(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ボール紙をレーザビームで加工する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/402 20140101AFI20240229BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240229BHJP
【FI】
B23K26/402
B23K26/364
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556808
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2022055799
(87)【国際公開番号】W WO2022194603
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512159605
【氏名又は名称】ボブスト メックス ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Bobst Mex SA
【住所又は居所原語表記】Route de Faraz 3,CH-1031 MEX(VD),Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ピロン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルテリオ ロベルト
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168AD18
4E168CB04
4E168DA32
4E168DA37
4E168EA15
4E168JA18
(57)【要約】
ボール紙(12)をレーザビーム(14)で加工する方法が提供され、レーザビーム(14)を所望の折り曲げ線(24)に沿ってボール紙(12)の上で動かしてボール紙(12)を切り裂くことなくボール紙(12)の上層をアブレーションし、レーザビーム(14)をレーザビーム(14)がボール紙(12)の下に焦点合わせされるよう調節する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール紙(12)をレーザビーム(14)で加工する方法であって、前記レーザビーム(14)を所望の折り曲げ線(24)に沿って前記ボール紙(12)の上で動かして、前記ボール紙(12)を切り裂くことなく前記ボール紙(12)の上層をアブレーションし、前記レーザビーム(14)を前記レーザビーム(14)が前記ボール紙(12)の上または下に焦点合わせされるよう調節する、方法。
【請求項2】
前記レーザビーム(14)は、少なくとも0.3mm、特に最大2mmまでの直径で前記ボール紙(12)に当たる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビーム(14)を連続線、破線および/または一点鎖線の状態で前記ボール紙(12)に沿って動かす、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビーム(14)を2本の平行な線(26)の状態で前記所望の折り曲げ線(24)に沿って動かす、請求項1~3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記平行な線(26)は、互いにオーバラップしない、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記レーザビーム(14)を前記折り曲げ線(24)に対して傾けられた複数の平行な線(26)の状態で折り曲げ線(24)に沿って動かす、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記レーザビーム(14)を少なくとも1つのガルバノメータースキャナ(23)によって前記ボール紙(12)に沿って動かす、請求項1~6のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザビーム(14)を焦点合わせレンズ(18)によって焦点合わせする、請求項1~7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザビーム(14)を前記焦点合わせレンズ(18)に入る前に発散させる、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール紙をレーザビームで加工する方法およびボール紙をレーザビームで加工する方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の折り曲げ線に沿ってボール紙(板紙または厚紙)の容易な折り曲げを可能にするためボール紙を通常折り曲げ線に沿って罫入れする。罫入れ(creasing)は、機械的罫入れまたはレーザによって達成でき、レーザは、ボール紙の上層を折り曲げ線に沿ってアブレーションする。
【0003】
しかしながら、レーザを用いる際、複数の折り目線が十分な折り曲げを可能にするためには必要である。例えば、約90°の折り曲げを可能にするためには、少なくとも3本の折り目線が必要である。約180°の折り曲げを可能にするためには、少なくとも5本の折り目線が必要である。かくして、ボール紙をレーザで罫入れするのは、時間がかなりかかる。
【0004】
米国特許出願公開第2013/0296150(A1)号明細書は、ボール紙の予備処理を行い、例えば、ボール紙を罫入れするレーザビームスキャナを記載しており、折り目は、ボール紙の折り曲げを容易にするよう働くことができる。中国特許出願公開第112203796(A)号明細書は、レーザ照射を用いてボール紙を加工する装置および方法を開示している。特に、ボール紙ブランクの表面にレーザを照射するが、その目的は、ボール紙ブランクから材料を除去することにある。欧州特許出願公開第2700583(A1)号明細書は、折り曲げ線14を備えたボール紙を開示しており、これら折り曲げ線は、ボール紙にレーザビームを当てることによって作られる。技術の現状のこれら特許文献は全て、裁断に用いられるセットアップ、すなわち焦点合わせレーザセットアップと同一のレーザビームセットアップを開示している。かくして、これら従来技術には、ボール紙の罫入れに適用された場合には上述の欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0296150(A1)号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第112203796(A)号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2700583(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、本発明の目的は、ボール紙の加工にあたって生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、ボール紙をレーザビームで加工する方法であって、レーザビームを所望の折り曲げ線に沿ってボール紙の上で動かして、ボール紙を切り裂くことなくボール紙の上層をアブレーションし、レーザビームをレーザビームがボール紙の上または下に焦点合わせされるよう調節することを特徴とする方法によって達成される。
【0008】
本発明の目的は、さらに、ボール紙を上述したようにレーザビームで加工する方法を実施する装置によって達成され、この装置は、レーザビーム源と、レーザビームを偏向させてレーザビームを所望の折り曲げ線に沿ってボール紙上で動かすことができるように構成された偏向装置と、レーザビームがボール紙上に焦点合わせされないようレーザビームの焦点を調整するよう構成された焦点合わせレンズとを有する。
【0009】
本発明の方法および装置は、レーザがボール紙の上層に直接焦点合わせされるレーザの場合よりも大きな直径でボール紙に当たるという利点を有する。それにより、ボール紙からアブレーションされた部分は、ボール紙上に焦点合わせされたレーザの使用と比較して幅が広い。その結果、ボール紙の必要な幅を除去するのに必要なレーザの運動線が少ない。例えば、従来方法に従ってボール紙を処理する際の5本の折り目線と比較して、ボール紙を約180°折り曲げるのに必要な折り目線は、2本にすぎない。折り目線を少なくすることにより、折り目線が偶然に重なり、レーザビームがボール紙を切り裂いてしまう恐れが減少する。
【0010】
好ましくは、ボール紙の内側の面上でのみ材料がアブレーションされ、その結果、折り目線は、折り曲げられたボール紙の外側からは見えない(すなわち、最終の包装時に見えない)。
【0011】
例えば、レーザビームは、少なくとも0.3mm、特に最大2mmまでの直径でボール紙に当たる。好ましくは、非焦点合わせレーザは、0.5mm~2mm、特に1.1mmの直径でボール紙に当たる。それにより、レーザビームは、ボール紙の一部をアブレーションするのに足るほど依然として強力であり、ボール紙の上面の十分に多くの広さ又は量がレーザビームによって除去される。
【0012】
レーザビームを連続線、破線および/または一点鎖線の状態でボール紙に沿って動かすのがよい。レーザビームをボール紙に沿って破線または一点鎖線を状態で動かすことは、折り曲げ線に沿ってアブレーションされる材料が少なくなり、しかもボール紙が折り曲げ線に沿って裂けた状態になる恐れが減少するという利点がある。
【0013】
一実施形態によれば、レーザビームを2本の平行な線の状態で所望の折り曲げ線に沿って動かす。それにより、少なくとも約90°、特に180°のボール紙の折り曲げを可能にするのに足るほどの材料をアブレーションすることができる。
【0014】
好ましくは、平行な線は、互いにオーバラップしない。それにより、レーザビームがボール紙を切り裂くことが回避される。特に、製造公差を考慮に入れるために互いに平行な線相互間には僅かの距離を設けるのがよい。
【0015】
別の実施形態によれば、レーザビームを折り曲げ線に対して傾けられた複数の平行な線の状態で折り曲げ線に沿って動かす。それにより、レーザビームを折り曲げ線に沿って前後に動かす必要なく、特に幅の広い折り曲げ線を実現することができる。この実施形態によれば、折り曲げ線の幅は、互いに平行な線の長さで決まる。
【0016】
レーザビームを少なくとも1つのガルバノメータースキャナによってボール紙に沿って動かすのがよい。ガルバノメータースキャナによって、レーザビームを特に高い精度で動かすことができる。
【0017】
一実施形態によれば、レーザビームを焦点合わせレンズ、特に収束レンズによって焦点合わせする。焦点合わせレンズを用いることによって、レーザビームの焦点を特に容易に調節することができる。
【0018】
焦点合わせレンズに入る前に、レーザビームを発散させるのがよい。それにより、レーザビームは、レーザビーム源を出たときよりもボール紙に当たったときのほうが大きな直径を有する。
【0019】
別の特徴および別の利点を以下の説明および添付の図から導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】レーザビームでボール紙を加工するための本発明を実施する本発明の装置を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に従ってレーザビーム経路を示す図である。
【
図3】別の実施形態に従ってレーザビーム経路を示す図である。
【
図4】別の実施形態に従ってレーザビーム経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、ボール紙12をレーザビーム14で加工する装置10を示している。
【0022】
装置10は、レーザビーム源16を有し、レーザビーム14は、このレーザビーム源から出る。
【0023】
さらに、装置10は、焦点合わせレンズ18を有する。焦点合わせレンズ18の位置は、
図1の矢印17で示すように調節可能であるのがよい。
【0024】
装置10は、オプションとして、レーザビーム源16から出た後にレーザビーム14を通過させる発散レンズ20をさらに有する。矢印19で示すように発散レンズ20の位置も又、調節可能であるのがよい。
【0025】
発散レンズ20および焦点合わせレンズ18の通過後、レーザビーム14は、偏向装置22に当たる。
【0026】
偏向装置22は、レーザビーム14を偏向させてこのレーザビームを
図1に破線で可視化されている所望の折り目線24に沿ってボール紙12の上で動かすことができるように構成されているのがよい。
【0027】
この目的のため、偏向装置22は、少なくとも1つのガルバノメータースキャナ23を有する。特に、
図1に示す実施形態としての偏向装置22は、2つのガルバノメータースキャナ23を有する。それにより、レーザビーム14をボール紙12の表面の上であらゆる方向に動かすことができる。
【0028】
焦点合わせレンズ18によって、レーザビーム14の焦点Fを調節してレーザビーム14がボール紙12の下または上に(好ましくは、ボール紙12の下に)焦点合わせするようにする。
【0029】
かくして、レーザビーム14は、少なくとも0.3mmの直径でボール紙12に当たる。特に、レーザビーム14の直径は、これがボール紙12に当たるときに最大2mmまであるのがよい。
【0030】
ボール紙12の上で動いている間、ボール紙12へのレーザビーム14の衝突直径は、僅かにばらつきを生じる場合がある。しかししながら、これは欠点ではない。
【0031】
レーザビーム14をボール紙12に沿って動かしているとき、ボール紙12の上面は、レーザビーム14によってアブレーションされる。しかしながら、レーザビーム14は、ボール紙12を完全には切り裂かない。その結果、ボール紙12を後で容易に折り曲げることができる。
【0032】
図2は、一実施形態に従ってレーザビーム経路を可視化している。この実施形態によれば、レーザビーム14は、2本の互いに平行な線26に沿ってボール紙12の上で動かされる。互いに平行な線26は、折り曲げ線24に沿って延びている。それにより、ボール紙12を折り曲げ線24回りに少なくとも約90°、特に約180°まで折り曲げることができる。
【0033】
【0034】
図3は、異なるレーザパターンを可視化している。
図3に可視化された実施形態によれば、線26は、連続ではなく、一点鎖線である。
【0035】
2本の線26の一点鎖線を軸方向に互いに対してずらすことができる。
【0036】
図には可視化されていない別の実施形態では、線26は、破線のみまたは点線のみであってよい。
【0037】
図4は、別のレーザパターンを可視化している。
図4によれば、レーザビーム14は、折り曲げ線24に沿って折り曲げ線24に対して傾けられた複数の互いに平行な線28の状態で動かされる。例えば、線28は、折り曲げ線24に対して約30°~50°傾けられている。
【国際調査報告】