(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ジヒドロエルゴタミン乾燥粉末製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/48 20060101AFI20240301BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240301BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240301BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K31/48
A61P25/06
A61K9/14
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553124
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022018306
(87)【国際公開番号】W WO2022187222
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517120046
【氏名又は名称】パルマトリックス オペレーティング カンパニー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェイスン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】カラン,エイダン,ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ネルソン,アーロン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,デイナ,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ベルクソン,ヒラリー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツ,エリック,シー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD38
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE30
4C076FF02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA56
4C086NA06
4C086ZA08
(57)【要約】
本開示は、1)ジヒドロエルゴタミン(DHE)、またはその塩、水和物もしくは多形体と、2)一価金属カチオン塩と、3)1つ以上の賦形剤とを含む吸入性乾燥粒子を含む、乾燥粉末製剤に関する。更に、片頭痛、頭痛、またはその症状の治療に乾燥粉末を使用する方法、乾燥粉末の製造方法、及び乾燥粉末を含む容器及び装置にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロエルゴタミン(DHE)、またはその塩、水和物もしくは多形体と、一価金属カチオン塩と、1種以上の賦形剤とを含む吸入性乾燥粒子を含む、乾燥粉末。
【請求項2】
前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、前記乾燥粒子の約1重量%~約30重量%(例えば、約1重量%~約20重量%、例えば、約1重量%~約15重量%)の量で存在する、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項3】
前記乾燥粉末は、第1の賦形剤及び第2の賦形剤を含み、前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約1重量%~約30重量%(例えば、約1%~約15%、例えば、約3%または10%)の量で存在し、前記一価金属カチオン塩は、約2重量%~約25重量%(例えば、約6%~約12%、例えば、約9.0%または9.7%)の量で存在し、前記第1の賦形剤は、約35重量%~約75重量%(例えば、約55重量%~約75重量%、例えば、約63.0%または67.9%)の量で存在し、前記第2の賦形剤は、約12重量%~約25重量%(例えば、約16%~約22%、例えば、約18.0%または19.4%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、前記吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる、請求項1または2に記載の乾燥粉末。
【請求項4】
前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体はDHEメシル酸塩を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項5】
前記一価金属カチオン塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、またはリチウム塩(例えば、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項6】
前記1つ以上の賦形剤は、糖、糖アルコール、オリゴ糖、アミノ酸、またはそれらの組み合わせ(例えば、マンニトール、ロイシン、またはそれらの組み合わせ)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項7】
前記吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、前記DHEメシル酸塩は、約1重量%~約30重量%(例えば、約1%~約20%)の量で存在し、前記塩化ナトリウムは、約2重量%~約25重量%(例えば、約5%~約15%)の量で存在し、前記マンニトールは、約35重量%~約75重量%(例えば、約45%~約75%)の量で存在し、前記ロイシンは、約5重量%~約35重量%(例えば、約10%~約30%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、前記吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項8】
前記吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、前記DHEメシル酸塩は、約1重量%~約15重量%(例えば、約3%または10%)の量で存在し、前記塩化ナトリウムは、約4重量%~約14重量%(例えば、約9.0%または9.7%)の量で存在し、前記マンニトールは、約55重量%~約75重量%(例えば、約63.0または67.9%)の量で存在し、前記ロイシンは、約12重量%~約25重量%(例えば、約18%または19.4%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、前記吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項9】
前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体が非晶質である、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項10】
前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体が結晶質である、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項11】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度(C
max)が約1000pg/mL~13,000pg/mL、例えば、約2000pg/mL~約12,000pg/mL、約2000pg/mL~約8,000pg/mL、約2000pg/mL~約6000pg/mL、約3,000pg/mL~約4,000pg/mL、約6,000pg/mL~約7,000pg/mL、または約10,000pg/mL~約11,000pg/mLとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項12】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのC
maxが約3000pg/mL~約5000pg/mLとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項13】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEの血漿中濃度がピークに達するまでの時間(T
max)が約20分未満(例えば、約15分、約12分、約10分、約8分、約6分、約5分、約4分、約3分、約2分、約1分、またはそれ未満)となる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項14】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEの排出半減期(t
1/2)が約6時間~約14時間(例えば、約8時間~約12時間)となる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項15】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、AUC
0-infが約2000pg*h/mL~約20,000pg*h/mL、例えば、約4000pg*h/mL~約16,000pg*h/mL、約5000pg*h/mL~約10,000pg*h/mL、約7000pg*h/mL~約9000pg*h/mL、約3000pg*h/mL~約4000pg*h/mL、約6000pg*h/mL~約7000pg*h/mL、または約9000pg*h/mL~約10,000pg*h/mLとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項16】
有効量の前記乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、AUC
0-48hが約4500pg*h/mL~約9500pg*h/mLとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項17】
前記乾燥粉末は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含む吸入性乾燥粒子からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項18】
前記吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項19】
前記吸入性乾燥粒子は、約10ミクロン以下(例えば、約5ミクロン以下)の体積中央幾何径(VMGD)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項20】
前記吸入性乾燥粒子が、レーザ回折(RODOS/HELOSシステム)によって測定したとき、約1.5未満の分散性比(1バール/4バール)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項21】
前記吸入性乾燥粉末は、(i)5.6ミクロン未満の微粒子画分(FPF)を少なくとも45%有するか、(ii)3.4ミクロン未満のFPFを少なくとも30%、または5.0ミクロン未満のFPFを少なくとも45%有する、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項22】
前記乾燥粉末は、約1ミクロン~約5ミクロンの空気力学的中央粒子径(MMAD)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項23】
前記吸入性乾燥粒子のタップ密度が、約0.1g/cc~1.0g/ccである、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項24】
前記吸入性乾燥粒子のタップ密度が、約0.2g/cc~1.0g/ccである、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末。
【請求項25】
片頭痛またはその症状を治療するための方法であって、先行請求項のいずれか一項に記載の乾燥粉末の有効量を、それを必要とする対象に吸入によって投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記乾燥粉末が経口吸入を介して前記対象に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体によって引き起こされる副作用(例えば、嘔吐)の発生率または重症度が、有効量のDHEを静脈内投与した後の前記副作用の発生率または重症度に比べて低下する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記乾燥粉末は、片頭痛中の任意の時点(例えば、片頭痛の前駆期、前兆期、頭痛発作期、または後症状期中)に前記対象に投与される、請求項25~27のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記片頭痛の前記治療は、1つ以上の片頭痛症状(例えば、痛み、吐き気、音声恐怖症、または羞明)の寛解を含む、請求項25~28のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記片頭痛またはその症状の寛解が、前記乾燥粉末の投与後30分以内に達成される、請求項25~29のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記乾燥粉末を投与した後の前記対象におけるDHEのC
maxが約1000pg/mL~13,000pg/mL、例えば、約2000pg/mL~約12,000pg/mL、約2000pg/mL~約8,000pg/mL、約2000pg/mL~約6000pg/mL、約3,000pg/mL~約4,000pg/mL、約6,000pg/mL~約7,000pg/mL、または約10,000pg/mL~約11,000pg/mLである、請求項25~30のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記乾燥粉末を投与した後の前記対象におけるDHEの前記C
maxが約3000pg/mL~約5000pg/mLである、請求項25~31のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記乾燥粉末を投与した後の前記対象におけるDHEの前記T
maxが約20分未満(例えば、約15分、約12分、約10分、約8分、約6分、約5分、約4分、約3分、約2分、約1分、またはそれ未満)である、請求項25~32のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記乾燥粉末を投与した後の前記対象におけるDHEの前記排出半減期(t
1/2)が約6時間~約14時間(例えば、約8時間~約12時間)である、請求項25~33のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記乾燥粉末を前記対象に投与した結果、AUC
0-infが約2000pg*h/mL~約20,000pg*h/mL、例えば、約4000pg*h/mL~約16,000pg*h/mL、約5000pg*h/mL~約10,000pg*h/mL、約7000pg*h/mL~約9000pg*h/mL、約3000pg*h/mL~約4000pg*h/mL、約6000pg*h/mL~約7000pg*h/mL、または約9000pg*h/mL~約10,000pg*h/mLとなる、請求項25~34のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記乾燥粉末を前記対象に投与した結果、AUC
0-48hが約4500pg*h/mL~約9500pg*h/mLとなる、請求項25~35のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約0.5mg~約2.0mg(例えば、約0.7mg~約1.5mg、例えば、約1.0mg)を総用量として前記対象に投与する、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~24のうちいずれか一項に記載の乾燥粉末を含む容器。
【請求項39】
前記容器が約20mg以下の前記乾燥粉末(例えば、約1mg~約20mg、約1mg~約10mg、約2mg~約8mg、または約4mg~約6mgの前記乾燥粉末)を含んでいる、請求項38に記載の容器。
【請求項40】
前記容器が、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約100μg~約2000μg(例えば、約100μg~約1500μg、約100μg~約1000μg、約500μg~約2000μg、または約500μg~約1500μg、例えば、約150μg、約500μg、約1000μg、または約1500μg)を名目用量として含んでいる、請求項38または39に記載の容器。
【請求項41】
請求項1~24のうちいずれか一項に記載の乾燥粉末を含んでいる乾燥粉末吸入器(DPI)。
【請求項42】
前記DPIは受動型のDPI(例えば、受動型のカプセルベースのDPI、受動型のブリスターベースのDPI、または受動型のリザーバベースのDPI)である、請求項41に記載のDPI。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日出願の米国仮特許出願第63/156,111号に対して優先権を主張し、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロエルゴタミン(DHE)は、安全且つ効果的な片頭痛治療薬に当たる麦角アルカロイドである。(Silberstein,S.,Headache(2020)60(1):40-57)。それにもかかわらず、DHEは、経口、舌下、鼻腔内での生物学的利用能が低いこともあって、あまり普及されていない。(Saper,J.Headache(2006)46 Suppl 4:S212-20)。よって、DHEは臨床現場では注射によって投与されることが最も多く、患者がこの薬剤を自己投与することはできない。DHEの点鼻スプレー製剤(例:MIGRANAL(登録商標)やTRUDHESA(商標))は市販されているが、遅い発現速度、低い生物学的利用能、患者ごとに変動しやすく予測し得ない効果、不快な味、痛み、咳、鼻炎、咽頭炎など、欠点が多く、それにより一部の患者では製剤の使用を中止する場合もある。(Silberstein,同上;TRUDHESA(商標)[添付文書].Seattle,WA:Impel NeuroPharma Inc.)
【0003】
経口吸入用の噴射剤に懸濁された結晶質DHEの製剤は以前にも開発されていたが(MAP0004)、FDAからは製造、含有物の均一性、装置の作動に関する問題を理由に当該製品の承認を得られなかった(Silberstein,S.,同上)。噴射剤ベースのDHE製剤のもう1つの欠点として、加圧吸入器を介して投与する必要があり、これは加圧吸入器を振って懸濁液を混ぜ、次に力を使って作動させる必要があるが、片頭痛に苦しんでいる患者にとっては実行が困難な可能性がある動作をそれぞれ必要とする。その上、加圧吸入器は通常、完全な用量を受け取るために使用者が呼吸動作と吸入器の作動を協調させる必要がある(例えば、患者は装置を作動させながら同時に吸入しなければならない)。これは、片頭痛に苦しむ患者や、吸入器の使用経験がなく、吸入装置の使用に慣れていない患者にとっては特に困難になり得る。更に、加圧吸入器では、投与量が不安定になり、薬物送達が非効率になることがよくある。
【0004】
注射型DHE製剤(例えば、D.H.E.45(登録商標))は迅速且つ効果的な片頭痛治療を提供するが、通常は臨床現場でのみ利用が可能である。片頭痛中に治療を受けるために来院する必要があるため、薬剤を入手する上での大きな障壁となっている。更に、患者は通常、DHEの静脈内投与後に嘔吐、吐き気、胸部圧迫感などの副作用を高確率で経験する。他の副作用としては、心血管への影響(例:血圧の不安定、動脈収縮、高血圧、または心臓弁膜症)、感覚異常、不安、呼吸困難、頭痛、胃不全麻痺、下痢、皮膚の発疹、眠気、めまい、潮紅、発汗の増加、後腹膜線維症、胸膜線維症などが挙げられる(Silberstein,S.,同上;Saper,J.,同上;D.H.E.45(登録商標)[添付文書].Aliso Viejo,CA:Valeant Pharmaceuticals)。その結果、片頭痛に苦しむ患者は一般的にDHEを受けることに消極的になるか、受けることができなくなる。
【0005】
従って、副作用を最小限に抑えて迅速且つ効果的な片頭痛の寛解をもたらすために、非侵襲的な方法で自己投与できる改良されたDHE製剤に対するニーズが存在するが、これは未だ満たされていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)、またはその塩、水和物もしくは多形体と、一価金属カチオン塩と、1つ以上の賦形剤とを含む吸入性乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関する。一態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、乾燥粒子の約1重量%~約30重量%の量で存在する。より特定の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、乾燥粒子の約1重量%~約20重量%の量で存在する。更に特定の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、乾燥粒子の約1重量%~約15重量%の量で存在する。別の特定の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、乾燥粒子の約1重量%~約10重量%の量で存在する。一部の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、DHEメシル酸塩である。
【0007】
一部の態様では、乾燥粉末は、第1の賦形剤及び第2の賦形剤を含み、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約1重量%~約30重量%の量で存在し、一価金属カチオン塩は、約2重量%~約25重量%の量で存在し、第1の賦形剤は、約35重量%~約75重量%の量で存在し、第2の賦形剤は、約12重量%~約25重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。別の態様では、乾燥粉末は、第1の賦形剤及び第2の賦形剤を含み、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約1重量%~約25重量%の量で存在し、一価金属カチオン塩は、約4重量%~約14重量%の量で存在し、第1の賦形剤は、約55重量%~約75重量%の量で存在し、第2の賦形剤は、約12重量%~約25重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。より特定の態様では、乾燥粉末は、第1の賦形剤及び第2の賦形剤を含み、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約10重量%の量で存在し、一価金属カチオン塩は、約9重量%の量で存在し、第1の賦形剤は、約63重量%の量で存在し、第2の賦形剤は、約18重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。別の態様では、乾燥粉末は、第1の賦形剤及び第2の賦形剤を含み、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約3重量%の量で存在し、一価金属カチオン塩は、約9.7重量%の量で存在し、第1の賦形剤は、約67.9重量%の量で存在し、第2の賦形剤は、約19.4重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0008】
一部の実施形態では、一価金属カチオン塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、またはリチウム塩を含む。一部の実施形態では、一価金属カチオン塩は、ナトリウム塩を含む。一部の実施形態では、一価金属カチオン塩は、塩化ナトリウムを含む。一部の実施形態では、一価金属カチオン塩は、硫酸ナトリウムを含む。
【0009】
1つ以上の賦形剤は、糖、糖アルコール、オリゴ糖、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態では、賦形剤は糖アルコールまたはアミノ酸である。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、2つの賦形剤の組み合わせを含む。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、マンニトールとロイシンの組み合わせを含む。
【0010】
別の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約30重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約2重量%~約25重量%の量で存在し、マンニトールは、約35重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約5重量%~約35重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約15重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約4重量%~約14重量%の量で存在し、マンニトールは、約55重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約12重量%~約25重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。より特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約10重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約9重量%の量で存在し、マンニトールは、約63重量%の量で存在し、ロイシンは、約18重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。別の特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約3重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約9.7重量%の量で存在し、マンニトールは、約67.9重量%の量で存在し、ロイシンは、約19.4重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。一部の実施形態では、吸入性乾燥粉末は、表1の記載の乾燥粉末製剤を含む。
【0011】
DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)は、所望の形態、例えば、非晶質、結晶質、または非晶質と結晶質の混合物であり得る。一部の実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)は非晶質である。一部の実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)は結晶質である。
【0012】
有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)が、約1000pg/mL~約14,000pg/mL(例えば、約2000pg/mL~約4,000pg/mL、約4000pg/mL~約6,000pg/mL、約6000pg/mL~約8,000pg/mL、約8000pg/mL~約10,000pg/mL、約10,000pg/mL~約12,000pg/mL、または約12,000pg/mL~約14,000pg/mL)となる。
【0013】
一部の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)が、約2000pg/mL~約6000pg/mLとなる。より特定の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのCmaxが約3000pg/mL~約5000pg/mLとなる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEの血漿中濃度がピークに達するまでの時間(Tmax)が約20分未満(例えば、約15分、約12分、約10分、約8分、約6分、約5分、約4分、約3分、約2分、約1分、またはそれ未満)となる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEの排出半減期(t1/2)が約6時間~約14時間(例えば、約8時間~約12時間)となる。一部の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、AUC0-infが約5000pg*h/mL~約10,000pg*h/mLとなる。より特定の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、AUC0-infが約7000pg*h/mL~約9000pg*h/mLとなる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、AUC0-48hが約4500pg*h/mL~約9500pg*h/mLとなる。
【0014】
本明細書に開示される乾燥粉末は、一定期間にわたって繰り返し(例えば、毎日)対象に投与することができ、DHE蓄積比が1.5未満(例えば、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1.0未満、0.9未満、または0.8未満)を達成し得る。理論に拘束されるものではないが、1.5以下の蓄積比は、DHEが蓄積していないことを示す。蓄積比は、投与期間中のある時点で記録されたAUCと、投与期間の開始時に記録されたAUCとの比に基づいて計算することができる。例えば、14日の連日投与の期間にわたるDHEの蓄積比は、(14日目のAUC0-inf/1日目のAUC0-inf)=蓄積比のように計算することができる。
【0015】
乾燥粉末は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含む吸入性乾燥粒子からなってもよい。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールからなる。
【0016】
一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10ミクロン以下(例えば、約5ミクロン以下)の体積中央幾何径(VMGD)を有する。より特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、約5ミクロン以下のVMGDを有する。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、レーザ回折(RODOS/HELOSシステム)によって測定したとき、約1.5未満の分散性比(1バール/4バール)を有する。一部の実施形態では、吸入性乾燥粉末は、(i)5.6ミクロン未満の微粒子画分(FPF)が少なくとも45%、(ii)3.4ミクロン未満のFPFが少なくとも30%、または5.0ミクロン未満のFPFが少なくとも45%である。一部の実施形態では、乾燥粉末は、約1ミクロン~約5ミクロンの空気力学的中央粒子径(MMAD)を有する。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約0.1g/cc~1.0g/ccのタップ密度を有する。一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約0.2g/cc~1.0g/ccのタップ密度を有する。
【0017】
本開示はまた、本明細書に記載の乾燥粉末を、それを必要とする対象に吸入により投与し、片頭痛またはその症状を治療するための方法に関する。より好ましい態様では、乾燥粉末は経口吸入によって対象に投与される。乾燥粉末は、片頭痛中の任意の時点(例えば、片頭痛の前駆期、前兆期、頭痛発作期、または後症状期中)に対象に投与されてもよい。本開示はまた、片頭痛またはその症状を治療するための本明細書に記載の乾燥粉末の用途、及び、片頭痛またはその症状を治療するための薬剤の製造に使用するための本明細書に記載の乾燥粉末に関する。
【0018】
一部の実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体を含む有効量の乾燥粉末を投与することによって引き起こされる副作用(例えば、嘔吐)の発生率または重症度は、有効量のDHEを静脈内投与した後の副作用の発生率または重症度に比べて低下する。
【0019】
一部の態様では、片頭痛の治療は、1つ以上の片頭痛症状(例えば、痛み、吐き気、音声恐怖症、または羞明)の寛解をもたらす。片頭痛またはその症状の寛解は、乾燥粉末の投与後30分以内に達成され得る。
【0020】
乾燥粉末を投与した後の対象におけるDHEのCmaxは、約1000pg/mL~14,000pg/mL(例えば、約2000pg/mL~約4,000pg/mL、約4000pg/mL~約6,000pg/mL、約6000pg/mL~約8,000pg/mL、約8000pg/mL~約10,000pg/mL、約10,000pg/mL~約12,000pg/mL、または約12,000pg/mL~約14,000pg/mL)である。
【0021】
一部の実施形態では、乾燥粉末を投与した後の対象におけるDHEのCmaxは、約2000pg/mL~約6000pg/mLである。より特定の態様では、乾燥粉末を投与した後の対象におけるDHEのCmaxは、約3000pg/mL~約5000pg/mLである。一部の実施形態では、乾燥粉末を投与した後の対象におけるDHEのTmaxは、約20分未満(例えば、約15分、約12分、約10分、約8分、約6分、約5分、約4分、約3分、約2分、約1分、またはそれ未満)である。一部の実施形態では、乾燥粉末を投与した後の対象におけるDHEの排出半減期(t1/2)は、約6時間~約14時間(例えば、約8時間~約12時間)である。一部の実施形態では、乾燥粉末を対象に投与することにより、AUC0-infが約5000pg*h/mL~約10,000pg*h/mLとなる。より特定の態様では、乾燥粉末を対象に投与することにより、AUC0-infが約7000pg*h/mL~約9000pg*h/mLとなる。一部の態様では、乾燥粉末を対象に投与することにより、AUC0-48hが約4500pg*h/mL~約9500pg*h/mLとなる。
【0022】
一部の実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約0.5mg~約2.0mgを、総用量として対象に投与する。特定の一態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約0.7mg~約1.5mgを、総用量として対象に投与する。より特定の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約1.0mgを、総用量として対象に投与する。
【0023】
本開示はまた、本明細書に記載の乾燥粉末を含む容器に関する。容器は、約20mg以下の乾燥粉末、例えば、約10mg以下、または約5mg以下、例えば、約1mg~約20mg、約1mg~約10mg、約1mg~約5mg、約5mg~約10mg、約10mg~約20mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、例えば、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgの乾燥粉末を含むことができる。より特定の様態では、容器は約4mg~約6mgの乾燥粉末を含む。
【0024】
容器は、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約100μg~約2000μg、例えば、約100μg~約1500μg、約100μg~約1000μg、約500μg~約2000μg、約500μg~約1500μg、例えば、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約500μg、約750μg、約1000μg、約1250μg、約1500μg、約1750μg、または約2000μgのDHE、またはその塩、水和物もしくは多形体を、名目用量として含むことができる。より特定の態様では、容器は、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の約150μgまたは約500μgを、名目用量として含む。
【0025】
本開示はまた、本明細書に記載の乾燥粉末を含む乾燥粉末吸入器(DPI)に関する。一部の実施形態では、DPIは受動型のDPIである。一部の実施形態では、DPIは、カプセルベースのDPI(例えば、受動型のカプセルベースのDPI)である。一部の実施形態では、DPIはブリスターベースのDPI(例えば、受動型のブリスターベースのDPI)である。一部の実施形態では、DPIは、リザーバベースのDPI(例えば、受動型のリザーバベースのDPI)である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】3つの例示的な用量レベルでイヌモデルに製剤Iを吸入により投与した後の経時的(h)なジヒドロエルゴタミン(DHE)の平均血漿濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【
図2】3つの例示的な用量レベルでイヌモデルに製剤IIを吸入により投与した後の経時的(h)なジヒドロエルゴタミン(DHE)の平均血漿濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【
図3】3つの例示的な用量レベルでイヌモデルに製剤IIIを吸入により投与した後の経時的(h)なジヒドロエルゴタミン(DHE)の平均血漿濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【
図4】3つの例示的な用量レベルでイヌモデルに製剤IVを吸入により投与した後の経時的(h)なジヒドロエルゴタミン(DHE)の平均血漿濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【
図5】公開データのモデリング(Armer et al.、下記を参照)に基づく、3つの例示的な用量レベルでイヌモデルにMAP0004を吸入により投与した後の、経時的(h)なジヒドロエルゴタミン(DHE)のモデル化平均血漿濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【
図6】3つの異なる用量レベル(250μg/kg/日、400μg/kg/日、600μg/kg/日)で吸入によりイヌに例示的な乾燥粉末を投与した後の、14日間の投与期間の1日目に記録された経時的なDHEの血漿濃度を示すグラフである。
【
図7】3つの異なる用量レベル(250μg/kg/日、400μg/kg/日、600μg/kg/日)で吸入によりイヌに例示的な乾燥粉末を投与した後の、14日間の投与期間の14日目に記録された経時的なDHEの血漿濃度を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0027】
本開示は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)と、一価金属カチオン塩(例えば、塩化ナトリウム)と、1つ以上の賦形剤(例えば、ロイシン及びマンニトール)とを含む吸入性乾燥粒子を含有する吸入性乾燥粉末に関し、更に、乾燥粉末の製造及び使用方法と、乾燥粉末を含む容器及び装置とに関する。
【0028】
本明細書に開示される乾燥粉末は、いくつかの利点を有する。例えば、本開示の乾燥粉末は、最小限の副作用で、それを必要とする対象に有効量で投与して迅速な片頭痛の寛解をもたらすことができ、また、乾燥粉末吸入器を使用する自己投与にも適している。本明細書に開示される乾燥粉末は分散性が高く、通常、分散性は流量に依存しない。これは、広範囲の流量で乾燥粉末が分散し、所望の用量のDHEを送達できるということを意味する。従って、乾燥粉末は、患者から低度の吸入力で、受動型の装置を使用して効果的に投与することができる。これは、場合によってはより複雑な機器の操作が難しい、片頭痛による障害に苦しむ患者にとって特に有利である。更に、乾燥粉末は、使用者が協調した呼吸動作と使用操作を実行する必要がない受動型の装置(例えば、受動型の乾燥粉末吸入器)から投与することができる。この特徴は、片頭痛のある患者や、作動と吸入を同時に必要とする加圧吸入器など、他の装置で通常必要とされる協調動作を実行できない可能性がある、吸入器の使用経験のない患者にとって有利である。本明細書に記載の乾燥粉末はまた、通常均一であり、DHEやすべての賦形剤を含む単一の種類の乾燥粒子からなり、用量の均一性や所望の用量の一貫性した送達を提供する。従って、障害のある患者は、適切な用量のDHEを確実に投与するために、薬剤を混ぜたり再懸濁する必要がない。再度いうが、この種の操作は、片頭痛による障害のある患者にとっては困難なものであり得る。乾燥粉末は、患者への不快感を最小限に抑える、非侵襲的な方法でDHEを自己投与するための便利で安定した剤形をも提供できる。理論に拘束されるものではないが、乾燥粉末を吸入により投与すると、DHEのピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が短くなり、迅速な治療効果に寄与すると考えられる。更に、乾燥粉末を吸入により投与すると、片頭痛の治療に有効なピーク血漿濃度(Cmax)が得られ、嘔吐などのDHEの副作用も最小限に抑えることができ、効果を損なわずに望ましくない副作用を抑制するのに十分に短い排出半減期(t1/2)が得られる。
【0029】
本開示の一態様では、乾燥粉末は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含む吸入性乾燥粒子を含む。好ましい一態様では、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約25重量%(例えば、約1%~約15%、例えば、約3%または10%)の量で存在し、塩化ナトリウムは、約4重量%~約14重量%(例えば、約9.0%または9.7%)の量で存在し、マンニトールは、約55重量%~約75重量%(例えば、約63.0%または67.9%)の量で存在し、ロイシンは、約12重量%~約25重量%(例えば、約18.0%または19.4%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0030】
別の好ましい態様では、DHEメシル酸塩は、約9重量%~約11重量%(例えば、10%)の量で存在し、塩化ナトリウムは、約8重量%~約10重量%(例えば、約9%)の量で存在し、マンニトールは、約62重量%~約64重量%(例えば、約63%)の量で存在し、ロイシンは、約17重量%~約19重量%(例えば、約18%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0031】
さらに別の好ましい態様では、DHEメシル酸塩は、約2重量%~約4重量%(例えば、3%)の量で存在し、塩化ナトリウムは、約8.7重量%~約10.7重量%(例えば、約9.7%)の量で存在し、マンニトールは、約66.9重量%~約68.9重量%(例えば、約67.9%)の量で存在し、ロイシンは、約18.4重量%~約20.4重量%(例えば、約19.4%)の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0032】
吸入性乾燥粒子を含むこのような吸入性乾燥粉末は、噴霧乾燥や他の適切なプロセスによって、水性及び/または別の溶媒を含む溶液または懸濁液中で、それらの成分から製造されてもよい。吸入性乾燥粒子を含む吸入性乾燥粉末は、水及び溶媒含有物において比較的乾燥しており、幾何径が小さく、質量密度が高く、比較的低エネルギーで互いに解凝集するという点で分散性がある。これらは、比較的小さい空気力学的直径、比較的高い微粒子画分、肺沈着に関連する大きさを下回る微粒子用量などの、優れたエアロゾル特性を備えている。これらの特性は、実施例1及び2の例示的な乾燥粉末製剤において示されている。更に、本明細書に開示される吸入性乾燥粉末は、それを必要とする対象に投与された場合に効果的且つ迅速な症状の寛解に寄与することができる有利な薬物動態学的特性を有する。イヌモデルにおける例示的な乾燥粉末製剤の薬物動態学的特性を、実施例3に記載する。
【0033】
定義
本明細書において、「約」とは、記載された値に対する±5%の相対範囲を指し、例えば、「約20mg」は、「20mg±1mg」となる。
【0034】
本明細書において、乾燥粉末または吸入性乾燥粒子を「投与」するとは、対象の気道に乾燥粉末または吸入性乾燥粒子を導入することを指す。
【0035】
本明細書における「AUC」とは、血漿濃度-時間曲線下面積を指す。AUCinfは、0時間から無限大までのAUC、AUClastは、0時間から最後の測定可能な濃度の時間までのAUC、AUC0-24hは、0時間から24時間までのAUC、AUC0-8hは、0時間から8時間までのAUC、AUC0-4hは、0時間から4時間までのAUCを指す。
【0036】
本明細書における「非晶質」とは、粉末X線回折(XRD)によって分析した場合に、有意な結晶化度が欠如している(即ち、結晶化度が約5%未満)ことを意味する。
【0037】
本明細書における「カプセル放出粉末質量」または「CEPM」とは、吸入操作中にカプセルまたは用量単位容器から放出される乾燥粉末製剤の量を指す。CEPMは、通常、吸入操作の前後でカプセルの重量を量り、除去された粉末製剤の質量を決定することによって、重量測定法に基づいて測ることができる。CEPMは、カプセル内に残っている活性物質の量をクロマトグラフィー法(HPLCまたはUPLCなど)で分析し、カプセル内の活性物質の初期量から差し引くことによって、分析的に測定することもできる。CEPMは、取り出された粉末の質量をミリグラム単位で、または吸入操作前のカプセル内に最初に充填された粉末の質量の百分率として表すことができる。
【0038】
「分散性」とは、吸入性エアロゾルに分散される乾燥粉末または乾燥粒子の特性を示す技術用語である。乾燥粉末または乾燥粒子の分散性は、本明細書では、1バールの分散(即ち、調整器)圧力で測定された体積中央幾何径(VMGD)を4バールの分散(即ち、調整器)圧力で測定されたVMGDで割った商、HELOS/RODOSによって測定した0.5バールのVMGDを4バールのVMGDで割った商、HELOS/RODOSによって測定した0.2バールのVMGDを2バールのVMGDで割った商、またはHELOS/RODOSによって測定した0.2バールのVMGDを4バールのVMGDで割った商として表される。これらの商は、本明細書ではそれぞれ「1バール/4バール」、「0.5バール/4バール」、「0.2バール/2バール」、「0.2バール/4バール」と呼ばれ、分散性は低い商と相関関係にある。例えば、1バール/4バールは、RODOS乾燥粉末分散機(または同等の技術)のオリフィスから約1バールで放出され、HELOSやその他のレーザ回折システムによって測定された吸入性乾燥粒子または粉末のVMGDを、HELOS/RODOSによって4バールで測定された同じ吸入性乾燥粒子または粉末のVMGDで割ったものである。従って、分散性の高い乾燥粉末または乾燥粒子は、1.0に近い1バール/4バール、または0.5バール/4バールの比を有する。高分散性の粉末は、凝集、凝結、または凝固する傾向が低く、及び/または凝集、凝結、または凝固した場合であっても、吸入器から放出されて対象によって吸入されるときに、容易に分散、または解凝集を起こす。分散性は、吸入器から放出される大きさを流量の関数として測定することによっても評価することができる。VMGDは、体積中央径(VMD)、x50、またはDv50とも呼ばれる。
【0039】
本明細書における「結晶質」とは、粉末X線回折(XRD)によって分析した場合に、有意な結晶化度を有する(即ち、結晶化度が少なくとも約95%)ことを意味する。
【0040】
本明細書における「乾燥粉末」とは、吸入装置内で分散され、続いて対象によって吸入され得る、細かく分散された吸入性乾燥粒子を含む組成物を指す。このような乾燥粉末は、約25%、約20%、または約15%までの水もしくは他の溶媒を含んでもよく、または実質的に水もしくは他の溶媒を含まずともよく、または無水性であってよい。
【0041】
本明細書における「乾燥粒子」とは、約25%、約20%、または約15%までの水もしくは他の溶媒を含んでもよく、または実質的に水もしくは他の溶媒を含まずともよく、または無水性であってよい、吸入性粒子を指す。
【0042】
本明細書における「有効量」とは、所望の治療効果を達成するために必要な活性剤(例えば、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体、例えばDHEメシル酸塩)または活性剤を含む乾燥粉末の量であり、例えば、片頭痛またはその症状、例えば、痛み、羞明及び/または音恐怖症の寛解に十分な量、及び/または活性剤の有効な血清濃度を生成するのに十分な量を指す。特定の使用に対する実際の有効量は、特定の乾燥粉末または乾燥粒子、投与方法、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、治療すべき症状または状態の重症度に応じて変わり得る。投与される乾燥粉末及び乾燥粒子の適切な量、及び特定の対象に対する投薬スケジュールは、上記の要素や他の考慮事項に基づいて、当業者の臨床医が決めることができる。
【0043】
本明細書における「放出用量」(ED)とは、適切な吸入装置から、発射または分散事象後の薬剤製剤の送達の程度を示す指標である。より具体的には、乾燥粉末製剤の場合、EDは単位用量パッケージから引き出され、吸入装置のマウスピースから放出される粉末の割合の尺度に当たる。EDは、吸入器によって送達される用量と名目用量(つまり、発射前に適切な吸入器に入れられる単位用量あたりの粉末の質量)の比として定義される。EDは実験的に測定されるパラメータであり、USP Section 601 Aerosols,Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered-Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers,United States Pharmacopeia convention,Rockville,MD,13th Revision,222-225,2007に記載の方法によって定めることができる。この方法では、患者の投与を模倣するように設定されたin vitroデバイスを用いる。
【0044】
本明細書における「5.6ミクロン未満の微粒子画分」(FPF(<5.6)、またはFPF(<5.6ミクロン))とは、5.6ミクロン未満の空気力学的直径を有する乾燥粒子のサンプルの画分を指す。例えば、FPF(<5.6)は、2段折畳型アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)の第1段と捕集フィルタに堆積した吸入性乾燥粒子の質量を、機器に送達するためにカプセルに入れて秤量した吸入性乾燥粒子の質量で割って得ることができる。このパラメータは「FPF_TD(<5.6)」とも言われ、ここで、TDは総用量を意味する。8段ACIを使用して同様の測定を実行できる。8段ACIのカットオフ点は標準流量の60L/分では異なるが、FPF_TD(<5.6)は8段階の完全データセットから推定することができる。8段ACIの結果は、カプセルに入れた量の代わりにACIに捕集された用量を使用してFPFを判定するUSP方法によっても計算可能である。
【0045】
本明細書における「5.0ミクロン未満の微粒子画分」(FPF(<5.0)、FPF<5μmまたはFPF(<5.0ミクロン))とは、5.0マイクロメートル未満の空気力学的直径を有する吸入性乾燥粒子の質量の画分を指す。例えば、FPF(<5.0)は、標準流量60L/分で8段ACIを使用し、8段の完全データセットから推定して得ることができる。このパラメータは「FPF_TD(<5.0)」とも言われ、ここで、TDは総用量を意味する。Malvern Spraytec、Malvern Mastersizer、Sympatec HELOS粒径測定装置などの幾何学的粒径分布と組み合わせて使用する場合、「FPF(<5.0)」は、5.0マイクロメートル未満の幾何径を有する吸入性乾燥粒子の質量の画分を指す。
【0046】
本明細書で使用される「4.4ミクロン未満の微粒子用量」(FPD(<4.4)、FPD<4.4μm、またはFPD(<4.4ミクロン))とは、4.4マイクロメートル未満の空気力学的直径を有する吸入性乾燥粉末粒子の質量を意味する。例えば、FPD<4.4μmは、標準流量60L/分で8段ACIを使用し、ACIに1回分の粉末を入れて作動させたとき、フィルタ及び第6段、第5段、第4段、第3段及び第2段に堆積した質量を合計して得られる。
【0047】
本明細書における「3.4ミクロン未満の微粒子画分」(FPF(<3.4)、またはFPF(<3.4ミクロン))とは、3.4ミクロン未満の空気力学的直径を有する吸入性乾燥粒子の質量の画分を指す。例えば、FPF(<3.4)は、2段折畳型ACIの捕集フィルタに堆積した吸入性乾燥粒子の総質量を、機器に送達するためにカプセルに入れて秤量した吸入性乾燥粒子の質量で割って得ることができる。このパラメータは「FPF_TD(<3.4)」とも言われ、TDは総用量を意味する。8段ACIを使用して同様の測定を実行できる。8段ACIの結果は、カプセルに入れた量の代わりにACIに捕集された用量を使用してFPFを決定するUSP方法によっても計算可能である。
【0048】
本明細書における「ハウスナー比」とは、タップ密度を嵩密度で割ったものを指す技術用語であり、通常、バルク粉末の流動性と相関関係にある(つまり、ハウスナー比が増加すると、通常、粉末の流動性が低下する)。
【0049】
本明細書における「吸入性」とは、吸入による対象の気道への送達(例えば、肺送達)に適した乾燥粒子または乾燥粉末を意味する。吸入性乾燥粉末または乾燥粒子は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン以下の空気力学的中央粒子径(MMAD)を有する。
【0050】
本明細書における「気道」とは、上気道(例えば、鼻道、鼻腔、喉、及び咽頭)、呼吸気道(例えば、喉頭、気管、気管支、及び細気管支)、及び肺(例えば、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、及び肺胞)を含む。
【0051】
本明細書において吸入性乾燥粒子を説明するために用いられる「小」とは、約10ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン以下の体積中央幾何径(VMGD)を有する粒子を指す。VMGDは、体積中央径(VMD)、x50、またはDv50とも呼ばれる。
【0052】
本明細書において、塩(例えば、ナトリウム含有塩)を言及する場合、塩の無水形態とすべての水和形態を含む。
【0053】
重量百分率はすべて乾燥ベースである。
【0054】
乾燥粉末及び乾燥粒子
本発明の態様は、ジヒドロエルゴタミン、またはその塩、水和物もしくは多形体と、一価金属カチオン塩(例えば、ナトリウム塩及び/またはカリウム塩)と、1つ以上の賦形剤(ロイシンやマンニトールなど)と、を含む吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子に関する。
【0055】
ジヒドロエルゴタミン
ジヒドロエルゴタミン(DHE)は、強力なα-アドレナリン拮抗作用を持つ半合成麦角アルカロイドであり、急性片頭痛、片頭痛重積状態、群発頭痛の治療での使用が承認されている。DHEは、トリプタン耐性片頭痛、月経時片頭痛、異痛を伴う片頭痛、重度または慢性の片頭痛、群発頭痛の治療にも効果的である。しかしながら、腸からの吸収したDHEは非常に変動しやすく、代謝されやすい。つまりDHEは経口での生物学的利用能が低いため、非経口経路での投与が必要である。
【0056】
本開示の吸入性乾燥粒子は、重量ベースで所望の量のDHE、またはその塩、水和物もしくは多形体を含有することができ、通常、約1重量%~約30重量%のDHE、またはその塩、水和物もしくは多形体を含有する。好ましい一態様では、吸入性乾燥粉末は、約1重量%~約25重量%(例えば、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約20重量%、または約25重量%)のDHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)を含有する。より好ましくは、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約10重量%(例えば、約1.5重量%、約3.0重量%、約5.8重量%、または約10.0重量%)のDHEまたは、その塩、水和物もしくは多形体を含有する。特定の実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、約1重量%~約3重量%、約3重量%~約5重量%、約5重量%~約7重量%、約7重量%~約9重量%、約9重量%~約11重量%、約11重量%~約13重量%、または約13重量%~約15重量%の範囲で存在する。吸入性乾燥粒子中のDHE、またはその塩、多形体もしくは水和物の重量ベースの量を、「薬物負荷」とも呼ぶ。
【0057】
吸入性乾燥粒子は、対象が大量の乾燥粉末を吸入せずとも、治療に有効な用量をそれを必要とする対象に提供するのに十分な量のDHE、またはその塩、水和物もしくは多形体を含むことが好ましい。例えば、乾燥粒子は、約20mg以下、約15mg以下、約10mg以下、または約5mg以下の乾燥粉末(例えば、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgの乾燥粉末)を吸入することによって、治療に有効な用量を対象に提供するのに十分な量のDHEメシル酸塩を含むことができる。
【0058】
乾燥粒子には、DHEのメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、酒石酸塩、または硫酸塩など、DHEの任意の薬学的に許容される塩が含まれ得る。好ましい態様では、乾燥粉末はDHEメシル酸塩を含む。一部の態様では、乾燥粉末は、一水和物形態、無水形態、または両方の組み合わせのDHE、またはその塩を含む。
【0059】
DHE、またはその塩もしくは水和物は、例えば粉末X線回折(XRPD)によって測定されたとき、実質的に非晶質の形態、実質的に結晶質の形態、または両方の形態の混合物として乾燥粒子中に存在し得る。
【0060】
好ましい一態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、実質的に非晶質である。例えば、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、XRPDにより測定されたとき、結晶質が約5%未満、結晶質が約4%未満、結晶質が約3%未満、結晶質が約2%未満、または結晶性が約1%未満であってもよい。一部の実施形態では、非晶質DHEメシル酸塩は、DHEメシル酸塩を適切な液体に溶解して結晶質を除去し、噴霧乾燥用の他の成分とともに原料中にDHE溶液を含めて、実質的に非晶質のDHEを含む乾燥粉末を生成することによって提供される。乾燥粉末中のDHEの状態は、乾燥粉末のXRPDによって更に確認することができる。
【0061】
別の態様では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、XRPDによって測定されたとき、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%)が結晶質である。別の態様では、DHE、またはその塩もしくは水和物は、XRPDによって測定されたとき、実質的に結晶質、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が結晶質である。一部の実施形態では、DHEメシル酸塩の結晶化度を、噴霧乾燥前にXRPDによって確認し、その後、所望の大きさの結晶性DHEメシル酸塩粒子の安定化懸濁液(例えば、ポリソルベート80を含む)として噴霧乾燥され、得られた乾燥粉末に結晶性DHEが確実に含まれるようにし、これを更に乾燥粉末のXRPDによって確認することができる。
【0062】
DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、結晶質粒子形態(例えば、微結晶質またはナノ結晶質形態)として吸入性乾燥粒子中に存在してもよい。例えば、結晶質DHE(例えば、DHEメシル酸塩)は、約50nm~約5000nm(Dv50)の亜粒子の形態で存在してもよい。一部の実施形態では、亜粒子の粒径は、約100nm、約300nm、約1000nm、約1500nm、約80nm~約300nm、約80nm~約250nm、約80nm~約200nm、約100nm~約150nm、約1200nm~約1500nm、約1500nm~約1750nm、約1200nm~約1400nm、または約1200nm~約1350nm(Dv50)である。特定の実施形態では、亜粒子は、約50nm~約2500nm、約50nm~1000nm、約50nm~800nm、約50nm~600nm、約50nm~500nm、約50nm~400nm、約50nm~300nm、約50nm~200nm、または約100nm~300nm(Dv50)である。一実施形態では、亜粒子は約50~約200nm(Dv50)である。一実施形態では、亜粒子は約100nm(Dv50)である。一実施形態では、亜粒子は約900nm~約1100nm(Dv50)である。一実施形態では、亜粒子は約1000nmである。一実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、微結晶質の形態で吸入性乾燥粒子中に存在する。一実施形態では、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体は、ナノ結晶質の形態で吸入性乾燥粒子中に存在する。
【0063】
DHE、またはその塩、多形体もしくは水和物は、湿式粉砕、ジェット粉砕、または別の適切な方法など、必要に応じて安定剤を含む適切な方法によって、任意の所望の亜粒子粒径で調製することができる。一部の態様では、結晶質粒子状のDHEまたはその塩(例えば、DHEメシル酸塩)は、粉砕によって調製される。一部の実施形態では、粉砕は、ジャーローラー粉砕、Netzsch MicroCerバッチモード粉砕、Netzsch MiniCer再循環モード粉砕、ジェット粉砕(例えば、Sturtevant Qualification Micronizerを使用)、またはそれらの組み合わせを含む。好ましい態様では、DHE、またはその塩の結晶形は粉砕される。
【0064】
理論に拘束されるものではないが、非晶質DHE(例えば、DHEメシル酸)は結晶質DHEよりも迅速に気道内壁液に溶解するので、その結果、所望の薬物動態特性(例えば、迅速なTmax、低いAUC、短いt1/2)が得られ、不必要な薬物曝露を回避し、潜在的な副作用を軽減しながら、可能な限り最短の時間で最大の効果を発揮することができると言われている。
【0065】
金属カチオン塩、賦形剤、安定剤
本明細書に記載の吸入性乾燥粒子は、通常、一価金属カチオン塩と、1つ以上の賦形剤とを含み、場合によっては、安定剤または他の添加剤を更に含む。
【0066】
吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を1重量%~85重量%(wt%)含有してもよい。例えば、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を約5重量%~約15重量%、約15重量%~約25重量%、約25重量%~約35%、約35重量%~約45重量%、約45重量%~約55重量%、約55重量%~約65重量%、約65重量%~約75重量%、または約75重量%~約85重量%の量で含有することができる。好ましい一態様では、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を約5重量%~約15重量%、例えば、約5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、または15重量%含有する。別の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を約40重量%~約50重量%、例えば、約41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量、47重量%、48重量%、49重量%、または50重量%含有する。別の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を約70重量%~約80重量%、例えば、約71重量%、2重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、または80重量%含有する。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を9.0重量%含有する。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩を9.7重量%含有する。
【0067】
好ましい一価金属カチオン塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)は、以下の特徴のうちの1つ、または好ましくは2つ以上を有する。(i)吸入性乾燥粉末に加工することができる。(ii)乾燥粉末の形態で十分な物理化学的安定性を有し、高湿度への曝露を含む様々な条件にわたって分散可能で物理的に安定な粉末の製造を容易にする。(iii)肺に沈着すると急速に溶解する。例えば、一価の金属塩のカチオンの質量の半分は、30分未満、15分未満、5分未満、2分未満、1分未満、または30秒未満で溶解できる。(iv)顕著な発熱または吸熱溶解熱(ΔH)、例えば、約-10kcal/molより低いΔH、または約10kcal/molより大きいΔHなど、不十分な忍容性または有害事象を引き起こす可能性のある特性を有しない。好ましいΔHは、約-9kcal/mol~約9kcal/mol、約-8kcal/mol~約8kcal/mol、約-7kcal/mol~約7kcal/mol、約-6kcal/mol~約6kcal/mol、約-5kcal/mol~約5kcal/mol、約-4kcal/mol~約4kcal/mol、約-3kcal/mol~約3kcal/mol、約-2kcal/mol~約2kcal/mol、約-1kcal/mol~約1kcal/mol、または約0kcal/molである。
【0068】
好ましい一価金属カチオン塩としては、所望の溶解特性を有するナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。一般的に、可溶性が高いまたは中等度のナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。例えば、吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末に含まれるナトリウム塩及びカリウム塩は、蒸留水中、室温(20~30℃)及び1バールで、少なくとも約0.4g/L、少なくとも約0.85g/L、少なくとも約0.90g/L、少なくとも約0.95g/L、少なくとも約1.0g/L、少なくとも約2.0g/L、少なくとも約5.0g/L、少なくとも約6.0g/L、少なくとも約10.0g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約50g/L、少なくとも約90g/L、少なくとも約120g/L、少なくとも約500g/L、少なくとも約700g/L、または少なくとも約1000g/Lの溶解度を有し得る。好ましくは、ナトリウム塩及びカリウム塩は、約0.90g/L超、約2.0g/L超、または約90g/L超の溶解度を有する。或いは、吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末に含まれるナトリウム塩及びカリウム塩は、蒸留水中、室温(20~30℃)及び1バールで、少なくとも約0.4g/L~約200g/L、約1.0g/L~約120g/L、5.0g/L~約50g/Lの溶解度を有し得る。
【0069】
本発明の吸入性乾燥粒子中に存在し得る適切なナトリウム塩として、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。好ましい一態様では、乾燥粉末及び乾燥粒子は塩化ナトリウムを含む。別の好ましい態様では、乾燥粉末及び乾燥粒子は硫酸ナトリウムを含む。
【0070】
適切なカリウム塩としては、例えば、塩化カリウム、クエン酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、重炭酸カリウム、亜硝酸カリウム、過硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、グアニル酸二カリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、アスコルビン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、コハク酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、乾燥粉末及び乾燥粒子には、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、またはこれらの塩の任意の組み合わせが含まれる。
【0071】
適切なリチウム塩としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、乳酸リチウム、クエン酸リチウム、アスパラギン酸リチウム、グルコン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、アスコルビン酸リチウム、オロチン酸リチウム、コハク酸リチウム、またはこれらの塩の任意の組み合わせが挙げられる。
【0072】
本発明の乾燥粉末及び粒子は、組成物中に高い割合のナトリウム塩及び/またはカリウム塩を含有することができ、ナトリウムカチオン(Na+)及び/またはカリウムカチオン(K+)の濃度が高くてもよい。乾燥粒子は、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上のナトリウム塩またはカリウム塩を含んでもよい。好ましい一態様では、乾燥粉末及び乾燥粒子は、塩化ナトリウムなどのナトリウム塩を約4重量%~約14重量%(例えば、約6重量%~約12重量%、または約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%)含有する。別の好ましい態様では、乾燥粉末及び乾燥粒子は、塩化ナトリウムなどのナトリウム塩を約40重量%~約50重量%(例えば、約43重量%~約48重量%、または約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、または約50重量%)含有する。更に別の好ましい態様では、乾燥粉末及び乾燥粒子は、ナトリウム塩を約70重量%~約80重量%(例えば、約74重量%~約78重量%、または約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、または約80重量%)含有する。
【0073】
或いは、または更には、本発明の吸入性乾燥粉末及び粒子は、吸入性乾燥粒子に対して少なくとも約3重量%の量の一価カチオン(例えば、Na+またはK+)を提供する、一価金属カチオン塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)を含有することができる。例えば、本発明の吸入性乾燥粒子は、吸入性乾燥粒子の少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約17重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、または少なくとも約70重量%の量でNa+またはK+を提供するナトリウム塩またはカリウム塩を含有することができる。
【0074】
吸入性乾燥粒子は、一価金属カチオン塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)が高密度であってもよく、または、一価金属カチオン塩の含有量が低くてもよい。乾燥粉末中の高い塩含有量は、高分散性や流量非依存性など、乾燥粉末の特定の望ましい特性にとって重要であると言われている。驚くことに、塩含有量が低いDHE含有乾燥粉末は、非常に高い塩分を含む調製物に見られるものと同様の望ましい分散性や空気力学的特性を有することが確認された。例えば、実施例1に示されているように、それぞれ76重量%、69重量%、63重量%の塩化ナトリウムを含有する製剤I、XII、XVは、それぞれ9重量%、9.9重量%、9重量%の塩化ナトリウムを含有する製剤V、XIII、XVIと同様の分散性比(1バール/4バール)とMMADを有していた(表3及び4)。患者によっては、塩分を多く含む乾燥粉末が一時的な咳や粘膜の炎症を引き起こす可能性がある。本明細書に開示される低塩DHE製剤(例えば、製剤V、XIII、XVI)を用いることで、そのような有害事象を有利に緩和または排除することができる。
【0075】
必要に応じて、本発明の吸入性乾燥粉及び粒子は、一価金属カチオン塩(例えば、ナトリウム塩及び/またはカリウム塩)に加えて、1つ以上の他の塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、亜鉛、錫、銀などの元素の1つ以上の非毒性塩などを含有することができる。
【0076】
本明細書に記載の吸入性乾燥粒子中に存在し得る適切なマグネシウム塩としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、タウリン酸マグネシウム、オロチン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、アセチルアセトンマグネシウム、ギ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、乾燥粒子はマグネシウム塩を含まない。
【0077】
本明細書に記載の吸入性乾燥粒子中に存在し得る適切なカルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。一部の実施形態では、乾燥粒子はカルシウム塩を含まない。
【0078】
本明細書に記載の吸入性乾燥粒子は、賦形剤(例えば、生理学的または薬学的に許容される賦形剤)を含むことができる。吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約99重量%(wt%)の1つ以上の賦形剤を含んでもよい。例えば、乾燥粒子は、約10重量%~約20重量%、約20重量%~約30重量%、約30重量%~約40重量%、約40重量%~約50重量%、約50重量%~約60重量%、約60重量%~約70重量%、約70重量%~約80重量%、または約80重量%~約90重量%の賦形剤を含んでもよい。一態様では、乾燥粒子は1つの賦形剤を含む。別の態様では、乾燥粒子は2つの賦形剤を含む。
【0079】
1つ以上の賦形剤は、炭水化物、糖、糖アルコール、オリゴ糖(例えば、短鎖オリゴ糖)、またはアミノ酸の単独のものであるか、または任意の所望の組み合わせであり得る。好ましい賦形剤は、一般に、水と接触しても増粘または重合せず、比較的自由に流動する粒子であり、分散粉末として吸入された場合に毒性が無いものである。この点で有用な炭水化物賦形剤には、単糖類及び多糖類が挙げられる。代表的な単糖には、デキストロース(無水物及び一水和物;グルコース及びグルコース一水和物とも呼ばれる)、ガラクトース、D-マンノース、ソルボースなどの炭水化物賦形剤が含まれる。代表的な二糖類としては、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどが挙げられる。代表的な三糖類としては、ラフィノースなどが挙げられる。他の炭水化物賦形剤としては、マルトデキストリン及びシクロデキストリンが挙げられ、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどを必要に応じて使用することができる。代表的な糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0080】
適切なアミノ酸賦形剤としては、標準的な製薬加工技術の下で粉末を形成する天然に存在するアミノ酸のいずれかが含まれ、非極性(疎水性)アミノ酸及び極性(非荷電、正荷電及び負荷電)アミノ酸が挙げられる。このようなアミノ酸は医薬品グレードであり、米国食品医薬品局によって一般に安全とみなされている(GRAS)。非極性アミノ酸の代表例としは、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、バリンが挙げられる。極性の非荷電アミノ酸の代表例としては、システイン、グリシン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンなどが挙げられる。極性の正電荷アミノ酸の代表例としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。負電荷アミノ酸の代表例としては、アスパラギン酸やグルタミン酸が挙げられる。これらのアミノ酸は、D型またはL型光学異性体の形態、或いは2つの形態の混合物であってもよい。これらのアミノ酸は一般に、Aldrich Chemical Company,Inc.,Milwaukee,Wis.またはSigma Chemical Company,St.Louis,Moなどの医薬品グレードの製品を提供する製造元から入手可能である。
【0081】
好ましいアミノ酸賦形剤、例えば、疎水性アミノ酸のロイシン(D光学型またはL光学型、または2つの形態の混合物)は、本発明の乾燥粒子中に、吸入性乾燥粒子の約99重量%以下(wt%)の量で存在することができる。例えば、本発明の吸入性乾燥粒子は、アミノ酸ロイシンを約0.1重量%~約10重量%、5重量%~約30重量%、約10重量%~約20重量%、約5重量%~約20重量%、約11重量%~約50重量%、約15重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約30重量%~約50重量%、約11重量%~約40重量%、約11重量%~約30重量%、約11重量%~約20重量%、約20重量%~約40重量%、約51重量%~約99重量%、約60重量%~約99重量%、約70重量%~約99重量%、約80重量%~約99重量%、約51重量%~約90重量%、約51重量%~約80重量%、約51重量%~約70重量%、約60重量%~約90重量%、約70重量%~約90重量%、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下の量で含有することができる。一部の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約15重量%~約25重量%(例えば、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%)のロイシンを含有する。
【0082】
マンニトールなどの好ましい炭水化物賦形剤は、本発明の乾燥粒子中に、吸入性乾燥粒子の約99重量%以下の量で存在し得る。例えば、本発明の吸入性乾燥粒子は、マンニトールを約0.1重量%~約10重量%、5重量%~約30重量%、約10重量%~約20重量%、約5重量%~約20重量%、約11重量%~約50重量%、約15重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約30重量%~約50重量%、約11重量%~約40重量%、約11重量%~約30重量%、約11重量%~約20重量%、約20重量%~約40重量%、約51重量%~約99重量%、約60重量%~約99重量%、約70重量%~約99重量%、約80重量%~約99重量%、約51重量%~約90重量%、約51重量%~約80重量%、約51重量%~約70重量%、約60重量%~約90重量%、約70重量%~約90重量%、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下の量で含有することができる。一部の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約55重量%~約65重量%(例えば、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、または約65重量%)のマンニトールを含む。別の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約40重量%~約50重量%(例えば、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、または約50重量%)のマンニトールを含む。
【0083】
一部の好ましい態様では、乾燥粒子は、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、マルトデキストリン、マンニトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される賦形剤を含む。特定の実施形態では、乾燥粒子はロイシン及びマンニトールを含む。
【0084】
本発明の吸入性乾燥粒子は、1つ以上の安定剤を含有することができる。一部の態様では、安定剤の量は、約10重量%未満、より好ましくは5重量%未満(例えば、約4重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、またはそれ未満)である。乾燥粒子に使用できる安定剤には、ポリソルベート80(PS80)及びオレイン酸、またはその塩が含まれる。特定の実施形態では、安定剤はポリソルベート80(PS80)である。安定剤は、結晶質DHEを含む乾燥粉末の製造に特に有用である。
【0085】
一態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約1%~約25%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約4%~約14%の量で存在し、マンニトールは、約55%~約75%の量で存在し、ロイシンは、約12%~約25%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。DHEメシル酸塩は、非晶質(つまり、結晶化度が約5%未満)であっても、結晶質(つまり、結晶化度が少なくとも約95%)であってもよい。結晶質DHEメシル酸塩は、例えば、結晶質DHEメシル酸塩に適用される粉砕技術に応じて、ナノサイズやマイクロサイズであってもよい。
【0086】
一部の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約25重量%のDHEメシル酸塩と、約4重量%~約14重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約23重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約58重量%~約68重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約8重量%~約12重量%のDHEメシル酸塩と、約7重量%~約11重量%の塩化ナトリウムと、約16重量%~約20重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約61重量%~約65重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩と、約8重量%~約10重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約19重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約64重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩と、約9重量%の塩化ナトリウムと、約18重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約63重量%のマンニトールとを含む。
【0087】
一部の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約25重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約4重量%~約14重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約23重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約58重量%~約68重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約8重量%~約12重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約7重量%~約11重量%の塩化ナトリウムと、約16重量%~約20重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約61重量%~約65重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約8重量%~約10重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約19重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約64重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約9重量%の塩化ナトリウムと、約18重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約63重量%のマンニトールとを含む。
【0088】
一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約25重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約4重量%~約14重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約23重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約58重量%~約68重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約8重量%~約12重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約7重量%~約11重量%の塩化ナトリウムと、約16重量%~約20重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約61重量%~約65重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約8重量%~約10重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約19重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約64重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約9重量%の塩化ナトリウムと、約18重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約63重量%のマンニトールとを含む。
【0089】
別の好ましい態様では、吸入性乾燥粒子は、約0.1重量%~約8重量%のDHEメシル酸塩と、約4重量%~約15重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約25重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約73重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約5重量%のDHEメシル酸塩と、約8重量%~約12重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約22重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66重量%~約70重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約2重量%~約4重量%のDHEメシル酸塩と、約8.7重量%~約10.7重量%の塩化ナトリウムと、約18.4重量%~約20.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66.9重量%~約68.9重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約3重量%のDHEメシル酸塩と、約9.7重量%の塩化ナトリウムと、約19.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約67.9重量%のマンニトールとを含む。
【0090】
一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約0.1重量%~約8重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約4重量%~約15重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約25重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約73重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約5重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約8重量%~約12重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約22重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66重量%~約70重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約2重量%~約4重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約8.7重量%~約10.7重量%の塩化ナトリウムと、約18.4重量%~約20.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66.9重量%~約68.9重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約3重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約9.7重量%の塩化ナトリウムと、約19.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約67.9重量%のマンニトールとを含む。
【0091】
一部の実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約0.1重量%~約8重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約4重量%~約15重量%の塩化ナトリウムと、約13重量%~約25重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約62重量%~約73重量%のマンニトールとを含む。例えば、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約5重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約8重量%~約12重量%の塩化ナトリウムと、約17重量%~約22重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66重量%~約70重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約2重量%~約4重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約8.7重量%~約10.7重量%の塩化ナトリウムと、約18.4重量%~約20.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約66.9重量%~約68.9重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約3重量%のDHEメシル酸塩(結晶質)と、約9.7重量%の塩化ナトリウムと、約19.4重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)と、約67.9重量%のマンニトールとを含む。
【0092】
別の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)を含み、DHEメシル酸塩は、約0.1%~約15%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約65%~約85%の量で存在し、ロイシンは、約12%~約25%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。例えば、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約10重量%のDHEメシル酸塩と、約71重量%~約81重量%の塩化ナトリウムと、約14重量%~約24重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約10重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約71重量%~約81重量%の塩化ナトリウムと、約14重量%~約24重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約4重量%~約6重量%のDHEメシル酸塩と、約75重量%~約77重量%の塩化ナトリウムと、約18重量%~約20重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約4重量%~約6重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約75重量%~約77重量%の塩化ナトリウムと、約18重量%~約20重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%のDHEメシル酸塩と、約76重量%の塩化ナトリウムと、約19重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約76重量%の塩化ナトリウムと、約19重量%のロイシン(例えば、L-ロイシン)とを含む。
【0093】
別の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、及びマンニトールを含み、DHEメシル酸塩は、約0.1%~約15%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約38%~約58%の量で存在し、マンニトールは、約38%~約58%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。例えば、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約10重量%のDHEメシル酸塩と、約43重量%~約52重量%の塩化ナトリウムと、約43重量%~約52重量%のマンニトールとを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約1重量%~約10重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約43重量%~約52重量%の塩化ナトリウムと、約43重量%~約52重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約4重量%~約6重量%のDHEメシル酸塩と、約46.5重量%~約48.5重量%の塩化ナトリウムと、約46.5重量%~約48.5重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約4重量%~約6重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約46.5重量%~約48.5重量%の塩化ナトリウムと、約46.5重量%~約48.5重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%のDHEメシル酸塩と、約47.5重量%の塩化ナトリウムと、約47.5重量%のマンニトールとを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約47.5重量%の塩化ナトリウムと、約47.重量%のマンニトールとを含む。
【0094】
別の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、硫酸ナトリウム、マンニトール、及びポリソルベート80を含み、DHEメシル酸塩は、約1%~約25%の量で存在し、硫酸ナトリウムは、約38%~約58%の量で存在し、マンニトールは、約38%~約58%の量で存在し、ポリソルベート80は約0.1%~約5%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。例えば、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約15重量%のDHEメシル酸塩と、約43重量%~約52重量%の硫酸ナトリウムと、約43重量%~約52重量%のマンニトールと、約0.2重量%~約2.0重量%のポリソルベート80とを含むことができる。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約15重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、ナノサイズ)と、約43重量%~約52重量%の硫酸ナトリウムと、約43重量%~約52重量%のマンニトールと、約0.2重量%~約2.0重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約5重量%~約15重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、マイクロサイズ)と、約43重量%~約52重量%の硫酸ナトリウムと、約43重量%~約52重量%のマンニトールと、約0.2重量%~約2.0重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩と、約46.5重量%~約48.5重量%の硫酸ナトリウムと、約46.5重量%~約48.5重量%のマンニトールと、約0.5重量%~約1.5重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、ナノサイズ)と、約46.5重量%~約48.5重量%の硫酸ナトリウムと、約46.5重量%~約48.5重量%のマンニトールと、約0.5重量%~約1.5重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約9重量%~約11重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、マイクロサイズ)と、約46.5重量%~約48.5重量%の硫酸ナトリウムと、約46.5重量%~約48.5重量%のマンニトールと、約0.5重量%~約1.5重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩と、約47.5重量%の塩化ナトリウムと、約47重量%のマンニトールと、約1重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、ナノサイズ)と、約47.5重量%の塩化ナトリウムと、約47重量%のマンニトールと、約1重量%のポリソルベート80とを含む。一実施形態では、吸入性乾燥粒子は、約10重量%のDHEメシル酸塩(結晶質、マイクロサイズ)と、約47.5重量%の塩化ナトリウムと、約47重量%のマンニトールと、約1重量%のポリソルベート80とを含む。
【0095】
別の態様では、吸入性乾燥粒子は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、マンニトール、及びロイシン(例えば、L-ロイシン)を含み、DHEメシル酸塩は、約10%~約40%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約1%~約20%の量で存在し、マンニトールは、約40%~約80%の量で存在し、ロイシンは、約10%~約30%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。例えば、吸入性乾燥粒子は、約12重量%~約35重量%のDHEメシル酸塩と、約3重量%~約15重量%の塩化ナトリウムと、約45重量%~約75重量%のマンニトールと、約12重量%~約24重量%のロイシンとを含むことができる。特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、約12重量%~約35重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約3重量%~約15重量%の塩化ナトリウムと、約45重量%~約75重量%のマンニトールと、約12重量%~約24重量%のロイシンとを含む。より特定の態様では、吸入性乾燥粒子は、約14重量%~約31重量%のDHEメシル酸塩(非晶質)と、約4重量%~約10重量%の塩化ナトリウムと、約42重量%~約72重量%のマンニトールと、約17重量%~約19重量%のロイシンとを含む。
【0096】
特定の乾燥粉末及び吸入性乾燥粒子は、下記の表1に示す配合を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【0097】
乾燥粉末及び乾燥粒子の特性
本発明の乾燥粒子は、好ましくは小さく、緻密で、分散性である。通常、本発明の乾燥粒子は、1.0バールでHELOS/RODOSによって測定したとき、約10μm以下(例えば、約0.1μm~約10μm)の体積中央幾何径(VMGD)を有する。好ましくは、本発明の乾燥粒子は、1.0バールでHELOS/RODOSによって測定されたとき、約9μm以下(例えば、約0.1μm~約9μm)、約8μm以下(例えば、約0.1μm~約8μm)、約7μm以下(例えば、約0.1μm~約7μm)、約6μm以下(例えば、約0.1μm~約6μm)、約5μm以下(例えば、5μm未満、約0.1μm~約5μm)、約4μm以下(例えば、0.1μm~約4μm)、約3μm以下(例えば、0.1μm~約3μm)、約2μm以下(例えば、0.1μm~約2μm)、約1μm以下(例えば、0.1μm~約1μm)、約1μm~約6μm、約1μm~約5μm、約1μm~約4μm、約1μm~約3μm、または、約1μm~約2μmのVMGDを有する。
【0098】
吸入性乾燥粉末は、少なくとも1.5のハウスナー比を有することができ、ハウスナー比は、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、または少なくとも2.7であってもよい。
【0099】
通常、本発明の乾燥粒子は分散性を有し、1バール/4バール及び/または0.5バール/4バール、及び/または0.2バール/4バール、及び/または0.2バール/2バールの比が、約2.2以下(例えば、約1.0~約2.2)、または約2.0以下(例えば、約1.0~約2.0)である。好ましくは、本発明の乾燥粒子は、1バール/4バール、及び/または0.5バール/4バールの比が、約1.9以下(例えば、約1.0~約1.9)、約1.8以下(例えば、約1.0~約1.8)、約1.7以下(例えば、約1.0~約1.7)、約1.6以下(例えば、約1.0~約1.6)、約1.5以下(例えば、約1.0~約1.5)、約1.4以下(例えば、約1.0~約1.4)、約1.3以下(例えば、1.3未満、約1.0~約1.3)、約1.2以下(例えば、1.0~約1.2)、約1.1以下(例えば、1.0~約1.1)である。或いは、本発明の乾燥粒子は、1バール/4バール及び/または0.5バール/4バールの比が約1.0である。好ましくは、1バール/4バール及び/または0.5バール/4バールは、HELOS/RODOSシステムを使用するレーザ回折によって測定される。
【0100】
或いは、または更には、本発明の吸入性乾燥粒子は、約10ミクロン以下のMMAD、例えば約0.5ミクロン~約10ミクロンのMMADを有することができる。好ましくは、本発明の乾燥粒子は、約5ミクロン以下(例えば、約0.5ミクロン~約5ミクロン、好ましくは、約1ミクロン~約5ミクロン)、約4ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約4ミクロン)、約3.8ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約3.8ミクロン)、約3.5ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約3.5ミクロン)、約3.2ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約3.2ミクロン)、約3ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約3.0ミクロン)、約2.8ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約2.8ミクロン)、約2.2ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約2.2ミクロン)、約2.0ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約2.0ミクロン)、または約1.8ミクロン以下(例えば、約1ミクロン~約1.8ミクロン)のMMADを有する。
【0101】
或いは、または更には、本発明の吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子は、約5.6ミクロン未満の微粒子画分(FPF)(FPF<5.6μm)が少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または少なくとも約70%であってもよい。
【0102】
或いは、または更には、本発明の乾燥粉末及び乾燥粒子は、約5.0ミクロン未満のFPF(FPF_TD<5.0μm)が少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約45%、好ましくは少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または少なくとも約70%である。或いは、または更には、本発明の乾燥粉末及び乾燥粒子は、放出用量の5.0ミクロン未満のFPF(FPF_ED<5.0μm)が少なくとも約45%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約85%である。或いは、または更には、本発明の乾燥粉末及び乾燥粒子は、約3.4ミクロン未満のFPF(FPF<3.4μm)が少なくとも約20%、好ましくは少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または少なくとも約55%であってもよい。
【0103】
或いは、または更には、本発明の吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子は、約0.1g/cm3~約1.0g/cm3のタップ密度を有する。例えば、小さく分散可能な乾燥粒子は、約0.1g/cm3~約0.9g/cm3、約0.2g/cm3~約0.9g/cm3、約0.2g/cm3~約0.9g/cm3、約0.3g/cm3~約0.9g/cm3、約0.4g/cm3~約0.9g/cm3、約0.5g/cm3~約0.9g/cm3、または約0.5g/cm3~約0.8g/cm3、約0.4g/cc超、約0.5g/cc超、約0.6g/cc超、約0.7g/cc超、約0.1g/cm3~約0.8g/cm3、約0.1g/cm3~約0.7g/cm3、約0.1g/cm3~約0.6g/cm3、約0.1g/cm3~約0.5g/cm3、約0.1g/cm3~約0.4g/cm3、約0.1g/cm3~約0.3g/cm3、または0.3g/cm3未満のタップ密度を有する。一実施形態では、タップ密度は約0.4g/cm3より大きい。別の一実施形態では、タップ密度は約0.5g/cm3より大きい。或いは、タップ密度は約0.4g/cc未満であってもよい。
【0104】
或いは、または更には、本発明の吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子は、水または溶媒の含有量が吸入性乾燥粒子の約15重量%未満であってもよい。例えば、本発明の吸入性乾燥粒子は、水または溶媒の含有量が約15重量%未満、約13重量%未満、約11.5重量%未満、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満であるか、もしくは無水であってもよい。本発明の吸入性乾燥粒子は、水または溶媒の含有量が約6%未満且つ約1%超、約5.5%未満且つ約1.5%超、約5%未満且つ約2%超、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%であってもよい。
【0105】
本明細書に記載される特徴及び特性のいずれか、任意の組み合わせに加えて、吸入性乾燥粒子は、高発熱性ではない溶解熱を有することができる。好ましくは、溶解熱は、模擬肺液のイオン液体を用いて(例えば、Moss,O.R.1979.Simulants of lung interstitial fluid.Health Phys.36,447-448;またはSun,G.2001.Oxidative interactions of synthetic lung epithelial lining fluid with metal-containing particulate matter.Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.281,L807-L815に記載のように)、等温熱量計によりpH7.4及び37℃の条件で決定することができる。例えば、吸入性乾燥粒子は、塩化カルシウム二水和物の溶解熱より発熱性の低い溶解熱を有することができ、例えば、約-10kcal/mol超、約-9kcal/mol超、約-8kcal/mol超、約-7kcal/mol超、約-6kcal/mol超、約-5kcal/mol超、約-4kcal/mol超、約-3kcal/mol超、約-2kcal/mol超、約-1kcal/mol超、または約-10kcal/mol~約10kcal/molの溶解熱を有してもよい。
【0106】
吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子は、約2ジュール未満、または約1ジュール未満、または約0.8ジュール未満、または約0.5ジュール未満、または約0.3ジュール未満の総吸入エネルギーが乾燥粉末吸入器に印加されたとき、高い放出用量(例えば、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のCEPM)を有する。乾燥粉末は単位用量容器を充填することができ、或いは、単位用量容器を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%まで充填することができる。単位用量容器はカプセルであってもよい(例えば、カプセルサイズは000、00、0E、0、1、2、3、4であって、各体積容量は1.37mL、950μL、770μL、680μL、480μL、360μL、270μL、200μLである)。
【0107】
粉末及び/または吸入性乾燥粒子は、好ましくは、低い吸入エネルギーでも投与が可能である。異なる吸入流量、吸入量、抵抗の異なる吸入器からの粉末の分散を関連付けるために、吸入操作に必要なエネルギーを計算してもよい。吸入エネルギーは式E=R2Q2Vから計算できる。Eは吸入エネルギー(ジュール)、Rは吸入抵抗(kPa1/2/LPM)、Qは定常流量(L/分)、Vは吸入空気量(L)である。
【0108】
乾燥粉末吸入器に関するFDA指針文書と、成人が様々な乾燥粉末吸入器(DPI)を介して平均2.2Lの吸入量を吸入していることを発見したTiddens et al.の研究(Journal of Aerosol Med,19(4),456-465,2006)の両方に基づき、0.02と0.055kPa1/2/LPMの2つの吸入器抵抗、吸入量2Lからの流量をQとして、Clarke et al.(Journal of Aerosol Med,6(2),99-110,1993)によって測定されたピーク吸気流量(PIFR)を適用すると、健常者の成人の吸入エネルギーは、穏やかな吸入で2.9ジュール~最大吸入で22ジュールの範囲となると予測される。
【0109】
本発明の態様は、広範囲の流量にわたって良好に分散し、比較的流量に依存しない粉末を生成できるという利点を有する。特定の態様では、本発明の乾燥粒子及び粉末は、幅広い患者集団で単純な受動型のDPIを使用できるようにする。
【0110】
好ましい態様では、吸入性乾燥粉末は、以下の特徴を有する吸入性乾燥粒子を含む。
1. HELOS/RODOSシステムを使用して1バールで測定したVMGDが0.5ミクロン~10ミクロン、好ましくは1ミクロン~7ミクロン、1ミクロン~5ミクロン、または1ミクロン~3ミクロンであり、
2. 1バール/4バールの比が1.6以下、好ましくは1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、または1.1未満であり、及び
3. タップ密度が約0.2g/cm3~約1.2g/cm3、0.3g/cm3~約1.0g/cm3、0.4g/cm3~約1.0g/cm3、0.5g/cm3~約1.0g/cm3、または約0.6g/cm3~約0.9g/cm3である。
【0111】
別の好ましい態様では、吸入性乾燥粉末は、以下の特徴を有する吸入性乾燥粒子を含む。
1. HELOS/RODOSシステムを使用して1バールで測定したVMGDが0.5ミクロン~10ミクロン、好ましくは1ミクロン~7ミクロン、1ミクロン~5ミクロン、または1ミクロン~3ミクロンであり、
2. 1バール/4バールの比が1.6以下、好ましくは1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、または1.1未満であり、及び
3. MMADが0.5~6.0、1.0~5.0、または1.0~3.0である。このような態様では、乾燥粉末は、好ましくは、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含む吸入性乾燥粒子を含み、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約30重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約2重量%~約25重量%の量で存在し、マンニトールは、約35重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約5重量%~約35重量%の量で存在し、より好ましくは、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約15重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約4重量%~約14重量%の量で存在し、マンニトールは、約55重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約12重量%~約25重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0112】
別の好ましい態様では、吸入性乾燥粉末は、以下の特徴を有する吸入性乾燥粒子を含む。
1. HELOS/RODOSシステムを使用して1バールで測定したVMGDが0.5ミクロン~10ミクロン、好ましくは1ミクロン~7ミクロン、1ミクロン~5ミクロン、または1ミクロン~3ミクロンであり、
2. 1バール/4バールの比が1.6以下、好ましくは1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、または1.1未満であり、及び
3. FPF_TD<5.0μmは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%である。このような態様では、乾燥粉末は、DHEメシル酸塩、塩化ナトリウム、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、及びマンニトールを含む吸入性乾燥粒子を含み、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約30重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約2重量%~約25重量%の量で存在し、マンニトールは、約35重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約5重量%~約35重量%の量で存在し、より好ましくは、DHEメシル酸塩は、約1重量%~約15重量%の量で存在し、塩化ナトリウムは、約4重量%~約14重量%の量で存在し、マンニトールは、約55重量%~約75重量%の量で存在し、ロイシンは、約12重量%~約25重量%の量で存在し、全ての百分率は、乾燥ベースの重量パーセントであり、吸入性乾燥粒子のすべての成分の合計が100%となる。
【0113】
本明細書に記載の吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、吸入に適している。吸入性乾燥粒子は、肺深部、上気道、中央気道などの呼吸器系の選択された領域に局所的に送達できるように、適切な材料、表面粗さ、直径、密度で製造され得る。例えば、より高密度、またはより大きな吸入性乾燥粒子を上気道送達に使用してもよく、或いは、サンプル中のさまざまなサイズの吸入性乾燥粒子の混合物を、同一または異なる配合を以って、1回の投与で肺の異なる領域を標的とするように投与してもよい。
【0114】
本明細書に記載の吸入性乾燥粉末及び吸入性乾燥粒子は塩を含むため、吸湿性である可能性がある。従って、吸入性乾燥粉末及び吸入性乾燥粒子を、粉末の水和を防ぐ条件下で保管または維持することが望ましい。例えば、湿気を防ぐことが望ましい場合、保管環境の相対湿度は75%未満、60%未満、50%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満でなければならない。別の実施形態では、保管環境は、湿度が20%~40%、25%~35%、約30%、10%~20%、または約15%であるべきである。吸入性乾燥粉末及び吸入性乾燥粒子は、これらの条件下で(例えば、密封カプセル、ブリスター、バイアルに)包装することができる。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明の吸入性乾燥粉末または吸入性乾燥粒子は、噴射剤を使用せずに(例えば、受動型の乾燥粉末吸入器を使用して)呼吸器系への吸入性乾燥粒子の効果的な送達を可能にするエアロゾル特性を有する。好ましい実施形態では、吸入性乾燥粉末は、例えば加圧装置を用いた投与のための噴射剤と組み合わせない。
【0116】
本発明の一態様では、吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、ブリスター、カプセル、リザーバ、バイアルなどの容器(または単位用量容器)に収容される。好ましい一態様では、吸入性乾燥粉末はブリスター内に収容される。別の好ましい態様では、吸入性乾燥粉末はカプセルに収容される。
【0117】
容器は、任意の所望の量の吸入性乾燥粉末を収容することができる。例えば、容器は約20mg以下の乾燥粉末を含んでもよく、例えば、約10mg以下、または約5mg以下、例えば、約1mg~約20mg、約1mg~約10mg、約1mg~約5mg、約5mg~約10mg、約10mg~約20mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、例えば、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgの乾燥粉末を含んでもよい。好ましい態様では、容器は、約1mg~約20mgの乾燥粉末を含んでもよく、例えば、約2mg~約15mg、または約2mg~約10mgの乾燥粉末、例えば約2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、または10mgの乾燥粉末を含んでもよい。一実施形態では、容器は約5mgの乾燥粉末を含む。
【0118】
乾燥粉末は容器をすべて充填することができ、または、容器を、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%まで充填することができる。容器はカプセルであってもよい(例えば、カプセルサイズは000、00、0E、0、1、2、3、4であって、各体積容量は1.37mL、950μL、770μL、680μL、480μL、360μL、270μL、200μLである)。カプセルは、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%まで充填することができる。容器はブリスターであってもよい。ブリスターは、単一のブリスター、または一連のブリスター、例えば、7個のブリスター、14個のブリスター、28個のブリスター、または30個のブリスターの一部として包装することができる。1つ以上のブリスターは、好ましくは少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも70%充填することができる。
【0119】
容器は、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体(例えば、DHEメシル酸塩)の任意の名目用量を含んでもよい。好ましい態様では、容器は、約50μg~約5000μg、または約75μg~約2000μgのDHEメシル酸塩、または約100μg~約1000μgのDHEメシル酸塩を、DHEメシル酸塩の名目用量として含む。例えば、容器は、約50μg~約200μg、約100μg~約200μg、約250μg~約750μg、約300μg~約600μg、または約50μg、約75μg、約100μg、約125μg、約150μg、約175μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1000μg、約1250μg、または約1500μgのDHEメシル酸塩を含んでもよい。
【0120】
本明細書に記載され特徴付けられる容器、乾燥粉末及び/または吸入性乾燥粒子は、本明細書に記載の任意のDPIを含む、乾燥粉末吸入器(DPI)などの任意の適切な装置に収容されてもよい。一部の実施形態では、DPIは受動型のDPIである。DPIは、カプセルベースのDPI、ブリスターベースのDPI、またはリザーバベースのDPIなど、乾燥粉末を含む容器を収容するための、及び/または乾燥粉末を投与するための任意の適切なDPIであってもよい。一部の実施形態では、乾燥粉末吸入器(DPI)に含まれていてもよい。好ましい一態様では、DPIはカプセルベースのDPIである。より好ましくは、DPIは、乾燥粉末吸入器のRS01製品群(Plastiape S.p.A.,Italy)から選択される。より好ましくは、乾燥粉末吸入器は、RS01 HR、RS01 UHR、またはRS01 UHR2から選択される。
【0121】
乾燥粉末及び乾燥粒子の調製方法
吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、適切な方法を使用して調製することができる。吸入性乾燥粉末及び粒子を調製するための適切な方法は、多くが当該技術分野において周知のものであり、単一及び二重エマルジョンの溶媒蒸発、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、粉砕(例えば、ジェット粉砕)、混合、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純及び複雑なコアセルベーション、界面重合、超臨界二酸化炭素(CO2)の使用を含む適切な方法、超音波結晶化、ナノ粒子凝集体形成、それらの組み合わせを含むその他の方法などが挙げられる。吸入性乾燥粒子は、当技術分野で周知のミクロスフェアまたはマイクロカプセルの製造方法を使用して製造することができる。これらの方法は、所望の空気力学的特性(例えば、空気力学的直径及び幾何径)を有する吸入性乾燥粒子の形成をもたらす条件下で使用することができる。必要に応じて、大きさや密度などの望ましい特性を備えた吸入性乾燥粒子を、ふるい分けなどの適切な方法を使用して選択することができる。
【0122】
大きさや密度などの望ましい特性を備えた吸入性乾燥粒子を選択するための適切な方法としては、湿式ふるい分け、乾式ふるい分け、空気力学分級機(サイクロンなど)が挙げられる。
【0123】
吸入性乾燥粒子は、好ましくは噴霧乾燥を施される。適切な噴霧乾燥技術は、例えば、K.Mastersの“Spray Drying Handbook”,John Wiley & Sons,New York(1984)に記載されている。通常、噴霧乾燥中、加熱空気または窒素などの高温ガスからの熱を用いて、連続供給液を噴霧して形成された液滴から溶媒を蒸発させる。必要に応じて、乾燥粒子を調製するために使用される噴霧乾燥または他の機器、例えばジェットミリング機器は、製造中の吸入性乾燥粒子の幾何径を定めるインライン幾何学的粒径測定装置、及び/または製造中の吸入性乾燥粒子の空気力学的直径を定めるインライン空気力学的粒径測定装置を含んでもよい。
【0124】
噴霧乾燥の場合、適切な溶媒(例えば、水性溶媒、有機溶媒、水性有機混合物、またはエマルジョン)に製造すべき乾燥粒子の成分を含む溶液、エマルジョンまたは懸濁液を、噴霧装置を介して乾燥容器に分配させる。例えば、ノズルや回転式噴霧器を使用して、溶液または懸濁液を乾燥容器に分配してもよい。例えば、4枚または24枚の羽根車を有する回転式噴霧器を使用してもよい。回転式噴霧器またはノズルのいずれかを装備できる適切なスプレードライヤーには様々な選択肢があるが、中でも、GEA Group(Niro,Denmark)製のMobile Minor Spray DryerまたはModel PSD-1、Buchi B-290 Mini Spray Dryer(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)、ProCepT Formatrix R&D スプレードライヤー(ProCepT nv,Zelzate,Belgium)などが挙げられる。実際の噴霧乾燥条件は、噴霧乾燥溶液または懸濁液の組成及び物質の流量によって部分的に異なる。当業者は、噴霧乾燥される溶液、エマルジョンまたは懸濁液の組成、所望の粒子特性及び他の要因に基づいて、適切な条件を定めることができるはずである。一般に、噴霧乾燥機への入口温度は約90℃~約300℃であり、好ましくは約220℃~約285℃である。噴霧乾燥機の出口温度は、供給温度や乾燥される物質の特性などの要因に応じて変化する。必要に応じて、製造された吸入性乾燥粒子は、例えばふるいを用いて体積サイズに基づき分別してもよく、サイクロンを用いて空気力学的サイズに基づき分別してもよく、及び/または、当業者に周知の技術を以って、密度に基づいてさらに分別してもよい。
【0125】
本発明の吸入性乾燥粒子を調製するには、一般に、乾燥粉末の所望の成分を含む溶液、エマルジョンまたは懸濁液(つまり、原料)を調製し、適切な条件下で噴霧乾燥を行う。好ましくは、原料中の溶解または懸濁固体濃度は少なくとも約1g/L、少なくとも約2g/L、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約40g/L、少なくとも約50g/L、少なくとも約60g/L、少なくとも約70g/L、少なくとも約80g/L、少なくとも約90g/L、または少なくとも約100g/Lである。原料は、適切な成分(例えば、塩、賦形剤、他の活性成分)を適切な溶媒に溶解または懸濁することによって単一の溶液または懸濁液を調製して提供してもよい。溶媒、エマルジョンまたは懸濁液は、乾燥成分及び/または液体成分のバルク混合、または組み合わせを形成するための液体成分の静的混合など、適切な方法を使用して調製することができる。例えば、親水性成分(例えば、水溶液)と疎水性成分(例えば、有機溶液)は、静的ミキサーを使用して混合して、組み合わせることができる。次いで、この組み合わせを噴霧して液滴を生成し、これを乾燥させて吸入性乾燥粒子を形成する。好ましくは、噴霧ステップは、成分が静的ミキサー内で混合された直後に行われる。或いは、噴霧ステップを、バルク混合溶液で行う。
【0126】
原料または原料の成分は、有機溶媒、水性溶媒またはそれらの混合物などの適切な溶媒を使用して調製することができる。使用し得る適切な有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。他の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、パーフルオロカーボン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。使用し得る共溶媒としては、水性溶媒及び有機溶媒、例えば、上記のような有機溶媒が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。水性溶媒には、水及び緩衝溶液が含まれる。
【0127】
原料または原料の成分は、任意の所望のpH、粘度、または他の特性を有してもよい。必要に応じて、溶媒または共溶媒、または形成された混合物にpH緩衝剤を添加することができる。通常、混合物のpHは約3~約8の範囲である。メタンスルホン酸は、溶媒として使用すべく水を酸性化するために使用される。
【0128】
吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、製造の後、例えば濾過やサイクロンによる遠心分離によって分離し、事前に選択された粒径分布を有する粒子サンプルを提供することができる。例えば、サンプルにおける吸入性乾燥粒子の約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超が、選択した範囲内の直径を有してもよい。吸入性乾燥粒子の特定の割合が含まれる選択範囲は、例えば、約0.1~約3ミクロンのVMGD、または0.5~約5ミクロンのVMGDなど、本明細書に記載される粒径範囲のいずれかであってもよい。
【0129】
本発明はまた、本明細書に記載の方法に従って原料溶液、エマルジョンまたは懸濁液を調製し、原料を噴霧乾燥することによって製造される、吸入性乾燥粉末または吸入性乾燥粒子に関する。原料は、例えば、ジヒドロエルゴタミン(DHE)、またはジヒドロエルゴタミンメシル酸塩などのその塩、水和物もしくは多形体の(例えば、原料の調製に用いられる総溶質の)約1重量%~99重量%と、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの一価金属カチオン塩の(例えば、原料の調製に用いられる総溶質の)約1重量%~99重量%と、ロイシン(例えば、L-ロイシン)、マンニトール、または両方などの1つ以上の賦形剤をそれぞれ(例えば、原料の調製に用いられる総溶質の)約1重量%~99重量%と、溶質の溶解と原料の形成に適切な1つ以上の溶媒とを使用して、調製することができる。好ましい一実施形態では、原料の調製に用いられる総溶質の約1重量%~約25重量%の量のDHEメシル酸塩(例えば、約1重量~約15重量%、例えば、約3重量%、約5重量%、または約10重量%)、原料の調製に用いられる総溶質の約3重量%~約15重量%の量の塩化ナトリウム(例えば、約9重量%または9.7重量%)、原料の調製に用いられる総溶質の約12重量%~約26重量%の量のロイシン(例えば、L-ロイシン)(例えば、約18重量%または19.4重量%)、及び、原料の調製に用いられる総溶質の約57重量%~約74重量%の量のマンニトール(例えば、約63重量%または67.9重量%)、ならびに、溶質の溶解と原料の形成に適切な1つ以上の溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドと水の混合物、例えば、DMF/水の3:7混合物)を用いて、原料を調製する。
【0130】
溶質と溶媒を混合して原料を調製するために、任意の適切な方法を使用することができる(例えば、静的混合、バルク混合)。必要に応じて、混合を引き起こす、または混合を促進する追加の成分を原料に導入してもよい。例えば、二酸化炭素は発泡や発泡を引き起こすため、溶質と溶媒の物理的混合を促進することができる。炭酸塩または重炭酸塩の様々な塩は、二酸化炭素が生成するものと同じ効果を促進し得るので、従って、本発明の原料の調製に使用することができる。
【0131】
一実施形態では、本発明の吸入性乾燥粉末または吸入性乾燥粒子は、イオン交換反応によって製造することができる。本発明の特定の実施形態では、静的混合後に飽和または過飽和の溶液を得るために、2つの飽和または亜飽和溶液を静的ミキサーに供給する。好ましくは、混合後の溶液は過飽和である。混合後の溶液は、すべての成分が過飽和であってもよく、1つ、2つ、または3つの成分が過飽和であってもよい。
【0132】
2つの溶液は水性であっても有機性であってもよい。活性剤(例えば、DHE、またはその塩、水和物もしくは多形体)が有機溶媒に溶解される場合、一方の供給溶液が有機であり、他方が水性であってもよく、または、両方の供給溶液が有機であってもよい。その後、静的混合後の溶液は、スプレードライヤーの噴霧部に供給される。好ましい一実施形態では、静的混合後の溶液は直ちに噴霧器に供給される。噴霧部の例としては、二流体ノズル、回転式噴霧器、圧力ノズルなどが挙げられる。好ましくは、噴霧部は二流体ノズルである。一実施形態では、二流体ノズルは内部混合ノズルであり、ガスが最も外側のオリフィスへ出る前に液体供給物と衝突する構成である。別の実施形態では、二流体ノズルは外部混合ノズルであり、ガスが最も外側のオリフィスから出た後に液体供給物と衝突する構成である。
【0133】
乾燥粉末及び乾燥粒子の特性評価
吸入性乾燥粒子の直径、例えばVMGDは、Multisizer IIe(Coulter Electronic,Luton,Beds,England)などの電気ゾーン感知装置、またはHELOSシステム(Sympatec,Princeton,NJ)やMastersizerシステム(Malvern,Worcestershire,UK)などのレーザ回折装置を使用して測定することができる。粒子の幾何径を測定する他の機器は当技術分野で周知のものである。サンプル中の吸入性乾燥粒子の直径は、粒子の組成や合成方法などの要因によって異なる。サンプル中の吸入性乾燥粒子の粒径分布は、呼吸器系内の標的部位内に最適に堆積できるように選択することができる。
【0134】
実験的には、飛行時間法(TOF)により空気力学的直径を測定する。例えば、エアロゾル粒子選別器(APS)分光計(TSI Inc.,Shoreview,MN)などの機器を使用して、空気力学的直径を測定することができる。APSは、個々の吸入性乾燥粒子が2つの固定レーザビームの間を通過するまでにかかる時間を測定する。
【0135】
空気力学的直径は、吸入性乾燥粒子のサンプルが一定の距離を沈降するのに必要な時間を測定する、従来の重力沈降法を用いて実験的に直接測定することもできる。間接的に空気力学的中央粒子径を測定する方法としては、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)法と、多段液体インピンジャー(MSLI)法が挙げられる。粒子の空気力学的直径を測定するための方法及び機器は、当技術分野で周知である。
【0136】
タップ密度は、粒子を特徴付けるバルク質量密度の尺度である。統計的に等方的な形状の粒子のバルク質量密度は、粒子の質量を、粒子を包含できる最小球バルク体積で割ったものとして定義される。低タップ密度に寄与する可能性のある特徴には、不規則な表面組織、高い粒子凝集性、多孔質構造が含まれる。タップ密度は、デュアルプラットフォームマイクロプロセッサ制御タップ密度テスター(Vankel,NC)、GeoPycTM機器(Micrometrics Instrument Corp.,Norcross,GA)、またはSOTAXタップ密度テスターモデルTD2(SOTAX Corp.,Horsham,PA)などの当業者に周知の機器を使用して測定することができる。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density,United States Pharmacopeia convention,Rockville,MD,10th Supplement,4950-4951,1999の方法を使用して定めることができる。
【0137】
微粒子画分は、分散粉末のエアロゾル性能を特徴付ける1つの手段として使用できる。微粒子画分は、空気中に浮遊する吸入性乾燥粒子の粒径分布を表す。カスケードインパクタを使用する重量分析は、空気中に浮遊する吸入性乾燥粒子の粒径分布、つまり微粒子画分を測定する1つの方法である。アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)は、空気力学的粒径に基づいてエアロゾルを9つの異なる画分に分離できる8段インパクタである。各段の粒径カットオフ点は、ACIが動作する流量によって異なる。ACIは、一連のノズル(つまり、ジェットプレート)と衝突面(つまり、衝突ディスク)からなる複数の段で構成されている。各段で、エアロゾル流はノズルを通過し、表面に衝突する。十分に大きな慣性を持つエアロゾル流中の吸入性乾燥粒子がプレートに衝突する。プレートに衝突するほどの慣性を持たない、より小さな吸入性乾燥粒子は、エアロゾル流の中に残り、後段に運ばれる。ACIの各連続段で、ノズル内でのエアロゾル速度が速くなるため、より小さな吸入性乾燥粒子を各段で捕集できる。具体的には、8段ACIは、第2段と、最終捕集フィルタを含む全ての後段で収集される粉末の画分が、空気力学的な直径が4.4ミクロン未満の吸入性乾燥粒子で構成されるように較正されている。このような較正時の空気流量は約60L/分となる。
【0138】
粒径分布の測定に使用できるもう1つの方法は、次世代インパクタ(NGI)を使用することである。NGIは、慣性衝突に基づいてエアロゾル粒子を分離する7つの段で構成されており、様々な空気流量で動作することができる。各段で、エアロゾル流は一連のノズルを通過し、対応する衝突面に衝突する。小さい慣性をもつ粒子はエアロゾル流に乗って後段へ進むが、残りの粒子は表面に衝突する。各連続段で、エアロゾルはより高速でノズルを通過し、空気力学的に小さな粒子がプレート上に捕集される。エアロゾルが最終段を通過した後、マイクロオリフィス捕集器が残った最小粒子を集める。次に、重量分析及び/または化学分析を行い、粒径分布を定める。
【0139】
必要に応じて、2段折畳型ACIを使用して微粒子画分を測定することもできる。2段折畳型ACIは、8段ACIの上部2段である第0段及び第2段と、最終捕集フィルタのみで構成されており、2つの別々の粉末画分の捕集が可能である。具体的には、2段折畳型ACIは、2段目で捕集された粉末の画分が、空気力学的直径が5.6ミクロン未満、3.4ミクロン超の吸入性乾燥粒子で構成されるように較正される。したがって、2段目を通過して最終捕集フィルタに堆積する粉末の画分は、空気力学的直径が3.4ミクロン未満の吸入性乾燥粒子となる。このような較正時の空気流量は約60L/分となる。
【0140】
FPF(<5.6)は患者の肺に到達できる粉末の画分と関連することが実証され、一方、FPF(<3.4)は患者の肺の深部に到達する粉末の画分と関連することが実証されている。これらの関連は、粒子の最適化に使用できる定量的な指標を提供する。
【0141】
放出用量は、USP Section 601 Aerosols,Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered-Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers,United States Pharmacopeia convention,Rockville,MD,13th Revision,222-225,2007に記載の方法によって定めることができる。この方法では、患者の投与を模倣するように設定されたin vitroデバイスを用いる。
【0142】
ACIを使用して放出用量を概算することができ、本明細書ではこれを重量回収用量及び分析回収用量と呼ぶ。「重量回収用量」は、ACIの全段のフィルタ上で計量された粉末の、名目用量に対する比として定義される。「分析回収用量」は、ACIの全段、全段のフィルタ、導入ポートのすすぎ及び分析から回収された粉末の、名目用量に対する比として定義される。FPF_TD(<5.0)は、ACI上の5.0μm未満に堆積する粉末の内挿量と名目用量の比である。FPF_RD(<5.0)は、ACI上の5.0μm未満に堆積した粉末の内挿量と、重量回収用量または分析回収用量のいずれかとの比である。
【0143】
或いは、乾燥粉末吸入器(DPI)の作動時に、例えば捕捉またはブリスターなどの容器から出る粉末の量を測り、放出用量を概算することもできる。この場合、カプセルから出る割合が考慮され、DPIに堆積する粉末は考慮されない。放出された粉末の質量は、吸入器作動前の用量を含むカプセルの重量と吸入器作動後のカプセルの重量の差である。この測定値は、カプセル放出粉末質量(CEPM)または「ショット重量」と呼ばれる。
【0144】
多段液体インピンジャー(MSLI)は、微粒子画分の測定に使用できるもう1つの装置である。MSLIはACIと同じ原理で動作するが、MSLIは8段ではなく5段で構成される。更に、MSLIの各段は固体プレートの代わりにエタノールで湿らせたガラスフリットを備える。湿式段は、ACIの使用時に発生する可能性のある粒子の跳ね返りや再飛来を防ぐために使用される。
【0145】
次世代医薬品インパクタ(NGI)は、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、同様の吸入器をテストするための粒子分類カスケードインパクタである。
【0146】
幾何学的粒径分布は、乾燥粉末吸入器(DPI)から放出された後の吸入性乾燥粉末について、Malvern Spraytecなどのレーザ回折装置を使用して測定できる。吸入アダプターをクローズベンチ構成にすると、DPIに気密シールが形成され、出口エアロゾルが内部の流れとしてレーザビームを垂直に通過する。このようにして、真空圧によって既知の流量をDPIから引き込み、DPIを空にすることができる。結果として得られるエアロゾルの幾何学的粒径分布は、光検出器によって、通常、サンプルを吸入期間中1000Hzで取って測定し、吸入期間にわたってDV50、GSD、FPF<5.0μmを測定し、平均する。
【0147】
吸入性乾燥粉末または吸入性乾燥粒子の含水量は、カールフィッシャー滴定機、または熱重量分析法(TGA)によって測定することができる。カールフィッシャー滴定では、電量滴定または容量滴定を使用して、サンプル中の微量の水分を測定する。TGAは、材料の重量の変化を温度の関数として(一定の加熱速度で)、または時間の関数として(一定の温度及び/または一定の質量損失で)測定する熱分析方法である。TGAで、試験対象材の水分含有量や残留溶媒含有量を測定することができる。
【0148】
本発明はまた、本明細書に記載の方法のいずれかで製造される、吸入性乾燥粉末または吸入性乾燥粒子に関する。
【0149】
本発明の吸入性乾燥粒子は、吸入性乾燥粒子が含む成分の物理化学的安定性によって特徴付けることもできる。成分の物理化学的安定性は、保存期間、適切な保管条件、投与に許容される環境、生物学的適合性、有効性などの吸入性粒子の重要な特性に影響を与える可能性がある。化学的安定性は、当技術分野で周知の技術を使用して評価することができる。化学的安定性を評価するために使用できる手法の一例は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)である。
【0150】
必要に応じて、本明細書に記載の吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末を更に加工して安定性を高めることができる。医薬品乾燥粉末の重要な特性は、様々な温度や湿度条件下で安定を維持できることである。不安定な粉末は環境から水分を吸収して凝集するので、粉末の粒径分布も変化してしまう。
【0151】
治療上の用途及び治療方法
本発明の吸入性乾燥粉末及び吸入性乾燥粒子は、気道に投与するためのものである。例えば、本明細書に記載の吸入性乾燥粉末は、片頭痛またはその症状を治療するために、吸入(例えば、経口吸入)を介して、それを必要とする対象に投与することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の吸入性乾燥粉末は、頭痛またはその症状(例えば、群発頭痛)を治療するために、それを必要とする対象に投与することができる。
【0152】
吸入性乾燥粉末は、片頭痛またはその症状を治療するために使用することができる。片頭痛には、あらゆる形態の片頭痛、例えば前兆のある片頭痛、前兆のない片頭痛、群発性片頭痛、脳底部片頭痛、発作性片頭痛、慢性片頭痛、難治性片頭痛、片麻痺性片頭痛、トリプタン耐性片頭痛、小児片頭痛、重積片頭痛、アロディニアを伴う片頭痛、月経時片頭痛、覚醒時片頭痛、または急速に発症する片頭痛などが含まれる。
【0153】
一部の実施形態では、有効量の吸入性乾燥粉末を投与することにより、片頭痛の1つ以上の症状を寛解(例えば、完全または部分的寛解)することができる。片頭痛の症状の例には、痛み、吐き気、音声恐怖症、羞明などが含まれる。一部の態様では、有効量の吸入性乾燥粉末を投与すると、対象における痛み、吐き気、音声恐怖症、羞明、またはそれらの組み合わせの程度が軽減される。
【0154】
有効量の吸入性乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、投与後約2時間以内、例えば、乾燥粉末の投与後約1.5時間、約1時間、約0.5時間、またはそれ未満の時間以内に、片頭痛またはその症状の寛解(例えば部分的または完全な寛解)がもたらされる。好ましい一態様では、有効量の吸入性乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、約1時間以内に片頭痛またはその症状の寛解(例えば、部分的または完全な寛解)がもたらされる。別の好ましい態様では、有効量の吸入性乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、約0.75時間以内に片頭痛またはその症状の寛解(例えば、部分的または完全な寛解)がもたらされる。別の好ましい態様では、有効量の吸入性乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、約0.5時間以内に片頭痛またはその症状の寛解(例えば、部分的または完全な寛解)がもたらされる。
【0155】
有効量の吸入性乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、片頭痛またはその症状の持続的な寛解(例えば、部分的または完全な寛解)ももたらされる。例えば、それを必要とする対象へと吸入性乾燥粉末を投与した後、片頭痛またはその症状の寛解は、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、またはそれ以上、持続することができる。
【0156】
片頭痛またはその症状の寛解は、International Headache Society(IHS)が推奨する尺度、100-mm Visual Analogue Scale、11点数値評価スケール、及び/または他の適切な方法、例えば、Diener,H.-C.Cephalagia(2019),39(6):687-710に記載の方法などの、任意の適切な症状の強度や機能障害の尺度を適用して測定できる。例えば、片頭痛またはその症状の寛解は、治療後2時間での痛みの消失によって判断できる。或いは、またはそれに加えて、片頭痛またはその症状の寛解は、4点スケールを使用した頭痛強度スコアの減少によって判定することができる(例えば、0=頭痛なし、1=軽度の頭痛、2=中等度の頭痛、3=重度の頭痛)。例えば、スコアが3から2、3から1、3から0、2から1、2から0、または1から0に減少していれば、寛解を意味する。
【0157】
乾燥粉末は、片頭痛の段階に関わらず、それを必要とする対象に投与し、片頭痛またはその症状の効果的な寛解をもたらすことができる。例えば、乾燥粉末は、片頭痛の前駆期、前兆期、頭痛発作期、または後症状期中に投与することができる。一実施形態では、乾燥粉末は、片頭痛の前兆期中にそれを必要とする対象に投与される。一実施形態では、乾燥粉末は、片頭痛の頭痛発作期中にそれを必要とする対象に投与される。
【0158】
DHEの投与には特定の副作用が伴う可能性がある。DHEの一般的な副作用(例えば、静脈内投与後の副作用)には、嘔吐、吐き気、胸部圧迫感などがある。他の副作用としては、心血管への影響(例えば、血圧の不安定、動脈収縮、高血圧、または心臓弁膜症)、感覚異常、不安、呼吸困難、頭痛、胃不全麻痺、下痢、皮膚の発疹、眠気、めまい、潮紅、発汗の増加、後腹膜線維症、胸膜線維症などが挙げられる(Silberstein,S.,同上、Saper,J.,同上、D.H.E.45(登録商標)[添付文書].Aliso Viejo,CA:Valeant Pharmaceuticals)。本発明の利点は、有効量の本明細書に開示される乾燥粉末を、それを必要とする対象に吸入によって投与することで、別の経路(例えば、静脈内)による有効量のDHEの投与に一般的に伴う副作用を軽減または排除できるということである。
【0159】
好ましい一態様では、それを必要とする対象への乾燥粉末の投与は、嘔吐を引き起こさず、及び/または制吐薬を対象に投与することも必要としない。そのような制吐薬は、例えば、静脈内DHEを受ける対象に典型的に投与される制吐薬(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミド、プロメタジン、プロクロルペラジン、ドンペリドン、またはアプレピタント)である。
【0160】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示される有効量の乾燥粉末の吸入は、従来のDHE投与またはDHE投与経路(例えば、静脈内DHE)に対して優れた薬物動態をもたらし、迅速な治療効果、例えば、1時間以内(例えば、約30分)での症状の部分的または完全な寛解、及び比較的低い副作用の発生率または重篤度に寄与すると考えられ、優れた薬物動態としては、例えば、(i)ピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が約20分以内であり、(ii)ピーク血漿濃度(Cmax)が約2000pg/mL~約6000pg/mLであり、(iii)AUCinfが約5000pg*h/mL~約10,000pg*h/mLであり、及び/または、(iv)排出半減期(t1/2)が約6時間~約14時間(例えば、約8時間~約12時間の間)である。例えば、本開示の乾燥粉末の有効量を、それを必要とする対象に投与すると、嘔吐を引き起こすことなく、片頭痛またはその症状を約30分以内に軽減することができる。
【0161】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に有効量の乾燥粉末を投与すると、DHEのピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が約30分未満になる。例えば、それを必要とする対象に有効量の乾燥粉末を投与すると、DHEのピーク血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)が約25分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満、約4分未満、約3分未満、約2分未満、または約1分未満となる。一部の好ましい態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が約15分未満となる。別の好ましい態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が約10分未満となる。別の好ましい態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度までの時間(Tmax)が約5分未満となる。
【0162】
一部の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEの排出半減期(t1/2)が約6時間~約14時間となる。例えば、t1/2は、約6時間~約8時間、約7時間~約9時間、約8時間~約10時間、約9時間~約11時間、約10時間~約12時間、または約11時間~約13時間、または約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、または約12時間であってもよい。
【0163】
有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)が、約500pg/mL~15,000pg/mL、例えば、約500pg/mL~約14,000pg/mL、約2000pg/mL~約11,000pg/mL、約500pg/mL~約8000pg/mL、約1500pg/mL~約7000pg/mL、更に好ましくは約2000pg/mL~約6000pg/mL、更により好ましくは約3000pg/mL~約5,000pg/mLとなる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、DHEのCmaxが約1000pg/mL~約4000pg/mL、約4000pg/mL~約8000pg/mL、約2000pg/mL~約4000pg/mL、約3000pg/mL~約6000pg/mL、約4000pg/mL~約6000pg/mL、または約1500pg/mL、約2000pg/mL、約2500pg/mL、約3000pg/mL、約3500pg/mL、約4000pg/mL、約4500pg/mL、約5000pg/mL、約5500pg/mL、約6000pg/mL、または約6500pg/mLとなる。好ましい一態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのCmaxが約2000pg/mL~約6000pg/mLとなる。より好ましい一態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与することにより、DHEのCmaxが約3000pg/mL~約5000pg/mLとなる。
【0164】
一部の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、0時間から無限大までの濃度曲線下面積(AUC0-inf)が約1000pg*時間/mL~約15,000pg*時間/mL、または約2500pg*時間/mL~約12,000pg*時間/mL、より好ましくは約5000pg*時間/mL~約10,000pg*時間/mL、更により好ましくは約7000pg*時間/mL~約9000pg*時間/mLとなる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、AUC0-infが約1500pg*時間/mL~約3000pg*時間/mL、約2000pg*時間/mL~約4000pg*時間/mL、約3000pg*時間/mL~約5000pg*時間/mL、約5000pg*時/mL~約7000pg*時/mL、約6000pg*時/mL~約8000pg*時/mL、約8000pg*時/mL~約10,000pg*時/mL、または約1500pg*時間/mL、約2000pg*時間/mL、約2500pg*時間/mL、約3000pg*時間/mL、約3500pg*時間/mL、約4000pg*時間/mL、約4500pg*時間/mL、約5000pg*時間/mL、約5500pg*時間/mL、約6000pg*時間/mL、約6500pg*時間/mL、約7000pg*時間/mL、約7500pg*時間/mL、約8000pg*時間/mL、約8500pg*時間/mL、約9000pg*時間/mL、約9500pg*時間/mL、約10,000pg*時間/mL、約10,500pg*時間/mL、または約11,000pg*時間/mLとなる。
【0165】
別の態様では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、0時間から48時間までの濃度曲線下面積(AUC0-48h)が約950pg*時間/mL~約14,500pg*時間/mL、または約2250pg*時間/mL~約11,500pg*時間/mL、または約4500pg*時間/mL~約9500pg*時間/mLとなる。一部の実施形態では、有効量の乾燥粉末を、それを必要とする対象に投与すると、AUC0-48hが約1000pg*時間/mL~約2000pg*時間/mL、約2000pg*時間/mL~約4000pg*時間/mL、約3000pg*時間/mL~約5000pg*時間/mL、約5000pg*時間/mL~約7000pg*時間/mL、約6000pg*時間/mL~約8000pg*時間/mL、約8000pg*時間/mL~約10,000pg*時間/mL、または約1500pg*時間/mL、約2000pg*時間/mL、約2500pg*時間/mL、約3000pg*時間/mL、約3500pg*時間/mL、約4000pg*時間/mL、約4500pg*時間/mL、約5000pg*時間/mL、約5500pg*時間/mL、約6000pg*時間/mL、約6500pg*時間/mL、約7000pg*時間/mL、約7500pg*時間/mL、約8000pg*時間/mL、約8500pg*時間/mL、約9000pg*時間/mL、約9500pg*時間/mL、約10,000pg*時間/mL、または約10,500pg*時間/mLとなる。
【0166】
理論に拘束されるものではないが、非晶質DHE(例えば、非晶質DHEメシル酸塩)を含有する乾燥粉末の有効量を投与すると、結晶質DHEを含む乾燥粉末または他の製剤と比べ、t
1/2が短くなり、T
maxがより速くなり、及び/またはAUCは低くなる。これは、治療効果のより迅速な発現と薬物曝露の低下に寄与する可能性があり、望ましくない副作用の発生率及び/または重症度を低下させる。例えば、驚くべきことに、両方とも非晶質DHEを含有する製剤I及びIIの有効量をイヌモデルに吸入により投与すると、用量が698μg/kgであるとき、それぞれのt
1/2が1.96時間と2.01時間となった。一方、結晶質製剤III及びIVを同じ用量レベルで投与すると、それぞれのt
1/2は7.00時間と5.68時間となり、長くなった。非晶質DHEと結晶質DHEを含む乾燥粉末製剤間のこの違いは、イヌモデルでの血漿中濃度の経時曲線を比較しても明らかである。
図1~4に示すように、比較的急峻ではなく、高用量ではDHEの血漿濃度が12時間を超えて持続したことを示す尾部を含んでいる製剤III及びIVに対応する曲線と比べると、製剤I及びIIの血漿中濃度の経時曲線はより急峻であり、DHEの血漿中濃度がすべての用量で12時間までに最小になったことを示している。
【0167】
更に、対象におけるDHEのCmaxが、有効量のDHEを静脈内投与した後に達成されるCmax(例えば、1mgの静脈内DHE)に比べて低下すると、有効性を損なうことなく、DHEの静脈内投与後に一般的に経験される副作用の重症度を軽減したり、副作用を排除したりすることに貢献できると言われている。一部の態様では、乾燥粉末をそれを必要とする対象投与すると、DHEのCmaxが、有効量のDHEを静脈内投与した後のCmaxに対して、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、またはそれ以上減少する可能性がある。
【0168】
吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、点滴技術などの適切な方法、及び/または乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)などの吸入装置を使用して、それを必要とする対象の気道に投与することができる。米国特許第4,995,385号及び第4,069,819号に開示されている吸入器、SPINHALER(登録商標)(Fisons,Loughborough,U.K.)、ROTAHALERS(登録商標)、DISKHALER(登録商標)及びDISKUS(登録商標)(GlaxoSmithKline,Research Triangle Technology Park,North Carolina)、FLOWCAPSS(登録商標)(Hovione,Loures,Portugal)、INHALATORS(登録商標)(Boehringer-Ingelheim,Germany)、AEROLIZER(登録商標)(Novartis,Switzerland)、高抵抗及び低抵抗RS-01(Plastiape,Italy)、及びその他の当業者に周知のものなど、様々なDPIが市販されている。
【0169】
次の論文は、1)単回投与カプセルDPI、2)複数回投与ブリスターDPI、3)複数回投与リザーバDPIなど、乾燥粉末吸入器(DPI)の構成の詳細な概要について、参照により援用される。N.Islam,E.Gladki,“Dry powder inhalers(DPIs)-A review of device reliability and innovation”,International Journal of Pharmaceuticals,360(2008):1-11。H.Chystyn,“Diskus Review”,International Journal of Clinical Practice,June 2007,61,6,1022-1036。H.Steckel,B.Muller,“In vitro evaluation of dry powder inhalers I:drug deposition of commonly used devices”,International Journal of Pharmaceuticals,154(1997):19-29。代表的なカプセルベースDPIユニットには、RS-01(Plastiape,Italy)、TURBOSPIN(登録商標)(PH&T,Italy)、BREZHALER(登録商標)(Novartis,Switzerland)、AEROLIZER(登録商標)(Novartis,Switzerland)、PODHALER(登録商標)(Novartis,Switzerland)、HANDIHALER(登録商標)(Boehringer Ingelheim,Germany)、AIR(登録商標)(Civitas,Massachusetts)、DOSEONE(登録商標)(Dose One,Maine)、ECLIPSE(登録商標)(Rhone Poulenc Rorer)などが挙げられる。代表的な単位用量DPIには、CONIX(登録商標)(3M,Minnesota)、CRICKET(登録商標)(Mannkind,California)、DREAMBOAT(登録商標)(Mannkind,California)、OCCORIS(登録商標)(Team Consulting,Cambridge,UK)、SOLIS(登録商標)(Sandoz)、TRIVAIR(登録商標)(Trimel Biopharma,Canada)、TWINCAPS(登録商標)(Hovione,Loures,Portugal)などが含まれる。代表的なブリスターベースのDPIユニットには、DISKUS(登録商標)(GlaxoSmithKline(GSK),UK)、DISKHALER(登録商標)(GSK)、TAPERDRY(登録商標)(3M,Minnesota)、GEMINI(登録商標)(GSK)、TWINCER(登録商標)(University of Groningen, Netherlands)、ASPIRAIR(登録商標)(Vectura,UK)、ACU-BREATHE(登録商標)(Respirics,Minnesota,USA)、EXUBRA(登録商標)(Novartis,Switzerland)、GYROHALER(登録商標)(Vectura,UK)、OMNIHALER(登録商標)(Vectura,UK)、MICRODOSE(登録商標)(Microdose Therapeutix,USA)、MULTIHALER(登録商標)(Cipla,India)PROHALER(登録商標)(Aptar)、TECHNOHALER(登録商標)(Vectura,UK)、XCELOVAIR(登録商標)(Mylan,Pennsylvania)などがある。代表的なリザーバベースのDPIユニットには、CLICKHALER(登録商標)(Vectura)、NEXT DPI(登録商標)(Chiesi)、EASYHALER(登録商標)(Orion)、NOVOLIZER(登録商標)(Meda)、PULMOJET(登録商標)(sanofi-aventis)、PULVINAL(登録商標)(Chiesi)、SKYEHALER(登録商標)(Skyepharma)、DUOHALER(登録商標)(Vectura)、TAIFUN(登録商標)(Akela)、FLEXHALER(登録商標)(AstraZeneca,Sweden)、TURBUHALER(登録商標)(AstraZeneca,Sweden)、TWISTHALER(登録商標)(Merck)、及び当業者に周知のその他のものが含まれる。
【0170】
通常、吸入装置(例えば、DPI)は、1回の吸入で最大量の乾燥粉末または乾燥粒子を送達できる。これは、ブリスター、カプセル(例えば、サイズ000、00、0E、0、1、2、3、4;それぞれの体積容量は1.37mL、950μL、770μL、680μL、480μL、360μL、270μL、200μL)、または乾燥粒子または乾燥粉末を吸入器の内部に含む他の手段の容量に係る。従って、所望の用量または有効量の送達は、2回以上の吸入を含んでもよい。好ましくは、それを必要とする対象に投与される各用量は、有効量の吸入性乾燥粒子または乾燥粉末を含み、約4回以下の吸入により投与される。例えば、吸入性乾燥粒子または乾燥粉末の各用量は、1回、2回、3回、または4回の吸入により投与することができる。吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末は、好ましくは、呼吸作動式DPIを使用して、単一の呼吸作動ステップにより投与される。このタイプの装置を使用すると、対象の吸入エネルギーにより、吸入性乾燥粒子が分散され、気道内に引き込まれる。
【0171】
吸入性乾燥粒子または乾燥粉末は、吸入によって気道内の所望の領域に所望のように送達することができる。約1ミクロン~約3ミクロンの空気力学的直径(MMAD)を有する粒子が肺の深部まで送達され得ることはよく知られている。より大きなMMAD(例えば、約3ミクロン~約5ミクロン)は中気道及び上気道に送達することができる。従って、理論に拘束されるものではないが、本開示の乾燥粒子は、上気道または肺の深部よりも中枢気道により多くの治療用量を優先的に沈着させる、約1ミクロン~約5ミクロンのMMADを有することができる。
【0172】
乾燥粉末吸入器の場合、口腔への沈着は慣性衝突によって支配され、エアロゾルのストークス数によって特徴付けられる(DeHaan et al.Journal of Aerosol Science,35(3),309-331,2003)。吸入器の形状、呼吸パターン、口腔の形状が類似する場合、ストークス数、従って口腔への沈着は、主に吸入される粉末の空気力学的粒径に影響される。従って、粉末の口内沈着に寄与する要因には、個々の粒子の粒径分布や粉末の分散性が含まれる。個々の粒子のMMADが大きすぎる場合、例えば5μmを超える場合、口腔内に沈着する粉末の割合が増加する。同様に、粉末の分散性が悪い場合、粒子が乾燥粉末吸入器から出て、凝集体として口腔に入る可能性がある。凝集した粉末は、個々の粒子が空気力学的に凝集体と同じくらい大きく機能するため、個々の粒子が小さい場合(例えば、MMADが5ミクロン以下)でも、吸入された粉末の粒径分布は5μmを超えるMMADを有する可能性があり、口腔への沈着の増加につながる。
【0173】
従って、粉末が気道の所望の領域に一貫して堆積するように、粒子が小さく、高密度で、分散可能な粉末を得ることが望ましい。例えば、吸入性乾燥粒子を含む吸入性乾燥粉末は、5ミクロン以下、約1ミクロン~約5ミクロンのMMADを有し、分散性が高い(例えば、1バール/4バール、或いは0.5バール/4バールが2.0、好ましくは1.5未満)。一部の実施形態では、粒子はまた高密度であり、例えば、約0.4g/cc以上、約0.45g/cc~約1.2g/cc、約0.5g/cc以上、約0.55g/cc以上、約0.55g/cc~約1.0g/cc、または約0.6g/cc~約1.0g/ccの高いタップ密度及び/またはバルク密度を有する。タップ密度及び/またはバルク密度とMMADは、理論的にはMMAD=VMGD*sqrt(バルク密度またはタップ密度)の式によってVMGDに関連付けられる。固定容量の投与容器を使用して大量の治療薬を送達することが望ましい場合、より高いタップ密度及び/またはバルク密度の粒子が望ましい。
【0174】
吸入性乾燥粒子を含む吸入性乾燥粉末は、少なくとも約0.1g/cm3のタップ密度、例えば、0.2g/cm3を超えるタップ密度、0.3g/cm3を超えるタップ密度、0.4g/cm3を超えるタップ密度、または0.5g/cm3を超えるタップ密度を有してもよい。
【0175】
本発明の方法での使用に適した吸入性乾燥粉末及び乾燥粒子は、上気道(つまり、中咽頭及び喉頭)、気管とそれに続く気管支及び細気管支への分岐を含む下気道を通って移動することができ、終末細気管支を通って、次に呼吸細気管支に分かれ、最終的な呼吸域である肺胞または肺の深部に至る。本発明の一実施形態では、吸入性乾燥粉末または粒子の質量の大部分が肺の深部に沈着する。本発明の別の実施形態では、送達は主に中央気道に行われる。別の実施形態では、送達は上気道へ行われる。
【0176】
所望の治療効果を提供するための適切な用量は、対象の片頭痛の重症度、対象の全体的な健康状態、吸入性乾燥粒子及び乾燥粉末に対する対象の耐性に基づいて臨床医が定めることができる。これらとその他の考慮事項に基づいて、臨床医は適切な投与量と投与間隔を決定できる。
【実施例】
【0177】
以下の実施例で使用した物質とその供給元を以下に列挙する。エタノール、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、マンニトール、L-ロイシンは、Sigma-Aldrich Co.(St.Louis,MO)、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)、Applichem(Maryland Heights,MO)、Alfa Aesar(Tewksbury,MA)、Thermo Fisher(Waltham,MA)、Croda Chemicals(East Yorkshire,United Kingdom)、またはMerck/Millipore(Darmstadt,Germany)から入手した。ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩は、Olon SpA(Italy)から入手した。超純水(タイプII ASTM)は、浄水システム(Millipore Corp.,Billerica,MA)または同等のものから得た。
【0178】
方法
懸濁液の幾何径または体積直径。活性剤懸濁液の体積中央直径(×50またはDv50)(体積中央幾何径(VMGD)とも呼ばれる)は、レーザ回折技術を使用して決定された。この装置は、サンプルの取り扱いと取り出しのための自動再循環システム、または固定容量のサンプルキュベットを備えたHoriba LA-950機器で構成されている。サンプルは、脱イオン水、またはポリソルベート80やドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を0.5%未満含む脱イオン水からなる分散媒体に分散する。超音波エネルギーを適用して、懸濁液の分散を促進することができる。レーザ透過率が正しい範囲にある場合、サンプルに設定5で60秒間の超音波処理を施した。次にサンプルを測定し、粒径分布を報告した。
【0179】
乾燥粉末の幾何径または体積直径。乾燥粉末製剤の体積中央直径(×50またはDv50)(体積中央幾何径(VMGD)とも呼ばれる)は、レーザ回折技術を使用して決定された。装置は、HELOS回折計とRODOS乾燥粉末分散機(Sympatec,Inc.,Princeton,NJ)から構成されている。RODOS分散機は、流入する圧縮乾燥空気のレギュレーター圧力(通常は最大オリフィスリング圧力で1.0バールに設定)によって制御され、粒子のサンプルにせん断力を印加する。圧力設定を変更して、粉末を分散させるためのエネルギー量を変えることができる。例えば、分散エネルギーは、レギュレーター圧力を0.2バールから4.0バールに変更することによって調整することができる。粉末サンプルはマイクロスパチュラからRODOS漏斗に分注される。分散した粒子はレーザビームを通って移動し、そこで生成された回折光パターンは、通常R1レンズを使用し、一連の検出器によって捕集される。次に、アンサンブル回折パターンは、小さな粒子ほど大きな角度で光を回折することに基づいて、フラウンホーファー回折モデルを用いて体積ベースの粒径分布に変換される。この方法を使用すると、分布の範囲も式(Dv[90]-Dv[10]/Dv[50])に従って決定される。スパン値は、粒径分布の多分散性の相対的な指標を与える。
【0180】
アンダーセンカスケードインパクタによる空力性能。吸入装置から分散された粉末の空気力学的特性は、Mk-II 1 ACFMアンダーセンカスケードインパクタ(Copley Scientific Limited,Nottingham,UK)(ACI)を用いて評価した。この装置は、慣性衝突に基づいてエアロゾル粒子を分離する8段で構成されている。各段で、エアロゾル流は一連のノズルを通過し、対応する衝突プレートに衝突する。十分に小さい慣性をもつ粒子はエアロゾル流に乗って後段へ進むが、残りの粒子はプレートに衝突する。各連続段で、エアロゾルはより高速でノズルを通過し、空気力学的に小さな粒子がプレート上に捕集される。エアロゾルが最終段を通過した後、いわゆる「最終捕集フィルタ」が残った最小粒子を集める。次に、重量分析及び/または化学分析を実行して、粒径分布を定めることができる。ショートスタックカスケードインパクタ(折畳型カスケードインパクタとも呼ばれる)も、2つの空気力学的粒径カット点を評価するための工数を低減するために利用される。この折畳型カスケードインパクタを用いると、細粒子と粗粒子の分画を確立するためのものを除いて、段数を必要最低限に抑えることができる。使用された衝突技術により、2つまたは8つの別々の粉末割合の捕集が可能となった。カプセル(HPMC、サイズ3;Capsugel Vcaps,Peapack,NJ)に粉末を特定の重量まで充填し、手持ちの呼吸作動式乾燥粉末吸入器(DPI)装置である高抵抗RS01 DPIまたは超高耐性UHR2 DPI(ともに、Plastiape,Osnago,Italy)に載置する。カプセルに穴を開け、流量60.0L/分で2.0秒間作動させたカスケードインパクタを通して粉末を引き出した。この流量では、8段の較正カットオフ直径は8.6、6.5、4.4、3.3、2.0、1.1、0.5、0.3ミクロンであり、アンダーセンカスケードインパクタに基づくショートスタックカスケードインパクタで使用される2段では、カットオフ直径は5.6ミクロンと3.4ミクロンである。装置内にフィルタを配置して画分を捕集し、重量測定またはHPLCでの化学測定によってフィルタに衝突した粉末の量を測定した。
【0181】
次世代インパクタによる空力性能。吸入装置から分散された粉末の空気力学的特性は、次世代インパクタ(Copley Scientific Limited,Nottingham,UK)(NGI)を使用して評価を行った。この機器は、慣性衝突に基づいてエアロゾル粒子を分離する7つの段で構成されており、様々な空気流量で動作することができる。各段で、エアロゾル流は一連のノズルを通過し、対応する衝突面に衝突する。十分に小さい慣性をもつ粒子はエアロゾル流に乗って後段へ進むが、残りの粒子は表面に衝突する。各連続段で、エアロゾルはより高速でノズルを通過し、空気力学的により小さな粒子がプレート上に捕集される。エアロゾルが最終段を通過した後、マイクロオリフィス捕集器が残った最小粒子を集める。次に、重量分析及び/または化学分析を実行して、粒径分布を定めることができる。カプセル(HPMC、サイズ3;Capsugel Vcaps,Peapack,NJ)に粉末を特定の重量まで充填し、手持ちの呼吸作動式ドライパウダー吸入器(DPI)装置である高抵抗RS01 DPIまたは超高耐性RS01 DPI(ともに、Plastiape,Osnago,Italy)に載置する。カプセルに穴を開け、吸入空気2.0リットルに対して指定された流量で作動させたカスケードインパクタを通して粉末を引き出した。指定の流量で、各段のカットオフ直径を計算した。装置内に湿潤フィルタを配置して画分を捕集し、HPLCでの化学測定によってフィルタに衝突した粉末の量を測定した。
【0182】
微粒子用量。微粒子の用量は、特定の粒径範囲の1つ以上の治療薬の質量を示し、気道の特定の領域に到達する質量を予測するために使用できる。微粒子用量は、ACIまたはNGIのいずれかを用いて重量測定または化学測定により測定することができる。重量測定の場合、乾燥粒子は均質であると考えられるため、各段と捕集フィルタ上の粉末の質量に製剤中の治療薬の割合を乗じて治療薬の質量を定めることができる。化学測定の場合、各段またはフィルタからの粉末を捕集、分離し、例えばHPLCで分析を行い、治療薬の含有量を定める。指定の流量で各段に堆積した累積質量が計算され、直径5.0マイクロメートルの粒子に対する累積質量が補間される。1つ以上のカプセルに含まれ、インパクタ内に押し出される粉末の1回分の累積質量は、5.0ミクロン未満(FPD<5.0ミクロン)の微粒子用量に等しくなる。
【0183】
空気力学的中央粒子径。空気力学的中央粒子径(MMAD)を、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)によって得られた情報を使用して決定した。各段のカットオフ直径未満の累積質量が段ごとに計算され、粉末の回収量によって正規化される。次に、粉末のMMADは、50パーセンタイルを囲む段カットオフ直径の線形補間によって計算される。MMADを測定する他の方法としては、次世代インパクタ(NGI)が挙げられる。ACIと同様に、段ごとに計算され、粉末の回収量によって正規化された各段のカットオフ直径未満の累積質量を以ってMMADを計算する。次に、粉末のMMADは、50パーセンタイルを囲む段カットオフ直径の線形補間によって計算される。
【0184】
放出幾何径または体積直径。乾燥粉末吸入器から放出された後の粉末の体積中央径(Dv50)は、体積中央幾何径(VMGD)とも呼ばれ、Spraytec回折計(Malvern,Inc.)によるレーザ回折技術を使用して決定した。粉末をサイズ3のカプセル(Vcaps,Capsugel)に充填し、カプセルベースの乾燥粉末吸入器(RS01 Model 7 HRまたはUHR2,Plastiape,Italy)、またはDPI内に配置し、このDPIをシリンダー内に封止した。シリンダーは正圧空気源に接続されており、システムを通る安定した空気の流れが質量流量計で測定され、その持続時間はタイマー制御のソレノイドバルブで制御された。乾燥粉末吸入器の出口を室温にさらし、得られたエアロゾルジェットを、オープンベンチ構成で回折粒子サイザー(Spraytec)のレーザに通過させ、その後、真空抽出器により捕捉した。システムを通る安定した空気流量は、ソレノイドバルブを使用して開始された。一定の空気流量が、通常は60L/分で、設定された期間(通常は2秒)にわたってDPIから引き込まれる。或いは、DPIを介して引き出される空気流量は、15L/分、20L/分、または30L/分で実行される場合もあった。得られたエアロゾルの幾何学的粒子粒径分布は、光検出器上で、通常、サンプルを吸入期間中に1000Hzで取って測定された散乱パターンに基づいてソフトウェアから計算された。次に、測定したDv50、GSD、FPF<5.0μmを、吸入の継続時間にわたって平均した。
【0185】
放出用量(ED)は、発射または分散イベント後に適切な吸入装置から出る治療薬の質量を指す。EDは、USP Section 601 Aerosols,Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered-Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers,United States Pharmacopeia convention,Rockville,MD,13th Revision,222-225,2007に記載の方法によって定めることができる。カプセルの内容物を、RS01 HR吸入器を用いて4kPaの圧力降下及び60LPMの標準流量で分散させるか、またはUHR2 RS01を用いて4kPaの圧力降下及び39LPMの標準流量で分散させる。放出された粉末はフィルタホルダーサンプリング装置のフィルタ上に捕集される。サンプリング装置を水等の適切な溶媒で濯ぎ、HPLC法を用いて分析する。重量分析では、より短い長さのフィルタホルダーサンプリング装置を使用して装置の沈着を低減し、前後でフィルタの重量を測定して、DPIからフィルタに送られる粉末の質量を決定する。次いで、治療薬の放出用量は、送達された粉末中の治療薬の含有量に基づいて計算される。放出用量は、DPIから送達される治療薬の質量として、または充填用量の百分率として報告できる。
【0186】
熱重量分析:熱重量分析(TGA)は、Q500モデルまたはDiscoveryモデル熱重量分析装置(TA Instruments,New Castle,DE)のいずれかを使用して行った。サンプルを、開封されたアルミニウムDSCパン、または密閉(テスト前に自動的に開封される)アルミニウムDSCパンのいずれかに入れた。風袋重量は機器によって事前に記録された。次の方法を用いた:周囲温度(約35℃)から200℃まで5.00℃/分で昇温。重量損失は、140℃までの温度の関数として報告された。TGAは、乾燥粉末内の揮発性化合物の含有量の計算を可能にする。水のみ、または水を揮発性溶媒と組み合わせて使用するプロセスを利用する場合、TGAによる重量損失は含水量の適切な推定値となる。
【0187】
X線粉末回折:製剤の結晶特性を粉末X線回折(PXRD)によって評価した。20~30mgの材料サンプルを、1.5418AのCu X線管を用いて、5~45°2θの走査範囲及び0.02°2θのステップサイズにわたって1.2秒/ステップで、粉末X線回折計(LINXEYE検出器を備えたD8 Discover;Bruker Corporation,Billerica,MA、またはその同等のもの)で分析する。
【0188】
HPLCを用いたDHEメシル酸塩の含有量。紫外線(UV)検出器に接続された逆相C18カラムを利用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を、DHEメシル酸塩製剤のバルク含有量分析のために開発した。逆相カラムを30℃に平衡化し、オートサンプラを5℃に設定する。移動相A(水中3g/Lの1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩一水和物、pH2.0)及び移動相B(80%アセトニトリル/20%移動相A)を20分間の運転時間にわたって、60:40(A:B)~48:52(A:B)の比で勾配溶出に使用する。検出は、220nmでUVにより行い、注入量は5μLとする。粉末中のDHEメシル酸塩含有量を、標準曲線に対して定量化する。
【0189】
UPLCを用いたDHEメシル酸塩の含有量。紫外線(UV)検出器に接続された逆相C18カラムを利用する超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)法を、DHEメシル酸塩製剤のバルク含有量分析のために開発した。逆相カラムを30℃に平衡化し、オートサンプラを5℃に設定する。移動相A(リン酸でpH2.0に調整された水)及び移動相B(80%アセトニトリル/20%移動相A)を12分間の運転時間にわたって、65:35(A:B)~47:53(A:B)の比で勾配溶出に使用する。検出は、220nmでUVにより行い、注入量は2μLとする。粉末中のDHEメシル酸塩含有量を、標準曲線に対して定量化する。
【0190】
粒径の縮小。結晶性活性剤の粒径分布は、高圧均質化、高せん断均質化、ジェットミル処理、ピンミル処理、マイクロ流体化、または湿式粉砕(ボールミル処理、パールミル処理またはビーズミル処理としても知られている)を含むがこれらに限定されない当業者に周知の多くの技術を用いて調整され得る。湿式粉砕は、ナノメートル(<1μm)サイズ領域を含む広範囲の粒径分布を達成できるため、多くの場合好ましい。
【0191】
低エネルギー湿式粉砕による粒径の縮小。活性剤の粒径を小さくするための技術として、低エネルギー湿式粉砕(ローラー粉砕またはジャー粉砕とも呼ばれる)がある。活性剤の懸濁液を、貧溶媒(水であり得る)、または活性剤が明らかに溶解しない任意の溶媒で調製した。次に、非イオン性界面活性剤または両親媒性ポリマーであり得るがこれらに限定されない安定剤が、高い耐摩耗性を有する球形で0.03~0.70ミリメートルの粒径範囲であり得るがこれらに限定されない粉砕媒体とともに、懸濁液に添加される。次に、懸濁液を含む容器をジャーミル(US Stoneware,East Palestine,OH USA)を使用して回転させながら、定期的にサンプルを採取して粒径を評価する(LA-950,HORIBA,Kyoto,Japan)。粒径が十分に小さくなったとき、または粒径の最小値に達したとき、懸濁液を篩にかけて濾して粉砕媒体を除去し、生成物を回収する。
【0192】
高エネルギー湿式粉砕による粒径の縮小。活性剤の粒径を小さくする別の技術として、ローターステータまたは撹拌媒体ミルを使用する高エネルギー湿式粉砕が挙げられる。活性剤の懸濁液を、貧溶媒(水であり得る)、または活性剤が明らかに溶解しない任意の溶媒で調製した。次に、非イオン性界面活性剤または両親媒性ポリマーであり得るがこれらに限定されない安定剤が、高い耐摩耗性を有する球形で0.03~0.70ミリメートルの粒径範囲であり得るがこれらに限定されない粉砕媒体とともに、懸濁液に添加される。次に懸濁液はミルに投入され、バッチまたは再循環モードで操作する。このプロセスは、粉砕チャンバ内で撹拌される懸濁液と粉砕媒体で構成されており、これによりシステムへのエネルギー入力が増加し、粒径縮小プロセスが加速される。粉砕チャンバと再循環容器はジャケットで覆われており、生成物の温度上昇を避けるために能動的に冷却される。懸濁液の撹拌速度と再循環速度はプロセス中に制御される。サンプルを定期的に採取し、粒径を評価する(LA-950,HORIBA,Kyoto,Japan)。粒径が十分に小さくなったとき、または粒径の最小値に達したとき、懸濁液はミルから排出される。
【0193】
マイクロ流動化を使用した粒径の縮小。活性剤の粒径分布を減少させるための別の技術として、マイクロ流動化が挙げられる。マイクロフルイダイザーベースの処理は、液体及び固体の粒径を小さくするために利用される高剪断湿式処理装置を操作することである。この装置は、せん断速度を制御するために流体が高圧で通過する特定のオリフィスとチャネル設計を備えた円筒形モジュールであるさまざまな相互作用チャンバを使用して構成できる。生成物は、流入リザーバを介して装置に入り、高圧ポンプにより400m/秒までの速度で固定ジオメトリ相互作用チャンバに押し込まれる。その後、必要に応じて効果的に冷却され、出力リザーバに捕集される。このプロセスは、粒径の目標を達成するために、必要に応じて繰り返すことができる(たとえば、複数の「パス」)。活性剤の粒径は、レーザ回折(LA-950,HORIBA,Kyoto,Japan)により定期的にモニタリングされる。粒径が十分に小さくなったとき、または粒径の最小値に達したとき、懸濁液は装置から回収される。
【0194】
ジェットミルを使用した粒径の縮小。活性剤の粒径分布を減少させるための別の技術として、ジェットミルが挙げられる。ジェットミルは、流体エネルギー(圧縮空気またはガス)を利用し、可動部分のない1つのチャンバにおいて粉砕して分類する。高圧空気によって押し出された粒子は、浅い粉砕チャンバ内で加速されて高速回転する。粒子が互いに衝突すると、粒径は小さくなる。遠心力により、大きな粒子が所望の微粒子径に達するまで粉砕回転領域に保持される。求心力により、目的の粒子が静的分級機に向かって引き込まれ、正しい粒径に達すると粒子は排出される。最終的な粒径は、供給速度と推進剤の圧力を変えることによって制御される。
【0195】
噴霧乾燥のための液体原料の調製。均一な粒子を噴霧乾燥するには、目的の成分が溶液に可溶化されているか、均一で安定した懸濁液に懸濁されている必要がある。原料は、水、または水とアルコールやケトンなどの他の混和性溶媒の組み合わせを、溶液の場合は溶媒として、または懸濁液の場合は連続相として利用できる。様々な製剤の原料は、可溶性成分を所望の溶媒(複数可)に溶解し、続いて混合しながら界面活性剤で安定化された活性剤を含む懸濁液を得られた溶液に分散させることによって調製したが、プロセスはこの特定の操作順序に限定される訳ではない。
【0196】
Niro噴霧乾燥機を用いた噴霧乾燥。乾燥粉末は、サイクロン、生成物フィルタ、またはその両方から粉末を収集するNiro Mobile Minorスプレー乾燥機(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)を利用した噴霧乾燥によって生成した。液体原料の噴霧は、Niro(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)またはSpraying Systems(Carol Stream,IL)1/4J二流体ノズルのいずれかからの並流二流体ノズルを用いて、ガスキャップ67147及び流体キャップ2850SSを用いて行ったが、他の二流体ノズルセットアップも可能である。一部の実施形態では、二流体ノズルは、内部混合設定または外部混合設定である。他の噴霧技術には、回転噴霧または圧力ノズルが含まれる。液体原料は、ギアポンプ(Cole-Parmer Instrument Company,Vernon Hills,IL)を使用して二流体ノズルに直接供給するか、または二流体ノズルに導入する直前に静的ミキサー(Charles Ross & Son Company,Hauppauge,NY)に供給された。他の液体供給技術には、加圧容器からの供給が含まれる。使用前に空気中の水分が少なくとも部分的に除去されることを条件として、窒素または空気を乾燥ガスとして使用することができる。二流体ノズルへの噴霧ガス供給として、加圧窒素または空気を使用できる。乾燥ガスの入口温度は70℃~300℃、出口温度は30℃~120℃の範囲で、液体原料の流量は10mL/分~100mL/分とすることができる。二流体噴霧器に供給するガスはノズルの選択によって異なる。Niro並流二流体ノズルの場合は5kg/時間から50kg/時間の範囲で、Spraying Systems 1/4J二流体ノズルの場合は30g/分~150g/分の範囲とすることができる。噴霧ガス速度は、生成される液滴サイズに直接影響する特定のガス対液体質量比を達成するように設定できる。乾燥ドラム内の圧力は、+3インチWC~-6インチWCの範囲とすることができる。噴霧乾燥粉末は、サイクロンの出口の容器内、カートリッジまたはバッグハウスフィルタ上、或いは、サイクロンとカートリッジまたはバッグハウスフィルタの両方から捕集できる。
【0197】
Buchi噴霧乾燥機を使用した噴霧乾燥。乾燥粉末を、Buchi B-290 Mini Spray Dryer(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)で噴霧乾燥し、標準サイクロンまたは高性能サイクロンのいずれかから捕集して調製した。このシステムは、乾燥及びや噴霧ガスとして空気または窒素を使用して、開ループ(シングルパス)モードで実行された。空気を使用して実行する場合、システムはBuchi B-296除湿器を使用して、噴霧乾燥に使用される空気の安定した温度と湿度を確保した。窒素を使用して実行する場合は、加圧窒素源を使用した。更に、システムのアスピレータを調整して、システム圧力を-2.0水柱インチに維持した。液体原料の噴霧には、直径1.5mmのBuchi二流体ノズル、または0.5mm液体インサートを備えたSchlick 970-0噴霧器(Dusen-Schlick GmbH,Coburg,Germany)を利用した。プロセスガスの入口温度は100℃~220℃、出口温度は30℃~120℃の範囲で、液体原料の流量は3mL/分~10mL/分とすることができる。二流体噴霧ガスは12~36g/分の範囲である。吸引率の範囲は50%~100%である。
【0198】
安定性評価。選択された製剤の物理化学的安定性及びエアロゾル性能を、2~8℃、25℃/60%RH、及び物質量が許容される場合、40℃/75%RHで、International Conference on Harmonisation(ICH)Q1ガイダンスに詳述されている通りに評価した。安定性サンプルを較正済みチャンバ(Darwin Chambers Company、Model PH024及びPH074、St.Louis.MO)に保管した。バルク粉末サンプルを琥珀色のガラスバイアルに秤量し、30%RHで密封し、シリカ乾燥剤(2.0g、Multisorb Technologies,Buffalo,NY)とともにアルミニウムパウチ(Drishield 3000,3M,St.Paul,MN)に入れて誘導密封した。更に、カプセル内の製剤の安定性を評価するために、粉末の目標質量を秤量して、30%RH以下でサイズ3のHPMCカプセル(Capsugel Vcaps)に入れた。次に、充填されたカプセルを高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに小分けし、シリカ乾燥剤を入れたアルミニウムパウチに誘導密封した。
【0199】
タップ密度。USP<616>に従って、変更点として1.5ccの微量遠心分離管(Eppendorf AG,Hamburg, Germany)、または使い捨て血清学的ポリスチレンマイクロピペット(Grenier Bio-One,Monroe,NC)の0.3ccセクションの両端をポリエチレンキャップ(Kimble Chase,Vineland,NJ)でキャップしてピペットセクション内に粉末を保持したものを用いて、より少ない粉末量を必要とする改良USP方法を使用して、タップ密度を測定した。当業者に知られているタップ密度を測定するための機器には、デュアルプラットフォームマイクロプロセッサ制御タップ密度テスター(Vankel,Cary,NC)またはSOTAXタップ密度テスターモデルTD1(Horsham,PA)が含まれるが、これらに限定されない。タップ密度は、バルク質量密度の標準的な尺度である。等方粒子のバルク質量密度は、粒子の質量を、粒子を包含できる最小球バルク体積で割ったものとして定義される。
【0200】
嵩密度。嵩密度は、体積測定装置を使用して推定したように、粉末の重量を粉末の体積で割ることによってタップ密度測定の前に推定された。
【0201】
カプセルから放出される粉末の質量。粉末の放出特性の尺度は、aPSDテストまたはSpraytecによる放出幾何径から得られた情報を使用して、分析または重量測定によって決定された。CEPMの分析的測定では、放出後にカプセル内に残るDHEの量を、既知量の溶媒にカプセル全体を溶解し、カプセルの保持量を分析的に測定し、この値を名目用量から差し引くことによって評価した。CEPMの重量測定では、充填されたカプセルの重量が実験の開始時に記録され、最終的なカプセルの重量が実験の完了後に記録された。重量の差で、カプセルから放出された粉末の量(CEPMまたはカプセルから放出された粉末の質量)が表された。CEPMは、粉末の質量、またはカプセルから放出された粉末の量をカプセル内の初期粒子の総質量で割った百分率として報告した。
【0202】
実施例1.非晶質DHEの乾燥粉末製剤。
A.粉末の調製。
原料溶液を調製し、非晶質DHEメシル酸塩、カチオン塩、及びその他のさまざまな賦形剤で構成される乾燥粉末を製造するために使用した。乾燥ベースで1.5%~10%のDHEメシル酸塩(非晶質)の薬剤負荷が目標とされた。噴霧乾燥粒子に使用される原料溶液は次のように作成された。必要な量の水とエタノールを秤量して、適切なサイズの容器に入れた。API及び賦形剤を溶媒に加え、溶液を視覚的に透明になるまで撹拌した。次いで、原料を噴霧乾燥した。原料を噴霧乾燥しながら撹拌した。表2は、乾燥粉末の調製に使用される原料の成分である。
【表2】
【0203】
製剤I、II、及びVの乾燥粉末は、Niro Mobile Minor(GEA Niro,Copenhagen Denmark)上での噴霧乾燥とバッグフィルタ粉末収集によって、これらの原料から製造された。このシステムは、乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開ループ(シングルパス)モードで実行された。液体原料の噴霧化には、5.0mmのキャップと1.0mmの液体チップを備えたNiro二流体ノズルを利用した。システムのブロワーは、システム圧力を-2.0水柱インチに維持するように調整された。
【0204】
以下の噴霧乾燥条件に従って、Niro Mobile Minorで乾燥粉末を調製した。製剤I及びIIについては、液体原料固形分濃度は3.0重量%、プロセスガス入口温度は約165℃~約180℃、プロセスガス出口温度は70℃、乾燥ガス流量は80.0kg/時間、噴霧ガス流量は250g/分、液体原料流量は50.0mL/分であった。製剤Vについては、液体原料固形分濃度は3.0重量%、プロセスガス入口温度は約155℃~約170℃、プロセスガス出口温度は70℃、乾燥ガス流量は80.0kg/時間、噴霧ガス流量は175g/分、液体原料流量は50.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表3にまとめる。
【0205】
製剤VI~XVIの乾燥粉末を、これらの原料から、Buchi B-290 Mini Spray Dryer(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)上でのスプレー乾燥とサイクロン粉末収集によって製造した。このシステムは、乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開ループ(シングルパス)モードで実行された。液体原料の噴霧ではSchlick 970-1ノズルを使用した。システムのアスピレータは、システム圧力を-2.0水柱インチに維持するように調整された。
【0206】
以下の噴霧乾燥条件に従って、Buchi B-290で乾燥粉末を製造した。液体原料固形分濃度は3.0重量%、プロセスガス入口温度は約140℃~165℃、プロセスガス出口温度は70℃、乾燥ガス流量は18.0kg/時間、噴霧ガス流量は30g/分、液体原料流量は6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表2にまとめる。
【表3】
【0207】
B.粉末の特性評価。
製剤のバルク粒径特性を表4にまとめる。1バール/4バールの分散率<1.5は、すべての製剤が分散エネルギーに比較的依存しないことを示しており、これは分散エネルギーの範囲全体で同様の粒子分散を可能にする望ましい特性である。
【表4】
【0208】
製剤I、II、V~XVIの空気力学的粒径と微粒子用量を表5にまとめた。すべての製剤のMMAD値<5μmと高い微粒子用量値(名目用量と比較)から、投与量は高い割合で中央気道と誘導気道に沈着すると予想され、これらの製剤が吸入に適していることを示している。
【表5】
【0209】
製剤I、II、V~XIVの重量損失をTGAによって測定し、表6にまとめた。
【表6】
【0210】
製剤I、II、V~XIVのDHEメシル酸塩含有量を表7に示す。
【表7】
【0211】
製剤I、II、Vの嵩密度値を評価したところ、それぞれ0.21g/cc、0.10g/cc、0.32g/ccであることが判明した。
【0212】
製剤I、II、Vのタップ密度値を評価したところ、それぞれ0.40g/cc、0.26g/cc、0.73g/ccであることが判明した。
【0213】
実施例2.ナノ結晶質DHEの乾燥粉末製剤
A.粉末の調製。
ナノ結晶性DHEメシル酸塩は、50.0gのDHEメシル酸塩(Olon、ロット番号18009GR40S)を440.0gの水中で5.00gの硫酸ナトリウム(Millipore、ロット番号F2099145019)、5.01gのポリソルベート80(Sigma-Aldrich、ロット番号BCCB9820)と混和して調製した。全てのDHEメシル酸塩が懸濁されたら、製剤を560.3gの0.2mmイットリア安定化ジルコニア粉砕媒体(Netzsch、ロット番号2006356)を使用してNetzsch MiniCer上で処理した。ミル速度は3000rpmに設定され、懸濁液ポンプ速度は216rpmに設定され、冷却器温度は5℃であった。始動後、ミル速度を2000rpmに低下させ、懸濁液ポンプ速度を100rpmに低下させた。総実行時間は35分であった。粉砕懸濁液の最終的な中央粒径(Dv(50))は271nmであった。
【0214】
ジェットミルで処理されたDHEメシル酸塩は、27.54gのDHEメシル酸塩(Olonロット#18009GR40S)をジェットミル(Sturtevant 2インチ Qualification Micronizer)に供給設定4.5(1g/分の概算供給速度に相当)でかけ、調製した。ミルの供給圧力は70psigに設定され、粉砕圧力は45psigに設定された。ジェットミルで処理されたDHEメシル酸塩の最終的な中央粒径(Dv(50))は1.52μmであった。
【0215】
原料溶液を調製し、これを用いて、結晶性DHEメシル酸塩、ポリソルベート80、硫酸ナトリウム、及び他の追加の賦形剤で構成された乾燥粉末を製造した。乾燥ベースで10重量%のDHEメシル酸塩の薬剤負荷を目標とした。製剤IIIはナノ結晶質DHEメシル酸塩を利用し、製剤IVは微結晶質(ジェットミルによる)DHEメシル酸塩を利用した。噴霧乾燥粒子に使用される原料溶液は次のように作成された。必要な量の水を秤量して、適切なサイズの容器に入れた。賦形剤を水に加え、溶液を視覚的に透明になるまで撹拌した。次いで、DHE含有懸濁液、または結晶質DHEを賦形剤溶液に添加し、視覚的に均一になるまで撹拌した。次いで、原料を噴霧乾燥した。原料を噴霧乾燥しながら撹拌した。表8は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分である。
【表8】
【0216】
製剤III及びIVの乾燥粉末は、Niro Mobile Minor(GEA Niro,Copenhagen Denmark)上で噴霧乾燥し、バッグフィルタ粉末収集によって、これらの原料から製造された。このシステムは、乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開ループ(シングルパス)モードで実行された。液体原料の噴霧化には、5.0mmのキャップと1.0mmの液体チップを備えたNiro二流体ノズルを利用した。システムのブロワーは、システム圧力を-2.0水柱インチに維持するように調整された。
【0217】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を調製した。製剤III及びIVについて、液体原料固形分濃度は3.0重量%、プロセスガス入口温度は約176℃~183℃、プロセスガス出口温度は65℃、乾燥ガス流量は80.0kg/時間、噴霧ガス流量は365g/分、液体原料流量は50.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表9にまとめた。
【表9】
【0218】
B.粉末の特性評価。
製剤のバルク粒径特性を表10にまとめた。1バール/4バールの分散率<1.5は、すべての製剤が分散エネルギーに比較的依存しないことを示しており、これは分散エネルギーの範囲全体で同様の粒子分散を可能にする望ましい特性である。
【表10】
【0219】
製剤III及びIVの空気力学的粒径データを表11にまとめた。すべての製剤のMMAD値<5μmと高い微粒子用量値(名目用量と比較)から、投与量は高い割合で中央気道と誘導気道に沈着すると予想され、これらの製剤が吸入に適していることを示している。
【表11】
【0220】
製剤III及びIVの重量損失をTGAによって測定した結果、それぞれ1.073%及び0.995%であることが判明した。
【0221】
製剤III及びIVのDHEメシル酸塩含有量をUPLCによって測定したところ、それぞれ10.10%及び9.80%であることが判明した。
【0222】
製剤III及びIVの嵩密度値を評価したところ、それぞれ0.21g/cc及び0.24g/ccであることが判明した。
【0223】
製剤III及びIVのタップ密度値を評価したところ、それぞれ0.52g/cc及び0.54g/ccであることが判明した。
【0224】
実施例3.乾燥粉末製剤I~IVを使用したDHEの薬物動態プロファイル
イヌモデルにおける製剤I~IVの投与後のDHEの薬物動態プロファイルを、以下の試験計画を用いて評価した。表12に従って、1日目、6日目、及び12日目に、乾燥粉末製剤の単一用量吸入をオスのビーグル犬に250、400、及び600μg/kgの目標用量で30分間投与した。
【表12】
【0225】
予定された処置の間に、高用量レベルでの投与を開始する前に、すべての動物に対して少なくとも96時間の観察/休薬期間を設けた。一連の10個の血液サンプル(それぞれ約1mL)を、1日目、6日目、及び12日目に、投与前、投与開始から0.5(±2分)、1、1.25、1.5、2.5、4.5、8.5、12.5、24.5時間後に各イヌから採取した。この目的のために、各イヌから静脈穿刺により採血し、抗凝固剤であるK3EDTAを含むチューブにサンプルを収集した。処理を保留する間、チューブを湿った氷の上に置いた。採取後、血漿用の血液サンプルは採取後2時間以内に処理された。サンプルを遠心分離し(1000g、約4℃で10分間)、得られた血漿を2つのアリコートに分割し、生分析前に冷凍保存(≦-60℃)した。
【0226】
この薬物動態研究で得られた測定値に関連する濃度の経時曲線を
図1~
図4に示す。製剤I~IVの各用量レベルについて得られた薬物動態パラメータも表13に示す。比較の目的で、類似のイヌモデルで得られた公開された薬物動態データに基づいて、MAP0004の類似の薬物動態データのセットをモデル化した(Armer,T.A.,et al.Toxicologic Pathology(2011)39(3):544-552)。MAP0004について経時的なモデル化された血漿濃度の推移を
図5に示し、MAP0004についてモデル化された薬物動態学的パラメータを表13に記載した。
【0227】
非晶質DHE製剤I及びIIの投与は、特に最高の目標用量レベルにおいて、結晶質DHE製剤III及びIVと比べ、各用量レベルで比較的短いt
1/2をもたらした。この傾向は、
図1~
図2(非晶質DHE乾燥粉末)に示される用量濃度曲線の違いを
図3~
図4(結晶質DHE乾燥粉末)と比較した観察すれば明らかである。同様に、非晶質DHE含有乾燥粉末は、結晶質DHE含有乾燥粉末製剤と比較して、より低いAUC(例えば、AUC
last)をもたらした。これらのデータは、非晶質DHE含有乾燥粉末製剤を投与すると、薬物曝露を軽減しながら、結晶質DHE含有乾燥粉末製剤と比較的同じC
max及びT
maxを達成でき、副作用の発生率及び/または重症度を軽減する同等の治療効果を得ることができることを示唆している。
【0228】
驚くべきことに、乾燥粉末製剤I~IVの吸入による投与後にイヌで得られた薬物動態プロファイルは、イヌにおける吸入MAP0004について得られたモデル化された薬物動態データと実質的に類似していることが発見された。したがって、本開示の乾燥粉末製剤は、吸入を介してヒトに投与された場合、MAP0004と実質的に同じ薬物動態プロファイルを有することが予想される(例えば、吸入によるMAP0004のヒト薬物動態試験については、Shrewsbury,S.B.et al.Headache(2008)48:355-367を参照)。薬物動態パラメータを予測するためのデータのモデリングに関するさらなる詳細は、実施例5に提供される。
【表13】
【0229】
実施例4.ラットモデルにおける乾燥粉末製剤Vの毒性学的アッセイ
製剤Vの毒性学的アッセイを、以下の試験計画に従って試験した。252匹のSprague-Dawleyラット(オス126匹、メス126匹)を5つの群に分け、対照群(空気またはプラセボ)または製剤Vのいずれかの14日間連続した吸入(30分/日)を投与した。第1群及び第2群は、空気(第1群)またはプラセボ(DHEを含まない乾燥粉末、第2群)を受けた対照群であった。第3群~第5群は、それぞれ299μg/kg/日、438μg/kg/日、645μg/kg/日の達成された送達用量レベルで製剤Vを受けた低用量、中用量、高用量の群であった。
【0230】
顕微鏡病理学を使用して、ラットの鼻腔、鼻咽頭、喉頭、肺を検査した。すべての変化は限局性及び局所的であり、回復期間後には存在しないか減少しており、有害ではないと考えられた。ラットの体重、摂食量、検眼鏡検査、臨床化学、血液学、凝固、尿検査の変化は観察されなかった。研究全体を通じて死亡した動物はなかった。ラットにおける非有害な臨床徴候には、唾液分泌、毛皮の濡れまたは汚れ、皮膚及び/または目の変色、投与後1~2時間のみ持続する立毛が含まれる。ラットの臓器重量の変化は観察されなかった。
【0231】
結論として、この研究で観察された毒性学的パラメータに基づいて、無毒性量(NOAEL)は、製剤Vを14日間連続して吸入する処置を行った場合、ラットの達成総DHE送達用量レベル645μg/kg/日(高用量)であると考えられる。
【0232】
実施例5.イヌモデルにおける14日間の薬物動態及び毒性学的研究
吸入性DHE乾燥粉末の薬物動態を、以下の試験計画に基づいてイヌモデルで14日間にわたって評価した。試験薬とプラセボ対照品目をビーグル犬に1日1回、1日あたり30分間、連続14日間吸入投与した。本研究は、50匹のビーグル犬(25匹のオス、25匹のメス)を、2つの対照群、つまり第1群(空気)と第2群(DHEメシル酸塩なしの乾燥粉末のプラセボ)と、3つの処置群、つまり、第3群(製剤Vの低用量;達成用量レベル265μg/kg)、第4群(製剤Vの中用量;達成用量レベル423μg/kg)、及び第5群(製剤Vの高用量;達成用量レベル705μg/kg)に分けた。
【0233】
本研究の1日目及び14日目に記録された薬物動態データを、以下の表14に示し、対応する血漿DHE濃度-時間曲線を、それぞれ
図6及び7に示す。C
maxは、1日目及び14日目の曝露直後に記録した。1日目及び14日目にDHEの急速な除去が観察され、これは、1日目及び14日目のAUC
0-4hがAUC
0-24hに対して80%を超え、1日目及び14日目のAUC
0-8hがAUC
0-24hに対して95%を超え、また、1日目及び14日目の両方で8時間後にDHEが概して定量限界を下回ったことにより示されている。最大用量で1.5を超えない蓄積比(AR)によって証明されるように、試験において蓄積は観察されなかった。
【表14】
【0234】
イヌの体重、摂食量、検眼鏡検査、臨床化学、血液学、凝固、または尿検査の変化は観察されなかった。また、イヌの呼吸器パラメータや心電図パラメータへの影響は観察されなかった。臨床徴候は、唾液分泌、吐気、嘔吐、及び震えに限定されており、これらは投与中及び投与後の短期間のみ観察され、夕方に動物を検査するまでに完全に解消された。イヌの嘔吐は、14日間の投与期間中に軽減する傾向があった。これらの影響は用量制限とみなされたが、有害とは考えられず、主に、研究に使用された呼吸装置にイヌが嘔吐して誤嚥を引き起こす可能性があることを避けるため、動物福祉上の理由から用量は増加しなかった。イヌに投与したどの用量でも、臓器重量や顕微鏡による病理所見の変化は観察されなかった。無毒性量(NOAEL)は705μg/kg/日であった。
【0235】
次いで、薬物動態データを、イヌ(Armer et al.Toxicology Pathology(2011)39(3):544-552)及びヒト(Shrewsbury et al.Headache(2008)48(3):355-367)のMAP0004の吸入DHE製剤の公開された薬物動態学からのモデル化データセットと比較した。また、Shrewsbury et al.2008(同上)に記載されているDHEの静脈内製剤(D.H.E.45(登録商標))の投与後のヒトにおけるDHEの薬物動態も比較した。イヌの製剤Vを用いた14日間のPK試験から得られたデータと、イヌのMAP0004のモデル化データとを比較したところ、同等のAUCと、製剤Vでわずかに高いCmaxが示された。
【0236】
特定の理論に拘束されるものではないが、非晶質DHEは、結晶質DHE製剤と比較して、肺でより迅速に溶解し、より迅速に血流に入ることができるため、非晶質DHEメシル酸塩を含む本明細書に開示される吸入性乾燥粉末(例えば、製剤V)の投与は、結晶質DHEベースの組成物(例えば、MAP0004)と比較して、より高いC
maxを達成できると考えられる。したがって、本明細書に開示される非晶質DHEを含む乾燥粉末を使用すると、他のDHE製剤と比較して比較的高いC
maxを達成することができ、これにより、対象における片頭痛、頭痛、または症状のより迅速かつ顕著な寛解をもたらすことができる。本明細書に開示される乾燥粉末のさらなる利点は、T
maxが速く(C
maxは曝露直後に観察された)、C
maxが片頭痛、頭痛、またはその症状の寛解を達成するのに最適なレベル内にあって、しかも、DHEの静脈内投与後に観察されるC
maxと比較して比較的低いことである。本明細書に開示される乾燥粉末を使用するC
maxの鈍化は、DHEの静脈内投与で一般的に生じる嘔吐などの望ましくない副作用の発生率を格段に低くすることができ、または、これらの副作用を完全に回避することができる。イヌにおいて製剤Vを使用して収集されたデータと、MAP0004及び静脈内製剤(DHE45)との比較を以下の表15に要約する。
【表15】
【0237】
データモデリング
用量を正規化したデータはヒトとイヌの製剤間で一貫しているため、イヌへのDHEの投与から得られた薬物動態データを使用して、ヒトの臨床曝露量を正確に予測できる。例えば、MAP0004のイヌ曝露データは、ヒト曝露量を高い精度で予測するために使用され、これは、MAP0004の予測されたヒト曝露データと公表されたヒト曝露データの比較によって確認された(例えば、Shrewsbury et al.(2008)を参照)。予測臨床曝露量は、MAP0004微粒子用量(FPD)(臨床用量)に用量正規化されたイヌ曝露量を乗じて計算した。そのFPDでの予測された臨床曝露量は、精度15~20%以内で計算された。このアプローチを確認するために使用されたモデリングとスケーリングの概要を、以下の表16に示す。
【表16】
イヌモデルから得られたデータからヒト臨床曝露量をモデル化できることに基づいて、製剤Vの投与による臨床曝露量をモデル化することができた。具体的には、上記のイヌにおける製剤Vの薬物動態試験から得られたデータを使用して、名目用量と微粒子用量での用量正規化曝露量に基づいて製剤Vについての臨床曝露量を予測した。予測される臨床曝露量を以下の表17に示す。
【表17】
【0238】
理論に拘束されるものではないが、最初の2時間にわたるAUCは、1ng/mL~13ng/mLの曝露に関する目標治療濃度域(Cmax)、約12ng*h/mL以下の目標AUC0-INFで、効果が最も予測される。ここに提示されるデータが示すように、本明細書に開示される乾燥粉末製剤は、これらの最適パラメータを効果的に達成することができる。
【0239】
まとめると、製剤Vはイヌにおいて良好な忍容性を示し、どの用量でも顕微鏡による病理学的所見はなかった。全身曝露は非常に迅速であり(曝露直後のTmax)、迅速なクリアランス(AUCの>80%が投与後の最初の4時間以内に起こり、>95%が投与後の最初の8時間に起こり、最初の2時間にわたる曝露に基づいて報告された有効性の判断によく適合する)を示す。イヌへの製剤Vの投与は、送達された所定の用量について、イヌへのMAP0004投与について報告されたものと非常に類似した曝露をもたらした。したがって、本明細書に開示される製剤V及び他の乾燥粉末製剤へのヒトの曝露の予測は、イヌで得られた薬物動態データに基づいて定めることができる。これらの予測された臨床曝露は、製剤Vがすべての目標用量でヒトにおいて有効で、忍容性が良好となることを示唆している。
【0240】
本明細書で引用された各特許、特許出願、特許公報、出版論文の内容は、その全体が本明細書に援用される。
【国際調査報告】