に対する520~550nmの発光の比を、相互作用するアクセプタおよびドナー融合タンパク質を含有する試料についての同じ比から差し引く;2)ビヒクルで処置した細胞試料の460~490nm発光に対する520~550nm発光の比を、リガンドで処置した同じ細胞試料の第2のアリコートについての同じ比から差し引く。以下の実施例では、第2の計算を使用し、シグナルを「リガンド誘導BRET」と記載する。
【0158】
受容体-ヘテロマー調査技術(受容体-HIT)は、受容体複合体への洞察を提供するアッセイ構成である(Ayoubら(2015)PLoS One 10(3):e0119803)。受容体-HITは、GPCRを評価する場合、GPCR-HITとしても知られている。それは、1つの受容体(例えば、CCR2)が近接ベースのレポーター系(例えば、BRET)の1つの構成要素(例えば、ウミシイタケルシフェラーゼ変異体Rluc8)で標識され、その相補的構成要素(例えば、黄色蛍光タンパク質Venus)が受容体相互作用パートナー(例えば、β-アレスチン2)に融合されるアッセイ構成である。BRETアッセイ(例えば、ヘマグルチニンエピトープタグ付AT1R;HA-AT1R)に関してタグ付けされていない受容体に選択的なリガンド(例えば、AngII)による処置は、BRETタグ付き受容体と相互作用パートナーとの近接性の調節をもたらし、2つの受容体間の機能的相互作用を示すBRETシグナルの変化をもたらす。
【0159】
結果
図1は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、非標識CCR2の存在下でETARをRluc8でタグ付けし、β-アレスチンをVenusでタグ付けすると、予想されるように、ET-1の存在下でだけでなく、CCL2/MCP1の存在下でもβ-アレスチンがETARに動員されることを示し、これにより受容体間の複合体の存在が確認される。両方のリガンドの存在は、β-アレスチン動員の過剰活性化を引き起こし、このヘテロマーの相互作用が確認される。
【0160】
図2は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、CCL2が存在する場合にETARへのβ-アレスチン動員が起こることを示し、ETARと非標識CCR2との相互作用が確認される。スパルセンタンは、CCL2/CMP-1およびET-1リガンドの両方が存在するが、ETARへのβ-アレスチンの動員を停止させない場合、過活性化を抑制することができる。
【0161】
図3は、ETAR/Rluc8+Barr2/Venus+CCR2のグラフであり、ETARおよびCCR2ヘテロマーの過剰活性化がスパルセンタン阻害またはCCR2阻害のいずれかの添加によって抑制することを示している。ETARは、CCR2の存在にかかわらず、ET-1で刺激された場合に低規模でβ-アレスチンを動員することができ、スパルセンタンはCCR2活性化とは無関係にこのシグナル伝達を阻害する。ETARへのβ-アレスチン動員の完全な阻害は、CCR2およびETARが同時に阻害される場合に、ET-1およびCCL2/MCP-1が存在するときにのみ起こる。
【0162】
図4は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、非標識ETARの存在下でCCR2がRluc8でタグ付けされ、β-アレスチンがVenusでタグ付けされ、CCL2/MCP-1の存在下でβ-アレスチンがCCR2に動員される異なる実験的配向を示す。CCL2/MCP-1リガンドおよびET-1リガンドの両方の存在下でβ-アレスチンの動員の増加が観察され、CCR2とETARとの間の相互作用の存在が確認される。
【0163】
図5は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、ETAR活性化がスパルセンタンで遮断された場合、CCL2/MCP-1およびET-1の存在下でβ-アレスチンの動員の増加は観察されないことを示す。
【0164】
図6は、CCR2/Rluc8+Barr2/Venus+HA-ETARのグラフであり、これは、ET-1によるETAR活性化の有無にかかわらず、CCR2が阻害された場合に、CCL2/MCP-1の存在下でCCR2へのβ-アレスチンの動員がないことを示す。
【0165】
実施例2
製剤
本発明における使用のための例示的な製剤。
表1:例示的な製剤
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【国際調査報告】