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特表2024-510531ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 2/10 20060101AFI20240229BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240229BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C04B2/10
C04B24/26 E
C04B24/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559960
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 TR2021051056
(87)【国際公開番号】W WO2022125027
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2020/20183
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220271
【氏名又は名称】ユルディズ テクニク ユニバーシテシ
(71)【出願人】
【識別番号】523220282
【氏名又は名称】ユルディズ テクノロジ トランスファー オフィシ アノニムシルケティ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユズール,ナビ
(72)【発明者】
【氏名】ハザール,アフィフェ ビンナズ
(72)【発明者】
【氏名】ウグリョル,メフメト ファヴジ
(72)【発明者】
【氏名】オクタイ,ディデム
(72)【発明者】
【氏名】ガナー,メフメト ブグラ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD01
(57)【要約】
本発明は、レディインジェクション材料の製造方法であり、単一の生材料を使用して、ナノサイズで天然の水硬性石灰を開発することを目的とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法であって、
a)生材料として、少なくとも70%のCaCOを含んだ泥炭土(粘土状の石灰石)を選択するステップ、
b)400μm未満の粒子サイズを有するように、生材料として選択された泥炭土(粘土状の石灰石)を破砕するステップ、
c)1000~1200℃の温度で、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)をか焼するステップ、
d)前記か焼プロセス後に、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)を再破砕するステップ、
e)前記破砕プロセス後に、か焼された泥炭土のd90の粒子サイズを、200~700nmまで減少させるステップ、
f)減少された粒子サイズを有する前記材料に、空練りプロセスを適用するステップ、
g)空練り後に、前記材料に水を加え、800~1000rpmの回転で3~6分の間、機械的混合プロセスを適用するステップ、
h)得られた前記材料に、超流動化化学添加剤を加えるステップ、
i)超音波ポモジナイザ及び機械的混合を使用することによって、3~6分の間、前記材料を混合するステップ、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップa)において、少なくとも70%のCaCOを含んだ前記泥炭土(粘土状の石灰石)は、SiO、Al、Fe、及びMgOの混合物も含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップe)において、d90の粒子サイズは、好ましくは440~550nmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)において、d90の粒子サイズは486nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップg)において、水/乾燥粉末の重量比率は1.6~1.9である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップh)において、前記材料に加える超流動化化学添加剤は、ナフタレン、またはポリカルボン酸塩基の超流動化剤、で形成されるグループから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の天然の水硬性石灰と比較したときに、より良好な注入性を提供する、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注入方法(グラウティング)は、歴史的建造物を修復するために使用される一般的な方法の1つである。注入塗布が実現されている間、使用される注入材料は、歴史的建造物に存在する固有の材料に適合しなければならず、かつ補修がなされるクラックの中に貫入できなければならない。注入材料の注入性能を向上させるために、注入材料の構成物に存在する材料の粒子サイズを、考慮に入れなければならない。ナノサイズの石灰を使用して製造した注入材料によって、より細いクラックを容易に補修することができる。現行の技術では、歴史的建造物を補強するために必要な、貫入、容積固定、及び抵抗値を提供することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、注入に好適で、より抵抗性のある石灰を製造することが目的である。公知の当技術分野において、ナノサイズの石灰の製造、及び天然の水硬性石灰の製造、に関連した、別個の研究が存在する。本願発明において、単一の生材料を使用することによって、天然の水硬性石灰をナノサイズで作り出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の、構造的特徴及び特性的特徴、ならびに全ての利点は、以下で言及する「発明を実施するための形態」によって、より明白に理解されよう。したがって、この「発明を実施するための形態」を考慮に入れることによって、評価が成されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0005】
この「発明を実施するための形態」において、本願発明の、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法は、本願発明をより理解できるようにするためだけのために、いかなる限定的な影響も形成しない例を参照して説明する。
【0006】
本願発明の方法によって、ナノサイズの水硬性石灰の製造が実現される。本方法の結果、石灰は、注入に好適で、抵抗性のあるものに形成される。特に、生材料として単一の材料を使用することは、本方法の最も重要なステップの1つである。
【0007】
本発明は、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法に関し、この製造方法は、以下のステップを含むことで特徴付けられる:
a)生材料として、少なくとも70%のCaCOを含んだ泥炭土(粘土状の石灰石)を選択するステップ、
b)400μm未満の粒子サイズを有するように、生材料として選択された泥炭土(粘土状の石灰石)を破砕するステップ、
c)1000~1200℃の温度で、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)をか焼するステップ、
d)か焼プロセス後に、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)を再破砕するステップ、
e)破砕プロセス後に、か焼された泥炭土のd90の粒子サイズを、200~700nmまで減少させるステップ、
f)減少された粒子サイズを有する材料に、空練りプロセスを適用するステップ、
g)空練り後に、材料に水を加え、800~1000rpmの回転で3~6分の間、機械的混合プロセスを適用するステップ、
h)得られた材料に、超流動化化学添加剤を加えるステップ、
i)超音波ポモジナイザ及び機械的混合を使用することによって、3~6分の間、材料を混合するステップ。
【0008】
ステップa)において、少なくとも70%のCaCOを含んだ上記の泥炭土(粘土状の石灰石)は、SiO、Al、Fe、及びMgOの混合物も含む。
【0009】
ステップb)において、全ての製品は、400μm未満の粒子サイズを有するように粉砕される。
【0010】
ステップe)において、か焼された泥炭土のd90の粒子サイズは、好ましくは440~550nmである。
【0011】
ステップe)において、か焼された泥炭土のd90の粒子サイズは、好ましくは486nmである。
【0012】
ステップg)において、水/乾燥粉末の重量比率は、1.6~1.9である。このステップにおいて、加えられた水は、流動性、容積固定、及び材料への貫入特性、を提供する。
【0013】
ステップh)において、材料に加える超流動化化学添加剤は、ナフタレン、またはポリカルボン酸塩基の超流動化剤、で形成されるグループから選択される。
【0014】
本願発明の、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法における、最も重要な要素は、生材料の選択である。方法のステップの1つである、粉砕プロセスで使用される材料は、ナノサイズにされる。別の重要なステップは、か焼プロセスである。か焼は、石灰製造における主なプロセスである。所望のサイズにされた生材料は、公知の方法によって好適な温度でか焼され、天然の水硬性石灰の製造が実現される。
【0015】
本方法の最も重要なステップの1つである、注入材料を準備するステップにおいて、注入材料として満足しなければならない流動性、容積固定、及び貫入特性についての限定条件は、選択された水量、化学添加剤の比率、及び適用される混合手順、によって提供される。
【0016】
本願発明の、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料の製造方法は、現行の技術で形成されている不利点を排除するために開発されている。
【0017】
別の視点から、本発明は、本願発明の製造方法によって得られた、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料に関する。
【0018】
本願発明の方法によって製造されたレディインジェクション材料は、公知の方法によって得られた材料とは異なる。なぜなら、本願発明のレディインジェクション材料は、より高い水理効果を有するために、より高い抵抗性を有するからである。
【0019】
したがって、本発明の別の要素は、ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料であり、このレディインジェクション材料は、以下のステップを含んだ方法によって得られる:
a)生材料として、少なくとも70%のCaCOを含んだ泥炭土(粘土状の石灰石)を選択するステップ、
b)400μm未満の粒子サイズを有するように、生材料として選択された泥炭土(粘土状の石灰石)を破砕するステップ、
c)1000~1200℃の温度で、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)をか焼するステップ、
d)か焼プロセス後に、生材料である泥炭土(粘土状の石灰石)を再破砕するステップ、
e)破砕プロセス後に、か焼された泥炭土のd90の粒子サイズを、200~700nmまで減少させるステップ、
f)減少された粒子サイズを有する材料に、空練りプロセスを適用するステップ、
g)空練り後に、材料に水を加え、800~1000rpmの回転で3~6分の間、機械的混合プロセスを提供するステップ、
h)得られた材料に、超流動化化学添加剤を加えるステップ、
i)超音波ポモジナイザ及び機械的混合を使用することによって、3~6分の間、材料を混合するステップ。
【0020】
当業者は、本発明で提供された新規性を、類似の方法によって提供することができ、及び/または、本方法を、関連技術分野で使用される類似の目的を伴って、他の分野にも適用することができることは明白である。したがってそのような方法は、新規性の基準、特に公知の技術を上回る基準を満たさないことも明白である。
【0021】
次に、本発明を、範囲に関するいかなる限定も実現することなく、以下に示す例を用いて説明する。
【実施例
【0022】
[実施例1]粉砕プロセス後にか焼された泥炭土のふるい分け結果
ふるい分け試験が、本発明に従ってか焼された泥炭土に対して成された。分析結果は、表1に記載される。
【0023】
粉砕プロセス後にか焼された泥炭土のふるい分け結果
【0024】
【表1】
【0025】
上述の表は、本願発明の製品に関するふるい分け試験の結果を含む。粉砕されたサンプルを、様々なサイズ範囲を伴うふるいを通過させ、通過する材料のパーセントが計算された。
【0026】
表でも判るように、か焼された泥炭土の粒子サイズは、粉砕プロセス後に、200~700nmの分布を示す。
【0027】
表で示されるように、材料の0.82%のみが、204nmの空隙を有するふるいを通過した。
【0028】
ふるいの空隙が687nmであるとき、全ての材料がふるいを通過した。
【0029】
粉砕された、か焼された泥炭土の概ね90%は、486nmのサイズのふるいを通過した。
【0030】
[実施例2]ナノ水硬性石灰を含んだレディインジェクション材料のフロー特性の判断
成された実験及び得られた結果は、表2に記載される。
【0031】
本願発明のナノ石灰材料のフロー特性
【0032】
【表2】

1.開始漏斗:フロー時間を測定することによって、流体材料の粘度測定に使用される。漏斗を通して流体材料が通過する時間が計算される。本願発明の製品は、20秒以内に漏斗を通過した。このように、規格で45秒未満と記載された制限が提供されている。
2.フローコーン:泥及びモルタルなど、流体材料のフロー粘度を測定するために使用される。本願発明の製品は、8秒以内にコーンから排出された。このように、規格で25秒未満と記載された制限が提供されている。
3.発汗:発汗試験における材料の適用ポイントにおいて、24時間観察した。上記の材料の混合物に存在する水は、24時間で材料から分離され、適用領域において発汗事象を形成した。この分離は、規格に従い5%未満でなければならない。本願発明の製品において、発汗比率は4.5%と観測された。
4.砂柱:注入材料の、クラックの中への貫入を測定するために使用される。この材料は、異なる粒子サイズを有する砂及び小石が存在する柱に貫入された。この貫入中、材料は、柱の如何なる箇所にも集積されないことが想定され、この材料は特定の貫入時間を有する。この貫入時間及び集積量は、50秒未満及び20ml未満であると、規格に定義されている。本願発明の製品は6秒の貫入時間で、集積は確認できなかった。したがって、本願発明の製品は、最も細いクラックの中でも貫入できることが確認された。
【0033】
成された試験の結果を検討すると、得られた製品は、規格に示された下限値を下回ること、及び砂柱試験で優れた性能を示し、本発明の目的に従った方法で高い貫入性を有する材料が得られたこと、が判る。
【国際調査報告】