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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】板バネ装置、シャーシ、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60G 11/10 20060101AFI20240229BHJP
   F16F 1/368 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60G11/10
F16F1/368 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556975
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022057033
(87)【国際公開番号】W WO2022195030
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021106716.2
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523152374
【氏名又は名称】ラインメタル インヴェント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイサート マルティン
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA60
3D301AA69
3D301AA89
3D301DA02
3D301DA45
3D301DB09
3D301DB11
3D301DB12
3J059BA18
3J059BB01
3J059BC04
3J059BC13
3J059CC10
3J059GA02
(57)【要約】
車両(1)用の板バネ装置(6)であって、繊維複合プラスチックからなる板バネ機構(7)と、前記板バネ装置(6)を車両(1)上に支持するために板バネ機構(7)の第1の端部(11)に設けられ、正確に3の回転自由度を有する第1のベアリングポイント(18)と、前記板バネ装置(6)を前記車両(1)上に支持するために前記板バネ機構(7)の、前記第1の端部(11)とは反対側を向いた第2の端部(12)に設けられた第2のベアリングポイント(28)であって、正確に1の回転自由度を有する第2のベアリングポイント(28)と、を備えることを特徴とする板バネ装置(6)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の板バネ装置(6)であって、
繊維複合プラスチックからなる板バネ機構(7)と、
前記板バネ装置(6)を前記車両(1)上に支持するために前記板バネ機構(7)の第1の端部(11)に設けられた第1のベアリングポイント(18)であって、正確に3の回転自由度を有する第1のベアリングポイント(18)と、
前記板バネ装置(6)を前記車両(1)上に支持するために前記板バネ機構(7)の前記第1の端部(11)とは反対側を向いた第2の端部(12)に設けられた第2のベアリングポイント(28)であって、正確に1の回転自由度を有する第2のベアリングポイント(28)と、を備える
ことを特徴とする板バネ装置(6)。
【請求項2】
請求項1に記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイント(18)は、前記板バネ機構(7)の縦方向(y)を中心とした1回転自由度、前記板バネ機構(7)の横方向(x)を中心とした1回転自由度、および前記板バネ機構(7)の奥行き方向(z)を中心とした1回転自由度を有し、前記縦方向(y)、前記横方向(x)、および前記奥行き方向(z)は、互いに直交する方向を向いている
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の板バネ装置であって、
前記第2のベアリングポイント(28)の前記正確に1の回転自由度は、前記縦方向(y)に対して垂直または斜めに配置された回転軸(29)を中心に配される
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイント(18)は、ボールジョイント(19)のボールヘッドである
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の板バネ装置であって、
前記ボールジョイント(19)のボールソケット(20)を備え、
前記第1のベアリングポイント(18)は、前記ボールソケット(20)内に少なくとも部分的に受け入れられる
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイント(18)および/または前記ボールソケット(20)はプラスチックでコーティングされており、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされている
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第2のベアリングポイント(28)は円筒状の幾何学的形状を有する
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第1の端部(11)に取り付けられ前記第1のベアリングポイント(18)を備える第1のバネ受け(14)と、前記第2の端部(12)に取り付けられ前記第2のベアリングポイント(28)を備える第2のバネ受け(24)とを備える
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項9】
請求項1~8のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記板バネ機構(7)は一体化された部品である
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項10】
請求項1~9のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記板バネ機構(7)は、複数の板バネ部(8)と複数の偏向部(9)とを備え、それぞれの場合において1つの偏向部(9)が隣り合う2つの板バネ部(8)同士を接続する
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項11】
車両(1)用のシャーシ(30)であって、請求項1~10のうちの1つに記載の少なくとも1つの板バネ装置(6)と、前記第1のベアリングポイント(18)が支持される前記車両(1)に設けられたボディ接続領域(36)と、前記第2のベアリングポイント(28)が支持される制御アーム接続領域(39)を備える制御アーム(31)と、を備える
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項12】
請求項11に記載のシャーシであって、
前記第1のベアリングポイント(18)は、重力方向(g)に関して前記第2のベアリングポイント(28)よりも上方に配置されている
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシャーシであって、
前記制御アーム(31)は、伸張状態(Z1)から圧縮状態(Z2)に、またその逆に遷移させることができ、前記制御アーム接続領域(39)は、前記制御アーム(31)が前記伸張状態(Z1)から前記圧縮状態(Z2)に遷移したときに傾斜角(α)だけ傾斜し、前記第1のベアリングポイント(18)は前記傾斜角(α)を相殺する
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項14】
請求項13に記載のシャーシであって、
前記制御アーム接続領域(39)は、前記制御アーム(31)が前記伸張状態(Z1)から前記圧縮状態(Z2)へと移動するときにオフセット(a)分だけ移動し、前記第2のベアリングポイント(28)が前記オフセット(a)を相殺する
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項15】
請求項1~10のうちの1つに記載の板バネ装置(6)および/または請求項11~14に記載のシャーシ(30)を備える車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用板バネ装置、そのような板バネ装置を備えたシャーシ、およびそのような板バネ装置および/またはそのようなシャーシを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、自動車をバネで支持するためにシャーシ内にバネが設けられることがある。そのようなバネは、通常、金属材料からなるため、重く、腐食しやすい。繊維複合プラスチックからなるバネは軽量で腐食の影響を受けにくいが、設計と製造の点でより複雑である。鋼製コイルバネに比べて設計が単純なため、特に繊維複合プラスチックからなる板バネが、自動車分野において次第に鋼製板バネに取って代わっており、鋼製板バネに対し、制御された製造プロセスで確立できる可能性が高まる破壊的技術の代表となっている。
【0003】
自動車のシャーシは、圧縮時と反発時に各車輪が縦方向に一次元的に変位するだけではないように設計されている。シャーシの複雑さによっては、ホイールは3つの空間方向に移動し、圧縮中にわずかにねじれる。鋼製バネは、ホイールが圧縮されたときに、それら鋼製バネの支持点を本体に対してずらしたりねじったりする動きに反応しない。
【0004】
これは繊維複合プラスチックからなる板バネには当てはまらない。前述の支持点は互いに対して横方向に移動し、ねじれる。これにより、繊維複合プラスチックからなる板バネに大きなストレスがかかり、特定の状況下では破損につながる可能性がある。したがって、繊維複合プラスチックで作られた板バネの場合、出願人の内部知識によれば、その手順は、バネ受けにより両端で共に保持された2つの蛇行した形状の板バネを組み合わせて、板バネ装置を形成することである。この2つの部分からなる設計が必要なのは、板バネの構造が、圧縮時に、非常に小さい横方向のたわみやねじれしか許容しないからである。これは繊維複合プラスチックの一方向性繊維構造を理由とし、2つの支持点が互いに横方向にずれたりねじれたりした場合、強度がほとんど得られないためである。
【0005】
こうした背景に対して、本発明の1つの目的は、車両用の、改良された板バネ装置を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
そこで、車両用板バネ装置が提案される。板バネ装置(device)は、繊維複合プラスチックからなる板バネ機構(apparatus)と、板バネ装置を車両上に支持するために板バネ機構の第1の端部に設けられ、正確に3の回転自由度を有する第1のベアリングポイントと、板バネ装置を車両上に支持するために板バネ機構の、第1の端部とは反対側を向いた第2の端部に設けられ、正確に1の回転自由度を有する第2のベアリングポイントとを備える。
【0007】
第1のベアリングポイントが数回転自由度を有することは、ねじれや横方向の力が板バネ機構に取り込まれるのを防ぐことができる、ということを意味する。第2のベアリングポイントが1回転自由度だけを有することにより、板バネ機構の意図しないねじれが防止される。板バネ機構への望ましくない負荷がベアリングポイントの助けにより防止できることにより、板バネ機構を最適な重量で、かつ用途に合わせて設計することが可能になる。
【0008】
本文脈における「板バネ機構」は、互いに接続され、それにより好ましくはジグザグのまたは蛇行した幾何学的形状を形成する複数の板バネ要素または板バネ部からなるバネまたはバネ要素を意味する。個々の板バネ部は、木の葉状または板状の幾何学的形状を有していてもよい。しかしながら、「木の葉状」または「板状」は、板バネ部が湾曲していること、および任意の三次元形状を有することを除外するものではない。例えば、板バネ部は、側面視でS字状に湾曲していてもよい。板バネ機構とは対照的に、円筒バネあるいはコイルバネは、当該コイルバネが円筒状の幾何学的形状を有するように螺旋状に成形された連続したワイヤを有する。
【0009】
板バネ装置は、好ましくは、圧縮バネである。しかしながら、板バネ機構は引張バネであってもよい。板バネ装置は、板バネ装置が板バネ機構とベアリングポイントの両方を備えるという点で、板バネ機構とは異なる。すなわち、板バネ機構とベアリングポイントとは、板バネ装置の一部である。一方、ベアリングポイントは、板バネ機構の一部ではない。しかしながら、これは、ベアリングポイントを板バネ機構に取り付けたり固定したりすることを除外するものではない。板バネ装置は、好ましくは、板バネ機構を1つだけ備える。
【0010】
繊維複合プラスチック(fiber composite plastic:FCP)は、繊維強化プラスチック材料とも呼ばれる。繊維複合プラスチックは、プラスチック材料、具体的にはプラスチックマトリックスを含み、その中に繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが埋め込まれている。プラスチック材料は、エポキシ樹脂またはビニルエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよい。しかしながら、プラスチック材料は熱可塑性プラスチックであってもよい。繊維は連続した繊維であってもよい。具体的には、繊維は、いわゆる一方向繊維であってもよい。すなわち、すべての繊維は互いに平行に延びている。
【0011】
しかしながら、繊維は、数ミリメートルから数センチメートルの繊維長を有する短繊維または中程度の長さの繊維であり得る。繊維は、プラスチック材料内に方向性を持って配置することも方向性なく配置することもできる。特に好ましくは、繊維はプラスチック材料内に方向性を持って配置される。具体的には、これは、繊維が互いに平行かつ等間隔でプラスチック材料に埋め込まれていることを意味する。板バネ機構は、層状または積層構造を有していてもよい。そのために、例えば、繊維織物または繊維スクリムの層にプラスチック材料を含浸させる。しかしながら、その代わりに、いわゆるプリプレグ、すなわち予め含浸された繊維、繊維織物または繊維スクリムを用いて板バネ機構を製造することもできる。
【0012】
板バネ機構は、好ましくは、第1の端部から第2の端部へ、または逆に第2の端部から第1の端部へ連続した帯として延びる。したがって、本文脈における「端部」とは、板バネ機構の末端の領域を意味する。第2の端部が第1の端部とは「反対側を向いている」ことは、特に本件の場合、板バネ装置に沿って見たとき、第1の端部と第2の端部が、互いに対して取り得る最長距離にあることを意味する。ベアリングポイントが端部に「設けられる」とは、具体的には、ベアリングポイントが端部に配置されること、または取り付けられることを意味する。したがって、「設けられる」は、固定的にまたは取り外し可能に接続されることを含んでもよい。
【0013】
本文脈における「回転自由度」とは、各ベアリングポイントの助けによる板バネ機構の軸周りの回転運動を意味する。第1のベアリングポイントは、3軸を中心とした回転運動を可能にする。
これに対し、第2のベアリングポイントは、1つの軸だけを中心とした回転運動を可能にする。第2のベアリングポイントの正確に1の回転自由度が、第1のベアリングポイントの3回転自由度のうちの1つと同じであり得る。しかしながら、これは絶対に必要というわけではない。具体的には、第2のベアリングポイントの正確に1の回転自由度が、第1のベアリングポイントの3回転自由度とは異なっていてもよい。好ましくは、どのベアリングポイントも、線形自由度も並進自由度も有していない。
【0014】
一実施形態によれば、第1のベアリングポイントは、板バネ機構の縦方向を中心とした1回転自由度、板バネ機構の横方向を中心とした1回転自由度、および板バネ機構の奥行き方向を中心とした1回転自由度を有し、縦方向、横方向、および奥行き方向は、互いに直交する方向を向いている。
【0015】
横方向はx方向とも呼ばれ、縦方向はy方向とも呼ばれ、奥行き方向はz方向とも呼ばれる。横方向、縦方向、および奥行き方向は、それぞれ板バネ機構および板バネ装置の座標系を形成する。縦方向は、具体的には第2の端部から、第1の端部の方向を向いており、これらはそれぞれ板バネ機構の主延在方向に沿っている。横方向は、好ましくは、板バネ機構の幅方向の延長線に沿って延びる。前述の板バネ部は、好ましくは奥行き方向に沿って延びる。
【0016】
別の実施形態によれば、第2のベアリングポイントの正確に1の回転自由度は、縦方向に対して垂直または斜めに配置された回転軸を中心に配される。
【0017】
板バネ装置のたわみ経路に応じて、回転軸と縦方向とのなす傾斜角が変化する。回転軸が縦方向に対して直角に配置される場合、回転軸は奥行き方向と平行でもよく、また一致してもよい。
【0018】
別の実施形態によれば、第1のベアリングポイントはボールジョイントのボールヘッドである。
【0019】
したがって、第1のベアリングポイントはボールヘッドとも呼ばれる。これは、「第1のベアリングポイント」と「ボールヘッド」という用語は、必要に応じて置き換えることができることを意味する。好ましくは、第1のベアリングポイントは半球状の幾何学的形状を有する。ボールジョイントは、板バネ装置の一部であり得る。しかしながら、これは必須ではない。あるいは、第1のベアリングポイントは、例えば、3回転自由度を実現するボルト、ポイント、またはマンドレルであってもよい。第1のベアリングポイントは、ピンであってもよい。本文脈において、「ピン」は、ピン形状またはボルト形状の部品として理解されるべきである。第1のベアリングポイントがボルト、ポイント、マンドレル、またはピンである場合、内部にボルト、ポイント、マンドレル、またはピンが設置される漏斗形または円錐形のレセプタクルが対応物として提供されることが好ましい。さらに、第1のベアリングポイントはボールソケットであってもよい。この場合、第1のベアリングポイントの対応物としてボールヘッドが設けられる。しかしながら、特に好ましくは、第1のベアリングポイントはボールヘッドである。
【0020】
別の実施形態によれば、板バネ装置はボールジョイントのボールソケットを備え、第1のベアリングポイントは少なくとも部分的にボールソケット内に受け入れられる。
【0021】
あるいは、ボールソケットを車両のボディの一部としたりボディに取り付けたりしてもよい。具体的には、Oリングまたは蛇腹の形態を有するシール要素を、板バネ機構の第1の端部に設けられた第1のバネ受けの基部とボールソケットとの間に設けることができる。シール要素は、ボールヘッドから潤滑剤が漏れたり、ボールヘッドにゴミが侵入したりするのを防ぐ。
【0022】
別の実施形態によれば、第1のベアリングポイントおよび/またはボールソケットはプラスチックでコーティングされており、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされている。
【0023】
プラスチックコーティングは、具体的には、第1のベアリングポイントとボールソケットとの間の摩擦を低減できる。これにより、板バネ機構のねじり荷重の危険性がさらに低減される。さらに、潤滑剤を第1のベアリングポイントとボールソケットとの間に設けることもできる。
【0024】
別の実施形態によれば、第2のベアリングポイントは円筒状の幾何学的形状を有する。
【0025】
具体的には、第2のベアリングポイントは、当該第2のベアリングポイントの回転軸に対して少なくとも部分的に回転対称である半円筒状の幾何学的形状を有する。あるいは、第2のベアリングポイントは、V字状の幾何学的形状を有することもできる。第2のベアリングポイントは、回転軸を中心とした運動を可能にするピンなどであってもよい。第2のベアリングポイントは、ブレード状の幾何学的形状を有していてもよい。この場合、対応するベアリングとして切欠きや溝等を設けることが好ましい。
【0026】
別の実施形態によれば、板バネ装置は、第1の端部に取り付けられ第1のベアリングポイントを備える第1のバネ受けと、第2の端部に取り付けられ第2のベアリングポイントを備える第2のバネ受けとを備える。
【0027】
バネ受けは各端部にしっかりと接続されている。例えば、バネ受けは、各端部に接着、クランプ、ねじ止め、またはその他の方法でしっかりと接続される。例えば、バネ受けは、アルミニウム合金または鋼合金などの金属材料からなってもよい。あるいは、バネ受けは繊維複合プラスチックからなってもよい。各バネ受けは、好ましくは、各端部に固定的に接続される板状の基部を有する。第1のベアリングポイントは、好ましくはボールヘッドの形態を有し、第1のバネ受けの基部から延びる。第2のベアリングポイントは、好ましくは円筒状の幾何学的形状として設計され、第2のバネ受けの基部から延びる。
【0028】
別の実施形態によれば、板バネ機構は一体化された部品である。
【0029】
「一体化された」または「一体の」とは、本件の場合、板バネ機構が1つの部品を形成し、異なる部品から構成されていないことを意味する。具体的には、板バネ機構は、一体の材料部品とすることができる。「一体の材料」とは、特に本件の場合、板バネ機構全体が同じ材料、すなわち繊維複合プラスチックからなることを意味する。しかしながら、これは、繊維複合プラスチック自体が、異なる材料、すなわちプラスチックマトリックスとその中に埋め込まれた繊維とからなることを除外するものではない。あるいは、板バネ機構は複数の部品から構成されていてもよい。この場合、板バネ機構は、複数の部品、例えば、適切な方法で接合された複数の板バネ部からなる。例えば、板バネ機構は、2つの平行なバネの束を備えていてもよい。
【0030】
別の実施形態によれば、板バネ機構は、複数の板バネ部と複数の偏向部とを備え、それぞれの場合において1つの偏向部が隣り合う2つの板バネ部同士を接続する。
【0031】
このように、板バネ部と偏向部とは、2つの板バネ部の間に偏向部が配置され、2つの偏向部の間に板バネ部が配置されるように、交互に配置される。板バネ部は、断面がS字状の幾何学的形状を有することが好ましい。板バネ部および偏向部は、板バネ機構が前述のジグザグのまたは蛇行した幾何学的形状を有するように配置される。板バネ部は、偏向部を用いて、互いに一体的に接続されていてもよく、具体的には、材料で一体的に製造されていてもよい。好ましくは、偏向部は板バネ部よりも大きな剛性を有する。これは、例えば、板バネ部よりも大きな断面積を有する偏向部によって実現できる。より大きな断面積は、補強コアまたは補強要素によって実現できる。これにより、板バネ機構が圧縮するとき、弾性的に変形するのは本質的に板バネ部であり、偏向部ではないことが確実になる。したがって、偏向部は、板バネ機構の非動作ゾーンを形成するか、またはそのように呼称することができる。
【0032】
さらには、車両用の代替の板バネ装置が提案される。代替の板バネ装置は、繊維複合プラスチックからなる板バネ機構と、板バネ装置を車両上に支持するために板バネ機構の第1の端部に設けられ、正確に3の回転自由度を有する第1のベアリングポイントと、板バネ装置を車両上に支持するために板バネ機構の第1の端部とは反対側を向いた第2の端部に設けられ、1より大きい回転自由度を有する第2のベアリングポイントとを備える。
【0033】
例えば、第2のベアリングポイントも、正確に3の回転自由度を有する。この場合、第1のベアリングポイントも第2のベアリングポイントも、それぞれボールジョイントのボールヘッド、ピン、スパイク、ピンなどとすることができ、これが各ベアリングポイントで3の回転自由度を実現する。必要に応じて、板バネ装置の望ましくない回転を適切な手段により防止することができる。例えば、板バネ装置は、ねじれないように、ダンパ、具体的にはゴム製ダンパを用いてボディに結合することができる。しかしながら、これは絶対に必要というわけではない。
【0034】
さらには、車両用のシャーシが提案される。シャーシは、前述したような少なくとも1つの板バネ装置と、第1のベアリングポイントが支持される車両に設けられたボディ接続領域と、第2のベアリングポイントが支持される制御アーム接続領域を含む制御アームとを備える。
【0035】
好ましくは、シャーシは複数の板バネ装置を備える。例えば、シャーシは4つの板バネ装置を備え、各板バネ装置は車両の車輪に関連付けられていてもよい。制御アームは、ホイールキャリアにより各車輪に接続されていてもよい。各車輪は、それに関連付けられた2つのそのような制御アームを有し、縦方向に見て上下に配置される。ボディ接続領域は、車両のボディに設けられていてもよい。ただし、これは必須ではない。ボディ接続領域は、シャーシの一部であってもよい。制御アーム接続領域は、制御アームに設けられている。ボディ接続領域は、前述のボールソケットを備えていてもよい。例えば、ボールソケットはボディ接続領域にボルトで固定されていてもよい。制御アーム接続領域は、例えば、溝状の幾何学的形状または平坦なベアリング面を有し、その上にまたはそれに対して、円筒形状の第2のベアリングポイントが、制御アーム接続領域に対して正確に1の回転自由度分だけ傾くことができるように取り付けられる。第2のベアリングポイントも、ヒンジ形状にすることができる。例えば、ベアリングポイントはピンを有するか、ピン形状である。この場合、ピンは制御アーム接続領域に回転可能に取り付けられてもよい。ただし、板バネ装置は、制御アームと連結しないツイストビーム軸でも用いることができる。この場合、サスペンションが圧縮されると、板バネ機構の端部が円軌道に沿って移動し、車両がコーナーを回ると、車両の車軸全体が特別なベアリングポイントによりボディに対して変位する。板バネ装置が適したその他の車輪サスペンションシステムも考えられる。
【0036】
一実施形態によれば、第1のベアリングポイントは、重力方向に関して第2のベアリングポイントよりも上方に配置されている。
【0037】
あるいは、第2のベアリングポイントを、重力方向に関して第1のベアリングポイントよりも上方に配置することもできる。この場合、第1のベアリングポイントは制御アーム接続領域に取り付け、第2のベアリングポイントはボディ接続領域に取り付ける。
【0038】
別の実施形態によれば、制御アームは、伸張状態から圧縮状態に、またその逆に遷移させることができ、制御アーム接続領域は、制御アームが伸張状態から圧縮状態に遷移したときに傾斜角だけ傾斜し、第1のベアリングポイントは傾斜角を相殺する。
【0039】
具体的には、制御アーム接続領域は、縦軸を中心として傾斜角だけ傾斜する。同時に、第2のベアリングポイントの回転軸も縦方向に傾斜角分傾斜する。第1のベアリングポイントが傾斜角を「相殺する」ことは、この場合、第1のベアリングポイントがボディ接続領域に対して傾斜角分回転することを意味する。したがって、制御アーム接続領域の傾きは板バネ機構には取り込まれず、板バネ装置はいかなるねじり荷重も受けない。
【0040】
別の実施形態によれば、制御アーム接続領域は、制御アームが伸張状態から圧縮状態へと移動するときにオフセット分だけ移動し、第2のベアリングポイントがオフセットを相殺する。
【0041】
第2のベアリングポイントは、第2のベアリングポイントの回転軸を中心に板バネ装置を傾けることによってオフセットを相殺する。同時に、第1のベアリングポイントもボディ接続領域に対して傾く。これは、第1のベアリングポイントもオフセットを相殺することを意味する。オフセットは制御アームの幾何学的形状に起因し、後者が伸張状態から圧縮状態へと移動すると、縦方向に上方に移動するだけでなく、進行方向に前方または後方、あるいは横方向にそれぞれ移動する。本文脈において、「オフセット」は、制御アーム接続領域の、車両の進行方向への、またはその反対への動きとして理解されるべきである。
【0042】
さらには、そのような板バネ装置および/またはシャーシを備えた車両が提案される。
【0043】
車両は、複数の板バネ装置を備えていてもよい。例えば、車両は4つのそのような板バネ装置を備える。好ましくは、車両は自動車である。具体的には、車両は電気自動車またはハイブリッド自動車であってもよい。しかしながら、車両は内燃機関を備えていてもよい。車両は、トラックなどの商用車両であってもよい。さらには、車両は、航空機、船舶、または鉄道車両であってもよい。
【0044】
本提案の板バネ装置に関して説明した実施形態および特徴は、本提案のシャーシおよび/または車両に準用され、またその逆も同様である。
【0045】
本文脈において、「1つ」は、必ずしも1つだけの要素に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、2つ、3つ、またはそれ以上など、いくつかの要素が提供されてもよい。また、本明細書で用いられる他の計数用の語は、言及された要素の数だけに限定するものとして理解されるべきではない。むしろ、特に記載がない限り、数値が上下に変動する可能性がある。
【0046】
板バネ装置、シャーシ、および/または車両のさらなる可能な実装には、明示的に言及されていない実施形態の例に関して前述した、または以下に記載される、特徴および実施形態の組み合わせも含まれる。こうした文脈において、当業者は、板バネ装置、シャーシ、および/または車両のそれぞれの基本形状に改良または追加として個々の態様を追加することもできるであろう。
【0047】
板バネ装置、シャーシ、および/または車両のさらに有利な実施形態および態様は、以下に説明する板バネ装置、シャーシ、および/または車両の実施形態と同様に、従属請求項の主題である。さらには、板バネ装置、シャーシ、および/または車両は、添付の図面を参照して、好ましい実施形態に基づき、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】車両の一実施形態の概略図を示す。
図2図1の車両用の板バネ装置の一実施形態の概略図を示す。
図3図2の板バネ装置の別の概略図を示す。
図4図1の車両用のシャーシの一実施形態の概略背面図を示す。
図5図4の車台の別の概略背面図を示す。
図6図4のシャーシの概略上面図を示す。
図7図4のシャーシの別の概略上面図を示す。
【0049】
図面では、別段の指示がない限り、同一または機能的に同一の要素には同じ参照符号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、車両1の一実施形態の概略図を示す。車両1は自動車であり、具体的には、電気自動車またはハイブリッド自動車である。しかしながら、車両1は内燃機関だけによって動力を供給されてもよい。車両1は、例えばトラックや建設機械などの商用車両であってもよい。さらには、車両1は、航空機、船舶、または鉄道車両であってもよい。しかしながら、以下では、車両1は自動車、具体的には乗用車であると仮定する。
【0051】
車両1は、当該車両1の乗員室または車室3を取り囲むボディ2を含む。車室3には、運転者および同乗者が収容されてもよい。車両1は、複数の車輪4、5を有するシャーシを備えている。車輪4、5の数は基本的に任意である。好ましくは、車両1は4つの車輪4、5を備える。車輪4、5は車両1のシャーシの一部である。
【0052】
図2および図3は、それぞれ、板バネ装置6の一実施形態の概略図を示す。板バネ装置6は、車両1内または車両1上で用いるのに適している。板バネ装置6は、車両1の車輪サスペンションの領域に応用できる。車両1は、任意の数の板バネ装置6を備えていてもよい。例えば、車輪4、5のそれぞれに、そのような板バネ装置6が関連付けられていてもよい。
【0053】
板バネ装置6は、板バネ機構7を備える。具体的には、板バネ装置6は、板バネ機構7を1つだけ備える。板バネ機構7は、繊維強化プラスチック材料または繊維複合プラスチック(fiber composite plastic:FCP)からなる。繊維複合プラスチックは、プラスチック材料、具体的にはプラスチックマトリックスを含み、その中に繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが埋め込まれている。プラスチック材料は、エポキシ樹脂またはビニルエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよい。しかしながら、プラスチック材料は熱可塑性プラスチックであってもよい。
【0054】
繊維は連続した繊維であり得る。しかしながら、繊維は、数ミリメートルから数センチメートルの繊維長を有する短繊維または中程度の長さの繊維であってもよい。板バネ機構7は、層状または積層構造を有し得る。そのために、例えば、繊維織物または繊維スクリムの層にプラスチックマトリックスを含浸させる。しかしながら、その代わりに、いわゆるプリプレグ、すなわち予め含浸された繊維、繊維織物または繊維スクリムを用いて板バネ機構具7を製造することもできる。
【0055】
板バネ機構7は、蛇行した、またはジグザグの幾何学的形状を有する。板バネ機構7は、偏向部9で互いに接続された複数の板バネ部8を有する。板バネ部8の数は任意である。同様に、偏向部9の数は任意である。板バネ部8と偏向部9とは、2つの板バネ部8の間に常に偏向部9が配置され、2つの偏向部9の間に常に板バネ部8が配置されるように、交互に配置される。個々の板バネ部8は、好ましくは、側面視でS字状の幾何学的形状またはS字状の経路を有する(図示せず)。
【0056】
板バネ部8は、偏向部9を用いて、一体的に、具体的には一体の材料で互いに接続され得る。「一体化された」または「一体の」とは、本件の場合、板バネ部8と偏向部9が共通の部品を形成し、異なる部品から構成されていないことを意味する。「一体の材料」とは、特に本件の場合、板バネ部8と偏向部9が全体的に同じ材料、すなわち繊維複合プラスチックで製造されることを意味する。
【0057】
板バネ部8および偏向部9は、板バネ機構7に負荷がかかったときに偏向部9が変形しないか、または少なくとも大きく変形しないように設計される。そのために、偏向部9は板バネ部8よりも大きな剛性を有する。本文脈においては、「剛性」とは、力またはモーメントによる弾性変形に対する物体の抵抗として極めて一般的に理解されるべきである。剛性は、ボディの幾何学的形状と用いられる材料によって変わる。偏向部9の剛性は、偏向部9内または偏向部9上に補強要素または補強コアを設けることによって、板バネ部8と比較して増加させることができる。補強コアは、繊維複合プラスチックによって取り囲まれるように偏向部9と一体化することができる。偏向部9は、板バネ機構7の不活性または不活性化領域またはゾーンを形成する。一方、板バネ部8は、それぞれ中央領域10が弾性変形し、外部から作用する荷重に対抗するバネ力を発生する。
【0058】
板バネ機構7は、第1の端部11と第2の端部12とを備える。板バネ機構7は帯状であり、第1の端部11から第2の端部12へと連続的に延びる。前述のように、板バネ機構7の繊維複合プラスチックの繊維13は、第1の端部11から第2の端部12へと、またはその逆に延びている。しかしながら、繊維13が第1の端部11から第2の端部12まで連続的に延びることは必須ではない。具体的には、繊維13は一方向繊維である。
【0059】
端部11および12は、板バネ機構7の端部に設けられている。重力方向gに関して見ると、第1の端部11は第2の端部12よりも上方に配置され得る。しかしながら、板バネ機構7は、重力方向gに関して第1の端部11が第2の端部12の下方に配置されるように配置されてもよい。端部11および12は、板バネ機構7の端側の板バネ部8であり得る。本件の場合、「端側」とは、各端部11、12がもはや偏向部9に隣接しないことを意味する。
【0060】
第1の端部11には、第1のバネ受け14が取り付けられている。第1のバネ受け14は、第1の端部11に接着、クランプ、ねじ止め、またはその他の方法で固定的に接続されていてもよい。第1のバネ受け14は、金属材料からなってもよい。あるいは、第1のバネ受け14は、繊維複合プラスチックからなってもよい。第1のバネ受け14は、第1の端部11に固定的に接続された板状の基部15を含む。基部15は、例えば板状であってもよく、第1の端部11がその間に配置される2つの横アーム16、17を備える。
【0061】
第1のバネ受け14は、第1のベアリングポイント18を含む。第1のベアリングポイント18は、ボールジョイント19のボールヘッドである。第1のベアリングポイント18はボールヘッドとも呼ばれる。すなわち、「第1のベアリングポイント」と「ボールヘッド」という用語は、必要に応じて置き換えて用いることができる。具体的には、第1のベアリングポイント18は半球状の幾何学的形状を有する。しかしながら、これは絶対に必要というわけではない。第1のベアリングポイント18は、マンドレルまたはとげの形状を有し得る。
【0062】
第1のベアリングポイント18に加え、ボールジョイント19はボールソケット20を含む。第1のベアリングポイント18とボールソケット20は共通の中心点21を有する。ボールジョイント19全体が、板バネ装置6の一部であってもよい。第1のベアリングポイント18がボールヘッドである場合、これはボールソケット20内に少なくとも部分的に収容される。ボールヘッドおよび/またはボールソケット20の形態の第1のベアリングポイント18は、滑りを改善するコーティング、具体的にはプラスチックコーティング、好ましくはポリテトラフルオロエチレンコーティングでコーティングされてもよい。例えば、Oリングまたは蛇腹の形態を有するシール要素22を、第1のバネ受け14の基部15とボールソケット20との間に設けてもよい。シール要素22は、例えば、ボールジョイント19から潤滑剤が漏れたり、ボールジョイント19にゴミが侵入したりするのを防ぐ。
【0063】
第1のベアリングポイント18は、正確に3の回転自由度を有する。板バネ機構7または板バネ装置6には、x方向または横方向x、y方向または縦方向y、およびz方向または奥行き方向zが割り当てられる。x、y、z方向は互いに直交する方向を向いている。x、y、z方向は互いに直交する方向を向いている。これにより、横方向xは、第1のバネ受け14の基部15の第1のアーム16から第2のアーム17に向かう方向を向いている。板バネ機構7の幅方向の延長線も横方向xに延びる。縦方向yは、第2の端部12から第1の端部11に向かう方向を向いている。奥行き方向zは、横方向xおよび縦方向yに対して垂直な方向を向いている。縦方向yおよび奥行き方向zは、図3に示す平面Eに渡る。
【0064】
第1のベアリングポイント18は、縦方向y、具体的には回転軸23を中心とした回転自由度、並びに横方向xおよび奥行き方向zをそれぞれ中心とした1の回転自由度を実現する。第1のベアリングポイント18の並進運動および直線運動は不可能である。すなわち、ボールジョイント19は、第1のベアリングポイント18のx、y、zの各方向への直線運動を阻止する。回転軸23は平面E内にある。また、中心点21も平面E内にある。
【0065】
第2のバネ受け24は、板バネ機構7の第2の端部12に取り付けられている。第2のバネ受け24は、鋼合金またはアルミニウム合金などの金属材料からなってもよい。しかしながら、第2のバネ受け24は、繊維複合プラスチックからなってもよい。第2のバネ受け24は、例えば、第2の端部12に接着、あるいはその他の方法で固定接続されていてもよい。第2のバネ受け24は、第2の端部12がその間に配置される2つの横アーム26、27を有する板状の基部25を含む。基部25は、例えば、第2の端部12に接着されていてもよい。
【0066】
第2のベアリングポイント28が第2のバネ受け24に設けられている。第2のベアリングポイント28は、円筒状、具体的には半円筒状体として設計することができ、基部25から、下側、すなわち第2の端部12とは反対の方向に延びる。それからは逸脱して、第2のベアリングポイント28は、V字状またはブレード状の幾何学的形状のみを有していてもよい。
【0067】
第2のベアリングポイント28が円筒状の設計である場合、それは回転軸29に関して回転対称な設計であってもよい。板バネ機構7の変形状態に応じて、回転軸29は縦方向yに対して斜めまたは垂直に配置される。回転軸29が縦方向yに対して直角に配置される場合、奥行き方向zと平行である。ただし、回転軸29の位置は、板バネ機構7の変形状態に応じて変化する。第2のベアリングポイント28は、1の回転自由度だけ、すなわち回転軸29を中心とする回転自由度だけを有する。好ましくは、第2のベアリングポイント28は、それ以上の自由度を持たない。回転軸29は平面E内にある。ここでは、回転軸23と回転軸29とが交差し得る。好ましくは、回転軸29は、回転軸23に対してある角度をなして配置される。
【0068】
しかしながら、板バネ装置6のさらなる発展形態では、第2のベアリングポイント28もいくつかの自由度を有し得る。そのために、第2のベアリングポイント28は、例えば、上で説明したようなボールヘッドを有し得る。この場合、板バネ装置6の望ましくないねじれは、例えば、他の適切な手段によって防ぐことができる。しかしながら、特に好ましくは、第2のベアリングポイント28は、1の自由度のみを有する。
【0069】
板バネ装置6は、板バネ装置6が板バネ機構7に加えて、ベアリングポイント18、28を有するバネ受け14、24を有するという点で、板バネ機構7とは異なる。一方、バネ受け14、24は、板バネ機構7の一部ではない。しかしながら、これはバネ受け14、24が板バネ機構7にしっかりと、具体的には取り外し不可能に接続されることを除外するものではない。
【0070】
図4は、伸張状態Z1における車両1のシャーシ30の一実施形態の概略背面図を示す。図5は、圧縮状態Z2におけるシャーシ30の一実施形態の別の概略背面図を示す。図6は、伸張状態Z1におけるシャーシ30の概略上面図を示す。図7は、圧縮状態Z2におけるシャーシ30のさらなる概略上面図を示す。図4および図5において、板バネ装置6は、非常に概略的な形でのみ示されている。図6および図7において、板バネ装置6は、まったく示されていない。板バネ装置6の機能を説明するために、以下において、図4?図7を同時に参照する。
【0071】
車輪4に加えて、シャーシ30は制御アーム31を備える。制御アーム31は、図示しないホイールキャリアを介して車輪4に接続されていてもよい。制御アーム31はV字状に配置された2つの支柱32、33を備えていてもよい。支柱32、33は、取付点34、35を介して図示しない車両1のシャーシに移動可能に接続されている。この場合、取付点34、35により、制御アーム31を横方向xを中心に旋回させることができる。図4および図5から離れて、1つの制御アーム31の代わりに、縦方向yに上下に配置された2つの制御アーム31を設けることもできる。車両1の進行方向Fは、横方向xに沿った方向を向いている。
【0072】
第1のベアリングポイント18は、ボディ接続領域36に接続される。例えば、ボールソケット20は、ボディ接続領域36に、例えばねじ止めなどにより、固定的に接続される。ボディ接続領域36は、ボディ2の一部であってもよい。シャーシ30が図4および図6に示す伸張状態Z1から図5および図7に示す圧縮状態Z2に移動すると、車輪4は図5の矢印37で示すように縦方向yに沿って上方に移動する。しかしながら、同時に、制御アーム31の幾何学的形状により、車輪4もまた、図7の矢印38によって示されるように、例えば、横方向xに沿って、前方に移動する。ホイール4の動きは、基本的に、シャーシ30、具体的には制御アーム31の幾何学的形状により変化する。
【0073】
この車輪4の横方向xに沿った移動により、第2のベアリングポイント28の制御アーム31に設けられた制御アーム接続領域39が、伸張状態Z1(図6)と比べて横方向xに沿ってオフセットaだけ前方に移動する。同時に、制御アーム接続領域39は、第2のベアリングポイント28の回転軸29とともに縦方向yを中心として傾斜角αだけ傾斜する。さらに、横方向xに関しても傾斜が生じる。
【0074】
ここで、制御アーム接続領域39の縦方向yを中心とした傾きに起因する板バネ機構7に対する望ましくないねじり荷重を防止するために、第1のベアリングポイント18を用い、第1のベアリングポイント18がボールソケット20に対して傾斜角αだけ回転するようにして、傾斜角αを相殺することができる。オフセットaは、第1に、奥行き方向zを中心とする回転自由度も有する第1のベアリングポイント18によって、第2に、第2のバネ受け24が回転軸29を中心として傾斜できるようにする第2のベアリングポイント28によって、相殺することができる。
【0075】
これにより、板バネ機構7をねじり荷重や横方向の歪みから守ることができる。荷重およびバネの効果は、本質的に、それぞれ、縦方向yおよび回転軸23に沿ってのみ適用されるのが好ましい。したがって、繊維複合プラスチックに悪影響をもたらす不必要な荷重ケースを切り離して排除することができる。これにより、繊維複合プラスチックの特性を最大限に活用できる。板バネ装置6は、軽量化を図ることができる。異方性材料の特性、具体的には繊維複合プラスチックの特性を、バネのコンセプトに最適に利用できる。
【0076】
板バネ機構7は、一体的に設計することができる。これにより、大幅なコスト削減を実現できる。しかしながら、その代わりに、板バネ機構7をいくつかの部品から製作することもできる。さらなる設計の最適化が可能となり、より高い軽量化効果が得られる。これは、板バネ装置6の荷重を最適化した設計が可能であり、したがって不必要な荷重ケースを考慮して設計する必要がないことによる。バネ受け14、24は、より軽量になるように設計することもできる。板バネ装置6がより軽量であれば、各運転状況に応じた最適なシャーシ位置へと移動するシャーシ30の反応動作がより素早くなり得る。これにより、ドライビングダイナミクスが向上し、安全性が向上する。
【0077】
以上、本発明を実施形態の例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
2 ボディ
3 車室
4 車輪
5 車輪
6 板バネ装置
7 板バネ機構
8 板バネ部
9 偏向部
10 領域
11 端部
12 端部
13 繊維
14 バネ受け
15 基部
16 アーム
17 アーム
18 ベアリングポイント
19 ボールジョイント
20 ボールソケット
21 中心点
22 シール要素
23 回転軸
24 バネ受け
25 基部
26 アーム
27 アーム
28 ベアリングポイント
29 回転軸
30 シャーシ
31 制御アーム
32 支柱
33 支柱
34 取付点
35 取付点
36 ボディ接続領域
37 矢印
38 矢印
39 制御アーム接続領域
a オフセット
E 平面
F 移動方向
g 重力方向
x 横方向
y 縦方向
z 奥行き方向
Z1 伸張状態
Z2 圧縮状態
α 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両用の板バネ装置であって、
繊維複合プラスチックからなる板バネ機構と
前記板バネ装置を前記車両上に支持するために前記板バネ機構の第1の端部に設けられた第1のベアリングポイントであって、正確に3の回転自由度を有する第1のベアリングポイントと
前記板バネ装置を前記車両上に支持するために前記板バネ機構の前記第1の端部とは反対側を向いた第2の端部に設けられた第2のベアリングポイントであって、正確に1の回転自由度を有する第2のベアリングポイントと、を備える
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイントは、前記板バネ機構の縦方向を中心とした1回転自由度、前記板バネ機構の横方向を中心とした1回転自由度、および前記板バネ機構の奥行き方向を中心とした1回転自由度を有し、前記縦方向、前記横方向、および前記奥行き方向は、互いに直交する方向を向いている
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の板バネ装置であって、
前記第2のベアリングポイントの前記正確に1の回転自由度は、前記縦方向に対して垂直または斜めに配置された回転軸を中心に配される
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイントは、ボールジョイントのボールヘッドである
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の板バネ装置であって、
前記ボールジョイントのボールソケットを備え、
前記第1のベアリングポイントは、前記ボールソケット内に少なくとも部分的に受け入れられる
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の板バネ装置であって、
前記第1のベアリングポイントおよび/または前記ボールソケットはプラスチックでコーティングされており、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされている
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第2のベアリングポイントは円筒状の幾何学的形状を有する
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記第1の端部に取り付けられ前記第1のベアリングポイントを備える第1のバネ受けと、前記第2の端部に取り付けられ前記第2のベアリングポイントを備える第2のバネ受けとを備える
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項9】
請求項1~8のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記板バネ機構は一体化された部品である
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項10】
請求項1~9のうちの1つに記載の板バネ装置であって、
前記板バネ機構は、複数の板バネ部と複数の偏向部とを備え、それぞれの場合において1つの偏向部が隣り合う2つの板バネ部同士を接続する
ことを特徴とする板バネ装置。
【請求項11】
両用のシャーシであって、請求項1~10のうちの1つに記載の少なくとも1つの板バネ装置と、前記第1のベアリングポイントが支持される前記車両に設けられたボディ接続領域と、前記第2のベアリングポイントが支持される制御アーム接続領域を備える制御アームと、を備える
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項12】
請求項11に記載のシャーシであって、
前記第1のベアリングポイントは、重力方向に関して前記第2のベアリングポイントよりも上方に配置されている
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシャーシであって、
前記制御アームは、伸張状態から圧縮状態に、またその逆に遷移させることができ、前記制御アーム接続領域は、前記制御アームが前記伸張状態から前記圧縮状態に遷移したときに傾斜角だけ傾斜し、前記第1のベアリングポイントは前記傾斜角を相殺する
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項14】
請求項13に記載のシャーシであって、
前記制御アーム接続領域は、前記制御アームが前記伸張状態から前記圧縮状態へと移動するときにオフセット分だけ移動し、前記第2のベアリングポイントが前記オフセットを相殺する
ことを特徴とするシャーシ。
【請求項15】
請求項1~10のうちの1つに記載の板バネ装置および/または請求項11~14に記載のシャーシを備える車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
自動車では、自動車をバネで支持するためにシャーシ内にバネが設けられることがある。そのようなバネは、通常、金属材料からなるため、重く、腐食しやすい。繊維複合プラスチックからなるバネは軽量で腐食の影響を受けにくいが、設計と製造の点でより複雑である。鋼製コイルバネに比べて設計が単純なため、特に繊維複合プラスチックからなる板バネが、自動車分野において次第に鋼製板バネに取って代わっており、鋼製板バネに対し、制御された製造プロセスで確立できる可能性が高まる破壊的技術の代表となっている。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1)米国特許第1731765号明細書
(特許文献2)独国特許第102020117338号明細書
【国際調査報告】