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特表2024-510542ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240301BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240301BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240301BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20240301BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6816 Z
G01N33/50 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544465
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2022078709
(87)【国際公開番号】W WO2022184073
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110232095.X
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110332750.9
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110762353.5
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523278423
【氏名又は名称】北京大学第一医院
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊 耕▲硯▼
(72)【発明者】
【氏名】何 世明
(72)【発明者】
【氏名】何 志嵩
(72)【発明者】
【氏名】周 利群
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045DA13
2G045DA14
2G045FB02
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ08
4B063QQ12
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は腫瘍分類検出の分野に関し、具体的には、ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用を開示し、前記ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせは、遺伝子セットAと遺伝子断片セットBからなり、前記ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせは、北京大学第一医院の実際の腎臓癌症例のハイスループットシーケンシングデータから、特定のペアリング・クラスタリング分析により得られ、真実のデータに由来し、腎臓癌、汎癌の悪性度分類及び予後予測に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子セットAと遺伝子断片セットBからなり、
前記遺伝子セットAは、ASAH1、ASXL1、BCOR、BRAF、CALML6、CCDC136、CIDEC、COX18、CSF1R、CYP3A5、DEK、DNMT3A、EGR1、FAM71E2、FGFR1、FKBP7、FLT1、FLT3、FLT4、GLIS1、IDH2、IFITM3、IMMT、KDR、KIT、KMT2A、KNOP1、KRT76、KRT9、KRTAP10-10、KRTAP10-8、MAF、MECOM、MFRP、MLLT3、MNS1、MRTFA、MTOR、MYH11、NF1、NUP214、PDGFRA、PDGFRB、PML、PRB2、PROSER3、RAF1、RARA、RBM15、RET、REXO1、RPN1、RUNX1T1、SCYL1、SLC16A6、SRC、STAG2、TCEAL5、TET2、TMEM82、TP53、TRIM26、U2AF1、U2AF2、UGT1A1、USP35、VEGFA、WBP2NL、WDR44、ZNF20、ZNF700及びZRSR2のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr2:3679501-3700249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr4:1189501-1230249、chr4:8579501-8590249、chr4:9319501-9330249、chr5:150899501-150940249、chr6:147819501-147840249、chr6:157089501-157110249、chr6:164889501-164900249、chr6:20399501-20410249、chr6:26519501-26530249、chr6:71659501-71670249、chr6:73329501-73340249、chr7:100539501-100560249、chr8:1939501-1960249、chr8:21999501-22070249、chr8:29189501-29200249、chr9:91789501-91800249、chr10:99419501-99440249、chr11:17739501-17760249、chr11:63329501-63350249、chr12:169501-250249、chr12:54329501-54350249、chr12:63179501-63550249、chr12:7269501-7310249、chr13:114519501-114530249、chr15:73649501-73670249、chr15:74209501-74220249、chr15:78409501-78430249、chr15:83859501-83880249、chr18:8809501-8820249、chr19:24059501-24070249、chr19:4229501-4250249、chr19:46879501-46900249、chr20:22559501-22570249、chr20:62189501-62200249、chr21:45949501-46110249、chr22:19499501-19760249、chr22:36649501-38700249及びchr22:46309501-47080249のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBにおける遺伝子断片の位置がGRCh37を基準として注釈されることを特徴とするヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ。
【請求項2】
前記遺伝子断片セットBに含まれる遺伝子は具体的には以下の表に示され、
表1 遺伝子断片セットB

任意選択的には、前記遺伝子セットAはASAH1、CCDC136、FAM71E2、IFITM3、KRT9、PRB2、PROSER3、TCEAL5、U2AF2、USP35、WDR44及びZNF700の少なくとも1つを含み、かつ
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr5:150899501-150940249、chr7:100539501-100560249及びchr13:114519501-114530249の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遺伝子組み合わせの、ヒト腫瘍分類検出用製品の製造における使用。
【請求項4】
前記腫瘍は泌尿器系腫瘍又は汎癌であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は泌尿器系悪性腫瘍であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は腎臓癌であり、
任意選択的には、前記汎癌はTCGA汎癌データ中の癌種であることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記腫瘍分類は腫瘍悪性度の判断及び腫瘍予後の予測であり、臨床診療の指導に用いられ、
任意選択的には、前記腫瘍分類は高リスク群と低リスク群に分けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記製品は前記遺伝子組み合わせにおける遺伝子の遺伝子タイプを検出するためのプライマー、プローブ、試薬、キッド、遺伝子チップ又は検出システムを含むことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記製品は遺伝子セットA及び遺伝子断片セットBにおける遺伝子のエクソン及び関連するイントロン領域を検出するものであることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記腫瘍分類方法は、
前記癌細胞組織中の遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及び遺伝子コピー数突然変異を評価し、癌細胞組織中の遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価するステップS1と、
ステップS1の評価結果に基づいて、癌症悪性度を判断し腫瘍予後を予測するステップS2と、を含むことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記遺伝子突然変異は塩基置換突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異及び/又は融合突然変異を含み、前記遺伝子コピー数突然変異は遺伝子コピー数増加及び/又は遺伝子コピー数減少を含むことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ステップS1では、前記腫瘍組織と正常組織のシーケンシングデータを比較することにより、前記遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及びコピー数突然変異を評価するとともに、前記遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価することを特徴とする請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記ステップS2では、遺伝子セットAにおける少なくとも1つの遺伝子に遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じたか、又は遺伝子断片セットBにおける少なくとも1つの断片に遺伝子コピー数増加が生じた場合、前記腫瘍分類は高リスク群であり、その反対、すなわち、遺伝子セットAにおいて遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットBにおいていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、前記腫瘍分類は低リスク群であることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記遺伝子組み合わせから任意の遺伝子断片を選択して組み合わせ、新しい遺伝子組み合わせとし、同じ腫瘍分類方法によって腫瘍悪性度を分類し腫瘍予後を予測し、臨床診療を指導することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2021年3月2日に中国特許庁に提出された、出願番号が202110232095X、発明の名称が「ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本願に組み込まれ、本願はまた、2021年3月26日に中国特許庁に提出された、出願番号が2021103327509、発明の名称が「ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本願に組み込まれ、本願はまた、2021年7月6日に中国特許庁に提出された、出願番号が2021107623535、発明の名称が「ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は腫瘍分類検出の分野に関し、具体的には、ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
腎臓癌はよく見られる泌尿器系の悪性腫瘍である。近年、腎臓癌の発病率は年々上昇し、成人悪性腫瘍の2%~3%を占め、しかも毎年2.5%前後の速度で上昇している。腎臓癌は早期には典型的な臨床所見がなく、臨床症状のある腎臓癌はすでに末期にあることが多く、腎臓癌の治療は手術を基礎とする総合治療であり、治療には、医者が疾患の進展と予後を判断し、更に治療計画を決定することを支援するために、腎臓癌組織に対して悪性程度の分類を行う必要があり、Fuhrman核分類は現在最も広く応用されている腎臓癌の悪性程度の分類システムである。
【0004】
Fuhrman核分類システムは1982年に提案され、腫瘍の悪性度及び危険度の分類評価に用いられる。Fuhrman分類基準によると、腎臓癌はG1(高分化)、G2(中・高分化)、G3(中分化)、G4(低分化又は未分化)の4レベルに分類され、レベルが高くなるほど悪性度が高くなり、治療後の再発・転移のリスクも高くなる。しかし、Fuhrman分類システムは純粋な病理画像分類システムであり、以下の欠陥が存在する。1、病理医者個人の経験による判断が必要であり、一定の主観性があり、病理医者によって大きな差が存在する可能性がある。2、G2級病理画像とG3級病理画像の区別度は小さく、両者を分類するのは難しい。以上の欠陥は疾患の悪性程度の分類が不正確で、疾患の進展と予後の判断に誤差が発生し、疾患の診療に影響を与える。
【0005】
第二世代シーケンシング技術の成熟と普及に伴い、遺伝子検査を利用して疾患を診断する方法は広く注目され、例えば全エクソンシーケンシングにより、マーカー遺伝子の突然変異とコピー数の変異を検出することで、腫瘍の診断や腫瘍の進展を判断する。この方法は伝統的な腫瘍分類に存在する主観的影響と高い分類難度の欠点を克服し、腫瘍の早期診断、治療と予後に重大な意義がある。しかしながら、既存の第二世代シーケンシング技術に基づいて、腎臓癌の悪性度の分類に用いられる遺伝子の組み合わせ及び方法はすべて外部の検証が不足し、悪性度の分類が信頼できず、臨床で応用できないため、特定の遺伝子検査に基づいた腫瘍悪性度及び危険度の新しい分類システムを早急に解決することが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明が解決しようとする技術的課題は、腎臓癌の悪性度分類、腎臓癌患者の予後予測に用いることができる腎臓癌分類用の遺伝子組み合わせ及びその使用を提供することであり、この目的を達成させるために、本発明は、全エクソンシーケンシング技術を用いて、特にスクリーニング、グループ化された北京大学第一医院からの腎臓癌患者データをスクリーニングし、最終的に、腎臓癌の悪性度の分類及び予後予測に用いられる本遺伝子組み合わせを得るものであり、より正確な腎臓癌の悪性度情報及び疾患予測情報を臨床医及び患者に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、本発明は、
遺伝子セットAと遺伝子断片セットBからなり、
前記遺伝子セットAは、ASAH1、ASXL1、BCOR、BRAF、CALML6、CCDC136、CIDEC、COX18、 CSF1R、CYP3A5、DEK、DNMT3A、EGR1、FAM71E2、FGFR1、FKBP7、FLT1、FLT3、FLT4、GLIS1、IDH2、IFITM3、IMMT、KDR、KIT、KMT2A、KNOP1、KRT76、KRT9、KRTAP10-10、KRTAP10-8、MAF、MECOM、MFRP、MLLT3、MNS1、MRTFA、MTOR、MYH11、NF1、NUP214、PDGFRA、PDGFRB、PML、PRB2、PROSER3、RAF1、RARA、RBM15、RET、REXO1、RPN1、RUNX1T1、SCYL1、SLC16A6、SRC、STAG2、TCEAL5、TET2、TMEM82、TP53、TRIM26、U2AF1、U2AF2、UGT1A1、USP35、VEGFA、WBP2NL、WDR44、ZNF20、ZNF700及びZRSR2のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr2:3679501-3700249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr4:1189501-1230249、chr4:8579501-8590249、chr4:9319501-9330249、chr5:150899501-150940249、chr6:147819501-147840249、chr6:157089501-157110249、chr6:164889501-164900249、chr6:20399501-20410249、chr6:26519501-26530249、chr6:71659501-71670249、chr6:73329501-73340249、chr7:100539501-100560249、chr8:1939501-1960249、chr8:21999501-22070249、chr8:29189501-29200249、chr9:91789501-91800249、chr10:99419501-99440249、chr11:17739501-17760249、chr11:63329501-63350249、chr12:169501-250249、chr12:54329501-54350249、chr12:63179501-63550249、chr12:7269501-7310249、chr13:114519501-114530249、chr15:73649501-73670249、chr15:74209501-74220249、chr15:78409501-78430249、chr15:83859501-83880249、chr18:8809501-8820249、chr19:24059501-24070249、chr19:4229501-4250249、chr19:46879501-46900249、chr20:22559501-22570249、chr20:62189501-62200249、chr21:45949501-46110249、chr22:19499501-19760249、chr22:36649501-38700249及びchr22:46309501-47080249のうちの少なくとも1つを含み、前記遺伝子断片セットBにおける遺伝子断片の位置がGRCh37を基準として注釈され、GRCh38又は将来登場する新しいヒト参照ゲノムでは、その数は変化する可能性があるが、示す目的断片の位置と検出に利用可能な遺伝子は変化しないヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせを提供する。
【0008】
任意選択的には、前記遺伝子断片セットBに含まれる遺伝子は具体的には以下の表に示され、
表1 遺伝子断片セットB

任意選択的には、前記遺伝子セットAは、ASAH1、CCDC136、FAM71E2、IFITM3、KRT9、PRB2、PROSER3、TCEAL5、U2AF2、USP35、WDR44及びZNF700の少なくとも1つを含み、
任意選択的には、前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr5:150899501-150940249、chr7:100539501-100560249及びchr13:114519501-114530249の少なくとも1つを含む。
【0009】
本発明の別の態様によれば、上記遺伝子組み合わせの、ヒト腫瘍分類検出用製品の製造における使用を提供する。
【0010】
任意選択的には、前記腫瘍は泌尿器系腫瘍又は汎癌であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は泌尿器系悪性腫瘍であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は腎臓癌であり、
任意選択的には、前記汎癌はTCGA汎癌データ中の癌種である。
【0011】
任意選択的には、前記腫瘍分類は腫瘍悪性度の判断及び腫瘍予後の予測であり、
任意選択的には、前記腫瘍分類は高リスク群と低リスク群に分けられる。
【0012】
任意選択的には、前記製品は前記遺伝子組み合わせにおける遺伝子の遺伝子タイプを検出するためのプライマー、プローブ、試薬、キッド、遺伝子チップ又は検出システムを含む。
【0013】
任意選択的には、前記製品は遺伝子セットA及び遺伝子断片セットBにおける遺伝子のエクソン及び関連するイントロン領域を検出するものである。
【0014】
本発明の別の態様によれば、
前記癌細胞組織中の遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及び遺伝子コピー数突然変異を評価し、癌細胞組織中の遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価するステップS1と、
ステップS1の評価結果に基づいて、癌症悪性度を判断して腫瘍予後を予測するステップS2と、を含む上記腫瘍の腫瘍分類方法を提供する。
【0015】
任意選択的には、前記遺伝子突然変異は塩基置換突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異及び/又は融合突然変異を含み、前記遺伝子コピー数突然変異は遺伝子コピー数増加及び/又は遺伝子コピー数減少を含む。
【0016】
任意選択的には、前記ステップS1では、前記腫瘍組織と正常組織のシーケンシングデータを比較することにより、前記遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及びコピー数突然変異を評価するとともに、前記遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価する。
【0017】
任意選択的には、前記ステップS2では、遺伝子セットAにおける少なくとも1つの遺伝子に遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じたか、又は遺伝子断片セットBにおける少なくとも1つの断片に遺伝子コピー数増加が生じた場合、前記腫瘍分類は高リスク群であり、その反対、すなわち、遺伝子セットAにおいて遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットBにおいていずれかの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、前記腫瘍分類は低リスク群である。
【0018】
任意選択的には、前記遺伝子組み合わせから任意の遺伝子断片を選択して組み合わせ、新しい遺伝子組み合わせとし、同じ腫瘍分類方法によって腫瘍悪性度を分類し腫瘍予後を予測し、臨床診療を指導する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の技術案は以下の利点がある。
1.本発明の前記検出遺伝子組み合わせは、北京大学第一医院の実際の腎臓癌症例のハイスループットシーケンシングデータから、特定のペアリング・クラスタリング分析により得られ、実際のデータに由来するので、信頼性や確実度がより高く、腎臓癌、汎癌の悪性度を正確に分類して予後を予測することができる。
2.本発明の前記遺伝子組み合わせに含まれる遺伝子組み合わせが多様性を有するので、これらから複数の遺伝子組み合わせを好適に選択して腎臓癌、汎癌の悪性度の判断に用いることができ、様々な臨床状況に対応できる。
3.全エクソンシーケンシングと比べ、本発明は、特定の遺伝子及びDNA断片について標的シーケンシング分析を行うので、同じコストでは、シーケンシングの深さ及び精度を明らかに向上させることができ、同じシーケンシングの深さ及び精度では、コストを大幅に減少させ、汎用性が高い。
4.従来のFuhrman病理分類システムと比べ、本発明は病理医者の主観的な判断に全く影響を与えず、客観性及び信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の特定の実施形態又は従来技術の技術案をより明確にするために、以下、特定の実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者でれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0021】
図1】本発明の実験例1において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍の特異的生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図2】本発明の実験例1において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍無増悪生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図3】本発明の実験例1において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、総生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図4】本発明の実験例2において遺伝子組み合わせ1を用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍の特異的生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図5】本発明の実験例2において本発明の遺伝子組み合わせ1を用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍無増悪生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図6】本発明の実験例2において本発明の遺伝子組み合わせ1を用いて腎臓癌悪性度の分類基準による分類を行った後、総生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図7】本発明の実験例3において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍の特異的生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図8】本発明の実験例3において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍無増悪生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図9】本発明の実験例3において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍無病生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図10】本発明の実験例3において本発明の実施例1における遺伝子組み合わせを用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍総生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図11】本発明の実験例4において本発明の実験例2における遺伝子組み合わせ1を用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍の特異的生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図12】本発明の実験例4において本発明の実験例2における遺伝子組み合わせ1を用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍無増悪生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
図13】本発明の実験例4において本発明の実験例2における遺伝子組み合わせ1を用いて汎癌悪性度の分類基準による分類を行った後、腫瘍総生存を主要な終点としたKaplan-Meier生存分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記実施例は本発明をさらに理解するためのものであり、前記好適な実施形態に制限されず、本発明の内容及び保護範囲を制限するものではなく、本発明の啓示の下で、又は本発明を他の従来技術の特徴と組み合わせて得た、本発明と同一又は類似のいかなる製品も本発明の特許範囲に含まれる。
【0023】
実施例において具体的な実験ステップ又は条件が明示されていない場合、本分野の文献に記載の一般的な実験ステップの操作又は条件に従って実施すればよい。使用する試薬又は器具では、メーカが明示されていない場合、市販品として入手する一般的な試薬製品としてもよい。
【0024】
実施例1 ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ(Panel)
発明者らは主として北京大学第一医院の腎臓癌のエクソンシーケンシングハイスループットデータベースを用いてスクリーニングを行うことで、ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ(panel)を決定し、この遺伝子組み合わせは遺伝子セットAと遺伝子断片セットBを含む。
【0025】
前記遺伝子セットAは、ASAH1、ASXL1、BCOR、BRAF、CALML6、CCDC136、CIDEC、COX18、CSF1R、CYP3A5、DEK、DNMT3A、EGR1、FAM71E2、FGFR1、FKBP7、FLT1、FLT3、FLT4、GLIS1、IDH2、IFITM3、IMMT、KDR、KIT、KMT2A、KNOP1、KRT76、KRT9、KRTAP10-10、KRTAP10-8、MAF、MECOM、MFRP、MLLT3、MNS1、MRTFA、MTOR、MYH11、NF1、NUP214、PDGFRA、PDGFRB、PML、PRB2、PROSER3、RAF1、RARA、RBM15、RET、REXO1、RPN1、 RUNX1T1、SCYL1、SLC16A6、SRC、STAG2、TCEAL5、TET2、TMEM82、TP53、TRIM26、U2AF1、U2AF2、UGT1A1、USP35、VEGFA、WBP2NL、WDR44、ZNF20、ZNF700及びZRSR2のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr2:3679501-3700249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr4:1189501-1230249、chr4:8579501-8590249、chr4:9319501-9330249、chr5:150899501-150940249、chr6:147819501-147840249、chr6:157089501-157110249、chr6:164889501-164900249、chr6:20399501-20410249、chr6:26519501-26530249、chr6:71659501-71670249、chr6:73329501-73340249、chr7:100539501-100560249、chr8:1939501-1960249、chr8:21999501-22070249、chr8:29189501-29200249、chr9:91789501-91800249、chr10:99419501-99440249、chr11:17739501-17760249、chr11:63329501-63350249、chr12:169501-250249、chr12:54329501-54350249、chr12:63179501-63550249、chr12:7269501-7310249、chr13:114519501-114530249、chr15:73649501-73670249、chr15:74209501-74220249、chr15:78409501-78430249、chr15:83859501-83880249、chr18:8809501-8820249、chr19:24059501-24070249、chr19:4229501-4250249、chr19:46879501-46900249、chr20:22559501-22570249、chr20:62189501-62200249、chr21:45949501-46110249、chr22:19499501-19760249、chr22:36649501-38700249及びchr22:46309501-47080249のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBにおける遺伝子断片の位置がGRCh37を基準として注釈され、GRCh38又は将来登場する新しいヒト参照ゲノムでは、その数は変化する可能性があるが、示す目的断片の位置と検出に利用可能な遺伝子は変化しない。
【0026】
任意選択的には、前記遺伝子断片セットBに含まれる遺伝子は具体的には以下の表に示される。
表1 遺伝子断片セットB

【0027】
実施例2 ヒト腎臓癌の悪性度分類及び予後予測のための方法
本実施例は、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)を用いてヒト腎臓癌の悪性度分類及び予後予測を行うことを含むヒト腫瘍の分類検出方法を提供し、そのステップは具体的には以下のとおりである。
【0028】
(1)腎臓癌組織及び健常対照組織の標本を準備し、前記腎臓癌組織標本は腎臓癌細胞系、新鮮な腎臓癌標本、凍結腎臓癌標本又はパラフィン包埋腎臓癌標本であってもよく、健常対照組織は公知の健常と認められる人の組織であってもよく、腎臓癌患者の癌傍組織であってもよい。本実施例では、パラフィン包埋腎臓癌標本を選択するが、健常対照組織には癌傍正常組織が用いられ、常法によりDNAを抽出し、常法によりライブラリーを構築し、最後に、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)を用いて標的ハイスループットシーケンシングを行い、腎臓癌組織と健常組織とのシーケンシングデータを比較し、前記腎臓癌組織の遺伝子組み合わせにおける遺伝子セットAの各遺伝子の遺伝子突然変異(Mutation)及びコピー数突然変異(CNV)、及び遺伝子断片セットBの各遺伝子のコピー数突然変異(CNV)を取得する。
【0029】
前記遺伝子突然変異は塩基置換突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異及び融合突然変異を含み、前記遺伝子コピー数突然変異は遺伝子コピー数増加及び遺伝子コピー数減少を含む。
【0030】
(2)ステップ(1)で得られた、腎臓癌組織の遺伝子組み合わせにおける各遺伝子の突然変異及び/又は突然変異に基づいて判断を行う。
【0031】
遺伝子セットAにおける少なくとも1つの遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異、又は遺伝子断片セットBにおける少なくとも1つの領域の遺伝子コピー数増加が存在する場合、前記腎臓癌患者は高リスク群であり、腫瘍予後が悪く、その反対、遺伝子セットAにおいて遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットBにおいていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、前記腎臓癌患者は低リスク群であり、腫瘍予後がよい。
【0032】
実施例3
実施例2の置換可能な実施形態として、本発明では、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)における遺伝子を選択して再び組み合わせて、新しい遺伝子組み合わせとすることが可能であり、評定基準としては、遺伝子セットAから選択される遺伝子であれば、そのうちの少なくとも1つの遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異は、前記腎臓癌患者は高リスク群であることを示し、遺伝子断片セットBから選択される遺伝子断片であれば、そのうちの少なくとも1つの領域に遺伝子コピー数増加があり、前記腎臓癌患者は高リスク群であることが示され、その反対、遺伝子セットAから選択された遺伝子において遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じないとともに、遺伝子断片セットBから選択された断片にコピー数増加が生じない場合、前記腎臓癌患者は低リスク群である。
【0033】
実施例4 ヒト汎癌(Pancancer)の悪性度分類及び予後予測のための方法
本実施例は、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)を用いてヒト汎癌(Pancancer)の悪性度分類及び予後予測を行うことを含むヒト腫瘍の分類検出方法を提供し、そのステップは具体的には以下のとおりである。
【0034】
(1)汎癌(ここでの汎癌はTCGA汎癌データ中の全ての癌種として定義され、副腎癌、尿路上皮癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、結腸癌、リンパ腫、食道癌、膠芽細胞腫、頭頸部扁平上皮癌、腎嫌色細胞癌、腎透明細胞癌、腎乳頭細胞癌、白血病、脳神経膠腫、肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、中皮腫、卵巣漿液性嚢胞腺癌、膵臓癌、褐色細胞腫及び副神経節腫、前立腺癌、直腸癌、肉腫、皮膚黒色腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、胸腺癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、ぶどう膜黒色腫を含み、本実施例に記載の汎癌はこれと同様に定義されるので、重複する説明は省略される)組織及び健常対照組織の標本を準備し、前記汎癌組織標本は汎癌細胞系、新鮮な汎癌標本、凍結汎癌標本又はパラフィン包埋汎癌標本であってもよく、健常対照組織は公知の健常と認められる人の組織であってもよく、汎癌患者自身の癌傍組織であってもよい。本実施例では、パラフィン包埋汎癌標本を選択するが、健常対照組織には癌傍正常組織が用いられ、常法によりDNAを抽出し、常法によりライブラリーを構築し、最後に、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)を用いて標的ハイスループットシーケンシングを行い、汎癌組織と健常組織とのシーケンシングデータを比較し、前記汎癌組織の遺伝子組み合わせにおける遺伝子セットAの各遺伝子の遺伝子突然変異(Mutation)及びコピー数突然変異(CNV)、及び遺伝子断片セットBにおける各遺伝子のコピー数突然変異(CNV)を取得する。
【0035】
前記遺伝子突然変異は塩基置換突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異及び融合突然変異を含み、前記遺伝子コピー数突然変異は遺伝子コピー数増加及び遺伝子コピー数減少を含む。
【0036】
(2)ステップ(1)で得られた、汎癌組織の遺伝子組み合わせにおける各遺伝子の突然変異及び/又は突然変異に基づいて判断を行う。
【0037】
遺伝子セットAにおける少なくとも1つ遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異、又は遺伝子断片セットBにおける少なくとも1つの領域遺伝子コピー数増加が存在する場合、前記汎癌患者は高リスク群であり、腫瘍予後が悪く、その反対、遺伝子セットAにおいて遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットBにおいていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、前記汎癌患者は低リスク群であり、腫瘍予後がよい。
【0038】
実施例5
実施例4の置換可能な実施形態として、本発明では、実施例1の遺伝子組み合わせ(panel)における遺伝子を選択して再び組み合わせて、新しい遺伝子組み合わせとすることが可能であり、評定基準としては、遺伝子セットAから選択される遺伝子であれば、そのうちの少なくとも1つの遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異は、前記汎癌患者は高リスク群であることを示し、遺伝子断片セットBから選択される遺伝子断片であれば、そのうちの少なくとも1つの領域に遺伝子コピー数増加があり、前記汎癌患者は高リスク群であることを示し、その反対、遺伝子セットAから選択された遺伝子において遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じないとともに、遺伝子断片セットBから選択された断片にコピー数増加が生じない場合、前記汎癌患者は低リスク群である。
【0039】
実験例1 ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及び検出方法の、ヒト腎臓透明細胞癌の悪性度分類及び予後予測の評価における実行可能性の検証
透明細胞癌は腎臓癌の最も一般的な病理タイプであり、腎臓癌全体の70%以上を占めており、TCGA(PanCancer Atlas)腎臓透明細胞癌データベースは世界的に認められている腎臓癌データベースであり、腎臓癌の悪性度分類及び予後予測における本発明の実行可能性及び信頼性を評価するために使用することができる。
【0040】
TCGA(PanCancer Atlas)腎透明細胞癌データには合計512例の患者データがあり、そのうち354名の患者は本発明の適用条件に適した完全な遺伝子突然変異とコピー数変異データを有している。
【0041】
実施例2に記載の方法で実施し、本実験例では、実施例1の遺伝子セットAの全遺伝子と、遺伝子セットBの全断片を選択して実施することが可能であり、遺伝子セットBにおいて実際に検出に使用された遺伝子は表2に示される。上記の患者354例を悪性度に応じて分類し、高リスク群と低リスク群にスムーズに分け、そのうち高リスク群が46.6%を占め、低リスク群が53.4%を占め、Kaplan-Meier生存分析により、高リスク群と低リスク群の腫瘍特異的生存(図1)、腫瘍無増悪生存(図2)、及び総生存(図3)は、いずれも統計的な差を有し、本発明のグループ化の予測に合致することが示された。低リスク群は、腫瘍特異的生存(Log-rank p値=7.800e-4)、腫瘍無増悪生存(Log-rank p値=3.060e-4)、及び総生存(Log-rank p値=4.523e-3)が有意に良好であった。従って、本発明の遺伝子組み合わせを用いて、腎臓癌患者の悪性度分類及び予後予測を正確かつ確実に行うことができる。
表2 実験例1において遺伝子断片セットBについて実際に検出された遺伝子
【0042】
実験例2 好ましい遺伝子組み合わせ及び検出方法の、ヒト腎臓透明細胞癌の悪性度分類及び予後予測の評価における実行可能性の検証
本発明では、遺伝子組み合わせ(panel)から任意の遺伝子断片を選択して組み合わせ、新しい遺伝子組み合わせとし、同じ判断基準により腎臓癌の悪性度を分類し、腫瘍予後を予測することが可能である。ここで、遺伝子組み合わせ(panel)の遺伝子セットAから遺伝子セットA1、遺伝子断片セットBから遺伝子断片セットB1を選択し、遺伝子組み合わせ1(panel 1)を構成し、腎臓癌の悪性度分類及び予後予測に用いられ、TCGA(PanCancer Atlas)腎臓透明細胞癌データベークを用いて実行可能性を分析した。同様に、判断基準としては、遺伝子セットA1における少なくとも1つの遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異、又は遺伝子断片セットB1における少なくとも1つの領域の遺伝子コピー数増加が存在すれば、前記腎臓癌患者は高リスク群であり、腫瘍予後が悪いことを示し、その反対、遺伝子セットA1において遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットB1においていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じなければ、この腎臓癌患者は低リスク群であり、腫瘍予後がよい。なお、本実験例では、遺伝子組み合わせ1(panel 1)は遺伝子組み合わせ(panel)を基にして最適化したものであり、より高い正確性(より高い特異性)を有し、遺伝子組み合わせ1(panel 1)よりも、遺伝子組み合わせ(panel)の適用範囲がより広い(感度はより高い)。
【0043】
表3 遺伝子セットA1
【0044】
表4 遺伝子断片セットB1
【0045】
実施例2の前記方法で実施し、遺伝子組み合わせ1(panel 1)では、上記の患者354例を悪性度に応じて分類し、高リスク群と低リスク群にスムーズに分け、そのうち高リスク群が14.4%を占め、低リスク群占が85.6%を占め、Kaplan-Meier生存分析により、高リスク群と低リスク群の腫瘍特異的生存(図4)、腫瘍無増悪生存(図5)及び総生存(図6)は、いずれも統計的な差を有し、本発明のグループ化の予測に合致することが示された。低リスク群は、腫瘍特異的生存(Log-rank p値=3.458e-4)、腫瘍無増悪生存(Log-rank p値=2.559e-4)及び総生存(Log-rank p値=1.703e-3)が有意に良好であった。従って、本発明の遺伝子組み合わせ(panel)から選択された他の遺伝子組み合わせを用いても、腎臓癌患者の悪性度分類及び予後予測を行うことができる。
【0046】
実験例3 ヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ及び検出方法の、ヒト汎癌(Pancancer)の悪性度分類及び予後予測の評価における実行可能性の検証
TCGA(PanCancer Atlas)汎癌データベースは世界的に認められている汎癌データベースであり、汎癌の悪性度分類及び予後予測の評価における本発明の実行可能性及び信頼性を評価するために使用することができる。
【0047】
TCGA(PanCancer Atlas)汎癌データには合計10967例の汎癌データがあり、そのうち9896例は本発明の適用条件に適した完全な遺伝子突然変異及びコピー数突然変異データを有している。
【0048】
実施例4の前記方法で実施し、本実験例では、実施例1の遺伝子セットAの全遺伝子及び遺伝子断片セットBの全断片を選択して実施することが可能であり、遺伝子断片セットBにおいて実際に検出に使用された遺伝子は実験例1の表2に示される。上記の患者9896例を悪性度に応じて分類し、高リスク群と低リスク群にスムーズに分け、そのうち高リスク群が77.0%を占め、低リスク群が23.0%を占め、Kaplan-Meier生存分析により、高リスク群と低リスク群の腫瘍特異的生存(図7)、腫瘍無増悪生存(図8)、腫瘍無病生存(図9)及び総生存(図10)は、いずれも統計的な差を有し、本発明のグループ化の予測に合致することが示された。低リスク群は、腫瘍特異的生存(Log-rank p値<1.000e-10)、腫瘍無増悪生存(Log-rank p値<1.000e-10)、腫瘍無病生存(Log-rank p値<1.000e-10)及び総生存(Log-rank p値<1.000e-10)が有意に良好であった。従って、本発明の遺伝子組み合わせを用いて、汎癌患者の悪性度分類及び予後予測を正確かつ確実に行うことができる。
【0049】
実験例4 好ましい遺伝子組み合わせ及び検出方法の、ヒト汎癌の悪性度分類及び予後予測の評価における実行可能性の検証
本発明では、遺伝子組み合わせ(panel)から任意の遺伝子断片を選択して組み合わせ、新しい遺伝子組み合わせを構成し、同じ判断基準により汎癌の悪性度を分類し、腫瘍予後を予測することが可能である。ここで、実施例5の前記方法に従って、実験例2の遺伝子組み合わせ1(panel 1)を選択して、汎癌の悪性度分類及び予後予測に用いられ、TCGA(PanCancer Atlas)汎癌データベースを用いて実行可能性を分析した。同様に、判断基準としては、遺伝子セットA1における少なくとも1つの遺伝子の遺伝子突然変異又はコピー数突然変異、又は遺伝子断片セットB1における少なくとも1つの領域の遺伝子コピー数増加が存在すれば、前記汎癌患者は高リスク群であり、腫瘍予後がより悪いことを示し、その反対、遺伝子セットA1において遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットB1においていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、この汎癌患者は低リスク群であり、腫瘍予後がよい。なお、本実験例では、遺伝子組み合わせ1(panel 1)は遺伝子組み合わせ(panel)を基にして好ましいものであり、検出部位がより少ないため、実施コストが大幅に低下する。
【0050】
実施例4の前記方法で実施し、遺伝子組み合わせ1(panel 1)は上記の汎癌データベースにおける患者9896例を悪性度に応じて分類し、高リスク群と低リスク群にスムーズに分け、そのうち高リスク群が26.8%を占め、低リスク群が73.2%を占め、Kaplan-Meier生存分析により、高リスク群と低リスク群の腫瘍特異的生存(図11)、腫瘍無増悪生存(図12)及び総生存(図13)は、いずれも統計的な差を有し、本発明のグループ化の予測に合致することが示された。低リスク群は、腫瘍特異的生存(Log-rank p値=1.536e-4)、腫瘍無増悪生存(Log-rank p値=2.353e-3)及び総生存(Log-rank p値=5.302e-5)が有意に良好であった。従って、本発明の遺伝子組み合わせ(panel)から選択された他の遺伝子組み合わせを用いても、汎癌患者の悪性度分類及び予後予測を行うことができる。
【0051】
もちろん、上記の実施例は説明を明確にするための例に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明に基づいて他の様々な形態の変化や変動を行うこともできる。ここでは、全ての実施形態を網羅的に示す必要がない、また不可能なことである。これから引き出された明らかな変化や変動も本発明によって作成された特許範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子セットAと遺伝子断片セットBからなり、
前記遺伝子セットAは、ASAH1、ASXL1、BCOR、BRAF、CALML6、CCDC136、CIDEC、COX18、CSF1R、CYP3A5、DEK、DNMT3A、EGR1、FAM71E2、FGFR1、FKBP7、FLT1、FLT3、FLT4、GLIS1、IDH2、IFITM3、IMMT、KDR、KIT、KMT2A、KNOP1、KRT76、KRT9、KRTAP10-10、KRTAP10-8、MAF、MECOM、MFRP、MLLT3、MNS1、MRTFA、MTOR、MYH11、NF1、NUP214、PDGFRA、PDGFRB、PML、PRB2、PROSER3、RAF1、RARA、RBM15、RET、REXO1、RPN1、RUNX1T1、SCYL1、SLC16A6、SRC、STAG2、TCEAL5、TET2、TMEM82、TP53、TRIM26、U2AF1、U2AF2、UGT1A1、USP35、VEGFA、WBP2NL、WDR44、ZNF20、ZNF700及びZRSR2のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr2:3679501-3700249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr4:1189501-1230249、chr4:8579501-8590249、chr4:9319501-9330249、chr5:150899501-150940249、chr6:147819501-147840249、chr6:157089501-157110249、chr6:164889501-164900249、chr6:20399501-20410249、chr6:26519501-26530249、chr6:71659501-71670249、chr6:73329501-73340249、chr7:100539501-100560249、chr8:1939501-1960249、chr8:21999501-22070249、chr8:29189501-29200249、chr9:91789501-91800249、chr10:99419501-99440249、chr11:17739501-17760249、chr11:63329501-63350249、chr12:169501-250249、chr12:54329501-54350249、chr12:63179501-63550249、chr12:7269501-7310249、chr13:114519501-114530249、chr15:73649501-73670249、chr15:74209501-74220249、chr15:78409501-78430249、chr15:83859501-83880249、chr18:8809501-8820249、chr19:24059501-24070249、chr19:4229501-4250249、chr19:46879501-46900249、chr20:22559501-22570249、chr20:62189501-62200249、chr21:45949501-46110249、chr22:19499501-19760249、chr22:36649501-38700249及びchr22:46309501-47080249のうちの少なくとも1つを含み、
前記遺伝子断片セットBにおける遺伝子断片の位置がGRCh37を基準として注釈されることを特徴とするヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ。
【請求項2】
前記遺伝子断片セットBに含まれる遺伝子は具体的には以下の表に示され、
表1 遺伝子断片セットB

任意選択的には、前記遺伝子セットAはASAH1、CCDC136、FAM71E2、IFITM3、KRT9、PRB2、PROSER3、TCEAL5、U2AF2、USP35、WDR44及びZNF700の少なくとも1つを含み、かつ
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr5:150899501-150940249、chr7:100539501-100560249及びchr13:114519501-114530249の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遺伝子組み合わせの、ヒト腫瘍分類検出用製品の製造における使用。
【請求項4】
前記腫瘍は泌尿器系腫瘍又は汎癌であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は泌尿器系悪性腫瘍であり、
任意選択的には、前記泌尿器系腫瘍は腎臓癌であり、
任意選択的には、前記汎癌はTCGA汎癌データ中の癌種であることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記腫瘍分類は腫瘍悪性度の判断及び腫瘍予後の予測であり、臨床診療の指導に用いられ、
任意選択的には、前記腫瘍分類は高リスク群と低リスク群に分けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記製品は前記遺伝子組み合わせにおける遺伝子の遺伝子タイプを検出するためのプライマー、プローブ、試薬、キッド、遺伝子チップ又は検出システムを含むことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記製品は遺伝子セットA及び遺伝子断片セットBにおける遺伝子のエクソン及び関連するイントロン領域を検出するものであることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記腫瘍分類方法は、
前記癌細胞組織中の遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及び遺伝子コピー数突然変異を評価し、癌細胞組織中の遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価するステップS1と、
ステップS1の評価結果に基づいて、癌症悪性度を判断し腫瘍予後を予測するステップS2と、を含むことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記遺伝子突然変異は塩基置換突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異及び/又は融合突然変異を含み、前記遺伝子コピー数突然変異は遺伝子コピー数増加及び/又は遺伝子コピー数減少を含むことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ステップS1では、前記腫瘍組織と正常組織のシーケンシングデータを比較することにより、前記遺伝子セットAに含まれる遺伝子の遺伝子突然変異及びコピー数突然変異を評価するとともに、前記遺伝子断片セットBの遺伝子コピー数突然変異を評価することを特徴とする請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記ステップS2では、遺伝子セットAにおける少なくとも1つの遺伝子に遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じたか、又は遺伝子断片セットBにおける少なくとも1つの断片に遺伝子コピー数増加が生じた場合、前記腫瘍分類は高リスク群であり、その反対、すなわち、遺伝子セットAにおいて遺伝子突然変異又はコピー数突然変異が生じた遺伝子がないとともに、遺伝子断片セットBにおいていずれの断片にも遺伝子コピー数増加が生じない場合、前記腫瘍分類は低リスク群であることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記遺伝子組み合わせから任意の遺伝子断片を選択して組み合わせ、新しい遺伝子組み合わせとし、同じ腫瘍分類方法によって腫瘍悪性度を分類し腫瘍予後を予測し、臨床診療を指導することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
遺伝子セットAと遺伝子断片セットBからなり、
前記遺伝子セットAは、ASAH1、CCDC136、FAM71E2、IFITM3、KRT9、PRB2、PROSER3、TCEAL5、U2AF2、USP35、WDR44及びZNF700を含み、
前記遺伝子断片セットBは、chr2:179479501-179610249、chr2:207989501-208000249、chr2:219719501-219840249、chr3:126249501-126270249、chr3:129319501-129330249、chr3:138659501-138770249、chr3:183999501-184020249、chr5:150899501-150940249、chr7:100539501-100560249及びchr13:114519501-114530249を含み、
前記遺伝子断片セットBにおける遺伝子断片の位置がGRCh37を基準として注釈されることを特徴とするヒト腫瘍分類用の遺伝子組み合わせ。
【国際調査報告】