(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】がん治療における周術期の自然免疫プライミング
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20240229BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240229BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240229BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240229BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/7084 20060101ALI20240229BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240229BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240229BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240229BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20240229BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240229BHJP
A61K 47/38 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7084
A61K35/74 B
A61K35/76
A61K35/763
A61K35/761
A61K36/06
A61K35/744
A61K35/74 D
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558519
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 CA2022050437
(87)【国際公開番号】W WO2022198322
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518379245
【氏名又は名称】クー バイオロジックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QU BIOLOGICS INC.
【住所又は居所原語表記】305-4475 Wayburne Drive,Burnaby, British Columbia V5G 4X4, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガン、ハロルド デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カリヤン、シリン
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、マイケル アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アウアー、レベッカ アン クローファード
(72)【発明者】
【氏名】デ ソウザ、クリスチアーノ タネス
(72)【発明者】
【氏名】ラウ、ティン ティン アリス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA94
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4C076BB16
4C076CC07
4C076CC27
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4C086AA02
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4C087ZB26
4C087ZC01
4C087ZC41
(57)【要約】
周術期の免疫調節不全を改善するためのPRRリガンドの特異的レパートリーの使用を含む治療様式が提供される。実際には、自然免疫系シグナル伝達は、手術後の標的免疫応答を促進するために周術期に誘発される。したがって、対象を、手術前後の周術期において対象を治療して固形腫瘍を除去するために、特定の標的組織に合わせた免疫原性製剤で治療することができ、この場合、標的組織は腫瘍の部位又はがんの転移の特徴的な部位である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象のがんを治療するための有効量の免疫原性組成物の使用であって、
前記がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又は前記がんが前記標的組織に転移する潜在力を特徴とし、
前記組成物は、手術日に前記腫瘍の外科的除去と組み合わせて使用するためのものであり、
前記組成物は、前記標的組織において病原性である微生物哺乳動物病原体の哺乳動物パターン認識受容体(PRR)アゴニストシグネチャの少なくとも一部を再現するPRRリガンドのレパートリーを含み、前記哺乳動物PRRリガンドのレパートリーは、前記哺乳動物対象への投与後に複合的に提示するために治療用ビヒクル中に一緒に製剤化され、前記組成物は、少なくとも5つの異なる哺乳動物PRRのリガンドである前記微生物哺乳動物病原体の成分を含み、
前記免疫原性組成物は、残存疾患を治療し、それによって前記がんを治療するのに有効な前記標的組織における免疫応答を調節するために、前記手術日から1ヶ月以内の周術期に使用するためのものである、使用。
【請求項2】
哺乳動物対象のがんを治療するための方法であって、前記がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又は前記がんが前記標的組織に転移する潜在力を特徴とし、前記対象が手術日に前記腫瘍の外科的除去を受け、前記治療が、
前記手術日の1ヶ月以内である周術期において有効量の免疫原性組成物を前記対象に投与することを含み、
前記組成物は、前記標的組織において病原性である微生物哺乳動物病原体の哺乳動物パターン認識受容体(PRR)アゴニストシグネチャの少なくとも一部を再現するPRRリガンドの人工レパートリーを含み、前記哺乳動物PRRリガンドの前記レパートリーは、前記哺乳動物対象への投与後に複合的に提示するために治療用ビヒクル中に一緒に製剤化され、前記組成物は、少なくとも5つの異なる哺乳動物PRRのリガンドである前記微生物哺乳動物病原体の成分を含み、
前記免疫原性組成物は、残存疾患を治療し、それによって前記がんを治療するのに有効な前記標的組織における免疫応答を調節するように投与される、方法。
【請求項3】
前記PRRリガンドがPRRアゴニストである、請求項1又は2に記載の使用又は方法。
【請求項4】
前記免疫原性組成物が、前記標的組織における自然免疫応答を調節する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項5】
哺乳動物パターン認識受容体の前記レパートリーが人工レパートリーであり、前記PRRアゴニストシグネチャの前記一部が、前記微生物哺乳動物病原体の任意の天然のPRRリガンドシグネチャとは異なる別個の部分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
前記腫瘍が前記標的組織から除去される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項7】
前記対象が、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、げっ歯類又はヒトである、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項8】
前記治療用ビヒクルが、微生物細胞、組換え微生物細胞、組換え微生物細胞の細胞画分、微生物細胞の細胞画分、細菌外膜画分、細菌内膜画分、微生物細胞成分の勾配遠心分離からのペレット、微生物染色体DNA、微粒子又はリポソームを含み、それぞれが、PRRアゴニストのレパートリーを共に構成するPRRアゴニストを提供する前記微生物哺乳動物病原体の成分を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項9】
前記組換え微生物が、前記PRRアゴニストの少なくとも1つの成分をコードする組換え遺伝子を含む、請求項8に記載の使用又は方法。
【請求項10】
前記治療用ビヒクルが、全死滅又は弱毒化微生物細胞又は組換え微生物細胞を含む、請求項8又は9に記載の使用又は方法。
【請求項11】
前記PRR及び前記対応するPRRリガンドが、
からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項12】
前記標的組織及び対応する微生物哺乳動物病原体が、
からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項13】
前記組成物が、前記周術期においてMHCII、CD96、CD69、IFNγからなる群から選択されるバイオマーカーを調節するのに有効な量で投与することによって使用するためのものである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項14】
前記組成物が、バイオマーカーを調節するために、すなわち、CD69発現の増加、CD96発現の低下、MHCII発現の増加、骨髄造血の増加、好中球及び/若しくは単球細胞数の増加、免疫細胞上のCCR2ケモカイン受容体発現の増加、並びに/又はFNγ発現の増加のために、前記周術期における有効な量の投与による使用のためのものである、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項15】
前記組成物が、PD1、PDL1、IP-10、MIG、RANTES、好中球、Ly6C単球及びNKG2Dからなる群から選択されるバイオマーカーを調節するのに有効な量で使用するためのものである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項16】
前記組成物が、前記標的組織に存在する細胞におけるPD1及び/又はPDL1発現を下方制御するのに有効な量で使用するためのものである、請求項15に記載の使用又は方法。
【請求項17】
前記組成物が、バイオマーカーを調節するために、すなわち、細胞傷害性顆粒(パーフォリン、グランザイムA及びB)の上方制御、NKG2Dの上方制御、ケモカインCXCL9及びCXCL10(IP-10)の上方制御、IL-18の上方制御、IL-1Bの上方制御、GM-CSFの上方制御、NKG2Dリガンドの上方制御、iNOS発現の増加(M1マクロファージの極性化を示す)、CD86(ヒトM1単球)の上方制御、GCSFの上方制御、IL-2の上方制御、IL-3の上方制御、IL-6の上方制御、IL-7の上方制御、IL-12(p70)の上方制御、IL-13の上方制御、IL-15の上方制御、CXCL1の上方制御、M-CSFの上方制御、TNFαの上方制御、PD-1の下方制御、及び/又はPDL1の下方制御、CD163(ヒトM2単球)の下方制御、のために、前記周術期における有効な量の投与によって使用するためのものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項18】
前記患者由来の試料を前記バイオマーカーについてアッセイし、任意選択で前記周術期中にアッセイすることを更に含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項19】
免疫抑制バイオマーカー、すなわち、CTLA-4、KIR(キラー阻害受容体)、CD43、アルギナーゼ、IDO、TGFβ、CD155、骨髄抑制細胞(MDSC)、Treg細胞(IL-10)、可溶性(切断型)MICA/B、及び/若しくは可溶性CD95、について患者試料をアッセイすることによって免疫抑制をモニタリングすること、並びに/又は、
免疫活性化バイオマーカーについて患者試料をアッセイすることによって免疫活性化、すなわち、ヒト細胞上に発現されるMICA/B及び関連するNKG2Dリガンド、gd T細胞の活性化、T-bet発現、IL-15、訓練された自然免疫に関連するエピジェネティック変化、及び/若しくは、免疫細胞の代謝変化(解糖>酸化的リン酸化)をモニタリングすることによって、
前記患者における免疫応答をモニタリングすることを更に含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項20】
前記治療用ビヒクルが、前記標的組織ではない投与部位に投与するためのものである、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項21】
前記組成物が、術後免疫抑制を改善するように免疫応答を調節するための前記周術期における有効な量の投与による使用のためのものである、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項22】
前記投与部位が、皮膚又は皮下組織である、請求項21に記載の使用又は方法。
【請求項23】
前記治療用ビヒクルが、投与後の前記PRRアゴニストの全身分布のために製剤化される、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項24】
前記治療用ビヒクルが、投与期間にわたって複数の用量で投与され、前記投与期間が、少なくとも2週間、任意選択で少なくとも1週間、任意選択で前記手術日の前後である、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項25】
前記用量が、前記手術日の前後に毎日又は1日おきに皮下投与される、請求項24に記載の使用又は方法。
【請求項26】
前記治療用ビヒクルが、全死滅又は弱毒化肺炎桿菌を含み、前記標的組織が、肺、脳、膵臓、前立腺、精巣又は肝臓を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項27】
前記治療用ビヒクルが、全死滅又は弱毒化大腸菌を含み、前記標的組織が、結腸、腸、直腸、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、精巣、卵巣又は肝臓を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項28】
前記治療用ビヒクルが、全死滅又は弱毒化黄色ブドウ球菌を含み、前記標的組織が、皮膚、骨、脳又は乳房を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項29】
哺乳動物対象のがんを治療するための有効量の免疫原性組成物の使用であって、
前記がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又は前記がんが前記標的組織に転移する潜在力を特徴とし、
前記組成物は、手術日に前記腫瘍の外科的除去と組み合わせて使用するためのものであり、
前記組成物は、前記標的組織において病原性である全死滅又は弱毒化微生物哺乳動物病原体を含み、
前記免疫原性組成物は、残存疾患を治療し、それによって前記がんを治療するのに有効な前記標的組織における免疫応答を調節するために、前記手術日から1ヶ月以内の周術期に使用するためのものである、使用。
【請求項30】
哺乳動物対象のがんを治療するための方法であって、前記がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又は前記がんが前記標的組織に転移する潜在力を特徴とし、前記対象が手術日に前記腫瘍の外科的除去を受け、前記治療が、
手術日の1ヶ月以内である周術期中に有効量の免疫原性組成物を前記対象に投与することを含み、
前記組成物が、前記標的組織において病原性である全死滅又は弱毒化微生物哺乳動物病原体を含み、
前記免疫原性組成物は、残存疾患を治療し、それによって前記がんを治療するのに有効な前記標的組織における免疫応答を調節するように投与される、方法。
【請求項31】
哺乳動物対象のがんを治療するのに有効な量で使用するためのSSI製剤を含むSSI送達系であって、
前記がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又は前記がんが前記標的組織に転移する潜在力を特徴とし、
前記組成物は、手術日に前記腫瘍の外科的除去と組み合わせて使用するためのものであり、外科的除去は外科的創傷を残し、
前記組成物は、前記標的組織において病原性である全死滅又は弱毒化微生物哺乳動物病原体を含み、
前記送達系は、前記組成物の放出を媒介し、それにより、残存疾患を治療し、それにより前記がんを治療するのに有効な前記標的組織における免疫応答を調節するために前記外科的創傷に塗布される、前記手術日に使用するためのものである、SSI送達系。
【請求項32】
前記哺乳動物病原体を包む段階的放出マトリックスを含み、前記段階的放出マトリックスが、前記手術日に前記送達系が前記外科的創傷に塗布された後に、複数の連続した時間的に離れた投与段階で前記マトリックスから前記哺乳動物病原体を放出するように適合され、哺乳動物病原体の治療上有効なアリコートが、前記手術日の2ヶ月以内である周術期において各投与段階で放出される、請求項31に記載の送達系。
【請求項33】
前記段階的放出マトリックスが表面侵食ポリマーを含む、請求項31又は32に記載の送達系。
【請求項34】
前記表面侵食ポリマーが、ポリ無水物及び/又はポリ(オルトエステル)を含む、請求項33に記載の送達系。
【請求項35】
前記表面侵食ポリマーが、Pluronic F-127と複合体化した酢酸フタル酸セルロースを含む、請求項33に記載の送達系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
がんの治療などの医学の分野において、微生物成分などの自然免疫原を含有する組織特異的調製物によるネオアジュバント及び/又はアジュバント治療と組み合わせた手術の使用に関するイノベーションが開示されている。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物において、免疫学的調節の重要な一態様は、自然免疫系と適応免疫系の協調活性を含む。この協調活性は、免疫細胞内の代謝的、酵素的及び分子的な遺伝的変化を伴い、これらの相補系の異なる成分の協調活性を媒介する細胞、サイトカイン及びケモカイン伝達経路の精巧な系を調整する(Iwasaki&Madzhitov,2015,Nature Immunology16:343-353、国際公開第0209748号、国際公開第03051305号、Turner et al.,2014,BBA-Molecular Cell Research 1843:11 2563-2582を参照されたい)。この協調活性の一態様は、自然免疫系のパターン認識受容体(PRR)のリガンドは、適応免疫応答を改善するためのワクチンアジュバントとして使用することができ(Maisonneuve et al.,2014,PNAS 111(34),12294-9、国際公開第2007035368号を参照されたい)、PRRリガンドの特定のレパートリーを標的組織において治療的免疫応答を誘発する部位特異的免疫調節剤として一緒に製剤化することができるという認識の根拠をなす(国際公開第2017185180号を参照されたい)。
【0003】
B細胞受容体及びT細胞受容体による特異的抗原の認識などの免疫記憶は、長く認められている適応免疫系の中心的な特徴であり、ワクチン有効性の基礎をなすものである(Nature Immunology,Focus on immunological memory:June 2011,Volume 12 No 6 pp461-575を参照されたい)。自然免疫記憶は、より最近になって認識された免疫系のあまりよく理解されていない特徴である(Netea et al.,2015,Nature Immunology 16,675-679、及びBordon,2014,Nature Reviews Immunology 14,713を参照されたい)。
【0004】
免疫系は、大手術に対して複雑な方法で応答し、この応答は、原発性がん手術の文脈において特に重要である(Matzner et al.,Nat Rev Clin Oncol.2020 May;17(5):313-326.doi:10.1038/s41571-019-0319-9.Epub 2020 Feb 17を参照されたい)。手術に関連する合併症の可能性を考慮して、ネオアジュバント及びアジュバントがん治療は、典型的には、周術期直後には避けられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO02/009748
【特許文献2】WO03/051305
【特許文献3】WO2007/035368
【特許文献4】WO2017/185180
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Iwasaki&Madzhitov,2015,Nature Immunology16:343-353
【非特許文献2】Turner et al.,2014,BBA-Molecular Cell Research 1843:11 2563-2582
【非特許文献3】Maisonneuve et al.,2014,PNAS 111(34),12294-9
【非特許文献4】Nature Immunology,Focus on immunological memory:June 2011,Volume 12 No 6 pp461-575
【非特許文献5】Netea et al.,2015,Nature Immunology 16,675-679
【非特許文献6】Bordon,2014,Nature Reviews Immunology 14,713
【非特許文献7】Matzner et al.,Nat Rev Clin Oncol.2020 May;17(5):313-326.doi:10.1038/s41571-019-0319-9.Epub 2020 Feb 17
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の治療様式の態様は、対象の周術期免疫調節不全を治療するための有効量の免疫原性組成物の使用を含む。治療には、周術期がん治療が含まれ、この場合、免疫原性組成物は、周術期において手術前及び/又は手術後に投与される。したがって、がん治療は、がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又はそのがんが標的組織に転移する潜在力を特徴とし、腫瘍を除去するために手術が行われる哺乳動物対象のネオアジュバント又はアジュバント治療を含み得る。周術期は、例えば、手術日の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12ヶ月前若しくは12ヶ月以上前かつ/又はそれより後、あるいは手術日の2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間若しくは1日間前かつ/又はそれより後であり得る。
【0008】
免疫原性組成物は、例えば、標的組織において病原性である病原体などの微生物哺乳動物病原体の哺乳動物パターン認識受容体(PRR)アゴニストシグネチャの少なくとも一部を再現するPRRリガンドの人工レパートリーを含み得る。哺乳動物PRRリガンドのレパートリーは、哺乳動物対象への投与後に複合的に提示するために治療用ビヒクル中に一緒に製剤化され得る。本組成物は、複数の哺乳動物PRR、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の異なる哺乳動物PRRのリガンドである哺乳動物微生物病原体の成分を含み得る。免疫原性組成物は、例えば、標的組織における自然免疫応答を調節することによって、標的組織における免疫応答、例えば、残存疾患を治療し、それによってがんを治療するのに有効な免疫応答を調節するように適合及び投与され得る。
【0009】
本組成物は、CD69発現を増加させるために、CD96の発現を低下させるために、MHCIIの発現を増加させるために、骨髄造血を増加させるために、好中球細胞数を増加させるために、免疫細胞上のCCR2ケモカイン受容体発現の発現を増加させるために、かつ/又は、FNγ発現を増加させるために、周術期に有効な量を投与することによって使用するためのものであり得る。したがって、ポイント・オブ・ケア検査は、周術期免疫応答の前述の態様のいずれかを含む、周術期免疫応答をモニタリングするために使用され得る。
【0010】
本明細書に記載される治療的使用は、対応する治療方法に反映され、逆もまた同様である。
【0011】
本発明の実施態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。PRRリガンドがPRRアゴニストである使用。免疫原性組成物が標的組織における自然免疫応答を調節する使用。哺乳動物パターン認識受容体のレパートリーが人工レパートリーであり、PRRアゴニストシグネチャの一部が、微生物哺乳動物病原体の任意の天然のPRRリガンドシグネチャとは異なる別個の部分である使用。対象がマウス、ネコ、イヌ、ウマ、げっ歯類又はヒトである使用。治療用ビヒクルが、微生物細胞、組換え微生物細胞、組換え微生物細胞の細胞画分、微生物細胞の細胞画分、細菌外膜画分、細菌内膜画分、微生物細胞成分の勾配遠心分離からのペレット、微生物染色体dna、微粒子又はリポソームを含み、それぞれが、PRRアゴニストのレパートリーを共に構成するPRRアゴニストを提供する微生物哺乳動物病原体の成分を含む使用。組換え微生物が、PRRアゴニストの少なくとも1つの成分をコードする組換え遺伝子を含む使用。治療用ビヒクルが、全死滅又は弱毒化微生物細胞又は組換え微生物細胞を含む使用。
【0012】
がんが標的組織に腫瘍を形成し、かつ/又はそのがんが標的組織に転移する潜在力を特徴とする、哺乳動物対象のがんを治療するのに有効な量で使用するためのSSI製剤を含む、SSI送達系が提供される。外科的除去によって外科的創傷が残る手術日に腫瘍の外科的除去と併せて治療組成物が展開されるように、送達系を使用してもよい。治療用組成物は、標的組織において病原性である哺乳動物微生物病原体のPRRリガンド、又は哺乳動物微生物病原体の完全死滅細胞若しくは弱毒化細胞を含み得る。送達系は、本組成物の放出を媒介し、それによって、残存疾患を治療し、それによってがんを治療するのに有効な標的組織における免疫応答を調節するために、外科的創傷に適用される手術日に使用するように適合することができる。送達系は、哺乳動物病原体又はPRRリガンドを包む段階的放出マトリックスを含むことができ、段階的放出マトリックスは、手術日に送達系が外科的創傷に適用された後、複数の連続した時間的に離れた投与段階でマトリックスから抗原を放出するように適合させることができ、抗原の治療的に有効な投与量は、周術期中に各投与段階で放出される。段階的放出マトリックスは、例えば、ポリ無水物及び/又はポリ(オルトエステル)などの表面侵食ポリマー、又はPluronic F-127と複合体化した酢酸フタル酸セルロースで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、手術の3日後の定量化された肺転移の総数を示している。
【
図2】
図2は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、手術の3日後のCD69を発現する細胞によって定量化された脾臓におけるNK細胞活性化を示している。
【
図3】
図3は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、脾臓におけるNK細胞活性化が、手術の3日後にCD96を発現する細胞によって定量化されたことを示している。
【
図4】
図4は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、手術の3日後のMHCIIを発現する細胞によって定量化された脾臓における単球/マクロファージの活性化を示す。
【
図5】
図5は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、手術の3日後の脾臓からの好中球細胞数(CD11b+Ly6G+)を生細胞の%として定量化して示している。
【
図6】
図6は、マウスのがん転移モデルから得られた結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスであり、手術の3日後に測定された脾臓単球/マクロファージCCR2受容体発現を示している。
【
図7】
図7は、マウスのがん転移モデルからの結果を示すデータプロットであり、処置の各カテゴリーについて右側の列が手術を受けたマウスである。全血をサイトカインカクテルで12時間刺激し、IFNγレベルを測定することによって、術後1日目に免疫活性化を定量した。
【
図8】
図8は、周術期マウス肝転移モデルからの結果を示すデータプロットであり、QBECO SSI処置による腫瘍負荷(肝臓の%)の劇的な減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、特定の実施形態から様々な例が、本発明の実施において多種多様な修正及び変形を実施するために使用され得る実験手順と共に示される。明確にするために、本明細書では、以下に示す定義に反映されるように、一般に理解される意味であると理解されるものに従って様々な技術用語が使用される。
【0015】
「免疫原」は、生物の免疫系によって免疫応答を誘発することができる分子又はその分子を含む組成物を指す。「抗原」は、免疫応答の産物に結合することができる分子を指す。
【0016】
「病原性」因子は、自然界で宿主に感染を引き起こすことが知られている、細菌又はウイルスなどの微生物などの因子であり、この意味で、「病原性」は、「天然病原性」を意味するために本発明の文脈で使用される。多種多様な微生物が、組織内への微生物の人工接種などの人工的な条件下で感染を引き起こすことができる場合があるが、自然に感染を引き起こす微生物の範囲は必然的に限定されており、医療行為によって十分に確立されている。
【0017】
「感染」は、身体又はその一部が、好ましい条件下で増殖して有害な効果をもたらす病原性因子(例えば、細菌などの微生物)によって侵襲される過程又は状態である(Taber’s Cyclopedic Medical Dictionary,14th Ed.,C.L.Thomas,Ed.,F.A.Davis Company,PA,USA)。感染は、必ずしも臨床的に明らかであるとは限らず、局所的な細胞傷害のみをもたらす場合がある。感染は、無症状の場合があり、身体の防御機構が有効であれば一時的であり得る。感染は局所的に伝播して、急性、亜急性、又は慢性の臨床感染又は疾患状態の形で臨床的に明らかになる場合がある。局所感染はまた、病原性因子がリンパ又は血管へのアクセスを得ると全身性になり得る。感染は通常炎症を伴うが、炎症は感染なしで起こり得る。
【0018】
「炎症」は、損傷に対する特徴的な組織反応(腫脹、発赤、熱感及び疼痛を特徴とする)であり、損傷時に生体組織に生じる連続的な変化を含む。感染と炎症は異なる状態であるが、一方は他方から生じ得る(上掲したTaberのCyclopedic Medical Dictionary)。したがって、炎症は感染なしで起こり得、感染は炎症なしで起こり得る(ただし、炎症は典型的には病原性細菌又はウイルスによる感染から生じる)。炎症は、以下の症状、発赤(rubor)、熱感(calor)、腫れ(tumour)、痛み(dolor)を特徴とする。皮膚上の局所的な目に見える炎症は、これらの症状の組み合わせ、特に投与部位の発赤から明らかな場合がある。
【0019】
本発明の代替的な態様に従って、様々な対象を治療又はアッセイ又はサンプリングすることができる。本明細書で使用される場合、「対象」は、動物、例えば、脊椎動物又は哺乳動物である。したがって、対象は、がん、増殖性細胞障害又は感染性疾患(特に免疫無防備状態の患者における持続性ウイルス感染又は日和見真菌感染など)などの治療に適した疾患又は障害に罹患している患者、例えばヒトであり得る。対象はまた、実験動物、例えば、免疫調節不全の動物モデルであり得る。いくつかの実施形態では、「対象」及び「患者」という用語は互換的に使用される場合があり、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ネコ又はイヌを含む場合がある。健康な対象は、がん又は免疫機能障害などの疾患に罹患していない、又は疾患を有すると疑われていない、又は慢性の障害又は状態に罹患していないヒトであり得る。「健康な対象」はまた、免疫無防備状態ではない対象であり得る。免疫無防備状態とは、免疫系が異常な又は不完全な形で機能するあらゆる状態を意味する。免疫無防備状態は、出生時に存在する疾患、特定の薬物、又は状態に起因し得る。免疫無防備状態の対象は、乳児、高齢者、及び広範囲にわたる薬物療法又は放射線療法を受けている個体の間でより頻繁に見出され得る。
【0020】
対象からの「試料」は、例えば、患者から採取された細胞、組織又は体液試料などの、任意の関連する生体物質を含み得る。例えば、試料は、皮膚、頬、血液、便、毛髪又は尿の試料を都合よく含み得る。診断及び予後診断方法に使用するための試料核酸は、例えば、対象の厳選された細胞型又は組織から得ることができる。例えば、対象の体液(例えば血液)は、公知の技術により得ることができる。あるいは、乾燥試料(例えば、毛髪又は皮膚)を用いて核酸試験を実施することができる。
【0021】
本明細書に記載される方法の多くは、例えば、少なくとも1つのプローブ若しくはプライマー核酸、又は本明細書に記載される組成物の1つ以上及びキットの使用説明書を含むキットを使用して実施され得る。キットは、例えば、オリゴヌクレオチドが多型領域に「特異的」であるように、多型領域に特異的にハイブリダイズすることができるか、又は多型領域に隣接する少なくとも1つのプローブ又はプライマーを含むことができる。キットはまた、特定のアッセイを実施するために必要な少なくとも1つの試薬を含み得る。キットはまた、陽性対照、陰性対照、配列決定マーカー、又は、例えば、対象の遺伝子型若しくは生物学的マーカープロファイルを決定するための抗体を含み得る。
【0022】
「免疫応答」には、哺乳動物における以下の応答、すなわち、サイトカイン及びケモカインなどの細胞性免疫調節因子の誘導、抗体、好中球、単球、マクロファージ(本明細書に記載のM1様マクロファージ及びM2様マクロファージの両方を含む)、B細胞、又はT細胞(ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマ-デルタ(γδ)T細胞を含む)の誘導又は活性化、例えば、本組成物の投与後の免疫原組成物中の1つ以上の免疫原による誘導又は活性化のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。したがって、組成物に対する免疫応答は、一般に、宿主動物におけるその組成物に対する細胞性及び/又は抗体媒介性応答の発生を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、免疫調節不全、又は免疫調節不全を特徴とする疾患の進行の遅延又は停止をももたらすというものである。したがって、免疫応答は、細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答の一方又は両方を含み得、適応応答又は自然免疫応答であり得る。
【0023】
「免疫調節不全」は、不適切に制御された免疫応答、例えば、不適切に抑制された又は不適切に強固な免疫応答である。免疫調節不全は、例えば、がんなどの新生物性疾患に関連し得る。
【0024】
「部位特異的免疫療法」(SSI)は、器官又は組織などの1又は複数の解剖学的部位における免疫状態又は免疫系生理学の一態様を治療的又は予防的に変化させるのに有効な免疫調節治療である。いくつかの例では、例えば、SSIは、免疫調節不全を改善するように、又は免疫調節不全を特徴とする状態を治療するように適合され得る。
【0025】
「がん」又は「新生物」は、生理学的機能を果たさない細胞の任意の望ましくない成長である。一般に、がん細胞は、その正常な細胞分裂制御から自由になっており、つまりは、その成長が細胞環境における通常の生化学的及び物理的影響によって調節されない細胞である。したがって、「がん」は、異常な制御されない細胞増殖を特徴とする疾患の一般的な用語である。ほとんどの場合、がん細胞は増殖して悪性のクローン細胞を形成する。しこり若しくは細胞塊、「新生物」又は「腫瘍」は、一般に、周囲の正常組織に浸潤し、破壊することができる。本明細書で使用される「悪性腫瘍」とは、異常な成長を有する生物において有害な効果を有する任意の細胞型又は組織の異常な成長を意味する。「悪性腫瘍」又は「がん」という用語は、厳密に言えば良性であるが、悪性になるリスクを有する細胞増殖を含む。がん細胞は、「転移」として知られる過程で、リンパ系又は血流を介して元の部位から身体の他の部分に伝播し得る。多くのがんは治療に対して難治性であり、致命的であることが判明している。がん又は新生物の例としては、限定するものではないが、本明細書に記載される又は当業者に公知の様々な器官及び組織における形質転換して不死化した細胞、腫瘍、がん腫が挙げられる。
【0026】
ほとんどのがんは、3つの広範な組織学的分類、すなわち、優勢ながんであり、上皮細胞又は器官、腺若しくは他の身体構造(例えば、皮膚、子宮、肺、乳房、前立腺、胃、腸)の外表面若しくは内表面を覆う細胞のがんであって、転移する傾向がある、がん腫と、結合組織又は支持組織(例えば、骨、軟骨、腱、靭帯、脂肪、筋肉)に由来するがん腫と、骨髄及びリンパ組織に由来する血液腫瘍とに分類される。がん腫は、腺がん(一般に、乳房、肺、結腸、前立腺又は膀胱などの分泌可能な器官又は腺で発生する)であり得、又は扁平上皮がん(扁平上皮に起源を有し、一般に身体のほとんどの領域で発生する)であり得る。肉腫は、骨肉腫又は骨原性肉腫(骨)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫又は中皮腫(体腔の膜内層)、線維肉腫(線維組織)、血管肉腫若しくは血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫又は星細胞腫(脳に見られる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚性結合組織)、又は間葉若しくは混合中胚葉腫瘍(混合結合組織型)であり得る。血液腫瘍は、骨髄の形質細胞に起源を有する骨髄腫;「液体がん」であり得、骨髄のがんであって、骨髄性若しくは顆粒球性白血病(骨髄性及び顆粒球性白血球)、リンパ性、リンパ球性若しくはリンパ芽球性白血病(リンパ球性及びリンパ球性血液細胞)又は真性赤血球増加症又は赤血球血症(様々な血球生成物、ただし、赤血球が支配的である)であり得る白血病;又は、固形腫瘍であり得、リンパ系の腺又はリンパ節に発生し、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫であり得る、リンパ腫、であり得る。更に、腺扁平上皮がん、混合中胚葉腫瘍、がん肉腫又は奇形がんなどの混合型がんも存在する。
【0027】
原発部位に基づいて命名されたがんは、組織学的分類と相関し得る。例えば、肺がんは、一般に、小細胞肺がん又は非小細胞肺がんであり、扁平上皮がん、腺がん又は大細胞がんであり得、皮膚がんは、一般に、基底細胞がん、扁平上皮がん、又は黒色腫である。リンパ腫は、頭、首及び胸に関連するリンパ節、並びに腹部リンパ節又は腋窩若しくは鼠径リンパ節に生じ得る。がんの種類及び病期の同定及び分類は、例えば、米国におけるがんの発生率及び生存に関する信頼できる情報源であり、世界中で認められている米国国立がん研究所のSurveillance,Epidemiology,and EndResult(SEER)プログラムによって提供される情報を使用して行うことができる。SEERプログラムは、現在、米国人口の約26%をカバーする14の人口ベースのがん登録及び3つの補足登録からがん発生率及び生存データを収集し、公開している。このプログラムは、患者の人口統計、原発腫瘍部位、形態、診断時の病期、治療の第1コース、及び生命状態のフォローアップに関するデータを日常的に収集し、診断時のがんの病期及び各病期内の生存率を含む米国における集団ベースの情報の唯一の包括的な情報源である。300万を超えるin situ及び浸潤性がん症例に関する情報がSEERデータベースに含まれており、SEERのカバレッジエリア内で毎年約170,000の新規症例が追加されている。SEERプログラムの発生率及び生存データを使用して、特定のがん部位及び病期の標準的な生存にアクセスすることができる。例えば、最適な比較群を確保するために、診断日及び正確な病期(例えば、本明細書の肺がんの例の場合、遡及的レビューの時間枠に一致するように年数を選択し、ステージ3B及び4の肺がんを選択し、本明細書の結腸がん例の場合、遡及的レビューの時間枠に一致するように年数も選択し、ステージ4の結腸がんを選択した)などの特定の基準をデータベースから選択することができる。
【0028】
がんはまた、がんが発生する器官、すなわち「原発部位」に基づいて命名され得る(例えば、乳がん、脳がん、肺がん、肝臓がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、膀胱がん、結腸がん及び直腸がん、子宮頸がん、子宮がんなど)。この命名法は、がんが原発部位とは異なる身体の別の部分に転移した場合でも変わらない。本発明では、治療はがんの種類ではなくがんの部位を対象とするので、例えば、肺に症候性の又は病因的に位置する任意の種類のがんは、肺におけるこの局在性に基づいて治療される。
【0029】
本発明の態様は、PRRリガンドの使用に関する。PRRリガンドは、例えば、TLR2、TLR4及びTLR5のリガンドであり得る弱毒化又は死滅化組換え細菌の広く利用可能な調製物の形で、例えば、市販されている場合がある。病原体関連分子パターン(PAMP)の組成物には、PRRによって認識されるPAMPS、例えば、Toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)、デクチン1を含むC型レクチン受容体(CLR)、細胞質dsDNAセンサ(CDS)、及び炎症細胞の形成に関与するNLR、が含まれ得る。
【0030】
Toll様受容体2(TLR2)は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌、並びにマイコプラズマ及び酵母を含む広範囲の種群に相当する広範囲の微生物分子の認識に関与している。TLR2は、グラム陽性菌由来のペプチドグリカン、リポテイコ酸及びリポタンパク質、マイコバクテリア由来のリポアラビノマンナン、並びに酵母細胞壁由来のザイモサンなどの細胞壁成分を認識する。Toll様受容体3(TLR3)は、二本鎖RNA(dsRNA)を認識する。細菌リポ多糖(LPS)は、少なくとも3つの異なる細胞外タンパク質、すなわち、LPS結合タンパク質(LBP)、CD14及び骨髄分化タンパク質2(MD-2)と相互作用するToll様受容体4(TLR4)によって認識され、NF-κBの活性化及び炎症促進性サイトカインの産生をもたらすシグナル伝達カスケードを誘導する。LPSは、一般に、炭水化物脂質部分、すなわち、LPSの免疫刺激活性を主に担う脂質Aによって外細菌膜に固定された多糖領域からなる。脂質Aの特に活性な形態は、例えば、大腸菌又はサルモネラ属種の株である病原性細菌に見られ得るように、6つの脂肪アシル基を含有する。Toll様受容体5(TLR5)は、グラム陽性菌由来のフラジェリン及びグラム陰性菌由来のフラジェリンの両方を認識する。Toll様受容体7(TLR7)及びTLR8は、一本鎖RNA並びにイミダゾキノリン及びヌクレオシド類似体などの合成小分子を認識する。Toll様受容体9(TLR9)は、脊椎動物のゲノムDNAではなく、微生物に一般的な特定の非メチル化CpGモチーフを認識する。
【0031】
NLRは、ペプチドグリカン(PGN)の認識に関与する細胞内パターン認識受容体であるNOD1(CARD4)及びNOD2(CARD15)を含む、少なくとも22個の細胞質自然免疫センサのファミリーである。これらの受容体は、PGN内の特定のモチーフを検出する。NOD1は、主にグラム陰性菌並びに特定のグラム陽性菌のPGN中に見出されるジアミノピメリン酸(DAP)含有ムロペプチド(具体的には、d-Glu-meso-DAPジペプチド「iE-DAP」ジペプチド)を感知する。NOD2は、ほとんど全ての細菌PGNに見られるムラミルジペプチド(MDP)構造を認識する。
【0032】
RIG-I様受容体(RLR)、特にRIG-I及びMDA-5はウイルスRNA種を検出する。
【0033】
CLRリガンドには、デクチン1及びMincle(マクロファージ誘導性C型レクチン)アゴニストが含まれる。デクチン1は、真菌の細胞壁に見られるグルコースポリマーであるβ-グルカンの特異的受容体である。Mincleは、損傷細胞、真菌成分、酵母成分及びマイコバクテリアの成分などの多種多様なリガンドを認識するマルチタスク危険シグナル受容体である。
【0034】
細胞質DNAセンサ(CDS)は、病原体由来の細胞内DNAに結合し、特定のDNAの認識について、状況に応じた優先傾向を示し得る複数のCDSが存在する。
【0035】
環状ジヌクレオチド(CDN)及びキサンテノン誘導体、例えば、DMXAAは、STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)に結合してこれを活性化する。
【0036】
インフラマソームは、成熟IL-1βの産生、特に、プロIL-1β及びプロIL-18の活性型及び分泌型への切断に関与する多タンパク質複合体である。インフラマソームは、多種多様な微生物分子、危険シグナル及び結晶性物質によって活性化されるNLRP1、NLRP3、NLRC4及びAIM2サブタイプに分離され得る。
【0037】
【0038】
【0039】
したがって、本発明の態様は、選択された微生物病原体に由来するPRRアゴニストの使用を含む。例えば、ペプチドグリカン(PGN)は、NOD1/NOD2アゴニストとして使用するために、選択された標的組織又は器官において病原性である細菌又は細菌株から得ることができる。同様に、細胞壁成分は、TLR2アゴニストとして使用するために、選択された標的組織又は器官において病原性である細菌又は細菌株から得ることができる。同様に、二本鎖DNA、特に反復二本鎖DNAなどのDNAは、DAI、LRRFIP1、RIG1、TLR9、AIM2又はサイトゾルDNAセンサ(CDS)アゴニストとして使用するために、選択された標的組織又は器官において病原性である細菌又は細菌株などの微生物病原体から得ることができる。ベータグルカンペプチドは、デクチン1アゴニストとして使用するために、選択された標的組織又は器官において病原性である真菌又は酵母から得ることができる。環状ジヌクレオチドは、STINGアゴニストとして使用するために、選択された標的組織又は器官において病原性である微生物病原体から得ることができる。
【0040】
本発明の態様は、選択されたPRRアゴニストの集合が異なるように、治療用ビヒクルに一緒に収集されるPRRアゴニストのレパートリーを含む、異なるPRRアゴニストシグネチャを有する組成物を含む。これに関連して「治療用ビヒクル」は、PRRアゴニストを凝集させて、例えば、組換え微生物などの薬学的に許容される粒子又は小胞に保持する製剤である。例えば、PRRアゴニストシグネチャは、参照PRRアゴニストシグネチャとは異なり得、例えば、標的組織において病原性でない微生物上に存在するであろうPRRアゴニストの集合とは異なり得る。PRRシグネチャはまた、微生物哺乳動物病原体の天然のPRRアゴニストシグネチャとは異なるという意味で異なり得、例えば、そうでなければ病原体の野生型PRRアゴニストシグネチャとなるものを変更する遺伝子の組換え発現によって変更される。PRRアゴニストシグネチャの特異性を調べる目的で、PRRアゴニストのレベル又は種類を直接測定してもよく、又は例えば、PRRアゴニスト/受容体結合の結果としての細胞におけるシグナル伝達経路の活性化又は阻害を測定することによって測定してもよい。
【0041】
本発明の様々な遺伝子及び核酸配列は、組換え配列であり得る。「組換え」という用語は、何かが再結合されていることを意味し、したがって、核酸構築物に関して行われる場合、この用語は、分子生物学的技術によって結合されるか又は産生される核酸配列から構成される分子を指す。したがって、核酸「構築物」は、一般に相互運用可能な構成要素シーケンサーを凝集させることによって作製された組換え核酸である。「組換え」という用語は、タンパク質又はポリペプチドに関して行われる場合、分子生物学的技術によって作製された組換え核酸構築物を使用して発現されるタンパク質又はポリペプチド分子を指す。「組換え」という用語は、遺伝子組成又は生物若しくは細胞に関して行われる場合、親ゲノムには生じなかった対立遺伝子の新しい組み合わせを指す。組換え核酸構築物は、天然でライゲーションされていないか、又は天然では異なる位置にライゲーションされている核酸配列に対して、ライゲーションされているか、又はライゲーションされるように操作されているヌクレオチド配列を含み得る。したがって、核酸構築物を「組換え」と称することは、核酸分子が遺伝子工学を使用して、すなわちヒトの介入によって操作されていること(その結果、人為的に改変されていること)を示す。組換え核酸構築物は、例えば、形質転換によって宿主細胞に導入され得る。そのような組換え核酸構築物は、単離され、宿主種の細胞に再導入された、同じ宿主細胞種又は異なる宿主細胞種に由来する配列を含み得る。組換え核酸構築物配列は、宿主細胞の元の形質転換の結果、又はその後の組換え及び/又は修復事象の結果のいずれかの形で、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
【0042】
本発明の組換え構築物は、例えば、形質転換植物における遺伝子発現又は抑制を媒介するのに必要な、様々な機能的分子又はゲノム成分を含み得る。これに関連して、「DNA調節配列」、「制御エレメント」及び「調節エレメント」は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター及びタンパク質分解シグナルなどの遺伝子発現を調節する転写及び翻訳制御配列、並びに、例えば、ヒストンのメチル化又はアセチル化に関与し、転写のランドスケープにおける立体構造変化及び遺伝子発現の違いをもたらすエピジェネティック調節シグナル(例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ又はアセチルトランスフェラーゼ)を指す。本開示の文脈において、「プロモーター」は、プロモーターが遺伝子に作動可能に連結された場合に、遺伝子の転写を指令するのに十分な配列を意味する。したがって、プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合及び転写の開始をもたらすDNA配列を含む遺伝子の一部である。プロモーター配列は、一般的に(普遍的にではないが)遺伝子の5’非コード領域に位置する。プロモーター及び遺伝子は、そのような配列がプロモーターによって媒介される遺伝子発現を可能にするように機能的に連結されている場合に、「作動可能に連結されている」。したがって、「作動可能に連結された」という用語は、DNAセグメントが、それらの意図された目的のために、例えば、遺伝子のコードセグメントを通って遺伝子のターミネーター部分に進むようにプロモーター内で転写を開始するために協調して機能するように配置されることを示す。いくつかの例では、適切な分子(転写活性化タンパク質など)がプロモーターに結合している場合に、遺伝子発現が起こり得る。発現は、遺伝子のコード配列の情報を転写によってmRNAに変換し、続いて翻訳によってポリペプチド(タンパク質)に変換するプロセスであり、その結果、タンパク質が発現されると言う。この用語が本明細書で使用される場合、遺伝子又は核酸は、特定の宿主細胞において適切な条件下で発現することができる場合に、「発現可能」である。
【0043】
本明細書で使用される「単離された」核酸又はポリヌクレオチドは、その元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には、その自然環境)から取り出された成分を指す。単離された核酸又はポリペプチドは、それが元々会合していた細胞成分又は生物学的成分の約50%未満、約75%未満、約90%未満、約99.9%未満、又は50~99.9%の間の任意の整数値未満を含有し得る。PCRを使用して、細胞成分の残りの部分と(例えば、ゲル上で)十分に区別できるように増幅されたポリヌクレオチドは、例えば、それによって「単離される」。本発明のポリヌクレオチドは、「実質的に純粋」であり得る、すなわち、精製技術を使用して達成されるような高度の単離を有し得る。
【0044】
生物学的分子の文脈において、「内因性」は、所与の生物又は細胞内に天然に見出され、かつ/又は所与の生物又は細胞によって産生される核酸などの分子を指す。「内因性」分子は、「ネイティブ」分子と呼ばれる場合もある。逆に、生物学的分子の文脈では、「外因性」は、自然界の所与の生物又は細胞に通常又は自然には見られない、かつ/又は自然界の所与の生物又は細胞によって産生されない分子、例えば、核酸を指す。
【0045】
核酸又はアミノ酸配列を表すために本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、例えば、形質転換によって特定の宿主細胞に人工的に導入される分子又は分子の一部、例えば、DNA配列を指す。異種DNA配列は、例えば、形質転換によって宿主細胞に導入され得る。そのような異種分子は、宿主細胞に由来する配列を含み得る。異種DNA配列は、宿主細胞の元の形質転換の結果として、又はその後の組換え事象の結果として、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。
【0046】
本開示の様々な態様は、他の配列と相同な核酸又はアミノ酸配列を包含する。この用語が本明細書で使用される場合、アミノ酸又は核酸配列は、2つの配列が実質的に同一であり、配列の機能活性が保存されている場合は、別の配列と「相同」である(本明細書で使用される場合、配列保存又は同一性は進化的関連性を推論しない)。核酸配列はまた、例えば、遺伝暗号の縮重の結果、核酸配列自体が実質的に同一でなくても、実質的に同一のアミノ酸配列をコードする場合は、相同であり得る。
【0047】
本発明の代替的な態様で使用するためのPRRリガンドは、微生物に由来し得る。より具体的には、PRRリガンドの供給源である微生物は、目的の標的組織であり得る。微生物を病原体とみなすのは、ほとんどの動物に、宿主動物と共生的又は片利共生的な関係で存在する細菌などの微生物がある程度定着しているので、微妙なところがある。このように、多くの種の通常無害な細菌が健康な動物に見られ、通常は特定の器官及び組織の表面に局在する。多くの場合、これらの微生物群は、微生物叢と呼ばれるもののメンバーとして、身体の正常な機能を助ける。大腸菌などの一般に無害な微生物は、健康な対象に感染を引き起こす場合があり、その結果は軽度の感染から死亡にまで及ぶ。微生物が病原性であるかどうか(すなわち、感染を引き起こすかどうか)は、特定の宿主細胞、組織、又は器官への侵入及びアクセスの経路、微生物の固有病原性、潜在的感染部位に存在する微生物の量、又は宿主動物の健康状態、などの因子に依存する。したがって、通常は無害な微生物は、感染にとって好ましい条件が与えられると病原性になり得、最も毒性の高い微生物でさえ、一般に、感染を引き起こすためには特定の状況を必要とする。したがって、通常の細菌叢のメンバーである微生物種は、内因性細菌叢における通常の生態学的役割を超えた働きをする場合に、病原体であり得る。例えば、内因性種は、例えば、隣接伝播によって、解剖学的に近接した領域の生態的地位の外側で感染を引き起こす場合がある。これが起こると、これらの通常無害な内因性細菌は病原性である。
【0048】
特定の微生物種は、それ以外の点では健康な対象の、特定の細胞、組織、又は器官において感染症を引き起こすことが知られている。身体の特定の器官及び組織において一般に感染症を引き起こす細菌及びウイルスの例を以下に列挙するが、これらの例は、例えば、以下の刊行物、すなわち、Manual of Clinical Microbiology 8th Edition,Patrick Murray,Ed.,2003,ASM Press American Society for Microbiology,Washington DC,USA、及び、Mandell,Douglas,and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases 5th Edition,G.L.Mandell,J.E.Bennett,R.Dolin,Eds.,2000,Churchill Livingstone,Philadelphia,PA,USA(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に代表されるような、この分野の知識に基づいて、当業者であれば、それ以外の点では健康な生物の様々な器官や組織において感染症を引き起こすか又は通常は感染症を引き起こす感染性又は病原性の細菌を認識及び同定する(そして、各細菌種の相対的な感染頻度を認識する)ことができるであろうという意味で、限定するものではない。
【0049】
皮膚の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、ベータ溶血性連鎖球菌群A、B、C又はG、ジフテリア菌、潰瘍性コリネバクテリウム、又は緑膿菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、麻疹、風疹、水痘帯状疱疹、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ワクシニア、単純ヘルペス、又はパルボB19、によって引き起こされる。
【0050】
軟組織(例えば、脂肪及び筋肉)の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、又は他のクロストリジウム属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、インフルエンザ又はコクサッキーウイルス、によって引き起こされる。
【0051】
乳房の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌又は化膿性連鎖球菌によって引き起こされる。
【0052】
頭頸部のリンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌又は化膿性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、はしか、風疹、単純ヘルペス、コクサッキーウイルス、又は水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0053】
腕/腋窩のリンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌又は化膿性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、はしか、風疹、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、又は水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0054】
縦隔のリンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、緑色連鎖球菌、ペプトコッカス属種、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、又は結核菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、はしか、風疹、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、又はアデノウイルス、によって引き起こされる。
【0055】
肺門リンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎連鎖球菌、モラクセラ・カタラリス、肺炎マイコプラズマ、クレブシエラ・ニューモニアエ、ヘモフィルス・インフルエンザ、肺炎クラミジア、百日咳菌又は結核菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、インフルエンザ菌、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、又はコクサッキーウイルス、によって引き起こされる。
【0056】
腹腔内リンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、腸炎エルシニア、エルシニア・シュードツベルクローシス、サルモネラ属種、化膿性連鎖球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、又は結核菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、はしか、風疹、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、アデノウイルス、インフルエンザ、又はコクサッキーウイルス、によって引き起こされる。
【0057】
脚/鼠径部のリンパ節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌又は化膿性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、はしか、風疹、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、又は単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0058】
血液(すなわち、敗血症)の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、エンテロコッカス属種、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、プロテウス属種、緑膿菌、バクテロイデス・フラジリス、肺炎連鎖球菌、又はB群連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、麻疹、風疹、水痘帯状疱疹、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、エプスタイン-バー、単純ヘルペス、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0059】
骨の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、他の連鎖球菌属種、大腸菌、シュードモナス属種、エンテロバクター属種、プロテウス属種、又はセラチア属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、パルボウイルスB19、風疹、又はB型肝炎、によって引き起こされる。
【0060】
関節の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、他の連鎖球菌属種、大腸菌、シュードモナス属種、エンテロバクター属種、プロテウス属種、セラチア属種、ナイセリア淋病、サルモネラ属種、結核菌、ヘモフィルス・インフルエンザ、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、パルボウイルスB19、風疹、B型肝炎、あるいは、真菌病原体、すなわち、スケドスポリウム・プロリフィカンス、によって引き起こされる。
【0061】
髄膜の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、又はリステリア菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、他のエンテロウイルス、又はおたふく風邪、によって引き起こされる。
【0062】
脳の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、ストレプトコッカス属種(S.アンギノーサス、S.コンステラタス、S.インターメディアを含む)、黄色ブドウ球菌、バクテロイデス属種、プレボテーラ属種、プロテウス属種、大腸菌、クレブシエラ属種、シュードモナス属種、エンテロバクター属種、又はボレリア・ブルグドルフェリ、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、他のエンテロウイルス、おたふく風邪、単純ヘルペス、水痘帯状疱疹、フラビウイルス、又はブニヤウイルス、によって引き起こされる。
【0063】
脊髄の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、リステリア菌、又はボレリア・ブルグドルフェリ、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、他のエンテロウイルス、おたふく風邪、単純ヘルペス、水痘帯状疱疹、フラビウイルス、又はブニヤウイルス、によって引き起こされる。
【0064】
眼/眼窩の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、キビ菌、大腸菌、セレウス菌、トラコーマクラミジア、インフルエンザ菌、シュードモナス属種、クレブシエラ属種、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、アデノウイルス、単純ヘルペス、水痘帯状疱疹、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0065】
唾液腺の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌(例えば、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・サンギス、ストレプトコッカス・ミュータンス)、ペプトストレプトコッカス属種、又はバクテロイデス属種、又は他の口腔嫌気性菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、おたふく風邪、インフルエンザ、エンテロウイルス、又は狂犬病、によって引き起こされる。
【0066】
口の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、プレボテーラ・メラニノジェニカ、嫌気性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、アクチノミセス属種、ペプトストレプトコッカス属種、又はバクテロイデス属種、又は他の口腔嫌気性菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、単純ヘルペス、コクサッキーウイルス、又はエプスタイン・バー、によって引き起こされる。
【0067】
扁桃腺の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、化膿性連鎖球菌、又はC群若しくはG群のB型溶血性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、ライノウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、又は単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0068】
副鼻腔の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラリス、α-ストレプトコッカス、嫌気性細菌(例えば、プレボテーラ属種)、又は黄色ブドウ球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、ライノウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス、又はパラインフルエンザ、によって引き起こされる。
【0069】
鼻咽頭の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、化膿性連鎖球菌、又はC群若しくはG群のB型溶血性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、ライノウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、又は単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0070】
甲状腺の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、又は肺炎連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、おたふく風邪、又はインフルエンザ、によって引き起こされる。
【0071】
喉頭の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、又は化膿性連鎖球菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、ライノウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザ、アデノウイルス、コロナウイルス、又はヒトメタニューモウイルス、によって引き起こされる。
【0072】
気管の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎マイコプラズマ、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、パラインフルエンザ、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、又はアデノウイルス、によって引き起こされる。
【0073】
気管支の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳菌、肺炎連鎖球菌、又はインフルエンザ菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、インフルエンザ、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザ、呼吸器多核体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、又はコクサッキーウイルス、によって引き起こされる。
【0074】
肺の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、肺炎連鎖球菌、モラクセラ・カタラリス、肺炎マイコプラズマ、クレブシエラ・ニューモニアエ、又はインフルエンザ菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、インフルエンザ、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、又はパラインフルエンザ、によって引き起こされる。
【0075】
胸膜の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、バクテロイデス・フラジリス、プレボテーラ属種、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ペプトストレプトコッカス属種、又は結核菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、インフルエンザ、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、又はパラインフルエンザ、によって引き起こされる。
【0076】
縦隔の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、緑色連鎖球菌、ペプトコッカス属種、ペプトストレプトコッカス属種、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、又は結核菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、はしか、風疹、エプスタイン・バー、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0077】
心臓の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、ストレプトコッカス属種(S.mitior、S.ボビス、S.サングイス、S.ミュータンス、S.アンギノーサスを含む)、エンテロコッカス属種、ブドウ球菌属種、ジフテリア菌、ウェルシュ菌、髄膜炎菌、又はサルモネラ属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、おたふく風邪、麻疹、又はインフルエンザ、によって引き起こされる。
【0078】
食道の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、アクチノマイセス属種、マイコバクテリウム・アビウム、結核菌、又はストレプトコッカス属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、又は水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0079】
胃の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、化膿性連鎖球菌又はピロリ菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、エプスタイン・バー、ロタウイルス、ノロウイルス、又はアデノウイルス、によって引き起こされる。
【0080】
小腸の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クロストリジウム・ディフィシル、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・バルガツス、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、クロストリジウム・パーフリンジェンス、サルモネラ・エンテリティディス、腸炎エルシニア、又は赤痢菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、アデノウイルス、アストロウイルス、カリシウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0081】
結腸/直腸の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クロストリジウム・ディフィシル、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・バルガツス、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、クロストリジウム・パーフリンジェンス、サルモネラ・エンテリティディス、腸炎エルシニア、又は赤痢菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、アデノウイルス、アストロウイルス、カリシウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0082】
肛門の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、化膿性連鎖球菌、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、嫌気性連鎖球菌、クロストリジウム属種、大腸菌、エンテロバクター属種、緑膿菌、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0083】
会陰部の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロコッカス属種、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、クロストリジウム属種、緑膿菌、嫌気性連鎖球菌、クロストリジウム属種、又はエンテロバクター属種、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0084】
肝臓の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、ストレプトコッカス(アンギノーサス群)、エンテロコッカス属種、その他のウイルス性連鎖球菌、又はバクテロイデス属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、A型肝炎、エプスタイン・バー、単純ヘルペス、おたふく風邪、風疹、麻疹、水痘帯状疱疹、コクサッキーウイルス、又はアデノウイルス、によって引き起こされる。
【0085】
胆嚢の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、腸球菌、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、クロストリジウム属種、サルモネラ・エンテリティディス、腸炎エルシニア、又は赤痢菌、によって引き起こされる。
【0086】
胆道の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、腸球菌、バクテロイデス属種、フソバクテリウム属種、クロストリジウム属種、サルモネラ・エンテリティディス、腸炎エルシニア、又は赤痢菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、A型肝炎、エプスタイン・バー、単純ヘルペス、おたふく風邪、風疹、麻疹、水痘帯状疱疹、コクサッキーウイルス、又はアデノウイルス、によって引き起こされる。
【0087】
膵臓の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロコッカス属種、シュードモナス属種、ブドウ球菌属種、マイコプラズマ属種、ネズミチフス菌、レプトスピラ属種、又はレジオネラ属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、おたふく風邪、コクサッキーウイルス、B型肝炎、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス2、又は水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0088】
脾臓の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、ストレプトコッカス属種、ブドウ球菌属種、サルモネラ属種、シュードモナス属種、大腸菌、又はエンテロコッカス属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、エプスタイン・バー、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、はしか、風疹、コクサッキーウイルス、又は水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0089】
副腎の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、ストレプトコッカス属種、ブドウ球菌属種、サルモネラ属種、シュードモナス属種、大腸菌、又はエンテロコッカス属種、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、水痘帯状疱疹、によって引き起こされる。
【0090】
腎臓の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、プロテウス・ミラビリス、プロテウス・ブルガツス、プロビデンシア属種、モルガネラ属種、エンテロコッカス・フェカリス、又は緑膿菌、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、BKウイルス、又はおたふく風邪、によって引き起こされる。
【0091】
尿管の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、ミラビリス変形菌、外陰プロテウス、プロビデンシア属種、モルガネラ属種、又はエンテロコッカス属種、によって引き起こされる。
【0092】
膀胱の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、プロテウス・ミラビリス、プロテウス・ブルガツス、プロビデンシア属種、モルガネラ属種、エンテロコッカス・フェカリス、又はコリネバクテリウム・ジェケウム、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、アデノウイルス、又はサイトメガロウイルス、によって引き起こされる。
【0093】
腹膜の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、大腸菌、クレブシエラ属種、プロテウス属種、腸球菌、バクテロイデス・フラジリス、プレボテーラ・メラニノーゲン、ペプトコッカス属種、ペプトストレプトコッカス属種、フソバクテリウム属種、又はクロストリジウム属種、によって引き起こされる。
【0094】
後腹膜領域の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌又は黄色ブドウ球菌、によって引き起こされる。
【0095】
前立腺の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、プロテウス・ミラビリス、腸球菌属種、シュードモナス属種、コリネバクテリウム属種、又はナイセリア・ゴノルロエエ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0096】
精巣の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、ブドウ球菌属種、ストレプトコッカス属種、又はサルモネラ・エンテリティディス、あるいは、ウイルス性病原体、すなわち、おたふく風邪、コクサッキーウイルス、又はリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、によって引き起こされる。
【0097】
陰茎の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、淋菌、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0098】
卵巣/付属器の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、淋菌、トラコーマクラミジア、ガードネレラ・バギナリス、プレボテーラ属種、バクテロイデス属種、ペプトコッカス属種、ストレプトコッカス属種、又は大腸菌、によって引き起こされる。
【0099】
子宮の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、淋菌、トラコーマクラミジア、ガードネレラ・バギナリス、プレボテーラ属種、バクテロイデス属種、ペプトコッカス属種、ストレプトコッカス属種、又は大腸菌、によって引き起こされる。
【0100】
子宮頸部の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、淋菌、トラコーマクラミジア、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0101】
膣の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、ガードネレラ・バギナリス、プレボテーラ属種、バクテロイデス属種、ペプトコックス属種、大腸菌、淋菌、トラコーマクラミジア、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0102】
外陰部の感染症は、一般に、以下の細菌種、すなわち、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、又は梅毒トレポネーマ、あるいは、ウイルス病原体、すなわち、単純ヘルペス、によって引き起こされる。
【0103】
細菌種は、操作上、類似の株(これは、一般に、同定可能な生理学的な差異を有するが、通常は形態学的な差異を有していない、祖先が共通すると推定される群を指し、細菌表面抗原に対する血清学的技法を使用して同定することができる)の集合として分類される。したがって、各細菌種(例えば、肺炎連鎖球菌)は、感染を引き起こす能力が異なり得、又は特定の器官/部位での感染を引き起こす能力が異なり得る数多くの株(又は血清型)を有する。例えば、少なくとも90の血清型の肺炎連鎖球菌が存在するが、血清型1、3、4、7、8、及び12は、ヒトの肺炎連鎖球菌疾患の原因であることが最も多い。
【0104】
腸管外病原性大腸菌(ExPEC)と呼ばれる大腸菌の特定の株は、尿路感染症又は新生児髄膜炎などの他の腸管外感染症を引き起こす可能性がより高いが、腸管毒素産生大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、腸管凝集性大腸菌(EAEC)、腸管侵襲性大腸菌(EIEC)及びびまん性付着性大腸菌(DAEC)などの他の株は、胃腸感染症/下痢を引き起こす可能性がより高い。ExPEC株のサブカテゴリの中でも、特定の病原性因子(例えば、1型線毛の産生)は、特定の株が膀胱の感染を引き起こすことをより可能にする一方で、他の病原性因子(例えば、P線毛の産生)は、他の株が腎臓の感染を引き起こすことをより可能にする。本発明によれば、膀胱がんにおいて免疫調節不全を標的化する製剤のために、膀胱において感染を引き起こす可能性がより高いExPEC株を選択することができるのに対して、腎臓がんにおいて免疫調節不全を標的化する製剤のために、腎臓において感染を引き起こす可能性がより高いExPEC株を選択することができる。同様に、結腸における免疫調節不全を治療するための製剤のために、大腸菌(すなわち、結腸感染を引き起こす株)のETEC、EPEC、EHEC、STEC、EAEC、EIEC又はDAEC株のうちの1つ以上を選択することができる。
【0105】
同様に、特定のウイルスには数多くのサブタイプが存在し得る。例えば、インフルエンザウイルスには、インフルエンザA、インフルエンザB及びインフルエンザCの3つのタイプがあり、これらは、疫学、宿主範囲及び臨床的特徴が異なる。例えば、インフルエンザAは、ウイルス性肺感染症に関連する可能性がより高く、一方、インフルエンザBは、筋炎(すなわち、筋肉感染)に関連する可能性がより高い。更に、これら3つのタイプのインフルエンザウイルスの各々は、数多くのサブタイプを有し、これらはまた、疫学、宿主範囲及び臨床的特徴において異なり得る。本発明によれば、肺における免疫調節不全を標的化するために、最もよく肺感染に関連するインフルエンザAサブタイプを選択することができ、一方、筋肉/軟組織における免疫調節不全を治療するために、最もよく筋炎に関連するインフルエンザB株を選択することができる。
【0106】
いくつかの病理組織状態に関連する特定の微生物叢、例えば、特定の腫瘍の微生物叢がある。例えば、フソバクテリウム及びプロビデンシアは結腸直腸がんに関連している。
【0107】
本発明の組成物は、特定の組織又は器官において病原性である病原性微生物種(細菌、ウイルス又は真菌)の免疫原を含み、この免疫原は、標的組織において病原性である微生物哺乳動物病原体のPRRアゴニストシグネチャの異なる部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーの形態で提供される。選択された実施形態では、PRRアゴニストシグネチャの一部は、標的組織において病原性ではない微生物の参照PRRアゴニストシグネチャとは異なり、また、微生物哺乳動物病原体の天然PRRアゴニストシグネチャとは異なるという両方の意味で区別される。哺乳動物PRRアゴニストのこの異なる人工レパートリーは、哺乳動物宿主中の標的組織に存在する自然免疫細胞へ複合的に提示するために治療ビヒクルの中に一緒に製剤化される。
【0108】
本発明の組成物は、単独で、又は他の化合物(例えば、核酸分子、小分子、ペプチド又はペプチド類似体)と組み合わせて、リポソーム、アジュバント、又は任意の薬学的に許容される担体の存在下、哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に適した形態(「治療ビヒクル」)で提供することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」又は「賦形剤」は、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。担体は、皮下、皮内、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、舌下、吸入、腫瘍内又は経口投与などの任意の適切な投与形態に適し得る。薬学的に許容される担体としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物(すなわち、本発明の特定の細菌、細菌抗原、又はそれらの組成物)と配合禁忌である場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が企図される。補助活性化合物も本組成物に組み込むことができる。
【0109】
本発明の態様は、ナノ粒子(NP)製剤の使用を含む。例えば、ウイルス様粒子(VLP)は、本質的に、無傷のタンパク質殻を有する空のウイルス粒子であり、いくつかの実施形態では、膜エンベロープである。一般に、VLPは遺伝物質を欠く。VLPの産生は、例えば、哺乳動物、鳥類、昆虫、植物、酵母又は細菌細胞におけるウイルスタンパク質の発現によるものであり得る。あるいは、完全合成VLPを製造することができる。代替的なナノ粒子製剤エマルジョン、アルギン酸リポソーム、キトサン、及びポリラクチド-コグリコリド(PLGA)NP。免疫応答を誘導するための使用に適合させることができるNP/TLRリガンド調製物の例は、TLR2(Pam(3)Cys)、TLR9(ポリI:C)、TLR4(3-O-デサシル-4 0-モノホスホリルリピドA(MPL))、TLR7(9-ベンジル-8-ヒドロキシアデニン)、TLR7/8(レシキモド、R848)及びTLR9(CpG DNA)に対するリガンドである。
【0110】
選択された共製剤に加えて、多種多様なアジュバントを使用して、所望の免疫応答を増強することができる(Levast et al.,2014,Vaccines,2,297-322を参照されたい)。
【0111】
本発明によるPRRリガンドによる治療は、より伝統的な既存の治療と組み合わせることができる。例えば、がんの場合、これらには、化学療法、放射線療法、手術など、あるいは、免疫系を刺激し、炎症を軽減し、又は他の方法で対象に利益をもたらす療法、例えば、栄養素、ビタミン及びサプリメントが含まれ得る。例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB複合体、セレン、亜鉛、補酵素Q10、ベータカロチン、魚油、クルクミン、緑茶、ブロメライン、レスベラトロール、粉砕亜麻仁、ニンニク、リコペン、オオアザミ、メラトニン、他の抗酸化剤、シメチジン、インドメタシン又はCOX-2阻害剤(例えば、Celebrex(商標)[celecoxib]又はVioxx(商標)[rofecoxib])も対象に投与され得る。
【0112】
従来の薬学的実務を用いて、本化合物を対象に投与するための適切な製剤又は組成物を提供することができる。代替的な投与経路、例えば、非経口投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、眼窩内投与、眼投与、脳室内投与、嚢内投与、脊髄内投与、髄腔内投与、嚢内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、吸入投与、エアロゾル投与、局所投与、腫瘍内投与、舌下投与又は経口投与を使用することができる。治療用製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であり得、経口投与の場合、製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態であり得、鼻腔内製剤の場合は、粉末、点鼻薬、又はエアロゾルの形態であり得、舌下製剤の場合は、液滴、エアゾール剤、又は錠剤の形態であり得る。
【0113】
製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(20th edition),ed.A.Gennaro,2000,Mack Publishing Company,Easton,PAに見られる。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物起源の油又は水素化ナフタレンを含有し得る。生体適合性の生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して、本化合物の放出を制御することができる。他の潜在的に有用な非経口送達系としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入系及びリポソームが挙げられる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含有し得、又は、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸及びデオキシコール酸を含有する水溶液であり得、又は点鼻薬の形態で若しくはゲルとして投与するための油性溶液であり得る。治療用又は予防用組成物の場合、病原性細菌種は、障害に応じて、がんの進行又は転移を停止又は遅延させるために、又は対象の生存を(例えば、SEERデータベースから導かれる予後と比較して)増加させるために有効な量で個体に投与される。
【0114】
生分解性ポリマー材料は、キトサン、アルギネート、ゼラチン、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(β-アミノエステル)(PBAE)及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)(Luら、2021)などの抗原性及び免疫調節治療薬の段階的送達のために使用することができる。同様に、所定の時系列で1つ以上の治療薬を送達することができる生体内分解性系が開発されている(Sundararajら、2014)。ポリ無水物及びポリ(オルトエステル)は、このような形で治療薬の制御送達に使用される表面侵食ポリマーの例である。同様に、酢酸フタル酸セルロース(CAP)及びPluronic F-127(P)は、非プロトン性溶媒中で混合されると、水素結合を介して会合して、治療用組成物の放出を媒介することができるマトリックスを提供する。CAPとPluronicの比は、侵食速度を調節し、それによって治療放出のタイミングを調節するように調節され得る。したがって、これらの系は、例えば、手術日に送達系が外科的創傷に適用された後の複数の連続した時間的に離れた投与段階でマトリックスから哺乳動物病原体を放出するように適合された、弱毒化又は死滅した哺乳動物病原体などの治療薬を包み込む、間欠的な段階的放出のための段階的放出マトリックスの中に提供することができ、哺乳動物病原体の治療的に有効なアリコートは、周術期において、例えば、手術日の1、2、3、4、5又は6ヶ月以内の期間において、各投与段階で放出される。
【0115】
医薬組成物又は製剤は、薬物を投与するために使用される方法に応じて様々な方法で包装することができる。例えば、製造品又はパッケージは、適切な形態の医薬製剤がその中に置かれた容器を含み得る。適切な容器は、例えば、ボトル(プラスチック及びガラス)、サシェ、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダ、及びバイアルなどの材料を含み得る。容器は、滅菌アクセスポートを有してもよく、例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿刺可能なストッパを有するバイアルであってもよい。パッケージ又は容器はまた、パッケージ又は容器の内容物へのアクセスを制御するように適合された不正開封防止又は多目的機構、例えば、パッケージに収容されたバイアルに適合された複数回投与バイアルアダプタを含み得る。容器又はパッケージは、ラベル、例えば、容器の内容物を記載するラベル、例えば、その中の医薬組成物を識別し、かつ/又は投与のモード又は経路を指定する薬物ラベルを含み得る。ラベルはまた、適切な警告、例えば、容器又はパッケージの貯蔵条件を指定すること、又は治療モードの禁忌又は有害作用を示すことを含み得る。したがって、製品は、医薬組成物又は医薬組成物の使用を容易にするように適合された付属品を含む「キット」の形態をとることができる。キットは、ラベル又は添付文書を含んでいてもよく、ここで、「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む説明書を指すために使用される。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、及びシリンジなどの、医薬組成物の使用に関連する付属品を更に含み得る。キットはまた、例えば、いくつかの単位投与量などの医薬組成物の選択された剤形の送達に適合させることができる。そのようなキットは、投与量が用いられる治療スケジュールの指定されたタイミングを物理的に又は書面で指示する形の、記憶補助具又は機構を含み得る。
【0116】
「コンパニオン診断」は、医薬品の治療又は組成物に関連し得る。コンパニオン診断は、典型的には特定の患者に対する治療の適用性を調べるための診断試験の形で診断又は予後情報を提供することによって、関連する治療を容易にするアッセイである。ポイント・オブ・ケア・コンパニオン診断は、例えば、キットの一部としての医薬製剤を提供することに併せて、診断組成物及び/又は製品を提供することを含み得る。あるいは、コンパニオン診断は、対象の治療をモニタリングするためのアッセイ、又は意図された治療の治療有効性を予測するためのアッセイとして別々に提供されてもよい。コンパニオン診断は、例えば、撮像ツールなどの医療機器、又はそのような機器によって実行される(例えば、インビトロでアッセイを行うための)プロセスの形態をとることができ、対応する薬物又は生物学的産物の安全かつ有効な使用に関連する情報を提供する。コンパニオン診断は、治療有効性又は望ましくない副作用若しくはリスクの証拠に関する診断又は予後情報を提供するために、本明細書に開示される治療と共に使用され得る。特定の治療薬とのコンパニオン診断薬の使用は、説明書、例えば、診断装置のラベリング及び/又は対応する治療用製品のラベリングに規定され得る。コンパニオン診断検査の類型としては、例えば、遺伝的SSI応答マーカーなどの遺伝的パターンをスクリーニングする検査の形態のスクリーニング及び検出、疾患の将来の経過を予測するのを助ける、又は治療に対する患者の応答を示す生化学的SSI応答マーカーのアッセイなどの予後及びセラノスティクス、例えば、処方された治療の有効性及び適切な投薬を評価するためのモニタリング、あるいは、疾患の再発に対する患者のリスクを分析する試験を含む再発、を挙げることができる。
【0117】
本発明による組成物の「有効量」は、治療有効量又は予防有効量を含む。「治療有効量」は、免疫調節不全の低減又は排除などの所望の治療結果を達成するための、必要な投与量及び期間での有効な量を指す。組成物の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する化合物の能力などの因子に応じて変動し得る。投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が組成物のあらゆる毒性又は有害な効果を上回る量であり得る。「予防有効量」は、免疫調節不全の改善などの所望の予防結果を達成するための、必要な投与量及び期間での有効な量を指す。典型的には、予防有効量が治療有効量よりも少なくなり得るように、予防用量ががんの初期段階より前又はその初期段階で対象に使用される。
【0118】
任意の特定の対象について、治療のタイミング及び用量は、個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人の専門的判断に従って、経時的に調整され得る(例えば、タイミングは、毎日、1日おき、毎週、毎月であってもよい)。例えば、皮下又は皮内投与の状況では、本組成物は1日おきに投与され得る。約0.05mlの初期用量を皮下投与し、引き続いて注射部位で十分な皮膚反応が得られるまで(例えば、注射部位での目に見える直径1インチから2インチの赤みの遅延反応)、1日おきに0.01~0.02mlに増加させることができる。この十分な免疫反応が得られると、この投与は維持用量として継続される。維持用量は、注射部位で所望の目に見える皮膚反応(炎症)が得られるように時々調整され得る。投与は、例えば、少なくとも1週間、2週間、2ヶ月、6ヶ月、1、2、3、4、又は5年以上の投与期間であり得る。
【0119】
経口投与量は、例えば、1日4回、毎日又は毎週の範囲であり得る。投与は、例えば、少なくとも1週間、2週間、2ヶ月、6ヶ月、1、2、3、4、又は5年以上の投与期間であり得る。いくつかの実施形態では、本発明は、舌下若しくは吸入によって投与されるか、又は1つ以上の上皮組織に同時に若しくは連続的に投与される(すなわち、皮内又は皮下注射によって皮膚に、吸入によって肺上皮に、経口摂取によって胃腸粘膜に、舌下投与によって口腔粘膜に投与される)組成物を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、上皮組織において免疫応答を引き起こすように投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の上皮投与経路は、1つ以上のさらなる投与経路、例えば、腫瘍内投与、筋肉内投与又は静脈内投与と組み合わされ得る。
【0120】
免疫原性製剤の場合、免疫原有効量の本発明の組成物を、単独で、又は他の化合物、例えば、免疫アジュバントと組み合わせて与えることができる。本組成物は、例えば、免疫原性を増強するためにウシ血清アルブミン又はキーホールリンペットヘモシアニンなどの担体分子に連結された化合物を含み得る。免疫原性組成物は、所望の免疫応答を誘発する材料を含む組成物である。免疫原性組成物は、限定するものではないが、免疫系のメモリーB細胞、メモリーT細胞、好中球、単球又はマクロファージを選択、活性化又は増殖し得る。
【0121】
注射による投与のための死滅した組換え細菌を含む抗原性組成物は、以下のように作製することができる。細菌を適切な培地で増殖させ、生理学的塩溶液で洗浄することができる。次いで、細菌を遠心分離し、生理食塩水に再懸濁し、熱で死滅させることができる。懸濁液を、直接顕微鏡計数によって標準化し、必要な量で混合し、承認された方法で安全性、貯蔵寿命及び無菌性について検査され得る適切な容器に保存することができる。病原性細菌種及び/又はその抗原に加えて、ヒトへの投与に適した死菌ワクチンは、0.4%フェノール防腐剤及び/又は0.9%塩化ナトリウムを含み得る。細菌ワクチンはまた、微量の脳心臓浸出物(牛肉)、ペプトン、酵母抽出物、寒天、ヒツジ血液、デキストロース、リン酸ナトリウム及び/又は他の培地成分を含み得る。
【0122】
選択された実施形態では、薬剤は、少なくとも1週間の投与期間にわたって、1時間~1ヶ月の投与間隔で投与される連続投与で投与部位に投与され得る。任意選択で、本薬剤は皮内又は皮下に投与され得る。任意選択で、本薬剤は、各用量が投与部位で目に見える局所炎症性免疫応答を引き起こすのに有効であるような用量で投与され得る。任意選択で、本薬剤は、投与部位における目に見える局所炎症が1時間から48時間以内に起こるように投与され得る。しかしながら、目に見える局所炎症性免疫応答は、免疫応答が開始されているにもかかわらず、全ての状況において常に存在するとは限らない。免疫応答の開始をモニタリングすることができる他の方法がある。例えば、免疫反応が起こっている対象由来の免疫細胞のプロファイル(及び特徴付けの相対的変化)を、免疫反応が起こっていない対象由来のものと比較することができる。
【0123】
別の態様では、特定の器官又は組織における免疫機能不全について治療されている個体における治療レジメンの有効性をモニタリングする方法が提供される。この方法は、個体が一定期間治療レジメンに供された後に特定の器官又は組織から得られた治療後の免疫試料における免疫応答の特徴を測定することを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、GITの特定の領域の内因性細菌叢のメンバーである細菌に由来するPRRアゴニストを使用して、本発明の免疫原性組成物を製剤化することができる。表3の行には、多数の細菌種が、それぞれの種が内因性細菌叢の一部を形成し得る生物学的領域と共に、列挙されている。例えば、アビトロフィア属種は、典型的には、口の内因性細菌叢のメンバーである。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
細菌などの内因性微生物叢は、隣接伝播又は菌血症の伝播のいずれかによって病理発生のために組織に接近する。好ましい条件下では、内因性生物は病原性になり、局所的に侵入し、隣接する組織及び器官への隣接伝播によって広がる可能性がある。皮膚、口及び結腸の内因性細菌叢は、菌血症の伝播にも適していると理解されている種である。したがって、特定の内因性細菌叢ドメインのメンバーである細菌は、これらの細菌が伝播し得る組織又は器官に感染を引き起こし得る。したがって、本発明の一態様は、内因性細菌が伝播して感染を引き起こし得るGITの領域に局在する症状を有する免疫調節不全を治療するための内因性微生物病原体に由来するPRRアゴニストの使用を含む。表2の列には、内因性フローラのドメインが列挙されている。表4の行には、免疫調節不全が症候的又は病因的に位置し得るGITの領域が列挙されている。したがって、本発明の一態様は、病原体が伝播して感染を引き起こし得るGITの領域に症候的又は病因的に位置する免疫調節不全を治療するための免疫原性組成物を製剤化するための内因性微生物病原体に由来するPRRアゴニストの使用を含む。したがって、代替的な実施形態では、表2の第1列に列挙された領域で症候性の免疫調節不全は、表2の第1行に列挙され、適切な行にX又はチェックマークで示された1つ以上の内因性フローラドメインの内因性フローラのメンバーである微生物哺乳動物病原体のPRRアゴニストシグネチャの明確な部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーを含む免疫原性組成物で治療することができる。
【0131】
【0132】
表1及び表2の組み合わされた情報によれば、表2の列1に示されるGITの特定の領域に現れる免疫調節不全は、表1の対応する細菌種の1つである微生物哺乳動物病原体のPRRアゴニストシグネチャの明確な部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーを含む抗原組成物を用いて治療することができ、したがって、表2の列の見出しは実質的に表1の細菌種で置き換えられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、PRRアゴニストは、外因性細菌病原体に由来し得る。例えば、表5に列挙した生物に由来するPRRアゴニストをPRRアゴニストの人工レパートリーに使用して、表5の関連生物と共に列挙したGITの領域で症候性の免疫調節不全を治療することができる。いくつかの実施形態では、内因性及び外因性微生物種の両方に由来するPRRアゴニストを組み合わせて使用することができる。
【0134】
【0135】
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのPRRアゴニストは、ウイルス性病原体に由来し得る。表6は、ウイルス病原体の例示的なリストを各ウイルス種が病原体であると報告されている組織及び器官部位と共に示す。したがって、本発明の一態様は、表6のウイルスの名称に隣接して特定されるGITの領域において症候性である免疫調節不全を治療するために、指定されたウイルスに由来するPRRアゴニストの免疫原性組成物を利用することを含む。
【0137】
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物に使用するためにPRRアゴニストが由来する病原体は、治療される免疫調節不全が症候性であるGITの領域における急性感染の一般的な原因である病原体であり得る。表7は、この種の細菌及びウイルス性病原体を、それらが一般に感染を引き起こすGITの領域と共に特定する。したがって、選択された実施形態では、表7の第1列で特定されたGITの領域において症候性である免疫調節不全は、表7の第2列に列挙された病原性生物のPRRアゴニストシグネチャの異なる部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーを含む免疫原性組成物を用いて治療することができる。
【0139】
【0140】
ヒトは、本発明の目的のためにGITの病原体を構成する様々な原虫及び蠕虫を含む広範囲の胃腸寄生生物の宿主である(Schafer,T.W.,Skopic,A.Parasites of the small intestine.Curr Gastroenterol Reports 2006;8:312-20;Jernigan,J.,Guerrant,R.L.,Pearson,R.D.Parasitic infections of the small intestine.Gut 1994;35:289-93、Sleisenger&Fordtran’s Gastrointestinal and liver disease.8th ed.2006、Garcia,L.S.Diagnostic medical parasitology.5th ed.2007)。したがって、本発明の組成物は、様々な原虫、例えば、ジアルジア・ランブリア、クリプトスポリジウム・パルバム、クリプトスポリジウム・ホミナス、イソスポラ・ベリ、サルコシスチス種、コクシジアン様体(シクロスポーラ種)、エンテロシトゾウム・ビエヌシ、エンタモエバ・ヒストリチカ、エンタモエバ・ディスパー、大腸アメーバ、エンタモエバ・ハルトマンニ、エンドリマス・ナナ、ヨードアメーバ属butschlii、二核アメーバ、ヒトブラストシスチス、シクロスポーラ、微胞子虫類、クルーズトリパノソーマ、メニール鞭毛虫、腸トリコモナス、大腸バランチジウムなどのPRRアゴニストを含む。同様に、本発明の組成物は、様々な寄生蠕虫、例えば、条虫(タペワーム)、タエニア・サギナタ、タエニア・ソリウム、ディフィロボトリウム種、ヒメノレピス・ナナ、ヒメノレピス・ディミヌタ、瓜実条虫、線虫(回虫)、ヒト回虫、ヒト糞線虫、アメリカ鉤虫、ズビニ鉤虫、イヌ鉤虫、鞭虫、フィリピン毛細線虫、毛様線虫属種、旋毛虫種、アメリカ鉤虫、アニサキスとその関連種、コスタリカ住血線虫、ヒト蟯虫、吸虫類(吸虫類)、肥大吸虫、異形吸虫属種、棘口吸虫属種、肝吸虫、オピストルキス属種、肝蛭属種、メタゴニムス・ヨコガウィー、シストソマ・マンソニ、シストソマ・ジャポニカム、シストソマ・メコギ、シストソマ・インターカラタム、エキノストーマ種、及びパラゴニムス種、などの抗原成分を含み得る。
【0141】
上記に従って、様々な態様では、本発明は、微生物病原体、すなわち、アシダミノコッカス・フェルメンタンス、アシネトバクター属種、アクチノバキュラム属種、アクチノミセス属種、アエロモナス属種、アナエロラブダス・フルコサス、アナエロコッカス・ハイドロゲナリス、アナエロコッカス・ラクトリティカス、アナエロコッカス・プレボティイ、アトポビウム属種、バチルス属種バクテロイデス・カッカ、バクテロイデス・ジスタソニス、バクテロイデス・エゲルシー、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・メルダエ、バクテロイデス・オバツス、バクテロイデス・スプランクニカス、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、バクテロイデス・バルガタス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・カテヌラタ、ビフィドバクテリウム・デンティウム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビロフィラ・ワーズワーシア、バークホルデリア・セパシア、ブチリビブリオ・フィブリルソルベン、カンピロバクター・コンシサス、カンピロバクター・カーブス、カンピロバクター・グラシリス、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・レクトゥス、キャンピロバククー・ショウアエ、カプノサイトファガ・オクラセア、シデカ属種、シトロバクター・フロインディ、シトロバクター・コセリ、クロストリジウム属種、デスルホモナス・ピグラム、ディスゴノナス属種、エイケネラ・コローデンス、エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロバクター・クロアカ)、エンテロバクター・ゲルゴビア、エンテロバクター・サカザキ、エンテロバクター・タヤレラ、エンテロコッカス属種、大腸菌、エシェリヒア・フェルグソニ、エシェリヒア・ヘルマンニ、エシェリヒア・ワニス、ユーバクテリウム属種、ファネゴルディア・マグナス、フソバクテリウム・ゴニディアフォルマンス、フソバクテリウム・モルティフェラム、フソバクテリウム・ナビフォルメ、フソバクテリウム・ネクロフォーラム、フソバクテリウム・ヌクレアタム、フソバクテリウム・ルッシイ、フソバクテリウム・バリウム、ガードネレラ・バギナリス、ゲメラ・モルビルオム、グロビカテラ属種、ハフニア・アルベイ、ヘリコバクター属種、クレブシエラ属種、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・サリバリウス、レクレルシア・アデカルボキシラータ、レミノレラ属種、メガファエラ・エルスデニ、ミツオケラ・マルチアシダス、モビルンクス・クリシウス、モビルンクス・ムリエリス、モレレレラ・ウィッセンサス、モルガネラ・モルガニー、パントエア・アグロメランス、ペディオコッカス属種、ペプトニフィラス・アサッカロリチカス、ペプトストレプトコッカス・アネロバス、ルミノコッカス・プロダクタス、ポルフィロモナス・アサッカロリティカ、プロテウス・ミラビリス、プロテウス・ペンネリ、プロテウス・ブルガリス、プロビデンシア・レトゲリ、プロビデンシア・シュタルティ、緑膿菌、腸内レトタモナス、ルミノコッカス・プロダクトス、セラチア・リケファシエンス、セラチア・マルセセンス、セラチア・オドリフェラ、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ストレプトコッカス・アンジノサス、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・コンステラタス、ストレプトコッカス・インターメディウス、C群+G群連鎖球菌、スクシニビブリオ・デキストリノソルベン、ステレラ属種、ティセレラ・プラエアクタ、ベイロネラ属種、アエロバクター属種、バチルス・アントラシス、バチルス・セレウス、他のバチルス属種、回帰性ボレリア、ブルセラ属種、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・スパッタラム、クロストリジウム・ビフェルメンタンス、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・インドリス、クロストリジウム・マンゲノリ、ウェルシュ菌、クロストリジウム・ソルデルリ、クロストリジウム・スポロゲン、クロストリジウム・サブターミナル、エドワリシエラ・ターダ、フランシセラ・ツラレンシス、リステリア・モノサイトゲネス、ウシ型マイコバクテリウム、結核菌、ペディオコッカス属種、プレシオモナス・シゲロイデス、リケッチア・リケッチア、サルモネラ属種、シゲラ・ボイディイ、シゲラ・ディセンテリアエ、シゲラ・フレクスネリ、シゲラ・ソンネイ、他のスピリルム属種、ストレプトコッカス・エクイ ズーエピデミカス、トロフェリマ・ホイップレイ、ビブリオ・コレラエ、ビブリオ・フルビアリス、ビブリオ・ファーニッシイ、ビブリオ・ホリサ、腸炎ビブリオ、腸炎エルシニア、仮性結核菌、単純ヘルペスウイルス(1及び2)、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、オルトレオウイルス、ロタウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、トロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、水疱性口内炎ウイルス、マチュポウイルス、ジュニンウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、A型肝炎ウイルス、ノロウイルス及び他のカリシウイルス、アストロウイルス、ピコビルナウイルス、又はE型肝炎ウイルス、のPRRアゴニストシグネチャの異なる部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーの製剤による免疫調節不全の治療を含み得る。
【0142】
代替的な態様では、本発明は、一般的な小腸病原体及び大腸病原体である哺乳動物微生物病原体、例えば、大腸菌、クロストリジウム・ディフィシル、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・バルガツス、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、クロストリジウム・パーフリンジェンス、サルモネラ・エンテリティディス、腸炎エルシニア、シゲラ・フレクスネリ、アデノウイルス、アストロウイルス、カリシウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、及びサイトメガロウイルス、のPRRアゴニストシグネチャの明確な部分を再現する哺乳動物PRRアゴニストの人工レパートリーの製剤による免疫調節不全の治療を含み得る。
【0143】
選択された実施形態では、本発明は、患者の以前の生物への曝露を評価するための診断ステップを含む。例えば、その診断ステップは、選択された病原体への曝露の病歴をとること、及び/又は選択された病原体に対する患者の免疫応答を評価することを含み得る。例えば、血清学試験を行って、患者の血清中の選択された病原体に対する抗体を検出することができる。本発明のこの態様に関連して、選択された病原体の抗原決定基は、例えば、患者の血清中のその病原体の抗原決定基に対する抗体の存在によって、その患者が以前にその病原体に対して1回以上曝露されたという診断指標に基づいて、選択された患者の免疫原性組成物での使用のために選択され得る。
【0144】
更に選択された実施形態では、本発明は、選択された免疫原性組成物による治療に対する患者の免疫学的応答を評価するための診断ステップを含む。例えば、その診断ステップは、例えば、それらの免疫原性決定基に対する抗体を検出するための血清学的試験を使用して、その免疫原性組成物の免疫学的決定基に対する患者の免疫応答を評価することを含み得る。本発明のこの態様に関連して、その評価が、その組成物の免疫原性決定因子に対する活発な免疫学的応答があることを示す場合、選択された免疫原性組成物による治療を継続することができ、また、その治療を中止することができ、その評価が、免疫原性組成物の免疫原性決定因子に対する十分に活発な免疫学的応答がないことを示す場合、異なる免疫原性組成物による代替治療を開始することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、微生物病原体への生物の事前曝露を使用して、その後のSSIの有効性を増強することができる。例えば、いくつかの実施形態では、肺炎桿菌への事前曝露は、特に細胞傷害性養子免疫細胞療法と組み合わせて、腫瘍細胞溶解を促進する組織特異的免疫記憶、例えば、先天性免疫記憶を誘導し得る。
【0146】
SSI及び養子細胞治療は、例えば、がん抗原応答を増強するさらなる成分と組み合わせてもよい。がん抗原は、例えば、SSIと混合され得る。次いで、養子免疫細胞療法は、SSIと混合された抗原を標的とすることができる。
【0147】
微生物成分は、微生物画分、例えば、(例えば、グラム陰性菌種由来の)細菌外膜、細菌内膜、(例えばスクロース勾配から得られる)勾配遠心分離のペレット、染色体DNA、莢膜糖タンパク質画分、又は、ペプチドグリカンゴーストなどのペプチドグリカン画分、に由来するPRRリガンドを含むSSIとして製剤化され得る。代替的な実施形態では、特定の細胞画分に関連する経路に関与する遺伝子、特に前述の画分の組成の決定に関与する遺伝子が改変されているSSIにおいて、操作された生物又は組換え生物が使用され得る。
【0148】
細胞画分調製物の場合、例えば、細菌を増殖させ、熱不活性化することができる。細胞画分は、例えば、滅菌生理食塩水+0.4%フェノールに再懸濁し得る。例えば、Methods in Enzymology,Vol125:309-328,1986に記載されているように、2段階スクロース密度勾配を使用して内膜を回収することができる。250mlの細胞の培養後に得られた細菌ペレットを、20%スクロース、10mM Tris-HCl(pH8.0)及び50ug/ml DNase 1に再懸濁することができる。細胞を23℃で10分間インキュベートすることができる。次いで、細胞を氷上に置き、15,000psiのフレンチ圧力セルを通して2回溶解させることができ、未破壊細胞を5,000×gで10分間、4℃で遠心分離することによって除去することができる。上清を2段階スクロース勾配(60%及び70%)上に重層し、SW28揺動バケットローターの中で、23,000rpmで18時間、4℃の温度で遠心分離することができる。内膜は、20%スクロースと60%スクロースとの間の接合部で回収することができる。スクロースを滅菌蒸留水で20%未満に希釈することができ、膜を41,000rpm、4℃の超遠心機で1時間でペレット化することができる。内膜を滅菌水で1回洗浄し、次いで滅菌生理食塩水+0.4%フェノールに再懸濁することができる。粗外膜調製物はまた、60%スクロース勾配工程と70%スクロース勾配工程との間の接合部から回収することができる。
【0149】
例えば、肺炎桿菌の染色体DNAは、Qiagen Blood and Tissuemidiキットを使用して調製することができる。各株由来の15又は40mlのブロス培養物由来の細胞を回収することができる。次いで、全DNAの精製のための製造業者のプロトコルに従うことができる。
【0150】
SSIは、追加の治療成分と同時製剤化又は同時投与され得る。1つのクラスのさらなる治療成分は、自然免疫細胞を活性化又は動員するための分子又は組成物を含み、これらには、以下が含まれる。
-例えば、好中球の産生を相乗的に動員及び促進し、SSI誘導性自然免疫応答を増強する量のGMCSF
-例えば、単球を分化及び活性化し、自然免疫機能の調節において役割を果たすのに有効な量のビタミンD代替の実施形態では、SSIと共に使用されるビタミンDは、例えば、ビタミンD3、D2又はカルシトリオール(1,25ジヒドロキシコレカルシフェロール)のうちの1つ以上であり得る。いくつかの実施形態では、ビタミンD3及び/又はD2は、例えば、局所有効量のカルシトリオールをSSI及びビタミンD投与部位に提供するのに有効な投与量で局所投与され得る。例えば、ビタミンD前駆体(D3及び/又はD2)は、投与部位で局所的な単球及び/又はマクロファージ(CYP27B1を発現する)によってカルシトリオール活性型に変換されると局所的に有効な量で投与され得る。代替の実施形態では、カルシトリオールは、SSI投与部位で局所的に有効な用量で投与されてもよく、これは、例えば、他の全身効果に必要な用量よりも少ない用量であってもよい。
【0151】
同時製剤化又は同時投与のための治療成分のさらなるクラスは、免疫抑制を軽減する以下の分子又は組成物を含む。
-アルギナーゼ阻害剤であるNOHA(N(omega)-ヒドロキシ-nor-L-アルギニン)-アルギナーゼは、免疫活性化に必要なアルギニンを分解する。NOHAは、例えば、遊離アルギニンを利用可能にすることによって免疫抑制を軽減するのに有効な量で使用され得る。
-例えば、好中球分泌プロテアーゼによって媒介される免疫抑制を軽減するのに有効な量のアルファ1アンチトリプシン
【0152】
共製剤化又は共投与のための治療成分のさらなるクラスは、酸化的損傷を防止し、ストレス下で免疫機能を改善する以下の分子又は組成物を含む。
-グルタチオン及び他の抗酸化剤
【0153】
共製剤化又は共投与のための治療成分のさらなるクラスは、先天性細胞傷害性リンパ球のための(例えば、抗がん治療のための)以下の共刺激分子を含む。
-抗がん応答において中心的役割を果たすヒト末梢血Vγ9Vδ2T細胞によって認識される、例えば、固形がん及び液体がんの両方を標的化するNK細胞と協調して働く単球を活性化及び分化させるのに有効な量のホスホ抗原(イソプレノイド分子、例えばイソペンテニルピロリン酸)。例示的な実施形態では、ゾレドロネートとの同時製剤化又は同時投与におけるSSIが、ヒト末梢血Vγ9Vδ2T細胞上の活性化マーカー、例えば、CD25及びCD69を増加させることが見出された。
-I型NKT細胞によって認識される糖脂質分子(合成α-ガラクトシルセラミドなど)
【0154】
SSIは、例えば、全身分布のために投与され得る。マウスモデルにKPN SSIを皮下投与し、シアニン色素(Cy5.5)標識全死滅KPN細胞並びに光学的インビボ背側及び腹側全身イメージングを使用することによって、新しい注射部位において、そして驚くべきことには以前の注射部位において最高濃度の全身分布が見られることが明らかになった。これは、局所投与された製剤が全身分散した後に、炎症部位においてSSIが優先的に送達/保持されることを説明する。24時間後の器官におけるSSIの分布は、心臓及び脾臓と比較して、肺におけるKPNSSIの優先的な蓄積を示した。
【0155】
選択された実施形態では、SSIは、がん組織、例えば、がんの外科的切除部位に直接投与することができる。例えば、SSIは、皮膚中のメラノーマ又は皮膚メラノーマの外科的切除の部位に局所的に塗布することができる。
【0156】
臨床データは、新生物性疾患におけるPD1及びPDL1発現を下方制御するように作用するSSIの有効性を示している。したがって、PD1及びPDL1は、SSI有効性のマーカーとして使用することができる。更に、SSIは、グランザイムA、グランザイムB及びパーフォリンなどの1つ以上のグランザイム又はパーフォリンの発現の増加を媒介するために標的器官又は組織において有効な投与レジメンで製剤化及び投与することができる。
【0157】
様々なPRR受容体を代替SSIの標的として使用することができる。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
したがって、選択された実施形態では、標的組織の微生物病原体に由来する微生物PRRアゴニストを使用して、PRRの選択されたサブセットを標的化するSSI療法が提供される。例えば、少なくとも選択された数の異なるPRRのための微生物アゴニストを含む免疫原性組成物であって、標的組織における自然応答を不正にするために使用するための免疫原性組成物が提供され、ここで、PRRアゴニストは、標的組織において選択的に病原性である微生物の単一種由来の微生物成分である。アゴニストが標的化する別個のPRRの数は、例えば、5から25の数、又はこの整数の範囲内の少なくとも1つの数、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25などであり得る。別個のPRRは、例えば、表8、表9及び/又は表10に記載のPRRから選択され得る。
【0162】
本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般知識に従って、本発明の範囲内で多くの適合化及び修正を行うことができる。そのような修正は、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の態様を既知の均等物に置換することを含む。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。「含む」という単語は、本明細書では「含むが、限定するものではない」という句と実質的に同等のオープンエンド用語として使用され、「備える」という単語は対応する意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a thing」への言及は、2つ以上のそのようなもの(thing)を含む。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。限定するものではないが、本明細書で引用された特許及び特許出願、並びにそのような文献及び刊行物で引用された全ての文献などの任意の優先権書類及び全ての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示され、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、実質的に本明細書に記載され、実施例及び図面を参照して説明されている全ての実施形態及び変形を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、医学的又は外科的治療を伴う工程が除外されている。
【0163】
【実施例】
【0164】
SSIは術後免疫抑制/転移を改善する
以下の実施例に示すように、マウス肺がん及び結腸/肝臓がん転移モデルでは、周術期のSSI処置は転移を著しく減少させ、術後免疫抑制を軽減した。例示的なデータは、複数の免疫経路(MHCII、CD96、CD69、IFNγ)の治療的調節及び複数の重要な自然免疫細胞(NK細胞、単球及び好中球)の動員を示す。
【0165】
SSI処置は術後肺転移を減少させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。肺転移の総数を術後3日に定量した。
図1に示すように、QBKPN SSI治療は、手術の有無にかかわらず、肺転移を実質的に減少させた。
【0166】
QBKPNはNK細胞活性化を増加させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。脾臓におけるNK細胞活性化を、手術の3日後にCD69を発現する細胞によって定量した。
図2に示すように、QBKPN処置は、CD69発現によって評価されるように、NK細胞活性化を増加させる。
【0167】
QBKPNはNK細胞阻害を減少させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。脾臓におけるNK細胞活性化を、手術の3日後にCD96を発現する細胞によって定量した。
図3に示すように、QBKPN処置は、NK細胞チェックポイント阻害剤であるCD96の発現を減少させ、NK細胞阻害の減少、すなわちNK細胞活性化をもたらす。
【0168】
QBKPNは単球/マクロファージ活性化を増加させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。脾臓における単球/マクロファージ活性化を、手術の3日後にMHCIIを発現する細胞によって定量した。
図4に示すように、QBKPN処置は、MHCII発現の増加によって評価されるように、免疫モニタリング及びM1単球/マクロファージ極性化(活性化)を増強する。
【0169】
QBKPNは好中球を増加させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。脾臓からの好中球細胞数(CD11b+Ly6G+)を、手術の3日後に生細胞の%として定量した。
図5に示すように、QBKPN処置は骨髄造血(SSI療法における単球数の増加にも関連する骨髄造血を示す好中球数)を増加させる。
【0170】
QBKPNは免疫細胞動員を増加させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。脾臓単球/マクロファージCCR2受容体発現を手術の3日後に測定した。
図6に示すように、QBKPN処置は、免疫細胞上のCCR2ケモカイン受容体発現を上方制御する。以前のデータは、QBKPNがケモカインの肺特異的放出を増加させ、CCR2を発現する活性化免疫細胞の肺への動員をもたらすことを示している。
【0171】
QBKPNは免疫活性化を増加させる
マウスを、静脈内腫瘍注射の前+/-手術(開腹術及び腎摘出術)と1日後の静脈内腫瘍注射の前に、8日間にわたって2日毎に、QBKPN又はビヒクル(プラセボ)で前処置した。全血をサイトカインカクテルで12時間刺激し、IFNγレベルを測定することによって、術後1日目に免疫活性化を定量した。
図7に示すように、QBKPN処置は、IFNγ放出によって評価されるように免疫活性化を増加させ、術後の免疫抑制を軽減する。
【0172】
QBECOは結腸がんにおける肝臓周術期転移を阻害する
このマウスモデルでは、全ての動物が腫瘍播種の行為として手術を受ける。門脈を介して腫瘍細胞を注射する行為は、著しい解剖学的操作及び手術時間を伴う開腹術を伴い、付随する著しい外科的ストレスを伴う。雌C57Bl/6マウスに、ビヒクル(PBS)又はSSI QBECOのいずれかを、10^6細胞/20uLの濃度で、門脈を介したMC38-GFP腫瘍細胞移植日まで、移植日を除いて、2日毎に4回皮下注射した。腫瘍細胞移植の1日後、マウスは、2日毎に、ビヒクル又はSSIのいずれかを7回投与し続けた。最後の処置注射の2日後にマウスを屠殺した。
【0173】
動物を門脈を介して灌流し、次いで肝臓を切除し、パラフィン包埋の前に48時間10%ホルマリンで固定した。肝臓1つ当たり、10個の切片を、100um間隔で取得した。各切片を4umの厚さで切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を行った。
【0174】
肝臓画像をZeiss AxioScanでスキャンし、FIJI ImageJソフトウェアを使用して処理した。腫瘍負荷量は、各肝臓由来の全切片からの腫瘍面積の和(um^2)を、全切片からの全肝臓面積の和(um^2)で割ったものとして計算し、百分率で表した。
【0175】
統計的有意性は、マン・ホイットニー検定を使用して決定し、アスタリスク*はp<0.05を示す。個々のデータ点をボックスとウィスカのグラフにプロットし、ウィスカは最小点から最大点を示した。
図8は、周術期肝転移のこのモデルにおける腫瘍負荷量(肝臓の%)の減少におけるQBECOの顕著な有効性を示す結果を示している。
【0176】
SSIは周術期NK細胞機能を調節する
雌C57Bl/6マウスに、手術(開腹術及び腎摘出術)の当日を含むその日まで1日おきに、ビヒクル(PBS)又はSSIを皮下に6回注射した。手術の1日後にマウスを屠殺した。
【0177】
免疫調節効果を、以下のようにNKVue(NK細胞によるIFNg産生)によってアッセイした。心臓穿刺を行って全血をヘパリン被覆チューブに回収した。その直後に、血液をPromoca(NKVueアッセイと共に使用される独自のNK刺激混合物)と共に37℃で12時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、上清(血漿)を回収し、ELISAを行うまで-80℃で凍結した(刺激シリーズ)。マウスから取り出した直後に血液を遠心分離することによって、刺激されていない血漿のシリーズも得た。両方のシリーズ由来のNK細胞によるIFNg産生を、NKVue ELISAキットを使用して測定した。
【0178】
免疫調節効果も、以下のようにNK細胞傷害性アッセイでアッセイした。脾臓からEasySepマウスNK細胞単離キット(StemCell)を用いてNK細胞を単離した。標的細胞(Yac-1)をセルトレースバイオレット(CTV)で標識した後、NK細胞と、27:1、9:1、3:1、及び1:1の比(NK細胞対Yac-1)でインキュベートして、NK細胞の細胞傷害能力を調べた。細胞を37℃で4時間培養した。その後、細胞を生存色素(BioLegend製のZombie NIR)で染色し、翌日のBD Fortessaでの分析のために1%PFAで固定した。
【0179】
NK Vueアッセイの結果は、周術期におけるQBSAU治療との関連において、QBSAU治療が、ビヒクルで治療されたマウスの対照群におけるNK細胞麻痺(最小IFN-γ産生)と比較して、術後期間におけるNK細胞機能(IFN-γ産生によって評価)を回復させることを示した。このデータは、他のSSIの治療的作用機序と共通して治療的免疫調節効果を誘発することにおけるQBSAU SSI処置の有効性を反映している。NK細胞傷害性アッセイで証明された免疫調節効果はまた、様々なSSI、QBECO/QBSAU/QBKPNを使用しても同様であった。
【0180】
したがって、このデータは、QBECO及びQBKPNに加えて、QBKPN及びQBECOで実証されたように、例えば、周術期転移を減少させることによって、残存疾患を治療し、それによってがんを治療するのに有効な方法で標的組織における免疫応答を調節する際に同様の周術期治療効果を有する様々なSSIの能力を示している。
【0181】
これまでの前臨床試験によって、NK細胞がSSIの有効性において重要な役割を果たすこと、及びNK細胞の機能性を改善するように、例えば、感染性及び非感染性の脅威(がんなど)に対するNK細胞IFN-γ応答が増加するように、SSIがNK細胞を「訓練」することが明らかになった。このSSIによって誘導されるNK細胞機能の「訓練」は、(例えば、NK Vueアッセイにおける)NK細胞刺激時のIFN-γ産生によって評価されるように、周術期転移のSSIによって誘導される減少において主要な役割を果たすと考えられ、これは、SSI処置を行わない場合は、NK細胞機能が術後期間に「麻痺」するが(NK VueアッセイではIFN-γ産生が最小である)、SSI処置を行う場合は、NK細胞機能が(IFN-γ産生の回復によって評価されるように)治療的に調節され、NK細胞クリアランス/転移病変の改善を可能にするためである。
【0182】
結腸がんにおける肝転移を治療するためのQBECO
これは、原発性結腸がん手術後の肝転移を治療するための例示的なプロトコルであり、診断として循環腫瘍DNA(ctDNA)の使用を含む。原発性結腸がん腫瘍を除去する手術はしばしば治癒的である。しかしながら、一部の患者では、残存疾患が肝臓への転移の形態で進行する。これらの場合のいくつかにおいて、手術は、肝臓に位置する転移性結腸がん腫瘍の切除のための選択肢である。術後免疫抑制のために、そのような患者には、術中又は術後に、任意の残存がん細胞のさらなる転移又は増殖のリスクがあり得る。大腸菌ベースのSSIであるQBECOは、これらの残存がん細胞又は転移を予防又は除去するために、手術前後の周術期に使用することができる。このSSI治療に対する有用な補助は、ctDNAのモニタリングであり、これは、ctDNAが液体生検で検出される場合、具体的には、例えば、肝臓手術の後に、1、2、3週間、又は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12ヶ月間もの長い間それが検出される場合は、残存疾患の存在が示唆されるからである(Cescon,D.W.,Bratman,S.,Chan,S.M.et al.Circulating tumor DNA and liquid biopsy in oncology.Nat Cancer 1,276-290(2020)DOI 10.1038/s4318-020-0043-5、Daniel Andersson,Helena Kristiansson,Mikael Kubista&Anders Stahlberg(2021)Ultrasensitive circulating tumor DNA analysis enables precision medicine:experimental workflow considerations,Expert Review of Molecular Diagnostics,DOI:10.1080/14737159.2021.1889371)。
【0183】
事前の結腸がん手術の有無にかかわらず肝転移を呈する患者は、肝腫瘍を除去する手術の予定日前にQBECOで治療することができる。この治療は、例えば、手術前の1、2、3週間若しくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12ヶ月間において、かつ/又は手術後の1、2、3週間若しくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12ヶ月間において、1日おきであってもよい。この周術期中に、液体生検をctDNAについてモニタリングして、残存疾患の予後指標を提供することができる。
【0184】
周術期SSI療法で使用され得る他のアッセイには、訓練された自然免疫の免疫アッセイ、NKVue(商標)アッセイ、及び代謝アッセイが含まれる。
【0185】
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【国際調査報告】