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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555590
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2022050614
(87)【国際公開番号】W WO2022189788
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2103241.2
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】イラニ,サロシュ アール
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターズ,パトリック
(57)【要約】
本発明は、抗体関連自己免疫疾患、特に、神経疾患、例えば、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)またはLGI1抗体脳炎を有する対象の病状を評価するためのバイオマーカーに関する。本発明は、抗体関連自己免疫疾患における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルに特に注目し、これを使用して対象が再発状態にあるかどうかを判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体関連自己免疫疾患または抗体媒介自己免疫疾患であると診断されている対象の病状を判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在、および/またはCXCL13のレベルもしくは存在を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
病状が、対象が再発状態にあるかどうかの判定、再発の可能性の判定、対象を治療すべきかどうかの判定、または対象が治療から利益を得る可能性が高いかどうかの判定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在が、再発の可能性がより高いことを示すか、もしくは対象が再発状態にあることを示すか、もしくは対象を治療すべきであることを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高いことを示すか、または
(b)参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識する高レベルのIgMアイソタイプ抗体もしくはこのレベルの未変化が、再発の可能性がより高いことを示すか、もしくは対象が再発状態にあることを示すか、もしくは対象を治療すべきであることを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高いことを示すか、または
(c)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の非存在が、再発の可能性がより低いことを示すか、もしくは対象が再発状態にないことを示すか、もしくは対象を治療すべきではないことを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高いしないことを示すか、または
(d)参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識する低レベルのIgMアイソタイプ抗体が、再発の可能性がより低いことを示すか、もしくは対象が再発状態にないことを示すか、もしくは対象を治療すべきではないことを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高いしないことを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つまたは複数のIgAクラスのレベルまたはこのレベルの変化を決定する工程をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
対象から得られた生体試料に存在する所与のIgにより認識される優勢なエピトープの変化を決定する工程をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つもしくは複数のIgGサブクラスのレベルもしくはこのレベルの変化を決定する工程をさらに含むか、または
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在を決定する代わりに、対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つもしくは複数のIgGサブクラスのレベルもしくはこのレベルの変化を決定する工程を代替的に含むか、または
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在を決定する代わりに、特異的抗原を認識する抗体の優勢なIgGサブクラスのスイッチが起きているかどうかを判定する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
参照試料における特異的抗原を認識するIgGサブクラスのレベルと比較した特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルの上昇が、再発の可能性がより高いことを示すか、もしくは対象が再発状態にあることを示すか、もしくは対象を治療すべきであることを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高いことを示すか、または
参照試料における特異的抗原を認識するIgGサブクラスのレベルと比較して特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルが上昇しない場合、再発の可能性がより低いことを示すか、もしくは対象が再発状態にないことを示すか、もしくは対象を治療すべきではないことを示すか、もしくは対象が治療から利益を得る可能性が高くないことを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
IgGサブクラスが、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4の1つまたは複数、例えばすべてである、請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
抗体媒介自己免疫疾患が、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)または脳炎である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
抗体媒介自己免疫疾患がNMOSDである場合、特異的抗原が、AQP4であり、および/または抗体媒介自己免疫疾患が脳炎である場合、特異的抗原が、LGI1であり、抗体媒介自己免疫疾患が脳炎である場合、方法が、CXCL13のレベルまたは存在を決定することをさらに含んでもよい、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
抗体媒介自己免疫疾患がNMOSDである場合、治療が、抗CD20抗体、例えば、リツキシマブ、オファツムマブもしくはオクレリズマブ、ステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、IL-6Rを認識するかもしくはIL-6R活性を低下させるmAB等の薬剤、CD19を認識するかもしくはCD19活性を低下させるmAb等の薬剤、補体経路成分の機能を変化させる薬剤(例えば、エクリズマブ)、およびボルテゾミブ等の1つもしくは複数であり、ならびに/または
抗体媒介自己免疫疾患が脳炎である場合、治療を1つもしくは複数の免疫治療薬、例えば、コルチコステロイド、免疫グロブリン静注、血漿交換、B細胞枯渇剤[例えば、リツキシマブ(RTX)およびイネビリズマブ]、IgG枯渇剤(例えば、FcRn阻害物質)、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルおよびサトラリズマブと併用する、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
参照試料が、対象から得られた血液、血清、血漿、唾液、リンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液、または脳脊髄液試料である、請求項3から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
参照試料が、対象から得られたリンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液である、請求項3から12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマーカーおよびその使用に関する。特に、抗体関連自己免疫疾患、特に、神経疾患、より詳細には、抗体媒介自己免疫疾患、例えば、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)またはLGI1抗体脳炎を有する対象の病状を評価するためのバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
視神経脊髄炎スペクトラム障害は、アクアポリン4(AQP4)の細胞外ドメインを認識するIgG自己抗体により引き起こされる。したがって、AQP4の細胞外ドメインを認識するIgG自己抗体の存在は、NMOSDの診断において有用である。
【0003】
ロイシンリッチグリオーマ不活性化タンパク質1(leucine rich glioma inactivated 1)(LGI1)を認識するIgG自己抗体を使用して、患者がてんかん発作、認知障害、末梢神経障害および睡眠障害:LGI1抗体脳炎(または抗LGI1抗体脳炎)を示す異なる疾病を診断する。LGI1自己抗体は、免疫組織化学的および細胞系アッセイを含む多様な方法を使用して検出される。LGI1抗体脳炎を有する患者は、コルチコステロイド、免疫グロブリン静注、血漿交換、B細胞枯渇剤[例えば、リツキシマブ(RTX)およびイネビリズマブ]、IgG枯渇剤(例えば、FcRn阻害物質)、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルおよびサトラリズマブを含む免疫治療薬に良好に応答し得る。患者の大多数が改善する一方、再発が一般的であり、およそ10~40%の割合で発症する。
【0004】
AQP4-IgGは主に、IgG1サブクラスの免疫グロブリンであり、この主要な発症機構は、補体により媒介される星状膠細胞の損傷を介する可能性が高い。他の兆候が認識されても、典型的には、脊髄炎および/または視神経炎の離散性の臨床的再発により、患者の身体障害が生じる。治療しなければ、NMOSDを有する患者は、平均で1年に1~5回再発し、各再発とともに生じる身体障害の自然増加を含む健康の段階的悪化を伴う。脳幹を侵す発作により、小さいが死のリスクも存在する。年間再発率は、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、エクリズマブ、サトラリズマブ、イネビリズマブおよび抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)(CAS174722-31-7)を含む多様な免疫治療薬により部分的に低下する。NMOSDを有するほとんどの患者は、このような選ばれた薬物により、生涯にわたって治療され、これらはすべて、場合により重大な異なる副作用を伴う。したがって、このような薬物を処方する場合、警戒レベルが必要とされ、可能であれば、不必要な治療を回避すべきである。
【0005】
RTX治療は高額であり、通常、およそ6カ月毎、および/またはCD19/CD27細胞数が増加した場合に投与する。RTXにより、循環するB細胞は効率的に枯渇するが、典型的CD20陰性形質細胞は温存され、血清AQP4-IgGレベルは着実には低下しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗体媒介自己免疫疾患を有する患者の病状を判定するためのさらなるバイオマーカーの必要性が当技術分野において存在する。したがって、抗体媒介自己免疫疾患を有する個体における病状の指標とするために使用し得る1つまたは複数のバイオマーカーを提供することが本発明の目的である。例えば、抗体媒介自己免疫疾患を有する個体が、所与の時点で治療から利益を得る可能性が高いか否かを判定し、および/または抗体媒介自己免疫疾患を有する個体が、再発しているか否かを判定するためにも使用し得るバイオマーカーが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様では、抗体関連自己免疫疾患であると診断されている対象の病状を判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルまたは存在を決定することと
を含む、方法を提供する。
【0008】
任意の態様では、抗体関連自己免疫疾患は、神経性自己免疫疾患であり得る。任意の態様の抗体関連自己免疫疾患は、NMOSD、自己免疫性脳炎の型、例えば、NMDAR抗体脳炎、尋常性天疱瘡、重症筋無力症、グレーブス病、1型糖尿病、グッドパスチャー症候群、アジソン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、血栓性血小板減少性紫斑病、血管炎、関節リウマチ、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、シェーグレン症候群および悪性貧血からなる群から選択され得る。
【0009】
別の態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断されている対象の病状を判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルまたは存在を決定することと
を含む、方法を提供する。
【0010】
任意の態様の抗体媒介自己免疫疾患は、胚中心反応により駆動し得る。任意の態様の抗体媒介自己免疫疾患は、NMOSDまたは脳炎であり得る。
【0011】
好ましくは、任意の態様の抗体媒介自己免疫疾患は、NMOSDまたは脳炎であり得る。
【0012】
抗体関連自己免疫疾患または抗体媒介自己免疫疾患が脳炎である場合、特異的抗原は、LGI1であり得る。
【0013】
抗体関連自己免疫疾患または抗体媒介自己免疫疾患がNMOSDである場合、特異的抗原は、AQP4であり得る。
【0014】
抗体関連自己免疫疾患が尋常性天疱瘡である場合、特異的抗原は、デスモグレイン、例えば、デスモグレイン1、デスモグレイン2、デスモグレイン3、デスモグレイン4であり得る。
【0015】
抗体関連自己免疫疾患が重症筋無力症である場合、特異的抗原は、アセチルコリン受容体または筋特異的キナーゼ(MuSK)であり得る。
【0016】
抗体関連自己免疫疾患がグレーブス病である場合、特異的抗原は、サイロトロピン(TSH)受容体であり得る。
【0017】
抗体関連自己免疫疾患が1型糖尿病、全身硬直症候群スペクトラム障害、運動失調または発作性障害である場合、特異的抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼであり得る。
【0018】
抗体関連自己免疫疾患がグッドパスチャー症候群である場合、特異的抗原は、コラーゲンであり得る。
【0019】
抗体関連自己免疫疾患がアジソン症候群である場合、特異的抗原は、21ヒドロキシラーゼであり得る。
【0020】
抗体関連自己免疫疾患がNMDAR抗体脳炎である場合、特異的抗原は、NMDA受容体のNR1サブユニットであり得る。
【0021】
抗体関連自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)である場合、特異的抗原は、DNAまたはSmith(Sm)もしくはリボヌクレオタンパク質(RNP)であり得る。
【0022】
抗体関連自己免疫疾患が血栓性血小板減少性紫斑病である場合、特異的抗原は、ADAMTS13であり得る。
【0023】
抗体関連自己免疫疾患が血管炎である場合、特異的抗原は、プロテイナーゼ3およびミエロペルオキシダーゼであり得る。
【0024】
抗体関連自己免疫疾患が関節リウマチである場合、特異的抗原は、1つまたは複数のシトルリン化タンパク質であり得る。
【0025】
抗体関連自己免疫疾患が慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシーである場合、特異的抗原は、1つまたは複数のニューロファシン(neurofascin)、コンタクチンまたはcasprであり得る。
【0026】
抗体関連自己免疫疾患がシェーグレン症候群である場合、特異的抗原は、Ro(SSA)および/またはLa(SSB)であり得る。
【0027】
抗体関連自己免疫疾患が悪性貧血である場合、特異的抗原は、壁細胞上に発現し得る。
【0028】
任意の態様の実施形態では、特異的抗原がLGI1である場合、方法は、CXCL13のレベルまたは存在を決定することを、さらにまたは代替的に含み得る。
【0029】
病状の判定は、再発の可能性の決定を含み得る。
【0030】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在および/またはCXCL13の存在は、再発の可能性がより高いことを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの上昇および/またはCXCL13のレベルの上昇は、再発の可能性がより高いことを示し得る。この結果、対象の再発を治療してもよく、したがって、この判定は、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更となり得る。
【0031】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の非存在および/またはCXCL13の非存在は、再発の可能性がより低いことを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの低下もしくは不変および/またはCXCL13のレベルの低下もしくは不変は、再発の可能性がより低いことを示し得る。この結果、対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得る。
【0032】
病状の判定は、対象が再発状態にあるかどうかの判定を含み得る。
【0033】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在および/またはCXCL13の存在は、対象が再発状態にあることを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの上昇および/またはCXCL13のレベルの上昇は、対象が再発状態にあることを示し得る。この結果、対象の再発を治療してもよく、したがって、この判定は、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更となり得る。
【0034】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の非存在および/またはCXCL13の非存在は、対象が再発状態にないことを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの低下および/またはCXCL13のレベルの低下もしくは不変は、対象が再発状態にないことを示し得る。この結果、対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得る。
【0035】
病状の判定は、対象を治療すべきか、さらなる治療を施術すべきではないか、または治療を削減すべきかの判定を含み得る。
【0036】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在および/またはCXCL13の存在は、対象を治療すべきであることを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの上昇および/またはCXCL13のレベルの上昇は、対象を治療すべきであり、したがって、この判定が、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更であり得ることを示し得る。
【0037】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の非存在および/またはCXCL13の非存在は、対象を治療すべきではないか、さらなる治療を施術すべきではないか、または治療を削減すべきであることを示し得る。参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルと比べた、対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルの低下もしくは不変および/またはCXCL13のレベルの低下もしくは不変は、対象を治療すべきであり、したがって、この判定が、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得ることを示し得る。
【0038】
ある態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断されている対象の病状を判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在、および/またはLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在、および/またはCXCL13のレベルもしくは存在を決定することと
を含む方法を提供する。
【0039】
好ましくは、a)では、AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルまたは存在は、NMOSDであると既に診断された対象において決定する。
【0040】
好ましくは、b)では、LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在および/またはCXCL13のレベルもしくは存在は、LGI1脳炎であると既に診断された対象において決定する。
【0041】
別の態様では、抗体関連自己免疫疾患であると診断された対象が再発状態にあるかどうかを判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0042】
別の態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断された対象が再発状態にあるかどうかを判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0043】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在する場合、対象は再発状態にあると判定し得る。対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象は再発状態にあると判定し得る。この結果、再発状態にあると判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更となり得る。
【0044】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在しない場合、対象は再発状態にないと判定し得る。対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象は再発状態にないと判定し得る。この結果、再発状態にないと判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得る。
【0045】
任意の態様では、抗体媒介自己免疫疾患がNMOSDである場合、治療は、抗CD20抗体、例えば、リツキシマブ、オファツムマブまたはオクレリズマブであり得る。他の治療は、例えば、ステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、IL-6Rを認識するかもしくはIL-6R活性を低下させるmAB等の薬剤、CD19を認識するかもしくはCD19活性を低下させるmAb等の薬剤、補体経路成分の機能を変化させる薬剤(例えば、エクリズマブ)、またはボルテゾミブを含む。
【0046】
任意の態様では、抗体媒介自己免疫疾患が脳炎である場合、治療は、1つまたは複数の免疫治療薬、例えば、コルチコステロイド、免疫グロブリン静注、血漿交換、B細胞枯渇剤[例えば、リツキシマブ(RTX)およびイネビリズマブ]、IgG枯渇剤(例えば、FcRn阻害物質)、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルおよびサトラリズマブと併用し得る。
【0047】
別の態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断された対象が再発状態にあるかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在および/またはLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在および/またはCXCL13のレベルもしくは存在を決定することと
を含む方法を提供する。
【0048】
別の態様では、NMOSDであると診断された対象が再発状態にあるかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む方法を提供する。
【0049】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在する場合、対象は再発状態にあると判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも高い場合、対象は再発状態にあると判定し得る。
【0050】
この結果、再発状態にあると判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更となり得る。
【0051】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在しない場合、対象は再発状態にないと判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象は再発状態にあると判定し得る。この結果、再発状態にないと判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得る。
【0052】
別の態様では、脳炎であると診断された対象が再発状態にあるかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはCXCL13の存在もしくはレベルを決定することと
を含む方法を提供する。
【0053】
脳炎は、LGI1を認識するIgGアイソタイプ抗体の存在により媒介および/または診断され得る。
【0054】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在する場合、対象は再発状態にあると判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象は再発状態にあると判定し得る。
【0055】
この結果、再発状態にあると判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療薬の投与、既に投与されている治療薬の増加、または治療薬の変更となり得る。
【0056】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在しない場合、対象は再発状態にあると判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象は再発状態にあると判定し得る。この結果、再発状態にないと判定された対象を治療してもよく、したがって、この判定は、治療の非施術、さらなる治療の非施術、または治療の削減を含み得る。
【0057】
別の態様では、抗体関連自己免疫疾患であると診断された対象を治療するかどうかを判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0058】
別の態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断された対象を治療するかどうかを判定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはCXCL13抗原の存在もしくはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0059】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在する場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。
【0060】
特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在しない場合、対象を治療すべきではないか、さらには、さらなる治療は必要としないか、または施術する治療を削減可能であることを判定し得る。対象から得られた生体試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料における特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象を治療すべきではないか、さらなる治療は必要としないか、または施術する治療を削減可能であることを判定し得る。
【0061】
別の態様では、抗体媒介自己免疫疾患であると診断された対象を治療するかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはLGI1を認識する1つもしくは複数のIgMアイソタイプ抗体のレベルもしくは存在および/またはCXCL13のレベルもしくは存在を決定することと
を含む方法を提供する。
【0062】
別の態様では、NMOSDであると診断された対象を治療するかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む方法を提供する。
【0063】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在する場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも高い場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。
【0064】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在しない場合、対象を治療すべきではないことを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象を治療すべきではないことを判定し得る。
【0065】
別の態様では、脳炎であると診断された対象を治療するかどうかを判定する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはCXCL13の存在もしくはレベルを決定することと
を含む方法を提供する。
【0066】
脳炎は、LGI1を認識するIgGアイソタイプ抗体の存在により媒介および/または診断され得る。
【0067】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在する場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象を治療すべきであることを判定し得る。
【0068】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在しない場合、対象を治療すべきではないことを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象を治療すべきではないことを判定し得る。
【0069】
別の態様では、抗体関連自己免疫疾患であると診断されている対象を同定する方法であって、抗体が、特異的抗原を認識し、対象が、治療から利益を得る可能性が高く、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0070】
別の態様では、NMOSDであると診断されている対象を同定する方法であって、対象が、治療から利益を得る可能性が高く、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0071】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在する場合、対象が治療から利益を得る可能性が高いことを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも高い場合、対象が治療から利益を得る可能性が高いことを判定し得る。
【0072】
AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在しない場合、対象がさらなる治療から利益を得る可能性が高くないか、または治療を削減し得ることを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象がさらなる治療から利益を得る可能性が高くないか、または治療を削減し得ることを判定し得る。
【0073】
別の態様では、脳炎であると診断されている対象を同定する方法であって、対象が、治療から利益を得る可能性が高く、方法が、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはCXCL13の存在もしくはレベルを決定することと
を含む、方法を提供する。
【0074】
脳炎は、LGI1を認識するIgGアイソタイプ抗体の存在により媒介および/または診断され得る。
【0075】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在する場合、対象が治療から利益を得る可能性が高いことを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象が治療から利益を得る可能性が高いことを判定し得る。
【0076】
LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/またはCXCL13が存在しない場合、患者がさらなる治療から利益を得る可能性が高くないか、または治療を削減し得ることを判定し得る。対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/またはCXCL13のレベルよりも低いか、またはこれと同一である場合、対象がさらなる治療から利益を得る可能性が高くないか、または治療を削減し得ることを判定し得る。
【0077】
別の態様では、NMOSDであると診断されている対象を治療する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在またはレベルを決定することと、
c)AQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体が存在する場合、または対象から得られた生体試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルが、参照試料におけるAQP4を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルよりも高い場合、対象を治療することと
を含む方法を提供する。
【0078】
別の態様では、脳炎であると診断されている対象を治療する方法であって、
a)対象から得られた生体試料を用意することと、
b)LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体の存在もしくはレベルおよび/またはCXCL13の存在もしくはレベルを決定することと、
c)LGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体および/もしくはCXCL13が存在する場合、または対象から得られた生体試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/もしくはCXCL13のレベルが、参照試料におけるLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルおよび/もしくはCXCL13のレベルよりも高い場合、対象の脳炎を治療することと
を含む方法を提供する。
【0079】
脳炎は、LGI1を認識するIgGアイソタイプ抗体の存在により媒介および/または診断され得る。
【0080】
任意の態様の方法は、対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つまたは複数の他のIgアイソタイプのレベルまたはこのレベルの変化を決定する工程をさらに含み得る。1つまたは複数のIgアイソタイプは、IgG、IgM、IgE、IgAおよび/またはIgDであり得る。
【0081】
任意の態様の方法は、対象から得られた生体試料に存在する1つまたは複数のIgアイソタイプにより認識される優勢なエピトープの変化を決定する工程をさらに含み得る。1つまたは複数のIgアイソタイプは、IgM、IgE、IgAおよび/またはIgDであり得る。
【0082】
任意の態様の方法は、対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つまたは複数のIgGサブクラスのレベルまたはこのレベルの変化を決定する工程をさらに含み得る。加えて、またはあるいは、任意の態様の方法は、特異的抗原を認識する抗体の優勢なIgGサブクラスのスイッチが起きているかどうかを判定する工程をさらに含み得る。
【0083】
あるいは、特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルまたは存在を決定する代わりに、任意の態様の方法は、対象から得られた生体試料に存在する特異的抗原を認識する1つまたは複数のIgGサブクラスのレベルまたはこのレベルの変化を決定する工程を含み得る。
【0084】
あるいは、特異的抗原を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベルまたは存在を決定する代わりに、任意の態様の方法は、特異的抗原を認識する抗体の優勢なIgGサブクラスのスイッチが起きているかどうかを判定する工程を含み得る。
【0085】
参照試料における特異的抗原を認識するIgGサブクラスのレベルと比較した特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルの変化、例えば、上昇もしくは低下、または特異的抗原を認識するIgG抗体の優勢なIgGサブクラスにおけるスイッチは、再発の可能性がより高いこと、または対象が再発状態にあること、または対象を治療すべきであること、または対象が治療から利益を得る可能性が高いことを示し得る。この結果、対象を治療し得る。治療は、抗CD20抗体、例えば、リツキシマブと併用し得る。あるいは、または加えて、治療は、抗CD20抗体、例えば、リツキシマブ、オファツムマブまたはオクレリズマブ、ステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、IL-6Rを認識するかまたはIL-6R活性を低下させるmAB等の薬剤、CD19を認識するかまたはCD19活性を低下させるmAb等の薬剤、補体経路成分の機能を変化させる薬剤(例えば、エクリズマブ)、およびボルテゾミブ等の1つまたは複数と併用し得る。
【0086】
参照試料における特異的抗原を認識するIgGサブクラスのレベルと比較した特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルの変化は、特異的抗原を認識するIgGサブクラスのレベルの約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上の上昇または低下であり得る。
【0087】
特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルの上昇は、試料における特異的抗原を認識する総IgGの少なくとも約50%以上、少なくとも約60%以上、少なくとも約70%以上、少なくとも約80%以上、少なくとも約90%以上への上昇であり得る。
【0088】
一例では、特異的抗原を認識する所与のIgGサブクラスのレベルが、試料における特異的抗原を認識する総IgGの例えば、少なくとも約50%以上、少なくとも約60%以上、少なくとも約70%以上、少なくとも約80%以上、少なくとも約90%以上に上昇しない場合には、これは、再発のリスクが低く、対象が再発状態になく、したがって、対象を治療する必要はない可能性を有するか、または対象がさらなる治療を必要としない可能性を有するか、または施術する治療を削減し得ることを示し得る。
【0089】
特異的抗原は、AQP4であり得る。特には、抗体媒介自己免疫疾患がNMOSDである場合、特異的抗原は、AQP4であり得る。
【0090】
IgGサブクラスは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4であり得る。
【0091】
任意の態様の抗体媒介自己免疫疾患は、対象におけるLGI1、CASPR2およびNMDA受容体に対する抗体の存在またはこのレベル上昇と関連する自己免疫性脳炎であり得る。
【0092】
本発明は、抗体媒介自己免疫疾患において、抗体媒介自己免疫疾患に臨床的に関係づけられる特異的抗原、例えば、NMOSDではAQP4および/または脳炎ではLGI1を認識するIgMの出現またはこのレベルの上昇が、対象が再発状態にあるかまたは再発しかかっている可能性が高いことの、ロバストであり統計学的に有意な指標または予測因子であるという実証に基づく。また、強力な陰性適中度(predicative value)は、特異的抗原を認識するIgMの非存在および/またはCXCL13のレベルに注目することにより実証することができる。また、発明者らは、再発または非再発の適中度を、試料における異なるIgGサブクラスの相対レベルを測定することにより強化することが可能であることを実証する。優勢なIgGサブクラスにおけるスイッチは、対象が再発状態にあるかまたは再発しかかっている可能性が高い、さらなる陽性指標であり、一方、優勢なIgGサブクラスにおける未変化により、再発の陰性予測因子値(predictor value)が強化され得ることを実証する。したがって、本発明により、対象を治療するか否か、またはこれらの治療を変更するどうかの意思決定を行うことが可能となる。これにより、再発状態にあるかまたは再発しかかっている可能性が高い患者における再発の臨床的兆候の重症度の低下が可能となる可能性を有し、一方、本明細書に開示の任意の方法の前後に再発状態になく、および/または再発しかかっている可能性が高くない患者を治療しない決定により、不必要な治療、不必要な副作用および不必要な消費を防ぎ得る。例えば、NMOSDを有する患者のためのリツキシマブ治療は、非常に高額であり得る。また、抗体媒介自己免疫疾患のための治療は、重大な副作用を有し、したがって、不必要な治療を回避させることは重要である。
【0093】
一般的定義
用語「抗体関連自己免疫疾患」は、特異的抗原に対する抗体の存在またはこのレベルの上昇が、疾患に関連づけられる自己免疫疾患を指す。このような抗体は、疾患の確立または進行に寄与する可能性を有しても有しなくてもよい。すなわち、抗体は、自己免疫疾患に相関性であって、この原因ではない可能性を有する。
【0094】
用語「抗体媒介自己免疫疾患」は、特異的抗原に対する抗体の存在またはこのレベルの上昇が、疾患の確立もしくは進行および/または疾患の1つもしくは複数の症候に寄与する自己免疫疾患を指す。
【0095】
用語「再発」は、抗体産生の増加により典型的に引き起こされる抗体媒介自己免疫疾患と関連する臨床的兆候(1つまたは複数)の再発症を指す。
【0096】
用語「高い」および「より高い」は、本明細書において使用する場合、測定するパラメーターの少なくとも10%以上、少なくとも20%以上、少なくとも30%以上、少なくとも40%以上、少なくとも50%以上、少なくとも100%以上、少なくとも2000%以上、少なくとも500%以上、少なくとも1000%以上の上昇を指し得る。あるいは、用語「高い」および「より高い」は、本明細書において使用する場合、測定するパラメーターの少なくとも2倍以上、少なくとも5倍以上、少なくとも10倍以上、少なくとも20倍以上、少なくとも50倍以上、少なくとも100倍以上、少なくとも500倍以上、少なくとも1000倍以上、少なくとも10000倍以上の上昇を指し得る。
【0097】
用語「低い」および「より低い」は、本明細書において使用する場合、測定するパラメーターの少なくとも10%以上、少なくとも20%以上、少なくとも30%以上、少なくとも40%以上、少なくとも50%以上、少なくとも600%以上、少なくとも70%以上、少なくとも800%以上、少なくとも90%以上の低下を指し得る。
【0098】
用語「生体試料」は、目的の対象から得られる生体液の試料を指す。好ましい生体試料としては、血液、血清、血漿、唾液、リンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液および脳脊髄液が挙げられるが、これらに限定されない。加えて当業者は、分画または精製手順、例えば、全血を血清または血漿成分に分離した後に一部の検査試料がさらに容易に解析されることを理解している。好ましくは、生体試料は、血液またはリンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液由来である。本明細書に示すデータは、胚中心反応を含む根底にある生体機構を示唆し、したがって、リンパ節吸引液により、IgMおよびIgGのサブクラスのレベルの変化のさらに直接的な尺度がもたらされ得る。胚中心は、エピトープ多様化およびアイソタイプスイッチング(クラススイッチ組換えとも呼ぶ)の部位であることも知られ、IgMおよびIgGサブクラススイッチの存在または増加が、胚中心の他の特徴である可能性がある。
【0099】
生体試料は、対象から得られた血漿試料であり得る。
【0100】
本明細書において使用する場合、「参照試料」は、例えば、対象が再発状態にないと判定された場合の、異なる時点において対象から得られた対応する試料、例えば、血液試料またはリンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液であり得る。あるいは、参照試料は、第1の対象と同一の抗体媒介自己免疫疾患であると診断されていない異なる対象から得られた対応する試料、例えば、血液試料またはリンパ節吸引液、例えば、深頸リンパ節吸引液であり得る。
【0101】
試料を得る工程は、好ましくは、本発明の一部を形成しない。
【0102】
用語「レベル」は、本明細書において使用する場合、特異的抗原、例えば、AQP4および/もしくはLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体の量もしくは濃度、または生体試料に含まれるCXCL13の量もしくは濃度を指す。
【0103】
句「病状」は、抗体媒介自己免疫疾患の任意の兆候を含む。好ましくは、病状は、対象における再発の存在もしくは可能性、および/または対象が治療から利益を得るかどうかを指す。
【0104】
特異的抗原、例えば、AQP4および/もしくはLGI1を認識するIgMアイソタイプ抗体のレベル、ならびに/またはCXCL13のレベルは、任意の適する方法により評価し得る。例えば、タンパク質レベルを決定する場合、免疫測定、分光測定、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、スロットまたはドットブロットアッセイ、等電点電気泳動、SDS-PAGEおよび抗体マイクロアレイ免疫組織染色、放射免疫測定(RIA)、蛍光免疫測定、アビジン-ビオチンまたはストレプトアビジン-ビオチン系等を使用する免疫測定、ならびにこれらの組合せを含む群のいずれかを使用し得る。このような方法は、当業者に周知である。他の方法をも使用し得る。
【0105】
本明細書に記載の方法は、インビトロ(in vitro)で実行し得る。
【0106】
対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、サル、類人猿、げっ歯動物、ハムスター、ラットまたはモルモットであり得る。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0107】
当業者は、本発明のいずれか1つの実施形態および/または態様の好ましい特徴を、本発明の他のすべての実施形態および/または態様に適用し得ることを理解する。
【0108】
ここで、添付の図面を参照して、単なる例として本発明の詳細な説明に進む。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1-1】図1は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を有する患者における再発およびリツキシマブ(RTX)投与との血清学的関連性を実証する。A.ゼロ時点のRTXを投与したNMOSD患者35人における再発に対するRTX投与の作用。リンパ節(LN)および末梢血単核細胞(PBMC)試料採取のタイミングを示す(星)。B.RTX前およびRTX後の患者間で(p<0.001)ならびにRTXを投与しない患者と(p<0.001、マン・ホイットニーU検定)比較した最後の経過観察における年間再発率(ARR)。C.アクアポリン4免疫グロブリンG(AQP4-IgG)エンドポイント希釈は、数回のRTX注入後に低下しなかった(p=0.99、クラスカル・ウォリス検定)。D.RTXを投与したか(n=22)またはRTXに対してナイーブ(n=28)のいずれかの患者における再発(x)および優位なAQP4-IgGサブクラス間の関連性(全AQP4-IgGの50%超、上パネル)、AQP4-IgMレベル(中央パネル)および全AQP4-IgGレベル(下パネル)を表すヒートマップ。E.第1のRTX注入前の日数を示す負の値を有する個々の患者(6、7および10)における詳細な例。
図1-2】図1は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を有する患者における再発およびリツキシマブ(RTX)投与との血清学的関連性を実証する。A.ゼロ時点のRTXを投与したNMOSD患者35人における再発に対するRTX投与の作用。リンパ節(LN)および末梢血単核細胞(PBMC)試料採取のタイミングを示す(星)。B.RTX前およびRTX後の患者間で(p<0.001)ならびにRTXを投与しない患者と(p<0.001、マン・ホイットニーU検定)比較した最後の経過観察における年間再発率(ARR)。C.アクアポリン4免疫グロブリンG(AQP4-IgG)エンドポイント希釈は、数回のRTX注入後に低下しなかった(p=0.99、クラスカル・ウォリス検定)。D.RTXを投与したか(n=22)またはRTXに対してナイーブ(n=28)のいずれかの患者における再発(x)および優位なAQP4-IgGサブクラス間の関連性(全AQP4-IgGの50%超、上パネル)、AQP4-IgMレベル(中央パネル)および全AQP4-IgGレベル(下パネル)を表すヒートマップ。E.第1のRTX注入前の日数を示す負の値を有する個々の患者(6、7および10)における詳細な例。
図1-3】図1は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を有する患者における再発およびリツキシマブ(RTX)投与との血清学的関連性を実証する。A.ゼロ時点のRTXを投与したNMOSD患者35人における再発に対するRTX投与の作用。リンパ節(LN)および末梢血単核細胞(PBMC)試料採取のタイミングを示す(星)。B.RTX前およびRTX後の患者間で(p<0.001)ならびにRTXを投与しない患者と(p<0.001、マン・ホイットニーU検定)比較した最後の経過観察における年間再発率(ARR)。C.アクアポリン4免疫グロブリンG(AQP4-IgG)エンドポイント希釈は、数回のRTX注入後に低下しなかった(p=0.99、クラスカル・ウォリス検定)。D.RTXを投与したか(n=22)またはRTXに対してナイーブ(n=28)のいずれかの患者における再発(x)および優位なAQP4-IgGサブクラス間の関連性(全AQP4-IgGの50%超、上パネル)、AQP4-IgMレベル(中央パネル)および全AQP4-IgGレベル(下パネル)を表すヒートマップ。E.第1のRTX注入前の日数を示す負の値を有する個々の患者(6、7および10)における詳細な例。
図2-1】図2は、頸部リンパ節吸引液が、RTX投与後に抑制されるAQP4抗体を含むことを示す。A.解剖学的レベルにわたる頸部リンパ節(LN)を超音波ガイド下で吸引した。また、対応する血液を試料採取し、両部位から細胞性および可溶性画分が生じた。B.著しく異なるレベルの総IgG(塗りつぶした記号)およびIgM(空の記号)を、LN吸引液(記号の輪郭が薄いもの、IgG希釈1:800;IgM希釈1:100)対NMOSD患者の対応する血清(記号の輪郭が濃いもの、IgG希釈1:100000;IgM希釈1:6400)において測定した。C.PBMCおよびLN細胞集団間の差が、単球:リンパ球の比ならびに移行期B細胞および濾胞ヘルパーT(TfH)細胞の両方の出現頻度により強調され(すべてp<0.001、ウィルコクソン符号順位検定)、超音波試料採取により、夾雑がわずかであったことが確認される。D.AQP4増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)トランスフェクト生HEK293T細胞(緑色)の表面およびマウス生星状膠細胞(グリア線維酸性タンパク質、GFAP、緑色により同定)の表面に(抗ヒトIgG、赤色を)結合させることにより吸引液においてAQP4-IgGを検出した。E.血清(濃く塗りつぶした棒)およびLN吸引液(薄く塗りつぶした棒)におけるAQP4-IgGレベルを、RTXに対してナイーブな患者(n=7、このうち2人:患者5および9はRTX投与を開始)において、RTX注入1回の後0.5~6カ月(n=4)およびRTX注入2回以上の後0.5~13カ月(n=7、長期的に試料採取した2人:患者2および4を含む)に測定した。F.AQP4-IgGレベル(エンドポイント希釈):総IgGレベルの比を、LNおよび血清について算出した(p=0.02、ウィルコクソン符号順位検定)。図2Eでは、大型の点により、検出可能なAQP4-IgGを有するRTX処置患者2人を同定する。(G)LN吸引液(p=0.04、マン・ホイットニーU検定)および血清(非有意)の絶対AQP4-IgGレベルにおけるRTXを受けた患者対受けなかった患者の比較。
図2-2】図2は、頸部リンパ節吸引液が、RTX投与後に抑制されるAQP4抗体を含むことを示す。A.解剖学的レベルにわたる頸部リンパ節(LN)を超音波ガイド下で吸引した。また、対応する血液を試料採取し、両部位から細胞性および可溶性画分が生じた。B.著しく異なるレベルの総IgG(塗りつぶした記号)およびIgM(空の記号)を、LN吸引液(記号の輪郭が薄いもの、IgG希釈1:800;IgM希釈1:100)対NMOSD患者の対応する血清(記号の輪郭が濃いもの、IgG希釈1:100000;IgM希釈1:6400)において測定した。C.PBMCおよびLN細胞集団間の差が、単球:リンパ球の比ならびに移行期B細胞および濾胞ヘルパーT(TfH)細胞の両方の出現頻度により強調され(すべてp<0.001、ウィルコクソン符号順位検定)、超音波試料採取により、夾雑がわずかであったことが確認される。D.AQP4増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)トランスフェクト生HEK293T細胞(緑色)の表面およびマウス生星状膠細胞(グリア線維酸性タンパク質、GFAP、緑色により同定)の表面に(抗ヒトIgG、赤色を)結合させることにより吸引液においてAQP4-IgGを検出した。E.血清(濃く塗りつぶした棒)およびLN吸引液(薄く塗りつぶした棒)におけるAQP4-IgGレベルを、RTXに対してナイーブな患者(n=7、このうち2人:患者5および9はRTX投与を開始)において、RTX注入1回の後0.5~6カ月(n=4)およびRTX注入2回以上の後0.5~13カ月(n=7、長期的に試料採取した2人:患者2および4を含む)に測定した。F.AQP4-IgGレベル(エンドポイント希釈):総IgGレベルの比を、LNおよび血清について算出した(p=0.02、ウィルコクソン符号順位検定)。図2Eでは、大型の点により、検出可能なAQP4-IgGを有するRTX処置患者2人を同定する。(G)LN吸引液(p=0.04、マン・ホイットニーU検定)および血清(非有意)の絶対AQP4-IgGレベルにおけるRTXを受けた患者対受けなかった患者の比較。
図3図3は、NMOSDを有する患者のリンパ節および血液由来のアクアポリン4特異的B細胞の特性決定を示す。A.対応する血液(左)およびLN(右)試料の単一B細胞(CD3CD19)を検出抗体で標識し、単一細胞としてインデックスソーティングし、培養した。22日目までに、細胞の約50%が増殖し、抗体分泌細胞に分化する(CD19細胞をゲーティングしてCD27、CD38およびCD138発現を示した)。インデックス作成により、本来のB細胞サブセット:ナイーブ、二重陰性(DN)、IgDおよびIgDメモリー(Mem)が明らかとなった。B.AQP4反応性IgG/M上清を、表面AQP4-EGFPを発現する生HEK293T細胞(緑色)に対する反応性(赤色)により同定した。C.患者3人からLN(薄く塗りつぶした棒)およびPBMC(濃く塗りつぶした棒)において検出されたAQP4特異的B細胞出現頻度。D.このようなAQP4特異的B細胞受容体11種の重および軽鎖(7および11はそれぞれシーケンシング)は、4つすべてのB細胞サブセットから生じ、多様な遺伝子ファミリー(重可変IGHV3は三角およびIGHV4は菱形)ならびに軽鎖の用途(カッパまたはラムダはそれぞれ四角および円)を示した。また、上清において検出されたアイソタイプ(AQP4-IgM/IgG、三角および円)ならびに源組織(LNまたはPBMC、中空および塗りつぶした形)を示す。
図4図4は、リツキシマブ投与後に節内B細胞が急速かつ効率的に枯渇することを実証する。A.RTX投与後、LN(薄く塗りつぶした円、p<0.001、マン・ホイットニーU検定)および血液(濃く塗りつぶした円、p<0.001、マン・ホイットニーU検定)両方のB細胞(CD14DAPICD3CD19)は、著しく枯渇した。B.LNにおける枯渇は、RTX注入2回以上対1回のみの後に患者においてさらに明白となった(p=0.04、マン・ホイットニーU検定)。C.第1のRTX注入前後に試料採取した患者2人(患者5および9)ならびにRTX注入後に経時的時点で試料採取した2人(患者2および4)では、LN吸引液におけるAQP4-IgG(中央)およびLN B細胞出現頻度(右)の両方の著しい低下とは対照的に、血清AQP4-IgGレベル(左)は不変であった。
図5-1】図5は、試料採取および検査手順およびフローサイトメトリーゲーティング戦略の概要を提供する。A.RTX投与有り無しの患者および疾患対照間で試料がどのように分布したかを示すベン図。中央右の領域の患者2人は、第1のRTX投与前後の両方において、LN吸引を含む評価を実施した個体を表す。外側下の円内のみの個体は、LN吸引を受けた疾患対照14人を表す。B.ゲーティング戦略。LN/PBMC試料対36種中23種についてのCD45染色が利用可能であった。パネルに含まれない場合、CD3、CD14、CD19、CD20、CD27および/またはCD38のいずれかに対して陽性であれば、現象は認められた(「ブールゲート(Boolean gate)」)。CD45陽性集団の表現型を示す代表的な例またはブールゲート範囲内の現象は、特定不能であった。C.フローサイトメトリーデータ解析のための包括的ゲーティング戦略。濃い輪郭で仕切られたゲートは、調査した集団を表す。
図5-2】図5は、試料採取および検査手順およびフローサイトメトリーゲーティング戦略の概要を提供する。A.RTX投与有り無しの患者および疾患対照間で試料がどのように分布したかを示すベン図。中央右の領域の患者2人は、第1のRTX投与前後の両方において、LN吸引を含む評価を実施した個体を表す。外側下の円内のみの個体は、LN吸引を受けた疾患対照14人を表す。B.ゲーティング戦略。LN/PBMC試料対36種中23種についてのCD45染色が利用可能であった。パネルに含まれない場合、CD3、CD14、CD19、CD20、CD27および/またはCD38のいずれかに対して陽性であれば、現象は認められた(「ブールゲート(Boolean gate)」)。CD45陽性集団の表現型を示す代表的な例またはブールゲート範囲内の現象は、特定不能であった。C.フローサイトメトリーデータ解析のための包括的ゲーティング戦略。濃い輪郭で仕切られたゲートは、調査した集団を表す。
図6図6では、RTX投与が、LN吸引液および対応する血清における検出可能なAQP4-IgG/Mの非存在と関連することを実証する。RTXナイーブNMOSD患者7人由来の対応する血清およびLN吸引液の両方は、検出可能な表面星状膠細胞結合(およびAQP4-IgG、例えば、図2D)を含んだ。加えて、このようなLN吸引液2/7種は、AQP4-IgMを含み、対応する血清では、これらは検出されなかった。対照的に、星状膠細胞結合は、RTXを投与した患者由来のLN吸引液2/11種においてのみ検出された。GFAPに特異的な市販の抗体により、これらが星状膠細胞として名付けられたことが確認された。スケールバー10μm。
図7図7は、AQP4発現B細胞の表現型のインデックス作成を示す。左側のプロットの点は、PBMCにおいて見出された細胞を表し、一方、右側のプロット点上の点は、LNにおいて見出された細胞を患者3人にわたって表す。
図8図8は、疾患対照およびRTX後またはRTX対してナイーブなNMOSD患者にわたって比較したPBMCおよびLNにおけるBおよびT細胞サブセット出現頻度を示す。A.IgDCD27ナイーブおよびIgDCD27メモリーB細胞サブセット出現頻度を全CD19B細胞のパーセンテージとして表す。B:CD20CD3サブセット出現頻度(CD20T細胞)を全CD3細胞のパーセンテージとして表す。C.CD19CD20CD38抗体分泌細胞(ASC)サブセット出現頻度を全CD19B細胞のパーセンテージとして表す。D.CD4CXCR5PD-1++濾胞ヘルパーTサブセット出現頻度を全CD3細胞のパーセンテージとして表す。すべての集団では、親集団において50細胞超を有する個体のみ(すなわち、CD19またはCD3)が含まれた。B細胞現象6704の中央値(範囲61~99629)を解析した。全20の比較についてベンジャミン・ホッホバーグ補正(Benjamini-Hochberg correction)後に統計学的解析とマン・ホイットニーU検定を行った。
図9-1】図9は、頸部リンパ節穿刺吸引(FNA)を受けた患者の臨床的特性の概要を述べる。RTXで処置したNMOSD患者9人およびRTX対してナイーブなNMOSD患者5人においてFNAを実施した(全体的に見て、疾患状態に入って59カ月の中央値において試料採取した;範囲21~180)。また、他の自己免疫性および非自己免疫性神経症状を有する患者14人においてFNAを実施した。FNAは、患者2人(NMOSD#5、NMOSD#9)においてRTX前後に、および他の患者2人(NMOSD#2、NMOSD#4)においてRTX後の2つの時点で実施した。このような患者4人では、FNAは、同一のリンパ節由来であった。全体的に見て、頸部リンパ節の解剖学的レベルI、II、IIIおよびVを試料採取した。ARR=年間再発率、AZA=アザチオプリン、CyP=シクロホスファミド、FNA=穿刺吸引、GAD-Ab-E=グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体脳炎、GlyR-Ab-E=グリシン受容体抗体脳炎、LGI1-Ab-E=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1抗体脳炎、MMF=ミコフェノール酸モフェチル、MTX=ミトキサントロン、NMDAR-Ab-E=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体抗体脳炎、NMOSD=視神経脊髄炎スペクトラム障害、Pred=プレドニゾン、RTX=リツキシマブ。
図9-2】図9は、頸部リンパ節穿刺吸引(FNA)を受けた患者の臨床的特性の概要を述べる。RTXで処置したNMOSD患者9人およびRTX対してナイーブなNMOSD患者5人においてFNAを実施した(全体的に見て、疾患状態に入って59カ月の中央値において試料採取した;範囲21~180)。また、他の自己免疫性および非自己免疫性神経症状を有する患者14人においてFNAを実施した。FNAは、患者2人(NMOSD#5、NMOSD#9)においてRTX前後に、および他の患者2人(NMOSD#2、NMOSD#4)においてRTX後の2つの時点で実施した。このような患者4人では、FNAは、同一のリンパ節由来であった。全体的に見て、頸部リンパ節の解剖学的レベルI、II、IIIおよびVを試料採取した。ARR=年間再発率、AZA=アザチオプリン、CyP=シクロホスファミド、FNA=穿刺吸引、GAD-Ab-E=グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体脳炎、GlyR-Ab-E=グリシン受容体抗体脳炎、LGI1-Ab-E=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1抗体脳炎、MMF=ミコフェノール酸モフェチル、MTX=ミトキサントロン、NMDAR-Ab-E=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体抗体脳炎、NMOSD=視神経脊髄炎スペクトラム障害、Pred=プレドニゾン、RTX=リツキシマブ。
図10図10は、単一B細胞培養物から回収したAQP4特異的B細胞受容体配列の特性を実証する。表は、患者数、B細胞サブセット(ナイーブ[CD27IgD]、二重陰性[CD27IgD]、IgDメモリー[CD27IgD]、IgDメモリー[CD27IgD])を単離した組織、ならびに重鎖(培養物において検出されたアイソタイプ、予測VおよびJ遺伝子アレル、ならびに可変領域変異の総数;www.imgt.com)および軽鎖(ラムダまたはカッパ;予測VおよびJ遺伝子アレル、ならびに可変領域変異の総数;www.imgt.com)の両方の特性を示す。4つのB細胞からは、重鎖は、増幅しなかった(N/A)。
図11図11は、AQP4IgM力価の異なるカットオフによる感度および(1-特異度)を示す受信者動作特性曲線である。両方のlog力価、AQP4-IgMの存在およびレベルの変化により、再発が強力に予測された(AUC0.67)。
図12図12は、IgGサブクラスデータの異なる尺度に対するROC曲線の結果を実証する。IgGサブクラス(パーセンテージまたはlogABCのいずれか)では、IgM単独ほど予測されなかった。
図13-1】図13は、スライディングウインドウプロット(試料幅30)におけるAQP4-IgGのパーセンテージ差の要約により再発試料の割合を実証する。クラススイッチングの代替としてのすべてのIgGサブクラスにわたる%変化の要約。これは、AQP4IgMが上昇した試料(AUC=0.57)を除外する場合、適中度を示す。これは、IgGサブクラススイッチングの規模は再発リスクと関連するが、AQP4-IgMが上昇しない試料においてのみであることを示す。これは、AQP4-IgGサブクラススイッチングの変化は再発のリスク因子として作用し得るが、最も強力な予測因子は、IgMレベルの上昇およびIgGサブクラススイッチングの両方の組合せであることを示唆する。試料の割合が、AQP4-IgMまたはAQP4-IgGサブクラススイッチのいずれかの非存在下で再発と関連することを考慮すると、データは、他の未測定の変数、例えば、検出可能なIgM/IgGサブクラス差が存在しない場合のIgAクラススイッチングまたはエピトープ変化が存在し得ることを示唆する。
図13-2】図13は、スライディングウインドウプロット(試料幅30)におけるAQP4-IgGのパーセンテージ差の要約により再発試料の割合を実証する。クラススイッチングの代替としてのすべてのIgGサブクラスにわたる%変化の要約。これは、AQP4IgMが上昇した試料(AUC=0.57)を除外する場合、適中度を示す。これは、IgGサブクラススイッチングの規模は再発リスクと関連するが、AQP4-IgMが上昇しない試料においてのみであることを示す。これは、AQP4-IgGサブクラススイッチングの変化は再発のリスク因子として作用し得るが、最も強力な予測因子は、IgMレベルの上昇およびIgGサブクラススイッチングの両方の組合せであることを示唆する。試料の割合が、AQP4-IgMまたはAQP4-IgGサブクラススイッチのいずれかの非存在下で再発と関連することを考慮すると、データは、他の未測定の変数、例えば、検出可能なIgM/IgGサブクラス差が存在しない場合のIgAクラススイッチングまたはエピトープ変化が存在し得ることを示唆する。
図14図14は、感度および(1-特異度)を示す再発確率約log2(AQP4-IgM差)+AQP4-IgGサブクラス差の一般線形モデルにより生成したスコアのROCプロットである。内図は、再発確率に対するこのスコアのスライディングウインドウプロットを示す。AQP4 IgMおよびIgGサブクラス%変化の一般線形モデル(外図)の重みづけに基づくスコアの組合せスコアは、良好な予測強度を示した(AUC=0.73)。最適閾値(0.199)では、感度は0.78であり、特異度は0.69である。
図15図15は、時間枠を設定し、対象由来の経時的試料間を考慮した、AQP4 IgMおよびIgGサブクラス%変化の組合せについての一般線形モデルスコアに対する陽性適中度および陰性適中度のプロットを示す。非常に強力な陰性適中度0.94を実証する。PPV=陽性予測因子値、下線。NPV=陰性予測因子値、上線。
図16図16は、再発確率約log2(AQP4-IgM)+AQP4-IgG1%の一般線形モデルのスコアを示すROC曲線を示す。図15と比較して、対象由来の経時的試料間を考慮せず、各試料を独立的データ点として処理する。内図は、再発確率に対するこのスコアのスライディングウインドウプロットを示す。全AQP4-IgGのAQP4 IgMおよびAQP4-IgG1%は、一般化線形モデルにおいて最も有意な関係性であった(AUC=0.71)。最適閾値(-0.435)では、感度は0.70であり、特異度は0.72である。
図17図17は、一般線形モデルスコアに対する陽性適中度および陰性適中度のプロットであり、これは対象由来の経時的試料間を考慮せず、各試料を独立的データ点として処理する。閾値>1.23における陽性適中度(陽性適中度=0.81、陰性適中度=0.83)。ROC曲線の最適閾値では、陽性適中度=0.37、陰性適中度=0.91。PPV=陽性予測因子値、下線。NPV=陰性予測因子値、上線(top lime)。
図18】AQP4-IgGサブクラスの検出。NMOSD患者4人におけるAQP4-IgG1-4サブクラス検出のフローサイトメトリーゲーティングおよび代表的な例。AQP4=アクアポリン4、IgG=免疫グロブリンG、NMOSD=視神経脊髄炎スペクトラム障害。
図19】細胞系アッセイによるAQP4-IgMの検出。IgGの枯渇後、AQP4-EGFPトランスフェクト生HEK293T細胞(緑色)の表面に(抗ヒトIgM、赤色を)結合させることにより血清においてAQP4-IgMを検出した。AQP4=アクアポリン4、EGFP=増強緑色蛍光タンパク質、HEK=ヒト胚性腎臓、IgM=免疫グロブリンM。
図20図20では、非再発に対して再発LGI1自己抗体患者由来の血清におけるCXCL13レベルが有意により高くなり、再発した患者が、カットオフを超えるCXCL13レベルをより頻繁に示したことを実証する(血清の70%対非再発患者由来の血清の30%;p<0.0001)。LGI1抗体患者48人の血清試料142種(患者/試料のサブセット)からCXCL13を測定した。健常対照試料37種から、CXCL13レベルについて(145pg/ml)平均プラス3標準偏差のカットオフを得た。これに基づくと、大型のコホートでは、陽性CXCL13試料59/87種(68%)が再発患者由来であり、再発患者由来の試料59/84種(70%)がCXCL13陽性であった(ともにp<0.0001;フィッシャーの直接検定;図20)。
図21図21は、LGI1自己抗体が非常に低いかまたは検出不能となった後であってもCXCL13レベルが持続的に上昇した、治療抵抗性LGI1抗体脳炎を有する患者の代表的な例を示す。これは、治療抵抗性疾患を有する患者数名において観察された。AED=抗てんかん薬。
【発明を実施するための形態】
【0110】
方法および材料
参加者
NMOSDを有する患者63人のケースノートから臨床情報を遡及的に収集し、血清AQP4-IgG,7を選択して利用可能な長期的血清試料を-80℃で保存した。詳細は、人口動態、臨床的特徴、医薬投与のタイミングおよび再発日を含み、これから年間再発率(ARR)を算出した(表1および2)。35/63人に静脈内RTXを投与した:最初に1gを開始から2週間に分けて2回、その後、検出可能な循環CD19+数の回復に基づいて1gを維持間隔で投与する。書面によるインフォームドコンセントをすべての参加者から得(倫理審査による承認:REC16/YH/0013、REC16/SC/0224およびREC14/SC/005)、14人は他の神経学的状態を有した[自己免疫性脳炎(n=11)および片頭痛(n=3)]。
【0111】
穿刺吸引(FNA)手順
超音波を使用してdCLN(深頸リンパ節;レベルI、II、IIIまたはV、図2および9)を位置決めし、これを23Gの針による可視化の下で評価した。2回の経過後、吸引液をPBSで希釈し、遠心分離して細胞性および可溶性画分を分離した。可溶性画分を総IgG/MおよびAQP4-IgG/M(1:5希釈)について以下のように検査し、無希釈試料により陽性結果を確認した。FNAにより回収した生細胞数の中央値は、1.5×10個細胞であった(範囲:2.4×10~3.5×10)。血清およびdCLNアッセイの全解析結果は、図5Aに示す。
【0112】
抗体検出方法
AQP4。患者63人から、十分に検証された免疫蛍光に基づく生細胞系アッセイを使用してAQP4-IgGおよびAQP4-IgMについて血清試料合計406種を検査した27。簡潔には、HEK293T細胞をトランスフェクトして表面AQP4を発現させ(M23アイソフォーム、増強した緑色蛍光タンパク質;EGFPにC末端で融合させた)、患者血清(出発希釈1:20)またはリンパ節吸引液(出発希釈1:50)とともにインキュベートした後、固定および洗浄した。その後、IgM(A21216;Invitrogen)またはIgG(709-585-098;Jackson Labs)のFc領域を標的とするAlexafluorコンジュゲート二次抗体により、可視化による検出が可能となった。すべての試料を滴定してエンドポイント希釈を行った。AQP4-IgMの決定前に、プロテインGセファロースビーズ(17-0618-01;GE、UK)を使用してIgGを枯渇させ、おそらくは未分画の血清におけるIgG-IgM交差競合を防いだ。
【0113】
AQP4-IgGサブクラスを定量化するために、患者50/63人からのエンドポイント希釈>1:20(1:50~1:40000)によるすべての血清316/406種を使用して、懸濁液において一過性にトランスフェクトしたAQP4-EGFP発現HEK293T細胞を標識し、洗浄および固定後、結合したIgGを、サブクラス特異的抗体[IgG1ヒンジ-AF647(9052-31)、IgG2Fc-AF 647(9070-31)、IgG3ヒンジ-AF 647(9210-31)、IgG4Fc-PE(9200-09)、SouthernBiotech]により検出した。その後、DAPIを加えた後、Attune NxTフローサイトメーターにより解析した。これまでに記載のように、他の抗体では、AQP4-IgGサブクラスレベルを、トランスフェクト細胞(単一細胞/生存可能/GFP陽性ゲート)マイナス非トランスフェクト細胞(単一細胞/生存可能/GFP陰性ゲート)のデルタ蛍光強度中央値により算出し、正規化抗体結合能を、較正ビーズ(Quantum Simply Cellularミクロスフェア;BangsLaboratories)により算出した28。カットオフは、各サブクラスについて、健常対照血清試料10種を使用して決定した(平均値プラス3標準偏差、SD)。
【0114】
総IgGおよび総IgMは、ELISA(Bethyl Laboratories)により測定した。
【0115】
LGI1。LGI1-IgGおよびLGI1-IgM抗体を、これまでに記載のように(Irani et al., 2010, Brain, 133:2734-2748)、LGI1自己抗体患者112人(20人再発)、健常対照60人およびNMDAR自己抗体患者30人由来のIgG枯渇血清試料420種における生細胞系アッセイにより追求した。IgG枯渇を行って、おそらくは、さらなる高親和性IgGによる、これらの結合の阻害を防いだ。
【0116】
星状膠細胞および神経細胞の一次ラット培養物
混合した神経細胞-星状膠細胞培養物を、これまでに記載のように、胎生期18日のラット海馬から調製した29。簡潔には、海馬をトリプシンで分解し、機械的に解離させ、抗増殖添加物を有しないneurobasal培地/B27サプリメント(1:50、Thermo Fisher)とともにプレーティングした。インビトロで21~28日後、ともに条件培地で希釈した患者血清(1:100)またはdCLN上清(1:50)を生細胞とともに30分間37℃でインキュベートし、4%のPFAで固定した。結合したヒト抗体を可視化するために、ヤギ抗ヒトIgGまたはIgMのFc交差吸収非コンジュゲート二次抗体のいずれかを適用した後(Thermo Fisher;1:750)、蛍光コンジュゲート三次抗体(ロバ抗ヤギIgG、AlexaFluor-568;A-11057、Thermo Fisher)を適用した。星状膠細胞を同定するために、細胞を透過処理し(0.1%のトリトン-X-100)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP;DAKO、Z0334;1:2000)を認識する市販の抗体およびヤギ抗ウサギIgG検出二次抗体(AF488、A-11008、Thermo Fisher;1:750)とともにインキュベートした。
【0117】
フローサイトメトリーおよびセルソーティング
新鮮なLN単核細胞および対応する末梢血単核細胞(PBMC)をフィコール密度勾配上で単離した。細胞を正常マウス血清とともにインキュベートして非特異的結合をブロッキングし、市販の蛍光色素コンジュゲート抗体:CD3(UCHT1、Pacific Blue、BioLegend)、CD14(HCD14、Pacific Blue、BioLegend)、CD45(HI30、AF700、BioLegend)、CD19(SJ25C1、APC-Cy7、BD Biosciences)、CD20(2H7、BV711、BioLegend)、CD24(ML5、BV510、BioLegend)、CD27(O323、BV605、BioLegend)、IgD(IA6-2、FITC、BD Biosciences)、CD38(HIT2、PE、BD Biosciences)、CD4(RPA-T4、PE-CF594、BD Biosciences)、CXCR5(J252D4、PE-Cy7、BioLegend)およびPD-1(RMP1-30、APC、BioLegend)により表面表現型を決定した。その後、細胞を洗浄し、DAPIを加えた後、Attune NxTフローサイトメーターにより解析した。フローサイトメトリーデータは、FlowJoソフトウェアを使用して手動でゲーティングした(Treestar Inc.;図5B~C)。
【0118】
単一B細胞培養物および免疫グロブリン鎖の回収
FACS AriaIIIを使用して、CD19、IgDおよびCD27を認識する上記の抗体で予め標識したB細胞を96ウェルプレートの個々のウェル内にインデックスソーティングした。このウェルでは、これらを、10%のFBS(Thermo scientific)、β-メルカプトエタノール、ペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/mL、Thermo scientific)、HEPES(1M、Thermo scientific)、ピルビン酸ナトリウム(100mM、Thermo scientific)、MEM非必須アミノ酸(100×;Thermo scientific)およびGlutamax(100×、Thermo scientific)を含むRPMI1640(Thermo scientific、Dr G Kelsoeより寄贈)中でMS40L低支持細胞とともに培養した。培養物に組換えヒトIL-2(100μg/mL)、IL-4(100μg/mL)、BAFF(100μg/mL)およびIL-21(50μg/mL、すべてPeprotech)を補充し、培地の半分を週2回交換しながら37℃で5%CO2に維持した。22日目に培養上清を採取して、AQP4-IgGおよびIgM検出を行った。FloJoソフトウェアにより、陽性ウェルに対応する細胞をこれらの表面表現型と関連づけた。このようなウェルから、転写物を保存し(x)、これまでに記載のように、重および軽鎖PCRを実施した30。最終的には、www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast and www.imgt.orgを使用してAQP4特異的可変領域配列を解析した。
【0119】
統計学的解析
GraphPad Prism(v8;GraphPadSoftware Inc、La Jolla、CA)、R(R Core Team R: A language and environment for statistical computing, 2017)およびAdobe Illustratorを使用して統計学的解析およびデータの提示を行った。
【実施例
【0120】
[実施例1]
【0121】
臨床的再発と関連するAQP4-IgGサブクラスおよびAQP4-IgM動態
NMOSD患者63人中35人におけるRTX投与(患者1人あたり注入中央値7回、範囲1~14)は、ARRの有意な低下(p<0.001;マン・ホイットニーU検定、図1A~B)および31/35人(89%)における他の免疫治療薬中断の成功の両方と関連した9,31。また、予想通り、長期的RTX注入(経過観察中央値50カ月、範囲20~135)は、血清AQP4-IgGレベル中央値の有意な低下とは関連しなかった(図1C)。
【0122】
末梢血により、この臨床的血清学的解離への洞察がもたらされるかどうかを判定するために、患者50人における利用可能な長期的試料からのAQP4-IgGサブクラスおよびAQP4-IgMレベルを測定した(図1D~E)。IgMは5日の半減期を有するため、IgGサブクラスの移行は活性クラススイッチ組換えを示唆する。したがって、これはともに最近のGC(胚中心)活性の代替を表す。RTX処置患者10/22人(46%)およびRTXを受けなかった患者17/28人(61%)は、これらの疾患過程を通じてAQP4-IgGのIgG1優勢が排他的に認識されたことを示した。したがって全体的に見て、IgG3>2>4は、患者23/50人(46%)における少なくともある時点からの優位な血清AQP4-IgGサブクラスであった。優位なAQP4-IgGサブクラスのスイッチは、臨床的再発が24/61人(39%)の時点の前後に認められたが、40/255人(16%)の時点のみが再発とは結びつかなかった(p=0.0001、フィッシャーの直接検定)。再発前後のAQP4-IgGサブクラスのこの移行によってナイーブB細胞のデノボ(de novo)でのGC反応開始が表される場合、1つの予測は、AQP4-IgMをも生成されるはずであるということであり得る。実際、複数の時点にわたって、患者22/50人(44%)において血清AQP4-IgMが検出され、優先的には、再発29/61人(48%)と関連し、これに対して採取した試料のわずかに37/316種(12%)が再発とは結びつかなかった(p<0.0001、フィッシャーの直接検定)。再発とは対照的に、リツキシマブ投与は、AQP4-IgMまたは優位なAQP4-IgGサブクラスの移行のいずれとも有意には関連しなかった(データ非提示)。全体的に見て、AQP4-IgMまたは変化した優位なAQP4-IgGサブクラスいずれかの存在は、再発と密接に関連した(43/61対73/255;オッズ比6.0(範囲3.3~10.8);p<0.0001)。同様の所見が、個体においてロバスト性を維持した。例えば、個々の患者3人では、優勢なサブクラスのスイッチは、一部の再発の前後に観察され(患者7および10)、AQP4-IgMスパイクの全体での再発生は、患者6における再発と関連することが多かった。まとめると、このような知見により、GC活性が、再発時点前後におけるAQP4抗体産生の源として意味づけられる。
[実施例2]
【0123】
NMOSDを有する患者由来のdCLN吸引液において観察されるAQP4-IgGの局所合成がRTXにより抑制される
患者において仮説を直接検査するために、dCLN吸引36回を、NMOSDを有する患者14人(n=18吸引)および疾患対照14人(n=18吸引)において実施した(図2および図9)。個体における血清対dCLN吸引液の比較により、約1500分の1および約500分の1に低下した総IgGおよびIgMレベルが、それぞれ示された(図2B)。さらに、著しく異なるリンパ球集団がdCLNおよびPBMCにおいて観察されたことにより、最小限の血液夾雑が確認され(図2C)、dCLNでは、単球(p<0.0001)および移行期B細胞の割合は低いが(CD19CD20CD24CD38;p<0.0001)、濾胞ヘルパーT細胞の出現頻度は高いことが示された(Tfh;CD3CD4PD-1CXCR5、p<0.0001、すべてウィルコクソン符号順位検定)(26)。
【0124】
RTXナイーブNMOSD患者由来のdCLN吸引液では、試料7/7種(100%)においてAQP4-IgGが示され、HEK293T発現AQP4の細胞外ドメインおよび生星状膠細胞表面へのIgG結合により検出された(図2D)。このような患者7人では、血清AQP4-IgGは、エンドポイント希釈1:100~1:3200(中央値1:400)の範囲に及び、AQP4-IgG:総IgGレベルの比は、dCLN吸引液において対応する血清に対して有意により高くなった(p=0.02;ウィルコクソン符号順位検定、図2D~G)。このような知見は、局所(「節内」)AQP4-IgG合成を示す。この概念は、対応する血清では検出されなかったが、dCLN吸引液2種におけるAQP4-IgMの所見により、さらに支持された(図2Dおよび図6)。このような知見とは対照的に、RTX投与後、数カ月にわたって試料採取したdCLN吸引液のわずかに2/11種(18%)からAQP4-IgGが検出された(図2E~G;p=0.002、フィッシャーの直接検定)。このような集団的所見により、AQP4-IgGの節内合成がRTXによって効率的に抑制されることが示される。したがって、RTXによるdCLNにおけるAQP4特異的B細胞の除去は、血清AQP4-IgGレベルを変化させずに、この臨床的有効性を説明する1つの機構を表し得る。
[実施例3]
【0125】
LNおよび血液におけるAQP4特異的B細胞
B細胞サブセットにおけるAQP4特異度を同定するために、dCLNおよび循環器の両方由来の単一B細胞をインデックスソーティングし、複数のクローン関連抗体分泌細胞への増殖および分化を誘導するサイトカインに個々に曝露した(CD19+CD27++CD38++、および頻繁にはCD138+;図3A)。このようにして22日後、AQP4反応性について培養上清を評価した。患者3人由来の培養B細胞8293種中11種が、AQP4-IgMまたはGのいずれかを分泌した(図3B)。このような培養物の約50%の「捕捉率」(データ非提示)考慮すると、血液およびLN由来のCD19+B細胞の約0.2%がAQP4特異性を示した(図3C)。細胞インデックス作成により、AQP4特異的B細胞がナイーブ(n=4)、二重陰性(n=1)、IgD+メモリー(n=2)およびIgD-メモリー(n=4)集団に由来することが明らかとなった(図3AおよびD、図7)。3つすべてのdCLN AQP4抗体は、メモリーサブセット中から生じ、上清においてIgGとして検出される、わずかに2つのAQP4反応性を含んだ。ナイーブB細胞由来の同族の重および軽鎖対は未変異であり、二重陰性、IgD+メモリーおよびIgD-メモリー細胞により変異荷重の上昇が観察された。すべては、高度に可変のV(D)Jアレルの用途を示し、約2:1のカッパ:ラムダ鎖を発現した(図3Dおよび図10)。要約すると、AQP4特異的B細胞は、複数の初期および後期B細胞サブセットから生じる遺伝的に多様な系列内の、NMOSDを有する患者由来のPBMCおよびdCLNの両方において検出された。
[実施例4]
【0126】
RTX後のdCLN由来B細胞の有効な枯渇
RTX投与は、PBMCおよびdCLNの両方により観察されたCD19+B細胞の明白な減少と密接に関連した(p<0.001、マン ホイットニーU検定、図4A)。B細胞サブセット組成物は、未変化であった(図8A)。疾患対照とは対照的に、抗体分泌細胞またはTfH出現頻度を有意には変化させずに(図8C~D)、PBMCおよびdCLNの両方からのCD20+T細胞出現頻度における中程度の低下が存在した(図8B)。節内B細胞枯渇は、2回以上のRTX注入を受けたNMOSD患者(dCLN B細胞平均14細胞、範囲0~56)対単回注入を受けた患者(dCLN B細胞平均84細胞、範囲9~230;p=0.04、マン ホイットニーU検定)またはRTXに対してナイーブである患者(dCLN B細胞平均18817細胞、範囲1602~65276;p=0.0001、マン ホイットニーU検定)において最も著しかった。一部の循環B細胞が初期に再増殖したにもかかわらず、節内B細胞枯渇は、RTX投与から数カ月間持続した(図4B)。このような結果を個体において長期的に確認するために、血液および同一dCLNの対応する試料採取を、RTX投与前後の両方(n=2)およびRTX後2回(n=2、図4D)の2つの場合に受けた患者4人由来のAQP4-IgGおよびB細胞データを解析した。すべての場合では、血清AQP4-IgGレベルは未変化であったが、dCLNのAQP4-IgGレベルは、エンドポイント希釈1:100~1:250から未検出まで低下し、dCLN B細胞集団は、(n=2)となるか、または未検出のままであった(n=2)。
[実施例5]
【0127】
IgMおよびIgGサブクラスの変化の組合せ測定により再発の強力な予測力がもたらされる
図11~17は、IgMおよびIgGサブクラス%の組合せまたはIgGスイッチングにより、再発の最も強力な予測力がもたらされることを実証する。二値スコアを超える連続スコアの1つの利点は、閾値を調整して、臨床適用により必要に応じて感度、特異度、陽性適中度または陰性適中度を最大化することが可能であることである。このようなパラメーターは、0.94の陰性予測力および0.81の陽性適中度に達し得る。したがって、これらは、臨床的意思決定の有効なツールとなる。
[実施例6]
【0128】
LGI1-IgMは再発を示す
データは、LGI1-IgM抗体がAQP4-IgM抗体と類似の臨床的関連性を示すことを実証する。AQP4抗体を有する患者とは対照的に、LGI1抗体を有する患者は典型的には、高齢男性であり、発症年齢中央値がおよそ65歳であり、男性:女性比は2:1である。さらに、文献に報告された患者のおよそ10~40%が、再発を示す。したがって、自己抗原特異的IgMの有用性は、広範な人口動態および頻繁に再発する疾患に対して重要である。
【0129】
各患者から入手可能な第1の試料から、LGI1-IgG抗体が予想通り検出された。プロテインGビーズを使用したIgG枯渇後、このようなLGI1自己抗体患者血清では検出可能なLGI1-IgG抗体が欠如しており、完全な枯渇が確認された。健常対照でもNMDAR自己抗体患者でも、検出可能なLGI1-IgM抗体を有しなかった。患者8/112人由来の試料16/420種は、検出可能なLGI1-IgM抗体を示し、1:20~1:160の範囲の最終力価を有した。
【0130】
【表1】
【0131】
LGI1-IgM抗体を有する患者7/8人が再発し、これと比較して1/104人が再発しなかった(p<0.0001;フィッシャーの直接検定)。5/7の場合において、再発から4週間以内に、LGI1-IgM抗体を有する再発した患者7人から、これらが検出された。LGI1-IgM抗体を有しない患者104人中わずかに2人が、再発した(p<0.0001;フィッシャーの直接検定)。
【0132】
これは、再発に対するLGI1-IgMの非常に高いオッズ比(357;27~3947)とともに98%を超える特異度および99%を超える陰性適中度を有することに等しい。
【0133】
【表2】
[実施例7]
【0134】
CXCL13は再発を示す
上に考察したデータにより、抗原特異的IgMが、活性な胚中心反応の有効な代替尺度であることが実証される。胚中心活性の別の十分に確立されたマーカーは、サイトカイン(CXCL13)であり、濾胞樹状細胞および濾胞ヘルパーT細胞を含む胚中心反応に参加する細胞により産生される。
【0135】
したがって、患者/試料のサブセット(LGI1抗体患者48人の血清試料142種)からCXCL13を測定した。健常対照試料37種から、CXCL13レベルについて(145pg/ml)平均プラス3標準偏差のカットオフを得た。これに基づくと、大型のコホートでは、陽性CXCL13試料59/87種(68%)が再発患者由来であり、再発患者由来の試料59/84種(70%)がCXCL13陽性であった(ともにp<0.0001;フィッシャーの直接検定;図20)。
【0136】
【表3】
【0137】
血清CXCL13レベルは、再発LGI1自己抗体患者由来の血清において非再発LGI1自己抗体患者に対して有意により高くなり、再発患者は、カットオフを超えるCXCL13レベルをより頻繁に示した(血清の70%対非再発患者由来の血清の30%;p<0.0001)。
【0138】
さらに個々の患者では、LGI1自己抗体が非常に低いかまたは検出不能となった後、特に、治療抵抗性疾患を有する患者において、CXCL13レベルの持続的上昇が観察された(図21)。
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
考察
NMOSDを有する患者からの血液の試料採取により、優位なAQP4-IgGサブクラスおよびAQP4特異的IgMのスイッチが、臨床的再発と特に累積的に関連することが明らかとなった。このようなパラメーターはともに、GC活性の産物であると考えられ得る。NMOSDを有する患者におけるdCLNにより、節内AQP4特異的B細胞の証拠およびAQP4-IgGの節内合成の特徴がもたらされ、これによりGC活性が、このAQP4特異的自己免疫化への鍵であることが直接示された。この観察所見は、数年にわたるさまざまな時点で得られた試料に由来したため、AQP4自己抗体が疾患過程を通じたGC活性により生成されるという概念を支持する。治療的に重要なことには、RTXの投与によりdCLN常在B細胞の枯渇に成功し、GC活性の破壊におけるこの潜在的治療的価値を示した。血清AQP4-IgGレベル低下の作用がわずかであるにもかかわらず、この推定的作用機構によって、急速な臨床的有効性が説明され得る。さらに広範には、この試験は、臨床試験に有用な直接的尺度を含む、GC活性の複数のバイオマーカーを決定する、インビボ(in vivo)でのヒトにおけるパラダイムを提示する。今後は、このパラダイムの翻訳が、他の自己免疫状態の生物学および他の自己免疫治療薬の作用機構ならびに感染性疾患のためのワクチン接種のより良い理解に役立ち得る33
【0142】
利用可能な研究と並行して、このような所見により、NMOSDを有する患者における古典的抗原特異的GC反応の多くの要素が同定される。第1に、B細胞耐性の初期の低下が、NMOSDにおいて観察されていた。これは、NMOSD PBMC由来の未変異でIgMを発現するナイーブなAQP4特異的B細胞の最終的単離、ならびにくも膜下腔内AQP4特異的細胞と末梢性二重陰性およびナイーブB細胞との間の推定変異段差に基づく系列樹の構築の成功と一致している。未変異ナイーブBCRは、AQP4に対して低親和性を有する可能性が高く、GCの開始時にAQP4エピトープに結合する第1のリンパ球であり得る。臨床的再発では、観察されたAQP4-IgMのスパイクは、GC活性が、IgGメモリーB細胞の再活性化ではなく、ナイーブB細胞の優先的動員により駆動することを示唆する。検出されるIgMメモリーB細胞は役割を果たし得るが、GCに再進入するメモリーB細胞の希少性は、最近の実験マウスデータにより強調される。その後、AQP4特異的T細胞の助けを借りて、このようなナイーブAQP4特異的B細胞は、分化して、より高親和性のAQP4特異的メモリーB細胞に変異する可能性が高く、このメモリーB細胞は、血液およびdCLNの両方から捕捉される。AQP4特異的B細胞の全出現頻度は、ほとんどの慢性抗微生物応答よりもはるかに高く、NMOSD患者におけるGCが、AQP4特異的自己免疫化により頻繁に占有されることを示唆する。
【0143】
dCLNは、CNSリンパ液を直接排出するため、CNS優勢抗原により駆動する疾患においてGCの有望な部位として提唱される。dCLNは、CNS発現AQP4に遭遇する第1の末梢構造であり得る。ヒトdCLNに基づくGCからのAQP4抗原の検出は、吸引液の血液汚染が最小であると思われることを特に考慮すれば、いまや現実的な目標である。しかし、NMOSDを有する患者2人の眼窩における異所性GCの組織学的特徴が記載されており、AQP4-B細胞は、CNSへの遊走後、CNSの高AQP4部位に散在する可能性がある。
【0144】
なおさらに、データにより、LGI1-IgMが、典型的には発作から4週間以内の再発に対する98%を超える特異度および99%を超える陰性適中度と関連することが実証される。したがって、これらにより、再発の特異的予測バイオマーカーをも提供される。これらの存在により、LGI1抗体脳炎を有する患者において免疫抑制が向上すると考える動機がもたらされる。
【0145】
また、胚中心反応の別のマーカー(CXCL13)は、LGI1抗体脳炎を有する患者、特には、再発した患者において上昇することが実証される。これらは、LGI1抗体がもはや上昇しなくなると、免疫治療抵抗性患者において上昇を維持し得る。したがって、さらなる免疫抑制の使用の誘因となる、さらに独立的かつ有用なバイオマーカーが提供される。また、この手法により、CXCL13特異的治療薬による精密医療の潜在的有用性の特異的上昇が予測される。
【0146】
結論として、この試験では、所与の抗体媒介自己免疫疾患に臨床的に適切であることが知られる抗原、例えば、NMOSDにおけるAQP4を認識する、IgM抗体の出現もしくは上昇および/または優勢なIgGサブクラスの変化が、対象が再発状態にあるかもしくは再発しかかっており、および/または対象の所与の抗体媒介自己免疫疾患を治療すべきであることの、統計学的に有意な指標であることを実証する。詳細には、データは、例えば、疾患過程中におけるAQP4-IgM、LGI1-IgMまたはCXCL13の出現または上昇は、患者が再発する可能性が高いことを示唆する一方、IgM抗体またはサイトカインの検出可能な上昇または存在を有する場合、患者が再発しない強力な可能性を有することを示唆する。この知見は、患者を監視し、治療薬の段階的増加の根拠を評価し、根底にある疾患の生態を直接理解することを目指すための意義を有する。例えば、再発状態にある可能性が高くない患者の同定により、高額な治療の必要性が排除され、患者に従来の免疫治療薬の副作用を回避させる。GCを中心としたバイオマーカーは、直ちに臨床段階に入る可能性を有し、抗体媒介自己免疫疾患のための精密医療への手段となり得る。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
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図20
図21
【国際調査報告】